説明

非特異吸着防止剤および物品のコーティング方法

【課題】物品へのタンパクおよびタンパク担持ラテックスなどの非特異吸着を防止することができる非特異吸着防止剤、ならびに該非特異吸着防止剤を用いたおよび物品のコーティング方法を提供する。
【解決手段】アクリルアミド自体、乃至N−置換基を有するアクリルアミド誘導体を繰り返し単位(A)と、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含有する非特異的吸着防止剤。(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、およびヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種を示す。)


・・・・・(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、臨床診断薬、臨床診断装置、バイオチップなどに用いられる各種タンパク等の非特異吸着を防止する非特異吸着防止剤、ならびに当該非特異吸着防止剤を用いたおよび物品のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疾病の早期発見等の目的のため、検査の高感度化が求められており、診断薬の感度向上は大きな課題となっている。ポリスチレンプレートや磁性粒子などの固相を用いた診断薬においても、感度向上のため、検出方式として酵素発色を用いる方式から、より高い感度が得られる蛍光や化学発光を用いる方式へと切り替わりつつあるが、実際には十分な感度が得られていない。その原因としては、血清などの生体分子混在下で特定の物質を検出する診断では、共存する生体分子や2次抗体、発光基質などが固相や器具・容器などへ非特異的に吸着し、その結果、ノイズが増加して高感度化の妨げとなっていることが挙げられる。そのため、免疫診断測定においては、特異的に結合する物質以外の物質が免疫反応に使用する固相表面や器具・容器に非特異的に吸着することによる感度の低下を軽減するため、通常、アルブミン、カゼイン、ゼラチン等の生物由来物質を非特異吸着防止剤として用いることにより、非特異吸着を抑制して、ノイズを低減させている。
【0003】
しかしながら、従来法による非特異吸着防止剤を添加しても、なお、非特異的な吸着が残り、さらに、生体由来の非特異吸着防止剤を用いる場合、BSEに代表される生物汚染の問題があることなどから、化学合成による高性能の非特異吸着防止剤の開発が望まれている。
【0004】
化学合成による非特異吸着防止剤としては、特開平10−153599号公報や特開平11−352127号公報にポリオキシエチレンを有するポリマー、ならびに、特許第3443891号に特定のメタクリル系共重合体が提案されているが、これらの非特異吸着防止効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−153599号公報
【特許文献2】特開平11−352127号公報
【特許文献3】特許第3443891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、免疫診断測定等において使用する固相表面や器具・容器などの物品へのタンパクおよびタンパク担持ラテックスなどの非特異吸着を防止することができる非特異吸着防止剤、ならびに該非特異吸着防止剤を用いたおよび物品のコーティング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この課題を解決するために、特定の組成の共重合ポリマーが高い非特異吸着防止効果を有することを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
本発明の一態様に係る非特異吸着防止剤は、
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含有する。
【0009】
【化1】

・・・・・(1)
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、およびヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【0010】
【化2】

・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。)
【0011】
上記非特異吸着防止剤では、上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、炭素数が5〜9であることができる。
【0012】
上記非特異吸着防止剤では、上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、下記一般式(3)で表されるものであることができる。
【0013】
【化3】

・・・・・(3)
(式中、Xは酸素原子またはNHを示し、Yは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10の有機基を示す。)
【0014】
本発明の他の一態様に係る物品のコーティング方法は、上記非特異吸着防止剤を含有する溶液に物品を接触させる工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
上記非特異吸着防止剤によれば、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と、上記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含有することにより、高い非特異吸着防止効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る非特異吸着防止剤、ならびに該非特異吸着防止剤を用いたおよび物品のコーティング方法について、具体的に説明する。
【0017】
1.非特異吸着防止剤
1.1.非特異吸着防止剤の構成
本実施形態に係る非特異吸着防止剤は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含有する。
【0018】
【化4】

・・・・・(1)
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、およびヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【0019】
【化5】

・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。)
【0020】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤では、上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、炭素数が5〜9であることができる。
【0021】
また、本実施形態に係る非特異吸着防止剤では、上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、下記一般式(3)で表されるものであることができる。
【0022】
【化6】

・・・・・(3)
(式中、Xは酸素原子またはNHを示し、Yは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10(好ましくは4〜8)の有機基を示す。)
【0023】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤は、その一部に上記共重合体を含んでいてもよく、あるいは、上記共重合体のみから構成されていてもよい。
【0024】
1.2.非特異吸着防止剤の物性および用途
本実施形態に係る非特異吸着防止剤において、上記共重合体の質量平均分子量は、通常1,000〜1,000,000であり、好ましくは5,000〜500,000であり、より好ましくは10,000〜100,000である。また、上記共重合体の分子量分布は、典型的には、質量平均分子量/数平均分子量が1.5〜8である。上記共重合体の質量平均分子量が上記範囲未満であると、非特異吸着防止効果が不十分である場合があり、一方、上記共重合体の質量数平均分子量が上記範囲より大きいと、溶液の粘度が増加してハンドリングが困難になる場合がある。
【0025】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤が含有する共重合体は水溶性である。本発明において、「水溶性である」とは、25℃で1%のポリマー固形分となるように水に共重合体を添加・混合したときに、目視で透明または半透明に溶解することをいう。
【0026】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤は、高い非特異吸着防止効果を有する。非特異吸着防止剤は、具体的には以下のように作用すると考えられる。
【0027】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤においては、上記共重合体の繰り返し単位(B)の疎水性結合によって、容器・器具などの壁面に非特異吸着防止剤を吸着させることができ、かつ、繰り返し単位(A)によって壁面が親水性されることにより、タンパク質、脂質、タンパク担持ラテックスなどの非特異吸着を防止することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る非特異吸着防止剤においては、上記共重合体の繰り返し単位(B)がタンパク質と相互作用し、かつ、繰り返し単位(A)が水に対する分散作用を有するため、タンパク質がコンフォメーションを変化させて疎水化することを防ぎ、タンパク質を水溶媒に可溶化させることができる。
【0029】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤においては、特に、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)を後述する割合で含むことにより、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とがバランス化された共重合体を含む。このため、吸着速度が速いため、タンパク質などの非特異吸着原因物質が容器・器具などの壁面に吸着するのを効果的に防止することができる。
【0030】
本実施形態に係る非特異吸着防止剤は例えば、容器・器具などの物品へコーティングする方法や、診断薬の希釈剤、反応溶媒、または保存剤へ添加する方法、自動診断機の洗浄剤、リンス液として自動診断工程に取り入れる方法により、タンパクやタンパク担持ラテックスなどの非特異吸着を強力に防止する効果を有する。すなわち、本発明の一実施形態に係る物品のコーティング方法は、本実施形態に係る非特異吸着防止剤を含有する溶液に物品を接触させる工程を含む。
【0031】
また、本実施形態に係る非特異吸着防止剤は、免疫診断薬の希釈液として用いることにより、非特異検体のシグナルを抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る非特異吸着防止剤は例えば、臨床診断薬として使用される標識抗体、標識抗原、酵素、一次抗体、一次抗原の安定化剤、血漿製剤に含まれるタンパクの安定化剤、コンタクトレンズの洗浄に使用される酵素などの安定化剤などとして、タンパク溶液中に添加することにより、タンパクの活性を長期間にわたり維持させる効果を有する。
【0033】
1.3.繰り返し単位(A)
上記共重合体において、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)は、高い非特異吸着防止効果の発現に寄与することができる。
【0034】
上記一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、およびヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種を示すものである。繰り返し単位(A)は、上記一般式(1)において、R=R=水素原子、R=R=メチル基、R=水素原子かつR=ヒドロキシメチル基、またはR=水素原子かつR=ヒドロキシエチル基のものが好ましく、R=R=メチル基のものがより好ましい。
【0035】
1.4.繰り返し単位(B)
上記共重合体において、上記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)は、共重合体の親水/疎水バランスを疎水側にずらすことにより、より高い非特異吸着防止効果の発現に寄与することができる。
【0036】
上記一般式(2)において、Rは水素原子またはメチル基を示し、好ましくは水素原子である。Zは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4以上の有機基を示し、好ましくは1個のアルド基またはケト基を有しかつ1個のエステル基またはアミド基を有する炭素数5〜9の有機基(例えば、上記一般式(2)において、Zで表される有機基が上記一般式(3)で表される基)である。Zはより具体的には、下記一般式(4)で示されるアルド基を含有するエステル基、下記一般式(5)で示されるアルド基を含有するアミド基などのアルド基を有する有機基;
【0037】
【化7】

・・・・・(4)
(式中、R10〜R13は独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基である。)
【0038】
【化8】

・・・・・(5)
(式中、R14〜R17は独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基である。)
【0039】
下記一般式(6)で示されるケト基を含有するエステル基、下記一般式(7)で示されるケト基を含有するアミド基などのケト基を有する有機基である。
【0040】
【化9】

【0041】
・・・・・(6)
(式中、R18〜R21は独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基である。)
【0042】
【化10】

・・・・・(7)
(式中、R22〜R25は独立して、水素原子、メチル基、またはエチル基である。)
Zとして最も好ましい有機基は、下記式(8)で示される有機基である。
【0043】
【化11】

・・・・・(8)
【0044】
また、上記共重合体において、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)をそれぞれ、1種以上含有しておればよい。なお、上記共重合体は、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外のその他の繰り返し単位(C)を含有していてもよい。
【0045】
2.非特異吸着防止剤の製造
次に、上記共重合体を製造するために使用するモノマー組成について説明する。
【0046】
2.1.モノマー(a)
繰り返し単位(A)は、少なくとも1種のモノマー(a)に由来する構造を有する。モノマー(a)は、アクリルアミドおよびアクリルアミドのN−置換モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0047】
アクリルアミドのN−置換モノマーとしては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0048】
モノマー(a)として、より好ましくは、アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN,N−ジメチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくは、N,N−ジメチルアクリルアミドである。
【0049】
2.2.モノマー(b)
繰り返し単位(B)は、少なくとも1種のモノマー(b)に由来する構造を有する。
【0050】
モノマー(b)は、好ましくは、上記式(3)で表される(メタ)アクリレート類または(メタ)アクリルアミド類(より具体的には、上記式(4)〜(8)で表される基を有する(メタ)アクリレート類または(メタ)アクリルアミド類)から選ばれる少なくとも1種であり、共重合性の点で、より好ましくは、ダイアセトンアクリルアミドである。
【0051】
2.3.その他のモノマー(c)
その他の繰り返し単位(C)は、少なくとも1種のモノマー(c)に由来する構造を有する。
【0052】
モノマー(c)としては、好ましくは、
N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジンなどのモノマー(a)以外のアクリルアミドのN−置換モノマー;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンなどの(メタ)アクリレート;
アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアニオン性モノマー;
アリルアミン、アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド4級塩などの1級〜4級アミノ基を有するカチオン性モノマー
などを挙げることができる。
【0053】
上記共重合体を製造するためのモノマー組成は、全モノマーを100質量%として、好ましくは、モノマー(a)1〜99質量%、モノマー(b)1〜99質量%、およびその他のモノマー(c)0〜98質量%であり、より好ましくは、モノマー(a)10〜90質量%、モノマー(b)10〜90質量%、およびその他のモノマー(c)0〜80質量%である。
【0054】
モノマー(a)、(b)が上記範囲を外れると、非特異吸着防止効果に劣る場合がある。
【0055】
また、モノマー(a)の使用量とモノマー(b)の使用量の質量比は、1:99〜99:1であることがより好ましく、10:90〜90:10であることがさらに好ましい。モノマー(a)の使用量に対してモノマー(b)の使用量が99:1未満であると、非特異吸着防止効果に劣る場合があり、一方、1:99を超えると、水に不溶となって、コーティングできなくなる場合がある。
【0056】
使用するモノマーは、工業用原料として入手することができるものを精製して、あるいは、未精製のまま、共重合に使用することができる。
【0057】
モノマーの重合は、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など公知の重合法で行うことができ、製造が容易であることから、好ましくはラジカル重合である。
【0058】
また、モノマーの重合は、公知の溶媒、開始剤、連鎖移動剤などと共に攪拌・加熱することにより実施される。重合時間は、通常30分〜24時間、重合温度は、0〜120℃程度である。
【0059】
重合後の共重合体水溶液は、透析膜、ダイアライザー、アシライザー等により精製することが好ましい。
【0060】
3.実施例および比較例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0061】
なお、本実施例では、質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は,東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量1ミリリットル/分、溶出溶媒は0.1mM塩化ナトリウム水溶液/アクリロニトリル混合溶媒、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリエチレングリコールを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された。吸光度は、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ社製モデル680マイクロプレートリーダーにより測定された。
【0062】
3.1.実施例1
3.1.1.非特異吸着防止剤(N−1)の合成
モノマー(a)としてジメチルアクリルアミド50g、モノマー(b)としてダイアセトンアクリルアミド50g、連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸0.1gを水900gに混合して攪拌機付きセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら、70℃まで昇温し、開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液をダイアライザーにより精製し、さらに凍結乾燥することにより、本実施例の非特異吸着防止剤(N−1)95gを得た。
【0063】
非特異吸着防止剤(N−1)のGPCによる数平均分子量は12,000であり、質量平均分子量44,000であった。
【0064】
3.1.2.非特異吸着防止効果の測定
非特異吸着防止剤(N−1)の0.5%水溶液をポリスチレン製96穴プレート(以下、「96穴プレート」という。)に満たし、37℃で30分間インキュベートした後、交換水で5回洗浄した。次に、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(ミリポア社製「AP124P」)水溶液を96穴プレートに満たし、室温で30分間インキュベートした後、PBSバッファーで3回洗浄し、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジデン)/過酸化水素水/硫酸で発色させて450nmの吸光度を測定した。
【0065】
3.2.実施例2、3
モノマーとして表1に示すモノマー比とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0066】
3.3.比較例1
実施例1において、モノマー(a)としてジメチルアクリルアミド50g、モノマー(b)としてダイアセトンアクリルアミド50gを用いた代わりに、モノマーとしてジメチルアクリルアミド100gのみを用いた以外は、「3.1.1.非特異吸着防止剤(N−1)の合成」と同様の方法にて、共重合ポリマー(X−1)を得た。
【0067】
共重合ポリマー(X−1)のGPCによる数平均分子量は14,000であり、質量平均分子量は84,000であった。
【0068】
また、「3.1.2.非特異吸着防止効果の測定」と同様の方法にて、共重合ポリマー(X−1)を用いた場合の吸光度を測定した。
【0069】
3.4.比較例2
実施例1において、モノマー(a)としてジメチルアクリルアミド50g、モノマー(b)としてダイアセトンアクリルアミド50gを用いた代わりに、モノマーとしてダイアセトンアクリルアミド100gのみを用いた以外は、「3.1.1.非特異吸着防止剤(N−1)の合成」と同様の方法にて、重合を実施したが、水に不溶の白色物が発生し攪拌が困難になったため、重合を中止した。
【0070】
3.5.比較例3
実施例1において、非特異吸着防止剤(N−1)の代わりにウシ血清アルブミン(BSA)を用いて、「3.1.2.非特異吸着防止効果の測定」と同様の方法にて、BSAを用いた場合の吸光度を測定した。
【0071】
3.6.比較例4
実施例1において、非特異吸着防止剤(N−1)の代わりに市販のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いて、「3.1.2.非特異吸着防止効果の測定」と同様の方法にて、吸光度を測定した。
【0072】
3.7.測定結果
以上の実施例および比較例における非特異吸着防止効果の測定結果を表1に示す。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)とを有する共重合体を含有する、非特異吸着防止剤。
【化12】

・・・・・(1)
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、およびヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【化13】

・・・・・(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。)
【請求項2】
上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、炭素数が5〜9である、請求項1に記載の非特異吸着防止剤。
【請求項3】
上記一般式(2)において、Zで表される前記有機基は、下記一般式(3)で表される、請求項1または2に記載の非特異吸着防止剤。
【化14】

・・・・・(3)
(式中、Xは酸素原子またはNHを示し、Yは少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10の有機基を示す。)
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の非特異吸着防止剤を含有する溶液に物品を接触させる工程を含む、物品のコーティング方法。

【公開番号】特開2010−169604(P2010−169604A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13804(P2009−13804)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】