説明

非球面形状計測装置

【課題】非球面形状を有する被検面を高精度に計測するのに有利な非球面形状計測装置を提供する。
【解決手段】光源1から射出された光を非球面形状を有する被検面14に照射する照明光学系7と、前記被検面に照射する光の一部を遮光する遮光板6と、前記照明光学系及び前記遮光板を介して光が照射された前記被検面の一部の領域から反射される光束を計測するセンサ10を有する撮像系と、前記センサにより計測されたデータから前記被検面の形状を算出する算出手段と、を有し、前記遮光板は、光軸に対し前記被検面の一部の領域の反対側が遮光されるように構成され、前記被検面の一部の領域から反射される光束と光軸との交点を複数の計測光交点とした場合、前記複数の計測光交点のうち前記被検面に最も近い計測光交点16と前記被検面との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面形状計測装置の不要光除去に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度、低コストといった光学機器の需要に伴い、その機器を構成するレンズやミラー等の光学素子に高精度な非球面を使用した光学機器が増加している。そのため、その光学素子の非球面形状を計測する非球面形状測定装置にも、同じように高い精度が求められる。
【0003】
非球面形状測定装置としては、特許文献1で開示されたような、ヌルレンズを用いたフィゾー型干渉計が知られている。また、非特許文献1で開示されたような、光学系を介して被検面に球面波の光を照射し、被検面の反射光を受光部のシャック・ハルトマンセンサを用いて計測するという形状計測装置が知られている。しかしこれらの装置には、被検面に光を照射して計測を行うため、光学系からの反射光や被検面の裏面からの反射光といった不要光が発生し、被検面形状の計測精度が低下するという問題がある。
【0004】
非球面形状計測に限らず不要光を除去する方法としては、従来以下に示す方法が提案されている。まず、第1に光路の違いを利用する方法、第2に偏光を利用する方法、第3に低コヒーレンシィ光源を利用する方法、第4に対象面の反射率を低下させる方法がある。
【0005】
第1の光路の違いを利用する方法としては、図10に示すように、干渉を利用した面形状計測装置がある。光源1からの光は、ハーフミラー5で分割され、波面形成手段21によって被検面22の形状に対応した波面に変換されたあと、被検面22に照射される。そして被検面22で反射した計測光と参照光によって形成される干渉縞を観察することで、被検面22の面形状を測定する。この装置において、波面形成手段21で形成される計測光を一旦集光してから被検面22に入射するように、波面形成手段21を構成し、計測光の集光位置の近傍に絞り23を配置する。この配置により、被検面22の裏面からの反射光24が除去できる。実際に特許文献2では、この方法を利用して不要光を除去している。
【0006】
次に、上述した第2の偏光を利用する方法としては、偏光ビームスプリッターと偏光板を利用した干渉計がある。具体的には、図10のハーフミラー5を偏光ビームスプリッターに変更し、該偏光ビームスプリッターに光を入射させると反射光はs偏光、透過光はp偏光となり、さらにλ/4板を偏光ビームスプリッターと被検面の間に配置する。すると被検面で反射する計測光は、λ/4板を2回透過しているため、s波からp波に変換され、偏光ビームスプリッターを透過し、センサに入射する。この構成では、λ/4板よりもセンサ側の光学系から発生する反射光は、λ/4板を透過していないので偏光状態は変わらず、偏光ビームスプリッターで反射される。従って、光学系内で発生する不要光を除去することができる。実際にこの方法は、特許文献3の従来の技術で紹介されている。
【0007】
また、上述した第3の低コヒーレンシィ光源を利用する方法としては、トワイマン・グリーン型干渉計の光源付近に、極度に帯域の狭いバンドパスフィルタを配置する。そして、被検面からの計測光と参照面からの参照光の光路長の差を、バンドパスフィルタを通過した光源光のコヒーレンシィより短くする。すると、被検面の表面からの反射光は干渉を起こすが、被検面の裏面からの反射光は干渉を起こさなくなる。このため、この干渉計によれば、被検面裏面からの反射の影響なしに測定をすることが可能である。実際に、特許文献4では、この方法を応用して不要光を除去している。
【0008】
また、上述した第4の対象面の反射率を低下させる方法としては、不要光発生面に反射防止膜を成膜したり、対象面の屈折率に近い物体を塗布もしくは接触させることで、対象面からの不要光の発生を抑える方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−329427号公報
【特許文献2】特開平11−325848号公報
【特許文献3】特開平07−324908号公報
【特許文献4】特開2004−45326号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Johannes Pfund, Norbert Lindlein and Johannes Schwider,“Nonnull testing of rotationally symmetric aspheres:a systematic error assessment,”App.Opt.40(2001)p.439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来は上述のような装置構成であったため、不要光を除去するにあたって以下に示すような問題があった。
【0012】
まず、第1の光路の違いを利用する方法では、図10に示すような波面形成手段21によって、被検面22の形状に対応し、尚且つ一旦集光する波面を形成する。ここで被検面22が球面形状であれば、波面形成手段21によって球面波を形成し、被検面22は、照射波面の曲率と被検面22の曲率が一致する位置に配置する。この配置をとれば、被検面22の曲率が変化しても、計測光の集光位置が存在するため、絞り23によって不要光が除去できる。しかしながら、被検面22が非球面形状の場合には以下の問題が発生する。ここで、波面形成手段21によって、被検面22の非球面形状に対応し、尚且つ一旦集光する波面を形成すれば、被検面22(非球面)の裏面からの不要光は、絞り23によって除去できる。しかしながら、この光学系で別の形状の被検面22(非球面)を計測した場合、被検面22の形状は中心からの距離によって曲率が異なるため、被検面22を駆動させるだけでは計測光が集光しない。従って不要光を除去するためには、計測する非球面の形状を変えるたびに、波面形成手段21をも変化させなければならない。言い換えると、計測光と不要光の光路が空間的に分離されていないため、不要光が除去できないという問題がある。
【0013】
また、第2の偏光を利用する方法では、波長板の下流に配置された光学系からの不要光や、被検面の裏面から反射する不要光は、計測光と偏光状態に差がないために除去することができないという問題がある。
【0014】
第3の低コヒーレンシィ光源を利用する方法では、光路長を精度よく管理する必要があり、調整が複雑で手間がかかる。また、これは干渉を利用する光学的な計測以外には適用できないという問題がある。
【0015】
第4の対象面の反射率を低下させる方法は、反射率を低下させる物質を塗布するのに手間やコストがかかることや、反射防止膜成膜後の被検面形状は計測することができないという問題がある。
【0016】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、非球面形状を有する被検面を高精度に計測するのに有利な非球面形状計測装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面としての非球面形状計測装置は、光源から射出された光を非球面形状を有する被検面に照射する照明光学系と、前記被検面に照射する光の一部を遮光する遮光板と、前記照明光学系及び前記遮光板を介して光が照射された前記被検面の一部の領域から反射される光束計測するセンサを有する撮像系と、前記センサにより計測されたデータから前記被検面の形状を算出する算出手段と、を有し、前記遮光板は、光軸に対し前記被検面の一部の領域の反対側が遮光されるように構成され、前記被検面の一部の領域から反射される光束と光軸との交点を複数の計測光交点とした場合、前記複数の計測光交点のうち前記被検面に最も近い計測光交点と前記被検面との間に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非球面形状を有する被検面を高精度に計測するのに有利な非球面形状計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1における面形状計測装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例1における面形状計測装置の光学系を薄肉レンズで表現したときの概略図である。
【図3】本発明における被検物の被検面の面形状を算出するステップをあらわす概略図である。
【図4】本発明の実施例2における面形状計測装置の概略図である。
【図5】本発明の実施例3における面形状計測装置の概略図である。
【図6】本発明の実施例3における面形状計測装置に使用される遮光板の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例4における面形状計測装置の概略図である。
【図8】本発明の実施例4における面形状計測装置に使用される偏光素子の構成を説明するための図である。
【図9】本発明の実施例5における面形状計測装置の概略図である。
【図10】従来の干渉を用いた面形状計測装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の方法を用いて負の曲率を持つ被検物8の表面(被検面)14を計測する面形状計測装置(非球面形状計測装置)100の構成を示す図である。なおここで、本発明の被検物8の表面(被検面)14は非球面形状を有する。これは、以下の他の実施例においても同様である。また、本実施例では、被検物8の表面14とは反対側の裏面15では正の曲率を持つ。つまり、本実施例では、被検物8の表面14の曲率の符号と裏面15の曲率の符号は互いに異なる。さらに、本発明はこれに限定されず、被検物8の裏面15が平面形状を有していてもよい。本発明は、被検物8の表面14が曲率を有する非球面形状を有し、且つ裏面15が表面14と異なる符号の曲率を有するか、裏面15が平面形状を有するときに特に有効である。尚、以下の説明においては図1中に示したxyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ、各光線の方向を説明する。
【0022】
光源1からの照明光は、集光レンズ2によってピンホール3を照明している。ピンホール3から出た光束は、ハーフミラー5に入射する。ハーフミラー5で反射した光束は、光軸をx軸とした場合、yz平面上のz<0の部分を遮光した遮光板6によって半分遮光される。そして、照明光学系7により収束光に形成された後、被検物8の表面14の一部の領域(yz平面上のz>0)に照射される。光が照射される被検物8の表面14の一部の領域の光軸に対して反対側(yz平面上のz<0)は、遮光板6によって遮光される。被検物8の表面14で反射した光は、再び照明光学系7と遮光板6を通り、ハーフミラー5と結像光学系9を透過してセンサ10に入射する。結像光学系9とセンサ10とにより撮像系が構成される。
【0023】
ここで、光源1は単色のレーザーあるいはレーザーダイオードあるいは発光ダイオードである。ピンホール3は収差の小さい球面波を作ることが目的なので、シングルモードファイバーで代替しても良い。
【0024】
ここで、被検物8の表面14からの反射光が光軸を含むxy面と交わる点を計測光交点、被検物8の裏面15からの反射光11や、照明光学系7からの一回反射光12が光軸を含むxy面と交わる点を不要光交点とする。つまり、不要光交点は、被検物8の裏面15および照明光学系のうち少なくとも一方から反射される光束と光軸との交点であるものとする。すると、遮光板6は、複数ある計測光交点のなかで、最も被検物8に近い計測光交点16と、被検物8(具体的には、複数ある不要光交点の中で、最も被検物8に近い不要光交点)との間に配置されている。本発明は、このような遮光板6の配置により、後述するように、少なくとも不要光である反射光11がセンサ10に入射する光量を低減させることができるので、高精度な形状評価を行うことができる。より好ましくは、本実施例の図1に示されるように、遮光板6は、複数ある計測光交点のなかで、最も被検物8に近い計測光交点16と、複数ある不要光交点の中で、最もセンサ10に近い不要光交点17の間に配置されている。本発明は、このような遮光板6の配置により、後述するように不要光である反射光11に加えて不要光である反射光12までもがセンサ10に入射する光量を低減させることができるので、高精度な形状評価を行うことができる。
【0025】
照明光学系7、結像光学系9はそれぞれ複数のレンズから構成されている。各レンズの曲率半径や硝材、光線有効径は、ピンホール3の射出光を、被検物8上で表面14の曲率に近い曲率を持つ収束光にして照射する、尚且つ、被検物8の表面14付近にセンサ10の像を結像させるように設計している。また、一組のレンズでは計測可能な非球面形状の範囲が限定されるので、被検物8の設計値(有効径、曲率半径、非球面量)に応じて、例えば、照明光学系7、結像光学系9のどちらかあるいは両方を変更(交換)する。
【0026】
センサ10は、多数の微小集光レンズを格子状に配列したマイクロレンズアレイとCCDで代表される受光センサから構成され、一般的にはシャック・ハルトマンセンサと称されているものである。このセンサの原理について説明すると、まず微小集光レンズを透過した光束は微小集光レンズ毎に受光センサ上に集光される。センサ10に入射する光束の角度Ψは微小集光レンズで集光されるスポットの位置とあらかじめ校正された位置、例えば平行光を入射したときのスポット位置、との差Δpを検出することで求められる。ここで、光束の角度Ψとスポット位置の差Δpはマイクロレンズアレイと受光センサ(CCD)との距離をfとするとΨ=atan(Δp/f)という関係式が成り立っている。全ての微小集光レンズに対して不図示の算出手段が上記の処理を行うことでセンサ10で受光される光束の角度分布が計測できる。
【0027】
センサ10はシャック・ハルトマンセンサに限られず、波面あるいは光線角度分布が計測できれば良いので、例えばハルトマンプレートや回折格子とCCDで代表される受光センサから構成される、シアリング干渉計あるいはTalbot干渉計としても良い。
【0028】
以上が面形状計測装置100の構成である。次に本実施例における面形状計測装置100の作用について説明する。
【0029】
まず、被検物8の裏面15からの反射光(不要光)11に対する本実施例における面形状計測装置100の作用について説明する。ここで、図1の装置100の構成において、被検物8の曲率の符号が、表面14で負、裏面15で正だと、被検物8の裏面15からの反射光11は、被検物8の表面14付近に集光する。ここで、被検物8の表面14とセンサ10は共役関係にあるため、センサ10上においても裏面15から反射光(不要光)11が集光し、計測精度が悪化する。しかし、本装置構成では遮光板6によって、被検物8には、光軸をx軸とした場合、yz平面上のz>0の部分領域のみに光が照射される。そのため、被検物8の表面14からの反射光は、照明光の光路に近く、進行方向のベクトル成分が+z方向の成分を持つため、遮光板6の位置ではyz平面上のz>0の部分に入射する。また、被検物8の裏面15からの反射光11は、被検物8の表裏で曲率の符号が異なるために、進行方向のベクトル成分は、表面14からの反射光とは反対の成分である−z方向の成分を持つ反射光となる。従って、遮光板6の位置では、yz平面上のz<0の部分に入射する。遮光板6は、光軸をx軸とした場合yz平面上のz<0の部分を遮光しているため、裏面15からの反射光11のみを効率良く除去できる。
【0030】
次に、ピンホール3から出た射出光が照明光学系7で一回反射されることで発生する反射光(不要光)12、13に対する本実施例における面形状計測装置100の作用について説明する。照明光学系7には遮光板6によって、光軸をx軸とした場合、yz平面上のz>0となる領域のレンズのみに光が照射される。また、照明光学系7は曲率の異なる様々なレンズで構成されている。そのため反射光は、進行方向のベクトル成分が+z方向の成分を持つ反射光13と、−z方向の成分を持つ反射光12が存在する。
【0031】
−z方向の成分を持つ反射光12は、遮光板6の位置では、光軸をx軸としたときyz平面上のz<0の部分に入射する。従って、遮光板6によって遮光されるため、誤差とはならない。また、+z方向の成分を持つ反射光13は、センサ10の光軸から+z側に入射する。しかしながら、被検物8の表面14からの反射光は、被検物8とセンサ10が1回結像の関係にあるため、センサ10の−z側に入射する。従って、+z方向の成分を持つ反射光13と計測光は、互いにセンサ上で空間的に分離されるので、計測誤差とはならない。例えば、センサ10のz<0の部分の領域のみを有効とする手法により不要光による誤差の問題を回避できる。
【0032】
ここで+z方向の成分を持つ反射光13は、センサ10の光軸から+z側に入射することを以下で説明する。
【0033】
図2は、装置100の構成を薄肉レンズで描画したものである。f1は結像光学系9の焦点距離、f2は照明光学系7の焦点距離、d1はセンサ10と結像光学系9の主点間距離、d2は結像光学系9と照明光学系7の主点間距離、d3は照明光学系7と被検物8の主点間距離である。ここで、センサ10と被検物8は結像関係にあるため、以下の関係が成り立つ。
【0034】
【数1】

【0035】
また、ピンホール射出光が照明光学系7で一回反射することで生じる反射光13が、結像光学系9によって結像される距離dgは、以下で与えられる。
【0036】
【数2】

【0037】
ここで、d1とdgの大きさを比べる。まず、照明光学系7のf2は、被検物8の曲率に近い波面を被検物8に照射しなければならないため、f2>d3である。そのため、(1)式と、(2)式それぞれの右辺の2項目は、(1)式のほうが小さくなる。従ってd1<dgであり、照明光学系7の近軸、及びその周辺から射出する光は、センサ位置であるd1よりも−x側に集光する。故に、図2の進行方向のベクトルが+z方向の成分を持つ反射光13は、センサ10より−x側に集光するため、反射光13はセンサ10上の+z側に入射する。
【0038】
図1の装置100の構成では、被検物8を計測したとき、センサ10には、遮光板6を透過して被検物8に照明光が照射された範囲(すなわち、yz平面上のz>0の部分)の角度分布しか得られない。そこで次に、遮光板6を動かして(変化させて)、光軸をx軸とした場合yz平面上のz>0の部分を遮光する。言い換えると、遮光板6がこれまで遮光していた範囲を遮光せず、透過させていた範囲を遮光するような配置に変更する。すると、被検物8には、光軸をx軸とした場合、yz平面のz<0の領域に光が照射されるため、センサ10には被検物8の未測定の範囲からの角度分布も計測される。このように2回の測定(複数回計測)を行い、得られた角度分布(複数の計測データ)、もしくは角度分布から計算した形状(に変換したデータ)を繋ぎ合わせれば、不要光の影響が除去された被検面14の全面における高精度な形状評価を行うことができる。
【0039】
ここで、センサ10で計測された角度分布から形状への計算は、図3で示すフローに従って行われる。具体的には、まず、センサ10で計測された角度分布(センサデータ)は、光線位置変換と光線角度変換を経て、被検面上の反射光の角度分布に変換される。ここで、光線位置変換とは、センサ面の位置座標を被検面の位置座標へ変換することである。具体的には、被検物8の表面14の像をセンサ10に縮小倍率がM倍で結像させている光学系においては、センサ面の位置座標をM倍、及び光学系のディストーションも含めて、被検面の位置座標を算出する。また光線角度変換は、センサ上の光線角度を被検面の角度へ変換することであり、センサ10で計測された角度を1/Mして計算される。そして、変換された被検面上の反射光の角度分布と、照明光の角度分布から、被検面の面傾斜を計算する。最後に、面傾斜を積分することで被検面の形状データを算出することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、図4に示すように、実施例1の図1と比較して、光軸をz軸とした場合、xy平面上のx<0の部分の領域を遮光する遮光板4をピンホール3の後に(ピンホールとハーフミラー5との間に)追加して配置したものである。換言すれば、実施例2は、実施例1の遮光板6(第1の遮光板)よりも光源側に遮光板4(第2の遮光板)を配置したものである。遮光板4が遮光する領域は、遮光板6が遮光する領域と同じ領域である。つまり、遮光板4と遮光板6は、同じ形状を有している。従って、実施例1と同様に、被検物8の裏面15からの反射光11、照明光学系7からの反射光12,13を除去して計測することができる。さらに、実施例1と比較して、センサ10に入射する遮光板6からの散乱光を減らすことができるといった利点がある。
【実施例3】
【0041】
実施例3は、図5に示すように、実施例1の遮光板6を図6に示すような遮光板18で構成し、尚且つ遮光板18を光軸を中心に回転させるという装置構成である。ここで遮光板18は、円の中心から放射状に広がった光を遮光する遮光部18aと、光を透過する透過部18bを形成する枠18cを持ち、遮光部18aと透過部18bは光軸を中心に点対称の関係にある。図6においては、遮光板18は複数の遮光部18aと複数の透過部18bを有し、各遮光部18aと各透過部18bとは光軸を中心に点対称の関係を満たすように配置されている。換言すれば、本実施例においても、被検物8の表面14の(透過部18b及び照明光学系7によって照明される)一部の領域の光軸に対して反対側の領域は、遮光板18の遮光部18bによって遮光される構成をしている。遮光板18を配置する位置は、実施例1の遮光板6と同様であり、遮光板18の円の中心が光軸と一致するように配置する。
【0042】
本実施例では、まず遮光板18を、センサ10の計測時間よりも短時間の間に、遮光部18aと透過部18bが入れ替わるように回転させる。このとき、メリディオナル断面においては、実施例1の遮光板6を入れた場合と同じ状況が成り立つため、被検物8の裏面からの反射光11や、照明光学系7からの反射光12は除去される。尚且つ、遮光板18の遮光部18aと透過部18bは、センサの計測時間よりも短時間の間に入れ替わるため、1回の計測で被検物表面からの反射光を精度よく計測することができる。
【0043】
なお本実施例は、遮光板18を用いて説明したが、遮光板の形状は遮光部と透過部が光軸を中心に点対称の関係であれば良いため、例えば実施例1の遮光板6に本実施例の枠18cのようなものを設けて光軸を中心に回転可能に構成したものを用いても良い。
【実施例4】
【0044】
実施例4は、図7に示すように、実施例3の遮光板18を偏光素子19(第1の偏光素子)に変更し、さらに、センサ10の直上に偏光素子20(第2の偏光素子)を配置するという装置構成である。ここで偏光素子19は、図8で示すように、円の中心をx軸にとった場合、yz平面のz>0の領域はy方向(第1の方向)に振動する光を形成する偏光子(第1の偏光子)を有している。また、偏光素子19は、図8で示すように、円の中心をx軸にとった場合、yz平面のz<0の領域はz方向(第2の方向)に振動する光を形成する偏光子(第2の偏光子)を有している。また、偏光素子20は、偏光素子19を上下反転させた(すなわち光軸を中心に反転させた)偏光素子である。偏光素子19を配置する位置は、実施例1の遮光板6、実施例3の遮光板18を配置する位置と同様であり、偏光素子19の中心を光軸と一致させるように配置する。偏光素子20も、中心が光軸と一致するようにセンサ10の直上に配置する。なお、偏光素子20を配置する場所は、センサ10の直上に限らず、被検物8の表面14からの反射光が光軸を含むxy面と交わる複数の計測光交点のなかで、最もセンサ10に近い計測光交点とセンサ10との間に配置されていればよい。
【0045】
本実施例の作用を以下で説明する。ピンホール3からの射出光が偏光素子19を通過すると、光軸をx軸としたとき、yz平面のz>0の領域を通過する光の電界成分はxy平面上に、z<0の領域を通過する光の電界成分はxz平面上となる直線偏光が形成され、被検物8に照射される。被検物8の表面14からの反射光は、照明光に近い光路を通過するため、偏光素子19を透過する。また、被検物8の表面14とセンサ10は一回結像の関係にあるため、センサ直上の偏光状態は、表面14上の偏光状態を、光軸をx軸としたときにy軸を中心に反転させた状態となる。従って、被検物8の表面14からの反射光は、偏光素子19を反転させた偏光素子20も透過することができる。
【0046】
図7の反射光11は、偏光素子19を通過した照明光の中で、電界成分がxz平面上で振動する直線偏光が、被検物8の裏面15に照射された場合に発生する反射光である。この反射光11は、実施例1と同様に、表面反射光と光軸に対して反対側の方向である+z方向の成分の進行方向ベクトルを持つ反射光となるため、偏光素子19の光軸から+z側に入射する。偏光素子19の光軸から+z側は、電界成分がxy平面上で振動する光のみ透過するため、反射光11は除去される。
【0047】
図7の反射光12、13は、偏光素子19を通過した照明光の中で、電界成分がxz平面上で振動する直線偏光が、照明光学系7に照射された場合に発生する反射光である。光の進行方向のベクトルで+z方向の成分を持つ反射光12は、光軸をまたいで偏光素子19の+z側に入射するため、反射光11と同様に除去される。また、−z方向の成分を持つ反射光13は、実施例1と同様に、センサ10の直上に配置してある偏光素子20の光軸から−z側に入射する。ここで、偏光素子20の光軸から−z側は、電界成分がxy平面上で振動する光のみ透過するため、反射光12は除去される。
【0048】
以上の説明は、偏光素子19を通過した照明光の中で、電界成分がxz平面上で振動する直線偏光に対して行ったが、電界成分がxy平面上で振動する直線偏光に対しても同様に不要光が除去される。従って、この装置構成でも、1回の計測で被検物表面からの反射光を精度よく計測することができる。
【実施例5】
【0049】
実施例5は、図9に示すように、被検物8が凹レンズであった場合の装置構成を示すものである。実施例1との差異は、被検物8を照明光の集光位置より後に配置していることである。ここで、被検物8の表面14と裏面15からの反射光は、被検物8が凸レンズであった実施例1と同じ符号を持つ光線ベクトルとなる。従って、反射光が遮光板6に入射する位置も実施例1と同様であるため、裏面15からの反射光12を除去できる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施例の構成に限定されることはなく、請求の範囲内で種々に変更することができる。例えば、干渉を用いた面形状計測装置においても適用可能である。また、実施例3において、図6の遮光板18を上下反転させた遮光板(第3の遮光板)をセンサ10の直上に配置し、遮光板18と同期させて回転させれば、図1の反射光13のような、光軸をまたがない反射光も除去可能な装置構成となる。換言すれば、第3の遮光板は、実施例3において被検物8の表面14からの反射光が光軸を含むxy面と交わる複数の計測光交点のなかで、最もセンサ10に近い計測光交点とセンサ10との間に配置されてもよい。実施例4においては、図7の偏光素子20を取り除き、被検物8の裏面15からの反射光11と、照明光学系7からの反射光12を除去可能な装置として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、非球面形状を有する被検面を計測する非球面形状計測装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
6 遮光板
7 照明光学系
9 結像光学系
10 センサ
14 被検物の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光を非球面形状を有する被検面に照射する照明光学系と、
前記被検面に照射する光の一部を遮光する遮光板と、
前記照明光学系及び前記遮光板を介して光が照射された前記被検面の一部の領域から反射される光束を計測するセンサを有する撮像系と、
前記センサにより計測されたデータから前記被検面の形状を算出する算出手段と、を有し、
前記遮光板は、光軸に対し前記被検面の一部の領域の反対側が遮光されるように構成され、前記被検面の一部の領域から反射される光束と光軸との交点を複数の計測光交点とした場合、前記複数の計測光交点のうち前記被検面に最も近い計測光交点と前記被検面との間に配置されることを特徴とする非球面形状計測装置。
【請求項2】
光源から射出された光を非球面形状を有する被検面に照射する照明光学系と、
前記被検面に照射する光を偏光する偏光素子と、
前記被検面で反射される光束を計測するセンサを有する撮像系と、
前記センサにより計測されたデータから前記被検面の形状を算出する算出手段と、を有し、
前記偏光素子は、光軸に直交する第1の方向に振動する光を形成する第1の偏光子と前記光軸および前記第1の方向と直交する第2の方向に振動する光を形成する第2の偏光子を有し、光軸に対し前記第1の偏光子の反対側が前記第2の偏光子となるように構成され、前記被検面から反射される光束と光軸との交点を複数の計測光交点とした場合、前記複数の計測光交点のうち前記被検面に最も近い計測光交点と前記被検面の間に配置されることを特徴とする非球面形状計測装置。
【請求項3】
前記遮光板は、被検物の前記被検面とは反対側にある面および前記照明光学系のうち少なくとも一方から反射される光束と光軸との交点を複数の不要光交点とした場合、前記被検面に最も近い計測光交点と、前記センサに最も近い不要光交点との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の非球面形状計測装置。
【請求項4】
前記偏光素子は、被検物の前記被検面とは反対側にある面および前記照明光学系のうち少なくとも一方から反射される光束と光軸との交点を複数の不要光交点とした場合、前記被検面に最も近い計測光交点と、前記センサに最も近い不要光交点との間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の非球面形状計測装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記遮光板の位置を変化させて前記被検面を複数回計測するステップと、前記複数の計測データ又は形状に変換したデータを繋ぎ合わせるステップを行うことを特徴とする請求項1に記載の非球面形状計測装置。
【請求項6】
前記遮光板を光軸を中心に回転させ、前記被検面の全面からの反射光を前記センサで検出することを特徴とする請求項1に記載の非球面形状計測装置。
【請求項7】
前記遮光板よりも光源側に前記遮光板と同じ形状を有する第2の遮光板を更に有することを特徴とする請求項1に記載の非球面形状計測装置。
【請求項8】
前記非球面形状計測装置が計測する被検物は、前記被検面が有する曲率の符号と該被検面とは反対側にある面が有する曲率の符号が互いに異なる、又は前記反対側にある面が平面形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非球面形状計測装置。
【請求項9】
前記遮光板を光軸を中心に反転させた第3の遮光板を、前記複数の計測光交点のうち前記センサに最も近い計測光交点と前記センサとの間に配置することを特徴とする請求項1に記載の非球面形状計測装置。
【請求項10】
前記偏光素子を光軸を中心に反転させた第2の偏光素子を、前記複数の計測光交点のうち前記センサに最も近い計測光交点と前記センサとの間に配置することを特徴とする請求項2に記載の非球面形状計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−101054(P2013−101054A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244942(P2011−244942)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】