非破壊検査装置及び当該装置での位置ずれ検出方法
【課題】2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる非破壊検査装置を提供すること。
【解決手段】非破壊検査装置1は、X線照射器20、低エネルギ検出器32、高エネルギ検出器42、低エネルギ透過率算出部72、高エネルギ透過率算出部74及び検出部76を備えている。低エネルギ透過率算出部72は、被検査物Sを透過したX線の低エネルギ範囲における透過率を、低エネルギ検出器32で検出された輝度データから算出し、高エネルギ透過率算出部74は、被検査物Sを透過したX線の高エネルギ範囲における透過率を、高エネルギ検出器42で検出された輝度データから算出する。検出部76は、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率との比に基づいてX線照射器20の位置ずれを検出する。
【解決手段】非破壊検査装置1は、X線照射器20、低エネルギ検出器32、高エネルギ検出器42、低エネルギ透過率算出部72、高エネルギ透過率算出部74及び検出部76を備えている。低エネルギ透過率算出部72は、被検査物Sを透過したX線の低エネルギ範囲における透過率を、低エネルギ検出器32で検出された輝度データから算出し、高エネルギ透過率算出部74は、被検査物Sを透過したX線の高エネルギ範囲における透過率を、高エネルギ検出器42で検出された輝度データから算出する。検出部76は、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率との比に基づいてX線照射器20の位置ずれを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置及び当該装置での位置ずれの検出方法に関する。特に本発明は、非破壊検査に用いられる放射線源の位置ずれを検出できる非破壊検査装置及び当該装置での放射線源の位置ずれの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や工業製品などの被検査物にX線などの放射線を照射し、被検査物を透過した放射線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲といった異なる範囲で検出し、非破壊検査を行うデュアルエナジータイプの検査装置が知られている。このような非破壊検査装置によれば、低エネルギ範囲の放射線画像と高エネルギ範囲の放射線画像とを同時に取得することができる。
【0003】
そして、これら異なるエネルギ範囲で取得された放射線画像間で所定の演算(割り算や差分、加算、乗算など)を行うことにより、例えばベルトコンベアで搬送される被検査物の非破壊検査において、複雑に混ざり合う成分分布の計測やコントラストの付きにくい異物の検出などを高精度で行うことができるようになっている。このような検査装置は、異なるエネルギ範囲で放射線画像を取得するため、各エネルギ範囲に対応する検出器をそれぞれ備えており、これら検出器を例えば縦に配置する構成を採用している(特許文献1の第9図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−002907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように検出器を2段に重ねた構成の検査装置では、放射線源が点光源であり、また放射線の照射方向における上流側の検出器に含まれる撮像素子と下流側の検出器に含まれる撮像素子との間に距離があることから、それぞれの撮像素子で取得される画像の間でずれが生じてしまう(図3の(b)参照)。このため、キャリブレーション部材などを用いて上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応を事前にとっておき、非破壊検査を行う際、上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素とが対応する放射線画像を取得できるようにしている。
【0006】
しかしながら、非破壊検査を連続して行っていると、放射線源や非破壊検査装置の温度による変位・変形(熱膨張)により放射線源の光源位置が移動(焦点移動)し、対応させてあった上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応がとれなくなってしまう場合があった。このように各検出器の画素間での対応がとれなくなると、放射線画像間で所定の演算を行った際に、演算結果に生じる疑似エッジの発生などにより適正な放射線演算画像を取得できなくなり、非破壊検査の計測精度を低下させてしまうといった問題が生じてしまう。特にインラインで連続して非破壊検査を行う場合には、検査のたびにキャリブレーションを行うことが困難であり、画素間での対応がとれなくなった場合には、そのことを早期に知る必要があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる非破壊検査装置及び当該装置での検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非破壊検査装置は、搬送手段と、放射線源と、第1及び第2の放射線検出器と、第1及び第2の算出手段と、検出手段と、を備えた装置である。搬送手段は、被検査物を所定の方向に搬送する。放射線源は、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する。第1の放射線検出器は、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する。第2の放射線検出器は、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する。
【0009】
第1の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出手段は、第1の算出手段で算出された第1の透過率を示す値と第2の算出手段で算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出する。
【0010】
また、本発明に係る検出方法は、被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、放射線源の位置ずれを検出する方法である。
【0011】
この検出方法は、第1の算出ステップと、第2の算出ステップと、検出ステップとを備えている。第1の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出ステップでは、第1の算出ステップで算出された第1の透過率を示す値と第2の算出ステップで算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出する。
【0012】
上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での検出方法によれば、被検査物を透過した放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、このように互いに対応するよう調整された両検出器での物体の透過率を示す値の比又は差を参照することで、かかる対応関係が継続して維持されているか否かを容易に検出することができる。よって、本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【0013】
しかも、上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での検出方法によれば、放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。この場合、非破壊検査装置の放射線検出器で通常取得される輝度データを利用しているので、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。なお、第2の放射線検出器で検出される第2のエネルギ範囲は、範囲全体として第1のエネルギ範囲よりも高ければよく、その一部が第1のエネルギ範囲とオーバラップしていてもよい。
【0014】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、検出手段は、第1の透過率を示す値と第2の透過率を示す値との比又は差を所定の閾値と比較して放射線源の位置ずれを検出してもよい。この場合、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質等に基づいた所定の閾値を予め設定しておき、この閾値と透過率を示す値の比等とを比較することで、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを確実に検出することができる。なお、第1の放射線検出器は、搬送手段で搬送される被検査物を透過した放射線を第1のエネルギ範囲で検出し、第2の放射線検出器は、搬送手段で搬送される被検査物を透過した放射線を第2のエネルギ範囲で検出するように構成されている。
【0015】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1の算出手段は、被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第1の基礎輝度データと、被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過輝度データとに基づいて、第1の透過率を示す値を算出してもよい。また、第2の算出手段は、被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第2の基礎輝度データと、被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過輝度データとに基づいて、第2の透過率を示す値を算出してもよい。このような算出により、各透過率を示す値を輝度データから確実に算出することができる。
【0016】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1の算出手段は、被検査物を除外した状態又は被検査物に含まれない部分において第1の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して第1の基礎輝度データを算出すると共に、被検査物を透過した放射線を第1の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、当該補正に用いた第1の補正関数を乗じて、第1の透過輝度データを算出してもよい。また、第2の算出手段は、被検査物を除外した状態又は被検査物に含まれない部分において第2の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して第2の基礎輝度データを算出すると共に、被検査物を透過した放射線を第2の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、補正に用いた第2の補正関数を乗じて、第2の透過輝度データを算出してもよい。
【0017】
この場合、生データを補正して基礎輝度データを算出すると共に、基礎輝度データを適正値に補正するための関数を用いて透過輝度データを算出しているため、より精度がよい基礎輝度データや透過輝度データを得ることができる。そして、高精度の輝度データを用いることにより、透過率を示す値を精度よく算出することができ、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを精度よく知ることができる。
【0018】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1及び第2の算出手段は、第1及び第2の基礎輝度データが同じになるように第1及び第2の補正関数を設定してもよい。この場合、各透過率の分母の値が同じになり、各検出器からの透過輝度データを、透過率を示す値として直接比較できるので、検出処理を簡易にすることができる。
【0019】
上記の非破壊検査装置は、検出手段で放射線源の位置ずれが検出された際に視覚的又は聴覚的に報知する報知手段を更に備えてもよい。また、上記の非破壊検査装置は、検出手段で放射線源の位置ずれが検出された際に放射線源を照射方向又は照射方向に交差する面方向に沿って移動させる駆動手段を更に備えてもよい。このような報知手段や駆動手段を備えることにより、位置ずれが検出された放射線源を早期に適正な位置に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る非破壊検査装置の斜視図である。
【図2】図1に示した非破壊検査装置の概略構成図である。
【図3】各検出器の画素間での対応関係を表す図であり、(a)が側面図であり、(b)が正面図である。
【図4】X線源が移動した際の対応画素のずれを表す図である。
【図5】シェーディング補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図6】暗電流補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図7】エネルギ範囲の異なる検出器で測定した透過率の例を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る非破壊検査装置の変形例の概略構成図である。
【図9】図7に示す透過率を輝度値で示した図である。
【図10】図8に示した非破壊検査装置での位置ずれ検出方法を示すフローチャートである。
【図11】非破壊検査装置の変形例を示す図である。
【図12】被検査物をトレイで搬送した場合の例を示した図であり、(a)は側面図、(b)は一部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1及び図2に示されるように、非破壊検査装置1は、X線源からのX線(放射線)を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射し、照射されたX線のうち被検査物Sを透過した透過X線を複数のエネルギ範囲で検出する装置である。非破壊検査装置1は、透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査や手荷物検査などを行う。このような非破壊検査装置1は、ベルトコンベア10(搬送手段)、X線照射器20(放射線源)、低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40、制御部50、画像処理装置60及び解析装置70を備えている。低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40及び制御部50から、デュアル画像取得装置80が構成される。
【0024】
ベルトコンベア10は、図1に示されるように、被検査物Sが載置されるベルト部12を有する。ベルトコンベア10は、ベルト部12を搬送方向Yに移動させることで、被検査物Sを所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送する。被検査物Sの搬送速度は、例えば48m/分である。ベルトコンベア10は、必要に応じて、例えば24m/分や96m/分といった搬送速度に速度を変更することができる。ベルトコンベア10で搬送される被検査物Sとしては、例えば、食肉やレトルト等の食品、タイヤなどのゴム製品、手荷物検査のための手荷物、樹脂製品、ワイヤなどの金属製品、鉱物など資源材料、分別や資源回収のための廃棄物、電子部品等など広くあげることができる。
【0025】
X線照射器20は、被検査物Sに向けて、X線を照射方向Zに照射する装置であり、X線源として機能する。X線照射器20は、点光源であり、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する検出方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させる照射を行う。X線照射器20は、X線の照射方向Zがベルト部12に向けられると共に、拡散するX線が被検査物Sの幅方向(検出方向X)全体に及ぶように、ベルト部12から所定の距離を離れてベルト部12の上方に配置される。X線照射器20は、被検査物Sの長さ方向(搬送方向Y)においては、長さ方向における所定の分割範囲Snが照射範囲とされ(図3の(a)参照)、被検査物Sがベルトコンベア10で搬送方向Yに搬送されることにより、被検査物Sの長さ方向全体に対してX線が照射されるようになっている。
【0026】
低エネルギ画像取得部30は、低エネルギ検出器32(第1の放射線検出器)と、低エネルギ画像補正部34とを有している。
【0027】
低エネルギ検出器32は、X線の入射方向Zにおいて上流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲Snを透過した低エネルギ範囲(第1のエネルギ範囲)のX線を検出して(図3の(a)参照)、低エネルギ画像データを生成する。低エネルギ検出器32は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した低エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。
【0028】
低エネルギ検出器32は、低エネルギ用のシンチレータ層と低エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。低エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、低エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。低エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素32n(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による低エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される低エネルギ画像は、ラインセンサの画素32n毎に取得される輝度データの集合体から構成される。
【0029】
低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ検出器32で画素毎に生成された低エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された低エネルギ画像を取得する部分である。低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ34a、アンプ34aで増幅された低エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部34b、A/D変換部34bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路34c、補正回路34cで補正された輝度データを低エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス34dと、を有している。
【0030】
高エネルギ画像取得部40は、高エネルギ検出器42(第2の放射線検出器)と、高エネルギ画像補正部44とを有している。
【0031】
高エネルギ検出器42は、X線の入射方向Zにおいて低エネルギ検出器32よりも下流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲Sn及び低エネルギ検出器32を透過した高エネルギ範囲(第2のエネルギ範囲)のX線を検出して、高エネルギ画像データを生成する。高エネルギ検出器42は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した高エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。なお、低エネルギ検出器32で検出される低エネルギ範囲と高エネルギ検出器42で検出される高エネルギ範囲とは、明確に区別されるものではなく、エネルギ範囲がある程度、重なるようになっていてもよい。
【0032】
高エネルギ検出器42は、高エネルギ用のシンチレータ層と高エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。高エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、高エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。高エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素42n(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による高エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される高エネルギ画像は、ラインセンサの画素42n毎に取得される輝度データの集合体から構成される。なお、低エネルギ検出器32のラインセンサと高エネルギ検出器42のラインセンサとが同じセンサから構成され、シンチレータ層を異ならせること等により、両者をそれぞれ低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とにするようにしてもよい。
【0033】
高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ検出器42で画素毎に生成された高エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された高エネルギ画像を取得する部分である。高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ44a、アンプ44aで増幅された高エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部44b、A/D変換部44bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路44c、補正回路44cで補正された輝度データを高エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス44dと、を有している。
【0034】
制御部50は、被検査物Sの搬送方向Yにおける分割範囲Snが両検出器32,42による検出で互いに対応するように、低エネルギ検出器32での透過X線の検出タイミングと高エネルギ検出器42での透過X線の検出タイミングとを制御する。この制御部50による検出タイミングの制御により、低エネルギ画像データと高エネルギ画像データとをサブトラクション処理した際に生じる画像ずれを低減させることができる。
【0035】
また、X線照射器20が点光源でありX線が放射状に広がることから、低エネルギ検出器32の各画素32nと高エネルギ検出器42の各画素42nとがZ方向における上下で完全に対応しない箇所がある。即ち、検出方向Xの端に向かうに従って、低エネルギ検出器32の各画素32nと高エネルギ検出器42の各画素42nとの対応関係が検出方向Xにずれることになる。そこで、制御部50は、被検査物Sの検査方向Xにおける低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとがそれぞれ対応するように、低エネルギ検出器32の画素毎の各輝度データと高エネルギ検出器42の画素毎の各輝度データとの対応関係を制御する。なお、このような画素間の対応は、キャリブレーション部材を用いることにより、行うことが可能であり、対応手法については、公知の技術を適宜用いることができる。
【0036】
画像処理装置60は、低エネルギ画像取得部30で検出及び生成された低エネルギ画像データと高エネルギ画像取得部40で検出及び生成された高エネルギ画像データとの差分データを求める演算処理(サブトラクション処理)を行い、合成画像であるサブトラクション像を生成する装置である。画像処理装置60に入力される両エネルギ画像データは、制御部50により、搬送方向Yにおける互いの画像データが対応するように検出タイミングが制御されおり、また各画素間での対応関係も制御されている。
【0037】
画像処理装置60は、このような演算処理により生成したサブトラクション像をディスプレイ等に出力表示する。この出力表示により、被検査物Sを破壊することなく被検査物Sに含まれる異物等を目視で確認することができる。なお、サブトラクション像を出力表示せずにデータの出力のみを行い、画像データ上での検出処理により画像データから直接、被検査物Sに含まれる異物等を検出するようにしてもよい。
【0038】
解析装置70は、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とで検出した被検査物Sの同じ対応箇所SnのX線透過率の比から、X線照射器20の位置ずれを検出する装置である。非破壊検査装置1では、異物検査等を続けていると放射線源や非破壊検査装置の温度による変位・変形(熱膨張)によって放射線源の光源位置が移動(焦点移動)することによりX線照射器20の位置がずれ、制御部50によって事前調整した各画素32nと各画素42nとの間の対応関係がずれてしまい、放射線画像間で所定の演算を行った際に、演算結果に疑似エッジが発生する場合がある。この解析装置70によってX線照射器20の位置ずれを検出することで、本実施形態では、疑似エッジの発生を抑制している。
【0039】
このような解析装置70は、低エネルギ透過率算出部72(第1の算出手段)、高エネルギ透過率算出部74(第2の算出手段)、検出部76(検出手段)及び警報装置78(報知手段)を有している。
【0040】
低エネルギ透過率算出部72は、低エネルギ検出器32で検出されたX線の輝度データから、低エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域Sn毎に算出する。低エネルギ透過率算出部72は、補正値算出部72a、記憶部72b、輝度補正部72c及び透過率算出部72dを含んで構成される。
【0041】
補正値算出部72aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データを低エネルギ検出器32からまずは取得する。取得した低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn(n=1〜N:Nは整数)は、低エネルギ検出器32の検査方向Xに沿って配置された画素32nそれぞれに対応するデータであり、例えば図5の(a)に示されるように、ばらついている。
【0042】
なお、図5の(a)では、128画素を有するラインセンサがX方向に10個連結されて低エネルギ検出器32が構成された場合の例を示している。被検査物Sが存在しない状態にも拘わらずこのようなバラツキが発生するのは、X線照射器20からのX線の検出方向Xに沿った強さバラツキや低エネルギ検出器32での検出感度のバラツキなどがあるためである。
【0043】
そこで、補正値算出部72aは、シェーディング補正等を行うことにより、図5の(b)に示されるように、画素32n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLnを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDL、補正係数をFLとすると、これらの関係は以下の式(1)で表すことができる。
DL=FL×RLn・・・(1)
【0044】
そして、補正値算出部72aは、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する。補正関数FLは、すべての画素32nからの生輝度データRLnに対応する関数であり、補正値算出部72aは、算出した補正関数FLを記憶部72bに出力する。また、補正値算出部72aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DLを記憶部72bに出力する。輝度値DLとしては、生輝度データの平均値を用いてもよいし、最小値や最大値を用いてもよく、適宜設定することができる。なお、X線の生輝度データRLnを取得する前処理として、図6に示されるような暗電流補正を行って初期ノイズを除去しておいてもよく(同図の(b)参照)、この場合、より精度良い測定を行うことができる。
【0045】
記憶部72bは、補正値算出部72aから出力された補正関数FL及び標準化された輝度値DLを格納する。記憶部72bは、後述する輝度補正部72cや透過率算出部72dからの呼び出しに応じて、補正関数FL又は標準化された輝度値DLを輝度補正部72cや透過率算出部72dに出力する。
【0046】
輝度補正部72cは、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’(n=1〜N:Nは整数)を低エネルギ検出器32から対応領域Sn毎に取得する。X線の生輝度データRLn’は、低エネルギ検出器32の画素32nにそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所Sn毎に順に取得される。
【0047】
輝度補正部72cは、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を対応領域Sn毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、下記の式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDLn’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DLn’=FL×RLn’・・・(2)
輝度補正部72cは、補正後の各輝度データDLn’を取得すると、取得した輝度データDLn’を透過率算出部72dに出力する。
【0048】
透過率算出部72dは、補正後の輝度データDLn’を取得すると、記憶部72bから標準化された輝度値DLを取得し、低エネルギ範囲における透過率PL=DLn’/DL(第1の透過率)を算出する。透過率算出部72dは、算出した透過率PLを検出部76に出力する。
【0049】
高エネルギ透過率算出部74は、高エネルギ検出器42で検出されたX線の輝度データから、高エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域Sn毎に算出する。高エネルギ透過率算出部74で算出される各輝度データは、低エネルギ透過率算出部72で算出される各輝度データと被検査物Sの対応領域Snが同じとなるように調整されたデータであり、互いに対応している。高エネルギ透過率算出部74は、補正値算出部74a、記憶部74b、輝度補正部74c及び透過率算出部74dを含んで構成される。
【0050】
補正値算出部74aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データを高エネルギ検出器42から取得する。取得した高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn(n=1〜N:Nは整数)は、高エネルギ検出器42の検査方向Xに沿って配置された画素42nそれぞれに対応するデータであり、低エネルギ検出器32からのデータと同様に、ばらついている。
【0051】
そこで、補正値算出部74aは、補正値算出部72aと同様に、シェーディング補正等を行うことにより、画素42n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHnを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDH、補正係数をFHとすると、これらの関係は以下の式(3)で表すことができる。
DH=FH×RHn・・・(3)
【0052】
そして、補正値算出部74aは、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する。補正関数FHは、すべての画素42nからの生輝度データRHnに対応する関数であり、補正値算出部74aは、算出した補正関数FHを記憶部74bに出力する。また、補正値算出部74aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DHを記憶部74bに出力する。
【0053】
記憶部74bは、補正値算出部74aから出力された補正関数FH及び標準化された輝度値DHを格納する。記憶部74bは、後述する輝度補正部74cや透過率算出部74dからの呼び出しに応じて、補正関数FH又は標準化された輝度値DHを輝度補正部74cや透過率算出部74dに出力する。
【0054】
輝度補正部74cは、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’(n=1〜N:Nは整数)を高エネルギ検出器42から対応領域Sn毎に連続して取得する。X線の生輝度データRHn’は、高エネルギ検出器42の画素42nにそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所Sn毎に順に取得される。
【0055】
輝度補正部74cは、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を対応領域Sn毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、下記の式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じて、補正後の輝度データDHn’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DHn’=FH×RHn’・・・(4)
輝度補正部74cは、補正後の各輝度データDHn’を取得すると、取得した輝度データDHn’を透過率算出部74dに出力する。
【0056】
透過率算出部74dは、補正後の輝度データDHn’を取得すると、記憶部74bから標準化された輝度値DHを取得し、高エネルギ範囲における透過率PH=DHn’/DH(第2の透過率)を算出する。透過率算出部74dは、算出した透過率PHを検出部76に出力する。
【0057】
検出部76は、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率PL(=DLn’/DL)と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率PH(=DHn’/DH)との比を算出して、X線照射器20の位置ずれを検出する。この比は、以下の式(5)で表される。
透過率の比=PH/PL・・・(5)
【0058】
そして、検出部76は、上述した式(5)に基づいた透過率の比PH/PLが、閾値である1よりも大きいか否かを以下の式(6)に基づいて判定する。
PH/PL>1・・・(6)
【0059】
ここで、閾値を1とした理由について簡単に説明する。X線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいため、仮に被検査物Sで同じ経路(つまり同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出すると、高エネルギ範囲の透過率の方が必ず高くなる。例えば、図7に示されるように、ゴムを透過したX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出すると、低エネルギ範囲の透過率が0.588であるのに対し、高エネルギ範囲の透過率は0.722となり、その透過率の比PH/PLは1.228となり、1よりも大きくなる。
【0060】
また、別の物体であるワイヤを透過したX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出すると、低エネルギ範囲の透過率が0.181であるのに対し、高エネルギ範囲の透過率は0.327となり、その透過率の比PH/PLは1.807となり、これも1よりも大きくなる。例えば、検査用の指標として用いられるX線用のチャートであっても透過率の比PH/PLは必ず1よりも大きくなる。また食品の一例として挙げられるレトルト食品でも同様に、透過率の比PH/PLは必ず1よりも大きくなる。
【0061】
つまり、上述した式(6)を満たしている場合、被検査物Sで同じ経路(同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出している可能性が高くなり、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように事前調整されている対応関係が維持されていると判定することができる。一方、上述した式(6)を満たさない場合、すなわち、高エネルギ範囲の透過性の方が低エネルギ範囲の透過性よりも低くなる場合は、被検査物Sで同じ経路をたどっていない(異なる材料部分を通過した)X線を比較している可能性が高く、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように調整されている対応関係が維持されていないと判定することができる。
【0062】
検出部76は、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように調整されている対応関係が維持されていないと判定した場合、つまり、透過率の比PH/PLが1以下となった場合、図4に示されるようなX線照射器20の位置ずれによって、これら対応関係がずれたものと推定して、X線照射器20の位置ずれがあったと検出する。検出部76は、X線照射器20の位置ずれを検出すると、検出信号を警報装置78に出力する。
【0063】
警報装置78は、検出信号を検出部76から受信すると、X線照射器20の位置ずれがあった旨の警報を鳴動する。これにより、非破壊検査装置1での透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査等を行っている作業者等に対して、X線照射器20の位置ずれを早期に知らせることができる。
【0064】
ところで、上記実施形態では、低エネルギ透過率算出部72で用いられる輝度値DLと、高エネルギ透過率算出部74で用いられる輝度値DHとが同じ値になるように補正処理を行っている。この場合、算出される各透過率の分母が同じになるため、透過率を直接算出する必要がなくなり、例えば図8に示されるように、両透過率算出部72,74が透過率算出部72d,74dを含まない構成とすることもできる。このような構成では、輝度補正部72cから輝度データDLn’を検出部76にそのまま出力し、輝度補正部74cから輝度データDHn’を検出部76にそのまま出力する。なお、ここでいう、補正後の輝度データDLn’は、低エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能し、補正後の輝度データDHn’は、高エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能することになる。
【0065】
検出部76では、輝度補正部72cから補正後の輝度データDLn’を取得し、輝度補正部74cから補正後の輝度データDHn’を取得すると、これらの輝度データから透過率の比=PH/PLを算出する。輝度値DLとDHとが同じ値であることから、透過率の比PH/PLは、以下の式(7)で表される。
透過率の比=PH/PL=DHn’/DLn’・・・(7)
【0066】
そして、検出部76は上述した処理と同様の検出処理を行って、X線照射器20の位置ずれがあったか否かを検出する。なお、このように輝度データを直接用いた場合であっても、図9に示されるように、各物体におけるX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出して算出した透過率の比は、閾値である1よりも大きくなる。
【0067】
続いて、図8に示された非破壊検査装置1を例にとって、X線照射器20の位置ずれを検出する検出方法を、図10を参照して説明する。
【0068】
まず、補正値算出部72aによって、被検査物Sが存在しない状態での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データRLnを低エネルギ検出器32から取得する。その後、補正値算出部72aによってこれら輝度データRLnにシェーディング補正等を行うことにより、画素32n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLnを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部72aによって、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する(ステップS1)。
【0069】
続いて、輝度補正部72cによって、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を低エネルギ検出器32から取得する。輝度補正部72cによって、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を取得すると、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、上述した式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDLn’を取得する(ステップS2)。補正後の各輝度データDLn’が取得されると、取得した輝度データDLn’が検出部76に出力される。
【0070】
また、補正値算出部74aによって、被検査物Sが存在しない状態での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データRHnを高エネルギ検出器42から取得する。その後、補正値算出部74aによってこれら輝度データRHnにシェーディング補正等を行うことにより、画素42n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHnを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部74aによって、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する(ステップS3)。
【0071】
続いて、輝度補正部74cによって、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を高エネルギ検出器42から取得する。輝度補正部74cによって、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を取得すると、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、上述した式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じ、補正後の各輝度データDHn’を取得する(ステップS4)。補正後の各輝度データDHn’が取得されると、取得した輝度データDHn’が検出部76に出力される。
【0072】
続いて、検出部76によって、輝度補正部72cからの輝度データDLn’が取得され、輝度補正部74cからの輝度データDHn’が取得されると、これらの輝度データから透過率の比、すなわち輝度値の比=PH/PLが算出される(ステップS5)。そして、検出部76によって、この輝度値の比が閾値の1よりも大きいか否かについて判定される(ステップS6)。
【0073】
ステップS6での判定により、輝度値の比が閾値の1よりも大きければ、検出処理を継続し、輝度値の比が閾値1以下であれば、検出処理を終了し、ステップS7に移って警報を鳴動する。これにより、非破壊検査装置1において、X線照射器20の位置ずれを早期に知らせることができる。
【0074】
このように、本実施形態の非破壊検査装置1によれば、被検査物Sを透過した放射線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比に基づいてX線照射器20の位置ずれを検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、このように互いに対応するよう調整された両検出器32,42での物体の透過率を示す値の比を参照することで、かかる対応関係が継続して維持されているか否かを容易に検出することができる。よって、本実施形態によれば、2段に重ねられたデュアル画像取得装置80の画素32n,42n間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【0075】
しかも、非破壊検査装置1及び当該検査装置1での検出方法によれば、X線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。この場合、非破壊検査装置1の検出器32,42で通常取得される輝度データを利用しているので、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。
【0076】
また、非破壊検査装置1及び当該検査装置1での検出方法において、低エネルギ透過率算出部72及び高エネルギ透過率算出部74は、基礎となる輝度データDLとDHとが同じになるように補正関数FL,FHを設定している。このため、各透過率の分母の値が同じになり、各検出器32,42からの透過輝度データを、透過率を示す値として直接比較できるので、検出処理を簡易にすることができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、検出部76でX線照射器20の位置ずれがあったと判定した場合、警報装置78を鳴動させていたが、図11に示されるように、警報とは別に又は警報と共に、X線照射器20の位置を光源駆動装置90によって上下又は水平面方向に調整させるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、解析装置70において、透過率の比PH/PLを閾値1と比較してX線照射器20の位置ずれを判定していたが、下記の式(8)に示すように、低エネルギ範囲における透過率PLと高エネルギ範囲における透過率PHとの差が所定の閾値である0(ゼロ)よりも大きいか否かで判定するようにしてもよい。
PH―PL>0・・・(8)
【0079】
この場合、PH―PLが0よりも大きければ、X線照射器20の位置ずれがないと判定し、PH―PLが0以下となれば、X線照射器20の位置ずれがあったと解析装置70にて判定することができる。なお、透過率の差を用いる場合の閾値0は、透過率の差を求める場合の閾値1と同様の考えで設定される。
【0080】
また、上記実施形態では、基礎となる輝度データDLとDHとが同じになるように補正関数FL,FHを設定していたが、取得される輝度データによっては、基礎となる輝度データDLとDHとが同じ値にならないように補正関数FL,FHを設定してもよい。但し、この場合は、透過率の分母を省略することはできないので、透過率同士で比較する必要がある。比較検出は、上述した実施形態と同様である。
【0081】
また、上記実施形態では、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データを、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での範囲におけるX線の輝度データとしているが、図12に示されるように、トレイT内に被検査物Sが治められたものを検査する場合には、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データとして、ベルトコンベア10に加えトレイTも含めた状態、言い換えると、被検査物Sに含まれない部分でのX線の輝度データを求め、これを用いて各透過率を算出するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、画像補正部34,44と透過率算出部72,74とを別々に設けた場合で説明したが、画像補正部34,44の出力インターフェースから出力されるデータを用いて、透過率算出部72,74で算出される透過率を算出するようにしてもよい。つまり、透過率算出部72,74の機能の一部又は全部と画像補正部34,44とが共用される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…非破壊検査装置、10…ベルトコンベア、20…X線照射器、32…低エネルギ検出器、42…高エネルギ検出器、70…解析装置、72…低エネルギ透過率算出部、74…高エネルギ透過率算出部、76…検出部、78…警報装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置及び当該装置での位置ずれの検出方法に関する。特に本発明は、非破壊検査に用いられる放射線源の位置ずれを検出できる非破壊検査装置及び当該装置での放射線源の位置ずれの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や工業製品などの被検査物にX線などの放射線を照射し、被検査物を透過した放射線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲といった異なる範囲で検出し、非破壊検査を行うデュアルエナジータイプの検査装置が知られている。このような非破壊検査装置によれば、低エネルギ範囲の放射線画像と高エネルギ範囲の放射線画像とを同時に取得することができる。
【0003】
そして、これら異なるエネルギ範囲で取得された放射線画像間で所定の演算(割り算や差分、加算、乗算など)を行うことにより、例えばベルトコンベアで搬送される被検査物の非破壊検査において、複雑に混ざり合う成分分布の計測やコントラストの付きにくい異物の検出などを高精度で行うことができるようになっている。このような検査装置は、異なるエネルギ範囲で放射線画像を取得するため、各エネルギ範囲に対応する検出器をそれぞれ備えており、これら検出器を例えば縦に配置する構成を採用している(特許文献1の第9図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−002907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように検出器を2段に重ねた構成の検査装置では、放射線源が点光源であり、また放射線の照射方向における上流側の検出器に含まれる撮像素子と下流側の検出器に含まれる撮像素子との間に距離があることから、それぞれの撮像素子で取得される画像の間でずれが生じてしまう(図3の(b)参照)。このため、キャリブレーション部材などを用いて上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応を事前にとっておき、非破壊検査を行う際、上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素とが対応する放射線画像を取得できるようにしている。
【0006】
しかしながら、非破壊検査を連続して行っていると、放射線源や非破壊検査装置の温度による変位・変形(熱膨張)により放射線源の光源位置が移動(焦点移動)し、対応させてあった上流側の検出器の各画素と下流側の検出器の各画素との対応がとれなくなってしまう場合があった。このように各検出器の画素間での対応がとれなくなると、放射線画像間で所定の演算を行った際に、演算結果に生じる疑似エッジの発生などにより適正な放射線演算画像を取得できなくなり、非破壊検査の計測精度を低下させてしまうといった問題が生じてしまう。特にインラインで連続して非破壊検査を行う場合には、検査のたびにキャリブレーションを行うことが困難であり、画素間での対応がとれなくなった場合には、そのことを早期に知る必要があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる非破壊検査装置及び当該装置での検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非破壊検査装置は、搬送手段と、放射線源と、第1及び第2の放射線検出器と、第1及び第2の算出手段と、検出手段と、を備えた装置である。搬送手段は、被検査物を所定の方向に搬送する。放射線源は、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する。第1の放射線検出器は、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する。第2の放射線検出器は、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する。
【0009】
第1の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出手段は、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出手段は、第1の算出手段で算出された第1の透過率を示す値と第2の算出手段で算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出する。
【0010】
また、本発明に係る検出方法は、被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送方向と交差するように搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、放射線の照射方向において第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、放射線源の位置ずれを検出する方法である。
【0011】
この検出方法は、第1の算出ステップと、第2の算出ステップと、検出ステップとを備えている。第1の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。第2の算出ステップでは、放射線源から照射されて被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する。検出ステップでは、第1の算出ステップで算出された第1の透過率を示す値と第2の算出ステップで算出された第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出する。
【0012】
上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での検出方法によれば、被検査物を透過した放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比又は差に基づいて放射線源の位置ずれを検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、このように互いに対応するよう調整された両検出器での物体の透過率を示す値の比又は差を参照することで、かかる対応関係が継続して維持されているか否かを容易に検出することができる。よって、本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【0013】
しかも、上記した非破壊検査装置及び当該検査装置での検出方法によれば、放射線の第1及び第2のエネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。この場合、非破壊検査装置の放射線検出器で通常取得される輝度データを利用しているので、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。なお、第2の放射線検出器で検出される第2のエネルギ範囲は、範囲全体として第1のエネルギ範囲よりも高ければよく、その一部が第1のエネルギ範囲とオーバラップしていてもよい。
【0014】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、検出手段は、第1の透過率を示す値と第2の透過率を示す値との比又は差を所定の閾値と比較して放射線源の位置ずれを検出してもよい。この場合、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質等に基づいた所定の閾値を予め設定しておき、この閾値と透過率を示す値の比等とを比較することで、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを確実に検出することができる。なお、第1の放射線検出器は、搬送手段で搬送される被検査物を透過した放射線を第1のエネルギ範囲で検出し、第2の放射線検出器は、搬送手段で搬送される被検査物を透過した放射線を第2のエネルギ範囲で検出するように構成されている。
【0015】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1の算出手段は、被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第1の基礎輝度データと、被検査物を透過した放射線の第1のエネルギ範囲における第1の透過輝度データとに基づいて、第1の透過率を示す値を算出してもよい。また、第2の算出手段は、被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第2の基礎輝度データと、被検査物を透過した放射線の第2のエネルギ範囲における第2の透過輝度データとに基づいて、第2の透過率を示す値を算出してもよい。このような算出により、各透過率を示す値を輝度データから確実に算出することができる。
【0016】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1の算出手段は、被検査物を除外した状態又は被検査物に含まれない部分において第1の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して第1の基礎輝度データを算出すると共に、被検査物を透過した放射線を第1の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、当該補正に用いた第1の補正関数を乗じて、第1の透過輝度データを算出してもよい。また、第2の算出手段は、被検査物を除外した状態又は被検査物に含まれない部分において第2の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して第2の基礎輝度データを算出すると共に、被検査物を透過した放射線を第2の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、補正に用いた第2の補正関数を乗じて、第2の透過輝度データを算出してもよい。
【0017】
この場合、生データを補正して基礎輝度データを算出すると共に、基礎輝度データを適正値に補正するための関数を用いて透過輝度データを算出しているため、より精度がよい基礎輝度データや透過輝度データを得ることができる。そして、高精度の輝度データを用いることにより、透過率を示す値を精度よく算出することができ、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを精度よく知ることができる。
【0018】
上記の非破壊検査装置及び検出方法において、第1及び第2の算出手段は、第1及び第2の基礎輝度データが同じになるように第1及び第2の補正関数を設定してもよい。この場合、各透過率の分母の値が同じになり、各検出器からの透過輝度データを、透過率を示す値として直接比較できるので、検出処理を簡易にすることができる。
【0019】
上記の非破壊検査装置は、検出手段で放射線源の位置ずれが検出された際に視覚的又は聴覚的に報知する報知手段を更に備えてもよい。また、上記の非破壊検査装置は、検出手段で放射線源の位置ずれが検出された際に放射線源を照射方向又は照射方向に交差する面方向に沿って移動させる駆動手段を更に備えてもよい。このような報知手段や駆動手段を備えることにより、位置ずれが検出された放射線源を早期に適正な位置に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2段に重ねられた放射線検出器の画素間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る非破壊検査装置の斜視図である。
【図2】図1に示した非破壊検査装置の概略構成図である。
【図3】各検出器の画素間での対応関係を表す図であり、(a)が側面図であり、(b)が正面図である。
【図4】X線源が移動した際の対応画素のずれを表す図である。
【図5】シェーディング補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図6】暗電流補正の概要を示す図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示す。
【図7】エネルギ範囲の異なる検出器で測定した透過率の例を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る非破壊検査装置の変形例の概略構成図である。
【図9】図7に示す透過率を輝度値で示した図である。
【図10】図8に示した非破壊検査装置での位置ずれ検出方法を示すフローチャートである。
【図11】非破壊検査装置の変形例を示す図である。
【図12】被検査物をトレイで搬送した場合の例を示した図であり、(a)は側面図、(b)は一部上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1及び図2に示されるように、非破壊検査装置1は、X線源からのX線(放射線)を照射方向Zへ向けて被検査物Sに照射し、照射されたX線のうち被検査物Sを透過した透過X線を複数のエネルギ範囲で検出する装置である。非破壊検査装置1は、透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査や手荷物検査などを行う。このような非破壊検査装置1は、ベルトコンベア10(搬送手段)、X線照射器20(放射線源)、低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40、制御部50、画像処理装置60及び解析装置70を備えている。低エネルギ画像取得部30、高エネルギ画像取得部40及び制御部50から、デュアル画像取得装置80が構成される。
【0024】
ベルトコンベア10は、図1に示されるように、被検査物Sが載置されるベルト部12を有する。ベルトコンベア10は、ベルト部12を搬送方向Yに移動させることで、被検査物Sを所定の搬送速度で搬送方向Yに搬送する。被検査物Sの搬送速度は、例えば48m/分である。ベルトコンベア10は、必要に応じて、例えば24m/分や96m/分といった搬送速度に速度を変更することができる。ベルトコンベア10で搬送される被検査物Sとしては、例えば、食肉やレトルト等の食品、タイヤなどのゴム製品、手荷物検査のための手荷物、樹脂製品、ワイヤなどの金属製品、鉱物など資源材料、分別や資源回収のための廃棄物、電子部品等など広くあげることができる。
【0025】
X線照射器20は、被検査物Sに向けて、X線を照射方向Zに照射する装置であり、X線源として機能する。X線照射器20は、点光源であり、照射方向Z及び搬送方向Yに直交する検出方向Xに所定の角度範囲でX線を拡散させる照射を行う。X線照射器20は、X線の照射方向Zがベルト部12に向けられると共に、拡散するX線が被検査物Sの幅方向(検出方向X)全体に及ぶように、ベルト部12から所定の距離を離れてベルト部12の上方に配置される。X線照射器20は、被検査物Sの長さ方向(搬送方向Y)においては、長さ方向における所定の分割範囲Snが照射範囲とされ(図3の(a)参照)、被検査物Sがベルトコンベア10で搬送方向Yに搬送されることにより、被検査物Sの長さ方向全体に対してX線が照射されるようになっている。
【0026】
低エネルギ画像取得部30は、低エネルギ検出器32(第1の放射線検出器)と、低エネルギ画像補正部34とを有している。
【0027】
低エネルギ検出器32は、X線の入射方向Zにおいて上流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲Snを透過した低エネルギ範囲(第1のエネルギ範囲)のX線を検出して(図3の(a)参照)、低エネルギ画像データを生成する。低エネルギ検出器32は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した低エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。
【0028】
低エネルギ検出器32は、低エネルギ用のシンチレータ層と低エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。低エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、低エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。低エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素32n(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による低エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される低エネルギ画像は、ラインセンサの画素32n毎に取得される輝度データの集合体から構成される。
【0029】
低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ検出器32で画素毎に生成された低エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された低エネルギ画像を取得する部分である。低エネルギ画像補正部34は、低エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ34a、アンプ34aで増幅された低エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部34b、A/D変換部34bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路34c、補正回路34cで補正された輝度データを低エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス34dと、を有している。
【0030】
高エネルギ画像取得部40は、高エネルギ検出器42(第2の放射線検出器)と、高エネルギ画像補正部44とを有している。
【0031】
高エネルギ検出器42は、X線の入射方向Zにおいて低エネルギ検出器32よりも下流側に位置し、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sの所定の分割範囲Sn及び低エネルギ検出器32を透過した高エネルギ範囲(第2のエネルギ範囲)のX線を検出して、高エネルギ画像データを生成する。高エネルギ検出器42は、X線照射器20から照射されたX線のうち被検査物Sがない状態でベルトコンベア10を透過した高エネルギ範囲のX線も同様に検出可能となっている。なお、低エネルギ検出器32で検出される低エネルギ範囲と高エネルギ検出器42で検出される高エネルギ範囲とは、明確に区別されるものではなく、エネルギ範囲がある程度、重なるようになっていてもよい。
【0032】
高エネルギ検出器42は、高エネルギ用のシンチレータ層と高エネルギ用のラインセンサとを含んで構成される。高エネルギ用のシンチレータ層は、検出方向Xに沿って延在し、高エネルギ範囲のX線の像を光像に変換する。高エネルギ用のラインセンサは、検出方向Xに沿って配列された複数の画素42n(n=1〜N:Nは整数)を有し(図3の(b)参照)、シンチレータ層で変換された光像による高エネルギ画像を取得する。ラインセンサで取得される高エネルギ画像は、ラインセンサの画素42n毎に取得される輝度データの集合体から構成される。なお、低エネルギ検出器32のラインセンサと高エネルギ検出器42のラインセンサとが同じセンサから構成され、シンチレータ層を異ならせること等により、両者をそれぞれ低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とにするようにしてもよい。
【0033】
高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ検出器42で画素毎に生成された高エネルギ範囲の輝度データをそれぞれ増幅及び補正して、増幅補正された高エネルギ画像を取得する部分である。高エネルギ画像補正部44は、高エネルギ範囲の輝度データを増幅するアンプ44a、アンプ44aで増幅された高エネルギ範囲の輝度データをA/D変換するA/D変換部44b、A/D変換部44bで変換された輝度データに対して所定の補正処理を行う補正回路44c、補正回路44cで補正された輝度データを高エネルギ画像データとして外部に出力する出力インターフェイス44dと、を有している。
【0034】
制御部50は、被検査物Sの搬送方向Yにおける分割範囲Snが両検出器32,42による検出で互いに対応するように、低エネルギ検出器32での透過X線の検出タイミングと高エネルギ検出器42での透過X線の検出タイミングとを制御する。この制御部50による検出タイミングの制御により、低エネルギ画像データと高エネルギ画像データとをサブトラクション処理した際に生じる画像ずれを低減させることができる。
【0035】
また、X線照射器20が点光源でありX線が放射状に広がることから、低エネルギ検出器32の各画素32nと高エネルギ検出器42の各画素42nとがZ方向における上下で完全に対応しない箇所がある。即ち、検出方向Xの端に向かうに従って、低エネルギ検出器32の各画素32nと高エネルギ検出器42の各画素42nとの対応関係が検出方向Xにずれることになる。そこで、制御部50は、被検査物Sの検査方向Xにおける低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとがそれぞれ対応するように、低エネルギ検出器32の画素毎の各輝度データと高エネルギ検出器42の画素毎の各輝度データとの対応関係を制御する。なお、このような画素間の対応は、キャリブレーション部材を用いることにより、行うことが可能であり、対応手法については、公知の技術を適宜用いることができる。
【0036】
画像処理装置60は、低エネルギ画像取得部30で検出及び生成された低エネルギ画像データと高エネルギ画像取得部40で検出及び生成された高エネルギ画像データとの差分データを求める演算処理(サブトラクション処理)を行い、合成画像であるサブトラクション像を生成する装置である。画像処理装置60に入力される両エネルギ画像データは、制御部50により、搬送方向Yにおける互いの画像データが対応するように検出タイミングが制御されおり、また各画素間での対応関係も制御されている。
【0037】
画像処理装置60は、このような演算処理により生成したサブトラクション像をディスプレイ等に出力表示する。この出力表示により、被検査物Sを破壊することなく被検査物Sに含まれる異物等を目視で確認することができる。なお、サブトラクション像を出力表示せずにデータの出力のみを行い、画像データ上での検出処理により画像データから直接、被検査物Sに含まれる異物等を検出するようにしてもよい。
【0038】
解析装置70は、低エネルギ検出器32と高エネルギ検出器42とで検出した被検査物Sの同じ対応箇所SnのX線透過率の比から、X線照射器20の位置ずれを検出する装置である。非破壊検査装置1では、異物検査等を続けていると放射線源や非破壊検査装置の温度による変位・変形(熱膨張)によって放射線源の光源位置が移動(焦点移動)することによりX線照射器20の位置がずれ、制御部50によって事前調整した各画素32nと各画素42nとの間の対応関係がずれてしまい、放射線画像間で所定の演算を行った際に、演算結果に疑似エッジが発生する場合がある。この解析装置70によってX線照射器20の位置ずれを検出することで、本実施形態では、疑似エッジの発生を抑制している。
【0039】
このような解析装置70は、低エネルギ透過率算出部72(第1の算出手段)、高エネルギ透過率算出部74(第2の算出手段)、検出部76(検出手段)及び警報装置78(報知手段)を有している。
【0040】
低エネルギ透過率算出部72は、低エネルギ検出器32で検出されたX線の輝度データから、低エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域Sn毎に算出する。低エネルギ透過率算出部72は、補正値算出部72a、記憶部72b、輝度補正部72c及び透過率算出部72dを含んで構成される。
【0041】
補正値算出部72aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データを低エネルギ検出器32からまずは取得する。取得した低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn(n=1〜N:Nは整数)は、低エネルギ検出器32の検査方向Xに沿って配置された画素32nそれぞれに対応するデータであり、例えば図5の(a)に示されるように、ばらついている。
【0042】
なお、図5の(a)では、128画素を有するラインセンサがX方向に10個連結されて低エネルギ検出器32が構成された場合の例を示している。被検査物Sが存在しない状態にも拘わらずこのようなバラツキが発生するのは、X線照射器20からのX線の検出方向Xに沿った強さバラツキや低エネルギ検出器32での検出感度のバラツキなどがあるためである。
【0043】
そこで、補正値算出部72aは、シェーディング補正等を行うことにより、図5の(b)に示されるように、画素32n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLnを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDL、補正係数をFLとすると、これらの関係は以下の式(1)で表すことができる。
DL=FL×RLn・・・(1)
【0044】
そして、補正値算出部72aは、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する。補正関数FLは、すべての画素32nからの生輝度データRLnに対応する関数であり、補正値算出部72aは、算出した補正関数FLを記憶部72bに出力する。また、補正値算出部72aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DLを記憶部72bに出力する。輝度値DLとしては、生輝度データの平均値を用いてもよいし、最小値や最大値を用いてもよく、適宜設定することができる。なお、X線の生輝度データRLnを取得する前処理として、図6に示されるような暗電流補正を行って初期ノイズを除去しておいてもよく(同図の(b)参照)、この場合、より精度良い測定を行うことができる。
【0045】
記憶部72bは、補正値算出部72aから出力された補正関数FL及び標準化された輝度値DLを格納する。記憶部72bは、後述する輝度補正部72cや透過率算出部72dからの呼び出しに応じて、補正関数FL又は標準化された輝度値DLを輝度補正部72cや透過率算出部72dに出力する。
【0046】
輝度補正部72cは、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’(n=1〜N:Nは整数)を低エネルギ検出器32から対応領域Sn毎に取得する。X線の生輝度データRLn’は、低エネルギ検出器32の画素32nにそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所Sn毎に順に取得される。
【0047】
輝度補正部72cは、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を対応領域Sn毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、下記の式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDLn’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DLn’=FL×RLn’・・・(2)
輝度補正部72cは、補正後の各輝度データDLn’を取得すると、取得した輝度データDLn’を透過率算出部72dに出力する。
【0048】
透過率算出部72dは、補正後の輝度データDLn’を取得すると、記憶部72bから標準化された輝度値DLを取得し、低エネルギ範囲における透過率PL=DLn’/DL(第1の透過率)を算出する。透過率算出部72dは、算出した透過率PLを検出部76に出力する。
【0049】
高エネルギ透過率算出部74は、高エネルギ検出器42で検出されたX線の輝度データから、高エネルギ範囲における被検査物SのX線透過率を対応領域Sn毎に算出する。高エネルギ透過率算出部74で算出される各輝度データは、低エネルギ透過率算出部72で算出される各輝度データと被検査物Sの対応領域Snが同じとなるように調整されたデータであり、互いに対応している。高エネルギ透過率算出部74は、補正値算出部74a、記憶部74b、輝度補正部74c及び透過率算出部74dを含んで構成される。
【0050】
補正値算出部74aは、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データを高エネルギ検出器42から取得する。取得した高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn(n=1〜N:Nは整数)は、高エネルギ検出器42の検査方向Xに沿って配置された画素42nそれぞれに対応するデータであり、低エネルギ検出器32からのデータと同様に、ばらついている。
【0051】
そこで、補正値算出部74aは、補正値算出部72aと同様に、シェーディング補正等を行うことにより、画素42n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHnを例えば輝度値3200に標準化する。この標準化された輝度値をDH、補正係数をFHとすると、これらの関係は以下の式(3)で表すことができる。
DH=FH×RHn・・・(3)
【0052】
そして、補正値算出部74aは、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する。補正関数FHは、すべての画素42nからの生輝度データRHnに対応する関数であり、補正値算出部74aは、算出した補正関数FHを記憶部74bに出力する。また、補正値算出部74aは、基礎輝度データとして、標準化された輝度値DHを記憶部74bに出力する。
【0053】
記憶部74bは、補正値算出部74aから出力された補正関数FH及び標準化された輝度値DHを格納する。記憶部74bは、後述する輝度補正部74cや透過率算出部74dからの呼び出しに応じて、補正関数FH又は標準化された輝度値DHを輝度補正部74cや透過率算出部74dに出力する。
【0054】
輝度補正部74cは、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’(n=1〜N:Nは整数)を高エネルギ検出器42から対応領域Sn毎に連続して取得する。X線の生輝度データRHn’は、高エネルギ検出器42の画素42nにそれぞれ対応しており、被検査物Sの対応箇所Sn毎に順に取得される。
【0055】
輝度補正部74cは、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を対応領域Sn毎に取得すると、上述したシェーディング補正と同様の補正を行うため、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、下記の式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じて、補正後の輝度データDHn’(n=1〜N:Nは整数)を取得する。
DHn’=FH×RHn’・・・(4)
輝度補正部74cは、補正後の各輝度データDHn’を取得すると、取得した輝度データDHn’を透過率算出部74dに出力する。
【0056】
透過率算出部74dは、補正後の輝度データDHn’を取得すると、記憶部74bから標準化された輝度値DHを取得し、高エネルギ範囲における透過率PH=DHn’/DH(第2の透過率)を算出する。透過率算出部74dは、算出した透過率PHを検出部76に出力する。
【0057】
検出部76は、低エネルギ透過率算出部72で算出された透過率PL(=DLn’/DL)と、高エネルギ透過率算出部74で算出された透過率PH(=DHn’/DH)との比を算出して、X線照射器20の位置ずれを検出する。この比は、以下の式(5)で表される。
透過率の比=PH/PL・・・(5)
【0058】
そして、検出部76は、上述した式(5)に基づいた透過率の比PH/PLが、閾値である1よりも大きいか否かを以下の式(6)に基づいて判定する。
PH/PL>1・・・(6)
【0059】
ここで、閾値を1とした理由について簡単に説明する。X線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいため、仮に被検査物Sで同じ経路(つまり同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出すると、高エネルギ範囲の透過率の方が必ず高くなる。例えば、図7に示されるように、ゴムを透過したX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出すると、低エネルギ範囲の透過率が0.588であるのに対し、高エネルギ範囲の透過率は0.722となり、その透過率の比PH/PLは1.228となり、1よりも大きくなる。
【0060】
また、別の物体であるワイヤを透過したX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出すると、低エネルギ範囲の透過率が0.181であるのに対し、高エネルギ範囲の透過率は0.327となり、その透過率の比PH/PLは1.807となり、これも1よりも大きくなる。例えば、検査用の指標として用いられるX線用のチャートであっても透過率の比PH/PLは必ず1よりも大きくなる。また食品の一例として挙げられるレトルト食品でも同様に、透過率の比PH/PLは必ず1よりも大きくなる。
【0061】
つまり、上述した式(6)を満たしている場合、被検査物Sで同じ経路(同じ材料部分)をたどったX線を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とで検出している可能性が高くなり、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように事前調整されている対応関係が維持されていると判定することができる。一方、上述した式(6)を満たさない場合、すなわち、高エネルギ範囲の透過性の方が低エネルギ範囲の透過性よりも低くなる場合は、被検査物Sで同じ経路をたどっていない(異なる材料部分を通過した)X線を比較している可能性が高く、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように調整されている対応関係が維持されていないと判定することができる。
【0062】
検出部76は、低エネルギ検出器32の画素32nと高エネルギ検出器42の画素42nとで対応するように調整されている対応関係が維持されていないと判定した場合、つまり、透過率の比PH/PLが1以下となった場合、図4に示されるようなX線照射器20の位置ずれによって、これら対応関係がずれたものと推定して、X線照射器20の位置ずれがあったと検出する。検出部76は、X線照射器20の位置ずれを検出すると、検出信号を警報装置78に出力する。
【0063】
警報装置78は、検出信号を検出部76から受信すると、X線照射器20の位置ずれがあった旨の警報を鳴動する。これにより、非破壊検査装置1での透過X線画像を用いて被検査物Sに含まれる異物検査等を行っている作業者等に対して、X線照射器20の位置ずれを早期に知らせることができる。
【0064】
ところで、上記実施形態では、低エネルギ透過率算出部72で用いられる輝度値DLと、高エネルギ透過率算出部74で用いられる輝度値DHとが同じ値になるように補正処理を行っている。この場合、算出される各透過率の分母が同じになるため、透過率を直接算出する必要がなくなり、例えば図8に示されるように、両透過率算出部72,74が透過率算出部72d,74dを含まない構成とすることもできる。このような構成では、輝度補正部72cから輝度データDLn’を検出部76にそのまま出力し、輝度補正部74cから輝度データDHn’を検出部76にそのまま出力する。なお、ここでいう、補正後の輝度データDLn’は、低エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能し、補正後の輝度データDHn’は、高エネルギ範囲における透過率を示す値の1つとして機能することになる。
【0065】
検出部76では、輝度補正部72cから補正後の輝度データDLn’を取得し、輝度補正部74cから補正後の輝度データDHn’を取得すると、これらの輝度データから透過率の比=PH/PLを算出する。輝度値DLとDHとが同じ値であることから、透過率の比PH/PLは、以下の式(7)で表される。
透過率の比=PH/PL=DHn’/DLn’・・・(7)
【0066】
そして、検出部76は上述した処理と同様の検出処理を行って、X線照射器20の位置ずれがあったか否かを検出する。なお、このように輝度データを直接用いた場合であっても、図9に示されるように、各物体におけるX線の透過率を低エネルギ範囲と高エネルギ範囲とでそれぞれ検出して算出した透過率の比は、閾値である1よりも大きくなる。
【0067】
続いて、図8に示された非破壊検査装置1を例にとって、X線照射器20の位置ずれを検出する検出方法を、図10を参照して説明する。
【0068】
まず、補正値算出部72aによって、被検査物Sが存在しない状態での低エネルギ範囲におけるX線の輝度データRLnを低エネルギ検出器32から取得する。その後、補正値算出部72aによってこれら輝度データRLnにシェーディング補正等を行うことにより、画素32n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRLnを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部72aによって、輝度値DLに標準化する際の補正に用いられた補正関数FLを上記の式(1)より算出する(ステップS1)。
【0069】
続いて、輝度補正部72cによって、被検査物Sが存在する状態での低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を低エネルギ検出器32から取得する。輝度補正部72cによって、低エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRLn’を取得すると、補正関数FLを記憶部72bから呼びだし、上述した式(2)に示すように、各生データに補正関数FLを乗じ、補正後の各輝度データDLn’を取得する(ステップS2)。補正後の各輝度データDLn’が取得されると、取得した輝度データDLn’が検出部76に出力される。
【0070】
また、補正値算出部74aによって、被検査物Sが存在しない状態での高エネルギ範囲におけるX線の輝度データRHnを高エネルギ検出器42から取得する。その後、補正値算出部74aによってこれら輝度データRHnにシェーディング補正等を行うことにより、画素42n毎の輝度バラツキを補正してすべての生輝度データRHnを例えば輝度値3200に標準化する。そして、補正値算出部74aによって、輝度値DHに標準化する際の補正に用いられた補正関数FHを上記の式(3)より算出する(ステップS3)。
【0071】
続いて、輝度補正部74cによって、被検査物Sが存在する状態での高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を高エネルギ検出器42から取得する。輝度補正部74cによって、高エネルギ範囲におけるX線の生輝度データRHn’を取得すると、補正関数FHを記憶部74bから呼びだし、上述した式(4)に示すように、各生データに補正関数FHを乗じ、補正後の各輝度データDHn’を取得する(ステップS4)。補正後の各輝度データDHn’が取得されると、取得した輝度データDHn’が検出部76に出力される。
【0072】
続いて、検出部76によって、輝度補正部72cからの輝度データDLn’が取得され、輝度補正部74cからの輝度データDHn’が取得されると、これらの輝度データから透過率の比、すなわち輝度値の比=PH/PLが算出される(ステップS5)。そして、検出部76によって、この輝度値の比が閾値の1よりも大きいか否かについて判定される(ステップS6)。
【0073】
ステップS6での判定により、輝度値の比が閾値の1よりも大きければ、検出処理を継続し、輝度値の比が閾値1以下であれば、検出処理を終了し、ステップS7に移って警報を鳴動する。これにより、非破壊検査装置1において、X線照射器20の位置ずれを早期に知らせることができる。
【0074】
このように、本実施形態の非破壊検査装置1によれば、被検査物Sを透過した放射線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を輝度データから算出し、これら透過率を示す値の比に基づいてX線照射器20の位置ずれを検出している。X線などの放射線は、エネルギが高いほど物体を透過しやすいといった性質があるが、このように互いに対応するよう調整された両検出器32,42での物体の透過率を示す値の比を参照することで、かかる対応関係が継続して維持されているか否かを容易に検出することができる。よって、本実施形態によれば、2段に重ねられたデュアル画像取得装置80の画素32n,42n間での対応がとれなくなったことを早期に知ることができる。
【0075】
しかも、非破壊検査装置1及び当該検査装置1での検出方法によれば、X線の両エネルギ範囲における各透過率を示す値を、輝度データを利用して算出している。この場合、非破壊検査装置1の検出器32,42で通常取得される輝度データを利用しているので、透過率を求めることが容易に実行でき、新たな検出器を別途設ける必要がない。
【0076】
また、非破壊検査装置1及び当該検査装置1での検出方法において、低エネルギ透過率算出部72及び高エネルギ透過率算出部74は、基礎となる輝度データDLとDHとが同じになるように補正関数FL,FHを設定している。このため、各透過率の分母の値が同じになり、各検出器32,42からの透過輝度データを、透過率を示す値として直接比較できるので、検出処理を簡易にすることができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、検出部76でX線照射器20の位置ずれがあったと判定した場合、警報装置78を鳴動させていたが、図11に示されるように、警報とは別に又は警報と共に、X線照射器20の位置を光源駆動装置90によって上下又は水平面方向に調整させるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、解析装置70において、透過率の比PH/PLを閾値1と比較してX線照射器20の位置ずれを判定していたが、下記の式(8)に示すように、低エネルギ範囲における透過率PLと高エネルギ範囲における透過率PHとの差が所定の閾値である0(ゼロ)よりも大きいか否かで判定するようにしてもよい。
PH―PL>0・・・(8)
【0079】
この場合、PH―PLが0よりも大きければ、X線照射器20の位置ずれがないと判定し、PH―PLが0以下となれば、X線照射器20の位置ずれがあったと解析装置70にて判定することができる。なお、透過率の差を用いる場合の閾値0は、透過率の差を求める場合の閾値1と同様の考えで設定される。
【0080】
また、上記実施形態では、基礎となる輝度データDLとDHとが同じになるように補正関数FL,FHを設定していたが、取得される輝度データによっては、基礎となる輝度データDLとDHとが同じ値にならないように補正関数FL,FHを設定してもよい。但し、この場合は、透過率の分母を省略することはできないので、透過率同士で比較する必要がある。比較検出は、上述した実施形態と同様である。
【0081】
また、上記実施形態では、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データを、被検査物Sが存在しない状態(ベルトコンベア10のみが設置された状態)での範囲におけるX線の輝度データとしているが、図12に示されるように、トレイT内に被検査物Sが治められたものを検査する場合には、透過率PH,PLを算出する基礎となる輝度データとして、ベルトコンベア10に加えトレイTも含めた状態、言い換えると、被検査物Sに含まれない部分でのX線の輝度データを求め、これを用いて各透過率を算出するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、画像補正部34,44と透過率算出部72,74とを別々に設けた場合で説明したが、画像補正部34,44の出力インターフェースから出力されるデータを用いて、透過率算出部72,74で算出される透過率を算出するようにしてもよい。つまり、透過率算出部72,74の機能の一部又は全部と画像補正部34,44とが共用される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…非破壊検査装置、10…ベルトコンベア、20…X線照射器、32…低エネルギ検出器、42…高エネルギ検出器、70…解析装置、72…低エネルギ透過率算出部、74…高エネルギ透過率算出部、76…検出部、78…警報装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、
前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出手段と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出手段で算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれを検出する検出手段と、
を備える非破壊検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1の透過率を示す値と前記第2の透過率を示す値との比又は差を所定の閾値と比較して前記放射線源の位置ずれを検出する、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記第1の放射線検出器は、前記搬送手段で搬送される前記被検査物を透過した放射線を前記第1のエネルギ範囲で検出し、
前記第2の放射線検出器は、前記搬送手段で搬送される前記被検査物を透過した放射線を前記第2のエネルギ範囲で検出する、請求項1又は2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記第1の算出手段は、前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第1の基礎輝度データと、前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過輝度データとに基づいて、前記第1の透過率を示す値を算出し、
前記第2の算出手段は、前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第2の基礎輝度データと、前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過輝度データとに基づいて、前記第2の透過率を示す値を算出する、請求項1〜3の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記第1の算出手段は、前記被検査物を除外した状態又は前記被検査物に含まれない部分において前記第1の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して前記第1の基礎輝度データを算出すると共に、前記被検査物を透過した放射線を前記第1の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、前記補正に用いた第1の補正関数を乗じて、前記第1の透過輝度データを算出し、
前記第2の算出手段は、前記被検査物を除外した状態又は前記被検査物に含まれない部分において前記第2の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して前記第2の基礎輝度データを算出すると共に、前記被検査物を透過した放射線を前記第2の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、前記補正に用いた第2の補正関数を乗じて、前記第2の透過輝度データを算出する、請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の算出手段は、前記第1及び第2の基礎輝度データが同じになるように前記第1及び第2の補正関数を設定する、請求項5に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記検出手段で前記放射線源の位置ずれが検出された際に視覚的又は聴覚的に報知する報知手段を更に備える請求項1〜6の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項8】
前記検出手段で前記放射線源の位置ずれが検出された際に前記放射線源を前記照射方向又は前記照射方向に交差する面方向に沿って移動させる駆動手段を更に備える請求項1〜7の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項9】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、前記放射線源の位置ずれを検出する検出方法であって、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出ステップと、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップで算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出ステップで算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれを検出する検出ステップと、
を備える検出方法。
【請求項1】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、
前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出手段と、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出手段で算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれを検出する検出手段と、
を備える非破壊検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1の透過率を示す値と前記第2の透過率を示す値との比又は差を所定の閾値と比較して前記放射線源の位置ずれを検出する、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記第1の放射線検出器は、前記搬送手段で搬送される前記被検査物を透過した放射線を前記第1のエネルギ範囲で検出し、
前記第2の放射線検出器は、前記搬送手段で搬送される前記被検査物を透過した放射線を前記第2のエネルギ範囲で検出する、請求項1又は2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記第1の算出手段は、前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第1の基礎輝度データと、前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過輝度データとに基づいて、前記第1の透過率を示す値を算出し、
前記第2の算出手段は、前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における輝度データを測定するための基礎となる第2の基礎輝度データと、前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過輝度データとに基づいて、前記第2の透過率を示す値を算出する、請求項1〜3の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記第1の算出手段は、前記被検査物を除外した状態又は前記被検査物に含まれない部分において前記第1の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して前記第1の基礎輝度データを算出すると共に、前記被検査物を透過した放射線を前記第1の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、前記補正に用いた第1の補正関数を乗じて、前記第1の透過輝度データを算出し、
前記第2の算出手段は、前記被検査物を除外した状態又は前記被検査物に含まれない部分において前記第2の放射線検出器で検出された輝度の生データを補正して前記第2の基礎輝度データを算出すると共に、前記被検査物を透過した放射線を前記第2の放射線検出器で検出した際の輝度の生データに、前記補正に用いた第2の補正関数を乗じて、前記第2の透過輝度データを算出する、請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の算出手段は、前記第1及び第2の基礎輝度データが同じになるように前記第1及び第2の補正関数を設定する、請求項5に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記検出手段で前記放射線源の位置ずれが検出された際に視覚的又は聴覚的に報知する報知手段を更に備える請求項1〜6の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項8】
前記検出手段で前記放射線源の位置ずれが検出された際に前記放射線源を前記照射方向又は前記照射方向に交差する面方向に沿って移動させる駆動手段を更に備える請求項1〜7の何れか一項に記載の非破壊検査装置。
【請求項9】
被検査物を所定の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段による搬送方向と交差するように前記搬送手段に向けて放射線を照射する放射線源と、前記放射線源から照射された放射線を第1のエネルギ範囲で検出する第1の放射線検出器と、前記放射線の照射方向において前記第1の放射線検出器よりも下流側に位置し、前記放射線源から照射された放射線を前記第1のエネルギ範囲よりも高い第2のエネルギ範囲で検出する第2の放射線検出器とを備えた非破壊検査装置において、前記放射線源の位置ずれを検出する検出方法であって、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第1のエネルギ範囲における第1の透過率を示す値を、前記第1の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第1の算出ステップと、
前記放射線源から照射されて前記被検査物を透過した放射線の前記第2のエネルギ範囲における第2の透過率を示す値を、前記第2の放射線検出器で検出された放射線の輝度データから算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップで算出された前記第1の透過率を示す値と前記第2の算出ステップで算出された前記第2の透過率を示す値との比又は差に基づいて前記放射線源の位置ずれを検出する検出ステップと、
を備える検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−101041(P2013−101041A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244660(P2011−244660)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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