説明

非生物発光性海生無脊椎動物由来の天然非極性蛍光染料、前記染料を含む組成物およびその使用

本発明は、非生物発光の海生棘皮動物Holothuria scabraから天然の、環境にやさしい無毒性の、細胞透過性の多色蛍光タンパク質染料を抽出、精製および特性決定する方法、この染料を含む組成物、ならびにこの染料の様々な応用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海生無脊椎動物であるHolothuria scabraの卵巣組織から抽出した天然無毒性の多色蛍光タンパク質染料に関する。本発明はまた、この新規天然染料の抽出、部分精製および特性決定を行う方法も提供する。無毒性、細胞膜透過性、レクチン様の凝集性、海生動物における媒精および受精を促進する特性も報告されている。言及した海生無脊椎動物は、特にナマコである。ナマコは棘皮動物であり、ヒトデやウニも含まれる体表が棘に覆われた動物群のメンバーである。学術的にはナマコ類(Holothurians)と呼ばれており、ゴム状の細長い筒状の体を持ち、体幹骨を有さない。これらの分類学上の位置は以下のとおりである。
【背景技術】
【0002】
ナマコの分類学上の位置は以下のとおりである。
亜界:Metazoa
門:Echinodermata
亜門:Eleutherozoa
綱:Holothuroidea
亜綱:Aspidochirotacea、Dendrochirotacea、Apodacea
目:Dendrochirota、Aspidochirota、Elasipoda、MolpadoniaおよびApoda
【0003】
これらの目のうち、ナマコHolothuria scabraは以下に属する。
目:Aspidochirota
科:Holothuriidae
属:Holothuria
種:scabra
【0004】
棘皮動物は体腔を有する無脊椎動物であり、海洋でのみ生息し、集団で生活せず、体節のない基礎的な5方向の放射性を有し、成体では対称性を有し、頭部や脳を有さず、骨格および体腔の構造が特異であることから、他のすべての動物とは区別されている。綱Holothuroideaには、通常は口側-反口側の軸が細長く、一方の端またはその付近に口を有し、他方の端またはその付近に肛門を有する、左右対称の体をもつ動物が含まれる。体表は粗く、体内骨格は微小な骨針または体壁に包埋されたプレートに縮小しており、口は水管系につながる1組の触手に囲まれており、足または筒状の足が通常存在し運動性であり、消化管は長く巻状であり排泄腔は通常呼吸樹を有し、性は通常区別されており性腺は単一であるか一対の細管の房である。これらは、硬い基盤に付着しているか、前側および後側の末端を突出させて軟らかい堆積物中に潜伏している定住性の形態にある。1000を超えるナマコ類の種が存在する。これらの長さは2cmから2メートルまで様々である。これらは、その生息地が海深度に制限されない数少ない動物に含まれる。一部の種は、4000mの深度で生活型の50%を、8000mで90%を行っていることが報告されている。一部ではMetriatyla scabra Jaegeaと呼ばれている種Holothuria scabraは、東アフリカ、紅海、ベンガル湾、東インド、オーストラリア、日本、南太平洋、フィリピン、インド洋および他のインド洋-太平洋地域に広く分布している。これは、サバ、マレーシアおよびインドネシアならびに他のインド洋-太平洋の国々で、ヒト/動物による消費のために使用されている。
【0005】
色素は、無機および有機型の分類に属する。前者は様々な装飾および塗装目的などに使用する無機化学的化合物である。有機染料などの有機色素は古代に起源をもつ。聖書時代よりも前から、ブラジル木、ログウッド、ペルシアンベリーインジゴおよびアカネなどの植物由来の染料が使用されていたことが中近東および極東の国々で報告されている(George L. Clark、1966、「Encyclopaedia of chemistry」、第2版、833〜835頁)。Debra K. HobsonおよびDavid S. Walesは、真菌類、ラン藻類、ウニ、ヒトデ、節足動物およびサンゴ礁腔腸動物など一部の生物群の二次代謝物として生成される「緑色染料」について記載している(Journal of the Society of Dyers and Colourists (JSDC)、114、42〜44、1998)。これらは、染料業界で歴史的に重要なアントラキノン化合物である。Stainsfile-Dyes Aには264種の染料の染料指標が記載されているが、あらゆる生物種由来のもののうち6種のみが天然染料である(http://members.pgonline.com/〜bryand/dyes/dyes.htm)。
【0006】
細胞透過性の蛍光染料は、生細胞機能の研究、薬物送達および様々な細胞小器官の研究におけるその用途のために強く要望されている。真核細胞はそれぞれが膜で結合されているいくつかの区画を有し得、細菌細胞は単一の区画からなり得る。透過性の特異性は細胞膜の特徴である。優良な染料とは、1回の発光および異なる発光で細胞の各部を示すことができる染料である。様々なタンパク質に結合した蛍光体が合成されており、Handbook of fluorescent probes and Research chemicals、Richard P.Haughland、1996、126〜128頁に記載されている。青色蛍光のカスケードブルーや新規AMCA-S染料から赤色蛍光のテキサスレッド染料やフィコビリンタンパク質までの範囲が包含されている。この会社は、オレゴングリーンコンジュゲート、Rhodolグリーンコンジュゲート、Bodipyコンジュゲート、エオシン標識二次試薬、赤色蛍光ローダミンRd-Xおよびテキサスレッド-Xコンジュゲート、フィコビリンタンパク質コンジュゲート、カスケードブルーおよびAMCA-Sコンジュゲートを強調している。
【0007】
これらの染料はすべて合成であり、これらのうち1つで1つの特定の分光域が発光される。したがって、多色の実験では2〜3種の染料を組み合わせる。
【0008】
また、同じ会社が、海綿動物Jaspis johnstoniから単離した大環状ペプチドであるジャスプラキノライド(Jasplakinolide)を細胞透過性のF-アクチンプローブとして提供している。しかし、これは毒性があり、殺真菌性、殺虫性、および抗増殖活性を示す。
【0009】
市販されている現在利用可能な染料のほとんどは合成である。Stainfile-Dyes Aには264種の染料の染料指標が記載されている。これらのうち258種が合成であり、6種のみが天然染料である(http://members.pgonline.com/〜bryand/dyes/dyes.htm)。合成染料の生成には多くの場合、強い酸、アルカリおよび触媒として重金属を高温で使用することが必要である。これにより、この方法および放出される排水が環境悪化の問題となる。染料業界は既存の染料より安価でより環境にやさしい手段を探しつづけている(HobsonおよびWales、1998、Green Dyes、Journal of the Society of Dyers and colourists (JSDC)、1998、114、42〜44)。
【0010】
利用可能な染料のすべてが蛍光性ではない。Bitplane productsは市場に123種の蛍光色素およびその励起および発光スペクトルのリストを提示している(http://www.bitplane.ch/public/support/standard/fluorochrome.htm)。
【0011】
蛍光染料は、たとえば免疫アッセイにおいて蛍光顕微鏡による生体構造の位置決定のための分子プローブの標識、in situハイブリダイゼーション研究のためのヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの標識、ポリマーミクロスフェアへの結合、ならびに造影研究で使用するための細胞の染色に広く使用されている。染料はまた、光力学的療法の技術などにおける細胞の選択的破壊にも使用される(Haughland, R.PおよびKang,H.C.、米国特許第4,774,339号、1988年9月27日;Haughland , R.PおよびKang,H.C.、米国特許第5,248,782号、1993年9月28日)。
【0012】
蛍光とは、原子または分子がより高い電子状態からより低い電子状態に遷移する過程で放射線を放出する現象である。これは、蛍光放射線の波長は必ず励起放射線の波長よりも長いというストークスの法則に従っている。蛍光のプロセスはリン光および生物発光のプロセスとはかなり異なる。用語蛍光とは、放射線の励起と発光との活動の間隔が非常に短い場合に用いる(10-8〜10-3秒間)。リン光では、吸光と発光の時間間隔は10-3秒間から数時間まで変動し得る(R.Norman Jones、1966、The encyclopaedia of chemistry、第2版、1966、435〜436頁)。生物発光とは、生物の体内にある特定の細胞で特定の時間に起こった化学反応の結果生じた光について使用する用語である。
【0013】
多数の蛍光染料がHandbook of Fluorescent probes and Research Chemicals、Richard P. Haughland、第6版、米国出版、1996に報告されている。同じ本の1〜6頁で、Ian D.Johnson (1996)は、蛍光プロセス、および彼が蛍光体または蛍光染料と呼ぶ特定の分子(一般に多芳香性の炭化水素またはヘテロ環)におけるその検出方法を、詳細に記載している。最も多目的な現在使用されている蛍光染料はフルオレセイン、フルオレセイン系およびBODIPYの染料ならびにそれらの誘導体である。著者らは以前にこれらの染料すべての欠点を扱ったことがあり、染料の特徴の優先度を記載した。蛍光染料の多くの誘導体およびその合成が米国特許第に開示されている(Haughland, R.PおよびKang,H.C.、米国特許第4,774,339号、1988年9月27日公開;Haughland, R.PおよびKang,H.C.、米国特許第5,248,782号、1993年9月28日;Kang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,187,288号、1993年2月16日公開;Kang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,274,113号、1993年12月28日;ならびにKang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,433,896号、1995年7月18日;Kang,H.C.およびHaughland, R.P.、米国特許第5,451,663号、1995年9月19日公開)。
【0014】
Rosenblum Barnett B、Spurgeon S、Lee Linda G、Benson Scott CおよびGraham Ronald J、国際公開公報WO 0058406号、2000年10月日公開は、分子プローブとして有用な4,7-ジクロロローダミン染料を報告している。Collin, P.D.は、1988年6月23日、1999年3月2日および1999年11月16日の、それぞれ米国特許番号が第5,770,205号、第5,876,762号および第5,985,330号の米国特許中で、ナマコの様々な体部位の治療特性を記載している。
【0015】
R.Norman Jones、The encycopaedia of chemistry、第2版、1966、435〜436頁は優良な蛍光体の特殊性を記載している。彼によれば、蛍光分子は、励起エネルギーを吸収するための優良な発色団系、および蛍光遅延作用が起こる前に励起エネルギーの振動運動への速すぎる消散を抑制する遮蔽機構を備えていなければならない。彼はまた、化合物の分子構造と蛍光の関係はよく理解されていないが、その存在が蛍光に関係する特定の基があることに言及した。たとえば、有機分子中では、フタレインおよびアントラセンやナフタセンなどの芳香性構造の存在が明るい蛍光に特に関連している。いくつかの無機化合物は液体状態および固体中で強く蛍光発光し、多くの場合、蛍光は微量の不純物の存在によって改変される。
【0016】
様々なカロテノイド色素がカロテノイド産生細菌種より報告されている(米国特許第5,935,808号、1999年8月10日公開、発明者Hirschberg他、および米国特許第5.858,761号、1999年1月12日、発明者Tsubokura他)。Collin; Peter Donaldは、その2000年5月2日公開の米国特許第6,055,936号で、ナマコカロテノイド脂質の分画および方法を開示している。Bandaranayake, W.M.およびDes Rocher,A、1999(Marine biology、133、163〜169)は、オーストラリアのHolothuiria atraの体壁、卵巣および内臓由来のカロテノイド色素を記載している。
【0017】
利用可能ないくつかの蛍光天然染料が報告されている。Shimomura, O、Johnson, F.H.およびSaiga, Y、Journal of cellular and comparative physiology、59、223〜239、1962、Chalfie M、1: Photochem Photobiol、1995年10月、62(4):651〜6、「Green fluorescent protein」;Youvan DC、Michel-Beyerie ME、「Structure and fluorescence mechanism of GFP in National Biotechnology」1996年10月、14(10):1219〜20ならびにChalfie M、Yuan Tu、Ghia Euskirchen、William W. Ward、Douglas C Prasher、SCIENCE、263(1994)、802〜805は、太平洋のクラゲAequora aeguoraからの緑色蛍光タンパク質GFPを記載しており、精製したGFPは238個のアミノ酸のタンパク質であると報告している。これは、395nmで青色光を最大に吸収し470nmで小さなピークを有し、また509nmのピーク発光で緑色光を発光し540nmで肩部を有する。この蛍光は非常に安定しており、光脱色は実質上観察されない。
【0018】
赤および黄色範囲の他の波長の蛍光を有するGFPが、非生物発光の花虫類動物、特にDiscosoma coralから記載されている。Gurskaya NG、Fradkov AF、Terskikh A、Matz MV、Labas YA、Martynov VI、Yanushevich YG、Lukyanov KA、Lukyanov SA、1: FEBS Lett、2001年10月19日、507(1):16〜20nは、GFP様色素タンパク質を近赤外蛍光タンパク質源として記載している。Wachter RM、Elsliger MA、Kallio K、Hanson GT、Remington SJ、1: Structure、1998年10月15日、6(10):1267〜77は、「Structural basis of spectral shifts in the yellow-emission variants of green fluorescent protein」を記載している。Fradkov AF、Chen Y、Ding L、Barsova EV、Matz MV、Lukyanov SA、「Novel fluorescent protein from Discosoma coral and its mutants possesses a unique far-red fluorescence」、1:FEBS Lett、2000年8月18日、479(3):127〜30。彼らは、593nmの最大発光を有する、赤色シフトした後生的タンパク質の新規遺伝子をDiscosoma coralからクローニングしたことを記載している。dsFP593と命名されたこのタンパク質は、583nmの最大発光を有する、最近記載されたGFP様タンパク質drFP583と高い相同性を有する。彼らはこれらの遺伝子の両方について様々な変異体を開発した。ハイブリッド変異体により、616nmの独特の再シフトした最大発光を有する変異体が生じた。Matz MV、Fradkov AF、Labas YA、Savitsky AP、Zaraisky AG、Markelov ML、Lukyanov SA、1: Nat Biotechnolo、1999年12月、17(10):969〜73。
【0019】
南東および南太平洋の諸国では、食料品としてまたは特に関節の炎症、捻挫、および他の治療学における様々な薬物組成物の成分として、健康食品や薬物の業界におけるナマコの使用がよく知られている。いくつかの米国特許および国際特許が記録され審査されている。Fan Hui-Zeng、Yu Song、Yamanaka E、Numata K、Oka T、Suzuki N、muranaka Y、米国特許第5519010、1996年5月21日;Weiman、Bernard、米国特許第5,888,514号、1999年3月30日公開;Katsukura、Kitazato、Kenji Yamazaki、Yasundo、米国特許第5,993,797号、1999年11月30日;Henderson, R.W、Henderson,TおよびHammd,T、米国特許第第6255295号、2001年7月3日;Shinya、米国特許第6203827号、2001年3月20日;米国特許第5770205号、Collin Peter Donald、1998年6月23日公開および国際公開公報第0001399号、2000年1月13日公開;Kovalev V G、Sementsov V K、Slutskaja t n、Akulin V N、Timchishina G N、ロシア特許第2147239号、2000年4月10日公開;Li Zhaoming、Zhu Beiwei、中国特許第1286926号、2001年3月14日;Qu Jianhong、Song Xiuqin、Zheng Fuqiang、中国特許第1223131号、1999年7月21日;Wufa Zhuang Wufa、Meizheng Zhuang、中国特許第1142365号、1997年2月12日;Fang Hua、中国特許第1312031号、2001年9月12日、ならびにDing Cunyi、中国特許第1173290号、1998年2月18日、Collin Peter Donald、国際公開公報WO 9937314号、1999年7月29日公開)。ナマコに由来する成分の抗HIV薬における使用が開示されている(Hoshino Hiroo、欧州特許第410002号、1991年1月30日、およびHoshino Hiroo、欧州特許第495116号、1992年7月22日)。その重要性を考慮して、この動物を捕獲して養殖することが試みられている(Annie Mercier、S C BattagleneおよびJean-Francois Hamel、Journal of experimental Marine Biology and Ecology、第249巻1号:89〜110、2000年、「Settlement preferences and early migration of of the tropical sea cucumber Holothuria scabra」)。Gu Zaishi、Wang Shuhai、Zhou Weiは、1998年4月22日の中国特許第1179261号で「Ecological reproducing method for Stichopus japonicus」を開示した。
【0020】
しかし、これらの特許はどれも本特許の表題に直接関連性がないので、これらは示す参考文献には含めない。
【0021】
Goswami、UshaおよびGanguly、Anutoshは、海生無脊椎動物由来の天然蛍光染料に関する特許を出願している(CSIR、NF-140、2001年、米国特許出願第09/820,654号、2001年3月30日出願)。これは、光スペクトルの異なるUVおよび可視域で励起した場合に3種の波長で蛍光性を有する、Holothuria scabra由来の粗抽出物に関する。この発明はまた、ナマコ由来の部分的に精製した天然染料であるこの新規染料を抽出、精製、および特性決定する方法も提供する。この染料の薬物としてのいくつかの他の性質の他に、ハイブリダイゼーション研究のための分子プローブの標識に有用な落射蛍光染色および非放射性蛍光染料としてのこの染料の有用性が記載されている。この特許の従来技術では、色素、合成染料ならびに陸生植物および微生物由来の天然染料について詳細に扱った。(米国特許第4,452,822号、1984年6月5日公開、発明者Shrikhande, Anil J、米国特許第5,321,268号、1994年6月14日、Crosby David AおよびEkstrom Philip A;米国特許第5,405,416号、1995年4月11日公開、著者Swinton;Robert J、米国特許第5.858,761号、1999年1月12日公開、発明者Tsubokura他、米国特許第5,902,749号、1999年5月11日、発明者Lichtwardt他、米国特許第5,908,650号、1999年6月1日公開、発明者Lenoble他、米国特許第5,920,429号、1999年7月6日公開、Burns他、米国特許第5,935,808号、1999年8月10日、Hirschberg他;米国特許第5,989,135号、1999年11月23日、発明者Welch;David Emanuel;米国特許第6,055,936号、2000年5月2日;Collin;Peter Donald;米国特許第6,056,162号、2000年5月2日;Leighley;Kenneth C.;米国特許第6,103,006号、2000年8月15日、DiPietro;Thomas C.;第6,110,566号、2000年8月29日;White他;第6,140,041号、2000年10月31日、LaClair;James J.、第6,165,384号、2000年12月26日、Cooper他;第6,180,154号、2001年1月30日、Wrolstad他、欧州特許第0206718号、1986年12月30日公開、発明者Cramer Randall J;IE 901379号、1991年1月30日、Lee Linda G;Mize Patrick D;国際公開公報WO 9010044、1990年7月7日、Swinton;Robert J;オーストラリア特許第704112号、1997年10月7日公開、発明者Burns David M;Pavelka Lee A;ドイツ特許第19755642号、1999年6月24日、Weimer Thomas DR.;国際公開公報WO 9938919号、1999年9月28日、Laclair James J;国際公開公報WO 0058406号、2000年10月5日、Rosenblum Barnett B他;国際公開公報WO 9938916号、2000年8月15日、発明者DiPietro;Thomas C;国際公開公報WO 9920688号、2000年8月29日、発明者Pavelka Lee他;国際公開公報WO 9920688号、2000年8月29日、発明者White他)分子生物学の研究、産業上の利用および救命具などにおける蛍光染料の多様な使用も記載されている。
【0022】
Collin, P.D、1988年6月23日、1999年3月2日および1999年11月16日のそれぞれ米国特許第5,770,205号、第5,876,762号および第5,985,330号では、ナマコの様々な体部位の治療的特性が記載されている。これらの参考文献もすべて本特許に関連する。
【0023】
別の特許では、Goswami、UshaおよびAnutosh Ganguly(出願番号)は新規有機ケイ素Si-O-R型の化合物および海生無脊椎動物Holothuria scabraの体壁抽出物から精製した多色蛍光天然染料を記載している。この化合物はフェノール性蛍光団を有する多糖類蛍光色素であり、その周りにあるケイ素マトリックスに硫酸結合によって連結されている。このケイ素部分はコア分子の不可欠な部分であり、この動物の代謝に役割を果たしている。この化合物は硫黄に富んでいる。本発明はまた、新規化合物ならびに生きた海生生物、特にナマコ由来の多色蛍光染料を抽出、精製、および特性決定する方法も提供する。本発明はまた、ケイ素が有機分子およびそのフェノール型蛍光体の不可欠な部分になっている新規蛍光化合物の化学的構造を初めて開示する。本発明はさらに、化合物の普通でない特性および染料の特徴を提供し、それらの利点を開示する。染料の高い分子量および低い分子量のいくつかの誘導体ならびに単色および多色の用途のための蛍光プローブの望ましい特性が企図される。さらに、この化合物は染料業界、化粧品業界および製薬業界の組成物中の容易に混和性である成分であることができる。
【0024】
本特許では、Handbook of Fluorescent probes and Research Chemicals、Richard P. Haughland、第6版、米国出版、1996年に報告されている蛍光染料に関する大量の文献が組み込まれている。米国特許および国際特許では、蛍光染料の多くの誘導体およびその合成方法が開示されており(Haughland, R.PおよびKang,H.C.、米国特許第4,774,339号、1988年9月27日;Haughland, R.PおよびKang,H.C.、米国特許第5,248,782号、1993年9月28日;Kang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,187,288号、1993年2月16日公開;Kang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,274,113号、1993年12月28日、Kang,H.C.およびHaughland, R.P、米国特許第5,433,896号、1995年7月18日;Kang,H.C.およびHaughland, R.P.、米国特許第5,451,663号、1995年9月19日公開、Rosenblum Barnett B、Spurgeon S、Lee Linda G、Benson Scott CおよびGraham Ronald J、国際公開公報WO 0058406号、2000年10月5日公開は、分子プローブとして有用な4,7-ジクロロローダミン染料を報告している。これらの参考文献もすべて本特許に関連する。
【0025】
本出願者らは、その以前の特許および他の研究者が報告した特許とは異なる手法を採用した。本出願者らの以前の特許に報告された染料は天然であるが毒性であった。様々な励起波長における発光の分光域も異なっていた。この染料はタンパク質でなく水溶性であり、生細胞のin situ研究には有効でなかった。生物医学および工学におけるその用途および使用も異なっていた。
【0026】
今回報告する染料も天然染料であるが、非生物発光無脊椎動物の卵巣細胞から直接抽出した無毒性の多色蛍光タンパク質である。海生動物源はナマコ類の1種、すなわち無毒性の蛍光タンパク質染料の新しい源であるHolothuria scabraと呼ばれるナマコである。合成染料とは異なり、その生成には強酸や強アルカリ使用するステップが必要ない。以前に記載されているナマコ卵巣由来のカロテノイド色素とは異なり、この染料はカレチノイド色素ではない。これは蛍光タンパク質である。本発明の染料の蛍光タンパク質は、単色の緑色光を発光する、クラゲAequorea aequorea由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)とも異なる。赤色域または黄色域への色のシフトを有する様々なGFPの種類が他の動物から記載されているが、本発明者らの手法はこのようなGFPとは異なる。本発明者らの染料は、様々なUV光および可視光のスペクトル波長で励起した場合に紺色光、緑色光、黄色光、オレンジ色光および赤色光の域の蛍光を発光する、単一の蛍光タンパク質染料である。
【0027】
ほとんどの合成蛍光染料とは異なり、本発明者らの染料は異なる波長で異なる蛍光の色調を得るために別の染料と混合する必要がない。これは、3種の励起波長で6種の有色蛍光を発光し、これを多重使用することができる。細胞の構成成分は、染料溶液が存在する場所でのみ背景と対照的な染色を示す。本発明者らの染料では、蛍光体がタンパク質に付着して蛍光を生じ、これもまた、環化によって一次アミノ酸配列から導いたGFPのクロマトフォアとは異なる。本発明者らの染料では、単独であるかタンパク質に付着しているいずれの形態もとり、UV、青色および緑色波長で蛍光体が励起した場合に、ストークスの法則に従って3種の波長で発光する。
【0028】
本発明の染料は細胞透過性でもあり、細胞内構成成分の様々な細胞膜に透過する。
【0029】
染料が細胞膜に付着した後は、これは室温で何カ月も安定であり、光脱色も微生物による汚染もされない。一部の藻類や発光生物の抽出物とは異なり、その蛍光は高温および低温で劣化しない。
【0030】
この染料は細菌の大腸菌(E. coli)ならびに河口動物および海生動物の幼生の性細胞に無毒性である。したがって、その排水は海生動物および河口動物の幼生期を死滅させない。これは、無毒性かつ環境にやさしい染料である。
【0031】
この染料の別の重要な特徴は、生組織および固定した組織でのみ蛍光を示すことである。死滅組織は染色されない。この染料の1つの重要な態様は、分子プローブの非放射性in situ標識および対比染色のための組成物およびキットの作製である。様々な波長で励起すると、DAPI、FITCおよびPIならびに他の市販蛍光プローブの色に匹敵する効果が得られる。この染料は天然の多色蛍光染料である。実際、この染料1つが、現在市場で知られている123種のフルロクロム(flurochrome)の波長スペクトルの色を包含している(インターネットでBitplane products (Fluorochrome)を参照されたい(http://www.bitplane.ch/public/support/standard/Fluorochrome.htm)。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、染料が凝集特性を有することである。
【0033】
本発明のさらに別の態様は、染料がカキにおいて精子の媒精および卵子の受精の速度を促進することである。
【0034】
さらに別の態様は、生細胞の落射蛍光顕微鏡観察における無毒性の蛍光色素染剤としてのその使用である。染料は天然染料であり合成ではなく、様々な膜透過性を有し、これらを示差的に染色する。この用途により、蛍光in situハイブリダイゼーション技術を使用した分子診断法、組織培養物における生物汚染の迅速な診断、食品業界および工業の調製物、フローサイトメトリーなどの多数の使用における細胞遺伝学的調製物を確認する簡単かつ素早い方法が提供される。
【0035】
この染料のさらに別の態様は、生細胞機能の研究のためにタンパク質染料が必要である場合の、高等分子生物学への応用のための非放射性標識キットの成分としてのその使用である。
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【特許文献52】Goswami、UshaおよびAnutosh Ganguly(出願番号)
【非特許文献20】Handbook of Fluorescent probes and Research Chemicals、Richard P. Haughland、第6版、米国出版、1996年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明は、海生棘皮動物の卵巣抽出物由来の蛍光色素を抽出、精製および特性決定する方法を開示する。この色素は天然染料であり、非極性の蛍光体が付着している、負に帯電した蛍光タンパク質である。この染料は、UVおよび可視光スペクトルの複数の蛍光励起域で蛍光を発光する。本発明はさらに、染料の化学的、物理的、分光学的、落射蛍光顕微鏡観察の性質を開示する。無毒性の、細胞膜透過性および凝集特性を試験した。
【0037】
本発明の主な目的は、ナマコHolothuria scabraの卵巣組織由来の、天然無毒性の環境にやさしい多色蛍光タンパク質染料を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、非生物発光海生動物である海生動物Holothuria scabra由来の前記蛍光タンパク質を抽出、部分精製および特性決定する方法を提供することである。
【0039】
本発明の別の目的は、細胞膜透過性であり、細胞区画の境界画定を与え、UVおよび可視光スペクトル波長の単一および複数の発光範囲で視覚的効果を有する染料を提供することである。
【0040】
本発明の別の目的は、より長い時間光安定性である染料を提供することである。
【0041】
本発明の別の目的は、真核細胞および原核細胞の生存および増殖を確認するためにこの染料を使用することである。
【0042】
本発明の別の目的は、水産養殖およびカキなどの生態学的に重要な動物において受精率および細胞増殖率を促進させるためにこの染料を使用することである。
【0043】
本発明のさらに別の目的は、Holothuria scabraの組織から得た染料を使用する組成物を提供することである。
【0044】
本発明のさらに別の目的は、3つの波長を用いた特定の励起で6種の波長範囲の蛍光を発光する染料を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、蛍光および可視分光分析ならびに発光波長の範囲を観察することである。
【0046】
さらに別の目的は、落射蛍光顕微鏡キューブのUVおよび可視域で染料の3種の蛍光有色発光を観察することである。
【0047】
本発明のさらに別の目的は、本発明の染料を使用することによって染色体、細胞および組織をスクリーニングするために細胞遺伝学的スライドの蛍光染色の効果を観察することである。
【0048】
本発明のさらに別の目的は、染料の凝集特性を確認することである。
【0049】
本発明のさらに別の目的は、染料溶液中に糖タンパク質が存在するか存在しないかを見ることである。
【0050】
本発明のさらに別の目的は、細菌および真核生殖原細胞ならびに幼生を用いて実験を行うことによってその無毒性を見ることである。
【0051】
本発明のさらに別の目的は、食品業界において細菌汚染を確認するためのその応用である。
【0052】
本発明のさらに別の目的は、蛍光および可視分光分析ならびに発光波長の範囲を観察することである。
【0053】
本発明のさらに別の目的は、この染料が蛍光分子プローブの非放射性標識として有用であることである。
【0054】
本発明のさらに別の目的は、染料は励起光で急速に消光されず、スライドをスクリーニングしている間に光脱色が起こらないことである。
【0055】
本発明のさらに別の目的は、蛍光および可視分光分析ならびに発光波長の範囲を観察することである。
【0056】
本発明のさらに別の目的は、この染料が蛍光分子プローブの非放射性標識として有用であることである。
【0057】
本発明の別の目的は、この染料は水溶性の性質を有するタンパク質であるが、それでも細胞膜に付着した後は室温で高度に安定であることである。
【0058】
本発明のさらに別の目的は、その蛍光の質は極度な高温および低温でも劣化しないことである。
【0059】
本発明のさらに別の目的は、分子プローブの非放射性標識および対比染色のためのキットを開発することである。
【0060】
本発明のさらに別の目的は、フローサイトメトリー、マイクロアレイ、免疫アッセイおよびいくつかの他の分子学的用途に蛍光染料の誘導体を合成するための、化合物の工業的な使用である。
【0061】
さらに別の目的は、分子プローブのin situハイブリダイゼーション非放射性標識キットとして蛍光染料を含むキットを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0062】
したがって、本発明はナマコHolothuria scabraと呼ばれる非生物発光海生生物の卵巣抽出物から得た、新規の無毒性で細胞透過性の、天然多色蛍光タンパク質染料を提供する。本発明はまた、前記タンパク質染料を抽出、単離および特性決定する方法も提供する。さらに、本発明は、溶液の形態にある前記染料中の少なくとも4種の化合物の存在を開示する。染料中の蛍光体は負に帯電しているタンパク質と会合している。また、染料の溶液中には少なくとも1種の糖タンパク質も存在する。この糖タンパク質はレクチン様の凝集特性を示している。染料を、真核および原核生細胞に対する凝集の存在、受精率の促進および無毒性について試験する。この染料組成物は、in situ細胞内および細胞間の生細胞機能の視覚的な追跡における蛍光落射蛍光顕微鏡染剤として有用となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
したがって、本発明は、潮間帯、水中、浅水域および深層に存在し、アルコーブ、割れ目、岩棚、突出部、岩石の多い砂地の生息地など日陰に通常豊富であり、くすんだ色から明るい色であり、外骨格および内骨格を有するまたは有さず、着生の定住性の漂流生物であり、様々な遊泳内部能力を有する遊泳性であり、生育環境は通常夜行性であり、頻繁に捕食されやすく、発光性であるか発光性でなく、卵子を体外受精し、蛍光色素はUVB、UVA、可視有色スペクトルおよび赤外スペクトルの僅かな波長範囲からすべての波長範囲までの発光を与える、海生生物Holothuria scabraの雌の性腺、すなわち卵巣組織から得た、無毒性のタンパク質性蛍光染料を含む生物活性のある半精製抽出物を提供する。
【0064】
多くの研究の結果、出願者らは今回、海生動物、特に無脊椎動物、より詳細にはナマコHolothuria scabraの組織から得た新規の無毒性蛍光タンパク質染料を同定した。
【0065】
亜界:Metazoa
門:Echinodermata
亜門:Eleutherozoa
綱:Holothuroidea
亜綱:Aspidochirotacea
目:Aspidochirota
科:Holothuriidae
属:Holothuria
種:scabra
【0066】
本発明はさらに、この動物の卵巣から得た、生細胞に無毒性の天然細胞透過性多色蛍光タンパク質染料を提供する。本発明はまた、染料の物理的および化学的性質ならびに直接光、高温および低温におけるその安定性を記載する。前記染料はUVおよび可視光スペクトルの3種の励起波長で3つの有色蛍光発光を有する。本発明はまた、汚染、細胞の生存および凝集活性が存在することまたは存在しないことを迅速に確認するために細胞を蛍光顕微鏡下でスクリーニングすることにも関する。本発明はまた、高等分子診断学、染色体、細胞および組織の単一染色および二重染色のための落射蛍光顕微鏡観察、蛍光in situハイブリダイゼーション用途、ならびに生物汚染を確認するためのタンパク質、DNAおよびRNA分子プローブの非放射性標識として、受精率を促進するための水産養殖および生物医学において、生細胞の研究が必要である場合のキットの構成成分として、新規の遠隔計測装置において、水中プローブにおいて、救命具において、墜落した航空機、救命ボートおよび防衛装置、たとえばロケットの位置に目印を付けるため、氷点下の温度条件における様々な用途において、などその他多くにおける、染料の使用にも関する。環境面では、この染料は河口動物および海生動物の幼生を死滅させないので環境にやさしい。本発明は、その生理的機能のために日光を吸収するか、またはより長い間日光に曝され、様々な波長において進化した蛍光の機構を有すると考えられる、海生動物から得た蛍光染料について記載する。植物プランクトンと同様に、ピコプランクトンおよび光合成細菌はその光合成機能のために日光を吸収し、光スペクトルの必要な波長が化学経路で使用され、余分な光がストークスの法則に従って発光される。
【0067】
殻や目立った防御器官などの特別な外的護身器官を有さず、硬い棘状の皮膚を有し、小骨から形成される強力な体内骨格を有する無脊椎動物は、定住性であるかゆっくりと動き、長時間直射日光に曝され、砂地または割れ目に生息し、蛍光を示し得る。本発明は、海生無脊椎動物由来の染料の抽出、精製および特徴の非常に効率のよい選択的方法、ならびに非放射性標識を用いた分子診断学用のキットの作製、分子マーカー、落射蛍光顕微鏡観察、光化学療法学、新規な陸上および水中プローブ用の計測装置の構成要素、化粧品業界、食品業界ならびに軍隊などにおける複数の使用を提供することによって、従来技術に固有の欠点を克服することを努める。
【0068】
前記海生無脊椎動物は、分類学上では綱Holothuroideaに属するHolothuria scabraと呼ばれる棘皮動物である。本発明の生成物は、今回初めて報告される新規の無毒性多色蛍光タンパク質染料である。この動物は、干潮の間にインドの中央西海岸の岸から採取し、実験室に持ち込み、平均塩分濃度30〜32%の海水を含むガラス製タンク中で維持した。これらの動物は成体であり、性的に成熟していた。分類学上の位置は上記のものと同定した。
【0069】
実際には、利用可能な染料のほとんどは合成性である。天然染料は6種類しか存在しない。これには、あらゆる生物から得た染料が含まれている。本発明で報告する蛍光染料は、海生ナマコの卵巣組織から抽出した、多色蛍光の無毒性かつ生細胞膜に透過剤という特殊性の染料で唯一のものである。
【0070】
本明細書中で使用する用語染料とは、還元剤によって脱色されない色素に用いる。前記染料は、繊維、セルロースなどに色を与える。これは、その源が自然界で海岸に沿って、世界中の浅水域および深層で一般的に見つかる海生動物由来であるので天然染料と呼ばれ、合成色素ではない。蛍光染料とは、短時間の間により高い電子状態からより低い電子状態に遷移する過程で特定の波長で励起した際に光を発光するものである。
【0071】
多色蛍光とは、異なる波長範囲で励起した場合に異なる有色光が発光されることを意味する。これは、UVおよび可視光の様々なスペクトルで励起した場合に青色、黄色がかった緑色およびオレンジ色がかった赤色の色調の蛍光を発光する。
【0072】
細胞膜透過性とは、染料が生細胞の孔および細胞の核膜を通り、青色および緑色波長を用いた励起に応じて青色がかった白色、黄色およびオレンジ色の様々な色合いの多色蛍光を与えることを意味する。
【0073】
生細胞に無毒性とは、真核性および原核性の生細胞で試験した際に細胞が死滅しないことを意味する。
【0074】
細胞膜に付着した後の染料の光安定性とは、生細胞および固定細胞を前記染料で染色した後に蛍光発光が続くことを意味する。
【0075】
本明細書中で使用する分子診断学とは、分子細胞遺伝学における蛍光in situハイブリダイゼーション用途の分子プローブの非放射性標識として、ならびにマイクロアレイおよび分子生物学的研究におけるマーカーとしての染料の使用を意味する。ここで言う落射蛍光顕微鏡観察とは、本発明の染料を染剤として用い、様々な有色蛍光を記録することによるスライドの細胞遺伝学的調製物の顕微鏡の研究であって、既知の蛍光色素を用いて励起すると発光される特定の有色発光を様々なキューブ構成で観察する研究に関する。
【0076】
蛍光色素キューブWUB、WB、WGが、様々な波長のオリンパス(Olympus)BX-FLA反射光蛍光付属装置の指定したフィルターキューブ構成である。顕微鏡には、それぞれのキューブについてWU、WB、WGおよびBFと書かれているので、本特許全体で同じ略記を使用する。
【0077】
市場で既に存在する様々な染料の名称は、Stains File染料指標、Bitplane productsおよびMolecular probesに示されている商標名どおりに言及する。これらの企業の照会は、従来技術で言及した。
【0078】
したがって、本発明は、天然無毒性の細胞膜透過性の多色蛍光染料を抽出、部分精製および特性決定する方法を提供する。本発明はさらに、染料が凝集を誘発し、カキ生殖原細胞の媒精率および受精率を促進し、真核細胞および原核細胞を死滅させない、以下からなる組成物も提供する。
i. フィールドから材料を採取し、実験室条件下で維持すること、
ii. 棘皮動物ナマコHolothuria scabraの皮膚から色素を抽出すること、および
iii. 染料を部分精製すること。
iv. 生物学的活性の試験。
【0079】
本発明の生物活性抽出物は、海生ナマコHolothuria scabraの卵巣組織から得た。この抽出物は天然蛍光染料として有用であり、以下の特徴を有する。
i. 還元剤によって脱色されない
ii. 合成化合物ではない
iii. 染料の粗抽出物の色は黄色がかったオレンジ色である
iv. 部分的に精製した染料の濾液では同じ色が維持される
v. 染料は溶液の溶液の形態である
vi. アルコール抽出物は4℃で維持する
vii. 蛍光灯(tube light)下で可視光スペクトルの様々な色を発光する
viii. 色素は直接水に不溶性である
ix. 純粋な染料色素は70%エタノールに可溶性である
x. さらなる希釈はその用途に応じて超純水/海水で行うことができる
xi. 負に帯電している
xii. pH6.8〜7.5を有する
xiii. キノノイド環が存在しない
xiv. タンパク質性である
xv. HPLCデータから見られるように、染料の溶液は少なくとも1種の糖タンパク質を含む
xvi. 染料溶液中には少なくとも4種の化合物が存在する
xvii. HPLCによって炭水化物およびタンパク質の存在が確認されている
xviii. 蛍光体はタンパク質と会合している
xix. 蛍光分光分析により351nm、580nm、720nmで最大励起波長が示された
xx. 蛍光発光分光分析により450および550nmの2つのピークで最大発光が示された
xxi. 溶液中の染料は、染料溶液単独かそれが付着した細胞であるかに応じて、落射蛍光顕微鏡の蛍光キューブのUV域と可視域との3種の波長で6種の有色蛍光を発光する
xxii. 蛍光青色の発光は、励起範囲330nm〜385nmの紫外キューブWU下で励起した際に450nm〜470nmの範囲で起こる
xxiii. 蛍光黄色がかった緑色の発光は、励起範囲450nm〜480nmのWBキューブ下で励起した際に510nm〜570nmの範囲で起こる
xxiv. 蛍光オレンジ色の発光は、励起範囲510nm〜550nmのWGキューブ下で励起した際に610nm〜650nmの範囲で起こる
xxv. 染料は、落射蛍光顕微鏡の通常の透過照明電球下で、100×油浸対物レンズで見た場合は黄色がかった灰色の色調を発光する
xxvi. 染料は1:20000倍の希釈範囲でもこれらの蛍光色を発光した
xxvii. 抽出物の蛍光は4℃で少なくとも1年間の後でも持続していた
xxviii. 染料の蛍光は非常に光安定性であり、細胞が染色された後は室温でも、直接光に長い間曝されても劣化しない
xxix. 染料の蛍光は、発光生物由来の抽出物のような分子の活性化に必要なエネルギーが得られない温度である-20℃で凍結した場合も変化しない。
xxx. 染料は真核生物の生細胞に無毒性である
xxxi. 染料は原核生物(大腸菌)にも無毒性である
xxxii. 染料は細菌でレクチン様の凝集を誘発する
xxxiii. 染料はカキの精子でレクチン様の凝集を誘発する
xxxiv. 染料は対照と比べてはるかに短い時間で精子の媒精および受精を容易にする
xxxv. 染料は細胞膜透過性である
xxxvi. 染料は死滅真核細胞には細胞膜不透過性である
xxxvii. 染料は死滅原核細胞には細胞膜不透過性である
xxxviii. 染料は、細胞の構成成分を染色した後は非分解性である
【0080】
この染料の物理的および他の特徴は、以下のステップによって評価する。
i. 染料の構造解析
ii. 無毒性試験
iii. 凝集試験
iv. 細胞膜の選択的染色の試験
v. 染料の可視分光分析
vi. 染料の蛍光分光分析
vii. UVライトボックス(transilluminator)で260〜280nmの範囲下での発光の物理的確認
viii. 生カキ卵子および精子を用いたスライドの調製
ix. 生細菌のスライドの調製
x. 空気乾燥法による固定細胞のスライドの調製
xi. 染料を用いたスライドの染色
xii. 各実験で染料を加えない対照をおく
xiii. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での生真核細胞のスライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xiv. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での固定真核細胞の落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xv. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での死滅真核細胞の落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xvi. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での生細菌細胞の落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xvii. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での死滅細菌細胞の落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xviii. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブの下での、染料なしでの生対照細胞の落射蛍光顕微鏡スクリーニング
xix. 細胞が存在しないスライド領域で発光された蛍光の顕微鏡写真撮影
xx. WU、WB、WGおよび明視野の蛍光色素キューブ下の細胞遺伝学的スライドの、発光された蛍光の顕微鏡写真撮影、ならびに
xxi. 染料を用いた、発光の蛍光色調の波長範囲および蛍光色素キューブの励起範囲の波長範囲の確認
xxii. 染料で染色した細胞を用いた、発光の蛍光色調の波長範囲および蛍光色素キューブの励起範囲の波長範囲の確認、ならびに
xxiii. 原形質膜、細胞質、核膜、核質および染色体の細胞膜透過性の確認。
【0081】
したがって、本発明は、落射蛍光顕微鏡のUVおよび可視光スペクトルキューブで3種の波長域で励起した場合に青色、黄色およびオレンジ色がかった赤色の色調の6種の有色蛍光を発光する、海生動物起源の天然蛍光染料を提供する。染料溶液の発光範囲および染料で染色した細胞の発光範囲は異なる。本発明はさらに、この染料を落射蛍光顕微鏡観察染剤として用いることによる、真核および原核の、生細胞、固定細胞および死滅細胞の調製物の落射蛍光顕微鏡観察に関する。この染料は、様々な分子学、生物医学および工学における、蛍光in situハイブリダイゼーションによる分子診断学用の非放射性標識キットを作製するために使用することができる。
【0082】
一実施形態では、染料の源は、亜界:Metazoa、門Echinodermata;亜門:Eleutherozoa、綱Holothuroideaに属する無脊椎海生動物である。名称:Holothuria scabra。
【0083】
さらに別の実施形態では、Holothuria scabraはナマコからなる群から選択され、世界中の海岸、浅水域、深層、特にインド洋-太平洋に広く分布している。最も近いよく知られているナマコの親戚はウニやヒトデなどである。
【0084】
さらに別の実施形態では、Holothuria scabraを解剖し、その卵巣を分離して秤量する。卵巣組織の湿重量1gmに3mlの70%アルコールを加える。
【0085】
さらに別の実施形態では、抽出物をワットマン(Whattman)No.1濾紙で濾過する。
【0086】
さらに別の実施形態では、染料の溶液を含むねじ口のあるバイアルに「染料溶液」と標示し、以後使用するまで4℃の冷室で保管する。
【0087】
さらに別の実施形態では、裸眼および蛍光灯で染料溶液の色を確認する。
【0088】
さらに別の実施形態では、染料が70%エタノールに可溶性であることが判明した。実験用のさらなる希釈は水で行うことができる。
【0089】
さらに別の実施形態では、溶液中および染色した細胞上での、室温における染料の光安定性を確認する。これにより、染料は、細胞膜に付着した後は非分解性であることが示された。
【0090】
さらに別の実施形態では、電気泳動による染料の電荷の試験を行う。黄色いスポットが陽性末端に流れることが観察された。これにより、染料が負に帯電している有色化合物(色素)を含んでいたことが証明された。
【0091】
さらに別の実施形態では、色素は濾紙に色を与えるので染料である。さらに別の実施形態では、染料はpH6.8〜7.5範囲を有する。
【0092】
さらに別の実施形態では、卵巣のアルコール抽出物である染料溶液を1mlとり、0.2グラムのジチオエリスリトールを取り込ませた。溶液は脱色されない。これにより蛍光化合物の着色部分は非還元性であることが示され、これは、キノノイド環などの還元性の環が存在しないことを意味する。この実験から立てられる推測は、この有色化合物は非還元性の染料であることである。
【0093】
さらに別の実施形態では、5mlの抽出物を100℃の水浴で加熱した。凝固が観察された。これにより、染料のアルコール抽出物中にタンパク質が存在することが確認された。
【0094】
さらに別の実施形態では、凝固の際に有色の部分がタンパク質から分離し、これは、非極性溶媒であるエーテルにのみ溶解する。この有色の溶液は濾紙電気泳動を行った場合にどの極に向かっても移動しない。これらは、蛍光色素の性質が非極性であることを示している。
【0095】
さらに別の実施形態では、染料を4mlの硫酸およびアンスロン試薬を用いたアンスロン試験(Ref)に供した。1mlの水、4mlの濃硫酸およびアンスロン試薬をブランクとした。ブランクは5分後にほのかに緑色であったが、抽出物は5分後に明るい緑色に変わった。この試験により、染料溶液中に炭水化物が存在していることが証明された。
【0096】
さらに別の実施形態では、シリカゲル-Gプレートを使用することによって前記染料(5マイクロリットル)を薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。使用した溶媒は2:2:1の比のn-ブタノール、酢酸および水であった。TLCを行った後、チャンバ内でプレートをヨウ素蒸気によって発色させた。4つのスポットが見つかった。この試験により、粗抽出物が少なくとも4種の異なる化合物を含むことが証明された。スポットおよびそれぞれのRf値を表1に示す。
【0097】
さらに別の実施形態では、蛍光分光分析によって純粋な化合物の蛍光特性が見られる。化合物(ゲル濾過後に凍結乾燥させた)を水に溶かし(濃度0.001gm/ml)、蛍光分光分析に供した。これをまず励起走査にかけ、化合物が351nm、580nmおよび720nmで励起されていることを示した。
【0098】
さらに別の実施形態では、前記染料を蛍光発光分光光度分析に供した。351nmで励起した場合、発光は400〜600であった。発光の最大値は450nmおよび550nmでの2つのピークであった(図2および3)。
【0099】
さらに別の実施形態では、タンパク質および炭水化物の存在について分析モードHPLCを行った。
【0100】
さらに別の実施形態では、溶媒として80%のアセトニトリルおよび20%の水を使用して、C18逆相カラム中で定組成モードの逆相HPLCによって、染料溶液のHPLCを行った。
【0101】
さらに別の実施形態では、280nmおよび205nmの波長でのUV検出器により、タンパク質の存在が検出される。図17および表2に、280nmでのUV検出器によるタンパク質の存在の結果を示す。7種のタンパク質の保持時間が2.1〜8.8分の間で変動することが見られる。面積は535〜116103の範囲に及ぶ。最大の面積パーセントは保持時間2.1分のピーク1である。これにより、ピーク1でのタンパク質が試料中で最も量が多いことが示される。
【0102】
さらに別の実施形態では、205nmの波長でのUV検出器により、ペプチドの存在が検出される。図18および表3に、205nmでのUV検出器による10種のペプチドの存在を示す。保持時間は2.1〜14.8分の間で変動する。面積は63482〜3218965の範囲に及ぶ。また、最大の面積パーセントは保持時間3.9分のピーク3のペプチドのものである。
【0103】
さらに別の実施形態では、RI検出器で炭水化物の存在が検出される。使用した標準物質はグルコース、スクロースおよびフルクトースである。結果を図19、22および表4に示す。
【0104】
さらに別の実施形態では、HPLCデータ分析および電気泳動に基づいて蛍光体とタンパク質との会合が証明される。蛍光体は非極性であるので、卵巣のアルコール抽出物が、負に帯電している何らかの構成成分に結合しているかもしれないと考えられる。これは、電気泳動中にこれが陽極に向かって移動するからである。また、表1、2、3および4のHPLCデータから示されるように、タンパク質および炭水化物しか検出されない。これは、有色フルオロポア(fluoropore)が、負に帯電している何らかのタンパク質に結合していることを示唆している。いわば、染料溶液の蛍光活性は、タンパク質が凝固する際に容易に分離される、負に帯電しているタンパク質に付着した非極性蛍光体を含む構成成分によるものなのである。
【0105】
さらに別の実施形態では、糖タンパク質の存在を確認するために凝集試験を行う。抽出物中に少なくとも1種の糖タンパク質が存在することが示されたので、凝集の存在についてバイオアッセイを行った。
【0106】
さらに別の実施形態では、2組の実験を行うことによってグラム陰性細菌(大腸菌)に対する染料の凝集生物活性試験を行った。実験1では、50マイクロリットルの前記染料を100mlのミュラーヒルトン(Mullerhilton)培養ブロスに取り込ませた。海生抽出物を含まないブランクをおいた。0.1mlの新鮮な大腸菌種菌を培養ブロスに取り込ませた。培養ブロスを回転振盪器で、150rpmの回転でインキュベートした。8時間後、いずれの培養物でも濁りを示した。しかし、抽出物(染料溶液)を含む培養物は凝集塊様の増殖を示した。細胞は凝集体を形成していた。染料を含まない陽性ブランクは正常な増殖を示した。
【0107】
さらに別の実施形態で、第2の実験では、白金耳1杯の生大腸菌細菌を顕微鏡スライド上の25マイクロリットルの水中に入れて混合した。これに2マイクロリットル(2μl)の染料溶液を加えた。スライドをベンチ上に30秒間放置することによってアルコールを蒸発させた。その後、細菌調製物の上にカバーガラスを置き、密封した。同様に、染料なしで細菌の対照調製物を作製した。
【0108】
さらに別の実施形態では、どちらのスライドも凝集生物活性および蛍光を確認するために落射蛍光顕微鏡(100×対物レンズ、10×接眼レンズ)の油浸対物レンズ下でスクリーニングした。染料で処理したスライド中の細菌は凝集塊を形成していたが、対照はこのような効果を示していなかったことを示した。これにより、染料が凝集生物活性を誘発していることが証明された。また、細菌が特異的な形の凝集塊へと凝集していることも認められた。凝集塊中の細菌は全体にわたって生きていた。細菌は、スライドが乾燥した場合にのみ死滅する(図4および5)。
【0109】
さらに別の実施形態では、細胞が染料溶液の存在下で凝集体を形成する傾向により、染料がレクチン様糖タンパク質を含むことが示唆された。このことは、少なくとも1種の糖タンパク質がHolothuriaの卵巣の粗抽出物中に存在するという、本発明者らのHPLCデータの解釈をさらに支持する。
【0110】
さらに別の実施形態では、真核精子を用いて凝集試験を行った。カキ精子の溶液1ミリリットルを、植物プランクトンの計数に使用するセジウィック(sedgewick)カウンターの空洞に入れた。5マイクロリットル(5μl)のアルコール抽出物を加えた。スライドを、10×接眼レンズを備えた顕微鏡の40×対物レンズ下でスクリーニングした。精子が凝集体を作っており、互いにくっついて凝集塊を形成していることが観察された。凝集体に特定の形はなかった。この挙動は、対照実験では存在しなかった。
【0111】
さらに別の実施形態では、カキの精子および卵子の媒精率および受精率の上昇が見出された。カキの優良品質の精子および卵子を10:1の固定比率で植物プランクトンの計数に使用するセジウィックカウンターの空洞に加えた。5マイクロリットル(5μl)のアルコール抽出物を加えた。その後、スライドをすぐに顕微鏡下でスクリーニングして卵膜、受精卵および未受精卵に接着している精子を観察した。抽出物を含まない対照をおいた。図6は、数秒間以内に緑色励起フィルター(WG)を用いて見られた極体の放出を示す。
【0112】
さらに別の実施形態では、試験物と対照との間の媒精率および受精率の差の割合を求めた。30秒後、処理した細胞では80%の卵子が受精していたが、対照では40%の細胞が受精していたことが観察された。本発明者らは、卵膜に接着している精子を多数観察した。本発明者らの以前の実験では、これらの卵子において受精活動に通常かかる時間は約10〜15分間であることが観察されている。最初の極体形成は、染料を加えてから1分以内に起こった(図6)。本発明の染料溶液は、精子が卵膜を通って媒精することを促進し、最終的にはるかに短い時間内で受精率を上昇させる、何らかの要因を有すると考えられる。
【0113】
さらに別の実施形態では、真核細胞の生存における染料の無毒性試験を行った。
【0114】
染料を、カキ精子に対する細胞毒性について試験した。この実験の設定における精子の生存を、無毒性を示すパラメータとした。カキの雄の性腺を取り出し、精子を100%の海水に放出させた。
【0115】
これらをムスクリン(muscline)布で濾過して残骸をすべて除去した。1ミリリットル(ml)の精子溶液をとり、様々な濃度(1μl、2μl、3μl、4μlおよび5μl)の染料溶液を加えた。30分ごとに、精子の生存の観察を顕微鏡下で行った。実験を24時間続けた。染料を加えない対照をおいた。染料を加えても精子の生存率に影響がないことが判明した。これにより、染料の無毒性が証明された。
【0116】
さらに別の実施形態では、原核生物の生存における染料の無毒性試験を行った。抽出物の、グラム陰性細菌の大腸菌に対する細胞毒性を、その生存または死亡率を観察することによって試験した。水中の生大腸菌細菌を1滴(25μl)顕微鏡スライド上に置いた。これに2μlのアルコール抽出物を加えた。蒸発から守るためにスライドを一時的に密封した。細菌が溶液中に保たれていた24時間、生存し続けたことが顕微鏡下で見受けられた。溶液が乾燥した場合は死滅した。対照実験を行った。これにより、この染料が原核生物にも無毒性であることが証明された。
【0117】
本出願者らは染料の性質を研究し、様々な励起波長で多色発光を示すことを見出した。これは、市販済みの蛍光色素顕微鏡染剤に匹敵する。本発明の染料の青色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学における非放射性標識キットの構成成分として使用されているDAPI蛍光色素の、同じ波長での励起における同じ色の発光に匹敵する。
【0118】
前記染料の可視域での黄色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているFITCの同じ有色発光に匹敵する。
【0119】
オレンジ色の蛍光発光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているヨウ化プロピジウム蛍光色素のオレンジ色の蛍光色に匹敵する。このオレンジ色の蛍光発光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているTRITC蛍光色素のオレンジ色の蛍光色に匹敵する。この染料は室温で安定であり、貯蔵寿命が長い。前記染料の分子および放射性キットは、室温で搬出することができる。この染料は、現在の市販の少なくとも123種の異なる蛍光色素(Bitplane products)、すなわちDAPI、Hoechest 33258、Hoechest 33342、FITC、アクリジンオレンジ、オーラミン、ローダミン、TRITC、およびヨウ化プロピジウムなどの特徴を有している。この染料は、通常の顕微鏡光の下では、灰色の色調が細胞遺伝学的、細胞学的、および組織化学的なスライドの迅速なスクリーニングに有用な位相差効果を生じ、顕微鏡の余分な位相差付属部品の費用を倹約できる。蛍光色の発光はストークスの蛍光法則に従う。
【0120】
さらに別の実施形態では、落射蛍光顕微鏡研究は、この染料を染剤として1:20000の希釈率で使用し、様々なキューブで励起した際の光の発光を記録することによって行い、色調を既知の蛍光色素と比較した(図7〜10)。
【0121】
さらに別の実施形態では、スライドのスクリーニングはオリンパス顕微鏡BX-60のオリンパスBx-FLA反射光蛍光付属装置のWU、WB、WGおよびBF蛍光色素キューブ下で、UV光および可視光スペクトルでの励起を用いて行った。
【0122】
さらに別の実施形態では、WUキューブの波長範囲は330nm〜385nmである。
【0123】
さらに別の実施形態では、WBキューブの波長範囲は450nm〜480nmである。
【0124】
さらに別の実施形態では、WGキューブの波長範囲は510nm〜550nmである。
【0125】
さらに別の実施形態では、BFは明視野であり、通常のタングステン電球が光を送達する。
【0126】
さらに別の実施形態では、様々な励起範囲における染料の発光範囲を見出した。落射蛍光顕微鏡写真における卵子の背景は、染料の発光色を示す。
【0127】
さらに別の実施形態では、330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより450nm〜470nmの範囲の蛍光が発光されたことが見受けられた。
【0128】
さらに別の実施形態では、450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより510nm〜570nmの範囲の蛍光が発光された。
【0129】
さらに別の実施形態では、510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。
【0130】
さらに別の実施形態では、BFでは、様々な色合いの黄色がかった灰色を示した。さらに別の実施形態では、細胞膜を染色した後の様々な励起範囲による染料の発光範囲を見出した。
【0131】
さらに別の実施形態では、染料を、カキの死滅、生および固定卵子に対する蛍光顕微鏡染剤として使用した。スライドを落射蛍光顕微鏡下でスクリーニングした。死滅細胞は染料を取り込まず、蛍光を示さないことが認められた(図11および12)。
【0132】
さらに別の実施形態では、染料をカキの生卵子に対する蛍光顕微鏡染剤として使用した。スライドを落射蛍光顕微鏡下でスクリーニングした。生細胞が蛍光を示したことが認められた。励起分光域および発光された蛍光は、ストークスの法則に厳密に従っていた。これらの範囲は染料の発光範囲とは異なっており、これは蛍光発光している細胞の背景を表す(図4〜16)。
【0133】
さらに別の実施形態では、染料を、3:1のエタノールと酢酸の固定剤で固定したカキの固定卵子に対する蛍光顕微鏡染剤として使用した。スライドを落射蛍光顕微鏡下でスクリーニングした。固定細胞が蛍光を示したことが認められた。励起分光域および発光された蛍光は、ストークスの法則に厳密に従っていた。これらの範囲は染料の発光範囲とは異なっており、これは蛍光発光している細胞の背景を表す(図4a〜16a)。
【0134】
さらに別の実施形態では、330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより、細胞中で470nm〜500nmの範囲の蛍光が発光された。
【0135】
さらに別の実施形態では、450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより570nm〜610nmの範囲の蛍光が発光された。
【0136】
さらに別の実施形態では、510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。
【0137】
さらに別の実施形態では、明視野下での死滅卵子の落射蛍光顕微鏡スクリーニングでは、可視スペクトルの完全な白色域の光が発光され、細胞成分の密度次第では位相差効果のような黄色がかった灰色の色調が得られた。
【0138】
さらに別の実施形態では、明視野下での生卵子の落射蛍光顕微鏡スクリーニングでは、可視スペクトルの完全な白色域の光が発光され、細胞成分の密度次第では位相差効果のような黄色がかった灰色の色調が得られた。
【0139】
さらに別の実施形態では、明視野下での固定卵子(3:1エタノール:酢酸の固定剤)の落射蛍光顕微鏡スクリーニングでは、可視スペクトルの完全な白色域の光が発光され、細胞成分の密度次第では位相差効果のような黄色がかった灰色の色調が得られた。
【0140】
さらに別の実施形態では、染料を大腸菌用の顕微鏡染剤として使用した。白金耳1杯の生大腸菌細菌を顕微鏡スライド上の25マイクロリットルの水に入れて混合した。これに2マイクロリットル(2μl)の染料溶液を加えた。スライドをベンチ上に10〜15秒間放置することによって抽出物中のアルコールを蒸発させた。その後、水中の細菌懸濁液の上にカバーガラスを置き、密封した。同様に、染料を含まない細菌の対照調製物を作製した。
【0141】
さらに別の実施形態では、どちらのスライドも蛍光を確認するために落射蛍光顕微鏡 (100×対物レンズ、10×接眼レンズ)の油浸対物レンズ下でスクリーニングした。死滅細胞は染料を取り込まず、蛍光を示さないことが認められた(図11〜12)。
【0142】
さらに別の実施形態では、生細菌細胞は蛍光を示した(図4〜5)。励起分光域および発光された蛍光波長はストークスの法則に厳密に従っていた。これらは染料溶液と異なっており、以下に示すとおりであった。
【0143】
さらに別の実施形態では、330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより470nm〜500nmの範囲の蛍光が発光された。
【0144】
さらに別の実施形態では、450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより570nm〜610nmの範囲の蛍光が発光された。
【0145】
さらに別の実施形態では、510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。
【0146】
さらに別の実施形態では、染料を含まない対照の大腸菌も、蛍光を示さなかった。
【0147】
さらに別の実施形態では、染料を落射蛍光顕微鏡染剤として使用したスライドの顕微鏡写真撮影を行った。
【0148】
さらに別の実施形態では、細胞を含むスライドの領域で発光された蛍光および染料のみによる色の発光を表す周囲背景の顕微鏡写真撮影を、330nm〜385nmの範囲のWU下で、400ASA感度のコダック(Kodak)製フィルムを用いて50〜60秒間で変動する露光時間で行った。
【0149】
さらに別の実施形態では、細胞を含むスライドの領域で発光された蛍光および染料のみによる色の発光を表す周囲背景の顕微鏡写真撮影を、450nm〜480nmの範囲のWB下で、400ASA感度のコダック製フィルムを用いて50〜60秒間で変動する露光時間で行った。
【0150】
さらに別の実施形態では、細胞を含むスライドの領域で発光された蛍光および染料のみによる色の発光を表す周囲背景の顕微鏡写真撮影を、510nm〜550nmの範囲のWB下で、400ASA感度のコダック製フィルムを用いて50〜60秒間で変動する露光時間で行った。
【0151】
さらに別の実施形態では、細胞を含むスライドの領域で発光された蛍光および染料のみによる色の発光を表す周囲背景の顕微鏡写真撮影を、明視野下で、400ASA感度のコダック製フィルムを用いて50〜60秒間で変動する露光時間で行った。
【0152】
さらに別の実施形態では、細胞膜への染料の透過を見出した。カキの未受精卵、受精卵および幼生を染料と卵子との懸濁比1:50マイクロリットルで染色し、蛍光顕微鏡下でスクリーニングした(図7〜10、7a〜10a;14〜16、14a〜16a)。形質膜、核エンベロープおよびクロマチンでは蛍光が顕著であったことが見出された。発光の波長範囲は同じであり、色は同じ色合いの色調であったが、これらの細胞部分の境界が目立って画定されていた(図7〜10、7a〜10a)。これにより、この染料が卵子形質膜、細胞質、核膜、核質ならびにクロマチンの生および固定細胞膜に透過可能であることが証明された。
【0153】
さらに別の実施形態では、死滅細胞においてこれらの細胞部分で蛍光が存在しないことにより、染料が死滅細胞膜に不透過性であることが示された(図11〜12、11a〜12a)。
【0154】
蛍光顕微鏡の様々な励起キューブ用に様々な染剤を使用する。たとえば、DAPI(DNA染色、青色を発光する)、フルオレセイン-dUTP;Hoechest 33258、33342は330nm〜385nmの励起キューブで励起することによって見られる;FITC、アクリジンオレンジ(DNA、RNAで緑色がかった/黄色がかった色調を発光する)、450nm〜480nmの励起キューブ下でオーラミン、ならびに510nm〜550nmの励起キューブ下でローダミン、TRITCおよびヨウ化プロピジウム(DNA、オレンジ色の色調を発光する)である。
【0155】
この細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングの一実施形態では、これは、希釈した抽出物を1滴置き、波長330〜385nmの分光域を有するWUフィルターで励起することによって行う。
【0156】
別の実施形態では、細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングは、抽出物を1滴置き、波長450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより行う。
【0157】
別の実施形態では、細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングは、抽出物を1滴置き、波長510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより行う。
【0158】
さらに別の実施形態では、細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングは、明視野の対物レンズの下で、この染料を使用して透過光によって行う。
【0159】
さらに別の実施形態では、染料で染色した細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングは、それぞれの励起で発光された蛍光色の色調を観察することによって行う。
【0160】
別の実施形態では、330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより470nm〜500nmの範囲の蛍光が発光された。
【0161】
別の実施形態では、450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより570nm〜610nmの範囲の蛍光が発光された。
【0162】
さらに別の実施形態では、510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。
【0163】
別の実施形態では、フィールド下で透過光を用いて細胞検査用スライドの落射蛍光顕微鏡スクリーニングすることにより、細胞成分の密度次第では可視スペクトルの完全な白色域の光が発光され、位相差効果が得られた。
【0164】
本発明のさらに別の態様では、染料の1:400000倍以上の希釈液を70%エチルアルコールで調製し、染剤として使用した場合、有色の蛍光発光が落射蛍光顕微鏡のUVおよび可視域で起こった。
【0165】
さらに別の実施形態では、染料を70%エチルアルコールで1:9000倍に希釈し、さらに水で1:50倍まで希釈する、すなわち全体の希釈率を1:450000倍にすると、3種の波長で3色の蛍光が得られる。
【0166】
さらに別の実施形態では、本発明は、透過光下で3種の波長での3色の蛍光および位相差効果を得るための、1:400000の比の海生ナマコHolothuria scabraから得た抽出物を含む生物活性組成物を提供する。
【0167】
一実施形態では、本発明は、コーティング組成物およびインクの調製に有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0168】
別の実施形態では、本発明は、漏れ検出に有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0169】
さらに別の実施形態では、本発明は、水中プローブに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0170】
さらに別の実施形態では、本発明は、分子診断用の蛍光プローブin situハイブリダイゼーションキットに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0171】
さらに別の実施形態では、本発明は、生化学、細胞生物学、免疫化学および分子生物学における非放射性標識および検出キットの構成成分として有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0172】
さらに別の実施形態では、本発明は、免疫蛍光検出に有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0173】
さらに別の実施形態では、本発明は、DIG標識したオリゴヌクレオチドプローブおよび抗DIG Fab断片の対比染色として有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0174】
さらに別の実施形態では、本発明は、フローサイトメトリーにおいて単一細胞および多細胞の定量的蛍光に有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0175】
さらに別の実施形態では、本発明は、落射蛍光顕微鏡の蛍光色素染剤として有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0176】
さらに別の実施形態では、本発明は、健康食品業界、化粧品業界、製薬および化学業界において生物汚染を素早く確認することに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0177】
さらに別の実施形態では、本発明は、実験培養物中の生物汚染物質を素早く推定することに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0178】
さらに別の実施形態では、本発明は、実地条件下で生物汚染因子を素早く確認することに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0179】
さらに別の実施形態では、本発明は、微生物キットに有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0180】
さらに別の実施形態では、本発明は、天然着色剤として有用な、海生ナマコHolothuria scabraから得た生物活性抽出物を慣用の添加剤と共に含む組成物を提供する。
【0181】
表の説明
表1 薄層クロマトグラフィー(TLC)によって検出された、染料の4つの構成成分の移動距離およびRf値を示す表データである。
表2 染料中にタンパク質が存在することを示す、280nmにおけるUV検出器による分析モードHPLCのデータである。クロマトグラム(図17)どおりのタンパク質の保持時間、面積および面積パーセントを表形式で示す。
表3 染料中にタンパク質が存在することを示す、205nmにおけるUV検出器による分析モードHPLCのデータである。クロマトグラム(図18)どおりのペプチドの保持時間、面積および面積パーセントを表形式で示す。
表4 RI検出器による、染料中に炭水化物が存在することを示す表である。試料炭水化物および標準物質の保持時間を示す。
表5 染料溶液を用い、原核細胞の細胞膜に付着させた場合の、オリンパス製落射蛍光顕微鏡の様々な波長の蛍光フィルターキューブで励起した際の蛍光染料の様々な有色の蛍光発光を示す。
表6 染料溶液を用い、真核細胞の細胞膜に付着させた場合の、オリンパス製落射蛍光顕微鏡の様々な波長の蛍光フィルターキューブで励起した際の蛍光染料の様々な有色の蛍光発光を示す。
表7 本発明の様々な特徴を以前の同時係属米国特許出願第09/820,654号と比較した比較表である。
【0182】
本発明は、インドの中央西海岸に沿っておよび世界中のインド洋-太平洋地域に広く分布している棘皮動物Holothuroidea:Holothuria scabra)由来の天然無毒性の蛍光タンパク質染料である新規色素を抽出、部分精製および特性決定する方法に関する。
【0183】
本発明はさらに、-4℃未満で70%エチルアルコール中に保存することによって同一試料から3〜4回繰り返して抽出することができ、したがって天然資源を乱獲から守ることができる、この動物の卵巣組織由来の新規蛍光タンパク質染料を提供する。
【0184】
本発明はまた、前記染料が、6種の異なる蛍光色素(DAPI、FITCおよびPI)ならびに現在多色蛍光の検出に使用されているピコビリタンパク質およびローダミンによる発光に匹敵する、UVおよび可視光スペクトルの3種の励起波長で6つの有色の蛍光発光を有することを企図する。この染料は事実上、顕微鏡観察プローブ用に現在の市販の約123種の蛍光色素の波長発光スペクトルを包含する。染色細胞は同一の励起で異なる色の発光を示すが、ストロークスの法則に厳密に従う。したがって、全部合わせると、オリンパスBX-60顕微鏡フィルターでの同一の励起により、染料は6色発光する。染料は生大腸菌細菌および真核細胞に無毒性である。
【0185】
この染料は様々な細胞構成成分の膜を透過し、それらを蛍光染色する。染色することによって染料が細胞膜に付着した後は、染料は非分解性である。
【0186】
この染料はタンパク質に付着した蛍光体を有する蛍光タンパク質である。
【0187】
この染料は凝集性を有しており、これは、生きた生物におけるスクリーニング効果のために水産養殖および組織培養物での人工媒精および受精に使用することができる。
【0188】
凝集した細胞は蛍光を維持するので、この染料を生細胞機能の研究に使用することができる。
【0189】
したがって、この染料を、単純なプロトコルに従って染色体、細胞、ならびに組織を単一染色、二重染色および三重染色するための、落射蛍光顕微鏡の天然無毒性の細胞透過性多色蛍光タンパク質染料として市販することができる。
【0190】
本発明はまた、分子生物学における蛍光in situハイブリダイゼーション用途の、タンパク質、DNAおよびRNAプローブの非放射性標識における染料の使用も企図する。
【0191】
したがって、好ましい使用様式では、この染料は、そのほとんどが輸入されており高値で販売されている分子標識および検出キットの構成成分となることができる。
【0192】
このような標識キットは、迅速な分子細胞遺伝学技術およびマイクロアレイ技術を用いた分子診断学のために求められている。
【0193】
この染料のさらに別の利点は、その蛍光が(1:200000〜400000)以上の非常に薄い溶液でも可視的であることである。
【0194】
染料のこの特性および無毒性で環境にやさしい性質は、救命胴衣の構成成分として救命具において、また墜落した航空機、救命ボートおよび防衛装置、たとえばロケットの位置に目印を付けること、各業界で漏れの確認を行うことなどに利用することができる。
【0195】
本発明は、単一細胞および多細胞のフローサイトメーターにおける蛍光の定量的測定に有用であろう。
【0196】
本発明はまた、組織培養物など自然環境および制御環境中の生物汚染、公害、健康、食品および化粧品業界における工業汚染を素早く推定することにも有利であろう。
【0197】
別の好ましい使用様式では、この染料は、蛍光顕微鏡分析によって細胞の染色が確認された後は、室温で長い貯蔵寿命を有する。
【0198】
この蛍光染料の別の有用性は、光波長の感度に基づいたデータが必要である新規の遠隔計測装置および水中プローブの構成要素としての有用性である。
【0199】
本発明を以下の実施例により例示するが、これらは如何なる様式でも本発明の発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0200】
染料を抽出、部分精製および特性決定する方法ならびに染料の無毒性、細胞透過性、凝集性および多色蛍光特性を確認するために行った、分光分析および落射蛍光顕微鏡観察による実験の詳細を開示する。
【0201】
(実施例1)
材料の採取
本特許の材料は以下の分類学的な詳細を有するナマコである。
亜界:Metazoa
門:Echinodermata
亜門:Eleutherozoa
綱:Holothuroidea
亜綱:Aspidochirotacea
目:Aspidochirota
属:Holothuria
種:scabra
【0202】
材料は、インドの中央西海岸の岸から、干潮の間に採取した。動物を実験室に持ち込み、さらに使用する時まで平均30〜32の塩分濃度(30%0)の海水を含むガラス製タンク中で維持した。
【0203】
(実施例2)
雌性腺からの染料の単離
動物をまず水道水で洗浄し、その後Milliq水(超高純度水)で洗浄した。鋭いハサミで体を切開し、雄/雌の動物を分類した。雌の性腺を同定し、丁寧に他の内臓から取り出した。卵巣の色は、卵巣細胞の成熟および半成熟状態に応じて黄色からオレンジ色までの範囲であった。卵巣組織を秤量してガラス製ビーカーに入れた。これに70%エチルアルコールを1:3(体積比による重量)の比で加えた。黄色がかったオレンジ色の色素が得られた。有色溶液を傾瀉した。残った組織に再び70%エチルアルコールを加え、有色溶液を取り除いた。卵巣組織をホモジナイズせずに色素を抽出するためにこれらのステップを3回繰り返した。
【0204】
染料の部分精製
抽出物をワットマンNo.1濾紙で濾過することによって部分的に精製した。染料の溶液を含むねじ口のあるバイアルに「ストック染料溶液」と標示し、以後使用するまで4℃の冷室で保管した。卵巣組織由来の淡黄色およびオレンジ色の色素のどちらもを含む抽出物を、以下の方法によって特性決定した。特性は同じであることが判明した。
【0205】
1mgの卵巣組織:3mlの70%エチルアルコール(3回)、すなわち、9mlの70%アルコール中の1mgは9000マイクロリットル(μl)の70%エチルアルコールを意味する。
【0206】
(実施例3)
染料の物理的特徴
色および溶解性
前記染料溶液は裸眼で見ると黄色がかったオレンジ色である。昼光色蛍光灯下では様々な色の発光を示す。この染料は水に不溶性であるが、アルコールに可溶性である。
【0207】
(実施例4)
光安定性
染料のアルコール抽出物は4℃で安定である。細胞を染料で標識した後は、蛍光は室温で何カ月も続く。
【0208】
(実施例5)
染料は、卵巣中の成熟卵子および未成熟卵子の量に応じてpH6.8〜7.5を有する。卵子がより成熟していればpHは7.5付近であり、成熟卵子がより少なければpHは6.8付近である。
【0209】
(実施例6)
濾紙電気泳動による染料の電荷の試験
前記染料の抽出物を濾紙電気泳動に供した。ワットマンNo.1濾紙をリン酸緩衝液(0.1M)、pH7に浸して電気泳動チャンバ内に置いた。両方の電極をリン酸緩衝液中に浸けた。5マイクロリットル(μl)の卵巣抽出物でスポットを行い、40ボルトの濾紙電気泳動に供した。黄色いスポットが陽性末端に流れることが観察された。これにより、抽出物が負に帯電している有色化合物(色素)を含んでいたことが証明された。抽出物は濾紙に色を与えるので染料である。
【0210】
(実施例7)
染料の化学的特徴
卵巣のアルコール抽出物である染料溶液を1mlとり、0.2グラムのジチオエリスリトールを取り込ませた。溶液は脱色されない。これにより蛍光化合物の着色部分中に還元性の基が存在しないことが示された。
【0211】
(実施例8)
タンパク質の存在の試験
5mlの抽出物を100℃の水浴で加熱した。凝固が観察された。これにより、染料のアルコール抽出物中にタンパク質が存在することが確認された。
【0212】
(実施例9)
炭水化物の存在の試験
抽出物を4mlの硫酸およびアンスロン試薬を用いたアンスロン試験(Ref)に供した。1mlの水、4mlの濃硫酸およびアンスロン試薬をブランクとした。ブランクは5分後にほのかに緑色であったが、抽出物は5分後に明るい緑色に変わった。この試験により、抽出物中に炭水化物が存在していることが証明された。
【0213】
(実施例10)
抽出物の構成成分の分離
シリカゲル-Gプレートを使用することによって前記抽出物(5マイクロリットル)を薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。使用した溶媒は2:2:1の比のn-ブタノール、酢酸および水であった。TLCを行った後、チャンバ内でプレートをヨウ素蒸気によって染色した。4つのスポットが見つかった。この試験により、粗抽出物が最低で4種の異なる化合物を含むことが証明された。
【0214】
スポットおよびそれぞれのRf値を表1に示す。
【0215】
(実施例11)
蛍光分光分析
前記抽出物を蛍光分光分析に供した。励起波長は351nm、580nm、720nmで最大であることが見出された。
【0216】
その後、前記染料溶液を蛍光発光分光光度分析に供した。351nmで励起した場合、発光は400〜600であった。発光の最大値は450nmおよび550nmでの2つのピークであった(図2および3)。
【0217】
(実施例12)
タンパク質および炭水化物の存在についての分析モードHPLC
溶媒として80%のアセトニトリルおよび20%の水を使用して、C18逆相カラム中で定組成モードの逆相HPLCによって、染料溶液のHPLCを行った。280nmおよび205nmの波長でのUV検出器により、タンパク質の存在が検出される。図17および表2に、280nmでのUV検出器によるタンパク質の存在の結果を示す。7種のタンパク質の保持時間が2.1〜8.8分の間で変動することが見られる。面積は535〜116103の範囲に及ぶ。最大の面積パーセントは保持時間2.1分のピーク1である。これにより、ピーク1でのタンパク質が試料中で最も量が多いことが示される。
【0218】
同様に、図18および表3に、205nmでのUV検出器による10種のペプチドの存在を示す。保持時間は2.1〜14.8分の間で変動する。面積は63482〜3218965の範囲に及ぶ。また、最大の面積パーセントは保持時間3.9分のピーク3のペプチドのものである。RI検出器で炭水化物の存在が検出される。使用した標準物質はグルコース、スクロースおよびフルクトースである。結果を図19〜22および表4に示す。280nmおよび205nmの第7ピークおよび炭水化物の第5ピークは、それぞれ保持時間が8.8分および8.939分である。
【0219】
(実施例13)
蛍光体とタンパク質との会合の試験
実施例8に示すように、抽出物のタンパク質は加熱すると凝固する。ここで、これに溶媒エーテルを加えると、有色の部分が溶解する。この有色の溶液の濾紙電気泳動を実施例6に記載した方法と同様に行うと、有色スポットはどの極に向かっても移動せず、これにより、色素が帯電していないことが証明される。非極性溶媒にしか溶けないので、染料の有色部分は非極性であるといえる。
【0220】
しかし、染料のアルコール抽出物で行った実施例6では、有色スポットは陽極に向かって移動し、これは、これが負電荷を持っていることを意味する。非極性色素は負に帯電している何らかの構成要素に結合しているかもしれないと考えられる。実施例12のHPLCデータから示されるように、タンパク質および炭水化物しか検出されず、これは、有色フルオロポアが、負に帯電している何らかのタンパク質に結合していることを示唆している。いわば、染料溶液の蛍光活性は、染料を加熱してタンパク質が凝固する際に容易に分離される、負に帯電しているタンパク質に付着した非極性蛍光体を含む構成成分によるものなのである。
【0221】
(実施例14)
原核および真核生物系のいずれもで凝集生物活性のバイオアッセイを行った
グラム陰性細菌(大腸菌)に対する染料の凝集生物活性試験
2つの個別の実験を行った。
【0222】
1) 50マイクロリットルの前記抽出物を100mlのミュラーヒルトン培養ブロスに取り込ませた。海生抽出物を含まないブランクをおいた。0.1mlの新鮮な大腸菌種菌を培養ブロスに取り込ませた。培養ブロスを回転振盪器で、150rpmの回転でインキュベートした。8時間後、いずれの培養物でも濁りを示した。しかし、抽出物(染料溶液)を含む培養物は凝集塊様の増殖を示した。細胞は凝集体を形成していた。染料を含まない陽性ブランクは正常な増殖を示した。
【0223】
2) 白金耳1杯の生大腸菌細菌を顕微鏡スライド上の50マイクロリットルの水中に入れて混合した。これに2マイクロリットル(2μl)の染料溶液を加えた。スライドをベンチ上に10〜15秒間放置することによってアルコールを蒸発させた。その後、細菌調製物の上にカバーガラスを置き、密封した。同様に、染料なしで細菌の対照調製物を作製した。
【0224】
どちらのスライドも凝集生物活性およびWU、WB、WGおよびBF下での蛍光を確認するために落射蛍光顕微鏡(100×対物レンズ、10×接眼レンズ)の油浸対物レンズ下でスクリーニングした。染料で処理したスライド中の細菌は凝集塊を形成していたが(図4、6および4a、5a)、対照はこのような効果を示していなかったことを示した。
【0225】
これにより、染料が凝集生物活性を誘発していることが証明された。また、細菌が特異的な形の凝集塊へと凝集していることも認められた。凝集塊中の細菌は全体にわたって生きていた。細菌は、スライドが乾燥した場合にのみ死滅し、死滅した細菌は染色されない。
【0226】
細胞が染料溶液の存在下で凝集体を形成する傾向により、染料がレクチン様糖タンパク質を含むことが示唆された。染料中にタンパク質および炭水化物が存在することはHPLCによって確認されている。
【0227】
(実施例15)
真核精子を用いた凝集生物活性試験
カキ精子の溶液1ミリリットルを、植物プランクトンの計数に使用するセジウィックカウンターの空洞に入れた。5マイクロリットル(5μl)のアルコール抽出物を加えた。スライドを、10×接眼レンズを備えた顕微鏡の40×対物レンズ下でスクリーニングした。精子が凝集体を作っており、互いにくっついて凝集塊を形成していることが観察された。凝集体に特定の形はなかった。この挙動は、対照実験では存在しないことが見出された。
【0228】
(実施例16)
カキ卵子の媒精率および受精率の上昇
カキの優良品質の精子および卵子を10:1の固定比率で植物プランクトンの計数に使用するセジウィックカウンターの空洞に加えた。5マイクロリットル(5μl)のアルコール抽出物を加えた。その後、スライドをすぐに顕微鏡下でスクリーニングして卵膜、受精卵および未受精卵に接着している精子を観察した。抽出物を含まない対照をおいた。図6および6aは、1分間以内に緑色励起フィルター(WG)を用いて見られた極体の放出を示す。
【0229】
30秒後、処理した細胞では80%の卵子が受精していたが、対照では40%の細胞が受精していたことが観察された。本発明者らは、卵膜に接着している精子を多数観察した。本発明者らの以前の実験では、これらの卵子において受精活動に通常かかる時間は約10〜15分間であることが観察されている。最初の極体形成は、染料を加えてから1分以内に起こった(図6および6a)。
【0230】
本発明の染料溶液は、媒精率を促進して、最終的にはるかに短い時間内で受精率を上昇させる、何らかの要因を有する。
【0231】
(実施例17)
真核細胞に対する染料の無毒性試験
抽出物を、カキ精子に対する細胞毒性について試験した。この実験の設定における精子の生存を、無毒性を示すパラメータとした。
【0232】
カキの雄の性腺と取り出し、精子を100%の海水に放出させた。これらをムスクリン布で濾過して残骸をすべて除去した。1ミリリットル(ml)の精子溶液をとり、様々な濃度(1μl、2μl、3μl、4μlおよび5μl)の染料溶液を加えた。30分ごとに、精子の生存の観察を顕微鏡下で行った。実験を24時間続けた。染料を加えない対照をおいた。染料を加えても精子が生存し続けたことが見受けられた。これにより、染料の無毒性が証明された。
【0233】
(実施例18)
原核生物に対する染料の無毒性試験
抽出物の、グラム陰性細菌の大腸菌に対する細胞毒性を、その生存または死亡率を観察することによって試験した。
【0234】
水中の生大腸菌細菌を1滴(25μl)顕微鏡スライド上に置いた。これに2μlのアルコール抽出物を加えた。蒸発から守るためにスライドを一時的に密封した。細菌が溶液中に保たれていた24時間、生存し続けたことが顕微鏡下で見受けられた。溶液が乾燥した場合は死滅した。対照実験を行った。これにより、この染料が原核生物にも無毒性であることが証明された。
【0235】
(実施例19)
染料の落射蛍光顕微鏡
落射蛍光顕微鏡研究は、この染料を染剤として1:100の希釈率で使用し、様々なキューブで励起した際の光の発光を記録することによって行い、色調を既知の蛍光色素と比較した(図7および7a〜10および10a)。スクリーニングは、オリンパス反射光のWU、WB、WGおよびBFキューブによるUV光および可視光スペクトルでの励起を用いて行った。キューブの詳細は以下のとおりであった。
WUキューブの波長範囲は330nm〜385nmであった。
WBキューブの波長範囲は450nm〜480nmであった。
WGキューブの波長範囲は510nm〜550nmであった。
BFは明視野であり、通常のタングステン電球が光を送達する。
【0236】
(実施例20)
様々な励起範囲における染料の発光範囲を見出した。落射蛍光顕微鏡写真における卵子の背景は、染料の発光色を示す。330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより450nm〜470nmの範囲の蛍光が発光されたことが見受けられた。450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより510nm〜570nmの範囲の蛍光が発光された。510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。BFでは、様々な色合いの黄色がかった灰色が見られる。
【0237】
(実施例21)
カキ細胞における蛍光発光
染料を、カキの死滅、生および固定卵子に対する蛍光顕微鏡染剤として使用した。スライドを落射蛍光顕微鏡下でスクリーニングした。死滅細胞は染料を取り込まず、蛍光を示さないことが認められた(図11、11aおよび12、12a)。
【0238】
生細胞および固定細胞はどちらも蛍光を示した。励起分光域および発光された蛍光は、ストークスの法則に厳密に従っていた。これらの範囲は染料の発光範囲とは異なっており、これは蛍光発光している細胞の背景を表す。330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより、細胞中で470nm〜500nmの範囲の蛍光が発光された。450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより、570nm〜610nmの範囲の蛍光が発光された。510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより、610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。明視野下での死滅、生および固定卵子の落射蛍光顕微鏡スクリーニングでは、可視スペクトルの完全な白色域の光が発光され、細胞成分の密度次第では位相差効果のような黄色がかった灰色の色調が得られた。
【0239】
(実施例22)
大腸菌細胞における蛍光発光
染料を大腸菌用の顕微鏡染剤として使用した。白金耳1杯の生大腸菌細菌を顕微鏡スライド上の25マイクロリットルの水に入れて混合した。これに2マイクロリットル(2μl)の染料溶液を加えた。スライドをベンチ上に10〜15秒間放置することによって抽出物中のアルコールを蒸発させた。その後、水中の細菌懸濁液の上にカバーガラスを置き、密封した。同様に、染料を含まない細菌の対照調製物を作製した。どちらのスライドも蛍光を確認するために落射蛍光顕微鏡 (100×対物レンズ、10×接眼レンズ)の油浸対物レンズ下でスクリーニングした。死滅細胞は染料を取り込まず、蛍光を示さないことが認められた(図13、13a)。固定細菌細胞および生細菌細胞は蛍光を示した。励起分光域および発光された蛍光波長はストークスの法則に厳密に従っていた。これらは染料溶液と異なっており、以下に示すとおりであった。
【0240】
330nm〜385nmの範囲のWUで励起することにより470nm〜500nmの範囲の蛍光が発光された。450nm〜480nmの分光域を有するWBフィルターで励起することにより、570nm〜610nmの範囲の蛍光が発光された。510nm〜550nmの分光域を有するWGフィルターで励起することにより、610nm〜650nmの範囲の蛍光が発光された。染料を含まない対照の大腸菌も、蛍光を示さなかった。
【0241】
(実施例23)
染料を落射蛍光顕微鏡染剤として使用したスライドの顕微鏡写真撮影
細胞を含むスライドの領域で発光された蛍光および染料のみによる色の発光を表す周囲背景の顕微鏡写真撮影を、330nm〜385nmの範囲のWU、450nm〜480nmの範囲のWB、510nm〜550nmの範囲のWGおよび明視野の下で、400ASA感度のコダック製フィルムを用いて50〜60秒間で変動する露光時間で行った。
【0242】
(実施例24)
細胞膜への染料の透過
細胞膜への染料の透過を見出した。カキの未受精卵、受精卵および幼生を染料と卵子との懸濁比1:50マイクロリットルで染色し、蛍光顕微鏡下でスクリーニングした(図4、4a〜16、16a)。形質膜、核エンベロープおよびクロマチンでは蛍光が顕著であったことが見出された。発光の波長範囲は同じであり、色は同じ色合いの色調であったが、これらの細胞部分の境界が目立って画定されていた(図7、7a〜10、10a)。これにより、この染料が卵子形質膜、細胞質、核膜、核質ならびにクロマチンの生および固定細胞膜に透過可能であることが証明された。死滅細胞においてこれらの細胞部分で蛍光が存在しないことにより、染料が生および固定細胞膜にのみ透過性であることが示された。同様に、蛍光発光は生大腸菌細胞でのみ存在し、死滅細胞では見られなかった。
【0243】
(実施例25)
染料の生物活性抽出物をミクロチューブにとって-20℃で保持し、凍結した状態で、UV光下で見た。別の実験で、染料溶液に浸したワットマン濾紙を-20℃に保ち、UVライトボックス下で観察した。蛍光は劣化せずに持続した。
【0244】
現在の市販の染料に対する利点
1. 染料は、天然源由来であり合成ではないので非放射性である。
2. 染料は、河口動物、海生動物およびグラム陰性細菌の大腸菌に無毒性である。
3. 染料は細胞膜透過性であり、核膜およびクロマチンにも付着する。
4. 染料は細胞質および核質に透過性である。
5. 染料は非生物発光海生動物由来の蛍光タンパク質染料である。
6. この染料は、単独形態で、蛍光色のUVおよび可視光スペクトル発光の主な部分を包含する6種の合成蛍光色素に匹敵する。
7. 染料は、顕微鏡の位相差付属部品に余分な費用をかけずに、試料を固定化および保存する長いプロトコルなしに、特に生試料をその場で品質確認する場合に位相差効果を与える素早い顕微鏡染剤として使用することができる。
8. 染色細胞でより長い間蛍光品質が非分解性であるので、染色したスライドを搬出する間に冷蔵を必要としない。染料溶液は4℃で販売することができる。現在の市販蛍光染料は-20℃に等しい冷蔵で搬出されている。
9. 染料はpH6.8〜7.5範囲を有しており、これは中性に非常に近く、組成物中で製品のpHは劇的には変化しない。
10. 既知の海生クラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)とは異なり、本発明者らの染料はリポーター遺伝子ではない。蛍光体はタンパク質に直接付着しており、アミノ酸の環化ステップなしで蛍光が示される。
11. 前記の蛍光結果は直接的である。
12. GFPは395nmの青色光を吸収し、470nmの小さなピークで緑色光を発光する。本発明者らの染料は3種の蛍光波長で6つの蛍光色を発光した。
13. 染料は70%のアルコールに可溶性である。
14. 染料は負に帯電している。
15. 染料溶液は、部分的に精製した形態では、最低で4種の化合物からなる。
16. 染料は炭水化物およびタンパク質を含む。
17. 蛍光体は非極性であるが染料は全体として負に帯電している。これにより、蛍光体がタンパク質に付着していることが示された。
18. 染料は少なくとも1種の糖タンパク質を含み、レクチン様の活性を有する。
19. これは細菌の凝集を示し、このことは有害な細菌を除去することに有用となり得る。
20. 凝集した細菌細胞はそれでも蛍光発光する。この性質は、食品業界において細菌数を知るために使用することができる。
21. 染料は真核の精子および卵細胞で凝集を誘発し、媒精率および受精率を促進して非常に短い間に全体的な受精率を上昇させた。染料は水産養殖業界で使用することができ、ヒト性細胞で試すことができる。
22. 染料はタンパク質性であるが、細胞膜に付着した後は自然条件下で非分解性である。このことは、生細胞機能、細胞小器官の構造、細胞の選別およびフローサイトメトリーを研究するために多大な価値があるかもしれない。
23. 染料溶液は生細菌ならびにカキ卵子および精子に無毒性である。
24. 染料の無毒性は、生細胞の分析を扱うキットの染料構成成分にすることができるという点で利点を有する。
25. 染料の無毒性は、海洋学における野外実地試験を扱うキットの染料構成成分にすることができるという点で利点を有する。
26. 染料は、死滅細菌を染色せず、蛍光を示さない。このことは、組織培養物で生細胞および死滅細胞を確認することに有用である。
27. 染料は生細胞に無毒性であり、細胞系の追跡調査に有用となり得る。
28. 染料は生細胞および固定細胞に細胞膜透過性である。これは天然染料であり、したがってより環境にやさしいはずなので、合成染料よりも有利である。
29. 染料は選択的励起でより広い発光波長の範囲に及ぶ。これにより、この染料は、第3の発光色域を加えるための現在の市販の二重発光染料キットの非常に満足できる構成成分となる。
30. 染料は、スライド上の細胞を染色した後は光脱色を示さない。これにより、これは組織化学的研究に有用となる。
31. 染料は1:200000〜1:400000倍の希釈範囲でもこれらの蛍光色を発光した。
32. 様々な励起波長での染料のこのような多色発光は、市販済みの蛍光色素顕微鏡染剤に匹敵する。
33. 本発明の染料の青色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識キットの構成成分として使用されているDAPI蛍光色素の同じ波長での励起による同じ色の発光に匹敵する。
34. 本発明の染料の青色蛍光はまた、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているHoechest 33258による色の発光にも匹敵する。
35. 本発明の染料の青色蛍光はまた、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているHoechest 33342蛍光色素の同じ波長での励起による色の発光にも匹敵する。
36. 可視域における前記染料の黄色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているアクリジンオレンジの同じ有色発光に匹敵する。
37. 可視域における前記染料の黄色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているオーラミンの同じ有色発光に匹敵する。
38. 可視域における前記染料の黄色蛍光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているFITCの同じ有色発光に匹敵する。
39. オレンジ色の蛍光発光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているヨウ化プロピジウム蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する。
40. オレンジ色の蛍光発光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているローダミン蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する。
41. オレンジ色の蛍光発光は、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているTRITC蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する。
42. 同じ目的に使用され合成市販染料とは異なり、本発明の染料は室温で安定であり、長い貯蔵寿命を有する。前記染料の分子非放射性キットは室温で搬出することができる。
43. 前記染料は単独で、現在の市販の少なくとも123種の異なる蛍光色素(DAPI、Hoechest 33258、Hoechest 33342、FITC、アクリジンレンジ、オーラミン、ローダミン、TRITC、およびヨウ化プロピジウムなど)の特徴を有する。
44. 通常の顕微鏡光の下では、灰色の色調が細胞遺伝学的、細胞学的、および組織化学的なスライドの迅速なスクリーニングに有用な位相差効果を生じ、顕微鏡の余分な位相差付属部品の費用を倹約できる。蛍光色の発光はストークスの蛍光法則に従う。
45. コダック製フィルムを用いた顕微鏡写真では、隣接色発光波長の色調を示す。たとえば、落射蛍光顕微鏡の下、顕微鏡写真で青色蛍光を示した場合、緑色の色調も表れる。
46. コダック製フィルムを用いた顕微鏡写真では、隣接色発光波長の色調を示す。たとえば、落射蛍光顕微鏡の下、顕微鏡写真で黄色蛍光を示した場合、緑色の色調も表れる。染料は、落射蛍光顕微鏡下、顕微鏡写真でオレンジ色蛍光色を示した場合、赤色の色調も表れる。
47. すべての蛍光下で見た細胞遺伝学的スライドでは、染料以外の試料が存在しない背景で、細胞の対比染色効果が与えられる。
48. 染料は様々な塗装、インク、織物中の蛍光色として使用することができる。
49. 染料はポリマーを漂白し、明度を上げるための蛍光染料の組成物中で使用することができる。
50. 染料は全スペクトル蛍光染料を用いた漏れ検出に使用することができる。
51. これはまた、自動化学計測システムで使用することもできる。墜落した航空機、救命クラフト(craft)、および装置、たとえばロケット弾の位置に目印を付けるためにも使用することができる。さらに、水中プローブで使用することができる。
52. 染料の無毒性および細胞透過性の性質は、DNA、RNA、タンパク質および酵素を標識するための生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キット、免疫蛍光検出、DIG標識したオリゴヌクレオチドプローブおよび抗DIG Fab断片の対比染色、フローサイトメトリーにおける単一細胞および多細胞の定量的蛍光フローサイトメトリー、落射蛍光顕微鏡の蛍光色素染剤の構成成分として使用することができる。
53. 染料は健康食品業界、化粧品業界、製薬および化学業界において生物汚染を素早く確認すること、実験培養物中の生物汚染物質を素早く推定すること、実地条件下で生物汚染因子を素早く確認することに使用することができる。
54. 染料は、無毒性の環境にやさしい性質が必要である場合の組成物中で使用することができる。
55. 染料は天然着色剤として使用することができる。1:20000〜1:40000の比の海生染料の生物活性組成物で、3種の波長で6色の蛍光が得られ、透過光下で位相差光下が得られる。
【0245】
【表1】

【0246】
【表2】

【0247】
【表3】

【0248】
【表4】

【0249】
【表5】

【0250】
【表6】

【0251】
【表7】












【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】多色蛍光染料の抽出、精製および特性決定のフローチャートである。
【図2】351nm、580nm、720nmに最大値が見出される励起波長を示す蛍光分光分析である。
【図3】400〜600に見出される発光波長を示す蛍光分光分析である。
【図4】染料を450〜480nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWBフィルターキューブで励起した場合の、染料の緑色の蛍光発光および染料が付着した細菌細胞の黄色発光(矢印)の、落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。凝集塊を作る染料の凝集特性も見られる。
【図4a】図4のカラー写真である。
【図5】染料の暗赤色の蛍光発光、および染料を510nm〜550nm nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターキューブで励起した場合の、染料が付着した細菌細胞のオレンジ色の発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。凝集塊を作る染料の凝集特性も見られる。
【図5a】図5のカラー写真である。
【図6】染料の暗赤色の蛍光発光、および染料を510nm〜550nm nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターキューブで励起した場合の、染料が付着したカキ卵細胞のオレンジ色の発光に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。矢印は極体の放出を示す。
【図6a】図6のカラー写真である。
【図7−】染料の緑色の蛍光発光、および染料を450〜480nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWBフィルターキューブで励起した場合の、染料が透過した生卵細胞の黄色発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。染色された卵膜および核エンベロープならびに細胞質および核質を示す、染料の細胞透過性の性質である。
【図7a】図7のカラー写真である。精子核のクロマチンも見られる。
【図8】染料の暗青緑色の蛍光発光、および染料を330nm〜385nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWUフィルターキューブで励起した場合の、染料が透過した生卵細胞の青色の発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。染色された卵膜および核エンベロープならびに細胞質および核質を示す、染料の細胞透過性の性質である。
【図8a】図7のカラー写真である。核内のクロマチンも見られる。
【図9】染料の暗赤色の蛍光発光、および染料を510nm〜550nm nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターキューブで励起した場合の、染料が付着したカキ卵細胞のオレンジ色の発光に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。
【図9a】図6のカラー写真である。
【図10】明視野下における染料の蛍光発光の、落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。
【図10a】図10のカラー写真である。
【図11】BX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターで励起した場合に蛍光が存在しないことを示す死滅カキ卵細胞である。
【図11a】同じもののカラー写真である。
【図12】BX-60オリンパス顕微鏡の明視野で励起した場合に蛍光が存在しないことを示す死滅カキ卵細胞である。
【図12a】同じもののカラー写真である。
【図13】染料の暗赤色の蛍光発光、および染料を510nm〜550nm nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターキューブで励起した場合の、大腸菌で蛍光が存在しないことを示す落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。
【図13a】図13のカラー写真である。
【図14】染料の暗青緑色の蛍光発光、および染料を330nm〜385nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWUフィルターキューブで励起した場合の、染料が透過した生カキ胚細胞の青色の発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。染色された卵膜、極細胞、細胞質およびクロマチンを示す、染料の細胞透過性の性質である。
【図14a】図14のカラー写真である。核内のクロマチンも見られる。
【図15】染料の暗青緑色の蛍光発光、および染料を450〜480nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWBフィルターキューブで励起した場合の、染料が透過した生カキ胚細胞の青色の発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。染色された卵膜、極細胞、細胞質およびクロマチンを示す、染料の細胞透過性の性質である。
【図15a】図15のカラー写真である。極体内のクロマチンも見られる。
【図16】染料の濃いオレンジ色の発光、および染料を510nm〜550nmの励起範囲を有するBX-60オリンパス顕微鏡のWGフィルターキューブで励起した場合の、染料が透過した生カキ胚細胞の明るいオレンジ色の発光(矢印)に関する落射蛍光顕微鏡の結果の白黒図である。染色された卵膜、極細胞、細胞質およびクロマチンを示す、染料の細胞透過性の性質である。
【図16a】図16のカラー写真である。極体内のクロマチンも見られる。
【図17】280nmでのUV検出器で撮影した染料のクロマトグラムである。
【図18】205nmでのUV検出器で撮影した染料のクロマトグラムである。
【図19】スクロースの標準クロマトグラムである。
【図20】グルコースの標準クロマトグラムである。
【図21】フルクトースの標準クロマトグラムである。
【図22】RI検出器で検出された炭水化物の存在を示す染料のクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮間帯、水中、浅水域および深層に存在し、アルコーブ、割れ目、岩棚、突出部、岩石の多い砂地の生息地など日陰に通常豊富であり、くすんだ色から明るい色であり、外骨格および内骨格を有するか、または有さず、着生の定住性の漂流生物であり、様々な遊泳内部能力を有する遊泳性であり、生育環境は通常夜行性であり、頻繁に捕食されやすく、発光性であるか発光性でなく、卵子を体外受精し、蛍光色素はUVB、UVA、可視有色スペクトルおよび赤外スペクトルの僅かな波長範囲からすべての波長範囲までの発光を与える、海生生物Holothuria scabraの雌の性腺、すなわち卵巣組織から得た、無毒性のタンパク質性蛍光染料を含む生物活性のある半精製抽出物。
【請求項2】
天然蛍光として有用であり、以下の特徴を有する請求項1に記載の染料:
1. 非還元性の染料であり、
2. 合成化合物ではなく天然化合物であり、
3. 染料の粗抽出物の色は黄色がかったオレンジ色であり、
4. 部分的に精製した染料は昼光下、裸眼で見た場合に薄いオレンジ色がかった色であり、
5. 蛍光灯下で多色の色調を発光し、
6. 液体で存在し、
7. 70%エチルアルコールに可溶性であり、
8. 実験で使用するために70%アルコール溶液をさらに水で希釈することができ、
9. 負に帯電しており、
10. アルコール溶液のpHは6.8〜7.5の範囲であり、
11. 還元性蛍光体が存在せず、
12. 染料溶液はタンパク質性であり、
13. 染料は細菌である大腸菌に無毒性であり、
14. 染料はカキ卵子および精子などの真核細胞に無毒性であり、
15. 染料は細胞膜透過性であり、
16. 核膜に透過性であり、
17. クロマチンを染色し、
18. 染料溶液のTLCによりRf値が0.917、0.818、0.661および0.463の4つの化合物が示され、
19. 280nmでのUV検出器を用いたHPLCにおけるタンパク質の保持時間で、7つのピークが示され、
20. ピーク1の保持時間は2.1であり、その面積は116103であり、
21. ピーク2の保持時間は2.5であり、その面積は38205であり、
22. ピーク3の保持時間は3.7であり、その面積は7332であり、
23. ピーク4の保持時間は6.1であり、その面積は31924であり、
24. ピーク5の保持時間は6.8であり、その面積は535であり、
25. ピーク6の保持時間は7.6であり、その面積は3684であり、
26. ピーク7の保持時間は8.8であり、その面積は89653であり、
27. 205nmでのUV検出器によるHPLCにおけるペプチドの保持時間で、10個のピークが存在し、
28. 炭水化物を有し、
29. 糖タンパク質を有し、
30. 凝集性レクチン様の性質を誘発し、
31. 細菌である大腸菌を凝集させ、
32. 凝集した凝集塊は死滅せず、蛍光を示し、
33. 染料は精子をカキの卵膜に凝集させ、
34. 精子の媒精を促進し、カキ卵子の受精率を促進し、
35. 染料溶液は4℃で保管し、
36. 細胞膜に付着した後は、数日間蛍光性が継続され、
37. 細胞を染色した後は光脱色されず、
38. 染料は原核細胞の死滅細胞を染色せず、
39. 染料はカキの死滅細胞を染色せず、
40. 染料の蛍光は、発光生物由来の抽出物中のような分子の活性化に必要なエネルギーが得られない温度である-20℃で凍結した場合も変化せず、
41. 染料性色素は蛍光染料であり、分光光度計でUVおよび可視分光域の様々な波長で励起した場合に蛍光を発光し、
42. UV、可視分光分析で励起波長は351nm、580nm、720nmで最大であり、蛍光発光分光分析は351nmで励起した場合に400〜600nmであり、
43. 発光の最大値は450nmおよび550nmで2つのピークを有し、
44. 260nm〜280nmの範囲のUV電球を用いたUVライトボックスおよびゲルドキュメンテーションシステムでの、1:20000の希釈率の染料濃度に浸したワットマンフィルターno.1の物理的照合により青色がかった緑色の色調の蛍光色が発光され、
45. 染料は、落射蛍光顕微鏡の蛍光キューブのUV域と可視域との3種の波長で3種の有色蛍光を発光し、
46. 染料は、細胞膜に付着させた場合、落射蛍光顕微鏡の蛍光キューブのUV域と可視域との3種の波長で3種の有色蛍光を発光し、これらは染料単独の蛍光とは異なり、
47. 330nm〜385nmの範囲のUVキューブ下で染料溶液を励起すると、450nm〜470nmで青色発光の蛍光が生じ、
48. 450nm〜480nmの範囲のWBキューブ下で染料溶液を励起すると、510nm〜570nmで緑色発光の蛍光が生じ、
49. 510nm〜550nmの範囲のWGキューブ下で染料溶液を励起すると、610nm〜650nmでオレンジ色発光の蛍光が生じ、
50. 染料は、100×対物レンズで見た場合、落射蛍光顕微鏡の通常の透過照明電球下で黄色がかった灰色の色調を発光し、
51. 330〜385nmの範囲のUVキューブWU下で細胞膜に付着している染料を励起すると、470nm〜500nmで青色発光の蛍光が生じ、
52. 励起範囲450nm〜480nmのWBキューブ下で細胞膜に付着している染料を励起すると、570nm〜610nmで緑色発光の蛍光が生じ、
53. 励起範囲510nm〜550nmのWGキューブ下で細胞膜に付着している染料を励起すると、610nm〜650nmでオレンジ色発光の蛍光が生じ、
54. 細胞膜に付着している染料は、100×対物レンズで見た場合、落射蛍光顕微鏡の通常の透過照明電球下で黄色がかった灰色の色調を発光し、
55. 染料は1:400000倍の希釈範囲でも蛍光色を発光し、ならびに
56. 細胞が染色された後は染料の蛍光は非常に光安定性があり、直接光に長い間曝されても劣化せず、染料の蛍光は、発光生物由来の抽出物中のような分子の活性化に必要なエネルギーが得られない温度である-20℃で凍結した場合も変化しない。
【請求項3】
様々な励起波長での染料の多色発光が市販済みの蛍光色素顕微鏡染剤に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項4】
本発明の染料の青色蛍光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学における非放射性標識キットの構成成分として使用されているDAPI蛍光色素の同じ波長での励起による同じ色の発光に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項5】
可視域における前記染料の黄色蛍光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているオーラミンの同じ有色発光に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項6】
可視域における前記染料の黄色蛍光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているFITCの同じ有色発光に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項7】
オレンジ色の蛍光発光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているヨウ化プロピジウム蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項8】
オレンジ色の蛍光発光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているローダミン蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項9】
オレンジ色の蛍光発光が、生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分として使用されているTRITC蛍光色素のオレンジ色蛍光色に匹敵する、請求項1に記載の染料。
【請求項10】
染料が室温で安定であり、長い貯蔵寿命を有する、請求項1に記載の染料。
【請求項11】
前記染料の分子および放射性キットは室温で搬出することができる、請求項1に記載の染料。
【請求項12】
染料が単独で、現在の市販の少なくとも100種の異なる蛍光色素、すなわちDAPI、Hoechest 33258、Hoechest 33342、FITC、アクリジンオレンジ、オーラミン、ローダミン、TRITC、およびヨウ化プロピジウムなどの特徴を有する、請求項1に記載の染料。
【請求項13】
現在はフィコビリンタンパク質が使用されているすべての用途で使用することができるが、それとは異なり凍結した場合に染料の蛍光が失われない、請求項1に記載の染料。
【請求項14】
蛍光顕微鏡の明視野下、10×対物レンズ下で見た場合、青色がかった灰色の色調により細胞遺伝学的、細胞学的、および組織化学的なスライドの迅速なスクリーニングに有用かつ顕微鏡の余分な位相差付属部品の費用を倹約できる位相差効果が生じる、請求項1に記載の染料。
【請求項15】
通常の透過光顕微鏡の100×油浸対物レンズ下では、活動的に分割している卵割細胞の卵黄、核質およびクロマチンのタンパク質で、前者は茶色がかった黄色、後者は黄色、最後の細胞構成成分は紺色の色調の様々な染色を示す、請求項1に記載の染料。これは、細胞の様々な組織化学的構成成分で見られる効果の迅速なバイオアッセイで有用となり得る。
【請求項16】
蛍光色の発光がストークスの蛍光法則に従う、請求項1に記載の染料。
【請求項17】
コダック製フィルムを用いた顕微鏡写真により、落射蛍光下で青色蛍光などの隣接色発光波長の色調が示される、請求項1に記載の染料。
【請求項18】
コダック製フィルムを用いた顕微鏡写真により隣接色発光波長の色調が示される、たとえば落射蛍光顕微鏡下、顕微鏡写真で黄色蛍光を示した場合、緑色の色調も表れる、請求項1に記載の染料。
【請求項19】
落射蛍光顕微鏡の下、顕微鏡写真でオレンジ色蛍光色を示した場合、赤色の色調も表れる、請求項1に記載の染料。
【請求項20】
すべての蛍光の下で見た細胞遺伝学的スライドでは、染料以外の試料が存在しない背景色に対して細胞および細胞構成成分の対比染色効果が与えられる、請求項1に記載の染料。
【請求項21】
1:400,000倍以上の比に水で希釈した染料溶液により、様々な波長で6色の蛍光が与えられる、請求項1に記載の染料。
【請求項22】
1:400,000以上の比で希釈した染料溶液により、部分精製染料溶液であるか染色細胞であるかにかかわらず、3種の波長で6色の蛍光が与えられる、請求項1に記載の染料。
【請求項23】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、コーティング組成物およびインクの調製に有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項24】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、漏れ検出に有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、水中プローブに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、分子診断用の蛍光分子プローブin situハイブリダイゼーションキットに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、生化学、細胞生物学、免疫化学および分子生物学における非放射性標識および検出キットの構成成分として有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項28】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、免疫蛍光検出に有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項29】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、DIG標識したオリゴヌクレオチドプローブおよび抗DIG Fab断片の対比染色として有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項30】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、単色および多色フローサイトメトリー用途において単一細胞および多細胞の定量的蛍光に有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項31】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、氷点下温度の地域にある実地試験場で実験を実施するのに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項32】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、落射蛍光顕微鏡の蛍光色素染剤として有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、健康食品業界、化粧品業界、製薬および化学業界において生物汚染を素早く確認することに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、実験培養物中の生物汚染物質を素早く推定することに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項35】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、実地条件下で生物汚染因子を素早く確認することに有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、コリンエステラーゼの競合的阻害剤として有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、細胞透過性の染料組成物中で有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項38】
請求項1に記載の生物活性抽出物を、受精率エンハンサーとして有用な適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項39】
3種の波長で3色の蛍光を得るための、請求項1に記載の生物活性抽出物を1:20000の比の適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項40】
透過光下で細胞の様々な生化学的構成成分の位相差および組織化学的対比染色効果を得るための、請求項1に記載の生物活性抽出物を適切な添加剤と共に含む蛍光組成物。
【請求項41】
生物活性抽出物を希釈剤、分散剤または担体などの生理的にかつ化粧品として許容されるビヒクルと共に含むスキンケア組成物。
【請求項42】
海生生物の卵巣組織から得た蛍光染料を含む生物活性抽出物は、以下の用途のために使用される:
1. 様々な塗装、インク、織物における蛍光色の使用;
2. ポリマーを漂白および明色化するための蛍光染料の組成物;
3. 全スペクトル蛍光染料を用いた漏れ検出;
4. 自動化学計測システムにおける使用;
5. 墜落した航空機、救命クラフト、および装置、たとえばロケット弾の位置に目印を付けるため;
6. 水中プローブ;
7. 化粧品クリームおよびローションのクロマトフォア日焼け止め剤構成成分;
8. 分子診断学における蛍光in situハイブリダイゼーション用途のキット構成成分;
9. DNA、RNA、タンパク質および酵素を標識するための生化学、細胞生物学、免疫化学、および分子生物学の非放射性標識および検出キットの構成成分;
10. 免疫蛍光検出;
11. DIG標識したオリゴヌクレオチドプローブおよび抗DIG Fab断片の対比染色ならびに単一および多重フローサイトメトリーの用途;
12. 落射蛍光顕微鏡の蛍光色素染剤;
13. 健康食品業界、化粧品業界、製薬および化学業界において生物汚染を素早く確認するため;
14. 実験培養物中の生物汚染物質を素早く推定するため;
15. 実地条件下で生物汚染因子を素早く確認するため;
16. 凝集組成物;
17. 天然着色剤;
18. 6種の波長で3色の蛍光および透過光下で位相差効果を得るための、超高純度水中で1:20000の比の海生染料の生物活性組成物
19. 氷点下の温度地域で行う様々な蛍光用途のための染料;
20. 水産養殖業界において受精率を高めるため;
21. 細胞透過性の膜染料組成物のため;
22. 組織培養物において死滅細胞および生細胞を同定するため;
23. バイオセンサーにおける染料組成物のため;ならびに
24. 分子学的および微生物学的キットにおける染料組成物として。
【請求項43】
a) 海岸から材料を採取し、海水を交換し、機械的通気なしで終夜実験室のタンク中で維持するステップと、
b) ステップ(a)の動物を解剖し、雌の性腺を取り出すステップと、
c) 組織をホモジナイズせずに、70%エチルアルコールでステップ(c)の雌の性腺を少なくとも3回抽出するステップと、
d) 「染料のストック溶液」と呼ぶ蛍光染料を含む溶液を得るステップと
を含む、ナマコHolothuria scabraから天然蛍光染料を抽出する方法。
【請求項44】
染料を1:400,000倍以上の比に水で希釈し、これにより3種の励起波長で6色の蛍光が得られる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
染料の有色部分が負帯電しているタンパク質構成成分に付着している、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
染料を70%アルコールで9000倍に希釈し、さらに1:225,000倍〜1:400000倍以上の比で水中に卵子および細菌を含むものを、海水25〜50マイクロリットルあたり1マイクロリットル液滴として加えることにより、3種の励起波長で6色の蛍光が得られる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
真核細胞および原核細胞の生存に対する染料の無毒性を評価するために、1:40000、1:20000、1:10000、1:5000、および1:2500倍希釈の範囲の希釈液を使用することによってバイオアッセイを行う、請求項43に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図7a】
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【図8】
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【図8a】
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【図9】
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【図9a】
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【図10】
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【図10a】
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【図11】
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【図11a】
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【図12】
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【図12a】
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【図13】
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【図13a】
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【図14】
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【図14a】
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【図15】
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【図15a】
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【図16】
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【図16a】
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【公表番号】特表2006−504808(P2006−504808A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−580430(P2003−580430)
【出願日】平成15年3月24日(2003.3.24)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000070
【国際公開番号】WO2003/082989
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】