非複製性ベクターワクチンの粘膜投与による鳥類の免疫処置
本発明は概して、免疫学およびワクチン接種技術の分野に関する。より具体的には、本発明は、鳥インフルエンザウイルスをコードする遺伝子などの、鳥類免疫原または抗原をコードする遺伝子を送達するための、組換えヒトアデノウイルスベクターを含む組成物を含めた、免疫原性およびワクチン組成物の鳥類へのエアゾールスプレーによる粘膜投与に関する。本発明はさらに、このような投与において使用するための方法および装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2008年9月26日に出願された米国仮出願第61/100,623号の優先権を主張するものである。
【0002】
2006年8月15日に出願された米国特許出願第11/504,152号、2005年8月15日に出願された米国特許出願第60/708,524号、2002年1月18日に出願された米国特許出願第10/052,323号、2002年4月5日に出願された米国特許出願第10/116,963号、2003年1月16日に出願された米国特許出願第10/346,021号、ならびに米国特許第6,706,693号、米国特許第6,716,823号、米国特許第6,348,450号、および1998年8月13日に出願されたPCT/US98/16739が言及されており、参照によりそれらの全容を本明細書に組み込む。
【0003】
前述の出願、およびその中で引用されるまたはその審査中の全文書(「出願引用文書」)、および出願引用文書中で引用または参照される全文書、および本明細書で引用または参照する全文書(「本明細書で引用する文書」)、および本明細書で引用する文書中で引用または参照する全文書、ならびに本明細書または参照により本明細書に組み込まれている任意の文書中で言及する任意の製品に関する、任意の製造者の説明書、記載、製品仕様書、および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれており、本発明の実施において利用することができる。
【0004】
本発明は概して、免疫学およびワクチン接種技術の分野に関する。より具体的には、本発明は、鳥インフルエンザウイルス遺伝子などの、鳥類免疫原または抗原をコードする遺伝子を鳥類に送達するための、E1欠損ヒトアデノウイルスベクターなどの組換え非複製性ベクターに関する。本発明はさらに、鳥類胚を含めた鳥類対象に鳥類免疫原を導入し発現させる方法、および鳥類対象において免疫原に対する免疫応答を誘発する方法、エアゾールスプレーまたは点眼剤を含めた粘膜経路による投与を含むような方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
鳥インフルエンザ(AI)は、鳥類種、他の動物、およびヒトに感染する高感染性の病原体である。1997年以来、AIウイルスがヒトに伝染した、いくつかの事例が存在している(Subbaraoら、1998年、Ungchusakら、2005年)。証拠は、鳥インフルエンザとヒトインフルエンザウイルスの間の遺伝子組換えが、病歴中に複数回起こったことも示す(Kawaokaら、1989年)。鳥類在来種とヒトは密接に接触しているので、ヒト集団へと種の壁をおそらく越える可能性がある新たなAIウイルス株の発生は、公衆衛生上の懸念であり続けると考えられる。
【0006】
鳥類の集団ワクチン接種は、AIウイルスの播種を妨げるため、およびヒトへの大流行のリスクを低減するための最も有望な手段であるように見える。不活化完全ウイルスワクチンを用いた鳥類のワクチンは、過去数年間にわたりいくつかの国で実施されている。これらのAIワクチンは感染した卵から採取した羊水尿膜腔液から調製され、ホルマリンまたはβ-プロピオラクトンによって後に不活化される(TollisおよびDi Trani、2002年)。しかしながら、新たなAIウイルス株の予想外の出現、ニワトリ胚に非常に致命的である型へのAIウイルスの進化(Woodら、2002年)、不活化ワクチンの個体への非経口送達の必要性、およびバイオテロリストによる致死的AI株の考えられる播種によって、安全かつ有効なAIワクチンの早急な開発および適時の供給は、重要であり、なお非常に困難な仕事となる。さらに、野生で感染したニワトリと、同じ株の不活化AIウイルスで以前にワクチン接種されたニワトリを識別することはできない(Normile、2004年)。
【0007】
AIウイルスのヘマグルチニン(HA)をコードする実験用組換え鶏痘ウイルスは、ヘマグルチニン化阻害(HI)血清応答は無視できる程度であったが、翼膜穿刺後にH5N2 AIウイルスの攻撃に対してニワトリを防御した(Beardら、1992年)。HAを発現する生存組換えワクシニアウイルスを翼膜を介して接種されたニワトリでも、致死的なAIウイルスの攻撃に対する防御免疫応答が発生し、低レベルの血清HI抗体が検出された(Chambersら、1988年)。消化管に向けた向性を有する水鳥起源のAI分離株は、経口AIワクチンとしてニワトリに接種されているが(Crawfordら、1998年)、この型のウイルスの固有に動的な進化のため、これらの分離株は新たなAIウイルス株に対して広く有効であるとは予想されない。
【0008】
バキュロウイルスベクターから発現されたHAタンパク質の皮下注射(Crawfordら、1999年)、および遺伝子銃を使用した皮膚へのHAをコードする発現プラスミドの接種(Fynanら、1993年)によって、鳥類を免疫処置することもできる。これらのAIワクチン接種は、鳥類が臨床兆候および死を示すのを予防すること、および相同HAを含有する攻撃性ウイルスの呼吸器内および腸内複製を低減することができる。ニューカッスル病ウイルスベクターからHAを発現する低コストのエアゾールAIワクチン(Swayne、2003年)、または非病原性インフルエンザウイルス骨格を含有する組換えインフルエンザウイルスが有効であり得る(Leeら、2004年、Webbyら、2004年)証拠も存在する。
【0009】
大部分の前述のAIワクチンは、労働集約型の非経口送達に頼るものである。経口およびエアゾールAIワクチンは、集団接種中に個々の鳥類に均一用量を送達する際の一貫性のなさに悩まされる。いくつかのワクチンにおいて使用する複製ベクターは、非天然微生物型を環境に導入することによってバイオハザードをももたらす。組換えインフルエンザウイルスワクチンは、再集合体インフルエンザウイルスと環境中で同時に循環する野生型AIウイルスの間の組換えによって、有害な再集合体を生成する可能性さえある(Hilleman、2002年)。
【0010】
ワクチン担体としての組換えアデノウイルス(「Ad」)ベクターの利用に関する、いくつかの注目すべき理由が存在する。Adベクターは、有糸分裂細胞と有糸分裂後細胞の両方にin situで形質導入することができる。さらに、高力価のウイルス(すなわち、1ml当たり1012を超えるpfu[プラーク形成単位])を含有するAdストックの調製物は生成するのが容易であり、これによって高い感染多重度(MOI)において細胞にin situで形質導入することができる。ワクチンとしてのそれらの長期の使用に基づいて、Adベクターはさらに証明済みの安全記録を有する。さらに、Adベクターは(少なくとも初期突発として)高レベルの遺伝子発現を誘導することができ、複製欠損Adベクターは、当技術分野でよく知られている技法を使用して、容易に生物学的操作、製造、および保存することができる。
【0011】
特異的受容体に対するAdベクターの高い親和性およびエンドソーム経路を回避するその能力(Curiel、1994年)のため、AdベースのワクチンはDNAワクチンより強力である。Adベクターは、そのファイバーと、ニワトリ細胞の表面にあるコクサッキーおよびアデノウイルス受容体(CAR)との結合によって、ニワトリ胚の一部に形質導入することができる(Tanら、2001年)。さらに、Ad構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与えることができる(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0012】
Adベースのワクチンは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI拘束性T細胞応答を誘導するそれらの能力において、自然感染の影響を模倣するが、病原体のゲノムのサブフラグメントのみがベクターから発現されるので、毒性に逆戻りする可能性が排除されている。ベクターによってコードされない病原体の特異的マーカーを使用して二事象を識別することができるので、この「選択的発現」によって、ワクチン接種済み-ただし-非感染動物とその感染相当物を区別する問題を解決することができる。特に、関連抗原遺伝子は野生サンプルから直接増殖およびクローニングすることができるので、病原体の増殖はベクターワクチンを作製するのに必要とされない(Rajakumarら、1990年)。これはH5N1などの非常に毒性が強いAI株からワクチンを生成するのに特に重要である。これらの株は増殖するのが危険で難しすぎるからである(Woodら、2002年)。前述の基準以外に、商業的関心も家禽産業における重要な要因である。現在のAIワクチン単独では、動き回る鳥に注射する労力を計算せずに、鳥1羽当たり約7セントのコストである(Normile、2004年)。
【0013】
複製不能E1/E3欠損ヒトAd血清型5(Ad5)由来ベクターは哺乳動物において広く試験されている(GrahamおよびPrevec、1995年)。抗原をコードする鳥類Adニワトリ胚致死的オーファン(CELO)ウイルスベクターの皮下または皮内注射によってニワトリを免疫処置したが(Francoisら、2004年)、ニワトリ細胞内で複製するその能力のため、CELOベクターは低いコンプライアンスレートを有し、おそらく有害である可能性がある。CELOは識別可能なE1、E3、およびE4領域を有していないので(Chioccaら、1996年)、複製不能CELOベクターは今回は免疫処置用の担体として利用することはできない。本発明は、広く様々な疾患設定で鳥類を保護するための安全かつ有効な遺伝子送達法を提供することによって、この必要性に対処し、したがってヒトへの鳥類病原体の伝播を予防する。
【0014】
ハーダー腺(副涙腺)(HG)はJohann Jacob Harder(1656〜1711)によって1694年に最初に記載され、大部分の陸生脊椎動物において見られる(Payne、1994年)。HGはニワトリにおいて眼球後方の眼か内に位置する管状胞状腺であり、その分泌管は身体の腺を離れて瞬膜の表面に達した後は形態学上異なる(Payne、1994年)。腺の機能は多様であり、a)目および瞬膜の潤滑、b)鳥類における免疫応答、c)げっ歯類における光受容、d)網膜-松果体軸の一部の形成、e)フェロモンの生成、f)げっ歯類における体温調節脂質の生成、g)いくつかの爬虫類における浸透圧調節、h)増殖因子の生成およびi)いくつかのカメにおける唾液生成を含む(Payne、1994年、Chieffi、1996年)。微生物病原体またはベクターワクチンへの眼部の曝露によって適応免疫応答が生じるように、HGが位置することが好ましい。
【0015】
ヒトAd5ベクターワクチンの筋肉内注射(Gao、2006年)または卵内投与(Toro、2007年)によって、鳥類病原体に対してニワトリを事前に免疫処置した。本明細書で記載するように、ニワトリにおいて適応粘膜免疫をもたらすHGの能力を評価するために、さらなる試験が必要であった。A/シチメンチョウ/ウィスコンシン/68のコドン最適化H5HA遺伝子を発現するRCAを含まないヒトAd5ベクター(AdTW68.H5ck)を用いた以前の試験は、一回の卵内免疫処置後に、高病原性AI(HPAI)H5N2A/ニワトリ/Quer/95およびH5N1A/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005株による攻撃に対する防御免疫を誘導した(Toro、2007年)。AIから既存のニワトリ集団を保護するために、卵内免疫処置に対する代替免疫処置プロトコルが必要とされる。インフルエンザウイルスは粘膜表面への曝露後に伝播するので、眼部施用後にニワトリにおいてH5HAに対する粘膜および全身性免疫を誘導する、このAdTW68.H5ckベクターの能力を試験した。AdTW68.H5ckベクターは、HG関連の眼部免疫処置後にニワトリにおいて粘膜および全身性免疫を誘導することができる。以前の発見(Toro、1996年)に基づいて、HGは粘膜エフェクター部位として免疫応答を誘導することができる免疫担当組織である可能性があると考えられる。さらに、HGのB細胞中でJ鎖が発現されるという観察によって、防御機構中の重要な組織としてのHGがさらに確認される。ニワトリJ鎖遺伝子は他種のそれと高度な相同性を示し、ニワトリ免疫系の発生の初期段階で発現される(Takahashi 2000年)。さらに、J鎖はIgAとIgMの重合および粘膜上皮を越えるそれらの輸送において重要な役割を果たし、したがって粘膜上皮を越えるポリマーIgA(pIgA)の輸送の要件となり得る(Johansen2000年)。ニワトリ(Gallus gallus)のポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)が近年クローニングされ(Wieland 2004年)、鳥類種におけるこの粘膜輸送系の保存、および防御粘膜免疫におけるその重要性を確認した。
【0016】
本出願中の任意の文書の引用または一体化は、このような文書が従来技術として本発明に利用可能であることを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国仮出願第61/100,623号
【特許文献2】米国特許出願第11/504,152号
【特許文献3】米国特許出願第60/708,524号
【特許文献4】米国特許出願第10/052,323号
【特許文献5】米国特許出願第10/116,963号
【特許文献6】米国特許出願第10/346,021号
【特許文献7】米国特許第6,706,693号
【特許文献8】米国特許第6,716,823号
【特許文献9】米国特許第6,348,450号
【特許文献10】PCT/US98/16739
【特許文献11】WO97/03211
【特許文献12】WO96/39154
【特許文献13】米国特許第5,990,091号
【特許文献14】WO98/00166
【特許文献15】WO99/60164
【特許文献16】米国特許出願第10/424,409号
【特許文献17】WO99/08713
【特許文献18】米国特許仮出願第60/683,638号
【特許文献19】米国特許第6,872,561号
【特許文献20】米国特許第6,642,042号
【特許文献21】米国特許第6,280,970号
【特許文献22】米国特許第6,255,108号
【特許文献23】日本国特許公開第9-173059号
【特許文献24】日本国特許公開第9-98778号
【特許文献25】国際公開第WO90/02803号
【特許文献26】米国特許第4,458,630号
【特許文献27】米国特許第RE35973号
【特許文献28】米国特許第6,668,753号
【特許文献29】米国特許第6,601,534号
【特許文献30】米国特許第6,506,385号
【特許文献31】米国特許第6,395,961号
【特許文献32】米国特許第6,286,455号
【特許文献33】米国特許第6,244,214号
【特許文献34】米国特許第6,240,877号
【特許文献35】米国特許第6,032,612号
【特許文献36】米国特許第5,784,992号
【特許文献37】米国特許第5,699,751号
【特許文献38】米国特許第5,438,954号
【特許文献39】米国特許第5,339,766号
【特許文献40】米国特許第5,176,101号
【特許文献41】米国特許第5,136,979号
【特許文献42】米国特許第5,056,464号
【特許文献43】米国特許第4,903,635号
【特許文献44】米国特許第4,681,063号
【特許文献45】米国出願第10/686,762号
【特許文献46】米国出願第10/216,427号
【特許文献47】米国出願第10/074/714号
【特許文献48】米国出願第10/043,025号
【特許文献49】米国特許第6,017,537号
【特許文献50】米国特許第2,909,462号
【特許文献51】米国特許第6,713,068号
【特許文献52】WO96/34109
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Fieldsら、Virology 2、Ch.67(3ded、Lippincott-Raven Publishers)
【非特許文献2】Pharmeuropa、Vol.8、No.2、1996年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ヒトアデノウイルスベクターワクチンは、卵内送達およびエアゾールスプレーによるものを含めて、迅速、安全、かつ有効に鳥類を免疫処置することができることが、現在驚くべきことに示されている。いくつかの鳥類病原体に対する鳥類の集団免疫処置は、多大な経済的損失を防ぐため、およびヒト集団への鳥インフルエンザウイルスなどの鳥類病原体の伝播を予防するために重要である。自動注入機を用いたワクチンまたは免疫原性組成物の卵内送達は、時機を逸せずに鳥類を集団免疫処置するための非労働集約型の方法である。あるいは、ワクチンまたは免疫原性組成物の粘膜(眼部またはエアゾールスプレー)送達は、家禽産業において通常実施される。さらに、粗粒子スプレー送達は、時機を逸せずに鳥類を集団免疫処置するための非労働集約型の方法である。粘膜経路によるワクチンは全身性免疫応答を誘発するだけでなく、病原体の入り口でも免疫応答を誘導する。他の鳥類用ワクチンと異なり、ヒトアデノウイルスベクターワクチンまたは免疫原性組成物の生成は致死的病原体の増殖は必要とせず、鳥類中で複製することができるベクターによる抗原または免疫原の伝播は含まない。さらに、これらの型のワクチンまたは免疫原性組成物による免疫処置は、ワクチン接種動物と自然感染動物の区別を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態では、本発明は、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現することができる、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを提供する。
【0021】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス配列はアデノウイルス血清型5に由来してよい。ヒトアデノウイルス配列は複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルスに由来してよい。
【0022】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1-αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択することができる。
【0023】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0024】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわちヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、およびノイラミニダーゼに由来してよい。
【0025】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9に由来してよい。
【0026】
本発明の別の実施形態では、獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現することができる、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのin vivo送達用の免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【0027】
一実施形態では、アデノウイルスDNA配列はアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来してよい。
【0028】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス配列はヒトアデノウイルス血清型5に由来してよい。ヒトアデノウイルス配列は複製欠損アデノウイルスに由来してよい。
【0029】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1-αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択することができる。
【0030】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0031】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわちヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、およびノイラミニダーゼに由来してよい。
【0032】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9に由来してよい。
【0033】
免疫原性組成物またはワクチンは、アジュバントをさらに含むことができる。
【0034】
免疫原性組成物またはワクチンは、追加のワクチンをさらに含むことができる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、細胞中に1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を導入し発現させる方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターと細胞を接触させるステップ、および細胞中で1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が発現するのに十分な条件下で細胞を培養するステップを含む方法を提供する。
【0036】
細胞は293細胞またはPER.C6細胞であってよい。
【0037】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0038】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、1つまたは複数の鳥ウイルスに由来してよい。
【0039】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0040】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0041】
さらなる実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターと鳥類胚を接触させ、それによって鳥類胚において1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原の発現を得るステップを含む方法を提供する。
【0043】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、1つまたは複数の鳥ウイルスに由来してよい。
【0044】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザウイルスに由来してよい。
【0045】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質または他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択することができる。
【0046】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0047】
鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法は、卵内送達によって行うことができる。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法は、エアゾールスプレー送達によって行うことができることが好ましい。
【0049】
本発明の別の実施形態では、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量の本発明の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態は、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。
【0051】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0052】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0053】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0054】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0055】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0056】
一実施形態では、感染法は卵内送達によって行うことができる。
【0057】
あるいは、感染法はエアゾールスプレー送達によって行うことができる。
【0058】
本発明の別の実施形態は、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。
【0059】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0060】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0061】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0062】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0063】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0064】
翼膜、翼端、胸筋、または腿筋の筋肉内注射によって鳥類対象を感染状態にすることができる。
【0065】
卵内またはエアゾールスプレーによって鳥類対象を感染状態にすることもできる。
【0066】
本発明の別の実施形態は、鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスを、卵内またはエアゾールスプレー投与するステップを含む方法を提供する。
【0067】
ヒトアデノウイルスは、アデノウイルス血清型5由来の配列を含むことができる。
【0068】
一実施形態では、ヒトアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含むことができる。
【0069】
一実施形態では、鳥類の病原体の抗原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する。
【0070】
別の実施形態では、鳥類の病原体の抗原は鳥インフルエンザに由来してよい。
【0071】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0072】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0073】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0074】
本発明の別の実施形態は、鳥類胚に免疫原性組成物を送達するための卵内投与装置を提供し、この装置は目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、この装置は組換えヒトアデノウイルスを鳥類胚に送達する。
【0075】
本発明のさらなる実施形態は、1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置を提供し、この装置は目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、この装置は組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する。
【0076】
一実施形態では、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、アデノウイルス血清型5由来の配列を含むことができる。
【0077】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含むことができる。
【0078】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する。
【0079】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0080】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0081】
さらに別の実施形態では、目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0082】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0083】
したがって、本発明の目的は、以前から知られている製品、製品の製造法、または製品の使用法のいずれも本発明内に含めないことであり、したがって本出願人は権利を有し、任意の以前から知られている製品、プロセス、または方法の否認をここに開示する。本発明は、本発明の範囲内に、USPTO(35 U.S.C.§112、第一章)またはEPO(EPCの第83条)の文書化された記載および付与要件に適合しない、任意の製品、プロセス、または製品の製造法もしくは製品の使用法を含むことは意図せず、したがって本出願人は権利を有し、任意の以前に記載された製品、製品の製造法、または製品の使用法の否認をここに開示することに、さらに留意されたい。
【0084】
本開示および特に特許請求の範囲および/または本文中では、例えば「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は米国特許法に属する意味を有することができ、例えばそれらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」などを意味することができること、および「から本質的になっている(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は米国特許法に属する意味を有し、例えばそれらは要素を明確には列挙しないが、従来技術中に見られる、または本発明の基本もしくは新規特性に影響を与える要素は除外することに留意されたい。
【0085】
これらおよび他の実施形態は以下の詳細な説明によって開示し、またはそこから明らかであり、かつそれによって含まれる。
【0086】
下記の発明を実施するための形態は、例として示されており、記載する具体的な実施形態に本発明を限定することは意図しておらず、参照により本明細書に組み込まれている添付の図面と共に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターの卵内および筋肉内注射によるニワトリの免疫処置を示すグラフである。群1は9日齢の孵化ニワトリ卵を表し、群2は18日齢の孵化ニワトリ卵を、それぞれ卵当たり5×1010pfuの用量において200μlの体積で表す。群3では、鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターを、動物当たり2.5×1010pfuの用量において100μlの体積で三羽の4週齢のニワトリに筋肉内注射した。
【図2】インキュベーション第10日または第18日にAdTW68.H5のみを卵内ワクチン接種した28日齢のSPFニワトリ、およびインキュベーション第10日または第18日に卵内ワクチン接種し、孵化後第15日に鼻腔内経路によって追加抗原刺激したニワトリ中で検出した、ヘマグルチニン化阻害抗体力価(ドット)を示すグラフである。バー、幾何学的平均log2[HI力価]。ナイーブ対照のニワトリにおいてHI力価は検出しなかった(データ示さず)。
【図3】孵化第18日に卵内ワクチン接種のみをした(7羽のヒヨコ)、または孵化後第15日に卵内ワクチン接種しAdTW68.H5で鼻腔内に追加抗原刺激した(12羽のヒヨコ)のいずれかの、孵化後第23日および第29日でのSPFニワトリにおける、ヘマグルチニン化阻害抗体を示すグラフである。D23およびD29、それぞれ孵化後第23日および第29日でのHI力価。ドット、個々の鳥類におけるlog2[HI力価]。バー、幾何学的平均log2[HI力価]。孵化後第23日および第29日で11羽のナイーブ対照のニワトリにおいてHI力価は検出しなかった(データ示さず)。
【図4】18日齢の白色レグホンニワトリの胚の卵内ワクチン接種を示すグラフである。卵内ワクチン接種は1011vpのAdTW68.H5(卵内)を使用して実施した。別の群では、卵内ワクチン接種した鳥を、同じ用量でのAdTW68.H5の鼻腔内注入によって、孵化後第15日に追加抗原刺激した(卵内+鼻腔内追加抗原刺激)。免疫処置なしのナイーブ胚は陰性対照として働いた(対照)。第34日齢のニワトリを、致死用量の高病原性A/Ck/Queretaro/14588-19/95(H5N2)AIウイルス株で、後鼻孔スリットを介して鼻腔内攻撃した。生存率の統計上有意な変化は、ログランク検定(Prism4.03、GraphPadソフトウェア)を使用した試験によって決定した。鼻腔内追加抗原刺激の施用有りまたは無しのAdTW68.H5による卵内ワクチン接種は、非ワクチン接種対照と比較したとき(P<0.001)、AIウイルスによる致死的攻撃に対してニワトリを有意に保護した(100%)。
【図5A】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図5B】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図5C】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図6】3×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターの接種によって実施した、第18日の卵内ワクチン接種を示すグラフである。Ad5ベクターはSartobind Q5膜(Sartorius North America、Inc.、Edgewood、NY)によって精製し、A195バッファー(Evans、2004年)に再縣濁した。第25日における事前攻撃用血清中HI抗体を分析した。マイナス記号(-)は攻撃に屈した鳥を示し、プラス記号(+)は攻撃を生き抜いた鳥を示す。死滅した鳥と比較して(不対t検定、Prism4.03)、生存した鳥は有意に高い事前攻撃血清中HI活性を有していた(P<0.001)。全てのナイーブ対照の鳥、および対照ベクターAdCMV-tetCによって免疫処置した鳥は、測定可能なHI抗体力価を生じなかった。
【図7】3×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターの接種によって実施した、第18日の卵内ワクチン接種を示すグラフである。Ad5ベクターはSartobind Q5膜(Sartorius North America、Inc.、Edgewood、NY)によって精製し、A195バッファー(Evans、2004年)に再縣濁した。対照および免疫処置した鳥は、第31日に105EID50のH5N1AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴル//244L/2005の鼻腔内投与によって攻撃した。
【図8】1日齢でのエアゾールスプレーワクチン接種後に、ニワトリの涙液中に存在したIgA抗H7を示すグラフである。群A、一回用量で1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積でのAdChNY94.H7のエアゾールスプレー。群B、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010のifuのAd5)のエアゾールスプレーおよび16日齢での追加抗原刺激の施用。群C、非ワクチン接種対照。
【図9】ニワトリ血清におけるヘマグルチニン化阻害(HI)抗体力価を示すグラフである。群A、一回用量で1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積でのAdChNY94.H7のエアゾールスプレー。群B、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010のifuのAd5)のエアゾールスプレーおよび16日齢での追加抗原刺激の施用。群C、非ワクチン接種対照。
【図10】眼部Ad5-H5曝露後第9日でのニワトリハーダー腺における、鳥インフルエンザヘマグルチニンの発現の図である。X日齢の白色レグホンを、AIヘマグルチニン遺伝子血清型5を発現する2.5×108感染単位のアデノウイルスに曝露させた。組織は酸性酢酸-アルコール中に2時間固定し、次にスクロース(30%)中でインキュベートし、その後組織をNeg50培地中に包埋し凍結した。5μm切片をクリオスタットで切断し、スライド上に置いて乾燥させた。スライドはアセトンで処理し、抗H5親和性精製ウサギ抗H5抗体を用いた4時間の染色前に1時間10%のFCSでブロッキングした。スライドは大々的に洗浄し、カバーガラスはVectashield Hard Set封入剤で封入した。対照ではなくAd5-H5曝露したHDGLがH5を発現した。
【図11】Ad5-H5で眼部を免疫処置したニワトリの血漿におけるヘマグルチニン化阻害(HI)力価の図である。血漿サンプルは、対照ニワトリ(n=11)および2.5×108のi.f.uのAd5-H5で2回(n=15)または3回(n=9)免疫処置したニワトリから回収した。4ヘマグルチニン化単位の低病原性A/シチメンチョウ/Wisconsin/68(H5N9)株を使用してHI力価を決定した。1.0Log2未満の力価には0の力価を任意に割り当てた。対照ニワトリではHI力価を検出しなかったが、一方HI力価は眼部投与後第14日で試験したそれぞれのAd5-H5投与で増大した。
【図12】Ad5-H5の眼部投与後のAd5特異的抗体の誘導の図である。Ad5特異的抗体は記載したようにELISAによって検出した。簡単に言うと、ウエルを死滅野生型Ad5ウイルスでコーティングし、ブロッキングし、連続二倍希釈サンプルを終夜インキュベートした。HRP結合IgAおよびIgGニワトリ特異的抗体を使用してAd5特異的抗体を検出した。反応は室温で30分後に停止し、405nmでの吸光度を測定した。バックグラウンドより0.100以上高いOD405での最高希釈を終点力価として定義した。対照ニワトリ由来の涙および血清においてIgGまたはIgA抗体のレベルは検出しなかった。
【図13】眼部免疫処置後のハーダー腺中のIgA分泌細胞の図である。免疫処置後第9日でハーダー腺から単離したリンパ球を単離し、抗原コーティングしたELISPOTプレートに載せ、CO2インキュベーター内で終夜インキュベートした。抗体分泌細胞はHRPと結合した抗IgA抗体を用いて検出し、その後基質を加えて、材料および方法中に記載したようにスポットを目に見える状態にした。対照または眼部攻撃したニワトリ由来のハーダー腺リンパ球を含有する1つのウエルを示す。
【図14】Ad5-H5を用いた眼部免疫処置後の、ハーダー腺中のH5およびAd5特異的IgG抗体分泌細胞の図である。Ad5-H5投与後の様々な日時でハーダー腺(HDGL)からリンパ球を単離し、H5およびAd5に関して抗体分泌細胞を分析した。106個のリンパ球当たりのIgGスポット形成細胞の平均数および一標準誤差を示す。Ad5特異的とH5特異的両方のIgG抗体が、眼部Ad5-H5投与後にハーダー腺において産生される。
【図15】Ad5-H5を用いた眼部免疫処置後の、ハーダー腺中のH5およびAd5特異的IgA抗体分泌細胞の図である。Ad5-H5投与後の様々な日時でハーダー腺からリンパ球を単離し、H5およびAd5に特異的なIgA抗体分泌細胞に関して分析した。106個のリンパ球当たりのIgAスポット形成細胞の平均数および一標準誤差を示す。Ad5特異的とH5特異的両方のIgA抗体がハーダー腺において産生し、Ad5-H5投与後第9日および第11日にピークに達する。
【図16】ニワトリのハーダー腺中のポリマーIg受容体の発現の図である。製造者のプロトコルに従いTri試薬(Molecular Research、Inc.)を使用して、三羽のニワトリのハーダー腺から全RNAを単離した。1マイクログラムの全RNAを逆転写し、94℃、1分、58℃、1分の35PCRサイクルによって増幅した。RT-PCR産物および100bpのDNAラダーを1.5%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウムで染色した。400bpのアンプリコンを観察し、pIgRmRNAがハーダー腺中で生成することを確認した。
【図17】涙液および血清中のニワトリIgAの免疫沈降の図である。涙液および血清は、ビオチニル化マウス抗ニワトリIgAモノクローナル抗体またはビオチニル化ポリクローナルヤギ抗ニワトリIgAと共に、4℃で終夜インキュベートした。翌日洗浄したストレプトアビジン結合セファロースビーズを、連続攪拌下で4℃で終夜加えた。翌日ビーズを洗浄し、SDSサンプルバッファー中で100℃において10分間沸騰させた。免疫沈降物は4〜12%のプレキャスト勾配ゲル上でSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分析した。製造者のプロトコルに従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して、タンパク質を目に見える状態にした。使用した略語:モノマーIgA=mIgA、ポリマーIgA=pIgA、テトラマーIgA=tIgA。
【発明を実施するための形態】
【0088】
用語「核酸」または「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形の、デオキシリボ核酸またはリボ核酸オリゴヌクレオチドを指す。この用語は、天然ヌクレオチドの知られているアナログを含有する核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを含む。この用語は、合成骨格を有する核酸様の構造も含む。例えば、Eckstein、1991年、Basergaら、1992年、Milligan、1993年、WO97/03211、WO96/39154、Mata、1997年、Strauss-Soukup、1997年およびSamstag、1996年を参照。
【0089】
本明細書で使用する「組換え」は、合成もしくは他の場合はin vitroで操作したポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、細胞または他の生物系において組換えポリヌクレオチドを使用して遺伝子産物を生成する方法、または組換えポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え手段」は、異なる供給源由来の様々なコード領域もしくはドメインもしくはプロモーター配列を有する核酸の、本発明のベクター中のポリペプチドコード配列の発現、例えば誘導的または構成的発現用の発現カセットまたはベクターへの連結も含む。
【0090】
用語「異種」は、核酸に関して使用するとき、核酸が細胞またはウイルス中に存在し、それが通常天然では見られない、または通常天然で見られるのと互いに同じ関係で見られない2個以上の部分列を含む、またはその発現レベル、もしくは細胞、または構造中の他の核酸もしくは他の分子との物理的関係が通常天然では見られないように、組換えによって操作されていることを示す。この文脈で使用する類似の用語は「外因性」である。例えば、天然で見られない形式で配置する無関係な遺伝子、例えば本発明のアデノウイルスベースのベクター中に挿入されたプロモーター配列と作用可能に連結したヒト遺伝子由来の2個以上の配列を有する異種核酸は、典型的には組換えによって生成する。一例として、目的の異種核酸は免疫原性遺伝子産物をコードすることができ、アデノウイルスはワクチンまたはワクチン組成物として治療的または予防的に投与する。異種配列はプロモーターと配列の様々な組合せを含むことができ、その例は本明細書で詳細に記載する。
【0091】
「抗原」は、免疫系によって認識され、免疫応答を誘導する物質である。この文脈で使用する類似の用語は「免疫原」である。
【0092】
本発明の文脈における「鳥類対象」は、任意および全ての鳥綱の飼育および野生鳥を指し、新顎類(Neognathae)および古顎類(Palaeognathae)だけには限られないが、これらを含む。新顎類目は、特にガンカモ目(Anseriformes)、アマツバメ目(Apodiformes)、サイチョウ目(Buceroformes)、ヨタカ目(Caprimulgiformes)、チドリ目(Charadriiformes)、コウノトリ目(Ciconiiformes)、ネズミドリ目(Coliiformes)、ハト目(Columbiformes)、ブッポウソウ目(Coraciiformes)、カッコウ目(Cuculiformes)、ワシタカ目(Falconiformes)、キリハシ目(Galbuliformes)、キジ目(Galliformes)、アビ目(Gaviiformes)、ツル目(Gruiformes)、エボシドリ目(Musophagiformes)、ツメバケイ目(Opisthocomiformes)、スズメ目(Passeriformes)、ペリカン目(Pelecaniformes)、フラミンゴ目(Phoenicopteriformes)、キツツキ目(Piciformes)、カイツブリ目(Podicipediformes)、ミズナギドリ目(Procellariiformes)、オウム目(Psittaciformes)、ペンギン目(Sphenisciformes)、フクロウ目(Strigiformes)、ハチドリ目(Trochiliformes)、キヌバネドリ目(Trogoniformes)、ミフウズラ目(Turniciformes)、およびヤツガシラ目(Upupiformes)を含む。古顎類目は、特にキーウィ目(Apterygiformes)、ヒクイドリ目(Casuariiformes)、ディノルニス目(Dinornithiformes)、レア目(Rheiformes)、ダチョウ目(Struthioniformes)、およびシギダチョウ目(Tiniamiformes)を含む。鳥類対象は、成体鳥類、幼鳥、および鳥類の胚/卵を含むことができる。
【0093】
遺伝子または核酸の「発現」は、クローニング系中および任意の他の状況における、細胞の遺伝子発現だけでなく、(1つまたは複数の)核酸の転写および翻訳も含む。
【0094】
本明細書で使用する「ベクター」は、一環境から他の環境への物体の移動を可能または容易にするツールである。例えば、組換えDNA技法中で使用するいくつかのベクターによって、DNAのセグメント(異種DNAセグメントなど、異種cDNAセグメントなど)などの物体を、標的細胞に移動することができる。本発明は、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、DNAベクター、またはそれらの組換え体を含むことができる組換えベクターを包含する。
【0095】
ベクター(例えば、目的のエピトープおよび/または抗原および/または治療剤をコードするベクター)中での発現用の外因性DNA、およびこのような外因性DNAを与える文書に関して、および核酸分子の発現を高めるための転写および/または翻訳因子の発現に関して、および特に「目的のエピトープ」、「治療剤」、「免疫応答」、「免疫性応答」、「防御的免疫応答」、「免疫性組成物」、「免疫原性組成物」、および「ワクチン組成物」などの用語に関しては、1999年11月23日に発行された米国特許第5,990,091号、ならびにWO98/00166およびWO99/60164、ならびにその中に引用された文書およびその特許およびこれらのPCT出願の審査中の記録文書に言及されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれている。したがって、米国特許第5,990,091号、ならびにWO98/00166およびWO99/60164、ならびにその中に引用された文書およびその特許およびこれらのPCT出願の審査中の記録文書、ならびに本明細書に引用したまたは他の場合参照により本明細書に組み込んだ他の文書は本発明を実施する際に参考にすることができ、かつ、その中に引用された全ての外因性核酸分子、プロモーター、およびベクターは本発明を実施する際に使用することができる。この件については、米国特許第6,706,693号、米国特許第6,716,823号、米国特許第6,348,450号、米国特許出願第10/424,409号、米国特許出願第10/052,323号、米国特許出願第10/116,963号、米国特許出願第10/346,021号、およびPCT/US98/16739から1999年2月25日に公開されたWO99/08713でも言及されている。
【0096】
本明細書で使用する用語「免疫原性組成物」および「免疫性組成物」および「免疫原性または免疫性組成物」は、本発明のアデノウイルスベクターおよびウイルスから発現される目的の抗原または免疫原に対する免疫応答を誘導する、例えば、対象への投与後に、目的の標的免疫原または抗原に対する免疫応答を誘導する任意の組成物を含む。用語「ワクチン性組成物」および「ワクチン」および「ワクチン組成物」は、目的の(1つまたは複数の)抗原に対する防御的免疫応答を誘導する、または抗原に対して効率よく防御する、例えば、対象への投与または注射後に、標的抗原もしくは免疫原に対する防御的免疫応答を誘導する、または本発明の発明であるアデノウイルスベクターから発現される抗原または免疫原に対する効率よい防御をもたらす任意の組成物を含む。用語「獣医学用組成物」は、治療用タンパク質、例えばエリスロポイエチン(EPO)など、または免疫調節タンパク質、例えばインターフェロン(IFN)などを発現する獣医学用途のベクターを含む任意の組成物を意味する。同様に、用語「医薬組成物」は、治療用タンパク質の発現用ベクターを含む任意の組成物を意味する。
【0097】
「免疫学的に有効な量」は、対象に投与すると、目的の遺伝子産物に対する免疫応答をもたらす、目的の遺伝子をコードする組換えベクターの量または濃度である。
【0098】
「循環組換え型」は、2個以上の亜型または株の間で遺伝子再集合を経た組換えウイルスを指す。本発明の文脈で使用する他の用語は「ハイブリッド型」、「組換え型」、および「再集合型」である。
【0099】
「臨床分離株」は、例えば、感染対象から単離され、高増殖性ドナーウイルスの実験適合マスター株と共に実験細胞または対象において再評価された、頻繁に使用されるウイルスの実験株を指す。
【0100】
「野生分離株」は、感染対象または環境から単離されるウイルスを指す。
【0101】
本発明の方法を適切に施用してワクチンとして疾患を予防することができ、または治療接種として疾患の症状に対する軽減をもたらすことができる。
【0102】
本発明の組換えベクターは単独、または免疫性または免疫原性組成物の一部としてのいずれかで対象に投与することができる。本発明の組換えベクターを使用して、(1つまたは複数の)タンパク質のin vivo発現によって目的の対象に、1つまたは複数のタンパク質を送達または投与することもできる。
【0103】
本発明によって得られる免疫性産物および/または抗体および/または発現産物をin vitroで発現させ、このような免疫性および/または発現産物および/または抗体が典型的に使用される形式で使用することが可能であること、およびこのような免疫性および/または発現産物および/または抗体を発現する細胞はin vitroおよび/またはex vivoの適用例において利用することができること、例えば、このような使用および適用例は、診断、アッセイ、ex vivo療法(例えば、遺伝子産物および/または免疫応答を発現する細胞をin vitroで増殖し宿主または動物に再導入する場合)などを含むことができることに留意されたい。米国特許第5,990,091号、WO99/60164およびWO98/00166およびその中に引用された文書を参照。さらに、本明細書の方法から単離した、または本明細書の投与法に従ってin vitroで増殖した細胞から単離した発現抗体または遺伝子産物は、サブユニットエピトープまたは抗原または治療剤または抗体の投与と同様に、組成物において投与して、免疫を誘導する、治療応答を刺激する、および/または受動免疫を刺激することができる。
【0104】
本明細書で使用する用語「ヒトアデノウイルス」は、マストアデノウイルス属のメンバーを含め、アデノウイルス科の全てのヒトアデノウイルスを含むものとする。今日まで、51を超えるヒトアデノウイルスの血清型が同定されている(例えば、Fieldsら、Virology 2、Ch.67(3ded、Lippincott-Raven Publishers)を参照)。アデノウイルスは血清群A、B、C、D、E、またはFであってよい。ヒトアデノウイルスは血清型1(Ad1)、血清型2(Ad2)、血清型3(Ad3)、血清型4(Ad4)、血清型6(Ad6)、血清型7(Ad7)、血清型8(Ad8)、血清型9(Ad9)、血清型10(Ad10)、血清型11(Ad11)、血清型12(Ad12)、血清型13(Ad13)、血清14(Ad14)、血清型15(Ad15)、血清型16(Adl6)、血清型17(Ad17)、血清型18(Ad18)、血清型19(Ad19)、血清型19a(Ad19a)、血清型19p(Ad19p)、血清型20(Ad20)、血清型21(Ad21)、血清型22(Ad22)、血清型23(Ad23)、血清型24(Ad24)、血清型25(Ad25)、血清型26(Ad26)、血清型27(Ad27)、血清型28(Ad28)、血清型29(Ad29)、血清型30(Ad30)、血清型31(Ad31)、血清型32(Ad32)、血清型33(Ad33)、血清型34(Ad34)、血清型35(Ad35)、血清型36(Ad36)、血清型37(Ad37)、血清型38(Ad38)、血清型39(Ad39)、血清型40(Ad40)、血清型41(Ad41)、血清型42(Ad42)、血清型43(Ad43)、血清型44(Ad44)、血清型45(Ad45)、血清型46(Ad46)、血清型47(Ad47)、血清型48(Ad48)、血清型49(Ad49)、血清型50(Ad50)、血清型51(Ad51)、または血清型5(Ad5)であってよいが、これらの例だけには限られない。
【0105】
本発明によってさらに企図されるのは、2種以上のアデノウイルス血清型由来のサブウイルス粒子を含むことができる、組換えベクター、免疫原性組成物、および組換えアデノウイルスである。例えば、アデノウイルスベクターは特定組織または細胞型に対する改変された親和性(tropism)を示すことができ(Havenga、M.J.E.ら、2002年)、したがって、様々なアデノウイルス血清型由来の異なるアデノウイルスカプシド、すなわちファイバー、またはペントンタンパク質の混合および適合は有利であり得ることは知られている。ファイバーおよびペントンを含めたアデノウイルスカプシドの修飾は、非修飾アデノウイルスと異なる親和性を有するアデノウイルスベクターをもたらすことができる。修飾され標的細胞に感染するその能力が最適化されたアデノウイルスベクターは、治療または予防用量の有意な低下を可能にし、低下した局所および播種毒性をもたらすことができる。
【0106】
アデノウイルスは非エンベロープDNAウイルスである。アデノウイルス由来のベクターは、それらを遺伝子導入に非常に有用にするいくつかの特徴を有する。本明細書で使用する「組換えアデノウイルスベクター」は、1つまたは複数の異種ヌクレオチド配列(例えば、2、3、4、5個またはそれより多くの異種ヌクレオチド配列)を有するアデノウイルスベクターである。例えば、アデノウイルスの生物学的性質は詳細に特徴付けられ、アデノウイルスは重度のヒトの病状とは関係なく、このウイルスは宿主細胞にそのDNAを導入する際に非常に有効であり、このウイルスは広く様々な細胞に感染することができ、広い宿主範囲を有し、このウイルスは比較的容易に多量に生成することができ、ウイルスゲノムの初期領域1(「E1」)の欠失によって、このウイルスを複製欠損および/または非複製状態にすることができる。
【0107】
アデノウイルスのゲノムは、それぞれの鎖の5'末端と共有結合した55-kDaの末端タンパク質を含む、約36,000塩基対(「bp」)の線状二本鎖DNA分子である。AdのDNAは、血清型に応じた正確な長さである約100bpの同一の逆方向末端反復(「ITR」)を含有する。ウイルスの複製起点はITR内ゲノム末端に正確に位置する。DNA合成は二段階で起こる。最初に、鎖置換によって複製が進行し、娘二本鎖分子および親置換鎖が生成する。置換鎖は一本鎖であり、「パンハンドル」中間体を形成することができ、これが複製開始および娘二本鎖分子の生成を可能にする。あるいは、複製がゲノムの両末端から同時に進行し、パンハンドル構造を形成する必要性を除去する可能性がある。
【0108】
増殖感染サイクル中、ウイルスの遺伝子は二期、ウイルスDNA複製までの時間である初期、およびウイルスDNA複製の開始と一致する後期で発現される。初期の間は、領域E1、E2、E3およびE4によってコードされる初期遺伝子産物のみが発現され、それらはウイルス構造タンパク質の合成用に細胞を調製するいくつかの機能を果たす(Berk、A.J.、1986年)。後期の間は、後期ウイルス遺伝子産物が初期遺伝子産物以外に発現され、宿主細胞のDNAおよびタンパク質合成は中断する。結果として、細胞はウイルスDNAおよびウイルス構造タンパク質の生成に専念する状態になる(Tooze、J.、1981年)。
【0109】
アデノウイルスのE1領域は、標的細胞の感染後に発現されるアデノウイルスの第一領域である。この領域は2個の転写単位、E1AおよびE1B遺伝子からなり、この両方が初代(胚性)げっ歯類培養物の癌遺伝子の形質転換に必要とされる。E1A遺伝子産物の主な機能は、静止細胞が細胞周期に入るのを誘導すること、細胞のDNA合成を再開させること、およびE1B遺伝子およびウイルスゲノムの他の初期領域(E2、E3およびE4)を転写により活性化することである。E1A遺伝子単独での初代細胞のトランスフェクションは無制限の増殖(不死化)を誘導することはできるが、完全な形質転換はもたらさない。しかしながら、E1Aの発現は、大抵の場合、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の誘導をもたらし、ごくたまに不死化が得られる(Jochemsenら、1987年)。E1B遺伝子の同時発現はアポトーシスの誘導、および完全な形態形質転換が起こるのを妨げるのに必要とされる。樹立した不死化細胞系では、E1Aの高レベルの発現がE1Bの不在下で完全な形質転換を引き起こす可能性がある(Roberts、B.E.ら、1985年)。
【0110】
E1Bコードタンパク質は細胞機能を再誘導する際にE1Aをアシストしてウイルス複製を可能にする。核内にほぼ局在する複合体を形成するE1Bの55kDおよびE4の33kDタンパク質は、宿主タンパク質の合成を阻害する際、およびウイルス遺伝子の発現を容易にする際に機能する。それらの主な影響は、感染後期の開始と同時に、核から細胞質へのウイルスmRNAの選択的輸送を確立することである。E1Bの21kDタンパク質は増殖感染サイクルの正確な一時的制御に重要であり、したがってウイルスのライフサイクルが終了する前の宿主細胞の時期尚早死を予防する。E1Bの21kDの遺伝子産物を発現することができない変異ウイルスは、宿主細胞染色体DNAの過剰な分解を伴い(deg-表現型)、細胞変性効果が高い(cyt-表現型;Tellingら、1994年)、短い感染サイクルを示す。E1A遺伝子がさらに突然変異するときDegおよびcytの表現型は抑制され、これらの表現型はE1Aの関数であることが示される(White、E.ら、1988年)。さらに、E1Bの21kDaのタンパク質はE1Aが他のウイルス遺伝子にスイッチを入れる割合を低下させる。どの機構によってE1B 21kDがこれらのE1A依存機能を抑制するかは、未だに知られていない。
【0111】
例えばレトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスは宿主細胞のゲノムに効率よく組み込まず、非分裂細胞に感染することができ、in vivoで組換え遺伝子を効率よく導入することができる(Brodyら、1994年)。これらの特徴によって、アデノウイルスは、その必要がある細胞、組織または対象への例えば目的の抗原または免疫原のin vivo遺伝子導入の魅力的な候補となる。
【0112】
多数の欠失を含有するアデノウイルスベクターを使用して、ベクターの保持能力を増大すること、および複製可能アデノウイルス(RCA)を生成する組換えの可能性を低減することの両方が可能である。アデノウイルスが多数の欠失を含有する場合、それぞれの欠失が、単独で存在する場合、複製欠損および/または非複製アデノウイルスをもたらすことは必要ではない。欠失の1つによってアデノウイルス複製欠損または非複製になる限り、追加的な欠失を他の目的で、例えば異種ヌクレオチド配列に関するアデノウイルスゲノムの保持能力を増大するために含めることができる。一実施形態では、2個以上の欠失が機能タンパク質の発現を妨げ、アデノウイルス複製欠損および/または非複製および/または弱毒化状態になる。別の実施形態では、全ての欠失が、アデノウイルス複製欠損および/または非複製および/または弱毒化状態にし得る欠失である。しかしながら、本発明は、複製可能および/または野生型である、すなわち対象中での感染および複製に必要な全てのアデノウイルス遺伝子を含む、アデノウイルスおよびアデノウイルスベクターも含む。
【0113】
アデノウイルス組換えを利用する本発明の実施形態は、E1欠損もしくは欠失、またはE3欠損もしくは欠失、またはE4欠損もしくは欠失、またはE1およびE3、またはE1およびE4、またはE3およびE4、またはE1、E3、およびE4欠失の欠失を含むアデノウイルスベクター、またはその中で全てのウイルス遺伝子が欠失した「ガットレス」アデノウイルスベクターを含むことができる。アデノウイルスベクターは、E1、E3、またはE4遺伝子の突然変異、またはこれらもしくは全てのアデノウイルス遺伝子の欠失を含むことができる。E1の突然変異によってベクターの安全性の限界が生じる。E1欠損アデノウイルス変異体は非許容細胞において複製欠損および/または非複製であると言われており、特に少なくとも、非常に弱毒化状態であるからである。E3の突然変異は、アデノウイルスがMHCクラスI分子を下方制御する機構を妨害することによって抗原の免疫原性を高める。E4の突然変異は、後期遺伝子の発現を抑制することによってアデノウイルスベクターの免疫原性を低減させ、したがって同じベクターを利用する反復型の再ワクチン接種を可能にすることができる。本発明は、E1、またはE3、またはE4、またはE1およびE3、またはE1およびE4が欠失または突然変異した任意の血清型または血清群のアデノウイルスベクターを包含する。これらのアデノウイルス遺伝子の欠失または突然変異は、これらのタンパク質活性の低下または実質的に完全な消失をもたらす。
【0114】
「ガットレス」アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターファミリー中の他の型のベクターである。その複製はヘルパーウイルス、およびE1aとCreの両方を発現する特別なヒト293細胞系、自然環境中に存在しない条件を必要とし、このベクターは全てのウイルス遺伝子を欠いており、したがって、ワクチン担体としてのこのベクターは非免疫原性であり、再ワクチン接種用に多数回接種することができる。「ガットレス」アデノウイルスベクターは、目的の(1つまたは複数の)抗原または免疫原を収容するための36kbのスペースをさらに含有し、したがって細胞への多数の抗原または免疫原の同時送達が可能である。
【0115】
当技術分野で知られている他のアデノウイルスベクター系は、AdEasy系(Heら、1998年)および後に改変されたAdEasier系(Zengら、2001年)を含み、これらは、終夜でBJ5183細胞などの大腸菌(Escherichia coli)細胞中でドナーベクターとAdヘルパーベクターの間の相同的組換えが起こるのを可能にすることによって、迅速に293細胞において組換えAdベクターを作製するために開発された。pAdEasyはアデノウイルス構造配列を含み、目的の抗原または免疫原を発現するpShuttle-CMVなどのドナーベクターとトランスで供給されると、アデノウイルスカプシドにおいて抗原または免疫原(例えば、複数の免疫原および/または複数の抗原)のパッケージングをもたらす。pAdEasyの配列は当技術分野でよく知られ公開されており、かつStratageneによって市販されている。
【0116】
本発明は、AdHigh系(米国特許仮出願第60/683,638号)を使用して作製することができる。AdHighは、鳥類対象に有害または致命的であり得るRCAが生成するリスクなしで、高力価の組換えアデノウイルスを作製する、安全、迅速、および有効な方法である。さらにRCAは、ヒトに対して病原性であり、フードチェーン中に存在するのが望ましくない可能性がある。AdHigh系はpAdHighなどの修飾型シャトルプラスミドを使用して、大腸菌細胞中でアデノウイルス骨格プラスミドを有する組換え体を作製した後に、PER.C6細胞などの許容細胞中でのRCAを含まないアデノウイルスの生成を促進する。これらのシャトルプラスミドは、鳥類免疫原または抗原、例えば鳥インフルエンザの免疫原または抗原などの容易な挿入のための、ポリリンカーまたは多数のクローニング部位を含有する。細菌細胞(すなわち、BJ5183)におけるpAdEasyなどのアデノウイルスヘルパープラスミドを併用したアデノウイルスシャトルプラスミドの組換えを容易に実施して、本発明の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルスを生成することができる。クローニングおよび制限分析によって組換えベクターを生成する方法は、当業者にはよく知られている。
【0117】
ヒトAd5は天然では鳥類で見られず、かつRCAを含まないAd5ベクターはE1の不在下ではヒト細胞中で複製しない。したがって、E1/E3欠損ヒトAd5ベクターを使用する免疫処置レジメンの安全性プロファイルは非常に望ましい。さらに、このようなベクターは、鳥類細胞においてそれが形質導入可能であり複製することができないために、家禽類におけるワクチン担体として使用することができる。Ad5ベクターは、そのファイバーと、ニワトリ細胞の表面上にあるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)との結合によって、皮膚粘膜界面に沿って、ニワトリ細胞の一部に形質導入することができる(Tanら、2001年)。Ad5構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与える(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0118】
Ad5ベクターワクチンは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI拘束性T細胞応答を誘導するそれらの能力において自然感染の影響を模倣するが、病原体のゲノムのサブフラグメントのみがベクターから発現されるので、毒性に逆戻りする可能性が排除されている。ベクターによってコードされない病原体の特異的マーカーを使用して二事象を識別することができるので、この「選択的発現」によって、ワクチン接種済み-ただし-非感染動物とその感染相当物を区別する問題を解決することができるはずである。Ad5ベクターワクチンは容易に生成、生物学的操作、製造、および保存される。最も特に、関連抗原遺伝子は合成することができるので、病原体の増殖はベクターワクチンを作製するのに必要とされない(Toroら、2008年)。これはH5N1 AIワクチンを生成するのに特に重要である。この株は、危険であり得、増殖が難しいからである(Woodら、2002年)。
【0119】
RGDモチーフなどの特異的配列モチーフをアデノウイルスベクターのH-Iループに挿入してその感染性を高めることができる。この配列は、特定細胞外マトリクスおよび接着性タンパク質とインテグリンと呼ばれる細胞表面受容体のスーパーファミリーの相互作用に、必要不可欠であることが示されている。RGDモチーフの挿入は免疫不全対象において有利に有用となる可能性がある。前に記載したベクターなどのアデノウイルスベクターのいずれかに特異的抗原または免疫原またはそれらの断片をクローニングすることによって、アデノウイルス組換え体を構築する。アデノウイルス組換え体を使用して免疫処置剤として獣医学的用途の細胞を形質導入する(例えば、参照によりに組み込まれている米国特許出願第10/424,409号を参照)。
【0120】
本発明のアデノウイルスベクターは、in vitroとin vivoの両方で細胞に鳥類抗原または免疫原を発現する核酸を送達するのに有用である。特に、本発明のベクターを有利に利用して、動物細胞に核酸を送達または導入することができる。一実施形態では、動物細胞は鳥類および哺乳動物細胞である。目的の核酸はペプチドおよびタンパク質をコードする核酸を含む。一実施形態では、核酸は(例えば、医学または獣医学的用途の)治療剤または免疫原性(例えば、ワクチン用)ペプチドまたはタンパク質をコードすることができる。
【0121】
一実施形態では、目的の抗原または免疫原をコードするコドンは「最適化」コドンである。すなわちコドンは、例えばインフルエンザによって頻繁に使用されるコドンの代わりに、例えば高度に発現される鳥類遺伝子で頻繁に出現するコドンである。このようなコドンの使用は、ヒトまたは鳥類細胞中で抗原または免疫原の有効な発現をもたらす。他の実施形態では、例えば、目的の抗原または免疫原が細菌、酵母または他の発現系中で発現されるとき、コドン使用パターンが変わり、その抗原または免疫原が発現されている生物中で高度に発現される遺伝子に関してコドンの偏りが表れる。多種の高度に発現される遺伝子に関するコドン使用パターンは文献において知られている(例えば、Nakamuraら、1996年、Wangら、1998年、McEwanら、1998年)。
【0122】
さらなる代替として、アデノウイルスベクターを使用して培養中の細胞に感染させ、望ましい遺伝子産物を発現させる、例えば目的のタンパク質またはペプチドを生成することが可能である。一実施形態では、タンパク質またはペプチドは培地に分泌され、当技術分野で知られている通常の技法および本明細書で与える技法を使用して、そこから精製することができる。タンパク質の細胞外分泌を誘導するシグナルペプチド配列は当技術分野で知られており、これをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で知られている通常の技法によって、目的のペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作用可能に連結することができる。あるいは、細胞を溶解することができ、発現した組換えタンパク質は細胞溶解物から精製することができる。一実施形態では、細胞は動物細胞である。別の実施形態では、動物細胞は鳥類または哺乳動物細胞である。さらに別の実施形態では、細胞はアデノウイルスによる形質導入が可能である可能性がある。
【0123】
このような細胞には、PER.C6細胞、911細胞、およびHEK293細胞があるが、これらだけには限られない。本発明は、鳥類胚線維芽細胞、DF-1細胞など、鳥類幹細胞、参照によりに組み込まれている米国特許第6,872,561号、米国特許第6,642,042号、米国特許第6,280,970号および米国特許第6,255,108号中に記載された細胞など、鳥類リンパ芽球、鳥類上皮細胞、特にニワトリ胚由来細胞株CHCC-OU2(Ogura、H.ら、1987年、日本国特許公開第9-173059号)、ウズラ由来細胞株QT-35(日本国特許公開第9-98778号)などだけには限られないが、これらの鳥類細胞の使用も包含する。感染、トランスフェクション、または任意の型の遺伝子導入が可能である任意の鳥類細胞を、本発明を実施する際に使用することができる。
【0124】
宿主細胞を培養するための培養培地には、組織培養に一般に使用される培地、特にM199-アールベース、イーグルMEM(E-MEM)、ダルベッコMEM(DMEM)、SC-UCM102、UP-SFM(GIBCO BRL)、EX-CELL302(Nichirei)、EX-CELL293-S(Nichirei)、TFBM-01(Nichirei)、ASF104などがある。特定細胞型に適した培養培地は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)またはヨーロピアンコレクションオブセルカルチャーズ(ECACC)で見つけることができる。培養培地には、L-グルタミンなどのアミノ酸、塩、抗真菌剤またはFungizone(登録商標)などの抗菌剤、ペニシリン-ストレプトマイシン、動物血清などを補充することができる。細胞培養培地は場合によっては無血清であってよい。
【0125】
本発明は、ワクチンとして有用なベクターも提供する。免疫原または抗原はアデノウイルスカプシド中に存在することができ、あるいは、抗原は組換えアデノウイルスゲノム中に導入した抗原または免疫原から発現される可能性があり、本発明のアデノウイルスによって保持される可能性がある。アデノウイルスベクターは、目的の任意の抗原または免疫原をもたらすことができる。免疫原の例は本明細書で詳述する。
【0126】
抗原または免疫原は、適切な発現制御配列と作用可能に結合することができる。発現ベクターは、複製起点(細菌起源、例えばpBR322などの細菌ベクター由来、または真核生物起源、例えば自己複製配列(ARS)であってよい)、プロモーター、エンハンサー、およびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要な情報処理部位、パッケージングシグナル、および転写終了配列などの発現制御配列を含む。
【0127】
例えば、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、標的細胞に送達される(1つまたは複数の)抗原または免疫原配列と作用可能に結合した、適切な転写/翻訳制御シグナルおよびポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル)を含有することができる。所望のレベルおよび組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサーエレメントを使用することができる。プロモーターは、所望の発現パターンに応じて、構成的または誘導的(例えば、メタロチオネインプロモーター)であってよい。プロモーターは原型または外来であってよく、天然または合成配列であってよい。外来によって、転写開始領域が導入される野生型宿主において、その転写開始領域が見られないことが考えられる。それが目的の(1つまたは複数の)標的細胞または(1つまたは複数の)組織中で機能するように、プロモーターを選択する。脳特異的、肝臓特異的、および筋肉特異的(骨格、心臓、平滑筋、および/または横隔膜特異的を含む)プロモーターは本発明によって企図される。哺乳動物および鳥類プロモーターも本発明の実施形態中に含まれる。
【0128】
プロモーターは「初期」プロモーターであることが有利である可能性がある。「初期」プロモーターは当技術分野で知られており、de novoタンパク質合成の不在下で迅速かつ一時的に発現される遺伝子の発現を誘導する、プロモーターとして定義される。プロモーターはさらに「強力」または「微弱」プロモーターであってよい。用語「強力プロモーター」および「微弱プロモーター」は当技術分野で知られており、そのプロモーターでの転写開始の相対頻度(一分間当たりの回数)により定義することができる。「強力」または「微弱」プロモーターは、RNAポリメラーゼに対するその親和性により定義することもできる。
【0129】
一実施形態では、抗原または免疫原は、例えば、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)主要即時初期プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、またはラウス肉腫ウイルスプロモーターと作用可能に結合する。他の発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、ヘルペスウイルスなどに由来するプロモーターを含む。任意の鳥類ウイルスプロモーター以外に、任意の哺乳動物ウイルスプロモーターを、本発明を実施する際に使用することもできる。ウイルス起源の鳥類プロモーターの中で、伝染性咽頭気管炎ウイルス(ILTV)ウイルス、マレック病ウイルス(すなわち、gB、gC、pp38、pp14、ICP4、Meq)の初期(すなわち、チミジンキナーゼ、DNAヘリカーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ)または後期(すなわち、gB、gD、gC、gK)、またはシチメンチョウのヘルペスウイルス(すなわち、gB、gC、ICP4)の即時初期(すなわち、ICP4、ICP27)遺伝子のプロモーターを、本発明の方法およびベクターにおいて使用することができる。さらに、十分高いレベルで目的の抗原または免疫原を発現する適切なプロモーターを選択して、過度の実験なしで、抗原または免疫原に対する免疫応答を誘導または誘発することは、十分に当業者の技術の範囲内にある。
【0130】
CMVプロモーターを用いた異種ヌクレオチド転写物の誘導は、免疫応答性動物において発現の下方制御をもたらすことができると推測されている(例えば、Guoら、1996年を参照)。抗原または免疫原配列は、例えば、この抗原または免疫原発現の下方制御をもたらさない改変型CMVプロモーターと、作用可能に結合することができる。
【0131】
本発明のベクターはポリリンカーまたはマルチクローニングサイト(「MCS」)も含むことができ、これはプロモーターの下流に有利に位置することができる。ポリリンカーは、プロモーター配列と「インフレーム」である抗原または免疫原分子の挿入部位を与え、プロモーター配列と目的の抗原または免疫原の「作用可能な連結」をもたらす。マルチクローニングサイトおよびポリリンカーは当業者によく知られている。本明細書に記載する用語「作用可能に連結した」は、記載する構成成分が、それらがその意図する形式で機能することができる関係にあることを意味する。
【0132】
ベクターに応じて、組換えベクターのin vitro増幅および精製に使用するとき、抗生物質耐性をコードする選択マーカーが存在してよく、かつ、市販のAdEasy、AdEasier、およびAdHighアデノウイルス系の状況では、ドナーベクターとアデノウイルスヘルパーベクターの間の相同的組換えをモニタリングすることができる。AdEasy、AdEasier、およびAdHigh系は、ITR配列におけるドナーベクターとアデノウイルスヘルパーベクターの間の相同的組換えを容易にする。それぞれのベクターは異なる抗生物質耐性遺伝子を含み、かつ二重選択によって、組換えベクターを発現する組換え体を選択することができる。本発明のベクターに組み込むことができるこのような抗生物質耐性遺伝子の例には、特にアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ベロマイシン、ヒグロマイシン、クロラムフェニコールがあるが、これらだけには限られない。
【0133】
2個以上の抗原または免疫原が存在する実施形態では、抗原または免疫原配列は、1つの上流プロモーターおよび1つまたは複数の下流の内部リボソーム侵入部位(IRES)配列(例えば、ピコルナウイルスEMCのIRES配列)と、作用可能に結合することができる。
【0134】
(1つまたは複数の)抗原または免疫原配列が、標的細胞において転写され次いで翻訳される本発明の実施形態では、特異的開始シグナルが挿入タンパク質コード配列の有効な翻訳に一般に必要とされる。ATG開始コドンおよび隣接配列を含むことができる、これらの外因性翻訳制御配列は、天然と合成の両方の様々な起源であってよい。
【0135】
鳥類病原体に由来する任意の鳥類抗原または免疫原を、本発明の方法および組換えベクターにおいて使用することができる。一実施形態では、抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルスに由来するヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリクス、および核タンパク質抗原または免疫原など、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス抗原に由来するVP1、VP1s1、VP1s2、VP2(Heine、H.G.ら、1991年;Dormitorio、T.V.ら、1997年;およびCao、Y.C.ら、1998年)、VP2S、VP3、VP4、VP4SおよびVP5など、マレック病ウイルス抗原に由来する、チミジンキナーゼ、gA、gB、gC、gD、gE、gH、gI、およびgL(Coussensら、1988年;Rossら、1989年;Rossら、1991年;国際公開第WO90/02803号(1990年);BrunovskisおよびVelicer、1995年;およびYoshidaら、1994年)など、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルスに由来する、gA、gB、gD、gE、gI、およびgG(Veits、J.ら、2003年)を含めた抗原、鳥伝染性気管支炎ウイルス抗原に由来する、スパイク糖タンパク質、内在性膜タンパク質M、小分子膜タンパク質E、およびポリタンパク質(Casais、R.ら、2003年)など、鳥レオウイルス抗原に由来する、カプシド、シグマNS、シグマA、シグマB、およびシグマCタンパク質(Spandidos、D.A.ら、1976年)など、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルスに由来する、チミジンキナーゼなど、鳥類ポリオーマウイルス抗原に由来する、VP1、VP2、VP3、およびVP4(Rott、O.ら、1988年)など、ニューカッスル病ウイルス抗原に由来する、HN、P、NP、M、F、およびLタンパク質(Alexander、D.J.、1990年中に総説)など、鳥ニューモウイルス抗原に由来する、SH、F、GおよびN(Seal、B.S.、2000年)など、鳥類鼻気管炎ウイルス抗原に由来する、糖タンパク質、マトリクス、融合体、およびヌクレオカプシド(Cook、J.K.、1990年)など、鳥類網膜内皮症ウイルス抗原に由来する、p29、エンベロープ、gag、プロテアーゼ、およびポリメラーゼ(Dornburg、R.1995年)など、鳥類腫瘍ウイルス抗原を含めた鳥類レトロウイルスに由来する、gag、pol、およびenvなど、鳥類内因性ウイルスに由来する、gag、pol、env、カプシド、およびプロテアーゼ(Rovigatti、U.G.ら、1983年)など、鳥類赤芽球症ウイルスに由来する、gag、erbA、erbB(Graf、T.ら、1983年)など、鳥類肝炎ウイルスに由来する、コアタンパク質、pol、および表面タンパク質(Cova、L.ら、1993年)など、鳥類貧血ウイルスに由来する、VP1、VP2、VP3(Rosenberger、J.K.ら、1998年)など、鳥類腸炎ウイルス抗原に由来する、ポリメラーゼ、52Kタンパク質、ペントン、IIIa、およびコアタンパク質(Pitcovski、J.ら、1988年)など、パチェコ病ウイルスに由来する、IEタンパク質、糖タンパク質K、ヘリカーゼ、糖タンパク質N、VP11-12、糖タンパク質H、チミジンキナーゼ、糖タンパク質B、および核リンタンパク質(Kaleta E.F.、1990年)など、鳥白血病ウイルス抗原に由来する、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ(Graf、T.ら、1978年)など、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス抗原に由来する、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、VP1、VP2、VP3、VP4、VP5、VP6、およびVP7(Mori、Y.ら、2003年;Borgan、M.A.ら、2003年)など、鶏白血病ウイルス抗原に由来する、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ(Bieth、E.ら、1992年)など、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス(Kawai、S.ら、1992年)、鳥骨髄芽球症ウイルス抗原に由来する、p15、p27、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ、ヌクレオカプシド、およびgs-b(Joliot、V.ら.、1993年)など、鳥骨髄芽球症関連ウイルス(Perbal、B.、1995年)、鳥骨髄球腫症ウイルス(Petropoulos、C.J.、1997年)、鳥肉腫ウイルス抗原に由来する、p19およびエンベロープ(Neckameyer、W.S.ら、1985年)など、および鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、gag、エンベロープ、およびポリメラーゼ(Purchase、H.G.ら、1975年)などの抗原または免疫原を含むが、これらだけには限られない。
【0136】
本発明の文脈において使用することができる他の免疫原/抗原は、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)株、39kDa被膜タンパク質(Ali、H.A.ら、2004年;Rimler、R.B.2001年)、16-kDa外膜タンパク質(Kasten、R.W.、ら、1995年)、多糖(Baert、K.ら、2005年)など、大腸菌、1型線毛、P線毛、およびカール(Roland、K.ら、2004年);F1線毛アドヘシン、P線毛アドヘシン、アエロバクチン受容体タンパク質、および多糖(Kariyawasam、S.ら、2002年)など、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)、主要膜抗原pMGA(P67としても知られる;Jan、G.ら、2001年;Noormohammadi、A.H.ら、2002a)、TM-1(Saito、S.ら、1993年)、アドヘシン(Barbour、E.K.ら、1989年)、P52(Jan、G.ら、2001年)血清プレート凝集(SPA)抗原(Ahmad、I.ら、1988年)、マイコプラズマガリナセウム(Mycoplasma gallinaceum)、マイコプラズマガリナラム(Mycoplasma gallinarum)、マイコプラズマガロパボニス(Mycoplasma gallopavonis)、マイコプラズマシノビエ(Mycoplasma synoviae)など由来の鳥類細菌抗原を含み、多数の中でも、主要膜抗原MSPB(Noormohammadi、A.H.ら、2002b)および165-kDaタンパク質(Ben Abdelmoumen、B.ら、1999年)、マイコプラズマメレアグリディス(Mycoplasma meleagridis)、マイコプラズマイオバエ(Mycoplasma iowae)、マイコプラズマプロラム(Mycoplasma pullorum)、マイコプラズマイミタンス(Mycoplasma imitans)、サルモネラ腸炎菌(Salmonella enteritidis)、フラジェリン、ポリン、OmpA、SEF21およびSEF14線毛(Ochoa-Reparaz、J.ら、2004年)など、腸チフス菌(Salmonella enterica serovars)、例えばSEF14およびSEF21を発現するニワトリ盲腸虫(Gallinarum)およびネズミチフス菌(Typhimurium)など(Li、W.ら、2004年)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、フラジェリン、67-kDa抗原、CjaA、CjaC、およびCjaDタンパク質(Widders、P.R.ら、1998年;Wyszynska、A.ら、2004年)など、ヘモフィルスパラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)、ヘマグルチニンのような血清群A、B、およびC抗原など(Yamaguchi、T.ら、1988年)、リエメレラアナティペスティファー(Riemerella anatipestifer)、バクテリン抗原など(Higgins、D.A.ら、2000年)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)株、例えば主要外膜タンパク質(MOMP)を発現する血液型亜型Aおよび6Bなど(Vanrompay、D.ら、1999年)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、66〜64kDaタンパク質抗原(Timoney、J.F.ら、1993年)含む、潜在性エリジペロトリックス(Erysipelothrix insidiosa)、バクテリンなど(Bigland、CH.およびMatsumoto、J.J.、1975年)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、抗原P39およびバクテリオフェリン(A1-Mariri、A.ら、2001年)など、ボレリアアンセリナ(Borrelia anserina)、22-キロダルトン主要外側表面タンパク質(Sambri、V.ら、1999年)、外膜タンパク質P66(Bunikis、J.ら、1998年)、およびOspC(Marconi、R.T.ら、1993年)など、アルカリ糞便菌(Alcaligenes faecalis)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの抗原を含む。
【0137】
本発明は、特に、アイメリアアセルブリナ(Eimeria acervulina)、3-1E抗原(Lillehoj、H.S.ら、2005年;Ding、X.ら、2004年)、頂端複合構造抗原(Constantinoiu、CC.ら、2004年)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(Schaap、D.ら、2004年)など、アイメリアマキシマ(Eimeria maxima)、gam56およびgam82(Belli、S.I.ら、2004年)、56および82kDa抗原タンパク質(Belli、S.I.ら、2002年)、およびEmTFP250(Witcombe、D.M.ら、2004年)など、アイメリアネカトリクス(Eimeria necatrix)、35-kDタンパク質など(Tajima、O.ら、2003年)、アイメリアテネラ(Eimeria tenella)、TA4およびSO7遺伝子産物(Wu、S.Q.ら、2004年;Pogonka、T.ら、2003年)および12-kDaオーシスト壁タンパク質(Karim、M.J.ら、1996年)など、アイメリアフェルミフォルミス(Eimeria vermiformis)、アイメリアアデノエイデス(Eimeria adenoeides)、ロイコチトゾーンカウレリー(Leucocytozoon caulleryi)、R7外膜抗原(Ito、A.、ら、2005年)など、プラスモジウムレリクタム(Plasmodium relictum)、プラスモジウムガリナセウム(Plasmodium gallinaceum)、CSPタンパク質(Grim、K.Cら、2004年)および17-および32-kDaタンパク質抗原(Langer、R.Cら、2002年)など、およびプラスモジウムエロンガタム(Plasmodium elongatum)だけには限られないが、これらなどの鳥類原虫抗原由来の免疫原/抗原の使用も包含する。
【0138】
本発明の一実施形態では、鳥インフルエンザウイルス抗原または免疫原を利用する。本発明は、例えば、1回の注射で多数の鳥類疾患に対して鳥類を保護することができる多価ワクチンまたは免疫原性組成物などの、様々な鳥類抗原または免疫原を発現する組換えベクターをさらに提供する。
【0139】
鳥インフルエンザウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、およびさらに海洋哺乳動物に伝播しており、ヒトインフルエンザ大流行の発生の重要な誘因となっている。オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae family)に属するインフルエンザウイルスは、その核タンパク質(NP)およびマトリクス(M1)タンパク質における抗原差異に基づいてA、B、およびCとして分類される。全ての鳥インフルエンザウイルスはA型として分類される。さらなる型分けは、2つの表面糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原性に基づく。現在、15のHAおよび9のNA亜型がインフルエンザAウイルス間で同定されている(Murphy、B.R.ら、1996年;Rohm、C.ら、1996b)。HAの抗原性を担うHA1領域のアミノ酸配列は、亜型間で30%以上異なる(Rohm、C.ら、1996b)。全てのHAおよびNA亜型を有するウイルスが鳥類種において見られるが、哺乳動物インフルエンザウイルスのウイルス亜型は限られている。
【0140】
鳥インフルエンザAウイルスはそれらの毒性によって定義される。家禽ペストを引き起こす可能性がある高毒性型、および軽度の疾患または無症状感染のみを一般に引き起こす無毒型。しかしながら、稀な場合、実験室中で低い病原性を有するウイルスが野外で重度疾患の蔓延を引き起こす。それにもかかわらず、これらのウイルスと関係がある罹患率および死亡率は、致死性ウイルスによって引き起こされるそれらよりはるかに低い傾向がある。
【0141】
高毒性鳥インフルエンザウイルスは、オーストラリア(1976年[H7](Bashiruddin、J.B.ら、1992年);1985年[H7](Cross、G.M.、1987年;Nestorowicz、A.ら、1987年)、1992年[H7](Perdue、M.L.ら、1997年)、1995年[H7]、および1997年[H7])、イングランド(1979年[H7](Wood、G.W.、ら、1993年)および1991年[H5](Alexander、DJ.ら、1993年)、米国(1983〜1984年[H5](Eckroade、RJ.ら、1987年)、アイルランド(1983〜1984年[H5])(Kawaoka、Y.ら、1987年)、ドイツ(1979年[H7](Rohm、C.ら、1996a)、メキシコ(1994〜1995年[H5](Garcia、M.ら、1996年;Horimoto、T.ら、1995年)、パキスタン(1995年[H7](Perdue、M.L.ら、1997年)、イタリア(1997年[H5])、および香港(1997年[H5](Claas、EJ.ら、1988年)で家禽産業において大発生を引き起こした。いずれか1つの理論によって縛られることは望まずに、全ての病原性鳥インフルエンザAウイルスはH5またはH7亜型であると考えられるが、この亜型特異性の理由は依然知られていない。NA亜型と毒性ウイルスの関係は存在しないようである。2つの他の亜型、H4[A/ニワトリ/アラバマ/7395/75(H4N8)](Johnson、D.C.ら、1976年)およびH10[A/ニワトリ/ドイツ/N/49(H10N7)]が、重度の家禽ペスト様の大発生中にニワトリから単離されている。
【0142】
インフルエンザAウイルスの構造は非常に類似している(Lamb、R.A.ら、1996年)。電子顕微鏡によって、ほぼ球状(約120nm径)および繊維状であるビリオンを含めて、ウイルスは多形態である。HAおよびNA分子に対応する2つの異なる型のスパイク(約16nm長)がビリオンの表面に存在する。この2つの糖タンパク質は、疎水性アミノ酸の短い配列(膜貫通領域)によって宿主細胞の原形質膜に由来する脂質エンベロープに固定される。HAはN末端外部ドメインおよびC末端アンカーを含有するI型糖タンパク質であり、一方NAはN近位アンカーおよびC末端外部ドメインを含有するII型糖タンパク質である。HAはビリオンを細胞表面のシアリロリゴ糖(sialyloligosaccharide)に結合させることが可能であり(Paulson、J.C.、1985年)、そのヘマグルチニン化活性を担う(Hirst、G.K.、1941年)。HAは感染に対する防御において重要であるウイルス中和抗体を誘導する。NAは細胞およびビリオン表面シアル酸(HAによって認識されるシアリロリゴ糖中の主要成分)(Paulson、J.C.、1985年)を除去することによってビリオン凝集を妨げるシアリダーゼである(Gottschalk、A.、1957年)。NAに対する抗体も宿主を防御する際に重要である(Webster、R.G.、ら、1988年)。
【0143】
HAおよびNA以外に、限られた数のM1タンパク質がビリオンに組み込まれる(Zebedee、S.L.ら、1988年)。それらはテトラマーを形成し、H1イオンチャネル活性を有し、かつ、エンドソームにおいて低pHによって活性化すると、ビリオン内部を酸性化し、そのアンコーティングを容易にする(Pinto、L.H.ら、1992年)。エンベロープ内に存在するM1タンパク質は、構築および出芽において機能すると考えられる。NPと結合した一本鎖RNA分子(ネガティブセンス、またはmRNAと相補的)の8個のセグメント、およびRNAの複製および転写に関与するリボ核タンパク質(RNP)複合体を一緒に形成するウイルスポリメラーゼの3サブユニット(PB1、PB2、およびPA)がウイルスエンベロープ内に含有される。現在ビリオン中に存在することが知られている(Richardson、J.C.ら、1991年;Yasuda、J.ら、1993年)NS2タンパク質は、M1タンパク質との相互作用を介して(Ward、A.C.ら、1995年)核からのRNPの輸送において役割を果たすと考えられる(O'Neill、R.E.ら、1998年)。NS1タンパク質、インフルエンザAウイルスの唯一の非構造タンパク質は、スプライシングの制御および細胞mRNAの核輸送、および翻訳の刺激を含めて多数の機能を有する(Lamb、R.A.ら、1996年)。その主な機能は、宿主のインターフェロン活性を妨げることであると考えられる。NS1ノックアウトウイルスは、それはインターフェロン非欠損細胞において親ウイルスほど効率よく増殖しなかったが、生命力があるからである(Garcia-Sastre、A.ら、1988)。
【0144】
本発明において有用である鳥インフルエンザの免疫原または抗原には、HA、NA、およびM1、NS2、およびNS1があるが、これらだけには限られない。特に鳥インフルエンザの免疫原または抗原には、HAおよびNAがあるが、これらだけには限られない。鳥インフルエンザの免疫原または抗原は、全ての鳥インフルエンザA株、臨床分離株、野生分離株、およびそれらの再集合体を含めた、任意の知られているAI株に由来してよい。このような株および亜型の例には、H10N4、H10N5、H10N7、H10N8、H10N9、H11Nl、H11N13、H11N2、H11N4、H11N6、H11N8、H11N9、H12N1、H12N4、H12N5、H12N8、H13N2、H13N3、H13N6、H13N7、H14N5、H14N6、H15N8、H15N9、H16N3、H1Nl、H1N2、H1N3、H1N6、H2N1、H2N2、H2N3、H2N5、H2N7、H2N8、H2N9、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3N6、H3N8、H4N1、H4N2、H4N3、H4N4、H4N5、H4N6、H4N8、H4N9、H5N1、H5N2、H5N3、H5N7、H5N8、H5N9、H6N1、H6N2、H6N4、H6N5、H6N6、H6N7、H6N8、H6N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N5、H7N7、H7N8、H8N4、H8N5、H9N1、H9N2、H9N3、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、およびH9N9があるが、これらだけには限られない。本発明はさらに、特に抗原連続変異および抗原変化を表す突然変異または他の場合は改変された鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用に関する。
【0145】
インフルエンザウイルスの抗原性は、点突然変異によって段階的に(抗原連続変異)または遺伝子再集合によって劇的に(抗原変化)変化する(Murphy、B.R.ら、1996年)。HAおよびNAに対する免疫圧力は抗原連続変異を誘導すると考えられる。抗原変化は、ヒトへの非ヒトインフルエンザウイルスの直接伝播、または単細胞に感染した2種の異なるインフルエンザウイルスからの遺伝子の再集合のいずれかによって引き起こされる可能性がある(Webster、R.G.ら、1982年)。理論上、RNAの256の異なる組合せを、ウイルスの8個の異なるゲノムセグメントのシャッフリングから生成することができる。遺伝子再集合は、実験室条件下においてin vitroとin vivoの両方で十分文書化されている(Webster、R.G.ら、1975年)。さらに重要なことに、混合感染が自然界では比較的頻繁に起こり、遺伝子再集合をもたらし、新たな野生分離株、ハイブリッド形、または再集合形を生成する可能性がある(Bean、W.J.ら、1980年;Hinshaw、V.S.ら、1980年;Young、J.F.、ら、1979年)。以前に循環していたウイルスの再出現は、それによって抗原変化が起こり得る別のメカニズムである。
【0146】
したがって、本発明はさらに、鳥インフルエンザの臨床分離株、鳥インフルエンザの野生または環境分離株、鳥インフルエンザのハイブリッド形、および再集合形を含めた、抗原連続変異または抗原変化を経た鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用に関する。さらに本発明は、別個の組換えベクター、または1つの組換えベクターと一緒のいずれかで送達して、1つまたは複数の鳥インフルエンザ株および/またはハイブリッドに対する免疫応答を刺激または調節する多価鳥インフルエンザワクチンまたは免疫原性組成物をもたらす、本明細書に開示するベクターおよび方法における、2つ以上の鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用を包含する。
【0147】
多くの飼育および野生鳥類種はインフルエンザウイルスに感染する。これらはニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ホロホロチョウ、飼育ガチョウ、ウズラ、キジ、コリンウズラ、九官鳥、スズメ、オウム、セキセイインコ、カモメ、海岸に生息する鳥、海鳥、およびエミューを含む(Easterday、B.C.ら、1997年;Webster、R.G.ら、1988年)。数種の感染した鳥はインフルエンザの症状を示すが、一方他は示さない。飼育鳥類種、シチメンチョウはインフルエンザの大発生に最も頻繁に関与し、ニワトリも関与しているが頻度は低い。鳥インフルエンザAウイルスは、無症状から適度の上気道感染、卵生成の消失、すぐに死に至る全身疾患までの範囲の、一連の症状を鳥類においてもたらす(Eckroade、R.J.ら、1987年)。疾患の重度は、ウイルスの毒性、宿主の免疫状態および食餌、付随する細菌感染、および宿主に課されるストレスを含めた、多数の要因に依存する。ニワトリおよびシチメンチョウにおけるその病原性に応じて、鳥インフルエンザAウイルスは、毒性(家禽ペストを引き起こすことができる)または無毒性(適度または無症状疾患を引き起こす)として分類される。一種の鳥類に対して非常に病原性であるときでさえ、インフルエンザAウイルスは他種の鳥類に対して病原性ではない可能性がある(Alexander、D.J.ら、1986年)。例えば、アヒルは典型的には、ニワトリにおいて致命的であるウイルスに耐性がある。別の例として、ニワトリおよびシチメンチョウを容易に殺傷するA/シチメンチョウ/アイルランド/1378/85(H5N8)はアヒルにおいて疾患症状は引き起こさないが、しかしながら、それは感染した鳥の様々な内臓器官および血液中で検出することができる(Kawaoka、Y.ら、1987年)。
【0148】
インフルエンザウイルスは腸管から感染した鳥の糞便に分泌される(Kida、H.、ら、1980年;Webster、R.G.ら、1978年)。伝播の形態は直接的または間接的であってよく、それらはエアゾールおよび他のウイルス汚染物質との接触を含む。感染した鳥は多量のウイルスをその糞便中に排出するので、多くの異なる物品(例えば食物、水、機器、およびケージ)が汚染状態になり、ウイルスの播種に貢献する可能性がある。水媒介性伝播は、天然の水鳥生息地中に鳥インフルエンザウイルスを一年毎に永久化する機構をもたらす可能性がある。高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した家禽類などの、大量生産される鳥によって示される典型的な兆候および症状には、卵生成の低下、呼吸兆候、水泡音、過度の流涙、副鼻腔炎、羽毛がない皮膚のチアノーゼ(特にとさかおよび肉垂)、頭および顔の浮腫、羽の逆立ち、下痢、および神経系障害がある。
【0149】
示される特徴の数は、鳥の種類および年齢、ウイルスの株、および付随する細菌感染に依存する(Easterday、B.C.ら、1997年;Webster、R.G.ら、1988年)。時折、鳥は疾患の如何なる兆候も示さずに死滅する(Alexander、DJ.ら、1993年;Wood、G.W.、ら、1994年)。高病原性ウイルスを接種したニワトリ中の肉眼的および組織学的病変は非常に類似しているが、いくつかの株の変化を示す(Alexander、D.J.ら、1986年; Mo、LP.ら、1997年;Swayne、D.E.ら、1997年)。報告例の間のいくつかの違いは、接種の経路、ニワトリの品種および年齢、およびウイルスの用量を含めた実験条件の違いを表す可能性がある。毛細血管内皮細胞の膨張、全身うっ血、多巣性出血、血管周囲性単核細胞浸潤、および血栓症は、高毒性ウイルスを接種したニワトリにおいて一般に見られる。このようなウイルスは血管内皮細胞および血管周囲実質細胞中で効率よく複製する、ウイルス播種および全身感染に重要である可能性がある性質(Kobayashi、Y.ら、1996年;Suarez、D.L.ら、1998年)。壊死および炎症変化がある他器官中の細胞以外に壊死性心筋細胞において、ウイルス抗原を発見することもできる(Kobayashi、Y.ら、1996年)。
【0150】
本発明は、細胞中の1つまたは複数の抗原または免疫原を発現させる方法にも関する。実験室設定での予備ステップとして、抗原または免疫原を代わりに、レポータータンパク質(例えば酵素)をコードする配列を含めた、タンパク質およびペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列と交換することができる。レポータータンパク質は当技術分野で知られており、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むが、これらだけには限られない。これらのレポータータンパク質およびその検出法の多くは、多くの市販の診断キットの一部として含まれる。目的の抗原または免疫原は、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、または「ガイド」RNA(Gormanら、1998年)などの他の非翻訳RNAなどをコードすることができる。
【0151】
本発明の組換えベクターおよび方法は、組換えベクターまたは免疫原性組成物の送達によって免疫応答を調節することができる、治療用タンパク質またはアジュバント分子の使用も包含する。このような治療用タンパク質またはアジュバント分子は、インターロイキン、インターフェロン、および共刺激分子などの免疫調節分子だけには限られないが、これらを含むことができる。鳥類対象において免疫応答を調節することが当技術分野で知られている鳥類サイトカインは、ニワトリインターフェロン-α(IFNα)(Karaca、K.ら、1998年;Schijns、V.E.ら、2000年)、ニワトリインターフェロン-γ(IFNγ)、ニワトリインターロイキン-1β(ChIL-1β)(Karaca、K.ら、1998年)、ニワトリインターロイキン-2(ChIL-2)(Hilton、L.S.ら、2002年)、およびニワトリ骨髄単球性増殖因子(cMGF1 York、J.J.ら、1996年;Djeraba、A.ら、2002年)である。免疫調節分子は本発明の免疫原性組成物と共投与することができ、または代替的に、(1つまたは複数の)免疫調節分子の核酸を、本発明の組換えベクター中の鳥類免疫原または抗原と共発現させることが可能である。
【0152】
異種配列、すなわち鳥インフルエンザ免疫原の対象中での発現は、抗原または免疫原の発現産物に対する免疫応答を対象中においてもたらす可能性がある。したがって、本発明の組換えベクターを免疫原性組成物またはワクチン中に使用して、防御的である必要はないがその可能性がある免疫応答を誘導するための手段を与えることができる。本発明の文脈で使用する分子生物学的技法はSambrookら.(2001年)によって記載される。
【0153】
一層さらに代替的または追加的に、本発明によって含まれる免疫または免疫原性組成物において、抗原または免疫原をコードするヌクレオチド配列は、膜貫通ドメインをコードする部分がそこから欠失している可能性がある。他に一層さらに代替的または追加的に、ベクターまたは免疫原性組成物は、異種tPAシグナル配列、ヒトまたは鳥類tPAおよび/または安定化イントロンなど、ウサギβ-グロビン遺伝子のイントロンIIなどをコードするヌクレオチド配列をさらに含有し、宿主細胞中で発現することができる。
【0154】
本発明は、in vitroまたはin vivoで細胞中に異種ヌクレオチド配列を送達および/または投与する方法も提供する。この方法に従い、(本明細書で詳細に記載するように)本発明による組換えヒトアデノウイルスベクターを細胞に感染させる。ウイルス形質導入の本来のプロセスによってアデノウイルスベクターを細胞に感染させることが可能である。あるいはベクターは、当技術分野で知られている任意の他の方法によって細胞中に導入することができる。例えば、細胞は(以下に記載するように)標的アデノウイルスベクターと接触させ、別の機構によって、例えば受容体介在型エンドサイトーシスによって取り込むことが可能である。別の例として、抗体または他の結合タンパク質を使用して、ベクターを内在化細胞表面タンパク質に向けることができる。
【0155】
遺伝子産物(例えば、エピトープ、抗原、治療剤、および/または抗体)組成物に関して言及した量を得るための量、鳥類対象にベクターを投与することができる。本発明は、本明細書に例示する用量より少ない用量および多い用量を含むが、これらだけには限られず、鳥類対象に投与するその構成成分を含めた任意の組成物に関して、および任意の特定の投与法に関して、以下、適切な鳥類モデルにおける致死量(LD)およびLD50を決定することによって毒性、および血清の滴定およびその分析などによって、例えばELISAおよび/または血清中和分析によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。
【0156】
本発明の組成物には、開口部、または粘膜、例えば経口、鼻腔、肛門、膣、経口、胃内などの投与用の液体調製物、縣濁液、溶液、スプレー、シロップまたはエリキシル剤など、および、非経口、経皮、皮下(すなわち、下頸部経由)、皮内、腹腔内、筋肉内(すなわち、翼膜、翼端、胸筋、および腿筋穿刺による)、鼻腔内、または静脈内投与(例えば、注射投与)用の液体調製物、滅菌縣濁液またはエマルジョンなどがあるが、これらだけには限られない。2004年4月6日に発行された米国特許第6,716,823号、2004年3月16日に発行された米国特許第6,706,693号、2002年2月19日に発行された米国特許第6,348,450号、米国出願第10/052,323号および米国出願第10,116,963号および米国出願第10/346,021号を参照し、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれ、これらは非侵襲形式の送達、すなわち経皮および鼻腔内投与による免疫原性またはワクチン組成物の免疫処置および送達を開示する。鳥類への他の投与法および送達法は飲料水または食品中の組換えベクターまたは免疫原性組成物の投与を含み、この場合ワクチンの用量は動物当たり101〜104で選択することができる。
【0157】
筋肉内注射に関して、胸部(胸筋)、脚部(上腿筋/外側脇腹筋)、翼膜(飛膜)、翼下(葉腋)、および翼端を介して投与を行うことができる。使用するニードルの長さおよび径(ゲージ)は、それが選択した筋肉の中心へのワクチンの送達を可能にするようなものでなければならない。
【0158】
特定の実施形態は卵内送達である投与法を含む(Gildersleeve、R.P.、1993a;Gildersleeve、R.P.ら、1993b;Sharma、J.M.、1985年;Sharma、J.M.ら、1984年)。卵内送達は鳥類の集団ワクチン接種に有望な方法として持ち上がっている。ロボット注射器による均一用量のワクチンの投与は労力と時間の両方を節約するからである(Johnstonら、1997年;Oshopら、2002年)。今日まで、80%を超える米国産の商用ブロイラー鶏は、マレック病に対して機械化注射器で卵内処理されている(Wakenellら、2002年)。さらにこの方法は、伝染性ファブリーキウス嚢病(IBD)およびニューカッスル病(ND)ワクチンを投与するために、ますます使用されている。さらに免疫応答は、DNAワクチン(Kapczynskiら、2003年;Oshopら、2003年)および複製アルファウイルスベクターワクチン(Schultz-Cherryら、2000年)の卵内送達によって、ニワトリにおいて誘導されている。それらの複製相当物と比較すると、DNAおよびウイルスベクター卵内接種用ワクチンおよび免疫原性組成物は胚を殺傷または害する可能性は低く、Adベクターは特に、それらが卵内で複製できないために高いコンプライアンスレートを有する。
【0159】
機械化システム、装置、および例えばINOVOJECT(登録商標)として市販されているデバイスなどのデバイスは、発生中の胚に対する外傷を引き起こさずに、正確に調整した体積で化合物、ワクチン、および免疫原性組成物を適度に注射し、それによって幼鳥の処理回数を減らし、自動化により孵化場の管理を改善し、かつ家畜生産のコストを低減する。INOVOJECT(登録商標)および他の機械化システム、デバイス、または装置は、卵先端上の注射ヘッドを適度に下げることによって働き、小径空洞パンチがシェル中の小さな開口部を貫通する。ニードルは調節した深さ(通常2.54cm)までチューブを下り、わずかな、予め決定した体積のワクチン、免疫原性組成物、または化合物を胚に送達し、次いでニードルを回収し、滅菌洗浄液中で洗浄する。卵内接種用ワクチンおよび遺伝子送達の方法は、それらの内容が参照により明らかに本明細書に組み込まれる、米国特許第4,458,630号、米国特許第RE35973号、米国特許第6,668,753号、米国特許第6,601,534号、米国特許第6,506,385号、米国特許第6,395,961号、米国特許第6,286,455号、米国特許第6,244,214号、米国特許第6,240,877号、米国特許第6,032,612号、米国特許第5,784,992号、米国特許第5,699,751号、米国特許第5,438,954号、米国特許第5,339,766号、米国特許第5,176,101号、米国特許第5,136,979号、米国特許第5,056,464号、米国特許第4,903,635号、米国特許第4,681,063号、2003年10月16日に出願された米国出願第10/686,762号、2002年8月9日に出願された米国出願第10/216,427号、2002年2月13日に出願された米国出願第10/074/714号、および2002年1月9日に出願された米国出願第10/043,025号中で見ることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載する組換えベクター、ワクチンまたは免疫原性組成物を卵内送達または投与するためのデバイスまたは装置を企図する。デバイスまたは装置は、本発明の組換えヒトアデノウイルスベクターまたは免疫原性組成物を場合によっては含むことができる、すなわち、鳥類に卵内投与するためのベクターまたは免疫原性組成物を予め充填することができる。
【0160】
さらなる投与法はエアゾールスプレー送達である。ヒトAd5ベクターワクチンの鼻腔内投与はニワトリを免疫処置できなかったことが示されている(Gaoら、2006年;Toroら、2007年)。ヒトAd5ベクターワクチンのエアゾールスプレーはニワトリをワクチン接種する際に有効であったという本明細書の驚くべき実証は、眼内投与、多数の経路の組合せ(鼻腔内、眼内、経皮、および経口投与)、および/またはエアゾールスプレー中に生じる霧状ミストに起因する可能性がある。
【0161】
エアゾールスプレー送達は、労力と時間の両方を節約する鳥類の集団ワクチン接種に有用な方法であり、したがって商業的関心は、家禽産業においてエアゾールスプレーなどの投与法を非常に好む。
【0162】
このようなエアゾールスプレー送達を可能にする機械化システム、装置、およびデバイスは、したがって本発明によって含まれる。したがって、本発明は、本明細書に記載する組換えベクター、ワクチンまたは免疫原性組成物をエアゾールスプレー送達または投与するためのデバイスまたは装置を企図する。デバイスまたは装置は、本発明の組換えヒトアデノウイルスベクターまたは免疫原性組成物を場合によっては含むことができる、すなわち、鳥類にエアゾールスプレー投与するためのベクターまたは免疫原性組成物を予め充填することができる。
【0163】
本発明は、疾患の療法または治療の過程および/または免疫学的組成物の追加抗原刺激投与および/または初回抗原刺激-追加抗原刺激レジメンなどにおける、本発明の組成物の連続投与、または本明細書の方法の連続実施、例えば、本発明の組成物の定期投与も含み、かつ、連続投与の時間および形式は過度の実験なしで確認することができる。
【0164】
さらに本発明は、in vivoおよび/またはin vitroおよび/またはex vivoで(例えば、後者の2つは、例えば本発明による投与を施した宿主由来の細胞からのその単離後、例えばこのような細胞の任意選択の増殖後)遺伝子産物および/または免疫学的産物および/または抗体を生成するための方法を含めた、ベクターを作製および使用するための組成物および方法、および診断、アッセイ、療法、治療などにおける使用を含めた、このような遺伝子および/または免疫学的産物および/または抗体の使用を含む。
【0165】
ベクター組成物はベクターと適切な担体または希釈剤を混合することによって製剤化され、遺伝子産物および/または免疫学的産物および/または抗体組成物は、遺伝子および/または免疫学的産物および/または抗体と適切な担体または希釈剤を混合することによって同様に製剤化される。例えば、(例えば、担体、希釈剤などに関しては)米国特許第5,990,091号、WO99/60164、WO98/00166、その中に引用された文書、および本明細書に引用した他の文書、および本明細書の他の教示を参照。
【0166】
このような組成物において、組換えベクターは、適切な獣医学的にまたは薬剤として許容される担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコースなどと混合することができる。組成物は凍結乾燥することもできる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲルまたは粘性増大添加剤、防腐剤、香味剤、着色剤などの補助物質を含有することができる。
【0167】
DMSOは、特にベクターまたはベクターを含む免疫原性組成物の卵内またはエアゾールスプレー送達に関して、ワクチンおよび免疫原性組成物の効能を高めることが知られている。DMSOは、細胞膜の透過性を増大することによってワクチンの効能を高めると考えられる(Oshopら、2003年)。DMSOと比較して細胞を透過することができ、羊水の粘性を低減することができ、かつ高いコンプライアンスレートを示すことができる他の作用物質または添加剤は、特に卵内またはエアゾールスプレー送達によって投与するとき、ワクチンまたは免疫原性組成物の製剤化において使用することができる。インシュリン、レプチン、およびソマトトロピンなどの様々なタンパク質の吸収は、鼻腔内投与後に、目に見える副作用無しでテトラデシルマルトシド(TDM)などの界面活性剤によって高まることが示されている(Arnold、ら、2004年)。したがって本発明は、本明細書に記載する方法および組成物におけるTDMの使用を含む。
【0168】
0.125%のTDMを含有する製剤は細胞形態の適度な変化を引き起こすことができ、一方高濃度のTDM(すなわち0.5%)はより広範囲の形態変化を一時的に誘導することができる。哺乳動物および孵化した鳥類卵の羊水における粘性鼻腔粘液のため、TDMは卵内またはエアゾールスプレー送達の設定においてベクター送達を高めると考えられる。さらにArnold、ら(2004年)中に記載されたTDMの安全性プロファイルは、免疫処置した鳥類の健康およびフードチェーンに入るコンプライアンスを促進するのに特に有利である。
【0169】
投与するベクターの量は治療する対象および状態に関して変わり、1日当たり1または数〜数百または数千マイクログラムの重量(body weight)で変わり、ワクチンまたは免疫原性組成物の用量は、鳥当たり101〜106プラーク形成単位(PFU)、好ましくは102〜105PFUで選択することが好ましい。注射用に、前述の力価を含有するワクチンは、翼膜投与の場合、生理食塩水などの薬剤としてまたは獣医学的に許容される液体を用いて、約0.1mlまたは0.01mlの最終体積まで希釈しなければならない。本発明のベクターおよび方法は、卵内ワクチン接種および1日齢のヒヨコのエアゾールスプレーによるワクチン接種、ならびに高齢のヒヨコおよび成体のワクチン接種を可能にする。
【0170】
遺伝子産物(例えば、エピトープ、抗原、治療剤、および/または抗体)組成物に関して言及した量を得るための量、鳥類対象にベクターを非侵襲的に投与することができる。当然ながら、本発明は、本明細書に例示する用量より少ない用量および多い用量を想定し、鳥類対象に投与するその構成成分を含めた任意の組成物に関して、および任意の特定の投与法に関して、以下、適切な鳥類モデルにおける致死量(LD)およびLD50を決定することなどによって毒性、および血清の滴定およびその分析などによって、例えばELISAおよび/または血清中和分析によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。
【0171】
組換えベクターを適切な量で投与して、本明細書および/または本明細書に引用する文書中に記載される用量に対応するin vivo発現を得ることができる。例えば、ウイルス縣濁液に適した範囲は実験によって決定することができる。2個以上の遺伝子産物が2個以上の組換え体によって発現される場合、それぞれの組換え体はこれらの量で投与することができ、またはそれぞれの組換え体は、併せて、これらの量を含む組換え体の総計で投与することができる。
【0172】
本発明中で利用するベクターまたはプラスミド組成物において、用量は本明細書で引用する文書中に記載したのと同様、または本明細書で記載したのと同様、または本明細書で引用する文書で参照または引用する文書中に記載したのと同様であってよい。都合よく、用量は、(1つまたは複数の)抗原が直接存在する場合組成物と類似した応答を誘導する、またはこのような組成物における用量と類似した発現を有する、または組換え組成物によってin vivoで得られる発現と類似した発現を有するのに十分な量のプラスミドでなければならない。
【0173】
しかしながら、抗体による血清滴定による、例えばELISAおよび/または血清中和アッセイ分析などによる方法によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な免疫応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。さらに、連続投与の時間は、過度の実験なしで、本開示、および当技術分野の知識から確かな方法によって、同様に確認することができる。
【0174】
本発明によって企図される免疫原または免疫学的組成物はアジュバントも含有することができる。適切なアジュバントには、fMLP(N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;米国特許第6,017,537号)および/またはアクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよび/または無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーがある。アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーは、例えば糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋状態であってよい。これらの化合物は名称「カルボマー」で知られている(Pharmeuropa、Vol.8、No.2、1996年6月)。当業者は、少なくとも3個のヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシル化化合物、一実施形態では、8個を超えないヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシル化化合物と架橋状態である、このようなアクリル酸ポリマーを論じる、(参照により組み込まれる)米国特許第2,909,462号を参照することもできる。別の実施形態では、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子は、少なくとも2個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族基、他の実施形態では、約2〜約4個の炭素原子を含有する基、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基と置換されている。不飽和基自体はメチルなどの他の置換基を含有することができる。Carbopol(登録商標)(Noveon Inc.、Ohio、USA)の名称で販売されている製品は、アジュバントとして使用するのに特に適している。それらはアリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋状態であり、これに関しては、Carbopol(登録商標)974P、934P、および971Pの製品が言及される。
【0175】
無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーに関して、直鎖または架橋状態、例えばジビニルエーテルと架橋状態であってよい、無水マレイン酸およびエチレンのコポリマーである、EMA(登録商標)製品(Monsanto)が言及される。さらに、参照により組み込まれる米国特許第6,713,068号およびRegelson、W.ら、1960年を参照することができる。
【0176】
第四級アンモニウム塩を含有するカチオン性脂質は、その内容が参照により組み込まれる米国特許第6,713,068号中に記載されており、本発明の方法および組成物中で使用することもできる。これらのカチオン性脂質には、有利に中性脂質、有利にDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン;Behr J.P.、1994年)と結合してDMRIE-DOPEを形成する、DMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム;WO96/34109)があるが、これだけには限られない。
【0177】
組換えワクチンまたは免疫原または免疫学的組成物は、水中油型エマルジョンの形に製剤化することもできる。水中油型エマルジョンは、例えば軽質流動パラフィン油(European Pharmacopea type);イソプレノイド油、スクワラン、スクワレン、EICOSANE(商標)またはテトラテトラコンタンなど;(1つまたは複数の)アルケン、例えばイソブテンまたはデセンのオリゴマー化から生じる油;植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリル酸/カプリン酸)、グリセリルトリ(カプリル酸/カプリン酸)またはプロピレングリコールジオレエートなどの直鎖アルキル基を含有する酸またはアルコールのエステル;分岐脂肪酸またはアルコールのエステル、例えばイソステアリン酸エステルをベースとするものであってよい。油は乳化剤と組み合わせて有利に使用して、エマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤、場合によってはエトキシル化状態である、ソルビタン、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、またはヒドロキシステアリン酸のエステルなど、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、Pluronic(登録商標)製品、例えばL121などであってよい。アジュバントは、(1つまたは複数の)乳化剤、ミセル形成物質、および例えばProvax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals、San Diego、CA)の名称で入手可能である油などの混合物であってよい。
【0178】
組換えアデノウイルス、または目的の1つまたは複数の抗原または免疫原を発現する組換えアデノウイルスベクター、例えば本開示によるベクターは、安定剤の存在下で、約5℃において液体形、または凍結乾燥もしくは凍結-乾燥形のいずれかで貯蔵および/または保存および保管することができる。凍結-乾燥はよく知られている標準的な凍結-乾燥手順に従うものであってよい。薬剤として許容される安定剤は、SPGA(スクロースリン酸グルタミン酸アルブミン、Bovarnick、ら、1950年)、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、スクロース、グルコース、デキストラン、トレハロース)、グルタミン酸ナトリウム(Tsvetkov、T.ら、1983年;Israeli、E.ら、1993年)、ペプトン、アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質、スキムミルクなどの作用物質を含有するタンパク質(Mills、CK.ら、1988年;Wolff、E.ら、1990年)、およびバッファー(例えば、リン酸バッファー、アルカリ金属リン酸バッファー)であってよい。アジュバントおよび/またはビヒクルまたは賦形剤を使用して、可溶性凍結-乾燥調製物を作製することができる。
【0179】
ここで本発明を、本発明の様々な実施形態の例示によって与えられ、如何なる形式でも本発明を制限することは意味しない、以下の非制限的な実施例によってさらに記載する。
【0180】
(実施例)
(実施例1:A/パナマ/2007/99HAをコードするAdベクターの構築)
2003〜2004年にワクチン生成用に選択された、インフルエンザウイルス株、A/パナマ/2007/99(H3N2)(配列番号1、2)はCenters for Disease Control(CDC)によって提供された。ヘマグルチニン(HA)遺伝子は、インフルエンザRNAの逆転写、次にTable 1(表1)中の以下のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるHA遺伝子の増幅によってクローニングした。
【0181】
【表1】
【0182】
これらのプライマーは、A/パナマ/2007/99HA遺伝子の5'および3'末端とアニーリングした配列、およびHA開始ATGコドンからすぐ上流の真核生物リボソーム結合部位(Kozak、1986年)、および続くクローニングのためのKpnI部位に対応する配列を含有する。完全長HA遺伝子を含有するKpnI断片を、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で正しい方向に、(T.Heによって提供された)pShuttle-CMV(Heら、1998年)のKpnI部位に挿入した。A/パナマ/2007/99HAをコードするE1/E3欠損Ad5ベクター(AdPNM2007/99.H3)を、記載されたように(Zengら、2001年)簡易組換え系を使用してヒト293細胞において作製した。
【0183】
HA挿入体とベクターの間の5'と3'両方の接合部の配列決定によって、AdPNM2007/99.H3ベクターを確認した。A/パナマ/2007/99に対するHI抗体を、AdPNM2007/99.H3の鼻腔内投与後にマウスにおいて誘導した。
【0184】
(実施例2.組換えAdベクターの卵内および筋肉内注射によるニワトリの免疫処置)
ヒトAdベクターワクチンの接種によるニワトリの免疫処置はこれまで報告されていない。Ad5は鳥類において本来見られないので、このベクターは、ニワトリ細胞において効率よく感染および/または複製することができないと考えた。驚くことに、AdPNM2007/99.H3の筋肉内注射後第2週で、全3羽のニワトリにおいて512の血清HI力価を得た(図1)。
【0185】
AdPNM2007/99.H3ベクターを9日齢および18日齢の孵化ニワトリ卵に注射したとき、孵化後第2週で、前者において8および16の血清HI力価を得て、かつ後者では4未満、4、および8のHI力価を得た。これらの結果は、E1/E3欠損ヒトAd5ベクターは、それが鳥類細胞において形質導入することができ複製することができないために、鳥類におけるワクチン担体として使用することができることを示唆する。卵内ワクチン接種によって誘導された比較的低いHI力価は、中でも特に、用量および胚の年齢に起因する可能性がある。ニワトリ細胞の表面上で見られるそのファイバーとコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)の結合によって、ニワトリ胚の一部にAd5ベクターを形質導入することができる(Tanら、2001年)。ごく少数の細胞の形質導入後、ニワトリ中で免疫応答を誘導することができる。なぜならAdは内在化後にエンドソームを阻害することによりベクターDNAを保護することができる強力なベクターだからである(Curiel、1994年)。さらに、Ad構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与える(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0186】
AdPNM2007/99.H3ベクターを、卵当たり5×1010pfuの用量において200μlの体積で、それぞれ9日齢(群1)および18日齢(群2)孵化ニワトリ卵の羊膜に注射した。群当たり6個の卵が存在したが、しかしながら、群1ではわずか2羽の鳥が孵化し、群2では3羽の鳥が孵化した。血清HI力価は孵化後第2週で記載されたように決定した(Van Kampenら、2005年)。群3では、AdPNM2007/99.H3ベクターを、動物当たり2.5×1010pfuの用量において100μlの体積で三羽の4週齢のニワトリに筋肉内注射した。HI力価は免疫処置後第2週で決定した。
【0187】
群1(9日齢胚の卵内免疫処置)では、8および16のHI力価を得て、群2(18日齢胚の卵内免疫処置)では、4(2の力価を任意に割り当てた)未満、4、および8のHI力価を得て、かつ群3(4週齢のニワトリの筋肉内免疫処置)では、全3羽のニワトリにおいて512のHI力価を得た。図1はlog2スケールでのHI力価を示す。四角形は群1中の個々のニワトリにおけるHI力価に対応し、一方で三角形は群2中の個々のニワトリにおけるHI力価に関する。円形は群3中の個々のニワトリにおけるHI力価に対応する。
【0188】
(実施例3.A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子をコードするAdベクター(AdTW68.H5)の構築)
AIウイルス株のHをコードするA/シチメンチョウ/WI/68H(配列番号3、4)のDNA鋳型はUSDA Southeast Poultry Research Laboratory、Athens GAによって提供され、Table 2(表2)中に示すプライマーを使用してPCR増幅した。
【0189】
【表2】
【0190】
これらのプライマーは、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子の5'および3'末端とアニーリングした配列、H開始ATGコドンからすぐ上流の真核生物リボソーム結合部位(Kozak、1986年)、および続くクローニングのための特有制限部位を含有する。完全長H遺伝子を含有する断片を、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で正しい方向に、(Crucell、Leiden、オランダによって提供された)シャトルプラスミドpAdAptのHindIII-BamHI部位に挿入した。RCAを含まない、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子をコードするE1/E3欠損Adベクター(AdTW68.H5)を、記載されたように(Shiら、2001年)pAdApt-TW68.H5とAd5骨格プラスミドpAdEasy1(Heら、1998年)のコトランスフェクションによって、(Crucellによって提供された)ヒトPER.C6細胞において続いて作製した。H挿入体とベクター骨格の間の5'と3'両方の接合部の配列決定によって、AdTW68.H5ベクターを確認した。
【0191】
Adベクター卵内AIワクチンを迅速に生産して、発生するAI大流行に対応した最高の安全性プロファイルの状況内でニワトリ集団に集団投与することができる。クロマトグラフィー仲介の精製(Konz、2005年)および長期貯蔵にフリーザーを必要としないバッファー(Evans、2004年)を併用した、無血清縣濁液を含むバイオリアクター(Lewis, 2006)中での十分特徴付けられたPER.C6細胞系におけるRCAを含まないAd5ベクターの大規模生産は、Ad5ベクターの生産コストを大幅に低減するはずである。AIワクチン生産の基質として孵化卵の代わりに培養細胞を使用することは、受精卵の供給が少ない可能性があるAI大発生時中は特に有意である。このAd5ベクターAIワクチンはDIVA戦略に従うものである。なぜならこのベクターはウイルスHAのみをコードするからである。したがって、血清HI抗体の分析および酵素結合免疫吸着アッセイによる抗AI核タンパク質の測定は、AIワクチンまたはウイルスへの曝露の迅速な決定を可能にし得る。
【0192】
RCAを含まないAd5ベクター卵内AIワクチンは、DIVA戦略と適合性がある均一用量の非複製AIワクチンの自動送達によって、免疫処置した鳥類においてHPAIウイルス感染を抑えることができる独自の基盤を与える。復帰突然変異体を生成するリスクと関係があり、環境中に標的種と非標的種の両方の遺伝子組換え生物を蔓延させる可能性がある複製組換えベクターと異なり、RCAを含まないAd5ベクターは野生に伝播しない。同時循環する野生型インフルエンザウイルスと望ましくないさらなる再集合体を生成する可能性がある(Hilleman、2002年)、リアソータントAIウイルスワクチンとは対照的に、Ad5のDNAゲノムがインフルエンザウイルスのセグメント状RNAゲノムとの再集合を経る可能性はない。
【0193】
(実施例4.AdTW68.H5の卵内接種)
卵内接種を記載されたように実施した(Senne、1998年、Sharmaら、1982年)。接種前に全ての胚を、生存性をろうそくの灯に透かして調べ、接種部位に印をつけ、3.5%ヨウ素を含有する70%エチルアルコールの溶液で消毒した。先端部を備える回転ドリルを使用して殻に穴を作製した。接種は1mlのシリンジを使用して羊膜-尿膜経路によって実施した。接種後、穴は溶融パラフィンで塞いだ。
【0194】
(実施例5.AdTW68.H5接種後の血清学)
AI株A/シチメンチョウ/WI/68をSPF孵化ニワトリ卵において継代し、106の胚感染用量50%/mlの力価を得た。羊膜尿膜液をヘマグルチニン化活性に関して試験した。個々の血清サンプルにおける抗体力価は、記載されたように(Swayneら、1998、Thayerら、1998年)4ヘマグルチニン化単位のAIウイルスを使用してヘマグルチニン化阻害によって決定した。
【0195】
(実施例6.AIゲノムのサンプリングおよび定量化)
個々の鳥由来の口部-咽頭サンプルを1.0mlの脳心臓注入媒体(Difco、Detroit、Mich.)中に縣濁し-70℃で保存した。RNAはRNeasyミニキット(Qiagen)を使用することによって抽出した。定量リアルタイムRT-PCRは、以前に記載されたように(Spackman、2002年)、A型インフルエンザウイルスマトリクスRNAに特異的なプライマーを用いて実施した。ウイルスRNAは、知られている量の対照A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95RNA(101.0〜106.0のEID50/mL)から作製した標準曲線を使用することによってサイクル閾値から挿入した。
【0196】
(実施例7.AdTW68.H5の卵内接種、次に孵化後追加抗原刺激によるニワトリの免疫処置)
接種によるニワトリの免疫処置は、1011ウイルス粒子/ml(vp/ml)を含有する300μlのAdTW68.H5を孵化第10日または第18日にSPF孵化卵に投与することによって実施した。各群の孵化したヒヨコを等しく二群に分けた。半分のニワトリには鼻腔内経路によって孵化後第15日に同じ用量のAdTW68.H5を再度ワクチン接種し、残りのニワトリには孵化後に追加抗原刺激の施用はなかった。
【0197】
これらの鳥類群から孵化後第28日で得た血清において検出したHI抗体力価を図2中に示す。孵化第10日で卵内ワクチン接種したニワトリは2と7log2の間の範囲(平均4.2)のHI力価を示し、孵化第10日でワクチン接種し孵化後に追加抗原刺激を施用したニワトリは2と9log2の間の範囲(平均5.5)のHI力価を示し、孵化第18日で卵内ワクチン接種したニワトリは2と9log2の間の範囲(平均5.5)のHI力価を示し、かつ孵化第18日でワクチン接種し孵化後第15日で追加抗原刺激したニワトリは2と8log2の間の(平均5.7)のHI値を示した。全体として、このヒトAdベクターAIワクチンの卵内投与はニワトリにおいてAIに対する確かな免疫応答を誘導し、一方でニワトリへのこのベクターワクチンの鼻腔内注入は、近年実証されたように(Gao、2006年)無効である。
【0198】
(実施例8.AdTW68.H5の卵内接種は、高病原性鳥インフルエンザ株HPA IA/ニワトリ/Queretaro/19/95(H5N2)による致死的攻撃に対して防御する)
19のSPFニワトリ胚を、実施例7中に記載したのと同じ用量のAdTW68.H5を用いて、孵化第18日で卵内経路によって免疫処置した。孵化したニワトリはウイングバンドによって個々に識別した。12羽のニワトリの群は孵化後第15日で鼻腔内経路によって追加抗原刺激し、残りの7羽のニワトリには追加抗原刺激しなかった。血液サンプルは第23日齢および第29日齢でそれぞれのウイングバンドを付けた鳥から得て、鳥インフルエンザ株A/シチメンチョウ/Wisconsin/68に対する抗体に関してHIにより試験した。全体として、これらの鳥において検出したHI抗体力価(図3)は、以前の試験で得た値と類似していた(図2)。大部分の鳥は5log2以上の力価を得た。卵内接種のみのニワトリは孵化第23日で5と9log2の間の力価を得た(図3)。これらのニワトリは、孵化第29日までその抗体力価を維持または増大した。鼻腔内追加抗原刺激と併用した卵内ワクチン接種は、孵化第23日まで3と9log2の間の範囲の抗体力価を示した(図3)。前群中と同様に、大部分のニワトリは、孵化第29日までその力価が1または2log2ステップ増大した。
【0199】
105胚感染用量(EID50)のHPA IA/ニワトリ/Queretaro/19/95(H5N2)(Horimoto、1995年、Garcia、1998年)による口部-咽頭接種によって、バイオセーフティレベル3+の施設で攻撃を実施した。この攻撃株のH遺伝子は、Adベクターワクチン(GenBankアクセッション番号U79448&U79456)(配列番号5、6、7、8)において使用したAI株A/シチメンチョウ/Wisconsin/68のHと、90.1%のヌクレオチド同一性および94.4%の推定アミノ酸類似性を有する。
【0200】
卵内ワクチン接種した7羽のヒヨコ、および卵内ワクチン接種し孵化後第15日に次いで鼻腔内追加抗原刺激した12羽のヒヨコ、ならびに11羽の非ワクチン接種対照を含めた合計30羽のニワトリを、孵化第34日で攻撃した。
【0201】
攻撃した鳥は、14日の実験期間を通じて罹患率および死亡率に関して毎日観察した。とさかおよび肉垂の膨張、結膜炎、拒食症および低体温症を含めたAIの臨床兆候を、11羽の対照鳥類の10羽において攻撃後第2日で観察した。2日後、対照群中の大部分の生存鳥が、とさかの壊死、肉垂の膨張、下痢、脱水症状、倦怠感、および脚部の皮下出血を示した。いずれのワクチン接種鳥においても疾患兆候は発症しなかった。AdTW68.H5(19/19)(卵内のみおよび卵内+鼻腔内追加抗原刺激)をワクチン接種した全ての鳥が、攻撃を生き延びた(図4)。
【0202】
攻撃した鳥におけるA/ニワトリ/Queretaro/19/95のウイルスゲノムを、攻撃後第2、4、および7日で回収した口部咽頭スワブにおけるリアルタイム逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって定量的に測定した。攻撃後第7日においてワクチン接種したニワトリと非ワクチン接種ニワトリの間で、AIウイルスゲノムの濃度の有意な差(P<0.05)が存在した(図5)。免疫処置した鳥中の検出可能なウイルスRNAの不在は、卵内ワクチン接種が、一週間以内のAIウイルス出芽を制御することができる免疫応答を誘導した証拠を与える。
【0203】
これらの結果は、異なるインフルエンザウイルス(ヒトおよび鳥類起源)由来のH遺伝子をコードするRCAを含まないヒトAdベクターで卵内免疫処置したニワトリは、均一AIウイルスに対するHI抗体力価を高め、同じH型の高病原性AIウイルス株による致死的攻撃に対して防御したことをまとめて示す。
【0204】
(実施例9.AdTW68.H5の卵内接種は、高病原性鳥インフルエンザ株A/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005(H5N1)による致死的攻撃に対して防御する)
AdTW68.H5ベクターAIワクチンが近年のH5N1HPAIウイルス株に対する防御をもたらすことができるかどうか決定するために、31羽のニワトリに2×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターを卵内ワクチン接種した。対照群は、無関係な抗原(破傷風毒素C断片)(Shiら、2001年)をコードするAd5ベクター(AdCMV-tetC)をワクチン接種した10羽のニワトリ、およびAd5ベクターに曝露しなかった10羽のニワトリを含んでいた。
【0205】
第31日に、対照および免疫処置したニワトリをH5N1AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005で攻撃した(この攻撃株のHAは、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68株のHAと89%の推定HAアミノ酸配列類似性を有する)。図6中に示すように、卵内免疫処置は第25日に1と6log2の範囲内で抗体を誘導した。非ワクチン接種(10/10)およびAdCMV-tetC免疫処置した(10/10)鳥は測定可能なHI抗体を産生せず、攻撃後9日以内にいずれもAIで死滅し、一方68%(21/31)のAdTW68.H5をワクチン接種した鳥は攻撃後第10日で臨床兆候なしで生き延びた(図7)。特に、3log2以上のHI力価を有する免疫処置群中の7羽の鳥(図6)がこの高致死性H5N1AIウイルスによってさらに殺傷された。このH5N1AIウイルスに対する生存率は、免疫原性が近いHAをコードするAd5ベクターによる卵内ワクチン接種によって改善することができると考えられる。
【0206】
これらの結果は、鳥類H5HAをコードするRCAを含まないヒトAd5ベクターで卵内免疫処置したニワトリは、HPAIウイルスに対する防御免疫を誘導することができる可能性があることを実証する。
【0207】
(実施例10.A/ニワトリ/New York/13142-5/94ヘマグルチニンをコードするアデノウイルスベクターの構築)
鳥インフルエンザ(AI)ウイルス株A/ニワトリ/New York/13142-5/94H7ヘマグルチニン(HA)をコードするE1/E3欠損ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するベクターを、以前に記載されたように作製した(Toroら、2008年)。AIウイルスの完全長H7HA遺伝子をシャトルプラスミドpAdAptに挿入して、プラスミドpAdApt-NY94.H7を作製した。このH7HAをコードする複製可能アデノウイルス(RCA)を含まないAd5ベクター(AdChNY94.H7)を、pAdApt-NY94.H7およびAd5骨格プラスミドpJM17とPER.C6細胞のコトランスフェクション、次に細胞変性効果(CPE)出現後の多サイクルのプラーク精製によって作製した。
【0208】
(実施例11.AdChNY94.H7ベクターのエアゾールスプレーによるニワトリの免疫処置)
1日齢のニワトリを3群に分け、その各々にエアゾールスプレーにより組成物を投与した。群A(n=15)は、一回投与レジメンで1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積での、(実施例10中で調製したのと同様の)AdChNY94.H7ベクターAIワクチンのエアゾールスプレーによって免疫処置した。群B(n=15)は、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010ifuのAd5)のエアゾールスプレーによって免疫処置し、16日齢で追加抗原刺激の施用をさらに加えた。群Cは非ワクチン接種対照であった。
【0209】
図8はELISAによって測定した涙液中の特異的IgAのレベルを示す。
【0210】
図9はニワトリ血清におけるヘマグルチニン化阻害(HI)抗体力価を示す。
【0211】
これらの図から見ることができるように、両方の免疫応答が群Aと群Bの両方で誘導され、群Bのメンバーは第16日での追加抗原刺激投与後に免疫応答の増大を実証した。ヒトAd5ベクターワクチンのエアゾールスプレーはニワトリをワクチン接種する際に有効であったというこの実証は、眼内投与、多数の経路の組合せ(鼻腔内、眼内、経皮、および経口投与)、および/またはエアゾールスプレー中に生じる霧状ミストに起因する可能性がある。
【0212】
(実施例12.鳥インフルエンザH5ヘマグルチニンをコードする複製欠損ヒトアデノウイルスベクターを用いた鳥類ハーダー腺中の粘膜免疫の誘導)
ニワトリ
特定病原体を含まない(SPF)白色レグホンニワトリの受精卵(Charles River Laboratories、North Franklin、CT)をインキュベートし孵化させた。実験期間を通じてHorsfall型隔離棟中で、BSL2条件下においてニワトリを保った。実験手順および動物ケアは、連邦政府および施設の動物ケアおよび使用ガイドラインに従い実施した。
【0213】
RCAを含まないAdベクターAIワクチン。
サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68AIウイルスのコドン最適化H5HAをコードするRCAを含まないE1/E3欠損AdTW68.H5ckベクターを、PER.C6細胞において作製した(provided by Crucell Holland BVによって提供された)。
【0214】
眼内ワクチン接種
H5特異的な免疫を誘導するために、9または10日齢のSPF白色レグホンニワトリ(Charles River Labs)に、80〜100μlの体積で鳥1羽当たり2.5×108ifuのAdTW68.H5ckを眼内経路によってワクチン接種した。具体的な実験では、眼内経路によって同じワクチン用量を用いて14日間隔で2回、ニワトリを追加抗原刺激した。対照群はナイーブの鳥、または無関係なタンパク質(破傷風毒素C断片)を発現するAd5をワクチン接種した鳥のいずれかであった。
【0215】
サンプル回収
血液サンプルを上腕静脈穿刺後に回収し、凝固させ、血清は4,500×gで1分間の遠心分離によって得た。血清を回収し、[4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドヒドロクロリド、アプロチニン、ベスタチン塩酸塩、[N-(トランス-エポキシスクシニル)-L-ロイシン4-グアニジルブチノアミド]、EDTA、リューペプチン(Sigma、Saint Louis、MO)を含有する10×プロテアーゼ阻害剤カクテルを、4℃での保存または-80℃での長期保存前に血清に加えた。涙液を以前に記載されたように得て(Toro、1996年)、3,300×gで5分間の遠心分離にかけ、10×プロテアーゼカクテルと混合し、4℃で保存または-80℃で長期保存した。血清および涙液は抗体測定用に第17、40、50、63および68日齢で回収した。
【0216】
抗体測定
血清中のAIH5抗体レベルを、4ヘマグルチニン化単位の低病原性A/シチメンチョウ/Wisconsin/68(H5N9)株に対するヘマグルチニン化阻害(HI)アッセイによって測定した。1.0Log2未満の力価には1.0の力価を任意に割り当てた。対照ニワトリではHI抗体を検出しなかった。
【0217】
血清および涙液は、Ad5特異的IgAおよびIgGのレベルに関してELISAによって分析した。HRP結合ヤギ抗ニワトリIgA、IgGおよびIgM抗体(Gallus Immunotech Inc.、Fergus、カナダ)を検出用抗体として使用したこと以外、Ad5に関するELISAは以前に報告されたのと同様に実施した(van Ginkel)。ELISAプレートは108個の粒子/野生型Ad5のウエルでコーティングした。ウエルをブロッキングし、サンプルの連続二倍希釈を加え、4℃で終夜インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ニワトリIgAまたはIgG抗体(Gallus Immunotech Inc.、Fergus、カナダ)を使用して、Ad5特異的抗体を検出した。ウエルを洗浄し基質を加えた。反応は室温で30分後に停止し、405nmでの吸光度を測定した。バックグラウンドより0.100以上高いOD405での最高希釈を終点力価として定義した。
【0218】
ニワトリB細胞の酵素結合イムノスポット(ELISPOT)アッセイ
ハーダー腺および脾臓を第20、30、40、50、および60日齢でこれらのニワトリから回収して、記載されたように(Czerkinsky)ELISPOTアッセイを使用して(A/tk/WI/68AI株でコーティングした)Ad5またはH5に特異的なIgAおよびIgG抗体分泌細胞の数を測定した。簡単に言うと、HGを機械的に破壊し、リンパ球は1.077g/mlのhistopaque-ficoll密度勾配での遠心分離によって単離した。単離したリンパ球は、トリパンブルー色素排除試験法を使用して血球計で計数した。2×ヘマグルチニン化力価でUV殺菌鳥インフルエンンザウイルス(A/tk/WI/68)または熱殺菌Ad5ウイルス(108個の粒子/ウエル)をコーティングした、ニトロセルロースを固めた、96ウエルマイクロプレートに様々な濃度でリンパ球を載せ、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有する完全RPMI-1640培地でブロッキングした。5%CO2で加湿器インキュベーター中において37℃で、約18時間細胞をインキュベートした。プレートはPBS-Tween20(0.05%)で5回洗浄し、HRPと結合したヤギ抗IgGまたはヤギ抗IgA(Gallus Immunotechnology、Inc.)と共に4℃で終夜インキュベートした。プレートを洗浄し、水でのプレート洗浄によって反応を停止させる前に、ペルオキシダーゼ基質(Moss Inc.)と共に室温で15〜30分間インキュベートした。
【0219】
免疫沈降
涙液または血清を、16.5μlのビオチニル化マウス抗ニワトリIgAモノクローナル抗体(Southern Biotechnology Associates、Inc、Birmingham、AL)または16μlのビオチニル化ヤギ抗ニワトリIgA(Southern Biotechnology Associates、Inc.)と共に、4℃で終夜インキュベートした。翌日、50μlの洗浄したストレプトアビジン結合セファロースビーズ(GE Healthcare Bio-Sciences AB、Uppsala、スウェーデン)を、シェーカーで連続攪拌しながら4℃において終夜加えた。翌日、ビーズを遠心分離によって沈降させ、1mlのPBSおよび0.05%のTween20で3回洗浄し、PBSで最後に1回洗浄した。2×トリス-グリシンSDSサンプルバッファー(Invitrogen、Carlsbad、CA)を加え、サンプルは100℃において10分間沸騰させた。その後サンプルを遠心分離にかけてビーズを除去し、上清は4〜12%のプレキャスト勾配ゲル(Invitrogen)上でSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分析した。製造者の勧め(Pierce、Rockford、IL)に従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して、タンパク質を目に見える状態にした。
【0220】
免疫組織化学
白色レグホンを2.5×108ifuのAdTW68.H5ckに曝露させた。組織は酸性酢酸-アルコール中に4℃で2時間固定し、次にPBS中スクロース(30%)中でインキュベートして組織を凍結防止し、その後組織をNeg50培地(Richard- Allan Scientific、Kalamazoo、MI)中に包埋し、イソペンタン(Fisher Scientific)中包埋モールド(Fisher Scientific)中に凍結し、液体窒素で冷却した。5μm切片をクリオスタット(Microm HM550、Waldorf、ドイツ)で切断し、予め洗浄したSuperfrost(登録商標)Plus顕微鏡スライド(Labsco、Inc.、Louisville、KY)上に置き乾燥させた。スライドは4分間氷冷アセトンで処理して脂質を除去し、乾燥させ、室温において1時間10%のFCSでブロッキングし、次に10%FCSに希釈した抗H5親和性精製ウサギ抗H5抗体(eEnzyme LLC、Gaithersburg、MD)と共に、4℃で終夜インキュベートした。このステップに、4℃で終夜のビオチニル化ロバ抗ウサギIgG(R&D Systems)とのインキュベーション、および室温で4時間1%FCS中でのNeutraliteアビジン-FITC(Southern Biotechnology Associates、Inc.、Birmingham、AL)を用いた最終染色ステップを続けた。ステップ間に、スライドはPBS中で大々的に洗浄し、カバーガラスはVectashield Hard Set封入剤(Vector Laboratories、Inc、Burlingame、CA)で封入した。全ての画像はSPOTソフトウェア(Diagnostic Instruments)を使用してグレースケールで捉え、Microsoft Office Picture Viewerで編集した。画像は以下の設定、70に調節した「量」、100に調節した「色相」、100に調節した「彩度」を使用して緑色化した。
【0221】
RT-PCRニワトリポリマー免疫グロブリン受容体
製造者のプロトコルに従いTri試薬(Molecular Research、Inc.)を使用して、三羽のニワトリのハーダー腺から全RNAを単離した。1マイクログラムの全RNAを逆転写し、94℃、1分、58℃、1分の35PCRサイクルにより増幅して、ニワトリポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)の発現を検出した。順方向プライマーはヌクレオチド206 3'-CCAGGAGTTGCTTGACTGT-5'で始まり、逆方向プライマーはヌクレオチド605 3'-CTCAGCAGGATTCTCCCTTG-5'で始まり、したがって、1.5%アガロースゲルで分離し臭化エチジウムで染色すると、pIgRのmRNAを増幅する場合400bpの診断PCR産物を観察する。これらのプライマーはイントロンを含むので、ゲノムDNAの増幅後に約750bpのアンプリコンが見られた。考えられるDNA汚染を排除するために、RNAをRNaseを含まないDNase(Sigma)で処理した。
【0222】
統計分析
全ての統計分析は、スチューデントの不対両側t検定を使用して実施した。
【0223】
結果
免疫蛍光染色を使用して眼部免疫処置後第9日でのHG(図10)において、AdTW68.H5ckからのH5HAの発現を検出することができたことを実証した。H5発現細胞は大部分がHG中に存在した管と一直線に並んでいた。対照組織中ではH5の発現は示されなかった。決定的証拠は、ヒトAd5がin vivoで特異的ニワトリ細胞に形質導入することができることを示す。
【0224】
AIウイルスに対する全身抗体応答を測定するために、HIアッセイを血清サンプルで実施した。連続希釈液を、AdTW68.H5ckの第二および第三の眼部投与後2週間で回収した血清から作製した。図11中に示すように、強いHI抗体応答を、第二のAdTW68.H5ck施用(HI力価6.4、n=15)後と第三の施用(HI力価7.7、n=9)後の両方で観察したが、一方いずれの非接種対照においてもHI力価を検出しなかった(HI=0、n=11)。
【0225】
ELISAは涙液中の多量のIgAおよびIgGAd5特異的抗体を明らかにしたが、一方血清中では高いIgG力価のみを検出した(図12)。IgA検出用に2倍希釈サンプルまたはIgG検出用に32倍希釈サンプルで始めたとき、対照ニワトリにおいてIgAまたはIgG抗体は検出しなかった(データ示さず)。涙液中と血清中のIgGレベルは有意に異ならなかった(P=0.4072)。これは、涙液中のIgG抗体がHG中で産生されたこと、または血清滲出に由来したこと、またはこの2つの組合せに由来する可能性がより高いことを示し得る。大部分のニワトリにおいて高いIgAレベルは涙液中で観察し(6.8の平均Log2終点力価)、一方IgAの血清中レベルは検出不能であった(0.3の平均Log2終点力価)。涙液中のIgAレベルは血清中で観察したレベルより有意に高かった(P<0.0001)。これは、大部分のIgA抗体は、眼部免疫処置後にHG中で局所的に産生されることを示した。これを確認し、さらにHG中でのIgG産生を決定するために、本発明者らはニワトリ用ELISPOTアッセイを開発した。
【0226】
IgAおよびIgGのELISPOTアッセイは、材料および方法中に詳細に記載したようにAd5ベクターおよび発現H5HA用に開発した。図13中に示すのは、HGにおいて眼部攻撃後に観察したIgAスポット形成細胞(SFC)である。眼部攻撃後にHGにおいて誘導されたAd5およびH5に特異的なIgGSFC応答を図14中に示す。Ad5特異的免疫応答は、752SFC/106個のリンパ球の眼部投与後第9日でピークに達する。H5HAに対するピークのIgG応答は2日後であり、AdTW68.H5ck投与後第11日に2,047SFC/106個のリンパ球である。これはAd5IgGSFC応答より2.7倍程度が高い(図14)。Ad5応答と比較したときAd5IgASFC応答より2.4倍高い、2日の同じ遅延をH5IgASFC応答に関して観察した(図15)。H5およびAd5のピークのIgA応答は、それぞれ605SFC/106個のリンパ球および257SFC/106個のリンパ球であった。
【0227】
HGは目に隣接して位置するので、それらは正確に位置して、ポリマーIgAを分泌することによって侵入する病原体に対する第一線の防御を形成する。ニワトリポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)はクローニングされており、その発現は様々な組織中で分析されており(Wieland、2004年)、かつポリマーIgMおよびIgAとのその関係は実証されているが(Kobayahi、1980年)、ニワトリHG中の粘膜抗体応答をもたらす、この必須受容体の発現に関するデータは入手可能ではない。HGから単離した全てのRNAを、考えられるDNA汚染を排除するためのRNaseを含まないDNaseを用いた処理後にRT-PCRによって分析した。図16中に示すように、pIgRはHG中で発現された。RNAの逆転写を省略したとき、PCR産物は観察されなかった。さらに、pIgRのDNAの増幅は約750bpの産物をもたらす可能性があるが、これは観察しなかった。この観察によって、HG中でpIgRのmRNAが発現されたことを確認する。さらに、RT-PCR産物はAuburn Universityの配列決定施設で配列決定し、公開済みのニワトリのpIgRmRNA配列(Wieland、2004年)と同一であることが分かった。
【0228】
HG中でのpIgRの発現が涙液中のポリマーIgAの分泌をもたらしたことを確認するために、涙液と血清IgAの両方の免疫沈降を実施した。この手順によって単離したタンパク質はSDS-PAGEで分析し、製造者のプロトコル(Pierce、Rockford、IL)に従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して目に見える状態にした(図17)。3つの異なる大きさのタンパク質を、ニワトリIgAに対するマウスモノクローナル抗体を用いて沈降させた。最小タンパク質は約200〜230kDaの推定分子量を有しており、これは二本の軽鎖と二本の重鎖で構成されるモノマーIgA(mIgA)分子と一致した。涙液と血清タンパク質中のmIgAの量の明らかな違いを観察した。mIgAは血清中ではIgAの最も優勢な型であり、涙液中では最も少ない型である。約470kDaの推定MWを有する次いで高分子量(MW)のタンパク質は涙液中に最も多量に存在するタンパク質であり、血清中では最も少ないタンパク質である。このタンパク質は大きさに基づくと(Wieland、2004年;Watanabe、1975年;Watanabe、1974年)、pIgRの分泌成分(SC)と結合したジマーIgAであった。沈降した最大のタンパク質は大きさに基づくと(Watanabe、1975年;Watanabe、1974年)、おそらく約710kDaの推定MWを有するテトラマーIgA(tIgA)であった。tIgAは涙液と血清の両方において豊富であった。このデータは、モノマーIgAは血清中で最も優勢であり、一方ジマーIgAは涙液などの粘膜分泌物中で最も優勢であったことを実証した。このシナリオは哺乳動物中で観察したのと同一であった。
【0229】
したがって、これらの結果は、ヒト複製欠損AdTW68.H5ckワクチンベクターは1)眼部曝露時にHGの細胞に効率よく形質導入し、これによって2)全身性と粘膜免疫応答の両方をもたらしたことを実証する。さらに、これはELISPOTアッセイを使用したニワトリHGにおける抗体分泌細胞の最初の定量分析、ニワトリにおけるIgAのELISPOTの使用に関する最初の報告である。H5トランス遺伝子とAd5ベクターの両方に対するIgGおよびIgA応答の誘導を観察した。これを、HGがpIgRを発現し涙液中に主にpIgAを分泌したという発見と組み合わせて、全身性と粘膜区画の両方において病原体に対する防御免疫応答を生成するHGの重要性を確認した。
【0230】
どのようにしてヒトAd5ベクターをニワトリ細胞に形質導入するかという問題は依然解決されていない。ニワトリは、野生型ヒトAd5は鳥類病原体ではないという事実に基づいて、Ad5ファイバーknobと相互作用することが知られている(Bergelson、1997年)従来のコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)を発現しないと考えられる。CAR受容体を介した機構以外の、細胞に形質導入するためのAd5の他の機構が提案されている。例えば、MHCクラスIは、Ad5の取り込みに関与する可能性があるCARミモトープを含有することができる(Hong、1997年)。さらに、ペントン塩基タンパク質は、αv-インテグリンによるアデノウイルスの内在化を促進するRGDモチーフを有する(Wickham、1993年;Davison、2001年)。インテグリンがCAR受容体の不在下でのAd5によるニワトリ細胞の形質導入において役割を果たすかどうかは、短いシャフトのアデノウイルスに関して報告されたように(Roelvink、1998年)知られていない。これらの細胞上でのCAR受容体発現の欠如のため、比較的低い有効性でin vitroにおいて樹状細胞(DC)にAd5を形質導入した(Okada、2001年、Rea、1999年)。皮内送達後DCに形質導入するそれらの能力に関して(CD46を介してDCを標的化することが知られている)Ad5とAd35を比較した近年の試験は、Ad35はDCに形質導入する際にAd5より約2倍有効であったが、しかしながら、CD83+成熟DCを含めた相当な割合のDCがAd5により形質導入されたことを実証した(de Gruijl、2006年)。適応免疫応答の強力な誘導物質として機能するDCの能力を考慮して、本発明者らは、CAR受容体の不在下での、ニワトリにおける仮定シナリオ、Ad5はDCをより標的化する傾向があり得ると推測した。DCの標的化は、Ad5特異的免疫応答の追加抗原刺激によってさらに増大することができる。なぜなら初回抗原刺激中に誘導されるAd5に対するIgG抗体は、Ad5をオプソニン化し、それらをDC上のCD64+(高親和性Fcγ-R1受容体)に向けることができるからである。Ad5ベクターをCD64に向ける試験は、非修飾Ad5と比較してヒトDC形質導入の10〜15倍の増大を実証した(Sapinoro、2007年)。この文脈で、眼部Ad5-H5投与後HG中のH5発現細胞は、HGの排出管を広範囲で内側を覆う可能性があることは興味深く、同様の分布がニワトリのHGにおけるCD83+DCに関して近年報告された(Hansell、2007年)。
【0231】
ニワトリにおけるB細胞ELISPOTアッセイに関してわずか2つの刊行物が刊行されている。第一の刊行物は家禽産業科学の研究論文として1998年に刊行され、脾臓中の伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス(IBDV)に特異的なIgGおよびIgMスポット形成細胞(SFC)を実証し(Wu、1998年)、ELISPOTはニワトリ中での免疫応答を詳細に分析するのに貴重で高感度なツールであるという概念を証明した。第二の刊行物はさらに精巧な試験であり、その中で、末梢血単核細胞および脾臓における伝染性気管支炎ウイルス特異的IgGSFCの動態のより詳細な分析が実施された(Pei、2005年)。本発明者らの分析は、HGにおいてAd5およびAIH5に特異的なIgGとIgASFCの両方に関する。ニワトリにおけるIgASFCの以前の分析は報告されておらず、HGにおいて誘導されたSFCの如何なる分析も存在しない。HGにおけるAd5-H5誘導型H5特異的IgAおよびIgG応答は、Ad5特異的応答より約2.5倍高かった。HGにおけるIgGSFC応答はH5およびAd5に対するIgASFC応答より約3倍高かった。ある程度のIgGSFC応答は血液由来リンパ球に由来したと考えられるので、本発明者らはリンパ球の単離前にPBSでHGを灌流しなかった。それにもかかわらず、強いIgG応答をHGにおいて観察し、これは涙液中のAd5特異的IgG抗体レベルによっても示された。Ad5特異的応答と比較したH5特異的抗体SFC応答の2日間の遅延は、Ad5ベクターへの曝露とH5トランス遺伝子の発現の間に遅延がある証拠となり得る。何故この遅延が起こるのか、およびこの観察結果がAd5を使用してマウスで示された観察結果(van Ginkel、1995年)と異なるかは明らかでない。これがニワトリ細胞のAd5ベクターによる感染経路と関係があるかどうかは、依然決定されていない。
【0232】
IBV特異的涙液IgAレベルは、眼部IBV攻撃に対する耐性のレベルと関係がある(Toro、1994年)。これは病原体への曝露に対する粘膜表面の防御に関する、涙液中でのIgA抗体の重要性を示す。実用的観点から、これらの発見は関連がある。それらは、卵内ワクチン接種後にニワトリを効率よく防御することが以前に報告されたのと同じアデノウイルス組換え技術を用いて、AIに対して既存の(成体)ニワトリ集団をワクチン接種する実現性を証明するからである。
【0233】
鳥類J鎖はクローニングされており、HGB細胞中で発現されることは実証されているが(Takahashi、2000年)が、涙液由来IgAの分子組成の限られた分析が存在する。Watanabeらは、約650kDaの分子量を有するテトラマーIgA(tIgA)の涙液中での分泌、およびこのtIgAはポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)の分泌成分(SC)と結合しなかったことを報告した(Watanabe、1975年)。腸はその中でIgA分泌がSCと関係があった唯一の器官であった(Wieland、2004年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)。このポリマーIgA(pIgA)の分子量は350と500kDaの間であると推定された(van Ginkel、1995年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)。ニワトリpIgRのクローニングは、ノーザンブロット分析によるpIgRのmRNAの実証を可能にした。mRNAは腸内で発現されただけでなく、Fabriciusの肝臓、胸腺および嚢内でも発現された。以前の報告(Watanabe、1975年)と反対に、SCは胆汁由来IgAと結合することも実証された(Wieland、2004年)。ニワトリの涙液および血清由来の免疫沈降IgAの分析に基づくと、少なくとも3つの異なる型のIgAがニワトリにおいて存在する。分子量に基づくと、モノマー型のIgAは血清中では最も優勢な型であり、涙液中にはほとんど存在しない。分子量に基づいてSCとおそらく関係があるジマーIgAは、血清と比較したとき涙液中で最も優勢な型であった。最後に、マルチマー、おそらくtIgAは、涙液と血清中の両方にほぼ等しいレベルで存在した。
【0234】
さらに、ニワトリのHG中でpIgRの発現が起こったことがRT-PCRによって実証された。HG中でのpIgR発現の欠如によってニワトリ中でのpIgRの機能が疑問視された可能性がある。この発見は、粘膜上皮を越えた涙液中へのpIgAの輸送に関するpIgRの役割、血清中ではなくニワトリの粘膜分泌液中でのpIgAの高い分布と一致する。血清中ではモノマーIgA(mIgA)が優勢である。この同じシナリオは哺乳動物中で見られた。したがって、ニワトリIgAにおけるヒンジ領域、哺乳動物中でタンパク質分解を最も受けやすい領域の欠如(Mansikka、1992年)が、粘膜分泌液中のSCとpIgAの結合を変えることはなかった。SCとの結合が鳥類pIgAにプロテアーゼに対する一層の防御をもたらさなかった場合、その唯一の役割は上皮を越えたpIgAの輸送であったかどうかという問題が提議された。ジマーIgAとペンタマーの哺乳動物IgMの両方がpIgRにより粘膜上皮を越えて輸送されたことは、この文脈では興味深かった。ペンタマーIgMは正確な構築にJ鎖を必要とし、一方ヘキサマーIgMはJ鎖を含有していなかった(Randall、1990年、Wiersma、1998年)。J鎖は哺乳動物と比較したときニワトリ中で高度に保存されており(Takahashi、2000年)、pIgRとの相互作用に重要であった2つの保存領域を含有した(Braathen、2007年)。ヘキサマーIgM中のJ鎖の欠如によって、J鎖含有ペンタマーIgMより補体結合反応が約20倍を超えて効率よくなる(Randall、1990年、Wiersma、1998年)。したがって、SCと組み合わせたJ鎖はポリマー抗体と結合して、粘膜表面での補体の活性化、炎症および関連組織の損傷を妨げたと仮定することができた。これらの機能は、哺乳動物IgAは補体を活性化する際に本来乏しかったので、IgAよりIgMに重要である可能性がある。これらの抗体が鳥類の粘膜表面で同様の役割を果たすかどうかに関するデータは入手不能であった。
【0235】
ニワトリの血清と涙液の両方において見られたtIgAは、異なる研究者によって報告された(Kobayashi、1980年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)、SCを含有しないことが報告された(Kobayashi、1980年、Watanabe、1975年)ニワトリ中の胆汁および涙液由来IgAに関する大きさの違いを説明することができる。ヒトの粘膜分泌液中のIgAはテトラマーおよびトリマー型も含有したが、これらの型はpIgRと結合し、この受容体のSCを含有した(Song、1995年)。ニワトリのIgAはこの点で哺乳動物のIgAと異なり、かつどのようにしてtIgAがニワトリの涙液、胆汁および唾液などの粘膜分泌液中に輸送されるかに関する機構は、さらなる分析を必要とすると考えられる。さらにこれらのデータは、眼部曝露後に粘膜と全身両方の免疫をもたらすHGの重要性、およびヒトAd5ベクターワクチンによる鳥類病原体に対する成体ニワトリの点眼ワクチン接種の実現性の証拠を実証した。
【0236】
本発明の実施形態をこのように詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明は、本発明の精神または範囲から逸脱せずにその多くの明らかな変更形態が考えられるので、前の記載中に述べた特定の詳述によって制限されないことは理解されよう。
【0237】
ここで本発明を、以下の番号付きパラグラフによってさらに記載する。
1. 動物中の免疫応答を誘導する方法であって、防御免疫応答が動物中で誘導されるように有効量の免疫原性またはワクチン組成物を投与するステップを含み、投与がエアゾールスプレーによる方法。
2. 免疫原性またはワクチン組成物が、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、パラグラフ1に記載の方法。
3. アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、パラグラフ2に記載の方法。
4. アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、パラグラフ2に記載の方法。
5. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ4に記載の方法。
6. プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、パラグラフ2に記載の方法。
7. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ2に記載の方法。
8. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、パラグラフ7に記載の方法。
9. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ7に記載の方法。
10. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ7に記載の方法。
11. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ7に記載の方法。
12. 獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのエアゾールスプレー送達用の免疫原性組成物またはワクチン。
13. アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
14. アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
15. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ14に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
16. プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
17. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
18. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
19. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
20. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ19に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
21. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3および5からなる群から選択される、パラグラフ20に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
22. アジュバントをさらに含む、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
23. 追加のワクチンをさらに含む、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
24. 鳥類対象において鳥インフルエンザに対する免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量のパラグラフ12から23のいずれか一項に記載の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法。
25. 鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現され、免疫原性組成物がエアゾールスプレーにより投与される方法。
26. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ25に記載の方法。
27. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ25に記載の方法。
28. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ27に記載の方法。
29. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ28に記載の方法。
30. 追加のワクチンをさらに含む、パラグラフ25に記載の方法。
31. 鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスをエアゾールスプレー投与するステップを含む方法。
32. ヒトアデノウイルスがアデノウイルス血清型5由来の配列を含む、パラグラフ31に記載の方法。
33. ヒトアデノウイルスが複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、パラグラフ31に記載の方法。
34. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ33に記載の方法。
35. 鳥類の病原体の抗原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ31に記載の方法。
36. 鳥類の病原体の抗原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ35に記載の方法。
37. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ36に記載の方法。
38. 鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ36に記載の方法。
39. 追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、パラグラフ31に記載の方法。
40. 1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置であって、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する装置。
41. ヒトアデノウイルス発現ベクターが、アデノウイルス血清型5由来の配列を含む、パラグラフ40に記載の装置。
42. ヒトアデノウイルス発現ベクターが、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、パラグラフ40に記載の装置。
43. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ40に記載の装置。
44. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ40に記載の装置。
45. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ40に記載の装置。
46. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ40に記載の装置。
47. 目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ40に記載の装置。
48. 追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、パラグラフ40に記載の装置。
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2008年9月26日に出願された米国仮出願第61/100,623号の優先権を主張するものである。
【0002】
2006年8月15日に出願された米国特許出願第11/504,152号、2005年8月15日に出願された米国特許出願第60/708,524号、2002年1月18日に出願された米国特許出願第10/052,323号、2002年4月5日に出願された米国特許出願第10/116,963号、2003年1月16日に出願された米国特許出願第10/346,021号、ならびに米国特許第6,706,693号、米国特許第6,716,823号、米国特許第6,348,450号、および1998年8月13日に出願されたPCT/US98/16739が言及されており、参照によりそれらの全容を本明細書に組み込む。
【0003】
前述の出願、およびその中で引用されるまたはその審査中の全文書(「出願引用文書」)、および出願引用文書中で引用または参照される全文書、および本明細書で引用または参照する全文書(「本明細書で引用する文書」)、および本明細書で引用する文書中で引用または参照する全文書、ならびに本明細書または参照により本明細書に組み込まれている任意の文書中で言及する任意の製品に関する、任意の製造者の説明書、記載、製品仕様書、および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれており、本発明の実施において利用することができる。
【0004】
本発明は概して、免疫学およびワクチン接種技術の分野に関する。より具体的には、本発明は、鳥インフルエンザウイルス遺伝子などの、鳥類免疫原または抗原をコードする遺伝子を鳥類に送達するための、E1欠損ヒトアデノウイルスベクターなどの組換え非複製性ベクターに関する。本発明はさらに、鳥類胚を含めた鳥類対象に鳥類免疫原を導入し発現させる方法、および鳥類対象において免疫原に対する免疫応答を誘発する方法、エアゾールスプレーまたは点眼剤を含めた粘膜経路による投与を含むような方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
鳥インフルエンザ(AI)は、鳥類種、他の動物、およびヒトに感染する高感染性の病原体である。1997年以来、AIウイルスがヒトに伝染した、いくつかの事例が存在している(Subbaraoら、1998年、Ungchusakら、2005年)。証拠は、鳥インフルエンザとヒトインフルエンザウイルスの間の遺伝子組換えが、病歴中に複数回起こったことも示す(Kawaokaら、1989年)。鳥類在来種とヒトは密接に接触しているので、ヒト集団へと種の壁をおそらく越える可能性がある新たなAIウイルス株の発生は、公衆衛生上の懸念であり続けると考えられる。
【0006】
鳥類の集団ワクチン接種は、AIウイルスの播種を妨げるため、およびヒトへの大流行のリスクを低減するための最も有望な手段であるように見える。不活化完全ウイルスワクチンを用いた鳥類のワクチンは、過去数年間にわたりいくつかの国で実施されている。これらのAIワクチンは感染した卵から採取した羊水尿膜腔液から調製され、ホルマリンまたはβ-プロピオラクトンによって後に不活化される(TollisおよびDi Trani、2002年)。しかしながら、新たなAIウイルス株の予想外の出現、ニワトリ胚に非常に致命的である型へのAIウイルスの進化(Woodら、2002年)、不活化ワクチンの個体への非経口送達の必要性、およびバイオテロリストによる致死的AI株の考えられる播種によって、安全かつ有効なAIワクチンの早急な開発および適時の供給は、重要であり、なお非常に困難な仕事となる。さらに、野生で感染したニワトリと、同じ株の不活化AIウイルスで以前にワクチン接種されたニワトリを識別することはできない(Normile、2004年)。
【0007】
AIウイルスのヘマグルチニン(HA)をコードする実験用組換え鶏痘ウイルスは、ヘマグルチニン化阻害(HI)血清応答は無視できる程度であったが、翼膜穿刺後にH5N2 AIウイルスの攻撃に対してニワトリを防御した(Beardら、1992年)。HAを発現する生存組換えワクシニアウイルスを翼膜を介して接種されたニワトリでも、致死的なAIウイルスの攻撃に対する防御免疫応答が発生し、低レベルの血清HI抗体が検出された(Chambersら、1988年)。消化管に向けた向性を有する水鳥起源のAI分離株は、経口AIワクチンとしてニワトリに接種されているが(Crawfordら、1998年)、この型のウイルスの固有に動的な進化のため、これらの分離株は新たなAIウイルス株に対して広く有効であるとは予想されない。
【0008】
バキュロウイルスベクターから発現されたHAタンパク質の皮下注射(Crawfordら、1999年)、および遺伝子銃を使用した皮膚へのHAをコードする発現プラスミドの接種(Fynanら、1993年)によって、鳥類を免疫処置することもできる。これらのAIワクチン接種は、鳥類が臨床兆候および死を示すのを予防すること、および相同HAを含有する攻撃性ウイルスの呼吸器内および腸内複製を低減することができる。ニューカッスル病ウイルスベクターからHAを発現する低コストのエアゾールAIワクチン(Swayne、2003年)、または非病原性インフルエンザウイルス骨格を含有する組換えインフルエンザウイルスが有効であり得る(Leeら、2004年、Webbyら、2004年)証拠も存在する。
【0009】
大部分の前述のAIワクチンは、労働集約型の非経口送達に頼るものである。経口およびエアゾールAIワクチンは、集団接種中に個々の鳥類に均一用量を送達する際の一貫性のなさに悩まされる。いくつかのワクチンにおいて使用する複製ベクターは、非天然微生物型を環境に導入することによってバイオハザードをももたらす。組換えインフルエンザウイルスワクチンは、再集合体インフルエンザウイルスと環境中で同時に循環する野生型AIウイルスの間の組換えによって、有害な再集合体を生成する可能性さえある(Hilleman、2002年)。
【0010】
ワクチン担体としての組換えアデノウイルス(「Ad」)ベクターの利用に関する、いくつかの注目すべき理由が存在する。Adベクターは、有糸分裂細胞と有糸分裂後細胞の両方にin situで形質導入することができる。さらに、高力価のウイルス(すなわち、1ml当たり1012を超えるpfu[プラーク形成単位])を含有するAdストックの調製物は生成するのが容易であり、これによって高い感染多重度(MOI)において細胞にin situで形質導入することができる。ワクチンとしてのそれらの長期の使用に基づいて、Adベクターはさらに証明済みの安全記録を有する。さらに、Adベクターは(少なくとも初期突発として)高レベルの遺伝子発現を誘導することができ、複製欠損Adベクターは、当技術分野でよく知られている技法を使用して、容易に生物学的操作、製造、および保存することができる。
【0011】
特異的受容体に対するAdベクターの高い親和性およびエンドソーム経路を回避するその能力(Curiel、1994年)のため、AdベースのワクチンはDNAワクチンより強力である。Adベクターは、そのファイバーと、ニワトリ細胞の表面にあるコクサッキーおよびアデノウイルス受容体(CAR)との結合によって、ニワトリ胚の一部に形質導入することができる(Tanら、2001年)。さらに、Ad構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与えることができる(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0012】
Adベースのワクチンは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI拘束性T細胞応答を誘導するそれらの能力において、自然感染の影響を模倣するが、病原体のゲノムのサブフラグメントのみがベクターから発現されるので、毒性に逆戻りする可能性が排除されている。ベクターによってコードされない病原体の特異的マーカーを使用して二事象を識別することができるので、この「選択的発現」によって、ワクチン接種済み-ただし-非感染動物とその感染相当物を区別する問題を解決することができる。特に、関連抗原遺伝子は野生サンプルから直接増殖およびクローニングすることができるので、病原体の増殖はベクターワクチンを作製するのに必要とされない(Rajakumarら、1990年)。これはH5N1などの非常に毒性が強いAI株からワクチンを生成するのに特に重要である。これらの株は増殖するのが危険で難しすぎるからである(Woodら、2002年)。前述の基準以外に、商業的関心も家禽産業における重要な要因である。現在のAIワクチン単独では、動き回る鳥に注射する労力を計算せずに、鳥1羽当たり約7セントのコストである(Normile、2004年)。
【0013】
複製不能E1/E3欠損ヒトAd血清型5(Ad5)由来ベクターは哺乳動物において広く試験されている(GrahamおよびPrevec、1995年)。抗原をコードする鳥類Adニワトリ胚致死的オーファン(CELO)ウイルスベクターの皮下または皮内注射によってニワトリを免疫処置したが(Francoisら、2004年)、ニワトリ細胞内で複製するその能力のため、CELOベクターは低いコンプライアンスレートを有し、おそらく有害である可能性がある。CELOは識別可能なE1、E3、およびE4領域を有していないので(Chioccaら、1996年)、複製不能CELOベクターは今回は免疫処置用の担体として利用することはできない。本発明は、広く様々な疾患設定で鳥類を保護するための安全かつ有効な遺伝子送達法を提供することによって、この必要性に対処し、したがってヒトへの鳥類病原体の伝播を予防する。
【0014】
ハーダー腺(副涙腺)(HG)はJohann Jacob Harder(1656〜1711)によって1694年に最初に記載され、大部分の陸生脊椎動物において見られる(Payne、1994年)。HGはニワトリにおいて眼球後方の眼か内に位置する管状胞状腺であり、その分泌管は身体の腺を離れて瞬膜の表面に達した後は形態学上異なる(Payne、1994年)。腺の機能は多様であり、a)目および瞬膜の潤滑、b)鳥類における免疫応答、c)げっ歯類における光受容、d)網膜-松果体軸の一部の形成、e)フェロモンの生成、f)げっ歯類における体温調節脂質の生成、g)いくつかの爬虫類における浸透圧調節、h)増殖因子の生成およびi)いくつかのカメにおける唾液生成を含む(Payne、1994年、Chieffi、1996年)。微生物病原体またはベクターワクチンへの眼部の曝露によって適応免疫応答が生じるように、HGが位置することが好ましい。
【0015】
ヒトAd5ベクターワクチンの筋肉内注射(Gao、2006年)または卵内投与(Toro、2007年)によって、鳥類病原体に対してニワトリを事前に免疫処置した。本明細書で記載するように、ニワトリにおいて適応粘膜免疫をもたらすHGの能力を評価するために、さらなる試験が必要であった。A/シチメンチョウ/ウィスコンシン/68のコドン最適化H5HA遺伝子を発現するRCAを含まないヒトAd5ベクター(AdTW68.H5ck)を用いた以前の試験は、一回の卵内免疫処置後に、高病原性AI(HPAI)H5N2A/ニワトリ/Quer/95およびH5N1A/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005株による攻撃に対する防御免疫を誘導した(Toro、2007年)。AIから既存のニワトリ集団を保護するために、卵内免疫処置に対する代替免疫処置プロトコルが必要とされる。インフルエンザウイルスは粘膜表面への曝露後に伝播するので、眼部施用後にニワトリにおいてH5HAに対する粘膜および全身性免疫を誘導する、このAdTW68.H5ckベクターの能力を試験した。AdTW68.H5ckベクターは、HG関連の眼部免疫処置後にニワトリにおいて粘膜および全身性免疫を誘導することができる。以前の発見(Toro、1996年)に基づいて、HGは粘膜エフェクター部位として免疫応答を誘導することができる免疫担当組織である可能性があると考えられる。さらに、HGのB細胞中でJ鎖が発現されるという観察によって、防御機構中の重要な組織としてのHGがさらに確認される。ニワトリJ鎖遺伝子は他種のそれと高度な相同性を示し、ニワトリ免疫系の発生の初期段階で発現される(Takahashi 2000年)。さらに、J鎖はIgAとIgMの重合および粘膜上皮を越えるそれらの輸送において重要な役割を果たし、したがって粘膜上皮を越えるポリマーIgA(pIgA)の輸送の要件となり得る(Johansen2000年)。ニワトリ(Gallus gallus)のポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)が近年クローニングされ(Wieland 2004年)、鳥類種におけるこの粘膜輸送系の保存、および防御粘膜免疫におけるその重要性を確認した。
【0016】
本出願中の任意の文書の引用または一体化は、このような文書が従来技術として本発明に利用可能であることを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国仮出願第61/100,623号
【特許文献2】米国特許出願第11/504,152号
【特許文献3】米国特許出願第60/708,524号
【特許文献4】米国特許出願第10/052,323号
【特許文献5】米国特許出願第10/116,963号
【特許文献6】米国特許出願第10/346,021号
【特許文献7】米国特許第6,706,693号
【特許文献8】米国特許第6,716,823号
【特許文献9】米国特許第6,348,450号
【特許文献10】PCT/US98/16739
【特許文献11】WO97/03211
【特許文献12】WO96/39154
【特許文献13】米国特許第5,990,091号
【特許文献14】WO98/00166
【特許文献15】WO99/60164
【特許文献16】米国特許出願第10/424,409号
【特許文献17】WO99/08713
【特許文献18】米国特許仮出願第60/683,638号
【特許文献19】米国特許第6,872,561号
【特許文献20】米国特許第6,642,042号
【特許文献21】米国特許第6,280,970号
【特許文献22】米国特許第6,255,108号
【特許文献23】日本国特許公開第9-173059号
【特許文献24】日本国特許公開第9-98778号
【特許文献25】国際公開第WO90/02803号
【特許文献26】米国特許第4,458,630号
【特許文献27】米国特許第RE35973号
【特許文献28】米国特許第6,668,753号
【特許文献29】米国特許第6,601,534号
【特許文献30】米国特許第6,506,385号
【特許文献31】米国特許第6,395,961号
【特許文献32】米国特許第6,286,455号
【特許文献33】米国特許第6,244,214号
【特許文献34】米国特許第6,240,877号
【特許文献35】米国特許第6,032,612号
【特許文献36】米国特許第5,784,992号
【特許文献37】米国特許第5,699,751号
【特許文献38】米国特許第5,438,954号
【特許文献39】米国特許第5,339,766号
【特許文献40】米国特許第5,176,101号
【特許文献41】米国特許第5,136,979号
【特許文献42】米国特許第5,056,464号
【特許文献43】米国特許第4,903,635号
【特許文献44】米国特許第4,681,063号
【特許文献45】米国出願第10/686,762号
【特許文献46】米国出願第10/216,427号
【特許文献47】米国出願第10/074/714号
【特許文献48】米国出願第10/043,025号
【特許文献49】米国特許第6,017,537号
【特許文献50】米国特許第2,909,462号
【特許文献51】米国特許第6,713,068号
【特許文献52】WO96/34109
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Fieldsら、Virology 2、Ch.67(3ded、Lippincott-Raven Publishers)
【非特許文献2】Pharmeuropa、Vol.8、No.2、1996年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ヒトアデノウイルスベクターワクチンは、卵内送達およびエアゾールスプレーによるものを含めて、迅速、安全、かつ有効に鳥類を免疫処置することができることが、現在驚くべきことに示されている。いくつかの鳥類病原体に対する鳥類の集団免疫処置は、多大な経済的損失を防ぐため、およびヒト集団への鳥インフルエンザウイルスなどの鳥類病原体の伝播を予防するために重要である。自動注入機を用いたワクチンまたは免疫原性組成物の卵内送達は、時機を逸せずに鳥類を集団免疫処置するための非労働集約型の方法である。あるいは、ワクチンまたは免疫原性組成物の粘膜(眼部またはエアゾールスプレー)送達は、家禽産業において通常実施される。さらに、粗粒子スプレー送達は、時機を逸せずに鳥類を集団免疫処置するための非労働集約型の方法である。粘膜経路によるワクチンは全身性免疫応答を誘発するだけでなく、病原体の入り口でも免疫応答を誘導する。他の鳥類用ワクチンと異なり、ヒトアデノウイルスベクターワクチンまたは免疫原性組成物の生成は致死的病原体の増殖は必要とせず、鳥類中で複製することができるベクターによる抗原または免疫原の伝播は含まない。さらに、これらの型のワクチンまたは免疫原性組成物による免疫処置は、ワクチン接種動物と自然感染動物の区別を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施形態では、本発明は、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現することができる、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを提供する。
【0021】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス配列はアデノウイルス血清型5に由来してよい。ヒトアデノウイルス配列は複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルスに由来してよい。
【0022】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1-αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択することができる。
【0023】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0024】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわちヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、およびノイラミニダーゼに由来してよい。
【0025】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9に由来してよい。
【0026】
本発明の別の実施形態では、獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現することができる、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのin vivo送達用の免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
【0027】
一実施形態では、アデノウイルスDNA配列はアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来してよい。
【0028】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス配列はヒトアデノウイルス血清型5に由来してよい。ヒトアデノウイルス配列は複製欠損アデノウイルスに由来してよい。
【0029】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1-αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択することができる。
【0030】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0031】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわちヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、およびノイラミニダーゼに由来してよい。
【0032】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9に由来してよい。
【0033】
免疫原性組成物またはワクチンは、アジュバントをさらに含むことができる。
【0034】
免疫原性組成物またはワクチンは、追加のワクチンをさらに含むことができる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、細胞中に1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を導入し発現させる方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターと細胞を接触させるステップ、および細胞中で1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が発現するのに十分な条件下で細胞を培養するステップを含む方法を提供する。
【0036】
細胞は293細胞またはPER.C6細胞であってよい。
【0037】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0038】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、1つまたは複数の鳥ウイルスに由来してよい。
【0039】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0040】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0041】
さらなる実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターと鳥類胚を接触させ、それによって鳥類胚において1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原の発現を得るステップを含む方法を提供する。
【0043】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、1つまたは複数の鳥ウイルスに由来してよい。
【0044】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザウイルスに由来してよい。
【0045】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質または他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択することができる。
【0046】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0047】
鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法は、卵内送達によって行うことができる。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、鳥類胚中に1つまたは複数の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し発現させる方法は、エアゾールスプレー送達によって行うことができることが好ましい。
【0049】
本発明の別の実施形態では、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量の本発明の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態は、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。
【0051】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0052】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0053】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0054】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0055】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0056】
一実施形態では、感染法は卵内送達によって行うことができる。
【0057】
あるいは、感染法はエアゾールスプレー送達によって行うことができる。
【0058】
本発明の別の実施形態は、鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現される方法を提供する。
【0059】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来してよい。
【0060】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0061】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0062】
さらに別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0063】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0064】
翼膜、翼端、胸筋、または腿筋の筋肉内注射によって鳥類対象を感染状態にすることができる。
【0065】
卵内またはエアゾールスプレーによって鳥類対象を感染状態にすることもできる。
【0066】
本発明の別の実施形態は、鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスを、卵内またはエアゾールスプレー投与するステップを含む方法を提供する。
【0067】
ヒトアデノウイルスは、アデノウイルス血清型5由来の配列を含むことができる。
【0068】
一実施形態では、ヒトアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含むことができる。
【0069】
一実施形態では、鳥類の病原体の抗原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する。
【0070】
別の実施形態では、鳥類の病原体の抗原は鳥インフルエンザに由来してよい。
【0071】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0072】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0073】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0074】
本発明の別の実施形態は、鳥類胚に免疫原性組成物を送達するための卵内投与装置を提供し、この装置は目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、この装置は組換えヒトアデノウイルスを鳥類胚に送達する。
【0075】
本発明のさらなる実施形態は、1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置を提供し、この装置は目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、この装置は組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する。
【0076】
一実施形態では、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、アデノウイルス血清型5由来の配列を含むことができる。
【0077】
別の実施形態では、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含むことができる。
【0078】
一実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する。
【0079】
別の実施形態では、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザに由来してよい。
【0080】
さらに別の実施形態では、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン、核タンパク質、マトリクス、またはノイラミニダーゼからなる群から選択することができる。
【0081】
さらに別の実施形態では、目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、ヘマグルチニン亜型3、5、7、または9からなる群から選択することができる。
【0082】
方法は追加のワクチンを投与するステップをさらに含むことができる。
【0083】
したがって、本発明の目的は、以前から知られている製品、製品の製造法、または製品の使用法のいずれも本発明内に含めないことであり、したがって本出願人は権利を有し、任意の以前から知られている製品、プロセス、または方法の否認をここに開示する。本発明は、本発明の範囲内に、USPTO(35 U.S.C.§112、第一章)またはEPO(EPCの第83条)の文書化された記載および付与要件に適合しない、任意の製品、プロセス、または製品の製造法もしくは製品の使用法を含むことは意図せず、したがって本出願人は権利を有し、任意の以前に記載された製品、製品の製造法、または製品の使用法の否認をここに開示することに、さらに留意されたい。
【0084】
本開示および特に特許請求の範囲および/または本文中では、例えば「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は米国特許法に属する意味を有することができ、例えばそれらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」などを意味することができること、および「から本質的になっている(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は米国特許法に属する意味を有し、例えばそれらは要素を明確には列挙しないが、従来技術中に見られる、または本発明の基本もしくは新規特性に影響を与える要素は除外することに留意されたい。
【0085】
これらおよび他の実施形態は以下の詳細な説明によって開示し、またはそこから明らかであり、かつそれによって含まれる。
【0086】
下記の発明を実施するための形態は、例として示されており、記載する具体的な実施形態に本発明を限定することは意図しておらず、参照により本明細書に組み込まれている添付の図面と共に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターの卵内および筋肉内注射によるニワトリの免疫処置を示すグラフである。群1は9日齢の孵化ニワトリ卵を表し、群2は18日齢の孵化ニワトリ卵を、それぞれ卵当たり5×1010pfuの用量において200μlの体積で表す。群3では、鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターを、動物当たり2.5×1010pfuの用量において100μlの体積で三羽の4週齢のニワトリに筋肉内注射した。
【図2】インキュベーション第10日または第18日にAdTW68.H5のみを卵内ワクチン接種した28日齢のSPFニワトリ、およびインキュベーション第10日または第18日に卵内ワクチン接種し、孵化後第15日に鼻腔内経路によって追加抗原刺激したニワトリ中で検出した、ヘマグルチニン化阻害抗体力価(ドット)を示すグラフである。バー、幾何学的平均log2[HI力価]。ナイーブ対照のニワトリにおいてHI力価は検出しなかった(データ示さず)。
【図3】孵化第18日に卵内ワクチン接種のみをした(7羽のヒヨコ)、または孵化後第15日に卵内ワクチン接種しAdTW68.H5で鼻腔内に追加抗原刺激した(12羽のヒヨコ)のいずれかの、孵化後第23日および第29日でのSPFニワトリにおける、ヘマグルチニン化阻害抗体を示すグラフである。D23およびD29、それぞれ孵化後第23日および第29日でのHI力価。ドット、個々の鳥類におけるlog2[HI力価]。バー、幾何学的平均log2[HI力価]。孵化後第23日および第29日で11羽のナイーブ対照のニワトリにおいてHI力価は検出しなかった(データ示さず)。
【図4】18日齢の白色レグホンニワトリの胚の卵内ワクチン接種を示すグラフである。卵内ワクチン接種は1011vpのAdTW68.H5(卵内)を使用して実施した。別の群では、卵内ワクチン接種した鳥を、同じ用量でのAdTW68.H5の鼻腔内注入によって、孵化後第15日に追加抗原刺激した(卵内+鼻腔内追加抗原刺激)。免疫処置なしのナイーブ胚は陰性対照として働いた(対照)。第34日齢のニワトリを、致死用量の高病原性A/Ck/Queretaro/14588-19/95(H5N2)AIウイルス株で、後鼻孔スリットを介して鼻腔内攻撃した。生存率の統計上有意な変化は、ログランク検定(Prism4.03、GraphPadソフトウェア)を使用した試験によって決定した。鼻腔内追加抗原刺激の施用有りまたは無しのAdTW68.H5による卵内ワクチン接種は、非ワクチン接種対照と比較したとき(P<0.001)、AIウイルスによる致死的攻撃に対してニワトリを有意に保護した(100%)。
【図5A】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図5B】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図5C】この高病原性AIウイルスによる鼻腔内攻撃後に、ワクチン接種および対照ニワトリ由来の口部-咽頭サンプルにおいて定量リアルタイムRT-PCR(16)によって定量化した、A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95ウイルスRNAを示すグラフである。ニワトリは図3の説明中に記載したのと同様にワクチン接種した。サンプルは感染後第2、4、および7日で回収した。ワクチン接種対照と非ワクチン接種対照の間のウイルス量の有意な差(P<0.05)は第7日に得た。
【図6】3×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターの接種によって実施した、第18日の卵内ワクチン接種を示すグラフである。Ad5ベクターはSartobind Q5膜(Sartorius North America、Inc.、Edgewood、NY)によって精製し、A195バッファー(Evans、2004年)に再縣濁した。第25日における事前攻撃用血清中HI抗体を分析した。マイナス記号(-)は攻撃に屈した鳥を示し、プラス記号(+)は攻撃を生き抜いた鳥を示す。死滅した鳥と比較して(不対t検定、Prism4.03)、生存した鳥は有意に高い事前攻撃血清中HI活性を有していた(P<0.001)。全てのナイーブ対照の鳥、および対照ベクターAdCMV-tetCによって免疫処置した鳥は、測定可能なHI抗体力価を生じなかった。
【図7】3×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターの接種によって実施した、第18日の卵内ワクチン接種を示すグラフである。Ad5ベクターはSartobind Q5膜(Sartorius North America、Inc.、Edgewood、NY)によって精製し、A195バッファー(Evans、2004年)に再縣濁した。対照および免疫処置した鳥は、第31日に105EID50のH5N1AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴル//244L/2005の鼻腔内投与によって攻撃した。
【図8】1日齢でのエアゾールスプレーワクチン接種後に、ニワトリの涙液中に存在したIgA抗H7を示すグラフである。群A、一回用量で1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積でのAdChNY94.H7のエアゾールスプレー。群B、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010のifuのAd5)のエアゾールスプレーおよび16日齢での追加抗原刺激の施用。群C、非ワクチン接種対照。
【図9】ニワトリ血清におけるヘマグルチニン化阻害(HI)抗体力価を示すグラフである。群A、一回用量で1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積でのAdChNY94.H7のエアゾールスプレー。群B、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010のifuのAd5)のエアゾールスプレーおよび16日齢での追加抗原刺激の施用。群C、非ワクチン接種対照。
【図10】眼部Ad5-H5曝露後第9日でのニワトリハーダー腺における、鳥インフルエンザヘマグルチニンの発現の図である。X日齢の白色レグホンを、AIヘマグルチニン遺伝子血清型5を発現する2.5×108感染単位のアデノウイルスに曝露させた。組織は酸性酢酸-アルコール中に2時間固定し、次にスクロース(30%)中でインキュベートし、その後組織をNeg50培地中に包埋し凍結した。5μm切片をクリオスタットで切断し、スライド上に置いて乾燥させた。スライドはアセトンで処理し、抗H5親和性精製ウサギ抗H5抗体を用いた4時間の染色前に1時間10%のFCSでブロッキングした。スライドは大々的に洗浄し、カバーガラスはVectashield Hard Set封入剤で封入した。対照ではなくAd5-H5曝露したHDGLがH5を発現した。
【図11】Ad5-H5で眼部を免疫処置したニワトリの血漿におけるヘマグルチニン化阻害(HI)力価の図である。血漿サンプルは、対照ニワトリ(n=11)および2.5×108のi.f.uのAd5-H5で2回(n=15)または3回(n=9)免疫処置したニワトリから回収した。4ヘマグルチニン化単位の低病原性A/シチメンチョウ/Wisconsin/68(H5N9)株を使用してHI力価を決定した。1.0Log2未満の力価には0の力価を任意に割り当てた。対照ニワトリではHI力価を検出しなかったが、一方HI力価は眼部投与後第14日で試験したそれぞれのAd5-H5投与で増大した。
【図12】Ad5-H5の眼部投与後のAd5特異的抗体の誘導の図である。Ad5特異的抗体は記載したようにELISAによって検出した。簡単に言うと、ウエルを死滅野生型Ad5ウイルスでコーティングし、ブロッキングし、連続二倍希釈サンプルを終夜インキュベートした。HRP結合IgAおよびIgGニワトリ特異的抗体を使用してAd5特異的抗体を検出した。反応は室温で30分後に停止し、405nmでの吸光度を測定した。バックグラウンドより0.100以上高いOD405での最高希釈を終点力価として定義した。対照ニワトリ由来の涙および血清においてIgGまたはIgA抗体のレベルは検出しなかった。
【図13】眼部免疫処置後のハーダー腺中のIgA分泌細胞の図である。免疫処置後第9日でハーダー腺から単離したリンパ球を単離し、抗原コーティングしたELISPOTプレートに載せ、CO2インキュベーター内で終夜インキュベートした。抗体分泌細胞はHRPと結合した抗IgA抗体を用いて検出し、その後基質を加えて、材料および方法中に記載したようにスポットを目に見える状態にした。対照または眼部攻撃したニワトリ由来のハーダー腺リンパ球を含有する1つのウエルを示す。
【図14】Ad5-H5を用いた眼部免疫処置後の、ハーダー腺中のH5およびAd5特異的IgG抗体分泌細胞の図である。Ad5-H5投与後の様々な日時でハーダー腺(HDGL)からリンパ球を単離し、H5およびAd5に関して抗体分泌細胞を分析した。106個のリンパ球当たりのIgGスポット形成細胞の平均数および一標準誤差を示す。Ad5特異的とH5特異的両方のIgG抗体が、眼部Ad5-H5投与後にハーダー腺において産生される。
【図15】Ad5-H5を用いた眼部免疫処置後の、ハーダー腺中のH5およびAd5特異的IgA抗体分泌細胞の図である。Ad5-H5投与後の様々な日時でハーダー腺からリンパ球を単離し、H5およびAd5に特異的なIgA抗体分泌細胞に関して分析した。106個のリンパ球当たりのIgAスポット形成細胞の平均数および一標準誤差を示す。Ad5特異的とH5特異的両方のIgA抗体がハーダー腺において産生し、Ad5-H5投与後第9日および第11日にピークに達する。
【図16】ニワトリのハーダー腺中のポリマーIg受容体の発現の図である。製造者のプロトコルに従いTri試薬(Molecular Research、Inc.)を使用して、三羽のニワトリのハーダー腺から全RNAを単離した。1マイクログラムの全RNAを逆転写し、94℃、1分、58℃、1分の35PCRサイクルによって増幅した。RT-PCR産物および100bpのDNAラダーを1.5%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウムで染色した。400bpのアンプリコンを観察し、pIgRmRNAがハーダー腺中で生成することを確認した。
【図17】涙液および血清中のニワトリIgAの免疫沈降の図である。涙液および血清は、ビオチニル化マウス抗ニワトリIgAモノクローナル抗体またはビオチニル化ポリクローナルヤギ抗ニワトリIgAと共に、4℃で終夜インキュベートした。翌日洗浄したストレプトアビジン結合セファロースビーズを、連続攪拌下で4℃で終夜加えた。翌日ビーズを洗浄し、SDSサンプルバッファー中で100℃において10分間沸騰させた。免疫沈降物は4〜12%のプレキャスト勾配ゲル上でSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分析した。製造者のプロトコルに従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して、タンパク質を目に見える状態にした。使用した略語:モノマーIgA=mIgA、ポリマーIgA=pIgA、テトラマーIgA=tIgA。
【発明を実施するための形態】
【0088】
用語「核酸」または「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形の、デオキシリボ核酸またはリボ核酸オリゴヌクレオチドを指す。この用語は、天然ヌクレオチドの知られているアナログを含有する核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを含む。この用語は、合成骨格を有する核酸様の構造も含む。例えば、Eckstein、1991年、Basergaら、1992年、Milligan、1993年、WO97/03211、WO96/39154、Mata、1997年、Strauss-Soukup、1997年およびSamstag、1996年を参照。
【0089】
本明細書で使用する「組換え」は、合成もしくは他の場合はin vitroで操作したポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、細胞または他の生物系において組換えポリヌクレオチドを使用して遺伝子産物を生成する方法、または組換えポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え手段」は、異なる供給源由来の様々なコード領域もしくはドメインもしくはプロモーター配列を有する核酸の、本発明のベクター中のポリペプチドコード配列の発現、例えば誘導的または構成的発現用の発現カセットまたはベクターへの連結も含む。
【0090】
用語「異種」は、核酸に関して使用するとき、核酸が細胞またはウイルス中に存在し、それが通常天然では見られない、または通常天然で見られるのと互いに同じ関係で見られない2個以上の部分列を含む、またはその発現レベル、もしくは細胞、または構造中の他の核酸もしくは他の分子との物理的関係が通常天然では見られないように、組換えによって操作されていることを示す。この文脈で使用する類似の用語は「外因性」である。例えば、天然で見られない形式で配置する無関係な遺伝子、例えば本発明のアデノウイルスベースのベクター中に挿入されたプロモーター配列と作用可能に連結したヒト遺伝子由来の2個以上の配列を有する異種核酸は、典型的には組換えによって生成する。一例として、目的の異種核酸は免疫原性遺伝子産物をコードすることができ、アデノウイルスはワクチンまたはワクチン組成物として治療的または予防的に投与する。異種配列はプロモーターと配列の様々な組合せを含むことができ、その例は本明細書で詳細に記載する。
【0091】
「抗原」は、免疫系によって認識され、免疫応答を誘導する物質である。この文脈で使用する類似の用語は「免疫原」である。
【0092】
本発明の文脈における「鳥類対象」は、任意および全ての鳥綱の飼育および野生鳥を指し、新顎類(Neognathae)および古顎類(Palaeognathae)だけには限られないが、これらを含む。新顎類目は、特にガンカモ目(Anseriformes)、アマツバメ目(Apodiformes)、サイチョウ目(Buceroformes)、ヨタカ目(Caprimulgiformes)、チドリ目(Charadriiformes)、コウノトリ目(Ciconiiformes)、ネズミドリ目(Coliiformes)、ハト目(Columbiformes)、ブッポウソウ目(Coraciiformes)、カッコウ目(Cuculiformes)、ワシタカ目(Falconiformes)、キリハシ目(Galbuliformes)、キジ目(Galliformes)、アビ目(Gaviiformes)、ツル目(Gruiformes)、エボシドリ目(Musophagiformes)、ツメバケイ目(Opisthocomiformes)、スズメ目(Passeriformes)、ペリカン目(Pelecaniformes)、フラミンゴ目(Phoenicopteriformes)、キツツキ目(Piciformes)、カイツブリ目(Podicipediformes)、ミズナギドリ目(Procellariiformes)、オウム目(Psittaciformes)、ペンギン目(Sphenisciformes)、フクロウ目(Strigiformes)、ハチドリ目(Trochiliformes)、キヌバネドリ目(Trogoniformes)、ミフウズラ目(Turniciformes)、およびヤツガシラ目(Upupiformes)を含む。古顎類目は、特にキーウィ目(Apterygiformes)、ヒクイドリ目(Casuariiformes)、ディノルニス目(Dinornithiformes)、レア目(Rheiformes)、ダチョウ目(Struthioniformes)、およびシギダチョウ目(Tiniamiformes)を含む。鳥類対象は、成体鳥類、幼鳥、および鳥類の胚/卵を含むことができる。
【0093】
遺伝子または核酸の「発現」は、クローニング系中および任意の他の状況における、細胞の遺伝子発現だけでなく、(1つまたは複数の)核酸の転写および翻訳も含む。
【0094】
本明細書で使用する「ベクター」は、一環境から他の環境への物体の移動を可能または容易にするツールである。例えば、組換えDNA技法中で使用するいくつかのベクターによって、DNAのセグメント(異種DNAセグメントなど、異種cDNAセグメントなど)などの物体を、標的細胞に移動することができる。本発明は、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、DNAベクター、またはそれらの組換え体を含むことができる組換えベクターを包含する。
【0095】
ベクター(例えば、目的のエピトープおよび/または抗原および/または治療剤をコードするベクター)中での発現用の外因性DNA、およびこのような外因性DNAを与える文書に関して、および核酸分子の発現を高めるための転写および/または翻訳因子の発現に関して、および特に「目的のエピトープ」、「治療剤」、「免疫応答」、「免疫性応答」、「防御的免疫応答」、「免疫性組成物」、「免疫原性組成物」、および「ワクチン組成物」などの用語に関しては、1999年11月23日に発行された米国特許第5,990,091号、ならびにWO98/00166およびWO99/60164、ならびにその中に引用された文書およびその特許およびこれらのPCT出願の審査中の記録文書に言及されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれている。したがって、米国特許第5,990,091号、ならびにWO98/00166およびWO99/60164、ならびにその中に引用された文書およびその特許およびこれらのPCT出願の審査中の記録文書、ならびに本明細書に引用したまたは他の場合参照により本明細書に組み込んだ他の文書は本発明を実施する際に参考にすることができ、かつ、その中に引用された全ての外因性核酸分子、プロモーター、およびベクターは本発明を実施する際に使用することができる。この件については、米国特許第6,706,693号、米国特許第6,716,823号、米国特許第6,348,450号、米国特許出願第10/424,409号、米国特許出願第10/052,323号、米国特許出願第10/116,963号、米国特許出願第10/346,021号、およびPCT/US98/16739から1999年2月25日に公開されたWO99/08713でも言及されている。
【0096】
本明細書で使用する用語「免疫原性組成物」および「免疫性組成物」および「免疫原性または免疫性組成物」は、本発明のアデノウイルスベクターおよびウイルスから発現される目的の抗原または免疫原に対する免疫応答を誘導する、例えば、対象への投与後に、目的の標的免疫原または抗原に対する免疫応答を誘導する任意の組成物を含む。用語「ワクチン性組成物」および「ワクチン」および「ワクチン組成物」は、目的の(1つまたは複数の)抗原に対する防御的免疫応答を誘導する、または抗原に対して効率よく防御する、例えば、対象への投与または注射後に、標的抗原もしくは免疫原に対する防御的免疫応答を誘導する、または本発明の発明であるアデノウイルスベクターから発現される抗原または免疫原に対する効率よい防御をもたらす任意の組成物を含む。用語「獣医学用組成物」は、治療用タンパク質、例えばエリスロポイエチン(EPO)など、または免疫調節タンパク質、例えばインターフェロン(IFN)などを発現する獣医学用途のベクターを含む任意の組成物を意味する。同様に、用語「医薬組成物」は、治療用タンパク質の発現用ベクターを含む任意の組成物を意味する。
【0097】
「免疫学的に有効な量」は、対象に投与すると、目的の遺伝子産物に対する免疫応答をもたらす、目的の遺伝子をコードする組換えベクターの量または濃度である。
【0098】
「循環組換え型」は、2個以上の亜型または株の間で遺伝子再集合を経た組換えウイルスを指す。本発明の文脈で使用する他の用語は「ハイブリッド型」、「組換え型」、および「再集合型」である。
【0099】
「臨床分離株」は、例えば、感染対象から単離され、高増殖性ドナーウイルスの実験適合マスター株と共に実験細胞または対象において再評価された、頻繁に使用されるウイルスの実験株を指す。
【0100】
「野生分離株」は、感染対象または環境から単離されるウイルスを指す。
【0101】
本発明の方法を適切に施用してワクチンとして疾患を予防することができ、または治療接種として疾患の症状に対する軽減をもたらすことができる。
【0102】
本発明の組換えベクターは単独、または免疫性または免疫原性組成物の一部としてのいずれかで対象に投与することができる。本発明の組換えベクターを使用して、(1つまたは複数の)タンパク質のin vivo発現によって目的の対象に、1つまたは複数のタンパク質を送達または投与することもできる。
【0103】
本発明によって得られる免疫性産物および/または抗体および/または発現産物をin vitroで発現させ、このような免疫性および/または発現産物および/または抗体が典型的に使用される形式で使用することが可能であること、およびこのような免疫性および/または発現産物および/または抗体を発現する細胞はin vitroおよび/またはex vivoの適用例において利用することができること、例えば、このような使用および適用例は、診断、アッセイ、ex vivo療法(例えば、遺伝子産物および/または免疫応答を発現する細胞をin vitroで増殖し宿主または動物に再導入する場合)などを含むことができることに留意されたい。米国特許第5,990,091号、WO99/60164およびWO98/00166およびその中に引用された文書を参照。さらに、本明細書の方法から単離した、または本明細書の投与法に従ってin vitroで増殖した細胞から単離した発現抗体または遺伝子産物は、サブユニットエピトープまたは抗原または治療剤または抗体の投与と同様に、組成物において投与して、免疫を誘導する、治療応答を刺激する、および/または受動免疫を刺激することができる。
【0104】
本明細書で使用する用語「ヒトアデノウイルス」は、マストアデノウイルス属のメンバーを含め、アデノウイルス科の全てのヒトアデノウイルスを含むものとする。今日まで、51を超えるヒトアデノウイルスの血清型が同定されている(例えば、Fieldsら、Virology 2、Ch.67(3ded、Lippincott-Raven Publishers)を参照)。アデノウイルスは血清群A、B、C、D、E、またはFであってよい。ヒトアデノウイルスは血清型1(Ad1)、血清型2(Ad2)、血清型3(Ad3)、血清型4(Ad4)、血清型6(Ad6)、血清型7(Ad7)、血清型8(Ad8)、血清型9(Ad9)、血清型10(Ad10)、血清型11(Ad11)、血清型12(Ad12)、血清型13(Ad13)、血清14(Ad14)、血清型15(Ad15)、血清型16(Adl6)、血清型17(Ad17)、血清型18(Ad18)、血清型19(Ad19)、血清型19a(Ad19a)、血清型19p(Ad19p)、血清型20(Ad20)、血清型21(Ad21)、血清型22(Ad22)、血清型23(Ad23)、血清型24(Ad24)、血清型25(Ad25)、血清型26(Ad26)、血清型27(Ad27)、血清型28(Ad28)、血清型29(Ad29)、血清型30(Ad30)、血清型31(Ad31)、血清型32(Ad32)、血清型33(Ad33)、血清型34(Ad34)、血清型35(Ad35)、血清型36(Ad36)、血清型37(Ad37)、血清型38(Ad38)、血清型39(Ad39)、血清型40(Ad40)、血清型41(Ad41)、血清型42(Ad42)、血清型43(Ad43)、血清型44(Ad44)、血清型45(Ad45)、血清型46(Ad46)、血清型47(Ad47)、血清型48(Ad48)、血清型49(Ad49)、血清型50(Ad50)、血清型51(Ad51)、または血清型5(Ad5)であってよいが、これらの例だけには限られない。
【0105】
本発明によってさらに企図されるのは、2種以上のアデノウイルス血清型由来のサブウイルス粒子を含むことができる、組換えベクター、免疫原性組成物、および組換えアデノウイルスである。例えば、アデノウイルスベクターは特定組織または細胞型に対する改変された親和性(tropism)を示すことができ(Havenga、M.J.E.ら、2002年)、したがって、様々なアデノウイルス血清型由来の異なるアデノウイルスカプシド、すなわちファイバー、またはペントンタンパク質の混合および適合は有利であり得ることは知られている。ファイバーおよびペントンを含めたアデノウイルスカプシドの修飾は、非修飾アデノウイルスと異なる親和性を有するアデノウイルスベクターをもたらすことができる。修飾され標的細胞に感染するその能力が最適化されたアデノウイルスベクターは、治療または予防用量の有意な低下を可能にし、低下した局所および播種毒性をもたらすことができる。
【0106】
アデノウイルスは非エンベロープDNAウイルスである。アデノウイルス由来のベクターは、それらを遺伝子導入に非常に有用にするいくつかの特徴を有する。本明細書で使用する「組換えアデノウイルスベクター」は、1つまたは複数の異種ヌクレオチド配列(例えば、2、3、4、5個またはそれより多くの異種ヌクレオチド配列)を有するアデノウイルスベクターである。例えば、アデノウイルスの生物学的性質は詳細に特徴付けられ、アデノウイルスは重度のヒトの病状とは関係なく、このウイルスは宿主細胞にそのDNAを導入する際に非常に有効であり、このウイルスは広く様々な細胞に感染することができ、広い宿主範囲を有し、このウイルスは比較的容易に多量に生成することができ、ウイルスゲノムの初期領域1(「E1」)の欠失によって、このウイルスを複製欠損および/または非複製状態にすることができる。
【0107】
アデノウイルスのゲノムは、それぞれの鎖の5'末端と共有結合した55-kDaの末端タンパク質を含む、約36,000塩基対(「bp」)の線状二本鎖DNA分子である。AdのDNAは、血清型に応じた正確な長さである約100bpの同一の逆方向末端反復(「ITR」)を含有する。ウイルスの複製起点はITR内ゲノム末端に正確に位置する。DNA合成は二段階で起こる。最初に、鎖置換によって複製が進行し、娘二本鎖分子および親置換鎖が生成する。置換鎖は一本鎖であり、「パンハンドル」中間体を形成することができ、これが複製開始および娘二本鎖分子の生成を可能にする。あるいは、複製がゲノムの両末端から同時に進行し、パンハンドル構造を形成する必要性を除去する可能性がある。
【0108】
増殖感染サイクル中、ウイルスの遺伝子は二期、ウイルスDNA複製までの時間である初期、およびウイルスDNA複製の開始と一致する後期で発現される。初期の間は、領域E1、E2、E3およびE4によってコードされる初期遺伝子産物のみが発現され、それらはウイルス構造タンパク質の合成用に細胞を調製するいくつかの機能を果たす(Berk、A.J.、1986年)。後期の間は、後期ウイルス遺伝子産物が初期遺伝子産物以外に発現され、宿主細胞のDNAおよびタンパク質合成は中断する。結果として、細胞はウイルスDNAおよびウイルス構造タンパク質の生成に専念する状態になる(Tooze、J.、1981年)。
【0109】
アデノウイルスのE1領域は、標的細胞の感染後に発現されるアデノウイルスの第一領域である。この領域は2個の転写単位、E1AおよびE1B遺伝子からなり、この両方が初代(胚性)げっ歯類培養物の癌遺伝子の形質転換に必要とされる。E1A遺伝子産物の主な機能は、静止細胞が細胞周期に入るのを誘導すること、細胞のDNA合成を再開させること、およびE1B遺伝子およびウイルスゲノムの他の初期領域(E2、E3およびE4)を転写により活性化することである。E1A遺伝子単独での初代細胞のトランスフェクションは無制限の増殖(不死化)を誘導することはできるが、完全な形質転換はもたらさない。しかしながら、E1Aの発現は、大抵の場合、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の誘導をもたらし、ごくたまに不死化が得られる(Jochemsenら、1987年)。E1B遺伝子の同時発現はアポトーシスの誘導、および完全な形態形質転換が起こるのを妨げるのに必要とされる。樹立した不死化細胞系では、E1Aの高レベルの発現がE1Bの不在下で完全な形質転換を引き起こす可能性がある(Roberts、B.E.ら、1985年)。
【0110】
E1Bコードタンパク質は細胞機能を再誘導する際にE1Aをアシストしてウイルス複製を可能にする。核内にほぼ局在する複合体を形成するE1Bの55kDおよびE4の33kDタンパク質は、宿主タンパク質の合成を阻害する際、およびウイルス遺伝子の発現を容易にする際に機能する。それらの主な影響は、感染後期の開始と同時に、核から細胞質へのウイルスmRNAの選択的輸送を確立することである。E1Bの21kDタンパク質は増殖感染サイクルの正確な一時的制御に重要であり、したがってウイルスのライフサイクルが終了する前の宿主細胞の時期尚早死を予防する。E1Bの21kDの遺伝子産物を発現することができない変異ウイルスは、宿主細胞染色体DNAの過剰な分解を伴い(deg-表現型)、細胞変性効果が高い(cyt-表現型;Tellingら、1994年)、短い感染サイクルを示す。E1A遺伝子がさらに突然変異するときDegおよびcytの表現型は抑制され、これらの表現型はE1Aの関数であることが示される(White、E.ら、1988年)。さらに、E1Bの21kDaのタンパク質はE1Aが他のウイルス遺伝子にスイッチを入れる割合を低下させる。どの機構によってE1B 21kDがこれらのE1A依存機能を抑制するかは、未だに知られていない。
【0111】
例えばレトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスは宿主細胞のゲノムに効率よく組み込まず、非分裂細胞に感染することができ、in vivoで組換え遺伝子を効率よく導入することができる(Brodyら、1994年)。これらの特徴によって、アデノウイルスは、その必要がある細胞、組織または対象への例えば目的の抗原または免疫原のin vivo遺伝子導入の魅力的な候補となる。
【0112】
多数の欠失を含有するアデノウイルスベクターを使用して、ベクターの保持能力を増大すること、および複製可能アデノウイルス(RCA)を生成する組換えの可能性を低減することの両方が可能である。アデノウイルスが多数の欠失を含有する場合、それぞれの欠失が、単独で存在する場合、複製欠損および/または非複製アデノウイルスをもたらすことは必要ではない。欠失の1つによってアデノウイルス複製欠損または非複製になる限り、追加的な欠失を他の目的で、例えば異種ヌクレオチド配列に関するアデノウイルスゲノムの保持能力を増大するために含めることができる。一実施形態では、2個以上の欠失が機能タンパク質の発現を妨げ、アデノウイルス複製欠損および/または非複製および/または弱毒化状態になる。別の実施形態では、全ての欠失が、アデノウイルス複製欠損および/または非複製および/または弱毒化状態にし得る欠失である。しかしながら、本発明は、複製可能および/または野生型である、すなわち対象中での感染および複製に必要な全てのアデノウイルス遺伝子を含む、アデノウイルスおよびアデノウイルスベクターも含む。
【0113】
アデノウイルス組換えを利用する本発明の実施形態は、E1欠損もしくは欠失、またはE3欠損もしくは欠失、またはE4欠損もしくは欠失、またはE1およびE3、またはE1およびE4、またはE3およびE4、またはE1、E3、およびE4欠失の欠失を含むアデノウイルスベクター、またはその中で全てのウイルス遺伝子が欠失した「ガットレス」アデノウイルスベクターを含むことができる。アデノウイルスベクターは、E1、E3、またはE4遺伝子の突然変異、またはこれらもしくは全てのアデノウイルス遺伝子の欠失を含むことができる。E1の突然変異によってベクターの安全性の限界が生じる。E1欠損アデノウイルス変異体は非許容細胞において複製欠損および/または非複製であると言われており、特に少なくとも、非常に弱毒化状態であるからである。E3の突然変異は、アデノウイルスがMHCクラスI分子を下方制御する機構を妨害することによって抗原の免疫原性を高める。E4の突然変異は、後期遺伝子の発現を抑制することによってアデノウイルスベクターの免疫原性を低減させ、したがって同じベクターを利用する反復型の再ワクチン接種を可能にすることができる。本発明は、E1、またはE3、またはE4、またはE1およびE3、またはE1およびE4が欠失または突然変異した任意の血清型または血清群のアデノウイルスベクターを包含する。これらのアデノウイルス遺伝子の欠失または突然変異は、これらのタンパク質活性の低下または実質的に完全な消失をもたらす。
【0114】
「ガットレス」アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターファミリー中の他の型のベクターである。その複製はヘルパーウイルス、およびE1aとCreの両方を発現する特別なヒト293細胞系、自然環境中に存在しない条件を必要とし、このベクターは全てのウイルス遺伝子を欠いており、したがって、ワクチン担体としてのこのベクターは非免疫原性であり、再ワクチン接種用に多数回接種することができる。「ガットレス」アデノウイルスベクターは、目的の(1つまたは複数の)抗原または免疫原を収容するための36kbのスペースをさらに含有し、したがって細胞への多数の抗原または免疫原の同時送達が可能である。
【0115】
当技術分野で知られている他のアデノウイルスベクター系は、AdEasy系(Heら、1998年)および後に改変されたAdEasier系(Zengら、2001年)を含み、これらは、終夜でBJ5183細胞などの大腸菌(Escherichia coli)細胞中でドナーベクターとAdヘルパーベクターの間の相同的組換えが起こるのを可能にすることによって、迅速に293細胞において組換えAdベクターを作製するために開発された。pAdEasyはアデノウイルス構造配列を含み、目的の抗原または免疫原を発現するpShuttle-CMVなどのドナーベクターとトランスで供給されると、アデノウイルスカプシドにおいて抗原または免疫原(例えば、複数の免疫原および/または複数の抗原)のパッケージングをもたらす。pAdEasyの配列は当技術分野でよく知られ公開されており、かつStratageneによって市販されている。
【0116】
本発明は、AdHigh系(米国特許仮出願第60/683,638号)を使用して作製することができる。AdHighは、鳥類対象に有害または致命的であり得るRCAが生成するリスクなしで、高力価の組換えアデノウイルスを作製する、安全、迅速、および有効な方法である。さらにRCAは、ヒトに対して病原性であり、フードチェーン中に存在するのが望ましくない可能性がある。AdHigh系はpAdHighなどの修飾型シャトルプラスミドを使用して、大腸菌細胞中でアデノウイルス骨格プラスミドを有する組換え体を作製した後に、PER.C6細胞などの許容細胞中でのRCAを含まないアデノウイルスの生成を促進する。これらのシャトルプラスミドは、鳥類免疫原または抗原、例えば鳥インフルエンザの免疫原または抗原などの容易な挿入のための、ポリリンカーまたは多数のクローニング部位を含有する。細菌細胞(すなわち、BJ5183)におけるpAdEasyなどのアデノウイルスヘルパープラスミドを併用したアデノウイルスシャトルプラスミドの組換えを容易に実施して、本発明の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルスを生成することができる。クローニングおよび制限分析によって組換えベクターを生成する方法は、当業者にはよく知られている。
【0117】
ヒトAd5は天然では鳥類で見られず、かつRCAを含まないAd5ベクターはE1の不在下ではヒト細胞中で複製しない。したがって、E1/E3欠損ヒトAd5ベクターを使用する免疫処置レジメンの安全性プロファイルは非常に望ましい。さらに、このようなベクターは、鳥類細胞においてそれが形質導入可能であり複製することができないために、家禽類におけるワクチン担体として使用することができる。Ad5ベクターは、そのファイバーと、ニワトリ細胞の表面上にあるコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)との結合によって、皮膚粘膜界面に沿って、ニワトリ細胞の一部に形質導入することができる(Tanら、2001年)。Ad5構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与える(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0118】
Ad5ベクターワクチンは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスI拘束性T細胞応答を誘導するそれらの能力において自然感染の影響を模倣するが、病原体のゲノムのサブフラグメントのみがベクターから発現されるので、毒性に逆戻りする可能性が排除されている。ベクターによってコードされない病原体の特異的マーカーを使用して二事象を識別することができるので、この「選択的発現」によって、ワクチン接種済み-ただし-非感染動物とその感染相当物を区別する問題を解決することができるはずである。Ad5ベクターワクチンは容易に生成、生物学的操作、製造、および保存される。最も特に、関連抗原遺伝子は合成することができるので、病原体の増殖はベクターワクチンを作製するのに必要とされない(Toroら、2008年)。これはH5N1 AIワクチンを生成するのに特に重要である。この株は、危険であり得、増殖が難しいからである(Woodら、2002年)。
【0119】
RGDモチーフなどの特異的配列モチーフをアデノウイルスベクターのH-Iループに挿入してその感染性を高めることができる。この配列は、特定細胞外マトリクスおよび接着性タンパク質とインテグリンと呼ばれる細胞表面受容体のスーパーファミリーの相互作用に、必要不可欠であることが示されている。RGDモチーフの挿入は免疫不全対象において有利に有用となる可能性がある。前に記載したベクターなどのアデノウイルスベクターのいずれかに特異的抗原または免疫原またはそれらの断片をクローニングすることによって、アデノウイルス組換え体を構築する。アデノウイルス組換え体を使用して免疫処置剤として獣医学的用途の細胞を形質導入する(例えば、参照によりに組み込まれている米国特許出願第10/424,409号を参照)。
【0120】
本発明のアデノウイルスベクターは、in vitroとin vivoの両方で細胞に鳥類抗原または免疫原を発現する核酸を送達するのに有用である。特に、本発明のベクターを有利に利用して、動物細胞に核酸を送達または導入することができる。一実施形態では、動物細胞は鳥類および哺乳動物細胞である。目的の核酸はペプチドおよびタンパク質をコードする核酸を含む。一実施形態では、核酸は(例えば、医学または獣医学的用途の)治療剤または免疫原性(例えば、ワクチン用)ペプチドまたはタンパク質をコードすることができる。
【0121】
一実施形態では、目的の抗原または免疫原をコードするコドンは「最適化」コドンである。すなわちコドンは、例えばインフルエンザによって頻繁に使用されるコドンの代わりに、例えば高度に発現される鳥類遺伝子で頻繁に出現するコドンである。このようなコドンの使用は、ヒトまたは鳥類細胞中で抗原または免疫原の有効な発現をもたらす。他の実施形態では、例えば、目的の抗原または免疫原が細菌、酵母または他の発現系中で発現されるとき、コドン使用パターンが変わり、その抗原または免疫原が発現されている生物中で高度に発現される遺伝子に関してコドンの偏りが表れる。多種の高度に発現される遺伝子に関するコドン使用パターンは文献において知られている(例えば、Nakamuraら、1996年、Wangら、1998年、McEwanら、1998年)。
【0122】
さらなる代替として、アデノウイルスベクターを使用して培養中の細胞に感染させ、望ましい遺伝子産物を発現させる、例えば目的のタンパク質またはペプチドを生成することが可能である。一実施形態では、タンパク質またはペプチドは培地に分泌され、当技術分野で知られている通常の技法および本明細書で与える技法を使用して、そこから精製することができる。タンパク質の細胞外分泌を誘導するシグナルペプチド配列は当技術分野で知られており、これをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で知られている通常の技法によって、目的のペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列と作用可能に連結することができる。あるいは、細胞を溶解することができ、発現した組換えタンパク質は細胞溶解物から精製することができる。一実施形態では、細胞は動物細胞である。別の実施形態では、動物細胞は鳥類または哺乳動物細胞である。さらに別の実施形態では、細胞はアデノウイルスによる形質導入が可能である可能性がある。
【0123】
このような細胞には、PER.C6細胞、911細胞、およびHEK293細胞があるが、これらだけには限られない。本発明は、鳥類胚線維芽細胞、DF-1細胞など、鳥類幹細胞、参照によりに組み込まれている米国特許第6,872,561号、米国特許第6,642,042号、米国特許第6,280,970号および米国特許第6,255,108号中に記載された細胞など、鳥類リンパ芽球、鳥類上皮細胞、特にニワトリ胚由来細胞株CHCC-OU2(Ogura、H.ら、1987年、日本国特許公開第9-173059号)、ウズラ由来細胞株QT-35(日本国特許公開第9-98778号)などだけには限られないが、これらの鳥類細胞の使用も包含する。感染、トランスフェクション、または任意の型の遺伝子導入が可能である任意の鳥類細胞を、本発明を実施する際に使用することができる。
【0124】
宿主細胞を培養するための培養培地には、組織培養に一般に使用される培地、特にM199-アールベース、イーグルMEM(E-MEM)、ダルベッコMEM(DMEM)、SC-UCM102、UP-SFM(GIBCO BRL)、EX-CELL302(Nichirei)、EX-CELL293-S(Nichirei)、TFBM-01(Nichirei)、ASF104などがある。特定細胞型に適した培養培地は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)またはヨーロピアンコレクションオブセルカルチャーズ(ECACC)で見つけることができる。培養培地には、L-グルタミンなどのアミノ酸、塩、抗真菌剤またはFungizone(登録商標)などの抗菌剤、ペニシリン-ストレプトマイシン、動物血清などを補充することができる。細胞培養培地は場合によっては無血清であってよい。
【0125】
本発明は、ワクチンとして有用なベクターも提供する。免疫原または抗原はアデノウイルスカプシド中に存在することができ、あるいは、抗原は組換えアデノウイルスゲノム中に導入した抗原または免疫原から発現される可能性があり、本発明のアデノウイルスによって保持される可能性がある。アデノウイルスベクターは、目的の任意の抗原または免疫原をもたらすことができる。免疫原の例は本明細書で詳述する。
【0126】
抗原または免疫原は、適切な発現制御配列と作用可能に結合することができる。発現ベクターは、複製起点(細菌起源、例えばpBR322などの細菌ベクター由来、または真核生物起源、例えば自己複製配列(ARS)であってよい)、プロモーター、エンハンサー、およびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要な情報処理部位、パッケージングシグナル、および転写終了配列などの発現制御配列を含む。
【0127】
例えば、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、標的細胞に送達される(1つまたは複数の)抗原または免疫原配列と作用可能に結合した、適切な転写/翻訳制御シグナルおよびポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル)を含有することができる。所望のレベルおよび組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサーエレメントを使用することができる。プロモーターは、所望の発現パターンに応じて、構成的または誘導的(例えば、メタロチオネインプロモーター)であってよい。プロモーターは原型または外来であってよく、天然または合成配列であってよい。外来によって、転写開始領域が導入される野生型宿主において、その転写開始領域が見られないことが考えられる。それが目的の(1つまたは複数の)標的細胞または(1つまたは複数の)組織中で機能するように、プロモーターを選択する。脳特異的、肝臓特異的、および筋肉特異的(骨格、心臓、平滑筋、および/または横隔膜特異的を含む)プロモーターは本発明によって企図される。哺乳動物および鳥類プロモーターも本発明の実施形態中に含まれる。
【0128】
プロモーターは「初期」プロモーターであることが有利である可能性がある。「初期」プロモーターは当技術分野で知られており、de novoタンパク質合成の不在下で迅速かつ一時的に発現される遺伝子の発現を誘導する、プロモーターとして定義される。プロモーターはさらに「強力」または「微弱」プロモーターであってよい。用語「強力プロモーター」および「微弱プロモーター」は当技術分野で知られており、そのプロモーターでの転写開始の相対頻度(一分間当たりの回数)により定義することができる。「強力」または「微弱」プロモーターは、RNAポリメラーゼに対するその親和性により定義することもできる。
【0129】
一実施形態では、抗原または免疫原は、例えば、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)主要即時初期プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、またはラウス肉腫ウイルスプロモーターと作用可能に結合する。他の発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、ヘルペスウイルスなどに由来するプロモーターを含む。任意の鳥類ウイルスプロモーター以外に、任意の哺乳動物ウイルスプロモーターを、本発明を実施する際に使用することもできる。ウイルス起源の鳥類プロモーターの中で、伝染性咽頭気管炎ウイルス(ILTV)ウイルス、マレック病ウイルス(すなわち、gB、gC、pp38、pp14、ICP4、Meq)の初期(すなわち、チミジンキナーゼ、DNAヘリカーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ)または後期(すなわち、gB、gD、gC、gK)、またはシチメンチョウのヘルペスウイルス(すなわち、gB、gC、ICP4)の即時初期(すなわち、ICP4、ICP27)遺伝子のプロモーターを、本発明の方法およびベクターにおいて使用することができる。さらに、十分高いレベルで目的の抗原または免疫原を発現する適切なプロモーターを選択して、過度の実験なしで、抗原または免疫原に対する免疫応答を誘導または誘発することは、十分に当業者の技術の範囲内にある。
【0130】
CMVプロモーターを用いた異種ヌクレオチド転写物の誘導は、免疫応答性動物において発現の下方制御をもたらすことができると推測されている(例えば、Guoら、1996年を参照)。抗原または免疫原配列は、例えば、この抗原または免疫原発現の下方制御をもたらさない改変型CMVプロモーターと、作用可能に結合することができる。
【0131】
本発明のベクターはポリリンカーまたはマルチクローニングサイト(「MCS」)も含むことができ、これはプロモーターの下流に有利に位置することができる。ポリリンカーは、プロモーター配列と「インフレーム」である抗原または免疫原分子の挿入部位を与え、プロモーター配列と目的の抗原または免疫原の「作用可能な連結」をもたらす。マルチクローニングサイトおよびポリリンカーは当業者によく知られている。本明細書に記載する用語「作用可能に連結した」は、記載する構成成分が、それらがその意図する形式で機能することができる関係にあることを意味する。
【0132】
ベクターに応じて、組換えベクターのin vitro増幅および精製に使用するとき、抗生物質耐性をコードする選択マーカーが存在してよく、かつ、市販のAdEasy、AdEasier、およびAdHighアデノウイルス系の状況では、ドナーベクターとアデノウイルスヘルパーベクターの間の相同的組換えをモニタリングすることができる。AdEasy、AdEasier、およびAdHigh系は、ITR配列におけるドナーベクターとアデノウイルスヘルパーベクターの間の相同的組換えを容易にする。それぞれのベクターは異なる抗生物質耐性遺伝子を含み、かつ二重選択によって、組換えベクターを発現する組換え体を選択することができる。本発明のベクターに組み込むことができるこのような抗生物質耐性遺伝子の例には、特にアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ベロマイシン、ヒグロマイシン、クロラムフェニコールがあるが、これらだけには限られない。
【0133】
2個以上の抗原または免疫原が存在する実施形態では、抗原または免疫原配列は、1つの上流プロモーターおよび1つまたは複数の下流の内部リボソーム侵入部位(IRES)配列(例えば、ピコルナウイルスEMCのIRES配列)と、作用可能に結合することができる。
【0134】
(1つまたは複数の)抗原または免疫原配列が、標的細胞において転写され次いで翻訳される本発明の実施形態では、特異的開始シグナルが挿入タンパク質コード配列の有効な翻訳に一般に必要とされる。ATG開始コドンおよび隣接配列を含むことができる、これらの外因性翻訳制御配列は、天然と合成の両方の様々な起源であってよい。
【0135】
鳥類病原体に由来する任意の鳥類抗原または免疫原を、本発明の方法および組換えベクターにおいて使用することができる。一実施形態では、抗原または免疫原は、鳥インフルエンザウイルスに由来するヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリクス、および核タンパク質抗原または免疫原など、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス抗原に由来するVP1、VP1s1、VP1s2、VP2(Heine、H.G.ら、1991年;Dormitorio、T.V.ら、1997年;およびCao、Y.C.ら、1998年)、VP2S、VP3、VP4、VP4SおよびVP5など、マレック病ウイルス抗原に由来する、チミジンキナーゼ、gA、gB、gC、gD、gE、gH、gI、およびgL(Coussensら、1988年;Rossら、1989年;Rossら、1991年;国際公開第WO90/02803号(1990年);BrunovskisおよびVelicer、1995年;およびYoshidaら、1994年)など、伝染性咽頭気管炎ウイルスなどのヘルペスウイルスに由来する、gA、gB、gD、gE、gI、およびgG(Veits、J.ら、2003年)を含めた抗原、鳥伝染性気管支炎ウイルス抗原に由来する、スパイク糖タンパク質、内在性膜タンパク質M、小分子膜タンパク質E、およびポリタンパク質(Casais、R.ら、2003年)など、鳥レオウイルス抗原に由来する、カプシド、シグマNS、シグマA、シグマB、およびシグマCタンパク質(Spandidos、D.A.ら、1976年)など、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルスを含めたポックスウイルスに由来する、チミジンキナーゼなど、鳥類ポリオーマウイルス抗原に由来する、VP1、VP2、VP3、およびVP4(Rott、O.ら、1988年)など、ニューカッスル病ウイルス抗原に由来する、HN、P、NP、M、F、およびLタンパク質(Alexander、D.J.、1990年中に総説)など、鳥ニューモウイルス抗原に由来する、SH、F、GおよびN(Seal、B.S.、2000年)など、鳥類鼻気管炎ウイルス抗原に由来する、糖タンパク質、マトリクス、融合体、およびヌクレオカプシド(Cook、J.K.、1990年)など、鳥類網膜内皮症ウイルス抗原に由来する、p29、エンベロープ、gag、プロテアーゼ、およびポリメラーゼ(Dornburg、R.1995年)など、鳥類腫瘍ウイルス抗原を含めた鳥類レトロウイルスに由来する、gag、pol、およびenvなど、鳥類内因性ウイルスに由来する、gag、pol、env、カプシド、およびプロテアーゼ(Rovigatti、U.G.ら、1983年)など、鳥類赤芽球症ウイルスに由来する、gag、erbA、erbB(Graf、T.ら、1983年)など、鳥類肝炎ウイルスに由来する、コアタンパク質、pol、および表面タンパク質(Cova、L.ら、1993年)など、鳥類貧血ウイルスに由来する、VP1、VP2、VP3(Rosenberger、J.K.ら、1998年)など、鳥類腸炎ウイルス抗原に由来する、ポリメラーゼ、52Kタンパク質、ペントン、IIIa、およびコアタンパク質(Pitcovski、J.ら、1988年)など、パチェコ病ウイルスに由来する、IEタンパク質、糖タンパク質K、ヘリカーゼ、糖タンパク質N、VP11-12、糖タンパク質H、チミジンキナーゼ、糖タンパク質B、および核リンタンパク質(Kaleta E.F.、1990年)など、鳥白血病ウイルス抗原に由来する、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ(Graf、T.ら、1978年)など、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス抗原に由来する、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、VP1、VP2、VP3、VP4、VP5、VP6、およびVP7(Mori、Y.ら、2003年;Borgan、M.A.ら、2003年)など、鶏白血病ウイルス抗原に由来する、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ(Bieth、E.ら、1992年)など、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス(Kawai、S.ら、1992年)、鳥骨髄芽球症ウイルス抗原に由来する、p15、p27、エンベロープ、gag、およびポリメラーゼ、ヌクレオカプシド、およびgs-b(Joliot、V.ら.、1993年)など、鳥骨髄芽球症関連ウイルス(Perbal、B.、1995年)、鳥骨髄球腫症ウイルス(Petropoulos、C.J.、1997年)、鳥肉腫ウイルス抗原に由来する、p19およびエンベロープ(Neckameyer、W.S.ら、1985年)など、および鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、gag、エンベロープ、およびポリメラーゼ(Purchase、H.G.ら、1975年)などの抗原または免疫原を含むが、これらだけには限られない。
【0136】
本発明の文脈において使用することができる他の免疫原/抗原は、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)株、39kDa被膜タンパク質(Ali、H.A.ら、2004年;Rimler、R.B.2001年)、16-kDa外膜タンパク質(Kasten、R.W.、ら、1995年)、多糖(Baert、K.ら、2005年)など、大腸菌、1型線毛、P線毛、およびカール(Roland、K.ら、2004年);F1線毛アドヘシン、P線毛アドヘシン、アエロバクチン受容体タンパク質、および多糖(Kariyawasam、S.ら、2002年)など、マイコプラズマガリセプティクム(Mycoplasma gallisepticum)、主要膜抗原pMGA(P67としても知られる;Jan、G.ら、2001年;Noormohammadi、A.H.ら、2002a)、TM-1(Saito、S.ら、1993年)、アドヘシン(Barbour、E.K.ら、1989年)、P52(Jan、G.ら、2001年)血清プレート凝集(SPA)抗原(Ahmad、I.ら、1988年)、マイコプラズマガリナセウム(Mycoplasma gallinaceum)、マイコプラズマガリナラム(Mycoplasma gallinarum)、マイコプラズマガロパボニス(Mycoplasma gallopavonis)、マイコプラズマシノビエ(Mycoplasma synoviae)など由来の鳥類細菌抗原を含み、多数の中でも、主要膜抗原MSPB(Noormohammadi、A.H.ら、2002b)および165-kDaタンパク質(Ben Abdelmoumen、B.ら、1999年)、マイコプラズマメレアグリディス(Mycoplasma meleagridis)、マイコプラズマイオバエ(Mycoplasma iowae)、マイコプラズマプロラム(Mycoplasma pullorum)、マイコプラズマイミタンス(Mycoplasma imitans)、サルモネラ腸炎菌(Salmonella enteritidis)、フラジェリン、ポリン、OmpA、SEF21およびSEF14線毛(Ochoa-Reparaz、J.ら、2004年)など、腸チフス菌(Salmonella enterica serovars)、例えばSEF14およびSEF21を発現するニワトリ盲腸虫(Gallinarum)およびネズミチフス菌(Typhimurium)など(Li、W.ら、2004年)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、フラジェリン、67-kDa抗原、CjaA、CjaC、およびCjaDタンパク質(Widders、P.R.ら、1998年;Wyszynska、A.ら、2004年)など、ヘモフィルスパラガリナルム(Haemophilus paragallinarum)、ヘマグルチニンのような血清群A、B、およびC抗原など(Yamaguchi、T.ら、1988年)、リエメレラアナティペスティファー(Riemerella anatipestifer)、バクテリン抗原など(Higgins、D.A.ら、2000年)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)株、例えば主要外膜タンパク質(MOMP)を発現する血液型亜型Aおよび6Bなど(Vanrompay、D.ら、1999年)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、66〜64kDaタンパク質抗原(Timoney、J.F.ら、1993年)含む、潜在性エリジペロトリックス(Erysipelothrix insidiosa)、バクテリンなど(Bigland、CH.およびMatsumoto、J.J.、1975年)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、抗原P39およびバクテリオフェリン(A1-Mariri、A.ら、2001年)など、ボレリアアンセリナ(Borrelia anserina)、22-キロダルトン主要外側表面タンパク質(Sambri、V.ら、1999年)、外膜タンパク質P66(Bunikis、J.ら、1998年)、およびOspC(Marconi、R.T.ら、1993年)など、アルカリ糞便菌(Alcaligenes faecalis)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの抗原を含む。
【0137】
本発明は、特に、アイメリアアセルブリナ(Eimeria acervulina)、3-1E抗原(Lillehoj、H.S.ら、2005年;Ding、X.ら、2004年)、頂端複合構造抗原(Constantinoiu、CC.ら、2004年)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(Schaap、D.ら、2004年)など、アイメリアマキシマ(Eimeria maxima)、gam56およびgam82(Belli、S.I.ら、2004年)、56および82kDa抗原タンパク質(Belli、S.I.ら、2002年)、およびEmTFP250(Witcombe、D.M.ら、2004年)など、アイメリアネカトリクス(Eimeria necatrix)、35-kDタンパク質など(Tajima、O.ら、2003年)、アイメリアテネラ(Eimeria tenella)、TA4およびSO7遺伝子産物(Wu、S.Q.ら、2004年;Pogonka、T.ら、2003年)および12-kDaオーシスト壁タンパク質(Karim、M.J.ら、1996年)など、アイメリアフェルミフォルミス(Eimeria vermiformis)、アイメリアアデノエイデス(Eimeria adenoeides)、ロイコチトゾーンカウレリー(Leucocytozoon caulleryi)、R7外膜抗原(Ito、A.、ら、2005年)など、プラスモジウムレリクタム(Plasmodium relictum)、プラスモジウムガリナセウム(Plasmodium gallinaceum)、CSPタンパク質(Grim、K.Cら、2004年)および17-および32-kDaタンパク質抗原(Langer、R.Cら、2002年)など、およびプラスモジウムエロンガタム(Plasmodium elongatum)だけには限られないが、これらなどの鳥類原虫抗原由来の免疫原/抗原の使用も包含する。
【0138】
本発明の一実施形態では、鳥インフルエンザウイルス抗原または免疫原を利用する。本発明は、例えば、1回の注射で多数の鳥類疾患に対して鳥類を保護することができる多価ワクチンまたは免疫原性組成物などの、様々な鳥類抗原または免疫原を発現する組換えベクターをさらに提供する。
【0139】
鳥インフルエンザウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、およびさらに海洋哺乳動物に伝播しており、ヒトインフルエンザ大流行の発生の重要な誘因となっている。オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae family)に属するインフルエンザウイルスは、その核タンパク質(NP)およびマトリクス(M1)タンパク質における抗原差異に基づいてA、B、およびCとして分類される。全ての鳥インフルエンザウイルスはA型として分類される。さらなる型分けは、2つの表面糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原性に基づく。現在、15のHAおよび9のNA亜型がインフルエンザAウイルス間で同定されている(Murphy、B.R.ら、1996年;Rohm、C.ら、1996b)。HAの抗原性を担うHA1領域のアミノ酸配列は、亜型間で30%以上異なる(Rohm、C.ら、1996b)。全てのHAおよびNA亜型を有するウイルスが鳥類種において見られるが、哺乳動物インフルエンザウイルスのウイルス亜型は限られている。
【0140】
鳥インフルエンザAウイルスはそれらの毒性によって定義される。家禽ペストを引き起こす可能性がある高毒性型、および軽度の疾患または無症状感染のみを一般に引き起こす無毒型。しかしながら、稀な場合、実験室中で低い病原性を有するウイルスが野外で重度疾患の蔓延を引き起こす。それにもかかわらず、これらのウイルスと関係がある罹患率および死亡率は、致死性ウイルスによって引き起こされるそれらよりはるかに低い傾向がある。
【0141】
高毒性鳥インフルエンザウイルスは、オーストラリア(1976年[H7](Bashiruddin、J.B.ら、1992年);1985年[H7](Cross、G.M.、1987年;Nestorowicz、A.ら、1987年)、1992年[H7](Perdue、M.L.ら、1997年)、1995年[H7]、および1997年[H7])、イングランド(1979年[H7](Wood、G.W.、ら、1993年)および1991年[H5](Alexander、DJ.ら、1993年)、米国(1983〜1984年[H5](Eckroade、RJ.ら、1987年)、アイルランド(1983〜1984年[H5])(Kawaoka、Y.ら、1987年)、ドイツ(1979年[H7](Rohm、C.ら、1996a)、メキシコ(1994〜1995年[H5](Garcia、M.ら、1996年;Horimoto、T.ら、1995年)、パキスタン(1995年[H7](Perdue、M.L.ら、1997年)、イタリア(1997年[H5])、および香港(1997年[H5](Claas、EJ.ら、1988年)で家禽産業において大発生を引き起こした。いずれか1つの理論によって縛られることは望まずに、全ての病原性鳥インフルエンザAウイルスはH5またはH7亜型であると考えられるが、この亜型特異性の理由は依然知られていない。NA亜型と毒性ウイルスの関係は存在しないようである。2つの他の亜型、H4[A/ニワトリ/アラバマ/7395/75(H4N8)](Johnson、D.C.ら、1976年)およびH10[A/ニワトリ/ドイツ/N/49(H10N7)]が、重度の家禽ペスト様の大発生中にニワトリから単離されている。
【0142】
インフルエンザAウイルスの構造は非常に類似している(Lamb、R.A.ら、1996年)。電子顕微鏡によって、ほぼ球状(約120nm径)および繊維状であるビリオンを含めて、ウイルスは多形態である。HAおよびNA分子に対応する2つの異なる型のスパイク(約16nm長)がビリオンの表面に存在する。この2つの糖タンパク質は、疎水性アミノ酸の短い配列(膜貫通領域)によって宿主細胞の原形質膜に由来する脂質エンベロープに固定される。HAはN末端外部ドメインおよびC末端アンカーを含有するI型糖タンパク質であり、一方NAはN近位アンカーおよびC末端外部ドメインを含有するII型糖タンパク質である。HAはビリオンを細胞表面のシアリロリゴ糖(sialyloligosaccharide)に結合させることが可能であり(Paulson、J.C.、1985年)、そのヘマグルチニン化活性を担う(Hirst、G.K.、1941年)。HAは感染に対する防御において重要であるウイルス中和抗体を誘導する。NAは細胞およびビリオン表面シアル酸(HAによって認識されるシアリロリゴ糖中の主要成分)(Paulson、J.C.、1985年)を除去することによってビリオン凝集を妨げるシアリダーゼである(Gottschalk、A.、1957年)。NAに対する抗体も宿主を防御する際に重要である(Webster、R.G.、ら、1988年)。
【0143】
HAおよびNA以外に、限られた数のM1タンパク質がビリオンに組み込まれる(Zebedee、S.L.ら、1988年)。それらはテトラマーを形成し、H1イオンチャネル活性を有し、かつ、エンドソームにおいて低pHによって活性化すると、ビリオン内部を酸性化し、そのアンコーティングを容易にする(Pinto、L.H.ら、1992年)。エンベロープ内に存在するM1タンパク質は、構築および出芽において機能すると考えられる。NPと結合した一本鎖RNA分子(ネガティブセンス、またはmRNAと相補的)の8個のセグメント、およびRNAの複製および転写に関与するリボ核タンパク質(RNP)複合体を一緒に形成するウイルスポリメラーゼの3サブユニット(PB1、PB2、およびPA)がウイルスエンベロープ内に含有される。現在ビリオン中に存在することが知られている(Richardson、J.C.ら、1991年;Yasuda、J.ら、1993年)NS2タンパク質は、M1タンパク質との相互作用を介して(Ward、A.C.ら、1995年)核からのRNPの輸送において役割を果たすと考えられる(O'Neill、R.E.ら、1998年)。NS1タンパク質、インフルエンザAウイルスの唯一の非構造タンパク質は、スプライシングの制御および細胞mRNAの核輸送、および翻訳の刺激を含めて多数の機能を有する(Lamb、R.A.ら、1996年)。その主な機能は、宿主のインターフェロン活性を妨げることであると考えられる。NS1ノックアウトウイルスは、それはインターフェロン非欠損細胞において親ウイルスほど効率よく増殖しなかったが、生命力があるからである(Garcia-Sastre、A.ら、1988)。
【0144】
本発明において有用である鳥インフルエンザの免疫原または抗原には、HA、NA、およびM1、NS2、およびNS1があるが、これらだけには限られない。特に鳥インフルエンザの免疫原または抗原には、HAおよびNAがあるが、これらだけには限られない。鳥インフルエンザの免疫原または抗原は、全ての鳥インフルエンザA株、臨床分離株、野生分離株、およびそれらの再集合体を含めた、任意の知られているAI株に由来してよい。このような株および亜型の例には、H10N4、H10N5、H10N7、H10N8、H10N9、H11Nl、H11N13、H11N2、H11N4、H11N6、H11N8、H11N9、H12N1、H12N4、H12N5、H12N8、H13N2、H13N3、H13N6、H13N7、H14N5、H14N6、H15N8、H15N9、H16N3、H1Nl、H1N2、H1N3、H1N6、H2N1、H2N2、H2N3、H2N5、H2N7、H2N8、H2N9、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3N6、H3N8、H4N1、H4N2、H4N3、H4N4、H4N5、H4N6、H4N8、H4N9、H5N1、H5N2、H5N3、H5N7、H5N8、H5N9、H6N1、H6N2、H6N4、H6N5、H6N6、H6N7、H6N8、H6N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N5、H7N7、H7N8、H8N4、H8N5、H9N1、H9N2、H9N3、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、およびH9N9があるが、これらだけには限られない。本発明はさらに、特に抗原連続変異および抗原変化を表す突然変異または他の場合は改変された鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用に関する。
【0145】
インフルエンザウイルスの抗原性は、点突然変異によって段階的に(抗原連続変異)または遺伝子再集合によって劇的に(抗原変化)変化する(Murphy、B.R.ら、1996年)。HAおよびNAに対する免疫圧力は抗原連続変異を誘導すると考えられる。抗原変化は、ヒトへの非ヒトインフルエンザウイルスの直接伝播、または単細胞に感染した2種の異なるインフルエンザウイルスからの遺伝子の再集合のいずれかによって引き起こされる可能性がある(Webster、R.G.ら、1982年)。理論上、RNAの256の異なる組合せを、ウイルスの8個の異なるゲノムセグメントのシャッフリングから生成することができる。遺伝子再集合は、実験室条件下においてin vitroとin vivoの両方で十分文書化されている(Webster、R.G.ら、1975年)。さらに重要なことに、混合感染が自然界では比較的頻繁に起こり、遺伝子再集合をもたらし、新たな野生分離株、ハイブリッド形、または再集合形を生成する可能性がある(Bean、W.J.ら、1980年;Hinshaw、V.S.ら、1980年;Young、J.F.、ら、1979年)。以前に循環していたウイルスの再出現は、それによって抗原変化が起こり得る別のメカニズムである。
【0146】
したがって、本発明はさらに、鳥インフルエンザの臨床分離株、鳥インフルエンザの野生または環境分離株、鳥インフルエンザのハイブリッド形、および再集合形を含めた、抗原連続変異または抗原変化を経た鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用に関する。さらに本発明は、別個の組換えベクター、または1つの組換えベクターと一緒のいずれかで送達して、1つまたは複数の鳥インフルエンザ株および/またはハイブリッドに対する免疫応答を刺激または調節する多価鳥インフルエンザワクチンまたは免疫原性組成物をもたらす、本明細書に開示するベクターおよび方法における、2つ以上の鳥インフルエンザの免疫原または抗原の使用を包含する。
【0147】
多くの飼育および野生鳥類種はインフルエンザウイルスに感染する。これらはニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ホロホロチョウ、飼育ガチョウ、ウズラ、キジ、コリンウズラ、九官鳥、スズメ、オウム、セキセイインコ、カモメ、海岸に生息する鳥、海鳥、およびエミューを含む(Easterday、B.C.ら、1997年;Webster、R.G.ら、1988年)。数種の感染した鳥はインフルエンザの症状を示すが、一方他は示さない。飼育鳥類種、シチメンチョウはインフルエンザの大発生に最も頻繁に関与し、ニワトリも関与しているが頻度は低い。鳥インフルエンザAウイルスは、無症状から適度の上気道感染、卵生成の消失、すぐに死に至る全身疾患までの範囲の、一連の症状を鳥類においてもたらす(Eckroade、R.J.ら、1987年)。疾患の重度は、ウイルスの毒性、宿主の免疫状態および食餌、付随する細菌感染、および宿主に課されるストレスを含めた、多数の要因に依存する。ニワトリおよびシチメンチョウにおけるその病原性に応じて、鳥インフルエンザAウイルスは、毒性(家禽ペストを引き起こすことができる)または無毒性(適度または無症状疾患を引き起こす)として分類される。一種の鳥類に対して非常に病原性であるときでさえ、インフルエンザAウイルスは他種の鳥類に対して病原性ではない可能性がある(Alexander、D.J.ら、1986年)。例えば、アヒルは典型的には、ニワトリにおいて致命的であるウイルスに耐性がある。別の例として、ニワトリおよびシチメンチョウを容易に殺傷するA/シチメンチョウ/アイルランド/1378/85(H5N8)はアヒルにおいて疾患症状は引き起こさないが、しかしながら、それは感染した鳥の様々な内臓器官および血液中で検出することができる(Kawaoka、Y.ら、1987年)。
【0148】
インフルエンザウイルスは腸管から感染した鳥の糞便に分泌される(Kida、H.、ら、1980年;Webster、R.G.ら、1978年)。伝播の形態は直接的または間接的であってよく、それらはエアゾールおよび他のウイルス汚染物質との接触を含む。感染した鳥は多量のウイルスをその糞便中に排出するので、多くの異なる物品(例えば食物、水、機器、およびケージ)が汚染状態になり、ウイルスの播種に貢献する可能性がある。水媒介性伝播は、天然の水鳥生息地中に鳥インフルエンザウイルスを一年毎に永久化する機構をもたらす可能性がある。高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した家禽類などの、大量生産される鳥によって示される典型的な兆候および症状には、卵生成の低下、呼吸兆候、水泡音、過度の流涙、副鼻腔炎、羽毛がない皮膚のチアノーゼ(特にとさかおよび肉垂)、頭および顔の浮腫、羽の逆立ち、下痢、および神経系障害がある。
【0149】
示される特徴の数は、鳥の種類および年齢、ウイルスの株、および付随する細菌感染に依存する(Easterday、B.C.ら、1997年;Webster、R.G.ら、1988年)。時折、鳥は疾患の如何なる兆候も示さずに死滅する(Alexander、DJ.ら、1993年;Wood、G.W.、ら、1994年)。高病原性ウイルスを接種したニワトリ中の肉眼的および組織学的病変は非常に類似しているが、いくつかの株の変化を示す(Alexander、D.J.ら、1986年; Mo、LP.ら、1997年;Swayne、D.E.ら、1997年)。報告例の間のいくつかの違いは、接種の経路、ニワトリの品種および年齢、およびウイルスの用量を含めた実験条件の違いを表す可能性がある。毛細血管内皮細胞の膨張、全身うっ血、多巣性出血、血管周囲性単核細胞浸潤、および血栓症は、高毒性ウイルスを接種したニワトリにおいて一般に見られる。このようなウイルスは血管内皮細胞および血管周囲実質細胞中で効率よく複製する、ウイルス播種および全身感染に重要である可能性がある性質(Kobayashi、Y.ら、1996年;Suarez、D.L.ら、1998年)。壊死および炎症変化がある他器官中の細胞以外に壊死性心筋細胞において、ウイルス抗原を発見することもできる(Kobayashi、Y.ら、1996年)。
【0150】
本発明は、細胞中の1つまたは複数の抗原または免疫原を発現させる方法にも関する。実験室設定での予備ステップとして、抗原または免疫原を代わりに、レポータータンパク質(例えば酵素)をコードする配列を含めた、タンパク質およびペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列と交換することができる。レポータータンパク質は当技術分野で知られており、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むが、これらだけには限られない。これらのレポータータンパク質およびその検出法の多くは、多くの市販の診断キットの一部として含まれる。目的の抗原または免疫原は、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、または「ガイド」RNA(Gormanら、1998年)などの他の非翻訳RNAなどをコードすることができる。
【0151】
本発明の組換えベクターおよび方法は、組換えベクターまたは免疫原性組成物の送達によって免疫応答を調節することができる、治療用タンパク質またはアジュバント分子の使用も包含する。このような治療用タンパク質またはアジュバント分子は、インターロイキン、インターフェロン、および共刺激分子などの免疫調節分子だけには限られないが、これらを含むことができる。鳥類対象において免疫応答を調節することが当技術分野で知られている鳥類サイトカインは、ニワトリインターフェロン-α(IFNα)(Karaca、K.ら、1998年;Schijns、V.E.ら、2000年)、ニワトリインターフェロン-γ(IFNγ)、ニワトリインターロイキン-1β(ChIL-1β)(Karaca、K.ら、1998年)、ニワトリインターロイキン-2(ChIL-2)(Hilton、L.S.ら、2002年)、およびニワトリ骨髄単球性増殖因子(cMGF1 York、J.J.ら、1996年;Djeraba、A.ら、2002年)である。免疫調節分子は本発明の免疫原性組成物と共投与することができ、または代替的に、(1つまたは複数の)免疫調節分子の核酸を、本発明の組換えベクター中の鳥類免疫原または抗原と共発現させることが可能である。
【0152】
異種配列、すなわち鳥インフルエンザ免疫原の対象中での発現は、抗原または免疫原の発現産物に対する免疫応答を対象中においてもたらす可能性がある。したがって、本発明の組換えベクターを免疫原性組成物またはワクチン中に使用して、防御的である必要はないがその可能性がある免疫応答を誘導するための手段を与えることができる。本発明の文脈で使用する分子生物学的技法はSambrookら.(2001年)によって記載される。
【0153】
一層さらに代替的または追加的に、本発明によって含まれる免疫または免疫原性組成物において、抗原または免疫原をコードするヌクレオチド配列は、膜貫通ドメインをコードする部分がそこから欠失している可能性がある。他に一層さらに代替的または追加的に、ベクターまたは免疫原性組成物は、異種tPAシグナル配列、ヒトまたは鳥類tPAおよび/または安定化イントロンなど、ウサギβ-グロビン遺伝子のイントロンIIなどをコードするヌクレオチド配列をさらに含有し、宿主細胞中で発現することができる。
【0154】
本発明は、in vitroまたはin vivoで細胞中に異種ヌクレオチド配列を送達および/または投与する方法も提供する。この方法に従い、(本明細書で詳細に記載するように)本発明による組換えヒトアデノウイルスベクターを細胞に感染させる。ウイルス形質導入の本来のプロセスによってアデノウイルスベクターを細胞に感染させることが可能である。あるいはベクターは、当技術分野で知られている任意の他の方法によって細胞中に導入することができる。例えば、細胞は(以下に記載するように)標的アデノウイルスベクターと接触させ、別の機構によって、例えば受容体介在型エンドサイトーシスによって取り込むことが可能である。別の例として、抗体または他の結合タンパク質を使用して、ベクターを内在化細胞表面タンパク質に向けることができる。
【0155】
遺伝子産物(例えば、エピトープ、抗原、治療剤、および/または抗体)組成物に関して言及した量を得るための量、鳥類対象にベクターを投与することができる。本発明は、本明細書に例示する用量より少ない用量および多い用量を含むが、これらだけには限られず、鳥類対象に投与するその構成成分を含めた任意の組成物に関して、および任意の特定の投与法に関して、以下、適切な鳥類モデルにおける致死量(LD)およびLD50を決定することによって毒性、および血清の滴定およびその分析などによって、例えばELISAおよび/または血清中和分析によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。
【0156】
本発明の組成物には、開口部、または粘膜、例えば経口、鼻腔、肛門、膣、経口、胃内などの投与用の液体調製物、縣濁液、溶液、スプレー、シロップまたはエリキシル剤など、および、非経口、経皮、皮下(すなわち、下頸部経由)、皮内、腹腔内、筋肉内(すなわち、翼膜、翼端、胸筋、および腿筋穿刺による)、鼻腔内、または静脈内投与(例えば、注射投与)用の液体調製物、滅菌縣濁液またはエマルジョンなどがあるが、これらだけには限られない。2004年4月6日に発行された米国特許第6,716,823号、2004年3月16日に発行された米国特許第6,706,693号、2002年2月19日に発行された米国特許第6,348,450号、米国出願第10/052,323号および米国出願第10,116,963号および米国出願第10/346,021号を参照し、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれ、これらは非侵襲形式の送達、すなわち経皮および鼻腔内投与による免疫原性またはワクチン組成物の免疫処置および送達を開示する。鳥類への他の投与法および送達法は飲料水または食品中の組換えベクターまたは免疫原性組成物の投与を含み、この場合ワクチンの用量は動物当たり101〜104で選択することができる。
【0157】
筋肉内注射に関して、胸部(胸筋)、脚部(上腿筋/外側脇腹筋)、翼膜(飛膜)、翼下(葉腋)、および翼端を介して投与を行うことができる。使用するニードルの長さおよび径(ゲージ)は、それが選択した筋肉の中心へのワクチンの送達を可能にするようなものでなければならない。
【0158】
特定の実施形態は卵内送達である投与法を含む(Gildersleeve、R.P.、1993a;Gildersleeve、R.P.ら、1993b;Sharma、J.M.、1985年;Sharma、J.M.ら、1984年)。卵内送達は鳥類の集団ワクチン接種に有望な方法として持ち上がっている。ロボット注射器による均一用量のワクチンの投与は労力と時間の両方を節約するからである(Johnstonら、1997年;Oshopら、2002年)。今日まで、80%を超える米国産の商用ブロイラー鶏は、マレック病に対して機械化注射器で卵内処理されている(Wakenellら、2002年)。さらにこの方法は、伝染性ファブリーキウス嚢病(IBD)およびニューカッスル病(ND)ワクチンを投与するために、ますます使用されている。さらに免疫応答は、DNAワクチン(Kapczynskiら、2003年;Oshopら、2003年)および複製アルファウイルスベクターワクチン(Schultz-Cherryら、2000年)の卵内送達によって、ニワトリにおいて誘導されている。それらの複製相当物と比較すると、DNAおよびウイルスベクター卵内接種用ワクチンおよび免疫原性組成物は胚を殺傷または害する可能性は低く、Adベクターは特に、それらが卵内で複製できないために高いコンプライアンスレートを有する。
【0159】
機械化システム、装置、および例えばINOVOJECT(登録商標)として市販されているデバイスなどのデバイスは、発生中の胚に対する外傷を引き起こさずに、正確に調整した体積で化合物、ワクチン、および免疫原性組成物を適度に注射し、それによって幼鳥の処理回数を減らし、自動化により孵化場の管理を改善し、かつ家畜生産のコストを低減する。INOVOJECT(登録商標)および他の機械化システム、デバイス、または装置は、卵先端上の注射ヘッドを適度に下げることによって働き、小径空洞パンチがシェル中の小さな開口部を貫通する。ニードルは調節した深さ(通常2.54cm)までチューブを下り、わずかな、予め決定した体積のワクチン、免疫原性組成物、または化合物を胚に送達し、次いでニードルを回収し、滅菌洗浄液中で洗浄する。卵内接種用ワクチンおよび遺伝子送達の方法は、それらの内容が参照により明らかに本明細書に組み込まれる、米国特許第4,458,630号、米国特許第RE35973号、米国特許第6,668,753号、米国特許第6,601,534号、米国特許第6,506,385号、米国特許第6,395,961号、米国特許第6,286,455号、米国特許第6,244,214号、米国特許第6,240,877号、米国特許第6,032,612号、米国特許第5,784,992号、米国特許第5,699,751号、米国特許第5,438,954号、米国特許第5,339,766号、米国特許第5,176,101号、米国特許第5,136,979号、米国特許第5,056,464号、米国特許第4,903,635号、米国特許第4,681,063号、2003年10月16日に出願された米国出願第10/686,762号、2002年8月9日に出願された米国出願第10/216,427号、2002年2月13日に出願された米国出願第10/074/714号、および2002年1月9日に出願された米国出願第10/043,025号中で見ることができる。したがって、本発明は、本明細書に記載する組換えベクター、ワクチンまたは免疫原性組成物を卵内送達または投与するためのデバイスまたは装置を企図する。デバイスまたは装置は、本発明の組換えヒトアデノウイルスベクターまたは免疫原性組成物を場合によっては含むことができる、すなわち、鳥類に卵内投与するためのベクターまたは免疫原性組成物を予め充填することができる。
【0160】
さらなる投与法はエアゾールスプレー送達である。ヒトAd5ベクターワクチンの鼻腔内投与はニワトリを免疫処置できなかったことが示されている(Gaoら、2006年;Toroら、2007年)。ヒトAd5ベクターワクチンのエアゾールスプレーはニワトリをワクチン接種する際に有効であったという本明細書の驚くべき実証は、眼内投与、多数の経路の組合せ(鼻腔内、眼内、経皮、および経口投与)、および/またはエアゾールスプレー中に生じる霧状ミストに起因する可能性がある。
【0161】
エアゾールスプレー送達は、労力と時間の両方を節約する鳥類の集団ワクチン接種に有用な方法であり、したがって商業的関心は、家禽産業においてエアゾールスプレーなどの投与法を非常に好む。
【0162】
このようなエアゾールスプレー送達を可能にする機械化システム、装置、およびデバイスは、したがって本発明によって含まれる。したがって、本発明は、本明細書に記載する組換えベクター、ワクチンまたは免疫原性組成物をエアゾールスプレー送達または投与するためのデバイスまたは装置を企図する。デバイスまたは装置は、本発明の組換えヒトアデノウイルスベクターまたは免疫原性組成物を場合によっては含むことができる、すなわち、鳥類にエアゾールスプレー投与するためのベクターまたは免疫原性組成物を予め充填することができる。
【0163】
本発明は、疾患の療法または治療の過程および/または免疫学的組成物の追加抗原刺激投与および/または初回抗原刺激-追加抗原刺激レジメンなどにおける、本発明の組成物の連続投与、または本明細書の方法の連続実施、例えば、本発明の組成物の定期投与も含み、かつ、連続投与の時間および形式は過度の実験なしで確認することができる。
【0164】
さらに本発明は、in vivoおよび/またはin vitroおよび/またはex vivoで(例えば、後者の2つは、例えば本発明による投与を施した宿主由来の細胞からのその単離後、例えばこのような細胞の任意選択の増殖後)遺伝子産物および/または免疫学的産物および/または抗体を生成するための方法を含めた、ベクターを作製および使用するための組成物および方法、および診断、アッセイ、療法、治療などにおける使用を含めた、このような遺伝子および/または免疫学的産物および/または抗体の使用を含む。
【0165】
ベクター組成物はベクターと適切な担体または希釈剤を混合することによって製剤化され、遺伝子産物および/または免疫学的産物および/または抗体組成物は、遺伝子および/または免疫学的産物および/または抗体と適切な担体または希釈剤を混合することによって同様に製剤化される。例えば、(例えば、担体、希釈剤などに関しては)米国特許第5,990,091号、WO99/60164、WO98/00166、その中に引用された文書、および本明細書に引用した他の文書、および本明細書の他の教示を参照。
【0166】
このような組成物において、組換えベクターは、適切な獣医学的にまたは薬剤として許容される担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコースなどと混合することができる。組成物は凍結乾燥することもできる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲルまたは粘性増大添加剤、防腐剤、香味剤、着色剤などの補助物質を含有することができる。
【0167】
DMSOは、特にベクターまたはベクターを含む免疫原性組成物の卵内またはエアゾールスプレー送達に関して、ワクチンおよび免疫原性組成物の効能を高めることが知られている。DMSOは、細胞膜の透過性を増大することによってワクチンの効能を高めると考えられる(Oshopら、2003年)。DMSOと比較して細胞を透過することができ、羊水の粘性を低減することができ、かつ高いコンプライアンスレートを示すことができる他の作用物質または添加剤は、特に卵内またはエアゾールスプレー送達によって投与するとき、ワクチンまたは免疫原性組成物の製剤化において使用することができる。インシュリン、レプチン、およびソマトトロピンなどの様々なタンパク質の吸収は、鼻腔内投与後に、目に見える副作用無しでテトラデシルマルトシド(TDM)などの界面活性剤によって高まることが示されている(Arnold、ら、2004年)。したがって本発明は、本明細書に記載する方法および組成物におけるTDMの使用を含む。
【0168】
0.125%のTDMを含有する製剤は細胞形態の適度な変化を引き起こすことができ、一方高濃度のTDM(すなわち0.5%)はより広範囲の形態変化を一時的に誘導することができる。哺乳動物および孵化した鳥類卵の羊水における粘性鼻腔粘液のため、TDMは卵内またはエアゾールスプレー送達の設定においてベクター送達を高めると考えられる。さらにArnold、ら(2004年)中に記載されたTDMの安全性プロファイルは、免疫処置した鳥類の健康およびフードチェーンに入るコンプライアンスを促進するのに特に有利である。
【0169】
投与するベクターの量は治療する対象および状態に関して変わり、1日当たり1または数〜数百または数千マイクログラムの重量(body weight)で変わり、ワクチンまたは免疫原性組成物の用量は、鳥当たり101〜106プラーク形成単位(PFU)、好ましくは102〜105PFUで選択することが好ましい。注射用に、前述の力価を含有するワクチンは、翼膜投与の場合、生理食塩水などの薬剤としてまたは獣医学的に許容される液体を用いて、約0.1mlまたは0.01mlの最終体積まで希釈しなければならない。本発明のベクターおよび方法は、卵内ワクチン接種および1日齢のヒヨコのエアゾールスプレーによるワクチン接種、ならびに高齢のヒヨコおよび成体のワクチン接種を可能にする。
【0170】
遺伝子産物(例えば、エピトープ、抗原、治療剤、および/または抗体)組成物に関して言及した量を得るための量、鳥類対象にベクターを非侵襲的に投与することができる。当然ながら、本発明は、本明細書に例示する用量より少ない用量および多い用量を想定し、鳥類対象に投与するその構成成分を含めた任意の組成物に関して、および任意の特定の投与法に関して、以下、適切な鳥類モデルにおける致死量(LD)およびLD50を決定することなどによって毒性、および血清の滴定およびその分析などによって、例えばELISAおよび/または血清中和分析によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。
【0171】
組換えベクターを適切な量で投与して、本明細書および/または本明細書に引用する文書中に記載される用量に対応するin vivo発現を得ることができる。例えば、ウイルス縣濁液に適した範囲は実験によって決定することができる。2個以上の遺伝子産物が2個以上の組換え体によって発現される場合、それぞれの組換え体はこれらの量で投与することができ、またはそれぞれの組換え体は、併せて、これらの量を含む組換え体の総計で投与することができる。
【0172】
本発明中で利用するベクターまたはプラスミド組成物において、用量は本明細書で引用する文書中に記載したのと同様、または本明細書で記載したのと同様、または本明細書で引用する文書で参照または引用する文書中に記載したのと同様であってよい。都合よく、用量は、(1つまたは複数の)抗原が直接存在する場合組成物と類似した応答を誘導する、またはこのような組成物における用量と類似した発現を有する、または組換え組成物によってin vivoで得られる発現と類似した発現を有するのに十分な量のプラスミドでなければならない。
【0173】
しかしながら、抗体による血清滴定による、例えばELISAおよび/または血清中和アッセイ分析などによる方法によって、(1つまたは複数の)組成物の用量、その構成成分の濃度、および適切な免疫応答を誘導する(1つまたは複数の)組成物を投与するタイミングを決定することができる。このような決定は、当業者の知識、本明細書に引用する本開示および文書由来の過度の実験を必要としない。さらに、連続投与の時間は、過度の実験なしで、本開示、および当技術分野の知識から確かな方法によって、同様に確認することができる。
【0174】
本発明によって企図される免疫原または免疫学的組成物はアジュバントも含有することができる。適切なアジュバントには、fMLP(N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;米国特許第6,017,537号)および/またはアクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよび/または無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーがある。アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーは、例えば糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋状態であってよい。これらの化合物は名称「カルボマー」で知られている(Pharmeuropa、Vol.8、No.2、1996年6月)。当業者は、少なくとも3個のヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシル化化合物、一実施形態では、8個を超えないヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシル化化合物と架橋状態である、このようなアクリル酸ポリマーを論じる、(参照により組み込まれる)米国特許第2,909,462号を参照することもできる。別の実施形態では、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子は、少なくとも2個の炭素原子を含有する不飽和脂肪族基、他の実施形態では、約2〜約4個の炭素原子を含有する基、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基と置換されている。不飽和基自体はメチルなどの他の置換基を含有することができる。Carbopol(登録商標)(Noveon Inc.、Ohio、USA)の名称で販売されている製品は、アジュバントとして使用するのに特に適している。それらはアリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋状態であり、これに関しては、Carbopol(登録商標)974P、934P、および971Pの製品が言及される。
【0175】
無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーに関して、直鎖または架橋状態、例えばジビニルエーテルと架橋状態であってよい、無水マレイン酸およびエチレンのコポリマーである、EMA(登録商標)製品(Monsanto)が言及される。さらに、参照により組み込まれる米国特許第6,713,068号およびRegelson、W.ら、1960年を参照することができる。
【0176】
第四級アンモニウム塩を含有するカチオン性脂質は、その内容が参照により組み込まれる米国特許第6,713,068号中に記載されており、本発明の方法および組成物中で使用することもできる。これらのカチオン性脂質には、有利に中性脂質、有利にDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン;Behr J.P.、1994年)と結合してDMRIE-DOPEを形成する、DMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム;WO96/34109)があるが、これだけには限られない。
【0177】
組換えワクチンまたは免疫原または免疫学的組成物は、水中油型エマルジョンの形に製剤化することもできる。水中油型エマルジョンは、例えば軽質流動パラフィン油(European Pharmacopea type);イソプレノイド油、スクワラン、スクワレン、EICOSANE(商標)またはテトラテトラコンタンなど;(1つまたは複数の)アルケン、例えばイソブテンまたはデセンのオリゴマー化から生じる油;植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリル酸/カプリン酸)、グリセリルトリ(カプリル酸/カプリン酸)またはプロピレングリコールジオレエートなどの直鎖アルキル基を含有する酸またはアルコールのエステル;分岐脂肪酸またはアルコールのエステル、例えばイソステアリン酸エステルをベースとするものであってよい。油は乳化剤と組み合わせて有利に使用して、エマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤、場合によってはエトキシル化状態である、ソルビタン、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、またはヒドロキシステアリン酸のエステルなど、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、Pluronic(登録商標)製品、例えばL121などであってよい。アジュバントは、(1つまたは複数の)乳化剤、ミセル形成物質、および例えばProvax(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals、San Diego、CA)の名称で入手可能である油などの混合物であってよい。
【0178】
組換えアデノウイルス、または目的の1つまたは複数の抗原または免疫原を発現する組換えアデノウイルスベクター、例えば本開示によるベクターは、安定剤の存在下で、約5℃において液体形、または凍結乾燥もしくは凍結-乾燥形のいずれかで貯蔵および/または保存および保管することができる。凍結-乾燥はよく知られている標準的な凍結-乾燥手順に従うものであってよい。薬剤として許容される安定剤は、SPGA(スクロースリン酸グルタミン酸アルブミン、Bovarnick、ら、1950年)、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、スクロース、グルコース、デキストラン、トレハロース)、グルタミン酸ナトリウム(Tsvetkov、T.ら、1983年;Israeli、E.ら、1993年)、ペプトン、アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質、スキムミルクなどの作用物質を含有するタンパク質(Mills、CK.ら、1988年;Wolff、E.ら、1990年)、およびバッファー(例えば、リン酸バッファー、アルカリ金属リン酸バッファー)であってよい。アジュバントおよび/またはビヒクルまたは賦形剤を使用して、可溶性凍結-乾燥調製物を作製することができる。
【0179】
ここで本発明を、本発明の様々な実施形態の例示によって与えられ、如何なる形式でも本発明を制限することは意味しない、以下の非制限的な実施例によってさらに記載する。
【0180】
(実施例)
(実施例1:A/パナマ/2007/99HAをコードするAdベクターの構築)
2003〜2004年にワクチン生成用に選択された、インフルエンザウイルス株、A/パナマ/2007/99(H3N2)(配列番号1、2)はCenters for Disease Control(CDC)によって提供された。ヘマグルチニン(HA)遺伝子は、インフルエンザRNAの逆転写、次にTable 1(表1)中の以下のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるHA遺伝子の増幅によってクローニングした。
【0181】
【表1】
【0182】
これらのプライマーは、A/パナマ/2007/99HA遺伝子の5'および3'末端とアニーリングした配列、およびHA開始ATGコドンからすぐ上流の真核生物リボソーム結合部位(Kozak、1986年)、および続くクローニングのためのKpnI部位に対応する配列を含有する。完全長HA遺伝子を含有するKpnI断片を、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で正しい方向に、(T.Heによって提供された)pShuttle-CMV(Heら、1998年)のKpnI部位に挿入した。A/パナマ/2007/99HAをコードするE1/E3欠損Ad5ベクター(AdPNM2007/99.H3)を、記載されたように(Zengら、2001年)簡易組換え系を使用してヒト293細胞において作製した。
【0183】
HA挿入体とベクターの間の5'と3'両方の接合部の配列決定によって、AdPNM2007/99.H3ベクターを確認した。A/パナマ/2007/99に対するHI抗体を、AdPNM2007/99.H3の鼻腔内投与後にマウスにおいて誘導した。
【0184】
(実施例2.組換えAdベクターの卵内および筋肉内注射によるニワトリの免疫処置)
ヒトAdベクターワクチンの接種によるニワトリの免疫処置はこれまで報告されていない。Ad5は鳥類において本来見られないので、このベクターは、ニワトリ細胞において効率よく感染および/または複製することができないと考えた。驚くことに、AdPNM2007/99.H3の筋肉内注射後第2週で、全3羽のニワトリにおいて512の血清HI力価を得た(図1)。
【0185】
AdPNM2007/99.H3ベクターを9日齢および18日齢の孵化ニワトリ卵に注射したとき、孵化後第2週で、前者において8および16の血清HI力価を得て、かつ後者では4未満、4、および8のHI力価を得た。これらの結果は、E1/E3欠損ヒトAd5ベクターは、それが鳥類細胞において形質導入することができ複製することができないために、鳥類におけるワクチン担体として使用することができることを示唆する。卵内ワクチン接種によって誘導された比較的低いHI力価は、中でも特に、用量および胚の年齢に起因する可能性がある。ニワトリ細胞の表面上で見られるそのファイバーとコクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)の結合によって、ニワトリ胚の一部にAd5ベクターを形質導入することができる(Tanら、2001年)。ごく少数の細胞の形質導入後、ニワトリ中で免疫応答を誘導することができる。なぜならAdは内在化後にエンドソームを阻害することによりベクターDNAを保護することができる強力なベクターだからである(Curiel、1994年)。さらに、Ad構成成分の少なくとも1つ、ヘキソンは非常に免疫原性があり、外来性抗原に対するアジュバント活性を与える(Molinier-Frenkelら、2002年)。
【0186】
AdPNM2007/99.H3ベクターを、卵当たり5×1010pfuの用量において200μlの体積で、それぞれ9日齢(群1)および18日齢(群2)孵化ニワトリ卵の羊膜に注射した。群当たり6個の卵が存在したが、しかしながら、群1ではわずか2羽の鳥が孵化し、群2では3羽の鳥が孵化した。血清HI力価は孵化後第2週で記載されたように決定した(Van Kampenら、2005年)。群3では、AdPNM2007/99.H3ベクターを、動物当たり2.5×1010pfuの用量において100μlの体積で三羽の4週齢のニワトリに筋肉内注射した。HI力価は免疫処置後第2週で決定した。
【0187】
群1(9日齢胚の卵内免疫処置)では、8および16のHI力価を得て、群2(18日齢胚の卵内免疫処置)では、4(2の力価を任意に割り当てた)未満、4、および8のHI力価を得て、かつ群3(4週齢のニワトリの筋肉内免疫処置)では、全3羽のニワトリにおいて512のHI力価を得た。図1はlog2スケールでのHI力価を示す。四角形は群1中の個々のニワトリにおけるHI力価に対応し、一方で三角形は群2中の個々のニワトリにおけるHI力価に関する。円形は群3中の個々のニワトリにおけるHI力価に対応する。
【0188】
(実施例3.A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子をコードするAdベクター(AdTW68.H5)の構築)
AIウイルス株のHをコードするA/シチメンチョウ/WI/68H(配列番号3、4)のDNA鋳型はUSDA Southeast Poultry Research Laboratory、Athens GAによって提供され、Table 2(表2)中に示すプライマーを使用してPCR増幅した。
【0189】
【表2】
【0190】
これらのプライマーは、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子の5'および3'末端とアニーリングした配列、H開始ATGコドンからすぐ上流の真核生物リボソーム結合部位(Kozak、1986年)、および続くクローニングのための特有制限部位を含有する。完全長H遺伝子を含有する断片を、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で正しい方向に、(Crucell、Leiden、オランダによって提供された)シャトルプラスミドpAdAptのHindIII-BamHI部位に挿入した。RCAを含まない、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68H遺伝子をコードするE1/E3欠損Adベクター(AdTW68.H5)を、記載されたように(Shiら、2001年)pAdApt-TW68.H5とAd5骨格プラスミドpAdEasy1(Heら、1998年)のコトランスフェクションによって、(Crucellによって提供された)ヒトPER.C6細胞において続いて作製した。H挿入体とベクター骨格の間の5'と3'両方の接合部の配列決定によって、AdTW68.H5ベクターを確認した。
【0191】
Adベクター卵内AIワクチンを迅速に生産して、発生するAI大流行に対応した最高の安全性プロファイルの状況内でニワトリ集団に集団投与することができる。クロマトグラフィー仲介の精製(Konz、2005年)および長期貯蔵にフリーザーを必要としないバッファー(Evans、2004年)を併用した、無血清縣濁液を含むバイオリアクター(Lewis, 2006)中での十分特徴付けられたPER.C6細胞系におけるRCAを含まないAd5ベクターの大規模生産は、Ad5ベクターの生産コストを大幅に低減するはずである。AIワクチン生産の基質として孵化卵の代わりに培養細胞を使用することは、受精卵の供給が少ない可能性があるAI大発生時中は特に有意である。このAd5ベクターAIワクチンはDIVA戦略に従うものである。なぜならこのベクターはウイルスHAのみをコードするからである。したがって、血清HI抗体の分析および酵素結合免疫吸着アッセイによる抗AI核タンパク質の測定は、AIワクチンまたはウイルスへの曝露の迅速な決定を可能にし得る。
【0192】
RCAを含まないAd5ベクター卵内AIワクチンは、DIVA戦略と適合性がある均一用量の非複製AIワクチンの自動送達によって、免疫処置した鳥類においてHPAIウイルス感染を抑えることができる独自の基盤を与える。復帰突然変異体を生成するリスクと関係があり、環境中に標的種と非標的種の両方の遺伝子組換え生物を蔓延させる可能性がある複製組換えベクターと異なり、RCAを含まないAd5ベクターは野生に伝播しない。同時循環する野生型インフルエンザウイルスと望ましくないさらなる再集合体を生成する可能性がある(Hilleman、2002年)、リアソータントAIウイルスワクチンとは対照的に、Ad5のDNAゲノムがインフルエンザウイルスのセグメント状RNAゲノムとの再集合を経る可能性はない。
【0193】
(実施例4.AdTW68.H5の卵内接種)
卵内接種を記載されたように実施した(Senne、1998年、Sharmaら、1982年)。接種前に全ての胚を、生存性をろうそくの灯に透かして調べ、接種部位に印をつけ、3.5%ヨウ素を含有する70%エチルアルコールの溶液で消毒した。先端部を備える回転ドリルを使用して殻に穴を作製した。接種は1mlのシリンジを使用して羊膜-尿膜経路によって実施した。接種後、穴は溶融パラフィンで塞いだ。
【0194】
(実施例5.AdTW68.H5接種後の血清学)
AI株A/シチメンチョウ/WI/68をSPF孵化ニワトリ卵において継代し、106の胚感染用量50%/mlの力価を得た。羊膜尿膜液をヘマグルチニン化活性に関して試験した。個々の血清サンプルにおける抗体力価は、記載されたように(Swayneら、1998、Thayerら、1998年)4ヘマグルチニン化単位のAIウイルスを使用してヘマグルチニン化阻害によって決定した。
【0195】
(実施例6.AIゲノムのサンプリングおよび定量化)
個々の鳥由来の口部-咽頭サンプルを1.0mlの脳心臓注入媒体(Difco、Detroit、Mich.)中に縣濁し-70℃で保存した。RNAはRNeasyミニキット(Qiagen)を使用することによって抽出した。定量リアルタイムRT-PCRは、以前に記載されたように(Spackman、2002年)、A型インフルエンザウイルスマトリクスRNAに特異的なプライマーを用いて実施した。ウイルスRNAは、知られている量の対照A/ニワトリ/Queretaro/14588-19/95RNA(101.0〜106.0のEID50/mL)から作製した標準曲線を使用することによってサイクル閾値から挿入した。
【0196】
(実施例7.AdTW68.H5の卵内接種、次に孵化後追加抗原刺激によるニワトリの免疫処置)
接種によるニワトリの免疫処置は、1011ウイルス粒子/ml(vp/ml)を含有する300μlのAdTW68.H5を孵化第10日または第18日にSPF孵化卵に投与することによって実施した。各群の孵化したヒヨコを等しく二群に分けた。半分のニワトリには鼻腔内経路によって孵化後第15日に同じ用量のAdTW68.H5を再度ワクチン接種し、残りのニワトリには孵化後に追加抗原刺激の施用はなかった。
【0197】
これらの鳥類群から孵化後第28日で得た血清において検出したHI抗体力価を図2中に示す。孵化第10日で卵内ワクチン接種したニワトリは2と7log2の間の範囲(平均4.2)のHI力価を示し、孵化第10日でワクチン接種し孵化後に追加抗原刺激を施用したニワトリは2と9log2の間の範囲(平均5.5)のHI力価を示し、孵化第18日で卵内ワクチン接種したニワトリは2と9log2の間の範囲(平均5.5)のHI力価を示し、かつ孵化第18日でワクチン接種し孵化後第15日で追加抗原刺激したニワトリは2と8log2の間の(平均5.7)のHI値を示した。全体として、このヒトAdベクターAIワクチンの卵内投与はニワトリにおいてAIに対する確かな免疫応答を誘導し、一方でニワトリへのこのベクターワクチンの鼻腔内注入は、近年実証されたように(Gao、2006年)無効である。
【0198】
(実施例8.AdTW68.H5の卵内接種は、高病原性鳥インフルエンザ株HPA IA/ニワトリ/Queretaro/19/95(H5N2)による致死的攻撃に対して防御する)
19のSPFニワトリ胚を、実施例7中に記載したのと同じ用量のAdTW68.H5を用いて、孵化第18日で卵内経路によって免疫処置した。孵化したニワトリはウイングバンドによって個々に識別した。12羽のニワトリの群は孵化後第15日で鼻腔内経路によって追加抗原刺激し、残りの7羽のニワトリには追加抗原刺激しなかった。血液サンプルは第23日齢および第29日齢でそれぞれのウイングバンドを付けた鳥から得て、鳥インフルエンザ株A/シチメンチョウ/Wisconsin/68に対する抗体に関してHIにより試験した。全体として、これらの鳥において検出したHI抗体力価(図3)は、以前の試験で得た値と類似していた(図2)。大部分の鳥は5log2以上の力価を得た。卵内接種のみのニワトリは孵化第23日で5と9log2の間の力価を得た(図3)。これらのニワトリは、孵化第29日までその抗体力価を維持または増大した。鼻腔内追加抗原刺激と併用した卵内ワクチン接種は、孵化第23日まで3と9log2の間の範囲の抗体力価を示した(図3)。前群中と同様に、大部分のニワトリは、孵化第29日までその力価が1または2log2ステップ増大した。
【0199】
105胚感染用量(EID50)のHPA IA/ニワトリ/Queretaro/19/95(H5N2)(Horimoto、1995年、Garcia、1998年)による口部-咽頭接種によって、バイオセーフティレベル3+の施設で攻撃を実施した。この攻撃株のH遺伝子は、Adベクターワクチン(GenBankアクセッション番号U79448&U79456)(配列番号5、6、7、8)において使用したAI株A/シチメンチョウ/Wisconsin/68のHと、90.1%のヌクレオチド同一性および94.4%の推定アミノ酸類似性を有する。
【0200】
卵内ワクチン接種した7羽のヒヨコ、および卵内ワクチン接種し孵化後第15日に次いで鼻腔内追加抗原刺激した12羽のヒヨコ、ならびに11羽の非ワクチン接種対照を含めた合計30羽のニワトリを、孵化第34日で攻撃した。
【0201】
攻撃した鳥は、14日の実験期間を通じて罹患率および死亡率に関して毎日観察した。とさかおよび肉垂の膨張、結膜炎、拒食症および低体温症を含めたAIの臨床兆候を、11羽の対照鳥類の10羽において攻撃後第2日で観察した。2日後、対照群中の大部分の生存鳥が、とさかの壊死、肉垂の膨張、下痢、脱水症状、倦怠感、および脚部の皮下出血を示した。いずれのワクチン接種鳥においても疾患兆候は発症しなかった。AdTW68.H5(19/19)(卵内のみおよび卵内+鼻腔内追加抗原刺激)をワクチン接種した全ての鳥が、攻撃を生き延びた(図4)。
【0202】
攻撃した鳥におけるA/ニワトリ/Queretaro/19/95のウイルスゲノムを、攻撃後第2、4、および7日で回収した口部咽頭スワブにおけるリアルタイム逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって定量的に測定した。攻撃後第7日においてワクチン接種したニワトリと非ワクチン接種ニワトリの間で、AIウイルスゲノムの濃度の有意な差(P<0.05)が存在した(図5)。免疫処置した鳥中の検出可能なウイルスRNAの不在は、卵内ワクチン接種が、一週間以内のAIウイルス出芽を制御することができる免疫応答を誘導した証拠を与える。
【0203】
これらの結果は、異なるインフルエンザウイルス(ヒトおよび鳥類起源)由来のH遺伝子をコードするRCAを含まないヒトAdベクターで卵内免疫処置したニワトリは、均一AIウイルスに対するHI抗体力価を高め、同じH型の高病原性AIウイルス株による致死的攻撃に対して防御したことをまとめて示す。
【0204】
(実施例9.AdTW68.H5の卵内接種は、高病原性鳥インフルエンザ株A/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005(H5N1)による致死的攻撃に対して防御する)
AdTW68.H5ベクターAIワクチンが近年のH5N1HPAIウイルス株に対する防御をもたらすことができるかどうか決定するために、31羽のニワトリに2×108ifuの用量でAdTW68.H5ベクターを卵内ワクチン接種した。対照群は、無関係な抗原(破傷風毒素C断片)(Shiら、2001年)をコードするAd5ベクター(AdCMV-tetC)をワクチン接種した10羽のニワトリ、およびAd5ベクターに曝露しなかった10羽のニワトリを含んでいた。
【0205】
第31日に、対照および免疫処置したニワトリをH5N1AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005で攻撃した(この攻撃株のHAは、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68株のHAと89%の推定HAアミノ酸配列類似性を有する)。図6中に示すように、卵内免疫処置は第25日に1と6log2の範囲内で抗体を誘導した。非ワクチン接種(10/10)およびAdCMV-tetC免疫処置した(10/10)鳥は測定可能なHI抗体を産生せず、攻撃後9日以内にいずれもAIで死滅し、一方68%(21/31)のAdTW68.H5をワクチン接種した鳥は攻撃後第10日で臨床兆候なしで生き延びた(図7)。特に、3log2以上のHI力価を有する免疫処置群中の7羽の鳥(図6)がこの高致死性H5N1AIウイルスによってさらに殺傷された。このH5N1AIウイルスに対する生存率は、免疫原性が近いHAをコードするAd5ベクターによる卵内ワクチン接種によって改善することができると考えられる。
【0206】
これらの結果は、鳥類H5HAをコードするRCAを含まないヒトAd5ベクターで卵内免疫処置したニワトリは、HPAIウイルスに対する防御免疫を誘導することができる可能性があることを実証する。
【0207】
(実施例10.A/ニワトリ/New York/13142-5/94ヘマグルチニンをコードするアデノウイルスベクターの構築)
鳥インフルエンザ(AI)ウイルス株A/ニワトリ/New York/13142-5/94H7ヘマグルチニン(HA)をコードするE1/E3欠損ヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するベクターを、以前に記載されたように作製した(Toroら、2008年)。AIウイルスの完全長H7HA遺伝子をシャトルプラスミドpAdAptに挿入して、プラスミドpAdApt-NY94.H7を作製した。このH7HAをコードする複製可能アデノウイルス(RCA)を含まないAd5ベクター(AdChNY94.H7)を、pAdApt-NY94.H7およびAd5骨格プラスミドpJM17とPER.C6細胞のコトランスフェクション、次に細胞変性効果(CPE)出現後の多サイクルのプラーク精製によって作製した。
【0208】
(実施例11.AdChNY94.H7ベクターのエアゾールスプレーによるニワトリの免疫処置)
1日齢のニワトリを3群に分け、その各々にエアゾールスプレーにより組成物を投与した。群A(n=15)は、一回投与レジメンで1ml当たり1.1×1010の感染単位(ifu)を含有する8ml体積での、(実施例10中で調製したのと同様の)AdChNY94.H7ベクターAIワクチンのエアゾールスプレーによって免疫処置した。群B(n=15)は、24ml体積での同じワクチン(さらに1ml当たり1.1×1010ifuのAd5)のエアゾールスプレーによって免疫処置し、16日齢で追加抗原刺激の施用をさらに加えた。群Cは非ワクチン接種対照であった。
【0209】
図8はELISAによって測定した涙液中の特異的IgAのレベルを示す。
【0210】
図9はニワトリ血清におけるヘマグルチニン化阻害(HI)抗体力価を示す。
【0211】
これらの図から見ることができるように、両方の免疫応答が群Aと群Bの両方で誘導され、群Bのメンバーは第16日での追加抗原刺激投与後に免疫応答の増大を実証した。ヒトAd5ベクターワクチンのエアゾールスプレーはニワトリをワクチン接種する際に有効であったというこの実証は、眼内投与、多数の経路の組合せ(鼻腔内、眼内、経皮、および経口投与)、および/またはエアゾールスプレー中に生じる霧状ミストに起因する可能性がある。
【0212】
(実施例12.鳥インフルエンザH5ヘマグルチニンをコードする複製欠損ヒトアデノウイルスベクターを用いた鳥類ハーダー腺中の粘膜免疫の誘導)
ニワトリ
特定病原体を含まない(SPF)白色レグホンニワトリの受精卵(Charles River Laboratories、North Franklin、CT)をインキュベートし孵化させた。実験期間を通じてHorsfall型隔離棟中で、BSL2条件下においてニワトリを保った。実験手順および動物ケアは、連邦政府および施設の動物ケアおよび使用ガイドラインに従い実施した。
【0213】
RCAを含まないAdベクターAIワクチン。
サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下で、A/シチメンチョウ/Wisconsin/68AIウイルスのコドン最適化H5HAをコードするRCAを含まないE1/E3欠損AdTW68.H5ckベクターを、PER.C6細胞において作製した(provided by Crucell Holland BVによって提供された)。
【0214】
眼内ワクチン接種
H5特異的な免疫を誘導するために、9または10日齢のSPF白色レグホンニワトリ(Charles River Labs)に、80〜100μlの体積で鳥1羽当たり2.5×108ifuのAdTW68.H5ckを眼内経路によってワクチン接種した。具体的な実験では、眼内経路によって同じワクチン用量を用いて14日間隔で2回、ニワトリを追加抗原刺激した。対照群はナイーブの鳥、または無関係なタンパク質(破傷風毒素C断片)を発現するAd5をワクチン接種した鳥のいずれかであった。
【0215】
サンプル回収
血液サンプルを上腕静脈穿刺後に回収し、凝固させ、血清は4,500×gで1分間の遠心分離によって得た。血清を回収し、[4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドヒドロクロリド、アプロチニン、ベスタチン塩酸塩、[N-(トランス-エポキシスクシニル)-L-ロイシン4-グアニジルブチノアミド]、EDTA、リューペプチン(Sigma、Saint Louis、MO)を含有する10×プロテアーゼ阻害剤カクテルを、4℃での保存または-80℃での長期保存前に血清に加えた。涙液を以前に記載されたように得て(Toro、1996年)、3,300×gで5分間の遠心分離にかけ、10×プロテアーゼカクテルと混合し、4℃で保存または-80℃で長期保存した。血清および涙液は抗体測定用に第17、40、50、63および68日齢で回収した。
【0216】
抗体測定
血清中のAIH5抗体レベルを、4ヘマグルチニン化単位の低病原性A/シチメンチョウ/Wisconsin/68(H5N9)株に対するヘマグルチニン化阻害(HI)アッセイによって測定した。1.0Log2未満の力価には1.0の力価を任意に割り当てた。対照ニワトリではHI抗体を検出しなかった。
【0217】
血清および涙液は、Ad5特異的IgAおよびIgGのレベルに関してELISAによって分析した。HRP結合ヤギ抗ニワトリIgA、IgGおよびIgM抗体(Gallus Immunotech Inc.、Fergus、カナダ)を検出用抗体として使用したこと以外、Ad5に関するELISAは以前に報告されたのと同様に実施した(van Ginkel)。ELISAプレートは108個の粒子/野生型Ad5のウエルでコーティングした。ウエルをブロッキングし、サンプルの連続二倍希釈を加え、4℃で終夜インキュベートした。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ニワトリIgAまたはIgG抗体(Gallus Immunotech Inc.、Fergus、カナダ)を使用して、Ad5特異的抗体を検出した。ウエルを洗浄し基質を加えた。反応は室温で30分後に停止し、405nmでの吸光度を測定した。バックグラウンドより0.100以上高いOD405での最高希釈を終点力価として定義した。
【0218】
ニワトリB細胞の酵素結合イムノスポット(ELISPOT)アッセイ
ハーダー腺および脾臓を第20、30、40、50、および60日齢でこれらのニワトリから回収して、記載されたように(Czerkinsky)ELISPOTアッセイを使用して(A/tk/WI/68AI株でコーティングした)Ad5またはH5に特異的なIgAおよびIgG抗体分泌細胞の数を測定した。簡単に言うと、HGを機械的に破壊し、リンパ球は1.077g/mlのhistopaque-ficoll密度勾配での遠心分離によって単離した。単離したリンパ球は、トリパンブルー色素排除試験法を使用して血球計で計数した。2×ヘマグルチニン化力価でUV殺菌鳥インフルエンンザウイルス(A/tk/WI/68)または熱殺菌Ad5ウイルス(108個の粒子/ウエル)をコーティングした、ニトロセルロースを固めた、96ウエルマイクロプレートに様々な濃度でリンパ球を載せ、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有する完全RPMI-1640培地でブロッキングした。5%CO2で加湿器インキュベーター中において37℃で、約18時間細胞をインキュベートした。プレートはPBS-Tween20(0.05%)で5回洗浄し、HRPと結合したヤギ抗IgGまたはヤギ抗IgA(Gallus Immunotechnology、Inc.)と共に4℃で終夜インキュベートした。プレートを洗浄し、水でのプレート洗浄によって反応を停止させる前に、ペルオキシダーゼ基質(Moss Inc.)と共に室温で15〜30分間インキュベートした。
【0219】
免疫沈降
涙液または血清を、16.5μlのビオチニル化マウス抗ニワトリIgAモノクローナル抗体(Southern Biotechnology Associates、Inc、Birmingham、AL)または16μlのビオチニル化ヤギ抗ニワトリIgA(Southern Biotechnology Associates、Inc.)と共に、4℃で終夜インキュベートした。翌日、50μlの洗浄したストレプトアビジン結合セファロースビーズ(GE Healthcare Bio-Sciences AB、Uppsala、スウェーデン)を、シェーカーで連続攪拌しながら4℃において終夜加えた。翌日、ビーズを遠心分離によって沈降させ、1mlのPBSおよび0.05%のTween20で3回洗浄し、PBSで最後に1回洗浄した。2×トリス-グリシンSDSサンプルバッファー(Invitrogen、Carlsbad、CA)を加え、サンプルは100℃において10分間沸騰させた。その後サンプルを遠心分離にかけてビーズを除去し、上清は4〜12%のプレキャスト勾配ゲル(Invitrogen)上でSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分析した。製造者の勧め(Pierce、Rockford、IL)に従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して、タンパク質を目に見える状態にした。
【0220】
免疫組織化学
白色レグホンを2.5×108ifuのAdTW68.H5ckに曝露させた。組織は酸性酢酸-アルコール中に4℃で2時間固定し、次にPBS中スクロース(30%)中でインキュベートして組織を凍結防止し、その後組織をNeg50培地(Richard- Allan Scientific、Kalamazoo、MI)中に包埋し、イソペンタン(Fisher Scientific)中包埋モールド(Fisher Scientific)中に凍結し、液体窒素で冷却した。5μm切片をクリオスタット(Microm HM550、Waldorf、ドイツ)で切断し、予め洗浄したSuperfrost(登録商標)Plus顕微鏡スライド(Labsco、Inc.、Louisville、KY)上に置き乾燥させた。スライドは4分間氷冷アセトンで処理して脂質を除去し、乾燥させ、室温において1時間10%のFCSでブロッキングし、次に10%FCSに希釈した抗H5親和性精製ウサギ抗H5抗体(eEnzyme LLC、Gaithersburg、MD)と共に、4℃で終夜インキュベートした。このステップに、4℃で終夜のビオチニル化ロバ抗ウサギIgG(R&D Systems)とのインキュベーション、および室温で4時間1%FCS中でのNeutraliteアビジン-FITC(Southern Biotechnology Associates、Inc.、Birmingham、AL)を用いた最終染色ステップを続けた。ステップ間に、スライドはPBS中で大々的に洗浄し、カバーガラスはVectashield Hard Set封入剤(Vector Laboratories、Inc、Burlingame、CA)で封入した。全ての画像はSPOTソフトウェア(Diagnostic Instruments)を使用してグレースケールで捉え、Microsoft Office Picture Viewerで編集した。画像は以下の設定、70に調節した「量」、100に調節した「色相」、100に調節した「彩度」を使用して緑色化した。
【0221】
RT-PCRニワトリポリマー免疫グロブリン受容体
製造者のプロトコルに従いTri試薬(Molecular Research、Inc.)を使用して、三羽のニワトリのハーダー腺から全RNAを単離した。1マイクログラムの全RNAを逆転写し、94℃、1分、58℃、1分の35PCRサイクルにより増幅して、ニワトリポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)の発現を検出した。順方向プライマーはヌクレオチド206 3'-CCAGGAGTTGCTTGACTGT-5'で始まり、逆方向プライマーはヌクレオチド605 3'-CTCAGCAGGATTCTCCCTTG-5'で始まり、したがって、1.5%アガロースゲルで分離し臭化エチジウムで染色すると、pIgRのmRNAを増幅する場合400bpの診断PCR産物を観察する。これらのプライマーはイントロンを含むので、ゲノムDNAの増幅後に約750bpのアンプリコンが見られた。考えられるDNA汚染を排除するために、RNAをRNaseを含まないDNase(Sigma)で処理した。
【0222】
統計分析
全ての統計分析は、スチューデントの不対両側t検定を使用して実施した。
【0223】
結果
免疫蛍光染色を使用して眼部免疫処置後第9日でのHG(図10)において、AdTW68.H5ckからのH5HAの発現を検出することができたことを実証した。H5発現細胞は大部分がHG中に存在した管と一直線に並んでいた。対照組織中ではH5の発現は示されなかった。決定的証拠は、ヒトAd5がin vivoで特異的ニワトリ細胞に形質導入することができることを示す。
【0224】
AIウイルスに対する全身抗体応答を測定するために、HIアッセイを血清サンプルで実施した。連続希釈液を、AdTW68.H5ckの第二および第三の眼部投与後2週間で回収した血清から作製した。図11中に示すように、強いHI抗体応答を、第二のAdTW68.H5ck施用(HI力価6.4、n=15)後と第三の施用(HI力価7.7、n=9)後の両方で観察したが、一方いずれの非接種対照においてもHI力価を検出しなかった(HI=0、n=11)。
【0225】
ELISAは涙液中の多量のIgAおよびIgGAd5特異的抗体を明らかにしたが、一方血清中では高いIgG力価のみを検出した(図12)。IgA検出用に2倍希釈サンプルまたはIgG検出用に32倍希釈サンプルで始めたとき、対照ニワトリにおいてIgAまたはIgG抗体は検出しなかった(データ示さず)。涙液中と血清中のIgGレベルは有意に異ならなかった(P=0.4072)。これは、涙液中のIgG抗体がHG中で産生されたこと、または血清滲出に由来したこと、またはこの2つの組合せに由来する可能性がより高いことを示し得る。大部分のニワトリにおいて高いIgAレベルは涙液中で観察し(6.8の平均Log2終点力価)、一方IgAの血清中レベルは検出不能であった(0.3の平均Log2終点力価)。涙液中のIgAレベルは血清中で観察したレベルより有意に高かった(P<0.0001)。これは、大部分のIgA抗体は、眼部免疫処置後にHG中で局所的に産生されることを示した。これを確認し、さらにHG中でのIgG産生を決定するために、本発明者らはニワトリ用ELISPOTアッセイを開発した。
【0226】
IgAおよびIgGのELISPOTアッセイは、材料および方法中に詳細に記載したようにAd5ベクターおよび発現H5HA用に開発した。図13中に示すのは、HGにおいて眼部攻撃後に観察したIgAスポット形成細胞(SFC)である。眼部攻撃後にHGにおいて誘導されたAd5およびH5に特異的なIgGSFC応答を図14中に示す。Ad5特異的免疫応答は、752SFC/106個のリンパ球の眼部投与後第9日でピークに達する。H5HAに対するピークのIgG応答は2日後であり、AdTW68.H5ck投与後第11日に2,047SFC/106個のリンパ球である。これはAd5IgGSFC応答より2.7倍程度が高い(図14)。Ad5応答と比較したときAd5IgASFC応答より2.4倍高い、2日の同じ遅延をH5IgASFC応答に関して観察した(図15)。H5およびAd5のピークのIgA応答は、それぞれ605SFC/106個のリンパ球および257SFC/106個のリンパ球であった。
【0227】
HGは目に隣接して位置するので、それらは正確に位置して、ポリマーIgAを分泌することによって侵入する病原体に対する第一線の防御を形成する。ニワトリポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)はクローニングされており、その発現は様々な組織中で分析されており(Wieland、2004年)、かつポリマーIgMおよびIgAとのその関係は実証されているが(Kobayahi、1980年)、ニワトリHG中の粘膜抗体応答をもたらす、この必須受容体の発現に関するデータは入手可能ではない。HGから単離した全てのRNAを、考えられるDNA汚染を排除するためのRNaseを含まないDNaseを用いた処理後にRT-PCRによって分析した。図16中に示すように、pIgRはHG中で発現された。RNAの逆転写を省略したとき、PCR産物は観察されなかった。さらに、pIgRのDNAの増幅は約750bpの産物をもたらす可能性があるが、これは観察しなかった。この観察によって、HG中でpIgRのmRNAが発現されたことを確認する。さらに、RT-PCR産物はAuburn Universityの配列決定施設で配列決定し、公開済みのニワトリのpIgRmRNA配列(Wieland、2004年)と同一であることが分かった。
【0228】
HG中でのpIgRの発現が涙液中のポリマーIgAの分泌をもたらしたことを確認するために、涙液と血清IgAの両方の免疫沈降を実施した。この手順によって単離したタンパク質はSDS-PAGEで分析し、製造者のプロトコル(Pierce、Rockford、IL)に従いSilver SNAP(登録商標)銀染色キットを使用して目に見える状態にした(図17)。3つの異なる大きさのタンパク質を、ニワトリIgAに対するマウスモノクローナル抗体を用いて沈降させた。最小タンパク質は約200〜230kDaの推定分子量を有しており、これは二本の軽鎖と二本の重鎖で構成されるモノマーIgA(mIgA)分子と一致した。涙液と血清タンパク質中のmIgAの量の明らかな違いを観察した。mIgAは血清中ではIgAの最も優勢な型であり、涙液中では最も少ない型である。約470kDaの推定MWを有する次いで高分子量(MW)のタンパク質は涙液中に最も多量に存在するタンパク質であり、血清中では最も少ないタンパク質である。このタンパク質は大きさに基づくと(Wieland、2004年;Watanabe、1975年;Watanabe、1974年)、pIgRの分泌成分(SC)と結合したジマーIgAであった。沈降した最大のタンパク質は大きさに基づくと(Watanabe、1975年;Watanabe、1974年)、おそらく約710kDaの推定MWを有するテトラマーIgA(tIgA)であった。tIgAは涙液と血清の両方において豊富であった。このデータは、モノマーIgAは血清中で最も優勢であり、一方ジマーIgAは涙液などの粘膜分泌物中で最も優勢であったことを実証した。このシナリオは哺乳動物中で観察したのと同一であった。
【0229】
したがって、これらの結果は、ヒト複製欠損AdTW68.H5ckワクチンベクターは1)眼部曝露時にHGの細胞に効率よく形質導入し、これによって2)全身性と粘膜免疫応答の両方をもたらしたことを実証する。さらに、これはELISPOTアッセイを使用したニワトリHGにおける抗体分泌細胞の最初の定量分析、ニワトリにおけるIgAのELISPOTの使用に関する最初の報告である。H5トランス遺伝子とAd5ベクターの両方に対するIgGおよびIgA応答の誘導を観察した。これを、HGがpIgRを発現し涙液中に主にpIgAを分泌したという発見と組み合わせて、全身性と粘膜区画の両方において病原体に対する防御免疫応答を生成するHGの重要性を確認した。
【0230】
どのようにしてヒトAd5ベクターをニワトリ細胞に形質導入するかという問題は依然解決されていない。ニワトリは、野生型ヒトAd5は鳥類病原体ではないという事実に基づいて、Ad5ファイバーknobと相互作用することが知られている(Bergelson、1997年)従来のコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)を発現しないと考えられる。CAR受容体を介した機構以外の、細胞に形質導入するためのAd5の他の機構が提案されている。例えば、MHCクラスIは、Ad5の取り込みに関与する可能性があるCARミモトープを含有することができる(Hong、1997年)。さらに、ペントン塩基タンパク質は、αv-インテグリンによるアデノウイルスの内在化を促進するRGDモチーフを有する(Wickham、1993年;Davison、2001年)。インテグリンがCAR受容体の不在下でのAd5によるニワトリ細胞の形質導入において役割を果たすかどうかは、短いシャフトのアデノウイルスに関して報告されたように(Roelvink、1998年)知られていない。これらの細胞上でのCAR受容体発現の欠如のため、比較的低い有効性でin vitroにおいて樹状細胞(DC)にAd5を形質導入した(Okada、2001年、Rea、1999年)。皮内送達後DCに形質導入するそれらの能力に関して(CD46を介してDCを標的化することが知られている)Ad5とAd35を比較した近年の試験は、Ad35はDCに形質導入する際にAd5より約2倍有効であったが、しかしながら、CD83+成熟DCを含めた相当な割合のDCがAd5により形質導入されたことを実証した(de Gruijl、2006年)。適応免疫応答の強力な誘導物質として機能するDCの能力を考慮して、本発明者らは、CAR受容体の不在下での、ニワトリにおける仮定シナリオ、Ad5はDCをより標的化する傾向があり得ると推測した。DCの標的化は、Ad5特異的免疫応答の追加抗原刺激によってさらに増大することができる。なぜなら初回抗原刺激中に誘導されるAd5に対するIgG抗体は、Ad5をオプソニン化し、それらをDC上のCD64+(高親和性Fcγ-R1受容体)に向けることができるからである。Ad5ベクターをCD64に向ける試験は、非修飾Ad5と比較してヒトDC形質導入の10〜15倍の増大を実証した(Sapinoro、2007年)。この文脈で、眼部Ad5-H5投与後HG中のH5発現細胞は、HGの排出管を広範囲で内側を覆う可能性があることは興味深く、同様の分布がニワトリのHGにおけるCD83+DCに関して近年報告された(Hansell、2007年)。
【0231】
ニワトリにおけるB細胞ELISPOTアッセイに関してわずか2つの刊行物が刊行されている。第一の刊行物は家禽産業科学の研究論文として1998年に刊行され、脾臓中の伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス(IBDV)に特異的なIgGおよびIgMスポット形成細胞(SFC)を実証し(Wu、1998年)、ELISPOTはニワトリ中での免疫応答を詳細に分析するのに貴重で高感度なツールであるという概念を証明した。第二の刊行物はさらに精巧な試験であり、その中で、末梢血単核細胞および脾臓における伝染性気管支炎ウイルス特異的IgGSFCの動態のより詳細な分析が実施された(Pei、2005年)。本発明者らの分析は、HGにおいてAd5およびAIH5に特異的なIgGとIgASFCの両方に関する。ニワトリにおけるIgASFCの以前の分析は報告されておらず、HGにおいて誘導されたSFCの如何なる分析も存在しない。HGにおけるAd5-H5誘導型H5特異的IgAおよびIgG応答は、Ad5特異的応答より約2.5倍高かった。HGにおけるIgGSFC応答はH5およびAd5に対するIgASFC応答より約3倍高かった。ある程度のIgGSFC応答は血液由来リンパ球に由来したと考えられるので、本発明者らはリンパ球の単離前にPBSでHGを灌流しなかった。それにもかかわらず、強いIgG応答をHGにおいて観察し、これは涙液中のAd5特異的IgG抗体レベルによっても示された。Ad5特異的応答と比較したH5特異的抗体SFC応答の2日間の遅延は、Ad5ベクターへの曝露とH5トランス遺伝子の発現の間に遅延がある証拠となり得る。何故この遅延が起こるのか、およびこの観察結果がAd5を使用してマウスで示された観察結果(van Ginkel、1995年)と異なるかは明らかでない。これがニワトリ細胞のAd5ベクターによる感染経路と関係があるかどうかは、依然決定されていない。
【0232】
IBV特異的涙液IgAレベルは、眼部IBV攻撃に対する耐性のレベルと関係がある(Toro、1994年)。これは病原体への曝露に対する粘膜表面の防御に関する、涙液中でのIgA抗体の重要性を示す。実用的観点から、これらの発見は関連がある。それらは、卵内ワクチン接種後にニワトリを効率よく防御することが以前に報告されたのと同じアデノウイルス組換え技術を用いて、AIに対して既存の(成体)ニワトリ集団をワクチン接種する実現性を証明するからである。
【0233】
鳥類J鎖はクローニングされており、HGB細胞中で発現されることは実証されているが(Takahashi、2000年)が、涙液由来IgAの分子組成の限られた分析が存在する。Watanabeらは、約650kDaの分子量を有するテトラマーIgA(tIgA)の涙液中での分泌、およびこのtIgAはポリマー免疫グロブリン受容体(pIgR)の分泌成分(SC)と結合しなかったことを報告した(Watanabe、1975年)。腸はその中でIgA分泌がSCと関係があった唯一の器官であった(Wieland、2004年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)。このポリマーIgA(pIgA)の分子量は350と500kDaの間であると推定された(van Ginkel、1995年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)。ニワトリpIgRのクローニングは、ノーザンブロット分析によるpIgRのmRNAの実証を可能にした。mRNAは腸内で発現されただけでなく、Fabriciusの肝臓、胸腺および嚢内でも発現された。以前の報告(Watanabe、1975年)と反対に、SCは胆汁由来IgAと結合することも実証された(Wieland、2004年)。ニワトリの涙液および血清由来の免疫沈降IgAの分析に基づくと、少なくとも3つの異なる型のIgAがニワトリにおいて存在する。分子量に基づくと、モノマー型のIgAは血清中では最も優勢な型であり、涙液中にはほとんど存在しない。分子量に基づいてSCとおそらく関係があるジマーIgAは、血清と比較したとき涙液中で最も優勢な型であった。最後に、マルチマー、おそらくtIgAは、涙液と血清中の両方にほぼ等しいレベルで存在した。
【0234】
さらに、ニワトリのHG中でpIgRの発現が起こったことがRT-PCRによって実証された。HG中でのpIgR発現の欠如によってニワトリ中でのpIgRの機能が疑問視された可能性がある。この発見は、粘膜上皮を越えた涙液中へのpIgAの輸送に関するpIgRの役割、血清中ではなくニワトリの粘膜分泌液中でのpIgAの高い分布と一致する。血清中ではモノマーIgA(mIgA)が優勢である。この同じシナリオは哺乳動物中で見られた。したがって、ニワトリIgAにおけるヒンジ領域、哺乳動物中でタンパク質分解を最も受けやすい領域の欠如(Mansikka、1992年)が、粘膜分泌液中のSCとpIgAの結合を変えることはなかった。SCとの結合が鳥類pIgAにプロテアーゼに対する一層の防御をもたらさなかった場合、その唯一の役割は上皮を越えたpIgAの輸送であったかどうかという問題が提議された。ジマーIgAとペンタマーの哺乳動物IgMの両方がpIgRにより粘膜上皮を越えて輸送されたことは、この文脈では興味深かった。ペンタマーIgMは正確な構築にJ鎖を必要とし、一方ヘキサマーIgMはJ鎖を含有していなかった(Randall、1990年、Wiersma、1998年)。J鎖は哺乳動物と比較したときニワトリ中で高度に保存されており(Takahashi、2000年)、pIgRとの相互作用に重要であった2つの保存領域を含有した(Braathen、2007年)。ヘキサマーIgM中のJ鎖の欠如によって、J鎖含有ペンタマーIgMより補体結合反応が約20倍を超えて効率よくなる(Randall、1990年、Wiersma、1998年)。したがって、SCと組み合わせたJ鎖はポリマー抗体と結合して、粘膜表面での補体の活性化、炎症および関連組織の損傷を妨げたと仮定することができた。これらの機能は、哺乳動物IgAは補体を活性化する際に本来乏しかったので、IgAよりIgMに重要である可能性がある。これらの抗体が鳥類の粘膜表面で同様の役割を果たすかどうかに関するデータは入手不能であった。
【0235】
ニワトリの血清と涙液の両方において見られたtIgAは、異なる研究者によって報告された(Kobayashi、1980年、Watanabe、1975年、Watanabe、1974年)、SCを含有しないことが報告された(Kobayashi、1980年、Watanabe、1975年)ニワトリ中の胆汁および涙液由来IgAに関する大きさの違いを説明することができる。ヒトの粘膜分泌液中のIgAはテトラマーおよびトリマー型も含有したが、これらの型はpIgRと結合し、この受容体のSCを含有した(Song、1995年)。ニワトリのIgAはこの点で哺乳動物のIgAと異なり、かつどのようにしてtIgAがニワトリの涙液、胆汁および唾液などの粘膜分泌液中に輸送されるかに関する機構は、さらなる分析を必要とすると考えられる。さらにこれらのデータは、眼部曝露後に粘膜と全身両方の免疫をもたらすHGの重要性、およびヒトAd5ベクターワクチンによる鳥類病原体に対する成体ニワトリの点眼ワクチン接種の実現性の証拠を実証した。
【0236】
本発明の実施形態をこのように詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明は、本発明の精神または範囲から逸脱せずにその多くの明らかな変更形態が考えられるので、前の記載中に述べた特定の詳述によって制限されないことは理解されよう。
【0237】
ここで本発明を、以下の番号付きパラグラフによってさらに記載する。
1. 動物中の免疫応答を誘導する方法であって、防御免疫応答が動物中で誘導されるように有効量の免疫原性またはワクチン組成物を投与するステップを含み、投与がエアゾールスプレーによる方法。
2. 免疫原性またはワクチン組成物が、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、パラグラフ1に記載の方法。
3. アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、パラグラフ2に記載の方法。
4. アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、パラグラフ2に記載の方法。
5. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ4に記載の方法。
6. プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、パラグラフ2に記載の方法。
7. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ2に記載の方法。
8. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、パラグラフ7に記載の方法。
9. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ7に記載の方法。
10. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ7に記載の方法。
11. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ7に記載の方法。
12. 獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのエアゾールスプレー送達用の免疫原性組成物またはワクチン。
13. アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
14. アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
15. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ14に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
16. プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
17. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
18. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
19. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
20. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ19に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
21. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3および5からなる群から選択される、パラグラフ20に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
22. アジュバントをさらに含む、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
23. 追加のワクチンをさらに含む、パラグラフ12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
24. 鳥類対象において鳥インフルエンザに対する免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量のパラグラフ12から23のいずれか一項に記載の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法。
25. 鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現され、免疫原性組成物がエアゾールスプレーにより投与される方法。
26. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ25に記載の方法。
27. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ25に記載の方法。
28. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ27に記載の方法。
29. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ28に記載の方法。
30. 追加のワクチンをさらに含む、パラグラフ25に記載の方法。
31. 鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスをエアゾールスプレー投与するステップを含む方法。
32. ヒトアデノウイルスがアデノウイルス血清型5由来の配列を含む、パラグラフ31に記載の方法。
33. ヒトアデノウイルスが複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、パラグラフ31に記載の方法。
34. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ33に記載の方法。
35. 鳥類の病原体の抗原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ31に記載の方法。
36. 鳥類の病原体の抗原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ35に記載の方法。
37. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ36に記載の方法。
38. 鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ36に記載の方法。
39. 追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、パラグラフ31に記載の方法。
40. 1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置であって、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する装置。
41. ヒトアデノウイルス発現ベクターが、アデノウイルス血清型5由来の配列を含む、パラグラフ40に記載の装置。
42. ヒトアデノウイルス発現ベクターが、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、パラグラフ40に記載の装置。
43. アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、パラグラフ40に記載の装置。
44. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、パラグラフ40に記載の装置。
45. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、パラグラフ40に記載の装置。
46. 目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、パラグラフ40に記載の装置。
47. 目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、パラグラフ40に記載の装置。
48. 追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、パラグラフ40に記載の装置。
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物中の免疫応答を誘導する方法であって、防御免疫応答が動物中で誘導されるように有効量の免疫原性またはワクチン組成物を投与するステップを含み、投与がエアゾールスプレーによる方法。
【請求項2】
免疫原性またはワクチン組成物が、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのエアゾールスプレー送達用の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項13】
アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項14】
アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項15】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項14に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項16】
プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項17】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項18】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項19】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項20】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項19に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項21】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3および5からなる群から選択される、請求項20に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項22】
アジュバントをさらに含む、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項23】
追加のワクチンをさらに含む、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項24】
鳥類対象において鳥インフルエンザに対する免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量の請求項12から23のいずれか一項に記載の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法。
【請求項25】
鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現され、免疫原性組成物がエアゾールスプレーにより投与される方法。
【請求項26】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
追加のワクチンをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスをエアゾールスプレー投与するステップを含む方法。
【請求項32】
ヒトアデノウイルスがアデノウイルス血清型5由来の配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ヒトアデノウイルスが複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
鳥類の病原体の抗原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
鳥類の病原体の抗原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置であって、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する装置。
【請求項41】
ヒトアデノウイルス発現ベクターが、アデノウイルス血清型5由来の配列を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
ヒトアデノウイルス発現ベクターが、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項40に記載の装置。
【請求項45】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項40に記載の装置。
【請求項46】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項40に記載の装置。
【請求項47】
目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項40に記載の装置。
【請求項48】
追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、請求項40に記載の装置。
【請求項1】
動物中の免疫応答を誘導する方法であって、防御免疫応答が動物中で誘導されるように有効量の免疫原性またはワクチン組成物を投与するステップを含み、投与がエアゾールスプレーによる方法。
【請求項2】
免疫原性またはワクチン組成物が、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
獣医学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、およびアデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む、鳥類対象へのエアゾールスプレー送達用の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項13】
アデノウイルスDNA配列がアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項14】
アデノウイルスDNA配列が複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項15】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項14に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項16】
プロモーター配列がウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、延長因子1-α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項17】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項18】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が1つまたは複数の鳥ウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項19】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項20】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項19に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項21】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3および5からなる群から選択される、請求項20に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項22】
アジュバントをさらに含む、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項23】
追加のワクチンをさらに含む、請求項12に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項24】
鳥類対象において鳥インフルエンザに対する免疫原性応答を誘発する方法であって、免疫学的に有効な量の請求項12から23のいずれか一項に記載の組成物を鳥類対象に投与するステップを含む方法。
【請求項25】
鳥類対象において免疫原性応答を誘発する方法であって、アデノウイルスDNA配列、および目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列と作用可能に連結したプロモーター配列を含み発現する、組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的に有効な量の免疫原性組成物を鳥類対象に感染させるステップを含み、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象において、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原に対する免疫原性応答を誘発するのに十分なレベルで発現され、免疫原性組成物がエアゾールスプレーにより投与される方法。
【請求項26】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
追加のワクチンをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
鳥類対象の接種のための方法であって、鳥類対象の病原体の抗原をコードする異種核酸分子を含有し発現する組換えヒトアデノウイルスをエアゾールスプレー投与するステップを含む方法。
【請求項32】
ヒトアデノウイルスがアデノウイルス血清型5由来の配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ヒトアデノウイルスが複製欠損アデノウイルス、非複製アデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
鳥類の病原体の抗原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
鳥類の病原体の抗原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
1羽または複数羽の鳥類に免疫原性組成物を送達するためのエアゾールスプレー投与装置であって、目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含有し、組換えヒトアデノウイルスを1羽または複数羽の鳥類に送達する装置。
【請求項41】
ヒトアデノウイルス発現ベクターが、アデノウイルス血清型5由来の配列を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
ヒトアデノウイルス発現ベクターが、複製欠損アデノウイルス、非複製ヒトアデノウイルス、複製可能アデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
アデノウイルスDNA配列がE1/E3欠失状態である、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリーキウス嚢病ウイルス、マレック病ウイルス、鳥類ヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥レオウイルス、鳥ポックスウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、鳩痘ウイルス、ウズラポックスウイルス、およびハト痘ウイルス、鳥類ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鳥ニューモウイルス、鳥類鼻気管炎ウイルス、鳥類網膜内皮症ウイルス、鳥類レトロウイルス、鳥類内因性ウイルス、鳥類赤芽球症ウイルス、鳥類肝炎ウイルス、鳥類貧血ウイルス、鳥類腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、鳥白血病ウイルス、鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス、鶏白血病ウイルス、鳥類筋腱膜性線維腫症ウイルス、鳥骨髄芽球症ウイルス、鳥骨髄芽球症関連ウイルス、鳥骨髄球腫症ウイルス、鳥肉腫ウイルス、または鳥脾臓壊死ウイルスに由来する、請求項40に記載の装置。
【請求項45】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原が鳥インフルエンザウイルスに由来する、請求項40に記載の装置。
【請求項46】
目的の1つまたは複数の鳥類抗原または免疫原をコードする外来配列が、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質、他の外部タンパク質、核タンパク質、マトリクス、ノイラミニダーゼ、および酵素などの非構造タンパク質および他の制御タンパク質をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項40に記載の装置。
【請求項47】
目的の鳥インフルエンザ抗原または免疫原が、ヘマグルチニン亜型3、5、7、および9からなる群から選択される、請求項40に記載の装置。
【請求項48】
追加のワクチンを投与するステップをさらに含む、請求項40に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−504140(P2012−504140A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529315(P2011−529315)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/058617
【国際公開番号】WO2010/037027
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(597158986)オーバーン・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】Auburn University
【出願人】(507388384)ヴァクシン インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VAXIN, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/058617
【国際公開番号】WO2010/037027
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(597158986)オーバーン・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】Auburn University
【出願人】(507388384)ヴァクシン インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VAXIN, INC.
【Fターム(参考)】
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