非線形光ループミラーとその設計方法並びに光信号変換方法
【課題】符号化や量子化を光信号で高速で処理する非線形光ループミラーを提供する。
【解決手段】光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、そこから出力される光信号を光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を光ファイバに入力する制御光入力手段と、光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、制御光信号のパワーによって光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであり、2分岐された各光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調によって各光信号に発生する位相シフトの差が2nπとなるときの出力光信号のパワーがその最大値に対する割合が所定のしきい値以下となるように各光信号と制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する。
【解決手段】光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、そこから出力される光信号を光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を光ファイバに入力する制御光入力手段と、光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、制御光信号のパワーによって光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであり、2分岐された各光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調によって各光信号に発生する位相シフトの差が2nπとなるときの出力光信号のパワーがその最大値に対する割合が所定のしきい値以下となるように各光信号と制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ファイバ通信システムにおいて用いられ、光アナログ信号を光ディジタル信号に変換する光アナログ/ディジタル変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置、非線形光ループミラーとその設計方法並びに光信号変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ/ディジタル変換(以下、A/D変換という。)は離散化、量子化及び符号化の処理によって実現され、従来これらの処理は半導体を用いた電気信号処理により行われている。
【0003】
現在、高速化された光処理によるアナログ/ディジタル変換処理を行うことが所望されるが、例えば、非特許文献1及び2(以下、従来例という。)においては、マッハ・ツェンダー干渉計型光変調器をサンプルホールド回路として用いて量子化した後、フォトディテクタを用いて光電変換した後、電気回路を用いて符号化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−271730号公報。
【特許文献2】特開2000−10129号公報。
【特許文献3】特開平9−033967号公報。
【特許文献4】特開平9−222620号公報。
【特許文献5】特開平9−102991号公報。
【特許文献6】特開2000−321606号公報。
【特許文献7】特開2001−117125号公報。
【特許文献8】特開平8−146473号公報。
【特許文献9】特表2002−525647号公報。
【特許文献10】特開2003−107541号公報。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Henry F. Taylor, "An Optical Analog-to-Digital Converter-Design and Analysis", IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. QE-15, No. 4, April 1979.
【非特許文献2】B. Jalali et al., "Optical folding-flash analog-to-digital converter with analog encoding", Optical Letters, Optical Society of America, Vol. 20, No. 18, September 15, 1995.
【非特許文献3】N. J. Doran et al., "Nonlinear-optical loop mirror", Optical Letters, Optical Society of America, Vol. 13, No. 1, January 1988.
【非特許文献4】山本貴司ほか,”超高速非線形光ループミラーによるサブテラビットTDM光信号の多重分離”,電子情報通信学会論文誌,C−I,電子情報通信学会発行,Vol.J82−C−I,pp.109−116,1999年3月。
【非特許文献5】Govind P. Agrawal, "NONLINEAR FIBER OPTICS", Academic Press, ISBN:0120451425, 2rd Edition, pp. 210-211, 1995.
【非特許文献6】Stephen M. Jensen, "The Nonlinear Coherent Coupler", IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. QE-18, No. 10, October 1982.
【非特許文献7】William S. Wong et al., "Self-switching of optical pulses in dispersion-imbalanced nonlinear loop mirrors", Optics Letters, Optical Society of America, Vol.22, pp.1150-1152, 1997.
【非特許文献8】I. Y. Khrushchev et al., "High-quality laser diode pulse compression in dispersion-imbalanced loop mirror", Electronics Letters, Vol.34, pp.1009-1010, May 1998.
【非特許文献9】K. R. Tamura et al., "Spectral-Smoothing and Pedestal Reduction of Wavelength Tunable Quasi-Adiabatically Compressed Femtosecond Solitons Using a Dispersion-Flattened Dispersion-Imbalanced Loop Mirror," IEEE Photonics Technology Letters, Vol.11, pp.230-232, February 1999.
【非特許文献10】K. J. Blow et al., "Demonstration of the nonlinear fibre loop mirror as an ultrafast all-optical demultiplexer", Electronics Letters, Vol.26, pp.962-964, 1990.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来例においては、符号化回路は電気回路であるので、半導体の応答速度による制限があり、例えばテラヘルツオーダーでのより高速な処理を行うことができない。
【0007】
また、特許文献1においては、非線形ファブリペロー共振器を用いた光A/D変換器が開示されているが、光アナログ信号を2値の光ディジタル信号に変換するのみで、符号化する光回路については開示されていない。
【0008】
すなわち、従来技術において、光アナログ信号を光ディジタル信号に変換する光アナログ/ディジタル変換器であって、符号化や量子化をともに光信号で処理し、テラヘルツオーダー以上の周波数でより高速な処理を行うことができる装置については開発、実用化されていないという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、符号化や量子化をともに光信号で処理し、テラヘルツオーダー以上の周波数でより高速な処理を行うことができ、しかも構造が簡単である光A/D変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記光アナログ/ディジタル変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置、非線形光ループミラーとその設計方法並びに光信号変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性において、所定の光論理演算に対応した周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光を複数用いることによって、又は上記第1の波長とは異なる複数の波長を有するパルス列である制御光を用いることによって、所定の光論理演算処理を実行して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0013】
上記光信号処理方法において、上記光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0014】
第3の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
上記光信号処理方法において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光信号処理器を用いて、第1の波長を有する多値光信号のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って、複数の2値光信号に復号して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
上記光信号処理方法において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0018】
また、上記光信号処理方法において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0019】
第5の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力する信号処理手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
第6の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性において、所定の光論理演算に対応した周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光を複数用いることによって、又は上記第1の波長とは異なる複数の波長を有するパルス列である制御光を用いることによって、所定の光論理演算処理を実行して出力する演算手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
上記光信号処理装置において、上記光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0022】
第7の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力する光符号化手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記光信号処理装置において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0024】
第8の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光信号処理器を用いて、第1の波長を有する多値光信号のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って、複数の2値光信号に復号して出力する多値復号手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記光信号処理装置において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0026】
また、上記光信号処理装置において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0027】
第9の発明に係る光信号処理方法は、光標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光アナログ/ディジタル変換する光信号処理方法であって、
光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力するステップと、
上記各光符号化器にそれぞれ接続され、光強度に関する入出力特性が非線形性を有する光非線形素子を備えた1つ又は複数の光しきい値処理器を用いて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列に対して光しきい値処理を行うことにより光量子化し、光量子化されたパルス列を光ディジタル信号として出力するステップとを含むことを特徴とする。
【0028】
上記光信号処理方法において、上記光符号化するステップの前に、光アナログ信号を所定の標本化周波数で光標本化して、光標本化された光アナログ信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0029】
また、上記光信号処理方法において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0030】
さらに、上記光信号処理方法において、上記光量子化するステップにおいて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列毎に、1つの光しきい値処理器又は縦続接続された複数の光しきい値処理器を用いてそれぞれ入力される信号光のパルス列を光量子化することを特徴とする。
【0031】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0032】
また、上記光信号処理方法において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する第1の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0033】
さらに、上記光信号処理方法において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0034】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0035】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記第2の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第2の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第2の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0036】
第10の発明に係る光信号処理装置は、光標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光アナログ/ディジタル変換する光信号処理装置であって、
光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力する光符号化手段と、
上記各光符号化器にそれぞれ接続され、光強度に関する入出力特性が非線形性を有する光非線形素子を備えた1つ又は複数の光しきい値処理器を用いて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列に対して光しきい値処理を行うことにより光量子化し、光量子化されたパルス列を光ディジタル信号として出力する光量子化手段とを備えたことを特徴とする。
【0037】
上記光信号処理装置において、上記光符号化手段の前段に設けられ、光アナログ信号を所定の標本化周波数で光標本化して、光標本化された光アナログ信号を出力する光標本化手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0038】
また、上記光信号処理装置において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0039】
さらに、上記光信号処理装置において、上記光量子化手段は、上記光符号化された複数の信号光のパルス列毎に、1つの光しきい値処理器又は縦続接続された複数の光しきい値処理器を用いてそれぞれ入力される信号光のパルス列を光量子化することを特徴とする。
【0040】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0041】
また、上記光信号処理装置において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する第1の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0042】
さらに、上記光信号処理装置において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0043】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0044】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記第2の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第2の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第2の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0045】
第11の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、上記出力光信号のパワーの最大値に対して所定のしきい値以下となるように、それぞれの光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【0046】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と同一方向に伝搬する上記光信号が非線形媒質中でパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記所定のしきい値の割合をTとしたときにG<2T+1の関係式を満足することを特徴とする。
【0047】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光信号と上記制御光信号のパルスが上記非線形媒質のより広い範囲で重なるように、上記入力光信号と上記制御光信号のいずれか一方を光遅延線を介してから入力することを特徴とする。
【0048】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0049】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記所定のしきい値が、光信号処理で必要とされるしきい値であることを特徴とする。
【0050】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記所定のしきい値が3dBであることを特徴とする。
【0051】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散値の絶対値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する分散値以上であることを特徴とする。
【0052】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と上記入力光信号の波長差が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する波長差以上であることを特徴とする。
【0053】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と上記光信号の波長差と、上記非線形媒質の分散値との積の絶対値が、ウォークオフを抑圧して、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差を2π以上とする値以下であることを特徴とする。
【0054】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数)となるときの上記出力光信号のパワー値が、光アナログ/ディジタル変換の処理において0として処理されることを特徴とする。
【0055】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において正常分散特性を有することを特徴とする。
【0056】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において異常分散特性を有することを特徴とする。
【0057】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が正(dD/dλ>0)であるとき、λ0>λS>λCであることを特徴とする。
【0058】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が負(dD/dλ<0)であるとき、λ0<λS<λCであることを特徴とする。
【0059】
第12の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有することを特徴とする。
【0060】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.3ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が16nm以上であることを特徴とする。
【0061】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0062】
第13の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と上記制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によって、それぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2π以上であることを特徴とする。
【0063】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有することを特徴とする。
【0064】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの出力光信号のパワーが、上記出力光信号のパワーの最大値に対して光アナログ/ディジタル変換におけるしきい値以下となるように、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【0065】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0066】
第14の発明に係る非線形光ループミラーの設計方法は、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーを設計する方法であって、
入力光信号のパワーに対する出力光信号のパワーの関係で表される伝達関数とその周期(φmax)を決定する第1のステップと、
光信号処理に適した、出力光信号のしきい値を決める第2のステップと、
非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを仮決めする第3のステップと、
位相シフトが上記周期φmaxに及んでいるかを判別し、及んでいなければ上記第3のステップに戻る第4のステップと、
上記光信号がパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記しきい値の割合をTとしたときにG<2T+1を満足するかを判別し、満足していなければ上記第3のステップに戻る第5のステップとを含むことを特徴とする。
【0067】
第15の発明に係る光信号変換方法は、入力された光信号を2分岐し、分岐した一方の光信号(A)を波長の異なる制御光信号と同一方向に伝搬させて相互位相変調を発生させ、分岐した他方の光信号(B)との間の位相シフト差を制御光信号のパワー変化に対して周期的に変化させて、上記光信号(A)及び(B)の干渉によって得られる出力光信号のパワーを変化させる光信号変換方法であって、
上記出力光信号のパワーの最大値に対して、位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが2値化処理のしきい値以下となるように、上記光信号(A)と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0068】
本発明に係る光信号処理方法及び装置によれば、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力する。従って、光論理演算、光符号化処理、多値復号処理などの光信号処理をきわめて簡単な構成で実現でき、しかも従来技術に比較して高速化できる。
【0069】
また、本発明に係る光信号処理方法及び装置によれば、標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光A/D変換することができ、標本化周波数の上限は数百ギガ数テラヘルツオーダーまで原理的に可能であり、電気回路のA/D変換の標本化周波数の限界を数十ギガヘルツとすると、二桁程度の高速化が可能である。また、入出力が光信号なので光ネットワークへの応用に適している。
【0070】
さらに、本発明に係る非線形光ループミラー内の光ファイバにおいて制御光が引き起こすパラメトリックプロセスによって、制御光と同じ向きに進む信号光が受ける利得が、設定したしきい値に対して決定される許容値以下に抑圧されるように設計されたことを特徴とする設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つ非線形光ループミラーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光A/D変換装置100の動作を示すブロック図及びタイミングチャートである。
【図2】図1の光A/D変換装置100の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図2の光符号化器201の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】図3の光符号化器201の動作を示す、制御光(λ2)の入力電力に対する信号光(λ1)の出力電力との関係を示すグラフである。
【図5】図3の光符号化回路200の動作例を示すグラフ及びブロック図である。
【図6】図2の光しきい値処理器301の詳細構成及びその動作を示すブロック図及びグラフである。
【図7】図6の光しきい値処理器301の動作例を示すグラフである。
【図8】図2の光符号化回路200及び光量子化回路300の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】図8の各光符号化器201,202,203の動作例を示すグラフであり、図9(a)は光符号化器201の動作例を示し、図9(b)は光符号化器202の動作例を示し、図9(c)は光符号化器203の動作例を示す。
【図10】図8の各光しきい値処理器301,302,303の動作例を示すグラフであり、図10(a)は光しきい値処理器301の動作例を示し、図10(b)は光しきい値処理器302の動作例を示し、図10(c)は光しきい値処理器303の動作例を示す。
【図11】本発明の変形例に係る光A/D変換装置100Aの詳細構成を示すブロック図である。
【図12】図11の各光しきい値処理器の動作例を示すグラフであって、図12(a)は縦続接続された光しきい値処理器301,311の動作例を示し、図12(b)は縦続接続された光しきい値処理器302,312,322の動作例を示し、図12(c)は縦続接続された光しきい値処理器303,313,323,333の動作例を示す。
【図13】本実施形態に係る実験システムの詳細構成を示すブロック図である。
【図14】図13の光符号化回路200の符号化処理の動作例を示すグラフであって、図14(a)は光符号化器201の符号化処理の動作例を示し、図14(b)は光符号化器202の符号化処理の動作例を示し、図14(c)は光符号化器203の符号化処理の動作例を示す。
【図15】図13の光符号化回路200を用いた符号化処理における制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対する3ビット符号化値(#1,#2,#3)を示すグラフである。
【図16】図13において理想的な非線形光ループミラーを用いて実験システムを構成したときに、1段の光しきい値処理器の処理後のアナログパルスの振幅を変化したときの符号化後の3ビット符号化値(#1,#2,#3)とそのパルス波形を示す図である。
【図17】本実施形態に係る第1のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図18】図17の第1のシミュレーションの結果であって、制御光(λ2)のパルスのピークパワーに対する信号光(λ1)のパルスのピークパワーを示すグラフである。
【図19】本実施形態に係る第2のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図20】図19の第2のシミュレーションの結果であって、図20(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図20(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図20(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。
【図21】本実施形態に係る第3のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図22】図21の第3のシミュレーションの結果であって、図22(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図22(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図22(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。
【図23】本発明の第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の第2の変形例に係る分散不平衡型非線形光ループミラーを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の第3の変形例に係る光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図26】従来技術及び本発明の第2の実施形態に係るNOLMの構成の一例を示す図である。
【図27】従来技術に係るNOLMによる入力信号光パワーと出力光パワーの関係を示す図である。
【図28】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの入力光パワーと出力光パワーの関係を示す図である。
【図29】光ファイバの分散値D(λC)に対するパラメトリック利得の値の関係を示す図である。
【図30】信号光と制御光の波長差Δλに対するパラメトリック利得の値の関係を示す図である。
【図31】光ファイバの分散値と、信号光及び制御光の波長配置の関係(dD/dλ>0の場合)を示す図である。
【図32】光ファイバの分散値と、信号光及び制御光の波長配置(dD/dλ<0の場合)を示す図である。
【図33】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの設計処理の手順を示すフローチャートである。
【図34】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの一実施例を示す図である。
【図35】本発明によるNOLMの伝達特性について測定した結果を示す図である。
【図36】図35とは異なる高非線形ファイバ(HNLF)を用いた場合のNOLMの伝達関数について示す図である。
【図37】本発明の第2の実施形態に係る別の実施例のNOLMに関する伝達特性の測定結果を示す図である。
【図38】本発明の第2の実施形態に係るさらに別の実施例のNOLMに関する伝達特性の測定結果を示す図である。
【図39】本発明の第3の実施形態に係る多値光信号復号器400の構成を示すブロック図である。
【図40】図39の各光信号処理器401,402における入力パルス強度に対する出力パルス強度を示すグラフである。
【図41】(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第1の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、(b)は(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。
【図42】(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第2の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、(b)は(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。
【図43】本発明の第4の実施形態に係る光論理演算回路600の構成を示すブロック図である。
【図44】(a)は図43の光論理演算回路600のOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(b)は図43の光論理演算回路600のAND演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(c)は図43の光論理演算回路600のNOT演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(d)は図43の光論理演算回路600のEXOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフである。
【図45】本発明の実施形態に係る第4の実験システムの構成を示すブロック図である。
【図46】図45の第4の実験システムの実験結果であって、制御光の平均電力に対する出力信号光の平均電力を示すグラフである。
【図47】本発明の実施形態に係る第5の実験システムの第1の部分の構成を示すブロック図である。
【図48】本発明の実施形態に係る第5の実験システムの第2の部分の構成を示すブロック図である。
【図49】(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器201Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器201Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PAを示すグラフであり、(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器202Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器202Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PBを示すグラフであり、(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器203Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器203Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PCを示すグラフである。
【図50】(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器301Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器301Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PDを示すグラフであり、(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器302Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器302Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PEを示すグラフであり、(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器303Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器303Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PFを示すグラフである。
【図51】(a)は制御光パルスの平均電力が200mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、(b)は制御光パルスの平均電力が700mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、(c)は制御光パルスの平均電力が1000mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0073】
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る光A/D変換装置100の動作を示すブロック図及びタイミングチャートである。本実施形態に係る光A/D変換装置100は、入力される光アナログ信号を標本化し、符号化し、量子化することにより光ディジタル信号を出力する。図1の例では、光アナログ信号を4ビットの光ディジタル信号にA/D変換することが例示されている。
【0074】
図2は図1の光A/D変換装置100の詳細構成を示すブロック図である。図2において、光A/D変換装置100は主として、光標本化回路41と、光符号化回路200と、光量子化回路300とを備えて構成される。ここで、光符号化回路200は複数の光符号化器201,202,203を備え、光量子化回路300は複数の光しきい値処理器301,302,303を備える。
【0075】
標本化信号発生器30は、所定の周波数の標本化信号を発生してレーザダイオード31及び光標本化回路41に出力する。レーザダイオード31は入力される標本化信号の周期で間欠的に、所定の波長λ1を有し、一定の信号レベルの信号光のパルス列を発生して光アイソレータ32を介して光分配器56に出力する。次いで、光分配器56は入力される信号光を複数分配して、分配後の信号光を光符号化回路200の各光符号化器201,202,203に出力する。一方、光A/D変換すべき入力される光アナログ信号(波長λ2)は光標本化回路41に入力され、光標本化回路41は例えば光時間多重の分離処理などで公知の回路(例えば、非特許文献4参照。)であって、光アナログ信号を上記入力される標本化信号の周期で標本化し、標本化された光アナログ信号である制御光(波長λ2)を発生して光アイソレータ42を介して光分配器55に出力する。次いで、光分配器55は入力される制御光を複数分配して、分配後の信号光を光符号化回路200の各光符号化器201,202,203に出力する。
【0076】
各光符号化器201,202,203は、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、好ましくは、それらの周期が2のべき乗の関係を有し(例えば、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有する。これについては図5を参照して詳細後述する。)、入力される信号光を制御光に従って符号化して符号化後の信号光をそれぞれ光しきい値処理器301,302,303に出力する。さらに、各光しきい値処理器301,302,303は、入力される信号光を所定の2値の光ディジタル信号(本実施形態では、1ビット量子化を行い、出力される光ディジタル信号は2値であるが、多値であってもよい。)に量子化した後、出力する。
【0077】
図3は図2の光符号化器201の詳細構成を示すブロック図であり、他の光符号化器202,203についても光符号化器201と同様に構成される。図3において、光符号化器201は、非線形光ループミラー(Non-linear Optical Loop Miller)10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光ファイバケーブル19とを備えて構成される。
【0078】
ここで、非線形光ループミラー10は、制御光と信号光の間には異なる群遅延のために生じるウォークオフの問題を解消するため、それぞれ異なる群遅延特性(又は分散値)を有する所定長の複数本(少なくとも2本)の分散高非線形光ファイバケーブルを縦続接続してループを構成してなる(例えば、非特許文献3及び4参照。)。非線形光ループミラー10の一端付近及びその他端付近を互いに光学的に結合するように近接することにより、光カップラ11を構成する。当該光カップラ11において、図3に示すように以下のように端子を定義する。
(1)信号光を入力するための、非線形光ループミラー10の一端側の端子をT11とする。
(2)光符号化された信号光を出力するための、他端側の端子をT12とする。
(3)一端近傍であってループ内側の端子をT21とする。
(4)他端近傍であってループ内側の端子T22とする。
【0079】
また、光カップラ11の端子T21の近傍である非線形光ループミラー10の光ファイバケーブルに対して光学的に結合するように別の光ファイバケーブル19が近接配置され、その近接配置部分で光カップラ12を構成する。当該光カップラ12において、図3に示すように以下のように端子を定義する。
(1)制御光を入力するための、光ファイバケーブル19の一端側の端子をT31とする。
(2)光カップラ11の端子T21に近接する、非線形光ループミラー10上の端子をT32とする。
(3)光ファイバケーブル19の他端側の端子をT41とする。
(4)光カップラ11の端子T21よりは、非線形光ループミラー10の他端側(端子T22側)の非線形光ループミラー10上の端子をT42とする。
【0080】
さらに、光ファイバケーブル19の他端は光アイソレータ13を介して無反射終端される。従って、制御光は光ファイバケーブル19の一端から入射して光カップラ12を通過し、一方の制御光は光アイソレータ13を介して無反射終端されるが、光カップラ12で分岐した他方の制御光は光カップラ12の端子T42を介して非線形光ループミラー10中のループ内に出力される。また、非線形光ループミラー10の端子T12側の他端には、信号光の波長λ1のみを帯域通過ろ波するための光帯域通過フィルタ14が接続されている。
【0081】
以上のように構成された非線形光ループミラー10において、光カップラ11の分岐比(例えば、端子T11から入力した光信号を端子T21と端子T22に分岐するときの分岐比)を1:1に設定したとき、端子T11に入射した信号光は完全に入力端側に反射されることになる。本実施形態では、入射される信号光を出力端側に透過させる必要があるので、非線形光ループミラー10を制御光のパルス列を用いた右回りのみに位相シフトを与えることで、右回りで伝播する光信号と、左回りで伝播する光信号とで受ける位相差を変化させることができ、これにより、入力される信号光を反射させるか透過させるかを選択できる。この動作特徴を光符号化器と光しきい値処理器におけるしきい値処理やスイッチングに利用する。
【0082】
本実施形態においては、信号光と制御光との間のXPM(Cross Phase Modulation:相互位相変調)により、非線形光ループミラー10のループ中の右回りのパルスと左回りのパルスに位相差が生じさせ、制御光の信号レベルに従って、信号光の出力レベルを変化させる。すなわち、非線形光ループミラー10における右回りの光信号の伝播において、信号光の電界をE1とし、制御光の電界をE2とすると、電界E1が長さLの光ファイバケーブルを伝送した際に受ける非線形性による位相変化φ1RNLは次式で表される。
【0083】
[数1]
φ1RNL=γL[|E1|2+2|E2|2] (1)
【0084】
ただし、ω1は電界E1の角周波数であり、非線形性を表す係数γを用いて次式で表される。
【0085】
[数2]
γ=(ω1n2)/(cAeff) (2)
【0086】
ここで、cは真空中での光速であり、Aeffはファイバの有効コア断面積であり、n2は非線形屈折率係数である。また、E1E2での偏波面は揃っているとする。さらに、非線形光ループミラー10における左回りの伝播において、信号光の電界をE1とし、長さLの光ファイバを伝送した際に受ける位相変化φ1LNLは次式で表される。
【0087】
[数3]
φ1LNL=γL|E1|2 (3)
【0088】
このとき、右回りと左回りの信号光が受ける位相差Δφ1NLは次式で表される。
【0089】
[数4]
Δφ1RNL=2γ|E2|2L (4)
【0090】
この位相差のために右回りと左回りの信号光は干渉を起こす。位相差は制御光のパルス列の強度に比例するために、信号光のパルス列の非線形光ループミラー10からの出力信号光は、制御光の入力電力に対して、図4に示すような周期的な特性を示す。
【0091】
なお、多周期にわたる特性の利用には、制御光により高いパワーが必要であるが、このためには、例えばより非線形が高い光ファイバケーブルを用いて非線形光ループミラー10を構成すればよい。また、非線形光ループミラー10のループ長については、ループ長が長いほど、制御光は弱くて良いために出来るだけ長くすることが好ましいが、群遅延の差をできるかぎり小さくする必要があると考察できる。
【0092】
図5は図3の光符号化回路200の動作例を示すグラフ及びブロック図である。図5においては、各光符号化器201,202,203は、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、特に、それらの周期が2のべき乗の関係を有している場合であり、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有している。図5の動作例では、入力された時刻t1における信号光が光符号化器201,202,203により符号化された後、光しきい値処理器301,302,303により量子化されて(詳細後述)、3ビットの符号「001」の光ディジタル信号が出力されることを示されている。なお、Nビットの符号の光ディジタル信号を得るためには、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器を設ける必要がある。ここで、Nは量子化ビット数を表し、自然数である。
【0093】
図6は図2の光しきい値処理器301の詳細構成及びその動作を示すブロック図及びグラフであり、光しきい値処理器302,303も光しきい値処理器301と同様に構成される。図6において、光しきい値処理器301は、非線形光ループミラー20と、2個の光カップラ21,22と、光アイソレータ23と、光帯域通過フィルタ24と、レーザダイオード25と、光アイソレータ26と、光ファイバケーブル29とを備えて構成される。ここで、非線形光ループミラー20と、2個の光カップラ21,22と、光アイソレータ23と、光帯域通過フィルタ24と、光ファイバケーブル29との接続構成は、光符号化器201と同様である。
【0094】
レーザダイオード25は、光標本化信号発生器30から入力される標本化信号の周期で間欠的に、所定の波長λ3を有し、一定の信号レベルの搬送波光のパルス列(搬送波光はパルス列に代えて、連続光であってもよい。)を発生して光アイソレータ26を介して非線形光ループミラー20の一端(光カップラ21の入力端)に入射するように出力する。一方、光符号化器201からの信号光は光ファイバケーブル29の一端を介して入射して光カップラ22を通過分岐し、光カップラ22を通過する一方の信号光は光アイソレータ23を介して無反射終端されるが、光カップラ22で分岐した他方の信号光は光カップラ22を介して非線形光ループミラー20中のループ内に出力される。また、非線形光ループミラー20の他端には、搬送波光の波長λ3のみを帯域通過ろ波するための光帯域通過フィルタ24が接続されている。
【0095】
以上のように構成された光しきい値処理器301の動作について図7を参照して説明する。図7は1ビット量子化の動作例であり、光しきい値処理器301の入出力が例えば線形特性401であれば、入力される信号光はそのまま出力されて量子化できないが、例えば第1の入出力特性402(光強度に関する)を有する場合、より小さい光信号はより小さく0に近づく一方、より大きな光信号はより大きく1に近づくように変換される。さらに、第2の入出力特性403(光強度に関する)を用いる方がより2値化に近い出力光を得ることができる。なお、第2の入出力特性403を得るために、詳細後述するように、光しきい値処理器を多段で縦続接続することが好ましい。
【0096】
図8は図2の光符号化回路200及び光量子化回路300の詳細構成を示すブロック図であり、図9は図8の各光符号化器201,202,203の動作例を示すグラフであり、図9(a)は光符号化器201の動作例を示し、図9(b)は光符号化器202の動作例を示し、図9(c)は光符号化器203の動作例を示す。また、図10は図8の各光しきい値処理器301,302,303の動作例を示すグラフであり、図10(a)は光しきい値処理器301の動作例を示し、図10(b)は光しきい値処理器302の動作例を示し、図10(c)は光しきい値処理器303の動作例を示す。
【0097】
図8に示すように、光符号化回路200と光量子化回路300とを構成した場合、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性をそれぞれ図9(a)、図9(b)、図9(c)に示している。ここで、各光符号化器201,202,203は、図9から明らかなように、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、特に、それらの周期が2のべき乗の関係を有している場合であり、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有している。これら図9に示す信号光をそれぞれ光しきい値処理器301,302,303に入射した場合、図10に示すようにある程度量子化することができるが、さらに、急峻な量子化特性を得ることが所望される。
【0098】
これを実現するために、図11に示すように、光量子化回路300Aにおいて、光しきい値処理器を多段で縦続接続している。図11において、光符号化器201の後段において、2段で縦続接続された光しきい値処理器301,311が接続されている。また、光符号化器202の後段において、3段で縦続接続された光しきい値処理器302,312,322が接続されている。さらに、光符号化器203の後段において、4段で縦続接続された光しきい値処理器303,313,323,333が接続されている。以上のように構成された光量子化回路300Aの動作例を図12に示している。図12から明らかなように、光しきい値処理器の縦続接続の段数が多いほど、より急峻な矩形化された光強度に関する入出力特性を得ることができる。
【0099】
以上の実施形態においては、非線形光ループミラーを用いて光しきい値処理器301,302,303を構成しているが、本発明はこれに限らず、非線形光ループミラーのループ中に増幅器を備えた非線形増幅ループミラー(Nonlinear Amplifying Loop Mirror;以下、NALMという。例えば非特許文献4参照。)を用いて構成してもよい。
【0100】
以上の実施形態においては、光符号化器201,202,203を非線形光ループミラー10を用いて構成し、光しきい値処理器301,302,303を非線形光ループミラー20を用いて構成しているが、本発明はこれに限らず、光符号化器201,202,203や光しきい値処理器301,302,303を、光カー効果などの非線形光学効果を有する光ファイバケーブル又は光導波路を用いて構成してもよい。ここで、光カー効果とは、光ファイバケーブル中で発生する非線形光学効果の現象をいい、一般に、光信号の強度に依存して屈折率が変化する非線形屈折率現象をいう。非線形光ループミラー10と同様の周期特性が得られることが、例えば非特許文献5及び6において開示されている。
【0101】
図23は、本発明の第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器においては、図23に示すように、3本の光導波路81,82,83が形成され、ここで、少なくとも所定の2箇所でこれら2本の光導波路81,82が光学的に結合するように近接されてそれぞれ光カップラ91,92を形成する。
【0102】
光カップラ91の光導波路82上の入力端子をT101とし、その出力端子をT103とする一方、光カップラ91の光導波路81上の入力端子をT102とし、その出力端子をT104とする。また、光カップラ92の光導波路82上の入力端子をT111とし、その出力端子をT113とする一方、光カップラ92の光導波路81上の入力端子をT112とし、その出力端子をT114とする。さらに、光カップラ92の出力端子T114には、後述する出力信号光のみを帯域ろ波する光帯域通過フィルタ95が接続される。
【0103】
また、光カップラ91の出力端子T104と、光カップラ92の入力端子T112との間において、光導波路81に対して光学的に結合するように近接して光導波路83が形成されて、当該近接箇所において、光カップラ93が形成される。光カップラ93の光導波路81上の入力端子をT121とし、その出力端子をT123とする一方、光カップラ93の光導波路83上の入力端子をT122とし、その出力端子をT124とする。さらに、光カップラ93の出力端子T124は光アイソレータ94を介して無反射終端される。
【0104】
以上のように構成された、導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器において、波長λ1を有し所定の周期の信号光のパルス列を光カップラ91の入力端子T101に入力することにより、当該信号光のパルス列を光導波路82及び81に分配して入射させる一方、波長λ2を有し所定の周期の制御光のサンプリングされたアナログパルス列を光カップラ93の入力端子T122に入力することにより、当該制御光のパルス列を光導波路81に入射させる。ここで、信号光と制御光との間のXPMにより、制御光のパルス列に従って、光カップラ91で分配された光導波路81上の片側の信号光のみに位相変化を生じさせ、上記光カップラ91により分配した2つの信号光を光カップラ92で再び合成することにより、制御光の信号レベルに従って、信号光の出力レベルを変化させることができる。当該導波路型マッハツェンダ干渉計から出力される出力信号光は、光カップラ92から光帯域通過フィルタ95を介して取り出し、当該出力信号光は、制御光の出力電力に対して、図4に示すような非線形ループミラーの場合と同様な周期的な特性を示す。当該導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器は、図3の光符号化器201と同様に、制御光を光符号化して、光符号化された出力信号光を出力する。また、図23の光符号化器は、図6の光しきい値処理器301と同様に、光しきい値処理器としても動作させることができる。
【0105】
図24は本発明の第2の変形例に係る分散不平衡型非線形光ループミラーを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。第2の変形例に係る光符号化器における分散不平衡型非線形光ループミラー(Dispersion Imbalanced-Nonlinear Optical Loop Mirror;以下、DI−NOLMという。例えば、非特許文献7,8及び9参照。)は、光受動素子のみで構成される非線形光ループミラーとして知られている。
【0106】
第2の変形例に係るDI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、図24に示すように、分散値D1と長さL1を有する光ファイバケーブル101と、分散値D2(D2<D1))と長さL2を有する光ファイバケーブル102とを縦続に接続し、光ファイバケーブル101の入力端と、光ファイバケーブル102の出力端とを、互いに光学的に結合するように近接することにより、4つの端子T121,T122,T123,T124を有する光カップラ105を形成する。また、光カップラ105の端子T124の近傍であって、光ファイバケーブル102の途中に、偏波コントローラ106を設けるとともに、光カップラ105の出力端子T122には、光ファイバケーブル102及び分散補償光ファイバケーブル103を介して、出力制御光を取り出す光帯域通過フィルタ104を接続されている。
【0107】
以上のように構成されたDI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、非線形光ループミラー(NOLM)や非線形増幅ループミラー(NALM)と同様に、入射光である制御光の強度に依存する特性を有している。また、偏波コントローラ106は、ループ部の偏波を調節するために設けられ、分散補償光ファイバケーブル103はループ部の光ファイバケーブル101,102で受けた分散を補償するものであり、DI−NOLMには必要不可欠なものである。
【0108】
DI−NOLMにおける光カップラ105の入力端子T121に1つの光パルスが入射すると、光カップラ105により時計回りのパルス及び反時計回りの光パルスに1:1の比率で分配される。時計回りの光パルスの伝播に関しては、当該光パルスが光ファイバケーブル101に入射すると、高分散(分散値D1)のためパルス幅が拡がり、ピークパワーが低下する。その後、光パルスは分散値が非常に低い(D2≒0)光ファイバケーブル102を低いピークパワーを維持しながら伝播する。それに対して、反時計回りの伝播に関しては、まず、入射パルスは分散値が小さい光ファイバケーブル102を高いピークパワーを維持しながら伝播する。その後、光パルスは光ファイバケーブル101に入射される。光ファイバケーブル101では高い分散値のために入射後すぐに分散効果を受け、パルス幅が広がりピークパワーが低下する。時計回りと反時計回りの光パルスを比較すると、反時計回りの光パルスの方が高いピークパワーで伝播する距離が長いため、ループ部で受けるSPM(Self Phase Modulation)の影響は時計回りの光パルスに比べて大きい。このようにして、時計回りの光パルスと反時計回りの光パルスのループ部で受けたSPMの違いによって、入射する制御光の光パルスを透過、あるいは反射させることが可能となる。DI−NOLMの特長としては、信号光や光増幅器等が不要であり、光受動素子のみで構成されること、3dBの光カップラ105を用いることで、連続光(Continuous-Wave:CW)を完全に反射できるということ、分散補償光ファイバケーブル103を用いているためループ部の光ファイバケーブルの長さを比較的長くできることが挙げられる。このDI−NOLMを用いることで光しきい値処理が光受動素子のみで簡単に行うことが可能となる。
【0109】
以上のように構成された、DI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、図6の光しきい値処理器301と同様に動作させることができる。
【0110】
図25は本発明の第3の変形例に係る光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。当該光カー効果を有するカーシャッタは、図25に示すように、例えば2.0以上の複屈折を有する高複屈折光ファイバケーブル111と、それに接続される偏光子112とを備えて構成され、例えば非特許文献5の図6.1において開示されているものである。
【0111】
図25において、信号光と制御光とをともに直線偏光で互いに45度の角度を持たせて高複屈折光ファイバケーブル111の入力端から入力する。信号光が無い場合には制御光は偏光子112で遮断されて出力端から出力されないが、信号光を入力することで信号光による複屈折のために制御光の偏光が回転し制御光は偏光子112を通過して出力されるようになる。制御光の出力電力は信号光の強度により周期的に変化する。
【0112】
以上のように構成された、光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器においては、図3の光符号化器201と同様に、制御光を光符号化して、光符号化された出力信号光を出力する。また、図25の光符号化器は、図6の光しきい値処理器301と同様に、光しきい値処理器としても動作させることができる。
【実施例1】
【0113】
図13は本実施形態に係る実験システムの詳細構成を示すブロック図である。図13の実験システムにおいて、ファイバリングレーザ(FRL)50は例えば80GHzの標本化周波数を有する光アナログ信号を発生して光分配器57に出力し、光分配器57は入力される光アナログ信号を2分配して光帯域通過フィルタ51,52に出力する。光帯域通過フィルタ51は入力される光アナログ信号を、所定の波長λ1のみを帯域通過ろ波しかつ、例えば2ピコ秒のパルス幅を有するパルス列を発生して光分配器56に出力し、光分配器56は入力される光アナログ信号を3分配して、遅延回路15及び光アイソレータ16を介して各光符号化器201,202,203の非線形光ループミラー10に出力する。
【0114】
一方、光帯域通過フィルタ52は入力される光アナログ信号を、所定の波長λ2のみを帯域通過ろ波しかつ、例えば8ピコ秒のパルス幅を有するパルス列を発生して光変調器53に出力し、光変調器53は入力される光アナログ信号を、データ信号発生器54からのデータ信号に従って強度変調した後、光分配器56に出力する。ここで、波長λ2は波長λ1の近傍の波長である。光分配器55は入力される光アナログ信号を3分配して、光増幅器17及び光アイソレータ18を介して各光符号化器201,202,203の光カップラ12を介して非線形光ループミラー10のループ内に出力する。
【0115】
各光符号化器201,202,203では、信号光を制御光の信号レベルに従って符号化し、符号化された信号光は光帯域通過フィルタ14、光増幅器27及び光アイソレータ28を介して各光しきい値処理器301,302,303の光カップラ22を介して非線形光ループミラー20のループ中に出力される。一方、レーザダイオード25により発生された波長λ3の搬送波光(ここで、波長λ3は波長λ1の近傍波長である。)は光アイソレータ26を介して各光しきい値処理器301,302,303の非線形光ループミラー20のループ中に入力される。これにより、各光しきい値処理器301,302,303では、搬送波光を信号光の信号レベルに従って量子化し、量子化された搬送波光は光帯域通過フィルタ24を介して外部光回路に出力される。
【0116】
図14は図13の光符号化回路200の符号化処理の動作例を示すグラフであって、図14(a)は光符号化器201の符号化処理の動作例を示し、図14(b)は光符号化器202の符号化処理の動作例を示し、図14(c)は光符号化器203の符号化処理の動作例を示す。また、図15は図13の光符号化回路200を用いた符号化処理における制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対する3ビット符号化値(#1,#2,#3)を示すグラフである。図14に示すように、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性を設定することにより、入力される制御光の入力電力レベルに応じて適切に符号化されることがわかる。また、図15に示すように、制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対して符号値は1対1で対応するように符号化されており、上述のように、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性(特に、非線形光ループミラー10の周期特性)を変更することにより符号化処理に自由度を与えることができる。
【0117】
図16は図13において理想的な非線形光ループミラーを用いて実験システムを構成したときに、1段の光しきい値処理器の処理後のアナログパルスの振幅を変化したときの符号化後の3ビット符号化値(#1,#2,#3)とそのパルス波形を示す図である。図16から明らかなように、アナログパルスの振幅に応じて適切に符号化された光ディジタル信号が得られることがわかる。
【実施例2】
【0118】
次いで、本発明者らが行ったシミュレーションとその結果について以下に説明する。このシミュレーションの諸元を以下の表に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
図17は本実施形態に係る第1のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図17において、ファイバリングレーザ(FRL)61は波長λ1の信号光を発生して光符号化器201の非線形光ループミラー10のループ中に出力する。一方、ファイバリングレーザ(FRL)62は波長λ2の制御光を発生して光遅延回路63及び光カップラ12を介して光符号化器201の非線形光ループミラー10のループ中に出力する。光符号化器201は信号光を入力される制御光の信号レベルに応じて符号化し、符号化された信号光を光帯域通過フィルタ14を介して出力する。
【0123】
図18は図17の第1のシミュレーションの結果であって、制御光(λ2)のパルスのピークパワーに対する信号光(λ1)のパルスのピークパワーを示すグラフである。図18から明らかなように、図17のシミュレーション値として、周期特性の理論値に近い結果が得られた。ただし、当該シミュレーションでは、四光波混合を無視している。なお、シミュレーション値と理論値との差は、非線形光ループミラー10の分散によるウォークオフによるものと考えられる。
【実施例3】
【0124】
図19は本実施形態に係る第2のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図19の第2のシミュレーションでは、図17のシミュレーションに比較して、ファイバリングレーザ62により発生したピークパワー1Wの制御光を、3段の3dB光カップラ71,72,73を用いて減衰させ、3つの光信号レベルを有する制御光を発生してそれぞれ各光符号化器201,202,203に入力したときの出力信号光のレベルを測定した。なお、光カップラ71からの制御光のレベルを1とすると、光カップラ72からの制御光のレベルは1/2となり、光カップラ73からの制御光のレベルは1/4となる。
【0125】
図20は図19の第2のシミュレーションの結果であって、図20(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図20(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図20(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。図20から明らかなように、各光符号化器201,202,203に入力される制御光のレベルに応じて符号化された信号光が得られている。
【実施例4】
【0126】
図21は本実施形態に係る第3のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図21の第3のシミュレーションでは、図19のシミュレーションに比較して、ファイバリングレーザ62により発生した制御光のピークパワーを1.5Wに変更した場合であり、その他の構成は第2のシミュレーションと同様である。
【0127】
図22は図21の第3のシミュレーションの結果であって、図22(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図22(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図22(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。図22から明らかなように、各光符号化器201,202,203に入力される制御光のレベルに応じて符号化された信号光が得られている。また、図20と図22のシミュレーション結果を比較すれば、適切に符号化されていることがわかる。
【0128】
以上説明したように、本実施形態に係る光A/D変換装置100によれば、標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光A/D変換することができ、標本化周波数の上限は数百ギガ数テラヘルツオーダーまで原理的に可能であり、電気回路のA/D変換の標本化周波数の限界を数十ギガヘルツとすると、二桁程度の高速化が可能である。また、入出力が光信号なので光ネットワークへの応用に適している。
【0129】
第2の実施形態.
次いで、第2の実施形態では、上記光A/D変換装置100などに用いられる非線形光ループミラー(Nonlinear Optical Loop Mirror:以下、NOLMという。)について以下に説明する。
【0130】
従来用いられてきたNOLMは、入力光パワーと出力光パワーの間に図27のような関係がある。ここで、入力光パワーとは、光パルスのSPM(self-phase modulation)による位相シフトを利用した干渉スイッチ(セルフスイッチ)の場合は信号光の入力パワーであり、制御光と信号光のXPM(cross-phase modulation:相互位相変調)による位相シフトを利用した干渉スイッチ(XPMスイッチ)の場合は制御光の入力パワーである。また出力光パワーとは、NOLMの透過ポートより出力される信号光の出力光パワーである。また、以後、特に指定する場合を除き、制御光及び信号光はパルスの形態をとるものとする。
【0131】
入力パワーが十分小さい場合は、出力パワーも抑圧される。一方、入力パワーを大きくしていくと出力パワーも正弦波曲線に従って大きくなり、入力パワーがP1のときにピーク値をとる。この伝達関数を用いると、制御光のあるなしによる信号光の反射・透過を制御できるスイッチが実現できる。あるいは伝送により振幅のゆらいだ信号を制御光とし、それによるプローブ光のスイッチングを行うと、0レベルや1レベルが雑音によってゆらいだとしても、出力ではゆらぎが抑圧され、波形整形効果が期待できる。このように、半周期の正弦波曲線からなる伝達特性を持つNOLMがこれまで実現され、用いられてきた。
【0132】
このようなNOLMとしては、光パルスのSPMによる位相シフトを利用した干渉スイッチ(例えば、非特許文献3参照。)、制御光と信号光のXPMによる位相シフトを利用した干渉スイッチ(例えば、非特許文献10参照。)の提案が発端であり、これに関連して高非線形ファイバを用いたNOLM(例えば、特許文献2参照。)、NOLM中のFWMを利用した信号処理(例えば、特許文献3参照。)、制御光と信号光のウォークオフを抑圧することでXPMの効率を向上したNOLM(例えば、特許文献5、特許文献2、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献10参照。)、そしてファイバを平均分散零の分散マネージメント構成とし、ウォークオフを減らすことに加え、制御光パワーの減少要因であるFWMを抑圧することによってXPMの効率を向上したもの(例えば、特許文献10参照。)などがある。また、NOLMにおける偏光に関する特性についてもいろいろ知られている(例えば、特許文献4及び特許文献9参照)。
【0133】
一方、光符号化器や光しきい値処理器では、図28のように複数の周期からなる正弦波曲線である伝達特性を持つNOLMが使用されるが、従来技術ではこのようなNOLMは実現されていない。以下に示すように本発明の実施形態に係るNOLMは1周期以上の伝達関数を有し、光A/D変換をはじめ種々の光信号処理に適した特性を与えることができる。
【0134】
図26にNOLM500の構成を示す。NOLM500は、光ファイバ501と、光信号の入力端510から入力された光信号530を2分岐して光ファイバ501の両端511、512に出力し、かつ上記光ファイバ501の両端511,512から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端510及び他の出力端513に分岐出力するように接続された光カップラ502と、制御光531を上記光ファイバ501に入力する制御光入力手段524と、上記光ファイバ501の光路上に配置される非線形媒質である高非線形ファイバ(以下、HNLF(High Non-Linear optical Fiber)という。)504からなる。ここで、入力信号光530は入力パワーPinと波長λSを有し、制御光531は、ピークパワーPcと平均パワーPaveと波長λCとを有する。
【0135】
光信号の入力端510から入力した入力パワーPinの信号光530は、光カップラ502でそれぞれ位相変化を伴わない伝搬光532、位相がπ/2だけ進んだ伝搬光533に分岐されて光ファイバ501で形成されたループを図面上それぞれ右回り、左回りに伝搬する。伝搬光532は、制御光入力手段524から入力されたピークパワーPc、平均パワーPaveの制御光531とできるだけ広い範囲で重なるように合波されて、非線形性係数がγで長さがLの非線形媒質であるHNLF504をへて光ファイバ端512から光カップラ502に入力する。
【0136】
また、伝搬光533はファイバ501で形成されたループを図面上左回りに伝搬し、制御光とはほとんど重なることなく、HNLF504をへて光ファイバ端511から光カップラ502に入力する。
【0137】
制御光がない場合、右回りと左回りで発生する位相シフトにはほとんど差が生じない。そのため出力端513では位相シフトを伴わない右回りの伝搬光532の成分と光カップラ502で2回にわたってπ/2の位相シフトを受けた左回りの伝搬光533の成分とが相殺しあって出力は0となる。また、入力端510ではともに1回ずつπ/2の位相シフトを光カップラ502で受けた伝搬光532、533の各成分が強めあい、入力パワーとほぼ同じパワーの戻り光が入力した信号光530と逆方向に入力端510へ出力される。
【0138】
制御光531がある場合、伝搬光532はこれと重なるようにして、HNLF504を伝搬するため、伝搬光532と制御光531の間では制御光531のパワーに依存した相互位相変調(Cross-Phase Modulation:XPM)による位相シフトが発生する。一方、伝搬光533はこのXPMに起因する位相シフトがほとんど発生しないため、伝搬光532と伝搬光533の間には制御光531のパワーに依存した位相シフト差ができ、これによって入力端510及び他の出力端513に出力されるパワーを制御することができる。
【0139】
この系において、出力パワーPoutの出力信号光534と、入力パワーPinの入力信号光530のパワー比は以下の伝達関数によって与えられる。
【0140】
[数5]
Pout/Pin=[1−cos(φXPM)]/2 (5)
[数6]
φXPM=2γ(Pc−Pave)L (6)
【0141】
ここで、1周期以上、より好ましくは、2周期以上の伝達関数を実現するためには、制御光と信号光の間で発生するXPMによる信号光の位相シフトの差φXPM=2γ(Pc−Pave)Lとして、少なくとも2π(1周期、図28のP2に相当)あるいは4π(2周期、図28のP4に相当)が必要である。
【0142】
そこで、
(i)非線形媒質であるHNLF504の非線形性、距離、そして制御光531のパワーのいずれか、あるいはすべてを大きくする、
(ii)制御光531と信号光530の偏光状態を最適(XPMの発生効率を最大)にする、
(iii)制御光531と信号光530の波長差が分散を介して群遅延が発生する(以下、ウォークオフという)のを避けるために、非線形媒質であるHNLF504の分散値もしくは与えられた分散値に対して信号光530と制御光531の波長配置を変えることで、ウォークオフを抑えるように設定する、
(iv)ウォークオフも考慮に入れて、時間軸上で制御光531と信号光530の位置を最適にする、などの方法によって、効率よくXPMを発生させ位相シフトを大きくすることができる。
【0143】
また、上記(iii)を実現するには、任意の波長で分散値が零のファイバ(分散フラットファイバ;DFF)を用いるか、一定の分散スロープを持つ通常の分散シフトファイバ(DSF)をファイバ504上で用いて、制御光531の波長λCと信号光530の波長λSの中間にそのファイバ(DSF)の零分散波長λ0を設定する方法が考えられる。後者の方法ではファイバ(DSF)の零分散波長が長手方向に揺らいだ場合に、波長λCと波長λSの波長差Δλと、分散値の積に比例してウォークオフが発生するため、その積をウォークオフの発生が問題にならない程度に抑制する必要がある。
【0144】
いずれの場合も波長λCは零分散波長λ0に近くなり、波長λCにおける分散値が零に近い値となる。このとき制御光531をポンプ光とする縮退四光波混合(FWM)に伴う、パラメトリック利得が信号光530に対して生じる。この現象によって信号光530は右回りに制御光531とともに伝搬する際に増幅されるが、一方で左回りにそれのみで伝搬する信号光530は利得を受けないので、結果的に伝搬光532及び533のパワーに不均衡状態が発生する。そのような不均衡状態が顕著になると、図28の入力パワーP2やP4において得られる出力パワーが十分に小さな値とならず、大きな問題となる。
【0145】
図28の伝達関数において重要な点は、入力パワーP2やP4に対する出力パワーが、ピーク値(入力パワーP1やP3に対する出力パワーの値)を1とした場合に対して最適に設定したしきい値以下となることである。
【0146】
つまり、NOLMの出力信号に対して、先に設定したしきい値を適用することで、ディジタル情報処理の基本である2進数の信号処理が実現される。例えばそのしきい値を0.5と設定したとき、入力パワーがP2やP4のときに、もし前述のパラメトリックプロセスによる利得が3dBを上回れば、位相干渉によって透過されないはずの光が、パワー0.5を上回って透過されてしまうため、2進数の信号処理を行うことが不可能になる。一般に言えば、しきい値T(0<T<1;P2及びP4における出力パワーと、P1及びP3における出力パワーの比)、パラメトリック利得G(>1;非線形媒質における伝搬光532の入出力パワーの比)に対して、G<2T+1であることが必要である。これによって、入力パワーP2やP4に対する出力パワーを所望のしきい値以下に抑えることができ、光A/D変換をはじめとする光による2進数の信号処理が実現される。この事実は、図28の伝達関数を持つNOLMを実現する上で非常に重要な知見であるが、これまで知られていなかった。
【0147】
そこで、制御光531と同じ向きに伝搬する信号光530が制御光531から受けるパラメトリック利得を所定の値(例えば3dB)以下に抑えるために、本発明の実施形態では、以下の方法を提案する。非特許文献5によると、一般に光ファイバ中において、直線偏光である周波数ωCの連続光をポンプ光とする場合に、ポンプ光と同じ偏光状態で同じ方向に伝搬する周波数ωSの信号光が得る縮退パラメトリック利得Gは、次式で与えられる。なお、ここでの議論で用いられる「ポンプ光」は、本発明の実施形態に係るNOLMにおける制御光に相当する。
【0148】
[数7]
G(z)=1+(γ2P02/g2)sinh2(gz) (7)
[数8]
g2=γ2P02−κ2/4 (8)
[数9]
κ=Δk+2γP0 (9)
[数10]
Δk=Δω2k0” (10)
【0149】
ここで、z,γ,P0,k0”,Δωはそれぞれファイバの長さ[m]、ファイバの非線形定数[W−1m−1]、ポンプ光のパワー[W]、ファイバの分散値[s2/m]、そしてポンプ光と信号光の周波数差[s−1]であり、ファイバの4次以上の分散や損失の効果は無視した。これらの値を与えれば、信号光が受けるパラメトリック利得は式(7)乃至式(10)から一意に決定できる。例えば、z=0.32[km],γ=17.5[W−1km−1]、P0=2[W]とした場合に、k0”,Δωの値に対する利得の変化について考えてみる。なお、ファイバ分散値はk0”[ps2/km]に対してk0”=−1.284Dの関係を持つ分散D[ps/nm/km]を用いることとし、周波数差Δωはポンプ光と信号光の波長差Δλ=|λC−λS|を用いて、Δω=2πcΔλ/λと書けるものとする。ただし、c=2.998×108[m/s]及びλ=1.55[μm]はそれぞれ真空中における光速及び搬送波の波長である。まず、ポンプ光と信号光の波長差Δλを10nmとおき、ポンプ光の波長λCにおけるファイバ分散値D(λC)を変化させた場合に、式(7)乃至式(10)の計算より得られるパラメトリック利得を図29に示す。
【0150】
図29において、D≒1[ps/nm/km]で見られる大きな利得は、異常分散領域で発生する変調不安定現象として知られている。例えば、パラメトリック利得を3dB以下に抑えるためには、正常分散領域でA点における分散値D’よりも小さな値にするか、異常分散領域においてB点における分散値D”よりも大きな値に設定する必要がある。図29において一般に|D’|<|D”|であるが、分散値の絶対値に比例するウォークオフを低減することを考えると、絶対値の小さな正常分散値であるD’を採用することが好ましい。また、大きなエネルギーを持つパルスが異常分散ファイバを伝搬すると、高次ソリトンを励起することで制御光の波形が著しく劣化し、結果的にXPMの効率が劣化することも考えられるため、この点からも、異常分散値D”を採用することは、D’と比べて好ましくない。ただし、ウォークオフやソリトン励起による波形劣化が問題とならなければ、図29のD>D”の条件で、ファイバの分散値を異常分散とすることも可能である。
【0151】
次に、分散値をD=−0.62[ps/nm/km]とおき、ポンプ光と信号光の波長差Δλ=|λC−λS|を変化させたときに、式(7)乃至式(10)より得られるパラメトリック利得を図30に示す。図30より、Δλを大きくすることで、パラメトリック利得が抑圧されることがわかる。例えばパラメトリック利得を3dB以下にするという条件のもとで、ウォークオフやパルスの波形広がりなど分散による影響を最小にしたければ、ポンプ光と信号光の波長差を図30のC点における値Δλ’に設定すればよい。
【0152】
以上のように、パラメトリック利得を一定値以下に抑圧するためには、ポンプ光の波長におけるファイバの分散値を、一定値以上のパラメトリック利得を与える最小の分散値(図29中のA点に対応)よりも小さな値にすること、もしくは一定値以上のパラメトリック利得を与える最大の分散値(図29中のB点に対応)よりも大きな値にすることと、ポンプ光と信号光の波長差を一定値以上のパラメトリック利得を与える最大の波長差(図30中のC点に対応)よりも大きくすることが有効であることが示された。なお、図29、図30中のA,B,C点はそれぞれのグラフの包絡線上で与えてもよい。
【0153】
いま考えている図26のNOLM500中で同一方向に伝搬する制御光531と信号光530(伝搬光532)の間で発生するパラメトリックプロセスを考える場合、それらが単一周波数の連続光ではなく、パワーが時間によって変化するパルスであること、そしてパルス同士のウォークオフや偏光状態の不一致などにより制御光及び信号光パルス間のFWMの効率が劣化することなど、様々な要因から式(7)乃至(10)の計算結果は誤差を生ずる。しかし、図29や図30に示したパラメトリック利得の各種パラメータ依存性は、NOLM500中のパルスの場合についても、実験的に測定することが可能であり、具体的にどのような分散値、あるいは波長差を与えればよいかという指針を与えることができる。
【0154】
図31及び図32において、NOLM500中を同一方向に伝搬する制御光531と信号光530(伝搬光532)の間で発生するパラメトリック利得を効果的に抑圧し得る、ファイバの波長分散特性と制御光、信号光の波長配置を示す。図31はファイバの波長分散特性がdD/dλ>0の場合であって、λC<λS<λ0である。さらに、図29及び図30において、いまの場合についての分散D’及び波長差Δλ’を用いて、D(λC)<D’、Δλ=|λC−λS|>Δλ’を満たしているものとする。図32はdD/dλ<0の場合であって、以下は図31の条件と同様である。
【0155】
ポンプ光である制御光531の波長λCにおける正常分散値D(λC)<0及び制御光531と信号光530の波長差Δλは、それぞれが大きい値であるほどパラメトリック利得も抑圧されるが、逆に大きくしすぎると、ウォークオフの増大や、分散によるそれぞれのパルスの波形ひずみに起因してXPMの効率が劣化するため好ましくない。そこで、信号光530が得るパラメトリック利得がある値以下になるように、かつXPMの効率が低減されないよう制御光531と信号光530のウォークオフや時間差、あるいはそれらの偏光状態を最適に設定した設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つNOLMが実現可能となる。なお、ウォークオフは制御光531と信号光530の波長差Δλと、制御光531の波長λCにおける分散値D(λC)との積の絶対値に比例するので、それを抑制すればよい。また、図31及び図32で制御光と信号光の波長を入れ換えた場合でも、D(λC)<D’が満たされていればよい。またループ中のファイバ及び非線形媒質の偏光が常に保持されるような構成にすることで、XPMをより効率的に発生させることができる。具体的には偏光保持ファイバを用いて、制御光と信号光が常に同じ直線偏光であるようにすればよい。その際パラメトリックプロセスによる信号光の利得も増大するが、その点も考慮して先に述べた設計方法を適用すればよい。
【0156】
以上に図28のような伝達関数をもつNOLMを設計する方法について述べたが、これを簡単にまとめたものを図33に示す。本発明の実施形態に係るNOLMは、図33のフローチャートに示される設計処理の手順に従って行われる。
【0157】
図33において、まず、ステップS1において、NOLMの伝達関数を決定し、すなわち、1−cosφで角度φの最大値φmaxを決定する。次いで、ステップS2において、伝達関数において、所望の信号処理に適したしきい値を決定し、ステップS3において、NOLMに用いるファイバパラメータ及び制御光の条件を仮決めする。そして、XPMによる位相シフトの最大値が、角度の最大値φmaxに及んでいるか否かが判断され、YESのときはステップS5に進む一方、NOのときはステップS3に戻る。さらに、ステップS5において、伝達関数の角度φ=2nπ(n=1,2,…)に対する条件で、信号光が制御光から受けるパラメトリック利得が先に設定したしきい値以下であるか否かが判断され、YESのときはステップS6に進む一方、NOのときはステップS3に戻る。さらに、ステップS6では、当該条件での設計を確定し、当該設計処理を終了する。
【0158】
本発明の実施形態によって、出力光パワーの制御範囲が1周期をこえ、位相差2nπ(n=1,2,…)における出力光パワーをピークパワーに対して光信号処理で必要とされるしきい値以下に抑えることができるNOLMが実現された。この用途のひとつは、光A/D変換である。他に考えられる形態は、例えばQAM、PSK、ASKなど多値通信の復号化がある。別の視点からは、NOLM中のXPMを用いたスイッチングではなく、制御光によって信号光に与えられるパラメトリック利得を積極的に用いたスイッチングデバイスの実現なども考えられる。
【実施例5】
【0159】
図34は本発明の実施形態に係るNOLM550の形態を示している。以下では、NOLMの550伝達関数においてしきい値を0.5と設定した場合の信号処理を仮定して、これに対応できるNOLMの実施例について述べる。
【0160】
NOLM550において、信号光は入力端580から入力し3dBカップラ552で分岐された後にそれぞれ光ファイバ551を逆方向に伝搬する。右回りの信号光には制御光入力端571から入力される制御光がWDMカップラ574を介して広い範囲で重なるように合波された後に、17dBカップラ553を介してHNLF(高非線形ファイバ)554を伝搬する。NOLM550中で用いられているHNLF554はファイバ長が380m、非線形定数が17.5W−1km−1、零分散波長が1575nm、分散スロープが0.027ps/nm2/km、ファイバ損失が0.67dB/kmである。また幅が約15psのパルス列である制御光の波長は1552nm、幅が約3.4psのパルス列である信号光の波長は1568nmであり、それぞれのパルス列の繰り返し周波数は10GHzで、制御光と信号光の波長差は16nmである。また、制御光の波長におけるHNLF554の分散値は−0.62ps/nm/km、つまり正常分散値である。
【0161】
XPMを効率よく発生させるために、信号光の時間遅延量及び制御光の偏光を最適な状態に設定してある。以下に、その具体的な内容を示す。
【0162】
(A)信号光の偏光の調整:まず制御光を入射しない状態で入力端580から信号光を入射し、ループ中の偏波コントローラ(PC)592を操作して信号光が完全に入射端に反射してくる状態を作成し、光サーキュレータ598を用いて反射光受光端593で検知する。具体的には3dBカップラの端子561、562で分岐された右回りと左回り信号光が、ループを伝搬し終えてそれぞれ端子562及び561に達した際に、それぞれの信号光の偏波が同じになるように、ループ中の偏波コントローラ(PC)592を調整する。この状態でNOLM550は反射率100%、透過率0%のループミラーとして働く。
【0163】
(B)遅延線の調整:その後制御光を入射し、制御光のパワーを少しずつ上げてゆく。NOLM550の伝達特性の最初の立ち上がり(XPMによる信号光の位相シフトφXPMが0付近)の付近で遅延線597の遅延量を変えて、信号光の出力パワーが最大となるように調整する。その後、制御光のパワーをさらに上げてゆき、伝達特性の最初の谷(φXPM=2π)に達するまで制御光のパワーを上げる。この状態で遅延量の微調整を行い、出力端584での信号光のパワーが最小となるように調整する。このように、HNLF554中を伝搬する信号光と制御光のパルスがより広い範囲で重なるようにすることで、XPMを効率的に発生させることができる。
【0164】
(C)制御光の偏光調整:NOLM550の伝達特性の最初の立ち上がり付近で制御光のパワーを上げてゆき、制御光を入射する伝搬路の偏波コントローラ(PC)591を調整し、出力信号光パワーが最大となるようにする。これによって、制御光と信号光の偏波状態の関係がXPMの発生効率を最大にする条件を与える。
【0165】
(D)バンドパスフィルタの選定:本実験で使用する信号光と制御光は、それぞれL及びCバンド帯にあるので、これらを分離するために出力端でバンドパスフィルタの代わりに、損失の小さいC/Lバンド用WDMカップラ595を用いた。
【0166】
(E)信号光と制御光の同期:本実施例では同一光源から波長変換を通して両光を発生しているので簡単に同期が取れている。信号光と制御光が別に入力される場合は、双方のパルスがHNLF中で最大限に重なるように同期を取ることで、XPMの発生効率をあげることができる。
【0167】
本実施形態において得られたNOLM550の伝達関数を図35に示す。図35より、制御光と信号光のXPMによる信号光の位相シフトが5πに達し、その位相シフトが2πや4πのときの出力パワーがピーク値に対して半分以下かつ十分小さいNOLMが実現できた。
【実施例6】
【0168】
一方、NOLM550中で用いられているHNLF554にファイバ長が380m、非線形定数が17.5W−1km−1、零分散波長が1560nm、分散スロープが0.024ps/nm2/kmのものを用い、制御光と信号光の波長をそれぞれ1550nm,1570nm(波長差20nm)とし、制御光のパルス幅を8.5psとしてその他の条件を同一としたとき、同様に伝達関数を測定した結果を図36に示す。XPMを効率的に発生させることにより多周期化されている。
【0169】
ここで、制御光の波長における分散値は−0.24ps/nm/kmであり、正常分散ではあるがその値が小さいため、信号光が大きなパラメトリック利得を受けている。つまり、右回りと左回りの信号光のパワーに不均衡が生じて干渉がうまく作用せず、信号光の位相シフトがπもしくは3πにおける出力パワーが0.5以下とならずに、その結果所望の伝達関数が得られていない、つまり少なくとも、φXPM=2πにおける出力光パワーがφXPM=πにおける出力光パワーの半分以下になるという条件が満たされていない。
【実施例7】
【0170】
その他の実施例として、図34のNOLM550において異なるパラメータを持つ別のファイバをHNLF554として用い、多周期NOLMを実現した例を他に2つの場合を示す。
(1)HNLFのファイバ長が406m、非線形定数が12W−1km−1、零分散波長が1567nm、分散スロープが0.021ps/nm2/km(制御光波長における分散値は−0.315ps/nm/km)、ファイバ損失が0.426dB/kmであるNOLMの伝達特性を図37に示す。
(2)HNLFのファイバ長が403m、非線形定数が12W−1km−1、零分散波長が1568nm、分散スロープが0.021ps/nm2/km(制御光波長における分散値は−0.336ps/nm/km)、ファイバ損失が0.411dB/kmであるNOLMの伝達特性を図38に示す。
【0171】
本発明の実施形態によって実現されたNOLMの用途のひとつは、光A/D変換である。他に考えられる形態は、例えばQAM、PSK、ASKなど多値通信の復号化がある。別の視点からは、NOLM中のXPMを用いたスイッチングではなく、制御光によって信号光に与えられるパラメトリック利得を積極的に用いたスイッチングデバイスの実現なども考えられる。
【0172】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るNOLM内の光ファイバにおいて制御光が引き起こすパラメトリックプロセスによって、制御光と同じ向きに進む信号光が受ける利得が、設定したしきい値に対して決定される許容値以下に抑圧されるように設計されたことを特徴とする設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つNOLMが実現できる。
【0173】
第3の実施形態.
図39は本発明の第3の実施形態に係る多値光信号復号器400の構成を示すブロック図であり、図40は図39の各光信号処理器401,402における入力パルス強度に対する出力パルス強度を示すグラフである。
【0174】
図39において、多値光信号復号器400は、例えば多値光通信システムにおいて用いられ、3dB光カップラ410と、2個の光信号処理器401,402とを備えて構成される。ここで、光信号処理器401は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光アイソレータ16,18と、光ファイバケーブル19と、信号光パルス光源411とを備えて構成され、信号光パルス光源411からの信号光パルスは光アイソレータ16を介して、光信号処理器401のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。また、光信号処理器402は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光アイソレータ16,18と、光ファイバケーブル19と、信号光パルス光源412とを備えて構成され、信号光パルス光源412からの信号光パルスは光アイソレータ16を介して、光信号処理器402のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。ここで、光信号処理器401、402は、図40に示すように、互いに異なる周期の伝達関数を有し、具体的には、光信号処理器401の伝達関数の周期は光信号処理器402の伝達関数の周期の3倍に設定されている。
【0175】
以上のように構成された多値光信号復号器400では、多値パルス列光信号が光カップラ410に入力されて2分配される。2分配後の一方の多値パルス列光信号が光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器401のNOLM10に入力され、このとき、上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われ、処理後の2値パルス列光信号xが、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して出力される。また、2分配後の他方の多値パルス列光信号が光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器402のNOLM10に入力され、このとき、上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われ、処理後の2値パルス列光信号yが、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して出力される。
【0176】
次いで、多値光信号復号器400を用いた入力4値及び出力2値のときの光強度多値通信システムの応用例について以下に説明する。
【0177】
図41(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第1の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、図41(b)は図41(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。図41の第1の応用例において、図41(b)に示すように、光強度に対して符号を割り当てたとき、4値の多値光信号を多値光信号復号器400に入力したとき、2つの2値光信号x,yを得ることができる。このように、光信号の振幅を多値化することにより周波数の利用効率を増大させることができる。
【0178】
図42(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第2の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、図42(b)は図42(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。図42の第2の応用例において、図42(b)に示すように、光強度に対して符号を割り当てたとき、4値の多値光信号を多値光信号復号器400に入力した後、多値光信号復号器400からの2つの出力光信号のうち一方の出力光信号のみを、元の多値光信号のパルス周期の半分だけ遅延する光遅延回路421を介して通過させ、通過後の光信号と、上記他方の出力光信号とを3dB光カップラ422により合成し、合成後の光信号を時分割多重化された2値光信号として得ることができる。このように、光信号の振幅を多値化することにより周波数の利用効率を増大させることができる。
【0179】
以上の実施形態において、2個の光信号処理器401,402を並列に配置して多値光信号復号器400を構成しているが、本発明はこれに限らず、互いに異なる伝達関数を有する3個以上の複数の光信号処理器を並列に配置して多値光信号復号器を構成してもよい。
【0180】
第4の実施形態.
図43は本発明の第4の実施形態に係る光論理演算回路600の構成を示すブロック図であり、図44(a)は図43の光論理演算回路600のOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(b)は図43の光論理演算回路600のAND演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(c)は図43の光論理演算回路600のNOT演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(d)は図43の光論理演算回路600のEXOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフである。
【0181】
図43において、光論理演算回路600は、光信号処理器601と、3dB光カップラ602とを備えて構成される。ここで、光信号処理器601は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、2個の光帯域通過フィルタ14、14Aと、光アイソレータ18と、光ファイバケーブル19と、光サーキュレータ16Aと、信号光パルス光源603とを備えて構成され、信号光パルス光源603からの信号光パルスは光サーキュレータ16Aを介して、光信号処理器601のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。ここで、光論理演算の入力信号である2つの2値パルス列信号x,yは光カップラ602により合成された後、光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器601のNOLM10に入力された後、NOLM10内で上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われた後、処理後の光信号は、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して第1の演算結果の光信号として出力されるとともに、光カップラ11から光アイソレータ16A及び光帯域通過フィルタ14Aを介して第2の演算結果の光信号として出力される。
【0182】
ここで、光信号処理器601は、例えば図44に示すように、光論理回路の演算の種類に応じて、以下のごとく異なる伝達関数を有する。ここで、伝達関数は入力光パルス強度に対する出力光パルス強度の関数であり、出力パルス強度のピーク・ツー・ピークの振幅はBである。
(a)OR演算及びNOR演算のときには、伝達関数は、図44(a)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が3Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からOR演算結果の光信号を得ることができるとともに、光帯域通過フィルタ14AからNOR演算結果の光信号を得ることができる。
(b)AND演算及びNAND演算のときには、伝達関数は、図44(b)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が6Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からAND演算結果の光信号を得ることができるとともに、光帯域通過フィルタ14AからNAND演算結果の光信号を得ることができる。
(c)NOT演算のときには、伝達関数は、図44(c)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度がBであり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が2Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14AからNOT演算結果の光信号を得ることができる。
(d)EXOR演算のときには、伝達関数は、図44(d)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が2Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からEXOR演算結果の光信号を得ることができる。
【0183】
以上説明したように、2つの2値光信号x,yを入力するときに、光信号xのパルスのみ、又は光信号yのパルスのみをNOLM10に入力するときは、その光信号の光強度はAであり、これら2つの光信号x,yのパルスがNOLM10に入力するときは、その合成後の光信号の光強度は2Aとなる。図44に示すように、光信号処理器601の伝達関数を適切に調整することにより、きわめて簡単な光回路を用いて上述の種々の光論理演算を実現できる。
【実施例8】
【0184】
第4の実験システム.
図45は本発明の実施形態に係る第4の実験システムの構成を示すブロック図であり、図46は図45の第4の実験システムの実験結果であって、制御光の平均電力に対する出力信号光の平均電力を示すグラフである。
【0185】
図45の第4の実験システムにおいて、光信号処理器601Aは、図3の光符号化器201と同様に、光ファイバケーブル上に偏波コントローラ10Aを有するNOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光サーキュレータ16Aと、偏波コントローラ19Aとを備えて構成される。信号光源611は、波長1568nmでパルス周波数10GHzを有する信号光パルスを発生して、エルビウムがドープされたファイバ光増幅器612及び可変光遅延回路15A、光アイソレータ16A及び光カップラ11を介して、光信号処理器601AのNOLM10に入力する。一方、信号光源621は、波長1552nmでパルス周波数10GHzを有する制御光パルスを発生して、エルビウムがドープされたファイバ光増幅器622及び可変光減衰器623、偏波コントローラ19A及び光カップラ12を介して、光信号処理器601AのNOLM10に入力する。ここで、NOLM10で用いる高非線形ファイバは、400mの長さLと、16.6W−1km−1の非線形性係数γを有する。
【0186】
以上のように構成された図45の第4の実験システムで得られる伝達関数として、図46に示すように、2.5周期以上の実質的に正弦波形状の関数を得ることができた。
【実施例9】
【0187】
第5の実験システム.
図47及び図48は本発明の実施形態に係る第5の実験システムの構成を示すブロック図であり、図47は当該第5の実験システムにおける信号光及び制御光を発生する光回路部であり、図48は上記発生された信号光及び制御光に対して符号化し、しきい値処理を実行するための光回路部である。
【0188】
図47において、サンプリングレートが10GS/sである3ビットの光学的量子化及び符号化の実験システムを示している。制御光パルスの発生のために、波長1552nmでパルス周期3psで動作する10GHzの再生モード同期型ファイバリングレーザ(FRL)であるレーザ光源711を使用し、レーザ光源711から出力される制御光パルスは光増幅器712を介して、3dB光カップラ713に入力されて2分配され、2分配後の一方の制御光パルスは、分散補償光ファイバケーブル(DCF)715、光増幅器716及び可変光減衰器(VOA)717を介して制御光として出力される。上記2分配後の他方の制御光パルスは、偏波コントローラ714を介して光カップラ704に入力される。一方、CWレーザダイオード光源である可変レーザ光源701は、波長1560nmの信号光パルスを発生して光増幅器702及び偏波コントローラ703を介して光カップラ704に入力される。光カップラ704では2つのパルス光が合成された後、合成後のパルス光は高非線形光ファイバケーブル(HNLF)505及び光帯域通過フィルタ706を介して信号光として出力される。すなわち、以上の光回路部では、四光波混合(FWM)を用いて、制御光パルスと同期される1568nmの搬送波波長及び3psの時間幅を有する信号光パルスを発生させた。また、分散補償光ファイバケーブル(DCF)715を用いて、制御光パルスのパルス幅を11psまで拡張させた。分散補償光ファイバケーブル(DCF)715の後に可変光減衰器(VOA)717を用いて、アナログ光信号からサンプリングされた光パルスのレベルをエミュレートした。信号光パルスが制御光パルスに重畳するように、図48の3個の光遅延回路(ODL)725,726,727の光遅延量を設定した。
【0189】
図48において、光符号化回路200Aは3個の光符号化器201A,202A,203Aを並列に配置して構成され、光量子化回路300Aは、3個の光しきい値処理器301A,302A,303Aを並列に配置して構成される。ここで、各光符号化器201A,202A,203Aは、図3の光符号化器201と同様に、偏波コントローラ10Aを有するNOLM10と、2個の光カップラ11,12Aと、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光サーキュレータ16Aと、偏波コントローラ19Aとを備えて構成され、信号光は光サーキュレータ16A及び光カップラ11を介して、光符号化器201AのNOLM10の光ファイバケーブルに入力され、制御光は偏波コントローラ19A及び光カップラ12Aを介してNOLM10に入力される。また、各光しきい値処理器301A,302A,303Aは、NOLM20と、光カップラ21と、光サーキュレータ26Aと、光増幅器27と、NOLM20の光ファイバケーブル上にそれぞれ挿入された光減衰器20B及び偏波コントローラ20Aとを備えて構成され、各光符号化器201A,202A,203Aからの出力光は、光増幅器27、光サーキュレータ26A及び光カップラ21を介してNOLM20に入力される。
【0190】
図47の光回路部で発生された信号光は光増幅器721を介して、3つの光カップラ722,723,724により3分配され、第1の信号光は光遅延回路725を介して光符号化器201Aの光サーキュレータ16Aに入力される。また、第2の信号光は光遅延回路726を介して光符号化器202Aの光サーキュレータ16Aに入力され、さらに、第3の信号光は光遅延回路727を介して光符号化器203Aの光サーキュレータ16Aに入力される。
【0191】
一方、図47の光回路部で発生された制御光は、接続点Xを介して光カップラ731に入力されて2分配され、2分配後の一方の制御光は光カップラ732でさらに2分配され、その一方の光信号は光減衰器733を介して光符号化回路200A内の光符号化器201Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器201Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器301Aによる光しきい値処理が実行される。光カップラ732からの他方の光信号は光符号化回路200A内の光符号化器202Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器202Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器302Aによる光しきい値処理が実行される。また、光カップラ731からの他方の光信号は光減衰器734を介して光符号化回路200A内の光符号化器203Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器203Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器303Aによる光しきい値処理が実行される。
【0192】
以上のように構成された第5の実験システムにおいて、光符号化器201A,202A,203Aが最大レベルの制御光パルスでそれぞれ半周期、単周期及び2周期の伝達関数を供給するように、光減衰器733,734を使用して各光符号化器201A,202A,203A間の伝達関数の相対的周期性を適切に調整した。各光符号化器201A,202A,203AのNOLM10AのHNLFの長さL及び非線形係数γはそれぞれ、380m、403m及び406m及び17.5W−1km−1、12.0W−1km−1及び12.0W−1km−1であった。光帯域通過フィルタ14は制御光パルスを除去し、信号光パルスのみを通過させて出力する。3個の光しきい値処理器301A,302A,303Aの特徴はほぼ同一である。エルビウムがドープされたファイバ光増幅器27の利得は、23dB程度の適正値に調整した。10dBの光減衰器20Bを使用して自己スイッチング型NOLMの非対称ループを作成すると、当該NOLMのHNLFの長さL及び非線形係数γはそれぞれ830m及び19W−1km−1であった。
【0193】
図49(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器201Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器201Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PAを示すグラフであり、図49(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器202Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器202Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PBを示すグラフであり、図49(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器203Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器203Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PCを示すグラフである。また、図50(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器301Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器301Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PDを示すグラフであり、図50(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器302Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器302Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PEを示すグラフであり、図50(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器303Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器303Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PFを示すグラフである。さらに、図51(a)は制御光パルスの平均電力が200mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、図51(b)は制御光パルスの平均電力が700mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、図51(c)は制御光パルスの平均電力が1000mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフである。
【0194】
図49(c)に示すように、発明者の知る限りでは、これは、多周期の伝達関数を2周期まで観察した最初の実験結果であると確信している。制御光パルスの平均電力は、図48の接続点Xにおいて測定した。非ゼロ復帰の周期性は、光ファイバケーブルにおける望ましくない非線形現象、不安定な偏光及びパルスの強度及びタイミングのゆらぎに起因すると思われる。
【0195】
図50の各光しきい値処理器301A,302A,303Aからの出力光の実験結果から明らかなように、伝達関数は改善され、その周期後にほぼ完全に「0」に戻ることが確認された。図50(a)、図50(b)及び図50(c)の挿入図は、各光しきい値処理器301A,302A,303Aからの出力光で測定したパルス幅の自己相関波形の一部であり、パルス形状に大きな変化は観察されなかった。図51は、ガウス形のパルス波形を想定してパルス幅及び平均電力の測定値から取得される、制御パルスの平均電力200mW、700mW及び1000mWで再構築される出力のデジタルパルスを示す。このように、3ビットのA/D変換は首尾良く達成されることが確認される。例えば図11に示すようなカスケード型の複数の光しきい値処理器の連結又は光2R技術(再増幅及び再整形)のいずれかを組み込めば、「0」のパルス光をさらに抑圧することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明に係る光A/D変換装置は、高速なサンプリングが必要な測定機器関係を初めとして、光通信の光アナログ信号と光ディジタル信号の変換が必要な各ノード、その他高速なA/D変換が必要なコンピューティング等の分野において適用可能であり、本発明は基礎的な信号処理技術であるためにその他様々な分野での利用が可能である。
【符号の説明】
【0197】
10…非線形光ループミラー、
10A…偏波コントローラ、
11,12…光カップラ、
13…光アイソレータ、
14,14A…光帯域通過フィルタ、
15…光遅延回路、
15A…可変光遅延回路、
16…光アイソレータ、
16A…光サーキュレータ、
17…光増幅器、
18…光アイソレータ、
19…光ファイバケーブル、
19A…偏波コントローラ、
20…非線形光ループミラー、
20A…偏波コントローラ、
20B…光減衰器、
21,22…光カップラ、
23…光アイソレータ、
24…光帯域通過フィルタ、
25…レーザダイオード、
26,26A…光アイソレータ、
27…光増幅器、
28…光アイソレータ、
29…光ファイバケーブル、
30…標本化信号発生器、
31…レーザダイオード、
32…光アイソレータ、
41…光標本化回路、
42…光アイソレータ、
50…ファイバリングレーザ、
51,52…光帯域通過フィルタ、
53…光変調器、
54…データ信号発生器、
55,56,57…光分配器、
61,62…ファイバリングレーザ、
63…光遅延回路、
71,72,73…光カップラ、
81,82…光導波路、
91,92,93…光カップラ、
94…光アイソレータ、
95…光帯域通過フィルタ、
100…光A/D変換装置、
101,102…光ファイバケーブル、
103…分散補償光ファイバケーブル、
104…光帯域通過フィルタ、
105…光カップラ、
106…偏波コントローラ、
111…高複屈折光ファイバケーブル、
112…偏光子、
200、200A…光符号化回路、
201,202,203,201A,202A,203A…光符号化器、
300,300A…光量子化回路、
301,302,303,311,312,313,322,323,333、301A,302A,303A…光しきい値処理器、
400…多値光信号復号器、
401,402…光信号処理器、
410…光カップラ、
411,412…信号光パルス光源、
421…光遅延回路、
422…光カップラ、
500…非線形光ループミラー(NOLM)、
501…光ファイバ、
502…光カップラ、
504…高非線形ファイバ(HNLF)、
510…光信号の入力端、
511,512…光ファイバ端、
513…出力端、
524…制御光入力手段、
530…入力信号光、
531…制御光、
532,533…伝搬光、
534…出力信号光、
550…非線形光ループミラー(NOLM)
551…光ファイバ、
552…3dB光カップラ、
553…17dB光カップラ、
554…高非線形ファイバ(HNLF)、
561,562…3dBカップラの端子、
571…制御光入力端、
574…WDMカップラ、
580…入力端、
591,592…偏波コントローラ、
593…反射光受光端、
595…C/Lバンド用WDMカップラ、
597…遅延線、
598…光サーキュレータ、
600…光論理演算回路、
601,601A…光信号処理器、
602…光カップラ、
603…信号光パルス光源、
611,621…光源、
612,622…光増幅器、
613…パワーメータ、
623…光減衰器、
701…レーザ光源、
702…光増幅器、
703…偏波コントローラ、
704,713…光カップラ、
705…高非線形光ファイバケーブル(HNLF)、
706…光帯域通過フィルタ、
711…レーザ光源、
712,716…光増幅器、
715…分散補償光ファイバケーブル(DCF)、
717…可変光減衰器、
721…光増幅器、
722,723,724,731,732…光カップラ、
725,726,727…光遅延回路、
733,734…光減衰器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ファイバ通信システムにおいて用いられ、光アナログ信号を光ディジタル信号に変換する光アナログ/ディジタル変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置、非線形光ループミラーとその設計方法並びに光信号変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ/ディジタル変換(以下、A/D変換という。)は離散化、量子化及び符号化の処理によって実現され、従来これらの処理は半導体を用いた電気信号処理により行われている。
【0003】
現在、高速化された光処理によるアナログ/ディジタル変換処理を行うことが所望されるが、例えば、非特許文献1及び2(以下、従来例という。)においては、マッハ・ツェンダー干渉計型光変調器をサンプルホールド回路として用いて量子化した後、フォトディテクタを用いて光電変換した後、電気回路を用いて符号化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−271730号公報。
【特許文献2】特開2000−10129号公報。
【特許文献3】特開平9−033967号公報。
【特許文献4】特開平9−222620号公報。
【特許文献5】特開平9−102991号公報。
【特許文献6】特開2000−321606号公報。
【特許文献7】特開2001−117125号公報。
【特許文献8】特開平8−146473号公報。
【特許文献9】特表2002−525647号公報。
【特許文献10】特開2003−107541号公報。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Henry F. Taylor, "An Optical Analog-to-Digital Converter-Design and Analysis", IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. QE-15, No. 4, April 1979.
【非特許文献2】B. Jalali et al., "Optical folding-flash analog-to-digital converter with analog encoding", Optical Letters, Optical Society of America, Vol. 20, No. 18, September 15, 1995.
【非特許文献3】N. J. Doran et al., "Nonlinear-optical loop mirror", Optical Letters, Optical Society of America, Vol. 13, No. 1, January 1988.
【非特許文献4】山本貴司ほか,”超高速非線形光ループミラーによるサブテラビットTDM光信号の多重分離”,電子情報通信学会論文誌,C−I,電子情報通信学会発行,Vol.J82−C−I,pp.109−116,1999年3月。
【非特許文献5】Govind P. Agrawal, "NONLINEAR FIBER OPTICS", Academic Press, ISBN:0120451425, 2rd Edition, pp. 210-211, 1995.
【非特許文献6】Stephen M. Jensen, "The Nonlinear Coherent Coupler", IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. QE-18, No. 10, October 1982.
【非特許文献7】William S. Wong et al., "Self-switching of optical pulses in dispersion-imbalanced nonlinear loop mirrors", Optics Letters, Optical Society of America, Vol.22, pp.1150-1152, 1997.
【非特許文献8】I. Y. Khrushchev et al., "High-quality laser diode pulse compression in dispersion-imbalanced loop mirror", Electronics Letters, Vol.34, pp.1009-1010, May 1998.
【非特許文献9】K. R. Tamura et al., "Spectral-Smoothing and Pedestal Reduction of Wavelength Tunable Quasi-Adiabatically Compressed Femtosecond Solitons Using a Dispersion-Flattened Dispersion-Imbalanced Loop Mirror," IEEE Photonics Technology Letters, Vol.11, pp.230-232, February 1999.
【非特許文献10】K. J. Blow et al., "Demonstration of the nonlinear fibre loop mirror as an ultrafast all-optical demultiplexer", Electronics Letters, Vol.26, pp.962-964, 1990.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来例においては、符号化回路は電気回路であるので、半導体の応答速度による制限があり、例えばテラヘルツオーダーでのより高速な処理を行うことができない。
【0007】
また、特許文献1においては、非線形ファブリペロー共振器を用いた光A/D変換器が開示されているが、光アナログ信号を2値の光ディジタル信号に変換するのみで、符号化する光回路については開示されていない。
【0008】
すなわち、従来技術において、光アナログ信号を光ディジタル信号に変換する光アナログ/ディジタル変換器であって、符号化や量子化をともに光信号で処理し、テラヘルツオーダー以上の周波数でより高速な処理を行うことができる装置については開発、実用化されていないという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、符号化や量子化をともに光信号で処理し、テラヘルツオーダー以上の周波数でより高速な処理を行うことができ、しかも構造が簡単である光A/D変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記光アナログ/ディジタル変換方法及び装置などのための光信号処理方法及び装置、非線形光ループミラーとその設計方法並びに光信号変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
第2の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性において、所定の光論理演算に対応した周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光を複数用いることによって、又は上記第1の波長とは異なる複数の波長を有するパルス列である制御光を用いることによって、所定の光論理演算処理を実行して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0013】
上記光信号処理方法において、上記光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0014】
第3の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
上記光信号処理方法において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明に係る光信号処理方法は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光信号処理器を用いて、第1の波長を有する多値光信号のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って、複数の2値光信号に復号して出力するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
上記光信号処理方法において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0018】
また、上記光信号処理方法において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0019】
第5の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力する信号処理手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
第6の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性において、所定の光論理演算に対応した周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光を複数用いることによって、又は上記第1の波長とは異なる複数の波長を有するパルス列である制御光を用いることによって、所定の光論理演算処理を実行して出力する演算手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
上記光信号処理装置において、上記光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0022】
第7の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力する光符号化手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記光信号処理装置において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0024】
第8の発明に係る光信号処理装置は、光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光信号処理器を用いて、第1の波長を有する多値光信号のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って、複数の2値光信号に復号して出力する多値復号手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記光信号処理装置において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0026】
また、上記光信号処理装置において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0027】
第9の発明に係る光信号処理方法は、光標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光アナログ/ディジタル変換する光信号処理方法であって、
光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力するステップと、
上記各光符号化器にそれぞれ接続され、光強度に関する入出力特性が非線形性を有する光非線形素子を備えた1つ又は複数の光しきい値処理器を用いて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列に対して光しきい値処理を行うことにより光量子化し、光量子化されたパルス列を光ディジタル信号として出力するステップとを含むことを特徴とする。
【0028】
上記光信号処理方法において、上記光符号化するステップの前に、光アナログ信号を所定の標本化周波数で光標本化して、光標本化された光アナログ信号を出力するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0029】
また、上記光信号処理方法において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0030】
さらに、上記光信号処理方法において、上記光量子化するステップにおいて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列毎に、1つの光しきい値処理器又は縦続接続された複数の光しきい値処理器を用いてそれぞれ入力される信号光のパルス列を光量子化することを特徴とする。
【0031】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0032】
また、上記光信号処理方法において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する第1の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0033】
さらに、上記光信号処理方法において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0034】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0035】
またさらに、上記光信号処理方法において、上記第2の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第2の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第2の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0036】
第10の発明に係る光信号処理装置は、光標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光アナログ/ディジタル変換する光信号処理装置であって、
光強度に関する入出力特性が互いに異なる周期性をそれぞれ有する光非線形素子を備えた複数の光符号化器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列を、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有しかつ光標本化された光アナログ信号のパルス列である制御光に従って光符号化し、光符号化された複数の信号光のパルス列を上記各光符号化器から出力する光符号化手段と、
上記各光符号化器にそれぞれ接続され、光強度に関する入出力特性が非線形性を有する光非線形素子を備えた1つ又は複数の光しきい値処理器を用いて、上記光符号化された複数の信号光のパルス列に対して光しきい値処理を行うことにより光量子化し、光量子化されたパルス列を光ディジタル信号として出力する光量子化手段とを備えたことを特徴とする。
【0037】
上記光信号処理装置において、上記光符号化手段の前段に設けられ、光アナログ信号を所定の標本化周波数で光標本化して、光標本化された光アナログ信号を出力する光標本化手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0038】
また、上記光信号処理装置において、上記複数の光符号化器は、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器であり、ここで、Nは量子化ビット数を表す自然数(N=1,2,3,…)であることを特徴とする。
【0039】
さらに、上記光信号処理装置において、上記光量子化手段は、上記光符号化された複数の信号光のパルス列毎に、1つの光しきい値処理器又は縦続接続された複数の光しきい値処理器を用いてそれぞれ入力される信号光のパルス列を光量子化することを特徴とする。
【0040】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記各光符号化器は第1の光非線形素子からなり、上記信号光のパルス列を入力する第1の入力端と、上記制御光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0041】
また、上記光信号処理装置において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する第1の入力端と、上記光符号化された信号光のパルス列を入力する第2の入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0042】
さらに、上記光信号処理装置において、上記各光しきい値処理器は第2の光非線形素子からなり、所定の搬送波光の連続光又はパルス列を入力する入力端と、上記光量子化されたパルス列を出力する出力端とを有することを特徴とする。
【0043】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記第1の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第1の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第1の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0044】
またさらに、上記光信号処理装置において、上記第2の光非線形素子は、非線形光ループミラーであることを特徴とする。もしくは、上記第2の光非線形素子は、非線形光学効果である光カー効果を用いたカーシャッタであることを特徴とする。とって代わって、上記第2の光非線形素子は、導波路型マッハツェンダ干渉計であることを特徴とする。
【0045】
第11の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、上記出力光信号のパワーの最大値に対して所定のしきい値以下となるように、それぞれの光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【0046】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と同一方向に伝搬する上記光信号が非線形媒質中でパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記所定のしきい値の割合をTとしたときにG<2T+1の関係式を満足することを特徴とする。
【0047】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光信号と上記制御光信号のパルスが上記非線形媒質のより広い範囲で重なるように、上記入力光信号と上記制御光信号のいずれか一方を光遅延線を介してから入力することを特徴とする。
【0048】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0049】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記所定のしきい値が、光信号処理で必要とされるしきい値であることを特徴とする。
【0050】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記所定のしきい値が3dBであることを特徴とする。
【0051】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散値の絶対値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する分散値以上であることを特徴とする。
【0052】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と上記入力光信号の波長差が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制する波長差以上であることを特徴とする。
【0053】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号と上記光信号の波長差と、上記非線形媒質の分散値との積の絶対値が、ウォークオフを抑圧して、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差を2π以上とする値以下であることを特徴とする。
【0054】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数)となるときの上記出力光信号のパワー値が、光アナログ/ディジタル変換の処理において0として処理されることを特徴とする。
【0055】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において正常分散特性を有することを特徴とする。
【0056】
またさらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において異常分散特性を有することを特徴とする。
【0057】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が正(dD/dλ>0)であるとき、λ0>λS>λCであることを特徴とする。
【0058】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が負(dD/dλ<0)であるとき、λ0<λS<λCであることを特徴とする。
【0059】
第12の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有することを特徴とする。
【0060】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.3ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が16nm以上であることを特徴とする。
【0061】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0062】
第13の発明に係る非線形光ループミラーは、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と上記制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によって、それぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2π以上であることを特徴とする。
【0063】
上記非線形光ループミラーにおいて、上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有することを特徴とする。
【0064】
また、上記非線形光ループミラーにおいて、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの出力光信号のパワーが、上記出力光信号のパワーの最大値に対して光アナログ/ディジタル変換におけるしきい値以下となるように、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【0065】
さらに、上記非線形光ループミラーにおいて、上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光が常に同じであることを特徴とする。
【0066】
第14の発明に係る非線形光ループミラーの設計方法は、光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーを設計する方法であって、
入力光信号のパワーに対する出力光信号のパワーの関係で表される伝達関数とその周期(φmax)を決定する第1のステップと、
光信号処理に適した、出力光信号のしきい値を決める第2のステップと、
非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを仮決めする第3のステップと、
位相シフトが上記周期φmaxに及んでいるかを判別し、及んでいなければ上記第3のステップに戻る第4のステップと、
上記光信号がパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記しきい値の割合をTとしたときにG<2T+1を満足するかを判別し、満足していなければ上記第3のステップに戻る第5のステップとを含むことを特徴とする。
【0067】
第15の発明に係る光信号変換方法は、入力された光信号を2分岐し、分岐した一方の光信号(A)を波長の異なる制御光信号と同一方向に伝搬させて相互位相変調を発生させ、分岐した他方の光信号(B)との間の位相シフト差を制御光信号のパワー変化に対して周期的に変化させて、上記光信号(A)及び(B)の干渉によって得られる出力光信号のパワーを変化させる光信号変換方法であって、
上記出力光信号のパワーの最大値に対して、位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが2値化処理のしきい値以下となるように、上記光信号(A)と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0068】
本発明に係る光信号処理方法及び装置によれば、光強度に関する入出力特性において所定の周期性を有する光非線形素子を備えた光信号処理器を用いて、第1の波長を有する信号光のパルス列に対して、上記第1の波長とは異なる第2の波長を有するパルス列である制御光に従って所定の信号処理を実行して出力する。従って、光論理演算、光符号化処理、多値復号処理などの光信号処理をきわめて簡単な構成で実現でき、しかも従来技術に比較して高速化できる。
【0069】
また、本発明に係る光信号処理方法及び装置によれば、標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光A/D変換することができ、標本化周波数の上限は数百ギガ数テラヘルツオーダーまで原理的に可能であり、電気回路のA/D変換の標本化周波数の限界を数十ギガヘルツとすると、二桁程度の高速化が可能である。また、入出力が光信号なので光ネットワークへの応用に適している。
【0070】
さらに、本発明に係る非線形光ループミラー内の光ファイバにおいて制御光が引き起こすパラメトリックプロセスによって、制御光と同じ向きに進む信号光が受ける利得が、設定したしきい値に対して決定される許容値以下に抑圧されるように設計されたことを特徴とする設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つ非線形光ループミラーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光A/D変換装置100の動作を示すブロック図及びタイミングチャートである。
【図2】図1の光A/D変換装置100の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図2の光符号化器201の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】図3の光符号化器201の動作を示す、制御光(λ2)の入力電力に対する信号光(λ1)の出力電力との関係を示すグラフである。
【図5】図3の光符号化回路200の動作例を示すグラフ及びブロック図である。
【図6】図2の光しきい値処理器301の詳細構成及びその動作を示すブロック図及びグラフである。
【図7】図6の光しきい値処理器301の動作例を示すグラフである。
【図8】図2の光符号化回路200及び光量子化回路300の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】図8の各光符号化器201,202,203の動作例を示すグラフであり、図9(a)は光符号化器201の動作例を示し、図9(b)は光符号化器202の動作例を示し、図9(c)は光符号化器203の動作例を示す。
【図10】図8の各光しきい値処理器301,302,303の動作例を示すグラフであり、図10(a)は光しきい値処理器301の動作例を示し、図10(b)は光しきい値処理器302の動作例を示し、図10(c)は光しきい値処理器303の動作例を示す。
【図11】本発明の変形例に係る光A/D変換装置100Aの詳細構成を示すブロック図である。
【図12】図11の各光しきい値処理器の動作例を示すグラフであって、図12(a)は縦続接続された光しきい値処理器301,311の動作例を示し、図12(b)は縦続接続された光しきい値処理器302,312,322の動作例を示し、図12(c)は縦続接続された光しきい値処理器303,313,323,333の動作例を示す。
【図13】本実施形態に係る実験システムの詳細構成を示すブロック図である。
【図14】図13の光符号化回路200の符号化処理の動作例を示すグラフであって、図14(a)は光符号化器201の符号化処理の動作例を示し、図14(b)は光符号化器202の符号化処理の動作例を示し、図14(c)は光符号化器203の符号化処理の動作例を示す。
【図15】図13の光符号化回路200を用いた符号化処理における制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対する3ビット符号化値(#1,#2,#3)を示すグラフである。
【図16】図13において理想的な非線形光ループミラーを用いて実験システムを構成したときに、1段の光しきい値処理器の処理後のアナログパルスの振幅を変化したときの符号化後の3ビット符号化値(#1,#2,#3)とそのパルス波形を示す図である。
【図17】本実施形態に係る第1のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図18】図17の第1のシミュレーションの結果であって、制御光(λ2)のパルスのピークパワーに対する信号光(λ1)のパルスのピークパワーを示すグラフである。
【図19】本実施形態に係る第2のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図20】図19の第2のシミュレーションの結果であって、図20(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図20(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図20(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。
【図21】本実施形態に係る第3のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。
【図22】図21の第3のシミュレーションの結果であって、図22(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図22(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図22(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。
【図23】本発明の第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の第2の変形例に係る分散不平衡型非線形光ループミラーを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の第3の変形例に係る光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。
【図26】従来技術及び本発明の第2の実施形態に係るNOLMの構成の一例を示す図である。
【図27】従来技術に係るNOLMによる入力信号光パワーと出力光パワーの関係を示す図である。
【図28】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの入力光パワーと出力光パワーの関係を示す図である。
【図29】光ファイバの分散値D(λC)に対するパラメトリック利得の値の関係を示す図である。
【図30】信号光と制御光の波長差Δλに対するパラメトリック利得の値の関係を示す図である。
【図31】光ファイバの分散値と、信号光及び制御光の波長配置の関係(dD/dλ>0の場合)を示す図である。
【図32】光ファイバの分散値と、信号光及び制御光の波長配置(dD/dλ<0の場合)を示す図である。
【図33】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの設計処理の手順を示すフローチャートである。
【図34】本発明の第2の実施形態に係るNOLMの一実施例を示す図である。
【図35】本発明によるNOLMの伝達特性について測定した結果を示す図である。
【図36】図35とは異なる高非線形ファイバ(HNLF)を用いた場合のNOLMの伝達関数について示す図である。
【図37】本発明の第2の実施形態に係る別の実施例のNOLMに関する伝達特性の測定結果を示す図である。
【図38】本発明の第2の実施形態に係るさらに別の実施例のNOLMに関する伝達特性の測定結果を示す図である。
【図39】本発明の第3の実施形態に係る多値光信号復号器400の構成を示すブロック図である。
【図40】図39の各光信号処理器401,402における入力パルス強度に対する出力パルス強度を示すグラフである。
【図41】(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第1の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、(b)は(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。
【図42】(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第2の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、(b)は(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。
【図43】本発明の第4の実施形態に係る光論理演算回路600の構成を示すブロック図である。
【図44】(a)は図43の光論理演算回路600のOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(b)は図43の光論理演算回路600のAND演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(c)は図43の光論理演算回路600のNOT演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、(d)は図43の光論理演算回路600のEXOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフである。
【図45】本発明の実施形態に係る第4の実験システムの構成を示すブロック図である。
【図46】図45の第4の実験システムの実験結果であって、制御光の平均電力に対する出力信号光の平均電力を示すグラフである。
【図47】本発明の実施形態に係る第5の実験システムの第1の部分の構成を示すブロック図である。
【図48】本発明の実施形態に係る第5の実験システムの第2の部分の構成を示すブロック図である。
【図49】(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器201Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器201Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PAを示すグラフであり、(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器202Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器202Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PBを示すグラフであり、(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器203Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器203Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PCを示すグラフである。
【図50】(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器301Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器301Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PDを示すグラフであり、(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器302Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器302Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PEを示すグラフであり、(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器303Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器303Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PFを示すグラフである。
【図51】(a)は制御光パルスの平均電力が200mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、(b)は制御光パルスの平均電力が700mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、(c)は制御光パルスの平均電力が1000mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0073】
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る光A/D変換装置100の動作を示すブロック図及びタイミングチャートである。本実施形態に係る光A/D変換装置100は、入力される光アナログ信号を標本化し、符号化し、量子化することにより光ディジタル信号を出力する。図1の例では、光アナログ信号を4ビットの光ディジタル信号にA/D変換することが例示されている。
【0074】
図2は図1の光A/D変換装置100の詳細構成を示すブロック図である。図2において、光A/D変換装置100は主として、光標本化回路41と、光符号化回路200と、光量子化回路300とを備えて構成される。ここで、光符号化回路200は複数の光符号化器201,202,203を備え、光量子化回路300は複数の光しきい値処理器301,302,303を備える。
【0075】
標本化信号発生器30は、所定の周波数の標本化信号を発生してレーザダイオード31及び光標本化回路41に出力する。レーザダイオード31は入力される標本化信号の周期で間欠的に、所定の波長λ1を有し、一定の信号レベルの信号光のパルス列を発生して光アイソレータ32を介して光分配器56に出力する。次いで、光分配器56は入力される信号光を複数分配して、分配後の信号光を光符号化回路200の各光符号化器201,202,203に出力する。一方、光A/D変換すべき入力される光アナログ信号(波長λ2)は光標本化回路41に入力され、光標本化回路41は例えば光時間多重の分離処理などで公知の回路(例えば、非特許文献4参照。)であって、光アナログ信号を上記入力される標本化信号の周期で標本化し、標本化された光アナログ信号である制御光(波長λ2)を発生して光アイソレータ42を介して光分配器55に出力する。次いで、光分配器55は入力される制御光を複数分配して、分配後の信号光を光符号化回路200の各光符号化器201,202,203に出力する。
【0076】
各光符号化器201,202,203は、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、好ましくは、それらの周期が2のべき乗の関係を有し(例えば、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有する。これについては図5を参照して詳細後述する。)、入力される信号光を制御光に従って符号化して符号化後の信号光をそれぞれ光しきい値処理器301,302,303に出力する。さらに、各光しきい値処理器301,302,303は、入力される信号光を所定の2値の光ディジタル信号(本実施形態では、1ビット量子化を行い、出力される光ディジタル信号は2値であるが、多値であってもよい。)に量子化した後、出力する。
【0077】
図3は図2の光符号化器201の詳細構成を示すブロック図であり、他の光符号化器202,203についても光符号化器201と同様に構成される。図3において、光符号化器201は、非線形光ループミラー(Non-linear Optical Loop Miller)10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光ファイバケーブル19とを備えて構成される。
【0078】
ここで、非線形光ループミラー10は、制御光と信号光の間には異なる群遅延のために生じるウォークオフの問題を解消するため、それぞれ異なる群遅延特性(又は分散値)を有する所定長の複数本(少なくとも2本)の分散高非線形光ファイバケーブルを縦続接続してループを構成してなる(例えば、非特許文献3及び4参照。)。非線形光ループミラー10の一端付近及びその他端付近を互いに光学的に結合するように近接することにより、光カップラ11を構成する。当該光カップラ11において、図3に示すように以下のように端子を定義する。
(1)信号光を入力するための、非線形光ループミラー10の一端側の端子をT11とする。
(2)光符号化された信号光を出力するための、他端側の端子をT12とする。
(3)一端近傍であってループ内側の端子をT21とする。
(4)他端近傍であってループ内側の端子T22とする。
【0079】
また、光カップラ11の端子T21の近傍である非線形光ループミラー10の光ファイバケーブルに対して光学的に結合するように別の光ファイバケーブル19が近接配置され、その近接配置部分で光カップラ12を構成する。当該光カップラ12において、図3に示すように以下のように端子を定義する。
(1)制御光を入力するための、光ファイバケーブル19の一端側の端子をT31とする。
(2)光カップラ11の端子T21に近接する、非線形光ループミラー10上の端子をT32とする。
(3)光ファイバケーブル19の他端側の端子をT41とする。
(4)光カップラ11の端子T21よりは、非線形光ループミラー10の他端側(端子T22側)の非線形光ループミラー10上の端子をT42とする。
【0080】
さらに、光ファイバケーブル19の他端は光アイソレータ13を介して無反射終端される。従って、制御光は光ファイバケーブル19の一端から入射して光カップラ12を通過し、一方の制御光は光アイソレータ13を介して無反射終端されるが、光カップラ12で分岐した他方の制御光は光カップラ12の端子T42を介して非線形光ループミラー10中のループ内に出力される。また、非線形光ループミラー10の端子T12側の他端には、信号光の波長λ1のみを帯域通過ろ波するための光帯域通過フィルタ14が接続されている。
【0081】
以上のように構成された非線形光ループミラー10において、光カップラ11の分岐比(例えば、端子T11から入力した光信号を端子T21と端子T22に分岐するときの分岐比)を1:1に設定したとき、端子T11に入射した信号光は完全に入力端側に反射されることになる。本実施形態では、入射される信号光を出力端側に透過させる必要があるので、非線形光ループミラー10を制御光のパルス列を用いた右回りのみに位相シフトを与えることで、右回りで伝播する光信号と、左回りで伝播する光信号とで受ける位相差を変化させることができ、これにより、入力される信号光を反射させるか透過させるかを選択できる。この動作特徴を光符号化器と光しきい値処理器におけるしきい値処理やスイッチングに利用する。
【0082】
本実施形態においては、信号光と制御光との間のXPM(Cross Phase Modulation:相互位相変調)により、非線形光ループミラー10のループ中の右回りのパルスと左回りのパルスに位相差が生じさせ、制御光の信号レベルに従って、信号光の出力レベルを変化させる。すなわち、非線形光ループミラー10における右回りの光信号の伝播において、信号光の電界をE1とし、制御光の電界をE2とすると、電界E1が長さLの光ファイバケーブルを伝送した際に受ける非線形性による位相変化φ1RNLは次式で表される。
【0083】
[数1]
φ1RNL=γL[|E1|2+2|E2|2] (1)
【0084】
ただし、ω1は電界E1の角周波数であり、非線形性を表す係数γを用いて次式で表される。
【0085】
[数2]
γ=(ω1n2)/(cAeff) (2)
【0086】
ここで、cは真空中での光速であり、Aeffはファイバの有効コア断面積であり、n2は非線形屈折率係数である。また、E1E2での偏波面は揃っているとする。さらに、非線形光ループミラー10における左回りの伝播において、信号光の電界をE1とし、長さLの光ファイバを伝送した際に受ける位相変化φ1LNLは次式で表される。
【0087】
[数3]
φ1LNL=γL|E1|2 (3)
【0088】
このとき、右回りと左回りの信号光が受ける位相差Δφ1NLは次式で表される。
【0089】
[数4]
Δφ1RNL=2γ|E2|2L (4)
【0090】
この位相差のために右回りと左回りの信号光は干渉を起こす。位相差は制御光のパルス列の強度に比例するために、信号光のパルス列の非線形光ループミラー10からの出力信号光は、制御光の入力電力に対して、図4に示すような周期的な特性を示す。
【0091】
なお、多周期にわたる特性の利用には、制御光により高いパワーが必要であるが、このためには、例えばより非線形が高い光ファイバケーブルを用いて非線形光ループミラー10を構成すればよい。また、非線形光ループミラー10のループ長については、ループ長が長いほど、制御光は弱くて良いために出来るだけ長くすることが好ましいが、群遅延の差をできるかぎり小さくする必要があると考察できる。
【0092】
図5は図3の光符号化回路200の動作例を示すグラフ及びブロック図である。図5においては、各光符号化器201,202,203は、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、特に、それらの周期が2のべき乗の関係を有している場合であり、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有している。図5の動作例では、入力された時刻t1における信号光が光符号化器201,202,203により符号化された後、光しきい値処理器301,302,303により量子化されて(詳細後述)、3ビットの符号「001」の光ディジタル信号が出力されることを示されている。なお、Nビットの符号の光ディジタル信号を得るためには、光強度に関する入出力特性が周期T×2(N−2)をそれぞれ有するN個の光符号化器を設ける必要がある。ここで、Nは量子化ビット数を表し、自然数である。
【0093】
図6は図2の光しきい値処理器301の詳細構成及びその動作を示すブロック図及びグラフであり、光しきい値処理器302,303も光しきい値処理器301と同様に構成される。図6において、光しきい値処理器301は、非線形光ループミラー20と、2個の光カップラ21,22と、光アイソレータ23と、光帯域通過フィルタ24と、レーザダイオード25と、光アイソレータ26と、光ファイバケーブル29とを備えて構成される。ここで、非線形光ループミラー20と、2個の光カップラ21,22と、光アイソレータ23と、光帯域通過フィルタ24と、光ファイバケーブル29との接続構成は、光符号化器201と同様である。
【0094】
レーザダイオード25は、光標本化信号発生器30から入力される標本化信号の周期で間欠的に、所定の波長λ3を有し、一定の信号レベルの搬送波光のパルス列(搬送波光はパルス列に代えて、連続光であってもよい。)を発生して光アイソレータ26を介して非線形光ループミラー20の一端(光カップラ21の入力端)に入射するように出力する。一方、光符号化器201からの信号光は光ファイバケーブル29の一端を介して入射して光カップラ22を通過分岐し、光カップラ22を通過する一方の信号光は光アイソレータ23を介して無反射終端されるが、光カップラ22で分岐した他方の信号光は光カップラ22を介して非線形光ループミラー20中のループ内に出力される。また、非線形光ループミラー20の他端には、搬送波光の波長λ3のみを帯域通過ろ波するための光帯域通過フィルタ24が接続されている。
【0095】
以上のように構成された光しきい値処理器301の動作について図7を参照して説明する。図7は1ビット量子化の動作例であり、光しきい値処理器301の入出力が例えば線形特性401であれば、入力される信号光はそのまま出力されて量子化できないが、例えば第1の入出力特性402(光強度に関する)を有する場合、より小さい光信号はより小さく0に近づく一方、より大きな光信号はより大きく1に近づくように変換される。さらに、第2の入出力特性403(光強度に関する)を用いる方がより2値化に近い出力光を得ることができる。なお、第2の入出力特性403を得るために、詳細後述するように、光しきい値処理器を多段で縦続接続することが好ましい。
【0096】
図8は図2の光符号化回路200及び光量子化回路300の詳細構成を示すブロック図であり、図9は図8の各光符号化器201,202,203の動作例を示すグラフであり、図9(a)は光符号化器201の動作例を示し、図9(b)は光符号化器202の動作例を示し、図9(c)は光符号化器203の動作例を示す。また、図10は図8の各光しきい値処理器301,302,303の動作例を示すグラフであり、図10(a)は光しきい値処理器301の動作例を示し、図10(b)は光しきい値処理器302の動作例を示し、図10(c)は光しきい値処理器303の動作例を示す。
【0097】
図8に示すように、光符号化回路200と光量子化回路300とを構成した場合、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性をそれぞれ図9(a)、図9(b)、図9(c)に示している。ここで、各光符号化器201,202,203は、図9から明らかなように、互いに異なる、入力される制御光のパワーレベルに対する出力信号光のパワーレベルの周期特性を有し、特に、それらの周期が2のべき乗の関係を有している場合であり、光符号化器201はその周期2Tを有し、光符号化器202は周期Tを有し、光符号化器203は周期T/2を有している。これら図9に示す信号光をそれぞれ光しきい値処理器301,302,303に入射した場合、図10に示すようにある程度量子化することができるが、さらに、急峻な量子化特性を得ることが所望される。
【0098】
これを実現するために、図11に示すように、光量子化回路300Aにおいて、光しきい値処理器を多段で縦続接続している。図11において、光符号化器201の後段において、2段で縦続接続された光しきい値処理器301,311が接続されている。また、光符号化器202の後段において、3段で縦続接続された光しきい値処理器302,312,322が接続されている。さらに、光符号化器203の後段において、4段で縦続接続された光しきい値処理器303,313,323,333が接続されている。以上のように構成された光量子化回路300Aの動作例を図12に示している。図12から明らかなように、光しきい値処理器の縦続接続の段数が多いほど、より急峻な矩形化された光強度に関する入出力特性を得ることができる。
【0099】
以上の実施形態においては、非線形光ループミラーを用いて光しきい値処理器301,302,303を構成しているが、本発明はこれに限らず、非線形光ループミラーのループ中に増幅器を備えた非線形増幅ループミラー(Nonlinear Amplifying Loop Mirror;以下、NALMという。例えば非特許文献4参照。)を用いて構成してもよい。
【0100】
以上の実施形態においては、光符号化器201,202,203を非線形光ループミラー10を用いて構成し、光しきい値処理器301,302,303を非線形光ループミラー20を用いて構成しているが、本発明はこれに限らず、光符号化器201,202,203や光しきい値処理器301,302,303を、光カー効果などの非線形光学効果を有する光ファイバケーブル又は光導波路を用いて構成してもよい。ここで、光カー効果とは、光ファイバケーブル中で発生する非線形光学効果の現象をいい、一般に、光信号の強度に依存して屈折率が変化する非線形屈折率現象をいう。非線形光ループミラー10と同様の周期特性が得られることが、例えば非特許文献5及び6において開示されている。
【0101】
図23は、本発明の第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。第1の変形例に係る導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器においては、図23に示すように、3本の光導波路81,82,83が形成され、ここで、少なくとも所定の2箇所でこれら2本の光導波路81,82が光学的に結合するように近接されてそれぞれ光カップラ91,92を形成する。
【0102】
光カップラ91の光導波路82上の入力端子をT101とし、その出力端子をT103とする一方、光カップラ91の光導波路81上の入力端子をT102とし、その出力端子をT104とする。また、光カップラ92の光導波路82上の入力端子をT111とし、その出力端子をT113とする一方、光カップラ92の光導波路81上の入力端子をT112とし、その出力端子をT114とする。さらに、光カップラ92の出力端子T114には、後述する出力信号光のみを帯域ろ波する光帯域通過フィルタ95が接続される。
【0103】
また、光カップラ91の出力端子T104と、光カップラ92の入力端子T112との間において、光導波路81に対して光学的に結合するように近接して光導波路83が形成されて、当該近接箇所において、光カップラ93が形成される。光カップラ93の光導波路81上の入力端子をT121とし、その出力端子をT123とする一方、光カップラ93の光導波路83上の入力端子をT122とし、その出力端子をT124とする。さらに、光カップラ93の出力端子T124は光アイソレータ94を介して無反射終端される。
【0104】
以上のように構成された、導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器において、波長λ1を有し所定の周期の信号光のパルス列を光カップラ91の入力端子T101に入力することにより、当該信号光のパルス列を光導波路82及び81に分配して入射させる一方、波長λ2を有し所定の周期の制御光のサンプリングされたアナログパルス列を光カップラ93の入力端子T122に入力することにより、当該制御光のパルス列を光導波路81に入射させる。ここで、信号光と制御光との間のXPMにより、制御光のパルス列に従って、光カップラ91で分配された光導波路81上の片側の信号光のみに位相変化を生じさせ、上記光カップラ91により分配した2つの信号光を光カップラ92で再び合成することにより、制御光の信号レベルに従って、信号光の出力レベルを変化させることができる。当該導波路型マッハツェンダ干渉計から出力される出力信号光は、光カップラ92から光帯域通過フィルタ95を介して取り出し、当該出力信号光は、制御光の出力電力に対して、図4に示すような非線形ループミラーの場合と同様な周期的な特性を示す。当該導波路型マッハツェンダ干渉計を用いた光符号化器は、図3の光符号化器201と同様に、制御光を光符号化して、光符号化された出力信号光を出力する。また、図23の光符号化器は、図6の光しきい値処理器301と同様に、光しきい値処理器としても動作させることができる。
【0105】
図24は本発明の第2の変形例に係る分散不平衡型非線形光ループミラーを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。第2の変形例に係る光符号化器における分散不平衡型非線形光ループミラー(Dispersion Imbalanced-Nonlinear Optical Loop Mirror;以下、DI−NOLMという。例えば、非特許文献7,8及び9参照。)は、光受動素子のみで構成される非線形光ループミラーとして知られている。
【0106】
第2の変形例に係るDI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、図24に示すように、分散値D1と長さL1を有する光ファイバケーブル101と、分散値D2(D2<D1))と長さL2を有する光ファイバケーブル102とを縦続に接続し、光ファイバケーブル101の入力端と、光ファイバケーブル102の出力端とを、互いに光学的に結合するように近接することにより、4つの端子T121,T122,T123,T124を有する光カップラ105を形成する。また、光カップラ105の端子T124の近傍であって、光ファイバケーブル102の途中に、偏波コントローラ106を設けるとともに、光カップラ105の出力端子T122には、光ファイバケーブル102及び分散補償光ファイバケーブル103を介して、出力制御光を取り出す光帯域通過フィルタ104を接続されている。
【0107】
以上のように構成されたDI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、非線形光ループミラー(NOLM)や非線形増幅ループミラー(NALM)と同様に、入射光である制御光の強度に依存する特性を有している。また、偏波コントローラ106は、ループ部の偏波を調節するために設けられ、分散補償光ファイバケーブル103はループ部の光ファイバケーブル101,102で受けた分散を補償するものであり、DI−NOLMには必要不可欠なものである。
【0108】
DI−NOLMにおける光カップラ105の入力端子T121に1つの光パルスが入射すると、光カップラ105により時計回りのパルス及び反時計回りの光パルスに1:1の比率で分配される。時計回りの光パルスの伝播に関しては、当該光パルスが光ファイバケーブル101に入射すると、高分散(分散値D1)のためパルス幅が拡がり、ピークパワーが低下する。その後、光パルスは分散値が非常に低い(D2≒0)光ファイバケーブル102を低いピークパワーを維持しながら伝播する。それに対して、反時計回りの伝播に関しては、まず、入射パルスは分散値が小さい光ファイバケーブル102を高いピークパワーを維持しながら伝播する。その後、光パルスは光ファイバケーブル101に入射される。光ファイバケーブル101では高い分散値のために入射後すぐに分散効果を受け、パルス幅が広がりピークパワーが低下する。時計回りと反時計回りの光パルスを比較すると、反時計回りの光パルスの方が高いピークパワーで伝播する距離が長いため、ループ部で受けるSPM(Self Phase Modulation)の影響は時計回りの光パルスに比べて大きい。このようにして、時計回りの光パルスと反時計回りの光パルスのループ部で受けたSPMの違いによって、入射する制御光の光パルスを透過、あるいは反射させることが可能となる。DI−NOLMの特長としては、信号光や光増幅器等が不要であり、光受動素子のみで構成されること、3dBの光カップラ105を用いることで、連続光(Continuous-Wave:CW)を完全に反射できるということ、分散補償光ファイバケーブル103を用いているためループ部の光ファイバケーブルの長さを比較的長くできることが挙げられる。このDI−NOLMを用いることで光しきい値処理が光受動素子のみで簡単に行うことが可能となる。
【0109】
以上のように構成された、DI−NOLMを用いた光しきい値処理器は、図6の光しきい値処理器301と同様に動作させることができる。
【0110】
図25は本発明の第3の変形例に係る光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器の構成を示すブロック図である。当該光カー効果を有するカーシャッタは、図25に示すように、例えば2.0以上の複屈折を有する高複屈折光ファイバケーブル111と、それに接続される偏光子112とを備えて構成され、例えば非特許文献5の図6.1において開示されているものである。
【0111】
図25において、信号光と制御光とをともに直線偏光で互いに45度の角度を持たせて高複屈折光ファイバケーブル111の入力端から入力する。信号光が無い場合には制御光は偏光子112で遮断されて出力端から出力されないが、信号光を入力することで信号光による複屈折のために制御光の偏光が回転し制御光は偏光子112を通過して出力されるようになる。制御光の出力電力は信号光の強度により周期的に変化する。
【0112】
以上のように構成された、光カー効果を有するカーシャッタを用いた光符号化器においては、図3の光符号化器201と同様に、制御光を光符号化して、光符号化された出力信号光を出力する。また、図25の光符号化器は、図6の光しきい値処理器301と同様に、光しきい値処理器としても動作させることができる。
【実施例1】
【0113】
図13は本実施形態に係る実験システムの詳細構成を示すブロック図である。図13の実験システムにおいて、ファイバリングレーザ(FRL)50は例えば80GHzの標本化周波数を有する光アナログ信号を発生して光分配器57に出力し、光分配器57は入力される光アナログ信号を2分配して光帯域通過フィルタ51,52に出力する。光帯域通過フィルタ51は入力される光アナログ信号を、所定の波長λ1のみを帯域通過ろ波しかつ、例えば2ピコ秒のパルス幅を有するパルス列を発生して光分配器56に出力し、光分配器56は入力される光アナログ信号を3分配して、遅延回路15及び光アイソレータ16を介して各光符号化器201,202,203の非線形光ループミラー10に出力する。
【0114】
一方、光帯域通過フィルタ52は入力される光アナログ信号を、所定の波長λ2のみを帯域通過ろ波しかつ、例えば8ピコ秒のパルス幅を有するパルス列を発生して光変調器53に出力し、光変調器53は入力される光アナログ信号を、データ信号発生器54からのデータ信号に従って強度変調した後、光分配器56に出力する。ここで、波長λ2は波長λ1の近傍の波長である。光分配器55は入力される光アナログ信号を3分配して、光増幅器17及び光アイソレータ18を介して各光符号化器201,202,203の光カップラ12を介して非線形光ループミラー10のループ内に出力する。
【0115】
各光符号化器201,202,203では、信号光を制御光の信号レベルに従って符号化し、符号化された信号光は光帯域通過フィルタ14、光増幅器27及び光アイソレータ28を介して各光しきい値処理器301,302,303の光カップラ22を介して非線形光ループミラー20のループ中に出力される。一方、レーザダイオード25により発生された波長λ3の搬送波光(ここで、波長λ3は波長λ1の近傍波長である。)は光アイソレータ26を介して各光しきい値処理器301,302,303の非線形光ループミラー20のループ中に入力される。これにより、各光しきい値処理器301,302,303では、搬送波光を信号光の信号レベルに従って量子化し、量子化された搬送波光は光帯域通過フィルタ24を介して外部光回路に出力される。
【0116】
図14は図13の光符号化回路200の符号化処理の動作例を示すグラフであって、図14(a)は光符号化器201の符号化処理の動作例を示し、図14(b)は光符号化器202の符号化処理の動作例を示し、図14(c)は光符号化器203の符号化処理の動作例を示す。また、図15は図13の光符号化回路200を用いた符号化処理における制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対する3ビット符号化値(#1,#2,#3)を示すグラフである。図14に示すように、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性を設定することにより、入力される制御光の入力電力レベルに応じて適切に符号化されることがわかる。また、図15に示すように、制御光(λ2)の入力アナログパルスの振幅に対して符号値は1対1で対応するように符号化されており、上述のように、各光符号化器201,202,203の光強度に関する入出力特性(特に、非線形光ループミラー10の周期特性)を変更することにより符号化処理に自由度を与えることができる。
【0117】
図16は図13において理想的な非線形光ループミラーを用いて実験システムを構成したときに、1段の光しきい値処理器の処理後のアナログパルスの振幅を変化したときの符号化後の3ビット符号化値(#1,#2,#3)とそのパルス波形を示す図である。図16から明らかなように、アナログパルスの振幅に応じて適切に符号化された光ディジタル信号が得られることがわかる。
【実施例2】
【0118】
次いで、本発明者らが行ったシミュレーションとその結果について以下に説明する。このシミュレーションの諸元を以下の表に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
図17は本実施形態に係る第1のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図17において、ファイバリングレーザ(FRL)61は波長λ1の信号光を発生して光符号化器201の非線形光ループミラー10のループ中に出力する。一方、ファイバリングレーザ(FRL)62は波長λ2の制御光を発生して光遅延回路63及び光カップラ12を介して光符号化器201の非線形光ループミラー10のループ中に出力する。光符号化器201は信号光を入力される制御光の信号レベルに応じて符号化し、符号化された信号光を光帯域通過フィルタ14を介して出力する。
【0123】
図18は図17の第1のシミュレーションの結果であって、制御光(λ2)のパルスのピークパワーに対する信号光(λ1)のパルスのピークパワーを示すグラフである。図18から明らかなように、図17のシミュレーション値として、周期特性の理論値に近い結果が得られた。ただし、当該シミュレーションでは、四光波混合を無視している。なお、シミュレーション値と理論値との差は、非線形光ループミラー10の分散によるウォークオフによるものと考えられる。
【実施例3】
【0124】
図19は本実施形態に係る第2のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図19の第2のシミュレーションでは、図17のシミュレーションに比較して、ファイバリングレーザ62により発生したピークパワー1Wの制御光を、3段の3dB光カップラ71,72,73を用いて減衰させ、3つの光信号レベルを有する制御光を発生してそれぞれ各光符号化器201,202,203に入力したときの出力信号光のレベルを測定した。なお、光カップラ71からの制御光のレベルを1とすると、光カップラ72からの制御光のレベルは1/2となり、光カップラ73からの制御光のレベルは1/4となる。
【0125】
図20は図19の第2のシミュレーションの結果であって、図20(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図20(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図20(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。図20から明らかなように、各光符号化器201,202,203に入力される制御光のレベルに応じて符号化された信号光が得られている。
【実施例4】
【0126】
図21は本実施形態に係る第3のシミュレーションの実験システムの構成を示すブロック図である。図21の第3のシミュレーションでは、図19のシミュレーションに比較して、ファイバリングレーザ62により発生した制御光のピークパワーを1.5Wに変更した場合であり、その他の構成は第2のシミュレーションと同様である。
【0127】
図22は図21の第3のシミュレーションの結果であって、図22(a)は光符号化器201からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり、図22(b)は光符号化器202からの信号電力のパルス波形を示す波形図であり図22(c)は光符号化器203からの信号電力のパルス波形を示す波形図である。図22から明らかなように、各光符号化器201,202,203に入力される制御光のレベルに応じて符号化された信号光が得られている。また、図20と図22のシミュレーション結果を比較すれば、適切に符号化されていることがわかる。
【0128】
以上説明したように、本実施形態に係る光A/D変換装置100によれば、標本化された光アナログ信号を光ディジタル信号に光A/D変換することができ、標本化周波数の上限は数百ギガ数テラヘルツオーダーまで原理的に可能であり、電気回路のA/D変換の標本化周波数の限界を数十ギガヘルツとすると、二桁程度の高速化が可能である。また、入出力が光信号なので光ネットワークへの応用に適している。
【0129】
第2の実施形態.
次いで、第2の実施形態では、上記光A/D変換装置100などに用いられる非線形光ループミラー(Nonlinear Optical Loop Mirror:以下、NOLMという。)について以下に説明する。
【0130】
従来用いられてきたNOLMは、入力光パワーと出力光パワーの間に図27のような関係がある。ここで、入力光パワーとは、光パルスのSPM(self-phase modulation)による位相シフトを利用した干渉スイッチ(セルフスイッチ)の場合は信号光の入力パワーであり、制御光と信号光のXPM(cross-phase modulation:相互位相変調)による位相シフトを利用した干渉スイッチ(XPMスイッチ)の場合は制御光の入力パワーである。また出力光パワーとは、NOLMの透過ポートより出力される信号光の出力光パワーである。また、以後、特に指定する場合を除き、制御光及び信号光はパルスの形態をとるものとする。
【0131】
入力パワーが十分小さい場合は、出力パワーも抑圧される。一方、入力パワーを大きくしていくと出力パワーも正弦波曲線に従って大きくなり、入力パワーがP1のときにピーク値をとる。この伝達関数を用いると、制御光のあるなしによる信号光の反射・透過を制御できるスイッチが実現できる。あるいは伝送により振幅のゆらいだ信号を制御光とし、それによるプローブ光のスイッチングを行うと、0レベルや1レベルが雑音によってゆらいだとしても、出力ではゆらぎが抑圧され、波形整形効果が期待できる。このように、半周期の正弦波曲線からなる伝達特性を持つNOLMがこれまで実現され、用いられてきた。
【0132】
このようなNOLMとしては、光パルスのSPMによる位相シフトを利用した干渉スイッチ(例えば、非特許文献3参照。)、制御光と信号光のXPMによる位相シフトを利用した干渉スイッチ(例えば、非特許文献10参照。)の提案が発端であり、これに関連して高非線形ファイバを用いたNOLM(例えば、特許文献2参照。)、NOLM中のFWMを利用した信号処理(例えば、特許文献3参照。)、制御光と信号光のウォークオフを抑圧することでXPMの効率を向上したNOLM(例えば、特許文献5、特許文献2、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献10参照。)、そしてファイバを平均分散零の分散マネージメント構成とし、ウォークオフを減らすことに加え、制御光パワーの減少要因であるFWMを抑圧することによってXPMの効率を向上したもの(例えば、特許文献10参照。)などがある。また、NOLMにおける偏光に関する特性についてもいろいろ知られている(例えば、特許文献4及び特許文献9参照)。
【0133】
一方、光符号化器や光しきい値処理器では、図28のように複数の周期からなる正弦波曲線である伝達特性を持つNOLMが使用されるが、従来技術ではこのようなNOLMは実現されていない。以下に示すように本発明の実施形態に係るNOLMは1周期以上の伝達関数を有し、光A/D変換をはじめ種々の光信号処理に適した特性を与えることができる。
【0134】
図26にNOLM500の構成を示す。NOLM500は、光ファイバ501と、光信号の入力端510から入力された光信号530を2分岐して光ファイバ501の両端511、512に出力し、かつ上記光ファイバ501の両端511,512から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端510及び他の出力端513に分岐出力するように接続された光カップラ502と、制御光531を上記光ファイバ501に入力する制御光入力手段524と、上記光ファイバ501の光路上に配置される非線形媒質である高非線形ファイバ(以下、HNLF(High Non-Linear optical Fiber)という。)504からなる。ここで、入力信号光530は入力パワーPinと波長λSを有し、制御光531は、ピークパワーPcと平均パワーPaveと波長λCとを有する。
【0135】
光信号の入力端510から入力した入力パワーPinの信号光530は、光カップラ502でそれぞれ位相変化を伴わない伝搬光532、位相がπ/2だけ進んだ伝搬光533に分岐されて光ファイバ501で形成されたループを図面上それぞれ右回り、左回りに伝搬する。伝搬光532は、制御光入力手段524から入力されたピークパワーPc、平均パワーPaveの制御光531とできるだけ広い範囲で重なるように合波されて、非線形性係数がγで長さがLの非線形媒質であるHNLF504をへて光ファイバ端512から光カップラ502に入力する。
【0136】
また、伝搬光533はファイバ501で形成されたループを図面上左回りに伝搬し、制御光とはほとんど重なることなく、HNLF504をへて光ファイバ端511から光カップラ502に入力する。
【0137】
制御光がない場合、右回りと左回りで発生する位相シフトにはほとんど差が生じない。そのため出力端513では位相シフトを伴わない右回りの伝搬光532の成分と光カップラ502で2回にわたってπ/2の位相シフトを受けた左回りの伝搬光533の成分とが相殺しあって出力は0となる。また、入力端510ではともに1回ずつπ/2の位相シフトを光カップラ502で受けた伝搬光532、533の各成分が強めあい、入力パワーとほぼ同じパワーの戻り光が入力した信号光530と逆方向に入力端510へ出力される。
【0138】
制御光531がある場合、伝搬光532はこれと重なるようにして、HNLF504を伝搬するため、伝搬光532と制御光531の間では制御光531のパワーに依存した相互位相変調(Cross-Phase Modulation:XPM)による位相シフトが発生する。一方、伝搬光533はこのXPMに起因する位相シフトがほとんど発生しないため、伝搬光532と伝搬光533の間には制御光531のパワーに依存した位相シフト差ができ、これによって入力端510及び他の出力端513に出力されるパワーを制御することができる。
【0139】
この系において、出力パワーPoutの出力信号光534と、入力パワーPinの入力信号光530のパワー比は以下の伝達関数によって与えられる。
【0140】
[数5]
Pout/Pin=[1−cos(φXPM)]/2 (5)
[数6]
φXPM=2γ(Pc−Pave)L (6)
【0141】
ここで、1周期以上、より好ましくは、2周期以上の伝達関数を実現するためには、制御光と信号光の間で発生するXPMによる信号光の位相シフトの差φXPM=2γ(Pc−Pave)Lとして、少なくとも2π(1周期、図28のP2に相当)あるいは4π(2周期、図28のP4に相当)が必要である。
【0142】
そこで、
(i)非線形媒質であるHNLF504の非線形性、距離、そして制御光531のパワーのいずれか、あるいはすべてを大きくする、
(ii)制御光531と信号光530の偏光状態を最適(XPMの発生効率を最大)にする、
(iii)制御光531と信号光530の波長差が分散を介して群遅延が発生する(以下、ウォークオフという)のを避けるために、非線形媒質であるHNLF504の分散値もしくは与えられた分散値に対して信号光530と制御光531の波長配置を変えることで、ウォークオフを抑えるように設定する、
(iv)ウォークオフも考慮に入れて、時間軸上で制御光531と信号光530の位置を最適にする、などの方法によって、効率よくXPMを発生させ位相シフトを大きくすることができる。
【0143】
また、上記(iii)を実現するには、任意の波長で分散値が零のファイバ(分散フラットファイバ;DFF)を用いるか、一定の分散スロープを持つ通常の分散シフトファイバ(DSF)をファイバ504上で用いて、制御光531の波長λCと信号光530の波長λSの中間にそのファイバ(DSF)の零分散波長λ0を設定する方法が考えられる。後者の方法ではファイバ(DSF)の零分散波長が長手方向に揺らいだ場合に、波長λCと波長λSの波長差Δλと、分散値の積に比例してウォークオフが発生するため、その積をウォークオフの発生が問題にならない程度に抑制する必要がある。
【0144】
いずれの場合も波長λCは零分散波長λ0に近くなり、波長λCにおける分散値が零に近い値となる。このとき制御光531をポンプ光とする縮退四光波混合(FWM)に伴う、パラメトリック利得が信号光530に対して生じる。この現象によって信号光530は右回りに制御光531とともに伝搬する際に増幅されるが、一方で左回りにそれのみで伝搬する信号光530は利得を受けないので、結果的に伝搬光532及び533のパワーに不均衡状態が発生する。そのような不均衡状態が顕著になると、図28の入力パワーP2やP4において得られる出力パワーが十分に小さな値とならず、大きな問題となる。
【0145】
図28の伝達関数において重要な点は、入力パワーP2やP4に対する出力パワーが、ピーク値(入力パワーP1やP3に対する出力パワーの値)を1とした場合に対して最適に設定したしきい値以下となることである。
【0146】
つまり、NOLMの出力信号に対して、先に設定したしきい値を適用することで、ディジタル情報処理の基本である2進数の信号処理が実現される。例えばそのしきい値を0.5と設定したとき、入力パワーがP2やP4のときに、もし前述のパラメトリックプロセスによる利得が3dBを上回れば、位相干渉によって透過されないはずの光が、パワー0.5を上回って透過されてしまうため、2進数の信号処理を行うことが不可能になる。一般に言えば、しきい値T(0<T<1;P2及びP4における出力パワーと、P1及びP3における出力パワーの比)、パラメトリック利得G(>1;非線形媒質における伝搬光532の入出力パワーの比)に対して、G<2T+1であることが必要である。これによって、入力パワーP2やP4に対する出力パワーを所望のしきい値以下に抑えることができ、光A/D変換をはじめとする光による2進数の信号処理が実現される。この事実は、図28の伝達関数を持つNOLMを実現する上で非常に重要な知見であるが、これまで知られていなかった。
【0147】
そこで、制御光531と同じ向きに伝搬する信号光530が制御光531から受けるパラメトリック利得を所定の値(例えば3dB)以下に抑えるために、本発明の実施形態では、以下の方法を提案する。非特許文献5によると、一般に光ファイバ中において、直線偏光である周波数ωCの連続光をポンプ光とする場合に、ポンプ光と同じ偏光状態で同じ方向に伝搬する周波数ωSの信号光が得る縮退パラメトリック利得Gは、次式で与えられる。なお、ここでの議論で用いられる「ポンプ光」は、本発明の実施形態に係るNOLMにおける制御光に相当する。
【0148】
[数7]
G(z)=1+(γ2P02/g2)sinh2(gz) (7)
[数8]
g2=γ2P02−κ2/4 (8)
[数9]
κ=Δk+2γP0 (9)
[数10]
Δk=Δω2k0” (10)
【0149】
ここで、z,γ,P0,k0”,Δωはそれぞれファイバの長さ[m]、ファイバの非線形定数[W−1m−1]、ポンプ光のパワー[W]、ファイバの分散値[s2/m]、そしてポンプ光と信号光の周波数差[s−1]であり、ファイバの4次以上の分散や損失の効果は無視した。これらの値を与えれば、信号光が受けるパラメトリック利得は式(7)乃至式(10)から一意に決定できる。例えば、z=0.32[km],γ=17.5[W−1km−1]、P0=2[W]とした場合に、k0”,Δωの値に対する利得の変化について考えてみる。なお、ファイバ分散値はk0”[ps2/km]に対してk0”=−1.284Dの関係を持つ分散D[ps/nm/km]を用いることとし、周波数差Δωはポンプ光と信号光の波長差Δλ=|λC−λS|を用いて、Δω=2πcΔλ/λと書けるものとする。ただし、c=2.998×108[m/s]及びλ=1.55[μm]はそれぞれ真空中における光速及び搬送波の波長である。まず、ポンプ光と信号光の波長差Δλを10nmとおき、ポンプ光の波長λCにおけるファイバ分散値D(λC)を変化させた場合に、式(7)乃至式(10)の計算より得られるパラメトリック利得を図29に示す。
【0150】
図29において、D≒1[ps/nm/km]で見られる大きな利得は、異常分散領域で発生する変調不安定現象として知られている。例えば、パラメトリック利得を3dB以下に抑えるためには、正常分散領域でA点における分散値D’よりも小さな値にするか、異常分散領域においてB点における分散値D”よりも大きな値に設定する必要がある。図29において一般に|D’|<|D”|であるが、分散値の絶対値に比例するウォークオフを低減することを考えると、絶対値の小さな正常分散値であるD’を採用することが好ましい。また、大きなエネルギーを持つパルスが異常分散ファイバを伝搬すると、高次ソリトンを励起することで制御光の波形が著しく劣化し、結果的にXPMの効率が劣化することも考えられるため、この点からも、異常分散値D”を採用することは、D’と比べて好ましくない。ただし、ウォークオフやソリトン励起による波形劣化が問題とならなければ、図29のD>D”の条件で、ファイバの分散値を異常分散とすることも可能である。
【0151】
次に、分散値をD=−0.62[ps/nm/km]とおき、ポンプ光と信号光の波長差Δλ=|λC−λS|を変化させたときに、式(7)乃至式(10)より得られるパラメトリック利得を図30に示す。図30より、Δλを大きくすることで、パラメトリック利得が抑圧されることがわかる。例えばパラメトリック利得を3dB以下にするという条件のもとで、ウォークオフやパルスの波形広がりなど分散による影響を最小にしたければ、ポンプ光と信号光の波長差を図30のC点における値Δλ’に設定すればよい。
【0152】
以上のように、パラメトリック利得を一定値以下に抑圧するためには、ポンプ光の波長におけるファイバの分散値を、一定値以上のパラメトリック利得を与える最小の分散値(図29中のA点に対応)よりも小さな値にすること、もしくは一定値以上のパラメトリック利得を与える最大の分散値(図29中のB点に対応)よりも大きな値にすることと、ポンプ光と信号光の波長差を一定値以上のパラメトリック利得を与える最大の波長差(図30中のC点に対応)よりも大きくすることが有効であることが示された。なお、図29、図30中のA,B,C点はそれぞれのグラフの包絡線上で与えてもよい。
【0153】
いま考えている図26のNOLM500中で同一方向に伝搬する制御光531と信号光530(伝搬光532)の間で発生するパラメトリックプロセスを考える場合、それらが単一周波数の連続光ではなく、パワーが時間によって変化するパルスであること、そしてパルス同士のウォークオフや偏光状態の不一致などにより制御光及び信号光パルス間のFWMの効率が劣化することなど、様々な要因から式(7)乃至(10)の計算結果は誤差を生ずる。しかし、図29や図30に示したパラメトリック利得の各種パラメータ依存性は、NOLM500中のパルスの場合についても、実験的に測定することが可能であり、具体的にどのような分散値、あるいは波長差を与えればよいかという指針を与えることができる。
【0154】
図31及び図32において、NOLM500中を同一方向に伝搬する制御光531と信号光530(伝搬光532)の間で発生するパラメトリック利得を効果的に抑圧し得る、ファイバの波長分散特性と制御光、信号光の波長配置を示す。図31はファイバの波長分散特性がdD/dλ>0の場合であって、λC<λS<λ0である。さらに、図29及び図30において、いまの場合についての分散D’及び波長差Δλ’を用いて、D(λC)<D’、Δλ=|λC−λS|>Δλ’を満たしているものとする。図32はdD/dλ<0の場合であって、以下は図31の条件と同様である。
【0155】
ポンプ光である制御光531の波長λCにおける正常分散値D(λC)<0及び制御光531と信号光530の波長差Δλは、それぞれが大きい値であるほどパラメトリック利得も抑圧されるが、逆に大きくしすぎると、ウォークオフの増大や、分散によるそれぞれのパルスの波形ひずみに起因してXPMの効率が劣化するため好ましくない。そこで、信号光530が得るパラメトリック利得がある値以下になるように、かつXPMの効率が低減されないよう制御光531と信号光530のウォークオフや時間差、あるいはそれらの偏光状態を最適に設定した設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つNOLMが実現可能となる。なお、ウォークオフは制御光531と信号光530の波長差Δλと、制御光531の波長λCにおける分散値D(λC)との積の絶対値に比例するので、それを抑制すればよい。また、図31及び図32で制御光と信号光の波長を入れ換えた場合でも、D(λC)<D’が満たされていればよい。またループ中のファイバ及び非線形媒質の偏光が常に保持されるような構成にすることで、XPMをより効率的に発生させることができる。具体的には偏光保持ファイバを用いて、制御光と信号光が常に同じ直線偏光であるようにすればよい。その際パラメトリックプロセスによる信号光の利得も増大するが、その点も考慮して先に述べた設計方法を適用すればよい。
【0156】
以上に図28のような伝達関数をもつNOLMを設計する方法について述べたが、これを簡単にまとめたものを図33に示す。本発明の実施形態に係るNOLMは、図33のフローチャートに示される設計処理の手順に従って行われる。
【0157】
図33において、まず、ステップS1において、NOLMの伝達関数を決定し、すなわち、1−cosφで角度φの最大値φmaxを決定する。次いで、ステップS2において、伝達関数において、所望の信号処理に適したしきい値を決定し、ステップS3において、NOLMに用いるファイバパラメータ及び制御光の条件を仮決めする。そして、XPMによる位相シフトの最大値が、角度の最大値φmaxに及んでいるか否かが判断され、YESのときはステップS5に進む一方、NOのときはステップS3に戻る。さらに、ステップS5において、伝達関数の角度φ=2nπ(n=1,2,…)に対する条件で、信号光が制御光から受けるパラメトリック利得が先に設定したしきい値以下であるか否かが判断され、YESのときはステップS6に進む一方、NOのときはステップS3に戻る。さらに、ステップS6では、当該条件での設計を確定し、当該設計処理を終了する。
【0158】
本発明の実施形態によって、出力光パワーの制御範囲が1周期をこえ、位相差2nπ(n=1,2,…)における出力光パワーをピークパワーに対して光信号処理で必要とされるしきい値以下に抑えることができるNOLMが実現された。この用途のひとつは、光A/D変換である。他に考えられる形態は、例えばQAM、PSK、ASKなど多値通信の復号化がある。別の視点からは、NOLM中のXPMを用いたスイッチングではなく、制御光によって信号光に与えられるパラメトリック利得を積極的に用いたスイッチングデバイスの実現なども考えられる。
【実施例5】
【0159】
図34は本発明の実施形態に係るNOLM550の形態を示している。以下では、NOLMの550伝達関数においてしきい値を0.5と設定した場合の信号処理を仮定して、これに対応できるNOLMの実施例について述べる。
【0160】
NOLM550において、信号光は入力端580から入力し3dBカップラ552で分岐された後にそれぞれ光ファイバ551を逆方向に伝搬する。右回りの信号光には制御光入力端571から入力される制御光がWDMカップラ574を介して広い範囲で重なるように合波された後に、17dBカップラ553を介してHNLF(高非線形ファイバ)554を伝搬する。NOLM550中で用いられているHNLF554はファイバ長が380m、非線形定数が17.5W−1km−1、零分散波長が1575nm、分散スロープが0.027ps/nm2/km、ファイバ損失が0.67dB/kmである。また幅が約15psのパルス列である制御光の波長は1552nm、幅が約3.4psのパルス列である信号光の波長は1568nmであり、それぞれのパルス列の繰り返し周波数は10GHzで、制御光と信号光の波長差は16nmである。また、制御光の波長におけるHNLF554の分散値は−0.62ps/nm/km、つまり正常分散値である。
【0161】
XPMを効率よく発生させるために、信号光の時間遅延量及び制御光の偏光を最適な状態に設定してある。以下に、その具体的な内容を示す。
【0162】
(A)信号光の偏光の調整:まず制御光を入射しない状態で入力端580から信号光を入射し、ループ中の偏波コントローラ(PC)592を操作して信号光が完全に入射端に反射してくる状態を作成し、光サーキュレータ598を用いて反射光受光端593で検知する。具体的には3dBカップラの端子561、562で分岐された右回りと左回り信号光が、ループを伝搬し終えてそれぞれ端子562及び561に達した際に、それぞれの信号光の偏波が同じになるように、ループ中の偏波コントローラ(PC)592を調整する。この状態でNOLM550は反射率100%、透過率0%のループミラーとして働く。
【0163】
(B)遅延線の調整:その後制御光を入射し、制御光のパワーを少しずつ上げてゆく。NOLM550の伝達特性の最初の立ち上がり(XPMによる信号光の位相シフトφXPMが0付近)の付近で遅延線597の遅延量を変えて、信号光の出力パワーが最大となるように調整する。その後、制御光のパワーをさらに上げてゆき、伝達特性の最初の谷(φXPM=2π)に達するまで制御光のパワーを上げる。この状態で遅延量の微調整を行い、出力端584での信号光のパワーが最小となるように調整する。このように、HNLF554中を伝搬する信号光と制御光のパルスがより広い範囲で重なるようにすることで、XPMを効率的に発生させることができる。
【0164】
(C)制御光の偏光調整:NOLM550の伝達特性の最初の立ち上がり付近で制御光のパワーを上げてゆき、制御光を入射する伝搬路の偏波コントローラ(PC)591を調整し、出力信号光パワーが最大となるようにする。これによって、制御光と信号光の偏波状態の関係がXPMの発生効率を最大にする条件を与える。
【0165】
(D)バンドパスフィルタの選定:本実験で使用する信号光と制御光は、それぞれL及びCバンド帯にあるので、これらを分離するために出力端でバンドパスフィルタの代わりに、損失の小さいC/Lバンド用WDMカップラ595を用いた。
【0166】
(E)信号光と制御光の同期:本実施例では同一光源から波長変換を通して両光を発生しているので簡単に同期が取れている。信号光と制御光が別に入力される場合は、双方のパルスがHNLF中で最大限に重なるように同期を取ることで、XPMの発生効率をあげることができる。
【0167】
本実施形態において得られたNOLM550の伝達関数を図35に示す。図35より、制御光と信号光のXPMによる信号光の位相シフトが5πに達し、その位相シフトが2πや4πのときの出力パワーがピーク値に対して半分以下かつ十分小さいNOLMが実現できた。
【実施例6】
【0168】
一方、NOLM550中で用いられているHNLF554にファイバ長が380m、非線形定数が17.5W−1km−1、零分散波長が1560nm、分散スロープが0.024ps/nm2/kmのものを用い、制御光と信号光の波長をそれぞれ1550nm,1570nm(波長差20nm)とし、制御光のパルス幅を8.5psとしてその他の条件を同一としたとき、同様に伝達関数を測定した結果を図36に示す。XPMを効率的に発生させることにより多周期化されている。
【0169】
ここで、制御光の波長における分散値は−0.24ps/nm/kmであり、正常分散ではあるがその値が小さいため、信号光が大きなパラメトリック利得を受けている。つまり、右回りと左回りの信号光のパワーに不均衡が生じて干渉がうまく作用せず、信号光の位相シフトがπもしくは3πにおける出力パワーが0.5以下とならずに、その結果所望の伝達関数が得られていない、つまり少なくとも、φXPM=2πにおける出力光パワーがφXPM=πにおける出力光パワーの半分以下になるという条件が満たされていない。
【実施例7】
【0170】
その他の実施例として、図34のNOLM550において異なるパラメータを持つ別のファイバをHNLF554として用い、多周期NOLMを実現した例を他に2つの場合を示す。
(1)HNLFのファイバ長が406m、非線形定数が12W−1km−1、零分散波長が1567nm、分散スロープが0.021ps/nm2/km(制御光波長における分散値は−0.315ps/nm/km)、ファイバ損失が0.426dB/kmであるNOLMの伝達特性を図37に示す。
(2)HNLFのファイバ長が403m、非線形定数が12W−1km−1、零分散波長が1568nm、分散スロープが0.021ps/nm2/km(制御光波長における分散値は−0.336ps/nm/km)、ファイバ損失が0.411dB/kmであるNOLMの伝達特性を図38に示す。
【0171】
本発明の実施形態によって実現されたNOLMの用途のひとつは、光A/D変換である。他に考えられる形態は、例えばQAM、PSK、ASKなど多値通信の復号化がある。別の視点からは、NOLM中のXPMを用いたスイッチングではなく、制御光によって信号光に与えられるパラメトリック利得を積極的に用いたスイッチングデバイスの実現なども考えられる。
【0172】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るNOLM内の光ファイバにおいて制御光が引き起こすパラメトリックプロセスによって、制御光と同じ向きに進む信号光が受ける利得が、設定したしきい値に対して決定される許容値以下に抑圧されるように設計されたことを特徴とする設計を行うことで、図28のような伝達関数を持つNOLMが実現できる。
【0173】
第3の実施形態.
図39は本発明の第3の実施形態に係る多値光信号復号器400の構成を示すブロック図であり、図40は図39の各光信号処理器401,402における入力パルス強度に対する出力パルス強度を示すグラフである。
【0174】
図39において、多値光信号復号器400は、例えば多値光通信システムにおいて用いられ、3dB光カップラ410と、2個の光信号処理器401,402とを備えて構成される。ここで、光信号処理器401は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光アイソレータ16,18と、光ファイバケーブル19と、信号光パルス光源411とを備えて構成され、信号光パルス光源411からの信号光パルスは光アイソレータ16を介して、光信号処理器401のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。また、光信号処理器402は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光アイソレータ16,18と、光ファイバケーブル19と、信号光パルス光源412とを備えて構成され、信号光パルス光源412からの信号光パルスは光アイソレータ16を介して、光信号処理器402のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。ここで、光信号処理器401、402は、図40に示すように、互いに異なる周期の伝達関数を有し、具体的には、光信号処理器401の伝達関数の周期は光信号処理器402の伝達関数の周期の3倍に設定されている。
【0175】
以上のように構成された多値光信号復号器400では、多値パルス列光信号が光カップラ410に入力されて2分配される。2分配後の一方の多値パルス列光信号が光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器401のNOLM10に入力され、このとき、上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われ、処理後の2値パルス列光信号xが、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して出力される。また、2分配後の他方の多値パルス列光信号が光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器402のNOLM10に入力され、このとき、上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われ、処理後の2値パルス列光信号yが、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して出力される。
【0176】
次いで、多値光信号復号器400を用いた入力4値及び出力2値のときの光強度多値通信システムの応用例について以下に説明する。
【0177】
図41(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第1の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、図41(b)は図41(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。図41の第1の応用例において、図41(b)に示すように、光強度に対して符号を割り当てたとき、4値の多値光信号を多値光信号復号器400に入力したとき、2つの2値光信号x,yを得ることができる。このように、光信号の振幅を多値化することにより周波数の利用効率を増大させることができる。
【0178】
図42(a)は図39の多値光信号復号器400を用いた第2の応用例を示す光強度多値通信システムのための復号装置の構成を示すブロック図であり、図42(b)は図42(a)の復号装置の符号割り当て例を示す表である。図42の第2の応用例において、図42(b)に示すように、光強度に対して符号を割り当てたとき、4値の多値光信号を多値光信号復号器400に入力した後、多値光信号復号器400からの2つの出力光信号のうち一方の出力光信号のみを、元の多値光信号のパルス周期の半分だけ遅延する光遅延回路421を介して通過させ、通過後の光信号と、上記他方の出力光信号とを3dB光カップラ422により合成し、合成後の光信号を時分割多重化された2値光信号として得ることができる。このように、光信号の振幅を多値化することにより周波数の利用効率を増大させることができる。
【0179】
以上の実施形態において、2個の光信号処理器401,402を並列に配置して多値光信号復号器400を構成しているが、本発明はこれに限らず、互いに異なる伝達関数を有する3個以上の複数の光信号処理器を並列に配置して多値光信号復号器を構成してもよい。
【0180】
第4の実施形態.
図43は本発明の第4の実施形態に係る光論理演算回路600の構成を示すブロック図であり、図44(a)は図43の光論理演算回路600のOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(b)は図43の光論理演算回路600のAND演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(c)は図43の光論理演算回路600のNOT演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフであり、図44(d)は図43の光論理演算回路600のEXOR演算における入力光パルス強度に対する出力光パルス強度を示すグラフである。
【0181】
図43において、光論理演算回路600は、光信号処理器601と、3dB光カップラ602とを備えて構成される。ここで、光信号処理器601は、図3の光符号化器201と同様に、NOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、2個の光帯域通過フィルタ14、14Aと、光アイソレータ18と、光ファイバケーブル19と、光サーキュレータ16Aと、信号光パルス光源603とを備えて構成され、信号光パルス光源603からの信号光パルスは光サーキュレータ16Aを介して、光信号処理器601のNOLM10の光ファイバケーブルに入力される。ここで、光論理演算の入力信号である2つの2値パルス列信号x,yは光カップラ602により合成された後、光アイソレータ18、光ファイバケーブル19及び光カップラ12を介して光信号処理器601のNOLM10に入力された後、NOLM10内で上記信号光パルスと合成されて上述の非線形光処理が行われた後、処理後の光信号は、光カップラ11から光帯域通過フィルタ14を介して第1の演算結果の光信号として出力されるとともに、光カップラ11から光アイソレータ16A及び光帯域通過フィルタ14Aを介して第2の演算結果の光信号として出力される。
【0182】
ここで、光信号処理器601は、例えば図44に示すように、光論理回路の演算の種類に応じて、以下のごとく異なる伝達関数を有する。ここで、伝達関数は入力光パルス強度に対する出力光パルス強度の関数であり、出力パルス強度のピーク・ツー・ピークの振幅はBである。
(a)OR演算及びNOR演算のときには、伝達関数は、図44(a)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が3Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からOR演算結果の光信号を得ることができるとともに、光帯域通過フィルタ14AからNOR演算結果の光信号を得ることができる。
(b)AND演算及びNAND演算のときには、伝達関数は、図44(b)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が6Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からAND演算結果の光信号を得ることができるとともに、光帯域通過フィルタ14AからNAND演算結果の光信号を得ることができる。
(c)NOT演算のときには、伝達関数は、図44(c)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度がBであり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が2Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14AからNOT演算結果の光信号を得ることができる。
(d)EXOR演算のときには、伝達関数は、図44(d)に示すように、入力光パルス強度が0のときに出力光パルス強度が0であり、これより、入力光パルス強度が増大するにつれて出力光パルス強度が2Aの周期の正弦波形状で変化する。ここで、光帯域通過フィルタ14からEXOR演算結果の光信号を得ることができる。
【0183】
以上説明したように、2つの2値光信号x,yを入力するときに、光信号xのパルスのみ、又は光信号yのパルスのみをNOLM10に入力するときは、その光信号の光強度はAであり、これら2つの光信号x,yのパルスがNOLM10に入力するときは、その合成後の光信号の光強度は2Aとなる。図44に示すように、光信号処理器601の伝達関数を適切に調整することにより、きわめて簡単な光回路を用いて上述の種々の光論理演算を実現できる。
【実施例8】
【0184】
第4の実験システム.
図45は本発明の実施形態に係る第4の実験システムの構成を示すブロック図であり、図46は図45の第4の実験システムの実験結果であって、制御光の平均電力に対する出力信号光の平均電力を示すグラフである。
【0185】
図45の第4の実験システムにおいて、光信号処理器601Aは、図3の光符号化器201と同様に、光ファイバケーブル上に偏波コントローラ10Aを有するNOLM10と、2個の光カップラ11,12と、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光サーキュレータ16Aと、偏波コントローラ19Aとを備えて構成される。信号光源611は、波長1568nmでパルス周波数10GHzを有する信号光パルスを発生して、エルビウムがドープされたファイバ光増幅器612及び可変光遅延回路15A、光アイソレータ16A及び光カップラ11を介して、光信号処理器601AのNOLM10に入力する。一方、信号光源621は、波長1552nmでパルス周波数10GHzを有する制御光パルスを発生して、エルビウムがドープされたファイバ光増幅器622及び可変光減衰器623、偏波コントローラ19A及び光カップラ12を介して、光信号処理器601AのNOLM10に入力する。ここで、NOLM10で用いる高非線形ファイバは、400mの長さLと、16.6W−1km−1の非線形性係数γを有する。
【0186】
以上のように構成された図45の第4の実験システムで得られる伝達関数として、図46に示すように、2.5周期以上の実質的に正弦波形状の関数を得ることができた。
【実施例9】
【0187】
第5の実験システム.
図47及び図48は本発明の実施形態に係る第5の実験システムの構成を示すブロック図であり、図47は当該第5の実験システムにおける信号光及び制御光を発生する光回路部であり、図48は上記発生された信号光及び制御光に対して符号化し、しきい値処理を実行するための光回路部である。
【0188】
図47において、サンプリングレートが10GS/sである3ビットの光学的量子化及び符号化の実験システムを示している。制御光パルスの発生のために、波長1552nmでパルス周期3psで動作する10GHzの再生モード同期型ファイバリングレーザ(FRL)であるレーザ光源711を使用し、レーザ光源711から出力される制御光パルスは光増幅器712を介して、3dB光カップラ713に入力されて2分配され、2分配後の一方の制御光パルスは、分散補償光ファイバケーブル(DCF)715、光増幅器716及び可変光減衰器(VOA)717を介して制御光として出力される。上記2分配後の他方の制御光パルスは、偏波コントローラ714を介して光カップラ704に入力される。一方、CWレーザダイオード光源である可変レーザ光源701は、波長1560nmの信号光パルスを発生して光増幅器702及び偏波コントローラ703を介して光カップラ704に入力される。光カップラ704では2つのパルス光が合成された後、合成後のパルス光は高非線形光ファイバケーブル(HNLF)505及び光帯域通過フィルタ706を介して信号光として出力される。すなわち、以上の光回路部では、四光波混合(FWM)を用いて、制御光パルスと同期される1568nmの搬送波波長及び3psの時間幅を有する信号光パルスを発生させた。また、分散補償光ファイバケーブル(DCF)715を用いて、制御光パルスのパルス幅を11psまで拡張させた。分散補償光ファイバケーブル(DCF)715の後に可変光減衰器(VOA)717を用いて、アナログ光信号からサンプリングされた光パルスのレベルをエミュレートした。信号光パルスが制御光パルスに重畳するように、図48の3個の光遅延回路(ODL)725,726,727の光遅延量を設定した。
【0189】
図48において、光符号化回路200Aは3個の光符号化器201A,202A,203Aを並列に配置して構成され、光量子化回路300Aは、3個の光しきい値処理器301A,302A,303Aを並列に配置して構成される。ここで、各光符号化器201A,202A,203Aは、図3の光符号化器201と同様に、偏波コントローラ10Aを有するNOLM10と、2個の光カップラ11,12Aと、光アイソレータ13と、光帯域通過フィルタ14と、光サーキュレータ16Aと、偏波コントローラ19Aとを備えて構成され、信号光は光サーキュレータ16A及び光カップラ11を介して、光符号化器201AのNOLM10の光ファイバケーブルに入力され、制御光は偏波コントローラ19A及び光カップラ12Aを介してNOLM10に入力される。また、各光しきい値処理器301A,302A,303Aは、NOLM20と、光カップラ21と、光サーキュレータ26Aと、光増幅器27と、NOLM20の光ファイバケーブル上にそれぞれ挿入された光減衰器20B及び偏波コントローラ20Aとを備えて構成され、各光符号化器201A,202A,203Aからの出力光は、光増幅器27、光サーキュレータ26A及び光カップラ21を介してNOLM20に入力される。
【0190】
図47の光回路部で発生された信号光は光増幅器721を介して、3つの光カップラ722,723,724により3分配され、第1の信号光は光遅延回路725を介して光符号化器201Aの光サーキュレータ16Aに入力される。また、第2の信号光は光遅延回路726を介して光符号化器202Aの光サーキュレータ16Aに入力され、さらに、第3の信号光は光遅延回路727を介して光符号化器203Aの光サーキュレータ16Aに入力される。
【0191】
一方、図47の光回路部で発生された制御光は、接続点Xを介して光カップラ731に入力されて2分配され、2分配後の一方の制御光は光カップラ732でさらに2分配され、その一方の光信号は光減衰器733を介して光符号化回路200A内の光符号化器201Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器201Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器301Aによる光しきい値処理が実行される。光カップラ732からの他方の光信号は光符号化回路200A内の光符号化器202Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器202Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器302Aによる光しきい値処理が実行される。また、光カップラ731からの他方の光信号は光減衰器734を介して光符号化回路200A内の光符号化器203Aの偏波コントローラ19Aに入力された後、光符号化器203Aによる光符号化処理及び光しきい値処理器303Aによる光しきい値処理が実行される。
【0192】
以上のように構成された第5の実験システムにおいて、光符号化器201A,202A,203Aが最大レベルの制御光パルスでそれぞれ半周期、単周期及び2周期の伝達関数を供給するように、光減衰器733,734を使用して各光符号化器201A,202A,203A間の伝達関数の相対的周期性を適切に調整した。各光符号化器201A,202A,203AのNOLM10AのHNLFの長さL及び非線形係数γはそれぞれ、380m、403m及び406m及び17.5W−1km−1、12.0W−1km−1及び12.0W−1km−1であった。光帯域通過フィルタ14は制御光パルスを除去し、信号光パルスのみを通過させて出力する。3個の光しきい値処理器301A,302A,303Aの特徴はほぼ同一である。エルビウムがドープされたファイバ光増幅器27の利得は、23dB程度の適正値に調整した。10dBの光減衰器20Bを使用して自己スイッチング型NOLMの非対称ループを作成すると、当該NOLMのHNLFの長さL及び非線形係数γはそれぞれ830m及び19W−1km−1であった。
【0193】
図49(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器201Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器201Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PAを示すグラフであり、図49(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器202Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器202Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PBを示すグラフであり、図49(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光符号化器203Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光符号化器203Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PCを示すグラフである。また、図50(a)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器301Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器301Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PDを示すグラフであり、図50(b)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器302Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器302Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PEを示すグラフであり、図50(c)は図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、光しきい値処理器303Aに入力される制御光パルスの平均電力に対する光しきい値処理器303Aから出力される出力信号光パルスの平均電力PFを示すグラフである。さらに、図51(a)は制御光パルスの平均電力が200mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、図51(b)は制御光パルスの平均電力が700mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフであり、図51(c)は制御光パルスの平均電力が1000mWであるときの図47及び図48の第5の実験システムの実験結果であって、各光しきい値処理器301A,302A,303Aから出力される光信号の光強度PD,PE,PFを示すグラフである。
【0194】
図49(c)に示すように、発明者の知る限りでは、これは、多周期の伝達関数を2周期まで観察した最初の実験結果であると確信している。制御光パルスの平均電力は、図48の接続点Xにおいて測定した。非ゼロ復帰の周期性は、光ファイバケーブルにおける望ましくない非線形現象、不安定な偏光及びパルスの強度及びタイミングのゆらぎに起因すると思われる。
【0195】
図50の各光しきい値処理器301A,302A,303Aからの出力光の実験結果から明らかなように、伝達関数は改善され、その周期後にほぼ完全に「0」に戻ることが確認された。図50(a)、図50(b)及び図50(c)の挿入図は、各光しきい値処理器301A,302A,303Aからの出力光で測定したパルス幅の自己相関波形の一部であり、パルス形状に大きな変化は観察されなかった。図51は、ガウス形のパルス波形を想定してパルス幅及び平均電力の測定値から取得される、制御パルスの平均電力200mW、700mW及び1000mWで再構築される出力のデジタルパルスを示す。このように、3ビットのA/D変換は首尾良く達成されることが確認される。例えば図11に示すようなカスケード型の複数の光しきい値処理器の連結又は光2R技術(再増幅及び再整形)のいずれかを組み込めば、「0」のパルス光をさらに抑圧することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明に係る光A/D変換装置は、高速なサンプリングが必要な測定機器関係を初めとして、光通信の光アナログ信号と光ディジタル信号の変換が必要な各ノード、その他高速なA/D変換が必要なコンピューティング等の分野において適用可能であり、本発明は基礎的な信号処理技術であるためにその他様々な分野での利用が可能である。
【符号の説明】
【0197】
10…非線形光ループミラー、
10A…偏波コントローラ、
11,12…光カップラ、
13…光アイソレータ、
14,14A…光帯域通過フィルタ、
15…光遅延回路、
15A…可変光遅延回路、
16…光アイソレータ、
16A…光サーキュレータ、
17…光増幅器、
18…光アイソレータ、
19…光ファイバケーブル、
19A…偏波コントローラ、
20…非線形光ループミラー、
20A…偏波コントローラ、
20B…光減衰器、
21,22…光カップラ、
23…光アイソレータ、
24…光帯域通過フィルタ、
25…レーザダイオード、
26,26A…光アイソレータ、
27…光増幅器、
28…光アイソレータ、
29…光ファイバケーブル、
30…標本化信号発生器、
31…レーザダイオード、
32…光アイソレータ、
41…光標本化回路、
42…光アイソレータ、
50…ファイバリングレーザ、
51,52…光帯域通過フィルタ、
53…光変調器、
54…データ信号発生器、
55,56,57…光分配器、
61,62…ファイバリングレーザ、
63…光遅延回路、
71,72,73…光カップラ、
81,82…光導波路、
91,92,93…光カップラ、
94…光アイソレータ、
95…光帯域通過フィルタ、
100…光A/D変換装置、
101,102…光ファイバケーブル、
103…分散補償光ファイバケーブル、
104…光帯域通過フィルタ、
105…光カップラ、
106…偏波コントローラ、
111…高複屈折光ファイバケーブル、
112…偏光子、
200、200A…光符号化回路、
201,202,203,201A,202A,203A…光符号化器、
300,300A…光量子化回路、
301,302,303,311,312,313,322,323,333、301A,302A,303A…光しきい値処理器、
400…多値光信号復号器、
401,402…光信号処理器、
410…光カップラ、
411,412…信号光パルス光源、
421…光遅延回路、
422…光カップラ、
500…非線形光ループミラー(NOLM)、
501…光ファイバ、
502…光カップラ、
504…高非線形ファイバ(HNLF)、
510…光信号の入力端、
511,512…光ファイバ端、
513…出力端、
524…制御光入力手段、
530…入力信号光、
531…制御光、
532,533…伝搬光、
534…出力信号光、
550…非線形光ループミラー(NOLM)
551…光ファイバ、
552…3dB光カップラ、
553…17dB光カップラ、
554…高非線形ファイバ(HNLF)、
561,562…3dBカップラの端子、
571…制御光入力端、
574…WDMカップラ、
580…入力端、
591,592…偏波コントローラ、
593…反射光受光端、
595…C/Lバンド用WDMカップラ、
597…遅延線、
598…光サーキュレータ、
600…光論理演算回路、
601,601A…光信号処理器、
602…光カップラ、
603…信号光パルス光源、
611,621…光源、
612,622…光増幅器、
613…パワーメータ、
623…光減衰器、
701…レーザ光源、
702…光増幅器、
703…偏波コントローラ、
704,713…光カップラ、
705…高非線形光ファイバケーブル(HNLF)、
706…光帯域通過フィルタ、
711…レーザ光源、
712,716…光増幅器、
715…分散補償光ファイバケーブル(DCF)、
717…可変光減衰器、
721…光増幅器、
722,723,724,731,732…光カップラ、
725,726,727…光遅延回路、
733,734…光減衰器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、その最大値に対する割合が所定のしきい値以下となるように、それぞれの光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項2】
上記制御光信号と同一方向に伝搬する上記光信号が非線形媒質中でパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記所定のしきい値の割合をTthとしたときにG<2Tth+1の関係式を満足することを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項3】
上記光信号と上記制御光信号のパルスが上記非線形媒質の所定の範囲で重なるように、上記入力光信号と上記制御光信号のいずれか一方を光遅延線を介してから入力することを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項4】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項5】
上記所定のしきい値が、光アナログ/ディジタル変換の量子・符号化処理で必要とされるしきい値であることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項6】
上記所定のしきい値が3dBであることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項7】
(a)上記非線形媒質の分散値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得が所定値以上になる最小の分散値以下であることと、
(b)上記非線形媒質の分散値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得が所定値以上になる最大の分散値以上であることと
のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項8】
上記制御光信号と上記入力光信号の波長差が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生する所定値以上のパラメトリック利得を与える最大の波長差よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項9】
上記制御光信号と上記光信号の波長差と、上記非線形媒質の分散値との積の絶対値が、ウォークオフを抑圧して、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差を2π以上とする値以下であることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項10】
上記2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数)となるときの上記出力光信号のパワー値が、光アナログ/ディジタル変換の処理において0として処理されることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項11】
上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において正常分散特性を有することを特徴とする請求項7記載の非線形光ループミラー。
【請求項12】
上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において異常分散特性を有することを特徴とする請求項7記載の非線形光ループミラー。
【請求項13】
上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が正(dD/dλ>0)であるとき、λ0>λS>λCであることを特徴とする請求項11記載の非線形光ループミラー。
【請求項14】
上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が負(dD/dλ<0)であるとき、λ0<λS<λCであることを特徴とする請求項11記載の非線形光ループミラー。
【請求項15】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有し、
(a)上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.62ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が16nm以上であることと、
(b)上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.315ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が20nm以上であることと
のいずれかであることを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項16】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項15記載の非線形光ループミラー。
【請求項17】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と上記制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によって、それぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2π以上であり、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有し、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの出力光信号のパワーが、その最大値に対する割合が光アナログ/ディジタル変換におけるしきい値以下となるように、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項18】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項17記載の非線形光ループミラー。
【請求項19】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーを設計する方法であって、
入力光信号のパワーに対する出力光信号のパワーの関係で表される伝達関数とその周期(φmax)を決定する第1のステップと、
光信号処理に適した、出力光信号のしきい値を決める第2のステップと、
非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを仮決めする第3のステップと、
位相シフトが上記周期φmaxに及んでいるかを判別し、及んでいるとき第5のステップに進む一方、及んでいなければ上記第3のステップに戻る第4のステップと、
上記光信号がパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記しきい値の割合をTthとしたときにG<2Tth+1を満足するかを判別し、満足しているとき上記仮決めの非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを設計確定値とする一方、満足していなければ上記第3のステップに戻る第5のステップとを含むことを特徴とする非線形光ループミラーの設計方法。
【請求項20】
入力された光信号を2分岐し、分岐した一方の光信号(A)を波長の異なる制御光信号と同一方向に伝搬させて相互位相変調を発生させ、分岐した他方の光信号(B)との間の位相シフト差を制御光信号のパワー変化に対して周期的に変化させて、上記光信号(A)及び(B)の干渉によって得られる出力光信号のパワーを変化させる光信号変換方法であって、
上記出力光信号のパワーの最大値に対して、位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、光アナログ/ディジタル変換の量子・符号化処理のしきい値以下となるように、上記光信号(A)と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする光信号変換方法。
【請求項1】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、その最大値に対する割合が所定のしきい値以下となるように、それぞれの光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項2】
上記制御光信号と同一方向に伝搬する上記光信号が非線形媒質中でパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記所定のしきい値の割合をTthとしたときにG<2Tth+1の関係式を満足することを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項3】
上記光信号と上記制御光信号のパルスが上記非線形媒質の所定の範囲で重なるように、上記入力光信号と上記制御光信号のいずれか一方を光遅延線を介してから入力することを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項4】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項5】
上記所定のしきい値が、光アナログ/ディジタル変換の量子・符号化処理で必要とされるしきい値であることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項6】
上記所定のしきい値が3dBであることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項7】
(a)上記非線形媒質の分散値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得が所定値以上になる最小の分散値以下であることと、
(b)上記非線形媒質の分散値が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得が所定値以上になる最大の分散値以上であることと
のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項8】
上記制御光信号と上記入力光信号の波長差が、上記光信号と上記制御光信号の間で発生する所定値以上のパラメトリック利得を与える最大の波長差よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の非線形光ループミラー。
【請求項9】
上記制御光信号と上記光信号の波長差と、上記非線形媒質の分散値との積の絶対値が、ウォークオフを抑圧して、2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差を2π以上とする値以下であることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項10】
上記2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数)となるときの上記出力光信号のパワー値が、光アナログ/ディジタル変換の処理において0として処理されることを特徴とする請求項2記載の非線形光ループミラー。
【請求項11】
上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において正常分散特性を有することを特徴とする請求項7記載の非線形光ループミラー。
【請求項12】
上記非線形媒質の分散特性が上記制御光信号の波長において異常分散特性を有することを特徴とする請求項7記載の非線形光ループミラー。
【請求項13】
上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が正(dD/dλ>0)であるとき、λ0>λS>λCであることを特徴とする請求項11記載の非線形光ループミラー。
【請求項14】
上記入力光信号と上記制御光信号の波長において、上記非線形媒質の分散値Dを波長λで微分した値が負(dD/dλ<0)であるとき、λ0<λS<λCであることを特徴とする請求項11記載の非線形光ループミラー。
【請求項15】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有し、
(a)上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.62ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が16nm以上であることと、
(b)上記制御光信号の波長における上記非線形媒質の分散値が−0.315ps/nm/km以下であり、上記入力信号光と上記制御光の波長差が20nm以上であることと
のいずれかであることを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項16】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項15記載の非線形光ループミラー。
【請求項17】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーであって、
2分岐されたそれぞれの光信号と上記制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によって、それぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2π以上であり、
上記非線形媒質が上記制御光信号の波長において正常分散の特性を有し、
2分岐されたそれぞれの光信号と制御光信号との間で起こる相互位相変調(XPM)によってそれぞれの光信号に発生する位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの出力光信号のパワーが、その最大値に対する割合が光アナログ/ディジタル変換におけるしきい値以下となるように、上記光信号と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする非線形光ループミラー。
【請求項18】
上記光ファイバ及び上記非線形媒質中で、上記光信号と上記制御光信号の偏光状態が実質的に同一であることを特徴とする請求項17記載の非線形光ループミラー。
【請求項19】
光ファイバと、光信号の入力端から入力された入力光信号を2分岐して光ファイバの両端に出力し、かつ上記光ファイバの両端から出力される光信号をそれぞれ上記光信号の入力端及び光信号の出力端に分岐出力するように接続された光カップラと、制御光信号を上記光ファイバに入力する制御光入力手段と、上記光ファイバの光路上に配置される非線形媒質を有し、上記制御光信号のパワーによって上記光ファイバの両端に入力された光信号の位相差を調節し、上記光信号の出力端から出力される出力光信号のパワーを制御する非線形光ループミラーを設計する方法であって、
入力光信号のパワーに対する出力光信号のパワーの関係で表される伝達関数とその周期(φmax)を決定する第1のステップと、
光信号処理に適した、出力光信号のしきい値を決める第2のステップと、
非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを仮決めする第3のステップと、
位相シフトが上記周期φmaxに及んでいるかを判別し、及んでいるとき第5のステップに進む一方、及んでいなければ上記第3のステップに戻る第4のステップと、
上記光信号がパラメトリック利得によって増幅された割合をG、上記出力光信号のパワーの最大値に対する上記しきい値の割合をTthとしたときにG<2Tth+1を満足するかを判別し、満足しているとき上記仮決めの非線形媒質の非線形定数と分散特性、及び制御光信号の波長とピークパワーを設計確定値とする一方、満足していなければ上記第3のステップに戻る第5のステップとを含むことを特徴とする非線形光ループミラーの設計方法。
【請求項20】
入力された光信号を2分岐し、分岐した一方の光信号(A)を波長の異なる制御光信号と同一方向に伝搬させて相互位相変調を発生させ、分岐した他方の光信号(B)との間の位相シフト差を制御光信号のパワー変化に対して周期的に変化させて、上記光信号(A)及び(B)の干渉によって得られる出力光信号のパワーを変化させる光信号変換方法であって、
上記出力光信号のパワーの最大値に対して、位相シフトの差が2nπ(nは1以上の整数である。)となるときの上記出力光信号のパワーが、光アナログ/ディジタル変換の量子・符号化処理のしきい値以下となるように、上記光信号(A)と上記制御光信号の間で発生するパラメトリック利得を抑制することを特徴とする光信号変換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【公開番号】特開2010−204690(P2010−204690A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134094(P2010−134094)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【分割の表示】特願2004−167230(P2004−167230)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【分割の表示】特願2004−167230(P2004−167230)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]