説明

非破壊検査装置用ノイズ除去回路

【課題】 高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置に対するノイズを的確に除去することができる非破壊検査装置用ノイズ除去回路を提供する。
【解決手段】 非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、励磁コイル2と、この励磁コイル2により試料に生成される渦電流による磁場をピックアップするピックアップコイル5と、このピックアップコイル5に接続されるノイズ除去回路6と、このノイズ除去回路6に接続されるインプットコイル7と、このインプットコイル7からの磁場を検出する高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置8とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置用ノイズ除去回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、非破壊検査のための渦電流探傷の原理について説明する。
【0003】
図4は非破壊検査のための渦電流探傷装置の模式図である。
【0004】
この図において、100は測定試料、101は測定試料の進行方向、102は励磁コイル、103は励磁コイル102による磁場、104は励磁コイル102による磁場103によって発生する渦電流、105は渦電流104による磁場、106は磁気センサ(SQUID)である。
【0005】
図4に示すような渦電流探傷装置では、励磁コイル102と同じ周波数成分を持った渦電流104による磁場(応答磁場)105の変化により、測定試料100に生じている亀裂・損傷などを磁気センサ106で検知する。このとき、磁気センサ106への入力は、なるべくノイズが少なくSN比の高い信号が入力されることが望ましい。
【0006】
特に、磁気センサ106として超伝導センサであるSQUIDを用いた場合には、除去されないノイズ成分はSQUIDを駆動できなくするなど、測定に重大な影響を及ぼす。
【0007】
図5は従来のSQUIDを用いた非破壊検査装置のシステム構成図、図6はその励磁コイル系を示す図である。
【0008】
この図において、200は測定試料、201は測定試料200の移動装置、202は液体窒素デュワ203内の高感度磁気センサ、204は液体窒素デュワ203の底部に配置される励磁コイル、205は磁気シールド、206は駆動装置、207は位相検波器、208は信号発生器、209は高感度磁気センサ202に入ったノイズ成分をフィードバックする補償回路、210は表示装置である。
【0009】
高感度磁気センサ202がSQUIDであった場合には、図5に示すように、202は液体窒素デュワ203内にあり、励磁コイル204は液体窒素デュワ203の底部に配置されている。
【0010】
このように従来のノイズ除去法としては、高感度磁気センサであるSQUID202に入ったノイズ成分をフィードバックする補償回路209が用いられていた。
【0011】
この補償回路209は、SQUID202に入力されたノイズを反転し、補償コイル209Aに入力することでノイズを打ち消す働きをする。ところが、前述のように除去されないノイズが入力された場合、SQUID202が動作不能となることがある。
【0012】
また、試料を交流磁場に晒し、SQUIDセンサを用いて磁気特性を測定するための検出装置が開示されている(下記特許文献1参照)。
【0013】
さらに、高感度磁気センサ202がフラックスゲートなどであった場合にも、除去されないノイズが入力されると計測不能となる。
【0014】
また、参照用磁気センサを用いた環境磁気雑音(環境磁場の時間的変動)を遮蔽する環境磁気雑音遮蔽装置が開示されている(下記特許文献2及び3参照)。
【特許文献1】特表2001−515585号公報
【特許文献2】特開2004−172151号公報
【特許文献3】特開2004−349431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記した非破壊検査装置のシステムの補償回路209は、高感度磁気センサ202に入力されたノイズを反転し、補償コイル209Aに入力することでノイズを打ち消す働きをする。ところが、前述のように補償しきれないノイズが入力された場合、高感度磁気センサ202を用いた非破壊検査装置の動作が不能となるといった問題があった。
【0016】
本発明は、上記状況に鑑みて、高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置に対するノイズを的確に除去することができる非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、励磁コイルと、この励磁コイルにより試料に生成される渦電流による磁場をピックアップするピックアップコイルと、このピックアップコイルに接続されるノイズ除去回路と、このノイズ除去回路に接続されるインプットコイルと、このインプットコイルからの磁場を検出する高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置とを具備することを特徴とする。
【0018】
〔2〕上記〔1〕記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記ノイズ除去回路が高域通過フィルタであり、渦電流信号に含まれる低周波ノイズを除去することを特徴とする。
【0019】
〔3〕上記〔1〕記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記ノイズ除去回路が帯域通過フィルタであり、渦電流信号に含まれる低周波ノイズ及び高周波ノイズを除去することを特徴とする。
【0020】
〔4〕上記〔1〕記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、渦電流信号の減衰を防止するために、前記ノイズ除去回路の手前に電圧増幅器を設けることを特徴とする。
【0021】
〔5〕上記〔1〕記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、渦電流信号の減衰を防止するために、前記励磁コイルと前記ピックアップコイルと前記インプットコイルのインダクタンスの比を調整することを特徴とする。
【0022】
〔6〕上記〔1〕記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置を磁気シールドで覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置に対するノイズを的確に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の非破壊検査装置用ノイズ除去回路は、励磁コイルと、この励磁コイルにより試料に生成される渦電流による磁場をピックアップするピックアップコイルと、このピックアップコイルに接続されるノイズ除去回路と、このノイズ除去回路に接続されるインプットコイルと、このインプットコイルからの磁場を検出する高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置とを具備する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【0027】
この図において、1は信号発生器であり、この信号発生器1には直列に励磁コイル2が接続されている。この励磁コイル2は抵抗R1とインダクタンスL1からなる。3は試料(図示なし)に形成される渦電流回路であり、この渦電流回路3は、抵抗R0とインダクタンスL0からなる。4はピックアップ回路であり、ピックアップコイル(常伝導コイル)5はピックアップコイルのインダクタンスL21を有し、このピックアップコイル5に接続されるノイズ除去回路6が設けられている。このノイズ除去回路6は、コンデンサC2とインダクタンスL2とからなるハイパスフィルタ(高域通過フィルタ)HPFを構成している。このHPFにはインプットコイル7が接続され、このインプットコイル7はインプットコイルのインダクタンスL22を有している。8は高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置であり、インプットコイル7に磁気的に結合するとともに、磁気シールド9で覆われている。
【0028】
従来は励磁コイルにより試料に発生した渦電流回路の作る磁場を、高感度磁気センサが直接とらえるようにしていたが、本発明の非破壊検査装置用ノイズ除去回路では、ピックアップコイル(常伝導コイル)5により渦電流信号をピックアップし、高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置8への入力は、インプットコイル(常伝導コイル)7により行うように構成されている。
【0029】
このピックアップコイル5−インプットコイル7系を導入することにより、その間にノイズ除去回路6としてのハイパスフィルタ(HPF)を挿入することができる。ノイズは通常、渦電流信号よりも低周波であるから、高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置8に入力される前に、ハイパスフィルタ(HPF)によりノイズカットを行うことができる。
【0030】
図2は本発明の第2実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【0031】
この図において、ノイズ除去回路はバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)BPFとする。つまり、入力側に直列に接続されるコンデンサC3と、並列に接続されるコンデンサC4及びインダクタンスL3と、出力側に直列に接続されるインダクタンスL4とからなるバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)BPFをノイズ除去回路6として構成する。
【0032】
このように、渦電流信号よりも低周波である通常のノイズと共に高周波ノイズも除去したい場合には、図1に示したハイパスフィルタ(HPF)に代えて、フィルタをバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)BPFとすればよい。
【0033】
図3は本発明の第3実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【0034】
ノイズ除去回路を挿入することによる渦電流信号の減衰は、励磁電流を増強するか、ハイパスフィルタ(HPF)の手前に電圧増幅器を入れることで防ぐことができる。
【0035】
この実施例では、図3に示すように、ハイパスフィルタ(HPF)の手前に電圧増幅器11を入れるようにした。これにより渦電流信号の減衰を防止することができる。
【0036】
また、渦電流信号の減衰を防止するためには、インダクタンスL1,L21,L22の比を調整するようにしてもよい。
【0037】
より具体的にインダクタンスL1,L21,L22の比を示すと例えば、200:200:10である。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の非破壊検査装置用ノイズ除去回路は、高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置に入力されるノイズを的確に除去するためのツールとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す非破壊検査装置用ノイズ除去回路図である。
【図4】非破壊検査のための渦電流探傷装置の模式図である。
【図5】従来のSQUIDを用いた非破壊検査装置のシステム構成図である。
【図6】従来のSQUIDを用いた非破壊検査装置の励磁コイル系を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 信号発生器
2 励磁コイル
R0,R1 抵抗
L0,L1,L2,L3,L4 インダクタンス
3 渦電流回路
4 ピックアップ回路
5 ピックアップコイル(常伝導コイル)
L21 ピックアップコイルのインダクタンス
6 ノイズ除去回路
C2,C3,C4 コンデンサ
7 インプットコイル
L22 インプットコイルのインダクタンス
8 高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置
9 磁気シールド
11 電流増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)励磁コイルと、
(b)該励磁コイルにより試料に生成される渦電流による磁場をピックアップするピックアップコイルと、
(c)該ピックアップコイルに接続されるノイズ除去回路と、
(d)該ノイズ除去回路に接続されるインプットコイルと、
(e)該インプットコイルからの磁場を検出する高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置とを具備することを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。
【請求項2】
請求項1記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記ノイズ除去回路が高域通過フィルタであり、渦電流信号に含まれる低周波ノイズを除去することを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。
【請求項3】
請求項1記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記ノイズ除去回路が帯域通過フィルタであり、渦電流信号に含まれる低周波ノイズ及び高周波ノイズを除去することを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。
【請求項4】
請求項1記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、渦電流信号の減衰を防止するために、前記ノイズ除去回路の手前に電圧増幅器を設けることを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。
【請求項5】
請求項1記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、渦電流信号の減衰を防止するために、前記励磁コイルと前記ピックアップコイルと前記インプットコイルのインダクタンスの比を調整することを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。
【請求項6】
請求項1記載の非破壊検査装置用ノイズ除去回路において、前記高感度磁気センサを用いた非破壊検査装置を磁気シールドで覆うことを特徴とする非破壊検査装置用ノイズ除去回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−2303(P2010−2303A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161580(P2008−161580)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】