説明

非線形補償装置および送信器

【課題】通信システムの非線形性を補償するための構成または方法の複雑さを低くする。
【解決手段】非線形補償装置は、通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報取得部と、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る摂動量計算部と、情報取得部によって取得された現在時刻におけるシンボル情報系列と、摂動量計算部により得られた摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る情報補償部、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル内の非線形性を低減する非線形補償装置および送信器に係わり、光通信に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
チャネル内の非線形性は、光伝送システムに固有の特性劣化であり、光ファイバのカー効果等により生じる。システム上のチャネル内の非線形効果は、タイミングジッタ、信号振幅の揺らぎ、ゴーストパルスの発生などを含む。(例えば、非特許文献1)
信号チャネルのレートが40〜60Gbit/s或いはそれよりも高くなると、分散の効果により、同一チャネル内のパルスは、大きく広がり、隣接するパルスが互いに重なりあう。そして、非線形効果の下で、互いに重なり合うパルス間でエネルギーの交換が起こる。この場合、リンク内の残留分散が受信側で補償されるとしても、システムは、非線形損傷を受けることになる。また、光ファイバ伝送システムの容量が増加するにつれて、単純な強度変調方式は、徐々に、より複雑な多次元変調技術によって置き換えられていくと考えられる。ここで、複雑な変調方式が十分な信号対雑音比を得るためには、しばしば高い入力パワーが必要となり、結果的に、システムの非線形ペナルティが大きくなる。
【0003】
現在、長距離光通信システムにおいて、システム上のチャネル内の非線形効果の影響を補償または低減するために、リンクの設計、受信器のデジタル信号処理(DSP)、伝送信号の符号化などの方式が採用されている。以下のそれらの方式について簡単に記載する。
【0004】
(1)リンク設計
チャネル内の非線形性は、リンク内に光位相複素共役部を追加することにより低減することができる。この方法により、一例として、伝送距離が5200kmから6400kmへ増加するケースが報告されている。(例えば、非特許文献2)
【0005】
(2)受信器のデジタル信号処理
このデジタル信号処理は、チャネル反転に基づく処理、非線形電気フィルタに基づく処理を含む。チャネル反転に基づく処理は、リンクを介して伝送された後の信号光の振幅および位相を含む電場信号を得るためにコヒーレント受信器を使用し、リンク構成に応じたリンクパラメータ(分散係数、非線形係数、減衰係数)に対して完全に逆の特性を有する仮想リンクを構築し、受信電場信号をその仮想リンクを通過させ、これによって信号の非線形による特性劣化を補償する。また、非線形電気フィルタに基づく処理は、非線形電気フィルタを使用して非線形によって特性劣化した信号を等化する。(例えば、非特許文献5)
【0006】
(3)送信側で伝送信号を予補償または符号化する方式
この方式は、チャネル反転に基づく予補償方式、符号化方式、新しい変調方式を含む。チャネル反転に基づく予補償方式は、仮想リンクを通過した後のある長さ(様々なビットの組み合せ)を持った伝送系列の信号を計算で取得し、ルックアップテーブルからの情報系列に応じて対応する予補償波形を送信する。符号化方式は、冗長性を増やすことによりチャネル内の非線形効果の下でワーストビット系列の発生回数を減らす。新しい変調方式は、OOK(オンオフキーイング)振幅変調信号について、ビット系列の各シンボルの位相に応じてチャネル内の4波混合の影響を効果的に削減する。(例えば、非特許文献7〜9)
【0007】
ところが、本件出願の出願人は、上述の従来技術には、以下の欠点があることを見出した。
(1)リンク設計方式は、すでに敷設されている光ファイバリンクに適用することはできない。また、光位相複素共役技術に対応する商業的に成熟したモジュールは存在していない。
【0008】
(2)受信器がチャネル反転に基づく方式を採用する場合には、スプリットステップフーリエアルゴリズムを用いることで非線形シュレーディンガー方程式を解く必要がある。システムの複雑さは、ステップのサイズに依存する。例えば、ステップが光ファイバのスパンの3分の1よりも小さいときは、補償の性能が良好であるが、計算の複雑さは非常に高くなってしまう。一方、ステップが光ファイバのスパンの長さと同じ程度であるときは、この方式において対象とするリンクの分散を補償するために必要な乗算回数は、線形フィルタの場合の100倍以上となる。このため、この方式は、既存のDSP技術にとって大きな課題となる。(例えば、非特許文献3、4)
【0009】
(3)受信側が非線形フィルタに基づく方式は、チャネル反転に基づく方式と比較すると、計算の複雑さが少なくなることはなく(或いは、多くなる)、また、処理後の信号は歪(非線形、周波数差、レーザ線幅)を受けた後の信号なので、アルゴリズムの収束が困難になることがある。
【0010】
(4)送信側がチャネル反転に基づく予補償方式においては、例えば光分散補償を行わないシステムのように、システムのメモリ長が比較的長いときには、相互作用が生じるシンボルの数は100に達するので、ルックアップテーブルのサイズは2100または4100(変調方式に依存する)となる。したがって、この方式を実現することは困難である。
【0011】
(5)送信側で符号化を行う方式においては、情報レートについて妥協を要する。
なお、下記の特許文献1および非特許文献1〜10の内容は、参照により、本出願に取り込まれるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国特許公開CN1795627A
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】IEEE PTL Vol.12, No.4, 2000,Antonio Mecozzi et. al.
【非特許文献2】OFC2004, PDP32,Chowdhury
【非特許文献3】Journal of Lightwave Technology, 2008,Kahn et. al.
【非特許文献4】IEEE Photonics Journal Volume 1, Number 2, August 2009; F. Yaman et. al.
【非特許文献5】JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL.25, NO.4, APRIL 2007,Chunmin Xia
【非特許文献6】ECOC, 2009,Yan Gao
【非特許文献7】IEEE Photonics Technology Lett., Vol.18, 2006, pp.403-405,K.Roberts et. al.
【非特許文献8】Journal of Lightwave Technology, 2006,Vladimir Pechenkin et. al.
【非特許文献9】IEEE Photonics Technology Letters 2007,Ivan B. Djordjevic
【非特許文献10】Suppression of the Nonlinear Kerr Effect in Optical Fiber Communication Systems by Dispersion Management and Optical Phase Conjugation, a doctorial dissertation of Tsinghua University, November, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の実施形態に係わる課題は、伝送リンクにおける非線形効果により生成されるベクトル摂動を使用することで、送信側において元のシンボル情報系列を補償する非線形補償装置および送信器を提供し、単一偏波システムおよび偏波多重システムに適用可能であり、かつ任意の変調方式に実装可能であるように、受信側において複雑さの低い計算で所望の特性劣化のない信号を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様によれば、非線形補償装置は、通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報取得部と、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る摂動量計算部と、前記情報取得部によって取得された現在時刻におけるシンボル情報系列と、前記摂動量計算部により得られた摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る情報補償部と、を有する。
【0016】
また、送信器の非線形性を補償する方法は、通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得し、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を取得し、前記取得されたシンボル情報系列と前記取得された摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る。
【0017】
本発明の他の態様によれば、送信器は、入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報系列取得部と、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、前記情報系列取得部により取得される現在時刻におけるパルスのシンボル情報系列の非線形性を低減する、上述の非線形補償装置を含む非線形補償部と、前記非線形補償部により得られる非線形性が低減されたシンボル情報系列に基づいてパルスを整形して、各パルスの波形を取得するパルス整形部と、前記パルス整形部から出力される各パルスの波形を送信する信号送信部と、を有する。
【0018】
また、送信器が信号を送信するときに、以下の方法を使用してもよい。すなわち、送信器が信号を送信する方法は、入力パルス信号のシンボル情報系列を取得し、上述の非線形補償方法を利用して、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、現在時刻における前記パルスのシンボル情報系列の非線形性を低減し、前記非線形性が低減されたシンボル情報系列に基づいてパルスを整形して、各パルスの波形を取得し、前記整形されたパルスの波形を送信する。
【0019】
上述の態様によれば、非線形補償装置は、通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を補正するために、現在時刻に対して複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和により得られる摂動項を利用する。したがって、その非線形補償装置を送信器において使用すれば、以下の利点が得られる。
(1)受信器において理想的な特性劣化のない信号が得られる
(2)計算の複雑さが低い
(3)単一偏波システムおよび偏波多重システムに適用可能
(4)任意の変調方式に実装可能
【0020】
本発明の実施形態について、本発明の原理および適用方法を含めて、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の精神および文言の範囲内で、本発明の実施形態に対して変形物/変形方法、置換物/置換方法、均等物/均等方法を提供してもよい。
【0021】
1つの実施形態について記載および/または示した特徴は、同じまたは類似の方法で1または複数の他の実施形態において使用してもよく、1または複数の他の実施形態の特徴と組み合わせてもよく、1または複数の他の実施形態の特徴と置き換えてもよい。
【0022】
本出願において使用される「有する」「含む」「備える」という語は、特徴、要素、セット、ステップ、部品等が存在することを意味し、1または複数の他の特徴、要素、セット、ステップ、部品等の存在または追加を排除するものではない。
【発明の効果】
【0023】
上述の態様によれば、通信システムの非線形補償を実現するための構成または方法の複雑さが低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】光通信システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の非線形補償装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の非線形補償方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態の非線形補償装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の非線形補償装置が備える摂動量計算部の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の非線形補償を実行する非線形補償装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態の送信器の構成を示す図である。
【図8】QPSK変調において異なる非線形補償方式について得られる特性の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の様々な実施形態について図面を参照しながら記載する。これらの実施形態は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。当業者が本発明の原理および実施形態を容易に理解できるようにするために、光通信システムを一例として取り上げて本発明の実施形態について記載する。ただし、本発明の実施形態は、非線形による特性劣化が存在するすべての通信システムに適用可能である。
【0026】
図1は、光通信システムの一例を示す図であり、送信器により送信される信号は、伝送リンク中のデバイス(光ファイバ、光アンプ、分散補償光ファイバなど)を通過した後、受信器に到着する。本発明の実施形態では、特別に変形させた信号を送信器側から送信して、その信号がファイバ伝送の非線形効果を受けた後に、理想的な特性劣化のない信号が受信器において得られるように、入力パルス信号のシンボル情報系列は、非線形補償装置により送信器側で補償される。
【0027】
図1に示すシステムにおいて、送信側で入力パルス信号を補償するためには、まず、本発明を実行する処理においてチャネル内の非線形モデルが構築され、そして、その非線形モデルを利用して入力パルス信号が補償される。
【0028】
一般に、スペクトル効率を最大限まで高めるために、偏波多重がしばしば利用される。よって、以下では、チャネル内の非線形モデルを得る処理について、一例として偏波多重を取り上げて記載する。
【0029】
まず、ベクトル信号について、伝送ファイバは、Manakov方程式によれば、下記A式に示すようにモデル化される。
【0030】
【数1】

H(t,z)およびuV(t,z)は、それぞれ、水平方向および垂直方向の偏波状態における信号の電場成分を表す。α(z)、β2(z)、γ(z)は、それぞれ、伝送の距離方向におけるファイバリンクの減衰係数、分散係数、非線形係数の分布を表す。
【0031】
次に、送信器により生成される信号はしばしば光パルスで構成されるので、送信器側における電場成分(または、送信端における電場)は、下記B式で表してもよい。
【0032】
【数2】


は、それぞれ、水平方向および垂直方向の偏波状態におけるk番目のパルスのシンボル情報を表す。g(t)は、各パルスの波形を表す。
最後に、B式の信号がA式に与えられる。ここで、入力パワーがさほど大きくない(すなわち、ファイバリンクの非線形性がさほど強くない)ときは、摂動理論でA式を解いてもよく、この場合、下記C式が得られる。
【0033】
【数3】

【0034】
C式において、受信器側でのk番目のパルスサンプリング時刻における電場値は、送信端におけるk番目のパルスの電場値および摂動量から構成される。摂動量は、複数の相互作用項の重み付け和である。各項は、異なる時刻における送信パルスのシンボル情報の積である。摂動理論でA式を解く処理においては、高次項を無視して低次項を利用して計算が行われる。よって、C式においては、例えば、k番目のパルスサンプリング時刻に対して、3つの異なる時刻(第m+k時刻、第n+k時刻、第m+n+k時刻)におけるパルス相互作用の重み付け和のみが、計算のために必要となる。ただし、計算処理で高次項も考慮する場合には、k番目のパルスサンプリング時刻に対して、3よりも多くの異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和が、計算のために必要となる。以下では、一例として、3つの異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和について記載する。なお、3よりも多くのパルスが存在する構成または方法は、3つのパルスが存在する構成または方法と類似するので、詳しい記載は省略する。
【0035】
C式から分かるように、現在の偏波状態における摂動項は、2つの部分を含んでいる。一方は、ある偏波状態(以下、当該偏波状態)から生成され、他方は、直交偏波状態から生成される。例えば、水平方向偏波状態については、当該偏波状態から生成される部分は

であり、直交偏波状態から生成される部分は

である。なお、垂直方向偏波状態についての摂動項は、水平方向偏波状態と類似しているので、記載を省略する。
【0036】
Manakov方程式(A式)においては、上記2つの偏波状態のシンボル情報は互いに対称なので、水平方向および垂直方向の偏波状態における摂動項の係数は、最終的に互いに一致することになる。ここで、これらの係数は、リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対する相互作用パルスの位置(m,n)のみに関係または依存する。
【0037】
上述の非線形モデルによれば、本発明の実施形態の予補償方法の基本的なアイデアは、送信側において特別に変形させた信号を送信し、その信号がファイバ伝送の非線形効果を受けた後、受信側で理想的な非線形特性劣化の小さい信号を得るものである。ここで、チャネルの線形損傷は、他の方法で補償されているものとする。
【0038】
以下、本発明の実施形態の非線形補償装置および送信器について、一例として、図1に示す光通信システムおよびその通信システムに基づく非線形モデルを取り上げて詳しく記載する。
【0039】
図2は、本発明の第1の実施形態の非線形補償装置の構成を示す図である。図2に示すように、非線形補償装置は、情報取得部201、摂動量計算部202、情報補償部203を有する。情報取得部201は、送信側において入力されるパルス情報のシンボル情報系列を取得するために使用される。摂動量計算部202は、現在時刻に対して複数の項の複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和を計算して、ある長さを有する伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る、ために使用される。情報補償部203は、送信側が補償されたシンボル情報系列による信号を送信するように、摂動量計算部202により得られた摂動量を利用することで、情報取得部201により取得された現在時刻におけるパルスのシンボル情報系列を補償して、現在時刻における補償されたシンボル情報系列を得る、ために使用される。
【0040】
なお、図2に示す情報取得部201、摂動量計算部202、情報補償部203は、たとえば、デジタル信号処理器(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または大規模集積回路(LSI)を用いて実現してもよい。
【0041】
上述のように、実施形態に係る非線形補償装置は、送信側において入力されるパルス信号のシンボル情報を補償できる。よって、この非線形補償装置が送信器に適用されると、その送信器は、補償されたシンボル情報に対して波形整形および変調を行い、その信号を送信することができる。そうすると、信号がファイバ伝送リンクの非線形効果を受けた後に、受信器において理想的な非線形特性劣化の小さい信号が得られる。また、非線形補償装置は、単一偏波システムおよび偏波多重システムの双方に容易に適用でき、かつ任意の変調方式に実装可能な計算方法で、複数の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することにより、元の情報系列を補償する。
【0042】
この実施形態では、上記非線形補償装置を用いて送信側においてパルスのシンボル情報を補償する場合、図3に示すフローチャートを使用してもよい。図3に示すように、実施形態の非線形補償方法は、下記のステップを有する。
【0043】
ステップ301において、情報取得部201により、送信側において入力されるパルス信号のシンボル情報系列を取得する。ステップ302において、摂動量計算部202により、現在時刻に対して複数の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算し、ある長さの伝送リンクにおいて現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る。ステップ303において、送信側が、補償されたシンボル情報系列による信号を送信するように、情報補償部203により、摂動量計算部202により得られる摂動量を用いて、情報取得部201により取得された現在時刻におけるパルスのシンボル情報系列を補償して、現在時刻における補償されたシンボル情報系列を取得する。
【0044】
この実施形態では、情報取得部201により取得されたシンボル情報系列は、補償前のシンボル情報である。ここで、シンボル情報は、通信システムにおいて採用されている変調方式に係わり、変調方式が異なると、シンボル情報も異なる。例えば、OOK変調ではシンボル情報系列は0,1であり、BPSK変調ではシンボル情報系列は−1,+1であり、QPSK変調ではシンボル情報系列は+1,+j,−1,−jである。
【0045】
この実施形態では、摂動量計算部202は、現在時刻に対して少なくとも3つの異なる時刻のパルス相互作用の重み付け和を計算する構成または処理に特に適用可能である。
この実施形態では、情報補償部203は、情報取得部201により取得されたシンボル情報系列から摂動量計算部202により得られる摂動量を引き算することにより、現在時刻における補償されたシンボル情報を得る構成または処理に特に適用可能である。
【0046】
図4は、本発明の第2の実施形態の非線形補償装置の構成を示す図である。図4に示すように、非線形補償装置は、情報取得部401、摂動量計算部402、情報補償部403を有する。これらの機能は、第1の実施形態の対応する要素の機能と類似しているので、記載を省略する。
【0047】
第2の実施形態では、摂動量計算部402は、摂動量を計算するために、下記の要素を使用してもよい。
図5は、本発明の第2の実施形態の摂動量計算部402の構成を示す図である。図5に示すように、摂動量計算部402は、第1の情報取得部501、第1の計算部502、第2の計算部503を有する。
【0048】
第1の情報取得部501は、現在時刻に対して複数の異なる時刻のそれぞれにおけるパルスのシンボル情報を取得するために使用される。第1の計算部502は、現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスのシンボル情報および予め得られている各項に対応する重み係数を利用することで、現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルス相互作用の重み付け和を計算し、各項の重み付け値に基づいて複数の項の重み付け値の和を計算する、ために使用される。第2の計算部503は、第1の計算部502により得られる重み付け値の和と第1の所定値との積を計算して、ある長さの伝送リンク上で現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る。第1の所定値は、信号パワーおよび伝送リンクの非線形係数に関係または依存する。
【0049】
以下では、一例として、k番目のパルスサンプリング時刻(第k時刻)に対して、3つの異なる時刻(第m+k時刻、第n+k時刻、第m+n+k時刻)におけるパルス相互作用の重み付け和を計算する場合について記載する。なお、現在時刻に対して、3つの異なる時刻における複数の項のパルス相互作用の重み付け和を計算するための「項の数」は、所定の値(m,n)により決定される。
【0050】
よって、摂動量計算部402は、ある長さの伝送リンク上で現在時刻(例えば、第k時刻)における非線形効果により生じる摂動量を得るために、現在時刻に対して3つの異なる時刻(例えば、第m+k時刻、第n+k時刻、第m+n+k時刻)のパルス相互作用の重み付け和を計算する構成または処理に特に適用可能である。
【0051】
この実施形態では、各項に対応する重み係数は、重み付け値を計算する際に摂動量計算部402が備える第1の計算部502により使用されるように、予め取得しておいてもよい。よって、図4に示すように、非線形補償装置は、シミュレーションにより各項に対応する重み係数を取得する、または測定により各項に対応する重み係数を取得する、または伝送リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対する異なる時刻における相互作用パルスの位置に基づいて各項に対応する重み係数を取得する、係数取得部404をさらに有する。
【0052】
シミュレーションまたは測定に基づいて重み係数が得られるときは、シミュレーションまたは測定中に異なる送信信号が用意され、高い精度で、受信信号に基づいて重み係数の値が導出される。
【0053】
係数取得部404が、伝送リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対応する異なる時刻における相互作用パルスの位置に基づいて各項の重み係数を取得するときは、重み係数を計算するために、係数取得部404は下記の数式を使用してもよい。
【0054】
【数4】

p(z)は、伝送リンク上で送信側からzだけ離れた位置の信号パワーを表す。s(z)は、伝送リンク上で送信側からzだけ離れた位置における累積された総分散値を表す。τは、パルスの半値幅を表す。Tは、パルス間隔を表す。γ(z)は、伝送リンク上で送信側からzだけ離れた位置の非線形係数を表す。
【0055】
現在時刻が第k時刻であれば、現在時刻に対する3つの異なる時刻は、第m+k時刻、第n+k時刻、第m+n+k時刻である。また、複数の項の(m,n)値は、予め決められている。ここで、各(m,n)値は、異なる重み係数C(m,n,z=L)に対応する。m、nは、例えば、負の無限大から正の無限大までの間の任意の整数値であり、現在時刻(第k時刻)の前および後の時刻における値に関連する。
【0056】
(m,n)値が大きくなると、対応するC(m,n,z=L)は徐々に小さくなる。よって、要求された計算精度で、任意の(m,n)値に対して摂動量を計算することができる。この場合、m、nの値は、以下のようにして決定してもよい。すなわち、与えられたm、nに対して得られる係数C(m,n,z=L)の絶対値(すなわち、|C(m,n,z=L)|)が、第2の所定値以上であれば、m、nが採用され、そうでないときは、m、nは採用されない。第2の所定値は、すべての係数の最大絶対値の比例計数に基づいて決定してもよい。例えば、正規化された係数Cは、下式を満足するm、nのすべての組合せを採用し得る。
【0057】
【数5】

【0058】
伝送リンク上に分散補償モジュールが存在せず、信号伝送中の減衰が無視できる程度であり、分散係数および非線形係数が伝送距離に応じて変化しないときは、係数取得部404は、下式を用いて重み係数を計算してもよい。
【0059】
【数6】

γは、非線形係数を表す。p0は、送信側における信号パワーを表す。β2は、分散係数を表す。expintは、指数積分関数を表し、下記のように表される。
【0060】
【数7】

【0061】
図4に示すように、非線形補償装置は、重み付け値を計算するために摂動量計算部402が備える第1の計算部502により使用される重み係数を格納する格納部405をさらに有するようにしてもよい。格納部405は、重み係数を計算するためのチャネルパラメータ、例えば、非線形係数γ、分散係数β2、伝送リンク長Lなど、をさらに格納してもよい。
【0062】
なお、図4に示す情報取得部401、摂動量計算部402、情報補償部403、係数取得部404、格納部405は、例えば、デジタル信号処理器(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または大規模集積回路(LSI)を用いて実現してもよい。
【0063】
また、図5に示す第1の情報取得部501、第1の計算部502、第2の計算部503は、たとえば、デジタル信号処理器(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または大規模集積回路(LSI)を用いて実現してもよい。
【0064】
図6は、本発明の第2の実施形態の非線形補償を実行する非線形補償装置の動作を示すフローチャートである。図6に示すように、第2の実施形態の非線形補償方法は、下記のステップを有する。
【0065】
ステップ601において、チャネルパラメータ、例えば非線形係数γ、分散係数β2、伝送リンク長Lなど、を取得する。取得したチャネルパラメータは、例えば、格納部405に格納してもよい。
【0066】
ステップ602において、シミュレーション、測定、または上記(1)(2)式を利用した計算により、異なる時刻における各項のパルス相互作用に対応する重み係数を取得する。取得した重み係数は、例えば、格納部405に格納してもよい。
【0067】
ステップ603において、送信側において入力されるパルス信号のシンボル情報系列を取得する。
ステップ604において、シンボル情報および現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルスの重み係数を用いて重み付け値を計算し、各項の重み付け値を足し合わせ、重み付け値の和に第1の所定値を乗算して、ある長さの伝送リンク上で現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る。
【0068】
ステップ605において、送信側が、補償されたシンボル情報系列による信号を送信するように、摂動量を用いて元の情報系列を補償して現在時刻における補償されたシンボル情報系列を得る。
【0069】
上述のように、実施形態の非線形補償装置は、送信側の入力パルス信号のシンボル情報を補償する。そして、この非線形補償装置が送信器に適用される場合は、その送信器は、補償されたシンボル情報に対して波形整形および変調を行い、その信号を送信してもよい。そうすると、信号がファイバ伝送の非線形効果を受けた後に、受信器において理想的な特性劣化のない信号が得られる。また、実施形態の非線形補償装置は、単一偏波システムおよび偏波多重システムの双方に容易に適用でき、かつ任意の変調方式に実装可能な計算方法で、複数の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することにより、元の情報系列を補償する。
【0070】
第2の実施形態において、非線形補償装置は、単一偏波信号および偏波多重信号の双方に適用可能である。以下では、単一偏波システムおよび偏波多重システムをそれぞれ取り上げて、第k時刻を現在時刻としたときに、3つの異なる時刻として第m+k時刻、第n+k時刻、第m+n+k時刻を採用するケースについて記載する。
【0071】
(m,n)値は、予め決定しておいてもよい。各項についての異なる(m,n)値は、異なる重み係数C(m,n,z=L)に対応する。
m、nは、例えば、負の無限大から正の無限大までの間の任意の整数値であり、現在時刻(第k時刻)の前および後の時刻の値に関連する。また、m、nの値は、以下のようにして決定してもよい。すなわち、たとえば、与えられたm、nに対して得られる係数C(m,n,z=L)の絶対値が、第2の所定値以上であるときは、m、nが採用され、そうでないときは、m、nは採用されない。一例としては、m、nは、下式を満たすように決定される。

すなわち、ここでは、係数Cが正規化されている場合、第2の所定値は0.01である。
【0072】
各項についての異なる(m,n)値に対応する重み係数C(m,n,z=L)は、シミュレーションまたは測定により予め取得してもよいし、伝送リンクの構成および相互作用パルスの相対的な位置に応じて取得してもよい。重み係数Cを得る方法は、第1の実施形態と類似しているので、記載は省略する。
【0073】
<例1:単一偏波信号>
入力信号が単一偏波信号であるときには、第1の情報取得部501は、各項についての異なる(m,n)値に基づいて、対応するパルスのシンボル情報(たとえば、Am+k、An+k、Am+n+k)を取得する。
【0074】
第1の計算部502は、下記(3)式を利用して、異なる時刻における複数の項のパルス相互作用の重み付け値の和を計算する。
【0075】
【数8】


は、各項の重み付け値を表す。Δ1は、第k時刻における複数の項についての重み付け値の和を表す。C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表す。z=Lは、伝送リンクの長さLを表す。Am+kおよびAn+kは、それぞれ、第m+k時刻および第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表す。(Am+n+k)*は、第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す。
【0076】
第2の計算部503は、下記(4)式を利用して、ある長さを有する伝送リンク上の現在時刻の非線形効果により生じる摂動量を取得する。
Δk=ξ1×Δ1 ・・・(4)
Δkは、第k時刻における摂動量を表す。ξ1は、第1の所定値を表す。この実施形態では、第1の所定値は、信号パワーとリンクの非線形係数γの積である。
【0077】
摂動量計算部402が摂動量を取得した後、情報補償部403は、下記(5)式を利用して、現在時刻における補償されたシンボル情報系列を取得する。
k=Ak−Δk ・・・(5)
kは、第k時刻におけるパルスの補償されたシンボル情報系列を表す。Akは、第k時刻におけるパルスのシンボル情報系列を表す。
【0078】
上述のように、異なる時刻におけるパルスのシンボル情報は、変調方式に依存する。また、第1の計算部502が複数の項のそれぞれについてのシンボル情報の積を計算するとき、すなわち例えば

を計算するとき、乗算は論理演算を通して行われる。したがって、乗算回数は、相互作用項の数である。なお、この話は、偏波多重状態においても同様である。
【0079】
システムの変調方式が位相変調(例えば、BPSK、QPSK)であるときは、BPSK変調のシンボル情報系列が−1、+1であり、QPSK変調のシンボル情報系列が+1、+j、−1、−jであるので、シンボル情報と重み係数との乗算も論理演算を通して行われ、下記に示す通りである。
【0080】
【数9】

このため、現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルス間の相互作用の計算は、乗算を必要とすることなく、加算により実現される。したがって、実施形態の非線形補償装置は、計算を大幅に単純化することが可能であり、任意の変調方式に適用可能である。
【0081】
<例2:偏波多重信号>
入力信号が偏波多重信号であるときには、第1の計算部502により計算される各項についての重み付け値は、当該偏波状態および直交偏波状態に関係する。
【0082】
第1の情報取得部501は、各項についての異なる(m,n)値に基づいて、対応するパルスのシンボル情報を取得する。シンボル情報は、水平方向および垂直方向の偏波状態におけるシンボル情報(例えば、水平方向の偏波状態におけるシンボル情報

および垂直方向の偏波状態におけるシンボル情報

)を含む。
【0083】
第1の計算部502は、下記(5)(6)式を利用して、異なる時刻における複数の項のパルス相互作用の重み付け値の和を計算する。ここで、重み付け値の和は、水平方向および垂直方向の偏波状態における重み付け値の和を含む。
【0084】
【数10】

各項についての重み付け値は、当該偏波状態および直交偏波状態に関係する。
【0085】
ΔHは、第k時刻での水平方向の偏波状態における複数の項についての重み付け値の和を表す。ΔVは、第k時刻での垂直方向の偏波状態における複数の項についての重み付け値の和を表す。

は、水平方向の偏波状態における各項についての重み付け値を表す。

は、垂直方向の偏波状態における各項についての重み付け値を表す。
【0086】
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表す。z=Lは、伝送リンクにおける長さLを表す。

は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態において、第m+k時刻でのシンボル情報を表す。

は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態において、第n+k時刻でのシンボル情報を表す。

は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態において、第m+n+k時刻でのシンボル情報の複素共役を表す。
【0087】
第2の計算部503は、下記(7)(8)式を利用して、ある長さを有する伝送リンク上の現在時刻の非線形効果により生じる摂動量を取得する。摂動量は、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態における摂動量を含む。
【0088】
【数11】


は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態における第k時刻での摂動量を表す。ΔHおよびΔVは、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態における第k時刻での複数の項についての重み付け値の和を表す。ξ2は、第1の所定値を表す。
【0089】
摂動量計算部402が摂動量を取得した後、情報補償部403は、下記(9)(10)式を利用して、現在時刻における補償されたシンボル情報系列を取得する。
【0090】
【数12】


は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態における第k時刻でのパルスの補償されたシンボル情報系列を表す。

は、それぞれ、水平方向の偏波状態および垂直方向の偏波状態における第k時刻でのパルスのシンボル情報系列を表す。
【0091】
上述のように、第1の計算部502により計算される各項についてのシンボル情報間の乗算は、論理演算を通して行うことができる。ここで、入力信号が単一偏波信号である場合との差異は、重み付け値が、当該偏波状態のみに関係するのではなく、直交偏波状態にも関係することである。
【0092】
システムの変調方式が位相変調(例えば、BPSK、QPSK)であるときは、BPSK変調のシンボル情報系列が−1、+1であり、QPSK変調のシンボル情報系列が+1、+j、−1、−jであるので、シンボル情報と重み係数との乗算も論理演算を通して行われ、下記に示す通りである。
【0093】
【数13】

【0094】
このように、現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルス間の相互作用の計算は、乗算を必要とすることなく、加算によって実現される。したがって、実施形態の非線形補償装置は、計算を大幅に単純化することが可能であり、任意の変調方式に適用可能である。
【0095】
上述のように、第2の実施形態の非線形補償装置は、入力パルス信号のシンボル情報を補償する。この非線形補償装置が送信器に適用される場合には、その送信器は、補償されたシンボル情報に対して波形整形および変調を行い、その信号を送信してもよい。そうすると、信号がファイバ伝送の非線形効果を受けた後に、受信器において理想的な特性劣化のない信号が得られる。また、実施形態の非線形補償装置は、複数の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することにより、元の情報系列を補償する。
【0096】
また、上述のように、特にBPSKおよびQPSKに対しては、摂動量は、乗算演算を必要とせずに、論理演算を通して取得することができる。したがって、実施形態の非線形補償装置は、計算を単純化することが可能であり、単一偏波システムおよび偏波多重システムの双方に適用可能であり、任意の変調方式に適用可能である。
【0097】
図7は、本発明の第3の実施形態の送信器の構成を示す図である。図7に示すように、第3の実施形態の送信器は、情報系列取得部701、非線形補償部702、パルス整形部703、信号送信部704を有する。
【0098】
非線形補償部702は、情報系列取得部701とパルス整形部703との間に設けられて、情報系列取得部701により取得された入力パルスのシンボル情報系列を補償する。非線形補償部702は、第1または第2の実施形態の非線形補償装置を使用することができるので、詳しい記載は省略する。また、情報系列取得部701、パルス整形部703、信号送信部704の機能は、公知技術と類似の構成または処理を利用することができるので、以下では簡単に記載する。
【0099】
情報系列取得部701は、入力パルス信号のシンボル情報系列を取得するために使用される。非線形補償部702は、現在時刻に対して複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、情報系列取得部701により取得されたシンボル情報系列を補償して、補償されたシンボル情報系列を得る、ために使用される。パルス整形部703は、非線形補償部702により得られる補償されたシンボル情報系列に対してパルス整形を行い、各パルスの波形を得る、ために使用される。そして、信号送信部704は、パルス整形部703から出力される各パルスの波形を受け取って、変調後の波形を送信する、ために使用される。
【0100】
上述の実施形態において、非線形補償装置は送信器に適用され、その送信器は、電場分散が予補償されたシステムを含む、任意の光通信システムに適用可能である。
よって、送信器は、不図示の分散補償部を有するようにしてもよい。分散補償を行うシステムにおいては、チャネル内の非線形性を予補償する装置は、例えば、分散予補償装置の前段に入力してもよい。また、異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値に対応する重み係数は、分散構成においてのみ考慮する必要がある分散予補償モジュールと共に、上述の(1)(2)式を利用して計算してもよい。
【0101】
なお、図7に示す情報系列取得部701、非線形補償部702、パルス整形部703、信号送信部704は、たとえば、デジタル信号処理器(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または大規模集積回路(LSI)を用いて実現してもよい。
【0102】
上述のように、送信器が信号を送信するときは、下記のステップを含むようにしてもよい。取得ステップは、入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する。補償ステップは、現在時刻に対して複数の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和に基づいて、取得したシンボル情報系列を補償して、補償されたシンボル情報系列を得る。ここで、上述した第1または第2の実施形態の非線形補償方法が適用される。波形整形ステップは、補償されたシンボル情報系列に対して波形整形を行い、各パルスの波形を得る。送信ステップは、変調された波形を送信する。また、非線形補償の後、特に詳しい記載はしないが、分散予補償を行ってもよい。
【0103】
図8は、QPSK変調において異なる非線形補償方式について得られる特性を示すグラフである。下記のテーブル1にシステムパラメータを記載する。
【0104】
【表1】

【0105】
図8に示すように、3つの異なる補償方法について異なる入力パワーにおいて性能の改善が得られる。Normalは、非線形補償を行っていない方法を表す。BP_Post-1は、逆方向伝送を利用した予補償方法を表す。PreD -10dB coefおよびPreD -30dB coefは、本発明の実施形態の予補償方法を表す。
【0106】
BP_Post-1は、補償のために逆方向伝送を利用するので、スパン毎に計算が行われる。また、BP_Post-1は、本発明の実施形態の予補償方法と比較すると、相互作用項の数が異なる。
【0107】
本発明の実施形態の予補償方法において、-10dBにおいては、項が正規化された後、最大値から10dB低いレベルまでのすべての項が考慮される。同様に、-30dBにおいては、より多くの項が考慮される。
【0108】
テーブル2は、3つの非線形補償方法についての性能および計算の複雑さを示す。ここで、PreD -10dB coefにおいては、逆方向伝送(BP_Post-1)と同じ性能(非線形耐力は、性能を1dB下げるときに、システムにより許容される最大入力パワー)が得られ、且つ、計算の複雑さが大幅に低くなる。
【0109】
PreD -30dB coefでは、より高い入力パワーが許容され、且つ、計算の複雑さは逆方向伝送(BP_Post-1)よりも低くなる。なお、システム(または、計算)の複雑さは、主に、乗算演算に依存する。そして、テーブル2に示すように、本発明の実施形態の非線形補償方法における乗算演算の回数はゼロであり、よって、計算が大幅に単純化される。
【0110】
【表2】

【0111】
上述したように、送信器は、入力パルス信号のシンボル情報を補償し、補償されたシンボル情報に対して波形整形および変調を行い、そしてその信号を送信する。そうすると、ファイバ伝送リンクの非線形効果を受けた後に、受信器において理想的な特性劣化のない信号が得られる。摂動量は、送信器により、特にBPSK変調およびQPSK変調に対して、乗算演算を必要とすることなく論理演算を通して得られる。したがって、実施形態の非線形補償装置は、計算方法を単純化でき、単一偏波システムおよび偏波多重システムに適用可能であり、任意の変調方式に適用可能である。
【0112】
本発明に係る装置および方法は、ハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せで実現してもよい。また、本発明は、論理部分によって実行されたときに、その論理部分に上述の装置またはその構成要素を実装させ、或いは上述の方法またはその中のステップを実装させるコンピュータプログラムにも係わる。さらに、本発明は、上述のコンピュータプログラムを格納する、ハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD、フラッシュメモリなどの格納媒体にも係わる。
【0113】
本発明は、いくつかの実施形態と関係づけて記載されているが、それらの記載は例示的なものであって本発明の保護範囲を限定しないことは、当業者には明らかである。また、当業者であれば、本発明の精神および原理から離れることなく様々な変形または変更を行うことは可能であり、そのような変形または変更も本発明の保護範囲に属する。
【0114】
上述の実施形態1〜3を含む本発明の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。なお、本発明は、以下の付記に限定されるものではない。
(付記1)
通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る摂動量計算部と、
前記情報取得部によって取得された現在時刻におけるシンボル情報系列と、前記摂動量計算部により得られた摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る情報補償部と、
を有する非線形補償装置。
(付記2)
前記摂動量計算部は、現在時刻に対して少なくとも3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和を計算する
ことを特徴とする付記1に記載の非線形補償装置。
(付記3)
前記摂動量計算部は、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のそれぞれについてのパルスのシンボル情報を取得する第1の情報取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスのシンボル情報および各項に対応する重み係数を利用することにより、現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスの相互作用の重み付け値を計算して、各項の重み付け値に基づいて複数の項の重み付け値の和を計算する第1の計算部と、
前記第1の計算部により得られる重み付け値の和と、信号パワーおよび伝送リンクの非線形係数に関係する第1の所定値との積を計算して、前記伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る第2の計算部と、を有する、
ことを特徴とする付記1に記載の非線形補償装置。
(付記4)
現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するときに、入力信号が単一偏波信号である場合には、
前記第1の計算部は、下式を利用して複数の項の重み付け値の和を計算し、
【数14】

前記第2の計算部は、Δk=ξ×Δ1を利用して伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を取得し、
Δkは、第k時刻における摂動量を表し、Δ1は、第k時刻における複数の項の重み付け値の和を表し、ξは、前記第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、
m+kおよびAn+kは、それぞれ、第m+k時刻および第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする付記3に記載の非線形補償装置。
(付記5)
入力信号が偏波多重信号であるときに、前記第1の計算部により計算される各項の重み付け値は、第1の偏波状態および前記第1偏波状態に直交する第2の偏波状態に関係する
ことを特徴とする付記3に記載の非線形補償装置。
(付記6)
現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するときに、
前記第1の計算部は、下式を利用して、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、複数の項の重み付け値の和を計算し、
【数15】

前記第2の計算部は、下式を利用して、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得るものであり、
【数16】


は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における摂動量を表し、ΔHおよびΔVは、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における複数の項についての重み付け値の和を表し、ξは、第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方の偏波状態において第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする付記5に記載の非線形補償装置。
(付記7)
シミュレーションまたは測定により、或いは、前記伝送リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対する異なる時刻におけるパルスの相互作用の位置に基づいて、前記重み係数を取得する係数取得部をさらに有する
ことを特徴とする付記4または6に記載の非線形補償装置。
(付記8)
前記係数取得部は、
下式を利用して前記重み係数を計算するか、
【数17】

p(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における信号パワーを表し、s(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における累積された総分散値を表し、τは、前記パルスの半値幅を表し、Tは、前記パルスの間隔を表し、γ(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における非線形係数を表し、
或いは、前記伝送リンクの減衰が無視でき、前記伝送リンク上にオンライン分散補償モジュールが存在せず、分散係数および非線形係数が伝送距離に応じて変化しないときは、下式を利用して前記重み係数を計算するものであり、
【数18】

γは、前記非線形係数を表し、p0は、送信側における信号パワーを表し、β2は、前記分散係数を表し、expintは、指数積分関数を表す
ことを特徴とする付記7に記載の非線形補償装置。
(付記9)
前記パルス信号のシンボル情報は、変調方式に関係し、
前記第1の計算部は、現在時刻に対する複数の異なる時刻における各項のシンボル情報の積の計算に論理演算を採用し、
または、前記変調方式が位相変調であるときは、前記第1の計算部は、前記シンボル情報と前記重み係数との積の計算に論理演算を採用し、
或いは、前記変調方式が位相変調であるときは、現在時刻に対する複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用が加算により実現される
ことを特徴とする付記3に記載の非線形補償装置。
(付記10)
入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報系列取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、前記情報系列取得部により取得される現在時刻におけるパルスのシンボル情報系列の非線形性を低減する、付記1〜9のいずれか1つに記載の非線形補償装置を含む非線形補償部と、
前記非線形補償部により得られる非線形性が低減されたシンボル情報系列に基づいてパルスを整形して、各パルスの波形を取得するパルス整形部と、
前記パルス整形部から出力される各パルスの波形を送信する信号送信部と、
を有する送信器。
(付記11)
通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得し、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を取得し、
前記取得されたシンボル情報系列と前記取得された摂動量との差分に基づき、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る、
ことを特徴とする非線形補償方法。
(付記12)
前記重み付け和の計算は、現在時刻に対して少なくとも3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和を計算する処理を含む
ことを特徴とする付記11に記載の非線形補償方法。
(付記13)
前記摂動量を得るための前記重み付け和の計算は、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のそれぞれについてのパルスのシンボル情報を取得する処理と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスのシンボル情報および各項に対応する重み係数を利用することにより、現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスの相互作用の重み付け値を計算して、各項の重み付け値に基づいて複数の項の重み付け値の和を計算する処理と、
前記重み付け値の和と信号パワーおよび伝送リンクの非線形係数に関係する第1の所定値との積を計算して、前記伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る処理と、を含む、
ことを特徴とする付記11に記載の非線形補償方法。
(付記14)
入力信号が単一偏波信号であるときに、
現在時刻に対する複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するために、下式を使用し、
【数19】

伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得るために、Δk=ξ×Δ1を使用し、
Δkは、第k時刻における摂動量を表し、Δ1は、第k時刻における複数の項の重み付け値の和を表し、ξは、前記第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、
m+kおよびAn+kは、それぞれ、第m+k時刻および第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする付記13に記載の非線形補償方法。
(付記15)
入力信号が偏波多重信号であるときに、前記計算された各項の重み付け値は、第1の偏波状態および前記第1偏波状態に直交する第2の偏波状態に関係する
ことを特徴とする付記13に記載の非線形補償方法。
(付記16)
水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するために、下式を使用し、
【数20】

水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得るために、下式を使用し、
【数21】


は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における摂動量を表し、ΔHおよびΔVは、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における複数の項についての重み付け値の和を表し、ξは、第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方の偏波状態において第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする付記15に記載の非線形補償方法。
(付記17)
シミュレーションまたは測定により、或いは、前記伝送リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対する異なる時刻におけるパルスの相互作用の位置に基づいて、前記重み係数を取得する処理をさらに有する
ことを特徴とする付記14または16に記載の非線形補償方法。
(付記18)
下式を利用して前記重み係数を計算するか、
【数22】

p(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における信号パワーを表し、s(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における累積された総分散値を表し、τは、前記パルスの半値幅を表し、Tは、前記パルスの間隔を表し、γ(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における非線形係数を表し、
或いは、前記伝送リンクの減衰が無視でき、前記伝送リンク上にオンライン分散補償モジュールが存在せず、分散係数および非線形係数が伝送距離に応じて変化しないときは、下式を利用して前記重み係数を計算するものであり、
【数23】

γは、前記非線形係数を表し、p0は、送信側における信号パワーを表し、β2は、前記分散係数を表し、expintは、指数積分関数を表す
ことを特徴とする付記17に記載の非線形補償方法。
(付記19)
前記パルス信号のシンボル情報は、変調方式に関係し、
現在時刻に対する複数の異なる時刻における各項のシンボル情報の乗算は、論理演算により行われ、
または、前記変調方式が位相変調であるときは、前記シンボル情報と前記重み係数との乗算は、論理演算により行われ、
或いは、前記変調方式が位相変調であるときは、現在時刻に対する複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用が加算により行われる
ことを特徴とする付記13に記載の非線形補償方法。
(付記20)
入力パルス信号のシンボル情報系列を取得し、
付記11〜19のいずれか1つに記載の非線形補償方法を利用して、現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、現在時刻における前記パルスのシンボル情報系列の非線形性を低減し、
前記非線形性が低減されたシンボル情報系列に基づいてパルスを整形して、各パルスの波形を取得し、
前記整形されたパルスの波形を送信する、
ことを特徴とする信号送信方法。
【符号の説明】
【0115】
201、401 情報取得部
202、402 摂動量計算部
203、403情報取得部
404 係数取得部
405 格納部
501 第1の情報取得部
502 第1の計算部
503 第2の計算部
701 情報系列取得部
702 非線形補償部
703 パルス整形部
704 信号送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る摂動量計算部と、
前記情報取得部によって取得された現在時刻におけるシンボル情報系列と、前記摂動量計算部により得られた摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る情報補償部と、
を有する非線形補償装置。
【請求項2】
前記摂動量計算部は、現在時刻に対して少なくとも3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け和を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の非線形補償装置。
【請求項3】
前記摂動量計算部は、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のそれぞれについてのパルスのシンボル情報を取得する第1の情報取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスのシンボル情報および各項に対応する重み係数を利用することにより、現在時刻に対して複数の異なる時刻における各項のパルスの相互作用の重み付け値を計算して、各項の重み付け値に基づいて複数の項の重み付け値の和を計算する第1の計算部と、
前記第1の計算部により得られる重み付け値の和と、信号パワーおよび伝送リンクの非線形係数に関係する第1の所定値との積を計算して、前記伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得る第2の計算部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非線形補償装置。
【請求項4】
現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するときに、入力信号が単一偏波信号である場合には、
前記第1の計算部は、下式を利用して複数の項の重み付け値の和を計算し、
【数24】

前記第2の計算部は、Δk=ξ×Δ1を利用して伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を取得し、
Δkは、第k時刻における摂動量を表し、Δ1は、第k時刻における複数の項の重み付け値の和を表し、ξは、前記第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、
m+kおよびAn+kは、それぞれ、第m+k時刻および第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする請求項3に記載の非線形補償装置。
【請求項5】
入力信号が偏波多重信号であるときに、前記第1の計算部により計算される各項の重み付け値は、第1の偏波状態および前記第1偏波状態に直交する第2の偏波状態に関係する
ことを特徴とする請求項3に記載の非線形補償装置。
【請求項6】
現在時刻に対する3つの異なる時刻におけるパルスの相互作用の重み付け値の和を計算するときに、
前記第1の計算部は、下式を利用して、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、複数の項の重み付け値の和を計算し、
【数25】

前記第2の計算部は、下式を利用して、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態においてそれぞれ、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を得るものであり、
【数26】


は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における摂動量を表し、ΔHおよびΔVは、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第k時刻における複数の項についての重み付け値の和を表し、ξは、第1の所定値を表し、
C(m,n,z=L)は、各項についての重み係数を表し、mおよびnは、任意の値であるか、mおよびnに基づいて得られる前記重み係数の絶対値が第2の所定値以上になるように決定され、z=Lは、前記伝送リンクの長さLを表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方の偏波状態において第n+k時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、

は、それぞれ、水平方向偏波状態および垂直方向偏波状態において第m+n+k時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す
ことを特徴とする請求項5に記載の非線形補償装置。
【請求項7】
シミュレーションまたは測定により、或いは、前記伝送リンクの構成および現在時刻におけるパルスの位置に対する異なる時刻におけるパルスの相互作用の位置に基づいて、前記重み係数を取得する係数取得部をさらに有する
ことを特徴とする請求項4または6に記載の非線形補償装置。
【請求項8】
前記係数取得部は、
下式を利用して前記重み係数を計算するか、
【数27】

p(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における信号パワーを表し、s(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における累積された総分散値を表し、τは、前記パルスの半値幅を表し、Tは、前記パルスの間隔を表し、γ(z)は、前記伝送リンク上の前記送信側からzだけ離れた位置における非線形係数を表し、
或いは、前記伝送リンクの減衰が無視でき、前記伝送リンク上にオンライン分散補償モジュールが存在せず、分散係数および非線形係数が伝送距離に応じて変化しないときは、下式を利用して前記重み係数を計算するものであり、
【数28】

γは、前記非線形係数を表し、p0は、送信側における信号パワーを表し、β2は、前記分散係数を表し、expintは、指数積分関数を表す
ことを特徴とする請求項7に記載の非線形補償装置。
【請求項9】
前記パルス信号のシンボル情報は、変調方式に関係し、
前記第1の計算部は、現在時刻に対する複数の異なる時刻における各項のシンボル情報の積の計算に論理演算を採用し、
または、前記変調方式が位相変調であるときは、前記第1の計算部は、前記シンボル情報と前記重み係数との積の計算に論理演算を採用し、
或いは、前記変調方式が位相変調であるときは、現在時刻に対する複数の異なる時刻におけるパルスの相互作用が加算により実現される
ことを特徴とする請求項3に記載の非線形補償装置。
【請求項10】
入力パルス信号のシンボル情報系列を取得する情報系列取得部と、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和に基づいて、前記情報系列取得部により取得される現在時刻におけるパルスのシンボル情報系列の非線形性を低減する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の非線形補償装置を含む非線形補償部と、
前記非線形補償部により得られる非線形性が低減されたシンボル情報系列に基づいてパルスを整形して、各パルスの波形を取得するパルス整形部と、
前記パルス整形部から出力される各パルスの波形を送信する信号送信部と、
を有する送信器。
【請求項11】
通信システムの送信側において入力パルス信号のシンボル情報系列を取得し、
現在時刻に対して複数の異なる時刻における複数の項のパルスの相互作用の重み付け和を計算して、伝送リンク上の現在時刻における非線形効果により生じる摂動量を取得し、
前記取得されたシンボル情報系列と前記取得された摂動量との差分に基づいて、現在時刻において非線形性が低減されたシンボル情報系列を得る、
ことを特徴とする非線形補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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