説明

非血液凝固タンパク質の糖ポリシアル酸化

水溶性ポリマー、特に、ポリシアル酸(PSA)または修飾PSA(mPSA)を、血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの酸化した糖質部分と該水溶性ポリマーとを接触させることにより、該酸化した糖質部分に結合体化させる。該水溶性ポリマーがアミノオキシ基を含み、該酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該アミノオキシ基との間でオキシム結合が形成されるか、または、該水溶性ポリマーがヒドラジド基を含み、該酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該ヒドラジド基との間でヒドラゾン結合が形成される。このようにして得られるアミノオキシ−またはヒドラジド−水溶性ポリマー(例えば、PSAおよびmPSA)の結合体は、該PSAまたはmPSAが糖質部分を介して付着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ポリマー(特に、ポリシアル酸)を糖質含有化合物(特に、血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質)に結合体化させるための材料および方法、ならびに得られた結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチド薬物の(例えば、PEG化またはポリシアル酸化による)結合は、血液循環中の分解からポリペプチド薬物を保護し、このようにそれらの薬力学的および薬物動態学プロファイルを改善させる(HarrisおよびChess, Nat Rev Drug Discov. 2003; 2: 214-21; S. Jain, D. Hreczuk-Hirst, P. LaingおよびG. Gregoriadis, Drug Delivery Systems and Sciences, 4 (No 1): 3-9, 2004.)。PEG化プロセスにより、エチレングリコールの反復単位(ポリエチレングリコール(PEG))をポリペプチド薬物に付着させる。PEG分子は巨大な流体力学量(球状タンパク質の5〜10倍量)を有し、高度な水溶性と水和性、非毒性、および非免疫原性であり、生体内から速やかに除去される。分子のPEG化は、薬物の酵素的分解に対する抵抗性の増大、インビボでの半減期の延長、投薬頻度の減少、免疫原性の減少、物理的および熱安定性の増大、溶解性の増大、液体安定性の増大、および凝集の低減をもたらし得る。最初のPEG化薬物は1990年代初期にFDAにより承認された。それ以来、FDAは経口、注射用および局所投与用の数々のPEG化薬物を承認している。
【0003】
シアル酸(N−アセチルノイラミン酸ともよばれる)およびポリシアル酸は、動物組織、および、より少ない程度で、植物および真菌から酵母および細菌に及ぶ他種において、大部分は糖タンパク質やガングリオシドに広く分布していることがわかっている。
【0004】
本明細書中で用いる略語である「PSA」は、用語「ポリシアル酸」のことをいう。同様に、本明細書中で用いる「mPSA」は、用語「修飾ポリシアル酸」のことをいう。
【0005】
PSAは、N−アセチルノイラミン酸のポリマー(通常、ホモポリマー)からなる。二級アミノ基は、通常、アセチル基を持つが、代わりにグリコリル基を持ってもよい。ヒドロキシル基の可能な置換基としては、アセチル基、ラクチル基、エチル基、硫酸基、およびリン酸基が挙げられる。
【0006】
【化1】

【0007】
PSAおよびmPSAは、一般的には、2,8−または2,9−グリコシド結合、あるいはこれらの組み合わせ(例えば、2,8−および2,9−で交互に結合したもの)で連結されたN−アセチルノイラミン酸部分から本質的になる線状ポリマーを含む。特に好ましいPSAおよびmPSAでは、グリコシド結合がα−2,8である。そのようなPSAおよびmPSAは、好都合には、コロミン酸に由来し、本明細書中では「CA」および「mCA」という。典型的なPSAおよびmPSAは、少なくとも2、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも20のN−アセチルノイラミン酸部分を含む。したがって、PSAおよびmPSAは、5から500のN−アセチルノイラミン酸部分、好ましくは10から300のN−アセチルノイラミン酸部分を含み得る。PSAおよびCAは、異なる糖部分を含むポリマーであり得る。PSAおよびCAは、コポリマーであり得る。PSAおよびCAは、好ましくは、N−アセチルノイラミン酸以外の糖部分を本質的に含まない。PSAおよびCAは、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%のN−アセチルノイラミン酸部分を含む。
【0008】
PSAおよびCAがN−アセチルノイラミン酸以外の部分を含む場合(例えば、mPSAおよびmCAにおけるように)、これらの部分は、好ましくは、ポリマー鎖の一端または両端に位置している。例えば、そのような「他の」部分は、酸化または還元により末端N−アセチルノイラミン酸部分から誘導された部分であり得る。
【0009】
例えば、WO-A-0187922には、過ヨウ素酸ナトリウムとの反応によって、非還元末端N−アセチルノイラミン酸単位がアルデヒド基に変換されたmPSAおよびmCAが記載されている。さらに、WO 2005/016974には、還元末端N−アセチルノイラミン酸単位が還元を受け、この還元末端N−アセチルノイラミン酸単位で還元的に開環し、それにより隣接ジオール基が形成され、それに伴い引き続き酸化され、隣接ジオール基をアルデヒド基に変換したmPSAおよびmCAが記載されている。
【0010】
シアル酸リッチの糖タンパク質は、ヒトおよび他の生物でセレクチンを結合する。それらは、ヒトのインフルエンザ感染に重要な役割を果たす。例えば、シアル酸は、マンノース結合レクチンから、宿主細胞または細菌の表面上のマンノース抗原を隠し得る。このことは、補体の活性化を妨げる。また、シアル酸は、最後から2番目の位置にあるガラクトース残基を隠し、肝実質細胞上のガラクトース受容体による、糖タンパク質の急速な排除を妨げる。
【0011】
【化2】

【0012】
とりわけ、CAは、K1抗原をもつ特定の大腸菌株により生産される。CAは多くの生理機能を有する。それらは、薬物および化粧品の原材料として重要である。
【0013】
ポリシアル酸化および非修飾のアスパラギナーゼを用いたインビボでの比較試験により、ポリシアル酸化が酵素の半減期を増大させることが判明した(FernandesおよびGregoriadis, Biochimica Biophysica Acta 1341: 26-34, 1997)。
【0014】
水溶性ポリマーと治療用タンパク質との間の共有結合の形成による結合体の調製は、様々な化学的方法によって実施され得る。PSAを治療用タンパク質へカップリングさせるための1つのアプローチは、上記タンパク質の糖質部分を介したポリマーの結合である。タンパク質中の糖質の隣接するヒドロキシル(OH)基は、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)で容易に酸化され得、活性アルデヒド基を形成する(RothfusおよびSmith, J Biol Chem 1963; 238: 1402-10; van LentenおよびAshwell, J Biol Chem 1971; 246: 1889-94)。その後、上記ポリマーは、例えば、活性ヒドラジド基を含有する試薬を用いて、糖質のアルデヒド基にカップリングされ得る(Wilchek MおよびBayer EA, Methods Enzymol 1987; 138: 429-42)。より最新の技術は、アルデヒドと反応してオキシム結合を形成させるアミノオキシ基を含む試薬の使用である(WO 96/40662, WO2008/025856)。
【0015】
PSAの治療用タンパク質への結合体化を記載しているさらなる例が、US Publication No. 2009/0076237(rFVIIIの酸化、ならびにその後のヒドラジド化学物質を用いた、PSAおよび他の水溶性ポリマー(例えば、PEG、HES、デキストラン)へのカップリングが教示されている)、およびWO 2008/025856(種々の凝固因子(例えば、rFIX、FVIIl、およびFVIIa)の酸化、ならびにその後のポリマー(例えば、PEG)へのカップリングが教示されている)に記載されている。
【0016】
近年、シアル酸の穏やかな過ヨウ素酸酸化によりアルデヒドを生じさせ、引き続き触媒量のアニリン存在下で、アミノオキシ基含有試薬と反応させる工程を含む、改良された方法が記載された(Dirksen AおよびDawson PE, Bioconjugate Chem. 2008; 19, 2543-8; およびZeng Yら、Nature Methods 2009; 6: 207-9)。アニリン触媒作用はオキシム結合を劇的に促進し、非常に低濃度の試薬の使用を可能にする。
【0017】
水溶性ポリマーを治療用タンパク質へ結合体化させるのに利用できる方法があるにもかかわらず、様々な試薬に関するコストを最小限に抑えながら、化合物の薬力学的および/または薬物動態的特性を改善させる、水溶性ポリマーを血液凝固タンパク質以外の糖質含有化合物へ結合体化させるための材料および方法を開発する必要が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、様々な試薬に関するコストを最小限に抑えながら、化合物の薬力学的および/または薬物動態的特性を改善させる、水溶性ポリマーを血液凝固タンパク質以外の糖質含有化合物へ結合体化させるための材料および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの実施形態では、水溶性ポリマーを血液凝固タンパク質以外の糖質含有化合物の酸化した糖質部分に結合体化させる方法が提供され、上記方法は、上記酸化した糖質部分を上記水溶性ポリマーと、結合体化を可能とする条件下で接触させる工程を含み、上記水溶性ポリマーがアミノオキシ基を含み、上記酸化した糖質部分と上記水溶性ポリマー上の上記アミノオキシ基との間でオキシム結合が形成される、または、上記水溶性ポリマーがヒドラジド基を含み、上記酸化した糖質部分と上記水溶性ポリマー上の上記ヒドラジド基との間でヒドラゾン結合が形成される。上記化合物は、(1)血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、(2)ガングリオシド、または(3)糖質基を含むドラッグデリバリーシステムであり得る。
【0020】
上記糖質部分は、糖特異的酸化酵素(例えば、ガラクトースまたはグルコースオキシダーゼ)を用いて、または過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、四酢酸鉛(Pb(OAc))、および過ルテニウム酸カリウム(KRuO)より選択される酸化剤を含むバッファーとインキュベートすることによって、酸化され得る。
【0021】
上記糖質部分は、シアル酸、マンノース、ガラクトース、またはグルコース残基にて酸化され得る。
【0022】
本発明に用いられる水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分岐PEG、PEG誘導体、PSA、mPSA、CA、mCA、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、デキストリン、ポリオキサゾリン、糖質、ポリサッカリド、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン無水マレイン酸共重合体、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムリン酸(MPC)であり得るが、これらに限定されない。
【0023】
以下の実施例に示す本発明の特定の実施形態では、上記水溶性ポリマーが、PEGまたは分岐PEGである。
【0024】
以下の実施例に示す本発明のさらなる特定の実施形態では、上記水溶性ポリマーがポリシアル酸(PSA)または修飾PSA(mPSA)である。上記PSAまたはmPSAは、350Daから120,000Da、500Daから100,000Da、1000Daから80,000Da、1500Daから60,000Da、2,000Daから45,000Da、または3,000Daから35,000Daの範囲の分子量を有し得る。
【0025】
上記PSAまたはmPSAは、コロミン酸または修飾コロミン酸であり得る。
【0026】
本発明の別の実施形態では、上記PSAまたはmPSAは、約2〜500または10〜300のシアル酸単位で構成される。さらに別の実施形態では、酸化剤が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)である、上述の方法が提供される。
【0027】
本発明の方法は、水溶性ポリマーを酸化させて、水溶性ポリマーの末端シアル酸単位にアルデヒド基を形成させる工程、および酸化した水溶性ポリマーとアミノオキシリンカーとを反応させる工程を含み得る。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態では、活性化アミノオキシリンカーと酸化した水溶性ポリマーとを反応させることによって水溶性ポリマーが調製される、上述の方法が提供され、上記リンカーは、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性リンカーである。上記ホモ二官能性リンカーは、一般式NH[OCHCHONHを有し得、nは1〜50、好ましくは1〜11、より好ましくは1〜6である。上記リンカーは、特に、次式の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー
【0029】
【化3】

【0030】
および次式の3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンリンカー
【0031】
【化4】

【0032】
より選択され得る。PSAまたはmPSAは、酸化剤とインキュベートすることによって酸化され、PSAの非還元末端で末端アルデヒド基を形成し得る。
【0033】
本方法は、水溶性ポリマーを酸化させて、水溶性ポリマーの末端単位(例えば、PSAまたはmPSAの末端シアル酸単位)にアルデヒド基を形成させる工程、および酸化した水溶性ポリマーとアミノオキシリンカーとを反応させる工程を含み得る。さらにもう1つの実施形態では、上記アミノオキシリンカーが3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンである、上述の方法が提供される。関連する実施形態では、酸化剤はNaIOである。
【0034】
本発明の別の実施形態では、アニリンおよびアニリン誘導体からなる群より選択される求核触媒を含むバッファー中で、酸化した糖質部分と活性化された水溶性ポリマーとの接触が生じる、上述の方法が提供される。
【0035】
ヒドラジド基は、酸化した水溶性ポリマーとヒドラジドリンカーとを反応させることによって、水溶性ポリマー上で形成され得る。上記ヒドラジドリンカーは、適宜、アジピン酸ジヒドラジドまたはヒドラジンであり得る。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態では、結合体化したタンパク質のオキシム結合またはヒドラゾン結合を還元する工程(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)およびアスコルビン酸(ビタミンC)からなる群より選択される還元性化合物を含むバッファー中に、結合体化したタンパク質をインキュベートすることによって)をさらに含む、上述の方法が提供され得る。関連する実施形態では、上記還元性化合物がシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)である。
【0037】
本発明の別の実施形態では、上述のいずれかの方法で生産された、結合体化した糖タンパク質が提供される。本発明のさらに別の実施形態では、血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの結合体は、(a)上記糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステム、および、(b)(a)の糖タンパク質に結合した少なくとも1のアミノオキシ水溶性ポリマーを含み、上記アミノオキシ水溶性ポリマーは、1以上の糖質部分を介して、上記糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに付着されている。本発明のさらに別の実施形態では、血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの結合体は、(a)上記糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステム、および、(b)(a)の糖タンパク質に結合した少なくとも1のヒドラジド水溶性ポリマーを含み、上記ヒドラジド水溶性ポリマーは、1以上の糖質部分を介して、上記糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに付着されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、水溶性ジアミノキシリンカーである3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンおよび3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンの合成を示す。
【図2】図2は、アミノオキシ−PSAの調製を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
糖質含有化合物(例えば、血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質)の薬理学的および免疫学的特性は、水溶性ポリマー(特に、PEGまたはPSAまたはmPSA)との化学的な修飾および結合体化により改善され得る。上記の結果生じる結合体の特性は、一般的に、ポリマーの構造およびサイズに強く依存する。したがって、規定のおよび狭いサイズ分布を持つポリマーが通常好ましい。PSAおよびmPSA(具体例で使用)は、狭いサイズ分布を持つ最終的なPSA調製物を生じるように、精製され得る。
【0040】
糖タンパク質
本明細書中に記載されるように、本発明によって考慮される血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン、α−、β−、およびγ−インターフェロン、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子を含む)、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、植物タンパク質、例えば、レクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子および関連対立因子、可溶型腫瘍壊死因子受容体、インターロイキン受容体および可溶型インターロイキン受容体、成長因子、組織成長因子、トランスフォーミング増殖因子、例えば、TGFαまたはTGFβ、および上皮成長因子、ホルモン、ソマトメジン、色素性ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、および免疫グロブリン、例えば、IgG、IgE、IgM、IgA、およびIgD、モノクローナル抗体、エリスロポエチン(EPO)、血液凝固タンパク質以外の血液因子、ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNA分解酵素、フェチュイン、それらの断片、および上記タンパク質またはその断片のいずれかを治療用糖タンパク質一般とともに含む任意の融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、糖タンパク質はEPOである。さらなる実施形態では、糖タンパク質はガラクトシダーゼである。なおさらなる実施形態では、糖タンパク質はDNA分解酵素である。よりさらなる実施形態では、糖タンパク質はフェチュインである。最後に、なおよりさらなる実施形態では、糖タンパク質は顆粒球コロニー刺激因子である。
【0041】
本明細書中で用いられるように、「生物学的に活性な誘導体」または「生物学的に活性な改変体」は、その分子の実質的に同じ機能的および/または生物学的な特性(例えば、結合特性)および/または同じ構造基盤(例えば、ペプチド骨格または基本ポリマー単位)を有する分子のいかなる誘導体または改変体も包含する。
【0042】
「類似体」、「改変体」、または「誘導体」は、天然に存在する分子に対し、場合により程度は異なるが、実質的に構造が類似し、かつ同じ生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチド改変体は、参照ポリペプチドと、実質的に類似の構造を共有し、かつ同じ生物学的活性を有するポリペプチドをいう。改変体または類似体は、類似体が由来する天然に存在するポリペプチドと比べて、アミノ酸配列の組成が異なる。これは、(i)ポリペプチドの1以上の末端および/または天然に存在するポリペプチド配列の1以上の内部領域での1以上のアミノ酸残基(例えば、フラグメント)の欠失、(ii)ポリペプチドの1以上の末端(典型的には、「付加」または「融合」)および/または上記天然に存在するポリペプチド配列の1以上の内部領域(典型的には、「挿入」)での1以上のアミノ酸残基の挿入または付加、または(iii)天然に存在するポリペプチド配列における1以上のアミノ酸の他のアミノ酸による置換を包含する1以上の変異に基づく。例として、「誘導体」は、例えば化学的に、修飾された参照ポリペプチドと同じまたは実質的に類似の構造を共有するポリペプチドをいう。
【0043】
改変体または類似体のポリペプチドとしては挿入改変体が挙げられ、この改変体では、1以上のアミノ酸残基が本発明のタンパク質アミノ酸配列に付加されている。挿入は、タンパク質のいずれか一方または両方の末端に位置し得、および/またはタンパク質アミノ酸配列の内部領域内に配置され得る。挿入改変体は、いずれか一方または両方の末端に付加残基を持ち、例えば、融合タンパク質およびアミノ酸タグまたは他のアミノ酸ラベルを含むタンパク質を包含する。1つの局面では、タンパク質分子は、特にこの分子が細菌細胞(例えば大腸菌)で組換え発現される場合、必要に応じて、N末端のメチオニンを含む。
【0044】
欠失改変体では、本明細書中に記載されるように、タンパク質またはポリペプチド内の1以上のアミノ酸残基が除去される。欠失は、タンパク質またはポリペプチドのいずれか一方または両方の末端で生じ得、および/またはタンパク質アミノ酸配列内の1以上の残基の除去を伴う。したがって、欠失改変体は、タンパク質またはポリペプチド配列のフラグメントを包含する。
【0045】
置換改変体では、タンパク質またはポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が除去され、代替の残基で置き換えられる。1つの局面では、置換は本質的に保存的であり、このタイプの保存的置換は当該技術分野で周知である。あるいは、本発明はまた、非保存的な置換も包含する。例示的な保存的置換はLehninger, [Biochemistry, 2nd Edition; Worth Publishers, Inc., New York (1975), pp.71-77]に記載されており、すぐ下に示される。
保存的置換
側鎖特性 アミノ酸
非極性(疎水性):
A.脂肪族 ALIVP
B.芳香族 FW
C.硫黄含有 M
D.ボーダーライン G
非荷電極性:
A.ヒドロキシル STY
B.アミド NQ
C.スルフヒドリル C
D.ボーダーライン G
陽性荷電(塩基性) KRH
陰性荷電(酸性) DE
【0046】
あるいは、例示的な保存的置換をすぐ下に示す。
保存的置換II
元の残基 例示的置換
Ala(A) Val、Leu、Ile
Arg(R) Lys、Gln、Asn
Asn(N) Gln、His、Lys、Arg
Asp(D) Glu
Cys(C) Ser
Gln(Q) Asn
Glu(E) Asp
His(H) Asn、Gln、Lys、Arg
Ile(I) Leu、Val、Met、Ala、Phe
Leu(L) Ile、Val、Met、Ala、Phe
Lys(K) Arg、Gln、Asn
Met(M) Leu、Phe、Ile
Phe(F) Leu、Val、Ile、Ala
Pro(P) Gly
Ser(S) Thr
Thr(T) Ser
Trp(W) Tyr
Tyr(Y) Trp、Phe、Thr、Ser
Val(V) Ile、Leu、Met、Phe、Ala
【0047】
ガングリオシド
本発明の実施形態では、ガングリオシドが、水溶性ポリマー(例えば、PEGまたはPSAまたはmPSA)に結合体化される。ガングリオシドは、細胞認識および細胞間コミュニケーションにおいて働き得る識別性表面マーカーを細胞に提供することが知られている。それらは治療剤として有用である。
【0048】
本発明の結合体は、ガングリオシドおよび水溶性ポリマーを含み得、ガングリオシドは、1以上のシアル酸が糖鎖に結合したスフィンゴ糖脂質(セラミドおよびオリゴ糖)を含む。ガングリオシドは、分子に存在しているシアル酸単位の数に従って分類され得る。ガングリオシドの例は、GM1、GM2、およびGM3(モノシアロ−ガングリオシド)、GD1a、GD1b、GD2、およびGD3(ジシアロ−ガングリオシド)、GT1b(トリシアロ−ガングリオシド)およびGQ1(テトラシアロ−ガングリオシド)である。
【0049】
本発明での使用に関して、好ましいガングリオシドは、セラミドがグルコースに結合し、グルコースが第1のガラクトースに結合し、第1のガラクトースがN−アセチルガラクトサミンに結合し、N−アセチルガラクトサミンが第2のガラクトースに結合したものを含む。この第2のガラクトースは1つのシアル酸に結合し得る。上記第1のガラクトースは1、2、3、または4つのシアル酸に結合し得る。シアル酸は、モノマー(各ガラクトース分子に1つずつ)として、または第1のガラクトースにオリゴシアル酸(2〜4シアル酸)として結合し得る。
【0050】
投与された場合、治療用ガングリオシドは長期間血液中を循環する必要がある。標的組織に対するそれらの作用がより効果的であるように、ガングリオシドは、例えば、本発明の方法によってポリシアル酸化され得る。
【0051】
ドラッグデリバリーシステム
本発明のさらなる実施形態では、ドラッグデリバリーシステムが、水溶性ポリマー(例えば、PEGまたはPSAまたはmPSA)に結合体化される。一般に、ドラッグデリバリーシステム(DDS)は、付随する薬物の運命および効果を制御し得る分子または粒子物質である。DDSは、2つの一般的なタイプに分けられ得る。第1のタイプは、高分子(MDDS)、例えば、抗体、ネオ糖タンパク質、ならびに合成ポリマー(例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリリジン、および重合アルキルシアノアクリレート)を含む。薬物と種々のタイプの高分子キャリアー(所望の部位にこの薬物をターゲティングするモノクローナル抗体を含む)との会合は、例えば、Gregoriadis Nature 265, 407-411 (1977)に記載されている。第2のタイプは、粒子DDS(PDDS)であり、例えば、生分解性材料(例えば、アルブミン)または半生分解性材料(例えば、デキストランおよびアルキルシアノアクリレートポリマー)を含むナノ粒子もしくはマイクロ粒子を含み、あるいは非イオン系界面活性剤で形成される小胞またはリポソームを含む。その詳細は、例えば、Gregoriadis NIPS, 4, 146-151 (1989)を参照のこと。
【0052】
薬物は、DDSに共有結合され得るか、またはDDS内に受動的に捕捉され得る。例えば、界面活性剤小胞またはリポソームを含むPDDSは、界面活性剤または脂質分子の層の適切な組み合わせから形成されることによって、親水性または疎水性の薬学的に活性な化合物を捕捉し得る。薬学的に活性な化合物は通常、例えば、当該活性な化合物がその機能を実行する前または後、体内で溶解され得るまたはされ得ない結合によって、MDDSに共有結合されている。
【0053】
上記MDDSの多くは、標的細胞または組織によって、それらの表面上の受容体を通じて認識される内在性(例えば、抗体)または獲得性(例えば、ネオ糖タンパク質)の能力を有する。典型的には、そのようなDDSは、注入時に標的によって特異的に取り込まれる。しかしながら、特異的取り込みは制限され、上記DDSの大部分は、他の(治療に)無関係な組織によって取り込まれる。この理由のため、抗体および他のDDSタンパク質(標的の特異性を問わず)は、他のタンパク質と同様に、それらの生物学的寿命の終了で分解されなければならない。
【0054】
高分子タイプのMDDSに用いられる合成ポリマーは、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリリジン、および重合アルキルシアノアクリレートである。これらは、細網内皮系(RES)または他の組織で適切なリソソーム酵素によって分解され得る。ある手段によって、例えば、RESまたは他の組織によるDDSの取り込みを減らすことによって、またはRESによって一度取り込まれたらリソソーム酵素による分解を減らすことによって、そのような生物分解性の高分子タイプのDDSの分解速度を下げることが望ましい。
【0055】
粒子DDS(PDDS)は、通例、RESによって循環から除去される。RESに対するそれらの傾向のため、PDDSは、しばしばこれらの組織への薬物の送達のために用いられる。しかしながら、PDDSがRES以外の組織に指向されることが、しばしば望ましい。本目的を達成するために、PDDSのRES妨害を遮断または遅延しなければならない。
【0056】
本発明で用いるDDSは、グリコンを初期に含まなくてよい。必要に応じて、グリコンをDDS構造に付加あるいはさもなければ組み込ませる。そのような場合の例は、マンノシル化またはガラクトシル化された脂質を組み込んだリポソームである。これらの糖リポソームは、マンノースまたはガラクトース受容体それぞれを発現する組織に、活性物をターゲティングする。
【0057】
例えば、標的組織による取り込みが(肝実質細胞と同様に)より効果的であるように、DDSが長期間血液中で循環する必要がある場合、それらは、本発明の方法により、有利にポリシアル酸化される。
【0058】
投与
1つの実施形態では、本発明の結合体化した化合物は、注射(例えば、静脈、筋肉内、あるいは腹腔内注射)によって投与され得る。その組成物は、治療、診断および/または同様の薬剤として有用であり得る。
【0059】
本発明の結合体化した化合物を含む組成物をヒトまたは試験動物に投与するために、1つの局面では、上記組成物は、1以上の薬学的に受容可能なキャリアーを含む。用語「薬学的に」または「薬理学的に受容可能な」は、以下に記載されるように、安定であり、タンパク質分解(例えば、凝集および切断生成物)を妨げ、ならびに、さらに当該技術分野で周知の経路を用いて投与されたときにアレルギーまたはその他の副作用を生じない、分子物質および組成物をいう。「薬学的に受容可能なキャリアー」は、上記の薬剤を含めて、任意のかつ全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、アイソトニックおよび吸収遅延剤などを包含する。
【0060】
本明細書中で用いられているように、「有効量」は、臨床的に定義された疾患を有する哺乳類を治療するために適する投与量を包含する。
【0061】
上記組成物は、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、吸入スプレーにより、膣内に、直腸内に、または頭蓋内注射により投与され得る。本願明細書中で用いられている用語「非経口的」は、皮下注射、静脈内、筋肉内、および大槽内注射、または点滴法を包含する。静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼窩内、肺内注射および/または特定部位での外科移植による投与が、同様に考慮される。一般的に、組成物は、発熱因子、ならびにレシピエントに有害となり得る他の不純物を本質的に含まない。
【0062】
組成物の単一または複数の投与が実施され得、投与レベルおよびパターンは、治療を行っている医師によって選択される。疾病の予防または治療のために、適切な投与量は、上記のように、治療される疾病のタイプ、疾病の重症度および経過、予防または治療のいずれの目的で薬物が投与されるか、以前の治療、患者の病歴および薬物に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。
【0063】
本発明はまた、本明細書中に定義されたように、結合体化した化合物またはタンパク質の有効量を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、薬剤的に受容可能なキャリアー、希釈剤、塩、バッファー、または賦形剤をさらに含み得る。薬学的組成物は、臨床的に定義された疾患を治療するために用いられ得る。本発明の薬学的組成物は、溶液または凍結乾燥製品であり得る。薬学的組成物の溶液は、任意の適切な凍結乾燥プロセスに供され得る。
【0064】
さらなる局面として、本発明は、本発明の組成物を含むキットを包含し、この組成物は、被験体への投与のためにその使用を容易にするようにパッケージングされている。1つの実施形態では、そのようなキットは、本明細書中に記載された化合物または組成物(例えば、結合体化したタンパク質を含む組成物)を含み、この化合物または組成物は、コンテナ、例えば、密閉された瓶または容器内にパッケージングされ、方法を実施する際の化合物または組成物の使用を記載するラベルが上記コンテナに貼り付けられるか、あるいはパッケージ内に含まれる。1つの実施形態では、上記キットは、結合体化したタンパク質を含む組成物を有する第1コンテナ、および上記第1コンテナ内の組成物に関して生理学的に受容可能な再構成溶液を有する第2コンテナを含む。1つの局面では、化合物または組成物は、単位投与形態でパッケージングされる。キットは、特定の投与経路に従って組成物を投与するために適切なデバイスをさらに含み得る。好ましくは、キットは、治療用タンパク質またはペプチド組成物の使用を記載したラベルを含む。
【0065】
1つの実施形態では、誘導体は、本来の治療用化合物の完全な機能活性を保持し、本来の治療用化合物に比べて、延長されたインビボ半減期を提供する。別の実施形態では、誘導体は、本来の化合物に対して、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、または150パーセント(%)の生物学的活性を保持する。
【0066】
シアル酸およびPSA
本明細書中で用いられるように、「シアル酸部分」は、シアル酸モノマーまたはポリマー(「ポリサッカリド」)を含み、これらは、水性の溶液または懸濁液に可溶であり、薬学的有効量でPSA−タンパク質結合体を投与した場合に哺乳類に対する負の影響(例えば、副作用)をほとんどまたは全く有さない。1つの局面では、PSAおよびmPSAは、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、または500のシアル酸単位を有するものとして特徴付けられる。ある局面では、異なるシアル酸単位が、1つの鎖内で組み合わせられる。
【0067】
本発明の1つの実施形態では、PSAまたはmPSA化合物のシアル酸部分が高度に親水性であり、別の実施形態では、化合物全体が高度に親水性である。親水性は、主にシアル酸単位のペンダントカルボキシル基によって、ならびにヒドロキシル基によって、与えられる。サッカリド単位は、他の官能基(例えば、アミン、ヒドロキシルまたは硫酸基、あるいはそれらの組み合わせ)を含み得る。これらの基は、天然に存在するサッカリド化合物上に存在し得るか、または誘導体ポリサッカリド化合物に導入され得る。本発明の方法および結合体で用いられるPSAおよびmPSAは、発明の背景において上述したように、さらに特徴付けられ得る。
【0068】
天然に存在するポリマーPSAは、広いサイズ分布(例えば、Sigma C-5762)および高い多分散度(PD)を示す多分散調製物として入手され得る。ポリサッカリドは、通常、エンドトキシンを共精製する固有の危険性を有する細菌で生産されるので、長いシアル酸ポリマー鎖の精製は、エンドトキシン含量増加の確率を高め得る。また1〜4のシアル酸単位を有する短いPSA分子が、合成的に調製され得(Kang SHら、Chem Commun. 2000; 227-8; Ress DKおよびLinhardt RJ, Current Organic Synthesis. 2004; 1: 31-46)、これにより、高いエンドトキシンレベルの危険性を最小化する。しかしながら、エンドトキシンフリーでもある、狭いサイズ分布および低い多分散度を有するPSA調製物が、今や製造され得る。1つの局面では、本発明について特に用いられるポリサッカリド化合物は、細菌によって生産されたものである。これらの天然に存在するポリサッカリドのいくつかは、糖脂質として知られている。1つの実施形態では、上記ポリサッカリド化合物は、末端ガラクトース単位を実質的に含まない。
【0069】
種々の実施形態では、上記化合物は、化学量論量(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:7、1:8、1:9、または1:10など)で、PSAまたはmPSA化合物に結合されるか、または会合している。種々の実施形態では、1〜6、7〜12、または13〜20のPSAおよび/またはmPSA単位が、上記化合物に結合されている。さらに他の実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上のPSAおよび/またはmPSA単位が、上記化合物に結合されている。
【0070】
必要に応じて、上記化合物は修飾されて、グリコシル化部位(すなわち、本来のグリコシル化部位以外の部位)を導入する。そのような修飾は、当該技術分野で知られる標準の分子生物学的手法を用いて達成され得る。さらに、上記化合物は、1以上の糖質部分を介する結合体化前に、インビボまたはインビトロにてグリコシル化され得る。
【0071】
アミノオキシ結合
本発明の1つの実施形態では、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン誘導体とアルデヒドとを(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後に糖質部分上で)反応させて、オキシム基を形成することが、化合物の結合体の調製に適用される。例えば、まず、糖タンパク質を、酸化剤、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)を用いて酸化する(Rothfus JAおよびSmith EL., J Biol Chem 1963, 238, 1402-10; ならびにVan Lenten LおよびAshwell G., J Biol Chem 1971, 246, 1889-94)。例えば糖タンパク質の過ヨウ素酸酸化は、1928年に記載された古典的なマラプラード反応に基づき、隣接ジオールを過ヨウ素酸で酸化し、活性アルデヒド基を形成する(Malaprade L., Analytical application, Bull Soc Chim France, 1928, 43, 683-96)。そのような酸化剤のさらなる例は、四酢酸鉛(Pb(OAc))、酢酸マンガン(MnO(Ac))、酢酸コバルト(Co(OAc))、酢酸タリウム(TlOAc)、硫酸セリウム(Ce(SO)(US4,367,309)、または過ルテニウム酸カリウム(KRuO)(Marko ら、J Am Chem Soc 1997, 119, 12661-2)である。「酸化剤」によって、生理的反応条件下、糖質中の隣接ジオールを酸化し、活性アルデヒドを生成し得る、穏やかな酸化化合物が意図される。
【0072】
第2の工程は、アミノオキシ基を含むポリマーを酸化した糖質部分にカップリングし、オキシム結合を形成することである。本発明の1つの実施形態では、本工程は、求核触媒であるアニリンまたはアニリン誘導体の触媒量の存在下で実施され得る(Dirksen AおよびDawson PE, Bioconjugate Chem. 2008; Zeng Yら、Nature Methods 2009; 6: 207-9)。アニリン触媒はオキシム結合を劇的に加速し、試薬を非常に低い濃度で用いることを可能とする。本発明の別の実施形態では、オキシム結合は、NaCNBH3で還元してアルコキシアミン結合を形成することによって、安定化される。
【0073】
本発明の1つの実施形態では、PSAまたはmPSAをタンパク質に結合体化させる反応工程は、個別および順次、実施される(すなわち、出発物質(例えば、タンパク質、ポリマーなど)、試薬(例えば、酸化剤、アニリンなど)、および反応生成物(例えば、タンパク質上の酸化した糖質、活性化アミノオキシポリマーなど)は、個々の反応工程間で分けられている)。
【0074】
アミノオキシ技術に関するさらなる情報は、以下の参考文献に見出され得、各参考文献は、それらの全体が援用されている:EP 1681303Al(ヒドロキシアルキルデンプン化(HASylated)エリスロポエチン);WO 2005/014024(オキシム結合基によって結合されたポリマーとタンパク質との結合体);WO96/40662(アミノオキシ含有リンカー化合物および結合体におけるその適用);WO 2008/025856(修飾タンパク質); Peri Fら、Tetrahedron 1998, 54, 12269-78; Kubler-Kielb JおよびPozsgay V., J Org Chem 2005, 70, 6887-90; Lees Aら、Vaccine 2006, 24 (6), 716-29; ならびにHeredia KLら、Macromoecules 2007, 40 (14), 4772-9。
【0075】
本発明の利点は、結合体の高い回収率、結合体化されていないタンパク質と比べて結合体化された糖タンパク質の活性の高い保持、および高い結合効率を含む。
【0076】
本発明は、以下の実施例を参照することによって説明される。実施例1〜3、9および11〜27は、本発明の具体的な実施形態を示している。実施例4〜8および10は、本発明の対応する結合体の調製に関連する参考例として含まれる。
【実施例】
【0077】
(実施例1:ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0078】
【化5】

【0079】
(3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミン)(2つの活性アミノオキシ基を含む)を、Boturynら(Tetrahedron 1997; 53: 5485-92)に従い、一級アミンの改変ガブリエル合成を用いる二工程有機反応で合成した。第1の工程では、ジメチルホルムアミド(DMF)中、1分子の2,2−クロロジエチルエーテルを2分子のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドと反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中、ヒドラジン分解によって生じた中間体から調製した。特に指定のない場合を除き、以下の実施例では、これをジアミノオキシリンカーという。
【0080】
(実施例2:ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0081】
【化6】

【0082】
(3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミン)(2つの活性アミノオキシ基を含む)を、Boturynら(Tetrahedron 1997; 53: 5485-92)に従い、一級アミンの改変ガブリエル合成を用いる二工程有機反応で合成した。第1の工程では、DMF中、1分子のビス−(2−(2−クロルエトキシ)−エチル)−エーテルを2分子のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドと反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中、ヒドラジン分解によって生じた中間体から調製した。
【0083】
(実施例3:アミノオキシ−PSAの調製)
Serum Institute of India(Pune, India)から得た酸化したPSA(分子量18.8kD)500mgを、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)8mL中に溶解した。次に、3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミン100mgを添加した。室温にて2時間振盪後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム44mgを添加した。4℃にてさらに4時間振盪後、この反応混合物をSlide-A-Lyzer(Pierce, Rockford, IL)透析カセット(3.5kD膜、再生セルロース)に注入し、PBS(pH7.2)に対して4日間透析した。この生成物を−80℃にて凍結した。本手順に従ったアミノオキシ−PSAの調製を、図2に示す。
【0084】
(実施例4:アミノオキシ−PSAのrFIXへのカップリングおよび結合体の精製)
50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)6.3mL中に溶解したrFIX 12.6mgに、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mM)289μLを添加した。この混合物を、暗所下、4℃にて1時間振盪し、1Mグリセロール6.5μLの添加によって、室温にて15分間クエンチした。Vivaspin(Sartorius, Goettingen, Germany)濃縮器(30kD膜、再生セルロース)を用いた限外濾過/透析濾過(UF/DF)によって、低分子量の夾雑物を除去した。次に、アミノオキシ−PSA 43mgをUF/DF保留物に添加し、この混合物を4℃にて18時間振盪した。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって過剰なPSA試薬を除去した。冷却した反応混合物の電気伝導度を180mS/cmに上げ、5mL HiTrap Butyl FF(GE Healthcare, Fairfield, CT)HICカラム(1.6×2.5cm)に注入した。このカラムは、50mM HEPES、3M塩化ナトリウム、6.7mM塩化カルシウム、0.01%Tween80、pH6.9であらかじめ平衡化しておいた。結合体を、50mM HEPES、6.7mM 塩化カルシウム、0.005%Tween80、pH7.4を用いて、流速5mL/分にて2.4カラムボリューム(CV)内に溶出させた。調製物を、総タンパク質量(BCA)およびFIX発色活性を測定することによって解析評価した。PSA−rFIX結合体について、80.2IU/mgタンパク質の比活性が求められた(本来のrFIXと比べて56.4%)。本結果を表1にまとめる。
【0085】
【表1】

【0086】
(実施例5:求核触媒としてのアニリン存在下でのアミノオキシ−PSAのrFIXへのカップリング)
50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)1.4mL中に溶解したrFIX 3.0mgに、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mM)14.1μLを添加した。この混合物を、暗所下、4℃にて1時間振盪し、1Mグリセロール1.5μLの添加によって、室温にて15分間クエンチした。PD−10脱塩カラム(GE Healthcare, Fairfield, CT)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、低分子量の夾雑物を除去した。酸化したrFIX1.2mgを、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)1.33mLに溶解し、これをアニリン(200mMストック水溶液)70μLと混合し、室温にて45分振盪した。次に、アミノオキシ−PSA 4.0mgを添加し、この混合物を室温にて2時間、さらに4℃にて16時間振盪した。1時間後、2時間後、および18時間後の反応終了時に、サンプルを取得した。次に、HICによって、過剰なPSA試薬および遊離rFIXを除去した。この冷却した反応混合物の電気伝導度を180mS/cmに上げ、5mL HiTrap Butyl FF(GE Healthcare, Fairfield, CT)HICカラム(1.6×2.5cm)に注入した。このカラムは、50mM HEPES、3M塩化ナトリウム、6.7mM塩化カルシウム、0.01%Tween80、pH6.9であらかじめ平衡化しておいた。結合体を、50mM HEPES、6.7mM塩化カルシウム、0.005%Tween80、pH7.4、流速5mL/分のリニアグラジエントで20CV内に溶出させた。
【0087】
(実施例6:アミノオキシ−PSAのrFIXへのカップリングおよびNaCNBHを用いた還元)
50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)5.25mL中に溶解したrFIX 10.5mgに、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mM)53μLを添加した。混合物を、暗所下、4℃にて1時間振盪し、1Mグリセロール5.3μLの添加によって、室温にて15分間クエンチした。Vivaspin(Sartorius, Goettingen, Germany)濃縮器(30kD膜、再生セルロース)を用いるUF/DFによって、低分子量の夾雑物を除去した。次に、アミノオキシ−PSA 35.9mgをUF/DF保留物に添加し、混合物を室温にて2時間振盪した。次に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム水溶液(5M)53μLを添加し、この反応をさらに16時間進行させた。次いで、HICによって、過剰なPSA試薬を除去した。この冷却した反応混合物の電気伝導度を180mS/cmに上げ、5mL HiTrap Butyl FF HIC(GE Healthcare, Fairfield, CT)カラム(1.6×2.5cm)に注入した。このカラムは、50mM HEPES、3M 塩化ナトリウム、6.7mM塩化カルシウム、0.01%Tween80、pH6.9であらかじめ平衡化しておいた。結合体を、50mM HEPES、6.7mM塩化カルシウム、0.005%Tween80、pH7.4を用いて、流速5mL/分にて2.4CV内に溶出させた。
【0088】
(実施例7:アミノオキシ−PSA(リンカー:NH[OCHCHONH)のrFIXへのカップリングおよび結合体の精製)
50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)2.8mL中に溶解したrFIX 5.6mgに、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mM)102μLを添加した。混合物を、暗所下、4℃にて1時間振盪し、1Mグリセロール2.9μLの添加によって、室温にて15分間クエンチした。Vivaspin(Sartorius, Goettingen, Germany)濃縮器(30kD膜、再生セルロース)を用いるUF/DFによって、低分子量の夾雑物を除去した。次いで、アミノオキシ−PSA19mgをUF/DF保留物に添加し、混合物を4℃にて18時間振盪した。HICによって過剰なPSA試薬を除去した。冷却した反応混合物の電気伝導度を180mS/cmに上げ、5mL HiTrap Butyl FF(GE Healthcare, Fairfield, CT)HICカラム(1.6×2.5cm)に注入した。このカラムは、50mM HEPES、3M塩化ナトリウム、6.7mM塩化カルシウム、0.01%Tween80、pH6.9であらかじめ平衡化しておいた。結合体を、50mM HEPES、6.7mM塩化カルシウム、0.005%Tween80、pH7.4を用いて、流速5mL/分にて2.4CV内に溶出させた。
【0089】
(実施例8:アミノオキシ−PSAのrFVIIIへのカップリング)
Hepesバッファー、pH6(50mM Hepes、5mM CaCl、150mM NaCl、0.01%Tween)11mL中に溶解したrFVIII 11mgに、10mM過ヨウ素酸ナトリウム57μLを添加した。混合物を、暗所下、4℃にて30分振盪し、1Mグリセロール水溶液107μLを加えることによって、4℃にて30分間クエンチした。次いで、アミノオキシ−PSA(18.8kD)19.8mgを添加し、この混合物を4℃にて一晩振盪した。8M酢酸アンモニウムを含むバッファー(8M酢酸アンモニウム、50mM Hepes、5mM CaCl、350mM NaCl、0.01%Tween80、pH6.9)を最終濃度が2.5Mの酢酸アンモニウムになるまで添加することによって、イオン強度を上昇させた。次に、反応混合物を、平衡化バッファー(2.5M酢酸アンモニウム、50mM Hepes、5mM CaCl、350mM NaCl、0.01% Tween80、pH6.9)で平衡化したHiTrap Butyl FF(GE Healthcare, Fairfield, CT)カラムに注入した。この生成物を、溶出バッファー(50mM Hepes、5mM CaCl、0.01%Tween80、pH7.4)で溶出させ、溶出液を30,000MWCOを備えたVivaspin(Sartorius, Goettingen, Germany)装置を用いて遠心濾過によって濃縮した。
【0090】
(実施例9:ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONHの調製)
ホモ二官能性リンカーNH[OCHCHONH
【0091】
【化7】

【0092】
(3,6,9,12,15−ペンタオキサ−ヘプタデカン−1,17−ジオキシアミン)(2つの活性アミノオキシ基を含む)を、Boturynら(Tetrahedron 1997; 53: 5485-92)に従い、一級アミンの改変ガブリエル合成を用いる二工程有機反応で合成した。第1の工程では、DMF中、1分子のヘキサエチレングリコールジクロライドを2分子のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドと反応させた。所望のホモ二官能性生成物を、エタノール中、ヒドラジン分解によって、生じた中間体から調製した。
【0093】
(実施例10:マレイミド/アミノオキシリンカーシステムを用いたrFIXのポリシアル酸化)
A.修飾試薬の調製
アミノオキシ−PSA試薬を、マレイミド/アミノオキシリンカーシステム(Toyokuniら、Bioconjugate Chem 2003; 14, 1253-9)を用いることによって調製する。遊離末端SH基を含むPSA−SH(20kD)は、二工程の手順を用いて調製する:a)NHClでの酸化したPSAの還元的アミノ化によるPSA−NHの調製(WO 05016973 Alに従う)およびb)末端の一級アミノ基と2−イミノチオラン(トラウト試薬/Pierce, Rockford, IL)との反応によるスルフヒドリル基の導入(US7645860に記載の通り)。PSA−SHを、PBSバッファー中、pH7.5にてリンカーのマレイミド基にカップリングさせる(10倍モル過剰のリンカーおよび50mg/mLのPSA−SH濃度を使用)。反応混合物を室温にて穏やかな振盪下、2時間インキュベートする。次いで、過剰なリンカー試薬を除去し、アミノオキシ−PSAを透析濾過によって酸化バッファー(50mMリン酸ナトリウム、pH6.0)にバッファー交換する。バッファーをPellicon XL5kD 再生セルロース膜(Millipore, Billerica, MA)を用いて25回交換する。
【0094】
B.NaIOでの事前酸化後のrFIXの修飾
rFIXを、バッファー中に100μM過ヨウ素酸ナトリウムを用いた50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)中で酸化する。この混合物を、暗所下、4℃にて1時間振盪し、グリセロールを最終濃度5mMとなるように添加して、室温にて15分間クエンチした。PD−10脱塩カラム(GE Healthcare, Fairfield, CT)を用いた。次いで、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、低分子量の夾雑物を除去した。酸化したrFIXを、アニリンに添加して10mMの最終濃度として、5倍モル過剰のPSAとなるようにアミノオキシ−PSA試薬と混合する。反応混合物を、暗所下、室温にて穏やかな振盪の下、2時間インキュベートした。
【0095】
C.結合体の精製
HICによって、過剰なPSA試薬および遊離rFIXを除去する。この反応混合物の電気伝導度を180mS/cmに上げ、48mL Butyl - Sepharose FF(GE Healthcare, Fairfield, CT)を充填したカラムに注入する。このカラムは、50mM Hepes、3M 塩化ナトリウム、6.7mM 塩化カルシウム、0.01%Tween80、pH6.9であらかじめ平衡化しておいた。その後、結合体を、60%溶出バッファー(50mM Hepes、6.7mM塩化カルシウム、pH7.4)のリニアグラジエントにて40CV内に溶出させる。最終的に、PSA−rFIX含有画分を集め、再生セルロース製の30kD膜(Millipore)の使用によって、UF/DFに供する。この調製物を、総タンパク質量(BCA)およびFIX発色活性を測定することによって解析評価した。両改変体を用いて調製したPSA−rFIX結合体について、本来のrFIXと比べて50%を上回る比活性が求められた。
【0096】
(実施例11:アミノオキシ−PSA試薬の調製)
実施例3に従って、アミノオキシ−PSA試薬を調製した。最終生成物は、5kD膜(再生セルロース、Millipore)を用いて、pH7.2のバッファー(50mM Hepes)に対して透析濾過し、−80℃にて凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥後、この試薬を適切な容量の水に溶解し、糖質修飾を介するPSA−タンパク質結合体の調製に用いた。
【0097】
(実施例12:アミノオキシ−PSA試薬の合成の詳細)
Botyrynら(Tetrahedron 1997; 53: 5485-92)に従って、実施例1に概説した二工程有機合成にて、3−オキサ−ペンタン−1,5ジオキシアミンを合成した。
【0098】
工程1:
無水N,N−ジメチルホルムアミド700mL中のエンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミド(59.0g;1.00eq)の溶液に、無水KCO(45.51g;1.00eq)および2,2−ジクロロジエチルエーテル(15.84mL;0.41eq)を添加した。この反応混合物を50℃にて22時間撹拌した。この混合物を減圧下、乾燥するまで蒸発させた。残渣をジクロロメタン2L中に懸濁し、飽和NaCl水溶液(各1L)で2回抽出した。ジクロロメタン層をNaSOで乾燥させ、次いで、減圧下、乾燥するまで蒸発させ、高真空中で乾燥させ、3−オキサペンタン−1,5−ジオキシ−エンド−2’,3’−ジカルボキシジイミドノルボルネン64.5gを黄色がかった白の固体(中間体1)として得た。
【0099】
工程2:
無水エタノール800mL中の中間体1(64.25g;1.00eq)の溶液に、ヒドラジン水和物31.0mL(4.26eq)を添加した。次いで、この反応混合物を2時間還流した。混合物を、減圧下、溶媒を蒸発させることによって、開始容量の半分に濃縮した。生成した沈殿物を濾別した。残存するエタノール層を、減圧下、乾燥するまで蒸発させた。粗生成物である3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンを含む残渣を真空中で乾燥させ、46.3gを得た。この粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60;ジクロロメタン/メタノール混合物、9+1の定組成溶離)によってさらに精製し、精製した最終生成物の3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミン11.7gを得た。
【0100】
(実施例13:アミノオキシ−PSAポリマーの調製)
酸化したコロミン酸(23kDa)1.3gは、50mM酢酸ナトリウム(pH5.5±0.02)18mL中に溶解した。20倍モル過剰の1,11−ジアミノ−3,6,9−トリオキサウンデカン(3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンともよばれる)を、最小量の50mM酢酸ナトリウム(pH5.5±0.02)中に溶解し、PSA溶液に加えた。最終的なコロミン酸の濃度は62.5mg/mLであった。この反応混合物を、穏やかなミキサー(1分あたり22の振動)上で、22±1.0℃にて2±0.1時間インキュベートした。この後、上記反応混合物に160mg/mL NaCNBH溶液0.65mLを加え、最終濃度を5.00mg/mLとした。これを、混合のための十分なヘッドスペースを持つエンドトキシンフリーの気密容器内で、シェーカー(1分あたり22の振動)上で、4.0±1.0℃にて3.0±0.20時間インキュベートした。精製のために、サンプルを2mMトリエタノールアミン(pH8.0±0.02)で希釈し、20mg/mLの最終コロミン酸濃度とした。反応混合物を脱塩し、過剰な1,11−ジアミノ−3,6,9−トリオキサウンデカン、NaCNBH、および反応の副生物を除去した。これに引き続いて、20mMトリエタノールアミンバッファー(pH8.0±0.02)を用いてSephadex G25カラムで脱塩した。脱塩したサンプルのpHを、pH7.8〜8.0に調整し、20mM TEA pH8.0で1回、2mMトリエタノールアミン(TEA)pH8.0で2回、限外濾過/透析濾過した。このサンプルを凍結乾燥し、−80℃にて保存した。
【0101】
あるいは、脱塩および限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程の間、高塩濃度下で精製を行った。高塩濃度下での陰イオン交換クロマトグラフィーもまた用いて、高純度のアミノオキシ−PSAを作製した。同様にして、種々の分子量のアミノオキシ−PSAを合成した。
【0102】
(実施例14:ジアミノオキシ(3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミン)−PSAのβ−ガラクトシダーゼへのカップリング)
β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)の酸化のために、種々の濃度(0.157mMから2mMまで及ぶ)のNaIOを用いた。β−Gal 0.5mgを、5.75の酸性pHのもと、暗所下、4℃にて30分間酸化した。最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したβ−GalとジアミノオキシPSAポリマー(22kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25mMであり、一方、β−Galの濃度は0.125mg/mL〜0.76mg/mLまで及んだ。全ての反応をpH5.75で行った。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて実施し、1、2、および24時間の期間でサンプルを集めた。結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、このことを、ウエスタンブロッティングによっても確認した。
【0103】
最良の反応条件に基づき、β−Gal 1.9mgを、1.5mM NaIOを用いて、4℃にて30分間酸化し、次いで、最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したβ−GalとジアミノオキシPSAポリマーとを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物のポリマーおよびタンパク質の最終濃度はそれぞれ1.25mMおよび0.76mg/mLであった。反応混合物中の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて2時間実施した。精製および非精製の結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、このことを、抗PSA抗体を用いたウエスタンブロッティングによっても確認した。オールインワンβGalアッセイキット(Pierce)を用いると、PSA−βGal結合体のインビトロでの活性は、本来のタンパク質に匹敵した。アルデヒドリンカーケミストリーを用いて作製した比較結合体では50%未満の活性を観察した。さらに、プロセス全体を3倍までスケールアップした。
【0104】
(実施例15:ジアミノオキシ−PSAのフェチュインへのカップリング)
フェチュインを、10mM NaIOを用いて、暗所下、4℃にて60分間酸化し、10mMの最終濃度となるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したフェチュインとジアミノオキシPSAポリマー(23kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度はpH5.75で2.5mMであった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。この反応で最終タンパク質濃度は0.714mg/mLであり、反応を4℃にて2時間実施した。これらの結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、このことを、ウエスタンブロッティングによっても確認した。
【0105】
スケールアップ反応のために、フェチュイン5mgを、10mM NaIOを用いて、暗所下、4℃にて60分間酸化し、次いで、最終濃度が10mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したフェチュインとジアミノオキシPSAポリマー(23kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は5.75のpHで2.5mMであった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて実施し、2時間後にサンプルを集めた。精製および非精製の結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、このことを、ウエスタンブロッティングによっても確認した。
【0106】
(実施例16:求核触媒として作用するアニリンを用いたジアミノオキシ−PSAのフェチュインへのカップリング)
フェチュイン0.2mgを、10mM NaIOを用いて、暗所下、4℃にて30分間酸化し、次いで、最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したフェチュインとジアミノオキシPSAポリマー(23kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物の最終pHは5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。この反応で最終タンパク質濃度は0.125mg/mLであった。200mMアニリン溶液84.21μLを反応混合物1.6mLに加えた。反応を4℃にて一晩実施した。
【0107】
(実施例17:ジアミノオキシ−PSAのエリスロポイエチン(EPO)へのカップリング)
EPO 0.2mgを、10mM NaIOを用いて、4℃にて30分間酸化した。最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したEPOと23kDaのジアミノオキシポリマーとを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物中のEPOの最終濃度は0.125mg/mLであった。反応混合物の最終pHは5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて24時間実施した。非精製の結合体を、SDS PAGEを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られた。
【0108】
(実施例18:求核触媒として作用するアニリンを用いたジアミノオキシ−PSAのEPOへのカップリング)
EPO 0.2mgを、10mM NaIOを用いて、4℃にて30分間酸化した。最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することにより、酸化を停止させた。酸化したEPOとジアミノオキシPSAポリマー(22kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物の最終pHは5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。この反応で最終タンパク質濃度は0.125mg/mLであった。200mMアニリン溶液84.21μLを反応混合物1.6mLに加えた。反応を4℃にて一晩実施した。結合体を、SDS PAGEを用いて特徴付けた。この結合体でバンドの移動が見られた。この結合体の活性において、アニリンの悪影響は観察されなかった。
【0109】
(実施例19:ジアミノオキシ−PSAのDNA分解酵素へのカップリング)
DNA分解酵素の糖ポリシアル酸化のために、ウシ膵臓DNA分解酵素を結合体化反応に用いた。このDNA分解酵素のソースは凍結乾燥粉末として供給され、−20℃にて保存した。反応前に、本凍結乾燥粉末を酢酸ナトリウムバッファー(pH5.75)中に溶解した。糖ポリシアル酸化に用いたポリマーは、10kDa〜22kDaの範囲の分子量を有した。DNA分解酵素のグリコン部分の酸化のために、NaIOを酸化剤として1mMの最終濃度で用いた。5.75の酸性pHのもと、4℃にて30分間、DNA分解酵素を酸化した。最終濃度が2mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化が完了した後、ジアミノオキシPSAポリマーを1.25mMの最終濃度となるように添加することによって、結合体化反応を実施した。最終濃度が50mMまたは3.17mg/mLとなるようにNaCNBHを反応混合物に添加し、DNA分解酵素のポリシアル酸化を、4.0±1.0℃にて少なくとも2時間実施した。反応をポリマーに対して25倍モル過剰のTrisで停止させた。結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。活性は95%であると測定された(アルデヒドリンカーケミストリーを用いて作製した比較結合体で観察した50%以下と比較して)。
【0110】
(実施例20:ジアミノオキシ(3オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンリンカー)−PSAのβ−ガラクトシダーゼへのカップリング)
β−ガラクトシダーゼの酸化のために、2mMの濃度でNaIOを用いた。β−ガラクトシダーゼ 3mgを5.75の酸性pHのもと、4℃にて30分間酸化し、次いで、最終濃度が2mMとなるようにNaHSOを添加することにより、酸化を停止させた。酸化したβ−ガラクトシダーゼとジアミノオキシPSAポリマー(23kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.5mMであった。反応混合物中のβ−ガラクトシダーゼの最終濃度は0.867mg/mLであった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて2時間実施した。結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。
【0111】
(実施例21:ヒドラジド−コロミン酸の調製)
本発明者らは、アジピン酸ジヒドラジドを用いてPSA−ヒドラジド(コロミン酸−ヒドラジド)を調製するため、以下のプロトコールを用いた。他のPSA−ヒドラジドを作製するために類似の方法を用いた。
1 活性化コロミン酸1gを20mM酢酸ナトリウム(pH5.5±0.02)約10mL中に溶解する。最終的なコロミン酸の濃度は62.5mg/mLとする。
2 25倍モル過剰(酸化したコロミン酸「CAO」に対して)のアジピン酸ジヒドラジド(分子量174.2g)を最小量の20mM酢酸ナトリウム(pH5.5±0.02)中に溶解し、1の溶液に加える。
3 添加するアジピン酸ジヒドラジド量
【0112】
【数1】

【0113】
4 アジピン酸ジヒドラジド溶液を加えた後、コロミン酸の容量を最終濃度が62.5mg/mLとなるように酢酸ナトリウムで補充する。したがって、総反応容量は16mLである。
5 反応混合物を、シェーカー(1分あたり22振動)上で、22.0±1.0℃にて2±0.1時間インキュベートする。
6 濃縮したNaCNBH溶液(165mg/mL)を調製し、0.5mLを1の溶液に加えて、最終反応混合物中のこの最終濃度が5.0mg/mLとなるようにする。反応混合物を、シェーカー(1分あたり22振動)上で、4.0±1.0℃にて3.0±0.20時間インキュベートする。
7 適切な混合のために50mL余分ヘッドスペース(反応混合物が容器の蓋に触れないよう十分なスペースがある)を持つエンドトキシンフリーの気密容器内に反応混合物を保存する。
8 4℃にて3時間反応後、2mMトリエタノールアミン(pH8.0±0.02)でサンプルを希釈し(50mLまでボリュームアップする)、最終コロミン酸濃度を20mg/mLとする。
9 反応混合物を脱塩し、ポリマーから過剰な未処理のアジピン酸ジヒドラジド、NaCNBHなどを除去する。これは、GPC(XK 50 Sephadex G-25 medium matrix;1.8mgCA/mLマトリックス以下;ベッド高35cm;カラムボリューム687mL)によって、UV224nmおよび電気伝導度を観察することによってなされ得る。脱塩は20mMトリエタノールアミン(pH8.0±0.02)バッファーを用いて実施する。
10 脱塩後、コロミン酸−ヒドラジドは、限外濾過1サイクル、20mM TEA(pH8.0±0.02)を用いた透析濾過1サイクル、および2mM TEA(pH8.0±0.02)を用いた透析濾過少なくとも3サイクルに供する。これは3kDaのVivaflowカセットを用いてなされ得る。
11 脱塩したサンプルのpHをpH7.8〜8.0に調整する。必要に応じて、このサンプルを凍結乾燥し、引き続き再乾し、過剰な湿気を除去する。
【0114】
(実施例22:ヒドラジド−PSAのエリスロポイエチンへのカップリング)
エリスロポイエチン(EPO)の酸化のために、NaIOを10mMの濃度で用いた。EPO(1mg)を、pH5.75で4℃にて30分間酸化し、次いで、最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したEPOとヒドラジド−PSAポリマーとを用いて、結合体化反応を実施した。結合体化に用いたヒドラジド−PSAの分子量は24.34kDaであった。反応混合物中のヒドラジド−PSAの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物中のEPOの最終濃度は0.125mg/mLであった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて24時間実施した。結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。
【0115】
(実施例23:ヒドラジド−PSAのβ−ガラクトシダーゼへのカップリング)
β−ガラクトシダーゼ(0.5〜4.5mg)を、0.625〜2mMのNaIOを用いて、4℃にて30分間酸化した。最終濃度が5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したβ−ガラクトシダーゼと24.34kDa〜27.9kDaまで及ぶヒドラジド−PSAとを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のヒドラジド−PSAの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物中のβ−ガラクトシダーゼの最終濃度は0.125mg/mL〜0.76mg/mLまでの範囲内であった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて実施し、1、2、および24時間でサンプルを集めた。精製および非精製の結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。活性は84%であると測定された。アルデヒドリンカーケミストリーを用いて作製した比較結合体で50%未満の活性を観察した。
【0116】
(実施例24:ヒドラジド−PSAのフェチュインへのカップリング)
フェチュイン(0.25mg)を、NaIO(5または10mM)を用いて、4℃にて30または60分間酸化した。酸化に用いたNaIOの濃度に一致させるのに適当であるように、最終濃度が5または10mMとなるようにNaHSOを添加することにより、酸化を停止させた。酸化したフェチュインとアジピン酸ジヒドラジド−PSAポリマーとを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25〜2.5mMの間であった。反応混合物の最終pHは5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて1時間〜4時間実施した。結合体をSDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。反応条件の各セットにつき、SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。
【0117】
フェチュイン5mgのスケールアップ反応、引き続き、生じた結合体の精製を実施した。フェチュイン5mgを、10mM NaIOを用いて、4℃にて60分間酸化し、次いで、10mMの最終濃度となるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したフェチュインとアジピン酸ジヒドラジド−PSAポリマーとを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は2.5mMであった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて実施し、2時間でサンプルを集めた。精製および非精製の結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。
【0118】
(実施例25:ヒドラジド−PSAのDNA分解酵素へのカップリング)
DNA分解酵素を、0.2mM〜2mMまで及ぶ最終濃度になるようNaIOを用いて、4℃にて30分間酸化した。酸化に用いたNaIOの濃度に依存する2〜5mMの間の最終濃度となるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したDNA分解酵素に1.25mMの最終濃度となるようヒドラジド−PSAポリマーを添加することによって、酸化したDNA分解酵素の糖ポリシアル酸化を実施した。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加し、DNA分解酵素の糖ポリシアル酸化を、4℃にて1時間から2時間に及ぶ期間実施した。反応をポリマーに対して25倍モル過剰のTrisで停止させた。結合体を、SDS PAGEおよびウエスタンブロッティングを用いて特徴付けた。SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られ、ウエスタンブロッティングから陽性結果を得た。活性は49%であると測定された。
【0119】
(実施例26:アミノオキシリンカー(3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミン)を用いたβ−ガラクトシダーゼのPEG化)
β−ガラクトシダーゼ(1mg)を、1.5mMのNaIOを用いて、4℃にて30分間酸化した。最終濃度が1.5mMとなるようにNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。
【0120】
酸化したβ−ガラクトシダーゼとジアミノオキシ−PEGポリマー(20kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.25mMであった。反応混合物中のβ−ガラクトシダーゼの最終濃度は1mg/mLであった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応を4℃にて2時間実施した。非精製の結合体を、SDS PAGEを用いて特徴付け、SDS PAGEにおいて結合体に関してバンドの移動が見られた。活性は59%であると測定された。
【0121】
(実施例27:アミノオキシリンカーを用いたエリスロポイエチンのPEG化)
エリスロポイエチン(EPO;0.2mg)を、5または10mMのNaIOを用いて、50mMの酢酸ナトリウム(pH5.75)中で4℃にて45分間酸化し、次いで、(酸化に用いられたNaIOの濃度に一致させるように)5mMまたは10mMの最終濃度となるようNaHSOを添加することによって、酸化を停止させた。酸化したEPOとジアミノオキシ−PEGポリマー(20kDa)とを用いて、結合体化反応を実施した。反応混合物中のポリマーの最終濃度は1.5mMであった。反応混合物の最終pHはおよそ5.75であった。50mMまたは3.17mg/mLの濃度となるように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを反応混合物に添加した。反応の最終タンパク質濃度は0.4mg/mLであった。結合体化反応を4℃にて一晩実施した。
【0122】
したがって、本発明は、血液凝固タンパク質以外の化合物と、水溶性ポリマー、特に、PSAおよびmPSA、との結合体を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリマーを
(1)血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、
(2)ガングリオシド、または
(3)糖質基を含むドラッグデリバリーシステム
の酸化した糖質部分に結合体化させる方法であって、
該方法が、該酸化した糖質部分を該水溶性ポリマーと、結合体化を可能とする条件下で接触させる工程を含み、
該水溶性ポリマーがアミノオキシ基を含み、該酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該アミノオキシ基との間でオキシム結合が形成される、または、
該水溶性ポリマーがヒドラジド基を含み、該酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該ヒドラジド基との間でヒドラゾン結合が形成される、方法。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、デキストリン、またはポリオキサゾリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸(PSA)または修飾PSA(mPSA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PSAまたはmPSAが、コロミン酸または修飾コロミン酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PSAまたはmPSAが、2〜500のシアル酸単位を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガングリオシドが、糖鎖上に1以上のシアル酸が結合したスフィンゴ糖脂質(セラミドおよびオリゴ糖)を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ガングリオシドが、セラミドがグルコースに結合し、該グルコースが第1のガラクトースに結合し、該第1のガラクトースがN−アセチルグルコサミンに結合し、該N−アセチルグルコサミンが第2のガラクトースに結合したものを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ドラッグデリバリーシステムが、高分子ドラッグデリバリーシステム、例えば、抗体もしくはネオ糖タンパク質、または、合成ポリマー、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリリジン、もしくは重合アルキルシアノアクリレートを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ドラッグデリバリーシステムが、粒子ドラッグデリバリーシステム、例えば、
(i)アルブミンのような生分解性材料またはデキストランおよびアクリルシアノアクリレートポリマーのような半生分解性材料を含む、ナノ粒子またはマイクロ粒子、
(ii)非イオン系界面活性剤で形成される小胞、または
(iii)リポソーム
を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記糖タンパク質が、サイトカイン、例えば、インターロイキン、α−、β−、およびγ−インターフェロン、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子を含む)、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、植物タンパク質、例えば、レクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子および関連対立因子、可溶型腫瘍壊死因子受容体、インターロイキン受容体および可溶型インターロイキン受容体、成長因子、組織成長因子、トランスフォーミング増殖因子、例えば、TGFαまたはTGFβ、および上皮成長因子、ホルモン、ソマトメジン、色素性ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子、免疫グロブリン、例えば、IgG、IgE、IgM,IgA、およびIgD、モノクローナル抗体、エリスロポエチン(EPO)、血液凝固タンパク質以外の血液因子、ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、DNA分解酵素、フェチュイン、それらの断片、および上記タンパク質またはその断片のいずれかを含む融合タンパク質より選択される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
(1)、(2)、または(3)を過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)とインキュベートすることによって、前記糖質部分を酸化させる工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーを酸化させて、該水溶性ポリマーの末端単位にアルデヒド基を形成させる工程、および該酸化した水溶性ポリマーと、アミノオキシリンカーまたはヒドラジドリンカーとを反応させる工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
NaIOを用いて、前記水溶性ポリマーを酸化させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アニリンおよびアニリン誘導体より選択される求核触媒を含む緩衝液中で、前記酸化した糖質部分を、水溶性ポリマーと接触させる工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーがアミノオキシ基を含み、前記酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該アミノオキシ基との間でオキシム結合が形成される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アミノオキシ基が、酸化した水溶性ポリマーとアミノオキシリンカーとを反応させることによって形成され、該アミノオキシリンカーが、3−オキサ−ペンタン−1,5−ジオキシアミンまたは3,6,9−トリオキサ−ウンデカン−1,11−ジオキシアミンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水溶性ポリマーがヒドラジド基を含み、前記酸化した糖質部分と該水溶性ポリマー上の該ヒドラジド基との間でヒドラゾン結合が形成される、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドラジド基が、酸化した水溶性ポリマーとヒドラジドリンカーとを反応させることによって形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
還元性化合物の存在下でインキュベートすることによって、結合体化した(1)、(2)、もしくは(3)のオキシム結合またはヒドラゾン結合を還元する工程をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記還元性化合物が、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)またはアスコルビン酸(ビタミンC)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載の方法により得られ得る、糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの結合体。
【請求項22】
血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの結合体であって、
(a)該糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステム、および、
(b)(a)の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに結合した、少なくとも1のアミノオキシ−水溶性ポリマーであって、1以上の糖質部分を介して、該糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに付着されているアミノオキシ−水溶性ポリマーを含む、結合体。
【請求項23】
前記水溶性ポリマーが、PSAまたはmPSAである、請求項22に記載の糖タンパク質の結合体。
【請求項24】
血液凝固タンパク質以外の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムの結合体であって、
(a)該糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステム、および、
(b)(a)の糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに結合した、少なくとも1のヒドラジド−水溶性ポリマーであって、1以上の糖質部分を介して、該糖タンパク質、ガングリオシド、またはドラッグデリバリーシステムに付着されているヒドラジド−水溶性ポリマーを含む、結合体。
【請求項25】
前記水溶性ポリマーが、PSAまたはmPSAである、請求項24に記載の糖タンパク質の結合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500375(P2013−500375A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522241(P2012−522241)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001422
【国際公開番号】WO2011/012850
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507042545)リポクセン テクノロジーズ リミテッド (15)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】