説明

非溶剤型光硬化型保護膜用樹脂組成物

【課題】 光ディスクなどの被塗工表面に対し、良好で安定な密着性と耐擦傷性とを示し、透明性にも優れた保護膜を形成可能な非溶剤型の光硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光重合開始剤および希釈用モノマーとを含有する非溶剤型光硬化型樹脂組成物において、希釈用モノマーとして、分子内に4つ以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマー10〜40重量%と、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー10〜30重量%とを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトディスク(CD)、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)等の光ディスクの保護膜に好適に用いられる保護膜用樹脂組成物であって、光硬化後に硬化膜中に有機溶剤が残留しない非溶剤型の保護膜用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ディスク表面に良好な耐擦傷性を付与するために、その表面に光硬化性樹脂組成物を塗布し、光硬化させることが行われているが、このような光硬化性樹脂組成物には、その光硬化膜に高い耐擦傷性を付与するために、コロイダルシリカのような無機系微粒子が添加されていた。
【0003】
しかし、光硬化性樹脂組成物に無機系微粒子を配合した場合には、光ディスク用基板に形成されたその硬化膜の平坦性や透明性が低下する等の問題が生ずる。そこで、無機系微粒子に代えて、表面滑性に優れた樹脂膜を与えることのできる樹脂組成物として、フッ素系アクリレートモノマーを50〜90重量%と親水性基を有するアクリレート又はメタクリレート(以下、(メタ)アクリレートと称する)とを配合した光硬化性樹脂組成物(特許文献1参照)や、光硬化型樹脂に非架橋型フッ素系界面活性剤0.01〜3重量%と架橋型フッ素系界面活性剤0.1〜5重量%とを配合した光硬化性のハードコート剤(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−105043号公報
【特許文献2】特開平11−293159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の樹脂組成物には、光ディスクなどの被塗工表面に対する密着性が低いという問題があり、一方、特許文献2記載のハードコート剤の場合、非架橋型フッ素系界面活性が表面に凝集し易くなっているため、ハードコート層の透明性が低下したり、また、表面に凝集し易い非架橋型フッ素系界面活性が拭き取られ易くなっているため、耐擦傷性能が不安定になるという問題があった。更に、その塗工性を向上させるために有機溶剤の使用が想定されており、有機溶剤を使用した場合には、溶剤の揮発のため塗布形状が劣化(例えば、バブルの発生、ダスト付着、スジ・ムラの発生、荒れ形状)作業環境の悪化、有機溶剤回収コストの増大、有機溶剤による被塗工表面荒れが生ずるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、光ディスクなどの被塗工表面に対し、良好で安定な密着性と耐擦傷性とを示し、透明性にも優れた保護膜を形成可能な非溶剤型の光硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光重合開始剤および希釈用モノマーとを含有する非溶剤型光硬化型樹脂組成物において、希釈用モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを特定の配合割合で使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光重合開始剤および希釈用モノマーとを含有する非溶剤型光硬化型樹脂組成物において、希釈用モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマー10〜40重量%と、1又は2官能のアクリル酸エステルモノマー10〜30重量%とを含有することを特徴とする非溶剤型光硬化型樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、上述の非溶剤型光硬化型樹脂組成物の硬化膜が光ディスク用基板に形成されてなる光ディスクを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、有機溶剤を使用することに代えて、反応性の希釈モノマーとして、分子内に4つ以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、1又は2官能のアクリル酸エステルモノマーとを、特定の割合で使用する。従って、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物を、光ディスクなどの被塗工表面に塗工し、光硬化させると、良好で安定な密着性と耐擦傷性とを示し、透明性にも優れた保護膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光重合開始剤および希釈用モノマーとを含有し、希釈用モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを使用する。希釈モノマーを使用することにより、有機溶媒を使用せずとも、非溶剤型光硬化型樹脂組成物の粘度を塗工に適した粘度に調整することができる。ここで、好ましい非溶剤型光硬化型樹脂組成物の粘度は、コーンプレート式粘度計(温度25℃)で好ましくは20〜300mPa・s、より好ましくは30〜100mPa・sである。
【0012】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、非溶剤型光硬化型樹脂組成物の硬度付与のために使用されており、1分子中に少なくとも1つ、好ましくは耐擦傷性を高めるために3個以上、より好ましくは6個の(メタ)アクロイル基を有するものである。
【0013】
このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、CN999(サートマー社、芳香族6官能体)、CN968(サートマー社、脂肪族6官能体)、CN973(サートマー社、芳香族2官能体)等を挙げることができる。
【0014】
非溶剤型光硬化型樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合量は、少なすぎると耐擦傷性の低下を招き、多すぎると高粘度となるので、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは15〜40重量部である。
【0015】
本発明において、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、非溶剤型光硬化型樹脂組成物の架橋密度向上のために使用されている。このような3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセンリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0016】
非溶剤型光硬化型樹脂組成物中の3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、少なすぎると耐擦傷性が低下し、多すぎると硬化収縮性が増大するので、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量部である。
【0017】
本発明において、光重合開始剤は、使用するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーに応じて公知の開始剤の中から適宜選択することができる。中でも、硬化後に着色しない構造の光ラジカル開始剤、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンソイルジフェニルホスフィノキシドなどが挙げられる。光重合開始剤は、必要に応じて、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどの光増感剤と併用することができる。
【0018】
非溶剤型光硬化型樹脂組成物中の光重合開始剤の配合量は、少なすぎると耐擦傷性が低下し、多すぎると硬化収縮性が増大するので、非溶剤型光硬化型樹脂組成物中の重合性化合物100重量部に対し、好ましくは5〜15重量部、より好ましくは8〜12重量部である。
【0019】
本発明において、希釈モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを併用する。ここで、分子内に3個以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、非溶剤型光硬化型樹脂組成物の粘度を調整するとともに、硬化膜に良好な耐擦過性を付与するために用いられている。一方、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーだけを希釈モノマーとして使用した場合には硬化膜の被塗工面に対する密着性が低下するので、耐擦過性と密着性と塗工性のバランスを取るために用いられている。なお、希釈モノマーである(メタ)アクリル酸エステルモノマーの官能基の数を1又は2とした理由は、3を超えると、硬化膜の被塗工面に対する密着性の低下及び液の粘度増大が起こるためである。
【0020】
非溶剤型光硬化型樹脂組成物中の希釈モノマーである分子内に4つ以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの配合量は、前者が好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜30重量%であり、後者が好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。
【0021】
また、希釈モノマーの粘度は特に限定されることはないが、組成物の粘度を調整することにより光ディスク基板表面への塗工性の向上を図る観点からは、当該組成物の粘度より小さいことが好ましく、具体的には、コーンプレート式粘度計(温度25℃)で好ましくは15〜20mPa・s、より好ましくは15〜10mPa・sである。
【0022】
反応性の希釈モノマーとして使用する分子内に4つ以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例としては、トリフルオロエチルトリアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0023】
反応性の希釈モノマーとして使用する1又は2官能のアクリル酸エステルモノマーとしては、環構造置換基を有するアルコールのモノ(メタ)アクリレートモノマー、アルキレンジオールのジ(メタ)アクリレートモノマー又はポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートモノマー等を挙げることができる。ここで、環構造置換基を有するアルコールのモノ(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、モルフォリンアクリレート等を挙げることができ、アルキレンジオールのジ(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート等を挙げることができ、ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、トリエチレングリコールのジアクリレート等を挙げることができる。
【0024】
本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、上述した成分を常法により均一に混合することにより製造することができる。
【0025】
本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、光ディスク用基板等の被塗工面にスピンコート法等の公知の塗工方法により塗工し、得られた塗工膜に紫外線等のエネルギー線を照射して硬化させることにより、被塗工表面に対して良好で安定な密着性と耐擦傷性とを示し、透明性にも優れた保護膜を与えることができる。
【0026】
図1に、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物からなる硬化膜が形成された光ディスクの概略構成図を示す。この光ディスク1は、ポリカーボネート等からなる円盤状の光ディスク用基板2上に、記録パターン2a、反射膜3及び保護膜4が形成されている構造を有する。また、基板2の読取側の面20側には、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物から形成された光ディスク用保護膜5が設けられている。この光ディスク用保護膜5の厚さは特に限定されることはないが、耐擦傷性及び光透過性確保の観点からは、2〜7μmとすることが好ましい。なお、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は光ディスク用保護膜だけでなく、種々の物品の保護膜を形成するために使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0028】
実施例1〜12、比較例1〜5
表1、2に示す配合を均一に混合することにより、非溶剤型光硬化型樹脂組成物を調製した。なお、使用した成分は以下の通りである。
【0029】
オリゴマー
*CN975(芳香族6官能ウレタンオリゴマー、サートマー社)
*CN968(脂肪族6官能ウレタンオリゴマー、サートマー社)
*CN973(芳香族2官能ウレタンオリゴマー、サートマー社)
*EB3700(Bis−A型2官能エポキシオリゴマー、ダイセル−UCB社)
【0030】
3官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー
*TMPTA−N(トリメチロールプロパントリアクリレート、ダイセル−UCB社)
【0031】
光重合開始剤
*Irgacure 184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)
*Darocure 1173(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)
【0032】
希釈モノマー
<1又は2官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー>
*ビスコート#155(シクロヘキシルアクリレート、大阪有機化学工業社)
<分子内に4つ以上のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマー>
*ビスコート3F(フッ素原子3個含有アクリル酸エステルモノマー、大阪有機化学工業社)
*ビスコート4F(フッ素原子4個含有アクリル酸エステルモノマー、大阪有機化学工業社)
*ビスコート8F(フッ素原子8個含有アクリル酸エステルモノマー、大阪有機化学工業社)
*ビスコート12F(フッ素原子12個含有アクリル酸エステルモノマー、大阪有機化学工業社)
*ビスコート17F(フッ素原子17個含有アクリル酸エステルモノマー、大阪有機化学工業社)
【0033】
各実施例及び比較例の非溶剤型光硬化型樹脂組成物について、耐擦傷性、塗布形状、基材密着性を以下に説明するように試験・評価した。得られた結果を表1、2に示す。
【0034】
耐擦傷性(テーバー摩耗試験 ASTM D1044)
非溶剤型光硬化型樹脂組成物を、平滑なポリカーボネート板に5μm厚となるようにスピンコート(3000〜7000rpm/6秒)し、成膜された樹脂膜に対しメタルハライドランプ(120W/cm)を使用して紫外線を積算光量300mJ/cmで照射して硬化させ、保護膜を形成した。この保護膜に対し、荷重250g、100回転という条件でテーバー摩耗試験(CS−10F、テーバー社)を行い、テーバー試験前のヘイズ値([hase])に比べてテーバー試験後のヘイズ値([hase])の低下率{([hase]−[hase])×100/[hase]}が10%未満である場合を「○」とし、15%以上を「×」とし、それらの間を「△」と判定した。
【0035】
塗布形状
非溶剤型光硬化型樹脂組成物をスピンコートし、得られた樹脂膜の「平滑性」、「泡」の発生、「ダスト」の付着、「スジ・ムラ」の発生、「荒れ形状」の発生があるか否か、目視観察した。観察されなかった場合を「○」、観察された場合を「×」と判定した。ここで、「泡」の発生は、残留溶剤の気化により生ずる。従って、溶剤を使用した場合には、樹脂硬化に先立って溶剤の気化除去操作が必要となる。「ダスト」の付着は、塗布膜に熱風を吹き付けて溶剤を揮散させる際に、熱風中のダストが付着することにより発生する現象である。「スジ・ムラ」は、溶剤の部分的な揮発により粘度ムラが生じ、樹脂膜厚が不均一となることにより発生する現象である。「荒れ形状」は溶剤の揮発による塗工液温の低下により、液表層に大気中の水分が取り込まれて塗工液の表面に凹凸が生じる現象である。
【0036】
基板密着性(碁盤目剥離試験)
非溶剤型光硬化型樹脂組成物をポリカーボネート基板上にスピンコートし、得られた樹脂膜を1mm間隔で縦10マス×横10マスの碁盤目上にカットする。この碁盤目を覆うように粘着テープを樹脂膜に貼り、引き剥がした場合に、碁盤目の全100マスのうち、残存するマスの数が80以上である場合を「〇」、80未満である場合を「×」と判定した。







【0037】
【表1】

























【0038】
【表2】

*:フッ素系アクリレートと他成分とが分離

【0039】
比較例1、実施例1〜3及び比較例2の結果から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを使用しない場合(比較例1)には樹脂膜の平滑性に問題が生じ、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合(比較例2)には、耐擦傷性に問題が生じることがわかる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(CN975)の配合量が少なくとも10〜45重量%で、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(TMPTA)の配合量が少なくとも5〜40重量%であることが好ましいことがわかる。
【0040】
比較例3、実施例4〜6、比較例4の結果から、希釈用モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合(比較例3)には、耐擦傷性に問題が生じ、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合(比較例4)には、基板密着性に問題が生ずることがわかる。また、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量が少なくとも10〜40重量%で、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量が少なくとも10〜30重量%であることが好ましいことがわかる。
【0041】
実施例7〜10、13の結果から、希釈用モノマーとして使用する、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合(比較例3)には、耐擦傷性に問題が生じ、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用しない場合(比較例4)には、基板密着性に問題が生ずることがわかる。また、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量が少なくとも10〜40重量%で、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量が少なくとも10〜30重量%であることが好ましいことがわかる。
【0042】
実施例11、12、比較例5の結果から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして、実施例1等で使用された芳香族6官能体に代えて脂肪族6官能体(実施例11)や芳香族2官能体(実施例12)を使用できることがわかる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに代えてエポキシオリゴマーを使用した場合(比較例5)には、耐擦傷性に問題が生ずることがわかる。
【0043】
比較例6
粘度20000mPa・s(25℃)の非溶剤型の非フッ素系ハードコート剤(U−HA、新中村化学社製)を使用し、実施例1と同様に、耐擦傷性、塗布形状、基材密着性を試験・評価した。その結果、粘度が高すぎてスピンコートできなかった。
【0044】
比較例7
希釈溶剤としてトルエン20重量%含有する、粘度230mPa・s(25℃)の溶剤型の非フッ素系ハードコート剤(U−100H、新中村化学社製)を使用し、実施例1と同様に、耐擦傷性、塗布形状、基材密着性を試験・評価した。その結果、平滑性が悪く、、泡が発生、ダストが付着、スジ・ムラが発生、荒れ形状が発生した。
派生。粘度が高すぎてスピンコートできなかった。
【0045】
比較例8
粘度50mPa・s(25℃)の非溶剤型の非フッ素系ハードコート剤(SK3200、ソニーケミカル社製)を使用し、実施例1と同様に、耐擦傷性、塗布形状、基材密着性を試験・評価した。その結果、平滑性、泡発生、ダスト付着、スジ・ムラ発生、及び荒れ形状の点では問題がなかったが、耐擦傷性に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、有機溶剤を使用することに代えて、反応性の希釈モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、1又は2官能のアクリル酸エステルモノマーとを、特定の割合で使用する。従って、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物を、光ディスクなどの被塗工表面に塗工し、光硬化させて得られる樹脂膜は、良好で安定な密着性と耐擦傷性とを示し、透明性にも優れた保護膜となる。よって、本発明の非溶剤型光硬化型樹脂組成物は、光ディスクの保護膜形成に有用であるが、それ以外にも、低粘度の組成物であるため、フラットパネルディスプレイ用光学フィルムの保護層としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の光ディスクの概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 光ディスク
2 光ディスク用基板
2a 記録パターン
3 反射膜
4 保護膜
5 光ディスク用保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光重合開始剤および希釈用モノマーとを含有する非溶剤型光硬化型樹脂組成物において、希釈用モノマーとして、分子内に3個以上17個未満のフッ素原子を有するフッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマー10〜40重量%と、1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー10〜30重量%とを含有することを特徴とする非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
1又は2官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、環構造置換基を有するアルコールのモノ(メタ)アクリレートモノマー、アルキレンジオールのジ(メタ)アクリレートモノマー又はポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートモノマーである請求項1記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
環構造置換基を有するアルコールのモノ(メタ)アクリレートモノマーが、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、イソボルニルアクリレート又はモルフォリンアクリレートである請求項2記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
アルキレンジオールのジ(メタ)アクリレートモノマーが、ブタンジオールジアクリレート又はヘキサンジオールジアクリレートである請求項2記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートモノマーが、トリエチレングリコールのジアクリレートである請求項2記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
フッ素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、トリフロロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレート、又はオクタフルオロペンチルメタクリレートである請求項2記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセンリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである請求項1記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する請求項1記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを10〜45重量%、3官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを5〜40重量%含有する請求項1記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1記載の非溶剤型光硬化型樹脂組成物の硬化膜が光ディスク用基板に形成されてなる光ディスク。

【図1】
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【公開番号】特開2006−52270(P2006−52270A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233605(P2004−233605)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル株式会社 (595)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニー・ディスクアンドデジタルソリューションズ (88)
【Fターム(参考)】