説明

非発酵焼き菓子類用ミックス

【課題】イースト発酵して製造される焼き菓子類のような風味と食味を有し、且つ食感に優れた非発酵焼き菓子を簡便な手順で製造することができる焼き菓子類用ミックスの提供。
【解決手段】全ミックス中に発酵種粉末を0.1〜4質量%含有する非発酵焼き菓子類用ミックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルギーワッフルなどのイースト発酵して製造される焼き菓子類を、発酵させずに製造することができる非発酵焼き菓子類用ミックスに関する。詳細には、イースト発酵が不要でありながら小麦粉が発酵したような独特な好ましい風味や小麦粉本来の風味に富み、しかも口溶けがよいなど食感に優れる焼き菓子を簡単に製造することができる非発酵焼き菓子類用ミックスに関する。本発明はまた、当該焼き菓子類用ミックスを用いて得られた非発酵焼き菓子類に関する。
【背景技術】
【0002】
イースト発酵して製造される焼き菓子類は、小麦粉に、油脂、卵、牛乳、砂糖などの原料にイーストを添加し、次いで混捏した生地を醗酵させ、この生地を格子模様などを刻んだ2枚の鉄板に挟んで、あるいは天板の上で焼き上げたり、カップなどに充填してオーブンで焼成した焼き菓子である。その一つとして2枚の鉄板に挟んで焼き上げたものは、ベルギーのものが有名であることから、「ベルギーワッフル」とも呼ばれている。しかしこれらは、生地の混捏と発酵に手間と時間が掛かり、店舗や家庭などでななかなか手軽に作れない。このため、イースト発酵させるかわりに膨張剤を用いた焼き菓子類用ミックスが提供されているが、発酵した生地を用いたものと比べると、風味や食味に劣るだけでなく、口溶けなど食感も十分なものとはいえないという問題があった。
【0003】
一方、特許文献1には、サワードゥの手法を応用した粉末乃至顆粒状のベーカリー製品用の風味改良剤が記載されており、ドーナツ類やビスケット、クッキーに適用して風味改良効果を発揮することが記載されている。
また、特許文献2には、パネトーネサワードゥを用いた中種を長時間発酵させた生地から発酵ワッフルを製造すること、この発酵ワッフルは風味と食感がよく、保存性が向上することが記載されている。
さらに、特許文献3には、凍結乾燥した中麺を用いたベーカリー製品の製造方法が記載され、ベーカリー製品としてケーキ類やワッフル、ドーナツなどが例示されている。
【0004】
しかし、上記の技術は、いずれも、生地の混捏工程と発酵工程を必要とするものであるため、製造に手間と時間がかかるという上記問題を解決できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−74536号公報
【特許文献2】特開2000−37158号公報
【特許文献3】特開2009−195196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小麦粉が発酵したような好ましい風味と良好な食味とを有し、且つ食感に優れた焼き菓子を簡便な手順で製造することができる、非発酵焼き菓子類用ミックスを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく種々研究を重ねた結果、全ミックス中に発酵種粉末を0.1〜4質量%含有するミックスを用いて生地を調製すれば、当該生地を発酵させずに焼き上げても、小麦粉が発酵したような好ましい風味、良好な食味、及び優れた食感を有する焼き菓子類が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、全ミックス中に発酵種粉末を0.1〜4質量%含有する非発酵焼き菓子類用ミックスにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、当該ミックスを用いて製造された非発酵焼き菓子類により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスを用いれば、生地を発酵させずとも、発酵菓子のように小麦粉が発酵したような独特な好ましい風味や小麦粉本来の風味を有し、且つソフトな歯ごたえと口溶けがよいなどの優れた食感の焼き菓子類を、簡単に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスは、全ミックス中に、その乾燥質量を基準として、発酵種粉末を0.1〜4質量%、好ましくは0.2〜2質量%含有する。発酵種粉末の量が0.1質量%未満であると、味気ないなど風味・食味の点で十分ではなく、且つ食感も粉っぽく、口溶けにも劣るようになり易く、他方、発酵種粉末の量が4質量%を超えると、発酵種の風味が強すぎて、焼き菓子としての風味が低下するだけでなく、酸味やエグ味が感じるようになるため好ましくない。
【0011】
上記発酵種粉末の種類としては、従来、製パンに用いられている発酵種の粉末であれば、いずれも使用することができる。発酵種としては、例えば、各種サワー種(小麦サワー種、ライサワー種、ルヴァン種)、ホップス種、パネトーネ種、酒種が挙げられるが、好ましくはサワー種である。当該発酵種粉末は、市販されているものを使用してもよく、又は常法に従って製造することもできる。
【0012】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスには、上述の原料に加えて、さらにデキストリンを添加・配合してもよい。添加・配合量は1〜10質量%の範囲が好ましく、3〜7質量%がより好ましい。
あるいは、本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスには、上述の原料に加えて、さらにα化澱粉を添加・配合してもよい。添加・配合量は1〜15質量%の範囲が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。α化澱粉としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉及びこれらの化工澱粉をα化したものが好ましく、α化タピオカ澱粉、α化ワキシーコーンスターチがより好ましい。
このように、本発明のミックスにさらにデキストリンやα化澱粉を上記の量で配合することにより、上記発酵種粉末との相乗効果により、得られた焼き菓子において小麦粉発酵のような風味や小麦粉本来の風味が向上し、食感においても、粉っぽさがより感じられなくなり、口どけも良く、イースト発酵させたものにより近い風味や食感となるため、好ましい。
【0013】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスの原料としては、上記に挙げた原料の他に、一般的な焼き菓子類用ミックスに配合される原料、例えば、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)、小麦全粒粉、ライ麦粉、米粉などの穀粉類、及び/又は上記α化澱粉以外のその他の澱粉類;大豆蛋白質、小麦グルテン、卵粉末、脱脂粉乳などの蛋白素材;動植物油脂、粉末油脂などの油脂類;食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、等が挙げられる。上記穀粉類としては、小麦粉、米粉が好ましい。
上記ミックス中、上記α化澱粉以外のその他の澱粉類や穀粉類の配合量としては、焼き菓子類の種類によって異なるが、通常は40〜80質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。
【0014】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスの形態は、焼き菓子類用ミックスとして通常提供される形態であればよく、例えば、粉末、顆粒、液体、等が挙げられるが、粉末及び顆粒が好ましい。
【0015】
上記本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスを用いて生地を調製し、これを発酵させずに焼き上げることにより、本発明の非発酵焼き菓子類を製造することができる。例えば、本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスが粉状である場合、これを適量の水、又は必要に応じて卵、糖類、乳、若しくはその他の材料等と混合して生地を調製し、これを発酵させることなくそのまま焼き上げることによって、小麦粉が発酵したような風味や小麦粉本来の風味に富み、しかもソフトな歯ごたえと口溶けがよいなどの優れた食感とを有する焼き菓子類を、簡単に製造することができる。
【0016】
本発明の非発酵焼き菓子類用ミックスとしては、ワッフル、焼きドーナツ、ホットケーキ、パンケーキ、ビスコッティ、クグロフ等に対応した配合のミックスを挙げることができる。
【0017】
一例として、本発明によるワッフル用ミックスとしては、ミックス100g中に:小麦粉35〜55g、好ましくは40〜50g;発酵種粉末0.1〜4g、好ましくは0.2〜2g;デキストリン1〜10g、好ましくは3〜7g;α化澱粉1〜15g、好ましくは5〜10gを含有し得、さらに残りの成分として、糖類、油脂類、膨張剤、食塩、蛋白質(卵粉末や乳成分)等をあわせて30〜60gを含有するミックス粉が挙げられる。
このミックス粉100gに対し、水70〜100gを添加し、必要に応じてさらに糖類、油脂類、膨張剤、食塩、蛋白質(卵、乳等)を添加、混合することによって、ワッフル用の生地を調製することができる。この生地を、発酵させることなく、そのまま型に流し入れ焼き上げることにより、本発明のワッフルが製造される。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0019】
実施例1〜6及び比較例1〜3
下記の表1に示す組成を有するミックス粉100gに、水60gおよび全卵25gを添加し、ついでホイッパーを用いて60秒間ミックスして、焼き菓子用生地を得た。この生地を、発酵させることなく、ワッフル用プレートに適量流し込み、185℃で3分間加熱して、焼き菓子(ワッフル)を製造した。
【0020】
試験例1
上記実施例1〜6及び比較例1〜3の焼き菓子について、10名のパネラーにより、風味・食味及び食感を下記の表2に示す評価基準により評価した。得られた結果の平均を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
実施例7〜10
下記の表3に示す組成を有するミックス粉を用いた以外は、試験例1と同様にして、焼き菓子(ワッフル)を製造した。
【0024】
試験例2
上記実施例7〜10の焼き菓子について、風味・食味および食感を表2に示す評価基準により評価した。得られた結果の平均を表3に示す。なお、比較例1の結果を表3に再掲する。
【0025】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ミックス中に発酵種粉末を0.1〜4質量%含有する非発酵焼き菓子類用ミックス。
【請求項2】
デキストリンを1〜10質量%含有する請求項1記載のミックス。
【請求項3】
α化澱粉を1〜15質量%含有する請求項1又は2記載のミックス。
【請求項4】
前記非発酵焼き菓子類が非発酵ワッフルである請求項1〜3のいずれか1項に記載のミックス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のミックスを用いて製造された非発酵焼き菓子類。

【公開番号】特開2012−175937(P2012−175937A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41363(P2011−41363)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】