説明

非炭素ラジカル成分CVD膜向けの酸素ドーピング

酸化ケイ素層を形成する方法が開示される。これらの方法は、ラジカル前駆体とラジカル酸素前駆体の両方を炭素のないケイ素含有前駆体と同時に組み合わせるステップを含む。ラジカル前駆体およびケイ素含有前駆体の1つは窒素を含有する。このような方法の結果、ケイ素、酸素、および窒素含有層が基板上に堆積される。次いで、ケイ素、酸素、および窒素含有層の酸素含有量を増大させて、窒素をほとんど含有しない酸化ケイ素層を形成する。ラジカル酸素前駆体およびラジカル前駆体は、別個のプラズマまたは同じプラズマ内で作り出すことができる。酸素含有量の増大は、酸素含有雰囲気の存在下でこの層をアニールすることによって引き起こすことができ、膜の密度は、不活性環境中の温度をさらに高くすることによって、さらに増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「OXYGEN−DOPING FOR NON−CARBON RADICAL−COMPONENT CVD FILMS」という名称の2010年7月15日出願の米国特許出願第12/836,991号のPCT出願であり、Nitin Ingleらの「OXYGEN−DOPING FOR NON−CARBON FCVD FILMS」という名称の2009年12月2日出願の米国仮特許出願第61/265,865号の利益を主張する。同願の開示全体を、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの形状寸法は、数十年前の導入以来、劇的に低減してきた。現在の半導体製造機器は、45nm、32nm、および28nmの特徴寸法を有するデバイスを日常的に生産しており、さらに小さい形状寸法を有するデバイスを作るために、新しい機器が開発および実施されている。特徴寸法が低減する結果、デバイス上の構造的な特徴の空間寸法が低減する。デバイス上の間隙およびトレンチの幅は、この間隙を誘電体材料で充填するのが困難になるほど間隙の深さと幅のアスペクト比が大きくなるところまで狭くなる。堆積する誘電体材料は、間隙が完全に充填される前に上部で詰まりやすく、間隙の中間にボイドまたはシームを生じさせる。
【0003】
ここ数年、誘電体材料で間隙の上部を詰まらせないように、または形成されたボイドもしくはシームを「回復」させるように、多くの技法が開発されてきた。1つの手法は、回転する基板表面に流動性の非常に高い前駆体材料を液相で塗布すること(たとえば、SOG堆積技法)から開始することである。これらの流動性の高い前駆体は、非常に小さい基板間隙内へ流れ込んで充填することができ、ボイドまたは弱いシームを形成しない。しかし、これらの流動性の非常に高い材料は、堆積させた後、硬化させて固体の誘電体材料にしなければならない。
【0004】
多くの場合、硬化処理は、堆積させた材料から炭素基およびヒドロキシル基を除去して酸化ケイ素などの固体の誘電体を残すための熱処理を含む。しかし残念ながら、離れていく炭素種およびヒドロキシル種は、硬化させた誘電体内に孔を残すことが多く、最終材料の品質を低減させる。さらに、硬化する誘電体には、体積が縮小する傾向もあり、誘電体と周囲の基板のインターフェースに亀裂および空間を残す可能性がある。場合によっては、硬化させた誘電体の体積は、40%以上低減する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、基板の間隙およびトレンチ内にボイド、シーム、または両方を生成することなく、構築された基板上に誘電体材料を形成する新しい堆積処理および材料が必要とされている。より少ない体積の低減で、流動性の高い誘電体材料を硬化させる材料および方法も必要とされている。本願では、上記およびその他の必要に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
酸化ケイ素層を形成する方法について説明する。これらの方法は、ラジカル前駆体とラジカル酸素前駆体の両方を炭素のないケイ素含有前駆体と同時に組み合わせるステップを含む。ラジカル前駆体およびケイ素含有前駆体の1つは、窒素を含有する。これらの方法の結果、ケイ素、酸素、および窒素含有層を基板上に堆積させる。次いで、ケイ素、酸素、および窒素含有層の酸素含有量を増大させて、窒素をほとんど含有しないことがある酸化ケイ素層を形成する。ラジカル酸素前駆体およびラジカル前駆体は、別個のプラズマまたは同じプラズマ内で作り出すことができる。酸素含有量の増大は、酸素含有雰囲気の存在下でこの層をアニールすることによって引き起こすことができ、膜の密度は、不活性環境中の温度をさらに高くすることによって、さらに増大させることができる。
【0007】
本発明の実施形態は、基板処理チャンバ内のプラズマのない基板処理領域において、基板上に酸化ケイ素層を形成する方法を含む。これらの方法は、第1のプラズマ領域内へ水素含有前駆体を流してラジカル前駆体を作り出しながら、第2のプラズマ領域内へ酸素含有前駆体を流してラジカル酸素前駆体を作り出すステップと、プラズマのない基板処理領域内で、ラジカル前駆体およびラジカル酸素前駆体を炭素のないケイ素含有前駆体と同時に組み合わせるステップとを含む。水素含有前駆体および炭素のないケイ素含有前駆体の少なくとも1つは、窒素を含有する。これらの方法は、基板上にケイ素、酸素、および窒素含有層を堆積させるステップと、酸素含有雰囲気においてアニール温度でケイ素、酸素、および窒素含有層をアニールし、酸素含有量を増大させて窒素含有量を低減させ、酸化ケイ素層を形成するステップとをさらに含む。
【0008】
追加の実施形態および特徴について、一部は以下の説明で述べるが、一部は、本明細書の説明を読めば当業者には明らかになり、または本発明の実施によって習得することができる。本発明の特徴および利点は、本明細書に記載する機器、組合せ、および方法を用いて実現および達成することができる。
【0009】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図面を参照することによって実現することができ、いくつかの図面全体にわたって、同じ参照番号を使用して類似の構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態によって酸化ケイ素膜を作る選択されたステップを示す流れ図である。
【図2】本発明の実施形態によってチャンバプラズマ領域を使用して酸化ケイ素膜を形成する選択されたステップを示す別の流れ図である。
【図3】本発明の実施形態によって堆積中にOが供給される場合および供給されない場合に得られるFTIRスペクトルのグラフである。
【図4】本発明の実施形態による基板処理システムを示す図である。
【図5A】本発明の実施形態による基板処理チャンバを示す図である。
【図5B】本発明の実施形態による基板処理チャンバのシャワーヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
酸化ケイ素層を形成する方法について説明する。これらの方法は、ラジカル前駆体とラジカル酸素前駆体の両方を炭素のないケイ素含有前駆体と同時に組み合わせるステップを含む。ラジカル前駆体およびケイ素含有前駆体の1つは、窒素を含有する。これらの方法の結果、ケイ素、酸素、および窒素含有層を基板上に堆積させる。次いで、ケイ素、酸素、および窒素含有層の酸素含有量を増大させて、窒素をほとんど含有しないことがある酸化ケイ素層を形成する。ラジカル酸素前駆体およびラジカル前駆体は、別個のプラズマまたは同じプラズマ内で作り出すことができる。酸素含有量の増大は、酸素含有雰囲気の存在下でこの層をアニールすることによって引き起こすことができ、膜の密度は、不活性環境中の温度をさらに高くすることによって、さらに増大させることができる。
【0012】
特許請求の範囲の有効範囲を、完全に正しいかどうか分からない仮定の機構に限ることなく、いくつかの詳細についての議論は有益であることが分かるであろう。プラズマのない領域内で、ラジカル酸素前駆体を用いることなく、ラジカル前駆体と炭素のないケイ素および窒素含有前駆体を組み合わせることによって膜を形成する結果、ケイ素および窒素含有膜が形成される。この堆積方法の結果、比較的開いた網により、低温のオゾン中で膜を硬化させ、その後、より高温の酸素含有雰囲気中で膜をアニールすることによって、ケイ素および窒素含有膜を酸化ケイ素に変換することができる。開いた網により、オゾンは膜内へより深く浸透することができ、基板の方向に酸化物への変換を拡げる。膜の形成中にラジカル酸素前駆体の並流を導入する結果、ケイ素、酸素、および窒素含有膜の開いた網全体にわたって、酸素が存在する。堆積させた膜内に酸素が存在すると、後の処理中に膜を酸化ケイ素に変換するには開いた網を通って流れなければならない酸素の量を低減させる。ラジカル酸素への同時露出は、酸素含有量を均質化させ、屈折率を下げて堆積速度を増大させる働きをすることができ、硬化ステップを低減またはさらには除外することができる。
【実施例】
【0013】
例示的な酸化ケイ素形成処理
図1は、本発明の実施形態によって酸化ケイ素膜を作る方法100内の選択されたステップを示す流れ図である。方法100は、プラズマのない基板処理領域に炭素のないケイ素前駆体を提供するステップを含む(102)。炭素のないケイ素前駆体は、他の種のケイ素前駆体の中でも、たとえばケイ素および窒素前駆体、ケイ素および水素前駆体、またはケイ素、窒素、および水素含有前駆体とすることができる。ケイ素前駆体は、炭素がないことに加えて、酸素のないものにすることができる。酸素がない結果、これらの前駆体から形成されるケイ素および窒素層内のシラノール(Si−OH)基の濃度がより低くなる。堆積させた膜内の余分のシラノール部分は、堆積させた層からヒドロキシル(−OH)部分を除去する堆積後のステップ中に、多孔率および縮小率の増大を引き起こす可能性がある。
【0014】
炭素のないケイ素前駆体の特有の例は、他のシリル−アミンの中でも、HN(SiH)、HN(SiH(すなわち、DSA)、およびN(SiH(すなわち、TSA)などのシリル−アミンを含むことができる。異なる実施形態では、シリル−アミンの流量は、約200sccm以上、約300sccm以上、約500sccm以上、または約700sccm以上とすることができる。本明細書に与えるすべての流量は、デュアルチャンバ式の300mmの基板処理システムを指す。単一ウエハのシステムは、これらの流量の2分の1を必要とするはずであり、他のウエハ寸法は、処理される面積によって増減される流量を必要とするはずである。これらのシリル−アミンは、キャリアガス、反応ガス、または両方として作用できる追加のガスと混合することができる。これらの追加のガスの例は、他のガスの中でも、H、N、NH、He、およびArを含むことができる。炭素のないケイ素前駆体の例はまた、シラン(SiH)を単独で、または他のケイ素(たとえば、N(SiH)、水素(たとえば、H)、および/もしくは窒素(たとえば、N、NH)含有ガスと混合して含むことができる。炭素のないケイ素前駆体はまた、ジシラン、トリシラン、さらに高次のシラン、および塩化シランを単独で、または互いに組み合わせて、もしくは前述の炭素のないケイ素前駆体と組み合わせて含むことができる。
【0015】
また、プラズマのない基板処理領域には、ラジカル窒素前駆体も提供される(104)。ラジカル窒素前駆体は、プラズマのない基板処理領域の外側で、より安定した窒素含有前駆体から生成された窒素ラジカル含有前駆体である。たとえば、NHおよび/またはヒドラジン(N)を含有する比較的安定した窒素含有前駆体を、チャンバプラズマ領域内、または処理チャンバの外側の遠隔プラズマシステム(RPS)内で活動化させて、ラジカル窒素前駆体を形成することができ、次いでラジカル窒素前駆体は、プラズマのない基板処理領域内へ輸送される。異なる実施形態では、安定した窒素前駆体はまた、NHおよびN、NHおよびH、NHおよびNおよびH、ならびにNおよびHを含む混合物とすることができる。NおよびHを有する混合物中では、NHの代わりに、またはNHと組み合わせて、ヒドラジンを使用することもできる。異なる実施形態では、安定した窒素前駆体の流量は、約200sccm以上、約300sccm以上、約500sccm以上、または約700sccm以上とすることができる。チャンバプラズマ領域内で作られるラジカル窒素前駆体は、N、NH、NHなどの1つまたは複数とすることができ、プラズマ内で形成されたイオン化種を伴うこともできる。
【0016】
チャンバプラズマ領域を用いる実施形態では、ラジカル窒素前駆体は、基板処理領域のうち、堆積領域から分割された一部分内で生成され、これらの前駆体が混合して反応し、堆積基板(たとえば、半導体ウエハ)上にケイ素および窒素層を堆積させる。
【0017】
プラズマのない基板処理領域には、ラジカル酸素前駆体が同時に提供される(106)。ラジカル酸素前駆体は、プラズマのない基板処理領域の外側で、より安定した酸素含有前駆体から生成された酸素ラジカル含有前駆体である。たとえば、O、O、HO、H、NO、NO、および/またはNOを含有する安定した酸素含有前駆体化合物を、チャンバプラズマ領域内、または処理チャンバの外側の遠隔プラズマシステム(RPS)内で活動化させて、ラジカル酸素前駆体を形成することができ、次いでラジカル酸素前駆体は、プラズマのない基板処理領域内へ輸送される。ラジカル酸素前駆体は、ラジカル窒素前駆体と同じプラズマ内(チャンバプラズマ領域または共通のRPS内)で生成することができ、その場合、より安定した酸素含有前駆体とより安定した窒素含有前駆体をプラズマ領域内で組み合わせることができ、またはともに組み合わせてプラズマ領域内へ流すことができる。別法として、ラジカル酸素前駆体は、別個のプラズマ領域内で生成することができ、たとえば、ラジカル酸素前駆体はRPS内で生成することができ、ラジカル窒素前駆体はチャンバプラズマ領域内で生成することができる。異なる実施形態では、安定した酸素前駆体の流量は、約50sccm以上、約100sccm以上、約150sccm以上、約200sccm以上、または約250sccm以上とすることができる。異なる実施形態では、安定した酸素前駆体の流量は、約600sccm以下、約500sccm以下、約400sccm以下、または約300sccm以下とすることができる。開示する追加の実施形態によれば、これらの上限のいずれかを下限のいずれかと組み合わせて、安定した酸素前駆体の流量に対する追加の範囲を形成することができる。
【0018】
通常、窒素を含まないラジカル前駆体により、ケイ素および窒素含有層を形成することもできる。ラジカル前駆体は、前述の前駆体とともに遠隔プラズマ領域へ供給された窒素を含む場合、ラジカル窒素前駆体とすることができる。ラジカル前駆体は、反応チャンバのうち、堆積領域から分割された一部分内で生成され、これらの前駆体が混合して反応し、堆積基板(たとえば、半導体ウエハ)上にケイ素および窒素層を堆積させる。ラジカル前駆体がラジカル窒素前駆体である一実施形態では、安定した窒素前駆体が遠隔プラズマ領域内へ流れ、プラズマによって励起される。安定した窒素前駆体(およびラジカル窒素前駆体)はまた、水素(H)、窒素(N)、アルゴン、ヘリウムなどのキャリアガスを伴うことができる。開示する実施形態では、実質的に窒素(N)からなる入力ガス(追加の不活性キャリアガスを有することもある)から形成されたラジカル窒素前駆体もまた、有益な膜を作り出すことがわかった。ケイ素含有前駆体が窒素を含む実施形態では、ラジカル窒素前駆体はまた、実質的に水素(H)(および任意選択で、不活性キャリアガス)からなる入力ガスから形成されるラジカル前駆体と置き換えることもできる。
【0019】
基板処理領域では、ラジカル窒素前駆体とラジカル酸素前駆体の並流が、炭素のないケイ素前駆体(プラズマによってあまり励起していない)と混合して反応し、堆積基板上にケイ素、酸素、および窒素含有膜を堆積させる(108)。低い流量(低い堆積速度)の場合、堆積させたケイ素および窒素含有膜は、共形に堆積させることができる。他の実施形態では、堆積させたケイ素および窒素含有膜は、従来の窒化ケイ素(Si)膜堆積技法とは異なる流動特性を有する。形成物の流動性により、膜は、基板の堆積表面上の狭い間隙トレンチおよび他の構造内へ流れる。
【0020】
流動性は、ラジカル前駆体と炭素のないケイ素前駆体の混合に起因する様々な特性によって生じうる。これらの特性は、堆積させた膜内に相当な水素成分があること、および/または短鎖ポリシラザンポリマーが存在することを含むことができる。これらの短鎖は、成長して網をなし、膜の形成中および形成後に、より高密度の誘電体材料を形成する。たとえば、堆積させた膜は、シラザンタイプのSi−NH−Siバックボーン(すなわち、Si−N−H膜)を有することができる。ケイ素前駆体とラジカル前駆体のどちらにも炭素がないとき、堆積させたケイ素および窒素含有膜にもまた、実質上炭素がない。もちろん、「炭素がない」とは、膜に微量の炭素すらないことを必ずしも意味するわけではない。前駆体材料内には、堆積させたケイ素および窒素前駆体内へ入り込んだ炭素汚染物質が存在することがある。しかし、これらの炭素不純物の量は、炭素部分を有するケイ素前駆体(たとえば、TEOS、TMDSOなど)内で見られるはずの量よりはるかに少ない。本明細書に記載の実施形態で概説する流量の場合、堆積させたケイ素、酸素、および窒素含有膜の流動性は、あまり損なわれない。
【0021】
ケイ素、酸素、および窒素含有層の堆積に続いて、酸素含有雰囲気中で堆積基板をアニールすることができる(110)。堆積基板は、酸素含有雰囲気が導入されるとき、硬化に使用されるのと同じ基板処理領域内に残すことができ、または異なるチャンバへ基板を移送することができ、そこで酸素含有雰囲気が導入される。酸素含有雰囲気は、他の酸素含有ガスの中でも、分子状酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気(HO)、過酸化水素(H)、および酸化窒素(NO、NOなど)などの1つまたは複数の酸素含有ガスを含むことができる。酸素含有雰囲気はまた、遠隔で生成して基板チャンバ内へ輸送できる原子状酸素(O)、水酸化物(OH)などのラジカル酸素およびヒドロキシル種を含むことができる。酸素含有種のイオンが存在してもよい。異なる実施形態では、基板の酸素アニール温度は、約1100℃以下、約1000℃以下、約900℃以下、または約800℃以下とすることができる。異なる実施形態では、基板の温度は、約500℃以上、約600℃以上、約700℃以上、または約800℃以上とすることができる。この場合も、開示する追加の実施形態によれば、これらの上限のいずれかを下限のいずれかと組み合わせて、基板温度に対する追加の範囲を形成することができる。
【0022】
酸素アニール中、基板処理領域内には、プラズマが存在してもしなくてもよい。CVDチャンバに入る酸素含有ガスは、基板処理領域に入る前に活動化(たとえば、ラジカル化、イオン化など)させた1つまたは複数の化合物を含むことができる。たとえば、酸素含有ガスは、遠隔プラズマ源を通じて、またはシャワーヘッドによって基板処理領域から分離されたチャンバプラズマ領域を通じて、より安定した前駆体化合物を露出させることによって活動化させたラジカル酸素種、ラジカルヒドロキシル種などを含むことができる。より安定した前駆体は、ヒドロキシル(OH)ラジカルおよびイオンを作り出す水蒸気および過酸化水素(H)、ならびに原子状酸素(O)ラジカルおよびイオンを作り出す分子状酸素および/またはオゾンを含むことができる。
【0023】
ケイ素、酸素、および窒素含有膜内に相当な酸素含有量が既に存在することを考えると、硬化動作は必要でないこともある。しかし、所望の場合、アニール動作の前に硬化動作が導入されるはずである。硬化中、堆積基板は、硬化用の基板処理領域内に残すことができ、または異なるチャンバへ基板を移送することができ、そこでオゾン含有雰囲気が導入される。異なる実施形態では、基板の硬化温度は、約400℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約200℃以下、または約150℃以下とすることができる。異なる実施形態では、基板の温度は、ほぼ室温以上、約50℃以上、約100℃以上、約150℃以上、または約200℃以上とすることができる。開示する追加の実施形態によれば、これらの上限のいずれかを下限のいずれかと組み合わせて、基板温度に対する追加の範囲を形成することができる。実施形態では、表面付近の網を閉じて表面下の酸化を妨げることのある原子状酸素の生成を回避するために、基板処理領域内にはプラズマが存在しない。硬化ステップ中の基板処理領域内へのオゾンの流量は、約200sccm以上、約300sccm以上、または約500sccm以上とすることができる。硬化ステップ中のオゾンの分圧は、約10トル以上、約20トル以上、または約40トル以上とすることができる。いくつかの条件(たとえば、約100℃〜約200℃の基板温度)下では、変換が実質上完了したことがわかり、したがって実施形態では、酸素含有環境中での比較的高温のアニールは必要ないことがある。
【0024】
硬化と酸素アニールの両方の酸素含有雰囲気は、酸素を提供してケイ素、酸素、および窒素含有膜を酸化ケイ素(SiO)膜に変換する。前述のように、ケイ素、酸素、および窒素含有膜内に炭素がない結果、最終の酸化ケイ素膜内に形成される孔は著しく少なくなる。またその結果、酸化ケイ素への変換中の膜の体積の低減(すなわち、縮小率)がより小さくなる。たとえば、炭素含有ケイ素前駆体から形成されたケイ素−窒素−炭素層は、酸化ケイ素へ変換されるときに40体積%以上縮小することがあるが、実質上炭素のないケイ素および窒素膜は、約15体積%以下の縮小ですむことがある。
【0025】
図2を次に参照すると、本発明の実施形態によって基板間隙(トレンチ)内に酸化ケイ素膜を形成する方法200内の選択されたステップを示す別の流れ図が示されている。方法200は、間隙を含む基板を基板処理領域内へ移送するステップを含むことができる(動作202)。基板は、基板上に形成されるデバイス構成要素(たとえば、トランジスタ)の間隔および構造のために、複数の間隙を有することができる。これらの間隙の高さおよび幅は、高さと幅(すなわち、H/W)のアスペクト比(AR)を画定することができ、このARは、1:1を著しく上回る(たとえば、5:1以上、6:1以上、7:1以上、8:1以上、9:1以上、10:1以上、11:1以上、12:1以上など)。多くの場合、高いARは、約90nm〜約22nm以下の範囲の小さい間隙幅(たとえば、約90nm、65nm、45nm、32nm、22nm、16nmなど)のために生じる。
【0026】
チャンバプラズマ領域内への安定した窒素前駆体および安定した酸素前駆体の並流は、ラジカル窒素前駆体およびラジカル酸素前駆体を形成する(動作204)。プラズマのない基板処理領域内で、プラズマによってあまり励起されていない炭素のないケイ素前駆体が、ラジカル窒素およびラジカル酸素前駆体と混合される(動作206)。基板上に、流動性の高いケイ素、酸素、および窒素含有層を堆積させることができる(動作208)。この層は流動性が高いため、高いアスペクト比を有する間隙を充填することができ、充填材料の中心の周りにボイドまたは弱いシームを生じさせない。たとえば、堆積する流動性の高い材料は、完全に充填する前に間隙の上部を早まって詰まらせて間隙の中間にボイドを残す可能性がより低い。
【0027】
次いで、堆積させたケイ素、酸素、および窒素含有層を酸素含有雰囲気中でアニールし(動作210)、ケイ素、酸素、および窒素含有層を酸化ケイ素に遷移させることができる。酸化ケイ素層を高密度化するために、より高い基板温度の不活性環境中で、さらなるアニール(図示せず)を実施することもできる。この場合も、硬化ステップを実行して、酸化ケイ素への変換を助けることができ、このステップは、膜の形成(動作206)とアニール動作210の間に行われるはずである。
【0028】
堆積させたケイ素、酸素、および窒素含有層を酸素含有雰囲気中でアニールすることで、基板間隙を含む酸化ケイ素層を基板上に形成する(210)。実施形態では、硬化およびアニールの処理パラメータは、図1を参照して説明したのと同じ範囲を保持する。上述したように、酸化ケイ素層では、熱処理ステップ前に著しい量の炭素が層内に存在する炭素含有前駆体で形成される類似の層より孔が少なく、体積の低減が小さい。多くの場合、体積の低減は、酸化ケイ素の縮小の結果として間隙内に形成される空間を充填、回復、または他の方法で除去する熱処理後のステップを回避できるほどわずかである(たとえば、約15体積%以下)。
【0029】
本発明をよりよく理解および評価するために、2つの膜をここで参照されたい。図2の処理の流れに従って第1の膜を成長させ、ラジカル酸素前駆体を持たないがそれ以外は類似の第2の膜を成長させた。これらの膜はそれぞれ、シャワーヘッドによってプラズマのない基板処理領域から分離されたチャンバプラズマ領域内へ、炭素のないケイ素および窒素含有前駆体としてTSAが275sccmの流量で供給され、アンモニア(NH)が550sccmの流量で供給される状態で成長させた。分子状酸素(O)は、アンモニアに使用されるものとは別個の入り口を通って同じくチャンバプラズマ領域内へ、150sccmの流量で供給した。分子状酸素は、第1の膜の成長中には供給したが、第2の膜の成長中には供給しなかった。第1の膜は、4800Å/分の堆積速度で成長し、第2の膜は、1650Å/分で成長した。堆積速度がより大きいことは、前述のように別個の硬化動作への依存が低減されることに加えて、さらなる利益である。第1の膜の屈折率(1.529)もまた、第2の膜の屈折率(1.5374)より小さく、堆積させた膜が酸化ケイ素の屈折率(1.46)により近いことを示す。
【0030】
図3は、本発明の実施形態によって堆積中にOが供給される場合および供給されない場合に得られるFTIRスペクトルのグラフである。流量は、TSAには275sccm、NHには550sccm、および分子状酸素(使用時)には150sccmであった。分子状酸素およびアンモニアを使用してラジカル酸素およびラジカル窒素前駆体を作り、これらをプラズマのない基板処理領域内でTSAと組み合わせることで成長させて堆積させたケイ素、酸素、および窒素含有層に対するFTIRスペクトル302を示す。比較のため、堆積させたケイ素および窒素含有層に対するFTIRスペクトル304を示し、低温オゾン硬化後の同じ膜に対するスペクトル306も含む。FTIRピーク位置は、ラジカル酸素を用いて成長させた膜と、ラジカル酸素を用いないで成長させた膜で異なるが、ラジカル酸素を用いないで成長させた膜を硬化させた後、これらのピークはより類似する。実際には、ラジカル酸素前駆体を用いて成長させた膜の場合、膜内の酸素の存在に関連するこれらのピークはより大きい(302)。より高い酸素ピーク302は、硬化させた膜304と比較すると、膜内の酸素の存在がより多いことを示す。オゾンは、堆積させたケイ素および窒素含有膜を酸化させる際、膜の成長中のラジカル酸素露出ほど効果的でないことは明らかである。
【0031】
例示的な酸化ケイ素堆積システム
本発明の実施形態を実施できる堆積チャンバは、他のタイプのチャンバの中でも、高密度プラズマ化学気相堆積(HDP−CVD)チャンバ、プラズマ化学気相堆積(PECVD)チャンバ、減圧化学気相堆積(SACVD)チャンバ、および熱化学気相堆積チャンバを含むことができる。本発明の実施形態を実施できるCVDシステムの特有の例には、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能なCENTURA ULTIMA(登録商標)HDP−CVDチャンバ/システム、およびPRODUCER(登録商標)PECVDチャンバ/システムが含まれる。
【0032】
本発明の例示的な方法とともに使用できる基板処理チャンバの例は、本願の譲受人に譲渡された「PROCESS CHAMBER FOR DIELECTRIC GAPFILL」という名称の2006年5月30日出願のLubomirskyらの米国仮特許出願第60/803,499号に図示および記載されているチャンバを含むことができる。同願の内容全体を、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込む。追加の例示的なシステムは、米国特許第6,387,207号および第6,830,624号に図示および記載されているシステムを含むことができる。両特許もまた、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込む。
【0033】
これらの堆積システムの実施形態は、集積回路チップを生産するより大型の製造システム内へ組み込むことができる。図4は、開示する実施形態による堆積チャンバ、焼成チャンバ、および硬化チャンバからなる1つのそのようなシステム400を示す。この図では、1対のFOUP(前方開口型統一ポッド)402が、基板(たとえば、直径300mmのウエハ)を供給し、基板はロボットアーム404によって受け取られ、低圧保持領域406内に配置されてから、ウエハ処理チャンバ408a〜fの1つに配置される。第2のロボットアーム410を使用して、基板ウエハを保持領域406から処理チャンバ408a〜fへ輸送し、また戻すことができる。
【0034】
処理チャンバ408a〜fは、基板ウエハ上に流動性の高い誘電体膜を堆積、アニール、硬化、および/またはエッチングする1つまたは複数のシステム構成要素を含むことができる。一構成では、2対の処理チャンバ(たとえば、408c〜dおよび408e〜f)を使用して、基板上に流動性の高い誘電体材料を堆積させることができ、第3の対の処理チャンバ(たとえば、408a〜b)を使用して、堆積させた誘電体をアニールすることができる。別の構成では、同じ2対の処理チャンバ(たとえば、408c〜dおよび408e〜f)は、基板上で流動性の高い誘電体膜の堆積とアニールの両方を行うように構成することができ、第3の対のチャンバ(たとえば、408a〜b)は、堆積させた膜のUVまたは電子ビーム硬化に使用することができる。さらに別の構成では、3対のチャンバ(たとえば、408a〜f)をすべて、基板上で流動性の高い誘電体膜を堆積および硬化させるように構成することができる。さらに別の構成では、2対の処理チャンバ(たとえば、408c〜dおよび408e〜f)を使用して、流動性の高い誘電体の堆積とUVまたは電子ビーム硬化の両方を行うことができ、第3の対の処理チャンバ(たとえば、408a〜b)を使用して、誘電体膜をアニールすることができる。異なる実施形態では、図示の製造システムから分離されたチャンバ(複数可)上で、上記の処理のいずれか1つまたは複数を実施することができる。
【0035】
さらに、処理チャンバ408a〜fの1つまたは複数を、湿式処理チャンバとして構成することができる。これらの処理チャンバは、湿気を含む雰囲気中で流動性の高い誘電体膜を加熱することを含む。したがって、システム400の実施形態は、堆積させた誘電体膜上で湿式アニールとドライアニールの両方を実行するために、湿式処理チャンバ408a〜bおよびアニール処理チャンバ408c〜dを含むことができる。
【0036】
図5Aは、開示する実施形態による基板処理チャンバ500である。遠隔プラズマシステム(RPS)510は、ガスを処理することができ、このガスは次いで、ガス入り口アセンブリ511を通って進む。ガス入り口アセンブリ511内には、2つの個別のガス供給チャネルが見られる。第1のチャネル512は、遠隔プラズマシステムRPS510を通過するガスを運び、第2のチャネル513は、RPS510を迂回する。開示する実施形態では、第1のチャネル502は、プロセスガスに使用することができ、第2のチャネル513は、処理ガスに使用することができる。リッド(または導電性の上部部分)521および穿孔区画553が示されており、絶縁リング524が間に位置し、それによって穿孔区画553に対してリッド521に交流電位を印加することができる。プロセスガスは、第1のチャネル512を通ってチャンバプラズマ領域520内へ進み、チャンバプラズマ領域520内で単独で、またはRPS510と組み合わせて、プラズマによって励起することができる。本明細書では、チャンバプラズマ領域520および/またはRPS510の組合せを、遠隔プラズマシステムと呼ぶことができる。穿孔区画(シャワーヘッドとも呼ばれる)553は、シャワーヘッド553の下の基板処理領域570からチャンバプラズマ領域520を分離する。シャワーヘッド553により、チャンバプラズマ領域520内に存在するプラズマは、基板処理領域570内のガスを直接励起させるのを回避し、それでもなお励起種は、チャンバプラズマ領域520から基板処理領域570内へ進むことができる。
【0037】
シャワーヘッド553は、チャンバプラズマ領域520と基板処理領域570の間に位置決めされ、チャンバプラズマ領域520内で生じたプラズマ廃水(前駆体または他のガスの励起された誘導体)は、板の厚さを横切る複数の貫通孔556を通過することができる。シャワーヘッド553はまた、1つまたは複数の中空の体積551を有し、中空の体積551は、蒸気またはガスの形の前駆体(ケイ素含有前駆体など)で充填することができ、直接チャンバプラズマ領域520内ではなく、小さい孔555を通って基板処理領域570内へ進むことができる。開示するこの実施形態では、シャワーヘッド553は、貫通孔556の最も小さい直径550の長さより厚い。チャンバプラズマ領域520から基板処理領域570へ浸透する相当な濃度の励起種を維持するために、貫通孔の最も小さい直径550の長さ526は、シャワーヘッド553の途中に貫通孔556の直径がより大きい部分を形成することによって制限することができる。開示する実施形態では、貫通孔556の最も小さい直径550の長さは、貫通孔556の最も小さい直径と同じ程度以下とすることができる。
【0038】
図示の実施形態では、シャワーヘッド553は、チャンバプラズマ領域520内でプラズマによって励起されると、酸素、水素、および/もしくは窒素を含有するプロセスガス、ならびに/またはそのようなプロセスガスのプラズマ廃水を(貫通孔556を介して)分散させることができる。実施形態では、第1のチャネル512を通ってRPS510および/またはチャンバプラズマ領域520内へ導入されるプロセスガスは、酸素(O)、オゾン(O)、NO、NO、NO、NH、Nを含むN、シラン、ジシラン、TSA、およびDSAの1つまたは複数を含有することができる。プロセスガスはまた、ヘリウム、アルゴン、窒素(N)などのキャリアガスを含むことができる。第2のチャネル513を通って、分子状酸素(または別の比較的安定した酸素含有ガス)を供給することができ、一方第1のチャネル512を通って、アンモニア(または別の比較的安定した窒素および水素含有ガス)を供給し、本明細書に前述したケイ素、酸素、および窒素含有膜を成長させる。別法として、酸素含有ガスと窒素および水素含有ガスを組み合わせることができ、どちらも、第1のチャネル512または第2のチャネル513を通って流れる。第2のチャネル513はまた、成長または堆積させた膜から望ましくない成分を除去するために使用されるキャリアガスおよび/または膜硬化ガスを供給することができる。プラズマ廃水は、プロセスガスのイオン化された誘導体または中性の誘導体を含むことができ、また本明細書では、導入されたプロセスガスの原子状の成分を指して、ラジカル酸素前駆体および/またはラジカル窒素前駆体と呼ぶこともできる。
【0039】
実施形態では、貫通孔556の数は、約60個〜約2000個とすることができる。貫通孔556は、様々な形状を有することができるが、円形に作るのが最も容易である。開示する実施形態では、貫通孔556の最も小さい直径550は、約0.5mm〜約20mmまたは約1mm〜約6mmとすることができる。貫通孔の断面形状の選択には許容範囲もあり、円錐形、円筒形、または2つの形状の組合せとすることができる。異なる実施形態では、基板処理領域570内へガスを導入するために使用される小さい孔555の数は、約100個〜約5000個または約500個〜約2000個とすることができる。小さい孔555の直径は、約0.1mm〜約2mmとすることができる。
【0040】
図5Bは、開示する実施形態による処理チャンバとともに使用するためのシャワーヘッド553の底面図である。シャワーヘッド553は、図5Aに示すシャワーヘッドに相当する。貫通孔556が示されており、シャワーヘッド553の底部上で内径(ID)がより大きく、上部でIDがより小さい。小さい孔555は、貫通孔556の間でも、シャワーヘッドの表面全体にわたって実質上均一に分散され、それによって、本明細書に記載する他の実施形態より均一の混合を提供するのに役立つ。
【0041】
シャワーヘッド553内の貫通孔556を通って到達するプラズマ廃水が、中空の体積551から小さい孔555を通って到達するケイ素含有前駆体と組み合わさるとき、基板処理領域570内でペデスタル(図示せず)によって支持された基板上に、例示的な膜が作られる。基板処理領域570は、硬化などの他の処理のためにプラズマに対応するように装備することができるが、例示的な膜の成長中にはプラズマは存在しない。
【0042】
シャワーヘッド553の上のチャンバプラズマ領域520内で、またはシャワーヘッド553の下の基板処理領域570内で、プラズマを着火することができる。チャンバプラズマ領域520内にはプラズマが存在し、窒素および水素含有ガスならびに酸素含有ガスの流入から、ラジカル窒素およびラジカル酸素前駆体を作り出す。処理チャンバの導電性の上部部分521とシャワーヘッド553の間に、通常高周波(RF)範囲内の交流電圧を印加して、堆積中にチャンバプラズマ領域520内でプラズマを着火する。RF電源は、13.56MHzの高いRF周波数を生成するが、他の周波数を単独で、または13.56MHzの周波数と組み合わせて生成することもできる。
【0043】
基板処理領域570内の底部プラズマを点けて膜を硬化させるとき、または基板処理領域570と境界をなす内部表面を洗浄するとき、上部プラズマは、低い出力、または出力のない状態のままとすることができる。基板処理領域570内のプラズマは、シャワーヘッド553とチャンバのペデスタルまたは底部の間に交流電圧を印加することによって着火される。プラズマが存在する間に、基板処理領域570内へ洗浄ガスを導入することができる。
【0044】
ペデスタルは、熱交換チャネルを有することができ、このチャネルを通じて熱交換流体が流れ、基板の温度を制御する。この構成により、基板温度を冷却または加熱して、比較的低い温度(室温〜約120℃)を維持することができる。熱交換流体は、エチレングリコールおよび水を含むことができる。ペデスタルのウエハ支持プラター(好ましくは、アルミニウム、セラミック、またはこれらの組合せ)はまた、平行な同心円の形で完全に2回転するように構成された埋込み型の単一ループのヒータ要素を使用して、比較的高い温度(約120℃〜約1100℃)を実現するように抵抗加熱することができる。ヒータ要素の外側部分は、支持プラターの周囲に隣接することができ、内側部分は、より小さい半径を有する同心円の経路上に位置する。ヒータ要素への配線は、ペデスタルの軸を通過する。
【0045】
基板処理システムは、システムコントローラによって制御される。例示的な実施形態では、システムコントローラは、ハードディスクドライバ、フロッピーディスクドライバ、および処理装置を含む。処理装置は、単一基板コンピュータ(SBC)、アナログおよびデジタル入出力基板、インターフェース基板、ならびにステッパモータコントローラ基板を含む。CVDシステムの様々な部分は、基板、カードケージ、およびコネクタの寸法および型を規定するVersa Modular European(VME)標準に適合する。VME標準はまた、バス構造について、16ビットのデータバスおよび24ビットのアドレスバスを有すると規定する。
【0046】
システムコントローラは、CVD機械の活動のすべてを制御する。システムコントローラは、コンピュータ可読媒体内に記憶されたコンピュータプログラムであるシステム制御ソフトウェアを実行する。この媒体はハードディスクドライバであることが好ましいが、他の種類のメモリとすることもできる。コンピュータプログラムは、特定の処理のタイミング、ガスの混合、チャンバ圧力、チャンバ温度、RF出力レベル、サセプタの位置、および他のパラメータを指示する命令セットを含む。たとえばフロッピーディスクまたは別の適当なドライバを含む他のメモリデバイス上に記憶された他のコンピュータプログラムを使用して、システムコントローラに命令することもできる。
【0047】
基板上に積層膜を堆積させる処理またはチャンバを洗浄する処理は、システムコントローラによって実行されるコンピュータプログラム製品を使用して実施することができる。コンピュータプログラムコードは、任意の従来のコンピュータ可読プログラミング言語、たとえば68000アセンブリ言語、C、C++、Pascal、Fortranなどで書くことができる。適したプログラムコードは、従来のテキストエディタを使用して単一のファイルまたは複数のファイル内へ入力され、コンピュータのメモリシステムなどのコンピュータ使用可能媒体内で記憶または実施される。入力されたコードテキストが高級言語である場合、コードはコンパイルされ、その結果得られるコンパイラコードは次いで、事前にコンパイルされたMicrosoft Windows(登録商標)のライブラリルーチンのオブジェクトコードとリンクされる。リンクされたコンパイル済みのオブジェクトコードを実行するには、システムユーザは、オブジェクトコードを呼び出し、コンピュータシステムにコードをメモリ内へロードさせる。次いでCPUは、コードを読み取って実施し、プログラム内で識別されたタスクを実行する。
【0048】
ユーザとコントローラの間のインターフェースは、フラットパネル式の接触感知型モニタを介してなされる。好ましい実施形態では、2つのモニタが使用され、一方は、操作者用に洗浄室の壁に取り付けられ、他方は、サービス技術者用に壁の後ろに取り付けられる。2つのモニタは、同じ情報を同時に表示することができ、その場合、一度に一方のみが入力を受け入れる。特定のスクリーンまたは機能を選択するには、操作者は、接触感知型モニタの指定の領域に触れる。触れた領域では強調色が変化し、または新しいメニューもしくはスクリーンが表示され、操作者と接触感知型モニタの間の通信を確認する。接触感知型モニタの代わりに、またはそれに加えて、キーボード、マウス、または他のポインティングもしくは通信デバイスなどの他のデバイスを使用することができ、それによってユーザは、システムコントローラと通信することができる。
【0049】
チャンバプラズマ領域またはRPS内の領域は、遠隔プラズマ領域と呼ぶことができる。実施形態では、ラジカル前駆体(たとえば、ラジカル窒素前駆体)は、遠隔プラズマ領域内で作られ、基板処理領域内へ進み、基板処理領域内で、ラジカル前駆体によって炭素のないケイ素含有前駆体が励起される。実施形態では、炭素のないケイ素含有前駆体は、ラジカル前駆体によってのみ励起される。実施形態では、ラジカル前駆体が炭素のないケイ素含有前駆体への主な励起を提供するように、プラズマ出力は実質的に、遠隔プラズマ領域にのみ印加することができる。
【0050】
チャンバプラズマ領域を用いる実施形態では、基板処理領域のうち、堆積領域から分割された一部分内で、励起されたプラズマ廃水が生成される。本明細書では基板処理領域とも呼ばれる堆積領域は、プラズマ廃水が炭素のないケイ素含有前駆体と混合および反応してケイ素および窒素層を堆積基板(たとえば、半導体ウエハ)上に堆積させる領域である。励起されたプラズマ廃水はまた、不活性ガス(例示的な場合、アルゴン)を伴うことができる。実施形態では、炭素のないケイ素含有前駆体は、基板プラズマ領域に入る前にプラズマを通過しない。本明細書では、基板処理領域について、ケイ素および窒素含有層の成長中に「プラズマがない」と説明することができる。「プラズマがない」とは、この領域がプラズマを持たないことを必ずしも意味するわけではない。プラズマ領域内で作られるイオン化種および自由電子は、区画(シャワーヘッド)内の孔(開孔)を通って進むが、炭素のないケイ素含有前駆体は、プラズマ領域へ印加されるプラズマ出力によって実質上励起されない。チャンバプラズマ領域内のプラズマの境界は、画定するのが困難であるが、シャワーヘッド内の開孔を通って基板処理領域に侵入することがある。誘導結合されたプラズマの場合、基板処理領域内で直接、わずかな量のイオン化が生じることがある。さらに、形成される膜の所望の特徴をなくすことなく、基板処理領域内で低強度のプラズマが生じることがある。本明細書では、励起されたプラズマ廃水の生成中にチャンバプラズマ領域(またはその点では、遠隔プラズマ領域)よりはるかに低い強度のイオン密度を有するプラズマの原因はすべて、「プラズマがない」範囲から逸脱しない。
【0051】
本明細書では、「基板」とは、層が上に形成されるかどうかにかかわらず、支持基板とすることができる。支持基板は、絶縁体、または様々なドーピング濃度およびプロファイルの半導体とすることができ、たとえば、集積回路の製造で使用されるタイプの半導体基板とすることができる。本明細書では、「酸化ケイ素」は、ケイ素および酸素含有材料の略称として区別なく使用される。したがって、酸化ケイ素は、窒素、水素、炭素などの他の元素成分の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法を使用して作られる酸化ケイ素膜は実質的に、ケイ素および酸素からなる。「前駆体」という用語は、表面から材料を除去する反応、または表面上へ材料を堆積させる反応を担う任意のプロセスガスを指すために使用される。「励起状態」のガスとは、気体分子の少なくとも一部が振動励起、解離、および/またはイオン化された状態であるガスについて説明する。ガスは、2つ以上のガスの組合せとすることができる。「ラジカル前駆体」は、表面から材料を除去する反応、または表面上に材料を堆積させる反応を担うプラズマ廃水(プラズマを出る励起状態のガス)について説明するために使用される。「ラジカル水素前駆体」とは、水素を含有するラジカル前駆体であり、「ラジカル窒素前駆体」は、窒素を含有する。ラジカル窒素前駆体内には水素が存在することがあり、ラジカル水素前駆体内には窒素が存在することがある。「不活性ガス」という語句は、膜内へエッチングされ、または組み込まれたときに、化学結合を形成しない任意のガスを指す。例示的な不活性ガスには、希ガスが含まれるが、(通常)微量が膜内に取り込まれたときに化学結合が形成されない限り、他のガスを含むことができる。
【0052】
本明細書全体にわたって「トレンチ」という用語を使用するが、エッチングされた幾何形状が大きい水平のアスペクト比を有することを示唆するものではない。表面の上から見ると、トレンチは、円形、楕円形、多角形、方形、または様々な他の形状に見えることがある。「ビア」という用語は、金属で充填して垂直の電気的接続を形成できるかどうかにかかわらず、アスペクト比が低いトレンチを指すために使用する。本明細書では、共形の層は、表面と同じ形状の表面上の概ね均一の材料層を指し、すなわち層の表面と覆われている表面は、概ね平行である。堆積させた材料を100%共形にすることはできない可能性が高く、したがって「概ね」という用語は許容公差を可能にすることが、当業者には理解されよう。
【0053】
いくつかの実施形態について説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、代替構造、および均等物を使用できることが、当業者には理解されるであろう。さらに、本発明を不必要に曖昧にしないように、複数の周知の処理および要素については説明しなかった。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0054】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間に介在する各値もまた、文脈上別途明示しない限り、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されることが理解される。任意の記載の値または記載の範囲内に介在する値と、任意の他の記載の値またはその記載の範囲内に介在する値との間のより小さい各範囲も包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、別個に範囲内に包含または除外することができ、より小さい範囲内に限界のいずれかを含む範囲、どちらも含まない範囲、または両方を含む範囲もそれぞれ、記載の範囲内の任意の具体的に除外された限界に応じて、本発明の範囲内に包含される。記載の範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外する範囲も含まれる。
【0055】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形の名詞は、文脈上別途明示しない限り、複数の名詞を含む。したがって、たとえば、「処理」への言及は、複数のそのような処理を含み、「前駆体」への言及は、1つまたは複数の前駆体および当業者には知られているその均等物への言及を含み、以下同様である。
【0056】
また、「含む」、およびその文法的変形は、本明細書および以下の特許請求の範囲内で使用するとき、記載の特徴、整数、構成要素、またはステップの存在を指定するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、構成要素、ステップ、動作、または群の存在または追加を除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理チャンバ内のプラズマのない基板処理領域において基板上に酸化ケイ素層を形成する方法であって、
第1のプラズマ領域内へ水素含有前駆体を流してラジカル前駆体を作り出しながら、第2のプラズマ領域内へ酸素含有前駆体を流してラジカル酸素前駆体を作り出すステップと、
前記プラズマのない基板処理領域内で、前記ラジカル前駆体および前記ラジカル酸素前駆体を炭素のないケイ素含有前駆体と同時に組み合わせるステップであって、前記水素含有前駆体および前記炭素のないケイ素含有前駆体の少なくとも1つが窒素を含有するステップと、
前記基板上にケイ素、酸素、および窒素含有層を堆積させるステップと、
酸素含有雰囲気においてアニール温度で前記ケイ素、酸素、および窒素含有層をアニールし、前記酸素含有量を増大させて前記窒素含有量を低減させることにより、酸化ケイ素層を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記アニール温度が、約500℃〜約1100℃であり、前記酸素含有雰囲気が、O、O、HO、H、NO、NO、NO、およびこれらから導出されたラジカル種の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のプラズマ領域が前記第2のプラズマ領域であり、したがって前記ラジカル前駆体と前記ラジカル酸素前駆体が同じプラズマ内で作られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のプラズマ領域が、前記基板処理チャンバの外側に位置する遠隔プラズマシステム(RPS)内にあり、前記ラジカル酸素前駆体が、前記第1のプラズマ領域を通過しないで前記プラズマのない基板処理領域に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のプラズマ領域が、前記基板処理チャンバの外側に位置する遠隔プラズマシステム(RPS)内にあり、前記ラジカル酸素前駆体が、前記第2のプラズマ領域に入り、前記第2のプラズマ領域内でさらに励起されてから、前記ラジカル前駆体にも使用されるチャネルを通って前記プラズマのない基板処理領域に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ケイ素、酸素、および窒素含有層の堆積速度が約2000Å/分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ素、酸素、および窒素含有層の堆積速度が約3000Å/分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ケイ素、酸素、および窒素含有層の堆積速度が約4000Å/分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素、酸素、および窒素含有層が、炭素のないSi−O−N−H層から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素含有前駆体が、O、O、HO、H、NO、NO、NO、およびこれらから導出されたラジカル種の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ラジカル酸素前駆体を持たないがそれ以外は類似の条件下で成長させた膜と比較すると、前記酸化ケイ素膜の誘電率の前記膜全体にわたる一貫性が高い、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が幅約50nm以下のトレンチを有するようにパターニングされ、堆積中、前記ケイ素、酸素、および窒素層は、流動性で、前記トレンチを充填する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記トレンチ内の前記酸化ケイ素層に実質上ボイドがない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のプラズマ領域が、前記基板処理チャンバの外側に位置する遠隔プラズマシステム(RPS)内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のプラズマ領域が、前記基板処理チャンバのうち、シャワーヘッドによって前記プラズマのない基板処理領域から分離された分割部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
約400℃未満の温度を維持しながらオゾン含有雰囲気中で前記膜を硬化させる動作をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2013−513235(P2013−513235A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542040(P2012−542040)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056401
【国際公開番号】WO2011/068652
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】