説明

非線形素子

【課題】酸化物半導体を用いた整流特性の良い非線形素子(例えば、ダイオード)を提供
する。
【解決手段】水素濃度が5×1019/cm以下である酸化物半導体を有するトランジ
スタにおいて、酸化物半導体に接するソース電極の仕事関数φmsと、酸化物半導体に接
するドレイン電極の仕事関数φmdと、酸化物半導体の電子親和力χが、χはφms以上
かつφmd未満の関係になるように構成し、酸化物半導体とソース電極の接触面積よりも
酸化物半導体とドレイン電極の接触面積を大きくし、トランジスタのゲート電極とドレイ
ン電極を電気的に接続することで、整流特性の良い非線形素子を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた非線形素子(例えば、ダイオード)とこれを有
する表示装置などの半導体装置に関する。更には、これらを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの中でダイオードには耐圧が高いこと、逆方向飽和電流が低いことなどが
要求されている。半導体材料としての炭化シリコン(SiC)は、禁制帯幅が3eV以上
であり高温での電気伝導度の制御性に優れ、シリコンより約1桁高い絶縁破壊電界を有す
るため、逆方向飽和電流が低く耐圧が高いダイオードへの適用が検討されている。例えば
、逆方向のもれ電流を低減した、炭化シリコンを用いたショットキーバリアダイオードが
知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、炭化シリコンは良質な結晶を得ることが困難であり、デバイスを作製するときの
プロセス温度が高いといった問題を有している。例えば、炭化シリコンに不純物領域を形
成するにはイオン注入法が用いられるが、ドーパントの活性化やイオン注入により誘起さ
れた結晶欠陥の回復には1500℃以上の加熱処理が必要となる。
【0004】
また、炭素が成分として含まれていることにより、熱酸化により良質な絶縁層を作製する
ことができないという問題がある。さらに、炭化シリコンは化学的にも極めて安定である
ため、通常のウエットエッチングが困難であるという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−133819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、炭化シリコンを用いるダイオードは、高耐圧、低い逆方向飽和電流を実現す
ることが期待されているが、実際にこれを製造するには、非常に多くの問題が内在してお
り、実現は困難を極めている。
【0007】
そこで本発明の一態様は、高耐圧で整流特性の良い非線形素子を提供することを目的とす
る。また、逆方向飽和電流の低い非線形素子を低いプロセス温度で製造することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ソース電極と、酸化物半導体層と、ドレイン電極と、ソース電極、酸
化物半導体層、及びドレイン電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接して形成され
、ソース電極、酸化物半導体層、及びドレイン電極を介して対向する複数のゲート電極を
有し、ゲート電極はドレイン電極と接続され、ソース電極と酸化物半導体層の接触面積と
、ドレイン電極と酸化物半導体層の接触面積が異なることを特徴とするものである。
【0009】
ドレイン電極と酸化物半導体層との接触面積を、ソース電極と酸化物半導体層との接触面
積よりも大きくすることで、特に順方向バイアス時の電流電圧特性を向上させることがで
きる。
【0010】
ドレイン電極と酸化物半導体層との接触面積を、ソース電極と酸化物半導体層との接触面
積よりも小さくすることで、特に逆方向バイアス時の電流電圧特性を向上させることがで
きる。
【0011】
また、本発明の一態様は、第1の電極と、酸化物半導体層と、第2の電極と、第1の電極
、酸化物半導体層、及び第2の電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接して形成さ
れ、第1の電極、酸化物半導体層、及び第2の電極を介して対向する複数の第3の電極を
有し、第3の電極は第1の電極または第2の電極の一方と接続され、第1の電極または第
2の電極のうち第3の電極と接続された電極の仕事関数φmdと、第1の電極または第2
の電極のうち第3の電極と接続されていない電極の仕事関数φmsと、酸化物半導体層の
電子親和力χが、χはφms以上かつφmd未満となるように構成し、第1の電極と酸化
物半導体層の接触面積と、第2の電極と酸化物半導体層の接触面積が異なることを特徴と
するものである。
【0012】
第1の電極または第2の電極のうち、仕事関数φmdを有する電極と酸化物半導体層との
接触面積を、仕事関数φmsを有する電極と酸化物半導体層との接触面積よりも大きくす
ることで、特に順方向バイアス時の電流電圧特性を向上させることができる。
【0013】
第1の電極または第2の電極のうち、仕事関数φmdを有する電極と酸化物半導体層との
接触面積を、仕事関数φmsを有する電極と酸化物半導体層との接触面積よりも小さくす
ることで、特に逆方向バイアス時の電流電圧特性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様は、基板上に形成される第1の電極と、第1の電極上に接して形成
される酸化物半導体層と、酸化物半導体層上に接して形成される第2の電極と、第1の電
極、酸化物半導体層、及び第2の電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接して形成
され、第1の電極、酸化物半導体層、及び第2の電極を介して対向する複数の第3の電極
を有し、複数の第3の電極は、第1の電極と接続されており、第1の電極の仕事関数φm
d、酸化物半導体層の電子親和力χ、第2の電極の仕事関数φmsが、χはφms以上か
つφmd未満となるように構成し、第2の電極と酸化物半導体層の接触面積よりも、第1
の電極と酸化物半導体層の接触面積が大きいことを特徴とするものである。
【0015】
酸化物半導体層と仕事関数φmsを有する第2の電極との接触面積よりも、酸化物半導体
層と仕事関数φmdを有する第1の電極との接触面積を大きくすることで、非線形素子の
一態様であるダイオードの整流特性を向上させることができる。特に順方向バイアス時の
電流電圧特性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の一態様は、基板上に形成される第1の電極と、第1の電極上に接して形成
される酸化物半導体層と、酸化物半導体層上に接して形成される第2の電極と、第1の電
極、酸化物半導体層、及び第2の電極を覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接して形成
され、第1の電極、酸化物半導体層、及び第2の電極を介して対向する複数の第3の電極
を有し、複数の第3の電極は、第2の電極と接続されており、第1の電極の仕事関数φm
s、酸化物半導体層の電子親和力χ、第2の電極の仕事関数φmdが、χはφms以上か
つφmd未満となるように構成し、第1の電極と酸化物半導体層の接触面積よりも、第2
の電極と酸化物半導体層の接触面積が小さいことを特徴とするものである。
【0017】
酸化物半導体層と仕事関数φmsを有する第1の電極との接触面積よりも、酸化物半導体
層と仕事関数φmdを有する第2の電極との接触面積を小さくすることで、ダイオードの
整流特性を向上させることができる。特に逆方向バイアス時の電流電圧特性を向上させる
ことができる。
【0018】
また、具体的には、酸化物半導体層に含まれる水素の濃度が5×1019/cm以下、
好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下か、ま
たは1×1016/cm未満として、酸化物半導体層に含まれる水素若しくはOH基を
除去し、キャリア密度を1×1012/cm未満、好ましくは1×1011/cm
満とした酸化物半導体層を用いる。
【0019】
また、当該酸化物半導体のエネルギーギャップを、2eV以上、好ましくは2.5eV以
上、より好ましくは3eV以上として、ドナーを形成する水素等の不純物を極力低減し、
キャリア密度を1×1012/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満となる
ようにする。
【0020】
また、酸化物半導体の電子親和力χが4.3eVである場合、酸化物半導体の電子親和力
χよりも仕事関数が大きい電極材料として、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、
クロム(Cr)、鉄(Fe)、金(Au)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、コバルト(
Co)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、酸化インジウム錫(ITO)などを用
いることができる。
【0021】
また、酸化物半導体の電子親和力χが4.3eVである場合、酸化物半導体の電子親和力
χ以下の仕事関数を有する電極材料として、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、アル
ミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、マンガ
ン(Mn)、タンタル(Ta)、窒化タンタル、窒化チタンなどを用いることができる。
【0022】
なお、本明細書において、不純物濃度は二次イオン質量分析法(Secondary I
on Mass Spectrometry。以下、SIMSともいう。)により検出さ
れたものである。ただし、他の計測法が挙げられている場合など、特に記載がある場合に
はこの限りではない。
【0023】
本発明の一態様は、低いプロセス温度で作製可能な、オン電流が大きく、オフ電流が小さ
いトランジスタによって構成される、微細化が可能な非線形素子を提供する。
【発明の効果】
【0024】
ソース電極と酸化物半導体層の接触面積と、ドレイン電極と酸化物半導体層の接触面積を
異ならせることで、整流特性に優れた非線形素子を得ることができる。また、酸化物半導
体層を用いることでアバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち耐圧が高い)非線形素
子を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図2】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図3】本発明の一態様であるダイオードを説明する図である。
【図4】本発明の一態様であるダイオードを説明するバンド図である。
【図5】本発明の一態様であるダイオードのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】本発明の一態様であるダイオードを説明する図である。
【図7】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図8】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図9】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図10】本発明の一態様であるダイオードを説明する上面図及び断面図である。
【図11】本発明の一態様であるダイオードの作製方法を説明する断面図である。
【図12】本発明の一態様であるダイオードの作製方法を説明する断面図である。
【図13】本発明の一態様である表示装置を説明する図である。
【図14】本発明の一態様である保護回路を説明する図である。
【図15】本発明の一態様である保護回路を説明する図である。
【図16】本発明の一態様である電子機器を説明する図である。
【図17】アバランシェ降伏について説明する図である。
【図18】各種半導体のイオン化係数と電界強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明
に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々
に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施
の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構
成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共
通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明
瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない

【0028】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるため
に付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「
第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0029】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場の
中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。ただ
し、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差の
ことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多い
。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし、
電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一形態である酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用い
た非線形素子について、酸化物半導体がn型である場合について、図1乃至図6を用いて
説明する。本実施の形態にて説明する非線形素子は、トランジスタのソース電極またはド
レイン電極の一方にゲート電極を接続し、トランジスタをダイオードとして機能させるも
のである。
【0031】
一般に、ダイオードとは、アノードおよびカソードの2つの端子を有し、アノードの電位
が、カソードの電位よりも高い場合に電流が流れる状態、すなわち導通状態となり、アノ
ードの電位が、カソードの電位よりも低い場合にほとんど電流が流れない状態、すなわち
非導通状態(絶縁状態)となる性質を有している。
【0032】
ダイオードのこの性質は整流特性といわれ、ダイオードが導通状態となる方向を順方向、
非導通状態となる方向を逆方向という。順方向の時の電圧を順方向電圧、または順方向バ
イアスといい、順方向の時の電流を順方向電流という。また、逆方向の時の電圧を逆方向
電圧または逆方向バイアスといい、逆方向の時の電流を逆方向電流という。
【0033】
図1に示す酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用いたダイオードは、配線125が
第3の電極113および第3の電極115と接続され、更には第2の電極109と接続さ
れ、第2の電極109は酸化物半導体層107を介して第1の電極105に接続されてい
る。第1の電極105は配線131に接続されている。
【0034】
図1(A)はダイオード接続されたトランジスタ133の上面図であり、図1(B)は図
1(A)の一点鎖線A−Bの断面図に相当する。
【0035】
図1(B)に示すように、基板101上に形成された絶縁層103上に、第1の電極10
5、酸化物半導体層107、及び第2の電極109が積層される。また、第1の電極10
5、酸化物半導体層107、及び第2の電極109を覆うように、ゲート絶縁層111が
設けられている。ゲート絶縁層111上には、第3の電極113及び第3の電極115が
設けられている。ゲート絶縁層111及び第3の電極113及び第3の電極115上には
層間絶縁層として機能する絶縁層117が設けられている。
【0036】
絶縁層117上には配線125及び配線131が設けられている。配線125は、絶縁層
117に設けられた開口部において、第3の電極113及び第3の電極115と接続して
いる。また、配線125は、絶縁層117及びゲート絶縁層111に設けられた開口部に
おいて、第2の電極109と接続している。配線131は、絶縁層117及びゲート絶縁
層111に設けられた開口部において、第1の電極105と接続している。第1の電極1
05は、トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、第2の電極
109は、トランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。第3の
電極113及び第3の電極115は、トランジスタのゲート電極として機能する。
【0037】
本実施の形態で示すトランジスタは、第1の電極105と酸化物半導体層107と第2の
電極109の重畳部分において、第2の電極109と酸化物半導体層107の接触面積よ
りも、第1の電極105と酸化物半導体層107の接触面積の方が大きい構成を示してい
る。また、図1では、第1の電極105と酸化物半導体層107と第2の電極109の重
畳部分において、第1の電極105の内側に酸化物半導体層107が配置され、酸化物半
導体層107の内側に第2の電極109が配置された構成を示している。図1に示すよう
に、第1の電極105と酸化物半導体層107と第2の電極109の積層において、その
端部が階段状となるように構成することで、これらを覆うゲート絶縁層111の被覆性を
向上させることができ、さらに、第3の電極113及び第3の電極115を縦型トランジ
スタのゲート電極として効果的に機能させることができる。
【0038】
積層の端部を階段状とする際には、一段を構成する層の厚さ(一段の段差)を、これを覆
う層の厚さ以下、好ましくは半分以下の段差とするとよい。一段の段差を、これを覆う層
の厚さ以下とできない場合は、一段を構成する層の端部をテーパー形状とするとよい。テ
ーパー形状とする際には、層底面と層側面のなす角の角度を90°未満、好ましくは80
°未満、さらに好ましくは70°未満とするとよい。一段を構成する層の厚さをこれを覆
う層の厚さ以下とし、加えて層端部をテーパー形状とすると、さらに被覆性を向上させる
ことができる。なお、本思想は積層膜に限らず単層膜においても適用することが可能であ
る。
【0039】
本実施の形態のトランジスタは、縦型トランジスタであり、ゲート電極として機能する第
3の電極113と、第3の電極115とは分離しており、且つ第1の電極105、酸化物
半導体層107、及び第2の電極109を介して対向していることを特徴とする。
【0040】
なお、トランジスタは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を
有する素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル形成領域を有しており、ド
レイン領域とチャネル形成領域とソース領域とを介して電流を流すことができる。ここで
、ソースとドレインとは、トランジスタの構造や動作条件などによって変わるため、いず
れがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。そこで、ソース及びド
レインとして機能する領域を、ソースもしくはドレインとよばない場合がある。その場合
、一例としては、それぞれを第1の端子、第2の端子と表記する場合がある。あるいは、
それぞれを第1の電極、第2の電極と表記する場合がある。あるいは、第1の領域、第2
の領域と表記する場合がある。
【0041】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動
作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細
書においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0042】
基板101は、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必
要となる。基板101としては、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラス
などのガラス基板を用いることができる。
【0043】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上
のものを用いるとよい。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、ア
ルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている
。なお、酸化ホウ素(B)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませること
で、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガラ
ス基板を用いることが好ましい。
【0044】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶
縁体でなる基板を用いてもよい。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0045】
絶縁層103は、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなど酸化物絶縁層、または窒化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、または窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶
縁層で形成する。また、絶縁層103は積層構造でもよく、例えば、基板101側から上
記した窒化物絶縁層のいずれか一つ以上と、上記した酸化物絶縁層のいずれか一つ以上と
の積層構造とすることができる。
【0046】
第1の電極105及び第2の電極109は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄
(Fe)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タン
グステン(W)、イットリウム(Y)から選ばれた元素、または上述した元素を成分とす
る合金、上述した元素を組み合わせた合金などで形成する。また、マンガン(Mn)、マ
グネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、トリウム(Th)の
いずれか一または複数から選択された材料を用いることができる。また、第1の電極10
5及び第2の電極109は、単層構造、または二層以上の積層構造とすることができる。
例えば、シリコン(Si)を含むアルミニウムの単層構造、アルミニウム層上にチタン層
を積層する二層構造、タングステン層上にチタン層を積層する二層構造、チタン層と、そ
のチタン層上に重ねてアルミニウム層を積層し、さらにその上にチタン層を形成する三層
構造などが挙げられる。
【0047】
また、アルミニウム(Al)に、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W
)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)な
どアルミニウム層に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が添加されている
アルミニウム材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。
【0048】
第1の電極105及び第2の電極109は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電
性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜
鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する
)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)または前記金属酸化物材料にシ
リコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0049】
酸化物半導体層107としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O層
や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O層、In−Sn−Zn−O層、In−
Al−Zn−O層、Sn−Ga−Zn−O層、Al−Ga−Zn−O層、Sn−Al−Z
n−O層や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O層、Sn−Zn−O層、Al−Zn
−O層、Zn−Mg−O層、Sn−Mg−O層、In−Mg−O層、In−Ga−O層や
、In−O層、Sn−O層、Zn−O層などの酸化物半導体層を用いることができる。ま
た、上記酸化物半導体層にSiOを含んでもよい。
【0050】
また、酸化物半導体層107は、InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を
用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または
複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはG
a及びCoなどがある。InMO(ZnO)(m>0)で表記される構造の酸化物半
導体層のうち、MとしてGaを含む構造の酸化物半導体を、上記したIn−Ga−Zn−
O酸化物半導体とよび、その薄膜をIn−Ga−Zn−O非単結晶膜ともよぶこととする

【0051】
本実施の形態で用いる酸化物半導体層107は、酸化物半導体層に含まれる水素の濃度が
5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×
1017/cm以下か、または1×1016/cm未満であり、酸化物半導体層に含
まれる水素が除去されている。即ち、酸化物半導体層の主成分以外の不純物が極力含まれ
ないように高純度化されている。
【0052】
また、キャリア密度は、ホール効果(Hall effect)測定により測定すること
ができる。ホール効果測定により測定される酸化物半導体のキャリア密度は、シリコンの
真性キャリア密度1.45×1010/cmと同等、もしくはそれ以下である。なお、
フェルミディラックの分布則に従って計算すると、シリコンの真性キャリア密度は10
/cmであるのに対し、エネルギーギャップが3eV以上ある酸化物半導体の真性キ
ャリア密度は10−7/cmである。即ち、酸化物半導体の真性キャリア密度は、限り
なくゼロに近い。
【0053】
本実施の形態で用いる酸化物半導体層107のキャリア密度は、1×1012/cm
満、好ましくは1×1011/cm未満であり、キャリア密度を限りなくゼロに近くす
ることができる。酸化物半導体層107のキャリア密度を低減することで、非線形素子の
逆方向電流を低減することができる。また、エネルギーギャップは2eV以上、好ましく
は2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。エネルギーギャップの広い酸化物
半導体層を用いることで、室温から180℃程度の実用的な範囲で温度特性を安定化させ
ることができる。
【0054】
酸化物半導体層107の厚さは、30nm以上3000nm以下とするとよい。酸化物半
導体層107の厚さを薄くすることで、非線形素子であるダイオードの順方向電流を大き
くすることができる。一方、酸化物半導体層107の厚さを厚くすることで、代表的には
100nm以上3000nm以下とすることで、非線形素子の耐圧特性を高めることがで
きる。
【0055】
ゲート絶縁層111は、酸化シリコン膜、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シ
リコン、または酸化アルミニウムを単層でまたは積層して形成することができる。ゲート
絶縁層111は、酸化物半導体層107と接する部分が酸素を含むことが好ましく、特に
好ましくは酸化シリコン膜により形成する。酸化シリコン膜を用いることで、酸化物半導
体層107に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。ゲート絶縁層
111の厚さは、50nm以上500nm以下とするとよい。ゲート絶縁層111の厚さ
を厚くすることで、ゲートとソース間に流れるリーク電流を低減することができる。一方
、ゲート絶縁層111の厚さを薄くすることで、順方向電流を多く流すことができる非線
形素子を作製することができる。
【0056】
また、ゲート絶縁層111として、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y
>0))、窒素が添加されたHfSixOy(x>0、y>0)、窒素が添加されたハフ
ニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ハフニウム、酸化イッ
トリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに
は、high−k材料と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シ
リコン、または酸化アルミニウムのいずれか一以上との積層構造とすることができる。
【0057】
ゲート電極として機能する第3の電極113及び第3の電極115は、アルミニウム、ク
ロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、または上述
した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜などを用いて形成する
ことができる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウムのいずれか一
または複数から選択された材料を用いてもよい。また、第3の電極113及び第3の電極
115は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むア
ルミニウムの単層構造、アルミニウム層上にチタン層を積層する二層構造、チタン層と、
そのチタン層上にアルミニウム層を積層し、さらにその上にチタン層を形成する三層構造
などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、ク
ロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、
もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0058】
本実施の形態に係る酸化物半導体層は、n型不純物である水素を酸化物半導体層から除去
し、酸化物半導体層の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することによ
り真性(i型)とし、または真性型とせんとしたものである。すなわち、不純物を添加し
てi型化するのでなく、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物を極力除去するこ
とにより、高純度化されたi型(真性半導体)またはそれに近づけることを特徴としてい
る。そうすることにより、フェルミ準位(Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベ
ルにまですることができる。
【0059】
上記したように、不純物を極力除去することにより、例えば、トランジスタのチャネル幅
Wが1×10μmでチャネル長が3μmの素子であっても、オフ電流が10−13A以
下ときわめて低く、さらに、サブスレッショルドスイング値(S値)が0.1V/dec
.以下とすることができる。
【0060】
このように、酸化物半導体層の主成分以外の不純物、代表的には水素、水、水酸基または
水素化物などが極力含まれないように高純度化することにより、トランジスタの動作を良
好なものとすることができる。特に、トランジスタをダイオードとして用いた場合、逆方
向電流を低減させることができる。
【0061】
ところで、チャネルが基板と概略平行に形成される横型トランジスタにおいては、チャネ
ルのほかにソース及びドレインを設ける必要があり、基板におけるトランジスタの専有面
積が大きくなってしまい、微細化の妨げとなる。しかしながら、縦型トランジスタにおい
ては、ソース、チャネル、及びドレインを積層するため、基板表面における占有面積を低
減することができる。この結果、トランジスタの微細化が可能である。なお、微細化など
の制約がなければ、本実施の形態を横型トランジスタに適用することも可能である。
【0062】
また、縦型トランジスタのチャネル長は、酸化物半導体層の厚さで制御できるため、酸化
物半導体層107の厚さを薄くすることでチャネル長の小さいトランジスタとすることが
可能である。チャネル長を小さくすることで、ソース、チャネル、及びドレインの直列抵
抗を低減できるため、トランジスタのオン電流および電界効果移動度を上昇させることが
できる。また、水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体を有するトランジスタは
、オフ電流が極めて低く、オフ時には電流がほとんど流れない絶縁状態となる。このよう
なトランジスタのソースまたはドレインをゲートと接続させることで、順方向電流が大き
く、逆方向電流が小さいダイオードを作製することができる。また、アバランシェ降伏現
象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダイオードを作製することができる。
【0063】
ここで、アバランシェ降伏についてn型トランジスタを例として図17を用いて説明して
おく。図17は、半導体902に、ソース電極903とドレイン電極901が接合してい
る状態を示すエネルギーバンド図であり、ドレイン電極901に電圧Vdが印加された状
態を示している。
【0064】
キャリアである電子が空乏層内で高電界により加速されて格子に衝突すると、その格子が
持っていた電子を跳ね飛ばし、その結果、電子922と正孔921(電子正孔対)を生成
する(図17(A))。この現象は、衝突イオン化と呼ばれている。衝突イオン化の頻度
は、半導体中の電界がある閾値に達した後に活発になる。
【0065】
ドレイン電極901に印加されている電圧Vdが、前述の閾値を超えてさらに大きくなる
と、衝突イオン化によって発生した電子正孔対が更に加速され、再び衝突イオン化を起こ
す。その時発生した電子正孔対も加速され、同様の現象が繰り返し発生する。つまり、一
つの電子の衝突イオン化が引き金となり、電子正孔対が爆発的に発生し、ソースドレイン
間に流れる電流が指数関数的に増大する(図17(B))。この現象をアバランシェ降伏
という。
【0066】
衝突イオン化による電子正孔対を発生させるには、電子は伝導帯912へ、正孔は価電子
帯911へ励起させる必要がある。つまり、衝突イオン化の引き金となる電子は、半導体
のエネルギーギャップ以上の運動エネルギーを持つまで加速される必要がある。つまり、
エネルギーギャップが大きいほど衝突イオン化を発生させるための電界は高くなるため、
アバランシェ降伏への耐性が強い。衝突イオン化による電子正孔対の生成確率Gは次式で
表される。
G=α×n×ν+α×p×ν・・・式2
【0067】
ここで、αn、αはそれぞれ電子及び正孔のイオン化係数(電子、正孔が単位長さを走
る際に起こる衝突電離の回数)、n、pはそれぞれ電子及び正孔密度、νn、νはそれ
ぞれ、電子及び正孔速度である。イオン化係数は材料の物性により決定される値で、イオ
ン化係数が小さいほど、衝突電離の回数が少なく、アバランシェ降伏が起こりにくい。イ
オン化係数は実験データから決定される。図18(A)及び図18(B)に、”Phys
ics of Semiconductor Devices”S.M. Szeより抜
粋した各種半導体のイオン化係数と電界強度(逆数)の関係を示す。
【0068】
図18では、図中の曲線が左に寄るほど衝突イオン化が起きるための電界が大きく、アバ
ランシェ降伏への耐性が強い事を意味している。括弧内にはエネルギーギャップが示され
ており、エネルギーギャップが大きいほどアバランシェ降伏への耐性が強いという相関が
見られる。
【0069】
図2は、図1を用いて説明した酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用いたダイオー
ドの、異なる構成を示している。図2に示すダイオードでは、配線125が第3の電極1
13および第3の電極115と接続され、更には第1の電極105と接続されている。第
1の電極105は酸化物半導体層107を介して第2の電極109と接続されている。第
2の電極109は、配線131に接続されている。
【0070】
なお、図2に示すダイオードでは、配線125が他の電極などを避けて設けられているた
め、配線125と、これらの電極との間に生じる寄生容量を抑えつつ動作させることがで
きる。
【0071】
図3は、図1及び図2で説明した、酸化物半導体(OS)を有するn型トランジスタを用
いたダイオードを回路記号で示した図である。図3(A)は、図1で説明した酸化物半導
体(OS)を有するn型トランジスタを用いたダイオードの回路記号であり、第2の電極
109が配線125を介して、第3の電極113および第3の電極115に接続されてい
る状態を示している。第2の電極109に第1の電極105よりも高い電圧(正の電圧)
が印加されると、ゲート電極として機能する第3の電極113および第3の電極115に
も正の電圧が印加されるため、トランジスタ133がオン状態となり、第1の電極105
と第2の電極109の間に電流が流れる。
【0072】
一方、第2の電極109に第1の電極105よりも低い電圧(負の電圧)が印加されると
、トランジスタ133がオフ状態となるため、第1の電極105と第2の電極109の間
に電流がほとんど流れない。この場合、トランジスタ133を構成する第2の電極109
がドレイン(ドレイン電極)として機能し、第1の電極105がソース(ソース電極)と
して機能する。このようにして、水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体を有す
るトランジスタ133を、第2の電極109をアノード、第1の電極105をカソードと
するダイオードとして機能させることができる。
【0073】
図3(B)は、図2で説明した酸化物半導体(OS)を有するn型トランジスタを用いた
ダイオードの回路記号であり、第1の電極105が配線125を介して、第3の電極11
3および第3の電極115に接続されている状態を示している。第1の電極105に第2
の電極109よりも高い電圧(正の電圧)が印加されると、ゲート電極として機能する第
3の電極113および第3の電極115にも正の電圧が印加されるため、トランジスタ1
33がオン状態となり、第1の電極105と第2の電極109の間に電流が流れる。
【0074】
一方、第1の電極105に第2の電極109よりも低い電圧(負の電圧)が印加されると
、トランジスタ133がオフ状態となるため、第1の電極105と第2の電極109の間
に電流がほとんど流れない。この場合、トランジスタ133を構成する第2の電極109
がソース(ソース電極)として機能し、第1の電極105の電極がドレイン(ドレイン電
極)として機能する。このようにして、水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体
を有するトランジスタ133を、第1の電極105をアノード、第2の電極109をカソ
ードとするダイオードとして機能させることができる。
【0075】
また、ドレイン電極と酸化物半導体層との接触面積を、ソース電極と酸化物半導体層との
接触面積よりも大きくすることで、特に順方向バイアス時の電流電圧特性を向上させるこ
とができる。
【0076】
また、ドレイン電極と酸化物半導体層との接触面積を、ソース電極と酸化物半導体層との
接触面積よりも小さくすることで、特に逆方向バイアス時の電流電圧特性を向上させるこ
とができる。
【0077】
本実施の形態で示した酸化物半導体を有する縦型トランジスタをダイオードとして用いる
ことで、整流特性に優れ、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)
ダイオードを作製することができる。
【0078】
また、酸化物半導体層107に接し、トランジスタ133のドレインとして機能する電極
の仕事関数をφmdとし、酸化物半導体層107に接し、トランジスタ133のソースと
して機能する電極の仕事関数をφmsとし、酸化物半導体層107の電子親和力をχとし
たとき、それぞれを式1に示す関係となるように構成することで、ダイオード接続された
トランジスタ133の整流特性をより優れたものとすることができる。
φms≦χ<φmd・・・式1
【0079】
なお、トランジスタ133を図1に示した構成とした場合は、第1の電極105の仕事関
数がφmsであり、第2の電極109の仕事関数がφmdとなる。また、トランジスタ1
33を図2に示した構成とした場合は、第1の電極105の仕事関数がφmdであり、第
2の電極109の仕事関数がφmsとなる。
【0080】
また、第1の電極105または第2の電極109が、二層以上の積層構造である場合は、
酸化物半導体層107と接する層の仕事関数と、酸化物半導体層107の電子親和力の関
係を、式1を充足するように構成すればよい。
【0081】
例えば、酸化物半導体の電子親和力χが4.3eVである場合、酸化物半導体の電子親和
力よりも大きい仕事関数を有する導電性材料として、タングステン(W)、モリブデン(
Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、金(Au)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、コ
バルト(Co)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、酸化インジウム錫(ITO)
などを用いることができる。
【0082】
また、酸化物半導体の電子親和力χが4.3eVである場合、仕事関数が酸化物半導体の
電子親和力以下である導電性材料の例として、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ア
ルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、マン
ガン(Mn)、タンタル(Ta)、窒化タンタル、窒化チタンなどを用いることができる

【0083】
ここで、式1を充足する構成の整流特性について、図4に示すバンド図を用いて説明する
。図4は、高純度化された酸化物半導体802(i型若しくは実質的にi型とみなされる
ものを含む)に、仕事関数φmdを有する導電材料801と、仕事関数φmsを有する導
電材料803が接合している状態を示すバンド図である。
【0084】
なお、高純度化された酸化物半導体は、膜中に含まれる水素の濃度を5×1019/cm
以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm
下か、または1×1016/cm未満として、酸化物半導体膜に含まれる水素若しくは
OH基を除去し、キャリア密度を1×1012/cm未満、好ましくは1×1011
cm未満としたものを含む。
【0085】
図4(A)は、導電材料801と導電材料803が同電位(熱平衡状態)である時のバン
ド図を示している。フェルミレベル813は、導電材料803のフェルミレベルを示して
おり、導電材料801、導電材料803及び酸化物半導体802のフェルミレベルが一致
している。準位820は、真空準位を示している。
【0086】
エネルギー障壁821は、導電材料801の仕事関数φmdと酸化物半導体802の電子
親和力χのエネルギー差φmd−χを示している。また、エネルギー障壁823は、導電
材料803の仕事関数φmsと酸化物半導体802の電子親和力χのエネルギー差φms
−χを示している。
【0087】
導電材料801の仕事関数φmdが酸化物半導体802の電子親和力χより大きいため、
エネルギー障壁821は正の値となる。このため、導電材料801に存在する電子は、エ
ネルギー障壁821に阻まれ、酸化物半導体802の伝導帯822にほとんど移動するこ
とができない。
【0088】
一方、導電材料803の仕事関数φmsが酸化物半導体802の電子親和力χ以下である
ため、エネルギー障壁823が負の値となり、導電材料803に存在する電子は、酸化物
半導体802の伝導帯822に容易に移動することができる。
【0089】
ただし、導電材料801と導電材料803が同電位(熱平衡状態)の場合は、上に凸の伝
導帯端が電子移動の障壁となり、電子は導電材料801へ移動できない。つまり、導電材
料801と導電材料803の間に電流は流れない。
【0090】
図4(B)は、導電材料801に正の電圧(順方向電圧、または順方向バイアス)が印加
された状態を示すバンド図である。導電材料801に正の電圧が印加されたことにより、
導電材料801のフェルミレベルが押し下げられ、導電材料803から伝導帯822に移
動した電子が導電材料801に容易に移動することができるため、導電材料801と導電
材料803の間に電流が流れる(順方向電流)。
【0091】
図4(C)は、導電材料801に負の電圧(逆方向電圧、または逆方向バイアス)が印加
された状態を示すバンド図である。導電材料801に負の電圧が印加されたことにより、
導電材料801のフェルミレベルが引き上げられ、導電材料803から伝導帯822に移
動した電子が導電材料801に移動することができない。また、エネルギー障壁821は
そのままであるため、導電材料801に存在する電子は、酸化物半導体802の伝導帯8
22にほとんど移動することができない。ただし、極僅かではあるが、ある確率でエネル
ギー障壁821を超えて伝導帯822に移動する電子が存在するため、導電材料803と
導電材料801の間に、極めて微弱な電流が流れる(逆方向電流)。
【0092】
仕事関数φmdを有する導電性材料と、電子親和力χを有する酸化物半導体と、仕事関数
φmsを有する導電性材料を、式1で示す関係となるように構成することで整流特性を実
現し、酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用いたダイオードの整流特性をさらに高
めることができる。
【0093】
図5に、式1を充足する構成とした、酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用いたダ
イオードの電流電圧特性のデバイスシミュレーション結果を示す。デバイスシミュレーシ
ョンは、Silvaco社製ソフトウエア「Atlas」を用いて行った。前提条件とし
て、第1の電極105と第2の電極109間の距離(酸化物半導体層の厚さ)を500n
m、第1の電極105と酸化物半導体層107の接触面積を2μm、第2の電極109
と酸化物半導体層107の接触面積を1μm、酸化物半導体層107の電子親和力χを
4.3eV、アノード(ドレイン電極)となる導電材料の仕事関数φmdを4.7eV、
カソード(ソース電極)となる導電材料の仕事関数φmsを4.3eVとした。また、ダ
イオードとして用いるトランジスタのゲート絶縁層を、厚さ100nm、比誘電率4.0
とした。
【0094】
図5(A)及び図5(B)とも、横軸はアノード−カソード間(ドレイン−ソース間)電
圧(Vds)を示しており、プラス側が順方向バイアス、マイナス側が逆方向バイアスを
示している。縦軸はアノード−カソード間(ドレイン−ソース間)電流(Ids)を示し
ている。図5(B)は、逆方向バイアス印加時の逆方向電流をわかりやすくするため、図
5(A)のVdsが2V乃至−12Vの範囲における縦軸(Ids)を拡大した図である

【0095】
曲線851は、図1で示したダイオードを、式1の関係を充足するように構成した場合の
電流電圧特性である。すなわち、仕事関数φmdを有する第2の電極109をアノード(
ドレイン電極)とし、仕事関数φmsを有する第1の電極105をカソード(ソース電極
)とし、第2の電極109と、トランジスタのゲート電極として機能する第3の電極11
3および第3の電極115を電気的に接続して構成したダイオード(以下、A構造ダイオ
ードという)の電流電圧特性を示している。
【0096】
曲線852は、図2で示したダイオードを、式1の関係を充足するように構成した場合の
電流電圧特性である。すなわち、仕事関数φmdを有する第1の電極105をアノード(
ドレイン電極)とし、仕事関数φmsを有する第2の電極109をカソード(ソース電極
)とし、第1の電極105と、トランジスタのゲート電極として機能する第3の電極11
3および第3の電極115を電気的に接続して構成したダイオード(以下、B構造ダイオ
ードという)の電流電圧特性を示している。
【0097】
なお、図5には、参考として曲線853および曲線854を示している。曲線853は、
仕事関数φmdを有する第2の電極109をアノードとし、仕事関数φmsを有する第1
の電極105をカソードとし、第1の電極105と、トランジスタのゲート電極として機
能する第3の電極113および第3の電極115を電気的に接続して構成したダイオード
(以下、C構造ダイオードという)の電流電圧特性を示している。
【0098】
また、曲線854は、仕事関数φmdを有する第1の電極105をアノードとし、仕事関
数φmsを有する第2の電極109をカソードとし、第2の電極109と、トランジスタ
のゲート電極として機能する第3の電極113および第3の電極115を電気的に接続し
て構成したダイオード(以下、D構造ダイオードという)の電流電圧特性を示している。
【0099】
A構造ダイオード乃至D構造ダイオードの積層構成をわかりやすく示した断面模式図を図
6に示す。図6(A)は、A構造ダイオードの積層構成を示しており、図1を用いて説明
したダイオードに相当する。図6(B)は、B構造ダイオードの積層構成を示しており、
図2を用いて説明したダイオードに相当する。図6(C)は、C構造ダイオードの積層構
成を示しており、図6(D)は、D構造ダイオードの積層構成を示している。C構造ダイ
オードは、A構造ダイオードにおけるゲート電極とドレイン電極の接続を、ゲート電極と
ソース電極の接続に変えた構成となっている。また、D構造ダイオードは、B構造ダイオ
ードにおけるゲート電極とドレイン電極の接続を、ゲート電極とソース電極の接続に変え
た構成となっている。
【0100】
図5から、A構造ダイオード(曲線851)乃至D構造ダイオード(曲線854)とも、
優れた整流特性が得られることが確認できる。また、A構造ダイオード及びB構造ダイオ
ードの方が、C構造ダイオード及びD構造ダイオードよりも順方向電流が大きく、かつ、
逆方向電流が小さい電流電圧特性が得られている。すなわち、より優れた整流特性が得ら
れていることが確認できる。
【0101】
さらに、A構造ダイオード(曲線851)とB構造ダイオード(曲線852)を比較する
と、順方向電流はB構造ダイオードの方が大きくより良好だが、逆方向電流はA構造ダイ
オードの方が小さくより良好な結果となっている。これは、A構造ダイオードは第2の電
極109を仕事関数φmdを有するドレイン電極としており、B構造ダイオードは第1の
電極105を仕事関数φmdを有するドレイン電極としているためである。つまり、第2
の電極109と酸化物半導体層107の接触面積よりも、第1の電極105と酸化物半導
体層107の接触面積が大きい。すなわち、B構造ダイオードの方が、A構造ダイオード
よりもエネルギー障壁が存在する酸化物半導体と電極の接触面積が大きいため、より多く
の順方向電流が流せる構成となる。また、A構造ダイオードの方が、B構造ダイオードよ
りもエネルギー障壁が存在する酸化物半導体と電極の接触面積が小さいため、逆方向電流
をより少なくすることができる構成となる。
【0102】
このように、酸化物半導体を有する縦型トランジスタを用いたダイオードにおいて、酸化
物半導体層と第1の電極105の接触面積と、酸化物半導体層と第2の電極109の接触
面積を異なる大きさとすることで、優れた整流特性を有するダイオードを目的に応じて作
製することができる。具体的には、逆方向電流(漏れ電流)をより小さくした構成とする
場合はA構造ダイオードの構成を用い、順方向電流をより大きくした構成とする場合はB
構造ダイオードの構成を用いることで、トランジスタの大きさを変えることなく、優れた
整流特性を有するダイオードを作製することができる。
【0103】
また、酸化物半導体層と第2の電極109の接触面積が、酸化物半導体層と第1の電極1
05の接触面積よりも大きい場合であっても、前述の構成を満たすトランジスタとするこ
とで、優れた整流特性を有するダイオードを作製することができる。
【0104】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である非線形素子の一例であって、実施の形態1とは
異なる構造のものについて、図7を用いて説明する。本実施の形態にて説明する非線形素
子は、トランジスタのソースまたはドレインの一方にゲートが接続され、ダイオードとし
て機能するものである。
【0105】
図7に示すダイオードでは、配線131が第1の電極105および第3の電極113と接
続され、配線132が第1の電極106および第3の電極115と接続されている。第1
の電極105および第1の電極106は酸化物半導体層107を介して第2の電極109
と接続されている。第2の電極109は、配線129に接続されている。
【0106】
図7(A)はダイオード接続されたトランジスタ141、143の上面図であり、図7(
B)は図7(A)の一点鎖線A−Bの断面図に相当する。
【0107】
図7(B)に示すように、基板101上に形成された絶縁層103上に、第1の電極10
5、第1の電極106、酸化物半導体層107、及び第2の電極109が積層される。ま
た、第1の電極105、第1の電極106、酸化物半導体層107、及び第2の電極10
9を覆うように、ゲート絶縁層111が設けられている。ゲート絶縁層111上には、第
3の電極113及び第3の電極115が設けられている。ゲート絶縁層111及び第3の
電極113及び第3の電極115上には層間絶縁層として機能する絶縁層117が設けら
れている。絶縁層117上には、配線129、配線131、配線132が形成されている
。絶縁層117には、複数の開口部が形成されており、各開口部において第3の電極11
3と配線131が接続され、第3の電極115と配線132が接続されている。また、配
線129は、絶縁層117及びゲート絶縁層111に設けた開口部において第2の電極1
09と接続されている。
【0108】
第1の電極105は、トランジスタ141のソース電極またはドレイン電極の一方として
機能する。第1の電極106は、トランジスタ143のソース電極またはドレイン電極の
一方として機能する。第2の電極109は、トランジスタ141、143のソース電極ま
たはドレイン電極の他方として機能する。第3の電極113は、トランジスタ141のゲ
ート電極として機能する。第3の電極115は、トランジスタ143のゲート電極として
機能する。
【0109】
本実施の形態では、トランジスタ141と、トランジスタ143とが、第2の電極109
を介して、配線129に接続していることを特徴とする。配線131に入力された信号は
、トランジスタ141を介して配線129に出力され、配線132に入力された信号も、
トランジスタ143を介して配線129に出力される。
【0110】
また、本実施の形態では、第1の電極105と、第1の電極106とが分離されているが
、第1の電極105と、第1の電極106を電気的に接続することで、トランジスタ14
1と、トランジスタ143を並列に接続する構成とすることもできる。トランジスタを並
列に接続することで、より多くの電流を流すことが可能となる。
【0111】
本実施の形態のトランジスタ141、143は、実施の形態1と同様に、水素濃度が低減
され高純度化された酸化物半導体層を用いている。このため、トランジスタの動作を良好
なものとすることができる。特に、オフ電流を低減することができる。この結果、動作速
度が速く、オン時には大電流を流すことができ、オフ時にはほとんど電流を流さないトラ
ンジスタを作製することができる。このようなトランジスタのソースまたはドレインをゲ
ートと接続させることで、順方向電流が大きく、逆方向電流が小さいダイオードを作製す
ることができる。また、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダ
イオードを作製することができる。
【0112】
なお、本実施の形態のダイオードは、図7に示すものに限定されない。図7に示すダイオ
ードでは、酸化物半導体層107中を第1の電極105または電極106から第2の電極
109に電流が流れるが、図8に示すように、酸化物半導体層107中を第2の電極10
9から第1の電極105または電極106に電流が流れる構成としてもよい。
【0113】
図8に示すダイオードでは、配線125が第3の電極113および第3の電極115と接
続され、更には第2の電極109と接続され、第2の電極109は酸化物半導体層107
を介して第1の電極105および第1の電極106に接続されている。第1の電極105
配線131に接続され、第1の電極106は配線132に接続されている。
【0114】
なお、図8に示すダイオードでは、配線125がトランジスタ141およびトランジスタ
143と重畳して設けられているが、これに限定されず、図2と同様に、配線125がト
ランジスタ141およびトランジスタ143と重畳しないように設けてもよく、配線12
5がトランジスタ141およびトランジスタ143と重畳しない場合には、配線125と
、これらの電極との間に生じる寄生容量を抑えつつ動作させることができる。
【0115】
また、本実施の形態のダイオードに、実施の形態1で開示した構成を適用することにより
、整流特性をより優れたものとすることができる。
【0116】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である非線形素子の一例であって、実施の形態1とは
異なる構造のものについて、図9を用いて説明する。本実施の形態にて説明する非線形素
子は、トランジスタのソースまたはドレインの一方にゲートが接続され、ダイオードとし
て機能するものである。
【0117】
図9に示すダイオードでは、配線131が第1の電極105および第3の電極113と接
続されている。第1の電極105は酸化物半導体層107を介して第2の電極109と接
続されている。第2の電極109は、配線129に接続されている。
【0118】
図9(A)はダイオード接続されたトランジスタ145の上面図であり、図9(B)は図
9(A)の一点鎖線A−Bの断面図に相当する。
【0119】
図9(B)に示すように、基板101上に形成された絶縁層103上に、第1の電極10
5、酸化物半導体層107、及び第2の電極109が積層される。また、第1の電極10
5、酸化物半導体層107、及び第2の電極109を覆うように、ゲート絶縁層111が
設けられている。ゲート絶縁層111上には、第3の電極113が設けられている。ゲー
ト絶縁層111及び第3の電極113上には層間絶縁層として機能する絶縁層117が設
けられている。絶縁層117には、複数の開口部が形成されており、各開口部において第
1の電極105と接続する配線131、第2の電極109及び第3の電極113と接続す
る配線129が形成される(図9(A)参照)。
【0120】
第1の電極105は、トランジスタ145のソース電極またはドレイン電極の一方として
機能する。第2の電極109は、トランジスタ145のソース電極またはドレイン電極の
他方として機能する。第3の電極113は、トランジスタ145のゲート電極として機能
する。
【0121】
本実施の形態では、ゲート電極として機能する第3の電極113が環状であることを特徴
とする。ゲート電極として機能する第3の電極113を環状とすることで、トランジスタ
のチャネル幅を大きくすることができる。このため、トランジスタのオン電流を高めるこ
とができる。
【0122】
本実施の形態のトランジスタ145は、実施の形態1と同様に、水素濃度が低減され高純
度化された酸化物半導体層を用いている。このため、トランジスタの動作を良好なものと
することができる。特に、オフ電流を低減することができる。この結果、動作速度が速く
、オン時には大電流を流すことができ、オフ時にはほとんど電流を流さないトランジスタ
を作製することができる。このようなトランジスタのソースまたはドレインをゲートと接
続させることで、順方向電流が大きく、逆方向電流が小さいダイオードを作製することが
できる。また、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダイオード
を作製することができる。
【0123】
なお、本実施の形態のダイオードは、図9に示すものに限定されない。図9に示すダイオ
ードでは、酸化物半導体層107中を第1の電極105から第2の電極109に電流が流
れるが、図10に示すように、酸化物半導体層107中を第2の電極109から第1の電
極105に電流が流れる構成としてもよい。
【0124】
図10に示すダイオードでは、配線129が第2の電極109および第3の電極113と
接続されている。第2の電極109は酸化物半導体層107を介して第1の電極105と
接続されている。第1の電極105は配線131と接続されている。
【0125】
また、本実施の形態のダイオードに、実施の形態1で開示した構成を適用することにより
、整流特性をより優れたものとすることができる。
【0126】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図1に示すダイオード接続されたトランジスタの作製工程について、
図11を用いて説明する。
【0127】
図11(A)に示すように、基板101上に絶縁層103を形成し、絶縁層103上に第
1の電極105を形成する。第1の電極105は、トランジスタのソース電極またはドレ
イン電極の一方として機能する。
【0128】
絶縁層103は、スパッタリング法、CVD法、塗布法などで形成することができる。
【0129】
なお、スパッタリング法で絶縁層103を形成する場合、処理室内に残留する水素、水、
水酸基または水素化物などを除去しつつ絶縁層103を形成することが好ましい。これは
、絶縁層103に水素、水、水酸基または水素化物などが含まれないようにするためであ
る。処理室内に残留する水素、水、水酸基または水素化物などを除去するためには、吸着
型の真空ポンプを用いることが好ましい。吸着型の真空ポンプとしては、例えば、クライ
オポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また
、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。ク
ライオポンプを用いて排気した処理室では、水素、水、水酸基または水素化物などが排気
されるため、当該処理室で絶縁層103を形成すると、絶縁層103に含まれる不純物の
濃度を低減できる。
【0130】
また、絶縁層103を形成する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基または水素
化物などの不純物が濃度ppm程度、濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いる
ことが好ましい。
【0131】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流
電源を用いるDCスパッタリング法、また、パルス的にバイアスを与えるパルスDCスパ
ッタリング法がある。RFスパッタリング法は主に絶縁層を形成する場合に用いられ、D
Cスパッタリング法は主に金属膜を形成する場合に用いられる。
【0132】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッタ
装置は、同一チャンバーで異なる材料の膜を積層形成することも、同一チャンバーで複数
種類の材料を同時に放電させて形成することもできる。
【0133】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッ
タ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRス
パッタリング法を用いるスパッタ装置がある。
【0134】
また、スパッタリング法として、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反
応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板
にも電圧をかけるバイアススパッタリング法を用いることもできる。
【0135】
本明細書のスパッタリングにおいては、上記したスパッタリング装置及びスパッタリング
方法を適宜用いることができる。
【0136】
本実施の形態では、基板101を処理室へ搬送し、水素、水、水酸基または水素化物など
が除去された高純度酸素を含むスパッタガスを導入し、シリコンターゲットを用いて、基
板101に絶縁層103として、酸化シリコン膜を形成する。なお、絶縁層103を形成
する際は、基板101は加熱されていてもよい。
【0137】
例えば、石英(好ましくは合成石英)を用い、基板温度100℃、基板とターゲットの間
との距離(T−S間距離)を60mm、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及
びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でR
Fスパッタリング法により酸化シリコン膜を形成する。膜厚は、例えば100nmとする
とよい。なお、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを用いることが
できる。なお、スパッタガスとして、酸素、または酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて
行う。
【0138】
また、絶縁層103を積層構造で形成する場合、例えば、酸化シリコン膜と基板との間に
水素、水、水酸基または水素化物などが除去された高純度窒素を含むスパッタガス及びシ
リコンターゲットを用いて窒化シリコン膜を形成する。この場合においても、酸化シリコ
ン膜と同様に、処理室内に残留する水素、水、水酸基または水素化物などを除去しつつ窒
化シリコン膜を形成することが好ましい。なお、当該工程において、基板101は加熱さ
れていてもよい。
【0139】
絶縁層103として窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とを積層する場合、窒化シリコン膜
と酸化シリコン膜を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて形成するこ
とができる。先に窒素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンタ
ーゲットを用いて窒化シリコン膜を形成し、次に酸素を含むスパッタガスに切り替えて同
じシリコンターゲットを用いて酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜及び酸化シリ
コン膜を大気に曝露せずに連続して形成することができるため、窒化シリコン表面に水素
、水、水酸基または水素化物などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0140】
第1の電極105は、基板101上に導電層をスパッタリング法、CVD法、または真空
蒸着法で形成し、当該導電層上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスク形成し、
当該レジストマスクを用いて導電層をエッチングして、形成することができる。または、
フォトリソグラフィ工程を用いず、印刷法、インクジェット法で第1の電極105を形成
することで、工程数を削減することができる。なお、第1の電極105の端部をテーパ形
状とすると、後に形成されるゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。第1の電極
105の端部と絶縁層103のなす角の角度を90°未満、好ましくは80°未満、さら
に好ましくは70°未満とすることで、後に形成されるゲート絶縁層の被覆性を向上させ
ることができる。
【0141】
第1の電極105を形成するための導電層としては、タングステン(W)、モリブデン(
Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、酸化インジウム錫(ITO)、チタン(Ti)、
イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、ジル
コニウム(Zr)などから選ばれた材料の単層、もしくは積層を用いることができる。
【0142】
本実施の形態では、第1の電極105となる導電層として、スパッタリング法により膜厚
50nmのチタン層を形成し、厚さ100nmのアルミニウム層を形成し、厚さ50nm
のチタン層を形成する。次に、フォトリソグラフィ工程により形成したレジストマスクを
用いてエッチングして、第1の電極105を形成する。なお、後に形成する酸化物半導体
層と接する第1の電極105の材料は、実施の形態1で説明した電子親和力と仕事関数の
関係を考慮して選定することもできる。
【0143】
次に、図11(B)に示すように、第1の電極105上に酸化物半導体層107及び第2
の電極109を形成する。酸化物半導体層107はトランジスタのチャネル形成領域とし
て機能し、第2の電極109はトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方とし
て機能する。
【0144】
ここで、酸化物半導体層107及び第2の電極109の作製方法について、説明する。
【0145】
基板101及び第1の電極105上にスパッタリング法により酸化物半導体層を形成する
。次に、酸化物半導体層上に導電層を形成する。
【0146】
酸化物半導体層107に水素がなるべく含まれないようにするために、前処理として、ス
パッタリング装置の予備加熱室で第1の電極105が形成された基板101を予備加熱し
、基板101に吸着した水素、水、水酸基または水素化物などの不純物を脱離し排気する
ことが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお
、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、後に形成するゲー
ト絶縁層111の形成前の基板101に行ってもよいし、後に形成する第3の電極113
及び第3の電極115形成前の基板101に行ってもよい。
【0147】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により形成する前に、アルゴンガスを導入して
プラズマを発生させる逆スパッタを行い、第1の電極105の表面に付着しているゴミや
酸化層を除去することで、第1の電極105及び酸化物半導体層の界面における抵抗を低
減することができるため好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、
アルゴン雰囲気下で基板側に高周波電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形
成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを
用いてもよい。
【0148】
本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いたスパッタリン
グ法により酸化物半導体層を形成する。また、酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはア
ルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気
下においてスパッタリング法により形成することができる。また、スパッタリング法を用
いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて形成してもよ
い。
【0149】
酸化物半導体層を形成する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基または水素化物な
どの不純物が、濃度ppm程度、濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いること
が好ましい。
【0150】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成
分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲット
の他の例としては、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比として、
In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]、In:Ga
:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いることができる。また、In、Ga、及び
Znを含む金属酸化物ターゲットとして、In:Ga:ZnO=2:2:1
[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の
組成比を有するターゲットを用いることもできる。金属酸化物ターゲットの充填率は90
%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸
化物ターゲットを用いて形成した酸化物半導体層は緻密な膜となる。
【0151】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内に残留する水分を除去しつつ、
水素、水、水酸基または水素化物などが除去されたスパッタリングガスを導入し、金属酸
化物をターゲットとして基板101上に酸化物半導体層を形成する。処理室内に残留する
水素、水、水酸基または水素化物などを除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いる
ことが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポン
プを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップ
を加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素
、水、水酸基または水素化物など(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)が排気され
るため、酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、基板を加熱しなが
ら酸化物半導体層を形成してもよい。
【0152】
本実施の形態では、酸化物半導体層の成膜条件の一例として、基板温度室温、基板とター
ゲットの間との距離を110mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素
及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm)雰囲気下の条件が適
用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パー
ティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半
導体層は好ましくは30nm以上3000nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体
層材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0153】
なお、酸化物半導体層を形成する際のスパッタリング法は、絶縁層103に示したスパッ
タリング法を適宜用いることができる。
【0154】
第2の電極109となる導電層は、第1の電極105の材料及び手法を適宜用いることが
できる。また、実施の形態1で示したように、使用する材料の仕事関数と酸化物半導体層
の電子親和力に応じて、第1の電極105と第2の電極109を異なる材料とすることも
できる。ここでは、第2の電極109となる導電層として、厚さ50nmのタングステン
層、厚さ100nmのアルミニウム層、及び厚さ50nmのチタン層を順に積層する。
【0155】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電層上にレジストマスクを形成し、当該レジスト
マスクを用いて第2の電極109となる導電層及び酸化物半導体層107となる酸化物半
導体層をエッチングして、第2の電極109及び酸化物半導体層107を形成する。なお
、フォトリソグラフィ工程により形成したレジストマスクの代わりに、インクジェット法
を用いてレジストマスクを作製することで、工程数を削減することができる。当該エッチ
ングにより、第2の電極109及び酸化物半導体層107の端部と、第1の電極105の
なす角の角度を90°未満、好ましくは80°未満、さらに好ましくは70°未満とする
ことで、後に形成されるゲート絶縁層の被覆性を向上させることができるため好ましい。
【0156】
なお、ここでの導電層及び酸化物半導体層のエッチングは、ドライエッチングでもウェッ
トエッチングでもよく、両方を用いてもよい。所望の形状の酸化物半導体層107及び第
2の電極109を形成するために、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッ
チング時間、温度など)を適宜調節する。
【0157】
なお、第2の電極109となる導電層及び酸化物半導体層と、第1の電極105とのエッ
チングレートが異なる場合は、第1の電極105のエッチングレートが低く、第2の電極
109となる導電層及び酸化物半導体層のエッチングレートの高い条件を選択する。また
は、酸化物半導体層のエッチングレートが低く、第2の電極109となる導電層のエッチ
ングレートの高い条件を選択して、第2の電極109となる導電層をエッチングした後、
第1の電極105のエッチングレートが低く、酸化物半導体層のエッチングレートの高い
条件を選択する。
【0158】
酸化物半導体層をウエットエッチングするエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混
ぜた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5
:2:2容量比)などを用いることができる。また、ITO−07N(関東化学社製)を
用いてもよい。
【0159】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によっ
て除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を
再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウムな
どの材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができ
る。
【0160】
また、ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス
、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化シリコン(SiCl)、四塩化
炭素(CCl)など)が好ましい。
【0161】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(S
)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(H
Br)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガ
スを添加したガス、などを用いることができる。
【0162】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングでき
るように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加さ
れる電力量、基板側の電極温度など)を適宜調節する。
【0163】
本実施の形態では、ドライエッチング法を用いて、第2の電極109となる導電層をエッ
チングした後、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液で酸化物半導体層をエッチングして、酸化
物半導体層107を形成する。
【0164】
次に、本実施の形態では、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以
上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理
装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素、希ガスなどの不
活性ガス雰囲気下において450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れさ
せないことで、酸化物半導体層への水素、水、水酸基または水素化物などの再侵入を防ぐ
ことで、水素濃度が低減され高純度化され、i型化または実質的にi型化された酸化物半
導体層を得ることができる。即ち、この第1の加熱処理によって酸化物半導体層107の
脱水化及び脱水素化の少なくとも一方を行うことができる。
【0165】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガ
スに、水素、水、水酸基または水素化物などなどが含まれないことが好ましい。または、
加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスの純度を
、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち
不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0166】
また、第1の加熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層
が結晶化し、微結晶膜または多結晶膜となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上
、または80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の加熱処理
の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半
導体層となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体層の中に微結晶部(粒径1nm以
上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる
場合もある。
【0167】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層を形成する前の酸化物
半導体層に行ってもよい。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り
出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0168】
なお、酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導
体層を形成した後、酸化物半導体層上に第2の電極となる導電層を積層した後、第1の電
極、酸化物半導体層及び第2の電極上にゲート絶縁層を形成した後、またはゲート電極を
形成した後のいずれで行ってもよい。
【0169】
次に、図11(C)に示すように、第1の電極105、酸化物半導体層107、第2の電
極109上にゲート絶縁層111を形成する。
【0170】
不純物を除去することによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体層(水素濃
度が低減され高純度化された酸化物半導体層)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感
となるため、ゲート絶縁層111との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物
半導体層に接するゲート絶縁層111は、高品質化が要求される。
【0171】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDにより、緻密で絶縁耐圧
の高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。水素濃度が低減され高純度化された酸
化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特
性を良好なものとすることができるからである。
【0172】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング
法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、ゲート絶縁層の
形成後の加熱処理によってゲート絶縁層の膜質、酸化物半導体層との界面特性が改質され
る絶縁層であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層としての膜質が良好であること
は勿論のこと、酸化物半導体層との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるもの
であれば良い。
【0173】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(B
T試験)においては、不純物が酸化物半導体層に添加されていると、不純物と酸化物半導
体層の主成分との結合が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、
生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。
【0174】
これに対して、酸化物半導体層の不純物、特に水素や水などを極力除去し、上記のように
ゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定なトランジ
スタを得ることを可能としている。
【0175】
スパッタリング法でゲート絶縁層111を形成することでゲート絶縁層111中の水素濃
度を低減することができる。スパッタリング法により酸化シリコン膜を形成する場合には
、ターゲットとしてシリコンターゲットまたは石英ターゲットを用い、スパッタガスとし
て酸素または、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0176】
ゲート絶縁層111は、第1の電極105、酸化物半導体層107、及び第2の電極10
9側から酸化シリコン膜と窒化シリコンを積層した構造とすることもできる。例えば、第
1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン膜(SiO(x
>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法
により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン(SiN(y>0))を積層し
て、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。本実施の形態では、圧力0.4Pa、
高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25s
ccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン
膜を形成する。
【0177】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは20
0℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。なお、当該
第2の加熱処理は、のちに形成される第3の電極113及び第3の電極115、絶縁層1
17、または配線125、131のいずれかを形成した後に行ってもよい。当該加熱処理
により、第1の加熱処理により生じた酸化物半導体層中の酸素欠損を、ゲート絶縁層中の
酸素や、加熱処理雰囲気中の酸素で補うことで、よりi型化された酸化物半導体層を得る
ことができる。
【0178】
次に、ゲート絶縁層111上にゲート電極として機能する第3の電極113及び第3の電
極115を形成する。
【0179】
第3の電極113及び第3の電極115は、ゲート絶縁層111上に第3の電極113及
び第3の電極115となる導電層をスパッタリング法、CVD法、または真空蒸着法で形
成し、当該導電層上にフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、当該レジ
ストマスクを用いて導電層をエッチングして、形成することができる。第3の電極113
及び第3の電極115となる導電層は、第1の電極105と同様の材料を用いることがで
きる。
【0180】
本実施の形態では、厚さ150nmのチタン層をスパッタリング法により形成した後、フ
ォトリソグラフィ工程により形成したレジストマスクを用いてエッチングして、第3の電
極113及び第3の電極115を形成する。
【0181】
以上の工程で、水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体層107を有するトラン
ジスタ133を形成することができる。
【0182】
次に、図11(D)に示すように、ゲート絶縁層111及び第3の電極113及び第3の
電極115上に絶縁層117を形成した後、コンタクトホール119、コンタクトホール
121、及びコンタクトホール123を形成する。
【0183】
絶縁層117は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、または酸化窒化
アルミニウムなどの酸化物絶縁層、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム
、または窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層を用いる。または、酸化物絶縁層及び
窒化物絶縁層の積層とすることもできる。
【0184】
絶縁層117は、スパッタリング法、CVD法などで形成する。なお、スパッタリング法
で絶縁層117を形成する場合、基板101を100℃以上400℃以下の温度に加熱し
、水素、水、水酸基または水素化物などが除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導
入しシリコンターゲットを用いて絶縁層を形成してもよい。この場合においても、処理室
内に残留する水素、水、水酸基または水素化物などを除去しつつ絶縁層を形成することが
好ましい。
【0185】
なお、絶縁層117の形成後、さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上
30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理によって、ノーマリーオフとな
るトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性を向上できる。
【0186】
コンタクトホール119、コンタクトホール121、及びコンタクトホール123は、フ
ォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲー
ト絶縁層111及び絶縁層117の一部を除去して、第2の電極109、及び第3の電極
113及び第3の電極115に達するコンタクトホール123、コンタクトホール119
、及びコンタクトホール121を形成する。
【0187】
次に、ゲート絶縁層111、絶縁層117、コンタクトホール119、コンタクトホール
121、及びコンタクトホール123上に導電層を形成した後、フォトリソグラフィ工程
により形成したレジストマスクを用いてエッチングして、配線125、配線131(図1
1中には図示せず。)を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成して
もよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため
、製造コストを削減できる。
【0188】
配線125、配線131は、第1の電極105と同様に形成することができる。
【0189】
なお、第3の電極113及び第3の電極115と、配線125及び配線131の間に平坦
化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。平坦化絶縁層の代表例としては、ポリイミド、
アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂などの、耐熱性を
有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low
−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)
などがある。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、平坦化絶
縁層を形成してもよい。
【0190】
なお、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−
Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアル
キル基やアリール基)やフルオロ基を用いてもよい。また、有機基はフルオロ基を有して
いてもよい。
【0191】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SO
G法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリ
ーン印刷、オフセット印刷など)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター
、ナイフコーターなどを用いることができる。
【0192】
上記のように酸化物半導体層中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それ
により酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処
理で、少数キャリアの数が極端に少なく、エネルギーギャップの広い酸化物半導体層を形
成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ
るため、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸
化物半導体層を用いることで、高精細化に適し、動作速度が速く、オン時には大電流を流
すことができ、オフ時にはほとんど電流を流さないトランジスタを作製することができる

【0193】
このようなトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方をゲート電極と電気的に
接続させることで、逆方向電流が非常に小さいダイオードを得ることができる。従って、
本実施の形態によって、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダ
イオードを作製することができる。
【0194】
なお、酸化物半導体層に接して設けられる絶縁層にハロゲン元素(例えば、フッ素または
塩素)を含ませ、または酸化物半導体層を露出させた状態でハロゲン元素を含むガス雰囲
気中でのプラズマ処理によって酸化物半導体層にハロゲン元素を含ませ、酸化物半導体層
、または該酸化物半導体層に接して設けられる絶縁層との界面に存在しうる、水素、水分
、水酸基または水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を排除してもよい。絶縁層
にハロゲン元素を含ませる場合には、該絶縁層中におけるハロゲン元素濃度は、5×10
18atoms/cm以上1×1020atoms/cm以下とすればよい。
【0195】
なお、上記したように酸化物半導体層中または酸化物半導体層とこれに接する絶縁層との
界面にハロゲン元素を含ませ、酸化物半導体層と接して設けられた絶縁層が酸化物絶縁層
である場合には、酸化物半導体層と接しない側の酸化物絶縁層を、窒化物絶縁層で覆うこ
とが好ましい。すなわち、酸化物半導体層に接する酸化物絶縁層の上に接して窒化シリコ
ンなどを設ければよい。このような構造とすることで、水素、水分、水酸基または水素化
物などの不純物が酸化物絶縁層に侵入することを防止することができる。
【0196】
なお、図2及び図6乃至図9に示すダイオードも同様に形成することができる。
【0197】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0198】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4とは異なる形態の酸化物半導体層を有するダイオード接
続されたトランジスタとその作製方法について、図11及び図12を用いて説明する。
【0199】
実施の形態4と同様に、図11(A)に示すように、基板101上に絶縁層103及び第
1の電極105を形成する。次に、図11(B)に示すように、第1の電極105上に酸
化物半導体層107及び第2の電極109を形成する。
【0200】
次に、第1の加熱処理を行う。本実施の形態における第1の加熱処理は、上記実施の形態
における第1の加熱処理とは異なるものであり、当該加熱処理によって、図12(A)に
示すように、表面に結晶粒が形成される酸化物半導体層151を形成することができる。
本実施の形態では、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導及び熱輻射の少なくとも一方に
よって被処理物を加熱する装置を用いて第1の加熱処理を行う。ここで、加熱処理の温度
は500℃以上700℃以下、好ましくは650℃以上700℃以下とすることが好適で
ある。なお、加熱処理温度の上限は基板101の耐熱性の範囲内とする必要がある。また
、加熱処理の時間は、1分以上10分以下とすることが好適である。RTA処理を適用す
ることで、短時間に加熱処理を行うことができるため、基板101に対する熱の影響を小
さくすることができる。つまり、加熱処理を長時間行う場合と比較して、加熱処理温度の
上限を引き上げることが可能である。また、酸化物半導体層の表面近傍に、所定の構造の
結晶粒を選択的に形成することが可能である。
【0201】
本実施の形態で用いることができる加熱装置としては、GRTA(Gas Rapid
Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Therma
l Anneal)装置などのRTA(Rapid Thermal Anneal)装
置などがある。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアー
クランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプ
から発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は
、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、ま
たは窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0202】
例えば、第1の加熱処理として、650℃以上700℃以下の高温に加熱した窒素または
希ガスなどの不活性ガス雰囲気に基板を移動し、数分間加熱した後、高温に加熱した不活
性ガス中から基板を出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加
熱処理が可能となる。
【0203】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガ
スに、水素、水、水酸基または水素化物などが含まれないことが好ましい。または、加熱
処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスの純度を、6
N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純
物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0204】
なお、上記の加熱処理は、酸化物半導体層107を形成した後であればいずれのタイミン
グで行ってもよいが、脱水化または脱水素化を促進させるためには、酸化物半導体層10
7の表面に他の構成要素を設ける前に行うのが好適である。また、上記の加熱処理は、一
回に限らず、複数回行っても良い。
【0205】
ここで、図12(A)の鎖線部153の拡大図を図12(B)に示す。
【0206】
酸化物半導体層151は、非晶質を主たる構成とする非晶質領域155と、酸化物半導体
層151の表面に形成される結晶粒157とを有する。また、結晶粒157は、表面に対
して垂直方向の距離(深さ)が20nm以下の領域(表面近傍)に形成される。ただし、
酸化物半導体層151の厚さが大きくなる場合にはこの限りではない。例えば、酸化物半
導体層151の厚さが200nm以上となる場合には、「表面の近傍(表面近傍)」とは
、表面からの距離(深さ)が酸化物半導体層の厚さの10%以下である領域をいう。
【0207】
ここで、非晶質領域155は、非晶質酸化物半導体層を主たる構成としている。なお、「
主たる」とは、例えば、50%以上を占める状態をいい、この場合には、非晶質酸化物半
導体層が体積%(または重量%)で50%以上を占める状態をいうものとする。つまり、
非晶質酸化物半導体層以外にも、酸化物半導体層の結晶などを含むことがあるが、その含
有率は体積%(または重量%)で50%未満であることが望ましいがこれらの範囲に限定
される必要はない。
【0208】
酸化物半導体層の材料としてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体層を用いる場合には
、上記の非晶質領域155の組成は、Znの含有量(原子%)が、InまたはGaの含有
量(原子%)未満となるようにするのが好適である。このような組成とすることにより、
所定の組成の結晶粒157を形成することが容易になるためである。
【0209】
この後、実施の形態4と同様に、ゲート絶縁層と、ゲート電極として機能する第3の電極
を形成してトランジスタを作製する。
【0210】
ゲート絶縁層と接する酸化物半導体層151の表面は、チャネルとなる。チャネルとなる
領域に結晶粒を有することで、ソース、チャネル、及びドレイン間の抵抗が低減すると共
に、キャリア移動度が上昇する。このため、当該酸化物半導体層151を有するトランジ
スタの電界効果移動度が上昇し、良好な電気特性を実現できる。
【0211】
また、結晶粒157は、非晶質領域155と比較して安定であるため、これを酸化物半導
体層151の表面近傍に有することで、非晶質領域155に不純物(例えば水素、水、水
酸基または水素化物など)が取り込まれることを低減することが可能である。このため、
酸化物半導体層151の信頼性を向上させることができる。
【0212】
以上の工程により酸化物半導体層中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。
それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加
熱処理で、少数キャリアの数が極端に少なく、エネルギーギャップの広い酸化物半導体層
を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することが
できるため、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化され
た酸化物半導体層を用いることで、高精細化に適し、動作速度が速く、オン時には大電流
を流すことができ、オフ時にはほとんど電流を流さないトランジスタを作製することがで
きる。
【0213】
このようなトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方をゲート電極と電気的に
接続させることで、順方向電流が大きく、逆方向電流が小さいダイオードを作製すること
ができる。また、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダイオー
ドを作製することができる。
【0214】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0215】
(実施の形態6)
本実施の形態では、図1に示すダイオード接続されたトランジスタの作製工程であって、
実施の形態4とは異なるものについて、図11を用いて説明する。
【0216】
実施の形態4と同様に、図11(A)に示すように、基板101上に第1の電極105を
形成する。
【0217】
次に、図11(B)に示すように、第1の電極105上に酸化物半導体層107及び第2
の電極109を形成する。
【0218】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により形成する前に、アルゴンガスを導入して
プラズマを発生させる逆スパッタを行い、第1の電極105の表面に付着しているゴミや
酸化層を除去することで、第1の電極105及び酸化物半導体層の界面における抵抗を低
減することができるため好ましい。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを
用いてもよい。
【0219】
基板101及び第1の電極105上にスパッタリング法により酸化物半導体層を形成する
。次に、酸化物半導体層上に導電層を形成する。
【0220】
本実施の形態では、酸化物半導体層をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用
いたスパッタリング法により形成する。本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室
内に基板を保持し、基板を室温または400℃未満の温度に加熱する。そして、処理室内
に残留する水素、水、水酸基または水素化物などを除去しつつ、水素、水、水酸基または
水素化物などが除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板1
01及び第1の電極105上に酸化物半導体層を形成する。処理室内に残留する水素、水
、水酸基または水素化物などを除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好
ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用い
ることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えた
ものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した処理室は、例えば、水素、水、水
酸基または水素化物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)などが排気されるため、
当該処理室で形成した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、クラ
イオポンプにより処理室内に残留する水素、水、水酸基または水素化物などを除去しなが
らスパッタ形成を行うことで、基板温度が室温から400℃未満でも水素原子、水などの
不純物を低減した酸化物半導体層を形成することができる。
【0221】
本実施の形態では、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流
(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下での成膜条件が適用さ
れる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティ
クル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体
層は、好ましくは30nm以上3000nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体層
材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0222】
なお、酸化物半導体層を形成する際のスパッタリング法は、絶縁層103に示したスパッ
タリング法を適宜用いることができる。
【0223】
次に、第2の電極109となる導電層を、第1の電極105の材料及び手法を用いて形成
する。また、使用する材料の仕事関数に応じて、第1の電極105と第2の電極109を
異なる材料とすることもできる。
【0224】
次に、実施の形態4と同様に、第2の電極109となる導電層及び酸化物半導体層107
となる酸化物半導体層をエッチングして、第2の電極109及び酸化物半導体層107を
形成する。所望の形状の酸化物半導体層107及び第2の電極109を形成するために、
材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度など)を適宜調節
する。
【0225】
次に、図11(C)に示すように、実施の形態4と同様に、第1の電極105、酸化物半
導体層107、第2の電極109上にゲート絶縁層111を形成する。ゲート絶縁層11
1は、酸化物半導体層107との界面特性が良好なものとすることが好ましく、μ波(2
.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDでゲート絶縁層111を形成することで、
緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。また、ゲート絶縁層と
して良質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など
他の形成方法を適用することができる。
【0226】
なお、ゲート絶縁層111を形成する前に逆スパッタを行い、少なくとも酸化物半導体層
107の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0227】
また、ゲート絶縁層111を形成する前にNO、N、またはArなどのガスを用いた
プラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水素、水、水酸基ま
たは水素化物などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ
処理を行ってもよい。プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体
層の一部に接するゲート絶縁層111を形成することが好ましい。
【0228】
また、ゲート絶縁層111に、水素、水、水酸基または水素化物などがなるべく含まれな
いようにするために、前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で第1の電極10
5から第2の電極109まで形成された基板101を予備加熱し、基板101に吸着した
水素、水、水酸基または水素化物などの不純物を脱離し排気することが好ましい。または
、ゲート絶縁層111を形成した後、基板101を、スパッタリング装置の予備加熱室で
予備加熱して、基板101に吸着した水素、水、水酸基または水素化物などの不純物を脱
離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以
下好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はク
ライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0229】
ゲート絶縁層111は、第1の電極105、酸化物半導体層107、及び第2の電極10
9側から酸化シリコンと窒化シリコンとを積層した構造とすることもできる。例えば、第
1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚5nm以上300nm以下の酸化シ
リコン(SiO(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層と
して膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン(SiN(y>0))を積層して
、ゲート絶縁層とする。
【0230】
次に、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で加熱処理(好ましくは200℃以
上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。なお、当該第2の
加熱処理は、のちに形成される第3の電極113及び第3の電極115、絶縁層117、
または配線125、131のいずれかを形成した後に行ってもよい。当該加熱処理により
、酸化物半導体層中の酸素欠損を、ゲート絶縁層中の酸素や、加熱処理雰囲気中の酸素で
補うことで、よりi型化された酸化物半導体層を得ることができる。
【0231】
次に、図11(C)に示すように、実施の形態4と同様に、ゲート絶縁層111上にゲー
ト電極として機能する第3の電極113及び第3の電極115を形成する。
【0232】
以上の工程で、水素濃度が低減された酸化物半導体層107を有するトランジスタ133
を形成することができる。
【0233】
上記のように酸化物半導体層を形成する際に、反応雰囲気中に残留する水素、水、水酸基
または水素化物などを除去することで、該酸化物半導体層中の水素濃度を低減することが
できる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。
【0234】
次に、図11(D)に示すように、実施の形態4と同様に、ゲート絶縁層111及び第3
の電極113及び第3の電極115上に絶縁層117を形成した後、コンタクトホール1
19、コンタクトホール121、及びコンタクトホール123を形成する。
【0235】
次に、図11(E)に示すように、実施の形態4と同様に、配線125、配線131(図
11中には図示せず。)を形成する。
【0236】
なお、絶縁層117の形成後、さらに、実施の形態4と同様に、大気中、100℃以上2
00℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理によっ
て、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることができる。よって半導体装置の信頼性
を向上できる。
【0237】
なお、第3の電極113及び第3の電極115及び配線125、131の間に平坦化のた
めの平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0238】
上記のように酸化物半導体層を形成するに際し、反応雰囲気中に残留する水素、水、水酸
基または水素化物などを除去することで、該酸化物半導体層中の水素の濃度を低減し、高
純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また
、ガラス転移温度以下の加熱処理で、少数キャリアの数が極端に少なく、エネルギーギャ
ップの広い酸化物半導体層を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトラ
ンジスタを作製することができるため、量産性を高めることができる。また、当該水素濃
度が低減され高純度化された酸化物半導体層を用いることで、高精細化に適し、動作速度
が速く、オン時には大電流を流すことができ、オフ時にはほとんど電流を流さないトラン
ジスタを作製することができる。
【0239】
このようなトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方をゲート電極と電気的に
接続させることで、逆方向電流が非常に小さいダイオードを得ることができる。従って、
本実施の形態によって、アバランシェ降伏現象が起きにくい(すなわち、耐圧が高い)ダ
イオードを作製することができる。
【0240】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0241】
(実施の形態7)
上記実施の形態にて説明したダイオードは、半導体装置に適用することができる。半導体
装置として、例えば表示装置を挙げることができる。
【0242】
本発明の一態様である表示装置の構成について、図13を参照して説明する。図13は、
表示装置が形成された基板200の上面図を示す。基板200上には、画素部201が形
成されている。また、入力端子202及び入力端子203は、基板200上に形成された
画素回路に対して画像を表示するための信号及び電源電力を供給する。
【0243】
なお、本発明の一態様である表示装置は、図13に示す形態に限定されない。すなわち、
基板200上には、走査線駆動回路及び信号線駆動回路の一方または双方が形成されてい
てもよい。
【0244】
そして、基板200上に形成された走査線側の入力端子202及び信号線側の入力端子2
03と、画素部201とは、縦横に延びた配線によって接続されており、該配線は保護回
路204乃至保護回路207に接続されている。
【0245】
画素部201と、入力端子202とは、配線209によって接続されている。保護回路2
04は、画素部201と、入力端子202との間に配設され、配線209に接続されてい
る。保護回路204を設けることによって、画素部201が有するトランジスタ等の各種
半導体素子を保護することができ、これらが劣化し、または破壊することを防止できる。
なお、配線209は、図中では一の配線を指し示しているが、配線209と平行に設けら
れている複数の配線のすべてが配線209と同様の接続関係を有する。なお、配線209
は、走査線として機能するものである。
【0246】
なお、走査線側には、入力端子202と画素部201との間に設けられている保護回路2
04のみならず、画素部201を挟んで入力端子202の反対側にも保護回路が設けられ
ていても良い(図13の保護回路205を参照)。
【0247】
一方で、画素部201と、入力端子203とは配線208によって接続されている。保護
回路206は、画素部201と、入力端子203との間に配設され、配線208に接続さ
れている。保護回路206を設けることによって、画素部201が有するトランジスタ等
の各種半導体素子を保護することができ、これらが劣化し、または破壊されることを防止
できる。なお、配線208は、図中では一の配線を指し示しているが、配線208と平行
に設けられている複数の配線のすべてが配線208と同様の接続関係を有する。なお、配
線208は、信号線として機能するものである。
【0248】
なお、信号線側には、入力端子203と画素部201との間に設けられている保護回路2
06のみならず、画素部201を挟んで入力端子203の反対側にも設けられていても良
い(図13の保護回路207を参照)。
【0249】
なお、保護回路204乃至保護回路207は全て設ける必要はない。しかし、少なくとも
保護回路204は設ける必要がある。走査線に過大な電流が生じることで、画素部201
が有するトランジスタのゲート絶縁層が破壊され、多数の点欠陥を生じうるからである。
【0250】
また、保護回路204のみならず保護回路206を設けることで信号線に過大な電流が生
じることを防止できる。そのため、保護回路204のみを設ける場合と比較して信頼性が
向上し、歩留まりが向上する。保護回路206を有することで、トランジスタ形成後のラ
ビング工程等にて生じうる、静電気による破壊を防止することもできる。
【0251】
更には、保護回路205及び保護回路207を有することで、信頼性を更に向上させるこ
とができる。また、歩留まりを高くすることができる。保護回路205及び保護回路20
7は、入力端子202及び入力端子203とは反対側に設けられている。そのため、これ
らは表示装置の作製工程(例えば、液晶表示装置の作製工程におけるラビング工程)中に
おいて生じる、各種半導体素子の劣化及び破壊を防止することに寄与する。
【0252】
なお、図13では、基板200とは別に形成した信号線駆動回路及び走査線駆動回路をC
OG方式やTAB方式等の公知の方式により基板200に実装する。しかし、これに限定
されず、走査線駆動回路と画素部とを基板200上に形成し、信号線駆動回路は別に形成
したものを実装してもよい。または、走査線駆動回路の一部或いは信号線駆動回路の一部
を、画素部201と共に基板200上に形成し、走査線駆動回路の他の部分或いは信号線
駆動回路の他の部分を実装するようにしても良い。走査線駆動回路の一部が画素部201
と走査線側の入力端子202との間に設けられている場合には、走査線側の入力端子20
2と基板200上の走査線駆動回路の一部との間に保護回路を設けても良いし、走査線駆
動回路の一部と画素部201との間に保護回路を設けても良いし、これらの双方に保護回
路を設けても良い。また、信号線駆動回路の一部が画素部201と信号線側の入力端子2
03との間に設けられている場合には、信号線側の入力端子203と基板200上の信号
線駆動回路の一部との間に保護回路を設けても良いし、信号線駆動回路の一部と画素部2
01との間に保護回路を設けても良いし、これらの双方に保護回路を設けても良い。つま
り、駆動回路の形態は様々であるため、保護回路はその形態に合わせて設ける数と場所を
定める。
【0253】
次に、図13における保護回路204乃至保護回路207に用いられる保護回路の具体的
な回路構成の例について、図14を参照して説明する。以下の説明ではn型トランジスタ
を設ける場合についてのみ説明する。
【0254】
図14(A)に示す保護回路は、複数のトランジスタを用いた保護ダイオード211乃至
保護ダイオード214を有する。保護ダイオード211は、酸化物半導体(OS)を有す
るn型トランジスタ211a及びn型トランジスタ211bが直列に接続されている。そ
して、n型トランジスタ211aのソース電極及びドレイン電極の一方は、n型トランジ
スタ211a及びn型トランジスタ211bのゲート電極と接続され、且つ電位Vss
保たれている。n型トランジスタ211aのソース電極及びドレイン電極の他方は、n型
トランジスタ211bのソース電極及びドレイン電極の一方に接続されている。n型トラ
ンジスタ211bのソース電極及びドレイン電極の他方は保護ダイオード212に接続さ
れている。そして、他の保護ダイオード212乃至保護ダイオード214も保護ダイオー
ド211と同様に、それぞれ直列に接続された複数のトランジスタを有し、且つ直列に接
続された複数のトランジスタの一端は、複数のトランジスタのゲート電極と接続されてい
る。
【0255】
なお、保護ダイオード211乃至保護ダイオード214のそれぞれが有するトランジスタ
の数及び極性は、図14(A)に示す構成に限定されない。例えば、保護ダイオード21
1は、直列に接続された三つのトランジスタにより構成されていてもよい。
【0256】
そして、保護ダイオード211乃至保護ダイオード214は順に直列に接続されており、
且つ保護ダイオード212と保護ダイオード213の間は、配線215に接続されている
。なお、配線215は、保護対象となる半導体素子に電気的に接続されているものである
。なお、配線215と接続する配線は、保護ダイオード212と保護ダイオード213と
の間の配線に限定されない。即ち、配線215は、保護ダイオード211と保護ダイオー
ド212との間に接続されていても良いし、保護ダイオード213と保護ダイオード21
4との間に接続されていても良い。
【0257】
そして、保護ダイオード214の一端は電源電位Vddに保たれている。また、保護ダイ
オード211乃至保護ダイオード214のそれぞれは、逆方向バイアスの電圧がかかるよ
うに接続されている。
【0258】
図14(B)に示す保護回路は、保護ダイオード220、保護ダイオード221、容量素
子222、容量素子223及び抵抗素子224を有する。抵抗素子224は2端子の抵抗
であり、その一端には配線225から電位Vinが供給され、他端には電位Vssが供給
される。抵抗素子224は、電位Vinが供給されなくなったときに配線225の電位を
ssにするために設けられており、その抵抗値は配線225の配線抵抗よりも十分に大
きくなるように設定する。保護ダイオード220及び保護ダイオード221は、ダイオー
ド接続されたn型トランジスタを用いている。
【0259】
なお、図14に示す保護ダイオードは、更に複数のトランジスタを直列に接続したもので
あっても良い。
【0260】
ここで、図14に示す保護回路が動作する場合について考える。このとき、保護ダイオー
ド211、212、221、230、231、234、235のソース電極及びドレイン
電極において、電位Vssに保持される側がドレイン電極である。また他方はソース電極
となる。保護ダイオード213、214、220、232、233、236、237のソ
ース電極及びドレイン電極において、電位Vddに保持される側をソース電極とし、他方
がドレイン電極となる。また、保護ダイオードを構成するトランジスタのしきい値電圧を
thと示す。
【0261】
また、保護ダイオード211、212、221、230、231、234、235は電位
inが電位Vssより高いときに逆バイアスの電圧がかかり、電流が流れにくい。一方
、保護ダイオード213、214、220、232、233、236、237は、電位V
inが電位Vddより低いときに逆方向バイアスの電圧がかかり、電流が流れにくい。
【0262】
ここでは、電位Voutが概ね電位Vssと電位Vddの間となるように設けられた保護
回路の動作について説明する。
【0263】
まず、電位Vinが電位Vddよりも高い場合を考える。電位Vinが電位Vddよりも
高い場合、保護ダイオード213、214、220、232、233、236、237の
ゲート電極とソース電極間の電位差Vgs=Vin−Vdd>Vthのときに、当該n型
トランジスタはオン状態となる。ここでは、Vinが異常に高い場合を想定しているため
、当該n型トランジスタはオン状態となる。このとき、保護ダイオード211、212、
221、230、231、234、235が有するn型トランジスタは、オフ状態となる
。そうすると、保護ダイオード213、214、220、232、233、236、23
7を介して、配線215、225、239A、239Bの電位がVddとなる。従って、
ノイズ等により電位Vinが電位Vddよりも異常に高くなったとしても、配線215、
225、239A、239Bの電位は、電位Vddよりも高くなることはない。
【0264】
一方で、電位Vinが電位Vssよりも低い場合には、保護ダイオード211、212、
221、230、231、234、235のゲート電極とソース電極間の電位差Vgs
ss−Vin>Vthのときに、当該n型トランジスタはオン状態となる。ここでは、
inが異常に低い場合を想定しているため、n型トランジスタはオン状態となる。この
とき、保護ダイオード213、214、220、232、233、236、237が有す
るn型トランジスタはオフ状態となる。そうすると、保護ダイオード211、212、2
21、230、231、234、235を介して、配線215、225、239A、23
9Bの電位がVssとなる。従って、ノイズ等により、電位Vinが電位Vssより異常
に低くなったとしても、配線215、225、239A、239Bの電位は、電位Vss
よりも低くなることはない。さらに、容量素子222、223は、入力電位Vinが有す
るパルス状のノイズを鈍らせ、ノイズによる電位の急峻な変化を緩和する働きをする。
【0265】
なお、電位Vinが、Vss−VthからVdd+Vthの間の場合には、すべての保護
ダイオードが有するn型トランジスタがオフ状態となり、電位Vinが電位Voutへ入
力される。
【0266】
以上説明したように保護回路を配置することで、配線215、225、239A、239
Bの電位は、概ね電位Vssと電位Vddの間に保たれることになる。従って、配線21
5、225、239A、239Bがこの範囲から大きく外れる電位となることを防止する
ことができる。つまり、配線215、225、239A、239Bが異常に高い電位また
は異常に低い電位となることを防止し、当該保護回路の後段の回路が破壊されまたは劣化
することを防止し、後段の回路を保護することができる。
【0267】
さらに、図14(B)に示すように、入力端子に抵抗素子224を有する保護回路を設け
ることで、信号が入力されていないときに、信号が与えられる全ての配線の電位を、一定
(ここでは電位Vss)とすることができる。つまり信号が入力されていないときは、配
線同士をショートさせることができるショートリングとしての機能も有する。そのため、
配線間に生じる電位差に起因する静電破壊を防止することができる。また、抵抗素子22
4の抵抗値が配線抵抗に対して十分に大きいので、信号の入力時に、配線に与えられる信
号が電位Vssまで降下することを防止することができる。
【0268】
ここで、一例として、図14(B)の保護ダイオード220及び保護ダイオード221に
閾値電圧Vth=0のn型トランジスタを用いた場合について説明する。
【0269】
まず、Vin>Vddの場合には、保護ダイオード220が有するn型トランジスタはV
gs=Vin−Vdd>0となり、オン状態となる。また、保護ダイオード221が有す
るn型トランジスタはオフ状態となる。従って、配線225の電位はVddとなり、V
ut=Vddとなる。
【0270】
一方で、Vin<Vssの場合には、保護ダイオード220が有するn型トランジスタは
オフ状態となる。また、保護ダイオード221が有するn型トランジスタはVgs=V
−Vin>0となり、オン状態となる。従って、配線225の電位はVssとなり、V
out=Vssとなる。
【0271】
このように、Vin<VssまたはVdd<Vinとなる場合であっても、Vss<V
ut<Vddの範囲で動作させることができる。従って、Vinが過大な場合または過小
な場合であっても、Voutが過大になりまたは過小となることを防止することができる
。従って、例えばノイズ等により、電位Vinが電位Vssより低くなる場合であっても
、配線225の電位は、電位Vssよりも遙かに低くなることはない。さらに、容量素子
222及び容量素子223は、入力電位Vinが有するパルス状のノイズを鈍らせ、電位
の急峻な変化を緩和する働きをする。
【0272】
以上説明したように保護回路を配置することで、配線225の電位は、電位Vssと電位
ddの間に概ね保たれることになる。従って、配線225がこの範囲から大きくはずれ
た電位となることを防止することができ、当該保護回路の後段の回路(入力部がVout
に電気的に接続された回路)を破壊または劣化から保護することができる。さらに、入力
端子に保護回路を設けることで、信号が入力されていないときに、信号が与えられる全て
の配線の電位を、一定(ここでは電位Vss)に保つことができる。つまり、信号が入力
されていないときは、配線同士をショートさせることができるショートリングとしての機
能も有する。そのため、配線間に生じる電位差に起因する静電破壊を防止することができ
る。また、抵抗素子224の抵抗値が十分に大きいので、信号の入力時には、配線225
に与えられる信号の電位の低下を防止できる。
【0273】
図14(C)に示す保護回路は、保護ダイオード220及び保護ダイオード221を、そ
れぞれ2つのn型トランジスタで代用したものである。
【0274】
なお、図14(B)及び図14(C)に示す保護回路は、保護ダイオードとしてダイオー
ド接続されたn型トランジスタを用いているが、これに限定されない。
【0275】
また、図14(D)に示す保護回路は、保護ダイオード230乃至保護ダイオード237
と、抵抗素子238と、を有する。抵抗素子238は配線239Aと配線239Bの間に
直列に接続されている。保護ダイオード230乃至保護ダイオード233のそれぞれは、
ダイオード接続されたn型トランジスタを用いており、保護ダイオード234乃至保護ダ
イオード237のそれぞれは、ダイオード接続されたn型トランジスタを用いている。
【0276】
保護ダイオード230と保護ダイオード231は直列に接続されており、一端は電位V
に保持され、他端は電位Vinの配線239Aに接続されている。保護ダイオード23
2と保護ダイオード233は直列に接続されており、一端は電位Vddに保持され、他端
は電位Vinの配線239Aに接続されている。保護ダイオード234と保護ダイオード
235は直列に接続されており、一端は電位Vssに保持され、他端は電位Voutの配
線239Bに接続されている。保護ダイオード236と保護ダイオード237は直列に接
続されており、一端は電位Vddに保持され、他端は電位Voutの配線239Bに接続
されている。
【0277】
また、図14(E)に示す保護回路は、抵抗素子240と、抵抗素子241と、保護ダイ
オード242と、を有する。図14(E)では、保護ダイオード242としてダイオード
接続されたn型トランジスタを用いているが、これに限定されない。ダイオード接続され
た複数のトランジスタを用いても良い。抵抗素子240と、抵抗素子241と、保護ダイ
オード242は、配線243に直列に接続されている。
【0278】
抵抗素子240及び抵抗素子241によって、配線243の電位の急激な変動を緩和し、
半導体素子の劣化または破壊を防止することができる。また、保護ダイオード242によ
って、電位の変動により配線243に逆方向バイアスの電流が流れることを防止すること
ができる。
【0279】
なお、図14(A)に示す保護回路は、図14(F)に示す構成に置き換えることも可能
である。図14(F)は、図14(A)に示した保護ダイオード211及び保護ダイオー
ド212を保護ダイオード216に、保護ダイオード213及び保護ダイオード214を
保護ダイオード217に置き換えた構成を示している。特に、上記実施の形態で説明した
ダイオードは、耐圧が高いため、図14(F)のような構成を用いることができる。
【0280】
なお、抵抗素子のみを配線に直列に接続する場合には、配線の電位の急激な変動を緩和し
、半導体素子の劣化または破壊を防止することができる。また、保護ダイオードのみを配
線に直列に接続する場合、電位の変動により配線に逆方向の電流が流れるのを防ぐことが
できる。
【0281】
なお、本発明の一態様である表示装置に設けられる保護回路は図14に示す構成に限定さ
れるものではなく、同様の働きをする回路構成であれば、適宜設計変更が可能である。
【0282】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態にて説明したダイオードを用いて、安定した電源供給
を可能とする半導体装置の構成例について図15で説明する。電源線に想定以上の電圧が
印加されると、その電源線に接続している回路が損傷される恐れがある。上記実施の形態
では、主に信号線に対して想定以上の過大な電圧から保護するための構成例について示し
たが、図15では、電源線に想定以上の電圧が印加されることを防ぐための構成例を示す

【0283】
図15(A)は、電位Vssを供給する電源線270と、電位Vddを供給する電源線2
71の間に、酸化物半導体(OS)を有するn型トランジスタを用いた保護ダイオード2
51乃至保護ダイオード255、及び保護ダイオード261が接続されている状態を示す
回路図である。また、図15(B)は、図15(A)のトランジスタを用いた保護ダイオ
ードの構成を、ダイオードの回路記号で置き換えた図である。
【0284】
一例として、電位Vssを0Vとし、電位Vddを10Vとし、電源線270と電源線2
71の電位差が10Vを超える事がないようにする場合について説明する。ここでは、保
護ダイオードとして、閾値電圧(Vth)が2Vのn型トランジスタを用いることとする

【0285】
図15(A)及び図15(B)において、電位Vddを供給する電源線271に保護ダイ
オード251のアノード側が接続されている。保護ダイオード251は酸化物半導体(O
S)を有するn型トランジスタで構成されており、該n型トランジスタのソース電極及び
ドレイン電極の一方が、電源線271及び該n型トランジスタのゲート電極と接続され、
アノードとして機能する。また、ソース電極及びドレイン電極の他方はカソードとして機
能し、保護ダイオード252のアノードに接続されている。
【0286】
保護ダイオード252は酸化物半導体(OS)を有するn型トランジスタで構成されてお
り、該n型トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方が、保護ダイオード251
のカソード及び該n型トランジスタのゲート電極と接続され、アノードとして機能する。
また、ソース電極及びドレイン電極の他方はカソードとして機能し、保護ダイオード25
3のアノードに接続されている。
【0287】
このようにして、保護ダイオード251乃至保護ダイオード255が直列に接続し、保護
ダイオード255のカソードが電位Vssを供給する電源線270に接続される。つまり
、電源線270と電源線271の間に、順バイアス方向に保護ダイオードが5個直列に接
続されている。
【0288】
通常、順方向バイアス方向に電圧が印加されるとダイオードに順方向電流が流れ、アノー
ドとカソード間が導通状態となる。本実施の形態では、閾値電圧(Vth)が2Vのn型
トランジスタで構成されたダイオードを5個直列に接続しているため、順方向バイアスが
2Vの5倍である10Vを超えないと、電源線270と電源線271間が導通状態となら
ない。しかし、ノイズなどの原因により、電源線270と電源線271間の電位差が10
Vを超えると、保護ダイオード251乃至保護ダイオード255が導通状態となり、電位
差が10V以下になるまで電源線270と電源線271が短絡状態となる。このようにし
て、想定以上の電圧が電源線を通して回路に印加され、回路が損傷される事を防ぐことが
できる。
【0289】
また、保護ダイオード261を、電源線270と電源線271の間に逆方向バイアスとな
るように接続することで、ノイズなどの原因により、電源線270の電位が電源線271
より大きくなったときに、電源線270と電源線271を短絡させて電荷を逃がし、電源
線に接続されている回路が損傷することを防ぐことができる。
【0290】
保護ダイオード261は、酸化物半導体(OS)を有するトランジスタであり、大きな逆
方向バイアスが印加されても、降伏現象が起きにくい高耐圧ダイオードである。本実施の
形態では、電源線270と電源線271の間に保護ダイオード261を一つ配置した例を
示しているが、保護ダイオード261を複数直列に配置してもよい。保護ダイオード26
1をn個直列に配置することで、保護ダイオード一つ当たりに印加される電圧をn分の1
とすることができるため、複数直列に配置したダイオード全体を、さらに耐圧特性に優れ
た一つのダイオードとして機能させることができる。
【0291】
また、直列接続した保護ダイオード251乃至保護ダイオード255、及び保護ダイオー
ド261は、電源線270と電源線271の間に複数並列に設けてもよい。複数並列に設
けることにより、より多くの電流を流すことができるため、電源線270と電源線271
の間の電位をより迅速に安定させる事ができる。
【0292】
なお、端子281を保護ダイオード254と保護ダイオード255の間に設けることで、
保護ダイオード255の閾値電圧(Vth)を取り出すことができる。本実施の形態では
、保護ダイオード255の閾値電圧(Vth)を2Vとしているため、端子281を2V
の電源線として用いる事ができる。また、端子281を保護ダイオード253と保護ダイ
オード252の間に設けることで、端子281を6Vの電源線として用いる事ができる。
保護ダイオード255の閾値電圧(Vth)と直列接続数を調整することにより、任意の
電位を取り出すことができる。
【0293】
(実施の形態9)
実施の形態7で説明した保護回路を有する表示装置は、電子機器に適用することができる

【0294】
実施の形態7の表示装置を表示部に用いた電子機器として、例えば、ビデオカメラ、デジ
タルカメラなどのカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生
装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報
端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒
体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(
DVD)などの記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)な
どが挙げられる。
【0295】
図16(A)に示すディスプレイは、筐体300、支持台301および表示部302を含
み、入力された様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部302に表示す
る機能を有する。なお、図16(A)に示すディスプレイが有する機能はこれに限定され
ず、例えばスピーカーを具備していてもよいし、情報の表示のみならず入力も可能なタッ
チパネルであってもよい。
【0296】
図16(B)に示すテレビジョン装置は、筐体311に表示部312が組み込まれている
。表示部312により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、壁310に
固定して筐体の裏側を支持した構成を示している。
【0297】
図16(B)に示すテレビジョン装置の操作は、筐体311が備える操作スイッチや、リ
モコン操作機315により行うことができる。リモコン操作機315が備える操作キー3
14により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部312に表示される映像
を操作することができる。また、リモコン操作機315に、当該リモコン操作機315か
ら出力する情報を表示する表示部313を設ける構成としてもよい。
【0298】
なお、図16(B)に示すテレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする
とよい。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して
有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信
者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うこ
とも可能である。
【0299】
図16(C)に示すコンピュータは、本体320、筐体321、表示部322、キーボー
ド323、外部接続ポート324およびポインティングデバイス325を含み、様々な情
報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部322に表示する機能を有する。なお、
図16(C)に示すコンピュータが有する機能はこれに限定されず、例えば、情報の表示
のみならず入力も可能なタッチパネルであってもよい。
【0300】
本実施の形態で説明したように、本発明の一態様であるダイオードなどの非線形素子を電
子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0301】
101 基板
103 絶縁層
105 電極
106 電極
107 酸化物半導体層
109 電極
111 ゲート絶縁層
113 電極
115 電極
117 絶縁層
119 コンタクトホール
121 コンタクトホール
123 コンタクトホール
125 配線
129 配線
131 配線
132 配線
133 トランジスタ
141 トランジスタ
143 トランジスタ
145 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
前記第1の導電層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の第2の導電層と、
前記第2の導電層上の絶縁層と、
前記絶縁層上の第3の導電層とを有し、
前記第1の導電層は、ソース又はドレインとして機能することができる領域を有し、
前記第2の導電層は、ソース又はドレインとして機能することができる領域を有し、
前記第3の導電層は、ゲートとして機能することができる領域を有し、
前記絶縁層は、ゲート絶縁膜として機能することができる領域を有し、
前記第1の導電層は、前記第3の導電層と電気的に接続する領域を有し、
前記第1の導電層と前記酸化物半導体層の接触する領域の面積と、前記第2の導電層と前記酸化物半導体層の接触する領域の面積とが異なることを特徴とする非線形素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の導電層と前記酸化物半導体層の接触する領域の面積と、前記第2の導電層と前記酸化物半導体層の接触する領域の面積よりも大きいことを特徴とする非線形素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記酸化物半導体層は、キャリア密度が1×1012/cm未満であることを特徴とする非線形素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記酸化物半導体層は、水素濃度が5×1019/cm以下であることを特徴とする非線形素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記絶縁層は、少なくとも前記酸化物半導体層に接する部分が酸化物絶縁層であることを特徴とする非線形素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記絶縁層は、窒化シリコンに覆われていることを特徴とする非線形素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1の導電層は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、金(Au)、プラチナ(Pt)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、スズ(Sn)、またはインジウム(In)のいずれかを有することを特徴とする非線形素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記第2の導電層は、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、またはタンタル(Ta)のいずれかを有することを特徴とする非線形素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−62533(P2013−62533A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258493(P2012−258493)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2010−250809(P2010−250809)の分割
【原出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】