説明

非水電解質二次電池

【課題】本発明の課題は、高容量でサイクル充放電特性の優れた二次電池を提供することである。
【解決手段】ポリエーテル共重合体、光反応開始剤、および電解質塩化合物を適宜選択し、共重合体、光反応開始剤、および電解質塩化合物からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物で負極材料もしくは負極および正極材料の主表面を覆い、架橋させることで得られる架橋高分子電解質を二次電池に採用することで、高容量でサイクル充放電特性が優れた二次電池が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極材料、非水電解質、および正極材料からなる非水電解質二次電池に関するものであり、より詳細には、負極材料や正極材料に多孔質材料を用いて、その多孔質部分に架橋助剤を用いないで架橋させた架橋高分子固体電解質を含浸することにより、高容量で、かつ、サイクル充放電特性に優れた非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池は、電解質にイオン導電性の点から溶液またはペースト状のものが用いられている。しかし、液漏れによる機器の損傷の恐れがあることから、種々の安全対策が必要であり、大型電池開発の障壁になっている。
【0003】
これに対し無機結晶性物質、無機ガラス、有機高分子系物質などの固体電解質が提案されている。しかしながら、無機系電解質はイオン導電性が高いものの、電解質が結晶質あるいは非晶質からなり、充放電時の正負極活物質による体積変化の緩和が難しいため、電池の大型化が困難である。一方、有機高分子系物質は一般に柔軟性、曲げ加工性、および成形性に優れ、応用されるデバイスの設計の自由度が高くなるなどの点から、その進展が期待される。
【0004】
有機高分子系固体電解質は、従来リチウムイオン電池に用いられている多孔質構造を有する炭素系負極材料等と組み合わせることができれば、より高い安全性を有した大型電池の開発が可能となる。しかしながら、これまで上記の負極材料と高分子電解質を用いた電池については良好な特性が報告されていなかった。
【0005】
例えば、リチウムイオン伝導性ポリマー(高分子電解質)と炭素系負極材料の組み合わせに関する既報告としては、非特許文献1に、280 mAh/gの可逆容量が得られたとの報告がある。しかしながら、初回充放電時の挿入/脱離反応の割合(クーロン効率)は25%と低く、また、炭素系負極材料の理論容量(372 mAh/g)と比べるとその可逆容量も不十分なものであった。
【0006】
一方、有機高分子系の固体電解質としては、エチレンオキシドの単独重合体とアルカリ金属イオン系におけるイオン伝導性の発見より、高分子固体電解質の研究は活発に行われてきた。
【0007】
イオン導電性の高い高分子電解質として、特許文献1にはエチレンオキシドと側鎖にエチレンオキシド単位を有するオキシラン化合物との共重合体が記載されている。しかしながら、それらの重合体は重合未架橋体のために形状安定性に問題があり、特に高温ではフィルムとしての強度がなく、高分子固体電解質として使用することができなかった。
【0008】
イオン導電性と形状安定性を両立させるために重合体を架橋する方法が検討されている。
例えば、特許文献2には重合体を架橋させるために反応性基を有するオリゴマーを用いた紫外線による架橋についての記載がある。しかしながら、未反応の反応性基によって高分子固体電解質としての性能が悪化し、電極と組み合わせた場合に電池のサイクル特性が著しく低下させる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−324114号公報
【特許文献2】特開平9−185962号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Power Sources, Vol.52, (1994), PP55-59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のような事情を鑑み、本発明の課題は、高容量でサイクル充放電特性の優れた二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリエーテル共重合体、光反応開始剤、および電解質塩化合物を適宜選択し、多孔質構造材料を含有する負極材料もしくは負極および正極材料の主表面を共重合体、光反応開始剤、および電解質塩化合物からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物で覆い、架橋させることで得られる架橋高分子電解質を二次電池に採用することで、高容量でサイクル充放電特性が優れた二次電池が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
一般に、覆われる表面は、主表面、特に1つの主表面である。本明細書において、「主表面」とは、固体電解質に接触する面を意味する。「主表面」は、一般に、負極材料または正極材料における最も広い面積を有する平面(表面)である。
【0013】
すなわち本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の(i)〜(iii)の成分からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物、架橋高分子固体電解質、およびそれらを用いてなるリチウムポリマー電池およびリチウムポリマー電池の製造方法を提供する。
項1.
(i)式(1):
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] で示される単量体から誘導される繰り返し単位5〜95モル%、および
式(2):
【化2】

で示される単量体から誘導される繰り返し単位95〜5モル%を有する重量平均分子量が10〜10の範囲内であるポリエーテル共重合体、
および
(ii)光反応開始剤
(iii)電解質塩化合物
からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を架橋して得られる架橋高分子固体電解質によって負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面が覆われており、少なくとも負極材料は多孔質構造材料を含有していることを特徴とする非水電解質二次電池。
項2.
前記負極材料および前記正極材料のうち少なくともどちらかの電極上に、高分子固体電解質用組成物を塗布する工程で作製されることを特徴とする項1に記載の非水電解質二次電池。
項3.
前記高分子固体電解質用組成物は、少なくとも1種以上のポリエーテル共重合体の混合物であることを特徴とする項1または2のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
項4.
前記電解質塩化合物がリチウム塩化合物であることを特徴とする項1〜3のいずかに記載の非水電解質二次電池。
項5.
前記高分子固体電解質用組成物に非プロトン性有機溶媒が更に添加されたことを特徴とする項1〜4のいずかに記載の非水電解質二次電池。
項6.
前記非プロトン性有機溶媒がエーテル類およびエステル類からなる群より選ばれることを特徴とする項5に記載の非水電解質二次電池。
項7.
前記負極材料は、活物質と導電助剤と結着剤との混合物からなり、その活物質は、リチウム、カーボン、シリコン系化合物、スズ系化合物、アルミニウム系化合物のうちの1種、あるいは2種以上の混合物からなることを特徴とする項1〜6のいずかに記載の非水電解質二次電池。
項8.
前記正極材料は、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AM(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMBO(Aはアルカリ金属、BはP、Si、またはその混合物、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)のいずれかの組成からなることを特徴とする項1〜7のいずかに記載の非水電解質二次電池。
項9.
(A)式(1):
【化3】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] で示される単量体、および
式(2):
【化4】

で示される単量体を重合させて、ポリエーテル共重合体を得る工程と、
(B)前記ポリエーテル共重合体、光反応開始剤および電解質塩化合物からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を、負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面に塗布する工程と、
(C)高分子固体電解質用組成物を架橋する工程
を含む非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリイオンを挿入・脱離、あるいは可逆的に合金化可能な多孔質電極材料の主表面を、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を架橋して得られた架橋高分子固体電解質で覆うことで、高容量で、かつ、サイクル充放電特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【0015】
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
式(1)の化合物は市販品からの入手、またはエピハロヒドリンとアルコールからの一般的なエーテル合成法等により容易に合成が可能である。市販品から入手可能な化合物としては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ターシャリーブチルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘプタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシへキサン、グリシジルフェニルエーテル、1,2−エポキシペンタン、グリシジルイソプロピルエーテルなどが使用できる。これら市販品のなかでは、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテルが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが特に好ましい。合成によって得られる式(1)で表される単量体では、Rは−CHO(CR)が好ましく、R、R、Rの少なくとも一つが−CHO(CHCHO)であることが好ましい。R4は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。nは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0017】
式(2)の化合物は基礎化学品であり、市販品を容易に入手可能である。
【0018】
本発明の共重合体は、(A):式(1)の単量体から誘導された繰り返し単位
【化5】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R2、R3は水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびR4はR、R2、R3の間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] 及び
(B):式(2)の単量体から誘導された繰り返し単位
【化6】

を有する。
【0019】
ここで繰り返し単位(A)は、2種以上のモノマーからなるものであってもよい。
【0020】
Rは−CHO(CR)が好ましく、R、R、R3の少なくとも一つが−CHO(CHCHO)であることが好ましい。Rは炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。nは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0021】
本発明のポリエーテル共重合体の合成は次のようにして行える。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにKを含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0022】
本発明のポリエーテル共重合体においては、繰り返し単位(A)、および繰り返し単位(B)のモル比が、(A)5〜95モル%、及び(B)95〜5モル%が適当であり、好ましくは(A)10〜95モル%、及び(B)90〜5モル%、更に好ましくは(A)15〜95モル%、及び(B)85〜5モル%である。繰り返し単位(B)が95モル%を越えるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招き、結果的に固体電解質のイオン伝導性を著しく悪化させることとなる。一般にポリエチレンオキシドの結晶性を低下させることによりイオン伝導性が向上することは知られているが、本発明のポリエーテル共重合体はこの点において格段に優れている。
【0023】
本発明のポリエーテル共重合体の分子量は、良好な加工性、機械的強度、柔軟性を得るために、重量平均分子量10〜10の範囲内、好ましくは5×10〜5×10の範囲内、さらに好ましくは10〜5×10の範囲内ものが適する。重量平均分子量が10未満の共重合体では、形状安定性を高めるために架橋密度を高くする必要があるために、プラスチック状のものしか得られず、伸びも殆どなく、イオン伝導度が低い。重量平均分子量が10より大きい共重合体では、著しく加工性が悪く取り扱いが困難である。
【0024】
本発明の架橋前のポリエーテル共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体何れの共重合タイプでも良い。ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキシドの結晶性を低下させる効果が大きいので好ましい。
【0025】
本発明の架橋高分子固体電解質は、ポリエーテル共重合体、光反応開始剤からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物に電解質塩化合物を共存させて高分子固体電解質を構成し、非プロトン性有機溶媒の存在下または不存在下に、紫外線などの活性エネルギー線を照射することによって架橋した架橋体である。
【0026】
光による架橋に用いる活性エネルギー線は、紫外線、電子線等を用いることができる。紫外線が好ましい。
【0027】
本発明に用いることができる光反応開始剤として、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが挙げられる。好ましくは、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系の光反応開始剤が用いられる。光反応開始剤として前述の化合物を2種類以上併用することは自由である。
【0028】
アルキルフェノン系光反応開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オンなどが挙げられる。2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが好ましい。
【0029】
ベンゾフェノン系光反応開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0030】
アシルフォスフィンオキサイド系光反応重合開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0031】
架橋反応に用いられる光反応開始剤の量はポリエーテル共重合体100重量部に対して0.01〜6.0重量部の範囲内が好ましく、更に好ましくは0.1〜4.0重量部である。
【0032】
本発明においては、架橋助剤を使用しない。架橋助剤は、通常、多官能性化合物(例えば、CH=CH-、CH=CH-CH-、CF=CF-を少なくとも2個含む化合物)である。架橋助剤の具体例は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート、ヘキサフルオロトリアリルイソシアヌレート、N−メチルテトラフルオロジアリルイソシアヌレートなどである。本発明においては、架橋助剤を含まない状態で高分子固体電解質用組成物を架橋させる。架橋助剤を含まないことによって、電池の性能が高くなる(例えば、電池の可逆容量が大きくなる)。
【0033】
架橋反応は、紫外線による場合では、キセノンランプ、水銀ランプ、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを用いることができ、例えば、電解質を波長365nm、光量1〜50mW/cmで0.1〜30分間照射することによって行うことができる。
【0034】
本発明において用いることができる電解質塩化合物は、ポリエーテル共重合体又は該共重合体の架橋体、および必要なら非プロトン性有機溶媒からなる混合物に相溶することが好ましい。ここで相溶とは電解質塩が結晶化などして析出してこない状態を意味する。
【0035】
本発明においては、以下に挙げる電解質塩化合物が好ましく用いられる。即ち、金属陽イオン、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオンから選ばれた陽イオンと、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF、PF、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオン、XSO、[(XSO )(XSO)N]、[(XSO)(XSO)(XSO)C]、及び[(XSO)(XSO)YC]−から選ばれた陰イオンとからなる化合物が挙げられる。但し、X、X、X、およびYは電子吸引基である。好ましくはX、X、及びXは各々独立して炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基又は炭素数が6〜18のパーフルオロアリール基であり、Yはニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基又はシアノ基である。X、X及びXは各々同一であっても、異なっていてもよい。
【0036】
金属陽イオンとしては遷移金属の陽イオンを用いる事ができる。好ましくはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn及びAg金属から選ばれた金属の陽イオンが用いられる。又、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca及びBa金属から選ばれた金属の陽イオンを用いても好ましい結果が得られる。電解質塩化合物として前述の化合物を2種類以上併用することは自由である。Liイオン電池においては電解質塩化合物としては、Li塩化合物が好ましく用いられる。
【0037】
本発明において、電解質塩化合物の使用量は、電解質塩化合物のモル数/ポリエーテル共重合体のエーテル酸素原子の総モル数の値が0.0001〜5が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.5の範囲がよい。
【0038】
本発明では非プロトン性有機溶媒を例えば可塑剤として添加してよい。高分子固体電解質に非プロトン性有機溶媒を混入すると、ポリマーの結晶化が抑制されガラス転移温度が低下し、低温でも無定形相が多く形成されるためにイオン伝導度が良くなる。非プロトン性有機溶媒は、本発明で使用できる高分子固体電解質と組み合わせることで、内部抵抗の小さい高性能の電池を得るのに適している。本発明の高分子固体電解質は、非プロトン性有機溶媒と組み合わせることでゲル状となってもよい。ここで、ゲルとは溶媒によって膨潤した高分子である。
【0039】
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性のエーテル類及びエステル類が好ましい。具体的には、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、 ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライム、ブチルジグライム、3-メチル−2−オキサゾリドン、テトラヒドロフラン、 2−メチルテトラヒドロフラン、 1,3−ジオキソラン、 4,4-メチル−1 ,3-ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等が挙げられ、中でも、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、 ビニルカーボネート、エチレンカーボネート、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルトリグライム、エチルメチルモノグライムが好ましい。これらの2種以上の混合物を用いても良い。
【0040】
電解質塩化合物および必要な非プロトン性有機溶媒をポリエーテル共重合体に混合する方法に特に制限はないが、電解質塩化合物および必要な非プロトン性有機溶媒を含む溶液にポリエーテル共重合体を長時間浸漬して含浸させる方法、電解質塩化合物および必要な非プロトン性有機溶媒をポリエーテル共重合体へ機械的に混合させる方法、ポリエーテル共重合体および電解質塩化合物を非プロトン性有機溶媒に溶かして混合させる方法あるいはポリエーテル共重合体を一度他の溶媒に溶かした後、非プロトン性有機溶媒を混合させる方法などがある。他の溶媒を使用して製造する場合の他の溶媒としては各種の極性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。他の溶媒は、ポリエーテル共重合体を架橋する前、架橋する間または架橋した後に除去できる。
【0041】
負極材料は、例えば電極材料基板としての金属電極基板と、金属電極基板上に負極活物質、および電解質層と良好なイオンの授受を行い、かつ、導電助剤と負極活物質を金属基板に固定するためのバインダーより構成されている。この場合の金属電極基板には、例えば銅が用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。
【0042】
本発明で使用される負極活物質は、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な構造(多孔質構造)を有する炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等)か、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能なリチウム、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、シリコン系化合物等の金属からなる粉末である。粒子径は10nm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは20nm以上20μm以下である。また、金属と炭素材料との混合活物質として用いてもよい。なお負極活物質にはその気孔率が、70%程度のものを用いることとする。
【0043】
正極材料は、例えば電極材料基板としての金属電極基板と、金属電極基板上に正極活物質、および電解質層と良好なイオンの授受を行い、かつ、導電助剤と正極活物質を金属基板に固定するためのバインダーより構成されている。金属電極基板には、例えばアルミニウムが用いられるが、これに限るものではなく、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等であってもよい。
【0044】
本発明で使用される正極活物質は、AMO2、AM2O4、A2MO3、AMBO4のいずれかの組成からなるアルカリ金属含有複合酸化物粉末である。ここで式中のAは、アルカリ金属であり、好ましくはLiを用いる。Mは主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、Cr、Fe、Tiの少なくとも一種を含んでいる。Mは遷移金属からなるが、遷移金属以外にもAl、Ga、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどが添加されていてもよい。BはP、Siの少なくとも1種を含んでいる。より具体的には、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AM(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMBO(Aはアルカリ金属、BはP、Si、またはその混合物、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)である。なお正極活物質の粒子径には50μm以下が好ましく、更に好ましくは20μm以下のものを用いる。これらの活物質は、3V(vs. Li/Li+)以上の起電力を有するものである。
【0045】
正極活物質の好ましい具体例としては、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixFeO2, LixCoaMn1-aO2, LixCoaNi1-aO2, LixCoaCr1-aO2, LixCoaFe1-aO2, LixCoaTi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixMnaCr1-aO2, LixMnaFe1-aO2, LixMnaTi1-aO2, LixNiaCr1-aO2, LixNiaFe1-aO2, LixNiaTi1-aO2, LixCraFe1-aO2, LixCraTi1-aO2, LixFeaTi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixCrbMncNi1-b-cO2, LixFebMncNi1-b-cO2, LixTibMncNi1-b-cO2, LixMn2O4, LixMndCo2-dO4, LixMndNi2-dO4, LixMndCr2-dO4, LixMndFe2-dO4, LixMndTi2-dO4, LiyMnO3, LiyMneCo1-eO3, LiyMneNi1-eO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixCofMn1-fPO4, LixCofNi1-fPO4, LixCofFe1-fPO4, LixMnfNi1-fPO4, LixMnfFe1-fPO4, LixNifFe1-fPO4,LiyCoSiO4, LiyMnSiO4, LiyNiSiO4, LiyFeSiO4, LiyCogMn1-gSiO4, LiyCogNi1-gSiO4, LiyCogFe1-gSiO4, LiyMngNi1-gSiO4, LiyMngFe1-gSiO4, LiyNigFe1-gSiO4, LiyCoPhSi1-hO4, LiyMnPhSi1-hO4, LiyNiPhSi1-hO4, LiyFePhSi1-hO4, LiyCogMn1-gPhSi1-hO4, LiyCogNi1-gPhSi1-hO4, LiyCogFe1-gPhSi1-hO4, LiyMngNi1-gPhSi1-hO4, LiyMngFe1-gPhSi1-hO4, LiyNigFe1-gPhSi1-hO4などのリチウム含有複合酸化物をあげることができる。(ここで、x=0.01〜1.2, y=0.01〜2.2, a=0.01〜0.99, b=0.01〜0.98, c=0.01〜0.98但し、b+c=0.02〜0.99, d=1.49〜1.99, e=0.01〜0.99, f=0.01〜0.99, g=0.01〜0.99, h=0.01〜0.99である。)
【0046】
また、前記好ましい正極活物質のうち、より好ましい正極活物質としては、具体的には、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixCoaNi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixMn2O4, LiyMnO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixMnfFe1-fPO4, をあげることができる。(ここで、x=0.01〜1.2, y=0.01〜2.2, a=0.01〜0.99, b=0.01〜0.98, c=0.01〜0.98但し、b+c=0.02〜0.99, d=1.49〜1.99, e=0.01〜0.99, f=0.01〜0.99である。なお、上記のx, yの値は充放電によって増減する。)
【0047】
負極活物質粉末や正極活物質粉末等の金属電極基板への形成は、ドクターブレード法やシルクスクリーン法などにより行われる。
【0048】
例えばドクターブレード法では、負極活物質粉末や正極活物質粉末等をn−メチルピロリドン等の有機溶剤に分散してスラリー状にし、金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤を除去するため、例えば80℃真空状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極材が製造される。
【0049】
その後、電極材料の主表面に高分子固体電解質を例えばドクターブレード法などを用いて塗布する。高分子固体電解質は、その粘度に応じてアセトニトリル等の溶剤と混合し、適切な粘度に調整したのち塗布し、必要に応じて静置し、多孔質部分に高分子固体電解質を含浸させ、これを加熱乾繰させてもよい。塗布時の高分子固体電解質もしくは高分子固体電解質溶液の粘度は10〜50000 mPa・sが好ましく、更に好ましくは100〜20000mPa・sである。また、溶剤乾燥後の塗布層(高分子固体電解質)の厚みは400μm以下が好ましく、更に好ましくは200μm以下である。
【0050】
高分子固体電解質を塗布した負極電極および正極電極を重ね合わせることで非水電解質二次電池が組み上げられる。この際、塗布した高分子固体電解質の厚み、あるいは機械的強度が不十分な場合、電極材間に更に高分子固体電解質膜を導入してもよい。
【0051】
なお、負極材料または正極材料のみの特性を評価する際には、対極にリチウムシートを用いることで、電極材料の可逆性を評価できる。また、正極材料と負極材料の組み合わせ評価の場合には、リチウムシートを用いず、正極材料とシリコン系負極材料との組み合わせが用いられる。
【0052】
本発明の非水電解質二次電池の製造方法として、
(A)式(1):
【化7】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] で示される単量体、および
式(2):
【化8】

で示される単量体を重合させて、ポリエーテル共重合体を得る工程と、
(B)前記ポリエーテル共重合体、光反応開始剤および電解質塩化合物からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を、負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面に塗布する工程と、
(C)高分子固体電解質用組成物を架橋する工程
を含む非水電解質二次電池の製造方法を例示できる。
【0053】
重合工程(A)においては、上記式(1)および式(2)で示される単量体を重合させてポリエーテル共重合体を得る。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにKを含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各モノマーを溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル共重合体が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0054】
塗布工程(B)においては、ポリエーテル共重合体、光反応開始剤および電解質塩化合物を混合して、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を得て、得られた高分子固体電解質用組成物を、負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面に塗布する。
塗布工程(B)では、負極材料または正極材料の一方における1つの主表面に高分子固体電解質用組成物を塗布してもよく、また、負極材料または正極材料の両方の主表面に高分子固体電解質組成物を塗布してもよい。
【0055】
負極材料または正極材料の一方における1つの主表面に高分子固体電解質用組成物を塗布し、負極材料または正極材料の他方における1つの主表面に高分子固体電解質用組成物における少なくとも1つの成分(ただし、光反応開始剤を除く)を塗布してもよい。例えば、負極材料に高分子固体電解質用組成物を塗布し、正極材料に共重合体のみ、電解質塩化合物のみ、または共重合体と電解質塩化合物との組合せを塗布してもよく、特に好ましくは共重合体と電解質塩化合物との組合せを塗布してもよい。
【0056】
架橋工程(C)において、塗布した高分子固体電解質用組成物を架橋させて、高分子固体電解質の層を電極材料の上に形成させる。架橋は、非プロトン性有機溶媒の存在下または不存在下に、活性エネルギー線を照射することによって行える。活性エネルギー線の具体例は、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線である。
架橋工程(C)により高分子固体電解質を形成した後に、負極材料/高分子固体電解質/正極材料の構成の非水電解質二次電池を得る。
【0057】
本発明において、高分子固体電解質のフィルムを電極材料に適用することによって電池を製造しても良い。高分子固体電解質のフィルムは、高分子固体電解質用組成物を製造し、高分子固体電解質用組成物を例えば剥離シートに塗布し、剥離シート上で架橋させ、剥離シートから剥離することによって製造することができる。
【0058】
以下に例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、発明の主旨を越えない限り本発明は以下に記載する実施例に限定されるものではない。
【0059】
本実施例では、負極材料と、非水電解質と、正極材料とからなる非水電解質二次電池において、クーロン効率、可逆容量、サイクル性能を比較するために以下の実験を行った。
【0060】
実施例
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[合成例(ポリエーテル共重合用触媒の製造)]
撹拌機、温度計及び蒸留装置を備えた3つ口フラスコにトリブチル錫クロライド10g及びトリブチルホスフェート35gを入れ、窒素気流下に撹拌しながら250℃で20分間加熱して留出物を留去させ残留物として固体状の縮合物質を得た。以下の重合例で重合触媒として用いた。
【0062】
ポリエーテル共重合体のモノマー換算組成はH NMRスペクトルにより求めた。
ポリエーテル共重合体の分子量測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を算出した。GPC測定は(株)島津製作所製RID−6A、昭和電工(株)製ショウデックスKD-807、KD-806、KD-806MおよびKD-803カラム、および溶媒にDMFを用いて60℃で行った。
【0063】
[重合例1]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a):
【化9】

150g、及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド150gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー280gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0064】
[重合例2]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したプロピレンオキシド75g、及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、プロピレンオキシドの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド150gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー210gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0065】
[重合例3]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a)150g、アリルグリシジルエーテル 30g、及び溶媒としてn−ヘキサン1000gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド150gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー290gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0066】
[重合例4]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したアリルグリシジルエーテル 65g 及び溶媒としてn−ヘキサン 1000gを仕込み、エチレンオキシド 150g はアリルグリシジルエーテルの重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、逐次添加した。重合反応はメタノールで停止した。デカンテーションによりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー 255gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0067】
[重合例5]
内容量3Lのガラス製4つ口フラスコの内部を窒素置換し、これに重合触媒として触媒の合成例で示した縮合物質1gと水分10ppm以下に調整したグリシジルエーテル化合物(a)75g、連鎖移動剤としてエチレングリコールモノメチルエーテル0.5g、及び溶媒としてトルエン500gを仕込み、化合物(a)の重合率をガスクロマトグラフィーで追跡しながら、エチレンオキシド150gを逐次添加した。このときの重合温度は20℃とし、10時間反応を行った。重合反応はメタノールを1mL加え反応を停止した。2000gのn−ヘキサンに反応溶液を注ぎ、デカンテーションならびに洗浄によりポリマーを取り出した後、常圧下40℃で24時間、更に減圧下45℃で10時間乾燥してポリマー200gを得た。得られたポリエーテル共重合体の重量平均分子量およびモノマー換算組成分析結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例1] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
負極活物質には、平均粒径12μmのグラファイト粉末(多孔質構造材料)を用いた。この負極活物質10.0gに対して、導電助剤として2000℃以上で合成した炭素繊維(VGCF)を0.5g、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを1.0g添加し、n−メチルピロリドンを溶媒としてステンレスボールミルを用いて、1時間攪拌したのち、銅集電体上に50μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして負極シートとした。
また、重合例1で得たポリエーテル共重合体1.0g、光反応開始剤ベンゾフェノン0.005g、かつモル比(電解質塩化合物のモル数)/(共重合体のエーテル酸素原子の総モル数)が0.05となるようにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムをアセトニトリル10mlに溶解したものを、上記の負極シート上に500μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、そのまま80℃に加熱して負極シート内に高分子電解質組成物をよく含浸させ、かつ乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、(株)GSユアサ製の高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することにより架橋し、負極シート上に高分子電解質が一体化された負極/電解質シートを作製した。
アルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、対極として金属リチウムを貼り合わせて、試験用2032型コイン電池を組み立てた。電気化学特性は北斗電工(株)製の充放電装置を用い、8時間で所定の充電、および放電が行える試験条件(C/8)にて2.5 V上限、0 Vを下限とし、一定電流通電によりグラファイト負極の評価をした。試験温度は60℃環境とした。試験結果を表2に示す。
【0070】
[実施例2] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
重合例1で得たポリエーテル共重合体の代わりに重合例2で得たポリエーテル共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法で負極/電解質シートを作製した。これに対極として金属リチウムを貼り合わせてコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0071】
[実施例3] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
負極/電解質シートの作製時にアセトニトリル溶液にメチルテトラグライム0.2gを加えた以外は実施例2と同様の方法で負極/電解質シートを作製した。これに対極として金属リチウムを貼り合わせてコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0072】
[比較例1] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
高分子電解質前駆体のアセトニトリル溶液の調製時に架橋助剤N,N'−m−フェニレンビスマレイミド0.05gを追加した以外は実施例1と同様の方法でコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0073】
[比較例2] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
重合例1で得たポリエーテル共重合体の代わりに重合例3で得たポリエーテル共重合体を用いた以外は比較例1と同様の方法でコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0074】
[比較例3] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
重合例1で得たポリエーテル共重合体の代わりに重合例4で得たポリエーテル共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法でコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0075】
[比較例4] 負極材料/高分子固体電解質/金属リチウムで構成された電池の作製
重合例1で得たポリエーテル共重合体の代わりに重合例5で得たポリエーテル共重合体を用いた以外は実施例1と同様の方法でコイン電池を作製し、グラファイト負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
[実施例4] 負極材料/高分子固体電解質/正極材料で構成された電池の作製
正極活物質には、平均粒子径20μm以下のLiCo1/3Mnc1/3Ni1/3O2を用いた。この正極活物質に10.0gに対して、導電助剤としてアセチレンの熱分解によって製造された球状炭素微粒子を0.6g、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを1.2g添加し、n−メチルピロリドンを溶媒としてステンレスボールミルを用いて1時間攪拌したのち、アルミニウム集電体上に100μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、80℃真空状態で12時間以上乾繰後、ロールプレスして正極シートとした。
また、重合例2で得たポリエーテル共重合体1.0g、光反応開始剤ベンゾフェノン0.005g、かつモル比(電解質塩化合物のモル数)/(共重合体のエーテル酸素原子の総モル数)が0.05となるようにホウフッ化リチウムをアセトニトリル10mlに溶解したものを、上記の正極シート上に500μmギャップのバーコーターを用いて塗布し、そのまま80℃に加熱して正極シート内に高分子電解質組成物をよく含浸させ、かつ乾燥させたのち、電解質表面をラミネートフィルムでカバーした状態で、高圧水銀灯(30mW/cm)を30秒間照射することにより架橋し、正極シート上に高分子電解質が一体化された正極/電解質シートを作製した。
このシートをアルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、実施例2で得られた負極/電解質シートを対極として貼り合わせてコイン電池を組み立てた。電気化学特性は充放電装置を用い、8時間で所定の充電、および放電が行える試験条件(C/8)にて4.2 V上限、2.5Vを下限とし、一定電流通電により正極・負極の評価をした。試験温度は60℃環境とした。試験結果を表3に示す。
【0078】
[比較例5] 負極材料/高分子固体電解質/正極材料で構成された電池の作製
重合例2で得たポリエーテル共重合体の代わりに重合例4で得たポリエーテル共重合体を用いた以外は実施例4と同様の方法でコイン電池を作製し、正極・負極の電気化学特性を評価した。試験結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の非水電解質二次電池は高容量で、かつ、サイクル充放電特性に優れている。本発明の電池は定置型、ロードレベリング用電池として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(1):
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] で示される単量体から誘導される繰り返し単位5〜95モル%、および
式(2):
【化2】

で示される単量体から誘導される繰り返し単位95〜5モル%を有する重量平均分子量が10〜10の範囲内であるポリエーテル共重合体、
および
(ii)光反応開始剤
(iii)電解質塩化合物
からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を架橋して得られる架橋高分子固体電解質によって負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面が覆われており、少なくとも負極材料は多孔質構造材料を含有していることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記負極材料および前記正極材料のうち少なくともどちらかの電極上に、高分子固体電解質を塗布する工程で作製されることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記高分子固体電解質用組成物は、少なくとも1種以上のポリエーテル共重合体の混合物であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記電解質塩化合物がリチウム塩化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記高分子固体電解質用組成物に非プロトン性有機溶媒が更に添加されたことを特徴とする請求項1〜4のいずかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記非プロトン性有機溶媒がエーテル類およびエステル類からなる群より選ばれることを特徴とする請求項5に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記負極材料は、負極活物質と導電助剤と結着剤との混合物からなり、その負極活物質は、リチウム、カーボン、シリコン系化合物、スズ系化合物、アルミニウム系化合物のうちの1種、あるいは2種以上の混合物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記正極材料は、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AM(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMO(Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)、AMBO(Aはアルカリ金属、BはP、Si、またはその混合物、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい)のいずれかの組成からなることを特徴とする請求項1〜7のいずかに記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
(A)式(1):
【化3】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または−CHO(CR)である。R、R、Rは水素原子または−CHO(CHCHO)であり、nおよびRはR、R、Rの間で異なっていても良い。Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは0〜12の整数である。] で示される単量体、および
式(2):
【化4】

で示される単量体を重合させて、ポリエーテル共重合体を得る工程と、
(B)前記ポリエーテル共重合体、光反応開始剤および電解質塩化合物からなり、架橋助剤を含まない高分子固体電解質用組成物を、負極材料および正極材料の一方または両方における少なくとも1つの主表面に塗布する工程と、
(C)高分子固体電解質用組成物を架橋する工程
を含む非水電解質二次電池の製造方法。

【公開番号】特開2012−104263(P2012−104263A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249500(P2010−249500)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】