説明

非相溶性ポリマーと荷電粒子とに基づく被覆材料

本発明は、少なくとも1種のポリマー(P1)、固相においてポリマー(P1)と非相溶性である少なくとも1種のポリマー(P2)、及び/又は固相においてポリマー(P1)と非相溶性である架橋剤(V)を含有する被覆材料に関する。ポリマー(P1)及び/又は(P2)は、被覆材料が硬化する際に共有結合を形成することより反応する少なくとも1つの官能基(a)を含む。被覆材料は、<1μmの平均径(D)を有し、且つ、平均粒径(D)と平均粒子厚さ(d)との間の平均比D/dが>50である0.1〜30質量%の荷電無機粒子(AT)を含むが、質量%は、被覆材料の不揮発分に対するものである。本発明は、更に、飛石に対する耐性があり、且つ、基材に直接塗布される防錆層と、充填層と、好ましくはラッカープライマー及び最終クリアラッカー層から成るコーティングラッカーの最終層とから成るOEM複合層であって、少なくとも1つの層が上述の被覆材料から形成されるOEM複合層の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属基材上でストーンチップ耐性のあるコーティングの供給は、自動車製造の分野で特に重要である。サーフェイサー又は耐ストーンチッププライマーは、一連の要件に準拠する。故に、硬化後のサーフェイサー層は、より詳しくは多くの衝撃に対して高いストーンチップ耐性をもたらし、同時に防食層への、より詳しくはカチオン電着コート(略して電気コート)及びベースコートへの効果的な付着、約20〜35μmの層厚さでの良好な充填性(基材の構造の隠蔽)、最終クリアコートの文脈における良好な外観をもたらす。その上、とりわけ環境下地材上への適切な被覆材料は、好ましくは有機溶媒が少ないか、若しくは非常に実質的に有機溶媒を含まない。
【0002】
サーフェイサーのための被覆材料は既知であり、例えばEP−A−0788523及びEP−A−1192200に記載されている。特に比較的小さな層厚さでストーンチップ耐性を確保することが意図されるサーフェイサーのためのバインダーとしての水希釈性ポリウレタンが、その中で記載される。しかしながら、ストーンチップ試験における曝露の際、ストーンチップ耐性が良好であり、換言すれば損傷の例が比較的少ない数であるが、それにもかかわらず、OEM層系(防食層(より詳しくは電気コート)/サーフェイサー/ベースコート/クリアコート)における従来技術のサーフェイサーは、しばしば、OEM層系における無制御の亀裂伝搬の結果として保護されていない金属基材が曝露される塗膜上の損傷パターンを示し、その後金属と電気コートとの間の界面での層間剥離を示す。
【0003】
WO−A−01/04050は、充填剤における層間距離を広げるために有機化合物で修飾された良好なバリア性を有する水性被覆材料用無機アニオン性又はカチオン性層状充填剤を開示するものであるが、前記有機化合物は、少なくとも4個の原子により分離される少なくとも2個のイオン基を有する。用いられるカチオン性充填剤は、二重層状水酸化物、例えば、より詳しくはヒドロタルサイト型であってよい。WO−A−01/04050に記載される被覆材料は、気体及び液体に対して非常に良好なバリア性を有するコーティングのために使用され、前記充填剤は、硬化作業に影響を及ぼさない。OEM層系における衝撃曝露後の損傷パターンを改善するための、より詳しくは曝露基材の表面積を減少させるための被覆材料の使用は、知られていない。
【0004】
また、ポリマーの相形態がナノ粒子の添加に影響され得るということは、科学的刊行物からも既知である。例えば、N.Hasegawa et al.(Polym.Bull.51(2003),77−83)及びR.Krishnamoorti et al.(J.Chem.Phys.115(2001),7166、同書7175)は、鋳型としての層状ケイ酸塩粒子の存在下でのブロックコポリマーの微小ドメインの三次元配列の制御を報告している。G.He et al.(J.Polym.Sci.Part B:Polym.Phys.44(2006),2389)は、粒子数の関数として、粒径と、ポリマー成分に対する粒子表面の親和性とを含む、粒子の存在下での二成分ポリマー混合物の相挙動をモデル化した。K.Yurekli et al.(Macromolecules 36(2003),7256)により、ポリスチレンとポリビニルメチルエーテルとから構成されるモデル系におけるスピノーダル分離挙動に対する異なるアスペクト比を有する層状ケイ酸塩の影響が分析された。現在まで記載された全ての系は、それらの分子量分布に関して定義されたポリマーを有する二成分系である。かかるモデルポリマーは、ただ辛うじて合成的に製造され得るものであって、その均質な一次構造(モノマー単位の配列)のため、OEM層系用被覆材料として不適切である。
【0005】
WO−A−2005/052077は、とりわけ、官能基を有するバインダー樹脂と少なくとも2個の官能基を有する架橋剤とを含む膜形成成分を含むサーフェイサー層を製造するための被覆材料を開示するものであって、その被覆材料は、塗布及びその後の硬化の後、硬化した前記層において双連続相形態を形成する。これは、好ましくは、膜形成成分において、バインダー樹脂として使用されるポリウレタン成分に加えて、前記ポリウレタン成分と非相溶性である水分散性ポリマー成分を使用することにより達成される。前記ポリマー成分の非相溶性は、Flory及びHugginsの格子モデルによる相互作用パラメータχ(カイ)と、前記相互作用パラメータと相関し得るポリマー成分のヒルデブランドによる溶解度パラメータδの差とで記載される。WO−A−2005/052077に記載の被覆材料は、OEM層系におけるサーフェイサー層として硬化した後に改善した損傷パターンを有する。しかしながら、サーフェイサー層のストーンチップ耐性の更なる改善と、とりわけ損傷パターンの更なる改善との必要がある。その上、WO−A−2005/052077による硬化層における分離相の双連続形態の確立は、バインダーの相互作用パラメータχ(カイ)の熱力学パラメータのみに依存しているわけではない。Flory及びHugginsによるモデルは、特定の相互作用(例えば水素結合や、イオン性誘引又はイオン反発)のないポリマーに限定される(Paul J.Flory,Principles of Polymer Chemistry,Cornell University Press(New York),1953)。水希釈性塗料系を配合するために使用される通り(例えばEP−A−0788523及びEP−A−1192200参照)の、水素結合を形成し得るN−H基とイオン形成基とを有するポリウレタンの場合、両方の相互作用型が期待される。周知のように、セグメント化ポリウレタンにおける水素結合は、硬質ウレタン含有セグメントの微小ドメインの形成につながる(The Polyurethanes Book,Wiley,2002−ISBN0470850418)。G.Wilkes及びA.Aneja(Polymer 44(2003),7221)は、セグメント化型ポリウレタンを使用して水素結合の非存在下でも硬質微小ドメインを形成することができることを示すことができた。また、非相溶性ポリマーのスピノーダル分離が温度の関数であることも既知である。例えば、スピノーダル分離を受け、且つ、室温で非相溶性であるポリマー混合物は、より高い温度で相溶性であり得、均質相を形成し得るか(前記系は、いわゆるUCST=上部臨界完溶温度を示す)、若しくはその逆である(前記系は、LCST=下部臨界完溶温度を示す)。WO−A−2005/052077に記載されるサーフェイサーは、相挙動がFloryによるエンタルピー相互作用パラメータによりただ不十分に記載され得るポリマー混合物を含み、その上、微小複合物を特徴とし得る着色塗料系に配合され、即ち、高い顔料対バインダー(=ポリマー混合物)比でマイクロメータ規模で顔料粒子を含む。かかる系の膜の得られた光学特性は、その幅広い適用性、例えば実質的にベースコートやクリアコートを除外する。更に、粒子の存在により、更なる物理パラメータ(例えば浸透関連流体力学効果)に応じて、二成分ポリマー系のスピノーダル分離が妨げられ得るか(例えば、非可動性非中性粒子、即ち1種のポリマー成分に親和性を有する粒子が移動相界面に対して熱力学的障壁を構成する)、若しくは促進され得る(粒子表面がより高い親和性を有する相に可動性非中性粒子が移動する)ことは、A.Balasz and V. Ginzburg et al.(J.Polym.Sci.Part B:Polym.Phys.44(2006),2389及びJ.Chem.Phys.115(2001),3779)による理論的研究から既知である。マイクロメータ規模で存在し、且つ、非可動性粒子と考えることができるWO−A−2005/052077の顔料は、微小複合物において機械的観点から強化性成分としてのみ更に作用し、即ち、例えば、増加した弾性係数として、又は、増加した引張強度として測定され得る剛性の増加につながる。多くの用途にプラスのこの性質は、ストーンチップ耐性の改善に対してあまり十分に有益ではないが、その理由は、材料に侵入する発射体の場合、耐性の増加(=材料の強度の増加)によるその侵入深さの減少が唯一の重要な要素でないためであり、別のものが、発射体の侵入の間に転置される材料の靭性、即ち、早発の亀裂形成や、塗料材料の剥離(層間剥離)につながる無制御の亀裂伝搬が生じることなく導入される運動エネルギーを放散させるその能力を増加させる。例えば、D.Gersappe(Phys.Rev.Lett.89(2002),058301)は、粒子が、ポリマーの運動と同等の時間尺度でポリマーマトリックスにおいて可動性であり得る場合、得られたポリマー材料の靭性を増加させることができることを示した。B.Finnigan et al.(Macromolecules 38(2005),7386)による研究は、セグメント化ポリウレタンと層状ケイ酸塩とから構成されるナノ複合物において、より大きな非可動性粒子(大きなアスペクト比を有するケイ酸塩のタクトイド)が、局地化された方法で機械的応力を集中させ、しかるに前記材料の早発の機械的故障につながる隣接するマトリックス内に空洞を生じさせることを更に示した。上記の従来技術の全ての系は、衝撃に曝露される基材に対してとりわけ薄層として又は層系で、とりわけOEM層系で塗布される場合、衝撃曝露における改善を必要とする再現可能な損傷パターンを有する。
【0006】
先行技術に鑑みて、本発明に対処が委ねられる課題は、硬化後に、容易に制御可能で、且つ、限定された層形態を有する被覆材料を提供することである。被覆材料、好ましくは生態学的に有利な水性被覆材料を主成分とするものは、著しく改善した損傷パターン、とりわけ金属と防食層との間の界面でのOEM塗料系の層間剥離の著しい減少、故に衝撃曝露後の曝露された基材表面積の著しい減少を伴うストーンチップ耐性コーティングに好ましくは使用可能であるべきである。
【0007】
驚くべきことに、ポリマー(P1)及び/又は(P2)が被覆材料の硬化の間に反応して共有結合を形成する少なくとも1個の官能基(a)を有する少なくとも1種のポリマー(P1)、固相においてポリマー(P1)と非相溶性である少なくとも1種のポリマー(P2)、及び/又は固相においてポリマー(P1)と非相溶性である架橋剤(V)と、被覆材料の不揮発性成分に対して0.1〜30質量%の、平均粒径(D)(非円形粒子の場合、粒径は、粒子の最も長い領域の対角線に相当する)が<1μmであり、且つ、平均粒子厚さ(d)に対する平均粒径(D)の平均D/d比が>50である荷電無機粒子(AT)と、を含む被覆材料が、顕著な方法で本発明の目的を達成することが明らかにされた。
【0008】
また、直接基材に塗布される防食層と、サーフェイサー層と、ベースコートと、最終クリアコートとから成る耐ストーンチップOEM層系の製造方法であって、少なくとも1つの層が本発明の被覆材料から形成される製造方法も明らかにされた。
【0009】
本発明に必須の成分として、本発明の被覆材料は、ポリマー(P1)及び/又は(P2)が被覆材料の硬化の間に反応して共有結合を形成する少なくとも1個の官能基(a)を有する少なくとも1種のポリマー(P1)、固相においてポリマー(P1)と非相溶性である少なくとも1種のポリマー(P2)、及び/又は固相においてポリマー(P1)と非相溶性である架橋剤(V)と、被覆材料の不揮発性成分に対して0.1〜30質量%の、平均粒径(D)(非円形粒子の場合、粒径は、粒子の最も長い領域の対角線に相当する)が<1μmであり、且つ、平均粒子厚さ(d)に対する平均粒径(D)の平均D/d比が>50である荷電無機粒子(AT)と、を含む。
【0010】
ポリマー(P1)は、固相においてポリマー(P2)及び/又は架橋剤(V)と非相溶性であり、即ち、(P1)は、固体混合物において(P2)及び/又は(V)と熱力学的平衡で相界面を形成する。
【0011】
2つのポリマーの間の相溶性を記載することに対するヒルデブランドによるアプローチによれば、相互作用パラメータχ(カイ)の記載は、結合エネルギー密度、又は蒸発量のエンタルピーと混合物成分のモル体積との商から導かれ得るポリマー成分の溶解度パラメータδの差により可能である。かかる溶解度パラメータδは、ポリマー混合物成分の間のエンタルピー相互作用だけを考慮し、成分(P1)と(P2)又は(P1)と(V)の二成分ポリマー混合物の分離のための好ましい臨界値は、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2の、ポリマー(P1)のヒルデブランドによる溶解度パラメータδ(P1)とポリマー(P2)のδ(P2)及び/又は架橋剤(V)のδ(V)との差の大きさ[δ(P1)−δ(P2)及び/又はδ(V)]として定義され得る(また、WO−A−2005/052077も参照)。
【0012】
適切なポリマー(P1)及び(P2)は、原則として、非相溶性である全てのポリマーである。ポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエポキシド及び/又はポリアクリレートの群から選択され、特に好ましくはポリウレタン及び/又はポリエステルである。ポリマー(P1)及び/又は(P2)は、被覆材料の硬化の間に反応して共有結合を形成する少なくとも1個の官能基(a)を有する。
【0013】
官能基(a)の反応は、放射線により及び/又は熱的に誘発され得る。
【0014】
放射線に反応可能な基(a)は、一般に、化学線に対する曝露により反応性になり、且つ、好ましくは、それらの種類の他の活性化された基と共に、共有結合の形成を伴う反応を開始することができる基であり、これらの反応は、フリーラジカル機構及び/又はイオン機構に従って進行する。適切な基の例は、単結合C−H、単結合又は二重結合C−C、C−O、C−N、C−P又はC−Siであり、好ましくは二重結合C−Cである。本発明の一実施形態において、放射線架橋性基(a)は、好ましくはそれ自身と反応する。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態において、官能基(a)の反応は、熱的に誘発され、前記基(a)は、それ自身と、即ち他の基(a)及び/又は好ましくは相補性官能基(b)と反応する。官能基(a)と更に相補性官能基(b)との選択は、一方では、ポリマー(P1)及び/又は(P2)の製造中、更に、被覆材料の製造、保存、塗布の間にいかなる望ましくない反応も開始するべきではない、より詳しくは早発な架橋が生じないという考えにより導かれ、他方で、架橋が生じる温度範囲により導かれる。
【0016】
それ自身と反応する基(a)の例としては、以下:メチロール基、メチロールエーテル基、N−アルコキシメチルアミノ基、及び、より詳しくは、アルコキシシリル基を挙げることができる。
【0017】
基(a)及び相補性官能基(b)の発明的に好ましい組み合わせの例としては、以下:ヒドロキシル基(a)と、官能基(b)として酸性基、酸無水物基、カルバメート基、非エーテル化又はエーテル化メチロール基、及び/又は非ブロック又はブロックイソシアネート基;アミノ基(a)と、官能基(b)として酸性基、酸無水物基、エポキシ基及び/又はイソシアネート基;エポキシ基(a)と、官能基(b)として酸性基及び/又はアミノ基;及びメルカプト基(a)と、官能基(b)として酸性基、酸無水物基、カルバメート基及び/又はイソシアネート基を挙げることができる。本発明の特に好ましい一実施形態において、相補性官能基(b)は、以下で記載される架橋剤(V)の成分である。
【0018】
更に詳しくは、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はエポキシ基が好ましい基(a)である。基(a)として、ヒドロキシル基が特に好ましく、その場合、DIN EN ISO 4629によるポリマー(P1)及び/又は(P2)のOH数は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150である。
【0019】
官能基(a)は、当業者に既知の方法で、適切な分子構成要素の組込みによりポリマー(P1)及び/又は(P2)に導入される。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリマー(P1)及び/又は(P2)、好ましくは(P1)及び(P2)は、水分散性ポリマー(WP1)及び/又は(WP2)であり、とりわけ、水分散性のポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエポキシド、及びポリアクリレートから成る群から選択され、水分散性のポリウレタン及び/又はポリエステルがとりわけ好ましい。
【0021】
本発明の意味における水分散性とは、水相におけるポリマー(WP1)及び/又は(WP2)が、好ましくは<500、より好ましくは<200、最も好ましくは<100nmの平均粒径を有する凝集体を形成するか、或いは分子的に分散した溶液であることを意味する。ポリマー(WP1)及び/又は(WP2)で構成される凝集体のサイジングは、ポリマー(WP1)及び/又は(WP2)上に親水基を導入することにより既知の方法で達成され得る。水分散性ポリマー(WP1)及び/又は(WP2)は、好ましくは、1000〜100000ダルトン、より好ましくは1500〜50000ダルトンの質量平均分子量Mw(基準としてポリスチレンを使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィにより決定可能)を有する。
【0022】
好ましい水分散性ポリウレタン(WP1)及び/又は(WP2)は、例えばDE−A−3545618又はDE−A−4005961に記載される種類の構成要素から製造され得る。好ましくは、アニオンを形成し得る基がポリウレタン分子中に組み込まれるが、これらの基により、それらの中和の後、ポリウレタン樹脂が水に安定して分散され得ることが確保される。アニオンを形成し得る適切な基は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基である。DIN EN ISO 3682による水分散性ポリウレタン(WP1)及び/又は(WP2)の酸価は、好ましくは10〜80mgKOH/g、より好ましくは20〜60mgKOH/gである。アニオンを形成し得る基は、好ましくは、アンモニア、アミン及び/又はアミノアルコール(例えばジエチルアミン及びトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリン及び/又はN−アルキルモルホリン)を使用して中和される。官能基(a)として、ヒドロキシル基を使用することが好ましく、その場合、DIN EN ISO 4629による水分散性ポリウレタン(WP1)及び/又は(WP2)のOH数は、好ましくは10〜200であり、より好ましくは15〜150である。
【0023】
特に好ましい水分散性ポリウレタン(WP1)及び/又は(WP2)は、ビスイソシアナト化合物、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、TMXDI、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイルイソシアネート)、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼンと、アニオンを形成し得る化合物、とりわけ2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸との混合物と好ましくは反応してポリウレタンが得られるヒドロキシ官能性ポリエステル前駆体から形成される。場合により、ポリウレタンは、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%の相当量の使用するヒドロキシル基に対応するポリオール、好ましくはトリオール、より好ましくは1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンの部分的使用により分枝状形態で構成される。ヒドロキシ官能性ポリエステル前駆体は、好ましくは、例えばDE−A−3636368又はDE−A−4005961に記載される通りのジオール及びジカルボン酸から構成される。芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの混合物の使用が特に好ましく、その場合、ジカルボン酸及び/又はジオール混合物に対して10〜90モル%、好ましくは20〜80モル%は、少なくとも6個の炭素原子から成る少なくとも1個の脂肪族側基を有するジカルボン酸及び/又はジオールから成る。
【0024】
ポリウレタンの水分散性は、好ましくは中和可能な基の全体に対して80〜100%の中和度で、好ましくはアミンで、より好ましくはジエタノールアミンでアニオン形成が可能な基を中和することにより達成される。
【0025】
好ましい水分散性ポリエステル(WP1)及び/又は(WP2)は、例えばDE−A−3636368又はDE−A−4005961に記載される種類の構成要素から製造され得る。好ましくは、アニオンを形成し得る基がポリエステル分子中に組み込まれるが、これらの基により、それらの中和の後、ポリエステル樹脂が水に安定して分散され得ることが確保される。アニオンを形成し得る適切な基は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基である。DIN EN ISO 3682によるポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは10〜100mgKOH/g、より好ましくは20〜80mgKOH/gである。アニオンを形成し得る基は、好ましくは、アンモニア、アミン及び/又はアミノアルコール(例えばジエチルアミン及びトリエチルアミン、ジメチルアミノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モルホリン及び/又はN−アルキルモルホリン)を使用して同様に中和される。官能基(a)として、ヒドロキシル基を使用することが好ましく、その場合、DIN EN ISO 4629による水分散性ポリエステルのOH数は、好ましくは10〜200であり、より好ましくは20〜150である。
【0026】
特に好ましい水分散性ポリエステル(WP1)及び/又は(WP2)は、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオール及びポリオール、好ましくはトリオール、好ましくは1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンの混合物との混合物で構成されるヒドロキシ官能性ポリエステル前駆体から製造され得る。ポリオールは、好ましくは化学量論的過剰で使用され、その結果、ポリエステル前駆体は好ましくは1未満の酸価と100〜500のヒドロキシル価とを有する。分子量は好ましくは300〜1000である。水分散性ポリエステルは、アニオンを形成し得る化合物、とりわけ1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物でポリエステル前駆体をエステル化することにより得られる。ポリエステルの水分散性は、好ましくは中和可能な基の全体に対して80〜100%の中和度で、好ましくはアミンで、より好ましくはジエタノールアミンで、アニオンを形成することが可能な基を中和することにより達成される。
【0027】
本発明の被覆材料において、ポリマー(P1)及び(P2)は、好ましくは、被覆材料の不揮発性分率に対して10質量%〜95質量%、好ましくは20質量%〜80質量%の分率で存在する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において使用される架橋剤(V)は、被覆材料が硬化する際、相補性官能基としてのポリマー(P1)及び(P2)或いは(WP1)及び(WP2)及び/又はバインダーの更なる成分の官能基(a)と反応して共有結合を形成する少なくとも2個の架橋性官能基(b)を有する。官能基(b)は、放射線により及び/又は熱的に反応し得る。熱架橋性基(b)が好ましい。
【0029】
ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はエポキシ基からなる群から選択される好ましい官能基(a)と反応する架橋剤(V)における熱架橋性基(b)が好ましい。特に好ましい相補性基(b)は、所望によりアルコール類で完全に又は部分的にエーテル化されたカルボキシル基、非ブロック又はブロックポリイソシアネート基、カルバメート基及び/又はメチロール基から成る群から選択される。
【0030】
官能基(a)としての特に好ましいヒドロキシル基と反応する架橋剤(V)における相補性官能基(b)が非常に特に好ましく、(b)は、好ましくは、所望によりアルコール類で完全に又は部分的にエーテル化された非ブロック又はブロックポリイソシアネート基及び/又はメチロール基の群から選択される。
【0031】
被覆材料において、架橋剤(V)は、好ましくは、被覆材料の不揮発性分率に対して5質量%〜60質量%、好ましくは10質量%〜50質量%の分率で存在する。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態において、架橋剤Vは、水分散性架橋剤(WV)の群から選択される。かかる水分散性架橋剤(WV)を製造するために、アニオンを形成し得る上記の基は、好ましくは架橋剤分子に組み込まれ、中和された後、架橋剤(WV)が水に安定して分散され得ることを確保する。アニオンを形成し得る適切な基は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基である。アニオンを形成し得る基を中和するためには、同様に、上記の量で上記のアンモニア、アミン及び/又はアミノアルコールを使用することが好ましい。
【0033】
好ましい架橋剤(V)として適切なポリイソシアネート及び適切な遮断剤の例は、例えばEP−A−1192200に記載されており、前記遮断剤は、より詳しくは、塗布前と塗布中の両方における、本発明の方法のために使用されるポリマー(P1)及び/又は(P2)或いは(WP1)及び/又は(WP2)の反応基(a)との、更に被覆材料における更なる反応基及び水とのイソシアネート基の望ましくない反応を防止する機能を有する。遮断剤は、ブロックイソシアネート基が、被覆材料の熱架橋が起こる温度範囲においてのみ、より詳しくは120〜180℃の温度範囲において再度非ブロックを受け、次いで官能基(a)との架橋反応を開始するように選択される。架橋剤(V)として特に好ましいポリイソシアネートは、ポリイソシアネート、好ましくはイソシアヌレートを形成するために三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート、アニオンを形成し得る化合物、好ましくは2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び遮断剤、好ましくは3,5−ジメチルピラゾール、マロン酸ジエチル又はオキシム類、より好ましくはブタノンオキシムを反応させることにより得られる水分散性ポリイソシアネート(WV)の群から選択される。アニオンを形成し得る化合物、好ましくは2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸に対する、ポリイソシアネート、好ましくは三量体化ジイソシアネートのモル比は、好ましくは、1:1〜2:1、より好ましくは、1.1:1〜1.5:1である。
【0034】
好ましい架橋剤(V)として適切なメチロール基を含有する成分の例は、より詳しくは、例えばEP−A−1192200に記載される種類の水分散性アミノ樹脂(WV)である。官能基(a)と、より詳しくはヒドロキシル基と、100〜180℃、好ましくは120〜160℃の温度範囲で反応するアミノ樹脂、より詳しくはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を使用することが好ましい。架橋剤(V)又は(WV)として特に好ましいアミノ樹脂は、ヘキサメトキシメチルメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の群から選択される。
【0035】
本発明の非常に特に好ましい一実施形態において、使用される架橋剤(V)及び/又は(WV)は、上述のブロックポリイソシアネートと上述のアミノ樹脂との組み合わせである。アミノ樹脂に対するブロックポリイソシアネートの混合比は、好ましくは4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3である(2種の成分の不揮発性分率の比)。
【0036】
非円形粒子の場合、粒子の最も長い領域の対角線に相当する平均粒径(D)が<1μmであり、且つ、平均粒子厚さ(d)に対する平均粒径(D)の平均D/d比が>50であり、好ましくはD/d>100であり、より好ましくは、D/d>200であり、且つ、電荷が無機及び/又は有機対イオン(GI)で補償される、被覆材料の不揮発性分率に対して0.1質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜25質量%の間、より好ましくは1質量%〜20質量%の間の荷電無機粒子(AT)が、本発明の被覆材料に組み込まれる。平均粒径は、TEM(トンネル電子顕微鏡)グラフの評価により決定することが可能であるが、一方で粒子厚さ(d)は、X線構造解析により実験的に、個々のプレートレット上のAFM(原子間力顕微鏡)による断面形状測定により、更に分子構造についての知識により算術的に決定することが可能である。荷電無機粒子(AT)の平均粒径(D)は、好ましくは50〜800nm、より好ましくは100〜500nmであり、粒子厚さ(d)は、好ましくは0.1〜1.0nm、より好ましくは0.15〜0.75nmである。
【0037】
相形態の制御に必要な粒子の数及び移動度は、上述の粒子が、マトリックスに分散する個別粒子として(剥離状態)、個別粒子の間にポリマーマトリックス材料を含む面平行様式で配列した、個別に分散した大量の個別粒子として(インターカレート状態)、又は大量の個別粒子の個別に分散した凝集物として有機マトリックスに分布するかどうかに従って、上述の粒子で制御され得る。
【0038】
典型的には、X線回折により決定される荷電無機粒子の間の層間隔が特定される。層間隔は、粒子の層厚さ(d)と2つのかかる粒子の間隔との合計を包含する。後者の間隔は、粒子の電気的電荷担体を中性化する、粒子に存在する対イオンの性質と、更に水や有機溶媒等の膨潤作用を有する電気的中性分子の存在とに依存する。従って、例えば、モンモリロナイトにおける層間隔は、通常の天然の周囲条件の含水率の関数として0.97〜1.5nmの間で変化することが既知である(J.Phys.Chem.B,108(2004),1255)。
【0039】
本発明の一実施形態において、荷電無機粒子(AT)は、それ自体既知の方法に従って、層状鉱物の天然又は合成対イオンを無機及び/又は有機対イオン(GI)と交換することにより製造され得る。この目的のために、例えば、荷電無機粒子(AT)は、個別の層の間の隙間を増大することができ、無機及び/又は有機対イオン(GI)が溶液中に存在し、その後それらを再度単離することができる適切な液体媒質に懸濁される(Langmuir21(2005),8675)。
【0040】
イオン交換が起きる場合、合成からの好ましくは15モル%超、より好ましくは30モル%超の対イオンが、無機及び/又は有機対イオン(GI)と置換される。対イオン(GI)の大きさ及び空間配向に応じて、一般に層構造は拡大し、荷電層の間の距離(層間隔)は、好ましくは少なくとも0.2nm、より好ましくは少なくとも0.5nm拡大する。
【0041】
電荷の少なくとも部分的な補償のために、且つ、無機粒子(AT)の層の間隔を広げるために使用される無機及び/又は有機対イオン(GI)は、以下の構成を有する:電荷担体として、好ましくは、カチオン基及び/又はアニオン基、例えば、有機対イオン(GI)の場合、カチオンとして、好ましくは発明的に製造された層のいかなる変色もその層が硬化する際に生じない好ましくはアルキル置換スルホニウムイオン及び/又はホスホニウムイオンとして、更にアニオンとして、好ましくはカルボン酸、スルホン酸及び/又はホスホン酸のアニオンとしての作用。無機対イオン(GI)の場合、電荷担体として機能するカチオンは、好ましくはアルカリ金属アニオン及びアルカリ土類金属アニオンであり、アニオンは、好ましくは鉱酸のアニオンであり、前記アニオンは、同様に好ましくは、本発明により製造される層の硬化の間の層のいかなる変色も起こさない。
【0042】
無機粒子(AT)を製造するために適切な物質の例としては、より詳しくは、天然スメクタイト種(例えばモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、脆銀鉱)や、合成スメクタイト種(例えばLaponiteやSOMASIF(コープケミカル株式会社の合成フッ素化層状ケイ酸塩))等の粘土鉱物が挙げられる。上述の鉱物は、正に荷電する無機及び/又は有機対イオン(GI)により補償される負の表面電荷を有する。
【0043】
より詳しくは、式:
(M(1-x)2+x3+(OH)2)(Ax/yy-nH2
[式中、M2+は、二価カチオンを表し、M3+は、三価カチオンを表し、(A)は、原子価yを有するアニオンを表し、xは、0.05〜0.5の値をとる]の混合水酸化物等の触媒的に荷電した無機粒子(AT)が本発明の目的のために特に好ましい。
【0044】
特に好ましい二価カチオンM2+は、カルシウムイオン、亜鉛イオン及び/又はマグネシウムイオンであり、及び/又は、特に好ましい三価カチオンM3+は、アルミニウムイオンであり、特に好ましいアニオン(A)は、リン酸イオン、硫酸イオン及び/又は炭酸イオンであるが、その理由は、これらのイオンが、本発明の層が硬化する際に変色がないことを確保することに効果があるためである。混合酸化物の合成は、既知である(E.Kanezaki,Preparation of Layered Double Hydroxides in Interface Science and Technology,vol.1,chapter 12,p.345ff−Elsevier,2004,ISBN0−12−088439−9)。通常、前記合成は、一定に維持され、限定された塩基性のpHレベルの水相においてカチオンの塩の混合物から起こる。生成物は、隙間にインターカレートする無機対イオンとして金属塩のアニオンを含有する混合水酸化物である。二酸化炭素の存在下で合成を行う場合、生成物は、一般に、インターカレートする炭酸イオンを有する混合水酸化物である。二酸化炭素又は炭酸塩が存在しないが、有機アニオン又はそれらの酸性前駆体の存在下で合成を行う場合、生成物は、一般に、隙間にインターカレートする有機アニオンを有する混合水酸化物である(共沈法又はテンプレート法)。混合水酸化物の製造のための代替的な合成方法は、インターカレーションのために所望のアニオンの存在下での金属アルコキシドの加水分解である(US−A−6,514,473)。
【0045】
本発明の更なる一実施形態においては、インターカレートされた炭酸イオンを有する混合水酸化物におけるイオン交換により、対イオン(GI)として無機及び/又は有機アニオンをインターカレートすることが可能である。これは、例えば、インターカレーションのための所望のアニオンの存在下で非晶質仮焼混合酸化物を再水和することにより行うことが可能である。<800℃の温度で、インターカレートされた炭酸イオンを含有する混合水酸化物を仮焼することにより、非晶質混合酸化物が得られるが、層構造は保持される。
【0046】
或いは、イオン交換は、インターカレーションのための有機アニオンの酸性前駆体の存在下で水性媒質又は水性アルコール媒質において起こり得る。この場合、対イオン(GI)としてのインターカレーションのための無機アニオン及び/又は有機アニオンの前駆体の酸強度に応じて、炭酸イオンを除去するために希釈鉱酸による処理が必要である。
【0047】
電荷の少なくとも部分的な補償のため、且つ、上述の混合水酸化物の層の間隔を広げるための本発明の一実施形態における対イオン(GI)として使用される有機アニオンは、好ましくは単独で荷電される。使用される電荷担体は、好ましくはアニオン基(AG)であり、より好ましくはカルボン酸、スルホン酸及び/又はホスホン酸のアニオンである。
【0048】
本発明の更なる好ましい一実施形態において、有機アニオンは、被覆材料が硬化する際にバインダーBMの官能基(a)及び/又は架橋剤の官能基(b)と反応して共有結合を形成する官能基(c)を対イオン(GI)として更に担持する。基(c)は、放射線硬化性及び/又は熱硬化性であってよい。基(a)及び(b)の記載の文脈において上述した種類の熱硬化性基(c)が好ましい。より好ましくは、官能基(c)は、ヒドロキシル基、エポキシ基及び/又はアミノ基から成る群から選択される。
【0049】
官能基(c)は、好ましくは、スペーサ(SP)により対イオン(GI)としての有機アニオンのアニオン基から分離されるが、(SP)は、所望により窒素、酸素及び/又は硫黄等のヘテロ原子で修飾され、且つ、合計3〜30個の炭素原子、好ましくは4〜20個の間の炭素原子、より好ましくは5〜15個の間の炭素原子を有する非置換及び置換脂肪族化合物及び/又は脂環式化合物;所望により窒素、酸素及び/又は硫黄等のヘテロ原子で修飾され、且つ、合計3〜20個の炭素原子、好ましくは4〜18個の間の炭素原子、より好ましくは5〜15個の間の炭素原子を有する非置換及び置換芳香族化合物;及び/又は前述の脂環式化合物及び芳香族化合物の下部構造、より詳しくは官能基(c)とアニオン基(AG)との間に少なくとも3個の炭素原子及び/又はヘテロ原子を含有する下部構造から成る群から選択される。
【0050】
より好ましくは、対イオン(GI)としての有機アニオンのスペーサ(SP)は、アニオン基(AG)に対してm位又はp位に位置する官能基(c)を有する非置換又は置換フェニル基又はシクロヘキシル基である。この場合、特に、官能基(c)としてヒドロキシル基及び/又はアミノ基が、アニオン基(AG)としてカルボキシレート基及び/又はスルホン酸基が使用される。
【0051】
対イオン(GI)として非常に特に好ましい有機アニオンは、m−又はp−アミノベンゼンスルホネート、m−又はp−ヒドロキシベンゼンスルホネート、m−又はp−アミノベンゾエート、及び/又はm−又はp−ヒドロキシベンゾエートである。
【0052】
その合成からアニオン(A)として好ましくは炭酸塩を含有する上述した特に好ましい混合水酸化物において、イオン交換により、好ましくは15モル%超、より好ましくは30モル%超のアニオン(A)が、対イオン(GI)としての有機アニオンに置換される。
【0053】
カチオン的に荷電した無機粒子(AT)の修飾は、好ましくは、本発明の被覆材料に組み込まれる前に別々の方法において行われるが、この方法は、特に好ましくは、水性媒質において行われる。有機対イオンで修飾される荷電無機粒子(AT)は、好ましくは1つの合成工程で製造される。しかるに製造された粒子は、非常にわずかな固有の色だけを有し、好ましくは無色である。対イオン(GI)として無機アニオンで修飾される好ましいカチオン性荷電粒子は、より詳しくはカチオンの金属塩と有機イオンとから1つの合成工程において製造され得る。この場合、好ましくは、二価カチオンM2+及び三価カチオンM3+の塩の水性混合物は、所望の化学量論比が確立されるまで対イオン(GI)としての有機アニオンのアルカリ性水溶液に導入される。好ましくはCO2を含まない雰囲気、例えば窒素の下で添加を行い、10〜100℃の温度、より好ましくは室温で撹拌し、好ましくはアルカリ性水酸化物、より好ましくはNaOHの添加により、水性反応混合物のpHを8〜12、好ましくは9〜11の範囲に維持する。金属塩の水性混合物の添加後、得られた懸濁液を上述の温度で0.1〜10日間、好ましくは3〜24時間熟成させ、得られた沈殿物を、好ましくは遠心分離により単離し、単離した沈殿物を脱イオン水で繰り返し洗浄する。その後、精製された沈殿物から、5質量%〜50質量%、好ましくは10質量%〜40質量%の固体含量を有する、対イオン(GI)としての有機アニオンで修飾されたカチオン性荷電粒子(AT)の懸濁液が確立される。
【0054】
得られた層状複水酸化物の結晶化度は、選択された合成パラメータと、使用されるカチオンの性質と、M2+/M3+カチオンの比と、使用されるアニオンの性質及び量とに依存しており、できるだけ大きな値をとる必要がある。
【0055】
混合水酸化物相の結晶化度は、対応するX線回折線の解析から干渉性散乱領域の算出された大きさとして表され、例は、Mg−Alヒドロタルサイトの場合、[003]及び[110]反射である。従って、例えば、Eliseev et al.(Doklady Chemistry 387(2002),777)は、調べたMg−Alヒドロタルサイトの領域の大きさの増大に対する熱的時効の影響を示し、これについて、27Al−NMRスペクトルにおける対応する信号の相対強度を介して示される、八面配位アルミニウムの形態の混合水酸化物層への残存する四面体配位アルミニウムの組み込みの進行により説明する。
【0056】
荷電無機粒子(AT)、又は荷電無機粒子(AT)の上記の懸濁液は、被覆材料を製造するための本発明の方法において、原則として、任意の段階の間、即ち被覆材料の他の成分の添加の前、間及び/又は後に組み込まれ得る。
【0057】
薄層の相形態の制御のためには、非相溶性ポリマー(P1)、(P2)及び/又は架橋剤(V)に対する荷電無機粒子(AT)の親和性に差があることが好ましい。本発明の特に好ましい一実施形態において、(P1)、(P2)及び(V)の群からの少なくとも1種の成分は、他の成分と比較して親水性の差を有し、それは、上記のポリマー(P1)又は(WP1)、(P2)又は(WP2)並びに架橋剤(V)又は(WV)のセットの適切な選択を介して好ましくは確立される。本発明の非常に特に好ましい一実施形態において、ポリマー(P1)又は(WP1)は、ポリマー(P2)又は(WP2)及び/又は架橋剤(V)又は(WV)よりも高いレベルの疎水性に設定され、特に好ましいポリマー(P1)又は(WP1)はポリウレタンであり、特に好ましいポリマー(P2)又は(WP2)はポリエステルであり、特に好ましい架橋剤(V)又は(VW)は、ポリイソシアネート及び/又はアミノ樹脂である。それらの表面特性に応じて、荷電無機粒子(AT)は、より親水性の相又はより疎水性の相において蓄積する。
【0058】
荷電無機粒子(AT)の表面特性は、好ましくは、粒子(AT)のイオン交換容量を介して、及び/又は、対イオン(GI)の選択により制御される。イオン交換容量は、例えば、好ましい混合水酸化物において、三価カチオンに対する二価カチオンの比により調整され、その比は、より好ましくは1:1〜4:1の間である。
【0059】
その上、高い電荷密度を有する、小さな、好ましくは無機対イオン、より好ましくはカチオンとしてのアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオン、より好ましくはアニオンとしてのリン酸イオン、硫酸イオン又は炭酸イオンは、前記粒子(AT)の親水性表面の形成をもたらし、しかるにより親水性の相に対するより大きな親和性をもたらす。比較的低い電荷密度を有する、相対的に大きな、好ましくは有機対イオン、より好ましくはカチオンとしてのテトラアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルスルホニウムイオン又はテトラアルキルホスホニウムイオン、より好ましくはカルボン酸、スルホン酸及び/又はホスホン酸の有機アニオン、特に好ましいカチオン性荷電無機異方性粒子(AT)を修飾するために使用されるとりわけ上記の有機対イオンは、一般に、疎水性表面の形成をもたらし、故により疎水性の相に対するより大きな親和性をもたらす。
【0060】
好ましくはポリマー(P1)又は(WP1)から形成されるより疎水性の成分に対する好ましくはポリマー(P2)又は(WP2)及び/又は架橋剤(V)又は(WV)から形成されるより親水性の成分の混合比の適切な選択により、並びに、親水性又は疎水性の表面を有する異方性粒子(T)の適切な選択により、薄層において、分散構造、双連続構造、2つの層に巨視的に層化された構造、又は組織化された層構造を生成することが可能である。本発明の好ましい一実施形態においては、10:1〜0.2:1、より好ましくは6:1〜1:1の、疎水性成分に対する親水性成分の混合比が選択される。高い電荷密度を有する対イオン(GI)としてのアニオン、とりわけ炭酸アニオンと組み合わせた、荷電粒子、好ましくはカチオン性荷電無機異方性粒子(AT)、より好ましくは上述の式の混合水酸化物の添加の場合、被覆材料の硬化後の結果は、双連続構造又は2つの層に巨視的に層化された構造であるが、一方で、相対的に低い電荷密度を有する対イオン(GI)としてのアニオン、とりわけm−又はp−アミノベンゼンスルホネート、m−又はp−ヒドロキシベンゼンスルホネート、m−又はp−アミノベンゾエート、及び/又はm−又はp−ヒドロキシベンゾエートとのカチオン性荷電無機異方性粒子(AT)、より好ましくは上述の式の混合水酸化物の組み合わせの場合、結果は、分散構造又は双連続構造である。
【0061】
このように生成される全ての構造に共通することは、それらの構造が、とりわけ層の層間剥離の減少に関して、及び、衝撃曝露後の完全に侵食された層の比率に関して、先行技術と比較して著しく改善した損傷パターンを有することである。
【0062】
本発明に必須の上述の成分に加えて、本発明の被覆材料はまた、被覆材料の不揮発性成分に対して最高40質量%、好ましくは最高30質量%、より好ましくは最高20質量%の比率で、場合により更なる水分散性バインダーを含んでもよい。
【0063】
また、本発明の被覆材料は、有効量の通例のコーティング添加剤を含んでもよい。例えば、通例及び既知の量の着色及び効果顔料は、被覆材料の一部であってよい。前記顔料は、有機化合物又は無機化合物から成ることができ、例えばEP−A−1192200に示される。更なる使用可能な添加剤は、例えば、UV吸収剤、フリーラジカルスカベンジャー、滑剤、重合防止剤、消泡剤、乳化剤、湿潤剤、均染剤、膜形成助剤、レオロジー制御剤、並びに、好ましくは、官能基a、b及び/又はcの反応のための触媒、官能基a、b及び/又はcのための更なる架橋剤である。適切なコーティング添加剤の更なる例は、例えば、教科書"Lackadditive"[Additives for coatings]by Johan Bieleman,publisher:Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998に記載されている。
【0064】
上述の添加剤は、被覆材料の不揮発性成分に対して好ましくは最高40質量%、好ましくは最高30質量%、より好ましくは最高20質量%の比率で本発明の被覆材料に存在する。
【0065】
本発明の好ましくは水性被覆材料は、好ましくは、修飾された無機粒子並びに架橋剤(V)又は(WV)の好ましくは使用されるアミノ樹脂成分とは別に、被覆材料の成分の全てを最初に混合することにより製造される。好ましくは上述の方法により製造される通りの有機対イオン(OG)で場合により修飾される荷電無機粒子(AT)の懸濁液は、得られた混合物に、懸濁液が完全に溶解されるまで撹拌しながら導入されるが、その完全な溶解は、光学的方法によって、より詳しくは目視検査によってモニタされ得る。得られた混合物を、好ましくは、撹拌しながら、10〜50℃の温度で、2〜30分間、好ましくは5〜20分間、好ましくは室温で、超音波で処理し、特に好ましい一実施形態において、超音波源の先端は、混合物中に浸漬される。超音波処理の間、混合物の温度は、10〜60K上昇し得る。しかるに得られた分散液を、好ましくは、撹拌しながら室温で少なくとも12時間熟成させる。その後、撹拌しながら架橋剤(V)又は(WV)を添加し、分散液を、好ましくは水で、15質量%〜50質量%、好ましくは20質量%〜40質量%の固体含量に調整する。
【0066】
本発明の被覆材料は、好ましくは、硬化後に、1〜100μm、好ましくは5〜75μm、より好ましくは10〜60μm、とりわけ15〜50μmの乾燥膜厚の仕上げ処理層になるような湿潤膜厚で塗布される。
【0067】
本発明の方法における被覆材料の塗布は、例えばスプレー、ナイフコーティング、展布、注入、浸漬、圧延の典型的な塗布方法により達成され得る。例えば圧縮空気スプレー、エアレススプレー、高速回転スプレー、静電スプレー塗布(ESTA)のスプレー塗布法を用いることが好ましい。塗布は、70〜80℃以下の温度で一般に行われ、それにより、適切な場合に再処理され得る被覆材料又はオーバースプレーに対する変化又は損傷を伴う短い熱曝露を行うことなく適切な塗布粘性が達成される。
【0068】
例えばWO−A−03/016413に記載されるように、放射線架橋基を有する本発明の被覆材料が塗布される膜の放射線硬化は、好ましくは不活性雰囲気において、化学線で、より詳しくはUV放射で起こる。
【0069】
熱架橋基を有する本発明の被覆材料から塗布される膜の好ましい熱硬化は、既知の方法、例えば、強制空気オーブンにおける加熱により、或いは赤外線ランプを使用する照射により起こる。有利には、熱硬化は、100〜180℃、好ましくは120〜160℃の温度で、1分間〜2時間、好ましくは2分間〜1時間、より好ましくは3〜30分間で起こる。高熱負荷に耐えるための能力を有する例えば金属の基材が使用される場合、硬化は、180℃超の温度で行われてもよい。しかしながら、一般的に、160〜180℃の温度を超えないことが望ましい。一方で、熱負荷に耐える性能に対する最大限度を有する例えばプラスチックの基材を使用する場合、硬化作業に必要とされる温度及び時間は、この最大限度のラインとしなければならない。
【0070】
本発明の文脈において、上記の被覆材料を使用する場合、OEM層系が塗布された基材の衝撃曝露後の曝露された基材の表面積が、大幅に減少する可能性があることも分かった。
【0071】
衝撃曝露後、基材表面の曝露が著しく減少するサーフェイサー層を製造するための上述の被覆材料の使用が、非常に特に好ましい。とりわけ、基材から見て、電着層、好ましくは陰極析出層、サーフェイサー層、及び最終トップコートから成る、好ましくはベースコート及び最終クリアコートから成る多重層構造が金属基材上及び/又はプラスチック基材上に塗布されるOEMライン仕上げのための古典的構造において、本発明の被覆材料から製造されるサーフェイサー層が、特に有利である。
【0072】
好ましい一方法において、本発明の被覆材料は、電気コート膜が予備被覆された基材に塗布される。特に好ましくは、陰極電気コート材料で予備被覆された金属基材及び/又はプラスチック基材のコーティングである。電気コート材料、より詳しくは陰極電気コート材料は、好ましくは、本発明の被覆材料が塗布される前に硬化する。
【0073】
更に好ましい方法において、最終トップコートは、好ましくは第1にベースコート、そして最後にクリアコートの2つの更なる段階で、本発明の被覆材料から形成される層に塗布される。この場合、特に好ましい一方法において、最初に本発明の被覆材料の膜を硬化させ、次いで、好ましくは第一段階で、水性ベースコート材料を塗布し、1〜30分間、好ましくは2〜20分間、40〜90℃、好ましくは50〜85℃の温度でのフラッシュオフの後、第二段階において、ベースコート膜にクリアコート材料、好ましくは二成分クリアコート材料を上塗りし、ベースコート及びクリアコートを共に硬化する。更なる本発明の好ましい一実施形態において、本発明の被覆材料で製造されるサーフェイサー膜は、ベースコート膜の塗布の前に、1〜30分間、好ましくは2〜20分間、40〜90℃、好ましくは50〜85度℃の温度でフラッシュオフされる。その後、サーフェイサー膜、ベースコート膜及びクリアコート膜を共に硬化させる。
【0074】
本発明の被覆材料で製造されたコーティングは、とりわけ、基材から見て、電着防食層、本発明の被覆材料で製造されたサーフェイサー層、及び最終トップコートから成る、好ましくは着色ベースコート及び最終クリアコートから構成されるOEM塗料構造は、衝撃応力、より詳しくはストーンチッピングに対する優れた耐性を示す。市場において通例のサーフェイサーと比較して、且つ、分離系と比較して、特に損傷を受けた表面の分率の減少が特に観察され、完全に摩耗した表面の分率、換言すれば保護されていない金属基材の部分面積の非常に著しい減少が観察される。これらの顕著な特性に加えて、本発明の被覆材料で製造されるコーティングは、優れた凝縮耐性と、防食層及びベースコートへの優れた付着性と、硬化後の固有色の優れた安定性とを示す。その上、本発明の被覆材料により、比較的低い焼き付け温度及び良好なトップコート外観を有するサーフェイサー層が実現され得る。
【0075】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものである。
【0076】
実施例
製造例1:ポリエステルの水性分散液の合成(親水性成分WP2)
まず、アンカー撹拌機と、窒素導入口と、還流冷却器と、蒸留系とを有するを有する反応器に、14.320gの1,6−ヘキサンジオール、3.794gのトリメチロールプロパン、7.193gのイソフタル酸、4.507gのアジピン酸、2.752gのフタル酸、及び0.669gのキシレンを投入する。反応混合物を窒素で覆い、撹拌しながら230℃に加熱する。反応混合物がDIN EN ISO 3682による4mgKOH/g未満の酸価と11〜17dPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により50℃で測定)とを有するまで、反応水を除去する。その後、蒸留によりキシレンを除去し、反応混合物を120℃に冷却する。その後、5.910gの無水トリメリト酸を添加し、反応混合物を170℃に加熱し、反応混合物が53〜56mgKOH/gの酸価と390〜630mPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により120℃で測定)とを有するまで温度を維持する。得られたポリエステルは、DIN EN ISO3682による60mgKOH/gの酸価と、DIN EN ISO 4629による140のOH数とを有する。
【0077】
反応混合物を120℃に冷却し、2.127gのジメチルエタノールアミンを添加する。次いで、反応混合物を95℃に冷却する。
【0078】
ポリエステルを57.862gの水に入れ、その間、更なるジメチルエタノールアミンを添加することによりpHを7.2〜7.6に調整する。得られたポリエステルの分散液は、36質量%の固体含量を有する。
【0079】
製造例2:ポリウレタンの水性分散液の合成(疎水性成分WP1)
ポリエステル前駆体の合成:
まず、アンカー撹拌機と、窒素導入口と、還流冷却器と、蒸留系とを有する反応器に、30gの1,6−ヘキサンジオール、16gのイソフタル酸、54gのダイマー脂肪酸(UniqemaのPripol 1012)、及び0.9gのキシレンを投入する。反応混合物を窒素で覆い、撹拌しながら230℃に加熱する。反応混合物がDIN EN ISO 3682による4mgKOH/g未満の酸価と11〜17dPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により50℃で測定)とを有するまで、反応水を除去する。その後、蒸留によりキシレンを除去し、反応混合物を50℃に冷却する。
【0080】
得られたポリエステルを34.5gのメチルエチルケトンに入れる。得られたポリエステルの分散液は、36質量%の固体含量を有する。
【0081】
ポリウレタン分散液の合成:
まず、アンカー撹拌機と、窒素導入口と、還流冷却器とを有する反応器に、21.386gのポリエステル前駆体、0.289gのネオペンチルグリコール、1.396gのジメチルオールプロピオン酸、7.529gのメチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、及び2.502gのメチルエチルケトンを投入する。反応混合物を窒素で覆い、N−メチルピロリドンとの反応生成物の1:1希釈液が0.9〜1.2質量%のイソシアネート含量と6〜7dPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により23℃で測定)とを有するまで、撹拌しながら85℃に加熱する。
【0082】
その後、0.784gのトリメチロールプロパンを添加し、N−メチルピロリドンとの反応生成物の1:1希釈液が0.3質量%未満のイソシアネート含量と12〜13dPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により23℃で測定)とを有するまで、窒素下で反応混合物を撹拌しながら85℃に加熱する。得られたポリウレタンは、DIN EN ISO 3682による30mgKOH/gの酸価と、DIN EN ISO 4629による20のOH数とを有する。
【0083】
得られたポリウレタンを5.763gのブチルグリコールに入れ、0.537gのジメチルエタノールアミンを添加する。
【0084】
ポリウレタンを80℃の一定温度で50gの水に入れ、次いで蒸留によりメチルエチルケトンを0.4質量%未満の残留含有率に除去する。得られたポリウレタンの分散液を、更なるジメチルエタノールアミン及び水を添加することによりpH7.2〜7.4に調整する。ポリウレタンの分散液は、31質量%の固体含量を有する。
【0085】
製造例3:ブロックポリイソシアネートの水性分散液の合成(親水性成分WV)
まず、アンカー撹拌機と、窒素導入口と、還流冷却器とを有する反応器に、26.032gの三量化ヘキサメチレンジイソシアネート(BayerのDesmodur 3300)及び8.5gのN−メチルピロリドンを投入する。その溶液に7.891gのメチルエチルケトキシムを添加する。反応混合物を窒素で覆い、890〜1060ダルトンのNCO当量が達成されるまで撹拌しながら70℃で維持する。
【0086】
その後、6.077gのジメチルプロピオン酸を添加し、21000ダルトン超のNCO当量が達成され、且つ、N−メチルピロリドンとの反応生成物の1:1希釈液が4.2〜5.2dPasの粘性(ICIの円錐平板粘度計により23℃で測定)を有するまで、反応混合物を70℃で撹拌しながら窒素下で維持する。次いで、1.5gのブタノール及び3.33gのジメチルエタノールアミンを添加し、1時間に亘って温度を80℃に維持する。
【0087】
得られたブロックポリイソシアネートを44gの水に入れ、得られたブロックポリイソシアネートの分散液を、更なるジメチルエタノールアミン及び水を添加することによりpH7.4〜7.6に調整する。ブロックポリイソシアネートの分散液は、40質量%の固体含量を有する。
【0088】
製造例4:Mg/Alに基づく炭酸イオン含有ヒドロタルサイト懸濁液の合成
Na2CO3(0.16モル)の水溶液にMgCl2・6H2O(1.64モル)及びAlCl3・6H2O(0.82モル)の水性混合物を一定に撹拌しながら室温で3時間に亘って添加し、その間、3M NaOH溶液を添加することによりpHをpH=9に一定に維持し、計量するカチオンの量を、三価Alカチオンに対する炭酸塩対イオンのモル比が2:1になるように選択する。金属塩の水性混合物を添加した後、得られた懸濁液を室温で3時間熟成させる。得られた沈殿物を遠心分離により単離し、脱イオン水で4回洗浄する。
【0089】
得られた白色の反応生成物の懸濁液Mg2Al(OH)6(CO30.5・2H2O(ヒドロタルサイト懸濁液)は、14.7質量%の固体含量(10.7質量%のヒドロタルサイト含量に相当する)及びpH7.5を有する。
【0090】
製造例5:Zn/Alに基づく炭酸イオン含有ヒドロタルサイト懸濁液の合成
Na2CO3(0.12モル)の水溶液にZnCl2・6H2O(1.23モル)及びAlCl3・6H2O(0.61モル)の水性混合物を一定に撹拌しながら室温で3時間に亘って添加し、その間、3M NaOH溶液を添加することによりpHをpH=9に一定に維持し、計量するカチオンの量を、三価Alカチオンに対する炭酸塩対イオンのモル比が2:1になるように選択する。金属塩の水性混合物を添加した後、得られた懸濁液を室温で3時間熟成させる。得られた沈殿物を遠心分離により単離し、脱イオン水で4回洗浄する。
【0091】
得られた白色の反応生成物の懸濁液Mg2Al(OH)6(CO30.5・2H2O(ヒドロタルサイト懸濁液)は、19.9質量%の固体含量(15.9質量%のヒドロタルサイト含量に相当する)及びpH7.0を有する。
【0092】
製造例6:Mg/Alに基づく3−アミノベンゼンスルホン酸修飾ヒドロタルサイト懸濁液の合成
3−アミノベンゼンスルホン酸(3−absa)の0.21モルの水溶液にMgCl2・6H2O(0.52モル)及びAlCl3・6H2O(0.26モル)の水性混合物を一定に撹拌しながら窒素雰囲気下で室温で3時間に亘って添加し、計量するカチオンの量を、三価Alカチオンに対する3−absa対イオンのモル比が4:1になるように選択する。その間、3モルのNaOH溶液を添加することによりpHをpH=10に一定に維持する。金属塩の水性混合物を添加した後、得られた懸濁液を室温で3時間熟成させる。得られた沈殿物を遠心分離により単離し、脱イオン水で4回洗浄する。
【0093】
得られた白色の反応生成物の懸濁液Mg2Al(OH)6(3−absa)・2H2O(ヒドロタルサイト懸濁液)は、28.6質量%の固体含量(13.2質量%のヒドロタルサイト含量に相当する)及びpH9.4を有する。
【0094】
製造例7〜10:被覆材料の配合
第1段階において、製造例1〜3による被覆材料成分(下記の第1表の量)の混合物の分散液を撹拌しながら室温で調製する。このために、製造例8〜10においては、実施例4〜6において調製されるヒドロタルサイト懸濁液(下記の第1表の量)を撹拌しながら室温で導入し、ヒドロタルサイト懸濁液が完全に溶解するまで(目視評価)更に12時間撹拌する。
【0095】
得られた分散液を15分間撹拌しながら室温で超音波で処理し、その間、超音波源(Hielscher GmbHのSonotrode UP 100H)の先端を分散液中に保持し、30kHzの使用周波数で振幅及びパルスレートを各々100%に設定する。超音波処理の間、分散液の温度は、65℃に上昇する。得られた分散液を12時間熟成させる。
【0096】
比較例7においては、製造例1〜3による被覆材料成分(下記の第1表の量)の混合物の分散液を撹拌しながら室温で調製し、実施例8〜10に従って超音波で処理する。
【0097】
その後、分散液を、室温で撹拌しながらメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(Ineos Melamines GmbHのMaprenal MF900)(下記の第1表の量)と混合する。
【0098】
第1表:製造例7〜10による被覆材料の組成
【表1】

【0099】
実施例11〜14:製造例7〜10による被覆材料によるOEM層系の製造、及びストーンチップ耐性の試験
製造例7(比較)及び8〜10により調製された本発明の被覆材料を、スプレー(Koehneの自動コーター)により、陰極電気コート材料で予備被覆された前処理鋼パネル(Chemetallの鋼パネル:焼き付け陰極電気コートの厚さ:21±2μm、基材の厚さ:750μm)に塗布する。得られた被覆材料の膜を140℃で20分間硬化させ、30±3μmの乾燥膜厚が得られる。
【0100】
続いて、しかるに、別々の工程で、最初に80℃で10分間フラッシュオフする市販の水性ベースコート材料(BASF Coatings AGのFV95−9108)を、最後に二成分溶媒系クリアコート材料(BASF Coatings AGのFF95−0118)を塗布することにより予備被覆されたパネル上にOEM層系を製造する。水性ベースコート膜及びクリアコート膜を共に140℃で20分間硬化させ、その後、ベースコートは、約15μmの乾燥膜厚を有し、クリアコートは、45μmの乾燥膜厚を有する。
【0101】
しかるにコーティングされたパネルを、23℃で、50%の相対空気湿度で3日間保存する。
【0102】
OEM層系におけるサーフェイサー層の形態を分析し、光学顕微鏡検査(第2表)により特性を評価した。
【0103】
ストーンチップ耐性の試験:
各々500gの冷却鉄粒(4〜5mm粒径、Wuerth,Bad Friedrichshall)を使用して、衝撃装置(Erichsenのmodel 508 VDA)上で2バールの気圧を設定して、上記の通りに製造したコーティング鋼パネルをDIN55996−1ストーンチップ試験に供する。
【0104】
このようにして損傷を受けた試験パネルを洗浄した後、酸性銅塩の溶液に浸漬し、元素の銅が、衝撃によりコーティングが完全に除去される鋼鉄基材のそれらの領域上に析出する。
【0105】
損傷を受け、後処理された試験パネルの各々の10cm2に亘って損傷を受けたパターンを、画像処理ソフトウェア(SIS−Analyse)を使用して取り込む。衝撃により損傷を受けた表面の分率と、完全に摩耗した表面の分率との評価を、各場合、全体の表面積に基づいて行う。第2表に結果を示す。
【0106】
第2表−本発明の被覆材料と参照サーフェイサーとにより製造された層系の損傷パターン
【表2】

【0107】
より親水性の炭酸イオン含有ヒドロタルサイトを含む被覆材料(実施例12及び13)は、硬化後に双連続相構造又は2つの層に巨視的に層化された構造を有するが、一方、有機対イオンで修飾されたより疎水性のヒドロタルサイトを含む被覆材料(実施例14)は、硬化後に分散相構造を有する。
【0108】
また分散相形態を有する比較のサーフェイサー(製造例7)で製造された層系(実施例11)と比較して、サーフェイサー材料として本発明の被覆材料で製造された層系は、完全に摩耗した表面の分率、即ち保護されていない金属基材の面積分率が非常に著しく減少する。
【0109】
陰極電気コートの層及びベースコートに対する付着は、同様に優れており、そのことは、表面への全体的損傷が±0.5の誤差限界内で不変であるか又は減少することで示される。
【0110】
その上、本発明の被覆材料で製造されたコーティングは、優れた凝縮耐性と、焼き付け後の事実上不変の固有の色とを特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー(P1)、固相においてポリマー(P1)と非相溶性である少なくとも1種のポリマー(P2)、及び/又は固相においてポリマー(P1)と非相溶性である架橋剤(V)を含み、前記ポリマー(P1)及び/又は(P2)が被覆材料の硬化の間に反応して共有結合を形成する少なくとも1個の官能基(a)を有する被覆材料において、前記被覆材料が、その被覆材料の不揮発性成分に対して0.1〜30質量%の、平均粒径(D)が<1μmであり、且つ、平均粒径(D)の平均粒子厚さ(d)に対する平均D/d比が>50である荷電無機粒子(AT)を含むことを特徴とする被覆材料。
【請求項2】
前記架橋剤(V)が、官能基(a)と反応して共有結合を形成する少なくとも2個の官能基(b)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の被覆材料。
【請求項3】
水相を有する被覆材料であって、ポリマー(P1)が水分散性であり、及び/又は、ポリマー(P2)が水分散性であり、及び/又は、架橋剤(V)が水分散性であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆材料。
【請求項4】
ポリマー(P1)のヒルデブランドによる溶解度パラメータδ(P1)とポリマー(P2)のδ(P2)及び/又は前記架橋剤(V)のδ(V)との差の大きさ[δ(P1)−δ(P2)及び/又はδ(V)]が少なくとも1であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項5】
前記荷電無機粒子(AT)が、被覆材料への混加前の水性懸濁液中にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項6】
前記荷電無機粒子(AT)が、正に荷電することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆材料。
【請求項7】
前記荷電無機粒子(AT)が、一般式
(M(1-x)2+x3+(OH)2)(Ax/yy-nH2
[式中、M2+は、二価カチオンを表し、M3+は、三価カチオンを表し、(A)は、原子価yを有するアニオンを表す]の少なくとも1種の混合水酸化物を含むことを特徴とする、請求項6に記載の被覆材料。
【請求項8】
選択される前記二価カチオンM2+が、亜鉛イオン及び/又はマグネシウムイオンであり、及び/又は、選択される前記三価カチオンM3+が、アルミニウムイオンであり、及び/又は使用される前記アニオン(A)が、リン酸イオン、硫酸イオン及び/又は炭酸イオンであることを特徴とする、請求項7に記載の被覆材料。
【請求項9】
基材に直接塗布された防食層と、サーフェイサー層と、ベースコート層と、引き続いてのクリアコート層とから成る耐ストーンチップOEM複合層の製造方法において、少なくとも1つの層が、請求項1から8までのいずれか1項に記載の被覆材料から形成されることを特徴とする前記方法。
【請求項10】
前記サーフェイサー層が、請求項1から8までのいずれか1項に記載の被覆材料から形成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503304(P2011−503304A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533470(P2010−533470)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009326
【国際公開番号】WO2009/062622
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【出願人】(510133942)ユニヴェルシテ ブレーズ パスカル (6)
【氏名又は名称原語表記】Universite Blaise Pascal
【住所又は居所原語表記】34, avenue Carnot, F−63000 Clermont−Ferrand, France
【Fターム(参考)】