非特異性センサーアレイ検出器
特異検体ではなく一般検体である、バッジなどの携帯でき着用できる化学物質検出デバイスであって、該デバイスは既知および未知の空中の化学的な危険について人員に知らせ、人員を保護する理想的な方法を提供する。本発明のデバイスは安価で、低電力要求で、着用可能でも良く、一般的な化学的危険を検出し警報を出すように設計しても良い。本発明のデバイスはその一態様において、二または三以上のセンサーデバイス;それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するためにそれぞれの二または三以上のセンサーデバイスからの信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および環境の状態または状況についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、を含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2002年7月19日に出願された米国仮出願60/397135号「非特異性センサーアレイ検出器」の本出願であり、仮出願は参考文献として全ての目的のためにその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の援助によりされた発明に係る権利についての陳述
該当せず。
【0003】
発明の背景
本発明は、携帯でき、手で持て、着用できる検出器システム、特に非特異性化学検体検出用に構成されたセンサーアレイを含む、携帯でき、手で持て、着用できる検出器システムであって、ソフトウェアモジュールによって様々な環境状態を検出および解析するように構成することができ、低い動作電力要求および長い寿命を持つ検出器システムに関連する。
【0004】
民間および軍の人員、沿岸警備隊および税関、州および連邦の緊急時対応要員、および工員は、避難または化学防護服(CPE: chemical protective equipment)などの防護服を着用するのに間に合うように、危険な空中の化学物質の放出などの環境状態の変化を識別するための、個人用の早期警告システムを必要とする。例えば、給油中の目に見えない漏れから、冷暖房システムから、または産業上の敵対行為から、有毒工業化学物質(TICs: toxic industrial chemicals)の放出が通常の操作の中で意図せず起こりうる。加えて、戦闘中またはその他の潜在的な敵対的状況において化学兵器(CWAs: chemical warfare agents)が使用されうる。これらそれぞれの状況は、典型的に事前に識別できず、独特で潜在的な広範囲の化学的脅威を提示する。その脅威を無効化するための適切な行動をとるために、敵対的曝露の前にTICs、CWAs、およびその他の環境状態を検出しその特性を明らかにする必要が存在する。採られるであろう適切な防御または汚染浄化の手段のために化学物質の種類を特定するために、TICまたはCWAの放出後にも同様の必要性が存在する。
【0005】
高い特異性および正確性を有する実験器具が入手可能であるが、物理的頑丈性を欠き、熟練のオペレータが必要で、さらにそのサイズ、重さ、高い電力消費要求、および化学試薬(気体、液体)の要件により典型的には携帯することができないので、一般的に野外での使用には適さない。さらに、一つの脅威(例えばCWA)に特化した携帯できる器具は、重要な他の脅威(例えば爆発物、火災、TICs)または改良されたデバイスには役に立たない。
【0006】
着用可能な物と同じように、TICsおよびCWAsなどの危険な状態のための手で持てる受動検出器は、脅威にさらされた環境で作業をする人員の安全性を大幅に改善する。実用的な手で持てる検出器にはポイント検出器およびスタンドオフ検出器が含まれる。一つのポイント検出器、ジョイント化学物質検出器(JCAD: Joint Chemical Agent Detector)は、手で持つことができ、携帯が可能であるが、一度の充電での稼働時間が限られており、頻繁に再充電することが求められる。さらに、JCADは同時に使用する他のデバイスを弱めて使用しなければならない。ジョイントサービス軽量スタンドオフ化学物質検出器(JSLSCAD: Joint Service Lightweight Standoff Chemical Agent Detector)などのスタンドオフ検出器は連続的に人員をCWAsから保護することができるが、(1)空間分解能が欠如し、(2)直ちに生命および健康に関わる危険(IDLH: Immediately Dangerous to Health and Life)レベルよりも高い検出限界を持っている。現在のバッジまたは着用できる検出器(例えば、SafeAir、ToxiRAE)の一般的な制限は、(1)特異検体(analyte-specificity):これらは化学的危機について事前の詳細な知識、もしくは広いスペクトルをカバーするために複数のバッジを要求し、新しいまたは未知の危険を検出することができない;(2)単独使用:使い捨ての検出器および線量計は連続的な保護のために再度の供給を必要とする;(3)解釈の誤り:比色分析のインジケーターは使用者の主観になりがちな視覚による比較(色カード)を必要とする;(4)警報モードまたは情報伝達能力の不存在:これらは迅速なハンズフリーの警告や状態の通信を提供できない;(5)環境パフォーマンス:極端な温度(例えば0度未満または40度超)および極端な湿度(例えば相対湿度(RH: relative humidity)で、10%未満または90%超)によって制限されるセンサーがある(例えば、電気化学的、導電性ポリマー)。このような検出器は典型的にデータロギング能力(例えば、遭遇した環境の経過的な詳細な情報/記録の記憶)を含まないか、または、単に経過的な曝露の時間平均を提供するのみである。さらに、現在の検出器は、典型的には、高い動作電力要求があり、それゆえ、典型的には動作時間が短い。例えば、JCADは20時間かそれ以下の時間で電源の再充電または交換が必要である。
【0007】
ToxiRae Plus などのいくつかのセンサーデバイスは、可聴式および振動式の警報を発生し、解釈の誤りを排除し、またデータロギング能力を有するが、これらの着用可能なセンサーは依然として特異検体である。さらに、これらのセンサーは、そのサイズと重さのためにポケットまたはベルトのクリップを必要とするので、バッジ検出器としては実用的でない。
【0008】
例えば、EIC Laboratories, IncやPhysical Sciences, Incによって、一般検体(analyte-general)を用いた着用できるセンサーデバイスは発展したが、これらのデバイスは、バッジ検出器の野外使用時にセンサーの耐久性および安定性に影響を与えうる湿度に関して重大な性能の問題を抱えている。
【0009】
それゆえ、現在の検出器の制限に打ち勝ち、潜在的に危険な環境において人員に連続的で信頼性のある保護を提供する個人用検出器(例えば携帯可能で着用できる検出器)の必要性が存在する。
【0010】
発明の概要
本発明は、バッジなどの携帯できて着用できる検出器デバイスであって、特異検体ではなく一般検体であり、それゆえ空中の化学的危険などの既知および未知の環境状態およびイベントを人員に通知し保護する理想的な方法を、操作をする必要なく提供する検出器デバイスを提供する。本発明の一側面によるこれらのデバイスは、有利なことに廉価で、動作電力が低く、着用でき、一般的な環境の脅威を検出し警報するように設計されてもよい。本発明の一つの側面によるデバイスは、例えばTICsやCWAsの放出などの環境の変化の検出および特定を提供するためにセンサー信号を解析するように構成されたソフトウェアモジュールを含む。それゆえこれらのデバイスは、有利なことにより低いコストでかつ専門的な訓練なしに、高価なポイント検出器、スタンドオフエリアモニター、または単一の化学物質検出に限定される現存する検出器バッジよりも、多くの個人を保護することができる。他の側面によれば、本発明のデバイスは通信モジュールを含み、センサーデバイスの分散型ネットワークなどのネットワーク内に簡単に導入される。
【0011】
ここで使用されるように、環境のイベント、状況、および状態は、例えば、
温度、湿度または気圧、放射線レベル、その他の物理的刺激などの環境のパラメータ;
空中の化学物質または気体などの大気の構成物の存在またはそのレベル;
化学物質、生物剤または生体物質、治療薬などの液体または流体の構成物;および
その他を含んでもよい。
環境の状況または状態の変化は、環境のパラメータのレベルや存在の増加または減少を含んでも良い。
【0012】
ある側面において、本発明の検出器デバイスは、以下の特徴または特性の内の一または二以上を含む:
・例えば、一または複数のIDLHレベルのTICsおよびCWAsなどの環境状態を検出するために非特異性センサーアレイを用いる;
・湿気が存在するときに安定である高分子複合材料を用いる;
・相対湿度および周囲温度を測定する;
・広い範囲の動作条件で使用できる(相対湿度:不凝縮で0%〜99%;温度:−15℃〜40℃またはそれ以上);
・受動的で、野外での使用中に使用者との相互操作または使用者の注意を求めない;
・経過的なデータの記録を維持するために、ダウンロード可能なフラッシュメモリーを含む;
・TICまたはCWAが検出されたとき可聴式および不可聴式の警報を提供する;
・通常の動作中に定期的な可聴式および不可聴式の信号を含む;
・クレジットカードよりも小さく、とても軽い;
・連続的な野外使用で、少なくとも二週間またはそれ以上(例えば複数年)のバッテリー寿命がある;
・少なくとも2年の製品寿命を有する;
・大量生産の要求を満たす;
・大量生産であれば商品やサービスが廉価(大量注文にはおよそ30ドル)に提供できる;
・利用できるマーケットサイズを大きくするために現存の製品(例えば、公共施設における工業化学物質漏れおよびCWAs放出の検出のためのワイヤレスセンサーネットワーク)に直接導入することができる。
【0013】
本発明のある側面によれば、TICsおよびCWAsの存在などの環境の状態およびその変化を検出し解析するための携帯または着用できる検出器デバイスなどの、様々な用途において有用な二または三以上のアレイを構成するために、高分子複合材料のセンサーテクノロジーが用いられる。このようなPCSセンサーを含むデバイスは、小型で、軽量で、着用でき、頑丈で、安定で、廉価で、低電力でかつ一般検体で構成できる点で、特に有利である。高分子複合材料のセンサーは、導電性ポリマーと同じような湿度性能の制限はない。高分子複合材料センサーは無電力センサー(例えば現在入手できる(COTS:current off-the-shelf)バッジ検出器)ではなく低電力センサーであるので、本発明のある側面による検出器デバイスは解釈の誤り無くアラームを発生することができ、データロギング能力を備えられる。センサーアレイと検出および特定用の技術を組み合わせることで、本発明のある側面による検出器デバイスは、現在のCOTS検出器およびその他の検出器のその他の制限を解決しつつ、有利なことに非特異検体である。
【0014】
本発明の一つの側面によって、センサー装置が提供される。その装置は典型的には、二または三以上のセンサーデバイス、それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングデバイス、および環境の状態または状況についての情報を使用者に伝達する通信モジュールを含む。
【0015】
本発明の他の側面によって、着用できるセンサーデバイスが提供される。そのデバイスは典型的には、一または二以上の高分子複合材料センサー、警報装置、および一または二以上のセンサーからの信号をモニターし、閾値状態に応答した警報のための警報起動信号を提供するように設定されたデジタル信号プロセッサー、を含む。閾値状態は特定の環境の状態または状況、または環境の状態または状況の変化を表すことができる。
環境のイベント、状況、および状態は、例えば、
温度、湿度または気圧、放射線レベルなどの環境のパラメータ;
空中の化学物質または気体などの大気の構成物の存在またはそのレベル;
化学物質、生物剤または生体物質、治療薬などの液体または流体の構成物;
を含む。
環境の状況または状態の変化は、環境のパラメータのレベルや存在の増加または減少を含んでも良い。
【0016】
本発明のさらにその他の側面によって、典型的には、
二または三以上の高分子複合材料センサーのアレイ;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために、二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール;
を含む、統合されたセンサー装置が提供される。
【0017】
本発明の更なる側面に従って、着用できるバッジ検出器を用いた方法が提供される。そのバッジは典型的には、二または三以上のセンサーデバイス、それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングデバイス、環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、および検出器に電力を供給する電力供給装置を含む。前記使用方法は典型的には、着用可能なバッジ検出器を使用者に提供すること、その検出器を使用者に取り付けること、およびその検出器を作動させること、を含み、ここで、検出器は、一度作動すると再充電または電力供給装置の取り替えを要求することなく一週間以上受動的かつ連続的に動作する。
【0018】
特許請求の範囲および図面を含む本明細書の残余部分を参照すれば、本発明のその他の特徴および優位性が理解されよう。本発明の構成および様々な実施態様の動作と共に、さらなる特徴および優位性が添付の図面に関連して以下に詳細に記載される。図面において、類似の符号は同一か機能的に類似の要素を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明に従う検出器デバイスは好ましくは高分子複合材料センサーのアレイ(すなわちセンサーは少なくとも二つ)を含む。高分子複合材料センサー(PCS: polymer-composite sensor)は典型的には、導電性メディア、重合体面、および二つの電極を有する。電極間に電圧が供給されると、電子は主に導電性メディアからなる経路を通ってセンサーを流れ、センサーの抵抗が測定される。センサーの抵抗はセンサーの状態を示す最も単純な測定値の一つであり、センサー内に吸収された分子の数に関連する。すなわち、センサーの抵抗の変化は吸収された分子の質量に比例する。
【0020】
センサーに接触する化学物質の気体に変化があった場合、センサーの抵抗の変化などの付随した応答がある。気相での変化は、その成分の化学ポテンシャルの変化を引き起こし、結果、センサーと気相の間に化学ポテンシャルの差を作る。この化学ポテンシャルの差は、センサーと気体のいずれの成分がより大きい化学ポテンシャルを有するかに応じて、センサーの外へまたはセンサーの中へ分子を実際に移動させる。センサーに吸収されている分子の数が変化するので、この分子の実際の移動が抵抗の差を生み出す。そして、この実際の移動はセンサーと気体の全ての成分の化学ポテンシャルが等しくなるまで続く。図1Aは、検体濃度のステップ変化に対する代表的なセンサーの応答を示す。ある時間の間、センサーは空気に曝露され、刺激物も一定であるのでセンサーの抵抗Rbaselineは一定である。次いでセンサーは、空気とベースライン時には存在しなかった検体とを含み気相の化学ポテンシャルを増大させる気体に曝露される(気体オン)。検体の分子は気相からセンサー内へ移動し、センサーに吸収されセンサーの抵抗Rを大きくする分子数の増加を引き起こす。センサーを検体に曝露するのをやめ(気体オフ)再び空気のみに曝露すると、検体分子はセンサーから脱着し、センサーの抵抗はベースライン抵抗まで減少する。センサーの応答は、
【数1】
で計算される。
【0021】
高分子複合材料センサーのアレイに気体が存在する場合、全てでないにせよほとんどのアレイ内のセンサーは、好ましくは異なった応答を生成するから、アレイは図1Bに示すようなパターンを生成する。気体の成分の化学ポテンシャルはパーセント飽和蒸気圧に比例する。(パーセント飽和蒸気圧は水の含有量についての相対湿度に等しい。)センサー内の気体成分の化学ポテンシャルは、吸収された分子の数に比例し、センサーの材料と吸収された分子との平均相互作用エネルギーに反比例する。センサーの抵抗の変化は吸収された分子の質量の変化に比例する。平衡状態、すなわち気相とセンサーの各成分の化学ポテンシャルが等しくなったとき、センサーの応答はスケーリング関数
【数2】
に従う。ここで、(ΔR/R)jはアレイ内のj番目のセンサーの応答であり、εijは気体内のi番目成分とアレイ内のj番目成分との間の相互作用エネルギーであり、Piは気体内のi番目成分の分圧であり、Psai,iはセンサーの温度Tsensorにおける気相内のi番目の成分の飽和蒸気圧である。相互作用エネルギーεijはそれぞれのセンサー−検体対で異なるので、同一の気体に対してアレイ内のそれぞれのセンサーの応答は異なる。相互作用εijは与えられた検体に対する感度の測定値であり、ある側面では、その値は異なったセンサー−検体対に対して二桁近い差になる。PCSセンサーは好ましいが、本発明に従ったセンサーデバイスはPCSに加えて、またはその代わりに、他の種類のセンサーを含んでも良いことが理解される。
【0022】
それぞれ参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許5,571,401号および5,788,833号は、高分子複合材料センサーシステムおよびデバイスに有用な高分子複合材料とともに、野外での検体(例えば液体、気体)の検出に有用な化学センサーを開示する。
【0023】
ある好ましい側面では、例えば32個など、複数のセンサーのアレイを本願発明の装置に導入することができるが、特定の用途のための要求によってアレイはこれより少ないまたはさらに多いセンサーを含むことができる。ある特化した用途において、センサーが適切に選択されている場合には、一般的に4個または5個のセンサーのみで十分である。好ましい側面において、センサーのアレイは一つのPCSセンサーまたは複数のPCSセンサーを含む。該アレイは他の種類のセンサーを含まないか、一または二以上の他の種類のセンサーを含む。
【0024】
参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許6,085,576号は、幅広い用途の使用を意図した手に持てるデバイスに比較的多数のセンサーを導入した、手に持てるセンサーの例の側面について議論している。このようなセンサーの一つ、Cyranose(登録商標)320(C320)は、COTSの手に持てる気体特定システムであり、その一つの側面は:(1)与えられた気体の特定のパターンを返す高分子複合材料センサー(PCS)アレイ;(2)センサーアレイに気体を与えるための空気圧系統;および(3)アレイパターンに基づいて気体を特定するためのパターン認識アルゴリズムの実装、を含む。C320は、CWAs(例えば、GA,GB,HN−3、VX)ならびに、TICs(例えば、ヒドラジン、アンモニア、ホルムアルデヒド、エチレン、酸化物、差駐在)のポイント検出器として良く実験されている。
【0025】
図3aは、本発明の態様による携帯できる検出器デバイス10を示す。ハウジング構造が、一または二以上のセンサーのアレイ15、好ましくはここで議論したように一または二以上の高分子複合材料センサー(PCS)、を含む小さいデバイス10であることが望ましい。デジタル信号プロセッシング(DSP: digital signal processing)ユニット20は、センサーアレイ15からの信号を受け取り処理し、メモリー40にデータを記憶する。空気ポンプシステム35は、センサーアレイ15に気体を供給するのを補助するために任意で備えられる。ある側面では、例えばプログラムによって決められた、またはあらかじめ設定された閾値状態または閾値を超えたときなど、警報の状態が決定されたときに動作可能な警報を提供するために警報モジュール25が含まれる。警報装置25は、LEDなどのライト、振動モジュール、および例えばスピーカーなどを含む音を出すモジュールを含むことができる。中央警報システムなどの外部インテリジェンスに知らせるため、一または二以上の通信モジュールが備えられる。ある側面では、通信モジュールは、命令システムまたは中継ノードなどの外部のデバイスにRF信号を送信するためのRFトランスミッター(またはトランシーバー)などのインターフェイスデバイスを含む。通信モジュールは、命令およびデータを受け取るためのRFアンテナ(またはトランシーバー)などの受け取りデバイスを含むこともできる。コンピュータシステムなどの外部のインテリジェンスデバイスまたはシステムと接続するための他の有用なインターフェイスの種類は、IRトランスミッター、ブルートゥース、RS−232、USBおよびファイヤーワイヤーインターフェイス、およびその他のワイヤレスおよびフィジカルコネクタインターフェイス(および関連するプロトコル)を含む。参考文献としてここに全ての目的のために組み込まれる米国特許6,422,061号は、例えばワイヤレスで、分散型ネットワークと接続するように構成された手に持てるセンサーシステムを開示する。
【0026】
デバイス10の全ての構成要素は、好ましくは一または二以上のバスを通じて連結されているが、特定の用途に適するように個別的直接的に接続されても良い。着用できるバッジデバイスの態様では、例えば特定の用途のための利便性または必要性のために、ポケット、シャツのラベル、ベルト、首の周囲、などに取り付けるように、クリップ、ストラップまたはピンなどの取り付けデバイス45が備えられる。好ましくはバッテリーおよびバッテリー状態のモニター(例えばLED)も含まれる(図に記載なし)。
【0027】
図3bは本発明の他の態様による携帯できる検出器デバイス100を示す。好ましい側面では、デバイス100は、携帯でき、着用でき、低電力要求で、自己キャリブレーションできる。図に示すとおりデバイス100は、センサーアレイ(図に記載なし)からの信号を受け取り、プロセッシングモジュール120(例えばDSP)に信号を供給するように構成されたセンサーインターフェイス回路モジュールを含む。プロセッシングモジュール120は、様々な環境のイベントまたは状態を検出し特定するために、以下に議論するとおり受け取った信号を処理する。イベントの検出および特定に関連する様々なデータ、パラメータおよびアルゴリズムを記憶するために、メモリ140はプロセッシングモジュール120によって使われる。RFトランシーバーモジュール160は、リモートコンピュータシステム、センサーの分散型ネットワーク内のベースステーションまたはノード、リモート警報システム、その他の外部のインテリジェンスソースへ情報を送信し、および、そこからの情報を受け取るように構成される。警報モジュール125は、LEDなどの目に見えるインジケーター、ブザーまたはスピーカーなどの音によるインジケーター、および振動のインジケーターの内の一または二以上を含む。プロセッシングモジュール120は、警報イベントの検出および/または特定に応答して警報モジュール125を作動させる。イベントの検出および特定処理に関連した目に見える情報を使用者に提供できるように、任意のディスプレイ135が備えられる。直接の接続(例えばUSB、ファイヤーワイヤー、RS−232)または遠隔の接続(例えばワイヤレス)のいずれかによる、外部インテリジェンスとの通信パスを提供するために、通信モジュール130が含まれる。モジュール160および130のいずれか一つまたはその両方が検出器デバイス100に導入されても良いことは、歓迎されるであろう。
【0028】
電力供給回路155は、デバイス10の動作の様々なモードを制御するために備えられる。以下においてより詳細に記載するように、例えばある側面においてデバイス100をスリープモードまたは省電力消費モードにし、また、デバイス100を起動または最大電力消費モードにするように、電力供給回路は構成される。バッテリー145は電力供給源として備えられる。バッテリー145は、旧来のバッテリー、太陽電池(ソーラーセル)、またはその他の電源を含んでも良い。以下においてより詳細に記載するように、バッテリー145の代わりにまたはこれに追加して、遠隔で電源を入れるためにいくつかの態様ではRFタグ150が備えられる。着用できる態様では、取り付けデバイス(図に記載なし)も含まれる。
【0029】
ある側面では、デバイス10および100は、好ましくはカード型またはバッジ型のプラスチック構造、または、使用、移動、着用、使用者への取り付けなどを容易化できる小型の構造などのハウジング構造上またはその内部に導入される。携帯性および着用性、低電力消費、自己キャリブレーション、およびイベントの検出および特定を含む、デバイス10および100などの本発明のセンサーデバイスのさらなる側面を、高分子複合材料センサー(PCS)部材を含む実装に特に注意を払って説明する。しかしながら、PCS部材以外のセンサー部材を追加的または代替的に使用できることが理解されよう。
【0030】
センサーインターフェイス
高分子複合材料センサーアレイを参照すると、価数によらずに低レベルの定常直流を提供するために、定常電源が備えられる。研究により、100uA以下のバイアス電流でセンサーのノイズが大幅に減少することが示されている。センサーはわずか5〜10uAで動作すると示される。また、定常電流が、高い直線性によってより正確なセンサーの応答を検出する手段を提供する。
【0031】
低い電力消費
典型的な高分子複合材料センサー部材は、およそ2KΩ〜100KΩのベース抵抗を示し、一般的にはおよそ10KΩである。ピーク電力消費(センサー部材ごと)は、(10uAの定常電流で動作するスキームを用いて)以下のように簡単に計算できる。
【数3】
さらに、センサーを継続的にアクティブにする必要がない場合には、この値はさらに減らすことができる。すなわち平均電力は、
【数4】
となる。ここで、DF(duty_factor)はデューティーファクターであり、変換時間/応答時間のパーセンテージを示す。変換時間は、センサーの応答を感知し情報を処理するのにかかった全時間を示す。変換時間は典型的にはミリ秒のオーダーである。
【0032】
一つの側面では、本発明のデバイスの動作は、有利なことにミリワット以下の電力要求であり、また、一PCSセンサーのみを含む一定の態様ではさらに低い電力要求である。1ミリワットで動作するデバイスの典型的な寿命は、およそ数週間から数年またはそれ以上のオーダーである。さらに、電力管理能力は、電力源の寿命をのばすと共に電力要求を減少させる。
【0033】
着用できるデバイスの一つの目標は、理想的な電力管理である。本発明の電力管理方法の一つの態様を図22に示す。一つの側面では、デバイスは必要な応答時間に応じて、70%以上または80%以上または90%以上という非常に長い時間、スリープモードまたは極低電力モード200に置かれる。プロセッサーは、例えば電力供給回路155からの起動信号に応答して定期的に起動し、センサーアレイにわたってスキャン220し、イベントが起こったかどうかまたはイベントが起きているかどうかの決定230をする。イベントが起きていない場合には、プロセッサーはスリープモード200に戻る。イベントが検出されれば、プロセッサーは、イベントを特定するためにパターン認識技術240を実行する。特定されると、例えば表示、出力信号の始動、可聴式警報の始動など、または上述の全ての方法によりイベントは告知250される。追加的な処理電力のコア平均はuAのオーダーである。
【0034】
電力源
デバイスは、オンボードバッテリーまたは太陽電池を含む様々な手段により電力を受けることができる。標準的な3Vの電池などのコインサイズのバッテリーは特に有用であり、5〜10年間またはそれ以上もつ。デバイスはRFまたはIRタグ部材またはモジュール150を備えてもよく、ここで、光学的放射または電磁エネルギーが遠隔的にデバイスに供給される。RFまたはIRタグの態様では、デバイスは即座に、情報を処理しこの情報を中継し電力源に戻すのに十分なエネルギーを蓄える。有用なRFおよびIFタグの側面は米国出願60/477,624号「化学受動センサー(Chemical Passive Sensor)」(代理人受領番号018564−007500US)に見ることができ、その内容は参考文献として本願に組み込まれる。
【0035】
自己キャリブレーション
ある側面では、システムは、定期的に全ての物理的チャンネルをモニターし、センサーの入力が電気的動作範囲内であるかどうかを決定するように構成される。範囲内でない場合には、それに応じてシステムは自動的にバイアスをかけそのベースライン読み出しを調節する。
【0036】
イベント検出
イベントの検出は、全体の電力消費をさらに減少させるために導入される。一つの側面では、イベントがまず検出され、該イベントを特定するためにパターン認識方法が使用される。例えば、一つの側面では、一度イベントが検出されると、オンボードの処理装置が起動(割り込み)し、該イベントを識別するために一または二以上のパターン認識処理が実行される。
【0037】
図23は、一つの態様による検出処理300および典型的な応答曲線を示す一般的なブロック図である。処理300の側面についての以下の説明において、ディレイタイム、平均応答、および閾値は実験結果に基づいて選ばれており、これは典型例を示すに止まり、限定をするものではない。
【0038】
データはまずそれぞれのセンサーから収集310される、例えば、センサーの応答信号が収集される。それぞれのセンサーの応答信号は、PCSセンサーの場合には、抵抗の測定値を示す。センサーが曝露されているイベントの種類に応じて、抵抗が変化する。好ましくは、それぞれのセンサー部材は異なった方法で応答する。一つの側面では、処理300はベース抵抗を移動できるようにし;応答は移動するベース抵抗の過去の値に関する最新の測定からのパーセント変化である。一つの側面では、サーキュラバッファされた回顧的な移動する平均の処理はコーディングされ、オンボードのプロセッサーに導入される。バッファされたデータは、例えばアレイ内のセンサーの数であるそれぞれのチャンネルのベースライン抵抗を記憶する時間のパラメータを示す。
【0039】
全てのセンサーのベースライン抵抗は計算315される。例えば湿度および気温などの周囲の状況およびセンサーのドリフトの緩やかな変化を説明するために、ベースライン抵抗R0は、最近の履歴に基づいて絶えず更新される。調整できるパラメータが少なくとも2つ(ディレイタイムおよび平均時間)存在する。一度の解析のデータは短い時間間隔にわたって取得されるので、ディレイタイム(またはバッファ)は200ポイント(〜2分)に設定し、平均時間は5ポイントに設定した。
【0040】
全てのセンサーの応答が計算320される。一つの側面では、抵抗の分数の変化として、ΔR/R0が全てのセンサーについて計算される。
【数5】
ここで、R(t)は現時点における抵抗の時間平均であり、R0は2分前に修正されたベースライン抵抗である。例えば障害は有害物なのか火災なのかを決定するなどイベントを特定するために、それぞれのセンサーの応答はパターン認識に用いられる。
【0041】
センサーの平均応答は計算330される。一つの側面では、センサー平均の応答(ΔR/R0)avgが、障害の存在不存在についての粗い測定を提供するために計算される。
【0042】
センサーの平均応答は閾値340と比較される。一つの側面では、例えば、
【数6】
(または他の閾値、例えば0.01)を満たす場合には、センサーの平均応答はとても大きいので、例えば通常の動作からの障害が検出されたといったイベントが検出されたことを示す。閾値は前もって設定しても良いし調節できるようにしても良い。環境状態の変化、または例えば火災などの環境の状態の存在によって、センサーの応答は増加および減少するので、障害の大きさを評価することが必要である。障害が検出されなかった場合は通常の動作を続ける。
【0043】
パターン認識
イベントが検出される350と、処理装置はスリープモードから起動する(例えば図22参照)。全てのチャンネルからの応答は一時的にRAMなどのメモリーに記憶され、既知の化学物質のパターンと比較される。用途に応じて、単純なパターン認識技術から極めて複雑なものまで、導入することができる。そのような技術には、k近傍法(KNN: K-nearest neighbor)、カノニカル識別分析(CDA: Canonical Discriminate Analysis)、シムカ(SIMCA: Soft Independent Modeling of Class Analogy)、確率的ニューラルネットワーク(PNN: probabilistic neural network)、人工ニューラルネットワーク(ANN: artificial neural network)、サポートベクトルマシーン(SVM: support vector machine)、フィッシャーの線形判別法(FLD: Fisher Linear Discriminate)、およびその他を含む。
【0044】
着用できるバッジの態様では、例えば襟、またはシャツまたはズボンのポケットにクリップまたはピンでつけ、または首回りに着用するなどしてつけるなど、検出器バッジは個人に着用することができ、電源を入れたときには通常の検出器の状態(例えば、緑色LED、警報なし)およびバッテリーの状態(例えば、緑/赤色LED)を着用者に知らせる。状態チェックの後、検出器バッジは環境を連続的にモニターし、検出された危険なイベントを、例えば可聴式、可視式(例えば赤色LED)、および/または振動式などの警報によって知らせる。検出器バッジは、データを記録するモジュールおよび、バッジのID、状態の情報、および警報の状態の情報などの情報を中央モニターステーションにワイヤレス送信するためのモジュールを含んでも良い。適切な動作を確認するため、定期的にまたは使用前に行う供給された標準を用いた検出器の標準化、およびバッテリーの取り替えまたは充電が、要求される典型的な使用者のメンテナンス活動である。
【0045】
空気圧系統35のないワイヤレスの携帯できる検出器は、大きさ、コスト、電力要求、および頑丈さが特に求められる用途において、実行することができる。このような小型検出器はTICsおよびCWAsのためのバッジ検出器として有用である。さらに、必要なフィードバックが個人用警報のみである場合には、バッジデバイスから通信モジュール30を除去することができる。
【0046】
ある側面では、モジュール式の検出器デバイスが提供される。例えば、検出器デバイスまたはセンサーモジュールは、通信モジュールに連結されても良い。例えば、ある側面におけるバッジデバイスは、検出器デバイスを分散型ネットワークに組み込むことができる薄い通信プラットホームに差し込むように構成される。該プラットホームはワイヤレスおよび有線のネットワーク接続を含むことができる。センサーモジュールは、空気圧系統、通信、キャリブレーション、再充電、およびその他のモジュールなどの、追加のあらゆるモジュールと連結することができる。他の例として、検出器デバイスは、例えば以下においてより詳細に議論するように人口呼吸器のカートリッジに挿入することで、残留寿命のインジケーターとして実行することができる。
【0047】
イベント検出および解析
好ましい側面では、検出器デバイスに組み込まれたデジタル信号プロセッシング(DSP)ユニット20は、センサーの応答を実用的な反応値に変換する。その用途における必要性に応じて、少なくとも3つの異なった種類の技術を使うことができる。これらの種類を複雑さが増す順にリストすると:
・単純検出:閾値は、それぞれのセンサーまたはアレイ全体の応答に適用される。閾値のロジックを満足すると、警報の状態が検出される。例えば、アレイの中のいずれか4つのセンサーが閾値を越えた場合には、例えば警報25が始動するなど、警報が始動する。
・パターン認識:アレイからの応答パターンは、トレーニングセットまたはライブラリーに貯蔵されたパターンと比較される。適合が見つかった場合、気体の特定が返される。有用なパターン認識技術は、KNN、CDA、SIMCA、PNN、ANN、SVM、FLD、およびその他を含む。
・定量化:ある側面では、アレイからの応答は気相内の検体の濃度を計算するために用いられる。
【0048】
ある側面では、これらの技術は個別的にまたはうまく組み合わせて使用することができる。例えば、単純検出はイベントが起こっていることを検出するために用いることができ、パターン認識は該イベントの性質を特定するために、イベントの検出の後に用いることができる。このようなDSPの方法論は、ULおよびBSIラボラトリーのテストにおける火災検出器などの、受動センサーアレイ内でうまく用いられてきた。
【0049】
化学的なイベントでは、TICsおよびCWAsの存在の検出についての要求としてIDLHレベルが特定されたので、検出器の最小検知レベルが重要である。ある側面では、一つのセンサーの最小検知レベル(MDL: minimum detectable level)はその検出限界によって測定される。検出限界は、特異検体のセンサーの性能を示す有用な概念であり、典型的には信号−ノイズ比がある閾値(例えば3)を超えるセンサーの応答を生じる濃度として定義される。同じレベルの応答を引き起こす他の化学物質がほとんどないので、検出限界は特異検体センサーに適している。一般検体アレイの一つのセンサーに検出限界を適用する場合には、センサーが特異性を持っていないのであらゆる化学物質が応答を引き起こす。一般検体センサーアレイの性能を示す場合は、弁別限界および確認限界がより有用な概念である。弁別限界は、パターン識別方法が同伴ガスのみから同伴ガス内の検体を識別するために使用できる検体の濃度として定義される。確認限界は、検体の存在を常に識別するためにパターン識別方法が使用できる検体の濃度として定義される。確認限界は、ある側面において、好ましくは、MDLの性能の尺度として使用される。
【0050】
等式2は個別の高分子複合材料センサーに対して有効であるから、この等式は、他の化学物質についてのセンサーアレイのMDLを見積もるために、化学種についての実験データを用いて使用することができる。図2は、CWAsおよびTICsの濃度対蒸気圧のプロット上のIDLH濃度を示す。図2において、センサーアレイは、‘‘C320のセンサーの最小検知レベル(見積もり)’’と書かれた領域より上に点を持つ検体に対して高い識別確率を持っている。この領域を最小検知レベル領域(RMDL: region for minimum detectable levels)と呼ぶ。センサーアレイは、RMDLの内部または下に点を持つ検体に対してそれぞれ、中程度または低い識別確率を持っている。RMDLから下へ離れるほど、気体の識別確率は低下する。
【0051】
下記の理由により、MDLについては、好ましくは一本の線よりも領域を用いる:
・環境状態のばらつき:より多くの変量を持つ環境における用途では大きい最小検知レベルを持つ傾向にある。該用途は線Aに近い最小検知レベルを持つ傾向にある。
・サンプルのばらつき:非常に多種の検体を有する用途も大きい最小検知レベルを持つ傾向にある。これらの用途は、典型的に天然物を含み、線Aに近い最小検知レベルを持つ傾向にある。
・特異用途のセンサーアレイ:特定の用途が特定された場合、重要でない情報を除去するために特定のセンサーを使用する(またはソフトウェアでセンサーの応答を除去する)ことができ、センサーの性能が改善する。特異用途のセンサーアレイは、線Bに近い小さい最小検知レベルを持つ傾向にある。
【0052】
バッジ検出器デバイスにおいて、MDLは一般的に図2における線Bに近い。二つのばらつきの効果が、ほとんど同じ大きさで逆の効果を持つ。バッジ検出器は野外で使用するデバイスなので、環境のばらつきはMDLを増大させる傾向にあるが、化学物質はよく特定されているのでサンプルのばらつきは小さく、MDLを低くする。用途はCWAsおよびいくつかのTICsに焦点を当てているので、その用途に応じたもっとも適切なセンサーアレイを用いることでMDLは改善できる。
【0053】
C320のテストにより図2の見積もりを確かめる。独立の研究所(Midwest Research Institute and Battelle Memorial Institute)で行われたCWAsの制御されたテストの間にC320のセンサーアレイは、タブン(GA)、サリン(GB)、ソマン(GD)、VX、サルファマスタード(HD)、およびナイトロジェンマスタード(HN3)を9ppbvの限界値またはそれ以下で検出した。米軍エッジウッド化学生物学センターによる追試は、C320がGB、GD、VX、HD、マラチオン、およびDMMPを正しく識別できることを示している。
【0054】
本発明による検出器デバイスは、麻薬、爆発物(例えば、TNT、C4、RDX、およびその他)、および危険な物質を特定し、識別することができる。
【0055】
本発明の一般検体の化学物質警報デバイスは、有利なことに広範囲の種類の化学物質から生じる化学的危険イベントを検出することができ、ごくわずかなTICsの所定の候補リストに限定されない。ある側面では、上述のイベント検出、弁別、および干渉除去技術の使用による、センサーの材料の組み合わせおよび検出器の動作上の設計(アルゴリズムおよびハードウェア)を通じて、干渉および交差反応の効果は最小化される。
(1)イベント検出:数分から数時間をかけておこる気温、湿度、または化学的バックグラウンドによる環境の変化(偽陽性)を危険なイベントであると認識することはない。第二に、高分子複合材料センサー(PCS)は線量計ではない;数日/数年にわたる低レベルの汚染の蓄積は、警報のトリガーにはならない(比色分析のインジケーターとは異なる)。第三に、高分子複合材料センサー(PCS)は安定で、他のセンサー(例えば導電性ポリマー)に比べて湿気に敏感でない。PCSセンサーとイベント検出の組み合わせが偽陽性のリスクを最小化する助けとなる。
(2)識別:リアルタイムパターン認識技術は好ましくは化学物質の種類を特定するために使用される。認識されない化学物質は警報の登録をしない(偽陰性)かもしれないが、弁別が後に続く化学イベント検出の利用によって、二段階アプローチが偽陰性のリスクを最小化する。この場合、新規で未知の脅威化学物質であっても、閾値を越える危険として警報の登録をする。
(3)干渉除去:さらに、リアルタイムパターン識別は好ましくは、例えば波しぶき、漏れ、洗浄による湿気の増加など、除去されなければ化学イベントして登録するかもしれない既知の干渉をふるいにかけ除去するために用いられる。
【0056】
着用できるバッジ検出器の態様では、高分子複合材料センサーアレイは、好ましくは、(1)種々の環境下で頑丈かつ安定であり、(2)小型で、軽く、着用でき、(3)製造するのに費用がかからず、また(4)低電力消費システムである、ので有利である。このような優位性の詳細は以下の通りである:
・頑丈かつ安定:高分子複合材料センサーは湿気がある中で安定であり、広い湿度範囲(0〜99%)でセンサーアレイの動作が可能である。PCSセンサーアレイは、水溶液中で連続5000時間近いテストをし、センサーの安定性には影響がなかった。該アレイは広い温度範囲で使用することもできる。温度範囲−15℃〜40℃におけるテストを、センサーに影響を出さずに完了した。最後に、該アレイは貯蔵寿命が長い。センサーアレイは実験室の制御されていない環境下で3年まで貯蔵することができ、使用前に特別な前処理は必要ない。
・小型、軽量、および着用できる:チップは寸法がおよそ1.25”×1.25”×0.25”、重さ2〜3オンスで導入できる。好ましい側面では、チップおよびそれに伴いいくつかの態様におけるデバイスは、設置面積がおよそ4平方インチ以下(例えば2”×2”)であり、より好ましくは、およそ1平方インチ以下(例えば1”×1”)である。チップは、処理装置、バッテリー、およびセンサーを含む。必要であれば、さらなる小型化が達成できる。
・安価:センサーは少量のカーボンブラックとCOTSのポリマーを含んでいるので、高分子複合材料センサーは安価である。センサー材料の直接のコストは、例えば注目すべきことに0.01ドル以下などと、非常に低い。
・低電力:高分子複合材料センサーは、通常の動作中μWの電力しか要求しない。チップは、典型的なバッテリーで6ヶ月またはそれ以上動作できる。
【0057】
一つの態様では、湿度可変の環境中で動作する4チャンネル検出器が、未知の組成物による一時的な化学イベント(悪臭)を検出し、プログラム可能な閾値を超えたときにRFリンクを通じて警報/応答のトリガーをする。一つの側面では、警報のみの状態で、センサーから情報が送信されない。このようなデバイスの一時的なイベントに対する典型的な応答曲線が図4に示され、このようなデバイスの例が図5に示される:背面はバッテリーとアンテナを含んでいる。好ましいバッジの態様では、空気圧系統はなく、検出器は連続的に環境に曝露される。
【0058】
火災の検出および防止
ある側面では、本発明によるデバイスは火災の検出および予防における活動に特に有用である。そのような態様では、本発明のデバイスは、好ましくはPCSアレイおよび一または二以上の、光検知器、イオン化検出器、温度検知器などの追加のセンサーモジュールを含む。ここに全ての目的のために参考文献として組み込まれる公開されたPCT出願WO00/79243号は、ここに記載される他の検出用途と同様に、火災の検出および予防の用途に有用な複数のセンサータイプを含むセンサーシステムを開示する。該PCSアレイおよび含まれる他のセンサーからの信号はモニターされ、擬陽性を減らすように高い信頼性を持って、イベントおよび障害を検出し火災源と障害源とを弁別するように構成されたアルゴリズムによって処理される。図6は、本発明の態様による検出器デバイスを含む火災検出システムの例を示す。
【0059】
多くの現在の化学センサーアレイは、長い時間火災が活発に続いた後に、タイプの異なる火災を識別することができる。しかしながら、時間こそが本質であるからこの使用モデルは火災検出には適切でない。本発明によれば、アルゴリズムはイベントをできる限り早く検出し、即座にそのイベントが障害なのか火災なのかを特定する。以下のセクションでは、火災と障害のデータの例を開示する。
【0060】
火災および障害のデータ
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
一つの態様では、単純検出はイベントが発生したことを検出するために使用され、パターン認識は該イベントの性質を特定するために使用される。このイベントの検出および識別についての二段式アルゴリズムアプローチは、高分子複合材料センサーに使うと効果的である。全ての火災は検出されなければならず、理想的には障害は全く検出されないと良い。しかし、第二のアルゴリズムがこれら二つのグループのイベントを区別するので、この時点ではイベントが火災なのか障害なのかは問題ではない。
【0063】
検出アルゴリズムには、好ましくは全ての火災および最小の障害を検出するように最適化された数種のパラメータがある。これらのパラメータは:
・平均化のために使われるセンサーのタイプと数;
・時間による平均化のために使われるポイント数;
・バッファ(ディレイ)内のポイント数;
・閾値外の連続的なポイント数;および
・検出閾値の値
を、含む。
【0064】
32個のPCSセンサーを用い、32のセンサー全てが使用されバッファポイントの数はパラメータである場合の典型的な応答を図7に示す。該パラメータは時間の影響をほとんど受けなかったが、バッファのポイントの数は応答の全体的な大きさに劇的な影響を与えた。
【0065】
一度イベントが検出されると、アルゴリズムの第二の部分がイベントの性質を火事または障害として特定する。図8は、シムカ(SIMCA)を用いたモデルを示す。
【0066】
さらなる有用なアルゴリズムが2002年3月29日出願の米国出願10/112,151号(代理人受領番号018564−007600US)に開示されており、その内容はここに全ての目的のために参考文献として組み込まれる。
【0067】
保護のための吸収ベースのフィルター
ある側面では、本発明のデバイスは保護のための吸収ベースのフィルターシステムとして有用である。保護のための吸収ベースのフィルターの実際に有用な寿命は、吸収材料の量、吸収剤と吸収される物質の相互作用、および化学的曝露時間と濃度の関数である。これらのデータはほとんどいつも未知であるから、製造者の推薦および市民と軍の指示は、少ない数の化学物質およびテストシナリオに基づいており、いつフィルターを取り替えまたは再生するかについて粗い指針を提供するのみである。またほとんどの場合において、いつ曝露が始まり終わったのか、および環境に何の化学物質がどんな濃度で存在するかを最終使用者は知らない。フィルターまたは空気の通路に導入された本発明のセンサーデバイスは、フィルターの吸収容量が所定のレベルに達したとの時機を得た警告を使用者に提供することができる。これは、使用者が危険な場所を抜け出すこと、および、メディアを取り替えまたは再生し、これらの人員に対する潜在的な危険を低下させることを可能にする。従って、一つの側面では、揮発性有機化学物質(VOCs: Volatile Organic Chemicals)およびその他の危険な物質についての個人用の保護用フィルトレーションシステムのための、安価、低電力、軽量、頑丈、安定、かつ正確な残余寿命インジケーターを提供するために、本発明は保護用フィルトレーションシステム中の高分子複合材料センサーアレイを提供する。このようなシステムは、例えば、フィルターブレイクスルーシステム(filter breakthrough systems)、室内空気質の用途、客室送風システム、個人用防護服、および自動車に有用である。
【0068】
一つの態様では、(IDLHレベルにおける)ブレイクスルーイベントの連続的な検出およびそれに続く吸収容量の消費に対応し、それ故、残余寿命を示す警報の出力のために、複数の小型センサーデバイスはフィルター装置中の様々な深さに位置する。最後のセンサーは、フィルターカートリッジの過度の消耗無く危険な場所から脱出できる時間があるように、適切に設置される。
【0069】
図11は、本発明の態様による残余寿命インジケーター装置の略図である。図示のように、検出器をガス流路内のフィルター材料内に埋め込むことによって、検出器は連続的に位置する。入り口およびほぼステージの幅にわたって検体の濃度が、ガスクロマトグラフィーにより半連続的に、また、センサーの出力によって連続的にモニターされる。第一のフィルター装置が突破された一方で、守られている下流側の検出器2および3は応答していないときに、上流側のセンサー1は検体の存在に応答する。これは、フィルターシステムの容量の3分の1の消費(3分の2の残り)と類似である。流入の継続に伴い、第二のフィルター装置が突破されたときに下流のセンサー2が応答する:これは3分の2の消費(3分の1の残り)に対応する。最後のフィルターは気体洗浄装置としても機能する。フィルター装置の内のほぼステージの幅にわたる濃度は、高分子複合材料センサーによると共に、ガスクロマトグラフィーによってもモニターされる。
【0070】
図9は、一または二以上のPCSセンサーを含む耐久年数終了インジケーター(ESLI: end-of-service-life indicator)が有用な化学物質フィルターシステムの例を表す。
【0071】
図10は、本発明によるワイヤレスセンサーデバイスの分散型ネットワークを含むシステムを表す。図示のセンサーは、空気浄化装置または検出システムに導入することができる。
【0072】
図12は、本発明の態様による検出器デバイスモジュールを含むマスクベースのフィルターインターフェイスシステムを表す。フィルターインターフェイスシステムはフィルターベースの検出器と通信し、フィルターの状態に基づいて使用者に状態/警報の出力を提供する。フィルターインターフェイスモジュールは、好ましくはフェースマスクに着接され、バッテリー、信号処理回路、および/またはフィルターの状態を示すためのソフトウェアと視覚的および可聴式の警報装置を含む。このような配置は耐久力のある電子機器をマスク内に配することおよび再利用を可能にし、それによって該システムの動作コスト(フィルター)を最小にすることができる。ノイズの多い工業的環境下で使用者への通知の確実さを増すために視覚的および可聴式の両方の合図を提供する一方で、バッテリーの電力使用は最小化される。使用者の不便を増大させず、機能強化された防護システムを使用する気をそがないように本発明の検出器デバイスを使用することで、サイズと重さは有利に最小化される。
【0073】
センサーアレイ
ある側面では、複数のセンサーのタイプが高密度の基板、好ましくはシリコンチップ、またはその他のよく知られる基板物質に組み込まれる。高分子複合材料および導電性ポリマーに加えて、有用なセンサー材料は、例えばナノスケールポリマー複合材料、カーボンナノチューブ複合材料、ナノゴールド複合材料、本質導電性ポリマー(intrinsically conducting polymers)、本質導電性ポリマーに基づくゾルゲルバイオセンサー(例えば、ゾルゲルのカプセル入りの酵素に基づくセンサー)、自己組織化単分子膜(SAM: self assembling monolayer)材料などのバイオポリマー、およびその他を含む。
【0074】
このような高密度アレイの優位性は、非常に変化に富んだセンサーの特性によってシステムを構成できること、および高度の余剰を含むことができる(人員用システムの両方の特徴)ことを含む。余剰の重大な利益の一つは、ルートnノイズリダクションであり、ここで、nは同一センサー部材の数である。例えば、64個の同一のセンサーを含むと、全体の信号とノイズとの比は、単一のセンサーの場合に比しておよそ8倍になる。少なくとも従前のセンサーよりもはるかに感度の良いセンサーは、それ故高度の余剰を通事で達成される。このような余剰は長期間の安定性およびシステムの全体的頑丈さの点からさらなる利益を有する。
【0075】
ある特定の態様によると、アレイは900個のセンサー(例えば30×30)を有するが、より少ない(例えば1個または数個)またはより多い(1万個のオーダーのセンサー(例えば100×100))センサーを有するアレイが導入されても良いことが理解されるべきである。一つの側面では、センサー間のスペースが50μmである50μm2のセンサー部材が使用される。これはおよそ30mm2に900個のセンサーデバイスのダイ(およそ1cm2に10,000個のセンサーデバイス)を生み出す。アレイを有するデバイスは、好ましくは、A/Dコンバータのチップおよびさらなる処理によって多重化されたデータを用いて単純ローカラムアドレッシングスキーム(simple row-column addressing scheme)で動作するが、その他のアドレッシングスキームを使用することもできる。アドレッシングの例を図13に示す。ある側面では、センサーは連続的に一つずつ読み取られる。アレイのサイズが大きくなるにつれて、センサーの読み込みの待ち時間が最小であることを確かにするために、より大きい外部のバンドウィドゥスが典型的に要求される。例えば、列全体を一度に読み出すなど、センサーは並列的に読み出されることもできる。その他、アドレスイベントコーディング("address event" coding)などのより高度なスキームをセンサーの読み出しのために用いても良い。この方法では「重要な」センサー(すなわち始動しているもの)がまず読み出され、その他の始動していないセンサーよりも頻繁に読み出される。
【0076】
図15は、一つの態様によるテスト単位センサーセルを示す。図示のセルは、好ましくは2ミクロンのCMOSプロセスを用いて作成する。センサーセルはトランジスターおよびデコーディングロジックを含む。ある側面では、主としてICプロセス内の二つの金属層のみによって、それぞれのセンサーセルにあるトランジスターはデコードをする。回路M1〜M4は、アレイの周辺にあるシフトレジスタによって生成されたXおよびYの選択信号をデコードする。選択信号は、センサー抵抗素子を通る電流(Iin)を切り換えるスイッチM7を制御する。この設計の一側面は、電力消費を減じるために一つのセンサーのみにエネルギーが与えられる。ノイズおよびスイッチの抵抗を減じるために、トランジスターM7はセンサー面積の大部分を占める。デコーディング回路は、カラムの電圧を出力バスへと通すトランスミッションゲート(例えば、M5、M6、M8、M9)の選択もする。この信号は、オンチップで処理されても良いが、好ましくは増幅され処理のためにチップ外へ送信される。
【0077】
図16および17は、図15に記載されたようなセルの典型的なI〜Vの応答およびオクタノールに曝露したときのセルの応答を示す。
【0078】
一つの態様では、センサーにおけるゲイン、ベースライントラッキング、およびレシオメトリック検出を提供するために、アナログ回路が含まれる。レシオメトリック検出は、マイクロプロセッサーで計算することなく、鍵になる測定基準ΔR/R、すなわち化学物質による抵抗の変化をベースライン抵抗で割ったもの、の直接の読み出しを可能にする。図18は、本発明の一態様による適用可能なバイアス回路200を示す。回路200は一つの単純なアナログ回路の中で、ベースライントラッキング、レシオメトリック出力、および交流結合を提供する。
【0079】
アルミニウムを導電性のトレースおよびリードに使用することができるが、アルミニウムの時間経過による酸化のため、トレースおよびリードを作るために無電解の金のプロシージャーを使用するのが好ましい。
【0080】
ある側面では、多くの表面改質カーボンブラック(SMCB: surface modified carbon black)材料が化学物質検出に最適化される。これらの材料は、参考文献としてここに全ての目的のために組み込まれる米国特許6,336,936号に開示されるプロセスにより生産できる。このプロセスは、分子またはポリマーとカーボンブラック粒子の表面との直接の化学的な結合を作り出す。このプロセスは、結合する有機フラグメントに組み込まれている化学的分化によって、高度に分離性のある粒子をナノメートルサイズの領域(典型的には100nm)内にする。これらの材料が、化学的に似ている二層の(カーボンブラックがポリマー中に分離している)センサーに比べて、検出の用途に優れていることが実証されている。
【0081】
一つの側面では、化学的に異なる溶剤の中で分離できる4つのSMCB材料が使用される。これらを図19中に示す。これらの材料は、ナノメートルサイズの領域において安定であり、優れたインクジェットの候補であることが実証されている。他の有用なインクジェット材料は、表面改質金ナノ粒子形成またはナノチューブ形成を含む。
【0082】
本質導電性ポリマーの溶液と分散液が蒸着させられても良い。このような材料は、好ましくは上述のセンサーの検出特性を補完する。好ましい導電性ポリマーはポリアニリンおよびポリチオフェンを含み、その構造は図20(a)および(b)に示される。これらのポリマーが電導状態に転換している間に、ポリアニリンのプロトン化による共役酸として、あるいは、ポリチオフェンの場合における酸化剤の陰イオンとして、陰イオン(または対イオン)が形成される。これらの対イオンの構造および化学量論が、様々なVOCsに対する導電性ポリマーの選択性および感度に重要な役割を演じることが実証されている。
【0083】
他のセンサー材料は、酵素をベースとしたバイオジェルセンサーを含む。文献報告は、ゾルゲル合成法を含むカプセル化プロセスを通じて、安定で多孔性のシリカガラス基質内での酵素およびその他のタンパク質の固定の実現可能性を確立した。例えば、参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許5,200,334号に開示されるように、生体分子がその特徴的な反応性および分光的特徴を保持し続けるように穏やかな状態において、亜鉛銅スーパーオキシドジスムターゼ、チトクロムc、およびミオグロビンを固定することができる。ここではバイオジェルとする、この新種の材料の合成における一つの鍵になる特徴は、ゾルゲルプロセスの溶液の化学的特性の柔軟性である。この分野の研究は世界中で急速に行われており、ゾルゲル由来の基質の微細孔に閉じこめられたとき、幅広い範囲の生体分子がその特徴的な反応性および化学的作用を保つことが、良く確立されている。このようなカプセル化プロセスは概略的に図21に示される。
【0084】
ゾルゲルカプセル化プロセスを多数のその他の酵素およびその他のタンパク質に拡張することに加えて、研究者は、抗体(J. Livage, et al, J. Sol-Gel Sci. Technol. 7, 45 (1996))、細胞(E.J.A. Pope, et al, J. Sol-Gel sci. Technol. 8, 635 (1997))、および光化学系(B.C. Dve, et al, Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 435, 565(1996))すらも含むように生体分子ドーパントの種類を拡張している。生体分子は物理的に固定されており、また無機基質と共有結合しておらず、それゆえ生体分子をゲルに導入する能力は合成の状態がタンパク質の凝固または変性を生じさせないことのみを要求する(J.M. Miller, et al, J. Non-Crystalline Solids 202, 279 (1996))、ということを強調することが重要である。一般的に、これはゾルは最小限のアルコール含有と7に近いpHを持つべきであることを意味する。当初のゾルにESI分子を導入することは、その添加された分子の周囲に無機網が成長する「鋳型」効果になる。この理由のために、より小さい分子が微細孔網を通って自由に流れる一方で、より大きい生体分子が基質内で固定される。従って、微細孔網を通じて検体が自由に入り拡散する一方で、タンパク質巨大分子が基質内に固定されるように、ゾルゲルガラスの微細構造が作られる。化学修飾を用いない物理的閉じこめはタンパク質の構造および機能性を保存し、タンパク質がアンフォールドされること(変性)から守る。ゾルゲル固定の独特な特徴は、(1)簡単で、単純で、化学修飾のより普遍的な手段は必要ないこと、(2)これらの材料は生体分子にダメージを与えずに扱えることから永続性および耐久性が増加すること、(3)生物学的に活性な材料は大きなモノリスまたは薄いフィルムとして準備できることからセンサーの設計がより柔軟になること、および(4)生体分子は物理的、化学的、および微生物学的にガラス基質に守られているので、安定性が増すこと、を含む。多孔質のシリカガラス内でカプセル化されることによる安定性の増加は、ゾルゲルアプローチの最も重要な利点であると言えるかもしれない。水性緩衝液では65℃で変性が起きたところ、シリカでカプセル化されたサンプルは温度変性は95℃まで起こらなかったので、温度に対する安定もまた増加した。酵素の安定性における実質的な改善も観察された。ブチリルコリンエステラーゼを用いた研究では、ゾルゲルカプセル化サンプル内では、保存剤なしで80%以上の酵素の活性が40日間保持された。対照的に、同条件下において、水性緩衝液内ではおよそ20日後に酵素の活性はほぼ完全に失われた。酵素の安定性の注目すべき増加はChenら(Q. Chen, et al, J. Am. Chem. Soc. 120, 4582 (1998))によって報告されており、ここではゾルゲルシリカ基質内のブドウ糖酸化酵素の63℃における半減期が、水性緩衝液中にある場合に比べ200倍になった。これらの結果は、カプセル化されたバイオインジケーター分子の非常に強化された安定性が、他の報告されている固定技術を超えて達成され、デバイスの寿命を延ばすことを示す。この技術のさらなる優位性は、バイオインジケーター分子がその活性を保つために栄養液をバイオインジケーター分子と一緒にカプセル化するが、最終的な構成は実際に固体状態であって表面は乾いており、カプセル化された材料は基質からしみ出してこないことである。比較的大きい検体が基質を通じて流れ、固定されたバイオインジケーター分子と相互作用をするように、該微細孔の大きさを制御および修正する方法が報告されている。
【0085】
従前の報告は、物理的に固定された生体分子を含むゾルゲル材料は光学的検出用途のための能動素子またはトランスデューサーとして機能することを示す。
例えば、
【表3】
を参照されたい。
【0086】
用途
ある側面では、本発明によるデバイスは幅広い業務用用途において、イベントおよび状態の検出および解析をすることができる。これに限定されるものではないが、該用途は以下のものを含む:
・ユーティリティおよび電力、オイル/ガス石油化学製品、化学物質/プラスチック、自動空調制御(調理、タバコなど)、重工業生産、環境毒性および改善、生体臨床医学、化粧品/香水、医薬、運輸、緊急の応答および法規制、などの産業における用途;
・可燃性ガス、天然ガス、H2S、周囲空気、排ガス制御、空気の取り入れ、煙、危険な漏れ、危険な流出、逸散排出、危険な流出の検出、識別、および/またはモニタリング;
・新鮮さの検出、果物の熟成の制御、発酵の処理、および香りの合成および識別、などの飲料、食品、および農産物のモニタリングおよび制御;
・非合法な物質、爆発物、変圧不良、冷却剤および燻蒸剤、ホルムアルデヒド、ディーゼル/ガソリン/航空燃料、病院/医療の麻酔および消毒ガスの検出および識別;
・遠隔手術、体液の解析、創薬、伝染病の検出および呼吸の用途、労働者保護、放火の捜査、個人認証、周辺のモニタリング、香料の形成;および
・溶剤回復の有効性、燃料補給作業、運送用コンテナの捜査、閉ざされた空間の調査、製品品質検査、材料品質制御、製品識別および品質検査。
【0087】
付加的なセンサーアレイ
ある側面では、本発明のデバイスは、PCSセンサーまたはその他の化学センサーに加えて、またはその代わりに、多くの異なったセンサータイプを含んでも良い。このような付加的なセンサーのタイプは、例えば、放射線検出(例えば、ガイガー、シンチレーション、ソリッドステート)、化学、原子力、爆発物、生物的(例えば、DNA、オリゴヌクレオチド、抗体抗原、酵素反応など)火災検出、およびその他のセンサータイプ、を含む。これに限定されるものではないが、本発明のシステムおよびデバイスに適したセンサーは、一または二以上の導電性/非導電性の領域センサー、SAWセンサー、クオーツマイクロバランスセンサー、導電性複合材料センサー、ケミレシター(chemiresitor)、金属酸化物ガスセンサー、有機ガスセンサー、MOSFET、圧電性デバイス、赤外線センサー、焼結金属酸化物センサー、PdゲートMOSFET、金属FET構造、電気化学セル、導電性ポリマーセンサー、触媒ガスセンサー、有機半導体ガスセンサー、固体電解質ガスセンサー、および圧電性クオーツクリスタルセンサー、を含む。本発明のデバイスは上述のセンサーおよびセンサタイプの一または二以上の組み合わせを含むことができることが当業者に明らかであろう。
【0088】
ある態様では、付加的なセンサーは、物理的刺激が存在する中で第二の応答を発生することができる一つのセンサーまたはセンサーのアレイを含むことができる。物理的検出センサーは物理的な刺激を検出する。これに限定されるものではないが、適切な物理的刺激は、温度の刺激、放射線の刺激、機械的刺激、圧力、視覚、磁気的刺激、および電気的刺激を含む。
【0089】
これに限定されるものではないが、温度センサーは、温度、熱、熱流量、エントロピー、熱容量などを含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、放射線センサーは、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、および電磁波を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、機械的センサーは、変位、速度、加速度、力、トルク、圧力、質量、流量、可聴波長、および振幅を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、磁気的センサーは、磁場、磁束、磁気モーメント、磁化、および透磁率を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、電気的センサーは、電化、電流、電圧、抵抗、電導性、電気容量、インダクタンス、誘電率、分極および周波数を含む刺激を検出することができる。
【0090】
ある態様では、温度センサーが本発明において使用するのに適している。これに限定されるものではないが、このような温度センサーは、半導体熱電対などの熱電対、雑音温度計、サーモスイッチ、サーミスタ、金属サーモレジスター、半導体サーモレジスター、サーモダイオード、サーモトランジスタ、カロリメーター、温度計、インジケーター、およびファイバーオプティクスを含む。
【0091】
他の態様では、種々の放射線センサーが本発明において使用するのに適している。これに限定されるものではないが、このような放射線センサーは、
シンチレーションカウンターおよびソリッドステート検出器などの放射線マイクロセンサー、
光伝導セルなどの紫外線、可視光、近赤外線マイクロセンサー、
フォトダイオード、フォトトランジスタ、
光伝導性IRセンサーおよびピエゾエレクトリックセンサーなどの赤外線マイクロセンサーを含む。
光学センサーも可視、近赤外および赤外波を検出する。他のある態様では、種々の機械的なセンサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、変位マイクロセンサー、容量および誘導の変位センサー、光学的変位センサー、超音波変位センサー、ピエゾエレクトリック速度および流量センサー、トランジスター流量マイクロセンサー、加速度マイクロセンサー、ピエゾ抵抗マイクロ加速センサー、力、圧力およびひずみマイクロセンサー、およびピエゾエレクトリッククリスタルセンサーを含む。
【0092】
他のある態様では、種々の化学的または生物的センサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、スズ酸化物ガスセンサーなどの金属酸化物ガスセンサー、有機ガスセンサー、ケモキャパシター(chemocapacitor)、無機ショトキーデバイス(Schottky device)などのケモダイオード(chemoidiode)、金属酸化物フィールドエフェクトトランジスター(MOSFET: metal oxide field effect transistor)、ピエゾエレクトリックデバイス、pHセンサーのためのイオン選択性FET、重合体湿度センサー、電気化学セルセンサー、ペリスターガスセンサー(pelistors gas sensors)、ピエゾエレクトリックまたは表面音波センサー(surface acoustical wave sensor)、赤外線センサー、表面プラスモンセンサーおよび光ファイバーセンサーを含む。
【0093】
種々のその他のセンサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、焼結金属酸化物センサー、フタロシアニンセンサー、メンブレイン(membrane)、PdゲートMOSFET、電気化学セル、導電性ポリマーセンサー、脂質膜センサーおよび金属FET構造を含む。ある好ましい態様では、これに限定されるものではないが、該センサーは、タグチガスセンサー(Taguchi gas sensor)などの金属酸化物センサー、触媒ガスセンサー、有機半導体ガスセンサー、固体電解質ガスセンサー、ピエゾエレクトリッククオーツクリスタルセンサー、光ファイバー探針、マイクロ電子機器システムデバイス、マイクロオプトエレクトロ機器システムデバイス、およびラングミュアブロジェット膜を含む。
【0094】
他の態様では、本発明は、Waltらによって1998年9月29日に出願され、参考文献としてここにその全体が組み込まれる米国特許5,814,524号に開示されるセンサーを用いた検出を含む。光学センサー、光学検出装置、および、関心のある一または二以上の単独または混合物中の検体の検出および評価の方法論、を含む光学検出および特定システムがそこに開示される。該システムは、支持部材およびアレイ型にされた不均一、半選択性ポリマー膜を含み、該ポリマー膜は、検出受容体として機能し、特別の認識パターンを用いて種々の異なる検体を検出することができる。このシステムを使うことで、視覚および化学的検出を光ファイバーケミカルセンサーと組み合わせることができる。
【0095】
あるセンサーネットワークの態様では、本発明のデバイスは一または二以上の類似または異なったタイプのセンサーを含むことができる。また、ノードネットワーク中の、例えば個々の物理的デバイスの位置などの、個々のノードはそれぞれ一または複数のセンサータイプを含むことができる。例えば、ネットワークは、一つのセンサータイプを含む(ワイヤレスの)デバイスを着用している一人の人員、同種または異種の複数のセンサーを含む(ワイヤレスの)デバイスを着用している第二の人員、一または二以上の同種または異種のセンサーを含んでも良い(ワイヤレスまたは直接接続の)固定のデバイス、およびネットワークモニターステーション、を含む。
【0096】
例を用い、かつ特定の態様の観点から本発明について説明をしたが、本発明が開示された態様に限定されるものでは無いことが理解されよう。反対に、これは種々の修正および類似の構成をカバーすることを意図するものであると、当業者に理解されよう。例えば、本発明によるデバイスは、適切なセンサーの構成および解析アルゴリズムを用いて病気の診断に使用しても良い。したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような修正および類似の構成を包含するように、最も広い解釈と一致すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1Aは、本発明による、検体曝露時の検出器複合材料の応答の説明を示す図である。図1Bは、データがどのようにして応答パターンに変換されるのかの説明を示す図である。
【図2】種々の薬品のIDLHレベルを示す図である。
【図3a】本発明の態様による携帯できる検出器デバイスを示す図である。
【図3b】本発明の態様による携帯できる検出器デバイスを示す図である。
【0098】
【図4】一時的イベントに対する典型的応答を示す図である。
【図5】本発明の態様による検出器デバイスの例を示す図である。
【図6】本発明の態様による検出器デバイスを含む火災検出システムの例を示す図である。
【図7】32個のセンサーを用いたデバイスの典型的な応答を示す図である。
【0099】
【図8】シムカ(SIMCA: Soft Independent Modeling of Class Analogy)を用いたモデルを示す図である。
【図9】一または二以上のPCSセンサーを含む耐久年数終了インジケーター(ESLI: end-of-service-life indicator)が有用な化学物質フィルターシステムの例を示す図である。
【図10】本発明によるワイヤレスセンサーデバイスの分散型ネットワークを含むシステムを示す図である。
【0100】
【図11】本発明の態様による残余寿命インジケーター装置の略図である。
【図12】本発明の態様による検出器デバイスモジュールを含むマスクベースのフィルターインターフェイスシステムを示す図である。
【図13】複数センサーの信号−ノイズ比の測定値を示す図である。
【図14】一つの態様に従うセンサーアレイのアドレッシングを示す図である。
【0101】
【図15】一つの態様による単位センサーセルを示す図である。
【図16】図15のセルのI〜Vの応答を示す図である。
【図17】オクタノールに曝露したときの図15のセルの応答を示す図である。
【0102】
【図18】一態様による適用可能なバイアス回路を示す図である。
【図19】4つのSMCB材料の表を示す図である。
【図20】図20aは、ポリアニリンの構造を示す図である。図20bは、ポリチオフェンの構造を示す図である。
【0103】
【図21】ゾルゲルカプセル化プロセスを示す図である。
【図22】一態様による電力管理方法を示す図である。
【図23】本発明の一態様による検出プロセスおよび典型的な応答曲線を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2002年7月19日に出願された米国仮出願60/397135号「非特異性センサーアレイ検出器」の本出願であり、仮出願は参考文献として全ての目的のためにその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の援助によりされた発明に係る権利についての陳述
該当せず。
【0003】
発明の背景
本発明は、携帯でき、手で持て、着用できる検出器システム、特に非特異性化学検体検出用に構成されたセンサーアレイを含む、携帯でき、手で持て、着用できる検出器システムであって、ソフトウェアモジュールによって様々な環境状態を検出および解析するように構成することができ、低い動作電力要求および長い寿命を持つ検出器システムに関連する。
【0004】
民間および軍の人員、沿岸警備隊および税関、州および連邦の緊急時対応要員、および工員は、避難または化学防護服(CPE: chemical protective equipment)などの防護服を着用するのに間に合うように、危険な空中の化学物質の放出などの環境状態の変化を識別するための、個人用の早期警告システムを必要とする。例えば、給油中の目に見えない漏れから、冷暖房システムから、または産業上の敵対行為から、有毒工業化学物質(TICs: toxic industrial chemicals)の放出が通常の操作の中で意図せず起こりうる。加えて、戦闘中またはその他の潜在的な敵対的状況において化学兵器(CWAs: chemical warfare agents)が使用されうる。これらそれぞれの状況は、典型的に事前に識別できず、独特で潜在的な広範囲の化学的脅威を提示する。その脅威を無効化するための適切な行動をとるために、敵対的曝露の前にTICs、CWAs、およびその他の環境状態を検出しその特性を明らかにする必要が存在する。採られるであろう適切な防御または汚染浄化の手段のために化学物質の種類を特定するために、TICまたはCWAの放出後にも同様の必要性が存在する。
【0005】
高い特異性および正確性を有する実験器具が入手可能であるが、物理的頑丈性を欠き、熟練のオペレータが必要で、さらにそのサイズ、重さ、高い電力消費要求、および化学試薬(気体、液体)の要件により典型的には携帯することができないので、一般的に野外での使用には適さない。さらに、一つの脅威(例えばCWA)に特化した携帯できる器具は、重要な他の脅威(例えば爆発物、火災、TICs)または改良されたデバイスには役に立たない。
【0006】
着用可能な物と同じように、TICsおよびCWAsなどの危険な状態のための手で持てる受動検出器は、脅威にさらされた環境で作業をする人員の安全性を大幅に改善する。実用的な手で持てる検出器にはポイント検出器およびスタンドオフ検出器が含まれる。一つのポイント検出器、ジョイント化学物質検出器(JCAD: Joint Chemical Agent Detector)は、手で持つことができ、携帯が可能であるが、一度の充電での稼働時間が限られており、頻繁に再充電することが求められる。さらに、JCADは同時に使用する他のデバイスを弱めて使用しなければならない。ジョイントサービス軽量スタンドオフ化学物質検出器(JSLSCAD: Joint Service Lightweight Standoff Chemical Agent Detector)などのスタンドオフ検出器は連続的に人員をCWAsから保護することができるが、(1)空間分解能が欠如し、(2)直ちに生命および健康に関わる危険(IDLH: Immediately Dangerous to Health and Life)レベルよりも高い検出限界を持っている。現在のバッジまたは着用できる検出器(例えば、SafeAir、ToxiRAE)の一般的な制限は、(1)特異検体(analyte-specificity):これらは化学的危機について事前の詳細な知識、もしくは広いスペクトルをカバーするために複数のバッジを要求し、新しいまたは未知の危険を検出することができない;(2)単独使用:使い捨ての検出器および線量計は連続的な保護のために再度の供給を必要とする;(3)解釈の誤り:比色分析のインジケーターは使用者の主観になりがちな視覚による比較(色カード)を必要とする;(4)警報モードまたは情報伝達能力の不存在:これらは迅速なハンズフリーの警告や状態の通信を提供できない;(5)環境パフォーマンス:極端な温度(例えば0度未満または40度超)および極端な湿度(例えば相対湿度(RH: relative humidity)で、10%未満または90%超)によって制限されるセンサーがある(例えば、電気化学的、導電性ポリマー)。このような検出器は典型的にデータロギング能力(例えば、遭遇した環境の経過的な詳細な情報/記録の記憶)を含まないか、または、単に経過的な曝露の時間平均を提供するのみである。さらに、現在の検出器は、典型的には、高い動作電力要求があり、それゆえ、典型的には動作時間が短い。例えば、JCADは20時間かそれ以下の時間で電源の再充電または交換が必要である。
【0007】
ToxiRae Plus などのいくつかのセンサーデバイスは、可聴式および振動式の警報を発生し、解釈の誤りを排除し、またデータロギング能力を有するが、これらの着用可能なセンサーは依然として特異検体である。さらに、これらのセンサーは、そのサイズと重さのためにポケットまたはベルトのクリップを必要とするので、バッジ検出器としては実用的でない。
【0008】
例えば、EIC Laboratories, IncやPhysical Sciences, Incによって、一般検体(analyte-general)を用いた着用できるセンサーデバイスは発展したが、これらのデバイスは、バッジ検出器の野外使用時にセンサーの耐久性および安定性に影響を与えうる湿度に関して重大な性能の問題を抱えている。
【0009】
それゆえ、現在の検出器の制限に打ち勝ち、潜在的に危険な環境において人員に連続的で信頼性のある保護を提供する個人用検出器(例えば携帯可能で着用できる検出器)の必要性が存在する。
【0010】
発明の概要
本発明は、バッジなどの携帯できて着用できる検出器デバイスであって、特異検体ではなく一般検体であり、それゆえ空中の化学的危険などの既知および未知の環境状態およびイベントを人員に通知し保護する理想的な方法を、操作をする必要なく提供する検出器デバイスを提供する。本発明の一側面によるこれらのデバイスは、有利なことに廉価で、動作電力が低く、着用でき、一般的な環境の脅威を検出し警報するように設計されてもよい。本発明の一つの側面によるデバイスは、例えばTICsやCWAsの放出などの環境の変化の検出および特定を提供するためにセンサー信号を解析するように構成されたソフトウェアモジュールを含む。それゆえこれらのデバイスは、有利なことにより低いコストでかつ専門的な訓練なしに、高価なポイント検出器、スタンドオフエリアモニター、または単一の化学物質検出に限定される現存する検出器バッジよりも、多くの個人を保護することができる。他の側面によれば、本発明のデバイスは通信モジュールを含み、センサーデバイスの分散型ネットワークなどのネットワーク内に簡単に導入される。
【0011】
ここで使用されるように、環境のイベント、状況、および状態は、例えば、
温度、湿度または気圧、放射線レベル、その他の物理的刺激などの環境のパラメータ;
空中の化学物質または気体などの大気の構成物の存在またはそのレベル;
化学物質、生物剤または生体物質、治療薬などの液体または流体の構成物;および
その他を含んでもよい。
環境の状況または状態の変化は、環境のパラメータのレベルや存在の増加または減少を含んでも良い。
【0012】
ある側面において、本発明の検出器デバイスは、以下の特徴または特性の内の一または二以上を含む:
・例えば、一または複数のIDLHレベルのTICsおよびCWAsなどの環境状態を検出するために非特異性センサーアレイを用いる;
・湿気が存在するときに安定である高分子複合材料を用いる;
・相対湿度および周囲温度を測定する;
・広い範囲の動作条件で使用できる(相対湿度:不凝縮で0%〜99%;温度:−15℃〜40℃またはそれ以上);
・受動的で、野外での使用中に使用者との相互操作または使用者の注意を求めない;
・経過的なデータの記録を維持するために、ダウンロード可能なフラッシュメモリーを含む;
・TICまたはCWAが検出されたとき可聴式および不可聴式の警報を提供する;
・通常の動作中に定期的な可聴式および不可聴式の信号を含む;
・クレジットカードよりも小さく、とても軽い;
・連続的な野外使用で、少なくとも二週間またはそれ以上(例えば複数年)のバッテリー寿命がある;
・少なくとも2年の製品寿命を有する;
・大量生産の要求を満たす;
・大量生産であれば商品やサービスが廉価(大量注文にはおよそ30ドル)に提供できる;
・利用できるマーケットサイズを大きくするために現存の製品(例えば、公共施設における工業化学物質漏れおよびCWAs放出の検出のためのワイヤレスセンサーネットワーク)に直接導入することができる。
【0013】
本発明のある側面によれば、TICsおよびCWAsの存在などの環境の状態およびその変化を検出し解析するための携帯または着用できる検出器デバイスなどの、様々な用途において有用な二または三以上のアレイを構成するために、高分子複合材料のセンサーテクノロジーが用いられる。このようなPCSセンサーを含むデバイスは、小型で、軽量で、着用でき、頑丈で、安定で、廉価で、低電力でかつ一般検体で構成できる点で、特に有利である。高分子複合材料のセンサーは、導電性ポリマーと同じような湿度性能の制限はない。高分子複合材料センサーは無電力センサー(例えば現在入手できる(COTS:current off-the-shelf)バッジ検出器)ではなく低電力センサーであるので、本発明のある側面による検出器デバイスは解釈の誤り無くアラームを発生することができ、データロギング能力を備えられる。センサーアレイと検出および特定用の技術を組み合わせることで、本発明のある側面による検出器デバイスは、現在のCOTS検出器およびその他の検出器のその他の制限を解決しつつ、有利なことに非特異検体である。
【0014】
本発明の一つの側面によって、センサー装置が提供される。その装置は典型的には、二または三以上のセンサーデバイス、それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングデバイス、および環境の状態または状況についての情報を使用者に伝達する通信モジュールを含む。
【0015】
本発明の他の側面によって、着用できるセンサーデバイスが提供される。そのデバイスは典型的には、一または二以上の高分子複合材料センサー、警報装置、および一または二以上のセンサーからの信号をモニターし、閾値状態に応答した警報のための警報起動信号を提供するように設定されたデジタル信号プロセッサー、を含む。閾値状態は特定の環境の状態または状況、または環境の状態または状況の変化を表すことができる。
環境のイベント、状況、および状態は、例えば、
温度、湿度または気圧、放射線レベルなどの環境のパラメータ;
空中の化学物質または気体などの大気の構成物の存在またはそのレベル;
化学物質、生物剤または生体物質、治療薬などの液体または流体の構成物;
を含む。
環境の状況または状態の変化は、環境のパラメータのレベルや存在の増加または減少を含んでも良い。
【0016】
本発明のさらにその他の側面によって、典型的には、
二または三以上の高分子複合材料センサーのアレイ;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために、二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール;
を含む、統合されたセンサー装置が提供される。
【0017】
本発明の更なる側面に従って、着用できるバッジ検出器を用いた方法が提供される。そのバッジは典型的には、二または三以上のセンサーデバイス、それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境の状態および状況を決定するために二または三以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングデバイス、環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、および検出器に電力を供給する電力供給装置を含む。前記使用方法は典型的には、着用可能なバッジ検出器を使用者に提供すること、その検出器を使用者に取り付けること、およびその検出器を作動させること、を含み、ここで、検出器は、一度作動すると再充電または電力供給装置の取り替えを要求することなく一週間以上受動的かつ連続的に動作する。
【0018】
特許請求の範囲および図面を含む本明細書の残余部分を参照すれば、本発明のその他の特徴および優位性が理解されよう。本発明の構成および様々な実施態様の動作と共に、さらなる特徴および優位性が添付の図面に関連して以下に詳細に記載される。図面において、類似の符号は同一か機能的に類似の要素を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明に従う検出器デバイスは好ましくは高分子複合材料センサーのアレイ(すなわちセンサーは少なくとも二つ)を含む。高分子複合材料センサー(PCS: polymer-composite sensor)は典型的には、導電性メディア、重合体面、および二つの電極を有する。電極間に電圧が供給されると、電子は主に導電性メディアからなる経路を通ってセンサーを流れ、センサーの抵抗が測定される。センサーの抵抗はセンサーの状態を示す最も単純な測定値の一つであり、センサー内に吸収された分子の数に関連する。すなわち、センサーの抵抗の変化は吸収された分子の質量に比例する。
【0020】
センサーに接触する化学物質の気体に変化があった場合、センサーの抵抗の変化などの付随した応答がある。気相での変化は、その成分の化学ポテンシャルの変化を引き起こし、結果、センサーと気相の間に化学ポテンシャルの差を作る。この化学ポテンシャルの差は、センサーと気体のいずれの成分がより大きい化学ポテンシャルを有するかに応じて、センサーの外へまたはセンサーの中へ分子を実際に移動させる。センサーに吸収されている分子の数が変化するので、この分子の実際の移動が抵抗の差を生み出す。そして、この実際の移動はセンサーと気体の全ての成分の化学ポテンシャルが等しくなるまで続く。図1Aは、検体濃度のステップ変化に対する代表的なセンサーの応答を示す。ある時間の間、センサーは空気に曝露され、刺激物も一定であるのでセンサーの抵抗Rbaselineは一定である。次いでセンサーは、空気とベースライン時には存在しなかった検体とを含み気相の化学ポテンシャルを増大させる気体に曝露される(気体オン)。検体の分子は気相からセンサー内へ移動し、センサーに吸収されセンサーの抵抗Rを大きくする分子数の増加を引き起こす。センサーを検体に曝露するのをやめ(気体オフ)再び空気のみに曝露すると、検体分子はセンサーから脱着し、センサーの抵抗はベースライン抵抗まで減少する。センサーの応答は、
【数1】
で計算される。
【0021】
高分子複合材料センサーのアレイに気体が存在する場合、全てでないにせよほとんどのアレイ内のセンサーは、好ましくは異なった応答を生成するから、アレイは図1Bに示すようなパターンを生成する。気体の成分の化学ポテンシャルはパーセント飽和蒸気圧に比例する。(パーセント飽和蒸気圧は水の含有量についての相対湿度に等しい。)センサー内の気体成分の化学ポテンシャルは、吸収された分子の数に比例し、センサーの材料と吸収された分子との平均相互作用エネルギーに反比例する。センサーの抵抗の変化は吸収された分子の質量の変化に比例する。平衡状態、すなわち気相とセンサーの各成分の化学ポテンシャルが等しくなったとき、センサーの応答はスケーリング関数
【数2】
に従う。ここで、(ΔR/R)jはアレイ内のj番目のセンサーの応答であり、εijは気体内のi番目成分とアレイ内のj番目成分との間の相互作用エネルギーであり、Piは気体内のi番目成分の分圧であり、Psai,iはセンサーの温度Tsensorにおける気相内のi番目の成分の飽和蒸気圧である。相互作用エネルギーεijはそれぞれのセンサー−検体対で異なるので、同一の気体に対してアレイ内のそれぞれのセンサーの応答は異なる。相互作用εijは与えられた検体に対する感度の測定値であり、ある側面では、その値は異なったセンサー−検体対に対して二桁近い差になる。PCSセンサーは好ましいが、本発明に従ったセンサーデバイスはPCSに加えて、またはその代わりに、他の種類のセンサーを含んでも良いことが理解される。
【0022】
それぞれ参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許5,571,401号および5,788,833号は、高分子複合材料センサーシステムおよびデバイスに有用な高分子複合材料とともに、野外での検体(例えば液体、気体)の検出に有用な化学センサーを開示する。
【0023】
ある好ましい側面では、例えば32個など、複数のセンサーのアレイを本願発明の装置に導入することができるが、特定の用途のための要求によってアレイはこれより少ないまたはさらに多いセンサーを含むことができる。ある特化した用途において、センサーが適切に選択されている場合には、一般的に4個または5個のセンサーのみで十分である。好ましい側面において、センサーのアレイは一つのPCSセンサーまたは複数のPCSセンサーを含む。該アレイは他の種類のセンサーを含まないか、一または二以上の他の種類のセンサーを含む。
【0024】
参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許6,085,576号は、幅広い用途の使用を意図した手に持てるデバイスに比較的多数のセンサーを導入した、手に持てるセンサーの例の側面について議論している。このようなセンサーの一つ、Cyranose(登録商標)320(C320)は、COTSの手に持てる気体特定システムであり、その一つの側面は:(1)与えられた気体の特定のパターンを返す高分子複合材料センサー(PCS)アレイ;(2)センサーアレイに気体を与えるための空気圧系統;および(3)アレイパターンに基づいて気体を特定するためのパターン認識アルゴリズムの実装、を含む。C320は、CWAs(例えば、GA,GB,HN−3、VX)ならびに、TICs(例えば、ヒドラジン、アンモニア、ホルムアルデヒド、エチレン、酸化物、差駐在)のポイント検出器として良く実験されている。
【0025】
図3aは、本発明の態様による携帯できる検出器デバイス10を示す。ハウジング構造が、一または二以上のセンサーのアレイ15、好ましくはここで議論したように一または二以上の高分子複合材料センサー(PCS)、を含む小さいデバイス10であることが望ましい。デジタル信号プロセッシング(DSP: digital signal processing)ユニット20は、センサーアレイ15からの信号を受け取り処理し、メモリー40にデータを記憶する。空気ポンプシステム35は、センサーアレイ15に気体を供給するのを補助するために任意で備えられる。ある側面では、例えばプログラムによって決められた、またはあらかじめ設定された閾値状態または閾値を超えたときなど、警報の状態が決定されたときに動作可能な警報を提供するために警報モジュール25が含まれる。警報装置25は、LEDなどのライト、振動モジュール、および例えばスピーカーなどを含む音を出すモジュールを含むことができる。中央警報システムなどの外部インテリジェンスに知らせるため、一または二以上の通信モジュールが備えられる。ある側面では、通信モジュールは、命令システムまたは中継ノードなどの外部のデバイスにRF信号を送信するためのRFトランスミッター(またはトランシーバー)などのインターフェイスデバイスを含む。通信モジュールは、命令およびデータを受け取るためのRFアンテナ(またはトランシーバー)などの受け取りデバイスを含むこともできる。コンピュータシステムなどの外部のインテリジェンスデバイスまたはシステムと接続するための他の有用なインターフェイスの種類は、IRトランスミッター、ブルートゥース、RS−232、USBおよびファイヤーワイヤーインターフェイス、およびその他のワイヤレスおよびフィジカルコネクタインターフェイス(および関連するプロトコル)を含む。参考文献としてここに全ての目的のために組み込まれる米国特許6,422,061号は、例えばワイヤレスで、分散型ネットワークと接続するように構成された手に持てるセンサーシステムを開示する。
【0026】
デバイス10の全ての構成要素は、好ましくは一または二以上のバスを通じて連結されているが、特定の用途に適するように個別的直接的に接続されても良い。着用できるバッジデバイスの態様では、例えば特定の用途のための利便性または必要性のために、ポケット、シャツのラベル、ベルト、首の周囲、などに取り付けるように、クリップ、ストラップまたはピンなどの取り付けデバイス45が備えられる。好ましくはバッテリーおよびバッテリー状態のモニター(例えばLED)も含まれる(図に記載なし)。
【0027】
図3bは本発明の他の態様による携帯できる検出器デバイス100を示す。好ましい側面では、デバイス100は、携帯でき、着用でき、低電力要求で、自己キャリブレーションできる。図に示すとおりデバイス100は、センサーアレイ(図に記載なし)からの信号を受け取り、プロセッシングモジュール120(例えばDSP)に信号を供給するように構成されたセンサーインターフェイス回路モジュールを含む。プロセッシングモジュール120は、様々な環境のイベントまたは状態を検出し特定するために、以下に議論するとおり受け取った信号を処理する。イベントの検出および特定に関連する様々なデータ、パラメータおよびアルゴリズムを記憶するために、メモリ140はプロセッシングモジュール120によって使われる。RFトランシーバーモジュール160は、リモートコンピュータシステム、センサーの分散型ネットワーク内のベースステーションまたはノード、リモート警報システム、その他の外部のインテリジェンスソースへ情報を送信し、および、そこからの情報を受け取るように構成される。警報モジュール125は、LEDなどの目に見えるインジケーター、ブザーまたはスピーカーなどの音によるインジケーター、および振動のインジケーターの内の一または二以上を含む。プロセッシングモジュール120は、警報イベントの検出および/または特定に応答して警報モジュール125を作動させる。イベントの検出および特定処理に関連した目に見える情報を使用者に提供できるように、任意のディスプレイ135が備えられる。直接の接続(例えばUSB、ファイヤーワイヤー、RS−232)または遠隔の接続(例えばワイヤレス)のいずれかによる、外部インテリジェンスとの通信パスを提供するために、通信モジュール130が含まれる。モジュール160および130のいずれか一つまたはその両方が検出器デバイス100に導入されても良いことは、歓迎されるであろう。
【0028】
電力供給回路155は、デバイス10の動作の様々なモードを制御するために備えられる。以下においてより詳細に記載するように、例えばある側面においてデバイス100をスリープモードまたは省電力消費モードにし、また、デバイス100を起動または最大電力消費モードにするように、電力供給回路は構成される。バッテリー145は電力供給源として備えられる。バッテリー145は、旧来のバッテリー、太陽電池(ソーラーセル)、またはその他の電源を含んでも良い。以下においてより詳細に記載するように、バッテリー145の代わりにまたはこれに追加して、遠隔で電源を入れるためにいくつかの態様ではRFタグ150が備えられる。着用できる態様では、取り付けデバイス(図に記載なし)も含まれる。
【0029】
ある側面では、デバイス10および100は、好ましくはカード型またはバッジ型のプラスチック構造、または、使用、移動、着用、使用者への取り付けなどを容易化できる小型の構造などのハウジング構造上またはその内部に導入される。携帯性および着用性、低電力消費、自己キャリブレーション、およびイベントの検出および特定を含む、デバイス10および100などの本発明のセンサーデバイスのさらなる側面を、高分子複合材料センサー(PCS)部材を含む実装に特に注意を払って説明する。しかしながら、PCS部材以外のセンサー部材を追加的または代替的に使用できることが理解されよう。
【0030】
センサーインターフェイス
高分子複合材料センサーアレイを参照すると、価数によらずに低レベルの定常直流を提供するために、定常電源が備えられる。研究により、100uA以下のバイアス電流でセンサーのノイズが大幅に減少することが示されている。センサーはわずか5〜10uAで動作すると示される。また、定常電流が、高い直線性によってより正確なセンサーの応答を検出する手段を提供する。
【0031】
低い電力消費
典型的な高分子複合材料センサー部材は、およそ2KΩ〜100KΩのベース抵抗を示し、一般的にはおよそ10KΩである。ピーク電力消費(センサー部材ごと)は、(10uAの定常電流で動作するスキームを用いて)以下のように簡単に計算できる。
【数3】
さらに、センサーを継続的にアクティブにする必要がない場合には、この値はさらに減らすことができる。すなわち平均電力は、
【数4】
となる。ここで、DF(duty_factor)はデューティーファクターであり、変換時間/応答時間のパーセンテージを示す。変換時間は、センサーの応答を感知し情報を処理するのにかかった全時間を示す。変換時間は典型的にはミリ秒のオーダーである。
【0032】
一つの側面では、本発明のデバイスの動作は、有利なことにミリワット以下の電力要求であり、また、一PCSセンサーのみを含む一定の態様ではさらに低い電力要求である。1ミリワットで動作するデバイスの典型的な寿命は、およそ数週間から数年またはそれ以上のオーダーである。さらに、電力管理能力は、電力源の寿命をのばすと共に電力要求を減少させる。
【0033】
着用できるデバイスの一つの目標は、理想的な電力管理である。本発明の電力管理方法の一つの態様を図22に示す。一つの側面では、デバイスは必要な応答時間に応じて、70%以上または80%以上または90%以上という非常に長い時間、スリープモードまたは極低電力モード200に置かれる。プロセッサーは、例えば電力供給回路155からの起動信号に応答して定期的に起動し、センサーアレイにわたってスキャン220し、イベントが起こったかどうかまたはイベントが起きているかどうかの決定230をする。イベントが起きていない場合には、プロセッサーはスリープモード200に戻る。イベントが検出されれば、プロセッサーは、イベントを特定するためにパターン認識技術240を実行する。特定されると、例えば表示、出力信号の始動、可聴式警報の始動など、または上述の全ての方法によりイベントは告知250される。追加的な処理電力のコア平均はuAのオーダーである。
【0034】
電力源
デバイスは、オンボードバッテリーまたは太陽電池を含む様々な手段により電力を受けることができる。標準的な3Vの電池などのコインサイズのバッテリーは特に有用であり、5〜10年間またはそれ以上もつ。デバイスはRFまたはIRタグ部材またはモジュール150を備えてもよく、ここで、光学的放射または電磁エネルギーが遠隔的にデバイスに供給される。RFまたはIRタグの態様では、デバイスは即座に、情報を処理しこの情報を中継し電力源に戻すのに十分なエネルギーを蓄える。有用なRFおよびIFタグの側面は米国出願60/477,624号「化学受動センサー(Chemical Passive Sensor)」(代理人受領番号018564−007500US)に見ることができ、その内容は参考文献として本願に組み込まれる。
【0035】
自己キャリブレーション
ある側面では、システムは、定期的に全ての物理的チャンネルをモニターし、センサーの入力が電気的動作範囲内であるかどうかを決定するように構成される。範囲内でない場合には、それに応じてシステムは自動的にバイアスをかけそのベースライン読み出しを調節する。
【0036】
イベント検出
イベントの検出は、全体の電力消費をさらに減少させるために導入される。一つの側面では、イベントがまず検出され、該イベントを特定するためにパターン認識方法が使用される。例えば、一つの側面では、一度イベントが検出されると、オンボードの処理装置が起動(割り込み)し、該イベントを識別するために一または二以上のパターン認識処理が実行される。
【0037】
図23は、一つの態様による検出処理300および典型的な応答曲線を示す一般的なブロック図である。処理300の側面についての以下の説明において、ディレイタイム、平均応答、および閾値は実験結果に基づいて選ばれており、これは典型例を示すに止まり、限定をするものではない。
【0038】
データはまずそれぞれのセンサーから収集310される、例えば、センサーの応答信号が収集される。それぞれのセンサーの応答信号は、PCSセンサーの場合には、抵抗の測定値を示す。センサーが曝露されているイベントの種類に応じて、抵抗が変化する。好ましくは、それぞれのセンサー部材は異なった方法で応答する。一つの側面では、処理300はベース抵抗を移動できるようにし;応答は移動するベース抵抗の過去の値に関する最新の測定からのパーセント変化である。一つの側面では、サーキュラバッファされた回顧的な移動する平均の処理はコーディングされ、オンボードのプロセッサーに導入される。バッファされたデータは、例えばアレイ内のセンサーの数であるそれぞれのチャンネルのベースライン抵抗を記憶する時間のパラメータを示す。
【0039】
全てのセンサーのベースライン抵抗は計算315される。例えば湿度および気温などの周囲の状況およびセンサーのドリフトの緩やかな変化を説明するために、ベースライン抵抗R0は、最近の履歴に基づいて絶えず更新される。調整できるパラメータが少なくとも2つ(ディレイタイムおよび平均時間)存在する。一度の解析のデータは短い時間間隔にわたって取得されるので、ディレイタイム(またはバッファ)は200ポイント(〜2分)に設定し、平均時間は5ポイントに設定した。
【0040】
全てのセンサーの応答が計算320される。一つの側面では、抵抗の分数の変化として、ΔR/R0が全てのセンサーについて計算される。
【数5】
ここで、R(t)は現時点における抵抗の時間平均であり、R0は2分前に修正されたベースライン抵抗である。例えば障害は有害物なのか火災なのかを決定するなどイベントを特定するために、それぞれのセンサーの応答はパターン認識に用いられる。
【0041】
センサーの平均応答は計算330される。一つの側面では、センサー平均の応答(ΔR/R0)avgが、障害の存在不存在についての粗い測定を提供するために計算される。
【0042】
センサーの平均応答は閾値340と比較される。一つの側面では、例えば、
【数6】
(または他の閾値、例えば0.01)を満たす場合には、センサーの平均応答はとても大きいので、例えば通常の動作からの障害が検出されたといったイベントが検出されたことを示す。閾値は前もって設定しても良いし調節できるようにしても良い。環境状態の変化、または例えば火災などの環境の状態の存在によって、センサーの応答は増加および減少するので、障害の大きさを評価することが必要である。障害が検出されなかった場合は通常の動作を続ける。
【0043】
パターン認識
イベントが検出される350と、処理装置はスリープモードから起動する(例えば図22参照)。全てのチャンネルからの応答は一時的にRAMなどのメモリーに記憶され、既知の化学物質のパターンと比較される。用途に応じて、単純なパターン認識技術から極めて複雑なものまで、導入することができる。そのような技術には、k近傍法(KNN: K-nearest neighbor)、カノニカル識別分析(CDA: Canonical Discriminate Analysis)、シムカ(SIMCA: Soft Independent Modeling of Class Analogy)、確率的ニューラルネットワーク(PNN: probabilistic neural network)、人工ニューラルネットワーク(ANN: artificial neural network)、サポートベクトルマシーン(SVM: support vector machine)、フィッシャーの線形判別法(FLD: Fisher Linear Discriminate)、およびその他を含む。
【0044】
着用できるバッジの態様では、例えば襟、またはシャツまたはズボンのポケットにクリップまたはピンでつけ、または首回りに着用するなどしてつけるなど、検出器バッジは個人に着用することができ、電源を入れたときには通常の検出器の状態(例えば、緑色LED、警報なし)およびバッテリーの状態(例えば、緑/赤色LED)を着用者に知らせる。状態チェックの後、検出器バッジは環境を連続的にモニターし、検出された危険なイベントを、例えば可聴式、可視式(例えば赤色LED)、および/または振動式などの警報によって知らせる。検出器バッジは、データを記録するモジュールおよび、バッジのID、状態の情報、および警報の状態の情報などの情報を中央モニターステーションにワイヤレス送信するためのモジュールを含んでも良い。適切な動作を確認するため、定期的にまたは使用前に行う供給された標準を用いた検出器の標準化、およびバッテリーの取り替えまたは充電が、要求される典型的な使用者のメンテナンス活動である。
【0045】
空気圧系統35のないワイヤレスの携帯できる検出器は、大きさ、コスト、電力要求、および頑丈さが特に求められる用途において、実行することができる。このような小型検出器はTICsおよびCWAsのためのバッジ検出器として有用である。さらに、必要なフィードバックが個人用警報のみである場合には、バッジデバイスから通信モジュール30を除去することができる。
【0046】
ある側面では、モジュール式の検出器デバイスが提供される。例えば、検出器デバイスまたはセンサーモジュールは、通信モジュールに連結されても良い。例えば、ある側面におけるバッジデバイスは、検出器デバイスを分散型ネットワークに組み込むことができる薄い通信プラットホームに差し込むように構成される。該プラットホームはワイヤレスおよび有線のネットワーク接続を含むことができる。センサーモジュールは、空気圧系統、通信、キャリブレーション、再充電、およびその他のモジュールなどの、追加のあらゆるモジュールと連結することができる。他の例として、検出器デバイスは、例えば以下においてより詳細に議論するように人口呼吸器のカートリッジに挿入することで、残留寿命のインジケーターとして実行することができる。
【0047】
イベント検出および解析
好ましい側面では、検出器デバイスに組み込まれたデジタル信号プロセッシング(DSP)ユニット20は、センサーの応答を実用的な反応値に変換する。その用途における必要性に応じて、少なくとも3つの異なった種類の技術を使うことができる。これらの種類を複雑さが増す順にリストすると:
・単純検出:閾値は、それぞれのセンサーまたはアレイ全体の応答に適用される。閾値のロジックを満足すると、警報の状態が検出される。例えば、アレイの中のいずれか4つのセンサーが閾値を越えた場合には、例えば警報25が始動するなど、警報が始動する。
・パターン認識:アレイからの応答パターンは、トレーニングセットまたはライブラリーに貯蔵されたパターンと比較される。適合が見つかった場合、気体の特定が返される。有用なパターン認識技術は、KNN、CDA、SIMCA、PNN、ANN、SVM、FLD、およびその他を含む。
・定量化:ある側面では、アレイからの応答は気相内の検体の濃度を計算するために用いられる。
【0048】
ある側面では、これらの技術は個別的にまたはうまく組み合わせて使用することができる。例えば、単純検出はイベントが起こっていることを検出するために用いることができ、パターン認識は該イベントの性質を特定するために、イベントの検出の後に用いることができる。このようなDSPの方法論は、ULおよびBSIラボラトリーのテストにおける火災検出器などの、受動センサーアレイ内でうまく用いられてきた。
【0049】
化学的なイベントでは、TICsおよびCWAsの存在の検出についての要求としてIDLHレベルが特定されたので、検出器の最小検知レベルが重要である。ある側面では、一つのセンサーの最小検知レベル(MDL: minimum detectable level)はその検出限界によって測定される。検出限界は、特異検体のセンサーの性能を示す有用な概念であり、典型的には信号−ノイズ比がある閾値(例えば3)を超えるセンサーの応答を生じる濃度として定義される。同じレベルの応答を引き起こす他の化学物質がほとんどないので、検出限界は特異検体センサーに適している。一般検体アレイの一つのセンサーに検出限界を適用する場合には、センサーが特異性を持っていないのであらゆる化学物質が応答を引き起こす。一般検体センサーアレイの性能を示す場合は、弁別限界および確認限界がより有用な概念である。弁別限界は、パターン識別方法が同伴ガスのみから同伴ガス内の検体を識別するために使用できる検体の濃度として定義される。確認限界は、検体の存在を常に識別するためにパターン識別方法が使用できる検体の濃度として定義される。確認限界は、ある側面において、好ましくは、MDLの性能の尺度として使用される。
【0050】
等式2は個別の高分子複合材料センサーに対して有効であるから、この等式は、他の化学物質についてのセンサーアレイのMDLを見積もるために、化学種についての実験データを用いて使用することができる。図2は、CWAsおよびTICsの濃度対蒸気圧のプロット上のIDLH濃度を示す。図2において、センサーアレイは、‘‘C320のセンサーの最小検知レベル(見積もり)’’と書かれた領域より上に点を持つ検体に対して高い識別確率を持っている。この領域を最小検知レベル領域(RMDL: region for minimum detectable levels)と呼ぶ。センサーアレイは、RMDLの内部または下に点を持つ検体に対してそれぞれ、中程度または低い識別確率を持っている。RMDLから下へ離れるほど、気体の識別確率は低下する。
【0051】
下記の理由により、MDLについては、好ましくは一本の線よりも領域を用いる:
・環境状態のばらつき:より多くの変量を持つ環境における用途では大きい最小検知レベルを持つ傾向にある。該用途は線Aに近い最小検知レベルを持つ傾向にある。
・サンプルのばらつき:非常に多種の検体を有する用途も大きい最小検知レベルを持つ傾向にある。これらの用途は、典型的に天然物を含み、線Aに近い最小検知レベルを持つ傾向にある。
・特異用途のセンサーアレイ:特定の用途が特定された場合、重要でない情報を除去するために特定のセンサーを使用する(またはソフトウェアでセンサーの応答を除去する)ことができ、センサーの性能が改善する。特異用途のセンサーアレイは、線Bに近い小さい最小検知レベルを持つ傾向にある。
【0052】
バッジ検出器デバイスにおいて、MDLは一般的に図2における線Bに近い。二つのばらつきの効果が、ほとんど同じ大きさで逆の効果を持つ。バッジ検出器は野外で使用するデバイスなので、環境のばらつきはMDLを増大させる傾向にあるが、化学物質はよく特定されているのでサンプルのばらつきは小さく、MDLを低くする。用途はCWAsおよびいくつかのTICsに焦点を当てているので、その用途に応じたもっとも適切なセンサーアレイを用いることでMDLは改善できる。
【0053】
C320のテストにより図2の見積もりを確かめる。独立の研究所(Midwest Research Institute and Battelle Memorial Institute)で行われたCWAsの制御されたテストの間にC320のセンサーアレイは、タブン(GA)、サリン(GB)、ソマン(GD)、VX、サルファマスタード(HD)、およびナイトロジェンマスタード(HN3)を9ppbvの限界値またはそれ以下で検出した。米軍エッジウッド化学生物学センターによる追試は、C320がGB、GD、VX、HD、マラチオン、およびDMMPを正しく識別できることを示している。
【0054】
本発明による検出器デバイスは、麻薬、爆発物(例えば、TNT、C4、RDX、およびその他)、および危険な物質を特定し、識別することができる。
【0055】
本発明の一般検体の化学物質警報デバイスは、有利なことに広範囲の種類の化学物質から生じる化学的危険イベントを検出することができ、ごくわずかなTICsの所定の候補リストに限定されない。ある側面では、上述のイベント検出、弁別、および干渉除去技術の使用による、センサーの材料の組み合わせおよび検出器の動作上の設計(アルゴリズムおよびハードウェア)を通じて、干渉および交差反応の効果は最小化される。
(1)イベント検出:数分から数時間をかけておこる気温、湿度、または化学的バックグラウンドによる環境の変化(偽陽性)を危険なイベントであると認識することはない。第二に、高分子複合材料センサー(PCS)は線量計ではない;数日/数年にわたる低レベルの汚染の蓄積は、警報のトリガーにはならない(比色分析のインジケーターとは異なる)。第三に、高分子複合材料センサー(PCS)は安定で、他のセンサー(例えば導電性ポリマー)に比べて湿気に敏感でない。PCSセンサーとイベント検出の組み合わせが偽陽性のリスクを最小化する助けとなる。
(2)識別:リアルタイムパターン認識技術は好ましくは化学物質の種類を特定するために使用される。認識されない化学物質は警報の登録をしない(偽陰性)かもしれないが、弁別が後に続く化学イベント検出の利用によって、二段階アプローチが偽陰性のリスクを最小化する。この場合、新規で未知の脅威化学物質であっても、閾値を越える危険として警報の登録をする。
(3)干渉除去:さらに、リアルタイムパターン識別は好ましくは、例えば波しぶき、漏れ、洗浄による湿気の増加など、除去されなければ化学イベントして登録するかもしれない既知の干渉をふるいにかけ除去するために用いられる。
【0056】
着用できるバッジ検出器の態様では、高分子複合材料センサーアレイは、好ましくは、(1)種々の環境下で頑丈かつ安定であり、(2)小型で、軽く、着用でき、(3)製造するのに費用がかからず、また(4)低電力消費システムである、ので有利である。このような優位性の詳細は以下の通りである:
・頑丈かつ安定:高分子複合材料センサーは湿気がある中で安定であり、広い湿度範囲(0〜99%)でセンサーアレイの動作が可能である。PCSセンサーアレイは、水溶液中で連続5000時間近いテストをし、センサーの安定性には影響がなかった。該アレイは広い温度範囲で使用することもできる。温度範囲−15℃〜40℃におけるテストを、センサーに影響を出さずに完了した。最後に、該アレイは貯蔵寿命が長い。センサーアレイは実験室の制御されていない環境下で3年まで貯蔵することができ、使用前に特別な前処理は必要ない。
・小型、軽量、および着用できる:チップは寸法がおよそ1.25”×1.25”×0.25”、重さ2〜3オンスで導入できる。好ましい側面では、チップおよびそれに伴いいくつかの態様におけるデバイスは、設置面積がおよそ4平方インチ以下(例えば2”×2”)であり、より好ましくは、およそ1平方インチ以下(例えば1”×1”)である。チップは、処理装置、バッテリー、およびセンサーを含む。必要であれば、さらなる小型化が達成できる。
・安価:センサーは少量のカーボンブラックとCOTSのポリマーを含んでいるので、高分子複合材料センサーは安価である。センサー材料の直接のコストは、例えば注目すべきことに0.01ドル以下などと、非常に低い。
・低電力:高分子複合材料センサーは、通常の動作中μWの電力しか要求しない。チップは、典型的なバッテリーで6ヶ月またはそれ以上動作できる。
【0057】
一つの態様では、湿度可変の環境中で動作する4チャンネル検出器が、未知の組成物による一時的な化学イベント(悪臭)を検出し、プログラム可能な閾値を超えたときにRFリンクを通じて警報/応答のトリガーをする。一つの側面では、警報のみの状態で、センサーから情報が送信されない。このようなデバイスの一時的なイベントに対する典型的な応答曲線が図4に示され、このようなデバイスの例が図5に示される:背面はバッテリーとアンテナを含んでいる。好ましいバッジの態様では、空気圧系統はなく、検出器は連続的に環境に曝露される。
【0058】
火災の検出および防止
ある側面では、本発明によるデバイスは火災の検出および予防における活動に特に有用である。そのような態様では、本発明のデバイスは、好ましくはPCSアレイおよび一または二以上の、光検知器、イオン化検出器、温度検知器などの追加のセンサーモジュールを含む。ここに全ての目的のために参考文献として組み込まれる公開されたPCT出願WO00/79243号は、ここに記載される他の検出用途と同様に、火災の検出および予防の用途に有用な複数のセンサータイプを含むセンサーシステムを開示する。該PCSアレイおよび含まれる他のセンサーからの信号はモニターされ、擬陽性を減らすように高い信頼性を持って、イベントおよび障害を検出し火災源と障害源とを弁別するように構成されたアルゴリズムによって処理される。図6は、本発明の態様による検出器デバイスを含む火災検出システムの例を示す。
【0059】
多くの現在の化学センサーアレイは、長い時間火災が活発に続いた後に、タイプの異なる火災を識別することができる。しかしながら、時間こそが本質であるからこの使用モデルは火災検出には適切でない。本発明によれば、アルゴリズムはイベントをできる限り早く検出し、即座にそのイベントが障害なのか火災なのかを特定する。以下のセクションでは、火災と障害のデータの例を開示する。
【0060】
火災および障害のデータ
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
一つの態様では、単純検出はイベントが発生したことを検出するために使用され、パターン認識は該イベントの性質を特定するために使用される。このイベントの検出および識別についての二段式アルゴリズムアプローチは、高分子複合材料センサーに使うと効果的である。全ての火災は検出されなければならず、理想的には障害は全く検出されないと良い。しかし、第二のアルゴリズムがこれら二つのグループのイベントを区別するので、この時点ではイベントが火災なのか障害なのかは問題ではない。
【0063】
検出アルゴリズムには、好ましくは全ての火災および最小の障害を検出するように最適化された数種のパラメータがある。これらのパラメータは:
・平均化のために使われるセンサーのタイプと数;
・時間による平均化のために使われるポイント数;
・バッファ(ディレイ)内のポイント数;
・閾値外の連続的なポイント数;および
・検出閾値の値
を、含む。
【0064】
32個のPCSセンサーを用い、32のセンサー全てが使用されバッファポイントの数はパラメータである場合の典型的な応答を図7に示す。該パラメータは時間の影響をほとんど受けなかったが、バッファのポイントの数は応答の全体的な大きさに劇的な影響を与えた。
【0065】
一度イベントが検出されると、アルゴリズムの第二の部分がイベントの性質を火事または障害として特定する。図8は、シムカ(SIMCA)を用いたモデルを示す。
【0066】
さらなる有用なアルゴリズムが2002年3月29日出願の米国出願10/112,151号(代理人受領番号018564−007600US)に開示されており、その内容はここに全ての目的のために参考文献として組み込まれる。
【0067】
保護のための吸収ベースのフィルター
ある側面では、本発明のデバイスは保護のための吸収ベースのフィルターシステムとして有用である。保護のための吸収ベースのフィルターの実際に有用な寿命は、吸収材料の量、吸収剤と吸収される物質の相互作用、および化学的曝露時間と濃度の関数である。これらのデータはほとんどいつも未知であるから、製造者の推薦および市民と軍の指示は、少ない数の化学物質およびテストシナリオに基づいており、いつフィルターを取り替えまたは再生するかについて粗い指針を提供するのみである。またほとんどの場合において、いつ曝露が始まり終わったのか、および環境に何の化学物質がどんな濃度で存在するかを最終使用者は知らない。フィルターまたは空気の通路に導入された本発明のセンサーデバイスは、フィルターの吸収容量が所定のレベルに達したとの時機を得た警告を使用者に提供することができる。これは、使用者が危険な場所を抜け出すこと、および、メディアを取り替えまたは再生し、これらの人員に対する潜在的な危険を低下させることを可能にする。従って、一つの側面では、揮発性有機化学物質(VOCs: Volatile Organic Chemicals)およびその他の危険な物質についての個人用の保護用フィルトレーションシステムのための、安価、低電力、軽量、頑丈、安定、かつ正確な残余寿命インジケーターを提供するために、本発明は保護用フィルトレーションシステム中の高分子複合材料センサーアレイを提供する。このようなシステムは、例えば、フィルターブレイクスルーシステム(filter breakthrough systems)、室内空気質の用途、客室送風システム、個人用防護服、および自動車に有用である。
【0068】
一つの態様では、(IDLHレベルにおける)ブレイクスルーイベントの連続的な検出およびそれに続く吸収容量の消費に対応し、それ故、残余寿命を示す警報の出力のために、複数の小型センサーデバイスはフィルター装置中の様々な深さに位置する。最後のセンサーは、フィルターカートリッジの過度の消耗無く危険な場所から脱出できる時間があるように、適切に設置される。
【0069】
図11は、本発明の態様による残余寿命インジケーター装置の略図である。図示のように、検出器をガス流路内のフィルター材料内に埋め込むことによって、検出器は連続的に位置する。入り口およびほぼステージの幅にわたって検体の濃度が、ガスクロマトグラフィーにより半連続的に、また、センサーの出力によって連続的にモニターされる。第一のフィルター装置が突破された一方で、守られている下流側の検出器2および3は応答していないときに、上流側のセンサー1は検体の存在に応答する。これは、フィルターシステムの容量の3分の1の消費(3分の2の残り)と類似である。流入の継続に伴い、第二のフィルター装置が突破されたときに下流のセンサー2が応答する:これは3分の2の消費(3分の1の残り)に対応する。最後のフィルターは気体洗浄装置としても機能する。フィルター装置の内のほぼステージの幅にわたる濃度は、高分子複合材料センサーによると共に、ガスクロマトグラフィーによってもモニターされる。
【0070】
図9は、一または二以上のPCSセンサーを含む耐久年数終了インジケーター(ESLI: end-of-service-life indicator)が有用な化学物質フィルターシステムの例を表す。
【0071】
図10は、本発明によるワイヤレスセンサーデバイスの分散型ネットワークを含むシステムを表す。図示のセンサーは、空気浄化装置または検出システムに導入することができる。
【0072】
図12は、本発明の態様による検出器デバイスモジュールを含むマスクベースのフィルターインターフェイスシステムを表す。フィルターインターフェイスシステムはフィルターベースの検出器と通信し、フィルターの状態に基づいて使用者に状態/警報の出力を提供する。フィルターインターフェイスモジュールは、好ましくはフェースマスクに着接され、バッテリー、信号処理回路、および/またはフィルターの状態を示すためのソフトウェアと視覚的および可聴式の警報装置を含む。このような配置は耐久力のある電子機器をマスク内に配することおよび再利用を可能にし、それによって該システムの動作コスト(フィルター)を最小にすることができる。ノイズの多い工業的環境下で使用者への通知の確実さを増すために視覚的および可聴式の両方の合図を提供する一方で、バッテリーの電力使用は最小化される。使用者の不便を増大させず、機能強化された防護システムを使用する気をそがないように本発明の検出器デバイスを使用することで、サイズと重さは有利に最小化される。
【0073】
センサーアレイ
ある側面では、複数のセンサーのタイプが高密度の基板、好ましくはシリコンチップ、またはその他のよく知られる基板物質に組み込まれる。高分子複合材料および導電性ポリマーに加えて、有用なセンサー材料は、例えばナノスケールポリマー複合材料、カーボンナノチューブ複合材料、ナノゴールド複合材料、本質導電性ポリマー(intrinsically conducting polymers)、本質導電性ポリマーに基づくゾルゲルバイオセンサー(例えば、ゾルゲルのカプセル入りの酵素に基づくセンサー)、自己組織化単分子膜(SAM: self assembling monolayer)材料などのバイオポリマー、およびその他を含む。
【0074】
このような高密度アレイの優位性は、非常に変化に富んだセンサーの特性によってシステムを構成できること、および高度の余剰を含むことができる(人員用システムの両方の特徴)ことを含む。余剰の重大な利益の一つは、ルートnノイズリダクションであり、ここで、nは同一センサー部材の数である。例えば、64個の同一のセンサーを含むと、全体の信号とノイズとの比は、単一のセンサーの場合に比しておよそ8倍になる。少なくとも従前のセンサーよりもはるかに感度の良いセンサーは、それ故高度の余剰を通事で達成される。このような余剰は長期間の安定性およびシステムの全体的頑丈さの点からさらなる利益を有する。
【0075】
ある特定の態様によると、アレイは900個のセンサー(例えば30×30)を有するが、より少ない(例えば1個または数個)またはより多い(1万個のオーダーのセンサー(例えば100×100))センサーを有するアレイが導入されても良いことが理解されるべきである。一つの側面では、センサー間のスペースが50μmである50μm2のセンサー部材が使用される。これはおよそ30mm2に900個のセンサーデバイスのダイ(およそ1cm2に10,000個のセンサーデバイス)を生み出す。アレイを有するデバイスは、好ましくは、A/Dコンバータのチップおよびさらなる処理によって多重化されたデータを用いて単純ローカラムアドレッシングスキーム(simple row-column addressing scheme)で動作するが、その他のアドレッシングスキームを使用することもできる。アドレッシングの例を図13に示す。ある側面では、センサーは連続的に一つずつ読み取られる。アレイのサイズが大きくなるにつれて、センサーの読み込みの待ち時間が最小であることを確かにするために、より大きい外部のバンドウィドゥスが典型的に要求される。例えば、列全体を一度に読み出すなど、センサーは並列的に読み出されることもできる。その他、アドレスイベントコーディング("address event" coding)などのより高度なスキームをセンサーの読み出しのために用いても良い。この方法では「重要な」センサー(すなわち始動しているもの)がまず読み出され、その他の始動していないセンサーよりも頻繁に読み出される。
【0076】
図15は、一つの態様によるテスト単位センサーセルを示す。図示のセルは、好ましくは2ミクロンのCMOSプロセスを用いて作成する。センサーセルはトランジスターおよびデコーディングロジックを含む。ある側面では、主としてICプロセス内の二つの金属層のみによって、それぞれのセンサーセルにあるトランジスターはデコードをする。回路M1〜M4は、アレイの周辺にあるシフトレジスタによって生成されたXおよびYの選択信号をデコードする。選択信号は、センサー抵抗素子を通る電流(Iin)を切り換えるスイッチM7を制御する。この設計の一側面は、電力消費を減じるために一つのセンサーのみにエネルギーが与えられる。ノイズおよびスイッチの抵抗を減じるために、トランジスターM7はセンサー面積の大部分を占める。デコーディング回路は、カラムの電圧を出力バスへと通すトランスミッションゲート(例えば、M5、M6、M8、M9)の選択もする。この信号は、オンチップで処理されても良いが、好ましくは増幅され処理のためにチップ外へ送信される。
【0077】
図16および17は、図15に記載されたようなセルの典型的なI〜Vの応答およびオクタノールに曝露したときのセルの応答を示す。
【0078】
一つの態様では、センサーにおけるゲイン、ベースライントラッキング、およびレシオメトリック検出を提供するために、アナログ回路が含まれる。レシオメトリック検出は、マイクロプロセッサーで計算することなく、鍵になる測定基準ΔR/R、すなわち化学物質による抵抗の変化をベースライン抵抗で割ったもの、の直接の読み出しを可能にする。図18は、本発明の一態様による適用可能なバイアス回路200を示す。回路200は一つの単純なアナログ回路の中で、ベースライントラッキング、レシオメトリック出力、および交流結合を提供する。
【0079】
アルミニウムを導電性のトレースおよびリードに使用することができるが、アルミニウムの時間経過による酸化のため、トレースおよびリードを作るために無電解の金のプロシージャーを使用するのが好ましい。
【0080】
ある側面では、多くの表面改質カーボンブラック(SMCB: surface modified carbon black)材料が化学物質検出に最適化される。これらの材料は、参考文献としてここに全ての目的のために組み込まれる米国特許6,336,936号に開示されるプロセスにより生産できる。このプロセスは、分子またはポリマーとカーボンブラック粒子の表面との直接の化学的な結合を作り出す。このプロセスは、結合する有機フラグメントに組み込まれている化学的分化によって、高度に分離性のある粒子をナノメートルサイズの領域(典型的には100nm)内にする。これらの材料が、化学的に似ている二層の(カーボンブラックがポリマー中に分離している)センサーに比べて、検出の用途に優れていることが実証されている。
【0081】
一つの側面では、化学的に異なる溶剤の中で分離できる4つのSMCB材料が使用される。これらを図19中に示す。これらの材料は、ナノメートルサイズの領域において安定であり、優れたインクジェットの候補であることが実証されている。他の有用なインクジェット材料は、表面改質金ナノ粒子形成またはナノチューブ形成を含む。
【0082】
本質導電性ポリマーの溶液と分散液が蒸着させられても良い。このような材料は、好ましくは上述のセンサーの検出特性を補完する。好ましい導電性ポリマーはポリアニリンおよびポリチオフェンを含み、その構造は図20(a)および(b)に示される。これらのポリマーが電導状態に転換している間に、ポリアニリンのプロトン化による共役酸として、あるいは、ポリチオフェンの場合における酸化剤の陰イオンとして、陰イオン(または対イオン)が形成される。これらの対イオンの構造および化学量論が、様々なVOCsに対する導電性ポリマーの選択性および感度に重要な役割を演じることが実証されている。
【0083】
他のセンサー材料は、酵素をベースとしたバイオジェルセンサーを含む。文献報告は、ゾルゲル合成法を含むカプセル化プロセスを通じて、安定で多孔性のシリカガラス基質内での酵素およびその他のタンパク質の固定の実現可能性を確立した。例えば、参考文献としてここに全ての目的のためにその全体が組み込まれる米国特許5,200,334号に開示されるように、生体分子がその特徴的な反応性および分光的特徴を保持し続けるように穏やかな状態において、亜鉛銅スーパーオキシドジスムターゼ、チトクロムc、およびミオグロビンを固定することができる。ここではバイオジェルとする、この新種の材料の合成における一つの鍵になる特徴は、ゾルゲルプロセスの溶液の化学的特性の柔軟性である。この分野の研究は世界中で急速に行われており、ゾルゲル由来の基質の微細孔に閉じこめられたとき、幅広い範囲の生体分子がその特徴的な反応性および化学的作用を保つことが、良く確立されている。このようなカプセル化プロセスは概略的に図21に示される。
【0084】
ゾルゲルカプセル化プロセスを多数のその他の酵素およびその他のタンパク質に拡張することに加えて、研究者は、抗体(J. Livage, et al, J. Sol-Gel Sci. Technol. 7, 45 (1996))、細胞(E.J.A. Pope, et al, J. Sol-Gel sci. Technol. 8, 635 (1997))、および光化学系(B.C. Dve, et al, Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 435, 565(1996))すらも含むように生体分子ドーパントの種類を拡張している。生体分子は物理的に固定されており、また無機基質と共有結合しておらず、それゆえ生体分子をゲルに導入する能力は合成の状態がタンパク質の凝固または変性を生じさせないことのみを要求する(J.M. Miller, et al, J. Non-Crystalline Solids 202, 279 (1996))、ということを強調することが重要である。一般的に、これはゾルは最小限のアルコール含有と7に近いpHを持つべきであることを意味する。当初のゾルにESI分子を導入することは、その添加された分子の周囲に無機網が成長する「鋳型」効果になる。この理由のために、より小さい分子が微細孔網を通って自由に流れる一方で、より大きい生体分子が基質内で固定される。従って、微細孔網を通じて検体が自由に入り拡散する一方で、タンパク質巨大分子が基質内に固定されるように、ゾルゲルガラスの微細構造が作られる。化学修飾を用いない物理的閉じこめはタンパク質の構造および機能性を保存し、タンパク質がアンフォールドされること(変性)から守る。ゾルゲル固定の独特な特徴は、(1)簡単で、単純で、化学修飾のより普遍的な手段は必要ないこと、(2)これらの材料は生体分子にダメージを与えずに扱えることから永続性および耐久性が増加すること、(3)生物学的に活性な材料は大きなモノリスまたは薄いフィルムとして準備できることからセンサーの設計がより柔軟になること、および(4)生体分子は物理的、化学的、および微生物学的にガラス基質に守られているので、安定性が増すこと、を含む。多孔質のシリカガラス内でカプセル化されることによる安定性の増加は、ゾルゲルアプローチの最も重要な利点であると言えるかもしれない。水性緩衝液では65℃で変性が起きたところ、シリカでカプセル化されたサンプルは温度変性は95℃まで起こらなかったので、温度に対する安定もまた増加した。酵素の安定性における実質的な改善も観察された。ブチリルコリンエステラーゼを用いた研究では、ゾルゲルカプセル化サンプル内では、保存剤なしで80%以上の酵素の活性が40日間保持された。対照的に、同条件下において、水性緩衝液内ではおよそ20日後に酵素の活性はほぼ完全に失われた。酵素の安定性の注目すべき増加はChenら(Q. Chen, et al, J. Am. Chem. Soc. 120, 4582 (1998))によって報告されており、ここではゾルゲルシリカ基質内のブドウ糖酸化酵素の63℃における半減期が、水性緩衝液中にある場合に比べ200倍になった。これらの結果は、カプセル化されたバイオインジケーター分子の非常に強化された安定性が、他の報告されている固定技術を超えて達成され、デバイスの寿命を延ばすことを示す。この技術のさらなる優位性は、バイオインジケーター分子がその活性を保つために栄養液をバイオインジケーター分子と一緒にカプセル化するが、最終的な構成は実際に固体状態であって表面は乾いており、カプセル化された材料は基質からしみ出してこないことである。比較的大きい検体が基質を通じて流れ、固定されたバイオインジケーター分子と相互作用をするように、該微細孔の大きさを制御および修正する方法が報告されている。
【0085】
従前の報告は、物理的に固定された生体分子を含むゾルゲル材料は光学的検出用途のための能動素子またはトランスデューサーとして機能することを示す。
例えば、
【表3】
を参照されたい。
【0086】
用途
ある側面では、本発明によるデバイスは幅広い業務用用途において、イベントおよび状態の検出および解析をすることができる。これに限定されるものではないが、該用途は以下のものを含む:
・ユーティリティおよび電力、オイル/ガス石油化学製品、化学物質/プラスチック、自動空調制御(調理、タバコなど)、重工業生産、環境毒性および改善、生体臨床医学、化粧品/香水、医薬、運輸、緊急の応答および法規制、などの産業における用途;
・可燃性ガス、天然ガス、H2S、周囲空気、排ガス制御、空気の取り入れ、煙、危険な漏れ、危険な流出、逸散排出、危険な流出の検出、識別、および/またはモニタリング;
・新鮮さの検出、果物の熟成の制御、発酵の処理、および香りの合成および識別、などの飲料、食品、および農産物のモニタリングおよび制御;
・非合法な物質、爆発物、変圧不良、冷却剤および燻蒸剤、ホルムアルデヒド、ディーゼル/ガソリン/航空燃料、病院/医療の麻酔および消毒ガスの検出および識別;
・遠隔手術、体液の解析、創薬、伝染病の検出および呼吸の用途、労働者保護、放火の捜査、個人認証、周辺のモニタリング、香料の形成;および
・溶剤回復の有効性、燃料補給作業、運送用コンテナの捜査、閉ざされた空間の調査、製品品質検査、材料品質制御、製品識別および品質検査。
【0087】
付加的なセンサーアレイ
ある側面では、本発明のデバイスは、PCSセンサーまたはその他の化学センサーに加えて、またはその代わりに、多くの異なったセンサータイプを含んでも良い。このような付加的なセンサーのタイプは、例えば、放射線検出(例えば、ガイガー、シンチレーション、ソリッドステート)、化学、原子力、爆発物、生物的(例えば、DNA、オリゴヌクレオチド、抗体抗原、酵素反応など)火災検出、およびその他のセンサータイプ、を含む。これに限定されるものではないが、本発明のシステムおよびデバイスに適したセンサーは、一または二以上の導電性/非導電性の領域センサー、SAWセンサー、クオーツマイクロバランスセンサー、導電性複合材料センサー、ケミレシター(chemiresitor)、金属酸化物ガスセンサー、有機ガスセンサー、MOSFET、圧電性デバイス、赤外線センサー、焼結金属酸化物センサー、PdゲートMOSFET、金属FET構造、電気化学セル、導電性ポリマーセンサー、触媒ガスセンサー、有機半導体ガスセンサー、固体電解質ガスセンサー、および圧電性クオーツクリスタルセンサー、を含む。本発明のデバイスは上述のセンサーおよびセンサタイプの一または二以上の組み合わせを含むことができることが当業者に明らかであろう。
【0088】
ある態様では、付加的なセンサーは、物理的刺激が存在する中で第二の応答を発生することができる一つのセンサーまたはセンサーのアレイを含むことができる。物理的検出センサーは物理的な刺激を検出する。これに限定されるものではないが、適切な物理的刺激は、温度の刺激、放射線の刺激、機械的刺激、圧力、視覚、磁気的刺激、および電気的刺激を含む。
【0089】
これに限定されるものではないが、温度センサーは、温度、熱、熱流量、エントロピー、熱容量などを含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、放射線センサーは、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波、および電磁波を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、機械的センサーは、変位、速度、加速度、力、トルク、圧力、質量、流量、可聴波長、および振幅を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、磁気的センサーは、磁場、磁束、磁気モーメント、磁化、および透磁率を含む刺激を検出することができる。これに限定されるものではないが、電気的センサーは、電化、電流、電圧、抵抗、電導性、電気容量、インダクタンス、誘電率、分極および周波数を含む刺激を検出することができる。
【0090】
ある態様では、温度センサーが本発明において使用するのに適している。これに限定されるものではないが、このような温度センサーは、半導体熱電対などの熱電対、雑音温度計、サーモスイッチ、サーミスタ、金属サーモレジスター、半導体サーモレジスター、サーモダイオード、サーモトランジスタ、カロリメーター、温度計、インジケーター、およびファイバーオプティクスを含む。
【0091】
他の態様では、種々の放射線センサーが本発明において使用するのに適している。これに限定されるものではないが、このような放射線センサーは、
シンチレーションカウンターおよびソリッドステート検出器などの放射線マイクロセンサー、
光伝導セルなどの紫外線、可視光、近赤外線マイクロセンサー、
フォトダイオード、フォトトランジスタ、
光伝導性IRセンサーおよびピエゾエレクトリックセンサーなどの赤外線マイクロセンサーを含む。
光学センサーも可視、近赤外および赤外波を検出する。他のある態様では、種々の機械的なセンサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、変位マイクロセンサー、容量および誘導の変位センサー、光学的変位センサー、超音波変位センサー、ピエゾエレクトリック速度および流量センサー、トランジスター流量マイクロセンサー、加速度マイクロセンサー、ピエゾ抵抗マイクロ加速センサー、力、圧力およびひずみマイクロセンサー、およびピエゾエレクトリッククリスタルセンサーを含む。
【0092】
他のある態様では、種々の化学的または生物的センサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、スズ酸化物ガスセンサーなどの金属酸化物ガスセンサー、有機ガスセンサー、ケモキャパシター(chemocapacitor)、無機ショトキーデバイス(Schottky device)などのケモダイオード(chemoidiode)、金属酸化物フィールドエフェクトトランジスター(MOSFET: metal oxide field effect transistor)、ピエゾエレクトリックデバイス、pHセンサーのためのイオン選択性FET、重合体湿度センサー、電気化学セルセンサー、ペリスターガスセンサー(pelistors gas sensors)、ピエゾエレクトリックまたは表面音波センサー(surface acoustical wave sensor)、赤外線センサー、表面プラスモンセンサーおよび光ファイバーセンサーを含む。
【0093】
種々のその他のセンサーが本発明において使用するのに適しており、これに限定されるものではないが、焼結金属酸化物センサー、フタロシアニンセンサー、メンブレイン(membrane)、PdゲートMOSFET、電気化学セル、導電性ポリマーセンサー、脂質膜センサーおよび金属FET構造を含む。ある好ましい態様では、これに限定されるものではないが、該センサーは、タグチガスセンサー(Taguchi gas sensor)などの金属酸化物センサー、触媒ガスセンサー、有機半導体ガスセンサー、固体電解質ガスセンサー、ピエゾエレクトリッククオーツクリスタルセンサー、光ファイバー探針、マイクロ電子機器システムデバイス、マイクロオプトエレクトロ機器システムデバイス、およびラングミュアブロジェット膜を含む。
【0094】
他の態様では、本発明は、Waltらによって1998年9月29日に出願され、参考文献としてここにその全体が組み込まれる米国特許5,814,524号に開示されるセンサーを用いた検出を含む。光学センサー、光学検出装置、および、関心のある一または二以上の単独または混合物中の検体の検出および評価の方法論、を含む光学検出および特定システムがそこに開示される。該システムは、支持部材およびアレイ型にされた不均一、半選択性ポリマー膜を含み、該ポリマー膜は、検出受容体として機能し、特別の認識パターンを用いて種々の異なる検体を検出することができる。このシステムを使うことで、視覚および化学的検出を光ファイバーケミカルセンサーと組み合わせることができる。
【0095】
あるセンサーネットワークの態様では、本発明のデバイスは一または二以上の類似または異なったタイプのセンサーを含むことができる。また、ノードネットワーク中の、例えば個々の物理的デバイスの位置などの、個々のノードはそれぞれ一または複数のセンサータイプを含むことができる。例えば、ネットワークは、一つのセンサータイプを含む(ワイヤレスの)デバイスを着用している一人の人員、同種または異種の複数のセンサーを含む(ワイヤレスの)デバイスを着用している第二の人員、一または二以上の同種または異種のセンサーを含んでも良い(ワイヤレスまたは直接接続の)固定のデバイス、およびネットワークモニターステーション、を含む。
【0096】
例を用い、かつ特定の態様の観点から本発明について説明をしたが、本発明が開示された態様に限定されるものでは無いことが理解されよう。反対に、これは種々の修正および類似の構成をカバーすることを意図するものであると、当業者に理解されよう。例えば、本発明によるデバイスは、適切なセンサーの構成および解析アルゴリズムを用いて病気の診断に使用しても良い。したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような修正および類似の構成を包含するように、最も広い解釈と一致すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1Aは、本発明による、検体曝露時の検出器複合材料の応答の説明を示す図である。図1Bは、データがどのようにして応答パターンに変換されるのかの説明を示す図である。
【図2】種々の薬品のIDLHレベルを示す図である。
【図3a】本発明の態様による携帯できる検出器デバイスを示す図である。
【図3b】本発明の態様による携帯できる検出器デバイスを示す図である。
【0098】
【図4】一時的イベントに対する典型的応答を示す図である。
【図5】本発明の態様による検出器デバイスの例を示す図である。
【図6】本発明の態様による検出器デバイスを含む火災検出システムの例を示す図である。
【図7】32個のセンサーを用いたデバイスの典型的な応答を示す図である。
【0099】
【図8】シムカ(SIMCA: Soft Independent Modeling of Class Analogy)を用いたモデルを示す図である。
【図9】一または二以上のPCSセンサーを含む耐久年数終了インジケーター(ESLI: end-of-service-life indicator)が有用な化学物質フィルターシステムの例を示す図である。
【図10】本発明によるワイヤレスセンサーデバイスの分散型ネットワークを含むシステムを示す図である。
【0100】
【図11】本発明の態様による残余寿命インジケーター装置の略図である。
【図12】本発明の態様による検出器デバイスモジュールを含むマスクベースのフィルターインターフェイスシステムを示す図である。
【図13】複数センサーの信号−ノイズ比の測定値を示す図である。
【図14】一つの態様に従うセンサーアレイのアドレッシングを示す図である。
【0101】
【図15】一つの態様による単位センサーセルを示す図である。
【図16】図15のセルのI〜Vの応答を示す図である。
【図17】オクタノールに曝露したときの図15のセルの応答を示す図である。
【0102】
【図18】一態様による適用可能なバイアス回路を示す図である。
【図19】4つのSMCB材料の表を示す図である。
【図20】図20aは、ポリアニリンの構造を示す図である。図20bは、ポリチオフェンの構造を示す図である。
【0103】
【図21】ゾルゲルカプセル化プロセスを示す図である。
【図22】一態様による電力管理方法を示す図である。
【図23】本発明の一態様による検出プロセスおよび典型的な応答曲線を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項2】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第二の処理がパターン認識アルゴリズムを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
装置を実行するために要求される電力が、およそ1ミリワット以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
電力供給のために、バッテリーおよびソーラーセルの内の一つをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ピックアップアンテナをさらに含み、ここで、電力は外部のFRフィールドから前記アンテナに受け取られて供給される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
通信モジュールが、LED、スピーカー、ブザー、および振動装置の内の一つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
通信モジュールが、ワイヤレスインターフェイスデバイスおよびフィジカルバスインターフェイスの内の一つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ワイヤレスインターフェイスデバイスが、RFトランスミッター、RFトランシーバー、IRトランスミッター、IRトランシーバーの内の一つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
フィジカルバスインターフェイスが、RS−232ポート、USBポート、ファイヤーワイヤーポートの内の一つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも二つのセンサーデバイスが高分子複合材料センサーである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも一つのセンサーデバイスが化学センサーである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
化学センサーが、高分子複合材料センサーおよび表面改質カーボンブラックセンサーからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
装置の寸法がおよそ4平方インチ以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
装置の寸法がおよそ1平方インチ以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
センサーおよびプロセッシングモジュールが単一のシリコンチップ上に統合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
装置を使用者に着用できるようにするための取り付け装置をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
取り付け装置が、クリップおよびピンの内の一つを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
プロセッシングモジュールが、通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールに環境状態についての情報を自動的に伝達するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
体液の環境のサンプリングに基づいて病気の診断に用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
着用できるセンサーデバイスであって:
小型のハウジング構造;
前記ハウジング構造に連結された取り付け装置;
一つまたは二つ以上の高分子複合材料センサー;
警報モジュール;および
一つまたは二つ以上のセンサーからの信号をモニターし、閾値の状態の検出に応答して警報モジュールに警報起動信号を提供するように構成されたデジタル信号プロセッサー、
を含む、前記デバイス。
【請求項22】
外部プロセッサーと通信するように構成された通信モジュールをさらに含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
通信モジュールがワイヤレストランスミッターデバイスを含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
ワイヤレストランスミッターデバイスが、RFトランスミッターおよびIRトランスミッターの内の一つを含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
取り付け装置が、クリップおよびピンの内の一つを含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項26】
統合されたセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上の高分子複合材料センサー;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項27】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
一つまたは二つ以上の環境状態に関連する種々のパラメータを記憶するように構成されたメモリモジュールを含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
メモリモジュールが、第一および第二の処理で使用されるアルゴリズムをさらに記憶する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
バッテリー、ソーラーセル、RFタグモジュール、およびIRタグモジュールからなる群から選択される電力源をさらに含む、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
通信モジュールがワイヤレストランシーバを含み、プロセッサーが通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールと環境状態についての情報を自動的に通信するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項32】
通信モジュールがフィジカルポートインターフェイスを含み、プロセッサーが、フィジカルポートインターフェイスがバスインターフェイスに接続されたときに、通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールと環境状態についての情報を自動的に伝達するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項33】
バスインターフェイスが、RS−232バス、USBバス、およびファイヤーワイヤーバスの内の一つである、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
通信モジュールは、LED、振動モジュール、およびスピーカーの内の一つを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項35】
装置が、使用者が着用できるバッジに導入されている、請求項26に記載の装置。
【請求項36】
携帯できるセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール;および
前記装置の連続動作中における電力供給の寿命が2週間を超える、センサー装置に電力を供給するように構成された電力供給モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項37】
装置の連続動作中における電力供給の寿命が2ヶ月を超える、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
装置の連続動作中における電力供給の寿命が2年を超える、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
電力供給モジュールからプロセッサーモジュールへの電力潮流を制御するように構成された電力管理モジュールをさらに含む、請求項36に記載の装置。
【請求項40】
装置が、使用者が介入しなくても受動的かつ連続的方法で動作する、請求項36に記載の装置。
【請求項41】
着用できるバッジ検出器を用いる方法であって、
該バッジ検出器は、
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス、
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール、
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、および
検出器に電力を供給するように構成された電力供給モジュール、
を含み、
前記方法は:
着用できるバッジ検出器を使用者に提供すること;
該検出器を使用者に取り付けること;および
該検出器を起動させること
を含み、
ここで、一度起動すると、前記検出器は電力供給モジュールの再充電または取り替えを要求することなく、受動的かつ一週間以上連続的に動作する、前記方法。
【請求項42】
二つまたは三つ以上のセンサーは高分子複合材料センサーを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
起動することが電力供給モジュールを検出器に取り付けることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
携帯できるセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含み、
前記装置は使用者が介入しなくても、受動的かつ連続的方法で動作する、前記装置。
【請求項45】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
第二の処理がパターン認識アルゴリズムを含む、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
センサー装置に電力を供給するための電力供給モジュールをさらに含み、装置の連続動作中における電力供給の寿命が2ヶ月を超える、請求項44に記載の装置。
【請求項48】
装置を使用者に着用できるようにするための取り付け装置をさらに含む、請求項44に記載の装置。
【請求項49】
二つまたは三つ以上のセンサーが、二つまたは三つ以上の高分子複合材料センサーを含む、請求項44に記載の装置。
【請求項1】
センサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項2】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第二の処理がパターン認識アルゴリズムを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
装置を実行するために要求される電力が、およそ1ミリワット以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
電力供給のために、バッテリーおよびソーラーセルの内の一つをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ピックアップアンテナをさらに含み、ここで、電力は外部のFRフィールドから前記アンテナに受け取られて供給される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
通信モジュールが、LED、スピーカー、ブザー、および振動装置の内の一つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
通信モジュールが、ワイヤレスインターフェイスデバイスおよびフィジカルバスインターフェイスの内の一つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ワイヤレスインターフェイスデバイスが、RFトランスミッター、RFトランシーバー、IRトランスミッター、IRトランシーバーの内の一つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
フィジカルバスインターフェイスが、RS−232ポート、USBポート、ファイヤーワイヤーポートの内の一つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも二つのセンサーデバイスが高分子複合材料センサーである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも一つのセンサーデバイスが化学センサーである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
化学センサーが、高分子複合材料センサーおよび表面改質カーボンブラックセンサーからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
装置の寸法がおよそ4平方インチ以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
装置の寸法がおよそ1平方インチ以下である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
センサーおよびプロセッシングモジュールが単一のシリコンチップ上に統合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
装置を使用者に着用できるようにするための取り付け装置をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
取り付け装置が、クリップおよびピンの内の一つを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
プロセッシングモジュールが、通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールに環境状態についての情報を自動的に伝達するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
体液の環境のサンプリングに基づいて病気の診断に用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
着用できるセンサーデバイスであって:
小型のハウジング構造;
前記ハウジング構造に連結された取り付け装置;
一つまたは二つ以上の高分子複合材料センサー;
警報モジュール;および
一つまたは二つ以上のセンサーからの信号をモニターし、閾値の状態の検出に応答して警報モジュールに警報起動信号を提供するように構成されたデジタル信号プロセッサー、
を含む、前記デバイス。
【請求項22】
外部プロセッサーと通信するように構成された通信モジュールをさらに含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
通信モジュールがワイヤレストランスミッターデバイスを含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
ワイヤレストランスミッターデバイスが、RFトランスミッターおよびIRトランスミッターの内の一つを含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
取り付け装置が、クリップおよびピンの内の一つを含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項26】
統合されたセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上の高分子複合材料センサー;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項27】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
一つまたは二つ以上の環境状態に関連する種々のパラメータを記憶するように構成されたメモリモジュールを含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
メモリモジュールが、第一および第二の処理で使用されるアルゴリズムをさらに記憶する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
バッテリー、ソーラーセル、RFタグモジュール、およびIRタグモジュールからなる群から選択される電力源をさらに含む、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
通信モジュールがワイヤレストランシーバを含み、プロセッサーが通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールと環境状態についての情報を自動的に通信するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項32】
通信モジュールがフィジカルポートインターフェイスを含み、プロセッサーが、フィジカルポートインターフェイスがバスインターフェイスに接続されたときに、通信モジュールを使用して外部のインテリジェンスモジュールと環境状態についての情報を自動的に伝達するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項33】
バスインターフェイスが、RS−232バス、USBバス、およびファイヤーワイヤーバスの内の一つである、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
通信モジュールは、LED、振動モジュール、およびスピーカーの内の一つを含む、請求項26に記載の装置。
【請求項35】
装置が、使用者が着用できるバッジに導入されている、請求項26に記載の装置。
【請求項36】
携帯できるセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール;および
前記装置の連続動作中における電力供給の寿命が2週間を超える、センサー装置に電力を供給するように構成された電力供給モジュール、
を含む、前記装置。
【請求項37】
装置の連続動作中における電力供給の寿命が2ヶ月を超える、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
装置の連続動作中における電力供給の寿命が2年を超える、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
電力供給モジュールからプロセッサーモジュールへの電力潮流を制御するように構成された電力管理モジュールをさらに含む、請求項36に記載の装置。
【請求項40】
装置が、使用者が介入しなくても受動的かつ連続的方法で動作する、請求項36に記載の装置。
【請求項41】
着用できるバッジ検出器を用いる方法であって、
該バッジ検出器は、
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス、
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール、
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、および
検出器に電力を供給するように構成された電力供給モジュール、
を含み、
前記方法は:
着用できるバッジ検出器を使用者に提供すること;
該検出器を使用者に取り付けること;および
該検出器を起動させること
を含み、
ここで、一度起動すると、前記検出器は電力供給モジュールの再充電または取り替えを要求することなく、受動的かつ一週間以上連続的に動作する、前記方法。
【請求項42】
二つまたは三つ以上のセンサーは高分子複合材料センサーを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
起動することが電力供給モジュールを検出器に取り付けることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
携帯できるセンサー装置であって:
二つまたは三つ以上のセンサーデバイス;
それぞれのセンサーデバイスに連結し、環境状態を決定するために二つまたは三つ以上のセンサーデバイスそれぞれから受け取った信号を処理するように構成されたプロセッシングモジュール;および
環境状態についての情報を使用者に伝達する通信モジュール、
を含み、
前記装置は使用者が介入しなくても、受動的かつ連続的方法で動作する、前記装置。
【請求項45】
プロセッサーが、環境状態の変化を検出する第一の処理および環境状態の変化の由来を特定する第二の処理を実行するように構成されている、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
第二の処理がパターン認識アルゴリズムを含む、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
センサー装置に電力を供給するための電力供給モジュールをさらに含み、装置の連続動作中における電力供給の寿命が2ヶ月を超える、請求項44に記載の装置。
【請求項48】
装置を使用者に着用できるようにするための取り付け装置をさらに含む、請求項44に記載の装置。
【請求項49】
二つまたは三つ以上のセンサーが、二つまたは三つ以上の高分子複合材料センサーを含む、請求項44に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2006−511800(P2006−511800A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563553(P2004−563553)
【出願日】平成15年7月21日(2003.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/023005
【国際公開番号】WO2004/059589
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505436896)スミツ ディテクション,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月21日(2003.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/023005
【国際公開番号】WO2004/059589
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505436896)スミツ ディテクション,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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