説明

非発泡性耐火塗料組成物

【課題】森林を保全し育成するために、石油系建築材料あるいは新建材を減少させ、防災から守る安全で安価な耐火木質材を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂例えばメラミン・ユリア樹脂、リン酸化合物例えばオルトリン酸、ホウ素化合物例えばホウ酸、ワキシーコーンスターチ、炭酸水素ナトリウムを混合した非発泡型耐火塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の塗料を木質材に塗布して難燃化あるいは耐火の仕様に製作するには、木質材に浸透させるか、あるいは注入する必要性があった。そのために、有機性の溶剤を用いて塗布注入をするが、平均で1.6mmしか浸透しないとの報告がある(米国農水省の1999年、Wood Handbook、14章、Wood Preservation、14−21頁)。この程度の注入では、耐火構造材には到底使用することが困難である。そこで、発明者は、発明の塗料は環境時においては一切、木質材の内部に注入されないが、火災時における火の温度を利用して、400℃前後から塗料が溶け始めて木質材の内部深くに自然に注入される性質をもつ塗料混合物を開発し、塗布だけで1時間耐火、及び不燃材料化(国土交通省の不燃材料認定)の非発泡性耐火塗料に成功した。
【背景技術】
【0002】
従来の耐火塗料は発泡性である。建築物、土木構築物等の構造物を火災から保護する目的で、火災時の温度上昇によって発泡層を形成し、基材の温度上昇を遅延させ、物理的強度の低下を抑制する発泡性耐火塗料が種々提案されている。
【0003】
発泡性は、温度上昇を遅延させ、物理的強度の低下を抑制する意味では意にかなっているが、塗料の性能だけでは長時間の耐火性に不十分であることと、また、国土交通省認定の不燃材料試験には合格しないという不利点が生じる。不燃材料試験に測定機「コーンカロリーメータ」を使用するが、試験体が10mm以上発泡してスパーク点火器に接触したら不合格となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の課題は、不燃材料の合格条件である発泡性を抑制することである。
【0005】
第2の課題は、塗料だけで、耐火基準である1時間をクリアーすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の課題である熱硬化性樹脂の発泡性である。メラミン樹脂及び尿素樹脂も発泡性である。しかし、請求項1に記載されている組成を行うことにより発泡性を抑制させることが可能となった。
【0007】
第2の課題である1時間耐火は、請求項1に記載されている組成を行うことにより可能となった。
【発明の効果】
【0008】
木質材に塗布するだけで、耐火構造材(30分、1時間)に、また不燃材料(20分間)に使用出来ることから、従来の工法よりも耐火材料、及び不燃材料が軽量となれる効果がある。これは作業人員の減少化にもなり、工事予算の縮小化となれる。
【0009】
当発明の耐火塗料非発泡型であることから不燃材料となれる。
【発明の実施するための形態】
【0010】
従来の難燃性塗料は、難燃性を満たすために有機溶剤を使用して塗料の浸透・注入を試みた。しかし、硬い木材(ハードウッド)には浸透・注入はほとんど不可能であり、柔らかい木材(ソフトウッド)では平均して1.8mmしか浸透・注入しない。また浸透・注入には石油系の有機溶剤か天然系のリモネン等の溶剤を用いるが、これらは引火性液体であり急性毒性物質でもあることから使用することは問題である。よって、最良と形態として、当発明では有機性溶剤を一切、使用しないものとした。
【0011】
当発明の耐火塗料は、環境時においては浸透も注入も不可能であるが、火災時の温度を利用する方法をとった。この方法が最良の形態であることが確認出来た。コーンカロリーメータによる試験では、400℃前後から塗料が溶け始めて木質材の内部深くに自然に注入されることが目視で確認出来た。同時に、不燃材料となれる20分の不着火も実現した。さらに、鉄板を切断する工事用エチレンガスを用いて800℃では1時間以上、1000℃では30分以上の不着火も目視で確認出来た。
【0012】
従来の発泡性耐火塗料は、鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する材料として、火災時の温度上昇によって発泡層を形成させることにより効果を求めているが、本発明の耐火塗料は、非発泡性でありながら、発泡性耐火塗料と同じ効果を得ることが出来る。
【実施例】
【0013】
発泡性テスト。
【表1】

燃焼テスト後の厚さは平均して約+2mmであった。2mmは、材料が高温により膨張することから、ほとんど発泡していないに等しい。
【0014】
燃焼テストは以下の通り。
コーンカロリーメータ(国交省不燃材料テスト機)を使用。
不燃材料の合格時間(20分間)に着火したかをテスト。更に合格基準である総発熱量をテストした。(総発熱量が8Mj/kg以下であれば合格。)
【表2】

総発熱量はいずれも8Mj/m2以下であることから、不燃材料のレベルに達した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
防火材料としては、外壁の不燃材料(20分間の不着火)、内装制限の準不燃材料(10分間の不着火)に利用可能である。従来の不燃・準不燃材料は、処理工程として、材料の1次乾燥、次に減圧・加圧注入処理を行い、更に2次乾燥を行うなど、処理日数が2〜4週間を要することと、処理費用が莫大である。当発明は、塗布するだけの工程であること、従来の塗布工程を使用することが可能であること、処理工程が簡単であること、更に処理費用の大幅な低減が可能となる。
【0016】
耐火構造材としては、従来の耐火壁、耐火野地板などの代替が可能である。従来の耐火野地板には硬質木片セメント板が使用されている。寸法が18x910x1820mmの耐火野地板は1枚の重さが34kgである。ちなみに木質材に非発泡型耐火塗料を塗布した場合の耐火野地板は25kgである。重さが3/4に減少することで大幅な費用の低減が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)100重量部に対して、(B)リン酸化合物20〜80重量部、(C)ホウ素化合物20〜80重量部、(D)ワキシーコーンスターチ1〜20重量部、(E)炭酸水素ナトリウム1〜20重量部を含む非発泡型耐火塗料組成物。
【請求項2】
請求項1の熱硬化性樹脂がメラミン・ユリア樹脂である非発泡型耐火塗料組成物。
【請求項3】
請求項1のリン酸化合物がオルトリン酸である非発泡型耐火塗料組成物。
【請求項4】
請求項1のホウ素化防物がホウ酸である非発泡型耐火塗料組成物。

【公開番号】特開2012−7137(P2012−7137A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157243(P2010−157243)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(501410757)日本不燃木材株式会社 (10)
【出願人】(595161773)
【出願人】(504193712)
【出願人】(503095723)
【Fターム(参考)】