説明

非水電解質電池

【課題】安全性と、内部短絡及びデンドライトによる短絡に対する信頼性とに優れ、且つ高温貯蔵時の特性低下を抑制できる非水電解質電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水電解質電池は、正極、負極、セパレータ及び非水電解質を含み、前記正極及び前記負極から選ばれる少なくとも一方の表面に多孔質層が配置され、前記多孔質層は、下記一般式(1)で示されるポリアミン基を表面に備えた微粒子を含み、前記ポリアミン基の含有量が、前記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%であることを特徴とする。
〔−(CH2CH2NH)n−〕 (1)
但し、前記一般式(1)において、nは2〜30の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性、信頼性に優れ、且つ高温貯蔵時の性能低下を抑制できる非水電解質電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質電池の一種であるリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、リチウムイオン二次電池の安全性、信頼性の確保が重要となっている。また、リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度という特徴を活かして、自動車、バイク、自転車などの車載用途にも適用が進められており、車載用途に関しても、安全性、信頼性の確保は重要な課題となっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、単セルあたりの電位が他の電池に比べて高いという特徴を持っている反面、金属性の混入異物などがあった場合、電池内で異物の溶解析出が起こり、負極で析出した金属が成長してセパレータを突き破り短絡するという危険性を持っている。
【0004】
また、従来から一般的に用いられているリチウムイオン二次電池は、LiCoO2に代表される層状構造のリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用い、グラファイト、非晶質黒鉛などの炭素材料を負極活物質に用い、LiPF6などのリチウム塩をエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類に溶解した非水電解液を電解質に用い、ポリオレフィンの微多孔膜をセパレータに用いた構成が一般的であった。近年、熱安定性を高めて安全性を確保したり、より高い電位で作動させてエネルギー密度を高めたりするために、LiMn24に代表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物や、LiMnqNirCoS2(q+r+s=1)で代表される層状化合物などが用いられるようになってきた。
【0005】
しかしながら、これらMnを含有する複合酸化物を正極に用いた場合、特に高温状態で正極からMnイオンが溶出し、正極の容量低下を招いたり、更には溶出したMnが負極に析出して負極の劣化を招いたり、電解液と反応してガス発生を起こしたりして、充放電にかかわる以外の副反応が起こることが知られている。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1、特許文献2などに示されたような、置換元素を用いてMn含有活物質の安定化を図り、Mnなどの金属溶出を抑制する試みがなされているが、上記に記載した副反応を完全に抑制することはできていない。
【0007】
また、特許文献3、特許文献4などには、混入した異物や正極から溶出した金属イオンを負極に到達する前に吸着する試みも行われている。
【0008】
しかしながら、置換元素を用いた活物質の変性は、金属溶出に対してある程度の効果があるものの、金属溶出を完全に抑制することができず、また、置換元素により充放電に用いることのできる容量が減少するというデメリットがある。
【0009】
また、金属イオンを電池内で吸着する方法として、特許文献3に示されたような、負極、セパレータ、電解質の少なくともいずれかにキレート化剤を含有させる方法では、添加したキレート化剤が正極や負極における酸化還元反応によって副反応を引き起こし、電池特性を劣化させるという問題がある。
【0010】
また、特許文献4では、酸化還元の影響を比較的受けにくいセパレータに、キレート化合物を含有させる方法が提案されているが、キレート化合物の特性基としてイミノジ酢酸基を用いているため、電池中のリチウムイオンを吸着してしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−30709号公報
【特許文献2】特開平11−339803号公報
【特許文献3】特開平11−121012号公報
【特許文献4】特開2009−87929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、安全性と、内部短絡及びデンドライトによる短絡に対する信頼性とに優れ、且つ高温貯蔵時の特性低下を抑制できる非水電解質電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の非水電解質電池は、正極、負極、セパレータ及び非水電解質を含む非水電解質電池であって、前記正極及び前記負極から選ばれる少なくとも一方の表面に多孔質層が配置され、前記多孔質層は、下記一般式(1)で示されるポリアミン基を表面に備えた微粒子を含み、前記ポリアミン基の含有量が、前記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%であることを特徴とする。
【0014】
〔−(CH2CH2NH)n−〕 (1)
但し、前記一般式(1)において、nは2〜30の整数である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全性と、内部短絡及びデンドライトによる短絡に対する信頼性とに優れ、且つ高温貯蔵時の特性低下を抑制できる非水電解質電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の非水電解質電池(リチウムイオン二次電池)の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の非水電解質電池は、正極、負極、セパレータ及び非水電解質を備えている。また、上記正極及び上記負極から選ばれる少なくとも一方の表面には多孔質層が配置され、上記多孔質層は、下記一般式(1)で示されるポリアミン基を表面に備えた微粒子を含み、上記ポリアミン基の含有量は、上記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%であることを特徴とする
〔−(CH2CH2NH)n−〕 (1)
但し、上記一般式(1)において、nは2〜30の整数である。
【0018】
非水電解質電池の電極上にポリアミン基を含んだ微粒子を含む多孔質層を存在させることにより、電解液中に溶出した金属イオンを効果的にトラップすることが可能である。上記多孔質層は、電極の少なくとも片面に配置されていればよいが、電極の両面に配置されていてもよい。また、正極のみに配置されていてもよく、負極のみに配置されてもよく、更に正極及び負極の両方に配置されてもよい。
【0019】
非水電解質電池の中でも、特に充電が可能であるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池では、不純物や、正極活物質などから電解液中に溶出した金属イオンが負極表面で析出することで電池性能の低下、内部短絡の要因になりやすい。上記多孔質層により、特に、正極活物質に主成分として用いられているNi、Co、Mn、あるいは、不純物として混入する可能性の高いFe、Zn、Cuなどを効果的にトラップでき、且つ、電池の充放電に関与するLiをトラップしない特性を有している。
【0020】
本発明の非水電解質電池には、一次電池と二次電池とが含まれるが、以下では、特に主要な態様である二次電池(リチウムイオン二次電池)の構成について説明する。
【0021】
<多孔質層>
上記多孔質層は、下記一般式(1)で示されるポリアミン基を表面に備えた微粒子を含み、上記ポリアミン基の含有量は、上記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%である。
【0022】
〔−(CH2CH2NH)n−〕 (1)
但し、上記一般式(1)において、nは2〜30の整数である。
【0023】
上記微粒子が、上記一般式(1)に記載されたポリアミン基を有することで、非水電解液中に溶出した金属イオンを効果的に吸着することが可能である。非水電解質電池、特に充電が可能であるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池では、不純物や、正極活物質などから電解液中に溶出した金属イオンが負極表面で析出することで電池性能の低下、内部短絡の要因になりやすい。特に、正極活物質に主成分として用いられているNi、Co、Mn、あるいは、不純物として混入する可能性の高いFe、Zn、Cuなどを効果的に吸着して固定化することが望ましい。上記一般式(1)に示されるポリアミン基は、遷移金属、重金属を吸着する能力に優れるため、上記の電池性能の低下及び内部短絡を確実に抑制できる。
【0024】
一般式(1)中のnは、1以下となると、金属イオンを吸着する能力が充分に発揮しないため、2以上とする必要があり、更に好ましくは3以上である。また、nが30を超えるとポリアミン基の合成が困難となるため、30以下とする必要があり、17以下がより好ましい。
【0025】
また、上記ポリアミン基の含有量は、上記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%である。上記微粒子に一般式(1)に示されたポリアミン基を含有させる際、微粒子に対して、多量に含有させると電池の充放電に関与するLiを吸着する虞があるため、上記ポリアミン基の含有量は、上記微粒子の全重量に対して、0.99重量%以下とする必要があり、0.7重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。一方、微粒子に対して、ポリアミン基の含有量が少ないと、金属イオンを吸着する能力が充分に発揮しないため、上記ポリアミン基の含有量は、上記微粒子の全重量に対して、0.20重量%以上であることが必要であり、0.3重量%以上であることが好ましい。
【0026】
上記微粒子のポリアミン基の含有量を測定する方法は特に限定されないが、例えば、液体クロマトグラフィーを用いて微粒子の組成解析を行うことにより測定する方法、熱重量分析などの測定により得られる熱重量分析重量減少率から、微粒子の表面に導入されたポリアミン基の含有量を測定する方法などを用いることができ、熱重量分析測定が好ましく用いられる。
【0027】
上記熱重量分析による熱重量分析重量減少率は、微粒子の表面に導入されたポリアミン基の含有量(含有率)となる。より具体的には、熱重量分析重量減少率は、熱重量分析前に、純水を用いて微粒子(測定試料)を洗浄し、60℃で真空乾燥した後、その測定試料の重量に対して、700℃まで昇温して行った熱重量分析において生じる、微粒子表面に結合しているポリアミン基の脱着や燃焼などによって生じる重量減少量の割合であり、下記式(2)により求められる。
【0028】
熱重量分析重量減少率(%)=100×a/b (2)
上記式(2)において、aは熱重量分析おいて700℃まで昇温した際の測定試料の重量減少量であり、bは熱重量分析前における測定試料の重量である。
【0029】
熱重量分析の際の条件などは特に限定されず、前処理や昇温速度などについては、通常の条件を採用すればよい。測定装置としては、例えば、リガク社製のTG測定装置「TG8120」などを使用することができる。
【0030】
上記微粒子としては、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後述する非水電解液や、多孔質層形成用組成物(溶媒を含む組成物)に用いる溶媒に安定であり、高温状態で非水電解液に溶解しないものであれば、特に制限はなく、用いる微粒子としては、無機微粒子又は樹脂微粒子から選択される少なくとも1種を使用できる。
【0031】
上記無機微粒子としては、例えば、酸化鉄、SiO2(シリカ)、Al23(アルミナ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2などの酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質又はそれらの人造物;などの電気絶縁性微粒子が挙げられる。また、金属微粒子;SnO2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子;などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記電気絶縁性微粒子を構成する材料など)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。上記無機微粒子には、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機微粒子の材質としては、シリカ、アルミナ、ベーマイトがより好ましく、ベーマイトが特に好ましい。
【0032】
上記樹脂微粒子の材質としては、電気絶縁性を有しており、非水電解液に対して安定であり、更に、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料が好ましく、そのような材料としては、例えば、樹脂架橋体が挙げられる。より具体的には、スチレン樹脂〔ポリスチレン(PS)など〕、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)など〕、ポリアルキレンオキシド〔ポリエチレンオキシド(PEO)など〕、フッ素樹脂〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;ポリウレタン;などが例示できる。樹脂微粒子には、上記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂微粒子は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤などを含有していても構わない。
【0033】
上記樹脂微粒子の材質の中では、スチレン樹脂架橋体、アクリル樹脂架橋体及びフッ素樹脂架橋体が好ましく、架橋PMMAが特に好ましく用いられる。
【0034】
上記微粒子は、粒径が大きすぎると、多孔質層を薄く形成することが難しくなり、また、リチウムイオンの運動の障害となって電池の出力密度の向上効果が小さくなる虞があることから、その平均粒子径は、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。一方、上記微粒子が小さすぎると、その表面積が大きくなるため、多孔質層中での微粒子の分散性が低下し、微粒子の付着水が増加して、電池内の水分量の制御が困難となる。電池内の水分量が多くなると、電池特性が低下する虞がある。よって、こうした問題の発生を抑えて、良好な特性の電池を構成し得るようにする観点から、上記微粒子の平均粒子径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0035】
本明細書でいう微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、微粒子を膨潤させたり溶解させたりしない媒体(例えば水)に分散させて測定した体積基準の積算分率における50%での粒径(D50)である。
【0036】
ポリアミン基を上記微粒子の表面に導入する方法は、特に限定されないが、例えば、官能基結合剤により、ポリアミン基を微粒子に結合する方法が採用できる。官能基結合剤としては、ポリアミン基を含むシランカップリング剤、ポリアミン基を含むチタネートカップリング剤、ポリアミン基を含むアルミネートカップリング剤などを使用できるが、使用方法が容易で、結合力の強いポリアミン基の導入が可能な、ポリアミン基を含むシランカップリング剤が好ましい。
【0037】
ポリアミン基を含むシランカップリング剤としては、例えば、(CH3O)3SiCH2CHCH2NH(CH22NH2、(CH3O)3SiCH2PhCH2CH2NH(CH22NH2〔但し、Phはフェニル基を示す。〕、(CH3O)3Si(CH211NH(CH22NH2、(CH3O)3Si(CH23NH(CH22NH2、(CH3O)3Si(CH23NH(CH22NH(CH22NH2、[(CH3O)3Si(CH23−NH(Cl)−(CH22]n−[NH(CH22]4nなどを使用できる。
【0038】
上記シランカップリング剤を用いて上記微粒子の表面にポリアミン基を導入する方法としては、例えば、上記の微粒子とシランカップリング剤とを混合・分散させ、60〜80℃の温度で乾燥させた後、更に110〜130℃で乾燥させる方法を採用できる。
【0039】
上記ポリアミン基を表面に備えた微粒子を含む多孔質層は、微粒子同士を結着したり、多孔質層と電極とを接着したりする目的で、バインダを含有させることが好ましい。上記バインダとしては、多孔質層の構成成分同士を良好に接着でき、電気化学的に安定で、更に非水電解液に対して安定であれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35mol%のもの)、アクリレート共重合体、フッ素系ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)などの樹脂が挙げられ、また、これらの樹脂の一部に、非水電解液への溶解を防止するために架橋構造を導入したものも用いることができる。これらのバインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、架橋構造を有するアクリレート共重合体が好ましく、PNVAが特に好ましい。
【0040】
上記多孔質層におけるバインダの量は、バインダの使用による多孔質層と電極との接着性向上効果や、微粒子同士の接着性向上効果をより良好に確保する観点から、多孔質層の構成成分の全体積(空孔部分の体積を除く全体積。以下同じ。)に対して、1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましい。但し、多孔質層において、バインダの量が多すぎると、多孔質層の空孔が塞がれて、負荷特性に代表される電池特性が低下する虞がある。よって、多孔質層におけるバインダの量は、多孔質層の構成成分の全体積に対して、20体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。
【0041】
上記多孔質層の厚さは、混入した異物や正極から溶出した金属イオンを吸着し、内部短絡を防止して電池の信頼性を高める観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上であることがより好ましい。但し、多孔質層の厚さが厚すぎると、充放電に関与するLiを吸着する虞があるため、多孔質層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0042】
上記多孔質層は、上記ポリアミン基を含む微粒子及びバインダなどを、水や有機溶媒といった媒体に分散させてスラリー状やペースト状の多孔質層形成用組成物(バインダは、媒体に溶解していてもよい。)を調製し、この多孔質層形成用組成物を電極(正極、負極)の表面に塗布し、乾燥する方法により製造することができる。
【0043】
上記電極の表面への多孔質層形成用組成物の塗布は、例えば、多孔質層形成用組成物を公知の塗工装置により塗布する方法によって実施することができ、塗布する際に使用できる塗工装置としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、リバースロールコーター、ダイコーターなどが挙げられる。
【0044】
上記多孔質層形成用組成物に用いられる媒体は、微粒子などを均一に分散でき、また、バインダを均一に溶解又は分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般的な有機溶媒が好適に用いられる。更に、これらの媒体に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、又は、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、バインダが水溶性である場合、又はバインダをエマルジョンとして使用する場合などでは、前述の通り水を媒体としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)や各種界面活性剤を適宜加えて界面張力を制御することもできる
上記多孔質層形成用組成物は、その固形分含量を、例えば10〜80重量%とすることが好ましい。
【0045】
後述する一般式(3)において、mを多孔質層の単位面積あたりの重量(g/cm2)とし、tを多孔質層の厚み(cm)とすることで、一般式(3)を用いて多孔質層の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる多孔質層の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
【0046】
<正極>
上記正極としては、従来公知の非水電解質電池に用いられている正極であれば特に制限はない。例えば、正極活物質として、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mnなど)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物;LiMn24などのリチウムマンガン酸化物;LiMn24のMnの一部を他元素で置換したLiMnx(1-x)2;オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe);LiMn0.5Ni0.52;Li(1+a)MnxNiyCo(1-x-y)2(−0.1<a<0.1、0<x<0.5、0<y<0.5);などを適用することが可能である。正極は、これらの正極活物質に公知の導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やバインダ〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕などを適宜添加した正極合剤を、集電体を芯材として成形体に仕上げたものなどを用いることができる。
【0047】
上記正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0048】
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。但し、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0049】
<負極>
上記負極としては、従来公知の非水電解質電池に用いられている負極であれば特に制限はない。例えば、負極活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種又は2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素及びその合金、リチウム含有窒化物又はリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。負極は、これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる他、上記の各種合金やリチウム金属の箔を単独で用いてもよく、また、上記の各種合金やリチウム金属を集電体上に積層したものを用いてもよい。
【0050】
上記負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが好ましい。
【0051】
負極側のリード部も、正極側のリード部と同様に、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極剤層(負極活物質を有する層)を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。但し、この負極側のリード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0052】
<セパレータ>
上記セパレータとしては、ポリオレフィンからなる樹脂膜を使用できる。上記樹脂膜を構成するポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィン製の樹脂膜は、従来から知られている溶剤抽出法や、乾式又は湿式延伸法などにより形成された孔を多数有するイオン透過性の多孔質膜(電池のセパレータとして汎用されている微多孔膜)を用いることができ、例えば、PP上にPEを介してPPを積層させた3層で構成されたポリオレフィン製の樹脂膜が挙げられる。これらのポリオレフィンは、日本工業規格(JIS)K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が80〜180℃の熱可塑性樹脂であり、セパレータが、このようなポリオレフィンで構成された樹脂膜を有していることで、80〜150℃でポリオレフィンが軟化してセパレータの空孔が閉塞される、いわゆるシャットダウン特性を確保することができる。
【0053】
また、上記シャットダウン特性とは高温時においてポリオレフィンが軟化してセパレータの空孔が閉塞されイオン透過性が減少して、正極−負極間を流れる電流値が減少し、高温時においての電池の安全性が確保できる特性である。ポリオレフィンの融点が低すぎると正常時の電池特性の低下を引き起こす虞があるため、樹脂膜に使用するポリオレフィンの融解温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、ポリオレフィンの融解温度が高すぎると、電池の異常発熱時にシャットダウンが追いつかなくなるため、ポリオレフィンの融解温度は150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0054】
上記樹脂膜は、ポリオレフィン以外の樹脂を含んでもよいが、シャットダウン特性をより良好に確保する観点から、ポリオレフィン以外の樹脂は、樹脂膜を構成する樹脂成分の全体積のうち、50体積%未満であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましい。もちろん、樹脂膜の全てがポリオレフィンで形成されていてもよい。
【0055】
上記セパレータの厚さは、電池のシャットダウン特性を良好に確保する観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、セパレータの厚さを小さくして、電池の容量や出力密度をより向上させる観点から、セパレータの厚さは、35μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0056】
上記セパレータの空孔率としては、非水電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0057】
セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚さ、面積あたりの重量、構成成分の密度から、下記一般式(3)を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
【0058】
P=100−(Σai/ρi)×(m/t) (3)
上記式(3)において、aiは重量%で表した成分iの比率、ρiは成分iの密度(g/cm3)、mはセパレータの単位面積あたりの重量(g/cm2)、tはセパレータの厚さ(cm)をそれぞれ示す。
【0059】
<非水電解質>
非水電解質としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールサルファイト、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの1種のみからなる有機溶媒、又は2種以上の混合溶媒に、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiCn2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO22〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を示す。〕などのリチウム塩から選ばれる少なくとも1種を溶解させることによって調製した非水電解液が使用される。上記リチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
【0060】
<非水電解質電池>
本発明の非水電解質電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【0061】
本発明の非水電解質電池に用いる電極体としては、上記正極、上記負極及び上記セパレータを介して積層した積層電極体や、更にこの積層電極体を巻回した巻回電極体の形態で用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。但し、下記実施例は本発明を制限するものではない。
【0063】
(実施例1)
<微粒子の表面処理>
水900g中に、微粒子であるベーマイト(二次粒子のD50:2.0μm、比表面積:3m2/g)100gを加え、ポリアミン基を有するシランカップリング剤である(3-trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine(前述の一般式(1)のn:3)を、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.21重量%となるように添加し、ボールミルで24時間混合・分散させ、その後、80℃で5時間乾燥させ、更に120℃で15時間真空乾燥を行い、ポリアミン基を表面に備えた微粒子(以下、ポリアミン基付微粒子という。)を得た。
【0064】
<多孔質層形成用組成物>
水600g中に、上記ポリアミン基付微粒子500gと、バインダであるブチルアクリレート−アクリル酸共重合体:7.5gとを、スリーワンモーターを用いて1時間攪拌させて分散させ、均一な多孔質層形成用組成物を調製した。
【0065】
<正極の作製>
正極活物質であるLiMn24:92重量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:4重量部と、分散剤であるポリビニルピロリドン0.3重量部とを混合し、ここに、バインダとして3.7重量部のPVDFを含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を加え、よく混練して正極合剤含有スラリーを調製した。次に、正極集電体となる厚さが10μmのアルミニウム箔の片面に、乾燥後の正極合剤層の重量が、正極集電体の片面あたり18.3mg/cm2となる量で上記正極合剤含有スラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して正極合剤層を形成した。上記正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布部分を形成した。上記正極合剤層の厚さは、集電体(アルミニウム箔)の片面あたり、70μmであった。
【0066】
次に、上記正極の正極合剤層の上に先に調製した多孔質層形成用組成物を、ダイコーターを用いて、乾燥後の厚さが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して多孔質層付正極を作製した。
【0067】
続いて、上記正極を、正極合剤層の大きさが41mm×25.5mmで、且つアルミニウム箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのアルミニウム製リード片を、アルミニウム箔の露出部に溶接した。
【0068】
<負極の作製>
負極活物質である天然黒鉛:97.8重量部と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース:1.2重量部とを混合し、ここに、バインダとして1重量部のスチレン−ブタジエンゴムを含むNMP溶液を加え、よく混練して負極合剤含有スラリーを調製した。次に、負極集電体となる厚さ10μmの圧延銅箔の片面に、乾燥後の負極合剤層の重量が、負極集電体の片面あたり6.2mg/cm2となる量で上記負極合剤含有スラリーを均一に塗布し、その後80℃で乾燥し、更にロールプレス機で圧縮成形して負極合剤層を形成した。上記負極合剤含有スラリーを圧延銅箔に塗布する際には、圧延銅箔の一部が露出するように未塗布部分を形成した。上記負極合剤層の厚さは、集電体(圧延銅箔)の片面あたり、50μmであった。
【0069】
次に、上記負極の負極合剤層の上に先に調製した多孔質層形成用組成物を、ダイコーターを用いて、乾燥後の厚みが5.0μmになるように均一に塗布し、乾燥して多孔質層付負極を作製した。
【0070】
続いて、上記負極を、負極合剤層の大きさが42mm×27mmで、且つ圧延銅箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を、圧延銅箔の露出部に溶接した。
【0071】
<電池の組み立て>
セパレータとして、厚さが16μm、空孔率が45%のPP/PE/PPの3層構造の微多孔膜を用意した。
【0072】
次に、80×80mmのアルミニウムラミネートフィルム上に上記の正極、セパレータ、負極をこの順で重ね合わせて積層した後、イミドテープで仮止めして、積層電極体とした。その後、上記ラミネートフィルムの3辺を熱封止し、60℃で1日真空乾燥を行った。その後、上記ラミネートフィルムの残った1辺から非水電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを2:4:4の体積比で混合した溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させた溶液)を注入した。最後に、残った上記ラミネートフィルムの一辺を真空熱封止して、積層電極体を内部に有するリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は15mAhであった。
【0073】
図1に得られた電池の平面図を示す。図1において、本実施例のリチウムイオン二次電池1は、積層電極体及び非水電解液が、平面視で矩形のアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体2内に収容されている。そして、正極外部端子3及び負極外部端子4が、外装体2の同じ辺から引き出されている。
【0074】
(実施例2)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてN-(2-aminoethyl)-3-aminopropyl-trimethoxysilane(一般式(1)のn:2)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.32重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして正極及び負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0075】
(実施例3)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.42重量%となるようにシランカップリング剤:(3-trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine(一般式(1)中のn:3)を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0076】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0077】
(実施例4)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてtrimethoxysilylpropyl modified polyethylenimine(一般式(1)のn:14〜17)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアイミン基の含有量が0.42重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0078】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0079】
(実施例5)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.05μm、比表面積:120m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてtrimethoxysilylpropyl modified polyethylenimine(一般式(1)のn:14〜17)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.84重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0080】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0081】
(実施例6)
微粒子としてアルミナ(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:14m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてtrimethoxysilylpropyl modified polyethylenimine(一般式(1)のn:14〜17)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.42重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0082】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0083】
(実施例7)
微粒子としてシリカ(二次粒子のD50:0.03μm、比表面積:250m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤として(3-trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine(一般式(1)のn:3)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.42重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0084】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0085】
(比較例1)
正極及び負極に対して多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0086】
(比較例2)
微粒子としてカップリング剤による表面処理を行っていない多面体形状のベーマイト合成品(アスペクト比:1.4、D50:0.6μm、比表面積:3m2/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして正極及び負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0087】
(比較例3)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤として3-aminopropyl-trimethoxysilane(一般式(1)のn:1)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.20重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして正極及び負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0088】
(比較例4)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてtrimethoxysilylpropyl modified polyethylenimine(一般式(1)のn:14〜17)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が1.26重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0089】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0090】
(比較例5)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にポリアミン基を有するシランカップリング剤としてN-(2-aminoethyl)-3-aminopropyl-trimethoxysilane(一般式(1)のn:2)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、ポリアミン基の含有量が0.16重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0091】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0092】
(比較例6)
微粒子としてベーマイト(二次粒子のD50:0.6μm、比表面積:16m2/g)を用い、更にシランカップリング剤としてイミノジ酢酸基を有するN-(trimethoxysilylpropyl)ethylenediamine triacetic acid, trisodium salt(イミノジ酢酸基被覆用試薬)を用い、表面処理後の微粒子の全重量に対して、イミノジ酢酸基の含有量が0.5重量%となるように上記シランカップリング剤を添加した以外は、実施例1と同様にして多孔質層形成用組成物を調製した。
【0093】
次に、上記多孔質層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。また、上記多孔質層形成用組成物を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。また、上記の正極及び負極を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。得られた電池の定格容量は、15mAhであった。
【0094】
表1に実施例1〜7及び比較例1〜6の電池の構成を示す。
【0095】
【表1】

【0096】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜6の電池を用いて下記のとおり特性評価を行った。
【0097】
<電池の信頼性評価>
電池の信頼性評価は、下記のように各電池の容量維持率及び容量回復率を確認することにより行った。
【0098】
先ず、各電池を定格容量に対して、電流値:0.5C及び電圧:4.2Vでの定電流−定電圧充電を行った後、電流値:0.5Cで3.0Vまで定電流放電を行い、初期放電容量を測定した。その後、上記と同様に定電流−定電圧充電を行い、各電池を80℃に設定した恒温槽に24時間貯蔵し、貯蔵後の電池を室温まで冷却した。冷却後の各電池を、上記と同様に定電流放電させて貯蔵直後の放電容量を測定した。次に、電流値:0.5C及び電圧:4.2Vでの定電流−定電圧充電を行った後、電流値:0.5Cで3.0Vまで定電流放電を行い、貯蔵後2サイクル目の放電容量を測定した。
【0099】
以上の結果より、下記式(4)及び(5)により、容量維持率及び容量回復率を算出した。
【0100】
容量維持率(%)=(貯蔵直後の放電容量/初期充電容量)×100 (4)
容量回復率(%)=(貯蔵後2サイクル目の放電容量/初期放電容量)×100(5)
【0101】
以上の結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
表2に示すように、実施例1〜7のリチウムイオン二次電池では、組成が適正な微粒子を使用し、且つ適正な構成の電極を備えているので、比較例1〜6のリチウムイオン二次電池に比べて、容量維持率及び容量回復率の両特性ともに優れており、電池の信頼性が高いことが分かる。一方、比較例1では電極に多孔質層を設けていないため、比較例2及び6ではポリアミン基を有さない微粒子を用いたため、比較例3では一般式(1)中のnが適正でないポリアミン基を有する微粒子を用いたため、比較例4及び5では微粒子に含まれるポリアミン基の含有量が適正ではなかったため、それぞれ電池の信頼性が劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0104】
1 リチウムイオン二次電池
2 外装体
3 正極外部端子
4 負極外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、セパレータ及び非水電解質を含む非水電解質電池であって、
前記正極及び前記負極から選ばれる少なくとも一方の表面に多孔質層が配置され、
前記多孔質層は、下記一般式(1)で示されるポリアミン基を表面に備えた微粒子を含み、
前記ポリアミン基の含有量が、前記微粒子の全重量に対して0.20〜0.99重量%であることを特徴とする非水電解質電池。
〔−(CH2CH2NH)n−〕 (1)
但し、前記一般式(1)において、nは2〜30の整数である。
【請求項2】
前記ポリアミン基は、官能基結合剤により前記微粒子に結合されている請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記官能基結合剤が、ポリアミン基を含むシランカップリング剤である請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記微粒子の平均粒子径が、0.05〜2μmである請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記多孔質層の厚さが、3〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−114983(P2013−114983A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261979(P2011−261979)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】