説明

非水電解液及び非水電解液電池

【課題】イオン液体を用いた非水電解液電池において、電池内部抵抗を低減すると同時に充放電レート特性を改良する。
【解決手段】アルキル置換基を有する第4級アンモニウム塩を含有するイオン液体と、エーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩との混合物にリチウム塩を溶解してなる非水電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩を含有するイオン液体とリチウム塩とを含有する非水電解液であって、高安全で、内部抵抗が低く、優れた充放電レート特性を有する非水電解液及び該非水電解液を用いた非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能化及び小型化が進展している、電子機器用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源などの分野では、高エネルギー密度を得ることができる種々の非水電解質リチウム二次電池が注目されている。
【0003】
リチウム二次電池では、一般に、正極活物質としてリチウム金属酸化物を用い、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金、又はリチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を用い、電解液として、リチウム塩を常温で液体の有機溶媒に溶解してなる電解液が用いられている。電解液の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどが用いられている。
【0004】
しかしながら、前記有機溶媒は、一般に、揮発しやすく、引火性も高いために、可燃性物質に分類されるものであるので、前記有機溶媒を用いた前記リチウム二次電池においては、特に、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源などに用いられる比較的大型の前記リチウム二次電池においては、過充電時、過放電時、ショートなどのアブユース時、更には高温環境下において、安全性が低いという問題があった。
【0005】
そこで、安全性を向上させるために、リチウム塩と、四級アンモニウム有機物カチオンを有するイオン液体(常温溶融塩)とを含有した非水電解液を用いたリチウム二次電池が提案されている。このイオン液体は、常温で液状であるにも拘らず揮発性が殆どなく、しかも、難燃性又は不燃性を有するため、安全性に優れている。
【0006】
例えば、特許文献1には、特定の環状アンモニウムカチオン及びアニオンとからなる塩にリチウム塩を溶解した電解液を用いることにより、電圧及び安全性が改良されたリチウム二次電池が開示されている。また、特許文献2には、メチルプロピルピロリジニウムカチオンと特定のイミドアニオンとからなるイオン液体が、高いイオン伝導性を示すことが開示されている。
【0007】
しかしながら、イオン液体からなる電解液は一般的に有機溶媒と比べて粘度が高く電池内部抵抗が大きく、充放電レート特性が劣るといった欠点があり、さらなる改良が求められていた。そこで、イオン液体の内部抵抗、充放電レート特性を改善するため、電極厚低減、電極密度低減等が試みられたが、電池のエネルギー密度が低下するというデメリットがあった。また、セパレータの濡れ性改善も試みられたが、コストが高くなるという問題点があり、しかも効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−331918号公報
【特許文献2】特開2005−139100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、イオン液体を用いた非水電解液電池において、電池内部抵抗を低減すると同時に充放電レート特性を改良することであり、そのような非水電解液電池及び該非水電解液電池に用いられる非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、驚くべきことに、アルキル置換基を有する第4級アンモニウム塩にエーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩を少量混合することにより、電極/電解液界面の電荷移動抵抗が小さくなり、充放電レート特性が改善することを見出した。本発明者らは、前記知見に基づきさらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]下記一般式(1)
【化1】

(1)
(式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Xは、含フッ素アニオンを示す。)
で表される第4級アンモニウム塩(A)を含有するイオン液体と、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、RとRとが環を形成してもよい。Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Yは、含フッ素アニオンを示す。)
で表されるエーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩(B)との混合物にリチウム塩を溶解してなることを特徴とする非水電解液、
[2]前記非水電解液が有機溶媒を含まないものであることを特徴とする前記[1]に記載の非水電解液、
[3]前記第4級アンモニウム塩(B)が下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Yは、含フッ素アニオンを示す。)
で表される化合物であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の非水電解液、
[4]前記リチウム塩の前記非水電解液における濃度が0.1mol/l以上1mol/l以下であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解液、
[5]前記第4級アンモニウム塩(B)の前記非水電解液における濃度が1mol/l以下であり、かつ、前記リチウム塩の濃度以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水電解液、
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解液を用いたことを特徴とする非水電解液電池、
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解液と、ケイ素及び/又はスズを含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池、
[8]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解液と、リチウム−スズ系合金、リチウム−シリコン系合金及びリチウム−アルミニウム系合金からなる群から選ばれる一種の合金を含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池、
[9]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解液と、遷移金属酸化物を含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池、
[10]前記負極がチタン酸リチウムを含有することを特徴とする前記[9]に記載のリチウム二次電池、及び
[11]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解液と、リチウム金属又はリチウム合金を含有する負極とを備えたことを特徴とするリチウム一次電池
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来のイオン液体を含有する非水電解液の有する不揮発性、不燃性、高熱安定性、高イオン伝導性、耐電気分解性、耐久性及び安全性等の好ましい特性に加え、電池内部抵抗が低く、優れた充放電レート特性等をも有する非水電解液が得られる。また、該非水電解液を用いて、充放電レート特性に優れるリチウム二次電池等の非水電解液電池を好適に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一態様を示す模式図である。
【図2】本発明のリチウム二次電池の一態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の非水電解液は、下記一般式(1)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Xは、含フッ素アニオンを示す。)
で表される第4級アンモニウム塩(A)を含有するイオン液体と、下記一般式(2)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、RとRとが環を形成してもよい。Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Xは、含フッ素アニオンを示す。)
で表されるエーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩(B)との混合物にリチウム塩を溶解してなることを特徴とする。
【0019】
前記第4級アンモニウム塩(A)に関し、前記一般式(1)におけるR及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Rは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、炭素数1〜2の直鎖のアルキル基等であることが好ましく、メチル基、エチル基等であることがより好ましい。Rは、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、炭素数3〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、プロピル基、n−ブチル基等がより好ましい。また、前記第4級アンモニウム塩(A)は、粘度が低く、電気抵抗も小さくなる点から、非対称な構造を持つものが好ましい。前記第4級アンモニウム塩(A)は、1種類のみで用いてもよく、異なる2種類以上を混合して用いてもよい。
【0020】
前記第4級アンモニウム塩(A)における第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジプロピルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−ブチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジブチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。好ましくは、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン等が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0021】
前記第4級アンモニウム塩(A)を含有するイオン液体は、常温(5℃〜35℃程度)で液体であることが好ましい。前記イオン液体は、前記第4級アンモニウム塩(A)からなるものであってもよく、第4級アンモニウム塩(A)以外の成分を含有していてもよい。前記第4級アンモニウム塩(A)以外の成分としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩等を含んでいてもよい。
【0022】
前記第4級アンモニウム塩(B)に関し、前記一般式(2)におけるR、R及びRとしては、それぞれ同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であれば本発明の効果を妨げない限り特に限定されない。R、R及びRは、非水電解液の粘度が低くなる等の点から、同一又は異なって、炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。該炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく挙げられる。また、Rとしては、炭素数1〜2の直鎖のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基等がより好ましい。前記一般式(2)において、Rはメチル基又はエチル基を示し、mは1又は2を示す。nは0〜3の整数であれば本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、非水電解液の粘度が低くなる等の点から、0又は1がより好ましい。前記第4級アンモニウム塩(B)は、1種類のみで用いてもよく、異なる2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
さらに、前記第4級アンモニウム塩(B)としては、RとRとが環を形成しているものも好ましく挙げられ、下記一般式(3)で表されるように5員環を形成しているものがさらに好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
前記式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Yは、含フッ素アニオンを示す。
【0026】
前記一般式(2)で表される前記第4級アンモニウム塩(B)において、RとRとが環を形成していない場合の第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、N,N,N−トリメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエトキシエトキシエチルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエトキシエトキシエトキシエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。製造コスト及び粘度等の点から、好ましくは、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン、N−プロピル−N,N−ジエチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N−ブチル−N,N−ジエチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン等が挙げられ、さらに好ましくは、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−メトキシエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(2)で表される前記第4級アンモニウム塩(B)において、RとRとが、前記一般式(3)で表されるように5員環を形成している場合の第4級アンモニウムカチオンの具体例としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシエチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシエトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシエトキシエトキシエチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。製造コスト及び粘度等の点から、好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−エトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン等が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−エトキシメチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−メトキシエトキシエチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(1)〜(3)におけるX及びYは、同一又は異なって、含フッ素アニオンを示す。該含フッ素アニオンとしては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、CFCO、CFSO、N(FSO、N(CFSO、N(CFCFSO、N(FSO)(CFSO、N(CFSO)(CFCFSO、C(CFSO、N(CFSO)(CFCO)、CFBF、CBF、(CFBF、(CF)(C)BF、(CBF、(CFBF、BF、PF等が挙げられ、電気化学的安定性及び粘度等の点から、好ましくは、N(FSO、N(CFSO、N(CFCFSO、BF等が挙げられ、さらに好ましくは、N(FSO、N(CFSO、BF等が挙げられる。前記含フッ素アニオンは、1種類のみで用いてもよく、異なる2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩(A)及び前記一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩(B)は、通常市販されており、市販品を使用してもよく、公知の方法により製造して用いてもよい。例えば、前記一般式(3)で表される第4級アンモニウム塩(B)は、WO2005/3108号パンフレットに記載の方法に従って製造できる。
【0030】
前記リチウム塩としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、LiAsF、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiB(C、LiCHSO、LiCFSO、LiC(CFSO、LiAlCl、LiSiF、LiCl、LiBr等が挙げられ、製造コスト及びイオン液体からなる溶媒への溶解性等の点から、好ましくは、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等が挙げられ、さらに好ましくはLiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみで用いてもよく、異なる2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明の非水電解液に対し、前記第4級アンモニウム塩(A)の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、非水電解液から前記一般式(2)で表されるエーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩(B)及び前記リチウム塩を除いたものに対し、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。本発明の非水電解液に対し、前記リチウム塩の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、高いイオン伝導度を維持でき、十分な電池特性が得られる点から、0.1mol/L以上1mol/L以下程度が好ましく、0.5mol/L以上1mol/L以下程度がさらに好ましい。本発明の非水電解液に対し、前記第4級アンモニウム塩(B)の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、電池の内部抵抗の増加を抑制でき、十分に高い充放電レート特性が得られる点から、0mol/Lを超えて1mol/L以下程度が好ましく、0.05mol/L以上1.0mol/L以下程度がさらに好ましい。また、本発明の非水電解液中、前記第4級アンモニウム塩(B)の濃度は、前記リチウム塩の濃度以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の非水電解液は、これを保持する高分子化合物を含んだ非水電解質として用いられてもよく、該非水電解質も本発明に包含される。また、該非水電解質は、前記高分子化合物の代わりに、又は前記高分子化合物と併用して、高分子化合物の原料である重合性化合物及び重合開始剤等を含んでいてもよい。前記非水電解質は、ゲル状であってもよい。前記高分子化合物を含有する非水電解質は、通常、第4級アンモニウム塩を含有するイオン液体に溶解されたリチウム塩を含有する非水電解液に高分子化合物を添加して製造される。前記非水電解質を備えた電池も、本発明の非水電解液を備えた電池に包含される。
【0033】
前記高分子化合物としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体(例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、電気化学的安定性等の点から、高い電池特性を得ることができるため、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物等が好ましく挙げられ、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体等がより好ましく挙げられる。前記フッ化ビニリデンの共重合体としては、高い電池特性を得ることができる点から、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体等が好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体がより好ましい。前記高分子化合物は、1種類のみで用いてもよく、異なる2種類以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の非水電解質に対する前記高分子化合物の添加量は、本発明の非水電解液と前記高分子化合物との相溶性によっても異なるが、通常、前記非水電解質の約5質量%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加することが好ましい。高分子化合物の原料である重合性化合物としては、重合反応により上述した高分子化合物を形成できる化合物1種又は2種以上であればよく、特に限定されない。重合開始剤は、目的とする高分子化合物を重合できるものであって本発明の効果を妨げないものであれば特に限定されず、通常使用されるものを広く用いることができる。
【0035】
また、本発明の非水電解液は、有機溶媒を含んでもよく、含まなくてもよいが、難燃性等の安全面でより優れる点から、有機溶媒を含まないものが好ましい。
【0036】
本発明の非水電解液の製造方法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、前記第4級アンモニウム塩(A)を含有するイオン液体に、前記第4級アンモニウム塩(B)を混合し、さらに前記リチウム塩を混合及び溶解することにより製造される。また、本発明の非水電解液を含むゲル状又は固体状の非水電解質は、例えば、前述のように本発明の非水電解液に前記高分子化合物を添加して製造することができる。
【0037】
本発明の非水電解液は、内部抵抗が低く、優れた充放電レート特性を有し、かつ高温耐久性にも優れる。このような本発明の非水電解液は、非水電解液電池用の電解液としても好適に使用される。前記非水電解液を用いた非水電解液電池も、本発明に包含される。本発明の非水電解液電池は、通常、正極及び負極と共に前記非水電解液を備えるものであり、該非水電解液を適用して組み立てたられたものである。
【0038】
本発明における非水電解液電池としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、リチウム二次電池及びリチウム一次電池等が好ましく挙げられる。前記リチウム二次電池としては、例えばリチウムイオン電池及びリチウム金属電池(二次電池)等が挙げられ、前記リチウム一次電池としては、例えばリチウム金属電池(一次電池)等が挙げられる。また、前記リチウム二次電池としては、例えば、ケイ素及び/又はスズ等を含有する負極を有するもの;リチウム―スズ系合金、リチウム−シリコン(ケイ素)系合金及び/又はリチウム−アルミニウム系合金等を含有する負極を有するもの;遷移金属酸化物等を含有する負極を有するもの等が好ましく挙げられる。
【0039】
(リチウム二次電池の作製)
以下、本発明のリチウム二次電池の一態様であるリチウムイオン電池に関し、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のリチウムイオン電池は、例えば、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵及び放出による容量成分により表わされる二次電池であり、金属製あるいはフィルム状の外装部材の内部に正極及び負極と共に前記非水電解液又は非水電解質を備えたものであってもよい。本発明のリチウムイオン電池として、例えば、正極リード及び負極リードが取り付けられた巻回電極体をフィルム状の外装部材の内部に収納した構成を有しているものが挙げられる。
【0040】
図1は、本発明の一実施の形態に係るラミネート型のリチウムイオン電池の構成を模式的に表す図である。以下、前記ラミネート型のリチウム二次電池の好ましい一態様について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
正極リード(11)及び負極リード(12)は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材(31)の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード(11)は、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料により構成されており、負極リード(12)は、例えばニッケル(Ni)等の金属材料により構成されている。
【0042】
外装部材(31)は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔及びポリプロピレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されていることが好ましい。外装部材(31)は、例えば、ポリプロピレンフィルム側と巻回電極体(20)とが対向するように配設されており、通常各外縁部が融着又は接着剤により互いに密着されている。
【0043】
外装部材(31)と正極リード(11)及び負極リード(12)との間には、正極リード及び負極リードと、外装部材の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム(32)が挿入されていることが好ましい。密着フィルム(32)は、通常、正極リード(11)及び負極リード(12)に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極リード及び負極リードが上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0044】
図1に示した巻回電極体(20)のII−II線に沿った断面構造の一例を、図2に示す。巻回電極体(20)は、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は、通常保護テープ(25)により保護されている。
【0045】
正極(21)は、例えば、正極集電体(21A)と、この正極集電体(21A)の両面あるいは片面に設けられた正極活物質層(21B)とを有していることが好ましい。正極集電体(21A)には、例えば長手方向における一方の端部に正極活物質層(21B)が設けらず露出している部分があり、通常、この露出部分に正極リード(11)が取り付けられている。正極集電体(21A)は、例えば、ニッケル、アルミニウム等の金属材料により構成されていることが好ましい。
【0046】
正極活物質層(21B)は、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料の1種又は2種以上を含んで構成されていることが好ましい。リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム複合酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が好適であり、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式LiMIO又はLiMIIPOで表されるリチウム複合酸化物又はリチウムリン酸化物が好ましい。なお、式中、MI及びMIIは1種類以上の遷移金属を表し、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、スズ(Sn)及びジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。x及びyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.1、0.05≦y≦1.1の範囲内の値である。LiMIOで表されるリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiNi0.5Co0.5、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、又はスピネル型結晶構造を有するLiMn等が挙げられる。また、LiMIIPOで表されるリチウムリン酸化物の具体例としては、LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO等が挙げられる。
【0047】
正極活物質層(21B)は、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料が挙げられ、1種又は2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料又は導電性高分子材料等を用いてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の合成ゴム;ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料が好適であり、1種又は2種以上が混合して用いられる。
【0048】
負極(22)は、例えば、正極(21)と同様に、負極集電体(22A)と、この負極集電体(22A)の両面あるいは片面に設けられた負極活物質層(22B)とを有していることが好ましい。負極集電体(22A)には、例えば長手方向における一方の端部に負極活物質層(22B)が設けられず露出している部分があり、通常、この露出部分に負極リード(12)が取り付けられている。負極集電体(22A)は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属材料により構成されていることが好ましい。
【0049】
負極活物質層(22B)は、例えば、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料のいずれか1種又は2種以上を含んで構成されていることが好ましく、必要に応じて、例えば正極活物質層(21B)と同様の導電剤及び結着剤を含んでいてもよい。
【0050】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵及び放出することが可能であり、金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料が挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。この負極材料は、金属元素又は半金属元素の単体、合金及び化合物のいずれであってもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもあってもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0051】
この負極材料を構成する金属元素又は半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)又は白金(Pt)等が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。また、リチウム−スズ系合金、リチウム−シリコン系合金又はリチウム−アルミニウム系合金も好ましく用いられる。
【0052】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素又は半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましくはケイ素及びスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素及びスズは、リチウムを吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるため好ましい。前記非水電解液と、ケイ素及び/又はスズを含有する負極とを有するリチウム二次電池は、本発明の好ましい実施態様の一つである。
【0053】
前記スズは合金であってもよく、スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)及びクロム(Cr)等からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。前記ケイ素は合金であってもよく、ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム等からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0054】
前記スズ及びケイ素は化合物であってもよく、スズの化合物又はケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)又は炭素(C)等を含むものが挙げられ、スズ又はケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0055】
負極(22)に使用することができるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、遷移金属酸化物も挙げられる。前記非水電解液と、遷移金属酸化物を含有する負極を有するリチウム二次電池は、本発明の好ましい実施態様の一つである。具体的にはLiTi12のようなチタン酸リチウムや二酸化チタン、五酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン等が挙げられる。中でも、LiTi12のようなチタン酸リチウムは充放電サイクル寿命が優れているため好ましい。
【0056】
また、負極(22)には、前述したようなリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料の他に、リチウム金属を用いてもよい。具体的には、例えばリチウム金属を集電体に圧着して負極としてもよい。
【0057】
セパレータ(23)は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の多孔質膜、又はセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、約100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータを構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレン又はポリプロピレンと共重合させる又はブレンド化することで用いることができる。また、合成樹脂製多孔質膜の内部にフィラー粒子を含むものも、樹脂溶融温度以上の高温時にセパレータが収縮することによる正負極のショートを抑制し、電池安全性を向上できるため好ましい。セパレータに含有するフィラー粒子は、Al、SiO、モンモリロナイト、雲母、ZnO、TiO、BaTiO、ZrO、及びガラス等が挙げられる。中でも、SiO2等のイオン液体との濡れ性に優れるものは、充放電性能が優れるためより好ましい。
【0058】
本発明のリチウムイオン電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0059】
まず、例えば、正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体(21A)の両面又は片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層(21B)を形成し正極(21)を作製する。続いて、例えば、正極集電体(21B)に正極リード(11)を、例えば超音波溶接又はスポット溶接により接合する。
【0060】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体(22A)の両面又は片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層(22B)を形成し、負極(22)を作製する。続いて、負極集電体(22A)に負極リード(12)を、例えば超音波溶接又はスポット溶接により接合する。また、リチウム合金系薄膜負極の場合は、負極集電体(22A)にSn等の金属をメッキすることにより作製した負極(22)を用いてもよい。
【0061】
次いで、正極(21)と負極(22)とをセパレータ(23)を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ(25)を接着して巻回電極体(20)を形成する。
次いで、この巻回電極体(20)を外装部材(31)で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材(31)の内部に収納する。続いて、前記非水電解液を外装部材(31)の内部に注入する。
非水電解液を注入したのち、外装部材(31)の開口部を真空雰囲気下で熱融着等により密閉させ電池を組み立てる。その際、正極リード(11)及び負極リード(12)と外装部材(31)との間には密着フィルム(32)を挿入することが好ましい。このようにして、フィルム状の外装部材の内部に正極及び負極と共に前記非水電解質を備えたリチウムイオン電池が製造される。
【0062】
(リチウム一次電池の作製)
また、本発明の非水電解液及び非水電解質は前述のようなリチウム二次電池の他に、リチウム金属等を用いたリチウム一次電池に用いることもできる。以下、本発明のリチウム一次電池の一態様であるリチウム金属電池に関し、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のリチウム金属電池は、例えば次のような方法によって作製することができる。
【0063】
正極には、通常、二酸化マンガン、フッ化黒鉛、硫化鉄、酸化銅等を活物質とする正極を使用することができ、活物質として好ましくは二酸化マンガンが挙げられる。具体的には、前記活物質と、導電助剤と、バインダーとを含有する正極合剤層を、正極集電体の片面又は両面に形成した構成の正極等を使用することができる。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素等が用いられ、バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンラバー等が用いられる。
【0064】
二酸化マンガン正極の作製にあたっては、例えば、二酸化マンガンと導電助剤とバインダーとを混合して調製した正極合剤を水又は有機溶剤に分散させてペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し、その正極合剤含有組成物を集電体に塗布し、乾燥した後、加圧成形する方法が好適に採用できる。
【0065】
正極集電体には、ステンレス鋼製のものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、SUS316、SUS430、SUS444等のステンレス鋼製の金属箔、エキスパンドメタル、平織り金網等が使用できる。正極集電体の厚みは、例えば、約5〜200μmであることが好ましい。
【0066】
負極には、リチウム(リチウム金属)又はリチウム合金を含有するものが好ましい。該リチウム合金としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−ビスマス、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウム等のリチウム合金で構成されるものを用いることが好ましい。具体的には、これらのリチウム又はリチウム合金を、集電体に圧着して負極としてもよい。リチウム合金の場合、リチウムの含有量が約90質量%以上であることが好ましい。また、リチウムとリチウム合金とを併用して負極を構成してもよい。負極に係るリチウムやリチウム合金を含有する負極剤層の厚みは、例えば、約20〜200μmであることが好ましい。
【0067】
負極集電体としては、銅製又は銅合金製の金属箔、金属網等が好適に使用できる。負極集電体の厚みは、例えば、約5〜50μmであることが好ましい。
【0068】
本発明のリチウム金属電池におけるセパレータとしては、従来公知のリチウム金属電池で使用されているセパレータ、すなわち、微孔性樹脂フィルムからなるセパレータ、樹脂不織布からなるセパレータ等が使用できる。その材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンの他、耐熱用として、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。また、前記材質の微孔性フィルムと不織布とを複数積層するか、又は微孔性フィルム同士や不織布同士を複数積層することによって構成される複層構造のセパレータを用いることにより、高温環境下で使用する場合の信頼性を高めることもできる。
【0069】
セパレータの厚みは、例えば、約10〜500μmであることが好ましい。また、セパレータの空孔率は、好ましくは約20%以上90%以下である。
【0070】
電池の組み立ては前記リチウムイオン電池と同様にして行うことができる。通常、正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回し、最外周部に保護テープを接着して巻回電極体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材の内部に収納する。続いて、前記非水電解液を電解液として外装部材の内部に注入する。前記非水電解液を注入したのち、外装部材の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密閉し電池を組み立てる。このように、外装部材の内部に正極及び負極と共に前記非水電解液を備えるリチウム金属電池が製造される。
【0071】
前記ではラミネートタイプの電池形態について説明しているが、本発明のリチウムイオン電池及びリチウム金属電池の形態はそれに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、後述する実施例では、正極及び負極を巻回する場合について説明したが、正極と負極とを複数積層するようにしてもよく、また、折り畳むようにしてもよい。更に、本発明は、円筒型、角型、コイン型、ボタン型等の形状を有する電池にも適用することができる。
【0072】
また、前記では、本発明の非水電解液をそのまま電池に用いる場合について説明したが、液状の非水電解液を上述した高分子化合物等の保持体に保持させた非水電解質として用いてもよい。また、該非水電解質はゲル状であってもよい。
【0073】
非水電解液電池の製造において前記非水電解液を適用する方法及び手順は、上述したものに限定されるものではない。上述したように正極、負極及びセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解液を注液してもよく、また、正極又は負極に非水電解液を含浸(場合によっては含浸後ゲル化)後、発電要素を組み立ててもよい。注液法としては、常圧で注液してもよく、真空含浸方法、加圧含浸方法を使用してもよい。
【0074】
ゲル状の非水電解質を電池に使用する場合は、例えば、上述したように正極、負極及びセパレータを有する発電要素をまず組立て、非水電解液を外装部材の内部に注液した後に高分子化合物を添加してゲル状としてもよい。また、高分子化合物の原料である重合性の化合物と重合開始剤とを非水電解液に添加し、外装部材内部に非水電解液を注液後に該化合物を重合させてゲル状の非水電解質にしてもよい。また、非水電解液と高分子化合物を混合したものを電極に塗布した後に、発電要素を組み立ててもよい。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例、試験例等を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
(製造例1:スズ薄膜単極セルの作製)
電解脱脂を施した銅基板からなる集電体上に厚さが70μmとなるように、すずめっき浴(メルテックス社製、SN−2650S)中、電気めっきにてスズ薄膜を形成させた。これを所定の大きさ(活物質付着面寸法2cm×2cm)に切り出し、タブ部分にニッケル製リードを溶接してスズ薄膜電極を得た。
【0077】
リチウム金属箔を前記スズ薄膜電極よりも大きいサイズ(2.5cm×2.5cm)に切り出し、ニッケル製リードを溶接したニッケル製メッシュからなる集電体に圧着してリチウム金属電極を得た。
【0078】
前記スズ薄膜電極をSiO含有ポリエチレンセパレータを介して前記リチウム金属電極と対向させ、素子を作製した。該素子をアルミニウムラミネートからなる外装体に挿入し、スズ薄膜単極セルを得た。
【0079】
(製造例2:チタン酸リチウム単極セルの作製)
活物質であるチタン酸リチウム(LiTi12)22.5g、導電剤であるアセチレンブラック1.25g及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン1.25gとを混合してチタン酸リチウム合剤を調製した。該合剤25gを溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン30gに分散させた後、アルミニウム箔からなる集電体に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成形して活物質層を形成させた。これを所定の大きさ(活物質塗布部寸法2cm×2cm)に切り出し、タブ部分にアルミニウム製リードを溶接してチタン酸リチウム電極を得た。
【0080】
リチウム金属箔を前記チタン酸リチウム電極よりも大きいサイズ(2.5cm×2.5cm)に切り出し、ニッケル製リードを溶接したニッケル製メッシュからなる集電体に圧着してリチウム金属電極を得た。
【0081】
前記チタン酸リチウム電極をSiO含有ポリエチレンセパレータを介して前記リチウム金属電極と対向させ、素子を作製した。該素子をアルミニウムラミネートからなる外装体に挿入し、チタン酸リチウム単極セルを得た。
【0082】
(製造例3:リチウム金属両極セルの作製)
リチウム金属箔を所定の大きさ(2cm×2cm)に2枚切り出し、それぞれニッケル製リードを溶接したニッケル製メッシュからなる集電体に圧着してリチウム金属電極を得た。
【0083】
前記リチウム金属電極2枚をSiO含有ポリエチレンセパレータを介して対向させ、素子を作製した。該素子をアルミニウムラミネートからなる外装体に挿入し、リチウム金属両極セルを得た。
【0084】
(合成例1:1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドの合成)
1−メチルピロリジン(東京化成社製)27.9g(0.328moL)を秤取りトルエン100mLで希釈した。得られた溶液を5℃に冷却し、攪拌しながらメトキシエトキシエチルクロリド(東京化成社製)51.3g(0.370mol)を滴下した。得られた溶液を室温で20時間攪拌したのちデカンテーションし、水を加え希釈し、エーテルで洗浄した。水抽出液を濃縮し、1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリドを、黄色い粘状物として65.8g得た。
【0085】
次に、反応器にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Aldrich社製)84.4g(0.294mol)を秤取りアセトン50mLを加え溶解した。これに、上記で得た1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリド65.8g(0.294mol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応後、不溶の結晶をろ過し、ろ液を濃縮した。得られた粘調なオイルを塩化メチレンで希釈し、アルミナカラムを通した。溶出液を濃縮し、蒸留水150mLで希釈し活性炭0.1gを加えて12時間攪拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、真空乾燥すると無色の液体として1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドが124g得られた。
【0086】
(合成例2:1−メトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドの合成)
1−メチルピロリジン(東京化成社製)27.9g(0.328moL)を秤取りトルエン100mLで希釈した。得られた溶液を5℃に冷却し、攪拌しながらメトキシエトキシエトキシエチルクロリド(東京化成社製)67.6g(0.370mol)を滴下した。得られた溶液を室温で20時間攪拌したのちデカンテーションし、水を加え希釈し、エーテルで洗浄した。水抽出液を濃縮し、1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリドを、黄色い粘状物として77.7g得た。
【0087】
次に、反応器にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Aldrich社製)83.3g(0.29mol)を秤取りアセトン50mLを加え溶解した。これに、上記で得た1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリド77.7g(0.29mol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応後、不溶の結晶をろ過し、ろ液を濃縮した。得られた粘調なオイルを塩化メチレンで希釈し、アルミナカラムを通した。溶出液を濃縮し、蒸留水150mLで希釈し活性炭0.1gを加えて12時間攪拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、真空乾燥すると無色の液体として1−メトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドが133.7g得られた。
【0088】
(合成例3:1−メトキシエトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドの合成)
1−メチルピロリジン(東京化成社製)27.9g(0.328moL)を秤取りトルエン100mLで希釈した。得られた溶液を5℃に冷却し、攪拌しながらメトキシエトキシエトキシエトキシエチルクロリド(東京化成社製)83.9g(0.370mol)を滴下した。得られた溶液を室温で20時間攪拌したのちデカンテーションし、水を加え希釈し、エーテルで洗浄した。水抽出液を濃縮し、1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリドを、黄色い粘状物として87.3g得た。
【0089】
次に、反応器にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Aldrich社製)80.4g(0.28mol)を秤取りアセトン50mLを加え溶解した。これに、上記で得た1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウムクロリド87.3g(0.28mol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応後、不溶の結晶をろ過し、ろ液を濃縮した。得られた粘調なオイルを塩化メチレンで希釈し、アルミナカラムを通した。溶出液を濃縮し、蒸留水150mLで希釈し活性炭0.1gを加えて12時間攪拌した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、真空乾燥すると無色の液体として1−メトキシエトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミドが139g得られた。
【0090】
(実施例1〜10)
前記第4級アンモニウム塩(A)であるイオン液体N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,3−TFSA、大塚化学社製)中に、前記第4級アンモニウム塩(B)であるN−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,1O1−TFSA)を含有量が表1に記載の値となるよう添加し、さらにLiTFSA(リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド、キシダ化学社製)を含有量が表1に記載の値となるように添加して、本発明の非水電解液を得た。前記Py1,1O1−TFSAとしては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0091】
(実施例11〜13)
前記第4級アンモニウム塩(A)であるイオン液体N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,3−TFSA、大塚化学社製)中に、前記第4級アンモニウム塩(B)であるN−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,1O1−TFSA)を含有量が表2に記載の値となるよう添加し、さらにLiTFSA(リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド、キシダ化学社製)を含有量が表2に記載の値となるように添加して、本発明の非水電解液を得た。前記Py1,1O1−TFSAとしては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0092】
(実施例14)
前記第4級アンモニウム塩(A)であるイオン液体N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,3−TFSA、大塚化学社製)中に、前記第4級アンモニウム塩(B)であるN−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(Py1,1O1−TFSA)を含有量が0.05mol/Lとなるよう添加し、さらにLiTFSA(リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド、キシダ化学社製)を含有量が0.5mol/Lとなるように添加して、本発明の非水電解液を得た。前記Py1,1O1−TFSAとしては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0093】
(実施例15)
前記Py1,1O1−TFSAを1−エチル−1−メトキシメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py2,1O1−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。前記Py2,1O1−TFSAとしては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0094】
(実施例16)
前記Py1,1O1−TFSAを1−エトキシメチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py1,1O2−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。前記Py1,1O2−TFSAとしては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0095】
(実施例17)
前記Py1,1O1−TFSAを1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py1,2O1−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。前記Py1,2O1−TFSAとしては、特開2006−265132号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0096】
(実施例18)
前記Py1,1O1−TFSAを、合成例1で得た1−メトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py1,2O2O1−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。
【0097】
(実施例19)
前記Py1,1O1−TFSAを、合成例2で得た1−メトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py1,2O2O2O1−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。
【0098】
(実施例20)
前記Py1,1O1−TFSAを、合成例3で得た1−メトキシエトキシエトキシエトキシエチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(Py1,2O2O2O2O1−TFSA)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。
【0099】
(実施例21)
前記Py1,1O1−TFSAを1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウム テトラフルオロボレート(Py1,1O1−BF4)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。前記Py1,1O1−BF4としては、WO2005/3108号公報に記載の方法により得たものを用いた。
【0100】
(実施例22)
前記Py1,1O1−TFSAをジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホン)アミド(DEME−TFSA、大塚化学社製)に変更した以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。
【0101】
(比較例1、2)
前記LiTFSA及びPy1,1O1−TFSAの含有量をそれぞれ表1に記載の値となるよう変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を得た。
【0102】
(比較例3)
前記Py1,1O1−TFSAを加えなかった以外は、実施例11と同様にして本発明の非水電解液を得た。
【0103】
(試験例1)
製造例1で得たスズ薄膜単極セルに実施例1〜10、比較例1、2又は6で得た非水電解液を注液した後、真空封止を行い、得られた試験用セルを用いてそれぞれ次のように定電流印加試験を行った。
【0104】
まず、23℃で0.2Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧0Vまで行い、続いて23℃で0.2Cの定電流印可によるLi脱離反応を終止電圧2.0Vまで行った。更に、23℃で0.2Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧0Vまで行い、続いて23℃で0.4Cの定電流印可によるLi脱離反応を終止電圧2.0Vまで行った。0.2C及び0.4Cでの前記Li脱離反応における放電容量をそれぞれ測定し、放電容量維持率を算出した。結果を表1に示す。放電容量維持率は、0.2Cの放電容量に対する0.4Cの放電容量の維持率、すなわち(0.4C放電容量/0.2C放電容量)×100(%)から求めた。
【0105】
【表1】

【0106】
電池負極としての充電はLi挿入反応になり、放電はLi脱離反応になる。よって電池としての放電性能はLi脱離反応の性能に相当することになる。なお、0.2C、0.4Cは、理論容量を、それぞれ5時間、2.5時間で放電しきる電流値である。上記放電容量維持率から、放電レート特性が評価できる。一般的に放電レート特性が向上した場合、充電レート特性も同様に向上していると理解される。
【0107】
第4級アンモニウム塩(B)を添加した実施例では、第4級アンモニウム塩(B)を添加していない比較例よりも放電容量維持率が高くなっており、充放電レート特性が向上していることが明らかになった。特性向上の原因について詳細は明らかではないが、第4級アンモニウム塩(B)由来のカチオンの作用により電極/非水電解液界面の電荷移動抵抗(内部抵抗)が減少し充放電性能が向上したものと推測される。また、前記効果は第4級アンモニウム塩(B)の添加量が0.05mol/Lから1.0mol/Lの範囲において確認され、第4級アンモニウム塩(B)の添加量がLi塩の添加量以下である方が性能は良好であった。
【0108】
(試験例2)
製造例2で得たチタン酸リチウム単極セルに実施例11〜13、比較例1,2又は3で得た非水電解液を注液した後、真空封止を行い、得られた試験用セルを用いてそれぞれ次のように定電流印加試験を行った。
【0109】
まず、23℃で0.2Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧1Vまで行い、続いて23℃で0.2Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧2.0Vまで行うことにより充放電を行った。更に、23℃で0.2Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧1Vまで行い、続いて23℃で0.4Cの定電流印可によるLi挿入反応を終止電圧2.0Vまで行った。0.2C及び0.4Cでの前記Li脱離反応における放電容量をそれぞれ測定し、放電容量維持率を算出した。結果を表2に示す。放電容量維持率は、試験例1と同様にして求めた。
【0110】
【表2】

【0111】
スズ薄膜電極と同様に、チタン酸リチウム電極を用いた単極セルにおいても、第4級アンモニウム塩(B)を添加することにより内部抵抗が低減され、充放電レート特性が向上することが明らかになった。
【0112】
(試験例3)
製造例3で得たリチウム金属両極セルに実施例14〜22又は比較例2で得た非水電解液を注液した後、真空封止を行い、得られた試験用セルを用いてそれぞれ次のように定電流印加試験を行った。印可電流は0.5mA/cm2となるようにし、リチウム金属両極の分極電位差を測定し、それぞれの電解液における分極挙動の比較を行った。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
両極がリチウム金属電極からなるセルにおいて、定電流印可試験では第4級アンモニウム塩(B)を添加することにより、分極挙動の改善が見られた(分極が小さくなった)。分極が小さいと電池内部抵抗も小さくなり、充電レート特性が向上する。従って、第4級アンモニウム塩(B)を添加することにより、内部抵抗が低減され、充放電レート特性が向上することが明らかになった。
【符号の説明】
【0115】
11 正極リード
12 負極リード
20 巻回電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
25 保護テープ
31 外装部材
32 密着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Xは、含フッ素アニオンを示す。)
で表される第4級アンモニウム塩(A)を含有するイオン液体と、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、RとRとが環を形成してもよい。Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Yは、含フッ素アニオンを示す。)
で表されるエーテル置換基を有する第4級アンモニウム塩(B)との混合物にリチウム塩を溶解してなることを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
前記非水電解液が有機溶媒を含まないものであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム塩(B)が下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、Rは、メチル基又はエチル基を示す。mは、1又は2を示す。nは、0〜3の整数を示す。Yは、含フッ素アニオンを示す。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液。
【請求項4】
前記リチウム塩の前記非水電解液における濃度が0.1mol/l以上1mol/l以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム塩(B)の前記非水電解液における濃度が1mol/l以下であり、かつ、前記リチウム塩の濃度以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液を用いたことを特徴とする非水電解液電池。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液と、ケイ素及び/又はスズを含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液と、リチウム−スズ系合金、リチウム−シリコン系合金及びリチウム−アルミニウム系合金からなる群から選ばれる一種の合金を含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液と、遷移金属酸化物を含有する負極とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極がチタン酸リチウムを含有することを特徴とする請求項9に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水電解液と、リチウム金属又はリチウム合金を含有する負極とを備えたことを特徴とするリチウム一次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−20835(P2013−20835A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153745(P2011−153745)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】