説明

非白人系人種における炎症後色素沈着の減少と共にざ瘡の処置を目的とする、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せを含む皮膚科学的組成物

本発明は、非白人系人種における炎症後色素沈着、ケロイド瘢痕、ざ瘡色素沈着過剰斑および嚢胞性病変の減少と共にざ瘡の処置を目的とする、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せを含む皮膚科学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非白人系人種(non-Caucasian population)における炎症後色素沈着(post-inflammatory hyperpigmentation)、ケロイド瘢痕(keloid scarring)、ざ瘡色素沈着過剰斑(hyperpigmented macules)および嚢胞性病変(cystic lesion)の減少と共にざ瘡の処置を目的とする、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せを含む皮膚科学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尋常性ざ瘡は、多形性ざ瘡(polymorphic acne)としても知られ、非常によく見られる。尋常性ざ瘡には4つの段階が含まれる。但し、必ずしも全ての段階が必要ということではない:
-段階1は、面皰を伴うざ瘡に相当し、多数の開いたおよび/または閉じた面皰と小嚢腫によって特徴づけられる。
-段階2は、軽度から中度の丘疹膿疱性ざ瘡である。これは、開いたおよび/または閉じた面皰と小嚢腫だけでなく、紅色丘疹および膿疱が存在することにより特徴づけられる。主に顔面に影響を与え、ほとんど瘢痕を残さない。
-段階3は、より深刻な丘疹面皰性ざ瘡(papulocomedonienne acne)であり、背中、胸、および肩に広がる。より多くの瘢痕を伴う。
【0003】
ざ瘡は、全ての人種および民族の個体に影響を与える。ざ瘡の病理は多因子的であり、同じ因子、すなわち、皮脂性小胞閉塞(sebaceous follicle obstruction)、皮脂腺のホルモン刺激による過剰な皮脂生産、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)の増殖が、おそらくは一連の皮膚のタイプにまたがって関与している。この病理により走化性因子および炎症促進性媒介物質が産生され、次いで炎症反応が起こり、続けて濾胞破裂(follicular rupture)と真皮への炎症拡大が生じ、炎症性病変が形成されることとなる。
【0004】
全ての患者におけるざ瘡を制御する全体的な目標は、副作用が最小限でありながら、できるだけ多くの病理的因子に有効に働く処置を選択することである。この目標を達成するための合理的手段として、複数の薬剤を同時に処置に使用すること(併用療法)が推奨されてきた。有色人種(skin of color)(メラニン高含量)におけるざ瘡療法では、このような皮膚タイプではざ瘡続発症に関する違いがあること、特に濃い色の皮膚では炎症後色素沈着(PIH)およびケロイド瘢痕の出現またはリスクが、より頻繁に生じることのために、独特な試みが提供される。
【0005】
最近、ざ瘡処置のための一定の用量を組み合わせた製品が利用可能となっている。この製品には、レチノイド(アダパレン)と抗微生物薬(過酸化ベンゾイル[BPO])とが組み合わされて含有されている。アダパレンなどのレチノイドは、これらが過角化および面皰形成性(comedogenesis)の主要因子を標的としており、抗炎症性および抗線維芽細胞性であることから、独特の適性があると考えられる。アダパレン自体は、抗面皰形成性、面皰溶解性(comedolytic)、および抗炎症特性を有している。
【0006】
BPOなどの抗微生物薬は、追加的な利点を提供する。BPOは、抗菌作用と角質溶解作用を有する酸化剤であり、P.アクネ菌の細菌集団を減少させる活性を有することから、ざ瘡治療に使用されている。これまで、微生物のBPOに対する耐性は記述されていない。加えてBPOの非臨床的および臨床的安全性プロファイルは、十分に確立されている。
【0007】
併用療法の利点にかかわらず、皮膚刺激性の増加が懸念されている。有色人種が刺激に対して多かれ少なかれ感受性を有するかは確立されていない。しかし、皮膚の色が濃い患者では、原因、すなわち疾患または医原性の原因とは独立して、皮膚刺激によって、PIHが引き起こされ得る。この問題は、数名の医者による、有色人種は治療における刺激に対する感受性がより高いとの考えから導かれたものである。ざ瘡に関連するPIHは、皮膚の炎症に対する反応によって生じるために、炎症を最小限にし、刺激性と乾燥性を減少させることも、有色人種におけるざ瘡処置の主な目的である。ここに、刺激性が最小限である一方で、ざ瘡に対して依然として有効であり、処置の早期介入と刺激性との均衡を図って有色人種の対象を処置するときの忍容性を高める製品が必要とされている。
【0008】
傷の治癒は、自然な生物学的現象であり、修復および再生過程により、病変を修復することが可能である。
【0009】
傷の治癒の速度および質は、罹患している生物体の全身状態、傷の病因、傷の状態および場所、感染の存在もしくは非存在、および治癒の障害に対する素因を引き起こすもしくは引き起こさない遺伝的因子に依存する。治癒は、瘢痕に至る過程である。この過程は、炎症性病巣(inflammatory focus)の結合性(もしくは線維性)組織化としても知られている。細胞性および体液性機構による炎症反応は、炎症性肉芽の形成を誘導し、この肉芽が徐々に再生芽(または新鮮な肉芽)に変換され、これが治癒の第1段階を構成している。新鮮な肉芽は、一過的に新たに形成された結合組織であり、有意な変化を受けて、確実に瘢痕性線維組織へ変換される。
【0010】
炎症は、原因の如何(感染性、物理的、化学的もしくは虚血性)を問わず、何らかの組織病変によって誘因される血管性、細胞性および体液性反応の組合せで構成された動的過程である。これによって、侵襲性物質および細胞破片の除去と、損傷組織の修復とが可能になる。
【0011】
治癒過程では、4つの主要なフェーズが生じる。
-初期血管/滲出フェーズ:血管の能動性うっ血、浮腫、炎症部位への白血球の遊走が含まれる;
-炎症性肉芽の形成フェーズ:形成された肉芽が再生芽に変換される。このフェーズは新鮮な肉芽形成としても知られる;
-炎症の清浄(即ち、壊死組織、微生物、存在し得る異物および浮腫液の除去)フェーズ、ならびに上皮形成(即ち、上皮細胞の増殖および治癒の終焉)フェーズ;
-治癒の適正フェーズ:新鮮に形成された肉芽から瘢痕性線維組織(または瘢痕)への変化を可能にする。
【0012】
通常、傷は10日後に治癒する。瘢痕は、60日目から開始される生理学的肥厚性フェーズを経る。このフェーズの間に、瘢痕は厚みが増し、結合性を有するようになり、隣接する組織は退縮する。この肥厚性フェーズは、実質的に1年後に完了する。その後は、瘢痕は、もはや赤くまたは硬くならず、痛みを引き起こさず、平坦になる。
【0013】
しかしながら、一部のケースでは、治癒が同じようには起こらず、病理的瘢痕が形成される。その場合、「治癒障害」という用語が使用される。このような障害は、慣習的には治癒の崩壊と定義されている。これは、2つの現象を一緒にしたものである:
-潰瘍:この現象は、傷が中空となる治癒の異常であって、肉芽組織が再形成されない。肥厚性または萎縮性瘢痕は、特に外傷から生じるものであるが、尋常性ざ瘡もしくは水痘などの皮膚病理からも生じるものであり、中空領域またはアイスピック(ice-pick)状の瘢痕である。これらの形態も治癒の異常に基づくものである。
-肥厚性瘢痕、およびケロイド(または「ケロイド状瘢痕(keloidal scars)」):この現象は、肉芽組織が異常な形態で過剰増殖する過程である(Treatment of scars: a review、Alster et al.、Ann.Plast.Surg.、1997、Oct、39(4)、418-32頁)。
【0014】
従って、治癒障害は、通常の治癒過程とは非常に異なる病理を一緒にしたものである。
【0015】
本発明は、2種類の病理的瘢痕、すなわち「肥厚性」瘢痕と、「ケロイド」または「ケロイド状」瘢痕に関する。
【0016】
肥厚性またはケロイド状のいずれにしろ、これらの瘢痕は、高強度および/または長期の初期の過形成(hyperplasic)フェーズを共通の起点として有している。このフェーズでは、異常に密な線維組織が真皮内に生じる。病理的瘢痕は、大きく、膨張しており、赤く、硬く、かゆみがある。
【0017】
これらの瘢痕の長期的な変化は、肥厚性瘢痕とケロイド状瘢痕との区別を、以下に基づいて可能にする:
-肥厚性瘢痕は、長期間かけて自発的に改善する(平均して2または3年)。この瘢痕は、当初の部位に限定して残る。
-ケロイド状瘢痕の方は、自発的に改善する傾向を何ら示さず、永続的に留まり、実際には、時間と共にさらに悪化する。さらに、このタイプの瘢痕は、当初の瘢痕部位を越えて広がり、隣接する健常な組織に影響を与える。
【0018】
これらの病理的瘢痕の形成の根本となる原因は未だほとんど知られていない。但し、これらの開始を支持する複数の因子がある。
【0019】
病理的瘢痕形成の危険因子の中でも、以下が言及され得る:
-人種:黒色人種またはアジア系人種の人間は、白色系人種の人間よりも、ケロイドを生じ易い。
-年齢:子供で高頻度である。肥厚性瘢痕は高齢者では稀である。
-身体の場所:身体の一部の場所は、病理的瘢痕を発生し易い、例えば、胸骨、首、耳たぶまたは顔面下部などが挙げられる。
【0020】
ケロイドの病巣内切除または切除治療は、(再び病変を誘導しないように)特にこれらの病理的瘢痕を治療するためのものである。
【0021】
肥厚性瘢痕およびケロイド状瘢痕の処置が、外科的なもののみでないことは明白である。肥厚性瘢痕の原因は明らかになっていないため、瘢痕に対する簡単な外科的改変後には、再発の危険性がある。瘢痕の大きさが非常に大きいときは、外科的処置によって確実にその大きさを小さくすることはできるが、できるだけ速やかに、以下の2つの方法を単独でまたは組み合わせて、処置を補うことが必要である:
-「圧力療法(pressure therapy)」:特注の圧迫弾性衣料で、または圧迫を伴うシリコーン衣料を用いて実施される。およそ6ヶ月の間、継続的に(昼夜)適用される場合に非常に効果的であるが、常に達成されるものではない。
-「皮質療法(corticotherapy)」:長期的に有効なコルチゾン製品を瘢痕の内側に注入する。これらの瘢痕は通常非常に硬いために、製品を圧力下で瘢痕内に注入する最適な方法は、無針デバイス(「ダーモジェット(Dermo Jet)」)を使用することである。
【0022】
インターフェロンを使用する治療法も存在するが、現在、どのような治療法を用いても、病変の完全な消滅はまれにしか達成されない。
【0023】
炎症後色素沈着(PIH)は、皮膚の黒ずみ、ならびに人間の体に斑点または大きなパッチとして現れる変色を引き起こす。これは、通常であれば茶色の色素を皮膚一面に均一に産生する細胞が猛烈に働きだし、非常に多くのメラニンを産生することによる。これは、皮膚の損傷内のまたは皮膚の損傷に対する炎症反応により生じる。過剰のメラニンが、皮膚の上層(上皮)で産生される場合、色素沈着する色は濃く陰った茶色である。過剰のメラニンが、皮膚の下層(真皮)で産生される場合、灰色または青色の変色が視認し得るようになる。
【0024】
PIHは全ての皮膚のタイプで生じ得るが、アフリカ系、アジア系、ラテン系および土着インド系の背景を有する人々に多く見られ、男性と女性とでは同等に影響を受け得る。PIHにより影響を受ける皮膚の領域は、先に炎症または損傷があった領域に対応する。元の問題が過ぎた後でも皮膚が濃く変色したままであるときは、PIHに罹っている。最も一般的な原因は、擦過傷、火傷、切り傷または打撲傷などの損傷である。あらゆる種類の皮疹がPIHを引き起こし得る(皮疹の例として、湿疹、乾癬、バラ色粃糖疹、扁平苔癬および真菌感染が挙げられる)。通例の状態、例えばざ瘡または面皰が、茶色い皮膚を有する個体におけるPIHの極めて一般的な原因となっている。また、PIHは、日焼け、ケミカルピール、削皮術、レーザーおよび凍結療法(液体窒素処置法)などの外科的または美容的手段に起因する皮膚に対する損傷によっても引き起こされ得る。
【0025】
また、多くのケースで、PIHが、経時的に、自然に色褪せることを知ることも重要である。しかし、過程の速度を上げ得る処置も利用可能である。
【0026】
PIHを有する患者にとって、自然に形成される色つやに皮膚を戻すための最も一般的な方法は、ヒドロキノン含有製品を使用する方法である。ヒドロキノンは、化学的美白剤(chemical lightning agent)で、濃いしみに直接適用される。皮膚科学者であれば、ヒドロキノンが、対象の皮膚に適しているかを判断可能である。多くの皮膚科学者が、ヒドロキノンはPIHに対する最良の処置法であると考えている。ヒドロキノンは、メラニン色素の産生を司る酵素を遮断することによって作用する。メラニンの形成を遮断することで、色の濃い領域は薄くなる。但し、濃いしみの清澄化(clearing)が示されるまでに、最大で6カ月にわたりヒドロキノン投薬の利用が必要となり得ることを認識しておくことが重要である。
【0027】
PIHの処置に関しては、レチンA(Retin-A)も、茶色い皮膚を有する個体で試験されてきた。レチノイドは、ざ瘡とPIHを有する患者におけるざ瘡とPIH易発性領域に、夜に適用される。
【0028】
アゼライン酸は、ざ瘡とPIHの両方に対する、別の調剤処置である。アゼライン酸は、抗炎症性、抗菌性、および皮膚美白(skin lightening)特性を有する。このクリームの少量を、ざ瘡とPIH易発性皮膚に、1日に1〜2回適用する。ヒドロキノン製品に対する忍容性が無い個体に対して、アゼライン酸は、特に有用である。濃いしみの改善が見られ得るのは、6か月後である。
【0029】
グリコール酸製品は、処方箋なしで入手可能であり、PIHに対する処置で使用される。これらの製品は、皮膚の最上層とそれに付随している濃いしみを穏やかに剥離(除去)することによって作用する。多くの製品で、グリコール酸が含有されており、洗浄剤、ローション、ゲル、トナーおよびクリームなどがある。製品に含まれるグリコール酸の濃度は、5〜20%の範囲である。
【0030】
尋常性ざ瘡は、全ての民族の皮膚タイプの個体で生じるものであるが、人種に基づく特別の有病率は判っていない。しかし、皮膚の色が濃い患者では、炎症後色素沈着(PIH)とケロイド状瘢痕が高頻度で発生することが知られている。また、ヒスパニック系患者では、丘疹病変、ざ瘡色素沈着過剰斑(AHM)、および嚢胞性病変が高頻度で存在すること(それぞれ74.5%、52.7%および25.5%)が分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】FR2837101
【特許文献2】WO03/055472
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Treatment of scars: a review、Alster et al.、Ann.Plast.Surg.、1997、Oct、39(4)、418-32頁
【非特許文献2】Chellquist EM and WG Gorman、Pharm.Res.、1992、第9巻、1341-1346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従って、これらの損傷の続発を防ぐために、ざ瘡を有する非白人系患者に対して、早期に有効な処置を行うことが、必要不可欠である。アダパレンとBPOとの組合せは、それらの単独療法およびビヒクルと比較して、早くて1週目で、許容され得る忍容性プロファイルと共に、病変数の減少という顕著な利点を示すことが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
驚くべきことに、本発明者らは、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せにより、ざ瘡の効率のよい処置が可能となり、特に病変に基づく炎症後色素沈着(PIH)の発生が減少すること、そして病理的瘢痕と色素沈着瘢痕の適応性を改善することを発見した。
【0035】
本発明は、ざ瘡を有するヒスパニック系患者における解析を通して、アダパレン-BPOが病変(特に炎症性)の減少に、良好な安全性プロファイルを伴って、迅速に効果的に作用することを示す。このことは、PIHと瘢痕に対する高いリスクを有するこの人種において特に重要である。
【0036】
従って、本発明の主題は、非白人系人種、好ましくは有色人種の患者、例えば、ヒスパニック系、アジア系、皮膚の色が濃い患者におけるざ瘡の処置を目的とする医薬の調製のための、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの使用である。好ましい実施形態において、このようなアダパレンと過酸化ベンゾイルの組合せは、炎症後色素沈着、病理的瘢痕、優先的にはケロイド瘢痕、ざ瘡色素沈着過剰斑または嚢胞性病変から選択される病理または障害の少なくとも1つの徴候もしくは症候を減少もしくは防止もしくは回避する。
【0037】
本発明によれば、「病理的瘢痕」という用語は、肥厚性瘢痕およびケロイド状瘢痕を意味すると理解される。
【0038】
有利には、本発明による医薬は、局所適用を目的とするものである。
【0039】
また本発明による医薬は、生理学的に許容し得る媒体も含む。生理学的に許容し得る媒体とは、すなわち、頭皮、粘膜、毛髪、体毛および/または目を含む皮膚に適合し、皮膚科学組成物を構成することができる媒体である。
【0040】
本発明は、化合物6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸(以下、本明細書では「アダパレン」と称する)とその塩に関する。この化合物は、ナフトエ酸とレチノインとの誘導体であり、抗炎症特性を有する。
【0041】
アダパレンは、Differin(登録商標)という商標名で、0.1%の重量濃度で、「アルコールローション」溶液、水性ゲルおよびクリームの形態で販売されている。これらの組成物は、ざ瘡を処置することを目的とするものである。特許出願FR2837101は、ざ瘡処置のための、0.3%の重量濃度のアダパレン組成物を記載している。
【0042】
さらに特許出願WO03/055472は、アダパレンと過酸化ベンゾイル(BPO)を含む安定な薬学的組成物を記載している。
【0043】
「アダパレン塩」という用語は、薬学的に許容可能な塩基、特に無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア、または有機塩基、例えば、リジン、アルギニンもしくはN-メチルグルカミンと形成された塩を意味する。また「アダパレン塩」という用語は、脂肪アミン、例えば、ジオクチルアミンおよびステアリルアミンと形成された塩も意味する。
【0044】
「アダパレンまたはその塩と過酸化ベンゾイルとの組合せ」という表現は、アダパレンまたはその塩と過酸化ベンゾイルとの両方を含む単一の組成物を意味する。
【0045】
過酸化ベンゾイルの有効性は、皮膚と接触したときの分解による。実際、分解中に生じるフリーラジカルの酸化特性は、好ましい効果をもたらす。過酸化ベンゾイルの最適な効力を維持するために、使用前、即ち、保存中の分解を防ぐことも重要である。
【0046】
但し、過酸化ベンゾイルは、不安定な化合物であり、最終製品に配合することが困難である。過酸化ベンゾイルの溶解性と安定性は、Chellquistらによって、エタノール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール400(PEG400)と水との種々の混合物において試験されている(Chellquist EM and WG Gorman、Pharm.Res.、1992、第9巻、1341-1346頁)。
【0047】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%のアダパレンを含み、好ましくは0.01〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%のアダパレン、より一層好ましくは0.1重量%または0.3重量%のアダパレンを含む。
【0048】
また組成物は、過酸化ベンゾイル(BPO)も含む。本発明の組成物において、過酸化ベンゾイルは、組成物の全重量に対して1〜10重量%、より特定的には2〜7重量%、より好ましくは2.5〜5重量%の濃度で使用される。
【0049】
過酸化ベンゾイルは、遊離形態、または任意の多孔性媒体に吸着もしくは吸収された封入化形態で使用され得る。例えば、MISCROSPONGEDなどの多孔性ミクロスフィアからなるポリマーシステムに封入されている過酸化ベンゾイルで、Cardinal Health社によりMicrosponges P009A Benzoyl peroxideという名称で販売されているものを挙げることができる。
【0050】
本発明に使用し得る全ての薬学的組成物は、0.01%〜2%、好ましくは0.05%〜0.5%、優先的には0.1%〜0.3%のアダパレンと、0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%のBPO、より好ましくは2%〜5%のBPO、優先的には2.5%のBPOとを含むことができる。
【0051】
全ての百分率は、組成物の全重量に対する重量比で示す。
【0052】
さらに、上記組成物は、予想される用途のタイプにおいて通常存在する全ての構成要素を含むことができる。
【0053】
本発明による医薬は、多数の様々な添加成分を含むことができる。特に、添加成分は、吸収剤、研磨剤、抗ざ瘡剤、消泡剤、抗微生物剤、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝剤、キレート剤、着色料、化粧用収斂剤、化粧用殺生物剤、外用鎮痛薬、膜形成剤、芳香成分、乳白剤、可塑剤、保存料、他の脱色剤、皮膚軟化剤、皮膚保護剤、溶媒、溶解剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、日焼け防止剤、増粘剤(水性または非水性)、保湿剤、金属イオン封鎖剤などであり得る。
【0054】
これらの添加成分は、本発明による医薬中に、医薬の全重量に対して、0.001〜20重量%の量で存在し得る。
【0055】
当業者が、可能性のある添加化合物および/またはその量を、本発明による医薬の有利な特性が予想される添加によって完全にまたは実質的に減少されないように、注意して選択するであろうことは明白である。
【0056】
本発明による医薬は、局所適用に通常使用される任意の薬学的形態をとり得る組成物である。例えば、水性分散液、水性もしくは油性懸濁液、水性ゲル、液体、半固体もしくは固体の無水もしくは脂溶性エマルジョン(ローション、クリームもしくは軟膏)であって、乳化剤の存在下もしくは非存在下に、水相中に脂肪相を分散して得られるもの(O/W)もしくはその逆(W/H)、またはマイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微粒子もしくはイオン性および/もしくは非イオン性の小胞性分散液の形態であり得る。
【0057】
従って、好ましい実施形態において、本発明による医薬は、皮膚科学分野において通常使用される任意の薬学的投薬形態で提供され得る。好ましくは、医薬は、エマルジョン(ローション、クリーム、乳化剤を含まないクリーム)、懸濁液またはゲルの形態で提供される。
【0058】
さらに、本発明による医薬には、クリームにおける他の標準的成分を含めることができ、当業者によく知られた方法で製造することができる。
【0059】
有利には、本発明による医薬は、ブチル化ヒドロキシトルエン、セチルアルコール、クエン酸、グリセロール、グリセリルステアレート、マグネシウムアルミニウムシリケート、メチルグルテス-10(methyl gluteth-10)、メチルパラベン、PEG-100ステアレート、プロピルパラベン、精製水、メタ重亜硫酸ナトリウム、ステアリン酸、およびステアリルアルコールより選択される少なくとも1つの不活性成分を含む。
【0060】
有利には、本発明による医薬は、実施例1で提示されている、Galdermaより販売されている水性ゲルEpiduo(登録商標)に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】炎症後色素沈着に対するベースライン(ITT-LOCF)からの中央値の変化%を示す。
【図2】a)紅斑、b)剥れ(scaling)、c)乾燥、およびd)灼熱感/刺激感のいずれかの徴候/症候を1週目で経験しなかった患者の%を、フィッツパトリック(Fitzpatrick)皮膚タイプ(I〜III対IV〜VI)に基づき、階層化して示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
(実施例)
(実施例1)
水溶性ゲルEpiduo(登録商標)の組成物
ゲルには、全重量に対する重量%として、以下が配合されている:
- 2.5%のBPO、
- 0.1%のアダパレン、
- 0.10%のEDTA二ナトリウム;
- 4.00%のグリセロール、
- 4.00%のプロピレングリコール、
およびまた、好ましくは、
- 0.05%のドキュセートナトリウム、
- 0.20%のポロキサマー124、
- 4.00%のナトリウムアクリロイルジメチルタウレート共重合体、イソヘキサデカン、およびポリソルベート80;
- NaOH、pHが5になるために十分な量。
【0063】
(実施例2)
アダパレン-過酸化ベンゾイルの組合せは、ビヒクルと比較して、ヒスパニック系人種におけるざ瘡の処置に迅速な効果を示す
この実施例の目的は、Epiduoが、炎症後色素沈着(PIH)とケロイド状瘢痕が高い割合で発生する皮膚の色が濃い(非白色系とも称する)患者の小グループにおいて、非常に効果的にざ瘡を処置することを実証することである。特に、ヒスパニック系患者は、丘疹病変、ざ瘡色素沈着過剰斑(AHM)および嚢胞性病変の頻度がより高い(それぞれ、74.5%、52.7%および25.5%)ことが分かっている。
【0064】
従って、これらの損傷の続発を防ぐために、ざ瘡を有するヒスパニック系患者には、早期に効果的な処置を行うことが必要不可欠である。アダパレン-BPOの組合せは、早くて1週目で、許容され得る忍容性プロファイルと共に、それらの単独療法およびビヒクルと比較して病変数が減少するという顕著な利点を示すことが分かっている。この小グループの解析は、ヒスパニック系におけるビヒクルと比較したアダパレン-BPOの利点を評価することを目的とした。
【0065】
材料と方法:データは、3つの無作為抽出、二重盲検対照試験(合計3855人の対象)から、まとめた。アダパレン-BPOの有効性と安全性は、12週間の1日1回の処置の期間にわたって、ビヒクルの有効性および安全性と比較した。各病変の種類(全体、炎症性および非炎症性)、有効性(ベースラインからの病変数の変化%)、およびIGA成功率(調査者による全体的な評価、成功率は「清澄/ほとんど清澄」として評価された対象の%として定義される)を、ヒスパニック系小グループについて評価した。安全性は、忍容性を用いて評価し、有害事象は各試験における訪問時ごとに評価した。
【0066】
結果および結論:ヒスパニック系小グループは、大部分がフォトタイプIV型中度ざ瘡を有し、18歳未満である215人の対象を含んでいた(112人がアダパレン-BPOグループ、103人がビヒクルグループ)。炎症性病変において、アダパレン-BPOは、ベースラインからの中央値の変化%として、ビヒクルよりも著しく高い有効性を、早くも1週目(P<.05)および全ての試験の訪問時において示した(-58.1%対-32.5%、または12週目において、ビヒクルよりも25.6%のさらなる減少、P<.001)。2週目で、この効果のほぼ半分が既に得られていた。また12週後、アダパレン-BPOは、非炎症性病変数および全病変数を顕著に減少させた(それぞれ、25.7%および29.3%の利点、P<.001)。さらに、アダパレン-BPOグループにおける対象の約4分の1が、「清澄/ほとんど清澄」と評価された[ビヒクルより17%高い成功率(27.7%対10.7%)、P=.003]。アダパレン-BPOでは、ビヒクルと比較して、処置に関連する有害事象(AE)の数が多かったが(それぞれ対象の16.1%対6.8%)、ほとんどが乾燥肌であり、AEの重症度は軽度から中度であって、試験を中断させるものはなかった。一過性の刺激が、アダパレン-BPOで処置した患者の一部で、生じたが(主に1週目)、忍容性の最も深刻なスコアは全て1未満(軽度)に留まった。
【0067】
ざ瘡を有するヒスパニック系患者におけるこの解析は、アダパレン-BPOが、病変(特に炎症性)を減少させることにおいて、良好な安全性プロフィールで、迅速に効果的に作用することを実証した。このことは、PIHおよび瘢痕に対して高いリスクを有するこの人種にとって特に重要である。
【0068】
(実施例3)
炎症後色素沈着の評価
炎症後色素沈着を、この評価に適格な43人の対象(24人はアダパレン-BPOグループ、19人はビヒクルグループ)に対して評価した。ITT集団に対する各訪問時の炎症後色素沈着の解析を、以下の表Iおよび図1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
図1に示すように、再び、アダパレン-BPOによって、ビヒクルと比較した12週目以降の炎症後色素沈着の減少が示された。アダパレン-BPOグループを支持する統計学的に有意な差は、24週目で得られた(-13.19%対+28.07%、p<0.020)。そのように24週後、PIHは、Epiduo(登録商標)の使用により減少の傾向を示したが、ビヒクルの使用では増加した(p<0.02)。
【0071】
(実施例4)
異なる皮膚タイプ分類および人種もしくは民族間での刺激の発生および重症度の相違の可能性の調査
アダパレン-BPOゲルの皮膚刺激のメタ解析は、異なる皮膚タイプ分類および人種もしくは民族間での刺激の発生および重症度の相違可能性を調査するために行った。合計で3,855人の患者を含む3つの無作為抽出、二重盲検、ビヒクルおよびプラセボ対照臨床試験により、全ての皮膚タイプのざ瘡の処置におけるアダパレン-BPOゲルの安全性と有効性が確立された。この事後メタ解析は、3つの無作為抽出試験それぞれのアダパレン0.1%-BPO2.5%処置部門に割り当てられた患者からの忍容性データに基づいている。
【0072】
方法
3つの試験は全て、同様の目的と設計を有していた。試験は、多施設、無作為抽出、二重盲検、並行群間、活性-およびビヒクル-対照試験とした。試験1は、米国、プエルトリコおよびカナダにおける60施設で行った。試験2は、米国、カナダおよびヨーロッパにおける61施設で行い、試験3は米国における36施設で行った。アダパレン0.1%-BPO2.5%の組合せゲルの有効性と安全性を、アダパレン単独療法、BPO単独療法およびゲルビヒクルと比較した。参加者を、アダパレン-BPO組合せゲル、アダパレンゲル単独療法、BPOゲル単独療法またはゲルビヒクルに、無作為抽出した。有効性と安全性の評価は、ベースラインと1、2、4、8および12週目で行い、紅斑、剥れ、乾燥、および刺激感/灼熱感に関する0(無し)〜3(重度)の尺度での調査者による評価を含んでいた。
【0073】
3つの試験に登録している患者は、あらゆる人種の男性もしくは女性で、12歳以上であり、顔面(鼻を除く)に、20〜50の炎症性病変、30〜100の非炎症性病変、ならびに試験1および試験2では0個の嚢腫と1個以下の小結節(試験3では0個の嚢腫と0個の小結節)を有していた。
【0074】
このメタ解析に含まれる全ての試験は、ヘルシンキ宣言を基礎とする倫理的原則および医薬品の臨床試験の実施基準に従って行い、かつ、現地の法的規制を順守して行った。試験は、治験審査委員会もしくは倫理委員会の審理を受け、承認を得た。あらゆる試験手順の実施前に、全ての参加者から書面でのインフォームドコンセントを得た。
【0075】
統計解析
このメタ解析では、3つの試験それぞれにおいて、アダパレン-BPO処置グループに無作為抽出された対象を含めた。3つの試験の全てで最も深刻な刺激が現れたのは1週目と判断されたため、1週目の評価のみをこのメタ解析に含めた。各試験において、またメタ解析の組合せ試験において、以下の小グループの間で比較を行った:1)フィッツパトリック皮膚タイプI〜III型を有する対象とフィッツパトリック皮膚タイプIV〜VIを有する対象、2)白人系対象と非白人系対象、3)白人系対象と黒人系対象とヒスパニック対象(3元解析)。
【0076】
紅斑、剥れ、乾燥、および刺激感/灼熱感についての各忍容性スコアは、カテゴリー変数として扱った。コクラン-マンテル-ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)テストを使用して、個別試験の解析における試験位置、および組合せ試験メタ解析における試験位置および試験数を制御しながら、小集団間の統計学的有意性を決定した。
【0077】
さらに、CMHテストを使用して、3つの臨床試験の組合せによりバイアスが持ち込まれるかを調査して感度解析を行った。各試験および組合せ試験解析で処置した患者のグループ間の差異を調査するために、潜在的に交絡する変数を制御するCMHテストを使用して4つのグループ間の(あるとすれば)関係をテストした。
【0078】
全ての試験は両側性であり、0.05レベルを有意性の判断に使用した。多重度の調整は行わなかった。
【0079】
結果(図2)
合計で983人の患者は、3つの試験で、少なくとも1用量のアダパレン-BPOを受けた。メタ解析集団に含まれるのは909人の患者であった。その理由は、1週目に施設に来なかった74人の患者(7.5%)(例えば、連絡がとれなくなったもの、または個人的理由、処置の不具合、有害事象の発生のために試験から退いたもの)を解析に含めなかったためである。患者の大部分は白人(73%)、11%は黒人、11%はヒスパニック人であり、患者の73%がフィッツパトリック皮膚タイプのI〜IIIであり、37%がフィッツパトリック皮膚タイプのIV〜VIであった。
【0080】
3つの試験の間の人口統計学的変数に、統計学的に有意な差はなく、従って、これらの試験を組み合わせてメタ解析を行うことが可能であった。一般的な線形モデルを使用し、忍容性の評価を従属変数として使用し、他の人口統計学的変数および試験数を独立変数として使用してデータをモデル化するとき、人種およびフィッツパトリック皮膚タイプについての係数は、有意ではなかった(P=NS)。
【0081】
フィッツパトリック皮膚タイプによる皮膚刺激スコア
4つの皮膚刺激スコアおよびフィッツパトリック皮膚タイプのそれぞれの間の関係を、個々の試験および組合せ試験解析のそれぞれについて示す。4つのカテゴリーのそれぞれにおいて、45%以上の患者が刺激の徴候/症候を経験しなかった(図2)。刺激を経験した患者においては、その報告のほとんどが軽度であり、刺激は初期に生じ、処置の間に解決した(図示せず)。
【0082】
紅斑の重症度の分布における、フィッツパトリック皮膚タイプI〜IIIの対象とフィッツパトリック皮膚タイプIV〜VIの対象との比較の間での統計学的に有意な差異が、組合せ試験解析(P<.001)で認められ、フィッツパトリック皮膚タイプIV〜VIの患者の方が、紅斑が「無し」とのスコアがより多く報告され(59%対45%)、軽度と評価された紅斑の報告は少なかった(30%対40%)。同じ統計学的な有意差が、試験1(P<.001)で認められたが、試験2または3では認められなかった。
【0083】
剥れ、乾燥、および刺激感/灼熱感の分布については、フィッツパトリック皮膚タイプI〜IIIの対象とフィッツパトリック皮膚タイプIV〜VIの対象を比較したとき、3つの個別の試験または組合せ試験メタ解析のいずれにおいても統計学的差はなかった。唯一の例外は、試験3における乾燥であった(P=.017)。
【0084】
民族性による皮膚刺激スコア
4つの皮膚刺激スコアのそれぞれと人種もしくは民族との間の関係を、組合せ試験解析で示した。人種または民族グループの間での有意な差異が、4つのパラメータ全ての分布で見られた。
【0085】
白人系対象を非白人系対象と比較したとき、非白人系患者の方が、紅斑が「無い」とのスコアがより多く報告され(63%対45%)、紅斑が軽度または中度と報告された数はより少なく、軽度(29%対39%)、中度(7%対15%)であった(P <.001)。この統計学的な有意差は、試験1(P<.001)で認められたが、試験2または3では認められなかった(図示せず)。白人系人種と黒人系人種およびヒスパニック系人種とを3元比較(3-way comparison)で比較するとき、組合せ試験メタ解析により、紅斑に関して、黒人系患者が白人系患者またはヒスパニック系患者より軽度の事象が少なく、「無し」との評価が多いことについての統計学的有意差も示された(P<.001)。
【0086】
さらに、剥れの重症度の分布において、3つの試験を組み合わせた結果より、剥れに関して、白人系グループが非白人系対象より「無い」という評価の患者が少なく、軽度の剥れを有する患者が多いことについての統計学的な有意差が示された(P <.001)。3つの個別の試験のいずれにおいても、統計学的に有意な差異は示されなかった(図示せず)。白人系人種と黒人系人種およびヒスパニック系人種を比較するとき、組合せ試験メタ解析によって、剥れに関して、黒人系小グループは他の2つの小グループと比較して「無い」という評価の患者は多く、軽度の剥れを有する患者は少ないことについての統計学的に有意な差が示された(P=.005)。
【0087】
乾燥については、白人系対象が非白人系対象より、乾燥について「無い」との評価を有する患者が少なく、軽度の乾燥を有する患者が多かった(組合せ試験解析に対してP<.001)。この統計学的な有意差は、試験1(P<.001)で認められたが、試験2または3では認められなかった(図示せず)。結果を、白人系人種対黒人系人種対ヒスパニック系人種で比較するとき、乾燥に関して、白人系グループは黒人系グループまたはヒスパニック系グループのいずれよりも「無い」との評価を有する患者が少なく、軽度の乾燥を有する患者が多かった(組合せ試験メタ解析に対してP<.001)。
【0088】
刺激感/灼熱感の重症度の分布において、白人系対象と非白人系対象との比較において、3つの試験いずれにおいても、または3つの試験の組合せにおいても、統計学的に有意な差は無かった。結果を、白人系人種と黒人系人種とヒスパニック系人種で比較するとき、組合せ試験解析において、黒人系対象は、軽度の灼熱感/刺激感が少なく、中度の灼熱感/刺激感が多いことの統計学的有意差が明らかになった(P=.003)。
【0089】
結論
3つの無作為抽出臨床試験のメタ解析は、異なるフィッツパトリック皮膚タイプまたは人種の対象間で、アダパレン-BPOゲル処置の忍容性が異なっているかを判断するために行った。有色人種系対象が、白人系対象よりも、多くの局所的ざ瘡処置に対して感受性が高いと信じられていることに反して、このメタ解析の結果は、アダパレン-BPO処置における乾燥、剥れおよび刺激感/灼熱感に関して、フィッツパトリック皮膚タイプI〜IIIの対象と皮膚タイプIV〜VIの対象とを比較するときの統計学的有意差を示さなかった(P=NS)。紅斑の評価だけが、薄い皮膚タイプのフィッツパトリック皮膚タイプは濃い皮膚タイプより悪くなることについて統計学的な差異を示した(P<.001)。この紅斑についての知見は、濃い色の皮膚では軽度から中度の紅斑は見えにくいという事実によって一部説明し得るけれども、この結果は、アダパレン-BPO処方物と、高いフィッツパトリック皮膚タイプで高い発生割合の刺激の徴候または症候があることとは関係がないことを示唆している。
【0090】
結果を人種または民族によってさらに階層化するとき、紅斑、乾燥および剥れに関して、非白人系人種は、白人系人種より、「無し」とのスコアが多く、「軽度」もしくは「中度」とのスコアが少なかった(P<.001);刺激感/灼熱感では有意な差はなかった(P=.571)。黒人系人種およびヒスパニック系人種では、4つの徴候または症候のそれぞれにおいて、白人系人種より「無い」との有意なスコアが多く示された(P≦.005)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非白人系人種におけるざ瘡の処置を目的とする医薬の調製のための、アダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せの使用。
【請求項2】
処置が、炎症後色素沈着、ケロイド瘢痕、ざ瘡色素沈着過剰斑および嚢胞性病変から選択される病理または障害の少なくとも1種の徴候または症候を減少または防止させるものである、請求項1に記載のアダパレンと過酸化ベンゾイルとの組合せの使用。
【請求項3】
医薬が、局所適用に適した形態の組成物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
過酸化ベンゾイルが、医薬の全重量に対して、1〜10重量%、有利には2〜5重量%、より有利にはおよそ2.5重量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
アダパレンが、医薬の全重量に対して、0.001〜20重量%、有利には0.005〜1重量%、より有利にはおよそ0.1〜0.3重量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
医薬が、ゲル、エマルジョン、ローションの形態であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
医薬が、全重量に対する重量百分率で以下の組成を有する水性ゲルを含む組成物の形態であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用:
- 2.5%のBPO、
- 0.1%のアダパレン、
- 0.10%のEDTA二ナトリウム、
- 4.00%のグリセロール、
- 4.00%のプロピレングリコール
およびまた、好ましくは、
- 0.05%のドキュセートナトリウム、
- 0.20%のポロキサマー124、
- 4.00%のナトリウムアクリロイルジメチルタウレート共重合体、イソヘキサデカンおよびポリソルベート80。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518920(P2013−518920A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552342(P2012−552342)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051580
【国際公開番号】WO2011/098391
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】