非細胞傷害性タンパク質結合体
侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性タンパク質結合体は、(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、を含む。このタンパク質結合体をコードする核酸配列、その調製方法、およびその使用も記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非細胞傷害性タンパク質結合体、および疼痛の治療のための該結合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毒素は、標的細胞に対して有する効果のタイプに従って2つの群に分けられ得る。より詳細には、第一の毒素群は、それらの天然の標的細胞を殺傷し、このため、細胞傷害性毒素分子として知られる。この毒素群は、とりわけ、植物毒素(例えば、リシンおよびアブリン)および細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素A)によって例示される。細胞傷害性毒素は、代表的には、タンパク質合成の細胞プロセスを阻害することにより、それらの標的細胞を殺傷する。
【0003】
対照的に、第二の毒素群は、非細胞傷害性毒素として知られ、(これらの名称が証明するとおり)それらの天然の標的細胞を殺傷しない。非細胞傷害性毒素は、それらの細胞傷害性のものほどには商業上の関心をひきつけず、そしてタンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することにより、標的細胞に対してそれらの効果を発揮する。細胞傷害性の対応物と同様に、非細胞傷害性毒素は、植物および細菌のような種々の供給源から生成される。細菌の非細胞傷害性毒素を、ここでより詳細に説明する。
【0004】
クロストリジウム神経毒素は、代表的には150kDaの程度の分子量を有するタンパク質である。それらは、種々の細菌種、特に、クロストリジウム属の細菌、最も重要にはC. tetaniおよびC. botulinumの数株、C. butyricum、およびC. argentinenseによって生成される。現在、クロストリジウム神経毒素の8つの異なるクラスが存在し(すなわち、破傷風菌毒素およびボツリヌス菌神経毒素(その血清型A、B、C1、D、E、FおよびG))、そしてそれらは全て、類似の構造および作用様式を共有する。
【0005】
クロストリジウム神経毒素は、非細胞傷害性毒素分子の主要な群を代表し、そして単一ポリペプチドとして宿主細菌によって合成され、この単一ポリペプチドは、タンパク質分解切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに接続された2つのポリペプチド鎖を形成する。これらの2つの鎖は、重鎖(H鎖)(これは、約100kDaの分子量を有する)および軽鎖(L鎖)(これは、約50kDaの分子量を有する)と称される。
【0006】
L鎖は、プロテアーゼ機能(亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性)を有し、そしてエキソサイトーシスプロセスに関与する小胞および/または原形質膜会合タンパク質に対する高い基質特異性を示す。異なるクロストリジウム種または血清型に由来するL鎖は、3つの基質タンパク質(すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25)の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を加水分解し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。
【0007】
非細胞傷害性毒素は、Neisseria属、最も重要にはN. gonorrhoeaeの種に由来するような、他の細菌によっても生産される。例えば、Neisseria sp.は、非細胞傷害性毒素であるIgAプロテアーゼを生成する(WO99/58571を参照のこと)。
【0008】
毒素分子が、その毒素の天然の標的細胞ではない細胞にリターゲティングされ得ることが当該分野において十分に書き記されている。そのようにリターゲティングされたとき、改変毒素は、所望の標的細胞に結合し得、そしてそれに続くサイトゾルへのトランスロケーション後、標的細胞にその効果を発揮し得る。該リターゲティングは、毒素の天然のターゲティング部分(TM)を異なるTMと置き換えることによって達成される。これに関して、TMは、それが所望の標的細胞に結合し、そして標的細胞内のエンドソームへの改変毒素の引き続く通過を可能にするように選択される。改変毒素はまた、非細胞傷害性プロテアーゼの細胞サイトゾルへの侵入を可能にするトランスロケーションドメインを含む。このトランスロケーションドメインは、毒素の天然のトランスロケーションドメインであり得るか、またはトランスロケーション活性を有する微生物タンパク質から得られる別のトランスロケーションドメインであり得る。
【0009】
例えば、非細胞傷害性毒素分子に関して、クロストリジウム神経毒素が、クロストリジウム神経毒素の天然のTMではないターゲティング部分(TM)の組込みによってリターゲティングされ得ることは十分に書き記されている。記載された化学結合体化および組換え方法は、従来技術とみなされ、そしてHermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press、およびWong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Pressに言及されている。
【0010】
例えば、WO94/21300は、改変クロストリジウム神経毒素分子を記載しており、この分子は、標的細胞の細胞表面に存在する膜貫通タンパク質(IMP)密度を調節し得る。したがって、この改変神経毒素分子は、標的細胞の細胞活性(例えば、グルコース取り込み)を制御し得る。WO96/33273およびWO99/17806は、末梢感覚求心性神経をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変神経毒素分子は、鎮痛効果を示し得る。WO00/10598は、粘液過分泌細胞(または該粘液過分泌細胞を制御する神経細胞)をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、該細胞からの過分泌を阻害し得る。WO01/21213は、広範な異なるタイプの非神経標的細胞をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変分子は、標的細胞からの分泌を抑制し得る。リターゲティングされる毒素分子の技術分野におけるさらなる刊行物としては、以下が挙げられる:WO00/62814;WO00/04926;US5,773,586;WO93/15766;WO00/61192;およびWO99/58571。
【0011】
したがって、上記刊行物から、標的細胞に存在する対応するレセプターを有するTMを選択することによって非細胞傷害性プロテアーゼを所望の標的細胞にリターゲティングするという基本概念が、十分に記載されていることが理解される。
【0012】
しかし、目的の標的細胞に存在する異なるレセプターは、異なるTMに対して異なる結合親和性を示す。これは、異なるTMに対して異なる結合親和性を有する広範なレセプタータイプを有している痛みを感じる細胞には、特に問題であり得る。したがって、特定のTM(これは痛みを感じる細胞上のレセプターに結合する)を含むリターゲンティングされた結合体は、痛みを感じる標的細胞に対して低い結合親和性を示し得、これは望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、1つ以上の上記問題に取り組む改変非細胞傷害性結合体を開発する必要がある。疼痛の治療への使用のための改善された結合体の開発が特に関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、結合体のターゲティング部分(TM)として、目的の痛みを感じる標的細胞に存在するレセプターの「アゴニスト」を使用することによって、1つ以上の上記問題に取り組む努力をする。好適な実施態様では、痛みを感じる標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経、より好ましくは一次侵害受容感覚求心性神経である。特に好適な実施態様では、TMはオピオイド様レセプター−1(ORL1)レセプターのアゴニストである。
【0015】
したがって、第1の局面では、本発明は、侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体を提供し、この結合体は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「アゴニスト」は、通常生物学的プロセス、特にエキソサイトーシス(例えば、細胞分泌の増加、または膜タンパク質発現のアップレギュレーション)を刺激し、この「アゴニスト」の使用は、リターゲティングされた毒素の技術分野において刺激的な開発である。さらに、アゴニストが治療用組成物に用いられて、そのアゴニストが通常刺激する生物学的プロセスの低減または阻害を達成し得ることは、特に驚くべきことである。
【0017】
本発明のアゴニスト含有結合体は、毒素結合体の別のサブセットを示す。より詳細には、本発明の結合体は、TMを含み、このTMは、目的の痛みを感じる標的細胞上に対応するレセプターを有するという単純な根拠よりもむしろ特定のアゴニスト特性に基づいて選択されている。
【0018】
従来、アゴニストは、細胞内で活性を上昇または低下させ得る任意の分子、すなわち、細胞活性の変化を単に引き起こす任意の分子であると考えられている。例えば、アゴニストの従来の意味は、細胞上のレセプターと結合しそして反応または活性を開始し得る化学物質、あるいは、応答が細胞活性の上昇または低下のいずれにせよ、レセプターを活性化することにより活性な応答を誘導する薬物を含む。
【0019】
しかし、本発明の目的のために、アゴニストは、痛みを感じる標的細胞においてエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子として、より詳細に定義される。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0020】
したがって、本発明の特定のアゴニストの定義は、従来はアゴニストと考えられていた多くの分子を排除する。例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介する神経分化を促進する能力に関するアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主なインデューサーではないので、上記基準によって評価した場合はアゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けにくい。
【0021】
使用に際して、本発明のアゴニスト含有結合体は、痛みを感じる標的細胞上のアゴニストレセプターを不活性化せず、むしろ結合体のプロテアーゼ活性が、アゴニストにより媒介される応答を打ち消すように働く。
【0022】
さらに、一旦痛みを感じる標的細胞のサイトゾルに送達されると、本発明の結合体のプロテアーゼ構成部分は、同じ標的細胞において同じ効果(すなわち、エキソサイトーシス融合の増加)を引き起こし得るすべてのその後のアゴニストの作用を阻害またはブロックする。これは、好都合であり、そして本発明の結合体が、多数のアゴニストが痛覚を生じる原因であり得る状況に適用を有することを意味する。したがって、本発明の結合体を設計する場合、送達のために選択されるTMは、必ずしも痛覚を生じることに関連する主要なアゴニストである必要はない。
【0023】
本発明によるアゴニストにより媒介される送達は、これまでの非細胞傷害性プロテアーゼ含有治療剤よりも以下の顕著な利点を提供する:アゴニストの使用は、結合体に選択的結合および/または内在化特性を与え得る。次に、これは、痛みを感じる標的細胞へのプロテアーゼ構成部分のより効率的な送達を生じ得る。
【0024】
さらに、アゴニストのTMとしての使用は、副作用に関して自己限定的である。より詳細には、痛みを感じる標的細胞へのアゴニストの結合は、エキソサイトーシス融合を増加し、これは、痛覚を増悪させ得る。しかし、アゴニスト結合により刺激されるエキソサイトーシスプロセスは、続いて、結合体のプロテアーゼ構成部分により低減または阻害される。
【0025】
本発明の好適な実施態様では、TMは、ORL1レセプターのアゴニストである。ORL1レセプターは、身体において痛みを感じる細胞上に存在する。
【0026】
ORL1レセプターは、Gタンパク質と結合したクラスのレセプターのメンバーであり、そして7回膜貫通ドメイン構造を有する。ORL1レセプターの特性は、MogilおよびPasternak (2001), Pharmacological Reviews, 53巻, 3号, 381-415頁に詳細に記載される。
【0027】
本明細書を通して、「ORL1レセプター」とは、ORL1レセプターファミリーのすべてのメンバーを含む。ORL1レセプターファミリーのメンバーは、代表的には、7回膜貫通ドメイン構造を有し、そしてGiおよびG0ファミリーのGタンパク質に結合される。ORL1レセプターのリガンドのGタンパク質刺激活性の測定方法を、実施例17に示す。ORL1活性化後の細胞cAMPレベルの低下の測定方法を、実施例16に示す。ORL1レセプターファミリーのメンバーのさらなる特徴は、それらが代表的にはノシセプチン(ORL1の天然のリガンド)を結合し得ることである。例として、ORL1レセプターのすべての選択的スプライス改変体は、ORL1レセプターファミリーのメンバーである。
【0028】
本発明の結合体は、一般に、対応する「フリー」なTMと比較した場合、侵害受容感覚求心性標的細胞に対して(100倍までの範囲で)低下した結合親和性を示している。しかし、この観察にもかかわらず、本発明の結合体は、驚くべきことに、良好な効力を示している。これは、2つの主要な特徴に帰するものであり得る。第一に、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、触媒性である。したがって、少数のこのような分子の治療効果が迅速に増幅される。第二に、侵害受容感覚求心性神経上に存在するレセプターは、治療剤の侵入のための出入口としてのみ作用する必要があり、必ずしもリガンド−レセプター媒介薬理学的応答を達成するために必要とされるレベルまで刺激される必要はない。したがって、本発明の結合体は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)について用いられるよりもずっと低い投薬量で投与され得る。後者の分子は、代表的には、高マイクログラムからミリグラム(数百ミリグラムまででさえある)量で投与される。これに対して、本発明の結合体は、ずっとより低い投薬量(代表的には少なくとも10倍低く、そしてより代表的には100倍低い)で投与され得る。
【0029】
本発明の特に好ましい実施態様では、結合体のTMは、ORL1レセプターに対する天然のリガンドであるノシセプチンである。ノシセプチンは、ORL1レセプターを高い親和性でターゲティングする。
【0030】
他の好ましいTMの例は、以下を含む:
【0031】
【数1】
【0032】
[1]MogilおよびPasternak, 2001, Pharmacol. Rev., 53, 381-415
[2]Maileら, 2003, Neurosci. Lett., 350, 190-192
[3]Rizziら, 2002, J. Pharmacol. Exp. Therap., 300, 57-63
[4]Okadaら, 2000, Biochem. Biophys. Res. Commun., 278, 493-498
[5]Zaveri, 2003, Life Sci., 73, 663-678.
[6]Dooleyら, 1997, J Pharmacol Exp Ther. 283(2), 735-41。
【0033】
TMは、好ましくは最大で50アミノ酸残基、より好ましくは最大で40アミノ酸残基、特に好ましくは最大で30アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で20アミノ酸残基を含む。例えば、ノシセプチンは、17アミノ酸残基ペプチドである。
【0034】
上記の同定された「改変体」TMは、(天然のノシセプチンと比較した場合)侵害受容感覚求心性神経に対して特に良好な結合親和性を示す。一般的に言えば、TM含有結合体は、TM自体と比べて約100倍の結合能の低減を示す。上記の「改変体」TM自体は、天然のノシセプチンと比べて侵害受容感覚求心性神経に対して約3〜10倍の結合能の上昇を示す。したがって、「改変体」TM含有融合物は、「フリー」のノシセプチンと比べて侵害受容感覚求心性神経に対して約10倍の結合能の低減を示すことが予測され得る。しかし、本発明者らは、該「改変体」TMを含む結合体が、「フリー」のノシセプチンの結合能を(最も驚くべきことには)厳密に反映する結合能を示すことを示した。図17を参照のこと。
【0035】
本発明では、用語「ORL1レセプターのアゴニスト」(例えば、ノシセプチン、または上記の数表に列挙したペプチドのいずれか1つ)は、該アゴニストと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有する分子を包含する。アゴニストホモログは、ORL1レセプターでノシセプチンのアゴニスト特性を保持し、これは、実施例10に提供される方法を用いて検証され得る。
【0036】
本発明はまた、上記のTMのいずれか1つのフラグメント、改変体、および誘導体を含む。これらのフラグメント、改変体、および誘導体は、該TMに帰する特性を実質的に保持する。
【0037】
TMのアゴニスト特性は、実施例1に記載の方法を用いて確認され得る。これらの方法は、既存の実験に基づき(Inoueら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci., 95, 10949-10953を参照のこと)、これは、ORL1レセプターの天然のアゴニストであるノシセプチンが、侵害受容一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出の誘導を引き起こすことを確認する。これは、以下の事実によって支持される:
・ノシセプチンにより誘導される応答は、特異的NK1レセプター(サブスタンスPレセプター)アンタゴニストによって廃止される;および
・カプサイシンでの細胞の前処理(これは、小さな直径の一次求心性神経細胞からサブスタンスPを枯渇させる)は、ノシセプチンで誘導される応答を減弱させる。
【0038】
同様に、Inoueらは、ボツリヌス神経毒素A型の足底内注射が、ノシセプチンにより誘導される応答を廃止することを確認している。BoNTが一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害することが公知であるので(Welchら, (2000), Toxicon, 38, 245-258)、これは、ノシセプチン−ORL1相互作用とその後のサブスタンスPの放出との間の関連を確認する。
【0039】
したがって、TMが侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出の誘導を引き起こす場合、TMは、ORL1レセプターでアゴニスト活性を有するということができる(実施例1を参照のこと)。
【0040】
他の実施態様では、オピオイドが、本発明のTMの好適な群を示す。エンケファリン(metおよびleu)、エンドモルフィン1および2、β−エンドルフィン、ならびにダイノルフィンが、このペプチドファミリー内に含まれる。オピオイドペプチドは、侵害受容器、および疼痛応答に関与する他の細胞に対する活性を改変するために臨床で頻繁に使用される。世界保健機構の3段階徐痛ラダーに例示されるように、オピオイドは、3段階のすべてにおいて慢性の癌および非癌の疼痛の薬理学的治療へのエントリーポイントを有し、これは、疼痛治療への重要性を強調する。オピオイドとは、侵害受容感覚求心性神経への結合能を保持する、そのフラグメント、改変体、および誘導体を含む。本発明のプロテアーゼは、真核細胞においてエキソサイトーシス融合器官の1以上のタンパク質を切断し得るすべての天然に存在する非細胞傷害性プロテアーゼを含む。
【0041】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼである。
【0042】
より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属またはナイセリア属から選択される(例えば、クロストリジウムL鎖、またはナイセリアIgAプロテアーゼ(好ましくは、N. gonorrhoeae由来))。
【0043】
本発明はまた、改変非細胞傷害性プロテアーゼを含み、この改変プロテアーゼは、上記プロテアーゼ活性をなお示す限り、天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を含む。
【0044】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、セリンまたはメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP−25、シナプトブレビン/VAMP、またはシンタキシン)に特異的である。
【0045】
特に、神経毒素のプロテアーゼドメイン(例えば、細菌神経毒素のプロテアーゼドメイン)について述べられる。したがって、本発明は、天然に存在する神経毒素ドメインの使用、ならびに該天然に存在する神経毒素の組換え調製型を包含する。
【0046】
例示の神経毒素は、クロストリジウム属によって生成される。そして用語「クロストリジウム神経毒素」は、C. tetaniによって生成される神経毒素(TeNT)およびC. botulinumによって生成される神経毒素(BoNT)血清型A〜G、ならびにC. baratiiおよびC. butyricumにより生成される密に関連したBoNT様神経毒素を含む。上記の略語は、本明細書中を通じて使用する。例えば、BoNT/Aとの名称は、神経毒素の供給源がBoNT(血清型A)であることを示す。他のBoNT血清型に対しても、対応する名称が適用される。
【0047】
用語「L鎖フラグメント」は、神経毒素のL鎖の一構成部分を意味し、このフラグメントは、メタロプロテアーゼ活性を示し、そして細胞エキソサイトーシスに関与する小胞および/または原形質膜に会合したタンパク質をタンパク質分解により切断し得る。
【0048】
トランスロケーションドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、痛みを感じる標的細胞へのプロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする分子である。どの分子(例えば、タンパク質またはペプチド)が保有するのであっても、本発明の必要なトランスロケーション機能は、多数の従来アッセイの任意の1つによって確認され得る。
【0049】
例えば、Shone C.(1987)は、試験分子がチャレンジされるリポソームを用いるインビトロアッセイを記載している。必要なトランスロケーション機能の存在は、K+および/または標識NADのリポソームからの放出によって確認され、これは容易にモニタリングされ得る(Shone C. (1987) Eur. J. Biochem., 167(1)巻, 175-180頁を参照のこと)。
【0050】
さらなる例は、Blaustein R.(1987)によって提供される。これは、平面リン脂質二層膜を用いる単純なインビトロアッセイを記載している。この膜に試験分子をチャレンジし、そして必要なトランスロケーション機能は、該膜を横断する伝導の増大によって確認される(Blaustein (1987) FEBS Letts., 226巻, 1号, 115-120頁を参照のこと)。
【0051】
膜融合の評価、およびしたがって、本発明での使用に適したトランスロケーションドメインの同定を可能にするさらなる方法は、Methods in Enzymology 220巻および221巻, Membrane Fusion Techniques, A部およびB部, Academic Press 1993によって提供される。
【0052】
トランスロケーションドメインは、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。
【0053】
トランスロケーションドメインは、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。
【0054】
細菌毒素分子のある種のドメインがこのような孔を形成し得ることは、十分に記載されている。ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインがこのような孔を形成し得ることも公知である。このようなドメインは、本発明において用いられ得る。
【0055】
トランスロケーションドメインは、クロストリジウム属起源であり得、すなわち、HNドメイン(またはその機能的構成部分)であり得る。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。適切なクロストリジウムトランスロケーションドメインの例は、以下を含む:
ボツリヌス菌A型神経毒素−アミノ酸残基(449〜871)
ボツリヌス菌B型神経毒素−アミノ酸残基(441〜858)
ボツリヌス菌C型神経毒素−アミノ酸残基(442〜866)
ボツリヌス菌D型神経毒素−アミノ酸残基(446〜862)
ボツリヌス菌E型神経毒素−アミノ酸残基(423〜845)
ボツリヌス菌F型神経毒素−アミノ酸残基(440〜864)
ボツリヌス菌G型神経毒素−アミノ酸残基(442〜863)
破傷風菌神経毒素−アミノ酸残基(458〜879)。
【0056】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(C. tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関するさらなる詳細については、Hendersonら (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressに参照される。
【0057】
用語「HN」は、天然に存在する神経毒素HN部、および天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を有する改変HN部(ただし、改変HN部が上記トランスロケーション機能をなお示す限り)を含む。
【0058】
あるいは、トランスロケーションドメインは、非クロストリジウム属起源であり得る(以下の数表を参照のこと)。非クロストリジウムトランスロケーションドメイン起源の例は、以下を含むが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のトランスロケーションドメイン[O'Keefeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206;Silvermanら, J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532;およびLondon, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナス外毒素A型のトランスロケーションドメイン[Priorら, Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽菌毒素のトランスロケーションドメイン[Blankeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996)93, 8437-8442]、トランスロケーション機能の種々の融合性または疎水性ペプチド[Plankら, J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924;およびWagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および両親媒性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]。トランスロケーションドメインは、天然に存在するタンパク質に存在するトランスロケーションドメインを反映し得るか、またはその変化がトランスロケーションドメインのトランスロケーション能を破壊しない限り、アミノ酸変化を含み得る。
【0059】
本発明での使用に適したウイルストランスロケーションドメインの具体的な例には、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインが含まれる。例えば、Wagnerら(1992)およびMurataら(1992)は、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのN末端領域に由来する多数の融合性および両親媒性のペプチドのトランスロケーション(すなわち、膜融合および小胞形成)機能を記載している。所望のトランスロケーション活性を有することが公知の他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)の融合性ペプチドのトランスロケーションドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質Gのトランスロケーションドメイン、SERウイルスFタンパク質のトランスロケーションドメインおよび泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質のトランスロケーションドメインである。ウイルスがコードする「スパイクタンパク質」は、本発明においては特別な適用を有し、例えば、SFVのE1タンパク質およびVSVのGタンパク質である。
【0060】
トランスロケーションドメイン(以下に列挙)の使用は、それらの配列改変体の使用を含む。改変体は、1つ以上の保存的な核酸置換および/または核酸欠失もしくは挿入を含み得る。ただし、この改変体は、必要なトランスロケーション機能を保有する。改変体はまた、この改変体が必要なトランスロケーション機能を保有する限り、1つ以上のアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失もしくは挿入を含み得る。
【0061】
【数2】
【0062】
一旦可能性のあるレセプターアゴニスト(例えば、ORL1アゴニスト)が同定されると、1以上の以下の任意の工程が行われ得る:
(A)推定アゴニスト分子またはアゴニストが、非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)および必要に応じてトランスロケーションドメインに結合して、本発明の結合体を形成し得ることを確認する工程;および/または
(B)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、レセプターがレセプター媒介エンドサイトーシスを受けやすい、痛みを感じる標的細胞上のレセプターに結合することを確認する工程;および/または
(C)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、痛みを感じる標的細胞のサイトゾルへの非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)を送達し得ることを確認する工程。
【0063】
上記工程(A)〜(C)は、当業者に容易に利用可能な通常の試験によって確認され得る。
【0064】
例えば、工程(A)は、従来の結合試薬および/またはリンカー分子を用いる単純な化学結合実験により行われ得、次いで天然のポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、予想分子量を有する本発明の結合体が形成されることを確認する。結合体構成部分は、代表的には、共有結合によって(必要に応じてリンカー分子を介して)一緒に連結される。
【0065】
例えば、工程(B)は、リガンドの結合の評価のためのある範囲の方法のいずれか1つによって行われ得る。標準テキスト、例えば、このようなアプローチを詳細に記載する「Receptor-Ligand Interactions. A Practical Approach. E. C. Hulme編, IRL Press, 1992」が利用可能である。簡単に言えば、アゴニストまたは推定アゴニスト分子は、(例えば、125-ヨウ素で)標識され、そして過剰の非標識アゴニストの存在下でインビトロにて細胞調製物に適用される。非標識材料の目的は、あらゆる非特異的結合部位を飽和させることである。アゴニストを、細胞調製物とともに十分な時間インキュベートして平衡を達成し、そして細胞に結合した標識の量を、例えば、シンチレーションまたはガンマ計数によって細胞に結合した放射活性を測定することにより評価する。
【0066】
さらなる例として、アゴニスト(または推定アゴニスト)の金標識化、次いで電子顕微鏡を用いて標識されたアゴニストの細胞輸送の進行をモニターすることが含まれる[Rabinowitz S. (1992); J. Cell. Biol. 116(1): 95-112頁に記載の基本的方法;およびvan Deurs (1986); J. Cell. Biol. 102: 37-47頁に記載の基本的方法を参照のこと]。
【0067】
例えば、工程(C)は、工程(A)で調製した結合体を適切な標的細胞と接触させ、そしてこの基質の切断を評価することによって行われ得る。これは、SNAREタンパク質の抽出、次いでSDS−PAGE分離した試料のウェスタンブロッティングによって行われる。基質の切断は、プロテアーゼの標的細胞への送達を示す。この点で、切断は、基質の消失および/または切断産物の出現によってモニターされ得る。切断された基質産物に選択的に結合する特に有用な抗体が、WO95/33850に記載されている。
【0068】
本発明の結合体の調製を、ここで説明する。
【0069】
神経毒素分子のHC部がHNとして公知のH鎖の他の部分から除去され得、そのため、HNフラグメントが神経毒素のL鎖に結合したジスルフィドを保持してLHNとして公知のフラグメントを提供することが当該分野で公知である。したがって、本発明の1つの実施態様では、神経毒素のLHNフラグメントは、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0070】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のHCドメインは、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック、または改変されて、神経筋接合部で神経毒素をレセプターに結合する能力を低減または好ましくは無能力にされる。次いで、この改変された神経毒素は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0071】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のH鎖は、HCドメインが、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック、または改変されて、その本来の結合能を低減または好ましくは無能力にされており、この神経毒素のH鎖は、異なる神経毒素のL鎖、またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。次いで、このハイブリッドの改変された神経毒素は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0072】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のHNドメインは、異なる神経毒素のL鎖、またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。次いで、このハイブリッドは、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0073】
本発明の他の実施態様では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、関連の標的細胞の細胞質中へのプロテアーゼの内在化もまた生じ得るTMに共有結合される。
【0074】
本発明の他の実施態様では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、サイトゾル中へのプロテアーゼフラグメントの輸送を行うためのトランスロケーションドメインに共有結合される。
【0075】
使用に際して、本発明による結合体のドメインは、互いに結合される。1つの実施態様では、2以上のドメインは、直接(例えば、共有結合によって)またはリンカー分子を介してのいずれかで一緒に結合され得る。
【0076】
種々の異なるリンカー/スペーサー分子は、本発明の融合タンパク質のいずれかに用いられ得る。このようなスペーサー分子の例としては、図31および32に示される分子が挙げられる。ここでは、特に、GS15、GS20、GS25、およびHx27について述べられる。図31および32を参照のこと。
【0077】
予想外に、本発明者らは、スペーサーの大きさが、(使用に際して)TM(好ましくは、そのC末端)とトランスロケーションドメイン(好ましくは、そのN末端)とが互いに40〜105オングストローム、好ましくは50〜100オングストローム、そしてより好ましくは50〜90オングストローム離れているように選択される場合、非細胞傷害性プロテアーゼ−TM結合体(例えば、CPNv/A)が、侵害受容感覚求心性神経に対する結合活性の改善を示し得ることを見出した。別の実施態様では、好ましいスペーサーは、11〜29アミノ酸残基、好ましくは15〜27アミノ酸残基、そしてより好ましくは20〜27アミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。適切なスペーサーは、Crasto, C.J.およびFeng, J.A. (2000) 5月; 13(5);309-312頁(http://www.fccc./edu/research/labs/feng/limker.html.もまた参照のこと)に従って、通常通りに同定および入手され得る。
【0078】
本発明における使用に適切な結合技術は、十分に文献に記載され、そして当業者には通常である。
【0079】
2つのタンパク質分子(AおよびB)を一緒に結合することに関する方法は単純であり、そして架橋剤(化学的カップリング剤としても公知)の使用により達成される。例えば、分子AおよびBを、別々に架橋剤と接触させ、分子AおよびBのそれぞれの特異的な表面基を化学的に改変し、それによって誘導体化分子A’およびB’を形成する。分子A’の改変表面基は、分子B’の改変表面基と共有結合し得る。したがって、2つのタンパク質分子A’およびB’を一緒に混合することによって、カップリング反応が完了する。
【0080】
化学的結合を、以下の実施態様を参照して説明する:ここで、P=非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分、T=トランスロケーション構成部分、およびTM=ターゲティング部分である。
【0081】
1つの実施態様では、単鎖P−Tを調製し、次いで、これはTMに結合される。他の実施態様では、単鎖TM−T(またはT−TM)を調製し、次いで、これはPに結合される。さらなる実施態様では、単鎖P−TM(またはTM−P)を調製し、次いで、これはTに結合される。他の特に好ましい結合体は、(PとTMとの間の任意のプロテアーゼ切断部位とともに)構造P−TM−Tを有する。
【0082】
TおよびP構成部分が単鎖ポリペプチドとして調製される場合、プロテアーゼ切断部位は、代表的には、該構成部分間に含まれる。いかなるプロテアーゼ切断部位も、この点で用いられ得る。
【0083】
代わりの実施態様では、3つの構成部分が、同時にまたは連続して一緒に結合され得る。したがって、結合は、1段階または2段階プロセスであり得、そして1以上の異なるカップリング剤が含まれ得る。
【0084】
化学的カップリング剤および架橋剤は、長年市販されている。
【0085】
本発明の実施例5には、2つのタンパク質分子(ノシセプチン、およびボツリヌス神経毒素のLHN)を化学的に結合するための1つのこのようなカップリング剤(すなわち、SPDP)の使用が詳細に記載されている。2つの分子を、別々にSPDPと接触させ、次いで一緒に混合して共有結合させる。
【0086】
実施例6に記載の結合体は、他のカップリング剤であるPDPH/EDACまたはトラウト試薬が、SPDPの代替のカップリング剤として用いられ得ることを確認する。
【0087】
SPDPおよびトラウト試薬は、タンパク質結合化学の技術分野では一般的かつ十分に記載されたカップリング剤であり、そして単に、本発明の結合体のターゲティング部分構成部分およびクロストリジウム神経毒素構成部分を一緒に共有結合するために用いられ得る周知のクラスの化合物の2つの例として、本明細書で示されている。他の適切な薬剤としては、SMPB、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、およびLC−SPDPが挙げられる。
【0088】
より詳細には、周知のカップリング剤の市販のメンバーは、本発明の結合体を生成する目的に使用され得る。このような薬剤の詳細は、以下の刊行物に見られ得る:
Hermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press;
Wong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Press;
Thorpeら (1987), Cancer Res, 1987, 47, 5924-31。この文献は、SMBT(S-4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチルベンジルチオ硫酸ナトリウム)およびSMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン)の使用を記載する;および
Peetersら (1989), J Immunol Methods. 1989, 120, 133-43。この文献は、4つのカップリング試薬:MHS(スクシンイミジル6-(N-マレイミド)-n-ヘキサノエート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、MBS(スクシンイミジルm-マレイミドベンゾエート)、およびSPDPの使用を記載する。
【0089】
本発明による結合体はまた、実施例9〜12に詳述するように、組換えにより調製され得る。
【0090】
1つの実施態様では、組換え結合体の調製は、1つの遺伝子構築物中での選択したTM、選択した非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分、およびトランスロケーション構成部分のコード配列の(任意の順での)配置を含む。これらのコード配列は、フレームを合わせて配置され得、そのためそれに続く転写および翻訳が、両方のコード配列を通して連続的であり融合タンパク質を生じる。すべての構築物は、N末端メチオニンをコードする5’ATGコドンおよびC末端翻訳停止コドンを有する。
【0091】
したがって、組換え調製方法により、単鎖ポリペプチドが生成される。このポリペプチドを活性化するために、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分との間に、プロテアーゼ切断部位が存在する。この部位の切断は、二本鎖ポリペプチドを生成し、この二本鎖ポリペプチドでは、プロテアーゼドメインおよびトランスロケーションドメインが共有結合、好ましくはジスルフィド結合によって一緒に連結される。この点で、いかなるプロテアーゼ切断部位も用いられ得る。
【0092】
本発明の単ポリペプチド局面において、TMは、好ましくは、融合タンパク質に対してN末端側またはC末端側のいずれかに位置する。言い換えれば、TMが単ポリペプチド融合タンパク質のP構成部分とT構成部分との間に位置しないことが好ましい。特に好ましい実施態様では、TMは、融合タンパク質に対してN末端側に位置する。
【0093】
1つの実施態様では、クロストリジウム神経毒素のL鎖またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、IgAプロテアーゼ)またはそのフラグメント/改変体は、TMとの融合タンパク質として組換え発現され得る。このTMはまた、分泌の原因となる関連の標的細胞の細胞質へのL鎖構成部分の内在化をもたらし得る。あるいは、融合タンパク質は、トランスロケーションドメインをさらに含み得る。発現した融合タンパク質は、1以上のスペーサー領域を含み得る。
【0094】
一例として、以下の情報は、本発明の薬剤を組換えにより生成するために必要とされる:
(I)選択したTMに関するDNA配列データ;
(II)プロテアーゼ構成部分に関するDNA配列データ;
(III)トランスロケーションドメインに関するDNA配列データ;および
(IV)(I)、(II)および(III)を含む構築物の構築および発現を可能にするためのプロトコル。
【0095】
上記の基本情報(I)〜(IV)のすべては容易に利用可能であるか、または従来の方法によって容易に決定可能である。例えば、WO98/07864およびWO99/17806の両方とも、本出願での使用に適切な組換え技術を例示する。
【0096】
さらに、本発明の構築物の構築および発現の方法は、以下の参照文献などからの情報を用い得る:
Lorberboum-Galski, H., FitzGerald, D., Chaudhary, V., Adhya, S., Pastan, I. (1988), Cytotoxic activity of an interleukin 2-Pseudomonas exotoxin chimeric protein produced in Escherichia coli. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85(6):1922-6;
Murphy, J.R. (1988), Diphtheria-related peptide hormone gene fusions: a molecular genetic approach to chimeric toxin development. Cancer Treat. Res.; 37:123-40;
Williams, D.P., Parker, K., Bacha, P., Bishai, W., Borowski, M., Genbauffe, F., Strom, T.B., Murphy, J.R. (1987), Diphtheria toxin receptor binding domain substitution with interleukin-2: genetic construction and properties of a diphtheria toxin-related interleukin-2 fusion protein. Protein Eng;1(6):493-8;
Arora, N., Williamson, L.C., Leppla, S.H., Halpern, J.L. (1994), Cytotoxic effects of a chimeric protein consisting of tetanus toxin light chain and anthrax toxin lethal factor in non-neuronal cells J. Biol. Chem., 269(42):26165-71;
Brinkmann, U., Reiter, Y., Jung, S.H., Lee, B., Pastan, I. (1993), A recombinant immunotoxin containing a disulphide-stabilized Fv fragment. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(16):7538-42;および
O'Hare, M., Brown, A.N., Hussain, K., Gebhardt, A., Watson, G., Roberts, L.M., Vitetta, E.S., Thorpe, P.E., Lord, J.M. (1990), Cytotoxicity of a recombinant ricin-A-chain fusion protein containing a proteolytically-cleavable spacer sequence. FEBS Lett 10月29日;273(1-2):200-4。
【0097】
L鎖およびLHN鎖に関する適切なクロストリジウム神経毒素配列情報は、例えば、Kurazono, H. (1992) J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 14721-14729頁;およびPopoff, M.R.およびMarvaud, J.-C. (1999) The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins, 第2版(Alouf, J.E.およびFreer, J.H.編), Academic Press, 174-201頁から得られ得る。
【0098】
上記刊行物のすべては、参照文献として本明細書中に援用される。
【0099】
同様に、適切なTM配列データは、当該技術分野で広く入手可能である、あるいは、任意の必要な配列データは、当業者に周知の技術によって得られ得る。
【0100】
例えば、TM構成部分をコードするDNAは、正確なコード領域についてcDNAライブラリーをスクリーニングし(例えば、公知の配列情報に基づく特定のオリゴヌクレオチドを用いてライブラリーをプローブすることにより)、TMのDNAを単離し、このDNAを確認の目的で配列決定し、次いで選択した宿主中での発現に適切な発現ベクター中に単離したDNAを配置することによって、供給源生物からクローニングされ得る。
【0101】
ライブラリーからの配列の単離の代替として、利用可能な配列情報を用いて、PCRにおける使用のための特異的プライマーを調製し得、それにより、次いでコード配列を供給源材料から直接増幅し、そしてプライマーの適切な使用により、発現ベクター中に直接クローニングし得る。
【0102】
コード配列の単離のための他の代替方法は、既存配列情報を使用し、そしてDNA合成技術を用いて、可能であれば変化を組み込んで、コピーを合成することである。例えば、DNA配列データは、既存タンパク質および/またはRNA配列情報から生成され得る。DNA合成技術を用いてこのようにすること(および上記の代替)により、コード配列のコドン偏位を選択した発現宿主に最適であるように改変できる。これは、融合タンパク質の優れた発現レベルを生じ得る。
【0103】
発現宿主に対するコドン偏位の最適化は、構築物のTM構成部分およびクロストリジウム構成部分をコードするDNA配列に適用され得る。コドン偏位の最適化は、自由に利用可能なDNA/タンパク質データベースソフトウエア(例えば、Genetics Computer Group, Inc.から入手可能なプログラム)にタンパク質配列を適用することによって可能である。
【0104】
本発明の結合体を調製すると、種々のドメインが特定された機能を保持することを確認することが通常のことになる。
【0105】
結合後のプロテアーゼ機能は、例えば、以下の通常の試験のいずれか1つを用いることにより試験され得る:
【0106】
SNAP−25(またはシナプトブレビン、またはシンタキシン)は、試験されるべき結合体がチャレンジされ、次いでSDS−PAGEペプチド分離技術によって分析され得る。SNAP−25(または神経分泌機構の他の構成部分)の切断された産物に対応する分子量を有するペプチドの(例えば、銀染色による)その後の検出により、機能的L鎖の存在を確認する。
【0107】
さらなる代替として、結合体は、抗体特異的結合によりSNAP−25(またはシナプトブレビン、またはシンタキシン)切断産物についてアッセイすることによって試験され得る(WO95/33850を参照のこと)。より詳細には、特異的抗体がSNAP−25の切断を検出するために用いられる。抗体は、切断されたSNAP−25を認識するが、非切断SNAP−25を認識しないので、抗体による切断された産物の同定は、L鎖タンパク質分解機能の存在を確認する。例示として、このような方法は、WO96/33273の実施例2および3に記載される。
【0108】
結合後のトランスロケーション構成部分の機能は、例えば、以下の通常の試験のいずれか1つを用いて試験され得る:
【0109】
適切な方法は、例えば、Shoneら (1987) Eur. J. Biochem. 167, 175-180頁;およびBlausteinら (1987) FEBS 226 (1), 115-120頁に記載される。
【0110】
Shoneらの方法は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)および放射標識NADを搭載する人工リポソームを用いる。K+およびNADのリポソームからの放出は、チャンネル形成活性についての陽性の結果と相関し、したがってトランスロケーション活性と相関する。この点で、リポソームからのK+の放出は、電極を用いて測定され得、そしてNAD放出は、上清中の放射活性を測定することによって算定される(176頁の1欄の33行〜2欄の17行を参照のこと)。
【0111】
Blausteinらの方法は、平面リン脂質二層膜を用い、これは、チャンネル形成活性について試験するために使用される。より詳細には、膜のいずれかの側における塩溶液を、異なるpH(シス側でpH4.7〜5.5およびトランス側でpH7.4)に緩衝化する。試験されるべき「結合体」を、膜のシス側に添加し、そして電気計測を、膜を横切る電流の流れをモニターするために電圧固定条件下で行う(2.2章、116〜118頁を参照のこと)。活性なトランスロケーション機能の存在は、一定速度のチャンネルターンオン(すなわち、チャンネル形成についての陽性の結果)により確認される(3章、118頁を参照のこと)。
【0112】
結合後のターゲティング部分(TM)機能は、TMに固有のアゴニスト機能についてアッセイすることにより試験され得る。適切な方法としては、実施例1に記載の方法が挙げられる。
【0113】
本発明の結合体が侵害受容求心性細胞からのサブスタンスP放出を阻害する能力は、実施例15に記載の方法を用いて評価され得る。
【0114】
実施例15において、本発明の第1の局面によるノシセプチン−LHN/A結合体は、一次侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害する能力について評価される。表1からわかるように、結合体と侵害受容求心性神経細胞の培養物とのインキュベーションにより、サブスタンスPの放出が顕著に阻害される(細胞とLHN/A単独とのインキュベーションと比較した場合)。したがって、実験は、結合体がこれらの細胞からのサブスタンスP放出を阻害していることを確認する。
【0115】
本発明の使用に際して、痛みを感じる標的細胞が選択され、この細胞では、エキソサイトーシス融合のプロセスを低減または阻害することが所望され、エキソサイトーシスプロセスは、痛覚に関連する徴候の原因である。例えば、問題の標的細胞は、望ましくない表現型(例えば、望ましくない分泌、または望ましくない濃度の膜レセプター、トランスポーター、もしくは膜チャンネルの発現)を示し、これは、疼痛に関連する徴候の原因である。あるいは、エキソサイトーシス融合のプロセスが痛覚の原因である標的細胞が選択され得る。
【0116】
本発明の好適な実施態様では、標的細胞は、侵害受容感覚求心性細胞、好ましくは一次侵害受容求心性細胞である(例えば、Aδ−線維のようなA−線維またはC−線維)。したがって、本発明の結合体は、侵害受容感覚求心性神経細胞の離散した集団からの神経伝達物質または神経調節物質(例えば、グルタミン酸、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、および/または神経ペプチドY)の放出を阻害し得る。使用に際して、結合体は、末梢から中枢の疼痛線維への感覚求心性シグナル(例えば、神経伝達物質または神経調節物質)の伝達を低減または抑制し、したがって疼痛、特に慢性疼痛の治療のための治療分子としての適用を有する。
【0117】
TMが侵害受容感覚求心性神経に結合することを確認することは通常のことである。例えば、侵害受容感覚求心性神経の代表的な組織または細胞(例えば、DRG)が、過剰の非標識リガンドの存在下で標識(例えば、トリチウム化)リガンドに曝露される簡単な放射能置換実験が、用いられ得る。このような実験において、非特異的結合および特異的結合の相対的割合を求め、それにより、リガンドが侵害受容感覚求心性標的細胞に結合することの確認が可能になり得る。必要に応じて、アッセイは、1つ以上の結合アンタゴニストを含み得、そしてこのアッセイは、リガンド結合の喪失を観察する工程をさらに含み得る。このタイプの実験の例は、Hulme, E.C. (1990), Receptor-binding studies, 概要, 303〜311頁, Receptor biochemistry, A Practical Approach, E.C. Hulme編, Oxford University Pressに見出され得る。
【0118】
第2の局面によれば、本発明は、侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体を提供し、この結合体は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列であって、該侵害受容感覚求心性細胞において発現可能であり、そして発現した場合に、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント提供する、DNA配列;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞へと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをコードする該DNA配列をトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む。
【0119】
好適な実施態様では、レセプターは、ORL1レセプターである。
【0120】
目的のタンパク質をコードするDNAは、Cottonら(Cotton, M., Wagner, E.およびBirnstiel, L. (1993) Receptor-mediated transport of DNA into eukaryotic cells. Methods in Enzymol. 217, 619-645)によって確認されるように、タンパク質−DNA結合体のレセプター媒介エンドサイトーシスにより真核細胞にトランスフェクトされ得る。ポリカチオン性リガンドを用いて適切なサイズにDNAを凝縮するためのいくつかの方法が存在する。これらとしては、ポリリジン、種々のカチオン性ペプチドおよびカチオン性リポソームが挙げられる。これらのうち、ポリリジンを、本研究で使用した。レセプター媒介トランスフェクション研究における成功した報告で使用されているからである(Cottonら, 1993)。
【0121】
非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、薬剤の一部として(例えば、コード領域の上流のプロテアーゼDNA配列の一部として)存在する作動可能に連結したプロモーターの制御下で発現され得る。あるいは、標的細胞におけるプロテアーゼ構成部分の発現は、標的細胞に存在するプロモーターに依存し得る。
【0122】
プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、標的細胞のDNA配列に組み込まれ得る。1以上の組み込み部位が、結合体の一部として(例えば、プロテアーゼDNA配列の一部として)提供され得る。
【0123】
本発明のこの第2の局面のTM、トランスロケーションドメイン、およびプロテアーゼ構成部分は、本発明の第1の局面について定義されたものと同様である。実施例13および14は、本発明の第2の局面による結合体の調製を記載する。
【0124】
第3の局面によれば、本発明は、本発明の第1および/または第2の局面による結合体を含む薬学的組成物を提供する。
【0125】
薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、および/または適切な希釈剤および/または賦形剤をさらに含み得るが、組成物の的確な形態は、投与様式に合わせられ得る。投与は、好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトに対してである。
【0126】
組成物の構成成分は、例えば、吸入用にエアロゾルまたは噴霧液の形態で、あるいは非経口投与、関節内投与、または頭蓋内投与用に滅菌溶液の形態で用いられ得る。
【0127】
組成物はまた、ポンプシステムの使用を含む、静脈内注射により投与され得る。脊髄注射(例えば、硬膜外注射もしくは髄腔内注射)または留置ポンプもまた使用され得る。
【0128】
本発明の構成部分の投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲である。必要投薬量範囲は、構成部分の正確な性質、投与経路、処方の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度、もしくは重篤度、禁忌(ある場合)、および主治医の判断に依存することが理解される。
【0129】
適切な一日投薬量(各構成部分について)は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲内である。単位投薬量は、1μg未満から30mgまでの間で変動し得るが、代表的には一投与あたり0.01〜1mgの範囲内であり、これは、毎日、または好ましくは頻度を下げて(例えば、毎週または半年毎に)投与され得る。
【0130】
特に好ましい投薬レジメは、1×の用量として2.5ngの融合タンパク質(例えば、CPNv/A)に基づく。これに関して、好ましい投薬量は、1×〜100×(すなわち、2.5〜250ng)の範囲内である。この投薬量範囲は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)で用いられるよりも有意に低い(すなわち、少なくとも10倍、代表的には100倍低い)。さらに、上記差異は、モル基準で同じ比較がなされる場合に有意に拡大される。これは、本発明の融合タンパク質が、従来の「小さな」分子治療剤よりも相当に大きなMwを有するからである。
【0131】
しかしながら、必要投薬量に広範な変動があることは、構成部分の正確な性質および種々の投与経路の異なる効率に依存して予想されることである。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高い投薬量が必要であることが予想される。
【0132】
これらの投薬量レベルの変動は、当該分野で周知であるように、最適化のために標準的な経験的作業を用いて調整され得る。
【0133】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用前に適切なビヒクル中に溶解もしくは懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0134】
液状単位投薬剤形は、代表的には、発熱性物質除去滅菌ビヒクルを利用して調製される。
【0135】
活性成分は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、そのビヒクル中に溶解または懸濁され得る。
【0136】
溶液は、非経口投与の全ての剤形に使用され得、特に静脈内注射に使用される。溶液を調製する際、構成成分はビヒクル中に溶解され得、溶液は、必要に応じて塩化ナトリウムの添加により等張にされる。そして無菌技術を用いて滅菌フィルターを通して濾過することにより滅菌され、次いで適切な滅菌バイアルまたはアンプル中に充填し、密封され得る。あるいは、溶液安定性が十分である場合、その密封容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0137】
好都合には、添加剤(例えば、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤もしくは殺菌剤、懸濁化剤もしくは乳化剤、および/または局所麻酔剤)がビヒクル中に溶解され得る。
【0138】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌区域で無菌技術を用いて、予め滅菌しておいた薬物および他の成分を滅菌容器中に充填することにより調製され得る。
【0139】
あるいは、組成物の構成成分は、水性ビヒクル中に溶解され得、この溶液は、濾過により滅菌され、そして滅菌区域で無菌技術を用いて適切な容器中に分配される。製品は、次いで凍結乾燥され、そして容器は、無菌下で密封される。
【0140】
筋肉内注射、皮下注射、または皮内注射に適切な非経口投与用懸濁液は、滅菌構成成分を溶解する代わりに滅菌ビヒクル中に懸濁しそして滅菌が濾過によって達成できないことを除いて、実質的に同様にして調製される。構成成分は、滅菌状態で単離され得るか、あるいは単離後に(例えば、ガンマ照射によって)滅菌され得る。
【0141】
好都合には、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、構成成分の均一な分布を促進するために、組成物中に含まれる。
【0142】
気道を介する投与に適した組成物としては、エアロゾル、噴霧液、または吸入用微細粉末が挙げられる。後者の場合、粒径は、50ミクロン未満、特に10ミクロン未満が好ましい。このような組成物は、従来の様式で作製され、そして従来の投与デバイスと併用して用いられ得る。
【0143】
本発明に記載の組成物は、エキソサイトーシス(例えば、分泌、または細胞の原形質膜へのレセプター、トランスポーター、および膜チャンネルのようなタンパク質の送達)に関連する症状の治療のために、直接または薬学的に受容可能な塩としてのいずれかで、インビボで使用され得る。
【0144】
第4の局面によれば、本発明は、本発明の第1または第2の局面による結合体をコードするDNA構築物を提供する。
【0145】
宿主細胞において構築物を発現することによって、本発明の結合体が調製され得る。
【0146】
第5の局面によれば、本発明は、本発明の第1〜第4の局面による結合体、組成物、または構築物、あるいはそれらの任意の組み合わせの、患者への投与による疼痛の治療方法を提供する。
【0147】
好適な実施態様では、本発明は、慢性疼痛の治療方法を提供する。
【0148】
第6の局面によれば、本発明は、疼痛、好ましくは慢性疼痛の治療のための医薬品の製造のための、本発明の第1〜第4の局面による結合体、組成物、または構築物の使用を提供する。
【0149】
定義の節
エキソサイトーシス融合は、細胞内分子が、痛みを感じる標的細胞のサイトゾルからその原形質(すなわち、細胞)膜へ輸送されるプロセスである。その後、細胞内分子は、原形質膜の外表面上に提示されるようになり得るか、または細胞外環境中に分泌され得る。
【0150】
健常個体では、エキソサイトーシス融合の速度は注意深く調節され、そして痛みを感じる細胞のサイトゾルと原形質膜との間での分子の輸送を制御する。例えば、エキソサイトーシス回路の調節は、細胞の表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャンネルの密度を制御し、および/または細胞のサイトゾルからの細胞内構成成分(例えば、神経伝達物質)の分泌速度を制御する。
【0151】
しかし、非健常個体では、エキソサイトーシス融合の調節は改変され得る。例えば、エキソサイトーシス融合は、影響を受けた痛みを感じる細胞を過剰分泌の状態に入らせ得る。あるいは、エキソサイトーシス融合により、痛みを感じる細胞の表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャンネルを増加された濃度で提示し得、これは、細胞を望ましくない外部刺激に曝露し得る。したがって、エキソサイトーシス融合のプロセスは、疼痛の進行および/または重篤度に寄与し得、したがって、治療的介入のための標的を提供する。
【0152】
そうでなければ、細胞のエキソサイトーシス融合の正常速度が、易感染性患者における疼痛の進行および重篤度に寄与し得ることもまた理解されるべきである。したがって、本発明によりエキソサイトーシス融合をターゲティングすることによって、このような患者における治療もまた提供し得る。
【0153】
ターゲティング部分(TM)は、結合体と痛みを感じる標的細胞の表面との間に物理的会合を引き起こすように、レセプター(例えば、ORL1レセプター)と機能的に相互作用する結合体と会合する任意の化学的構造を意味する。用語「TM」は、標的細胞上のレセプターに結合し得る任意の分子(すなわち、天然に存在する分子、またはそれらの化学的/物理的に改変された改変体)を含み、レセプターは、内在化(例えば、エンドソーム形成)(これは、レセプター媒介エンドサイトーシスとも呼ばれる)を行い得る。TMは、エンドソーム膜トランスロケーションドメインを保有し得、この場合、本発明の薬剤に、TM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが別々に存在する必要はない。
【0154】
用語「フラグメント」とは、目的のTMの少なくとも35、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも15、および最も好ましくは少なくとも10アミノ酸残基を有するペプチドを意味する。1つの実施態様では、フラグメントの最初のアミノ酸残基は、フラグメントが由来するTMのN末端アミノ酸残基である。
【0155】
「改変体」の例は、1以上のアミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換した結合を含むTMのペプチドまたはペプチドフラグメントである。
【0156】
「誘導体」は、目的のTM、およびさらなるペプチド配列を含む。さらなるペプチド配列は、好ましくは、TMの塩基折り畳みおよびこのような立体配座構造を妨害すべきでない。2以上のペプチド(またはフラグメント、または改変体)は、一緒に結合されて誘導体を形成し得る。あるいは、ペプチド(またはフラグメント、または改変体)は、関連のない分子(例えば、第2の非関連ペプチド)に結合され得る。誘導体は、化学的に合成され得るが、代表的には組換え核酸方法によって調製される。脂質、および/または多糖、および/またはポリケチド構成部分のような追加の構成部分が含まれ得る。
【0157】
用語「非細胞傷害性」は、問題のプロテアーゼ分子が、それがリターゲティングされた痛みを感じる標的細胞を殺傷しないことを意味する。
【0158】
本発明の「プロテアーゼ切断部位」は、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTM構成部分との間の位置で結合体の切断(好ましくは、制御された切断)を可能にする。1つの実施態様では、結合体は、1より多くのタンパク質分解切断部位を含み得る。しかし、2以上のこのような部位が存在する場合、それらは、別のものであり、それにより、単一のプロテアーゼの存在下で複数の切断事象が生じることが実質的に防止される。別の実施態様では、結合体は、単一のプロテアーゼ切断部位を有することが好ましい。プロテアーゼ切断配列は、従来の手段(例えば、部位特異的変異誘発)によってDNAレベルで導入(および/または任意の固有切断配列が除去)され得る。切断配列の存在を確認するためのスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウエア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとに行われ得る。
【0159】
任意のプロテアーゼ切断部位が用いられ得るが、以下が好ましい:
エンテロキナーゼ (DDDDK↓)
第Xa因子 (IEGR↓/IDGR↓)
TEV(タバコエッチウイルス) (ENLYFQ↓G)
トロンビン (LVPR↓GS)
PreScission (LEVLFQ↓GP)。
【0160】
用語「プロテアーゼ切断部位」には、インテイン(これは自己切断性配列である)も包含される。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変更することによって、制御可能である。
【0161】
本発明を、以下の実施例および図面を参照して説明するが、これらに限定することを意図しない。
【0162】
図面を、より詳細に説明する。
【0163】
図1:recLHN/B融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのrecLHN/Bの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図1において、recLHN/Bは、実施例3に記載のように3カラムの方法を用いて細胞ペーストから精製する。タンパク質試料を、SDS−PAGEによって分離し、そしてシンプリーブルーセーフステインクマシー試薬での染色によって可視化する。浄化した抽出物内に含まれる粗可溶性MBP−LHN/B融合タンパク質(レーン2)を、Q−セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。レーン3は、150〜200mMの塩でカラムから溶出した組換えMBP−LHN/B融合物を示す。この試料を、第Xa因子プロテアーゼで処理してMBPアフィニティータグを除去し(レーン4)、そして切断した混合物をより低い塩濃度に希釈して、Q−セファロースFFアニオン交換カラムに供する。120〜170mMの塩で溶出した材料は、LHN/Bリッチであった(レーン5)。レーン6および8のタンパク質は、それぞれ非還元および還元条件下で、エンテロキナーゼでの処理およびベンズアミジンセファロースを用いる最終精製後に収穫したLHN/Bを示す。レーン1および7は、分子量マーカー[Mark 12(Invitrogen)]を示す。
【0164】
図2:LHN/C融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのLHN/Cの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図2において、recLHN/Cは、実施例4に記載の2段階方法を用いて大腸菌細胞ペーストから精製する。タンパク質試料を、SDS−PAGEによって分離し、そしてクマシーブルーでの染色によって可視化する。浄化した粗細胞溶解物(レーン2)を、Q−セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。融合タンパク質であるMBP−LHN/Cを、0.1MのNaClで溶出する(レーン3)。溶出した材料を、第Xa因子プロテアーゼ(New England Biolabs)とともに22℃にて16時間インキュベートして、融合タグMBPを切断しそしてリンカー部位でrecLHN/Cに切り目を入れる。目的のタンパク質を、切断した融合産物(レーン4)からQ−セファロースFFを用いてさらに精製する。レーン5および7は、それぞれ非還元条件および10mMのDTTでの還元条件下で精製したrecLHN/Cを示し、第Xa因子で切り目を入れた後にLCドメインとHNドメインとの間のリンカー領域でのジスルフィド結合を示す。レーン1および6は、分子量マーカー、Mark 12(Invitrogen)を示す(KDaで示す)。
【0165】
図3:N[1−17]−LHN/A融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのN[1−17]−LHN/Aの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図3において、N[1−17]−LHN/Aは、実施例9に概説する方法を用いて大腸菌BL21細胞ペーストから精製する。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0166】
図4:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0167】
図5:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0168】
図6:LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0169】
図7:LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0170】
図8:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物が、ORL1レセプターとの相互作用においてノシセプチン−LC/A−HN/A融合物よりもはるかに優れていることが明らかである。
【0171】
図9:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性
精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロエンドペプチダーゼ活性を、本質的にChaddockら 2002, Prot. Express Purif. 25, 219-228に記載のように決定した。簡単に言えば、ELISAプレートに固定したSNAP−25ペプチドを、種々の濃度の融合タンパク質に37℃にて1時間曝露した。一連の洗浄後、切断されたSNAP−25ペプチドの量を、特異的抗血清との反応性によって定量した。
【0172】
図10:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0173】
図11:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHA)が、ORL1レセプターとの相互作用においてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHA)よりも優れていることが明らかである。
【0174】
図12:可変スペーサー長産物を有する発現/精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー
実施例26に概説する方法を用いて、GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体を大腸菌細胞ペーストから精製する。LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/A、およびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの精製からの試料を、SDS−PAGEに供してクマシーブルーでの染色によって評価した。電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。上のパネル:M=分子量マーカー標線;S=大腸菌タンパク質全可溶性画分;FT=Ni2+荷電セファロースカラムに結合しなかったタンパク質;FUSION=イミダゾールの添加により溶出した融合タンパク質。下のパネル:レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0175】
図13:CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
簡単に言えば、背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定し、そして融合物濃度に対してプロットした(破線)。また、物質を回収して、特異的EIAキットを用いてサブスタンスP含量を分析した。サブスタンスP放出の阻害を実線で示す。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、6.30±2.48nMであると概算される。
【0176】
図14:CPN−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。ボツリヌス神経毒素(BoNT/A)をコントロールとして用いた。この最初の曝露後、細胞外物質を洗浄により除去し、そして細胞を37℃にて種々の時間インキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定し、そして点線で示した。また、物質を回収して、特異的EIAキットを用いてサブスタンスP含量を分析した。サブスタンスPの放出の阻害を実線で示す。
【0177】
図15:CPNv−AによるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、1.38±0.36nMであると概算される。
【0178】
図16:CPNv−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。CPN−Aをコントロールとして用いた。この最初の曝露後、細胞外物質を洗浄により除去し、そして細胞を37℃にて種々の時間インキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。
【0179】
図17:[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHnAと表示)が、ORL1レセプターとの相互作用においてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHnAと表示)よりも優れていることが明らかである。
【0180】
図18:発現/精製したCPNv(Ek)−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。電気泳動プロフィールは、CPNv(Ek)−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(5μl);レーン5=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(10μl);レーン6=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(20μl);レーン7=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン8=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン9=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0181】
図19:CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv(Ek)−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。実施例26で調製したCPNv−Aを比較の目的で用いた。CPNv(Ek)−A(En活性化と表示)およびCPNv−A(Xa活性化と表示)によるSNAP−25の切断割合を示す。
【0182】
図20:発現/精製したCPNv−C産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。電気泳動プロフィールは、CPNv−Cの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終の捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+荷電セファロースでの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT;レーン8=分子量マーカー標線。
【0183】
図21:CPNv−Cによるシンタキシンの切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Cに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗シンタキシンでプローブしてシンタキシン切断の評価を容易にした。切断されたシンタキシンの割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大シンタキシン切断に達するのに必要な融合物濃度は、3.13±1.96nMであると概算される。
【0184】
図22:急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−Aの効力
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPN/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。
【0185】
図23:ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−Aの効力
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして血中のグルコースおよび脂質を毎週測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたるVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2日の連続した試験日(1週間空ける)におけるPWTがスケールの上で6gを下回って測定する場合に確立されるといわれる。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注射し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、PWT試験開始の2時間前に毎日注射する。
【0186】
図24:急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−Aの効力
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。これらのデータを、正規化した足逃避率差として表す。ここでは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0187】
図25:発現/精製したLC/A−CPLE−HN/A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPLE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT。
【0188】
図26:発現/精製したLC/A−CPBE−HN/A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン2=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl);レーン10=分子量マーカー標線。
【0189】
図27:発現/精製したCPOP−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOP−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの第2の捕捉後の精製物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0190】
図28:発現/精製したCPOPv−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOPv−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0191】
図29:DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPOPv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。
【0192】
図30:発現/精製したCPNv−A−FXa−HT(除去可能hisタグ)
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−A−FXa−HTの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製した最終物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT。
【0193】
図31:リガンド競合アッセイによって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
可変スペーサー長のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力に比較してプロットした。上のパネルは、GS0、GS20、GS30およびHx27のスペーサーの置換特性を示しているが、下のパネルは、GS10、GS15、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質により生じた置換を示している。ORL1レセプターからノシセプチンを置き換えるのに、GS0およびGS30スペーサーは無効であり、そしてGS10は有効性に乏しいと結論される。
【0194】
図32:インビトロSNAP−25切断によって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度の(可変スペーサー長の)CPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。GS10スペーサーによる融合タンパク質の乏しい効果の結合特性(図28を参照のこと)は、細胞内SNAP−25の切断を生じるのに必要とされる融合物の濃度がより高いことに反映されている。GS0およびGS30スペーサーによる融合タンパク質は、全く無効であった(データは示さず)。GS15、20、および25スペーサーによる融合タンパク質は、同様に有効であった。
【0195】
(配列番号)
配列番号1 N[1−17]のDNA配列
配列番号2 N[1−17]のタンパク質配列
配列番号3 N[1−11]のDNA配列
配列番号4 N[1−11]のタンパク質配列
配列番号5 N[[Y10]1−11]のDNA配列
配列番号6 N[[Y10]1−11]のタンパク質配列
配列番号7 N[[Y11]1−11]のDNA配列
配列番号8 N[[Y11]1−11]のタンパク質配列
配列番号9 N[[Y14]1−17]のDNA配列
配列番号10 N[[Y14]1−17]のタンパク質配列
配列番号11 N[1−13]のDNA配列
配列番号12 N[1−13]のタンパク質配列
配列番号13 Nv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のDNA配列
配列番号14 Nv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のタンパク質配列
配列番号15 N[1−17]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号16 N[1−17]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号17 N[[Y11]1−11]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号18 N[[Y11]1−11]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号19 N[1−13]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号20 N[1−13]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号21 LHN/A−N[1−17]融合タンパク質のDNA配列
配列番号22 LHN/A−N[1−17]融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号23 LHN/C−N[1−11]融合タンパク質のDNA配列
配列番号24 LHN/C−N[1−11]融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号25 N[[Y14]1−17]−LHN/C融合タンパク質のDNA配列
配列番号26 N[[Y14]1−17]−LHN/C融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号27 LC/AのDNA配列
配列番号28 HN/AのDNA配列
配列番号29 LC/BのDNA配列
配列番号30 HN/BのDNA配列
配列番号31 LC/CのDNA配列
配列番号32 HN/CのDNA配列
配列番号33 CPN−AリンカーのDNA配列
配列番号34 AリンカーのDNA配列
配列番号35 N末端側提示ノシセプチン挿入片のDNA配列
配列番号36 CPN−CリンカーのDNA配列
配列番号37 CPBE−AリンカーのDNA配列
配列番号38 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号39 LC/A−CPN−HN/A融合物のDNA配列
配列番号40 LC/A−CPN−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号41 N−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号42 N−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号43 LC/C−CPN−HN/C融合物のDNA配列
配列番号44 LC/C−CPN−HN/C融合物のタンパク質配列
配列番号45 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のDNA配列
配列番号46 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のタンパク質配列
配列番号47 LC/A−CPME−HN/A融合物のDNA配列
配列番号48 LC/A−CPME−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号49 LC/A−CPBE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号50 LC/A−CPBE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号51 LC/A−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号52 LC/A−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号53 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号54 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号55 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号56 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号57 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号58 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号59 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号60 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号61 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号62 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号63 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号64 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号65 CPN−A GS10リンカーのDNA配列
配列番号66 CPN−A GS15リンカーのDNA配列
配列番号67 CPN−A GS25リンカーのDNA配列
配列番号68 CPN−A GS30リンカーのDNA配列
配列番号69 CPN−A HX27リンカーのDNA配列
配列番号70 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号71 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号72 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号73 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号74 CPNvar−Aエンテロキナーゼ活性化リンカーのDNA配列
配列番号75 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号76 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号77 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号78 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のDNA配列
配列番号79 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のタンパク質配列
配列番号80 LC/A−CPLE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号81 LC/A−CPLE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号82 LC/A−CPOP−HN/A融合物のDNA配列
配列番号83 LC/A−CPOP−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号84 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号85 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号86 IgAプロテアーゼのDNA配列
配列番号87 IgA−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号88 IgA−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号89 FXa−HTのDNA配列
配列番号90 CPNv−A−FXa−HTのDNA配列
配列番号91 CPNv−A−FXa−HT融合物のタンパク質配列
配列番号92 DTトランスロケーションドメインのDNA配列
配列番号93 CPLE−DT−AのDNA配列
配列番号94 CPLE−DT−A融合物のタンパク質配列
配列番号95 TeNT LCのDNA配列
配列番号96 CPNv−TENT LCのDNA配列
配列番号97 CPNV−TeNT LC融合物のタンパク質配列
配列番号98 CPNvar−CリンカーのDNA配列
配列番号99 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のDNA配列
配列番号100 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のタンパク質配列
【実施例】
【0196】
実施例1:神経細胞培養物からのサブスタンスPの放出の測定によるTMアゴニスト活性の確認
(材料)
サブスタンスP EIAを、R&D Systems, UKから入手する。
【0197】
(方法)
eDRGの初代神経細胞培養物を、既述(Dugganら, 2002)のようにして樹立させる。この培養物からのサブスタンスP放出を、本質的には、既述(Dugganら, 2002)のようにして、EIAによって評価する。目的のTMを(処理前に少なくとも2週間樹立させた)神経細胞培養物に添加する;TMの代わりにビヒクルを添加することにより、コントロール培養を並行して行う。サブスタンスPの刺激された(100mMのKCl)放出および基礎の放出を、全細胞溶解物含量とともに、コントロール培養およびTM処理培養物の両方について得る。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical Company, USAまたはR&D Systems, UK)を製造者の指示書に従って用いて測定する。
【0198】
目的のTMの存在下での神経細胞により放出されたサブスタンスPの量を、100mMのKClの存在または不在下で得られる放出と比較する。基礎放出を上回る目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激によって、目的のTMが本明細書中で定義した「アゴニストリガンド」であることが確立される。所望の場合、目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激を、天然のORL−1レセプターリガンドであるノシセプチン(Tocris)を用いて作成した標準サブスタンスP放出曲線に比較し得る。
【0199】
実施例2:触媒活性LHN/Aの発現および精製
(材料)
合成DNAをSigma Genosysから入手。
制限酵素をNew England Biolabsから入手。
【0200】
(方法)
触媒活性LHN/Aの発現および精製を、本質的に、Suttonら, (2005), Prot. Express. Purif., 40, 31-41頁に記載のように行った。
【0201】
簡単に言えば、BoNT/Aの軽鎖と重鎖のN末端から423アミノ酸とをコードするDNAを、Sigma-Genosysにより合成して、大腸菌コドン偏位を有する合成LHN/A遺伝子を作成した。軽鎖とHNドメインとの間のリンカー領域を、スプライス重複伸長PCRにより第Xa因子切断部位を含むように操作した。長い変異誘発プライマーおよびより短い非変異誘発プライマーからなる以下のプライマー対を用いて、2つのPCR産物を生成した:
(5'-tccaaaactaaatctctgATAGAAGGTAGAaacaaagcgctgaacgac)と(5'-CTTGATGTACTCTGTGAACGTGCTC);および
(5'-gtcgttcagcgctttgttTCTACCTTCTATcagagatttagttttgga)と(5'-ATGGAGTTCGTTAACAAACAGTTC)。
【0202】
これらの2つの反応からの産物を、スプライス重複伸長PCR用のテンプレートとして用いた。さらなるPCR反応を行って、活性化recLHN/A遺伝子の両末端にBamHIおよびSalI部位のいずれかを付加し、そしてこれらの部位を用いてInvitrogenゲートウェイエントリーベクター中に挿入した。次いで、エントリーベクターを、LRクロナーゼ反応において、ゲートウェイ組換え部位適合pMAL c2xとともに用いて、pMAL c2x recLHN/Aを形成した。このpMAL c2x recLHN/Aを改変して、MBPのN末端に6’HISタグを組み込んだ。これは、pMALのNdeI部位にHISタグをコードするアニールしたオリゴヌクレオチドを挿入することにより行った。
【0203】
LHN/Aを発現する発現ベクターを、大腸菌HMS174またはAD494(DE3)(Novagen)に形質転換した。培養物を、ZnCl2(1μM)、アンピシリン(100μg/ml)、および0.2%(w/v)グルコースを添加したTerrificブロス複合培地中で増殖させた。すべての構築物の発現についてのパラメータは、8L発酵装置システムに移す前の振盪フラスコ培養において最初に決定した。開始培養物を、37℃、220rpmにて16時間増殖させ、そして1Lを接種に用いて、37℃、250rpmにて増殖を続けた。0.6のOD600nmで、温度を30分間25℃まで下げて、1mMのIPTGで誘導した。誘導を4時間続け、細胞を採取して−70℃で保存した。
【0204】
代表的には、16gの細胞ペーストを、160mlのPBSに懸濁し、そして超音波処理(MSE Soniprep 150)により溶解した。得られた溶解物を遠心分離により澄明にし、25mlのアミロースカラムに供し、PBS中10mMのマルトースで溶出させた。溶出液は約50%純粋な融合タンパク質を含み、そして第Xa因子で処理して(1ユニットの第Xa因子/100μg融合タンパク質;20時間;26℃)HISMBPを除去し、そしてLC−HN接合部を切断してタンパク質を活性化した。インキュベーション後、試料を濾過し(0.45mm)、そして水で2倍希釈して0.5×PBS緩衝液組成物を得た。切断し、濾過しそして希釈したrecLHN/Aを、QセファロースFFカラム(10ml)にかけ、そして80mMのNaClでHISMBPを含み、そして120mMのNaClで約75%純粋なrecLHN/Aを含む段階グラジエントで溶出した。MBPへのHisタグの付加により、LHN/AとMBPとの共溶出というこれまでの問題を解決した。HISMBPの完全な除去を確実にするための最終の精製工程として、Qセファロースカラムからの120mMのNaCl溶出物を、ニッケル荷電した5mlのHisTrapカラム(Amersham)に通した。HisTrapカラムからの流出物は、約95%純粋なrecLHN/Aを含んでいた(LHN/Aについての精製スキームの図については、Suttonら, (2005), Prot. Express. Purif., 40, 31-41頁の図を参照のこと)。
【0205】
実施例3:触媒活性な組換えLHN/Bの発現および精製
以下に記載の方法は、LHN/Bポリペプチドをコードする適切なプラスミドで形質転換した大腸菌から触媒活性なLHN/Bプロテアーゼを精製する。適切なLHN/Bポリペプチドの種々の配列が、PCT/GB97/02273、US6461617特許、および米国特許出願10/241596(参照文献として本明細書中に援用する)に記載されていることに留意されたい。
【0206】
(方法)
LHN/Bのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Bを作出する。この構築物では、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Bポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離され、そしてLCドメインおよびHNドメインは、エンテロキナーゼでの切断を受けやすいペプチドによって分離されている。発現クローンをpMAL-c2X-synLHN/Bと称する。
【0207】
pMAL-c2x-synLHN/Bを大腸菌HMS174に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中にて培養する。誘導前細菌増殖を、5.0のOD600nmに37℃にて維持し、この段階で、recMBP−LHN/Bの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして温度を30℃に下げることによって誘導する。30℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを−70℃で保存する。
【0208】
細胞ペーストを20mMのHepes(pH7.2)、125mMのNaCl、1μMのZnCl2中に再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を行う。得られた懸濁液を、精製前に遠心分離によって清澄化する。
【0209】
細胞破壊後、MBP−融合タンパク質を、20mMのHepes(pH7.2)、125mMのNaCl、1μMのZnCl2中アミロースアフィニティー樹脂上、または50mMのHepes(pH7.2)、1μMのZnCl2(塩添加なし)中Q−セファロースFFアニオン交換樹脂上のいずれかで捕捉する。10mMマルトースを加えた同じ緩衝液中のアミロース樹脂から、および150〜200mM塩中のQ−セファロースから、単一ピークを溶出する。MBP−LHN/B接合部の切断は、1U/50μg融合タンパク質で第Xa因子(NEB)との22℃にての18時間インキュベーション工程で完了する。少なくとも4mg/mlの基質(MBP−LHN/B)濃度が、効率的な切断を生じるのに望ましい。
【0210】
切断したタンパク質を、20mMのHepes、25mMのNaCl、1μMのZnCl2、pH7.2の緩衝液組成となるように20mMのHepesで希釈し、そしてQ−セファロースカラムに通してLHN/BからMBPを分離する。LHN/Bを、120〜170mM塩でQ−セファロースカラムから溶出する。次いで、軽鎖とHNドメインとの間のリンカーに、100μgのLHN/B当たり1Uのエンテロキナーゼと22℃にて16時間インキュベートすることによって切り目を入れる。最後に、エンテロキナーゼを、ベンズアミジンセファロースカラムと4℃にて30分間インキュベートすることにより樹脂に優先的に結合させて、切り目を入れたLHN/Bおよび他の夾雑タンパク質から分離する。精製したLHN/Bを必要になるまで−20℃で保存する。recLHN/Bの精製スキームの図については図1を参照のこと。
【0211】
実施例4:触媒活性な組換えLHN/Cの発現および精製
LHN/Cのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Cを作製する。この構築物では、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Cポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離されている。
【0212】
pMAL-c2x-LHN/CをE. coli AD494(DE3, IRL)に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中にて培養する。誘導前細菌増殖を、8.0のOD600nmに30℃にて維持し、この段階で、recMBP-c2x-LHN/Cの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして培養温度を25℃に下げることによって誘導する。25℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを−70℃で保存する。
【0213】
細胞ペーストを50mMのHepes(pH 7.2)、1μMのZnCl2中に1:6(w/v)で再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を行う。得られた懸濁液を、精製前に遠心分離によって清澄化する。
【0214】
細胞破壊および清澄化後、MBP−融合タンパク質を、50mMのHepes(pH7.2)、1μMのZnCl2中、Q−セファロースファストフローアニオン交換樹脂で分離し、そして100mMのNaClを添加した同じ緩衝液で溶出する。第Xa因子との単回インキュベーション工程にて、MBP−LHN/C接合部およびHN−LCリンカーでの二点切断を実施する。この反応は、100μg融合タンパク質当たり1Uの第Xa因子(NEB)との22℃にて16時間のインキュベーション工程により完了する。切断したタンパク質を、20mMのHepes、25mMのNaCl、pH7.2の緩衝液組成となるように20mMのHepesで希釈し、そして第二のQ−セファロースカラムに通してLHN/CからMBPを分離する。活性化した(ジスルフィド結合が切断したリンカー)LHN/Cを、120〜170mM塩の塩濃度グラジエント(20mMのHepes、500mMのNaCl、1μMのZnCl2、pH7.2)によってQ−セファロースカラムから溶出する。LHN/Cの精製の図については図2を参照のこと。
【0215】
実施例5:ノシセプチンとLHN/Aとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0216】
(方法)
C末端Cysを介してノシセプチンペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0217】
次いで、このペプチドを、以下に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた(これまでの刊行物のWO99/17806およびWO96/33273、ならびにDugganら, (2002), J. Biol. Chem. 277, 24846-34852およびChaddockら, (2000), Infect Immun., 68, 2587-2593も参照のこと)。
【0218】
(スルフヒドリルに基づくカップリング反応)
簡単に言えば、約2つの反応脱離基を、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)との反応によって、LHN/Aに導入した(リン酸緩衝化生理食塩水中5mg/ml)。
【0219】
誘導体化した材料を、サイズ排除クロマトグラフィーにより過剰のSPDPから単離した。再構成したシステインタグ付けしたノシセプチンリガンドを、誘導体化したLHN/Aと4:1のモル比で混合し、そして穏やかに攪拌しながら室温にて1時間インキュベートして、還元可能なジスルフィド共有結合による化学結合体を生成した。非結合体化ペプチドを除去するための結合体混合物の最初の分画を、サイズ排除クロマトグラフィー(結合のスケールに依存してSuperose-12またはSuperdex G-200)により行った。
【0220】
実施例6:ノシセプチンとLHN/Bとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0221】
(方法)
凍結乾燥したノシセプチンを、水の添加によって溶解し、そしてMES緩衝液(0.1MのMES、0.1MのNaCl、pH5.0)中に透析した。この溶液(約0.3mg/mlの濃度)に、最終濃度1mg/mlまでPDPH(DMF中100mg/ml)を添加した。混合した後、固体のEDACを添加して、約0.2mg/mlの最終濃度にした。反応を、室温にて少なくとも30分間行った。次いで、過剰のPDPHを、MES緩衝液で予め平衡化したPD−10カラム(Pharmacia)上で脱塩することによって除去した。
【0222】
用いたノシセプチンの重量の半分に等価の量のLHN/Bを約1mg/mlの濃度でトリエタノールアミン緩衝液(0.02Mトリエタノールアミン/HCl、0.1M塩化ナトリウム、pH7.8)に溶解し、これを、2mMの最終濃度のTraut試薬(1Mトリエタノールアミン/HCl、pH8.0中の100mMストック溶液)と反応させた。1時間後、LHN/Bを、PD−10カラム(Pharmacia)を用いてPBSE(1mMのEDTAを含むリン酸緩衝化生理食塩水)中で脱塩した。カラム溶出物からのタンパク質ピークを、Microcon 50(Amicon)を用いて約2mg/mlの濃度まで濃縮した。
【0223】
誘導体化したノシセプチンを、最終濃縮工程に供して、開始容量の10%未満までの容量に減少させ、次いで誘導体化したLHN/Bと室温にて終夜混合した。反応産物を、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析した。
【0224】
上記反応から得られた結合体を、Bio-Gel P-100(BioRad)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより部分精製した。溶出プロフィールを、280nmでの光学密度の測定および画分のSDS−PAGE分析によって追跡した。これにより、遊離のノシセプチンおよび反応副生成物から結合体を分離できた。
【0225】
実施例7:ノシセプチン1−11とLHN/Bとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチン1−11ペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0226】
(方法)
C末端Cysを介してノシセプチン1−11ペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0227】
次いで、このペプチドを、実施例5に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた。
【0228】
実施例8:ノシセプチンN[[Y14]1−17]とLHN/Cとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンN[[Y14]1−17]ペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0229】
(方法)
C末端Cysを介してペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0230】
次いで、このペプチドを、実施例5に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた。
【0231】
実施例9:ノシセプチン−LHN/Aの単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号15および配列番号16)
ノシセプチン−LHN/AのDNA配列を、LC/A、HN/A、およびノシセプチンのアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。ノシセプチン−LC/A−活性化ループ−HN/A配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/AのシステインとHN/Aのシステインとの間の活性化ループ(CVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLC)を改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0232】
必要とされる発現ベクターへのクローニングを容易にするために適切な制限部位(例えば、BamHI/SalI)を、配列のそれぞれ5’末端および3’末端に組み込み、正しい読み取り枠を維持した。DNA配列を、逆翻訳中に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングした。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにした。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価した。
【0233】
次いで、ノシセプチン−LC/A−活性化ループ−HN/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列を商業的に合成し、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0234】
ノシセプチン−LHN/A融合物をコードするDNAを、pCR 4から単離し、そしてpMALベクターバックボーン中に移してタンパク質発現を容易にした。得られたpMAL NO-LHN/Aベクターを、コンピテント大腸菌BL21に形質転換し、そして正しい形質転換体を選択した。pMAL NO-LHN/Aの単一コロニーを、ZnCl2(1mM)、アンピシリン(100μg/ml)、0.2%(w/v)グルコースを追加したTerrificブロス複合培地中で増殖した。挿入片の発現を、IPTG(0.1mM)の添加によって誘導し、そして培養物を16℃にて16時間維持した。この発現期間の後、細菌を遠心分離によって単離し、そして細胞ペレットを、使用するまで−20℃にて保存した。
【0235】
10gの大腸菌BL21細胞ペーストを、25mlの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClを含むファルコン管中で解凍した。融解した細胞ペーストを、50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで80mlにし、そして氷上で22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにした。溶解した細胞を18,000rpmで4℃にて30分間遠心分離した。この上清を、0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供し、そして50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した。
【0236】
10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出した。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定した。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートした。切断混合物を0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供し、そして50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した。
【0237】
10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出した。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて保存した。
【0238】
図3は、N[1−17]−LHN/Aの発現および精製のSDS−PAGE分析を示す。
【0239】
実施例10:(ノシセプチン1−11)−LHN/Bの単ポリペプチド融合物の組換え生成
(ノシセプチン1−11)−LHN/BのDNA配列を、LC/B、HN/B、およびノシセプチン1−11のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。(ノシセプチン1−11)−LC/B−活性化ループ−HN/B配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/BのシステインとHN/Bのシステインとの間の活性化ループを改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0240】
次いで、組換え融合タンパク質を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0241】
実施例11:(ノシセプチンN[[Y14]1−17])−LHN/Cの単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号25および配列番号26)
ノシセプチンN[[Y14]1−17]のDNA配列を、LC/C、HN/C、およびノシセプチンN[[Y14]1−17]のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。(ノシセプチンN[[Y14]1−17])−LC/C−活性化ループ−HN/C配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/CのシステインとHN/Cのシステインとの間の活性化ループを改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0242】
次いで、組換え融合タンパク質を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0243】
実施例12:LHN/C−(ノシセプチン1−11)の単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号23および配列番号24)
LHN/C−(ノシセプチン1−11)のDNA配列を、LC/C、HN/C、およびノシセプチン1−11のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。LC/C−活性化ループ−HN/C−フレキシブルスペーサー−(ノシセプチン1−11)を含む完全なORF(配列番号23)を、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。
【0244】
次いで、組換え融合タンパク質(配列番号24)を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0245】
実施例13:LC/CをコードするDNAの細胞への送達のための結合体の生成
ノシセプチン−HN−[LC/C]結合体の構築を以下に説明する。ここで、[LC/C]は、ボツリヌス神経毒素C型の軽鎖をコードするポリリジン凝縮DNAを示す。
【0246】
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から入手する。
他の試薬は、Sigma Ltd.から入手する。
【0247】
(方法)
CMV(前初期)プロモーターの制御下にLC/Cをコードする遺伝子を含むプラスミドを用いて、DNAの凝縮を、1ポリリジンに対して2DNAの比になるようにSPDP誘導体化ポリリジンを用いて行った。次いで、凝縮したDNA(0.4mg/ml)をHN−ノシセプチン(100μg/ml)と25℃にて16時間混合することによって結合体を調製した。SPDP誘導体化ポリリジンとHNドメイン上に存在する遊離のSH基とを結合させて、DNAとタンパク質との共有結合を容易にする。
【0248】
実施例14:LC/BをコードするDNAの細胞への送達のための結合体の生成
(ノシセプチン1−11)−HN−[LC/B]結合体の構築を以下に説明する。ここで、[LC/B]は、ボツリヌス神経毒素B型の軽鎖をコードするポリリジン凝縮DNAを示す。
【0249】
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から入手する。
他の試薬は、Sigma Ltd.から入手する。
【0250】
(方法)
CMV(前初期)プロモーターの制御下にLC/Bをコードする遺伝子を含むプラスミドを用いて、DNAの凝縮を、1ポリリジンに対して2DNAの比になるようにSPDP誘導体化ポリリジンを用いて行った。次いで、凝縮したDNA(0.4mg/ml)をHN−(ノシセプチン1−11)(100μg/ml)と25℃にて16時間混合することによって結合体を調製した。SPDP誘導体化ポリリジンとHNドメイン上に存在する遊離のSH基とを結合させて、DNAとタンパク質との共有結合を容易にする。
【0251】
実施例15:サブスタンスP放出神経細胞におけるノシセプチン−LHN/Aの活性の評価
Dugganら, (2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)に記載の方法を用いて、ブスタンスP放出神経細胞におけるノシセプチン−LHN/Aの活性を評価した。
【0252】
ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質を、2週齢の背根神経節の神経細胞培養物に塗布し、そして37℃にて16時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、そして細胞がサブスタンスP(SP)の刺激による放出を受ける能力を評価した。
【0253】
ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質とインキュベートした神経細胞からのSPの放出を、(i)LHN/Aのみで処理した細胞および(ii)培地のみで処理した細胞と比較してアッセイした。これにより、eDRGからのサブスタンスPの阻害%を算定できた。ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質がSP放出を阻害する能力(培地のみで処理した細胞に対して)を表1に記載した。データは、3つの測定の平均を示す。
【0254】
【表1】
【0255】
実施例16:フォルスコリン刺激cAMP生産の測定によるORL1レセプター活性化の確認
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験によって提供される。ここでは、TMがフォルスコリン刺激cAMP生産を阻害する能力を評価する。
【0256】
(材料)
[3H]アデニンおよび[14C]cAMPはGE Healthcareから入手する。
【0257】
(方法)
この試験は、本質的には、Meunierら[Isolation and structure of the endogenous agonist of opioid receptor-like ORL1 receptor. Nature 377: 532-535, 1995]によって既述のようにして、24ウェルプラスチックプレート上に播種した無傷のトランスフェクトCHO細胞において行う。
【0258】
細胞に、0.4mlの培養培地中の[3H]アデニン(1.0μCi)を添加する。細胞を37℃にて2時間保持して細胞内ATPプールにアデニンを取り込ませる。2時間後、細胞を、以下を含有するインキュベーション緩衝液で1回洗浄する:130mMのNaCl、4.8mMのKCl、1.2mMのKH2PO4、1.3mMのCaCl2、1.2mMのMgSO4、10mMのグルコース、1mg/mlのウシ血清アルブミン、および25mMのHEPES(pH7.4)。そしてこれを、目的のTMを含むまたは含まない、フォルスコリン(10μM)およびイソブチルメチルキサンチン(50μM)を含有する緩衝液と置き換える。10分後、培地を吸引して0.5mlの0.2M HClと置き換える。約1000cpmの[14C]cAMPを各ウェルに添加し、そしてこれを内部標準として使用する。次いで、ウェルの内容物を0.65g乾燥アルミナ粉末のカラムに移す。カラムを4mlの5mM HCl、0.5mlの0.1M酢酸アンモニウム、次いでさらに2mlの酢酸アンモニウムで溶出する。最終溶出物をシンチレーションバイアルに集めて14Cおよびトリチウムについて計数する。集めた量を[14C]cAMPの回収率に対して補正する。ORL1レセプターでアゴニストであるTMは、フォルスコリンに応じて生成されるcAMPのレベルの減少を引き起こす。
【0259】
実施例17:GTPγS結合機能アッセイを用いるORL1レセプター活性化の確認
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験、GTPγS結合機能アッセイによっても提供される。
【0260】
(材料)
[35S]GTPγSはGE Healthcareから入手する。
小麦胚凝集素コーティング(SPA)ビーズはGE Healthcareから入手する。
【0261】
(方法)
このアッセイは、本質的には、TraynorおよびNahorski[Modulation by μ-opioid agonists of guanosine-5-O-(3-[35S]thio)triphosphate binding to membranes from human neuroblastoma SH-SY5Y cells. Mol. Pharmacol. 47: 848-854, 1995]に記載されるようにして行う。
【0262】
細胞を、組織培養皿からかき取って20mMのHEPES、1mMのエチレンジアミン四酢酸に入れ、次いで500×gで10分間遠心分離する。細胞をこの緩衝液に再懸濁して、Polytron Homogenizerでホモジナイズする。
【0263】
ホモジネートを27,000×gで15分間遠心分離し、そしてペレットを緩衝液A(20mMのHEPES、10mMのMgCl2、100mMのNaCl(pH7.4)を含有する)に再懸濁する。懸濁液を20,000×gで再度遠心分離し、もう一度緩衝液Aに懸濁する。結合アッセイのために、膜(8〜15μgタンパク質)を、目的のTMを含むおよび含まない[35S]GTP S(50pM)、GDP(10μM)と総容量1.0mlで25℃にて60分間インキュベートする。試料をガラスファイバーフィルターで濾過し、そして結合アッセイについて記載したように計数する。
【0264】
実施例18:LC/AおよびHN/Aバックボーンクローンの調製
以下の手順によって、マルチドメイン融合物発現用の構成部分バックボーンとして使用するためのLCフラグメントおよびHNフラグメントを作製する。本実施例は、血清型Aベースのクローン(配列番号27および配列番号28)の調製に基づいているが、手順および方法は他の血清型にも同等に適用可能である[血清型B(配列番号29および配列番号30)ならびに血清型C(配列番号31および配列番号32)については配列表に図示]。
【0265】
(クローニングベクターおよび発現ベクターの調製)
pCR 4(Invitrogen)は、構築物の確認を容易にするために、ベクター内の制限配列の欠損および隣接する配列決定プライマー部位によって選択した、選り抜きの標準的なクローニングベクターである。この発現ベクターは、pMAL(NEB)発現ベクターに基づいており、これは、構築物の挿入のために正しい方向でマルチプルクローニング部位内に所望の制限配列を有する(BamHI−SalI−PstI−HindIII)。非動員性プラスミドを作製するために、発現ベクターのフラグメントが除去されており、そして精製の選択肢を増大させるために、種々の異なる融合タグが挿入されている。
【0266】
(プロテアーゼ(例えば、LC/A)挿入片の調製)
LC/A(配列番号27)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、[種々の逆翻訳ソフトウエアツール(例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon))の1つを用いて、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]LC/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み取り枠を維持する。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、LC/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0267】
別の方法は、5’および3’のPCRプライマーにそれぞれ組み込んだBamHIおよびSalI制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。相補的オリゴヌクレオチドプライマーは、製造業者(例えば、MWGまたはSigma-Genosys)によって、各対が、クロストリジウム標的DNAの範囲(ストレッチ)に隣接する(互いに「向かって」3’末端の向きに)向かい合った鎖に対して、これらの2つのDNA鎖の各々に1つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする能力を有するように、化学合成される。PCR産物を生成するために、クロストリジウムDNA配列に特異的な短いオリゴヌクレオチドプライマーの対を、クロストリジウムDNA鋳型および他の反応成分と混合し、そして反応チューブのインキュベーション温度を自動変更し得る機器(「PCR機器」)中に配置し、約94℃(変性用)、55℃(オリゴヌクレオチドアニーリング用)、および72℃(合成用)のサイクルにかける。PCR産物の増幅に必要な他の試薬には、DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはPfuポリメラーゼ)、DNAの4つのヌクレオチドdNTP構築ブロックの等モル量(50〜200μM)の各々、およびMg2+濃度(0.5〜5mM)に最適化した酵素に適切な緩衝液が含まれる。
【0268】
増幅産物を、Taq PCR産物に対してTOPO TAクローニングまたはPfu PCR産物に対してZero Blunt TOPOクローニング(両キットともInvitrogenより市販されている)のいずれかを用いて、pCR 4にクローニングする。得られたクローンを配列決定により確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない任意の付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0269】
(トランスロケーション(例えばHN)挿入片の調製)
HN/A(配列番号28)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、[GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]HN/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。N末端にPstI制限配列を、そしてC末端にXbaI−停止コドン−HindIIIを付加し、正しい読み取り枠を維持するようにする。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0270】
別の方法は、5’および3’のPCRプライマーにそれぞれ組み込んだPstIおよびXbaI−停止コドン−HindIII制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。PCR増幅は、上記のように行う。このPCR産物をpCR 4ベクターに挿入し、そして配列決定によって確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない任意の付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0271】
実施例19:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
(リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片の調製)
LC−HNリンカーを、鋳型としてリンカーについての既存配列情報を用いて、第一の原則から設計し得る。例えば、血清型Aリンカー(この場合、LCとHNとの間のジスルフィド架橋のシステイン間に存在するドメイン間ポリペプチド領域として定義される)は、23アミノ酸長であり、そして配列VRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLを有する。この配列内で、天然でのタンパク質分解活性化により、配列ALNDLのN末端を有するHNドメインが生じることが理解される。この配列情報は、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような利用可能なデータベースソースから自由に入手可能である。このリンカーに、第Xa因子部位、ノシセプチンおよびスペーサーを組み込み、そして種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号33)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持すること、そしてDAMメチル化を生じ得る塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0272】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号39)を作製するために、リンカー(配列番号33)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをPstIおよびXbaI制限酵素で切断し、そしてPstIおよびXbaIで切断したHN/AのDNA(配列番号28)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号39)を含んでおり、これは、発現ベクターに移入され、配列番号40に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0273】
実施例20:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
LC/A−HN/Aバックボーンを、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号34)として配置させた、合成血清型Aリンカーを用いて、実施例19に記載のように構築する。LC/A−HN/Aバックボーンおよび合成したN末端側提示ノシセプチン挿入片(配列番号35)を、BamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、ゲル精製し、そして一緒に連結してノシセプチン−スペーサー−LC−リンカー−HNを作製する。次いで、ORF(配列番号41)を制限酵素AvaIおよびXbaIを用いて切断し、これは、発現ベクターに移入され、配列番号42に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0274】
実施例21:LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号36)として配置させた血清型Cリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号43)を含んでおり、これは、配列番号44に示される配列のタンパク質として発現する。
【0275】
実施例22:血清型A活性化配列を有するLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号33)として配置させた血清型Aリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号45)を含んでおり、これは、配列番号46に示される配列のタンパク質として発現する。
【0276】
実施例23:LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製
metエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFM metエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−metエンケファリン−スペーサー−HNのORF(配列番号47)を含んでおり、これは、配列番号48に示される配列のタンパク質として発現する。
【0277】
実施例24:LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−βエンドルフィン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号37)として配置させた血清型Aのβエンドルフィンリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−βエンドルフィン−スペーサー−HNのORF(配列番号49)を含んでおり、これは、配列番号50に示される配列のタンパク質として発現する。
【0278】
実施例25:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号38)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号51)を含んでおり、これは、配列番号52に示される配列のタンパク質として発現する。
【0279】
実施例26:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製方法
25mlの50mM HEPES(pH7.2)、200mMのNaClおよび約10gの大腸菌BL21細胞ペーストを含むファルコン管を解凍する。この融解した細胞ペーストを50mM HEPES(pH7.2)、200mMのNaClで80mlにし、そして氷上にて、22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにする。溶解した細胞を18,000rpmで4℃にて30分間遠心分離する。この上清を、50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供する。10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定する。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートする。50mM HEPES(pH7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供する。50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClでベースラインまでカラムを洗浄する。10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて凍結する。OD、BCA、純度分析、およびSNAP−25評価を用いて精製タンパク質を試験する。
【0280】
実施例27:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片を、実施例19に記載のように調製する。
【0281】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号39)を作製するために、リンカー(配列番号33)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号39)を含んでおり、これは、配列番号40に示される配列のタンパク質として発現する。
【0282】
実施例28:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A構築物を作製するために、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号34)として配置させた血清型Aリンカーを、実施例27に記載のように合成する。このリンカーをコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして合成したN末端提示ノシセプチン挿入片(配列番号35)を含む同様に切断したベクターにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、この構築物をAvaIおよびHindIIIで切断し、そしてpMALプラスミド(NEB)のような発現ベクターに挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)を、PstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして同様に切断したpMAL−ノシセプチン−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/AのORF(配列番号63)を含んでおり、これは、配列番号64に示される配列のタンパク質として発現する。
【0283】
実施例29:可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーの調製および精製
実施例19で用いたのと同じストラテジーを用いて、ノシセプチンおよび可変スペーサー内容物をコードする種々のDNAリンカーを調製した。種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号65〜配列番号69)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持すること、そしてDAMメチル化を生じる塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0284】
作製したスペーサーは、以下を含んでいた:
【0285】
【表2】
【0286】
例示として、LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合構築物(配列番号70)を作製するために、リンカー(配列番号66)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS15)−HN/AのORF(配列番号70)を含んでおり、これは、配列番号71に示される配列のタンパク質として発現する。
【0287】
さらなる例として、LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合構築物(配列番号72)を作製するために、リンカー(配列番号67)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS25)−HN/AのORF(配列番号72)を含んでおり、これは、配列番号73に示される配列のタンパク質として発現する。
【0288】
GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体も同様に作製する。実施例26に記載の精製方法を用いて、融合タンパク質を大腸菌細胞ペーストから精製する。図12は、LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの場合に得られた精製産物を示している。
【0289】
実施例30:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例2および9に従って調製した融合タンパク質をeDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0290】
サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断に関するアッセイは、既に報告されている(Dugganら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)。簡単に言えば、背根神経節ニューロンを15日齢胎児Sprague-Dawleyラットから摘出し、そして解離した細胞を、Matrigelでコーティングされた24ウェルプレート上に、1×106細胞/ウェルの密度で播種した。播種の1日後、細胞を10μMシトシンβ−D−アラビノフラノシドで48時間処理する。細胞を、5%熱不活性化ウシ胎児血清、5mMのL−グルタミン、0.6%のD−グルコース、2%のB27補充物、および100ng/mlの2.5Sマウス神経成長因子を加えたダルベッコ最小必須培地中に維持する。試験物質を添加する前に、培養物を95%空気/5%CO2中に37℃にて2週間維持する。
【0291】
eDRGからのサブスタンスPの放出を酵素結合免疫吸着アッセイによって評価する。簡単に言えば、eDRG細胞を低カリウム平衡塩類溶液(BSS:5mMのKCl、137mMのNaCl、1.2mMのMgCl2、5mMのグルコース、0.44mMのKH2PO4、20mMのHEPES(pH7.4)、2mMのCaCl2)で2回洗浄する。基本試料を、各ウェルを1mlの低カリウムBSSと5分間インキュベートすることにより得る。この緩衝液の除去後、1mlの高カリウム緩衝液(上記BSSに対してNaClで等張平衡化した100mMのKClを含むように改変した)と5分間インキュベートすることにより、細胞を放出に対して刺激する。サブスタンスPのアッセイ前に、全ての試料を氷上のチューブに移す。250μlの2M酢酸/0.1%トリフルオロ酢酸を添加して細胞を溶解し、遠心分離にてエバポレートし、そして500μlのアッセイ緩衝液に再懸濁することにより、全細胞溶解物を調製する。希釈した試料を、サブスタンスP含量について評価する。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical CompanyまたはR&D Systems)を製造者の指示書に従って用いて測定する。サブスタンスPは、並行して実行した標準サブスタンスP曲線に対してpg/mlで表す。
【0292】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を、標準プロトコル(Novex)を用いて実施した。SNAP−25タンパク質を12%Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)上で分離し、引き続いてニトロセルロース膜に転写した。この膜を、切断したSNAP−25および完全なSNAP−25を認識するモノクローナル抗体(SMI−81)でプローブした。ペルオキシダーゼ結合二次抗体および化学発光検出系を用いて特異的結合を可視化した。SNAP−25の切断を、走査デンシトメトリー(Molecular Dynamics Personal SI, ImageQuantデータ解析ソフトウエア)によって定量した。SNAP−25の切断パーセントを、以下の式に従って算定した:(切断されたSNAP−25/(切断されたSNAP−25+完全なSNAP−25))×100。
【0293】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−Aと称する)へのeDRGニューロンの曝露後、サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断の両方が観察されている(図13)。融合物への24時間の曝露後、6.3±2.5nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている。
【0294】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図14は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後28日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0295】
実施例31:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例8および9に従って調製した融合タンパク質を、実施例30に記載の方法を用いて、eDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0296】
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−Aと称する)へのeDRGニューロンの曝露後、サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断の両方が観察されている。融合物への24時間の曝露後、1.4±0.4nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている(図15)。
【0297】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図16は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後24日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0298】
CPNv−A融合タンパク質の結合能もまた、CPN−A融合物に比較して評価している。図17は、ORL−1レセプターでの結合効力を決定するための競合実験の結果を示している。CPNv−Aが[3H]−ノシセプチンを置き換えることが示され、それにより、レセプターへの接近が、中心提示様式におけるリガンドを用いて可能であることが確認される。
【0299】
実施例32:エンテロキナーゼでの処理により活性化されるLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−エンテロキナーゼプロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号74)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号75)を含んでおり、これは、配列番号76に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv(Ek)−Aと称する。図18は、活性化のために100μgの融合タンパク質当たり0.00064μgでエンテロキナーゼを用いたこと以外は実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv(Ek)−Aの精製を示している。
【0300】
実施例33:エンテロキナーゼでの処理により活性化されたLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例32で調製したCPNv(Ek)−Aを精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例30からの方法を用いる)。図19は、CPNv(Ek)−AへのeDRGの24時間曝露後のSNAP−25の切断を示している。切断の効率は、実施例31に記載したように、第Xa因子切断物で得られるのと同様であることが観察されている。
【0301】
実施例34:血清型Aに由来する第Xa因子活性化リンカーを有するLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製
実施例21で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号77)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号78)を含んでおり、これは、配列番号79に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.A)と称する。図20は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv−C(act.A)の精製を示している。
【0302】
実施例35:LC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質のインビトロ効力の評価
実施例26で使用した方法に従って、実施例34で調製したCPNv−C(act.A)を精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例30からの方法を用いる)。融合物への24時間曝露後、3.1±2.0nMの融合物濃度で、最大の50%のシンタキシン切断が生じている。図21は、CPNv−C(act.A)へのeDRGの24時間曝露後のシンタキシンの切断を示している。
【0303】
実施例36:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビボ効力の評価
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)が急性カプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価する。試験動物を、研究に参加させる前、CPN/Aでの皮下処置後カプサイシン投与前、およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。図22は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を示している。
【0304】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がラットにおいてストレプトゾトシン(STZ)誘発機械的(触覚)異痛を阻害する能力を評価する。ラットにおけるSTZ誘発機械的異痛をストレプトゾトシンの注射(腹腔内または静脈内)によって生じさせる。これにより、膵臓β細胞が破壊され、インスリン生産の喪失が生じ、代謝ストレスを併発する(高血糖および高脂血症)。このように、STZは、I型糖尿病を誘発する。さらに、STZ処置により神経障害の進行性の発症が生じ、これは、痛覚過敏および異痛を伴う慢性疼痛のモデルとなり、これは、ヒト糖尿病患者で観察される徴候(末梢糖尿病性神経障害)を反映し得る。
【0305】
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質を測定して、モデルの準備性を定める。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたるVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2日の連続した試験日(1週間空ける)におけるPWTがスケールの上で6gを下回って測定する場合に確立されるといわれる。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)のいずれかに無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注射し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、PWT試験開始の2時間前に毎日注射する。図23は、750ngのCPN/Aでの動物の前処置により得られる異痛の逆転を示している。データは、CPN/Aの単回注射後2週間にわたって得た。
【0306】
実施例37:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビボ効力の評価
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価する。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。
【0307】
図24は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる異痛の逆転を、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の添加で得られた逆転と比較して示している。これらのデータは、正規化した足逃避率差として表す。ここでは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0308】
実施例38:LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製
leuエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFL leuエンケファリンペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−leuエンケファリン−スペーサー−HNのORF(配列番号80)を含んでおり、これは、配列番号81に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPLE−Aと称する。図25は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPLE−Aの精製を示している。
【0309】
実施例39:LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の発現および精製
実施例26で使用した方法に従って、そして実施例24で作製したLC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質(CPBE−Aと称する)を用いて、CPBE−Aを大腸菌から精製する。図26は、SDS−PAGEにより分析した精製したタンパク質をSDS−PAGEによる分析にて示している。
【0310】
実施例40:LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物の調製
ノシセプチン配列を1位でPheからTyrに変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物のORF(配列番号82)を含んでおり、これは、配列番号83に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPOP−Aと称する。図27は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPOP−Aの精製を示している。
【0311】
実施例41:LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合タンパク質の調製および評価
ノシセプチン配列を1位でPheからTyrに変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号51)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号51)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物のORF(配列番号84)を含んでおり、これは、配列番号85に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPOPv−Aと称する。図28は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPOPv−Aの精製を示している。
【0312】
実施例30に記載の方法を用いて、CPOPv−AをeDRG細胞モデルでSNAP−25を切断する能力について評価する。図29は、CPOPv−AがeDRGモデルでSNAP−25を切断できることを示しており、約5.9nMの融合物に細胞を24時間曝露した後、最大の50%のSNAP−25切断を生じている。
【0313】
実施例42:IgAプロテアーゼ−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
IgAプロテアーゼアミノ酸配列を、自由に利用可能なデータベース供給源(例えば、GenBank(アクセッション番号P09790))から入手した。N. GonorrhoeaeIgAプロテアーゼ遺伝子の構造に関する情報は、文献で入手可能である(Pohlnerら, Gene structure and extracellular secretion of Neisseria gonorrhoeae IgA protease, Nature, 1987, 325(6103), 458-62)。Backtranslation tool v2.0(Entelechon)を用いて、大腸菌発現のために改変したIgAプロテアーゼをコードするDNA配列を決定した。BamHI認識配列をIgAのDNAの5’末端に組み込み、システインアミノ酸をコードするコドンおよびSalI認識配列を3’末端に組み込んだ。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、MapDraw(DNASTAR Inc.)を用いてスクリーニングした。クローニングに必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)によって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表を参照することによって評価した。次いで、IgAオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列(配列番号86)を商業的に合成する。
【0314】
IgA(配列番号86)を、BamHIおよびSalI制限酵素を用いてLC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号51)に挿入して、IgAプロテアーゼDNAとLCとを置換する。最終構築物は、IgA−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号87)を含んでおり、これは、配列番号88に示される配列のタンパク質として発現する。
【0315】
実施例43:除去可能なヒスチジン精製タグを有するノシセプチン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製および評価
第Xa因子の除去可能なhisタグ(his6)をコードするDNAを調製したが、エンテロキナーゼのような別のプロテアーゼ部位およびもっと長いヒスチジンタグのような別の精製タグもまた可能であることが明らかである。種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、第Xa因子の除去可能なhisタグ領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてNheI−リンカー−SpeI−PstI−HN/A−XbaI−LEIEGRSGHHHHHH停止コドン−HindIII(配列番号89)として配置させ得る。このDNA配列を、組み込まれた制限配列についてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。CPNv−A−FXa−HT(配列番号90、除去可能なhisタグ構築物)を作製するために、除去可能なhisタグをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびHindIIIで切断する。次いで、NheI−HindIIIフラグメントを、同様にNheIおよびHindIIIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号51)に挿入する。最終構築物は、LC/A−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN−FXa−Hisタグ−HindIIIのORF配列(配列番号90)を含んでおり、これは、配列番号91に示される配列のタンパク質として発現する。図30は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv−A−FXa−HTの精製を示している。
【0316】
実施例44:ジフテリア毒素由来トランスロケーションドメインを含むleuエンケファリン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いるジフテリア毒素のトランスロケーションドメインのアミノ酸配列(GenBank(アクセッション番号1XDTT)のような自由に利用可能なデータベースソースから入手)の逆翻訳によって設計する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてNheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号92)として配置させ得る。PstI/XbaI認識配列を、配列のトランスロケーションドメインの5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、ジフテリアトランスロケーションドメインを含むこの最適化したDNA配列を、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIIIとして商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供する。ジフテリアトランスロケーションドメインをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびXbaIで切断する。次いで、NheI−XbaIフラグメントを、同様にNheIおよびXbaIによって切断しておいたLC/A−CPLE−HN/Aベクター(配列番号80)に挿入する。最終構築物は、LC/A−leuエンケファリン−スペーサー−ジフテリアトランスロケーションドメインのORF配列(配列番号93)を含んでおり、これは、配列番号94に示される配列のタンパク質として発現する。
【0317】
実施例45:破傷風菌毒素由来LCドメインを含むノシセプチン改変体標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、破傷風菌毒素LCアミノ酸配列(GenBank(アクセッション番号X04436)のような自由に利用可能なデータベースソースから入手)の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する(配列番号95)。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、破傷風菌毒素LCのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列を、商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供する。TeNT LCをコードしているpCR 4ベクターをBamHIおよびSalIで切断する。次いで、BamHI−SalIフラグメントを、同様にBamHIおよびSalIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号51)に挿入する。最終構築物は、TeNT LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号96)を含んでおり、これは、配列番号97に示される配列のタンパク質として発現する。
【0318】
実施例46:第Xa因子切断を受けやすい天然型血清型Cリンカーを有するLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製
実施例21で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号98)として配置させた血清型Cノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号99)を含んでおり、これは、配列番号100に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.C)と称する。
【図面の簡単な説明】
【0319】
【図1】recLHN/B融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図2】LHN/C融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図3】N[1−17]−LHN/A融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図4】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図5】ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図6】LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製を示す。
【図7】LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図8】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較を示す。
【図9】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性を示す。
【図10】LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図11】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較を示す。
【図12】可変スペーサー長産物を有する発現/精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーを示す。
【図13】CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図14】CPN−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図15】CPNv−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図16】CPNv−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSNAP−25の切断を示す。
【図17】[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換を示す。
【図18】発現/精製したCPNv(Ek)−A産物を示す。
【図19】CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図20】発現/精製したCPNv−C産物を示す。
【図21】CPNv−Cによるシンタキシンの切断を示す。
【図22】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−Aの効力を示す。
【図23】ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−Aの効力を示す。
【図24】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−Aの効力を示す。
【図25】発現/精製したLC/A−CPLE−HN/A産物を示す。
【図26】発現/精製したLC/A−CPBE−HN/A産物を示す。
【図27】発現/精製したCPOP−A産物を示す。
【図28】発現/精製したCPOPv−A産物を示す。
【図29】DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断を示す。
【図30】発現/精製したCPNv−A−FXa−HT(除去可能hisタグ)を示す。
【図31】リガンド競合アッセイによって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【図32】インビトロSNAP−25切断によって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非細胞傷害性タンパク質結合体、および疼痛の治療のための該結合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毒素は、標的細胞に対して有する効果のタイプに従って2つの群に分けられ得る。より詳細には、第一の毒素群は、それらの天然の標的細胞を殺傷し、このため、細胞傷害性毒素分子として知られる。この毒素群は、とりわけ、植物毒素(例えば、リシンおよびアブリン)および細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素A)によって例示される。細胞傷害性毒素は、代表的には、タンパク質合成の細胞プロセスを阻害することにより、それらの標的細胞を殺傷する。
【0003】
対照的に、第二の毒素群は、非細胞傷害性毒素として知られ、(これらの名称が証明するとおり)それらの天然の標的細胞を殺傷しない。非細胞傷害性毒素は、それらの細胞傷害性のものほどには商業上の関心をひきつけず、そしてタンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することにより、標的細胞に対してそれらの効果を発揮する。細胞傷害性の対応物と同様に、非細胞傷害性毒素は、植物および細菌のような種々の供給源から生成される。細菌の非細胞傷害性毒素を、ここでより詳細に説明する。
【0004】
クロストリジウム神経毒素は、代表的には150kDaの程度の分子量を有するタンパク質である。それらは、種々の細菌種、特に、クロストリジウム属の細菌、最も重要にはC. tetaniおよびC. botulinumの数株、C. butyricum、およびC. argentinenseによって生成される。現在、クロストリジウム神経毒素の8つの異なるクラスが存在し(すなわち、破傷風菌毒素およびボツリヌス菌神経毒素(その血清型A、B、C1、D、E、FおよびG))、そしてそれらは全て、類似の構造および作用様式を共有する。
【0005】
クロストリジウム神経毒素は、非細胞傷害性毒素分子の主要な群を代表し、そして単一ポリペプチドとして宿主細菌によって合成され、この単一ポリペプチドは、タンパク質分解切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに接続された2つのポリペプチド鎖を形成する。これらの2つの鎖は、重鎖(H鎖)(これは、約100kDaの分子量を有する)および軽鎖(L鎖)(これは、約50kDaの分子量を有する)と称される。
【0006】
L鎖は、プロテアーゼ機能(亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性)を有し、そしてエキソサイトーシスプロセスに関与する小胞および/または原形質膜会合タンパク質に対する高い基質特異性を示す。異なるクロストリジウム種または血清型に由来するL鎖は、3つの基質タンパク質(すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25)の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を加水分解し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。
【0007】
非細胞傷害性毒素は、Neisseria属、最も重要にはN. gonorrhoeaeの種に由来するような、他の細菌によっても生産される。例えば、Neisseria sp.は、非細胞傷害性毒素であるIgAプロテアーゼを生成する(WO99/58571を参照のこと)。
【0008】
毒素分子が、その毒素の天然の標的細胞ではない細胞にリターゲティングされ得ることが当該分野において十分に書き記されている。そのようにリターゲティングされたとき、改変毒素は、所望の標的細胞に結合し得、そしてそれに続くサイトゾルへのトランスロケーション後、標的細胞にその効果を発揮し得る。該リターゲティングは、毒素の天然のターゲティング部分(TM)を異なるTMと置き換えることによって達成される。これに関して、TMは、それが所望の標的細胞に結合し、そして標的細胞内のエンドソームへの改変毒素の引き続く通過を可能にするように選択される。改変毒素はまた、非細胞傷害性プロテアーゼの細胞サイトゾルへの侵入を可能にするトランスロケーションドメインを含む。このトランスロケーションドメインは、毒素の天然のトランスロケーションドメインであり得るか、またはトランスロケーション活性を有する微生物タンパク質から得られる別のトランスロケーションドメインであり得る。
【0009】
例えば、非細胞傷害性毒素分子に関して、クロストリジウム神経毒素が、クロストリジウム神経毒素の天然のTMではないターゲティング部分(TM)の組込みによってリターゲティングされ得ることは十分に書き記されている。記載された化学結合体化および組換え方法は、従来技術とみなされ、そしてHermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press、およびWong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Pressに言及されている。
【0010】
例えば、WO94/21300は、改変クロストリジウム神経毒素分子を記載しており、この分子は、標的細胞の細胞表面に存在する膜貫通タンパク質(IMP)密度を調節し得る。したがって、この改変神経毒素分子は、標的細胞の細胞活性(例えば、グルコース取り込み)を制御し得る。WO96/33273およびWO99/17806は、末梢感覚求心性神経をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変神経毒素分子は、鎮痛効果を示し得る。WO00/10598は、粘液過分泌細胞(または該粘液過分泌細胞を制御する神経細胞)をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、該細胞からの過分泌を阻害し得る。WO01/21213は、広範な異なるタイプの非神経標的細胞をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変分子は、標的細胞からの分泌を抑制し得る。リターゲティングされる毒素分子の技術分野におけるさらなる刊行物としては、以下が挙げられる:WO00/62814;WO00/04926;US5,773,586;WO93/15766;WO00/61192;およびWO99/58571。
【0011】
したがって、上記刊行物から、標的細胞に存在する対応するレセプターを有するTMを選択することによって非細胞傷害性プロテアーゼを所望の標的細胞にリターゲティングするという基本概念が、十分に記載されていることが理解される。
【0012】
しかし、目的の標的細胞に存在する異なるレセプターは、異なるTMに対して異なる結合親和性を示す。これは、異なるTMに対して異なる結合親和性を有する広範なレセプタータイプを有している痛みを感じる細胞には、特に問題であり得る。したがって、特定のTM(これは痛みを感じる細胞上のレセプターに結合する)を含むリターゲンティングされた結合体は、痛みを感じる標的細胞に対して低い結合親和性を示し得、これは望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、1つ以上の上記問題に取り組む改変非細胞傷害性結合体を開発する必要がある。疼痛の治療への使用のための改善された結合体の開発が特に関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、結合体のターゲティング部分(TM)として、目的の痛みを感じる標的細胞に存在するレセプターの「アゴニスト」を使用することによって、1つ以上の上記問題に取り組む努力をする。好適な実施態様では、痛みを感じる標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経、より好ましくは一次侵害受容感覚求心性神経である。特に好適な実施態様では、TMはオピオイド様レセプター−1(ORL1)レセプターのアゴニストである。
【0015】
したがって、第1の局面では、本発明は、侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体を提供し、この結合体は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「アゴニスト」は、通常生物学的プロセス、特にエキソサイトーシス(例えば、細胞分泌の増加、または膜タンパク質発現のアップレギュレーション)を刺激し、この「アゴニスト」の使用は、リターゲティングされた毒素の技術分野において刺激的な開発である。さらに、アゴニストが治療用組成物に用いられて、そのアゴニストが通常刺激する生物学的プロセスの低減または阻害を達成し得ることは、特に驚くべきことである。
【0017】
本発明のアゴニスト含有結合体は、毒素結合体の別のサブセットを示す。より詳細には、本発明の結合体は、TMを含み、このTMは、目的の痛みを感じる標的細胞上に対応するレセプターを有するという単純な根拠よりもむしろ特定のアゴニスト特性に基づいて選択されている。
【0018】
従来、アゴニストは、細胞内で活性を上昇または低下させ得る任意の分子、すなわち、細胞活性の変化を単に引き起こす任意の分子であると考えられている。例えば、アゴニストの従来の意味は、細胞上のレセプターと結合しそして反応または活性を開始し得る化学物質、あるいは、応答が細胞活性の上昇または低下のいずれにせよ、レセプターを活性化することにより活性な応答を誘導する薬物を含む。
【0019】
しかし、本発明の目的のために、アゴニストは、痛みを感じる標的細胞においてエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子として、より詳細に定義される。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0020】
したがって、本発明の特定のアゴニストの定義は、従来はアゴニストと考えられていた多くの分子を排除する。例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介する神経分化を促進する能力に関するアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主なインデューサーではないので、上記基準によって評価した場合はアゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けにくい。
【0021】
使用に際して、本発明のアゴニスト含有結合体は、痛みを感じる標的細胞上のアゴニストレセプターを不活性化せず、むしろ結合体のプロテアーゼ活性が、アゴニストにより媒介される応答を打ち消すように働く。
【0022】
さらに、一旦痛みを感じる標的細胞のサイトゾルに送達されると、本発明の結合体のプロテアーゼ構成部分は、同じ標的細胞において同じ効果(すなわち、エキソサイトーシス融合の増加)を引き起こし得るすべてのその後のアゴニストの作用を阻害またはブロックする。これは、好都合であり、そして本発明の結合体が、多数のアゴニストが痛覚を生じる原因であり得る状況に適用を有することを意味する。したがって、本発明の結合体を設計する場合、送達のために選択されるTMは、必ずしも痛覚を生じることに関連する主要なアゴニストである必要はない。
【0023】
本発明によるアゴニストにより媒介される送達は、これまでの非細胞傷害性プロテアーゼ含有治療剤よりも以下の顕著な利点を提供する:アゴニストの使用は、結合体に選択的結合および/または内在化特性を与え得る。次に、これは、痛みを感じる標的細胞へのプロテアーゼ構成部分のより効率的な送達を生じ得る。
【0024】
さらに、アゴニストのTMとしての使用は、副作用に関して自己限定的である。より詳細には、痛みを感じる標的細胞へのアゴニストの結合は、エキソサイトーシス融合を増加し、これは、痛覚を増悪させ得る。しかし、アゴニスト結合により刺激されるエキソサイトーシスプロセスは、続いて、結合体のプロテアーゼ構成部分により低減または阻害される。
【0025】
本発明の好適な実施態様では、TMは、ORL1レセプターのアゴニストである。ORL1レセプターは、身体において痛みを感じる細胞上に存在する。
【0026】
ORL1レセプターは、Gタンパク質と結合したクラスのレセプターのメンバーであり、そして7回膜貫通ドメイン構造を有する。ORL1レセプターの特性は、MogilおよびPasternak (2001), Pharmacological Reviews, 53巻, 3号, 381-415頁に詳細に記載される。
【0027】
本明細書を通して、「ORL1レセプター」とは、ORL1レセプターファミリーのすべてのメンバーを含む。ORL1レセプターファミリーのメンバーは、代表的には、7回膜貫通ドメイン構造を有し、そしてGiおよびG0ファミリーのGタンパク質に結合される。ORL1レセプターのリガンドのGタンパク質刺激活性の測定方法を、実施例17に示す。ORL1活性化後の細胞cAMPレベルの低下の測定方法を、実施例16に示す。ORL1レセプターファミリーのメンバーのさらなる特徴は、それらが代表的にはノシセプチン(ORL1の天然のリガンド)を結合し得ることである。例として、ORL1レセプターのすべての選択的スプライス改変体は、ORL1レセプターファミリーのメンバーである。
【0028】
本発明の結合体は、一般に、対応する「フリー」なTMと比較した場合、侵害受容感覚求心性標的細胞に対して(100倍までの範囲で)低下した結合親和性を示している。しかし、この観察にもかかわらず、本発明の結合体は、驚くべきことに、良好な効力を示している。これは、2つの主要な特徴に帰するものであり得る。第一に、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、触媒性である。したがって、少数のこのような分子の治療効果が迅速に増幅される。第二に、侵害受容感覚求心性神経上に存在するレセプターは、治療剤の侵入のための出入口としてのみ作用する必要があり、必ずしもリガンド−レセプター媒介薬理学的応答を達成するために必要とされるレベルまで刺激される必要はない。したがって、本発明の結合体は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)について用いられるよりもずっと低い投薬量で投与され得る。後者の分子は、代表的には、高マイクログラムからミリグラム(数百ミリグラムまででさえある)量で投与される。これに対して、本発明の結合体は、ずっとより低い投薬量(代表的には少なくとも10倍低く、そしてより代表的には100倍低い)で投与され得る。
【0029】
本発明の特に好ましい実施態様では、結合体のTMは、ORL1レセプターに対する天然のリガンドであるノシセプチンである。ノシセプチンは、ORL1レセプターを高い親和性でターゲティングする。
【0030】
他の好ましいTMの例は、以下を含む:
【0031】
【数1】
【0032】
[1]MogilおよびPasternak, 2001, Pharmacol. Rev., 53, 381-415
[2]Maileら, 2003, Neurosci. Lett., 350, 190-192
[3]Rizziら, 2002, J. Pharmacol. Exp. Therap., 300, 57-63
[4]Okadaら, 2000, Biochem. Biophys. Res. Commun., 278, 493-498
[5]Zaveri, 2003, Life Sci., 73, 663-678.
[6]Dooleyら, 1997, J Pharmacol Exp Ther. 283(2), 735-41。
【0033】
TMは、好ましくは最大で50アミノ酸残基、より好ましくは最大で40アミノ酸残基、特に好ましくは最大で30アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で20アミノ酸残基を含む。例えば、ノシセプチンは、17アミノ酸残基ペプチドである。
【0034】
上記の同定された「改変体」TMは、(天然のノシセプチンと比較した場合)侵害受容感覚求心性神経に対して特に良好な結合親和性を示す。一般的に言えば、TM含有結合体は、TM自体と比べて約100倍の結合能の低減を示す。上記の「改変体」TM自体は、天然のノシセプチンと比べて侵害受容感覚求心性神経に対して約3〜10倍の結合能の上昇を示す。したがって、「改変体」TM含有融合物は、「フリー」のノシセプチンと比べて侵害受容感覚求心性神経に対して約10倍の結合能の低減を示すことが予測され得る。しかし、本発明者らは、該「改変体」TMを含む結合体が、「フリー」のノシセプチンの結合能を(最も驚くべきことには)厳密に反映する結合能を示すことを示した。図17を参照のこと。
【0035】
本発明では、用語「ORL1レセプターのアゴニスト」(例えば、ノシセプチン、または上記の数表に列挙したペプチドのいずれか1つ)は、該アゴニストと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有する分子を包含する。アゴニストホモログは、ORL1レセプターでノシセプチンのアゴニスト特性を保持し、これは、実施例10に提供される方法を用いて検証され得る。
【0036】
本発明はまた、上記のTMのいずれか1つのフラグメント、改変体、および誘導体を含む。これらのフラグメント、改変体、および誘導体は、該TMに帰する特性を実質的に保持する。
【0037】
TMのアゴニスト特性は、実施例1に記載の方法を用いて確認され得る。これらの方法は、既存の実験に基づき(Inoueら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci., 95, 10949-10953を参照のこと)、これは、ORL1レセプターの天然のアゴニストであるノシセプチンが、侵害受容一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出の誘導を引き起こすことを確認する。これは、以下の事実によって支持される:
・ノシセプチンにより誘導される応答は、特異的NK1レセプター(サブスタンスPレセプター)アンタゴニストによって廃止される;および
・カプサイシンでの細胞の前処理(これは、小さな直径の一次求心性神経細胞からサブスタンスPを枯渇させる)は、ノシセプチンで誘導される応答を減弱させる。
【0038】
同様に、Inoueらは、ボツリヌス神経毒素A型の足底内注射が、ノシセプチンにより誘導される応答を廃止することを確認している。BoNTが一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害することが公知であるので(Welchら, (2000), Toxicon, 38, 245-258)、これは、ノシセプチン−ORL1相互作用とその後のサブスタンスPの放出との間の関連を確認する。
【0039】
したがって、TMが侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出の誘導を引き起こす場合、TMは、ORL1レセプターでアゴニスト活性を有するということができる(実施例1を参照のこと)。
【0040】
他の実施態様では、オピオイドが、本発明のTMの好適な群を示す。エンケファリン(metおよびleu)、エンドモルフィン1および2、β−エンドルフィン、ならびにダイノルフィンが、このペプチドファミリー内に含まれる。オピオイドペプチドは、侵害受容器、および疼痛応答に関与する他の細胞に対する活性を改変するために臨床で頻繁に使用される。世界保健機構の3段階徐痛ラダーに例示されるように、オピオイドは、3段階のすべてにおいて慢性の癌および非癌の疼痛の薬理学的治療へのエントリーポイントを有し、これは、疼痛治療への重要性を強調する。オピオイドとは、侵害受容感覚求心性神経への結合能を保持する、そのフラグメント、改変体、および誘導体を含む。本発明のプロテアーゼは、真核細胞においてエキソサイトーシス融合器官の1以上のタンパク質を切断し得るすべての天然に存在する非細胞傷害性プロテアーゼを含む。
【0041】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼである。
【0042】
より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属またはナイセリア属から選択される(例えば、クロストリジウムL鎖、またはナイセリアIgAプロテアーゼ(好ましくは、N. gonorrhoeae由来))。
【0043】
本発明はまた、改変非細胞傷害性プロテアーゼを含み、この改変プロテアーゼは、上記プロテアーゼ活性をなお示す限り、天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を含む。
【0044】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、セリンまたはメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP−25、シナプトブレビン/VAMP、またはシンタキシン)に特異的である。
【0045】
特に、神経毒素のプロテアーゼドメイン(例えば、細菌神経毒素のプロテアーゼドメイン)について述べられる。したがって、本発明は、天然に存在する神経毒素ドメインの使用、ならびに該天然に存在する神経毒素の組換え調製型を包含する。
【0046】
例示の神経毒素は、クロストリジウム属によって生成される。そして用語「クロストリジウム神経毒素」は、C. tetaniによって生成される神経毒素(TeNT)およびC. botulinumによって生成される神経毒素(BoNT)血清型A〜G、ならびにC. baratiiおよびC. butyricumにより生成される密に関連したBoNT様神経毒素を含む。上記の略語は、本明細書中を通じて使用する。例えば、BoNT/Aとの名称は、神経毒素の供給源がBoNT(血清型A)であることを示す。他のBoNT血清型に対しても、対応する名称が適用される。
【0047】
用語「L鎖フラグメント」は、神経毒素のL鎖の一構成部分を意味し、このフラグメントは、メタロプロテアーゼ活性を示し、そして細胞エキソサイトーシスに関与する小胞および/または原形質膜に会合したタンパク質をタンパク質分解により切断し得る。
【0048】
トランスロケーションドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、痛みを感じる標的細胞へのプロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする分子である。どの分子(例えば、タンパク質またはペプチド)が保有するのであっても、本発明の必要なトランスロケーション機能は、多数の従来アッセイの任意の1つによって確認され得る。
【0049】
例えば、Shone C.(1987)は、試験分子がチャレンジされるリポソームを用いるインビトロアッセイを記載している。必要なトランスロケーション機能の存在は、K+および/または標識NADのリポソームからの放出によって確認され、これは容易にモニタリングされ得る(Shone C. (1987) Eur. J. Biochem., 167(1)巻, 175-180頁を参照のこと)。
【0050】
さらなる例は、Blaustein R.(1987)によって提供される。これは、平面リン脂質二層膜を用いる単純なインビトロアッセイを記載している。この膜に試験分子をチャレンジし、そして必要なトランスロケーション機能は、該膜を横断する伝導の増大によって確認される(Blaustein (1987) FEBS Letts., 226巻, 1号, 115-120頁を参照のこと)。
【0051】
膜融合の評価、およびしたがって、本発明での使用に適したトランスロケーションドメインの同定を可能にするさらなる方法は、Methods in Enzymology 220巻および221巻, Membrane Fusion Techniques, A部およびB部, Academic Press 1993によって提供される。
【0052】
トランスロケーションドメインは、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。
【0053】
トランスロケーションドメインは、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。
【0054】
細菌毒素分子のある種のドメインがこのような孔を形成し得ることは、十分に記載されている。ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインがこのような孔を形成し得ることも公知である。このようなドメインは、本発明において用いられ得る。
【0055】
トランスロケーションドメインは、クロストリジウム属起源であり得、すなわち、HNドメイン(またはその機能的構成部分)であり得る。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。適切なクロストリジウムトランスロケーションドメインの例は、以下を含む:
ボツリヌス菌A型神経毒素−アミノ酸残基(449〜871)
ボツリヌス菌B型神経毒素−アミノ酸残基(441〜858)
ボツリヌス菌C型神経毒素−アミノ酸残基(442〜866)
ボツリヌス菌D型神経毒素−アミノ酸残基(446〜862)
ボツリヌス菌E型神経毒素−アミノ酸残基(423〜845)
ボツリヌス菌F型神経毒素−アミノ酸残基(440〜864)
ボツリヌス菌G型神経毒素−アミノ酸残基(442〜863)
破傷風菌神経毒素−アミノ酸残基(458〜879)。
【0056】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(C. tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関するさらなる詳細については、Hendersonら (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressに参照される。
【0057】
用語「HN」は、天然に存在する神経毒素HN部、および天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を有する改変HN部(ただし、改変HN部が上記トランスロケーション機能をなお示す限り)を含む。
【0058】
あるいは、トランスロケーションドメインは、非クロストリジウム属起源であり得る(以下の数表を参照のこと)。非クロストリジウムトランスロケーションドメイン起源の例は、以下を含むが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のトランスロケーションドメイン[O'Keefeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206;Silvermanら, J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532;およびLondon, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナス外毒素A型のトランスロケーションドメイン[Priorら, Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽菌毒素のトランスロケーションドメイン[Blankeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996)93, 8437-8442]、トランスロケーション機能の種々の融合性または疎水性ペプチド[Plankら, J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924;およびWagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および両親媒性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]。トランスロケーションドメインは、天然に存在するタンパク質に存在するトランスロケーションドメインを反映し得るか、またはその変化がトランスロケーションドメインのトランスロケーション能を破壊しない限り、アミノ酸変化を含み得る。
【0059】
本発明での使用に適したウイルストランスロケーションドメインの具体的な例には、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインが含まれる。例えば、Wagnerら(1992)およびMurataら(1992)は、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのN末端領域に由来する多数の融合性および両親媒性のペプチドのトランスロケーション(すなわち、膜融合および小胞形成)機能を記載している。所望のトランスロケーション活性を有することが公知の他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)の融合性ペプチドのトランスロケーションドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質Gのトランスロケーションドメイン、SERウイルスFタンパク質のトランスロケーションドメインおよび泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質のトランスロケーションドメインである。ウイルスがコードする「スパイクタンパク質」は、本発明においては特別な適用を有し、例えば、SFVのE1タンパク質およびVSVのGタンパク質である。
【0060】
トランスロケーションドメイン(以下に列挙)の使用は、それらの配列改変体の使用を含む。改変体は、1つ以上の保存的な核酸置換および/または核酸欠失もしくは挿入を含み得る。ただし、この改変体は、必要なトランスロケーション機能を保有する。改変体はまた、この改変体が必要なトランスロケーション機能を保有する限り、1つ以上のアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失もしくは挿入を含み得る。
【0061】
【数2】
【0062】
一旦可能性のあるレセプターアゴニスト(例えば、ORL1アゴニスト)が同定されると、1以上の以下の任意の工程が行われ得る:
(A)推定アゴニスト分子またはアゴニストが、非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)および必要に応じてトランスロケーションドメインに結合して、本発明の結合体を形成し得ることを確認する工程;および/または
(B)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、レセプターがレセプター媒介エンドサイトーシスを受けやすい、痛みを感じる標的細胞上のレセプターに結合することを確認する工程;および/または
(C)該推定アゴニスト分子またはアゴニストが、痛みを感じる標的細胞のサイトゾルへの非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)を送達し得ることを確認する工程。
【0063】
上記工程(A)〜(C)は、当業者に容易に利用可能な通常の試験によって確認され得る。
【0064】
例えば、工程(A)は、従来の結合試薬および/またはリンカー分子を用いる単純な化学結合実験により行われ得、次いで天然のポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、予想分子量を有する本発明の結合体が形成されることを確認する。結合体構成部分は、代表的には、共有結合によって(必要に応じてリンカー分子を介して)一緒に連結される。
【0065】
例えば、工程(B)は、リガンドの結合の評価のためのある範囲の方法のいずれか1つによって行われ得る。標準テキスト、例えば、このようなアプローチを詳細に記載する「Receptor-Ligand Interactions. A Practical Approach. E. C. Hulme編, IRL Press, 1992」が利用可能である。簡単に言えば、アゴニストまたは推定アゴニスト分子は、(例えば、125-ヨウ素で)標識され、そして過剰の非標識アゴニストの存在下でインビトロにて細胞調製物に適用される。非標識材料の目的は、あらゆる非特異的結合部位を飽和させることである。アゴニストを、細胞調製物とともに十分な時間インキュベートして平衡を達成し、そして細胞に結合した標識の量を、例えば、シンチレーションまたはガンマ計数によって細胞に結合した放射活性を測定することにより評価する。
【0066】
さらなる例として、アゴニスト(または推定アゴニスト)の金標識化、次いで電子顕微鏡を用いて標識されたアゴニストの細胞輸送の進行をモニターすることが含まれる[Rabinowitz S. (1992); J. Cell. Biol. 116(1): 95-112頁に記載の基本的方法;およびvan Deurs (1986); J. Cell. Biol. 102: 37-47頁に記載の基本的方法を参照のこと]。
【0067】
例えば、工程(C)は、工程(A)で調製した結合体を適切な標的細胞と接触させ、そしてこの基質の切断を評価することによって行われ得る。これは、SNAREタンパク質の抽出、次いでSDS−PAGE分離した試料のウェスタンブロッティングによって行われる。基質の切断は、プロテアーゼの標的細胞への送達を示す。この点で、切断は、基質の消失および/または切断産物の出現によってモニターされ得る。切断された基質産物に選択的に結合する特に有用な抗体が、WO95/33850に記載されている。
【0068】
本発明の結合体の調製を、ここで説明する。
【0069】
神経毒素分子のHC部がHNとして公知のH鎖の他の部分から除去され得、そのため、HNフラグメントが神経毒素のL鎖に結合したジスルフィドを保持してLHNとして公知のフラグメントを提供することが当該分野で公知である。したがって、本発明の1つの実施態様では、神経毒素のLHNフラグメントは、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0070】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のHCドメインは、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック、または改変されて、神経筋接合部で神経毒素をレセプターに結合する能力を低減または好ましくは無能力にされる。次いで、この改変された神経毒素は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0071】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のH鎖は、HCドメインが、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック、または改変されて、その本来の結合能を低減または好ましくは無能力にされており、この神経毒素のH鎖は、異なる神経毒素のL鎖、またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。次いで、このハイブリッドの改変された神経毒素は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0072】
本発明の他の実施態様では、神経毒素のHNドメインは、異なる神経毒素のL鎖、またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、N. gonorrhoeaeのIgAプロテアーゼ)と組み合わされる。次いで、このハイブリッドは、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、TMに共有結合される。
【0073】
本発明の他の実施態様では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、関連の標的細胞の細胞質中へのプロテアーゼの内在化もまた生じ得るTMに共有結合される。
【0074】
本発明の他の実施態様では、プロテアーゼ(例えば、神経毒素のL鎖構成部分)は、1以上のスペーサー領域を含み得る連結を用いて、サイトゾル中へのプロテアーゼフラグメントの輸送を行うためのトランスロケーションドメインに共有結合される。
【0075】
使用に際して、本発明による結合体のドメインは、互いに結合される。1つの実施態様では、2以上のドメインは、直接(例えば、共有結合によって)またはリンカー分子を介してのいずれかで一緒に結合され得る。
【0076】
種々の異なるリンカー/スペーサー分子は、本発明の融合タンパク質のいずれかに用いられ得る。このようなスペーサー分子の例としては、図31および32に示される分子が挙げられる。ここでは、特に、GS15、GS20、GS25、およびHx27について述べられる。図31および32を参照のこと。
【0077】
予想外に、本発明者らは、スペーサーの大きさが、(使用に際して)TM(好ましくは、そのC末端)とトランスロケーションドメイン(好ましくは、そのN末端)とが互いに40〜105オングストローム、好ましくは50〜100オングストローム、そしてより好ましくは50〜90オングストローム離れているように選択される場合、非細胞傷害性プロテアーゼ−TM結合体(例えば、CPNv/A)が、侵害受容感覚求心性神経に対する結合活性の改善を示し得ることを見出した。別の実施態様では、好ましいスペーサーは、11〜29アミノ酸残基、好ましくは15〜27アミノ酸残基、そしてより好ましくは20〜27アミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。適切なスペーサーは、Crasto, C.J.およびFeng, J.A. (2000) 5月; 13(5);309-312頁(http://www.fccc./edu/research/labs/feng/limker.html.もまた参照のこと)に従って、通常通りに同定および入手され得る。
【0078】
本発明における使用に適切な結合技術は、十分に文献に記載され、そして当業者には通常である。
【0079】
2つのタンパク質分子(AおよびB)を一緒に結合することに関する方法は単純であり、そして架橋剤(化学的カップリング剤としても公知)の使用により達成される。例えば、分子AおよびBを、別々に架橋剤と接触させ、分子AおよびBのそれぞれの特異的な表面基を化学的に改変し、それによって誘導体化分子A’およびB’を形成する。分子A’の改変表面基は、分子B’の改変表面基と共有結合し得る。したがって、2つのタンパク質分子A’およびB’を一緒に混合することによって、カップリング反応が完了する。
【0080】
化学的結合を、以下の実施態様を参照して説明する:ここで、P=非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分、T=トランスロケーション構成部分、およびTM=ターゲティング部分である。
【0081】
1つの実施態様では、単鎖P−Tを調製し、次いで、これはTMに結合される。他の実施態様では、単鎖TM−T(またはT−TM)を調製し、次いで、これはPに結合される。さらなる実施態様では、単鎖P−TM(またはTM−P)を調製し、次いで、これはTに結合される。他の特に好ましい結合体は、(PとTMとの間の任意のプロテアーゼ切断部位とともに)構造P−TM−Tを有する。
【0082】
TおよびP構成部分が単鎖ポリペプチドとして調製される場合、プロテアーゼ切断部位は、代表的には、該構成部分間に含まれる。いかなるプロテアーゼ切断部位も、この点で用いられ得る。
【0083】
代わりの実施態様では、3つの構成部分が、同時にまたは連続して一緒に結合され得る。したがって、結合は、1段階または2段階プロセスであり得、そして1以上の異なるカップリング剤が含まれ得る。
【0084】
化学的カップリング剤および架橋剤は、長年市販されている。
【0085】
本発明の実施例5には、2つのタンパク質分子(ノシセプチン、およびボツリヌス神経毒素のLHN)を化学的に結合するための1つのこのようなカップリング剤(すなわち、SPDP)の使用が詳細に記載されている。2つの分子を、別々にSPDPと接触させ、次いで一緒に混合して共有結合させる。
【0086】
実施例6に記載の結合体は、他のカップリング剤であるPDPH/EDACまたはトラウト試薬が、SPDPの代替のカップリング剤として用いられ得ることを確認する。
【0087】
SPDPおよびトラウト試薬は、タンパク質結合化学の技術分野では一般的かつ十分に記載されたカップリング剤であり、そして単に、本発明の結合体のターゲティング部分構成部分およびクロストリジウム神経毒素構成部分を一緒に共有結合するために用いられ得る周知のクラスの化合物の2つの例として、本明細書で示されている。他の適切な薬剤としては、SMPB、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、およびLC−SPDPが挙げられる。
【0088】
より詳細には、周知のカップリング剤の市販のメンバーは、本発明の結合体を生成する目的に使用され得る。このような薬剤の詳細は、以下の刊行物に見られ得る:
Hermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press;
Wong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Press;
Thorpeら (1987), Cancer Res, 1987, 47, 5924-31。この文献は、SMBT(S-4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチルベンジルチオ硫酸ナトリウム)およびSMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン)の使用を記載する;および
Peetersら (1989), J Immunol Methods. 1989, 120, 133-43。この文献は、4つのカップリング試薬:MHS(スクシンイミジル6-(N-マレイミド)-n-ヘキサノエート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、MBS(スクシンイミジルm-マレイミドベンゾエート)、およびSPDPの使用を記載する。
【0089】
本発明による結合体はまた、実施例9〜12に詳述するように、組換えにより調製され得る。
【0090】
1つの実施態様では、組換え結合体の調製は、1つの遺伝子構築物中での選択したTM、選択した非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分、およびトランスロケーション構成部分のコード配列の(任意の順での)配置を含む。これらのコード配列は、フレームを合わせて配置され得、そのためそれに続く転写および翻訳が、両方のコード配列を通して連続的であり融合タンパク質を生じる。すべての構築物は、N末端メチオニンをコードする5’ATGコドンおよびC末端翻訳停止コドンを有する。
【0091】
したがって、組換え調製方法により、単鎖ポリペプチドが生成される。このポリペプチドを活性化するために、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分との間に、プロテアーゼ切断部位が存在する。この部位の切断は、二本鎖ポリペプチドを生成し、この二本鎖ポリペプチドでは、プロテアーゼドメインおよびトランスロケーションドメインが共有結合、好ましくはジスルフィド結合によって一緒に連結される。この点で、いかなるプロテアーゼ切断部位も用いられ得る。
【0092】
本発明の単ポリペプチド局面において、TMは、好ましくは、融合タンパク質に対してN末端側またはC末端側のいずれかに位置する。言い換えれば、TMが単ポリペプチド融合タンパク質のP構成部分とT構成部分との間に位置しないことが好ましい。特に好ましい実施態様では、TMは、融合タンパク質に対してN末端側に位置する。
【0093】
1つの実施態様では、クロストリジウム神経毒素のL鎖またはエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る他のプロテアーゼ(例えば、IgAプロテアーゼ)またはそのフラグメント/改変体は、TMとの融合タンパク質として組換え発現され得る。このTMはまた、分泌の原因となる関連の標的細胞の細胞質へのL鎖構成部分の内在化をもたらし得る。あるいは、融合タンパク質は、トランスロケーションドメインをさらに含み得る。発現した融合タンパク質は、1以上のスペーサー領域を含み得る。
【0094】
一例として、以下の情報は、本発明の薬剤を組換えにより生成するために必要とされる:
(I)選択したTMに関するDNA配列データ;
(II)プロテアーゼ構成部分に関するDNA配列データ;
(III)トランスロケーションドメインに関するDNA配列データ;および
(IV)(I)、(II)および(III)を含む構築物の構築および発現を可能にするためのプロトコル。
【0095】
上記の基本情報(I)〜(IV)のすべては容易に利用可能であるか、または従来の方法によって容易に決定可能である。例えば、WO98/07864およびWO99/17806の両方とも、本出願での使用に適切な組換え技術を例示する。
【0096】
さらに、本発明の構築物の構築および発現の方法は、以下の参照文献などからの情報を用い得る:
Lorberboum-Galski, H., FitzGerald, D., Chaudhary, V., Adhya, S., Pastan, I. (1988), Cytotoxic activity of an interleukin 2-Pseudomonas exotoxin chimeric protein produced in Escherichia coli. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85(6):1922-6;
Murphy, J.R. (1988), Diphtheria-related peptide hormone gene fusions: a molecular genetic approach to chimeric toxin development. Cancer Treat. Res.; 37:123-40;
Williams, D.P., Parker, K., Bacha, P., Bishai, W., Borowski, M., Genbauffe, F., Strom, T.B., Murphy, J.R. (1987), Diphtheria toxin receptor binding domain substitution with interleukin-2: genetic construction and properties of a diphtheria toxin-related interleukin-2 fusion protein. Protein Eng;1(6):493-8;
Arora, N., Williamson, L.C., Leppla, S.H., Halpern, J.L. (1994), Cytotoxic effects of a chimeric protein consisting of tetanus toxin light chain and anthrax toxin lethal factor in non-neuronal cells J. Biol. Chem., 269(42):26165-71;
Brinkmann, U., Reiter, Y., Jung, S.H., Lee, B., Pastan, I. (1993), A recombinant immunotoxin containing a disulphide-stabilized Fv fragment. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(16):7538-42;および
O'Hare, M., Brown, A.N., Hussain, K., Gebhardt, A., Watson, G., Roberts, L.M., Vitetta, E.S., Thorpe, P.E., Lord, J.M. (1990), Cytotoxicity of a recombinant ricin-A-chain fusion protein containing a proteolytically-cleavable spacer sequence. FEBS Lett 10月29日;273(1-2):200-4。
【0097】
L鎖およびLHN鎖に関する適切なクロストリジウム神経毒素配列情報は、例えば、Kurazono, H. (1992) J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 14721-14729頁;およびPopoff, M.R.およびMarvaud, J.-C. (1999) The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins, 第2版(Alouf, J.E.およびFreer, J.H.編), Academic Press, 174-201頁から得られ得る。
【0098】
上記刊行物のすべては、参照文献として本明細書中に援用される。
【0099】
同様に、適切なTM配列データは、当該技術分野で広く入手可能である、あるいは、任意の必要な配列データは、当業者に周知の技術によって得られ得る。
【0100】
例えば、TM構成部分をコードするDNAは、正確なコード領域についてcDNAライブラリーをスクリーニングし(例えば、公知の配列情報に基づく特定のオリゴヌクレオチドを用いてライブラリーをプローブすることにより)、TMのDNAを単離し、このDNAを確認の目的で配列決定し、次いで選択した宿主中での発現に適切な発現ベクター中に単離したDNAを配置することによって、供給源生物からクローニングされ得る。
【0101】
ライブラリーからの配列の単離の代替として、利用可能な配列情報を用いて、PCRにおける使用のための特異的プライマーを調製し得、それにより、次いでコード配列を供給源材料から直接増幅し、そしてプライマーの適切な使用により、発現ベクター中に直接クローニングし得る。
【0102】
コード配列の単離のための他の代替方法は、既存配列情報を使用し、そしてDNA合成技術を用いて、可能であれば変化を組み込んで、コピーを合成することである。例えば、DNA配列データは、既存タンパク質および/またはRNA配列情報から生成され得る。DNA合成技術を用いてこのようにすること(および上記の代替)により、コード配列のコドン偏位を選択した発現宿主に最適であるように改変できる。これは、融合タンパク質の優れた発現レベルを生じ得る。
【0103】
発現宿主に対するコドン偏位の最適化は、構築物のTM構成部分およびクロストリジウム構成部分をコードするDNA配列に適用され得る。コドン偏位の最適化は、自由に利用可能なDNA/タンパク質データベースソフトウエア(例えば、Genetics Computer Group, Inc.から入手可能なプログラム)にタンパク質配列を適用することによって可能である。
【0104】
本発明の結合体を調製すると、種々のドメインが特定された機能を保持することを確認することが通常のことになる。
【0105】
結合後のプロテアーゼ機能は、例えば、以下の通常の試験のいずれか1つを用いることにより試験され得る:
【0106】
SNAP−25(またはシナプトブレビン、またはシンタキシン)は、試験されるべき結合体がチャレンジされ、次いでSDS−PAGEペプチド分離技術によって分析され得る。SNAP−25(または神経分泌機構の他の構成部分)の切断された産物に対応する分子量を有するペプチドの(例えば、銀染色による)その後の検出により、機能的L鎖の存在を確認する。
【0107】
さらなる代替として、結合体は、抗体特異的結合によりSNAP−25(またはシナプトブレビン、またはシンタキシン)切断産物についてアッセイすることによって試験され得る(WO95/33850を参照のこと)。より詳細には、特異的抗体がSNAP−25の切断を検出するために用いられる。抗体は、切断されたSNAP−25を認識するが、非切断SNAP−25を認識しないので、抗体による切断された産物の同定は、L鎖タンパク質分解機能の存在を確認する。例示として、このような方法は、WO96/33273の実施例2および3に記載される。
【0108】
結合後のトランスロケーション構成部分の機能は、例えば、以下の通常の試験のいずれか1つを用いて試験され得る:
【0109】
適切な方法は、例えば、Shoneら (1987) Eur. J. Biochem. 167, 175-180頁;およびBlausteinら (1987) FEBS 226 (1), 115-120頁に記載される。
【0110】
Shoneらの方法は、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)および放射標識NADを搭載する人工リポソームを用いる。K+およびNADのリポソームからの放出は、チャンネル形成活性についての陽性の結果と相関し、したがってトランスロケーション活性と相関する。この点で、リポソームからのK+の放出は、電極を用いて測定され得、そしてNAD放出は、上清中の放射活性を測定することによって算定される(176頁の1欄の33行〜2欄の17行を参照のこと)。
【0111】
Blausteinらの方法は、平面リン脂質二層膜を用い、これは、チャンネル形成活性について試験するために使用される。より詳細には、膜のいずれかの側における塩溶液を、異なるpH(シス側でpH4.7〜5.5およびトランス側でpH7.4)に緩衝化する。試験されるべき「結合体」を、膜のシス側に添加し、そして電気計測を、膜を横切る電流の流れをモニターするために電圧固定条件下で行う(2.2章、116〜118頁を参照のこと)。活性なトランスロケーション機能の存在は、一定速度のチャンネルターンオン(すなわち、チャンネル形成についての陽性の結果)により確認される(3章、118頁を参照のこと)。
【0112】
結合後のターゲティング部分(TM)機能は、TMに固有のアゴニスト機能についてアッセイすることにより試験され得る。適切な方法としては、実施例1に記載の方法が挙げられる。
【0113】
本発明の結合体が侵害受容求心性細胞からのサブスタンスP放出を阻害する能力は、実施例15に記載の方法を用いて評価され得る。
【0114】
実施例15において、本発明の第1の局面によるノシセプチン−LHN/A結合体は、一次侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害する能力について評価される。表1からわかるように、結合体と侵害受容求心性神経細胞の培養物とのインキュベーションにより、サブスタンスPの放出が顕著に阻害される(細胞とLHN/A単独とのインキュベーションと比較した場合)。したがって、実験は、結合体がこれらの細胞からのサブスタンスP放出を阻害していることを確認する。
【0115】
本発明の使用に際して、痛みを感じる標的細胞が選択され、この細胞では、エキソサイトーシス融合のプロセスを低減または阻害することが所望され、エキソサイトーシスプロセスは、痛覚に関連する徴候の原因である。例えば、問題の標的細胞は、望ましくない表現型(例えば、望ましくない分泌、または望ましくない濃度の膜レセプター、トランスポーター、もしくは膜チャンネルの発現)を示し、これは、疼痛に関連する徴候の原因である。あるいは、エキソサイトーシス融合のプロセスが痛覚の原因である標的細胞が選択され得る。
【0116】
本発明の好適な実施態様では、標的細胞は、侵害受容感覚求心性細胞、好ましくは一次侵害受容求心性細胞である(例えば、Aδ−線維のようなA−線維またはC−線維)。したがって、本発明の結合体は、侵害受容感覚求心性神経細胞の離散した集団からの神経伝達物質または神経調節物質(例えば、グルタミン酸、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、および/または神経ペプチドY)の放出を阻害し得る。使用に際して、結合体は、末梢から中枢の疼痛線維への感覚求心性シグナル(例えば、神経伝達物質または神経調節物質)の伝達を低減または抑制し、したがって疼痛、特に慢性疼痛の治療のための治療分子としての適用を有する。
【0117】
TMが侵害受容感覚求心性神経に結合することを確認することは通常のことである。例えば、侵害受容感覚求心性神経の代表的な組織または細胞(例えば、DRG)が、過剰の非標識リガンドの存在下で標識(例えば、トリチウム化)リガンドに曝露される簡単な放射能置換実験が、用いられ得る。このような実験において、非特異的結合および特異的結合の相対的割合を求め、それにより、リガンドが侵害受容感覚求心性標的細胞に結合することの確認が可能になり得る。必要に応じて、アッセイは、1つ以上の結合アンタゴニストを含み得、そしてこのアッセイは、リガンド結合の喪失を観察する工程をさらに含み得る。このタイプの実験の例は、Hulme, E.C. (1990), Receptor-binding studies, 概要, 303〜311頁, Receptor biochemistry, A Practical Approach, E.C. Hulme編, Oxford University Pressに見出され得る。
【0118】
第2の局面によれば、本発明は、侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体を提供し、この結合体は、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列であって、該侵害受容感覚求心性細胞において発現可能であり、そして発現した場合に、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント提供する、DNA配列;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞へと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをコードする該DNA配列をトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む。
【0119】
好適な実施態様では、レセプターは、ORL1レセプターである。
【0120】
目的のタンパク質をコードするDNAは、Cottonら(Cotton, M., Wagner, E.およびBirnstiel, L. (1993) Receptor-mediated transport of DNA into eukaryotic cells. Methods in Enzymol. 217, 619-645)によって確認されるように、タンパク質−DNA結合体のレセプター媒介エンドサイトーシスにより真核細胞にトランスフェクトされ得る。ポリカチオン性リガンドを用いて適切なサイズにDNAを凝縮するためのいくつかの方法が存在する。これらとしては、ポリリジン、種々のカチオン性ペプチドおよびカチオン性リポソームが挙げられる。これらのうち、ポリリジンを、本研究で使用した。レセプター媒介トランスフェクション研究における成功した報告で使用されているからである(Cottonら, 1993)。
【0121】
非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、薬剤の一部として(例えば、コード領域の上流のプロテアーゼDNA配列の一部として)存在する作動可能に連結したプロモーターの制御下で発現され得る。あるいは、標的細胞におけるプロテアーゼ構成部分の発現は、標的細胞に存在するプロモーターに依存し得る。
【0122】
プロテアーゼ構成部分をコードするDNA配列は、標的細胞のDNA配列に組み込まれ得る。1以上の組み込み部位が、結合体の一部として(例えば、プロテアーゼDNA配列の一部として)提供され得る。
【0123】
本発明のこの第2の局面のTM、トランスロケーションドメイン、およびプロテアーゼ構成部分は、本発明の第1の局面について定義されたものと同様である。実施例13および14は、本発明の第2の局面による結合体の調製を記載する。
【0124】
第3の局面によれば、本発明は、本発明の第1および/または第2の局面による結合体を含む薬学的組成物を提供する。
【0125】
薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、および/または適切な希釈剤および/または賦形剤をさらに含み得るが、組成物の的確な形態は、投与様式に合わせられ得る。投与は、好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトに対してである。
【0126】
組成物の構成成分は、例えば、吸入用にエアロゾルまたは噴霧液の形態で、あるいは非経口投与、関節内投与、または頭蓋内投与用に滅菌溶液の形態で用いられ得る。
【0127】
組成物はまた、ポンプシステムの使用を含む、静脈内注射により投与され得る。脊髄注射(例えば、硬膜外注射もしくは髄腔内注射)または留置ポンプもまた使用され得る。
【0128】
本発明の構成部分の投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲である。必要投薬量範囲は、構成部分の正確な性質、投与経路、処方の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度、もしくは重篤度、禁忌(ある場合)、および主治医の判断に依存することが理解される。
【0129】
適切な一日投薬量(各構成部分について)は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲内である。単位投薬量は、1μg未満から30mgまでの間で変動し得るが、代表的には一投与あたり0.01〜1mgの範囲内であり、これは、毎日、または好ましくは頻度を下げて(例えば、毎週または半年毎に)投与され得る。
【0130】
特に好ましい投薬レジメは、1×の用量として2.5ngの融合タンパク質(例えば、CPNv/A)に基づく。これに関して、好ましい投薬量は、1×〜100×(すなわち、2.5〜250ng)の範囲内である。この投薬量範囲は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)で用いられるよりも有意に低い(すなわち、少なくとも10倍、代表的には100倍低い)。さらに、上記差異は、モル基準で同じ比較がなされる場合に有意に拡大される。これは、本発明の融合タンパク質が、従来の「小さな」分子治療剤よりも相当に大きなMwを有するからである。
【0131】
しかしながら、必要投薬量に広範な変動があることは、構成部分の正確な性質および種々の投与経路の異なる効率に依存して予想されることである。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高い投薬量が必要であることが予想される。
【0132】
これらの投薬量レベルの変動は、当該分野で周知であるように、最適化のために標準的な経験的作業を用いて調整され得る。
【0133】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用前に適切なビヒクル中に溶解もしくは懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0134】
液状単位投薬剤形は、代表的には、発熱性物質除去滅菌ビヒクルを利用して調製される。
【0135】
活性成分は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、そのビヒクル中に溶解または懸濁され得る。
【0136】
溶液は、非経口投与の全ての剤形に使用され得、特に静脈内注射に使用される。溶液を調製する際、構成成分はビヒクル中に溶解され得、溶液は、必要に応じて塩化ナトリウムの添加により等張にされる。そして無菌技術を用いて滅菌フィルターを通して濾過することにより滅菌され、次いで適切な滅菌バイアルまたはアンプル中に充填し、密封され得る。あるいは、溶液安定性が十分である場合、その密封容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0137】
好都合には、添加剤(例えば、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤もしくは殺菌剤、懸濁化剤もしくは乳化剤、および/または局所麻酔剤)がビヒクル中に溶解され得る。
【0138】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌区域で無菌技術を用いて、予め滅菌しておいた薬物および他の成分を滅菌容器中に充填することにより調製され得る。
【0139】
あるいは、組成物の構成成分は、水性ビヒクル中に溶解され得、この溶液は、濾過により滅菌され、そして滅菌区域で無菌技術を用いて適切な容器中に分配される。製品は、次いで凍結乾燥され、そして容器は、無菌下で密封される。
【0140】
筋肉内注射、皮下注射、または皮内注射に適切な非経口投与用懸濁液は、滅菌構成成分を溶解する代わりに滅菌ビヒクル中に懸濁しそして滅菌が濾過によって達成できないことを除いて、実質的に同様にして調製される。構成成分は、滅菌状態で単離され得るか、あるいは単離後に(例えば、ガンマ照射によって)滅菌され得る。
【0141】
好都合には、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、構成成分の均一な分布を促進するために、組成物中に含まれる。
【0142】
気道を介する投与に適した組成物としては、エアロゾル、噴霧液、または吸入用微細粉末が挙げられる。後者の場合、粒径は、50ミクロン未満、特に10ミクロン未満が好ましい。このような組成物は、従来の様式で作製され、そして従来の投与デバイスと併用して用いられ得る。
【0143】
本発明に記載の組成物は、エキソサイトーシス(例えば、分泌、または細胞の原形質膜へのレセプター、トランスポーター、および膜チャンネルのようなタンパク質の送達)に関連する症状の治療のために、直接または薬学的に受容可能な塩としてのいずれかで、インビボで使用され得る。
【0144】
第4の局面によれば、本発明は、本発明の第1または第2の局面による結合体をコードするDNA構築物を提供する。
【0145】
宿主細胞において構築物を発現することによって、本発明の結合体が調製され得る。
【0146】
第5の局面によれば、本発明は、本発明の第1〜第4の局面による結合体、組成物、または構築物、あるいはそれらの任意の組み合わせの、患者への投与による疼痛の治療方法を提供する。
【0147】
好適な実施態様では、本発明は、慢性疼痛の治療方法を提供する。
【0148】
第6の局面によれば、本発明は、疼痛、好ましくは慢性疼痛の治療のための医薬品の製造のための、本発明の第1〜第4の局面による結合体、組成物、または構築物の使用を提供する。
【0149】
定義の節
エキソサイトーシス融合は、細胞内分子が、痛みを感じる標的細胞のサイトゾルからその原形質(すなわち、細胞)膜へ輸送されるプロセスである。その後、細胞内分子は、原形質膜の外表面上に提示されるようになり得るか、または細胞外環境中に分泌され得る。
【0150】
健常個体では、エキソサイトーシス融合の速度は注意深く調節され、そして痛みを感じる細胞のサイトゾルと原形質膜との間での分子の輸送を制御する。例えば、エキソサイトーシス回路の調節は、細胞の表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャンネルの密度を制御し、および/または細胞のサイトゾルからの細胞内構成成分(例えば、神経伝達物質)の分泌速度を制御する。
【0151】
しかし、非健常個体では、エキソサイトーシス融合の調節は改変され得る。例えば、エキソサイトーシス融合は、影響を受けた痛みを感じる細胞を過剰分泌の状態に入らせ得る。あるいは、エキソサイトーシス融合により、痛みを感じる細胞の表面に存在するレセプター、トランスポーター、または膜チャンネルを増加された濃度で提示し得、これは、細胞を望ましくない外部刺激に曝露し得る。したがって、エキソサイトーシス融合のプロセスは、疼痛の進行および/または重篤度に寄与し得、したがって、治療的介入のための標的を提供する。
【0152】
そうでなければ、細胞のエキソサイトーシス融合の正常速度が、易感染性患者における疼痛の進行および重篤度に寄与し得ることもまた理解されるべきである。したがって、本発明によりエキソサイトーシス融合をターゲティングすることによって、このような患者における治療もまた提供し得る。
【0153】
ターゲティング部分(TM)は、結合体と痛みを感じる標的細胞の表面との間に物理的会合を引き起こすように、レセプター(例えば、ORL1レセプター)と機能的に相互作用する結合体と会合する任意の化学的構造を意味する。用語「TM」は、標的細胞上のレセプターに結合し得る任意の分子(すなわち、天然に存在する分子、またはそれらの化学的/物理的に改変された改変体)を含み、レセプターは、内在化(例えば、エンドソーム形成)(これは、レセプター媒介エンドサイトーシスとも呼ばれる)を行い得る。TMは、エンドソーム膜トランスロケーションドメインを保有し得、この場合、本発明の薬剤に、TM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが別々に存在する必要はない。
【0154】
用語「フラグメント」とは、目的のTMの少なくとも35、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも15、および最も好ましくは少なくとも10アミノ酸残基を有するペプチドを意味する。1つの実施態様では、フラグメントの最初のアミノ酸残基は、フラグメントが由来するTMのN末端アミノ酸残基である。
【0155】
「改変体」の例は、1以上のアミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換した結合を含むTMのペプチドまたはペプチドフラグメントである。
【0156】
「誘導体」は、目的のTM、およびさらなるペプチド配列を含む。さらなるペプチド配列は、好ましくは、TMの塩基折り畳みおよびこのような立体配座構造を妨害すべきでない。2以上のペプチド(またはフラグメント、または改変体)は、一緒に結合されて誘導体を形成し得る。あるいは、ペプチド(またはフラグメント、または改変体)は、関連のない分子(例えば、第2の非関連ペプチド)に結合され得る。誘導体は、化学的に合成され得るが、代表的には組換え核酸方法によって調製される。脂質、および/または多糖、および/またはポリケチド構成部分のような追加の構成部分が含まれ得る。
【0157】
用語「非細胞傷害性」は、問題のプロテアーゼ分子が、それがリターゲティングされた痛みを感じる標的細胞を殺傷しないことを意味する。
【0158】
本発明の「プロテアーゼ切断部位」は、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTM構成部分との間の位置で結合体の切断(好ましくは、制御された切断)を可能にする。1つの実施態様では、結合体は、1より多くのタンパク質分解切断部位を含み得る。しかし、2以上のこのような部位が存在する場合、それらは、別のものであり、それにより、単一のプロテアーゼの存在下で複数の切断事象が生じることが実質的に防止される。別の実施態様では、結合体は、単一のプロテアーゼ切断部位を有することが好ましい。プロテアーゼ切断配列は、従来の手段(例えば、部位特異的変異誘発)によってDNAレベルで導入(および/または任意の固有切断配列が除去)され得る。切断配列の存在を確認するためのスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウエア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとに行われ得る。
【0159】
任意のプロテアーゼ切断部位が用いられ得るが、以下が好ましい:
エンテロキナーゼ (DDDDK↓)
第Xa因子 (IEGR↓/IDGR↓)
TEV(タバコエッチウイルス) (ENLYFQ↓G)
トロンビン (LVPR↓GS)
PreScission (LEVLFQ↓GP)。
【0160】
用語「プロテアーゼ切断部位」には、インテイン(これは自己切断性配列である)も包含される。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変更することによって、制御可能である。
【0161】
本発明を、以下の実施例および図面を参照して説明するが、これらに限定することを意図しない。
【0162】
図面を、より詳細に説明する。
【0163】
図1:recLHN/B融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのrecLHN/Bの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図1において、recLHN/Bは、実施例3に記載のように3カラムの方法を用いて細胞ペーストから精製する。タンパク質試料を、SDS−PAGEによって分離し、そしてシンプリーブルーセーフステインクマシー試薬での染色によって可視化する。浄化した抽出物内に含まれる粗可溶性MBP−LHN/B融合タンパク質(レーン2)を、Q−セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。レーン3は、150〜200mMの塩でカラムから溶出した組換えMBP−LHN/B融合物を示す。この試料を、第Xa因子プロテアーゼで処理してMBPアフィニティータグを除去し(レーン4)、そして切断した混合物をより低い塩濃度に希釈して、Q−セファロースFFアニオン交換カラムに供する。120〜170mMの塩で溶出した材料は、LHN/Bリッチであった(レーン5)。レーン6および8のタンパク質は、それぞれ非還元および還元条件下で、エンテロキナーゼでの処理およびベンズアミジンセファロースを用いる最終精製後に収穫したLHN/Bを示す。レーン1および7は、分子量マーカー[Mark 12(Invitrogen)]を示す。
【0164】
図2:LHN/C融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのLHN/Cの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図2において、recLHN/Cは、実施例4に記載の2段階方法を用いて大腸菌細胞ペーストから精製する。タンパク質試料を、SDS−PAGEによって分離し、そしてクマシーブルーでの染色によって可視化する。浄化した粗細胞溶解物(レーン2)を、Q−セファロースFFアニオン交換樹脂に供する。融合タンパク質であるMBP−LHN/Cを、0.1MのNaClで溶出する(レーン3)。溶出した材料を、第Xa因子プロテアーゼ(New England Biolabs)とともに22℃にて16時間インキュベートして、融合タグMBPを切断しそしてリンカー部位でrecLHN/Cに切り目を入れる。目的のタンパク質を、切断した融合産物(レーン4)からQ−セファロースFFを用いてさらに精製する。レーン5および7は、それぞれ非還元条件および10mMのDTTでの還元条件下で精製したrecLHN/Cを示し、第Xa因子で切り目を入れた後にLCドメインとHNドメインとの間のリンカー領域でのジスルフィド結合を示す。レーン1および6は、分子量マーカー、Mark 12(Invitrogen)を示す(KDaで示す)。
【0165】
図3:N[1−17]−LHN/A融合タンパク質の発現および精製
大腸菌からのN[1−17]−LHN/Aの発現および精製のSDS−PAGE分析である。図3において、N[1−17]−LHN/Aは、実施例9に概説する方法を用いて大腸菌BL21細胞ペーストから精製する。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0166】
図4:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0167】
図5:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0168】
図6:LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として用いた。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0169】
図7:LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0170】
図8:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物が、ORL1レセプターとの相互作用においてノシセプチン−LC/A−HN/A融合物よりもはるかに優れていることが明らかである。
【0171】
図9:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性
精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロエンドペプチダーゼ活性を、本質的にChaddockら 2002, Prot. Express Purif. 25, 219-228に記載のように決定した。簡単に言えば、ELISAプレートに固定したSNAP−25ペプチドを、種々の濃度の融合タンパク質に37℃にて1時間曝露した。一連の洗浄後、切断されたSNAP−25ペプチドの量を、特異的抗血清との反応性によって定量した。
【0172】
図10:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製
実施例26に概説する方法を用いて、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質を大腸菌BL21細胞から精製した。簡単に言えば、細胞破壊後に得た可溶性産物を、ニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS−PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物をそれぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0173】
図11:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHA)が、ORL1レセプターとの相互作用においてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHA)よりも優れていることが明らかである。
【0174】
図12:可変スペーサー長産物を有する発現/精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー
実施例26に概説する方法を用いて、GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体を大腸菌細胞ペーストから精製する。LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/A、およびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの精製からの試料を、SDS−PAGEに供してクマシーブルーでの染色によって評価した。電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。上のパネル:M=分子量マーカー標線;S=大腸菌タンパク質全可溶性画分;FT=Ni2+荷電セファロースカラムに結合しなかったタンパク質;FUSION=イミダゾールの添加により溶出した融合タンパク質。下のパネル:レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0175】
図13:CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
簡単に言えば、背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定し、そして融合物濃度に対してプロットした(破線)。また、物質を回収して、特異的EIAキットを用いてサブスタンスP含量を分析した。サブスタンスP放出の阻害を実線で示す。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、6.30±2.48nMであると概算される。
【0176】
図14:CPN−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。ボツリヌス神経毒素(BoNT/A)をコントロールとして用いた。この最初の曝露後、細胞外物質を洗浄により除去し、そして細胞を37℃にて種々の時間インキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定し、そして点線で示した。また、物質を回収して、特異的EIAキットを用いてサブスタンスP含量を分析した。サブスタンスPの放出の阻害を実線で示す。
【0177】
図15:CPNv−AによるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、1.38±0.36nMであると概算される。
【0178】
図16:CPNv−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。CPN−Aをコントロールとして用いた。この最初の曝露後、細胞外物質を洗浄により除去し、そして細胞を37℃にて種々の時間インキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。
【0179】
図17:[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を1nM[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少を、シンチレーション計数により評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効率と比較してプロットした。LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHnAと表示)が、ORL1レセプターとの相互作用においてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHnAと表示)よりも優れていることが明らかである。
【0180】
図18:発現/精製したCPNv(Ek)−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。電気泳動プロフィールは、CPNv(Ek)−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(5μl);レーン5=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(10μl);レーン6=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物(20μl);レーン7=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン8=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン9=エンテロキナーゼでの活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0181】
図19:CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv(Ek)−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。実施例26で調製したCPNv−Aを比較の目的で用いた。CPNv(Ek)−A(En活性化と表示)およびCPNv−A(Xa活性化と表示)によるSNAP−25の切断割合を示す。
【0182】
図20:発現/精製したCPNv−C産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。電気泳動プロフィールは、CPNv−Cの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終の捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+荷電セファロースでの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT;レーン8=分子量マーカー標線。
【0183】
図21:CPNv−Cによるシンタキシンの切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Cに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗シンタキシンでプローブしてシンタキシン切断の評価を容易にした。切断されたシンタキシンの割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大シンタキシン切断に達するのに必要な融合物濃度は、3.13±1.96nMであると概算される。
【0184】
図22:急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−Aの効力
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPN/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。
【0185】
図23:ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−Aの効力
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして血中のグルコースおよび脂質を毎週測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたるVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2日の連続した試験日(1週間空ける)におけるPWTがスケールの上で6gを下回って測定する場合に確立されるといわれる。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注射し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、PWT試験開始の2時間前に毎日注射する。
【0186】
図24:急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−Aの効力
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。これらのデータを、正規化した足逃避率差として表す。ここでは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0187】
図25:発現/精製したLC/A−CPLE−HN/A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPLE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT。
【0188】
図26:発現/精製したLC/A−CPBE−HN/A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン2=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl);レーン10=分子量マーカー標線。
【0189】
図27:発現/精製したCPOP−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOP−Aの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの第2の捕捉後の精製物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0190】
図28:発現/精製したCPOPv−A産物
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOPv−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースでの最初の捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+荷電セファロースでの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製した最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT(20μl)。
【0191】
図29:DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPOPv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。
【0192】
図30:発現/精製したCPNv−A−FXa−HT(除去可能hisタグ)
タンパク質をSDS−PAGEに供して、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−A−FXa−HTの予測分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製した最終物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製した最終物+DTT。
【0193】
図31:リガンド競合アッセイによって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
可変スペーサー長のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力に比較してプロットした。上のパネルは、GS0、GS20、GS30およびHx27のスペーサーの置換特性を示しているが、下のパネルは、GS10、GS15、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質により生じた置換を示している。ORL1レセプターからノシセプチンを置き換えるのに、GS0およびGS30スペーサーは無効であり、そしてGS10は有効性に乏しいと結論される。
【0194】
図32:インビトロSNAP−25切断によって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度の(可変スペーサー長の)CPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロットし、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合を、デンシトメトリー分析によって算定した。GS10スペーサーによる融合タンパク質の乏しい効果の結合特性(図28を参照のこと)は、細胞内SNAP−25の切断を生じるのに必要とされる融合物の濃度がより高いことに反映されている。GS0およびGS30スペーサーによる融合タンパク質は、全く無効であった(データは示さず)。GS15、20、および25スペーサーによる融合タンパク質は、同様に有効であった。
【0195】
(配列番号)
配列番号1 N[1−17]のDNA配列
配列番号2 N[1−17]のタンパク質配列
配列番号3 N[1−11]のDNA配列
配列番号4 N[1−11]のタンパク質配列
配列番号5 N[[Y10]1−11]のDNA配列
配列番号6 N[[Y10]1−11]のタンパク質配列
配列番号7 N[[Y11]1−11]のDNA配列
配列番号8 N[[Y11]1−11]のタンパク質配列
配列番号9 N[[Y14]1−17]のDNA配列
配列番号10 N[[Y14]1−17]のタンパク質配列
配列番号11 N[1−13]のDNA配列
配列番号12 N[1−13]のタンパク質配列
配列番号13 Nv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のDNA配列
配列番号14 Nv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のタンパク質配列
配列番号15 N[1−17]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号16 N[1−17]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号17 N[[Y11]1−11]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号18 N[[Y11]1−11]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号19 N[1−13]−LHN/A融合タンパク質のDNA配列
配列番号20 N[1−13]−LHN/A融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号21 LHN/A−N[1−17]融合タンパク質のDNA配列
配列番号22 LHN/A−N[1−17]融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号23 LHN/C−N[1−11]融合タンパク質のDNA配列
配列番号24 LHN/C−N[1−11]融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号25 N[[Y14]1−17]−LHN/C融合タンパク質のDNA配列
配列番号26 N[[Y14]1−17]−LHN/C融合タンパク質のタンパク質配列
配列番号27 LC/AのDNA配列
配列番号28 HN/AのDNA配列
配列番号29 LC/BのDNA配列
配列番号30 HN/BのDNA配列
配列番号31 LC/CのDNA配列
配列番号32 HN/CのDNA配列
配列番号33 CPN−AリンカーのDNA配列
配列番号34 AリンカーのDNA配列
配列番号35 N末端側提示ノシセプチン挿入片のDNA配列
配列番号36 CPN−CリンカーのDNA配列
配列番号37 CPBE−AリンカーのDNA配列
配列番号38 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号39 LC/A−CPN−HN/A融合物のDNA配列
配列番号40 LC/A−CPN−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号41 N−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号42 N−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号43 LC/C−CPN−HN/C融合物のDNA配列
配列番号44 LC/C−CPN−HN/C融合物のタンパク質配列
配列番号45 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のDNA配列
配列番号46 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のタンパク質配列
配列番号47 LC/A−CPME−HN/A融合物のDNA配列
配列番号48 LC/A−CPME−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号49 LC/A−CPBE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号50 LC/A−CPBE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号51 LC/A−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号52 LC/A−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号53 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号54 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号55 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号56 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号57 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号58 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号59 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号60 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号61 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号62 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号63 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号64 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号65 CPN−A GS10リンカーのDNA配列
配列番号66 CPN−A GS15リンカーのDNA配列
配列番号67 CPN−A GS25リンカーのDNA配列
配列番号68 CPN−A GS30リンカーのDNA配列
配列番号69 CPN−A HX27リンカーのDNA配列
配列番号70 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号71 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号72 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号73 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号74 CPNvar−Aエンテロキナーゼ活性化リンカーのDNA配列
配列番号75 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号76 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号77 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号78 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のDNA配列
配列番号79 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のタンパク質配列
配列番号80 LC/A−CPLE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号81 LC/A−CPLE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号82 LC/A−CPOP−HN/A融合物のDNA配列
配列番号83 LC/A−CPOP−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号84 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号85 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号86 IgAプロテアーゼのDNA配列
配列番号87 IgA−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号88 IgA−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号89 FXa−HTのDNA配列
配列番号90 CPNv−A−FXa−HTのDNA配列
配列番号91 CPNv−A−FXa−HT融合物のタンパク質配列
配列番号92 DTトランスロケーションドメインのDNA配列
配列番号93 CPLE−DT−AのDNA配列
配列番号94 CPLE−DT−A融合物のタンパク質配列
配列番号95 TeNT LCのDNA配列
配列番号96 CPNv−TENT LCのDNA配列
配列番号97 CPNV−TeNT LC融合物のタンパク質配列
配列番号98 CPNvar−CリンカーのDNA配列
配列番号99 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のDNA配列
配列番号100 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のタンパク質配列
【実施例】
【0196】
実施例1:神経細胞培養物からのサブスタンスPの放出の測定によるTMアゴニスト活性の確認
(材料)
サブスタンスP EIAを、R&D Systems, UKから入手する。
【0197】
(方法)
eDRGの初代神経細胞培養物を、既述(Dugganら, 2002)のようにして樹立させる。この培養物からのサブスタンスP放出を、本質的には、既述(Dugganら, 2002)のようにして、EIAによって評価する。目的のTMを(処理前に少なくとも2週間樹立させた)神経細胞培養物に添加する;TMの代わりにビヒクルを添加することにより、コントロール培養を並行して行う。サブスタンスPの刺激された(100mMのKCl)放出および基礎の放出を、全細胞溶解物含量とともに、コントロール培養およびTM処理培養物の両方について得る。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical Company, USAまたはR&D Systems, UK)を製造者の指示書に従って用いて測定する。
【0198】
目的のTMの存在下での神経細胞により放出されたサブスタンスPの量を、100mMのKClの存在または不在下で得られる放出と比較する。基礎放出を上回る目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激によって、目的のTMが本明細書中で定義した「アゴニストリガンド」であることが確立される。所望の場合、目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激を、天然のORL−1レセプターリガンドであるノシセプチン(Tocris)を用いて作成した標準サブスタンスP放出曲線に比較し得る。
【0199】
実施例2:触媒活性LHN/Aの発現および精製
(材料)
合成DNAをSigma Genosysから入手。
制限酵素をNew England Biolabsから入手。
【0200】
(方法)
触媒活性LHN/Aの発現および精製を、本質的に、Suttonら, (2005), Prot. Express. Purif., 40, 31-41頁に記載のように行った。
【0201】
簡単に言えば、BoNT/Aの軽鎖と重鎖のN末端から423アミノ酸とをコードするDNAを、Sigma-Genosysにより合成して、大腸菌コドン偏位を有する合成LHN/A遺伝子を作成した。軽鎖とHNドメインとの間のリンカー領域を、スプライス重複伸長PCRにより第Xa因子切断部位を含むように操作した。長い変異誘発プライマーおよびより短い非変異誘発プライマーからなる以下のプライマー対を用いて、2つのPCR産物を生成した:
(5'-tccaaaactaaatctctgATAGAAGGTAGAaacaaagcgctgaacgac)と(5'-CTTGATGTACTCTGTGAACGTGCTC);および
(5'-gtcgttcagcgctttgttTCTACCTTCTATcagagatttagttttgga)と(5'-ATGGAGTTCGTTAACAAACAGTTC)。
【0202】
これらの2つの反応からの産物を、スプライス重複伸長PCR用のテンプレートとして用いた。さらなるPCR反応を行って、活性化recLHN/A遺伝子の両末端にBamHIおよびSalI部位のいずれかを付加し、そしてこれらの部位を用いてInvitrogenゲートウェイエントリーベクター中に挿入した。次いで、エントリーベクターを、LRクロナーゼ反応において、ゲートウェイ組換え部位適合pMAL c2xとともに用いて、pMAL c2x recLHN/Aを形成した。このpMAL c2x recLHN/Aを改変して、MBPのN末端に6’HISタグを組み込んだ。これは、pMALのNdeI部位にHISタグをコードするアニールしたオリゴヌクレオチドを挿入することにより行った。
【0203】
LHN/Aを発現する発現ベクターを、大腸菌HMS174またはAD494(DE3)(Novagen)に形質転換した。培養物を、ZnCl2(1μM)、アンピシリン(100μg/ml)、および0.2%(w/v)グルコースを添加したTerrificブロス複合培地中で増殖させた。すべての構築物の発現についてのパラメータは、8L発酵装置システムに移す前の振盪フラスコ培養において最初に決定した。開始培養物を、37℃、220rpmにて16時間増殖させ、そして1Lを接種に用いて、37℃、250rpmにて増殖を続けた。0.6のOD600nmで、温度を30分間25℃まで下げて、1mMのIPTGで誘導した。誘導を4時間続け、細胞を採取して−70℃で保存した。
【0204】
代表的には、16gの細胞ペーストを、160mlのPBSに懸濁し、そして超音波処理(MSE Soniprep 150)により溶解した。得られた溶解物を遠心分離により澄明にし、25mlのアミロースカラムに供し、PBS中10mMのマルトースで溶出させた。溶出液は約50%純粋な融合タンパク質を含み、そして第Xa因子で処理して(1ユニットの第Xa因子/100μg融合タンパク質;20時間;26℃)HISMBPを除去し、そしてLC−HN接合部を切断してタンパク質を活性化した。インキュベーション後、試料を濾過し(0.45mm)、そして水で2倍希釈して0.5×PBS緩衝液組成物を得た。切断し、濾過しそして希釈したrecLHN/Aを、QセファロースFFカラム(10ml)にかけ、そして80mMのNaClでHISMBPを含み、そして120mMのNaClで約75%純粋なrecLHN/Aを含む段階グラジエントで溶出した。MBPへのHisタグの付加により、LHN/AとMBPとの共溶出というこれまでの問題を解決した。HISMBPの完全な除去を確実にするための最終の精製工程として、Qセファロースカラムからの120mMのNaCl溶出物を、ニッケル荷電した5mlのHisTrapカラム(Amersham)に通した。HisTrapカラムからの流出物は、約95%純粋なrecLHN/Aを含んでいた(LHN/Aについての精製スキームの図については、Suttonら, (2005), Prot. Express. Purif., 40, 31-41頁の図を参照のこと)。
【0205】
実施例3:触媒活性な組換えLHN/Bの発現および精製
以下に記載の方法は、LHN/Bポリペプチドをコードする適切なプラスミドで形質転換した大腸菌から触媒活性なLHN/Bプロテアーゼを精製する。適切なLHN/Bポリペプチドの種々の配列が、PCT/GB97/02273、US6461617特許、および米国特許出願10/241596(参照文献として本明細書中に援用する)に記載されていることに留意されたい。
【0206】
(方法)
LHN/Bのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Bを作出する。この構築物では、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Bポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離され、そしてLCドメインおよびHNドメインは、エンテロキナーゼでの切断を受けやすいペプチドによって分離されている。発現クローンをpMAL-c2X-synLHN/Bと称する。
【0207】
pMAL-c2x-synLHN/Bを大腸菌HMS174に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中にて培養する。誘導前細菌増殖を、5.0のOD600nmに37℃にて維持し、この段階で、recMBP−LHN/Bの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして温度を30℃に下げることによって誘導する。30℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを−70℃で保存する。
【0208】
細胞ペーストを20mMのHepes(pH7.2)、125mMのNaCl、1μMのZnCl2中に再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を行う。得られた懸濁液を、精製前に遠心分離によって清澄化する。
【0209】
細胞破壊後、MBP−融合タンパク質を、20mMのHepes(pH7.2)、125mMのNaCl、1μMのZnCl2中アミロースアフィニティー樹脂上、または50mMのHepes(pH7.2)、1μMのZnCl2(塩添加なし)中Q−セファロースFFアニオン交換樹脂上のいずれかで捕捉する。10mMマルトースを加えた同じ緩衝液中のアミロース樹脂から、および150〜200mM塩中のQ−セファロースから、単一ピークを溶出する。MBP−LHN/B接合部の切断は、1U/50μg融合タンパク質で第Xa因子(NEB)との22℃にての18時間インキュベーション工程で完了する。少なくとも4mg/mlの基質(MBP−LHN/B)濃度が、効率的な切断を生じるのに望ましい。
【0210】
切断したタンパク質を、20mMのHepes、25mMのNaCl、1μMのZnCl2、pH7.2の緩衝液組成となるように20mMのHepesで希釈し、そしてQ−セファロースカラムに通してLHN/BからMBPを分離する。LHN/Bを、120〜170mM塩でQ−セファロースカラムから溶出する。次いで、軽鎖とHNドメインとの間のリンカーに、100μgのLHN/B当たり1Uのエンテロキナーゼと22℃にて16時間インキュベートすることによって切り目を入れる。最後に、エンテロキナーゼを、ベンズアミジンセファロースカラムと4℃にて30分間インキュベートすることにより樹脂に優先的に結合させて、切り目を入れたLHN/Bおよび他の夾雑タンパク質から分離する。精製したLHN/Bを必要になるまで−20℃で保存する。recLHN/Bの精製スキームの図については図1を参照のこと。
【0211】
実施例4:触媒活性な組換えLHN/Cの発現および精製
LHN/Cのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3’側にフレームを合わせて挿入し、pMAL-c2x-LHN/Cを作製する。この構築物では、発現されるMBPポリペプチドおよびLHN/Cポリペプチドは、第Xa因子切断部位によって分離されている。
【0212】
pMAL-c2x-LHN/CをE. coli AD494(DE3, IRL)に形質転換し、そして8L発酵装置システム中でTerrificブロス複合培地中にて培養する。誘導前細菌増殖を、8.0のOD600nmに30℃にて維持し、この段階で、recMBP-c2x-LHN/Cの発現を、IPTGを0.5mMまで添加し、そして培養温度を25℃に下げることによって誘導する。25℃にて4時間後、細菌を遠心分離によって回収し、そして得られたペーストを−70℃で保存する。
【0213】
細胞ペーストを50mMのHepes(pH 7.2)、1μMのZnCl2中に1:6(w/v)で再懸濁し、そしてAPV-Gaulin lab model 1000ホモジナイザーまたはMSE Soniprep 150ソニケーターを用いて細胞破壊を行う。得られた懸濁液を、精製前に遠心分離によって清澄化する。
【0214】
細胞破壊および清澄化後、MBP−融合タンパク質を、50mMのHepes(pH7.2)、1μMのZnCl2中、Q−セファロースファストフローアニオン交換樹脂で分離し、そして100mMのNaClを添加した同じ緩衝液で溶出する。第Xa因子との単回インキュベーション工程にて、MBP−LHN/C接合部およびHN−LCリンカーでの二点切断を実施する。この反応は、100μg融合タンパク質当たり1Uの第Xa因子(NEB)との22℃にて16時間のインキュベーション工程により完了する。切断したタンパク質を、20mMのHepes、25mMのNaCl、pH7.2の緩衝液組成となるように20mMのHepesで希釈し、そして第二のQ−セファロースカラムに通してLHN/CからMBPを分離する。活性化した(ジスルフィド結合が切断したリンカー)LHN/Cを、120〜170mM塩の塩濃度グラジエント(20mMのHepes、500mMのNaCl、1μMのZnCl2、pH7.2)によってQ−セファロースカラムから溶出する。LHN/Cの精製の図については図2を参照のこと。
【0215】
実施例5:ノシセプチンとLHN/Aとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0216】
(方法)
C末端Cysを介してノシセプチンペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0217】
次いで、このペプチドを、以下に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた(これまでの刊行物のWO99/17806およびWO96/33273、ならびにDugganら, (2002), J. Biol. Chem. 277, 24846-34852およびChaddockら, (2000), Infect Immun., 68, 2587-2593も参照のこと)。
【0218】
(スルフヒドリルに基づくカップリング反応)
簡単に言えば、約2つの反応脱離基を、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)との反応によって、LHN/Aに導入した(リン酸緩衝化生理食塩水中5mg/ml)。
【0219】
誘導体化した材料を、サイズ排除クロマトグラフィーにより過剰のSPDPから単離した。再構成したシステインタグ付けしたノシセプチンリガンドを、誘導体化したLHN/Aと4:1のモル比で混合し、そして穏やかに攪拌しながら室温にて1時間インキュベートして、還元可能なジスルフィド共有結合による化学結合体を生成した。非結合体化ペプチドを除去するための結合体混合物の最初の分画を、サイズ排除クロマトグラフィー(結合のスケールに依存してSuperose-12またはSuperdex G-200)により行った。
【0220】
実施例6:ノシセプチンとLHN/Bとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0221】
(方法)
凍結乾燥したノシセプチンを、水の添加によって溶解し、そしてMES緩衝液(0.1MのMES、0.1MのNaCl、pH5.0)中に透析した。この溶液(約0.3mg/mlの濃度)に、最終濃度1mg/mlまでPDPH(DMF中100mg/ml)を添加した。混合した後、固体のEDACを添加して、約0.2mg/mlの最終濃度にした。反応を、室温にて少なくとも30分間行った。次いで、過剰のPDPHを、MES緩衝液で予め平衡化したPD−10カラム(Pharmacia)上で脱塩することによって除去した。
【0222】
用いたノシセプチンの重量の半分に等価の量のLHN/Bを約1mg/mlの濃度でトリエタノールアミン緩衝液(0.02Mトリエタノールアミン/HCl、0.1M塩化ナトリウム、pH7.8)に溶解し、これを、2mMの最終濃度のTraut試薬(1Mトリエタノールアミン/HCl、pH8.0中の100mMストック溶液)と反応させた。1時間後、LHN/Bを、PD−10カラム(Pharmacia)を用いてPBSE(1mMのEDTAを含むリン酸緩衝化生理食塩水)中で脱塩した。カラム溶出物からのタンパク質ピークを、Microcon 50(Amicon)を用いて約2mg/mlの濃度まで濃縮した。
【0223】
誘導体化したノシセプチンを、最終濃縮工程に供して、開始容量の10%未満までの容量に減少させ、次いで誘導体化したLHN/Bと室温にて終夜混合した。反応産物を、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析した。
【0224】
上記反応から得られた結合体を、Bio-Gel P-100(BioRad)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより部分精製した。溶出プロフィールを、280nmでの光学密度の測定および画分のSDS−PAGE分析によって追跡した。これにより、遊離のノシセプチンおよび反応副生成物から結合体を分離できた。
【0225】
実施例7:ノシセプチン1−11とLHN/Bとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチン1−11ペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0226】
(方法)
C末端Cysを介してノシセプチン1−11ペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0227】
次いで、このペプチドを、実施例5に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた。
【0228】
実施例8:ノシセプチンN[[Y14]1−17]とLHN/Cとの化学結合体の生成
(材料)
C末端伸長したノシセプチンN[[Y14]1−17]ペプチドをSigma Genosysから入手。
結合用化学物質をPierceから入手。
【0229】
(方法)
C末端Cysを介してペプチドを結合するために、まず、最後のC末端アミノ酸としてCysを含むように、ペプチドを(市販で入手可能な、標準的手順により)合成した。
【0230】
次いで、このペプチドを、実施例5に記載のようなスルフヒドリルに基づくカップリング反応における第2成分として用いた。
【0231】
実施例9:ノシセプチン−LHN/Aの単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号15および配列番号16)
ノシセプチン−LHN/AのDNA配列を、LC/A、HN/A、およびノシセプチンのアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。ノシセプチン−LC/A−活性化ループ−HN/A配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/AのシステインとHN/Aのシステインとの間の活性化ループ(CVRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLC)を改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0232】
必要とされる発現ベクターへのクローニングを容易にするために適切な制限部位(例えば、BamHI/SalI)を、配列のそれぞれ5’末端および3’末端に組み込み、正しい読み取り枠を維持した。DNA配列を、逆翻訳中に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングした。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにした。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価した。
【0233】
次いで、ノシセプチン−LC/A−活性化ループ−HN/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列を商業的に合成し、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0234】
ノシセプチン−LHN/A融合物をコードするDNAを、pCR 4から単離し、そしてpMALベクターバックボーン中に移してタンパク質発現を容易にした。得られたpMAL NO-LHN/Aベクターを、コンピテント大腸菌BL21に形質転換し、そして正しい形質転換体を選択した。pMAL NO-LHN/Aの単一コロニーを、ZnCl2(1mM)、アンピシリン(100μg/ml)、0.2%(w/v)グルコースを追加したTerrificブロス複合培地中で増殖した。挿入片の発現を、IPTG(0.1mM)の添加によって誘導し、そして培養物を16℃にて16時間維持した。この発現期間の後、細菌を遠心分離によって単離し、そして細胞ペレットを、使用するまで−20℃にて保存した。
【0235】
10gの大腸菌BL21細胞ペーストを、25mlの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClを含むファルコン管中で解凍した。融解した細胞ペーストを、50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで80mlにし、そして氷上で22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにした。溶解した細胞を18,000rpmで4℃にて30分間遠心分離した。この上清を、0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供し、そして50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した。
【0236】
10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出した。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定した。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートした。切断混合物を0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供し、そして50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した。
【0237】
10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出した。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて保存した。
【0238】
図3は、N[1−17]−LHN/Aの発現および精製のSDS−PAGE分析を示す。
【0239】
実施例10:(ノシセプチン1−11)−LHN/Bの単ポリペプチド融合物の組換え生成
(ノシセプチン1−11)−LHN/BのDNA配列を、LC/B、HN/B、およびノシセプチン1−11のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。(ノシセプチン1−11)−LC/B−活性化ループ−HN/B配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/BのシステインとHN/Bのシステインとの間の活性化ループを改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0240】
次いで、組換え融合タンパク質を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0241】
実施例11:(ノシセプチンN[[Y14]1−17])−LHN/Cの単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号25および配列番号26)
ノシセプチンN[[Y14]1−17]のDNA配列を、LC/C、HN/C、およびノシセプチンN[[Y14]1−17]のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。(ノシセプチンN[[Y14]1−17])−LC/C−活性化ループ−HN/C配列を含む完全なORFを、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。LC/CのシステインとHN/Cのシステインとの間の活性化ループを改変して、第Xa因子プロテアーゼ認識部位を組み込んだ。
【0242】
次いで、組換え融合タンパク質を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0243】
実施例12:LHN/C−(ノシセプチン1−11)の単ポリペプチド融合物の組換え生成(配列番号23および配列番号24)
LHN/C−(ノシセプチン1−11)のDNA配列を、LC/C、HN/C、およびノシセプチン1−11のアミノ酸配列の逆翻訳により設計した。LC/C−活性化ループ−HN/C−フレキシブルスペーサー−(ノシセプチン1−11)を含む完全なORF(配列番号23)を、標準的なDNA配列操作ソフトウエア(EditSeq)内で組み立てた。
【0244】
次いで、組換え融合タンパク質(配列番号24)を、本質的に実施例9に記載のようにして生成した。
【0245】
実施例13:LC/CをコードするDNAの細胞への送達のための結合体の生成
ノシセプチン−HN−[LC/C]結合体の構築を以下に説明する。ここで、[LC/C]は、ボツリヌス神経毒素C型の軽鎖をコードするポリリジン凝縮DNAを示す。
【0246】
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から入手する。
他の試薬は、Sigma Ltd.から入手する。
【0247】
(方法)
CMV(前初期)プロモーターの制御下にLC/Cをコードする遺伝子を含むプラスミドを用いて、DNAの凝縮を、1ポリリジンに対して2DNAの比になるようにSPDP誘導体化ポリリジンを用いて行った。次いで、凝縮したDNA(0.4mg/ml)をHN−ノシセプチン(100μg/ml)と25℃にて16時間混合することによって結合体を調製した。SPDP誘導体化ポリリジンとHNドメイン上に存在する遊離のSH基とを結合させて、DNAとタンパク質との共有結合を容易にする。
【0248】
実施例14:LC/BをコードするDNAの細胞への送達のための結合体の生成
(ノシセプチン1−11)−HN−[LC/B]結合体の構築を以下に説明する。ここで、[LC/B]は、ボツリヌス神経毒素B型の軽鎖をコードするポリリジン凝縮DNAを示す。
【0249】
(材料)
SPDPは、Pierce Chemical Co.から入手する。
他の試薬は、Sigma Ltd.から入手する。
【0250】
(方法)
CMV(前初期)プロモーターの制御下にLC/Bをコードする遺伝子を含むプラスミドを用いて、DNAの凝縮を、1ポリリジンに対して2DNAの比になるようにSPDP誘導体化ポリリジンを用いて行った。次いで、凝縮したDNA(0.4mg/ml)をHN−(ノシセプチン1−11)(100μg/ml)と25℃にて16時間混合することによって結合体を調製した。SPDP誘導体化ポリリジンとHNドメイン上に存在する遊離のSH基とを結合させて、DNAとタンパク質との共有結合を容易にする。
【0251】
実施例15:サブスタンスP放出神経細胞におけるノシセプチン−LHN/Aの活性の評価
Dugganら, (2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)に記載の方法を用いて、ブスタンスP放出神経細胞におけるノシセプチン−LHN/Aの活性を評価した。
【0252】
ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質を、2週齢の背根神経節の神経細胞培養物に塗布し、そして37℃にて16時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、そして細胞がサブスタンスP(SP)の刺激による放出を受ける能力を評価した。
【0253】
ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質とインキュベートした神経細胞からのSPの放出を、(i)LHN/Aのみで処理した細胞および(ii)培地のみで処理した細胞と比較してアッセイした。これにより、eDRGからのサブスタンスPの阻害%を算定できた。ノシセプチン−LHN/A融合タンパク質がSP放出を阻害する能力(培地のみで処理した細胞に対して)を表1に記載した。データは、3つの測定の平均を示す。
【0254】
【表1】
【0255】
実施例16:フォルスコリン刺激cAMP生産の測定によるORL1レセプター活性化の確認
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験によって提供される。ここでは、TMがフォルスコリン刺激cAMP生産を阻害する能力を評価する。
【0256】
(材料)
[3H]アデニンおよび[14C]cAMPはGE Healthcareから入手する。
【0257】
(方法)
この試験は、本質的には、Meunierら[Isolation and structure of the endogenous agonist of opioid receptor-like ORL1 receptor. Nature 377: 532-535, 1995]によって既述のようにして、24ウェルプラスチックプレート上に播種した無傷のトランスフェクトCHO細胞において行う。
【0258】
細胞に、0.4mlの培養培地中の[3H]アデニン(1.0μCi)を添加する。細胞を37℃にて2時間保持して細胞内ATPプールにアデニンを取り込ませる。2時間後、細胞を、以下を含有するインキュベーション緩衝液で1回洗浄する:130mMのNaCl、4.8mMのKCl、1.2mMのKH2PO4、1.3mMのCaCl2、1.2mMのMgSO4、10mMのグルコース、1mg/mlのウシ血清アルブミン、および25mMのHEPES(pH7.4)。そしてこれを、目的のTMを含むまたは含まない、フォルスコリン(10μM)およびイソブチルメチルキサンチン(50μM)を含有する緩衝液と置き換える。10分後、培地を吸引して0.5mlの0.2M HClと置き換える。約1000cpmの[14C]cAMPを各ウェルに添加し、そしてこれを内部標準として使用する。次いで、ウェルの内容物を0.65g乾燥アルミナ粉末のカラムに移す。カラムを4mlの5mM HCl、0.5mlの0.1M酢酸アンモニウム、次いでさらに2mlの酢酸アンモニウムで溶出する。最終溶出物をシンチレーションバイアルに集めて14Cおよびトリチウムについて計数する。集めた量を[14C]cAMPの回収率に対して補正する。ORL1レセプターでアゴニストであるTMは、フォルスコリンに応じて生成されるcAMPのレベルの減少を引き起こす。
【0259】
実施例17:GTPγS結合機能アッセイを用いるORL1レセプター活性化の確認
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験、GTPγS結合機能アッセイによっても提供される。
【0260】
(材料)
[35S]GTPγSはGE Healthcareから入手する。
小麦胚凝集素コーティング(SPA)ビーズはGE Healthcareから入手する。
【0261】
(方法)
このアッセイは、本質的には、TraynorおよびNahorski[Modulation by μ-opioid agonists of guanosine-5-O-(3-[35S]thio)triphosphate binding to membranes from human neuroblastoma SH-SY5Y cells. Mol. Pharmacol. 47: 848-854, 1995]に記載されるようにして行う。
【0262】
細胞を、組織培養皿からかき取って20mMのHEPES、1mMのエチレンジアミン四酢酸に入れ、次いで500×gで10分間遠心分離する。細胞をこの緩衝液に再懸濁して、Polytron Homogenizerでホモジナイズする。
【0263】
ホモジネートを27,000×gで15分間遠心分離し、そしてペレットを緩衝液A(20mMのHEPES、10mMのMgCl2、100mMのNaCl(pH7.4)を含有する)に再懸濁する。懸濁液を20,000×gで再度遠心分離し、もう一度緩衝液Aに懸濁する。結合アッセイのために、膜(8〜15μgタンパク質)を、目的のTMを含むおよび含まない[35S]GTP S(50pM)、GDP(10μM)と総容量1.0mlで25℃にて60分間インキュベートする。試料をガラスファイバーフィルターで濾過し、そして結合アッセイについて記載したように計数する。
【0264】
実施例18:LC/AおよびHN/Aバックボーンクローンの調製
以下の手順によって、マルチドメイン融合物発現用の構成部分バックボーンとして使用するためのLCフラグメントおよびHNフラグメントを作製する。本実施例は、血清型Aベースのクローン(配列番号27および配列番号28)の調製に基づいているが、手順および方法は他の血清型にも同等に適用可能である[血清型B(配列番号29および配列番号30)ならびに血清型C(配列番号31および配列番号32)については配列表に図示]。
【0265】
(クローニングベクターおよび発現ベクターの調製)
pCR 4(Invitrogen)は、構築物の確認を容易にするために、ベクター内の制限配列の欠損および隣接する配列決定プライマー部位によって選択した、選り抜きの標準的なクローニングベクターである。この発現ベクターは、pMAL(NEB)発現ベクターに基づいており、これは、構築物の挿入のために正しい方向でマルチプルクローニング部位内に所望の制限配列を有する(BamHI−SalI−PstI−HindIII)。非動員性プラスミドを作製するために、発現ベクターのフラグメントが除去されており、そして精製の選択肢を増大させるために、種々の異なる融合タグが挿入されている。
【0266】
(プロテアーゼ(例えば、LC/A)挿入片の調製)
LC/A(配列番号27)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、[種々の逆翻訳ソフトウエアツール(例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon))の1つを用いて、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]LC/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み取り枠を維持する。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、LC/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0267】
別の方法は、5’および3’のPCRプライマーにそれぞれ組み込んだBamHIおよびSalI制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。相補的オリゴヌクレオチドプライマーは、製造業者(例えば、MWGまたはSigma-Genosys)によって、各対が、クロストリジウム標的DNAの範囲(ストレッチ)に隣接する(互いに「向かって」3’末端の向きに)向かい合った鎖に対して、これらの2つのDNA鎖の各々に1つのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズする能力を有するように、化学合成される。PCR産物を生成するために、クロストリジウムDNA配列に特異的な短いオリゴヌクレオチドプライマーの対を、クロストリジウムDNA鋳型および他の反応成分と混合し、そして反応チューブのインキュベーション温度を自動変更し得る機器(「PCR機器」)中に配置し、約94℃(変性用)、55℃(オリゴヌクレオチドアニーリング用)、および72℃(合成用)のサイクルにかける。PCR産物の増幅に必要な他の試薬には、DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはPfuポリメラーゼ)、DNAの4つのヌクレオチドdNTP構築ブロックの等モル量(50〜200μM)の各々、およびMg2+濃度(0.5〜5mM)に最適化した酵素に適切な緩衝液が含まれる。
【0268】
増幅産物を、Taq PCR産物に対してTOPO TAクローニングまたはPfu PCR産物に対してZero Blunt TOPOクローニング(両キットともInvitrogenより市販されている)のいずれかを用いて、pCR 4にクローニングする。得られたクローンを配列決定により確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない任意の付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0269】
(トランスロケーション(例えばHN)挿入片の調製)
HN/A(配列番号28)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、[GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]HN/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。N末端にPstI制限配列を、そしてC末端にXbaI−停止コドン−HindIIIを付加し、正しい読み取り枠を維持するようにする。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0270】
別の方法は、5’および3’のPCRプライマーにそれぞれ組み込んだPstIおよびXbaI−停止コドン−HindIII制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。PCR増幅は、上記のように行う。このPCR産物をpCR 4ベクターに挿入し、そして配列決定によって確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない任意の付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0271】
実施例19:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
(リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片の調製)
LC−HNリンカーを、鋳型としてリンカーについての既存配列情報を用いて、第一の原則から設計し得る。例えば、血清型Aリンカー(この場合、LCとHNとの間のジスルフィド架橋のシステイン間に存在するドメイン間ポリペプチド領域として定義される)は、23アミノ酸長であり、そして配列VRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLを有する。この配列内で、天然でのタンパク質分解活性化により、配列ALNDLのN末端を有するHNドメインが生じることが理解される。この配列情報は、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような利用可能なデータベースソースから自由に入手可能である。このリンカーに、第Xa因子部位、ノシセプチンおよびスペーサーを組み込み、そして種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号33)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持すること、そしてDAMメチル化を生じ得る塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0272】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号39)を作製するために、リンカー(配列番号33)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをPstIおよびXbaI制限酵素で切断し、そしてPstIおよびXbaIで切断したHN/AのDNA(配列番号28)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号39)を含んでおり、これは、発現ベクターに移入され、配列番号40に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0273】
実施例20:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
LC/A−HN/Aバックボーンを、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号34)として配置させた、合成血清型Aリンカーを用いて、実施例19に記載のように構築する。LC/A−HN/Aバックボーンおよび合成したN末端側提示ノシセプチン挿入片(配列番号35)を、BamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、ゲル精製し、そして一緒に連結してノシセプチン−スペーサー−LC−リンカー−HNを作製する。次いで、ORF(配列番号41)を制限酵素AvaIおよびXbaIを用いて切断し、これは、発現ベクターに移入され、配列番号42に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0274】
実施例21:LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号36)として配置させた血清型Cリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号43)を含んでおり、これは、配列番号44に示される配列のタンパク質として発現する。
【0275】
実施例22:血清型A活性化配列を有するLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号33)として配置させた血清型Aリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号45)を含んでおり、これは、配列番号46に示される配列のタンパク質として発現する。
【0276】
実施例23:LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製
metエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFM metエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−metエンケファリン−スペーサー−HNのORF(配列番号47)を含んでおり、これは、配列番号48に示される配列のタンパク質として発現する。
【0277】
実施例24:LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−βエンドルフィン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号37)として配置させた血清型Aのβエンドルフィンリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−βエンドルフィン−スペーサー−HNのORF(配列番号49)を含んでおり、これは、配列番号50に示される配列のタンパク質として発現する。
【0278】
実施例25:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号38)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号51)を含んでおり、これは、配列番号52に示される配列のタンパク質として発現する。
【0279】
実施例26:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製方法
25mlの50mM HEPES(pH7.2)、200mMのNaClおよび約10gの大腸菌BL21細胞ペーストを含むファルコン管を解凍する。この融解した細胞ペーストを50mM HEPES(pH7.2)、200mMのNaClで80mlにし、そして氷上にて、22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにする。溶解した細胞を18,000rpmで4℃にて30分間遠心分離する。この上清を、50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClで平衡化した0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供する。10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定する。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートする。50mM HEPES(pH7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に供する。50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClでベースラインまでカラムを洗浄する。10mMおよび40mMのイミダゾールの段階グラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mMのHEPES(pH7.2)、200mMのNaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて凍結する。OD、BCA、純度分析、およびSNAP−25評価を用いて精製タンパク質を試験する。
【0280】
実施例27:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片を、実施例19に記載のように調製する。
【0281】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号39)を作製するために、リンカー(配列番号33)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HNのORF(配列番号39)を含んでおり、これは、配列番号40に示される配列のタンパク質として発現する。
【0282】
実施例28:ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A構築物を作製するために、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号34)として配置させた血清型Aリンカーを、実施例27に記載のように合成する。このリンカーをコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして合成したN末端提示ノシセプチン挿入片(配列番号35)を含む同様に切断したベクターにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、この構築物をAvaIおよびHindIIIで切断し、そしてpMALプラスミド(NEB)のような発現ベクターに挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)を、PstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして同様に切断したpMAL−ノシセプチン−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/AのORF(配列番号63)を含んでおり、これは、配列番号64に示される配列のタンパク質として発現する。
【0283】
実施例29:可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーの調製および精製
実施例19で用いたのと同じストラテジーを用いて、ノシセプチンおよび可変スペーサー内容物をコードする種々のDNAリンカーを調製した。種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号65〜配列番号69)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持すること、そしてDAMメチル化を生じる塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。
【0284】
作製したスペーサーは、以下を含んでいた:
【0285】
【表2】
【0286】
例示として、LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合構築物(配列番号70)を作製するために、リンカー(配列番号66)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS15)−HN/AのORF(配列番号70)を含んでおり、これは、配列番号71に示される配列のタンパク質として発現する。
【0287】
さらなる例として、LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合構築物(配列番号72)を作製するために、リンカー(配列番号67)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号27)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号28)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS25)−HN/AのORF(配列番号72)を含んでおり、これは、配列番号73に示される配列のタンパク質として発現する。
【0288】
GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体も同様に作製する。実施例26に記載の精製方法を用いて、融合タンパク質を大腸菌細胞ペーストから精製する。図12は、LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの場合に得られた精製産物を示している。
【0289】
実施例30:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例2および9に従って調製した融合タンパク質をeDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0290】
サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断に関するアッセイは、既に報告されている(Dugganら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)。簡単に言えば、背根神経節ニューロンを15日齢胎児Sprague-Dawleyラットから摘出し、そして解離した細胞を、Matrigelでコーティングされた24ウェルプレート上に、1×106細胞/ウェルの密度で播種した。播種の1日後、細胞を10μMシトシンβ−D−アラビノフラノシドで48時間処理する。細胞を、5%熱不活性化ウシ胎児血清、5mMのL−グルタミン、0.6%のD−グルコース、2%のB27補充物、および100ng/mlの2.5Sマウス神経成長因子を加えたダルベッコ最小必須培地中に維持する。試験物質を添加する前に、培養物を95%空気/5%CO2中に37℃にて2週間維持する。
【0291】
eDRGからのサブスタンスPの放出を酵素結合免疫吸着アッセイによって評価する。簡単に言えば、eDRG細胞を低カリウム平衡塩類溶液(BSS:5mMのKCl、137mMのNaCl、1.2mMのMgCl2、5mMのグルコース、0.44mMのKH2PO4、20mMのHEPES(pH7.4)、2mMのCaCl2)で2回洗浄する。基本試料を、各ウェルを1mlの低カリウムBSSと5分間インキュベートすることにより得る。この緩衝液の除去後、1mlの高カリウム緩衝液(上記BSSに対してNaClで等張平衡化した100mMのKClを含むように改変した)と5分間インキュベートすることにより、細胞を放出に対して刺激する。サブスタンスPのアッセイ前に、全ての試料を氷上のチューブに移す。250μlの2M酢酸/0.1%トリフルオロ酢酸を添加して細胞を溶解し、遠心分離にてエバポレートし、そして500μlのアッセイ緩衝液に再懸濁することにより、全細胞溶解物を調製する。希釈した試料を、サブスタンスP含量について評価する。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical CompanyまたはR&D Systems)を製造者の指示書に従って用いて測定する。サブスタンスPは、並行して実行した標準サブスタンスP曲線に対してpg/mlで表す。
【0292】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を、標準プロトコル(Novex)を用いて実施した。SNAP−25タンパク質を12%Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)上で分離し、引き続いてニトロセルロース膜に転写した。この膜を、切断したSNAP−25および完全なSNAP−25を認識するモノクローナル抗体(SMI−81)でプローブした。ペルオキシダーゼ結合二次抗体および化学発光検出系を用いて特異的結合を可視化した。SNAP−25の切断を、走査デンシトメトリー(Molecular Dynamics Personal SI, ImageQuantデータ解析ソフトウエア)によって定量した。SNAP−25の切断パーセントを、以下の式に従って算定した:(切断されたSNAP−25/(切断されたSNAP−25+完全なSNAP−25))×100。
【0293】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−Aと称する)へのeDRGニューロンの曝露後、サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断の両方が観察されている(図13)。融合物への24時間の曝露後、6.3±2.5nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている。
【0294】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図14は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後28日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0295】
実施例31:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例8および9に従って調製した融合タンパク質を、実施例30に記載の方法を用いて、eDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0296】
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−Aと称する)へのeDRGニューロンの曝露後、サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断の両方が観察されている。融合物への24時間の曝露後、1.4±0.4nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている(図15)。
【0297】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図16は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後24日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0298】
CPNv−A融合タンパク質の結合能もまた、CPN−A融合物に比較して評価している。図17は、ORL−1レセプターでの結合効力を決定するための競合実験の結果を示している。CPNv−Aが[3H]−ノシセプチンを置き換えることが示され、それにより、レセプターへの接近が、中心提示様式におけるリガンドを用いて可能であることが確認される。
【0299】
実施例32:エンテロキナーゼでの処理により活性化されるLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号27)およびHN/A(配列番号28)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−エンテロキナーゼプロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号74)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号75)を含んでおり、これは、配列番号76に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv(Ek)−Aと称する。図18は、活性化のために100μgの融合タンパク質当たり0.00064μgでエンテロキナーゼを用いたこと以外は実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv(Ek)−Aの精製を示している。
【0300】
実施例33:エンテロキナーゼでの処理により活性化されたLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価
実施例32で調製したCPNv(Ek)−Aを精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例30からの方法を用いる)。図19は、CPNv(Ek)−AへのeDRGの24時間曝露後のSNAP−25の切断を示している。切断の効率は、実施例31に記載したように、第Xa因子切断物で得られるのと同様であることが観察されている。
【0301】
実施例34:血清型Aに由来する第Xa因子活性化リンカーを有するLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製
実施例21で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、BamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号77)として配置させた血清型Aのノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号78)を含んでおり、これは、配列番号79に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.A)と称する。図20は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv−C(act.A)の精製を示している。
【0302】
実施例35:LC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質のインビトロ効力の評価
実施例26で使用した方法に従って、実施例34で調製したCPNv−C(act.A)を精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例30からの方法を用いる)。融合物への24時間曝露後、3.1±2.0nMの融合物濃度で、最大の50%のシンタキシン切断が生じている。図21は、CPNv−C(act.A)へのeDRGの24時間曝露後のシンタキシンの切断を示している。
【0303】
実施例36:LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビボ効力の評価
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)が急性カプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価する。試験動物を、研究に参加させる前、CPN/Aでの皮下処置後カプサイシン投与前、およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。図22は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を示している。
【0304】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がラットにおいてストレプトゾトシン(STZ)誘発機械的(触覚)異痛を阻害する能力を評価する。ラットにおけるSTZ誘発機械的異痛をストレプトゾトシンの注射(腹腔内または静脈内)によって生じさせる。これにより、膵臓β細胞が破壊され、インスリン生産の喪失が生じ、代謝ストレスを併発する(高血糖および高脂血症)。このように、STZは、I型糖尿病を誘発する。さらに、STZ処置により神経障害の進行性の発症が生じ、これは、痛覚過敏および異痛を伴う慢性疼痛のモデルとなり、これは、ヒト糖尿病患者で観察される徴候(末梢糖尿病性神経障害)を反映し得る。
【0305】
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質を測定して、モデルの準備性を定める。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたるVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2日の連続した試験日(1週間空ける)におけるPWTがスケールの上で6gを下回って測定する場合に確立されるといわれる。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)のいずれかに無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注射し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、PWT試験開始の2時間前に毎日注射する。図23は、750ngのCPN/Aでの動物の前処置により得られる異痛の逆転を示している。データは、CPN/Aの単回注射後2週間にわたって得た。
【0306】
実施例37:LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビボ効力の評価
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を阻害する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注射により評価する。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を、0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。
【0307】
図24は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる異痛の逆転を、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の添加で得られた逆転と比較して示している。これらのデータは、正規化した足逃避率差として表す。ここでは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0308】
実施例38:LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製
leuエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFL leuエンケファリンペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−leuエンケファリン−スペーサー−HNのORF(配列番号80)を含んでおり、これは、配列番号81に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPLE−Aと称する。図25は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPLE−Aの精製を示している。
【0309】
実施例39:LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の発現および精製
実施例26で使用した方法に従って、そして実施例24で作製したLC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質(CPBE−Aと称する)を用いて、CPBE−Aを大腸菌から精製する。図26は、SDS−PAGEにより分析した精製したタンパク質をSDS−PAGEによる分析にて示している。
【0310】
実施例40:LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物の調製
ノシセプチン配列を1位でPheからTyrに変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号39)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物のORF(配列番号82)を含んでおり、これは、配列番号83に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPOP−Aと称する。図27は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPOP−Aの精製を示している。
【0311】
実施例41:LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合タンパク質の調製および評価
ノシセプチン配列を1位でPheからTyrに変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号51)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードするオリゴヌクレオチドを設計し、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号51)のリンカー領域に相補的な配列を隣接させる。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物のORF(配列番号84)を含んでおり、これは、配列番号85に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPOPv−Aと称する。図28は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPOPv−Aの精製を示している。
【0312】
実施例30に記載の方法を用いて、CPOPv−AをeDRG細胞モデルでSNAP−25を切断する能力について評価する。図29は、CPOPv−AがeDRGモデルでSNAP−25を切断できることを示しており、約5.9nMの融合物に細胞を24時間曝露した後、最大の50%のSNAP−25切断を生じている。
【0313】
実施例42:IgAプロテアーゼ−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製
IgAプロテアーゼアミノ酸配列を、自由に利用可能なデータベース供給源(例えば、GenBank(アクセッション番号P09790))から入手した。N. GonorrhoeaeIgAプロテアーゼ遺伝子の構造に関する情報は、文献で入手可能である(Pohlnerら, Gene structure and extracellular secretion of Neisseria gonorrhoeae IgA protease, Nature, 1987, 325(6103), 458-62)。Backtranslation tool v2.0(Entelechon)を用いて、大腸菌発現のために改変したIgAプロテアーゼをコードするDNA配列を決定した。BamHI認識配列をIgAのDNAの5’末端に組み込み、システインアミノ酸をコードするコドンおよびSalI認識配列を3’末端に組み込んだ。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、MapDraw(DNASTAR Inc.)を用いてスクリーニングした。クローニングに必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)によって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表を参照することによって評価した。次いで、IgAオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列(配列番号86)を商業的に合成する。
【0314】
IgA(配列番号86)を、BamHIおよびSalI制限酵素を用いてLC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号51)に挿入して、IgAプロテアーゼDNAとLCとを置換する。最終構築物は、IgA−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF(配列番号87)を含んでおり、これは、配列番号88に示される配列のタンパク質として発現する。
【0315】
実施例43:除去可能なヒスチジン精製タグを有するノシセプチン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製および評価
第Xa因子の除去可能なhisタグ(his6)をコードするDNAを調製したが、エンテロキナーゼのような別のプロテアーゼ部位およびもっと長いヒスチジンタグのような別の精製タグもまた可能であることが明らかである。種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、第Xa因子の除去可能なhisタグ領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてNheI−リンカー−SpeI−PstI−HN/A−XbaI−LEIEGRSGHHHHHH停止コドン−HindIII(配列番号89)として配置させ得る。このDNA配列を、組み込まれた制限配列についてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から任意の付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列を商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供する。CPNv−A−FXa−HT(配列番号90、除去可能なhisタグ構築物)を作製するために、除去可能なhisタグをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびHindIIIで切断する。次いで、NheI−HindIIIフラグメントを、同様にNheIおよびHindIIIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号51)に挿入する。最終構築物は、LC/A−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN−FXa−Hisタグ−HindIIIのORF配列(配列番号90)を含んでおり、これは、配列番号91に示される配列のタンパク質として発現する。図30は、実施例26で使用した方法に従った、大腸菌からのCPNv−A−FXa−HTの精製を示している。
【0316】
実施例44:ジフテリア毒素由来トランスロケーションドメインを含むleuエンケファリン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いるジフテリア毒素のトランスロケーションドメインのアミノ酸配列(GenBank(アクセッション番号1XDTT)のような自由に利用可能なデータベースソースから入手)の逆翻訳によって設計する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてNheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号92)として配置させ得る。PstI/XbaI認識配列を、配列のトランスロケーションドメインの5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、ジフテリアトランスロケーションドメインを含むこの最適化したDNA配列を、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIIIとして商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供する。ジフテリアトランスロケーションドメインをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびXbaIで切断する。次いで、NheI−XbaIフラグメントを、同様にNheIおよびXbaIによって切断しておいたLC/A−CPLE−HN/Aベクター(配列番号80)に挿入する。最終構築物は、LC/A−leuエンケファリン−スペーサー−ジフテリアトランスロケーションドメインのORF配列(配列番号93)を含んでおり、これは、配列番号94に示される配列のタンパク質として発現する。
【0317】
実施例45:破傷風菌毒素由来LCドメインを含むノシセプチン改変体標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウエアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、破傷風菌毒素LCアミノ酸配列(GenBank(アクセッション番号X04436)のような自由に利用可能なデータベースソースから入手)の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する(配列番号95)。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウエアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている任意の切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウエアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、破傷風菌毒素LCのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列を、商業的に合成し(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供する。TeNT LCをコードしているpCR 4ベクターをBamHIおよびSalIで切断する。次いで、BamHI−SalIフラグメントを、同様にBamHIおよびSalIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号51)に挿入する。最終構築物は、TeNT LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号96)を含んでおり、これは、配列番号97に示される配列のタンパク質として発現する。
【0318】
実施例46:第Xa因子切断を受けやすい天然型血清型Cリンカーを有するLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製
実施例21で使用した方法に従って、LC/C(配列番号31)およびHN/C(配列番号32)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号98)として配置させた血清型Cノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HNのORF配列(配列番号99)を含んでおり、これは、配列番号100に示される配列のタンパク質として発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.C)と称する。
【図面の簡単な説明】
【0319】
【図1】recLHN/B融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図2】LHN/C融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図3】N[1−17]−LHN/A融合タンパク質の発現および精製を示す。
【図4】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図5】ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図6】LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製を示す。
【図7】LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図8】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較を示す。
【図9】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性を示す。
【図10】LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図11】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質およびLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の結合効力の比較を示す。
【図12】可変スペーサー長産物を有する発現/精製したLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーを示す。
【図13】CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図14】CPN−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図15】CPNv−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図16】CPNv−AへのDRGの曝露後の長時間にわたるSNAP−25の切断を示す。
【図17】[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換を示す。
【図18】発現/精製したCPNv(Ek)−A産物を示す。
【図19】CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図20】発現/精製したCPNv−C産物を示す。
【図21】CPNv−Cによるシンタキシンの切断を示す。
【図22】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−Aの効力を示す。
【図23】ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−Aの効力を示す。
【図24】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−Aの効力を示す。
【図25】発現/精製したLC/A−CPLE−HN/A産物を示す。
【図26】発現/精製したLC/A−CPBE−HN/A産物を示す。
【図27】発現/精製したCPOP−A産物を示す。
【図28】発現/精製したCPOPv−A産物を示す。
【図29】DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断を示す。
【図30】発現/精製したCPNv−A−FXa−HT(除去可能hisタグ)を示す。
【図31】リガンド競合アッセイによって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【図32】インビトロSNAP−25切断によって評価した場合の、可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性タンパク質結合体であって、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む、非細胞傷害性タンパク質結合体。
【請求項2】
前記レセプターが、ORL1レセプターである、請求項1に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項3】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも70%または少なくとも80%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項4】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも90%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項5】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも95%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項6】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントである、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項7】
前記TMがノシセプチンである、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項8】
前記TMが、配列番号4、6、8、10、12、14からなる群より選択される、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項9】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、前記侵害受容感覚求心性細胞の前記エキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、細菌タンパク質またはそのフラグメントである、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項10】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素またはIgAプロテアーゼから選択される、請求項9に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項11】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム属供給源に由来する、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項12】
前記トランスロケーションドメインが、ボツリヌスHNドメインである、請求項11に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項13】
前記侵害受容感覚求心性細胞が、一次侵害受容感覚求心性細胞である、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項14】
前記結合体が、配列番号14、16、18、20、22、24、および26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項15】
侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体であって、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列であって、該侵害受容感覚求心性細胞において発現可能であり、そして発現した場合に、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントを提供する、DNA配列;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞へと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをコードする該DNA配列をトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む、非細胞傷害性結合体。
【請求項16】
前記レセプターが、ORL1レセプターである、請求項15に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項17】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも70%または少なくとも80%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項18】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも90%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項19】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも95%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項20】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項21】
前記TMがノシセプチンである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項22】
前記TMが、配列番号4、6、8、10、12、14からなる群より選択される、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項23】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、前記侵害受容感覚求心性細胞の前記エキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、細菌タンパク質またはそのフラグメントである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項24】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素またはIgAプロテアーゼから選択される、請求項23に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項25】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム属供給源に由来する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項26】
前記トランスロケーションドメインが、ボツリヌスHNドメインである、請求項25に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項27】
前記侵害受容感覚求心性細胞が、一次侵害受容感覚求心性細胞である、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項28】
前記TM、前記トランスロケーションドメイン、および前記プロテアーゼまたはそのフラグメントが、共有結合される、請求項1から14のいずれかの項に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項29】
前記TM、前記トランスロケーションドメイン、および前記プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列が、共有結合される、請求項15から27のいずれかの項に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項30】
請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項31】
請求項1から14のいずれかの項に記載の結合体をコードする、DNA構築物。
【請求項32】
前記構築物が、配列番号13、15、17、19、21、23、および25から選択されるDNA配列を含む、請求項31に記載のDNA構築物。
【請求項33】
宿主細胞において請求項31に記載のDNA構築物を発現させる工程を含む、請求項1から14のいずれかの項に記載の結合体の調製方法。
【請求項34】
請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体または請求項30に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、疼痛の治療方法。
【請求項35】
疼痛の治療用の医薬品の製造のための、請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体または請求項30に記載の組成物の使用。
【請求項1】
侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性タンパク質結合体であって、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む、非細胞傷害性タンパク質結合体。
【請求項2】
前記レセプターが、ORL1レセプターである、請求項1に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項3】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも70%または少なくとも80%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項4】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも90%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項5】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも95%の相同性を有する、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項6】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントである、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項7】
前記TMがノシセプチンである、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項8】
前記TMが、配列番号4、6、8、10、12、14からなる群より選択される、請求項1または2に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項9】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、前記侵害受容感覚求心性細胞の前記エキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、細菌タンパク質またはそのフラグメントである、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項10】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素またはIgAプロテアーゼから選択される、請求項9に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項11】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム属供給源に由来する、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項12】
前記トランスロケーションドメインが、ボツリヌスHNドメインである、請求項11に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項13】
前記侵害受容感覚求心性細胞が、一次侵害受容感覚求心性細胞である、前記請求項のいずれかに記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項14】
前記結合体が、配列番号14、16、18、20、22、24、および26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項15】
侵害受容感覚求心性細胞におけるエキソサイトーシス融合の阻害または低減のための非細胞傷害性結合体であって、
(i)ターゲティング部分(TM)であって、該TMが、該侵害受容感覚求心性細胞上に存在するレセプターのアゴニストであり、そして該レセプターが、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性細胞内のエンドソームに取り込まれる、TM;
(ii)非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列であって、該侵害受容感覚求心性細胞において発現可能であり、そして発現した場合に、該侵害受容感覚求心性細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントを提供する、DNA配列;および
(iii)トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性細胞へと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをコードする該DNA配列をトランスロケートする、トランスロケーションドメイン、
を含む、非細胞傷害性結合体。
【請求項16】
前記レセプターが、ORL1レセプターである、請求項15に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項17】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも70%または少なくとも80%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項18】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも90%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項19】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントに少なくとも95%の相同性を有する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項20】
前記TMが、配列番号2またはそのフラグメントである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項21】
前記TMがノシセプチンである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項22】
前記TMが、配列番号4、6、8、10、12、14からなる群より選択される、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項23】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、前記侵害受容感覚求心性細胞の前記エキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、細菌タンパク質またはそのフラグメントである、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項24】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素またはIgAプロテアーゼから選択される、請求項23に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項25】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム属供給源に由来する、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項26】
前記トランスロケーションドメインが、ボツリヌスHNドメインである、請求項25に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項27】
前記侵害受容感覚求心性細胞が、一次侵害受容感覚求心性細胞である、請求項15または16に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項28】
前記TM、前記トランスロケーションドメイン、および前記プロテアーゼまたはそのフラグメントが、共有結合される、請求項1から14のいずれかの項に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項29】
前記TM、前記トランスロケーションドメイン、および前記プロテアーゼまたはそのフラグメントをコードするDNA配列が、共有結合される、請求項15から27のいずれかの項に記載の非細胞傷害性結合体。
【請求項30】
請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項31】
請求項1から14のいずれかの項に記載の結合体をコードする、DNA構築物。
【請求項32】
前記構築物が、配列番号13、15、17、19、21、23、および25から選択されるDNA配列を含む、請求項31に記載のDNA構築物。
【請求項33】
宿主細胞において請求項31に記載のDNA構築物を発現させる工程を含む、請求項1から14のいずれかの項に記載の結合体の調製方法。
【請求項34】
請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体または請求項30に記載の組成物を患者に投与する工程を含む、疼痛の治療方法。
【請求項35】
疼痛の治療用の医薬品の製造のための、請求項1から29のいずれかの項に記載の結合体または請求項30に記載の組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2008−521424(P2008−521424A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543908(P2007−543908)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004598
【国際公開番号】WO2006/059105
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503191210)ヘルス プロテクション エージェンシー (19)
【出願人】(507179656)アラガン,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004598
【国際公開番号】WO2006/059105
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503191210)ヘルス プロテクション エージェンシー (19)
【出願人】(507179656)アラガン,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]