説明

非破壊検査装置

【課題】 手で保持するユニットの携帯性を向上させて作業者の作業性を向上し、作業現場から離れたところからでも他の作業者が検査結果を確認すること。
【解決手段】被検体Sの近傍に配される子機(検査信号収集ユニット)2と、子機2との間でデータ転送を行う親機(信号処理ユニット)3とを備え、子機2が、被検体Sの欠陥を検知して検査信号を生成するセンサ部7と、検査信号を受信するセンサ部駆動手段と、受信した検査信号を親機3に送信する検査信号送信手段と、親機3から送信され、検査信号に基づいて変換された表示データを受信する表示データ受信手段と、表示データを表示する表示部13とを備え、親機3が、送信された検査信号を受信する検査信号受信手段と、受信した検査信号を示データに変換する信号処理手段と、変換された表示データを子機2に送信する表示データ送信手段とを備えている非破壊検査装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の表面や内部の欠陥を検査する超音波探傷器や渦流探傷器等の非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検体を検査する方法として、超音波探傷器や渦流探傷器等の非破壊検査装置を利用した非破壊検査方法が知られている。この非破壊検査装置は、様々なものが提供されているが、一般的な非破壊検査装置70は、図8に示すように、表示器71を有する検査装置本体72と、被検体Sの表面や内部の欠陥(傷等)を検知する探触子(センサ部)73とを備えている。また、検査装置本体72と探触子73とは、ケーブル74によって接続されている。そして、探触子73の駆動、探触子73から得られた信号の処理や検査結果の表示等は、1つの装置、即ち、検査装置本体72のみで行われている。また、検査した結果についても同様に、検査装置本体72内の記録メモリに保存している。このように、一般的な非破壊検査装置70は、検査装置本体72及び探触子73だけで非破壊検査が可能なものである。
【0003】
また、図9に示すように、検査装置本体72とパソコン76とをLAN接続して、パソコン76側から検査装置本体72の各種設定を行うことができる非破壊検査装置75も知られている。この非破壊検査装置75においては、検査装置本体72がパソコン76による設定にしたがって動作し、フィルター処理、リジェクション処理や増幅処理等の高速な信号処理を行った後、検査データをパソコン76に送信する。そして、パソコン76は、受信した検査データを表示データに変換した後にパソコン76上のモニターに表示すると共に、検査結果をパソコン76内に保存している。
【0004】
また、非破壊検査装置から送信されてくる検査データを、予め抽出パラメータが設定された非破壊検査データ抽出装置により受信すると共に、抽出パラメータに応じて検査データから特徴部分を抽出する抽出処理を行い、抽出データをネットワークを介して分析センターに送信するシステムも知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、分析センターに送信された抽出データは、分析センター内の端末に蓄積される。
【0005】
上述したように従来の非破壊検査装置は、1台の装置、或いは、複数台の装置と組み合わせて作動するものもあるが、いずれにしても、被検体の表面や内部の状態をセンサ部(探触子)で検出して、その後高速な信号処理を行う部分は1台の装置で行っているのが現状である。
【特許文献1】特開2004−163288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の非破壊検査では、以下のような課題が残されている。
即ち、従来の非破壊検査装置では、高速な信号処理を行う装置ほど大型化してしまうため、足場がなかったり、配管等で込み入ったりしている検査現場においては、被検体の近くに装置を置くことが難しいことがある。このような場合には、被検体から少し離れた場所に装置を置かざるを得ないが、検査結果を確認しにくかったり、検査しながら装置を操作することが困難であった。
【0007】
また、携帯性が良い小型の装置であっても、片手で長時間保持して検査を行う場合もあるので、極力小型軽量にする必要がある。この点においても、従来のものでは対応させることが困難であった。
更に、携帯性が良い小型の装置では、バッテリー駆動であることが要求されるが、装置を小型軽量にするためにバッテリー容量が制限されることがある。その結果、センサーに高電圧を加えて駆動させることができず、検出能力が低くなったり、連続して使用できる時間が短くなったりしていた。又は、比較的簡単な信号処理機能しか搭載することができないために、検出精度が低くなったり、ノイズが大きくなったりしていた。
【0008】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサーが接続できると共に表示器が設けられ、手で保持する部分の装置(ユニット)の携帯性を向上させて作業者の作業性を向上し、作業現場から離れたところからでも他の作業者が検査結果を確認することができる非破壊検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
請求項1に係る発明は、被検体の表面又は内部の少なくとも一方の欠陥を検査する非破壊検査装置であって、前記被検体の近傍に配置される検査信号収集ユニットと、該検査信号収集ユニットとの間でデータ転送を行う信号処理ユニットとを備え、前記検査信号収集ユニットが、前記被検体の前記欠陥を検知すると共に欠陥に応じた検査信号を生成するセンサ部と、該センサ部を駆動させると共に前記検査信号を受信するセンサ部駆動手段と、受信した前記検査信号を前記信号処理ユニットに送信する検査信号送信手段と、前記信号処理ユニットから送信され、前記検査信号に基づいて変換された表示データを受信する表示データ受信手段と、受信した表示データを表示する表示部とを備え、前記信号処理ユニットが、前記検査信号送信手段から送信された前記検査信号を受信する検査信号受信手段と、受信した前記検査信号を所定処理すると共に前記表示データに変換する信号処理手段と、変換された前記表示データを前記検査信号収集ユニットに送信する表示データ送信手段とを備えている非破壊検査装置を提供する。
【0010】
この発明に係る非破壊検査装置においては、センサ部駆動手段によりセンサ部を駆動させた後、該センサ部を被検体に沿って動かして、被検体の表面又は内部の少なくとも一方の欠陥を検知する。この間、センサ部は、検知した欠陥に応じて検査信号を生成し、センサ部駆動手段に出力する。センサ部駆動手段が検査信号を受信したことを受けて、検査信号送信手段は、該検査信号を信号処理ユニットに送信する。
信号処理ユニットの検査信号受信手段は、送られてきた検査信号を受信すると共に信号処理手段に送る。信号処理手段は、検査信号を、例えば、増幅処理やフィルター処理等の所定処理を行った後、検査信号に応じた表示データに変換する。そして、表示データ送信手段は、変換された表示データを検査信号収集ユニットに送信する。
検査信号収集ユニットの表示データ受信手段は、送られてきた表示データを受信する。そして、表示部が、この表示データ表示の表示を行う。
【0011】
このように、検査者は、被検体の近傍に配置される検査信号収集ユニットの表示部を確認しながら、被検体の非破壊検査を行うことができる。特に、従来のものとは異なり、高度な信号処理を行う信号処理手段が、信号処理ユニット側に設けられているので、検査信号収集ユニットを極力小型化することができる。これにより、携帯性が向上し、非破壊検査の作業性を向上することができる。
また、比較的大きな電力を必要とする信号処理手段が、信号処理ユニットに設けられているので、検査信号収集ユニットには大きな電力を必要としない。そのため、仮に検査信号収集ユニットをバッテリー駆動したとしても、連続使用時間を延ばすことができると共に、大きなバッテリー設置スペースが不要なので、小型化及び軽量化を図ることができる。
一方、被検体の近傍に配置する必要がなく、電力の制約が低い信号処理ユニットが信号処理手段を備えているので、高精度な信号処理を行うことができ、検査信号収集ユニットの携帯性を損なうことなく、ノイズの低減化、分解能の向上化を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記信号処理ユニットが、閾値を予め調整するゲート機能と、該ゲート機能により調整された前記閾値を、前記検査信号受信手段により受信された前記検査信号に反映させるトリガ手段と、前記検査信号と前記閾値とを比較すると共に、比較結果を前記検査信号収集ユニットに送信するトリガ送信手段とを備え、前記検査信号収集ユニットが、前記比較結果を受信するトリガ受信手段を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0013】
この発明に係る非破壊検査装置においては、ゲート機能で閾値を所望する値に調整した後、この閾値をトリガ手段によりかける(検査信号に反映)ことができる。そして、トリガ送信手段が、検査信号と閾値とを比較し、その比較結果、即ち、トリガによる検知結果を検査信号収集ユニットに送信する。そして、検査信号収集ユニットのトリガ受信手段が、この検知結果を受信する。これにより、検査者は、トリガにより検査信号を監視することができ、より高精度で幅広い被検体の非破壊検査を行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号収集ユニットが、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記信号処理ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、前記信号処理ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0015】
この発明に係る非破壊検査装置においては、検査者が入力手段により目的に応じた各種の設定値の入力を行える。検査信号収集ユニットは、この設定値に基づいて作動する。また、この設定値は、設定値送信手段により信号処理ユニットに送られる。送られた設定値は、設定値受信手段により受信される。これにより、信号処理ユニットは、検査信号収集ユニットと同様に設定値に基づいて作動する。
このように、検査者は、検査信号収集ユニットのコントロールを行うことができると共に、該検査信号収集ユニットを介して信号処理ユニットのコントロールも同時に行うことができる。従って、非破壊検査を行う現場から両ユニットを制御でき、さらなる作業性の向上化を図ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記信号処理ユニットが、前記表示データを表示する第2の表示部を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0017】
この発明に係る非破壊検査装置においては、第2の表示部を備えているので、信号処理ユニット側においても検査状況を見ることができる。よって、非破壊検査結果を、実際に検査を行っている検査者だけでなく、現場から離れている他の人も確認することができる。従って、被検体の欠陥(傷等)の見落としをより防ぐことができ、検査精度を向上することができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1又は4に記載の非破壊検査装置において、前記信号処理ユニットが、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記検査信号収集ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、前記検査信号収集ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0019】
この発明に係る非破壊検査装置においては、検査している場所とは離れた所に位置する信号処理ユニットに設けられた入力手段により、目的に応じた各種の設定値の入力を行える。信号処理ユニットは、この設定値に基づいて作動する。また、この設定値は、設定値送信手段により検査信号収集ユニットに送られる。送られた設定値は、設定値受信手段により受信される。これにより、検査信号収集ユニットは、信号処理ユニットと同様に設定値に基づいて作動する。
このように、検査者は、信号処理ユニット及び検査信号収集ユニットを、どちらのユニット側からでも同時にコントロールを行うことができる。従って、非破壊検査を行う現場、又は、少し離れた場所からでも両ユニットを制御でき、複数の検査者で操作可能となるので、さらなる作業性の向上化を図ることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1又は4に記載の非破壊検査装置において、前記信号処理ユニットが、前記被検体の前記欠陥を検知すると共に欠陥に応じた第2の検査信号を生成する第2のセンサ部と、該第2のセンサ部を駆動させると共に前記第2の検査信号を受信する第2のセンサ部駆動手段と、前記第2の検査信号、又は、前記検査信号のどちらかの信号を切り替えて前記信号処理手段に入力させる切替手段と、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記検査信号収集ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、前記検査信号収集ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0021】
この発明に係る非破壊検査装置においては、第2のセンサ部を備えているので、信号処理ユニット側においても、被検体の欠陥を検知することが可能である。第2のセンサ部で検知され、欠陥に応じて生成された第2の検査信号は第2のセンサ部駆動手段で受信される。第2のセンサ部駆動手段で受信された第2の検査信号は、信号処理手段により表示データに変換され、検査信号収集ユニットに送られる。そして、該検査信号収集ユニットにて検査結果の確認が行える。
また、切替手段を備えているので、検査信号収集ユニット側での検査結果、又は、信号処理ユニット側での検査結果を容易に選択して(切り替えて)表示部に表示させることができる。このように、検査信号収集ユニットで検査している場所とは離れている場所での
検査結果も容易に確認することができる。従って、非破壊検査の作業効率が向上すると共に、より多角的な検査を行うことができる。
【0022】
また、入力手段により目的に応じた各種の設定値の入力を行える。信号処理ユニットは、この設定値に基づいて作動する。また、この設定値は、設定値送信手段により検査信号収集ユニットに送られる。送られた設定値は、設定値受信手段により受信される。これにより、検査信号収集ユニットは、信号処理ユニットと同様に設定値に基づいて作動する。
このように、検査信号収集ユニット及び信号処理ユニットの制御を同時に行うことができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の非破壊検査装置において、前記センサ部駆動手段が、前記第2のセンサ部駆動手段が作動しているときに停止するよう設定され、前記第2のセンサ部駆動手段が、前記センサ部駆動手段が作動しているときに停止するよう設定されている非破壊検査装置を提供する。
【0024】
この発明に係る非破壊検査装置においては、センサ部駆動手段及び第2のセンサ部駆動手段が、それぞれ他方のセンサ部が作動しているときに停止するので、余分な電力消費を極力抑えることができる。また、検査信号収集ユニット又は信号処理ユニットのどちらか一方でしか非破壊検査を行うことができないので、検査結果を明確に区別することができ、検査結果が明瞭になって使いやすい。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号収集ユニットと前記信号処理ユニットとの間の前記データ転送が、無線通信により行われる非破壊検査装置を提供する。
【0026】
この発明に係る非破壊検査装置においては、両ユニット間のデータ転送を無線通信できるので、両ユニットをケーブル等で繋ぐ必要がない。従って、非破壊検査を行う検査現場が足場が少なく狭い場所であったとしても、検査現場が煩雑にならず、検査作業の安全性がより向上する。
【0027】
請求項9に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号収集ユニットと前記信号処理ユニットとの間の前記データ転送が、有線通信により行われる非破壊検査装置を提供する。
【0028】
この発明に係る非破壊検査装置においては、両ユニット間のデータ転送を有線通信するので、検査信号収集ユニットと信号処理ユニットとの間に障害物等があったとしても、両ユニットのデータ転送を確実に行うことができる。
【0029】
請求項10に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号が、アナログ信号である非破壊検査装置を提供する。
【0030】
この発明に係る非破壊検査装置においては、検査信号がアナログ信号であるので、構成の単純化を図ることができ、製造コストを抑えることができる。
【0031】
請求項11に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号が、デジタル信号である非破壊検査装置を提供する。
【0032】
この発明に係る非破壊検査装置においては、検査信号がデジタル信号であるので、検査信号をよりノイズ等が少ない状態で転送することができ、検査精度を向上することができる。
【0033】
請求項12に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記表示データが、アナログ信号である非破壊検査装置を提供する。
【0034】
この発明に係る非破壊検査装置においては、表示データがアナログ信号であるので、構成の単純化を図ることができ、製造コストを抑えることができる。
【0035】
請求項13に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記表示データが、デジタル信号である非破壊検査装置を提供する。
【0036】
この発明に係る非破壊検査装置においては、表示データがデジタル信号であるので、検査結果をより鮮明な画像として表示することができる。
【0037】
請求項14に係る発明は、請求項1に記載の非破壊検査装置において、前記検査信号収集ユニットが、バッテリー駆動であり、前記信号処理ユニットが、前記検査信号収集ユニットの充電を行う充電手段を備えている非破壊検査装置を提供する。
【0038】
この発明に係る非破壊検査装置においては、信号処理ユニットが充電手段を備えているので、適時検査信号収集ユニットの充電を行うことができる。よって、使い易く利便性に優れている。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る非破壊検査装置によれば、高度な信号処理を行う信号処理手段が、信号処理ユニット側に設けられているので、検査信号収集ユニットを極力小型化することができ、携帯性が向上して非破壊検査の作業性を向上することができる。また、比較的大きな電力を必要とする信号処理手段が信号処理ユニットに設けられているので、仮に検査信号収集ユニットをバッテリー駆動したとしても、連続使用時間を延ばすことができると共に、大きなバッテリー設置スペースが不要なので、小型化及び軽量化を図ることができる。
また、電力の制約が低い信号処理ユニットが信号処理手段を備えているので、高精度な信号処理を行うことができ、検査信号収集ユニットの携帯性を損なうことなく、ノイズの低減化、分解能の向上化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係る非破壊検査装置の第1実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の超音波探傷器(非破壊検査装置)1は、図1及び図2に示すように、被検体Sの表面又は内部のうち、少なくとも一方の欠陥(傷)を検査するものであって、被検体Sの近傍に配置される子機(検査信号収集ユニット)2と、子機2との間でデータ転送を行う親機(信号処理ユニット)3との2つのユニットから構成されている。また、親機3と子機2とは、ケーブル4によって接続されており、データ転送は有線通信により行われるようになっている。
【0041】
上記子機2は、図1及び図3に示すように、箱状に形成された本体部5と、該本体部5にケーブル6を介して接続された探触子(センサ部)7とを有している。この探触子7は、超音波を被検体Sの局所に送信すると共にその反射波を受信して、被検体Sの欠陥を検知し、欠陥に応じた検査信号を生成する。
また、本体部5には、上記探触子7を駆動させると共に生成された検査信号を受信する探触子送受信制御部(センサ部駆動手段)10、受信した検査信号を親機3に送信する検査信号送信部(検査信号送信手段)11、親機3から送信され、検査信号に基づいて変換された表示データを受信する表示データ受信部(表示データ受信手段)12、受信した表示データを表示する表示部13、各種の設定値を入力することができる入力デバイス(入力手段)14、入力された設定値を親機3に送信する設定値送受信部(設定値送信手段)15及びこれら各構成品に電力を供給する図示しないバッテリーが組み込まれている。
【0042】
また、各構成品のうち、表示部13及び入力デバイス14は、図1に示すように、本体部5の前面に設けられている。この入力デバイス14は、例えば、ダイレクトキー、メニュー操作キー、電源キー、或いは、ダイアル等の操作スイッチである。
このうちダイレクトキーには、ある機能が直接操作できるように一意的に機能が割り当てられており、その機能としては、例えば、検査データの保存、検査波形の画面拡大、検査波形の一時停止等がある。電源キーは、子機2の電源をON或いはOFFするためのものである。ダイアルは、メニュー選択された項目に対する設定値の変更や、或いは、ダイレクトキーのようにある機能が一意的に割り当てられている。
なお、ダイレクトキーやメニュー操作キーの代わりに、表示部13上に設けられた図示しないタッチパネルを利用しても構わない。
【0043】
また、バス16には、図3に示すように、上述した各構成品に加え、CPU17、ROM18、RAM19、20、表示制御部21及びLED22が電気的に接続されている。
CPU17には、各種機能を制御するためのプログラムが組み込まれており、バス16を介して各構成品を総合的に制御している。ROM18には、各処理回路やメニュー表示等の各種制御プログラムが記憶されており、これにしたがってCPU17が動作するようになっている。
RAM19には、入力デバイス14によって設定された各種設定データ、即ち、設定値が設定データ領域に記憶されており、この記憶された設定値にしたがって子機2が動作するようになっている。なお、RAM19は、子機2側の設定値だけでなく、親機3側の設定値も同時に記録することが可能である。この親機3側の設定値は、設定値送受信部15を介して受信した値も含まれている。これについては、後に詳細に説明する。
【0044】
また、非破壊検査を行った検査結果を保存する場合には、入力デバイス14による保存機能が実行されたことを受けて、検査データがRAM20に記憶される。また、このRAM20に保存された各検査データには、設定値の情報も含まれており、メニューから保存された検査データのファイルを選択すると、前回の検査波形が表示されるだけでなく、本ファイルに保存されている設定データを読み込んでRAM20の設定データ領域に入れる。こうすることで、前回の設定状態で子機2を動作させることができる。
【0045】
上記設定値送受信部15は、入力デバイス14で設定された設定値を親機3側に送信する。この設定値に関する内容としては、親機3側で扱う設定そのものの値であっても構わないし、入力デバイス14を、親機3側を制御するリモコンのように扱って、子機2側から各々の入力デバイス14が押されたことを示すだけのコマンドであっても構わない。なお、データ転送には、シリアル通信やLAN等を用いる。
これにより、子機2及び親機3を起動したときに、RAM19に記憶されている設定値で子機2が動作すると共に、設定値送受信部15を介して設定値を親機3側に送信して、親機3も同様にこの設定値で動作させることができる。つまり、前回の電源終了直前の状態で子機2及び親機3を動作させることができる。
なお、RAM19は、もう一方のRAM20と同じメモリを共用しても構わないし、別のメモリとして設けても良いし、大容量化のためにHD等を利用しても構わない。また、CFメモリカードやSDメモリカード等の容易に着脱できるメモリを利用しても構わない。
【0046】
また、設定値送受信部15は、親機3から送られてきた設定値を受信する設定値受信手段としても機能するようになっている。受信された設定値は、上述したように、RAM19に記憶される。これにより、親機3側で変更した設定値を子機2側で管理することができる。
更に、設定値送受信部15は、親機3から送られたトリガに基づく検知結果を受信するトリガ受信手段としても機能するようになっている。このトリガについては、後に詳細に説明する。
【0047】
上記探触子送受信制御部10は、探触子送受信回路25及びA/D変換回路26から構成されており、入力デバイス14で設定された設定値に応じて動作し、探触子7で生成された検査信号を受信する。そして、この検査信号は、上記検査信号送信部11を介して親機3に送られる。
なお、このときの通信には、LAN等が利用される。また、検査信号を送信する場合は、デジタル信号又はアナログ信号のどちらの信号で送信しても構わないが、アナログ信号で送信する場合にはA/D変換回路26は不要である。
【0048】
親機3から送信された表示データは、検査波形や断面表示等の映像信号に加工されており、子機2はこの表示データを上記表示データ受信部12にて受信する。
なお、このときの表示データとしては、デジタル信号又はアナログ信号のうち、どちらの信号を利用しても構わない。アナログ信号を利用する場合には、表示データ受信部12は単なるコネクタとして機能するだけであり、A/D変換処理は表示制御部21で行えば良い。また、デジタル信号を利用する場合には、Mortion-JPEG、MPEG2やMPEG4等のデータフォーマットを利用し、LAN等を利用して伝送が行われる。
受信された表示データは、表示制御部21にて表示部13で表示可能な形式に変換され、CPU17で動作するプログラムが作成する画面表示と合成された映像となった後、表示部13に表示される。
【0049】
LED22は、警告や注意等を示すときに点灯して検査者にその旨を知らせる。また、LED22は、警告や注意だけでなく、上記設定値送受信部15がトリガによる検知結果を受信したときに、トリガがかかったことを検査者に知らせるために点灯するようになっている。
【0050】
上記親機3は、図1、図2及び図4に示すように、箱状に形成されており、子機2から送られてきた検査信号を受信する検査信号受信部(検査信号受信手段)30、受信した検査信号を所定処理すると共に表示データに変換する信号処理手段31、変換された表示データを子機2に送信する表示データ送信部(表示データ送信手段)32、子機2から送られた設定値を受信する設定値送受信部(設定値受信手段)33、親機3側で設定値が入力される入力デバイス(入力手段)34、表示データを表示する表示部(第2の表示部)35、子機2の充電を行う充電手段36及びこれら各構成品に電力を供給する電力源37を備えている。なお、上記信号処理手段31は、信号処理部38及び表示データ作成部39から構成されている。
【0051】
電力源37は、例えば、図1及び図2に示すように、大容量バッテリー40やAC電源に接続されるACプラグ41等である。また、親機3の上面には子機2の本体部5を収納できる開口部42が形成されており、該開口部42の底部には電力源37に電気的に接続されていると共に子機2のバッテリーを充電する図示しない充電器が設けられている。即ち、これら開口部42及び充電器は、上記充電手段36を構成している。
また、各構成品のうち、表示部35及び入力デバイス34は、図1に示すように、子機2と同様に前面に設けられている。
【0052】
入力デバイス34は、子機2側の入力デバイス14と同様に、例えば、ダイレクトキー、メニュー操作キー、電源キー、或いは、ダイアル等の操作スイッチであり、信号処理部38の設定を行ったり、表示画面の設定等を変更したりするものである。
また、バス45には、図4に示すように、上述した各構成品に加え、CPU46、ROM47、RAM48、49、表示制御部50及びLED51が電気的に接続されている。
CPU46には、各種機能を制御するためのプログラムが組み込まれており、バス45を介して各構成品を総合的に制御している。ROM47には、各処理回路やメニュー表示等の各種制御プログラムが記憶されており、これにしたがってCPU46が動作するようになっている。RAM48には、入力デバイス34によって設定された各種設定データ、即ち、設定値が設定データ領域に記憶されており、この記憶された設定値にしたがって親機3が動作するようになっている。
【0053】
また、子機2側で非破壊検査を行った検査結果を保存する場合には、入力デバイス34による保存機能が実行されたことを受けて、検査データがRAM49に記憶される。なお、RAM48は、もう一方のRAM49と同じメモリを共用しても構わないし、別のメモリとして設けても良いし、大容量化のためにHD等を利用しても構わない。また、CFメモリカードやSDメモリカード等の容易に着脱できるメモリを利用しても構わない。
【0054】
上記設定値送受信部33は、子機2から送られた設定値を受信している。そして、親機3は、この受信した設定値にしたがって動作するようになっている。なお、子機2から入力デバイス14が操作されたことを示すコマンドのみ送信させる場合には、設定値送受信部33でそのコマンドに応じた設定値に変換するようになっている。
また、この設定値送受信部33は、入力デバイス34で入力された設定値を子機2に送信する設定値送信手段としても機能するようになっている。これにより、親機3側で変更した設定値を子機2側で管理することができる。
【0055】
上記検査信号受信部30は、子機2から送信された検査信号を受信した後、信号処理部38に送る。信号処理部38は、子機2側で設定された設定値にしたがって、送られた検査信号を、増幅処理、フィルタ処理及びリジェクション処理等の信号処理を行った後、表示データ作成部39に送る。なお、これらの信号処理の一部を、子機2側の探触子送受信制御部10で行っても構わない。また、受信した検査信号がアナログ信号の場合は、検査信号受信部30又は信号処理部38でA/D変換を行えば良い。
表示データ作成部39は、信号処理後の検査信号を検査波形や断面表示に加工して、表示データ(映像信号)を生成すると共に生成した表示データを、表示制御部50及び表示データ送信部32に送る。表示制御部50は、送られてきた表示データを、CPU46で動作するプログラムの画面表示と合成し、表示部35に表示する。
一方、表示データ送信部32は、送られてきた表示データを子機2側に送信する。この際、アナログ信号を利用する場合は、表示データ送信部32又は表示データ作成部39でD/A変換すれば良い。
【0056】
更に、親機3は、閾値を予め調整するゲート機能と、該ゲート機能により調整された閾値を検査信号に反映させる図示しないトリガ手段とを備えている。そして、設定値送受信部33は、検査信号と閾値とを比較すると共にその比較結果、即ち、トリガによる検知結果を子機2に送信するトリガ送信手段として機能するようになっている。
また、LED51は、子機2側のLED22と同様に警告や注意等を示すときや、トリガがかかったときに点灯するようになっている。
【0057】
このように構成された超音波探傷器1により、被検体Sの欠陥(傷)を検査する場合について、以下に説明する。
まず、検査者は、被検体Sの近傍に子機2を配置すると共に、各入力デバイス14、34により子機2及び親機3の電源を入れる。電源が投入されると、子機2はRAM19に保存されている設定値で動作し始める。また、設定値送受信部15がこの設定値を親機3側に送信する。この設定値を親機3側の設定値送受信部33が受信することで、親機3も同様にこの設定値に応じて動作し始める。これにより、親機3及び子機2を、前回の電源終了直前の状態で動作させることができる。また、子機2側の入力デバイス14により新たな設定値を入力することで、親機3及び子機2を該設定値に応じて動作させることもできる。
【0058】
上述したように親機3及び子機2が所定の状態に立ち上がった後、検査者は探触子7を被検体Sの表面に当てながら該被検体Sの表面上を徐々にずらして、各位置で超音波を送信する。探触子7は、各位置において被検体Sからの反射波を受信すると共に、反射波に応じた検査信号を生成する。この際、被検体Sの表面又は内部の少なくともいずれかに欠陥(傷)が存在する場合には、該欠陥に応じて反射波が変化する。つまり、検査信号は、欠陥に応じた信号となる。この検査信号は、探触子送受信制御部10によって受信された後、検査信号送信部11から親機3にアナログ信号又はデジタル信号で送信される。
【0059】
送信された検査信号は、親機3の検査信号受信部30にて受信された後、信号処理部38に送られる。そして、検査信号は、信号処理部38によって所定の信号処理がされた後に表示データ作成部39に送られる。表示データ作成部39は、信号処理された検査信号を検査波形や断面表示等に加工して、表示データ(映像信号)を生成し、表示制御部50及び表示データ送信部32に送る。
表示データ送信部32は、送られてきた表示データを子機2に送信する。送信された表示データは、子機2の表示データ受信部12で受信された後、表示制御部21に送られる。表示制御部21は、表示データを表示部13で表示できる最適な形式に変換すると共に、CPU17で動作するプログラムの画面表示と合成した後に、表示部13に表示させる。なお、非破壊検査のデータは、RAM20に記憶される。
【0060】
これにより、検査者は、被検体Sの近傍に配置された子機2の表示部13で確認しながら、被検体Sの非破壊検査を行うことができる。特に、従来のものとは異なり、高度な信号処理を行う信号処理手段31が、親機3側に設けられているので、子機2を極力小型化することができる。これにより、子機2の携帯性が向上するので、例えば、子機2を持ちながらでも検査が行え、非破壊検査の作業性を向上することができる。
また、比較的大きな電力を必要とする信号処理手段31が、親機3側に設けられているので、子機2には大きな電力を必要としない。そのため、バッテリー駆動される子機2の連続使用時間を延ばすことができると共に、大きなバッテリー設置スペースが不要なので、さらなる小型化及び軽量化を図ることができる。
一方、被検体Sの近傍に配置する必要がなく、電力の制約が低い親機3が信号処理手段31を備えているので、高精度な信号処理を行うことができ、子機2の携帯性を損なうことなく、ノイズの低減化及び分解能の向上化を図ることができる。
【0061】
また、親機3側の表示制御部50は、送られてきた表示データを子機2側と同様に、表示部35で表示できる最適な形式に変換すると共にCPU46で動作するプログラムの画面表示と合成した後に、表示部35に表示させる。
これにより、非破壊検査結果を、実際に検査を行っている検査者だけでなく、現場から離れている他の人も確認することができる。従って、被検体Sの欠陥(傷)の見落としをより防ぐことができ、検査精度を向上することができる。
【0062】
また、非破壊検査を行っている際に、検査者は入力デバイス14を介して子機2の設定値を自在に変更して、子機2を制御することができると共に、該設定値が親機3側にも送って親機3の制御も同時に行うことができる。このように、非破壊検査を行っている現場から子機2及び親機3の両方を制御でき、さらなる作業性の向上化を図ることができる。
また、入力デバイス34を介して親機3の設定値を自在に変更して、親機3を制御することができると共に、該設定値を子機2側にも送って子機2の制御も同時に行うことができる。このように、現場から離れている他の人でも子機2及び親機3の両方を制御でき、さらなる作業性の向上化を図ることができる。
【0063】
また、非破壊検査を行うにあたり、ゲート機能で閾値を所望する値に調整した後、この閾値を検査信号に反映してトリガをかけることができる。そして、親機3は、検査信号と閾値とを比較し、その比較結果、即ち、トリガによる検知結果を設定値送受信部33を介して子機2に送信する。子機2は、この検知結果を設定値送受信部15で受信し、トリガがかかったことをLED22の点灯により検査者に知らせると共に表示部13に表示する。これにより検査者は、トリガにより検査信号を監視することができ、より高精度で幅広い被検体Sの非破壊検査を行うことができる。
なお、親機3側のLED51も同様に、トリガがかかったことをLED51の点灯により周囲に知らせると共に表示部35に表示している。
また、親機3及び子機2のLED22、51は、トリガがかかったときだけでなく、非破壊検査を行っている際に何らかの不具合が生じたときに点灯して、周囲に警告や注意を促すので、非破壊検査作業の確実性が向上する。
【0064】
また、親機3と子機2とがケーブル4により接続され、両ユニット2、3間のデータ転送が有線通信により行われるので、仮に子機2と親機3との間に障害物があったとしても、両ユニット2、3間のデータ転送を障害物の影響を受けずに確実なものとすることができる。よって、作業の確実性が向上する。
【0065】
また、検査信号をアナログ信号又はデジタル信号として送受信できるので、設計の自由度が向上する。特に、アナログ信号として利用した場合には、子機2のA/D変換回路26等が不要であるので、構成の単純化を図ることができ、製造コストを抑えることができる。また、デジタル信号を利用した場合には、検査信号をよりノイズ等が少ない状態で転送でき、検査精度を向上することができる。
また、同様に、表示データをアナログ信号又はデジタル信号として送受信できるので、設計の自由度が向上する。特に、アナログ信号として利用した場合には、子機2の表示データ受信部12を単なるコネクタにでき、構成の単純化を図って製造コストを抑えることができる。また、デジタル信号を利用した場合には、検査結果をより鮮明な画像として子機2の表示部13に表示することができる。
【0066】
上述した非破壊検査が終了した後、図2に示すように、親機3の開口部42に子機2の本体部5を収容することで、充電器を介して子機2を充電することができる。このように、必要に応じて適時子機2の充電を行うことができるので、使い易く利便性に優れている。また、子機2を親機3に収容できるので、非破壊検査を行わないときの保管スペースを極力小さなスペースとすることができる。このことからも、利便性を向上することができる。
【0067】
次に、本発明に係る非破壊検査装置の第2実施形態を、図5及び図6を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の超音波探傷器1では、親機3と子機2との間のデータ転送を有線通信により行うと共に、探触子が子機2側のみに設けられた構成としたが、第2実施形態の超音波探傷器(非破壊検査装置)60は、親機3と子機2との間のデータ転送(検査信号、表示データ、設定値、検知結果等の各種データ)を無線通信により行うと共に親機3及び子機2の両方に探触子が設けられている点である。
【0068】
即ち、本実施形態の親機3は、図5及び図6に示すように、ケーブル61を介して接続され、超音波を被検体Sの局所に送信すると共にその反射波を受信して、被検体Sの欠陥(傷)を検知し、欠陥に応じた第2の検査信号を生成する第2の探触子(第2のセンサ部)62と、この第2の探触子62を駆動させると共に生成された第2の検査信号を受信する第2の探触子送受信制御部(第2のセンサ部駆動手段)63と、第2の検査信号、又は、検査信号受信部30で受信した検査信号のどちらかの信号を切り替えて信号処理手段31に入力させるスイッチ(切替手段)64とを備えている。
また、表示データ作成部39と表示データ送信部32との間には、スイッチ65が設けられており、表示データを表示データ送信部32に出力するか否かをコントロールできるようになっている。
【0069】
また、親機3は、図5に示すように、設定値送受信部33、検査信号受信部30及び表示データ送信部32にそれぞれ接続された送受信アンテナ66を備えている。また、子機2も同様に設定値送受信部15、検査信号送信部11及び表示データ受信部12にそれぞれ接続された送受信アンテナ67を備えている。
【0070】
このように構成された超音波探傷器60により、被検体Sの非破壊検査を行う場合について説明する。
まず、子機2側の探触子7を使用する場合について説明する。
この場合には、予め入力デバイス34のダイレクトキーやメニュー操作によって、親機3側のスイッチ64を検査信号受信部30と信号処理部38とが接続されるように切り替えておく。そして、子機2は、探触子7で得られた検査信号を送受信アンテナ67を介して親機3に無線送信する。無線送信されたこの検査信号は、親機3の送受信アンテナ66を介して検査信号受信部30で受信された後、信号処理部38に送られる。また、同様に、子機2側から無線送信された設定値や比較結果も同様に、親機3の送受信アンテナ66を介して設定値送受信部33にて受信される。
【0071】
そして、信号処理部38で処理された検査信号は、表示データ作成部39及び表示制御部50を介して親機3側の表示部35に表示される。この際、スイッチ65を入れて表示データ作成部39と表示データ送信部32とを接続することで、表示データを子機2側に無線送信して、子機2側の表示部13に検査結果を表示させることができる。
【0072】
このように、本実施形態の超音波探傷器60によれば、各データを無線通信することができるので、親機3と子機2とをケーブル4等で繋ぐ必要がない。従って、非破壊検査を行う検査現場が足場が少なく狭い場所であったとしても、検査現場が煩雑にならず、検査作業の安全性をより向上することができる。
このデータ転送としては、例えば、無線LAN等を利用する。特に、表示データの転送においては、アナログ信号又はデジタル信号のどちらを使用しても構わない。デジタル信号を利用する場合には、MPEG2等のフォーマットを利用して、例えば、無線LANで伝送すると良い。
【0073】
次に、親機3側の第2の探触子62を使用する場合について説明する。
この場合には、予め入力デバイス34のダイレクトキーやメニュー操作によって、スイッチ64を第2の探触子送受信制御部63と信号処理部38とが接続されるように切り替えておく。そして、第2の探触子62を駆動させて、第2の検査信号を受信する。受信された第2の検査信号は、信号処理部38に送られた後、表示データ作成部39及び表示制御部50を介して親機3側の表示部35に表示される。この際、スイッチ65を入れて表示データ作成部39と表示データ送信部32とを接続することで、表示データを子機2側に無線送信して、子機2側の表示部13に検査結果を表示させることができる。
特に、表示データ作成部39と表示データ送信部32との間にスイッチ65が設けられているので、このスイッチ65をOFFにすることで、親機3側の表示部35のみに検査結果を表示することができる。つまり、親機3単体で非破壊検査を行うことが可能である。そして、このときに表示データ送信部32を停止させることで、余分な電力消費を抑えることができ、バッテリーの消耗を抑えることができる。
【0074】
また、親機3側の第2の探触子62を用いる場合であっても、子機2側の入力デバイス14から親機3の設定を変更できるようにしても構わない。この場合には、子機2側の設定値送受信部15を介して親機3側に無線送信すれば良い。また、この場合における設定値の保存は、基本的には親機3側で行うが、子機2側で記録、保持しても構わない。
また、親機3の第2の探触子62を使用する場合は、子機2は親機3のリモコン及び外部モニターとして使用できる。よって、子機2だけでなく、親機3でも探触子を接続して検査可能にすると、使用方法が広がり、作業効率が向上する。
【0075】
また、子機2側の探触子送受信制御部10を、親機3側の第2の探触子送受信制御部63が作動しているときに停止するよう設定し、これとは逆に親機3側の第2の探触子送受信制御部63を、子機2側の探触子送受信制御部10が作動しているときに停止するよう設定しても構わない。
こうすることで、例えば、親機3側の第2の探触子62を使用するときに、子機2側の探触子送受信制御部10を停止させることができるので、余分な電力消費をなくし、バッテリーの消耗を抑えることができる。また、子機2側の探触子7を使用するときに、親機3側の第2の探触子送受信制御部63を停止させることができるので、同様に余分な電力消費をなくし、バッテリーの消耗を抑えることができる。
【0076】
上述したように、本実施形態の超音波探傷器60によれば、子機2と親機3とにそれぞれ接続された探触子7又は第2の探触子62とをスイッチ64によって容易に切り替えて、使用することができるので、子機2で検査している場所とは少し離れた別の場所での検査結果とを比較しながら非破壊検査を行うことができる。従って、非破壊検査の作業効率が向上すると共に、より多角的な検査を行うことができる。
【0077】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0078】
例えば、上記第1実施形態では、充電手段36として、親機3に開口部42を形成すると共に開口部42の底部に充電器を設けた構成にしたが、この構成に限られず、例えば、図7に示すように、親機3にケーブル68を介して接続された充電器69を充電手段として、子機2を充電しても構わない。こうすることで、親機3に開口部42を形成する必要がないので、親機3をよりコンパクトにすることができる。
【0079】
また、上記各実施形態では、親機3側の設定値送受信部33と検査信号受信部30とを別々に設けた構成にしたが、これらを一体的に構成しても構わない。また、同様に、子機2側の設定値送受信部15と検査信号送信部11とを一体的に構成しても構わない。
更に、上記各実施形態では、非破壊検査装置として超音波探傷器を例にしたが、これに限られるものではなく、例えば、渦流探傷器を採用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る非破壊検査装置の第1実施形態の構成図である。
【図2】図1に示す子機を親機に収容して、子機の充電を行っている状態を示す図である。
【図3】図1に示す子機の内部ブロック図である。
【図4】図1に示す親機の内部ブロック図である。
【図5】本発明に係る非破壊検査装置の第2実施形態の構成図である。
【図6】図5に示す親機の内部ブロック図である。
【図7】図1に示す親機の充電手段の他の構成を示す図である。
【図8】従来の非破壊検査装置の一例を示す構成図である。
【図9】従来の非破壊検査装置の他の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0081】
S 被検体
1、60 超音波探傷器(非破壊検査装置)
2 子機(検査信号収集ユニット)
3 親機(信号処理ユニット)
7 探触子(センサ部)
10 探触子送受信制御部(センサ部駆動手段)
11 検査信号送信部(検査信号送信手段)
12 表示データ受信部(表示データ受信手段)
13 表示部
14、34 入力デバイス(入力手段)
15 設定値送受信部(設定値受信手段、設定値送信手段、トリガ受信手段)
30 検査信号受信部(検査信号受信手段)
31 信号処理手段
32 表示データ送信部(表示データ送信手段)
33 設定値送受信部(設定値受信手段、設定値送信手段、トリガ送信手段)
35 表示部(第2の表示部)
36 充電手段
62 第2の探触子(第2のセンサ部)
63 第2の探触子送受信制御部(第2のセンサ部駆動手段)
64 スイッチ(切替手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面又は内部の少なくとも一方の欠陥を検査する非破壊検査装置であって、
前記被検体の近傍に配置される検査信号収集ユニットと、該検査信号収集ユニットとの間でデータ転送を行う信号処理ユニットとを備え、
前記検査信号収集ユニットが、前記被検体の前記欠陥を検知すると共に欠陥に応じた検査信号を生成するセンサ部と、該センサ部を駆動させると共に前記検査信号を受信するセンサ部駆動手段と、受信した前記検査信号を前記信号処理ユニットに送信する検査信号送信手段と、前記信号処理ユニットから送信され、前記検査信号に基づいて変換された表示データを受信する表示データ受信手段と、受信した表示データを表示する表示部とを備え、
前記信号処理ユニットが、前記検査信号送信手段から送信された前記検査信号を受信する検査信号受信手段と、受信した前記検査信号を所定処理すると共に前記表示データに変換する信号処理手段と、変換された前記表示データを前記検査信号収集ユニットに送信する表示データ送信手段とを備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記信号処理ユニットが、閾値を予め調整するゲート機能と、該ゲート機能により調整された前記閾値を、前記検査信号受信手段により受信された前記検査信号に反映させるトリガ手段と、前記検査信号と前記閾値とを比較すると共に、比較結果を前記検査信号収集ユニットに送信するトリガ送信手段とを備え、
前記検査信号収集ユニットが、前記比較結果を受信するトリガ受信手段を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号収集ユニットが、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記信号処理ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、
前記信号処理ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記信号処理ユニットは、前記表示データを表示する第2の表示部を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の非破壊検査装置において、
前記信号処理ユニットが、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記検査信号収集ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、
前記検査信号収集ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項6】
請求項1又は4に記載の非破壊検査装置において、
前記信号処理ユニットは、前記被検体の前記欠陥を検知すると共に欠陥に応じた第2の検査信号を生成する第2のセンサ部と、該第2のセンサ部を駆動させると共に前記第2の検査信号を受信する第2のセンサ部駆動手段と、前記第2の検査信号、又は、前記検査信号のどちらかの信号を切り替えて前記信号処理手段に入力させる切替手段と、設定値が入力される入力手段と、入力された前記設定値を前記検査信号収集ユニットに送信する設定値送信手段とを備え、
前記検査信号収集ユニットが、前記設定値を受信する設定値受信手段を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の非破壊検査装置において、
前記センサ部駆動手段は、前記第2のセンサ部駆動手段が作動しているときに停止するよう設定され、
前記第2のセンサ部駆動手段は、前記センサ部駆動手段が作動しているときに停止するよう設定されていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号収集ユニットと前記信号処理ユニットとの間の前記データ転送は、無線通信により行われることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項9】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号収集ユニットと前記信号処理ユニットとの間の前記データ転送は、有線通信により行われることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項10】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号が、アナログ信号であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項11】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号が、デジタル信号であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項12】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記表示データが、アナログ信号であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項13】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記表示データが、デジタル信号であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項14】
請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記検査信号収集ユニットは、バッテリー駆動であり、
前記信号処理ユニットは、前記検査信号収集ユニットの充電を行う充電手段を備えていることを特徴とする非破壊検査装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−284417(P2006−284417A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106030(P2005−106030)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】