説明

非複製性ベクターワクチン投与による鳥類への免疫方法

一般的に、本発明は、免疫学およびワクチン技術の分野に関する。より特定すると、本発明は、鳥類の免疫原および抗原を輸送するための組換えヒトアデノウイルスベクターに関し、たとえば、鳥類の体内に鳥インフルエンザを輸送するなどである。また、本発明は、鳥類の胚を含む鳥類の体内に鳥類免疫原を導入し、発現させる方法、ならびに鳥類免疫原に対する免疫学的応答を鳥類体内で誘起する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年8月15日出願の米国仮特許出願第60/708,524号について優先権を主張し、ここに参照することによりそのすべてを本願に援用する。
【0002】
さらに、2002年1月18日出願の米国特許出願第10/052,323号、2002年4月5日出願の米国特許出願第10/116,963号、2003年1月16日出願の米国特許出願第10/346,021号、および米国特許第6,706,693号、第6,716,823号、第6,348,450号、ならびに1998年8月13日出願の国際特許出願第PCT/US98/16739号に関しても、ここに参照することによりそのすべてを本願に援用する。
【0003】
これらの出願、特許、および本明細書中に引用している各文献、ならびに、これらの出願、特許および文献中に引用されている各文献(「出願引用文献」)、出願引用文献中で参照もしくは引用されている各文献(明細書中または、出願および特許の訴訟中のいずれであっても)、さらに、それらの訴訟中において提出される、特許性を裏付けする全ての意見書について、ここに参照することによりそのすべてを本願に援用する。
【技術分野】
【0004】
一般的に、本発明は、免疫学およびワクチン技術の分野に関する。より特定すると、本発明は、組換え非複製性ベクターに関し、そのようなものとしては、例えば、鳥インフルエンザ抗原などの鳥類の免疫原および抗原を鳥類の体内に輸送するためのE1欠損ヒトアデノウイルスベクターなどが挙げられる。また、本発明は、鳥類の体内(鳥類の胚を含む)に鳥類免疫原を導入し、発現させる方法、さらに、免疫原に対して鳥類の体内で免疫応答を誘起させる方法に関する。
【背景技術】
【0005】
鳥インフルエンザ(AI)は、鳥類、他の動物およびヒトに感染する重篤な病原体である。1997年以降、AIウイルスのヒトへの伝播が数回発生している(スバラオ(Subbarao)ら、1998年;ウンシュサック(Ungchusak)ら、2005年)。医学史上、鳥およびヒトのインフルエンザウイルス間で遺伝子組み換えが複数回起こっていることについても証拠が示されている(カワオカ(Kawaoka)ら、1989年)。鳥類とヒトとの接触が密であることから、種の壁を越えてヒトに侵入できる新型AIウイルス株の発生は、引き続き公衆衛生上の不安材料だと考えられている。
【0006】
鳥類に対する大規模ワクチン接種は、AIウイルスの伝染を防ぎ、ヒトでの大流行(pandemics)の危険性を減らすための最も有効な方法だと見なされている。不活化全ウイルスワクチンを用いた鳥類へのワクチン接種は、過去数年にわたっていくつかの国で実施されている。これらのAIワクチンは、ウイルス感染卵から採取した羊膜尿膜液(amnio-allantoic fluid)から調製し、その後、ホルマリンまたはβ−プロピオラクトンで不活化したものである(トリス(Tollis)およびディトラーニ(DiTrani)、2002年)。しかしながら、新型AIウイルス株の予期しない発現、ニワトリ胚に対する高致死型へのAIウイルスの進化(ウッド(Wood)ら、2002年)、およびバイオテロリストによる致死性AI株の播種の可能性などから、安全かつ有効なAIワクチンの迅速開発および適宜供給は、きわめて重要だが非常に困難な課題となっている。さらに、不活化AIウイルスをこれまでに接種したニワトリから、同一株に野外感染した個体を区別することは不可能である(ノーミル(Normile)、2004年)。
【0007】
AIウイルスの赤血球凝集素(HA)をコードしている鶏痘ウイルスの実験組換え体は、赤血球凝集素阻害(HI)の血清学的応答はなかったものの、ニワトリの翼膜(wing-web)穿刺後のH5N2 AIウイルスチャレンジに対し、ニワトリを防御した(ビアード(Beard)ら、1992年)。HAを発現する、生きた組換えワクシニアウイルスを翼膜に接種したニワトリも、検出された血清HI抗体のレベルは低かったが、致死的AIウイルスチャレンジに対して防御免疫を発揮した(チャンバース(Chambers)ら、1988年)。消化管向性を有する水鳥起源のAI単離株は、経口AIワクチンとしてニワトリに接種されているが(クロウフォード(Crawford)ら、1998年)、この型のウイルスは本質的に活発に進化することから、該単離株については、新型AIウイルス株に対する広範な有効性を期待できない。
【0008】
鳥類に対しては、昆虫ベクターで発現させたHAタンパク質を皮下注射する(クロウフォード(Crawford)ら、1999年)、および遺伝子ガンを用いて皮膚内にHAをコードしている発現プラスミドを接種する(フィナン(Fynan)ら、1993年)ことによっても免疫が行われている。これらのAIワクチンは、臨床的兆候および死から鳥類を保護でき、相同HAを含むチャレンジウイルスの気道および腸内での複製を抑制できる。ニューカッスル病ウイルスベクター由来のHA発現廉価エアロゾルAIワクチン(スワイン(Swayne)、2003年)または、非病原性インフルエンザウイルス骨格を有する組換えインフルエンザウイルスが有効であるという証拠もある(リー(Lee)ら、2004年;ウェッビー(Webby)ら、2004年)。
【0009】
上記のワクチンの大多数は、非常に人手のかかる非経口送達によるものである。経口およびエアロゾルAIワクチンは、大量接種中に個々の個体に均一量を送達することにおける不均一性が克服できない。いくつかのワクチンで使用されている複製ベクターもまた、環境に非天然型微生物を導入することによる生物学的危険性を有している。組換えインフルエンザウイルスワクチンは、環境中に同時に循環している再集合体インフルエンザウイルスと野生型AIウイルスとの間の組換えを介して、毒性のある遺伝子の混ぜ合わせすら生じる可能性がある(ヒルマン(Hilleman)、2002年)。
【0010】
ワクチンキャリヤーとして組換えアデノウイルス(「Ad」)ベクターを使用することに関しては、いくつかの重要な理由がある。Adベクターは、その場(in situ)で分裂前および分裂後の細胞に形質導入できる。さらに、高力価(すなわち、1012pfu(プラーク形成ユニット)/ml以上)のウイルスを含むAdストックの調製が容易であることから、その場での細胞形質導入が高感染多重度(MOI)で行える。また、Adベクターはワクチンとしての長期間にわたる使用に基づき、安全であることが証明されている。さらに、Adウイルスは、少なくとも初期バーストにおいては、高レベルの遺伝子発現を誘導でき、複製欠損Adベクターは、当該分野において既知の技術を用いることにより、容易に生体操作し、製造し、保存できる。
【0011】
Adに基づくワクチンは、特異的レセプターに対する該ワクチンの高親和性およびエンドソーム経路への逃避能から、DNAワクチンよりも強力である(キュリエール(Curiel)、1994年)。Adベクターは、ニワトリ細胞の表面に見出されるコクサッキーおよびアデノウイルスレセプター(CAR)に該ベクターのファイバーを結合させることにより、ニワトリ胚に部分的に形質導入する(タン(Tan)ら、2001年)。さらに、Ad構成要素の少なくともひとつであるヘキソンは免疫原性が高く、外来性抗原に対してアジュバント活性を付与できる(モリニール−フレンケル(Molinier-Frenkel)ら、2002年)。
【0012】
Adに基づくワクチンは、自然感染の効果を模倣し、主要組織適合コンプレックス(MHC)クラスIによって規定されるT細胞応答を誘導できるが、病原体のゲノムのサブフラグメントのみがベクターから発現されることから、毒性反転の可能性は排除されている。この「選択的発現」により、感染動物からワクチン接種非感染動物を区別するという問題を解決できる。なぜならば、ベクターによってコードされていない病原体の特異的マーカーを用いて2つの事象を識別できるからである。注目すべき点は、ベクターワクチンの調製には病原体の増幅は不要であることであり、これは、適切な抗原遺伝子は、野生サンプルから直接増幅、クローニングできるからである(ラジャクマール(Rajakumar)ら、1990年)。このことは、高毒性AI株(例えば、H5N1など)の産生においては特に重要であるが、それは、この株が非常に危険で増殖が困難だからである(ウッド(Wood)ら、2002年)。上記の分類に加え、家禽産業における商業的懸念因子も重要である。現行のAIワクチン単独の価格は1羽当たり約7セントであるが、これには、走り回る鳥に注射する労働力は加算されていない(ノーミル(Normile)、2004年)。
【0013】
複製不全E1/E3欠損ヒトAd血清型5型(Ad5)由来のベクターは、ほ乳類において広く研究されている(グラハム(Graham)およびプレヴェック(Prevec)、1995年)。ニワトリに対しては、抗原をコードしている鳥類Ad鶏胚致死性希少疾病(CELO)ウイルスベクターを皮下または皮内に注射することによって免疫を行っているが(フランシス(Francois)ら、2004年)、CELOベクターはコンプライアンス率が低く、また、ニワトリ細胞内で複製できることから、毒性の可能性がある。CELOはE1、E3およびE4領域を有するが、確認できていない(チョッカ(Chiocca)ら、1996年)ことから、複製不全CELOベクターは、現時点では免疫用キャリヤーとしては利用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、広範囲の疾病において鳥類を保護し、同時に、鳥類の病原体のヒトへの伝播を防御することを目的とし、安全かつ効率的な遺伝子送達法を提供することによってこの要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ヒトアデノウイルスベクターワクチンを筋肉内および卵内に送達することにより、迅速、安全かつ効果的に鳥類を免疫できるという驚くべき事実が示されている。数種の鳥類病原体に対する鳥類の集団免疫は、膨大な経済的損失を防ぎ、かつ、鳥インフルエンザウイルスなどの鳥類病原体のヒトへの伝播を妨害するために重要である。機械仕掛けのインジェクターを用いたワクチンもしくは免疫学的組成物の卵内送達は、時宜を得て、鳥類を集団免疫するための労働力のかからない方法である。他の卵内鳥類ワクチンとは異なり、ヒトアデノウイルスベクターワクチンもしくは免疫原性組成物の調製においては、致死性病原体の増殖は不要であり、また、鳥類の体内で複製可能なベクターによる抗原もしくは免疫原の輸送は行わない。さらに、この型のワクチンもしくは免疫学的組成物を用いて免疫することにより、ワクチン接種個体と自然感染個体とを区別できる。
【0016】
ひとつの態様では、本発明は組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを提供し、そのようなベクターは、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原もしくは免疫原をコードしている外来配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を含み、かつ発現する。
【0017】
好ましくは、ヒトアデノウイルス性配列は、ヒトアデノウイルス血清型5型由来である。ヒトアデノウイルス性配列は、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルスまたは野生型アデノウイルス由来である。
【0018】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β−アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1−αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターおよびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群より選択できる。
【0019】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス(感染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルスなど)、トリレオウイルス、ポックスウイルス類(例えば、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘などを含む)、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病(Pacheco's disease)ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0020】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわち、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼ由来である。
【0021】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は3型、5型、7型もしくは9型の赤血球凝集素亜型由来である。
【0022】
本発明の別の態様は、鳥類対象へインビボ送達するための免疫原性組成物またはワクチンを提供し、それらは、獣医学的に許容されるビヒクルもしくは賦形剤、ならびに、アデノウイルス性DNA、および、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されたプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む。
【0023】
好ましくは、アデノウイルス性DNA配列は、アデノウイルス血清型5型(Ad5)由来である。
【0024】
好ましくは、ヒトアデノウイルス性配列は、ヒトアデノウイルス血清型5型由来である。ヒトアデノウイルス性配列は、複製欠損アデノウイルス由来である。
【0025】
プロモーター配列は、ウイルスプロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β−アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、EF1−αプロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターおよびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群より選択できる。
【0026】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス(伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝感染性気管支炎ウイルスなど)、トリレオウイルス、ポックスウイルス類(例えば、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘などを含む)、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0027】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、鳥インフルエンザ、すなわち、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼ由来である。
【0028】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、3型、5型、7型もしくは9型の赤血球凝集素亜型由来である。
【0029】
免疫原性組成物もしくはワクチンは、アジュバントを追有する場合がある。
【0030】
免疫原性組成物もしくはワクチンは、さらにワクチンを追有する場合がある。
【0031】
本発明の別の態様は、ひとつもしくはそれ以上の鳥類抗原または免疫原を細胞内に導入する方法を提供し、該方法は、アデノウイルス性DNA、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されたプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターに細胞を接触させ、さらに、該細胞内でひとつもしくはそれ以上の鳥類抗原または免疫原を発現させるのに十分な条件下において細胞を培養することを含む。
【0032】
好ましくは、細胞は、293細胞またはPER.C6細胞である。
【0033】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0034】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来である。
【0035】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、鳥インフルエンザ由来である。
【0036】
さらに好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0037】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0038】
本発明の別の態様では、ひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を鳥類胚内に導入する方法を提供し、該方法は、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されたプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターに鳥類胚を接触させ、それによって、該鳥類胚内でひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を発現させることを含む。
【0039】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来である。
【0040】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、鳥インフルエンザ由来である。
【0041】
さらに好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0042】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0043】
鳥類胚内にひとつもしくはそれ以上の鳥類抗原または免疫原を導入し、かつ発現させるための方法は、卵内送達によって実施できることが好ましい。
【0044】
本発明の別の態様では、鳥類対象内で免疫学的応答を誘起する方法を提供し、該方法は、本発明に従う組成物の免疫学的有効量を鳥類対象に投与することを含む。
【0045】
さらに本発明の別の態様では、鳥類対象内で免疫学的応答を誘起する方法を提供し、該方法は、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されたプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的組成物の免疫学的有効量を用いて鳥類対象に感染させることを含み、ここで、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、鳥類対象内でひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原に対して免疫学的応答を誘起するのに十分なレベルで発現される。
【0046】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0047】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、鳥インフルエンザ由来である。
【0048】
さらに好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0049】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0050】
前記の方法は、更なるワクチンの投与を追有する場合がある。
【0051】
好ましくは、感染法は、卵内送達によって行う。
【0052】
本発明の別の態様では、鳥類対象内で免疫学的応答を誘起する方法を提供し、該方法は、本発明に従う組成物の免疫学的有効量を鳥類対象に投与することを含む。
【0053】
さらに本発明の別の態様では、鳥類対象内で免疫学的応答を誘起する方法を提供し、該方法は、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されたプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的組成物の免疫学的有効量を用いて鳥類対象に感染させることを含み、ここで、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、鳥類対象内でひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原に対して免疫学的応答を誘起するのに十分なレベルで発現される。
【0054】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0055】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、鳥インフルエンザ由来である。
【0056】
さらに好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0057】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0058】
前記の方法は、更なるワクチンの投与を追有する場合がある。
【0059】
好ましくは、翼膜、翼端、胸筋、腿筋組織への筋肉内投与によって鳥類対象を感染させる。
【0060】
鳥類対象は、卵内で感染させることもできる。
【0061】
本発明の別の態様では、鳥類対象への接種法を提供し、該方法は、鳥類対象の病原体抗原をコードしている異種核酸分子を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルスの卵内投与を含む。
【0062】
好ましくは、ヒトアデノウイルスは、アデノウイルス血清型5型由来の配列を含む。
【0063】
好ましくは、ヒトアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルスまたは野生型アデノウイルス由来の配列を含む。
【0064】
好ましくは、鳥類病原体は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0065】
より好ましくは、鳥類病原体抗原は、鳥インフルエンザ由来である。
【0066】
より好ましくは、鳥インフルエンザ抗原もしくは免疫原は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0067】
より好ましくは、鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0068】
前記の方法は、更なるワクチンの投与を追有する場合がある。
【0069】
別の実施態様においては、本発明は、鳥類胚に免疫学的組成物を送達するための卵内投与装置を提供し、該装置は、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含んでおり、このとき、該装置は組換えヒトアデノウイルスを鳥類胚に送達する。
好ましくは、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、アデノウイルス血清型5型由来の配列を含む。
【0070】
好ましくは、ヒトアデノウイルス発現ベクターは、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルスまたは野生型アデノウイルス由来の配列を含む。
【0071】
好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原は、例えば、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾患ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性口咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリア痘、鳩痘、ウズラ痘、鳥ポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルスなどに由来する。
【0072】
より好ましくは、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または病原体は、鳥インフルエンザ由来である。
【0073】
より好ましくは、鳥インフルエンザ抗原もしくは免疫原は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択される。
【0074】
より好ましくは、目的の鳥類抗原または免疫原は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択される。
【0075】
前記の方法は、更なるワクチンの投与を追有する場合がある。
【0076】
これらおよびその他の実施態様が開示されており、あるいは、以下の発明の詳細な説明の項から明らかであり、かつ導き出せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
本明細書においては、「含む」、「含んでいる」(conprise,comprising,containing)および「有する」(having)などは、米国特許法に記載されている意味を有しており、さらに、「含む」、「含んでいる」(include,including)の意味であり;同様に、「基本的に含んでいる」もしくは「基本的に含む」(consisting essentially of,consists essentially)などは、米国特許法に記載されている意味を有しており、無制限であって、列挙されている以上の例によって、例示されているものの基本的もしくは新規な特徴が変えられない限りは、当該分野の以前の実施態様を除いて、列挙されている以上の例の存在を許容する。
【0078】
「核酸」または「核酸配列」という語は、単鎖型または二本鎖型のデオキシリボ核酸オリゴヌクレオチドまたはリボ核酸オリゴヌクレオチドを指す。この語は、核酸、すなわち、天然のヌクレオチドの既知のアナログを含むオリゴヌクレオチドを包含する。また、合成骨格を有する核酸様構造物も包含する。エクステイン(Eckstein)、1991年;バサーガ(Baserga)ら、1992年;ミリガン(Milligan)、1993年の各非特許文献;国際特許出願公開第97/03211号;同第96/39154号の各パンフレット;マタ(Mata)、1997年;ストラウス−ソークアップ(Strauss-Soukup)、1997年;およびサムスタッグ(Samstag)、1996年の各非特許文献などを参照。
【0079】
本明細書において使用している「組換え」とは、インビトロで合成または操作されたポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」など)を指し、組換えポリヌクレオチドを使用して細胞もしくはその他の生体系内で遺伝子産物を産生させる方法を指し、あるいは、組換えポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え手法」とは、別異の起源に由来する多様なコード領域もしくはドメインもしくはプロモーター配列を有する核酸を発現カセットまたは発現用ベクター(例えば、本発明に従うベクター内のポリペプチドコード配列の誘導性または構成性発現用など)に連結することも包含する。
【0080】
「異種」という語は、核酸に対して使用する場合には、通常は天然に存在しない細胞もしくはウイルス内にある核酸を指し;あるいは、通常は天然では見出されない関係にある2つもしくはそれ以上の配列を含み、あるいは、発現レベルまたは細胞内もしくは構造内での他の核酸もしくは他の分子に対する物理的関係が通常天然では見出されないものになるように組換え操作されたものを指す。この文章中で使用されている類義語は「外来性」である。例えば、一般的には、異種核酸は組換えによって産生され、無関係な遺伝子由来の2つもしくはそれ以上の配列が天然には見出されない様式で配置されている。例えば、本発明に従うアデノウイルスベクターに挿入されたプロモーター配列に機能発揮できるように連結されたヒト遺伝子などが挙げられる。例えば、目的の異種核酸は免疫原性遺伝子産物をコードしており、このとき、アデノウイルスはワクチンもしくはワクチン組成物として治療もしくは予防的に投与する。異種配列は、プロモーターおよび配列の多様な組み合わせからなっており、それらの例については本明細書に詳細に記載している。
【0081】
「抗原」とは、免疫系によって認識され、免疫応答を誘導する物質である。この文章中で使用されている類義語は「免疫原」である。
【0082】
本発明における「鳥類」とは、鳥類に属する任意および全ての家禽および野鳥をさし、新顎上目および古顎上目などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。新顎上目としては、カモ目(Anseriformes)、アマツバメ目(Apodiformes)、サイチョウ亜目(Buceroformes)、ヨタカ目(Caprimulgiformes)、チドリ目(Charadriiformes)、コウノトリ目(Ciconiiformes)、ネズミドリ目(Coliiformes)、ハト目(Columbiformes)、ブッポウソウ目(Coraciiformes)、ホトトギス目(Cuculiformes)、タカ目(Falconiformes)、キジハシ亜目(Galbuliformes)、キジ目(Galliformes)、アビ目(Gaviiformes)、ツル目(Gruiformes)、Musophagiformes、ツメバケイ目(Opisthocomiformes)、スズメ目(Passeriformes)、ペリカン目(Pelecaniformes)、フラミンゴ亜目(Phoenicopteriformes)、キツツキ目(Piciformes)、カイツブリ目(Podicipediformes)、ミズナギドリ目(Procellariiformes)、オウム目(Psittaciformes)、ペンギン目(Sphenisciformes)、フクロウ目(Strigiformes)、ハチドリ亜目(Trochiliformes)、キヌバネドリ目(Trogoniformes)、ミフウズラ亜目(Turniciformes)およびヤツガシラ(Upupiformes)などが挙げられる。古顎上目には、キウイ目(Apterygiformes)、ヒクイドリ目(Casuariiformes)、モア目(Dinornithiformes)、レア目(Rheiformes)、ダチョウ目(Struthioniformes)およびシギダチョウ目(Tinamiformes)などが挙げられる。
【0083】
遺伝子または核酸の「発現」とは、細胞性遺伝子発現のみならず、クローニング系およびその他のつながりにける核酸の転写・翻訳も包含する。
【0084】
本明細書において用いられている「ベクター」とは、ひとつの環境から別の環境へと物体を移動させる、または移動を促進するための道具である。例えば、組換えDNA技法において使用されるいくつかのベクターは、DNAセグメント(異種DNAセグメント、異種cDNAセグメントなど)などの物体を標的細胞に輸送する。本発明は、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、DNAベクターまたはそれらの組換え体を含む組換えベクターに関する。
【0085】
ベクター内発現用の外来性DNA(例えば、目的のエピトープおよび/もしくは抗原および/もしくは治療性をコードしているなど)およびそのような外来性DNAについて書かれた文献に関しては、ならびに、核酸分子の発現を増強する転写および/もしくは翻訳因子の発現に関しては、さらに、「目的のエピトープ」、「治療性」、「免疫応答」、「免疫学的応答」、「防御免疫応答」、「免疫学的組成物」、「免疫原性組成物」および「ワクチン組成物」などについては、1999年11月23日に発行された米国特許第5,990,091号明細書、国際特許出願公開第98/00166号、同第99/60164号パンフレット、およびそれらに引用されている文献、ならびにそのような特許および国際特許出願の訴訟中における記録文書を参照。それらの全てを参照として本明細書中に取り入れておく。故に、米国特許第5,990,091号明細書および国際特許出願公開第98/00166号および同第99/60164号パンフレット、ならびにそれらの引用文献、ならびにそれら特許および国際特許出願の訴訟における記録文書、さらに本明細書で引用されているもしくは参照することにより本明細書中に援用されている別の文献を、本発明の実施において参照することが可能であり、それらに引用されている全ての外来性核酸分子、プロモーターおよびベクターは、本発明の実施に使用できる。この点に関しては、米国特許第6,706,693号、同第6,716,823号、同第6,348,450号の各明細書;米国特許出願第10/424,409号、同第10/052,323号、同第10/116,963号、同第10/346,021号の各明細書、ならびに国際特許出願第PCT/US98/16739号が1999年2月25日に公開された国際特許出願公開第99/08713号パンフレットにおいて言及がなされている。
【0086】
本明細書において使用しているように、「免疫原性組成物」および「免疫学的組成物」、ならびに「免疫原性もしくは免疫学的組成物」とは、本発明に従うアデノウイルス性ベクターおよびウイルスから発現される目的の抗原または免疫原に対して免疫応答を誘起する任意の組成物を包含する。例えば、対象に投与した後、目的の標的免疫原または抗原に対して免疫応答を誘起する。「ワクチン性組成物」および「ワクチン」ならびに「ワクチン組成物」とは、目的の抗原に対する防御免疫応答を誘導する任意の組成物、または、抗原に対して効果的に防御を発揮する任意の組成物を包含し、例えば、対象への投与もしくは注入後、標的抗原もしくは免疫原に対する防御免疫応答を誘起し、あるいは、本発明に従う新規なアデノウイルスベクターから発現された抗原もしくは免疫原に対する効率的な防御を提供する。「獣医用組成物」とは、治療性タンパク質(例えば、エリスロポエチン(EPO)など、または免疫調節タンパク質(例えば、インターフェロン(IFN)など)を発現する獣医用のベクターを含む任意の組成物を意味する。同様に、「薬剤学的組成物」とは、治療性タンパク質を発現するためのベクターを含む任意の組成物を意味する。
【0087】
「免疫学的有効量」とは、目的の遺伝子をコードしている組換えベクターの量または濃度であって、対象に投与したときに目的の遺伝子生成物に対して免疫応答を起こさせる量または濃度である。
【0088】
「循環組換え型」とは、2つもしくはそれ以上の亜型または株間で遺伝子の再集合が行われた組換えウイルスをさす。本発明の文章中で用いられるその他の語句としては、「ハイブリッド型」、「組換え型」および「再集合体型」がある。
【0089】
「臨床単離体」とは、例えば、頻用されるウイルスの実験室株であって、感染対象から単離され、実験室細胞内もしくは対象体内で、高増殖ドナーウイルスの実験室適合親株と共に繰り返し培養したものである。
【0090】
「野生単離体」とは、感染対象または周囲環境から単離されたウイルスをさす。
【0091】
本発明に従う方法は、適切に利用することにより、予防ワクチン接種として疾病を阻止し、または、治療用ワクチン接種として疾病の症状緩和をもたらすことができる。
【0092】
本発明に従う組換えベクターは、単独または、免疫学的もしくは免疫原性組成物の一部として投与できる。また、本発明に従う組換えベクターを用い、目的の対象内においてタンパク質をインビボ発現させることにより、該対象にひとつもしくはそれ以上のタンパク質を送達または投与できる。
【0093】
本発明に従って得られた免疫学的生成物および/もしくは抗体および/もしくは発現生成物は、インビトロで発現され、そのような免疫学的生成物および/もしくは発現生成物が一般的に使用されるような様式で使用でき、さらに、そのような免疫学的生成物および/もしくは抗体および/もしくは発現生成物を発現する細胞をインビトロおよび/もしくはエクスビボ(ex vivo)用途に使用できる。そのような使用および用途としては、診断、アッセイ、エクスビボ治療(例えば、遺伝子生成物および/もしくは免疫学的応答を発揮する細胞をインビトロで拡張し、宿主もしくは動物に再導入するなど)などが挙げられる。米国特許第5,990,091号明細書、国際特許出願公開第99/60164号、および同第98/00166号の各パンフレットおよびそれらに引用されている文献を参照。さらに、本明細書の記載に従って単離された、または本明細書に記載の投与法の後、インビトロで拡張した細胞から単離された発現抗体または遺伝子生成物は、組成物として投与することにより、免疫誘導のためのサブユニットエピトープもしくは抗原もしくは治療剤もしくは抗体の投与と同様に、治療性応答ならびに/または受動免疫を刺激する。
【0094】
本明細書において使用している「ヒトアデノウイルス」とは、アデノウイルス属(Adenoviridae)ファミリーに属する全てのヒトアデノウイルスを包含し、マストアデノウイルス(Mastadenovirus)属を含む。これまでに、アデノウイルスのヒト血清型は51以上が確認されている(例えば、フィールズ(Fields)ら、「ウイルス学2(Virology 2)」第67章(第3版、リピンコット−ラーヴェン出版社(Lippincott-Raven Publishers))などを参照)。アデノウイルスの血清群にはA、B、C、D、EまたはFがある。ヒトアデノウイルスの血清型は、1型(Ad1)、2型(Ad2)、3型(Ad3)、4型(Ad4)、6型(Ad6)、7型(Ad7)、8型(Ad8)、9型(Ad9)、10型(Ad10)、11型(Ad11)、12型(Ad12)、13型(Ad13)、14型(Ad14)、15型(Ad15)、16型(Ad16)、17型(Ad17)、18型(Ad18)、19型(Ad19)、19a型(Ad19a)、19p型(Ad19p)、20型(Ad20)、21型(Ad21)、22型(Ad22)、23型(Ad23)、24型(Ad24)、25型(Ad25)、26型(Ad26)、27型(Ad27)、28型(Ad28)、29型(Ad29)、30型(Ad30)、31型(Ad31)、32型(Ad32)、33型(Ad33)、34型(Ad34)、35型(Ad35)、36型(Ad36)、37型(Ad37)、38型(Ad38)、39型(Ad39)、40型(Ad40)、41型(Ad41)、42型(Ad42)、43型(Ad43)、44型(Ad44)、45型(Ad45)、46型(Ad46)、47型(Ad47)、48型(Ad48)、49型(Ad49)、50型(Ad50)、51型(Ad51)があり、あるいは、好ましくは5型(Ad5)であるが、これらの例に限定されるわけではない。
【0095】
本発明に含まれるものとしては、組換えベクター、免疫原性組成物、ならびにひとつ以上のアデノウイルス血清型由来のサブウイルス粒子を含む組換えアデノウイルスが挙げられる。例えば、アデノウイルスベクターは、特異的組織もしくは細胞型に対して改変された向性を示し(ハヴェンガ(Havenga),M.J.E.ら、2002年)、故に、別異のアデノウイルス性キャプシド(すなわち、多様な血清型由来のファイバーまたはペントンタンパク質)を混合、組み合わせることが有利である。ファイバーおよびペントンを含むアデノウイルス性キャプシドを変形することにより、非変形アデノウイルスとは異なる向性を有するアデノウイルス性ベクターが得られる。標的細胞への感染能を改変し、最適化したアデノウイルス性ベクターは、治療または予防投与量を大幅に削減でき、その結果、局所および全身性の毒性が軽減される。
【0096】
アデノウイルスは非エンベロープ型DNAウイルスである。アデノウイルス由来のベクターは、遺伝子輸送に関して特に有用な多数の特徴を有する。本明細書において使用しているように、「組換えアデノウイルスベクター」とは、ひとつもしくはそれ以上の異種ヌクレオチド配列(例えば、2個、3個、4個、5個またはそれ以上の異種ヌクレオチド配列)を有するアデノウイルスベクターである。例えば、アデノウイルスの生物学については詳細に特性が明らかにされており、アデノウイルスは重篤なヒト病原体とは無関係であり、該ウイルスは、宿主細胞内へのDNA導入において効率が非常によく、該ウイルスは多様な細胞に感染でき、宿主範囲が広く、該ウイルスは、比較的容易に大量産生され、さらに、該ウイルスは、ウイルス性ゲノムの初期領域1(E1)における欠失により、複製欠損および/もしくは非複製性になり得る。
【0097】
アデノウイルスのゲノムは約36,000塩基対(bp)からなる直線二本鎖DNA分子であり、55kDaの末端タンパク質が各鎖の5'末端に共有結合している。Ad DNAは、約100bpの同一の「逆方向末端反復配列(ITRs)」を有する(ITRsの正確な長さは血清型によって異なる)。ウイルスの複製起点は、ゲノム末端のITRs内に存在する。DNA合成は2段階で行われる。始めに、鎖の転位によって複製が進行し、娘二本鎖分子および親転位鎖が生成する。転位鎖は一本鎖であり、「パンハンドル」中間体を形成でき、それによって複製が開始し、娘二本鎖分子が生成する。別の様式では、複製はゲノムの両端から同時に進行し、パンハンドル構造生成は不要である。
【0098】
増殖的感染サイクル中は、ウイルスゲノムは2つの相で発現される:ウイルス性DNA複製までの初期相およびウイルス性DNA複製の開始と同時に開始する後期相である。初期相の間は、E1、E2、E3およびE4領域によってコードされている初期遺伝子生成物のみが発現され、それらは、ウイルス構造タンパク質の合成のために細胞を準備させる多数の機能を担っている(バーク(Berk),A.J.、1986年)。後期相の間は、初期遺伝子生成物に加えて、後期ウイルス性遺伝子生成物が発現され、宿主細胞DNAおよびタンパク質合成は停止される。同時に、細胞はウイルス性DNAおよびウイルス構造タンパク質の産生を始める(トゥーズ(Tooze),J.、1981年)。
【0099】
アデノウイルスのE1領域は、標的細胞への感染後に最初に発現される領域である。この領域は、2つの転写ユニット、E1AおよびE1B遺伝子を含み、両者は、齧歯類の一次(胚性)培養の腫瘍性形質転換に必要である。E1A遺伝子生成物の主要機能は、静止期の細胞を誘導し、細胞周期に入らせ、細胞のDNA合成を再開させ、E1B遺伝子およびウイルス性ゲノムの他の初期領域(E2、E3およびE4)を転写的に活性化する。E1A遺伝子のみを一次細胞にトランスフェクトすることにより、無制限増殖(不死化)を誘導できるが、完全な形質転換には至らない。しかしながら、ほとんどの場合、E1Aの発現により、プログラムされた細胞死(アポトーシス)が誘導され、不死化が起こるのはごく希である(ヨケムセン(Jochemsen)ら、1987年)。アポトーシスの誘導を阻止し、形態的に完全な形質転換を行わせるためには、E1B遺伝子を同時に発現させることが必要である。確立された不死化細胞系においては、E1Bが無い状態でE1Aが高レベル発現することによって完全な形質転換が起こる(ロバーツ(Roberts),B.E.ら、1985年)。
【0100】
E1Bがコードしているタンパク質は、細胞機能の方向性を変えることでE1A細胞を補佐し、ウイルスの複製を行わせる。E1Bの55kDaおよびE4の33kDaのタンパク質は、コンプレックスを形成して基本的には核内に存在しているが、宿主タンパク質の合成を阻害し、ウイルス性遺伝子の発現を行わせる作用を有する。それらによる主な影響は、感染後期相の開始に付随して、核から細胞質へのウイルス性mRNAの選択的輸送が確立されることである。E1Bの21kDaのタンパク質は、増殖的感染サイクルの一時的制御の修正に重要であり、それによって、ウイルスの生命サイクルが完了する前に宿主細胞が未成熟死することを防いでいる。E1Bの21kDa遺伝子生成物を発現できない突然変異ウイルスは感染サイクルが短く、宿主細胞染色体DNAの過剰分解(deg表現型)および細胞変性効果の増強(cyt表現型;テリング(Telling)ら、1994年)を伴う。degおよびcyt表現型は、さらにE1A遺伝子が突然変異を起こしている場合には抑制されることから、これらの表現型はE1Aの作用であることが示唆される(ホワイト(White),E.ら、1988年)。さらに、E1Bの21kDaタンパク質は、E1Aが他のウイルス性遺伝子のスイッチを入れた場合には生成速度が抑制される。どのようなメカニズムによってE1Bの21kDaタンパク質がこれらのE1A依存性作用を抑えるのかはわかっていない。
【0101】
例えば、レトロウイルスとは対照的に、アデノウイルスは宿主細胞のゲノムに取り込まれず、非分裂細胞に感染でき、インビボで組換え遺伝子を効率的に輸送できる(ブロディ(Brody)ら、1994年)。これらの特徴により、アデノウイルスは、それらを必要とする細胞、組織または対象に対し、例えば、目的の抗原もしくは免疫原をインビボ遺伝子輸送するための魅力的な候補である。
【0102】
複数の欠失を有するアデノウイルスベクターは、ベクターの保有容量を増加させ、かつ、組換えによって複製コンピテントアデノウイルス(RCA)が生成する可能性を低下させることが好ましい。アデノウイルスが複数の欠失を有する場合には、それらが単独で存在するならば、それぞれの欠失の結果として複製欠損アデノウイルスおよび/または非複製性アデノウイルスが得られる必要はない。欠失の内のひとつから複製欠損または非複製性アデノウイルスが得られる限りは、他の目的、例えば、異種ヌクレオチド配列のためにアデノウイルスゲノムの保有容量を増すなどの目的で欠失を追有する場合がある。好ましくは、ひとつ以上の欠失が機能性タンパク質の発現を阻止し、さらに、アデノウイルスの複製を欠損させるおよび/もしくは非複製性にするおよび/もしくは減弱させる。より好ましくは、全ての欠失が、アデノウイルスの複製を欠損させる、および/もしくは、非複製性にする、および/もしくは減弱させるような欠失である。しかしながら、本発明は複製コンピテント型および/または野生型(すなわち、対象への感染および体内での複製に必要な全てのアデノウイルス遺伝子を有する)のアデノウイルスならびにアデノウイルスベクターをも包含する。
【0103】
アデノウイルス組換え体を用いた本発明の実施態様には、E1欠損もしくは欠失、E3欠損もしくは欠失、E4欠損もしくは欠失、あるいは、E1およびE3、E1およびE4、E3およびE4、またはE1、E3およびE4の欠失を含むアデノウイルスベクター、あるいは、全てのウイルス性遺伝子が欠失している「実質のない」アデノウイルスベクターが含まれる。アデノウイルスベクターはE1、E3もしくはE4遺伝子内に突然変異を有する場合があり、あるいは、これらもしくは全てのアデノウイルス遺伝子が欠失している場合がある。E1突然変異はベクターに安全性の限界を設定するが、これは、E1欠損アデノウイルス突然変異体は非許容細胞内で複製欠損および/もしくは非複製性であると言われており、また、少なくとも非常に減弱されているからである。E3突然変異は、メカニズムを遮断することにより、抗原の免疫原性を増強させ、このとき、アデノウイルスはMHCクラスI分子を抑制制御する。E4突然変異は後期遺伝子発現を抑制することによってアデノウイルスベクターの免疫原性を低下させ、従って、同一ベクターを用いた再ワクチン接種を繰り返すことができる。本発明は、任意の血清型または血清群のアデノウイルスベクターを包含し、それらは、E1、E3、E4、または、E1およびE3、E1およびE4内に欠失または突然変異が生じている。これらのアデノウイルス遺伝子の欠失または突然変異により、これらのタンパク質の活性が損なわれる、または実質的に完全消失する。
【0104】
「実質のない」アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターのもうひとつの型である。その複製においては、ヘルパーウイルス、E1aおよびCreを発現する特別なヒト293細胞、天然の環境には存在しない条件を要する。該アデノウイルスベクターは全てのウイルス性遺伝子を失ったものであることから、ワクチンキャリヤーとしてのベクターは非免疫原性であり、再ワクチン接種のために複数回接種できる。「実質のない」アデノウイルスベクターは、目的の抗原もしくは免疫原を受け入れるための36kb分のスペースも有しており、従って、非常に多数の抗原もしくは免疫原を細胞内に同時送達できる。
【0105】
当該分野において既知のその他のアデノウイルスベクターとしては、AdEasy系(ヒー(He)ら、1998年)およびそれに続く変形AdEasier系(ゼン(Zeng)ら、2001年)が挙げられるが、それらは、ドナーベクターとAdヘルパーベクターとの間の相同組換えを大腸菌(E.coli)(例えば、BJ5183細胞など)内で、一晩で行わせることにより、293細胞内で迅速に組換えAdベクターを産生させることを目的として開発されたものである。pAdEasyは、アデノウイルス構造配列を有しており、目的の抗原もしくは免疫原を発現するドナーベクター(例えば、pShuttle-CMVなど)とイントランス(in trans)で供給した場合に、アデノウイルス性キャプシド内に抗原もしくは免疫原(例えば、免疫原および/もしくは抗原など)がパッケージングされる。pAdEasyの配列は当該分野において既知であり、ストラタジーン(Stratagene)社を通して公的かつ商業的に入手できる。
【0106】
本発明は、AdHigh系(米国特許仮出願第60/683,638号明細書)を用いて作出できる。AdHighは、鳥類に対して有害または致死性のRCAを産生する危険性なしに高力価の組換えアデノウイルスを作出するための安全、迅速かつ効率的な方法である。さらに、RCAはヒトに対しても病原性であり、食物連鎖中に存在しないことが望ましい。AdHigh系は、pAdHighなどの変形シャトルプラスミドを用いることにより、大腸菌(E.coli)細胞内でアデノウイルス骨格プラスミドを用いて組換え体を作成した後の段階において、PER.C6細胞などの許容細胞内でRCA不含アデノウイルスの産生を促進する。これらのシャトルプラスミは、鳥類免疫原もしくは抗原(例えば、鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原など)の挿入を容易にするためのポリリンカーまたは多クローニング部位を有する。細菌細胞(すなわち、BJ5183細胞)内でのアデノウイルス性シャトルプラスミドとアデノウイルス性ヘルパープラスミド(例えば、pAdEasyなど)との組換えは容易に進行し、目的の鳥類抗原もしくは免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルスが産生される。クローニングおよび制限分析による組換えベクター作成法は、当業者においては既知である。
【0107】
RGDモチーフなどの特異的配列モチーフをアデノウイルスベクターのH−Iループに挿入することにより、感染性を高めることができる。この配列は、ある種の細胞外マトリックスおよび接着タンパク質が、インテグリンと称される細胞表面レセプターのスーパーファミリーと相互作用するために必須であることが示されている。RGDモチーフの挿入は、免疫不全対象においては非常に有用である。アデノウイルス組換え体は、上掲したような任意のアデノウイルスベクターに特異的抗原もしくは免疫原またはそれらのフラグメントをクローニングすることによって構築する。アデノウイルス組換え体を用いて細胞に形質導入し、これを免疫化剤として脊椎動物に使用する(例えば、参照することにより本明細書に援用される、米国特許出願第10/424,409号明細書など)。
【0108】
本発明に従うアデノウイルスベクターは、インビトロおよびインビボにおいて、鳥類抗原もしくは免疫原を発現する核酸を細胞へ送達する場合に有用である。特に、本発明に従うベクターは、動物、より好ましくは鳥類およびほ乳類細胞への核酸の送達もしくは輸送に有用である。目的の核酸は、ペプチドおよびタンパク質、好ましくは治療性(たとえば、医療用または獣医用など)もしくは免疫原性(例えば、ワクチン用など)のペプチドまたはタンパク質をコードしている核酸を含む。
【0109】
好ましくは、目的の抗原もしくは免疫原をコードしているコドンは、「最適化」コドンであり、すなわち、頻繁に現れる、すなわち、高発現鳥類遺伝子であり、インフルエンザなどによって頻繁に使用されるコドンではない。そのようなコドンを使用することにより、ヒトまたは鳥類細胞内で抗原もしくは免疫原を効率的に発現させる。別の実施態様においては、例えば、目的の抗原もしくは免疫原が細菌、酵母またはその他の発現系内で発現される場合には、コドンの使用様式を改変し、目的の抗原もしくは免疫原が発現される生体内において高発現遺伝子に対するコドン偏向を示すようにする。コドン使用様式は、多数の種の高発現遺伝子に関する文献中に記されている(例えば、ナカムラ(Nakamura )ら、1996年;ワン(Wang)ら、1998年;マクエヴァン(McEvan)ら、1998年など)。
さらに別の方法としては、アデノウイルスベクターを用いて培養細胞に感染させ、所望する遺伝子産物を発現させる、例えば、目的のタンパク質もしくはペプチドを産生させることができる。好ましくは、タンパク質もしくはペプチドは培地中に分泌され、さらに、当該分野において既知の常套技術および本明細書に記載の方法を用いることにより、培地から精製できる。タンパク質の細胞外分泌を指示するシグナルペプチド配列は当該分野において既知であり、また、該配列をコードしているヌクレオチド配列は、当該分野において既知の常套技術を用い、目的のペプチドもしくはタンパク質をコードしているヌクレオチド配列に機能発揮できるように連結できる。別の方法としては、細胞を溶解し、発現された組換えタンパク質は細胞培養物から精製できる。好ましくは、細胞は動物細胞であり、より好ましくは、鳥類もしくはほ乳類細胞である。また、細胞は、アデノウイルスの形質導入に対してコンピテントであることが好ましい。
【0110】
そのような細胞としては、PER.C6細胞、911細胞およびHEK293細胞などが挙げられる。本発明はまた、次のような鳥類細胞の使用を包含する:鳥類胚性線維芽細胞(例えば、DF-1細胞など)、鳥類幹細胞(例えば、参照することにより本明細書に援用される、米国特許第6,872,561号、同第6,642,042号、同第6,280,970号および同第6,255,108号の各明細書など)、鳥類リンパ芽球、鳥類上皮細胞(とりわけ、ニワトリ胚由来細胞株CHCC-OU2(オグラ(Ogura,H.)ら、1987年;特開平9-173059号公報など)、ウズラ由来細胞株QT-35(特開平9-98778号公報)など。本発明の実施においては、感染、トランスフェクトまたは任意の型の遺伝子導入に対してコンピテントである任意の鳥類細胞を用いることができる。
【0111】
宿主細胞を培養するための培養培地としては、組織培養用に一般的に使用される培地、M199-earle base、Eagle MEM(E-MEM)、Dulbecco MEM(DMEM)、SC-UCM102、UP-SFM(ギブコ(GIBCO)社)、EX-CELL302(ニチレイ(Nichirei)社)、EX-CELL293-S(ニチレイ(Nichirei)社)、TFBM-01(ニチレイ(Nichire)社)、ASF104などが挙げられる。特定の細胞型に対する適切な培養培地については、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)またはヨーロッパ細胞培養コレクション(European Collection of Cell Cultures:ECACC)で確認できる。培養培地には、L-グルタミンなどのアミノ酸類、塩類、抗菌もしくは抗細菌剤(例えば、Fungizone(登録商標)、ペニシリン−ストレプトマイシンなど)、動物血清などを添加できる。細胞培養培地は血清不含にすることもできる。
【0112】
本発明は、ワクチンとして有用なベクターをも提供する。免疫原もしくは抗原はアデノウイルスキャプシド内に入れるか、また別の方法としては、組換えアデノウイルスゲノム内に導入され、本発明に従うアデノウイルスに保持されている抗原もしくは免疫原から抗原が発現される。アデノウイルスベクターは、目的の任意の抗原もしくは免疫原を提供できる。免疫原の例については本明細書中に詳述している。
【0113】
好ましくは、抗原もしくは免疫原は、適切な発現制御配列と機能発揮できるように関係している。発現ベクターは、複製起点などの発現制御配列(該複製起点は、pBR322などの細菌ベクター由来の細菌性複製起点、自律複製配列(ARS)などの真核細胞性複製起点を用いることができる)、プロモーター、エンハンサー、必要な情報処理部位(例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、パッケージングシグナルなど)、および転写ターミネーター配列を含む。
【0114】
例えば、本発明に従う組換えアデノウイルスベクターは、適切な転写/翻訳制御シグナルおよびポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ増殖ホルモン由来のポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナルなど)を有しており、それらが抗原もしくは免疫原配列と機能発揮できるように関係することによって標的細胞に送達される。所望する発現のレベルおよび組織特異性に応じて、多様なプロモーター/エンハンサーエレメントを使用できる。プロモーターは、所望する発現様式に応じて、構成性または誘導性のもの(例えば、メタロチオネインプロモーターなど)を用いることができる。プロモーターは、生来または外来性のものであり、天然または合成の配列を用いることができる。外来性のものを用いることにより、転写開始領域が存在しない野生型宿主に転写開始領域を導入することを意図している。プロモーターは、目的の標的細胞または組織内で機能するように選択する。本発明においては、脳特異的、肝臓特異的および筋肉特異的(骨格特異的、心臓特異的、平滑筋特異的および/または横隔膜特異的)プロモーターを含む。ほ乳類および鳥類のプロモーターも好ましい。
【0115】
プロモーターは「初期」プロモーターであることが好ましい。「初期」プロモーターは当該分野において既知であり、デノボ(de novo)タンパク質合成が行われないときに迅速かつ一時的に発現される遺伝子の発現を制御するプロモーターとして定義される。プロモーターは「強い」または「弱い」プロモーターである。「強いプロモーター」および「弱いプロモーター」という語は当該分野において既知であり、プロモーター当たりの転写開始の相対頻度(回数/分)によって定義される。「強い」または「弱い」プロモーターはRNAポリメラーゼへのアフィニティーによっても定義される。
【0116】
より好ましくは、抗原もしくは免疫原は、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)主要前初期プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、β−アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、伸長因子1−α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターまたはラウス肉腫ウイルスプロモーターなどと機能発揮できるように関係している。その他の発現制御配列としては、イムノグロビン遺伝子(immunoglobin gene)、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリヘルペスウイルスなどに由来するプロモーターが挙げられる。本発明の実施においては、任意の鳥類ウイルスプロモーターに加えて、任意のほ乳類ウイルスプロモーターも用いることができる。ウイルス起源の鳥類プロモーターとしては、伝染性口咽頭気管炎ウイルス(ILTV)の前初期(すなわちICP4、ICP27)遺伝子のプロモーター、マレック病ウイルス(すなわち、gB、gC、pp38、pp14、ICP4、Meq)または七面鳥ヘルペスウイルス(すなわち、gB、gC、ICP4)の初期(すなわち、チミジンキナーゼ、DNAヘリカーゼ、リボヌクレオチドレダクターゼ)もしくは後期(すなわち、gB、gD、gC、gK)プロモーターを本発明に従う方法およびベクターとして使用できる。さらに、目的の抗原もしくは免疫原に対して免疫学的応答を誘導または誘起するのに十分な高レベルで該抗原もしくは免疫原を発現する適切なプロモーターの選択は、当業者の技量の範囲内である。
【0117】
CMVプロモーターを用いて異種ヌクレオチドの転写を行うことにより、イムノコンピテント動物における発現が抑制制御された(例えば、グオ(Guo)ら、1996年などを参照)。従って、抗原もしくは免疫原配列は、例えば、該抗原もしくは免疫原の発現が抑制制御されないような変形CMVプロモーターなどに機能発揮できるように関係させることが好ましい。
【0118】
本発明に従うベクターは、ポリリンカーまたは多クローニング部位(MCS)も有し、それらは、プロモーターの下流に位置していることが好ましい。ポリリンカーは、プロモーター配列と「イン−フレーム」関係になるように抗原もしくは免疫原分子を挿入できる部位を提供し、それによってプロモーター配列は目的の抗原もしくは免疫原に対して機能発揮できるように連結される。多クローニング部位およびポリリンカーは当業者においては既知である。本明細書において使用しているように、「機能発揮できるように連結された」とは、記載されている構成要素が意図された様式で機能するような関係にあることを意味する。
【0119】
ベクターに応じ、抗生物質耐性をコードしている選択的マーカーが存在し、組換えベクターをインビトロ増殖および精製する場合、ならびに、市販のAdEasy、AdEasier、およびAdHighアデノウイルス系に関しては、ドナーベクターとAdヘルパーベクターとの間の相同組換えをモニターする場合に使用する。AdEasy、AdEasier、およびAdHigh系は、ITR配列において、ドナーベクターとAdヘルパーベクターとの間の相同組換えを促進する。各ベクターは、別異の抗生物質耐性遺伝子を有し、二重選択によって組換えベクターを発現する組換え体を選択できる。そのような抗生物質耐性遺伝子はベクター内に組み込むことができ、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゼオシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ヒグロマイシン、クロラムフェニコールなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0120】
ひとつ以上の抗原もしくは免疫原を用いる実施態様においては、抗原もしくは免疫原の配列は、ひとつの上流プロモーターおよびひとつもしくはそれ以上の下流の内部リボソーム侵入部位(internal ribosome entry site:IRES)配列(例えば、ピコルナウイルスEMC IRES配列など)に対して機能発揮できるように関係している。
【0121】
抗原もしくは免疫原の配列が標的細胞内で転写され、翻訳されるような本発明に従う実施態様においては、一般的に、挿入されたタンパク質コード配列が効率的に翻訳されるために、特異的開始シグナルが必要である。これらの外来性翻訳制御配列は、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含んでおり、天然由来および合成による多様なものを用いることができる。
【0122】
本発明に従う方法および組換えベクターでは、鳥類病原菌由来の任意の鳥類抗原または免疫原を用いることができる。好ましい抗原もしくは免疫原としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:鳥インフルエンザウイルス由来の抗原もしくは免疫原(例えば、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、マトリックス、ならびに核タンパク質抗原もしくは免疫原など);伝染性滑液嚢疾病ウイルス抗原(例えば、VP1、VP1s1、VP1s2、VP2(ハイン(Heine,H.G.)ら、1991年;ドーミトリオ(Dormitorio,T.V.)ら、1997年;カオ(Cao,Y.C. )ら、1998年)、VP2S、VP3、VP4、VP4SおよびVP5など);マレック病ウイルス抗原(チミジンキナーゼ、gA、gB、gC、gD、gE、gH、gIおよびgL(クッセンス(Coussens)ら、1988年;ロス(Ross)ら、1989年;ロス(Ross)ら、1991年;国際公開広報WO 90/02803(1990);ブルノフスキーズ(Burnovskis)およびヴェリサー(Velicer)、1995年;ヨシダ(Yoshida)ら、1994年);ヘルペスウイルス(gA、gB、gD、gE、gI、およびgGを含む伝染性口咽頭気管炎ウイルス抗原など(ヴァイツ(Veits),J.ら、2003年));トリ伝染性気管支炎ウイルス抗原(スパイク糖タンパク質、内在性膜タンパク質M、小型膜タンパク質Eおよびポリタンパク質など(カサイス(Casais,R.)ら、2003年));トリレオウイルス抗原(キャプシド、シグマNS、シグマA、シグマBおよびシグマCタンパク質など(スパンディドス(Spandidos,D.A.)ら、1976年);ポックスウイルス(鳥痘(avipox)、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘の抗原、例えば、チミジンキナーゼなど);鳥ポリオーマウイルス抗原(VP1、VP2、VP3およびVP4(ロット(Rott,O.)ら、1988年));ニューカッスル病ウイルス抗原(HN、P、NP、M、FおよびLタンパク質(アレクサンダー(Alexander,D.J.)による総説、1990年);鳥ニューモウイルス抗原(SH、F、GおよびN(シール(Seal,B.S.)、2000年));鳥鼻気管炎ウイルス抗原(糖タンパク質、マトリックス、融合タンパク質およびヌクレオキャプシドなど(クック(Cook,J.K.)、1990年));鳥細網内皮症ウイルス抗原(p29、エンベロープ、gag、プロテアーゼおよびポリメラーゼなど(ドーンバーグ(Dornburg,R.)、1995年));鳥レトロウイルス(鳥癌ウイルス抗原、例えば、gag、polおよびenvなど、鳥内在性ウイルス抗原、例えば、gag、pol、env、キャプシドおよびプロテアーゼなど(ロヴィガッティ(Rovigatti,U.G.)ら、1983年));鳥赤芽球症ウイルスのgag、erbA、erbB(グラフ(Graf,T.)ら、1983年);鳥肝炎ウイルスコアタンパク質、polおよび表面タンパク質(コヴァ(Cova,L.)ら、1993年);鳥貧血ウイルスVP1、VP2、VP3(ローゼンバーガー(Rosenberger,J.K.)ら、1998年);鳥腸炎ウイルス抗原ポリメラーゼ、52Kタンパク質、ペントン、IIIaおよびコアタンパク質(ピトコフスキ(Pitcovski,J.)ら、1988年));パチェコ病ウイルスIEタンパク質、糖タンパク質K、ヘリカーゼ、糖タンパク質N、VP11-12、糖タンパク質H、チミジンキナーゼ、糖タンパク質Bおよび核リンタンパク質(カレタ(Kalreta,E.F.)、1990年);鳥白血病ウイルス抗原エンベロープ、gagおよびポリメラーゼ(グラフ(Graf,T.)ら、1978年);鳥パルボウイルス、鳥ロタウイルス抗原(NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、VP1、VP2、VP3、VP4、VP5、VP6およびVP7など(モリ(Mori,Y.)ら、2003年;ボーガン(Borgan,M.A.)ら、2003年));鳥白血症ウイルス抗原(エンベロープ、gagおよびポリメラーゼなど(ビース(Bieth,E.)ら、1992年));鳥筋腱膜線維肉腫ウイルス(カワイ(Kawai,S.)ら、1992年);鳥骨髄芽球症ウイルス抗原p15、p27、エンベロープ、gagおよびポリメラーゼ、ヌクレオキャプシドおよびgs-b(ジョリオット(Joliot,V.)、1993年));鳥骨髄芽球症関連ウイルス(パーバル(Perbal,B.)、1995年);鳥骨髄芽球腫症ウイルス(ペトロポウロス(Petropoulos,C.J.)、1997年);鳥肉腫ウイルス
抗原(p19およびエンベロープなど(ネッカメーヤー(Neckameyer,W.S.)ら、1985年));ならびに鳥脾臓壊死ウイルスのgag、エンベロープおよびポリメラーゼなど(パーチェス(Purchase,H.G.)ら、1975年)など。
【0123】
本発明において使用できるその他の免疫原/抗原としては、次のような鳥類細菌抗原が挙げられる:パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)株(39kDaの莢膜タンパク質(アリ(Ali,H.A.)ら、2004年;リムラー(Rimler,R.B.)、2001年)、16kDaの外膜タンパク質(カステン(Kasten,R.W.)ら、1995年)、リポ多糖類(バート(Baert,K.)ら、2005年)など);大腸菌(E.coli)(1型フィムブリエ、Pフィムブリエおよびcurli(ローランド(Roland,K.)ら、2004年)、F1線毛アドヘシン、P線毛アドヘシン、エアロバクチンレセプタータンパク質およびリポ多糖類(カリヤワサム(kariyawasam,S.)ら、2002年)など);マイコプラズマ・ガリセプティカム(Mycoplasma gallisepticum)(主要膜抗原pMGA(p67としても知られている)(ジャン(Jan,G.)ら、2001年;ノールモハマディ(Noormohammadi,A.H.)ら、2002a年)、TM-1(サイトウ(Saito,S.)ら、1993年)、アドヘシン(バーバー(Barbour,E.K.)ら、1989年)、P52(ジャン(Jan,G.)ら、2001年)、血清−血小板凝集(SPA)抗原(アーマッド(Ahmad,I.)ら、1988年));マイコプラズマ・ガリナセウム(Mycoplasma gallinaceum)、マイコプラズマ・ガリナラム(Mycoplasma gallinarum)、マイコプラズマ・ガロパヴォニス(Mycoplasma gallopavonis)、マイコプラズマ・シノヴィー(Mycoplasma synoviae)(主要膜抗原MSPB(ノールモハマディ(Noormohammadi),A.H.ら、2002年b)および165kDaタンパク質(ベン・アブデルモーメン(Ben Abdelmoumen,B.)ら、1999年)などの抗原)、マイコプラズマ・メレグリディス(Mycoplasma meleagridis)、マイコプラズマ・アイオワ(Mycoplasma iowae)、マイコプラズマ・プロラム(Mycoplasma pullorum)、マイコプラズマ・イミタンス(Mycoplasma imitans)、サルモネラ・エンテリティディス(Sarmonella enteritidis)(フラジェリン、ポーリンス、OmpA、SEF21およびSEF14フィムブリエなど(オチョア−レパラズ(Ochoa-Reparaz,J.)ら、2004年))、サルモネラ・エンテリカ(Sarmonella enterica)血清型(例えば、SEF14およびSEF21などを発現するガリナラム(Gallinarum)およびティフィムリウム(Typhymurium)など(リ(Li,W.)ら、2004年))、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(フラジェリン、67kDa抗原、CjaA、CjaCおよびCjaDタンパク質(ウィダース(Widders,P.R.)ら、1998年;ウィズィンスカ(Wyszynska,A.)ら、2004年))、ヘモフィルス・パラガリナラム(Heamophilus paragallinarum )(赤血球凝集素様の血清群A,BおよびC抗原など(ヤマグチ(Yamaguchi,T.)ら、1988年))、リメレラ・アナティペスティファー(Riemerella anatipestifer)(バクテリン抗原など(ヒギンス(Higgins,D.A.)ら、2000年))、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)株(血清型Aおよび6B、ならびに主要外膜タンパク質(MOMP)などを発現(ヴァンロンペイ(Vanrompay,D.)ら、1999年))、エリシペロスリックス・ルシオパシー(Erysipelothrix rhusiopathiae)(66-64kDaタンパク質抗原(ティモニー(Timoney,J.F.)ら、1993年))、エリシペロスリックス・インシディオサ(Erysipelothrix insidiosa)(バクテリンなど(ビッグランド(Bigland,C.H.)およびマツモト(Matsumoto,J.J.)、1975年))、ブルセラ・アボーツス(Brucella abortus)(抗原P39およびバクテリオフェリン(アル−マリリ(Al-Mariri,A.)ら、2001年))、ボレリア・アンセリーナ(Borrelia anserina)(22kDa主要外表面タンパク質(サンブリ(Sambri,V.)ら、1999年)、外膜タンパク質P66(ブニキス(Bunikis,J.)ら、1998年)およびOspC(マルコーニ(Marconi,R.T.)ら、1993年))、アルカリジェネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Straphylococcus aureus)など。
【0124】
本発明は、鳥類原虫性抗原由来の免疫原/抗原の使用をも包含し、そのような原虫としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アイメリア・アセルヴリナ(Eimeria acervulina)(3-1E抗原(リレホー(Lillehoj,H.S.)ら、2005年)、ディン(Ding,X.)ら、2004年)、先端コンプレックス抗原(apical complex antigens)(コンスタンティノー(Constantinoiu,C.C.)ら、2004年)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(シャップ(Schaap,D.)ら、2004年)など);アイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)(gam56およびgam82(ベリ(Belli,S.I.)ら、2004年)、56および82kDa抗原タンパク質(ベリ(Belli,S.I.)ら、2004年)、ならびにEmTFP250(ウィトコム(Witcombe,D.M.)ら、2004年)など)、アイメリア・ネカトリクス(Eimeria necatrix)(35kDaタンパク質(タジマ(Tajima,O.)ら、2003年)など)、アイメリア・テネラ(Eimeria tenella)(TA4およびSO7遺伝子生成物(ヴ(Wu,S.Q.)ら、2004年;ポゴンカ(Pogonka,T.)ら、2003年)、および12kDa接合子壁タンパク質(カリム(Karim,M.J.)ら、1996年));アイメリア・ヴェルミフォルミス(Eimeria vermiformis)、アイメリア・アデノエイデス(Eimeria adenoeides)、ロイコサイトゾーン・カウレリ(Leucocytozoon caulleryi)(R7外膜抗原(イトウ(Ito,A.)ら、2005年))、プラスモジウム・レリクタム(Plasmodium relictum)、プラスモジウム・ガリナセウム(Plasmodium gallinaceum)(CSPタンパク質(グリム(Grim,K.C.)ら、2004年)、17および32kDaのタンパク質抗原(ランガー(Langer,R.C.)ら、2002年)など)ならびに、プラスモジウム・エロンガツム(Plasmodium elongatum))など。
【0125】
本発明の好ましい実施態様においては、鳥インフルエンザウイルス抗原または免疫原を使用する。本発明は、多様な鳥抗原もしくは免疫原を発現する組換えベクターも提供し、そのようなものとしては、例えば、1回の注射でトリの複数の疾病に対して防御できるような多価ワクチンもしくは免疫学的組成物などが挙げられる。
【0126】
鳥インフルエンザウイルスは、ヒト、ブタ、馬および海洋ほ乳類にも伝播しており、また、ヒトインフルエンザ大流行の発生に対する重要な一因である。インフルエンザウイルスはオルソミクスウイルス属(Orthomyxiviridae)ファミリーに属し、核タンパク質(NP)およびマトリックス(M1)タンパク質における抗原性の差異に基づき、A、BおよびCに分類される。鳥インフルエンザウイルスは全てA型に分類される。さらに、2つの表面糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原性に基づき、サブタイプに分けられる。現在のところ、A型インフルエンザにおいては、15のHAサブタイプおよび9のNAサブタイプが確認されている(マーフィー(Murphy,B.R.)ら、1996年;ローム( Rohm,C.)ら、1996年b)。HAの抗原性を担っているHA1領域のアミノ酸配列は、サブタイプ間で30%以上異なっている(ローム(Rohm,C.)ら、1996年b)。鳥類では、全てのHAおよびNAのサブタイプが見出されているが、ほ乳類インフルエンザウイルスのサブタイプは限られている。
【0127】
A型鳥インフルエンザウイルスは、毒力によって定義される:家禽伝染病を引き起こす強毒型、および一般的に緩和な疾病もしくは無症候性感染を引き起こす弱毒型である。しかしながら、希に、実験室では病原性が低いウイルスが、野外で重篤な疾病の大発生を起こすことがある。にもかかわらず、これらのウイルスに関する罹病率および死亡率は、致死性ウイルスによってもたらされるそれらよりも非常に低い傾向がある。
【0128】
強毒鳥インフルエンザウイルスは、次のような国の家禽類の間で大発生が起こっている:オーストラリア(1976年(H7)(バシルディン(Bashiruddin,J.B.)ら、1992年);1985年(H7)(クロス(Cross,G.M.)、1987年);ネストロウィッツ(Nestorowicz,A.)ら、1987年);1992年(H7)(パーデュー(Perdue,M.L.)ら、1997年);1995年(H7)および1997年(H7);英国(1979年(H7)(ウッド(Wood,G.W.)ら、1993年)および1991年(H5)(アレクサンダー(Alexander,D.J.)ら、1993年);アメリカ合衆国(1983〜1984年(H5)(エクローデ(Eckroade,R.J.)ら、1987年));アイルランド(1983〜1984年(H5)(カワオカ(Kawaoka,Y.)ら、1987年));ドイツ(1979年(H7)(ローム(Rohm,C.)ら、1996年a));メキシコ(1994〜1995年(H5)(ガルシア(Garcia,M.)ら、1996年;ホリモト(Horimoto,T.)ら、1995年));パキスタン(1995年(H5)(パーデュー(Perdue),M.L.ら、1997年);イタリア(1997年(H5))および香港(1997年(H5))(クラース(Claas,E.J.)ら、1988年))。理論に裏付けられているわけではないが、病原性A型鳥インフルエンザウイルスは全て、H5またはH7サブタイプであると考えられるものの、このサブタイプの特異性に対する理由は明らかになっていない。これらのことから、NAサブタイプは毒性ウイルスに関与していないと考えられる。重篤な家禽伝染病様大発生中のニワトリから、2つの更なるサブタイプH4(A/ニワトリ/アラバマ/7395/75(H4N8)(ジョンソン(Johnson,D.C.)ら、1976年))およびH10(A/ニワトリ/ドイツ/N/49(H10N7))も単離されている。
【0129】
A型インフルエンザウイルスの構造は非常に似通っている(ラム(Lamb,R.A.)ら、1996年)。電子顕微鏡により、ウイルスは多形性であり、粗面球状(直径約120nm)で繊維状のビリオンを有することが確認されている。HAおよびNA分子に対応する2つの別の型のスパイク(長さ約16nm)がビリオンの表面に存在する。これら2つの糖タンパク質は、宿主細胞の原形質膜由来の脂質エンベロープに対し、疎水性アミノ酸の短い配列(膜透過領域)を介してつなぎ止められている。HAはI型糖タンパク質であり、N末端エクトドメイン(ectodomain)およびC末端アンカーを有しており、一方、NAはII型糖タンパク質であって、N近傍アンカーおよびC末端エクトドメインを有する。HAは、ビリオンが細胞表面のシアル酸オリゴ糖に結合できるようにし(ポールソン(Paulson,J.C.)ら、1985年)、赤血球凝集活性を発揮する(ヒースト(Hirst,G.K.)、1941年)。HAは、ウイルス中和抗体を誘起するが、これは感染防御において重要である。NAはシアリダーゼであり(ゴッツチョーク(Gottschalk,A.)、1957年)、細胞およびビリオン表面のシアル酸(HAによって認識されるシアル酸オリゴ糖の基本部位)を除去することによってビリオンの凝集を阻止する(ポールソン(Paulson,J.C.)ら、1985年)。NAに対する抗体も宿主の防御に重要である(ウェブスター(Webster,R.G.)ら、1988年)。
【0130】
HAおよびNAに加えて、限られた数のM1タンパク質がビリオンに組み込まれている(ゼベディー(Zebedee,S.L.)ら、1988年)。該タンパク質は四量体を形成し、H1イオンチャンネル活性を有しており、さらに、エンドソーム内で低いpHで活性化された場合には、ビリオン内を酸性化し、皮膜を脱離させる(ピント(Pinto,L.H.)ら、1992年)。エンベロープ内に存在するM1タンパク質は、組み立ておよび出芽の作用を有すると考えられている。一本鎖RNA分子の8個のセグメント(mRNAに対してマイナス鎖または相補的)は、ウイルスエンベロープ内に包含されており、NPおよびウイルスポリメラーゼの3つのサブユニット(PB1、PB2およびPA)との関係においては、リボ核タンパク質(RNP)コンプレックスを共に形成し、RNAの複製および転写に関与する。ビリオン内に存在することがわかっているNS2タンパク質(リチャードソン(Richardson,J.C.)ら、1991年;ヤスダ(Yasuda,J.)ら、1993年)は、M1タンパク質との相互作用を介して(ワード(Ward,A.C.)ら、1995年)、核からのRNPの輸出において役割を果たしていると考えられている(オニール(O'Neill,R.E.)ら、1998年)。NS1タンパク質は、A型インフルエンザウイルスの非構造タンパク質にすぎないが、多数の機能を有しており、例えば、細胞性mRNAのスプライシングおよび核輸出の制御、ならびに、翻訳刺激などが挙げられる(ラム(Lamb,R.A.)ら、1996年)。主要機能は、宿主のインターフェロン活性を打ち消すことであると考えられているが、これは、インターフェロン非欠損細胞内でNS1ノックアウトウイルスが、親ウイルスより効率は良くないが、増殖できたからである(ガルシア−サストレ(Garcia- Sastre.A.)ら、1988年)。
【0131】
本発明において有用な鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原としては、HA、NA、ならびにM1、NS2およびNS1などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特に好ましい鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原は、HAおよびNAである。鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原は、既知の任意のAI株由来のものを用いることができ、全ての鳥インフルエンザA型株、臨床単離体、野生単離体およびそれらの再集合体を含む。そのような株およびサブタイプの例としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:H10N4、H10N5、H10N7、H10N8、H10N9、H11N1、H11N13、H11N4、H11N6、H11N8、H11N9、H12N1、H12N4、H12N5、H12N8、H13N2、H13N3、H13N6、H13N7、H14N5、H14N6、H15N8、H15N9、H16N3、H1N1、H1N2、H1N3、H1N6、H2N1、H2N2、H2N3、H2N5、H2N7、H2N8、H2N9、H3N1、H3N2、H3N3、H3N4、H3N5、H3N6、H3N8、H4N1、H4N2、H4N3、H4N4、H4H5、H4N6、H4N8、H4N9、H5N1、H5N2、H5N3、H5N7、H5N8、H5N9、H6N1、H6N2、H6N4、H6N5、H6N6、H6N7、H6N8、H6N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N5、H7N7、H7N8、H8N4、H8N5、H9N1、H9N3、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8およびH9N9など。本発明は、突然変異、または抗原ドリフトおよび抗原シフトなどを反映したその他の改変された鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原の使用にも関する。
【0132】
インフルエンザウイルスの抗原性は、点突然変異(抗原ドリフト)によって徐々に、または、遺伝子再集合(抗原シフト)によって劇的に変化する(マーフィー(Murphy,B.R.)ら、1996年)。HAおよびNAに対する免疫学的圧力によって抗原ドリフトが起こると考えられている。抗原シフトは、非ヒトインフルエンザウイルスからヒトへの直接伝播、または1個の細胞に感染した2つの別異のインフルエンザウイルスからの遺伝子再集合によって生じる(ウェブスター(Webster,R.G.)ら、1982年)。理論的には、ウイルスの8つの別異のゲノムセグメントをシャッフルすることにより、256の別異のRNAの組み合わせが生じる。遺伝子再集合については、実験室条件下ではインビトロおよびインビボの両方で多くの報告がなされている(ウェブスター(Webster,R.G.)ら、1975年)。より重要なことは、自然界では混合感染が比較的高頻度で起こり、それによって遺伝子再集合が生じ、結果的に新規な野生単離体、ハイブリッド型もしくは再集合型が形成される(ビーン(Bean,W.J.)ら、1980年;ヒンシャウ(Hinshaw,V.S.)ら、1980年;ヤング(Young,J.F.)ら、1979年)。従前の循環ウイルスの再出現は、別のメカニズムによるものであり、このときに抗原シフトが生じる。
【0133】
従って、本発明は、抗原ドリフトまたは抗原シフトを受けている鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原の使用をも包含し、そのような免疫原もしくは抗原としては、鳥インフルエンザの臨床単離体、鳥インフルエンザの野生もしくは環境単離体、ハイブリッド型ならびに鳥インフルエンザの再集合型などが挙げられる。さらに、本発明は、本明細書に開示しているベクターおよび方法において、ひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ免疫原もしくは抗原を使用し、それらを別異の組換えベクターで、またはひとつの組換えベクターで共に送達し、ひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ株および/もしくはハイブリッドに対して免疫学的応答を刺激または調節する多価鳥インフルエンザワクチンまたは免疫原性組成物を提供することを包含する。
【0134】
多くの家禽類および野鳥類がインフルエンザウイルスに感染している。そのような鳥類としては、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ホロホロチョウ、飼育用アヒル、ウズラ、キジ、ヤマウズラ(partridge)、ムクドリ、スズメ、オウム、セキセイインコ、カモメ、河口に生息する鳥類、海鳥およびエミューなどが挙げられる(イースターデイ(Easterday,B.C.)ら、1997年;ウェブスター(Webster,R.G.)ら、1988年)。感染している鳥はインフルエンザの症状を示すものもあるが、そうでないものもいる。家禽類の中では、シチメンチョウが最もインフルエンザの発生が起こりやすく、ニワトリでも発生するがそれほど頻度は高くない。A型鳥インフルエンザウイルスは、鳥類において、無症状、緩和な上気道感染、卵の産生不能、急激な致死性全身性疾病に至る一連の症候群を呈する(エクローデ(Eckroade,R.J.)ら、1987年)。疾病の重篤度は複数の因子によって決まり、そのようなものとしては、ウイルスの毒力、免疫状況および宿主の食事、付随する細菌感染および宿主にかかっているストレスなどが挙げられる。ニワトリおよびシチメンチョウにおけるA型鳥インフルエンザの病原性に従い、毒性(家禽ペストを引き起こす)または非毒性(緩和な、または無症状の疾病を引き起こす)に分類される。ひとつの鳥類に対して高病原性であっても、他の鳥類に対して病原性であるとは限らない(アレキサンダー(Alexander,D.J.)ら、1986年)。例えば、一般的にカモは、ニワトリにおいて致死性のウイルスに対して抵抗性である。別の例としては、ニワトリおよびシチメンチョウに対しては致死性が高いA/ニワトリ/アイルランド/1378/85(H5N8)は、カモにおいては、感染個体の各種臓器および血液中で該ウイルスが検出できても、疾病症状を起こさない(カワオカ(Kawaoka,Y.)ら、1987年)。
【0135】
インフルエンザウイルスは、感染している鳥の腸管から糞へと分泌される(キダ(Kida,H.)ら、1980年;ウェブスター(Webster,R.G.) ら、1978年)。伝播様式は直接または間接的であり、エアロゾルおよびウイルスを含むその他の物質との接触も含まれる。感染している鳥は大量のウイルスを糞中に排出することから、多数の多様なものが汚染され(例えば、飼料、水、器具およびケージなど)、ウイルスの伝染に関与する可能性がある。天然の水鳥生息地において鳥インフルエンザが長年生き残っている仕組みとしては、水を介した伝播が考えられる。商業用鳥類(例えば、高病原性鳥インフルエンザに感染した家禽など)に現れる典型的な兆候および症状としては、卵の生産減少、気道における兆候、ラ音、過量の流涙、副鼻腔炎、羽毛のない皮膚部分のチアノーゼ(特にとさかおよび肉垂)、頭および顔の浮腫、羽毛の乱れ、下痢および神経系失調などが挙げられる。
【0136】
現れてくる症状の数は鳥の種および年齢、ウイルス株、ならびに付随する細菌感染によって異なる(イースターデイ(Easterday,B.C.)ら、1997年;ウェブスター(Webster,R.G.)ら、1988年)。疾病の兆候を全く示さずに死ぬ個体もある(アレキサンダー(Alexander,D.J.)ら、1986年;ウッド(Wood,G.W.)ら、1994年)。高病原性ウイルスを接種したニワトリの全体および組織学的損傷はきわめて似通っているが、株間の差異が若干観察された(アレキサンダー(Alexander,D.J.)ら、1986年;モー(Mo,I.P.) ら、1997年;スワイン(Swayne,D.E.) ら、1997年)。報告された事例間の若干の差異は、接種経路、採血法およびニワトリの年齢、ならびにウイルス投与量を含む実験条件の差異を反映していると考えられる。強毒ウイルスを接種したニワトリにおいて一般的に見られる症状としては、微細血管内皮の腫脹、全身性鬱血、多病巣性出血、血管周囲の単核細胞浸潤および血栓症などが挙げられる。そのようなウイルスは血管内皮細胞および血管周囲の実質細胞内で効率的に複製し、それらは、ウイルスの転位および全身性感染に重要な特性である(コバヤシ(Kobayashi,Y.)ら、1996年;スアレツ(Suarez,D.L.) ら、1988年)。ウイルス抗原は、壊死性および炎症性変化を起こしているその他の臓器に加え、壊死性心筋細胞内でも検出された(コバヤシ(Kobayashi,Y.)ら、1996年)。
【0137】
本発明は、細胞内でひとつもしくはそれ以上の抗原または免疫原を発現させる方法にも関する。実験室における予備段階では、抗原または免疫原は、酵素などのタンパク質およびペプチドをコードしている異種ヌクレオチド配列(それらをコードしているレポータータンパク質を含む)に置き換えることができる。レポータータンパク質は当該分野において既知であり、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:グリーン蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子など。これらのレポータータンパク質のうちの多数、およびそれらの検出法については、市販の多くの診断キットの一部として含まれている。目的の抗原もしくは免疫原は、アンチセンス核酸、低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)、リボザイム、または、「ガイド」RNAsなどのその他の非翻訳RNAs(ゴーマン(Gorman)ら、1998年)などをコードしている。
【0138】
本発明に従う組換えベクターおよび方法は、治療用タンパク質またはアジュバント分子の使用法をも包含し、該タンパク質またはアジュバント分子は、組換えベクターもしくは免疫原性組成物の送達に基づく免疫応答を調節できる。そのような治療用タンパク質またはアジュバント分子としては、インターロイキンインターフェロンおよび同時刺激分子などの免疫調節分子などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。当該分野において、鳥類の体内で免疫応答を調節することが知られている鳥類サイトカインとしては、ニワトリインターフェロン−α(IFNα)(カラカ(Karaca,K.)ら、1998年;シューンズ(Schijns,V.E.)ら、2000年);ニワトリインターフェロン−γ(IFNγ);ニワトリインターロイキン−1β(ChIL-1β)(カラカ(Karaca,K.)ら、1998年);ニワトリインターロイキン−2(ChIL-2)(ヒルトン(Hilton,L.S.)ら、2002年)およびニワトリ骨髄性単球増殖因子(cMGF1)(ヨーク(York,J.J.)ら、1996年;ジェラバ(Djeraba,A.)ら、2002年)などが挙げられる。免疫調節分子は、本発明に従う免疫原性組成物と同時投与でき、あるいは、免疫調節分子の核酸は、本発明に従う組換えベクター内で鳥類免疫原もしくは抗原と共に同時発現させることができる。
【0139】
異種配列(すなわち、鳥インフルエンザ免疫原)が対象内で発現することにより、体内で抗原もしくは免疫原の発現生成物に対する免疫応答が起こる。従って、本発明に従う組換えベクターを免疫学的組成物またはワクチンとして使用することにより、免疫応答を誘導する手段が提供され、そのような応答は、場合によっては防御的である。本発明において使用している分子生物学的手法については、サンブルック(Sambrook)らが記載している(2001年)。
【0140】
さらにまた別の、あるいは追加の方法においては、本発明に包含される免疫原性もしくは免疫学的組成物は、抗原もしくは免疫原をコードしているヌクレオチド配列から膜透過ドメインをコードしている部分が欠失している場合がある。さらに別の、または追加の方法においては、ベクターもしくは免疫原性組成物は、異種tPAシグナル配列をコードしているヌクレオチド配列を宿主細胞内に追有し、発現できる。そのようなtPAシグナル配列としては、ヒトもしくは鳥類tPA、ならびに/または安定化イントロン(ウサギβ−グロビン遺伝子のイントロンIIなど)などが挙げられる。
【0141】
本発明は、インビトロもしくはインビボにおいて、細胞内に異種核酸配列を送達ならびに/または投与する方法をも提供する。本方法に従えば、本発明に従う組換えヒトアデノウイルスベクターを用いて細胞を感染させることができる(詳細については本明細書に記載している)。ウイルス伝播の天然の過程により、細胞はアデノウイルスベクターに感染する。別の方法としては、当該分野において既知の任意のその他の方法によって細胞内にベクターを導入する。例えば、細胞を標的アデノウイルスと接触させ(以下に記載)、交互メカニズムにより(例えば、レセプターを介したエンドサイトーシスなど)取り込ませる。別の例においては、抗体もしくはその他の結合タンパク質を用い、インターナリゼーション細胞表面タンパク質をベクターの標的とすることができる。
ベクターは、遺伝子生成物(例えば、エピトープ、抗原、治療性、および/もしくは抗体など)組成物に関する規定量に達するように鳥類に投与できる。もちろん、本発明は、本明細書の実施態様以下および以上の投与量、鳥類に投与する任意の組成物(それらの構成成分を含む)、ならびに任意の特定の投与法についても考慮に入れており、そのためには、毒性(適切な鳥類モデルにおける致死量(LD)およびLD50値の決定などによる)、ならびに、組成物の投与量、組成物中の構成成分濃度、および適切な応答を誘起するための組成物の投与タイミングなどを決定する(例えば、ELISAおよび/もしくは血清中和分析などによる血清の滴定および分析を実施する)ことが好ましい。そのような決定に際しては、当業者の知識、本明細書の開示および本明細書中の引用文献に基づけば、不要な実験をする必要はない。
【0142】
本発明に従う組成物の例としては、次のようなものが挙げられる:開口部または粘膜(例えば、口、鼻、肛門、膣、経口的、腸内など)投与用の液体調製物、例えば、懸濁液、溶液、スプレー、シロップまたはエリキシルなど;非経口、表皮、皮下(すなわち、首の下方を通して)、皮内、腹膜内、筋肉内(すなわち、翼膜、翼端、胸部および腿部筋肉組織穿刺を通して)、鼻内、または静脈内(例えば、注射など)投与用調製物、例えば、滅菌懸濁液またはエマルションなど。2004年4月6日に発行された米国特許第6,716,823号明細書;2004年3月16日に発行された米国特許第6,706,693号明細書;2002年2月19日に発行された米国特許第6,348,450号明細書;米国特許出願第10/052,323号、同第10/116,963号および同第10/346,021号の各明細書を参照のこと。これらの内容を参照することにより本明細書中に援用する。これらは、非浸潤性送達様式、すなわち、表皮および鼻内投与を介した、免疫原性もしくはワクチン生成物を用いた免疫化およびそれらの送達法について開示している。鳥類へのその他の投与および送達法としては、飲用水または飼料に組換えベクターもしくは免疫原性組成物を混ぜることが挙げられ、このとき、ワクチンの投与量は、1個体当たり101〜104個になるように選択する。
【0143】
筋肉内注射用には、胸(胸部)、脚(腿上部/腿外側)、翼膜(飛膜)、翼下(腋窩)および翼端を通して投与することができる。使用する針の長さおよび直径(ゲージ)は、ワクチンを選択した筋肉の中央部に送達できるように選択する。
【0144】
特に好ましい投与法は、卵内送達である(ギルダースリーヴ(Gildersleeve,R.P.)、1993年a;ギルダースリーヴ(Gildersleeve,R.P.)、1993年b;シャーマ(Sharma,J.M.)、1985年;シャーマ(Sharma,J.M.)、1984年)。卵内送達は、鳥類への大量免疫のための有望な方法として実施されるようになったが、これは、自動注射器を用いることによって、一定量のワクチン投与にかける労力および時間が節約されるからである(ジョンストン(Johnston)ら、1997年;オショップ(Oshop)ら、2002年)。今日では、マレック病に対して米国で市販されているブロイラーニワトリ用ワクチンの80%以上が自動注射器を用いて卵内に注射されている(ワケネル(Wakenell)ら、2002年)。この方法は、伝染性滑液嚢疾患(infectious bursal disease:IBD)およびニューカッスル病(ND)ワクチンの投与にも使用が広がっている。DNAワクチン(カプツィンスキ(Kapczynski)ら、2003年;オショップ(Oshop)ら、2003年)および複製アルファウイルスベクターワクチン(シュルツ−チェリー(Schultz-Cherry)ら、2000年)を卵内送達することによってもニワトリ体内で免疫応答が誘起されている。複製対と比較すると、DNAおよびウイルスをベクターとする卵内投与用ワクチンおよび免疫原性組成物は、胚を殺したり傷つけたりする可能性が低く、特に、Adベクターは卵内で複製複製不能であることから、許容率が高い。
【0145】
機械化システム、装置およびデバイス(市販のINOVOJECT(登録商標)など)を用いることにより、発達中の胚に外傷を与えることなく、正確に計量された量の化合物、ワクチンおよび免疫学的組成物を穏やかに投与でき、それにより、ヒナにかける手間が減り、自動化によって孵化管理が行いやすくなり、生存にかかるコストが低下した。「INOVOJECT」およびその他の機械化システム、デバイスもしくは装置は、卵の上部にインジェクションヘッドをゆっくり下ろし、径が小さい中空パンチを用いて殻に小さな穴を空ける。針は、チューブを通して下ろし、制御された深度(通常2.54cm)で、規定の少量のワクチン、免疫原性組成物もしくは化合物を胚に送達し、その後、針を引き、滅菌洗浄で清浄化する。卵内へのワクチンおよび遺伝子の送達法については、米国特許第4,458,630号;同第第RE35973号;同第6,668,753号;同第6,601,534号;同第6,506,385号;同第6,395,961号;同第6,286,455号;同第6,244,214号;同第6,240,877号;同第6,032,612号;同第5,784,992号;同第5,699,751号;同第5,438,954号;同第5,339,766号;同第5,176,101号;同第5,136,979号;同第5,056,464号;同第4,903,635号;同第4,681,063号の各明細書;2002年10月16日に出願された米国特許出願第10/686,762号;2002年8月9日に出願された同第10/216,427号;2002年2月13日に出願された同第10/074,714号;2002年1月9日に出願された同第10/043,025号の各明細書などに記載されており、それらの内容を参照することにより本明細書に援用する。従って、本発明は、本明細書に記載されている組換えベクター、ワクチンもしくは免疫原性組成物の卵内送達または投与に使用するデバイスまたは装置を包含する。そのようなデバイスまたは装置は、本発明に従う組換えヒトアデノウイルスベクターもしくは免疫学的組成物を追有する場合があり、すなわち、鳥類への卵内投与のために、ベクターもしくは免疫学的組成物を予め加えておくことができる。
【0146】
また、本発明は、本発明に従う組成物の連続投与、または本明細書に従う方法の連続実施も包含し、例えば、症状に対する治療もしくは処置の一環として、ならびに/または、免疫学的組成物のブースター投与として、ならびに/または、プライムブースト(prime-boost)様式などにおいて、本発明に従う組成物を周期的に投与する。また、連続投与の時間および様式は、不要な実験をすることなく定めることができる。
【0147】
さらに、本発明は、組成物、ならびにベクターの作出および使用法を包含し、それらには、インビボおよび/もしくはインビトロおよび/もしくはエクスビボ(例えば、後二者については、本発明に従って投与された宿主由来の細胞を、場合によっては付随的に拡張した後などに、単離してから実施)で遺伝子生成物ならびに/または免疫学的生成物ならびに/または抗体を産生する方法、また、そのような遺伝子ならびに/または免疫学的生成物ならびに/または抗体の使用法(診断、アッセイ、治療、処置などを含む)が含まれる。
【0148】
ベクター組成物は、ベクターを適切なキャリヤーもしくは希釈剤と混合することによって調製する。さらに、遺伝子生成物および/もしくは免疫学的生成物および/もしくは抗体組成物は、遺伝子生成物および/もしくは免疫学的生成物および/もしくは抗体を適切なキャリヤーまたは希釈剤と混合することによって同様に調製する。例えば、米国特許第5,990,091号明細書、国際特許出願公開第99/60164号、同第98/00166号の各パンフレット、それらに引用されている文献、本明細書に引用されているその他の文献、ならびに本明細書に記載しているその他の教示(例えば、キャリヤーまたは希釈剤に関するものなど)などを参照。
【0149】
そのような組成物においては、組換えベクターは、獣医学的または薬剤学的に許容される適切なキャリヤー、希釈剤、または賦形剤(例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコースなど)と混合できる。組成物は凍結乾燥することもできる。組成物には補助物質を加えることができ、そのようなものとしては、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化剤もしくは増粘添加剤、保存料、香料、色素などが挙げられ、投与経路および所望する製剤に応じて使用する。
【0150】
DMSOは、特に、ベクターおよびベクター含有免疫原性組成物の卵内送達に関しては、ワクチンおよび免疫原性組成物の力価を高めることが知られている。DMSOは、細胞膜の透過性を上げることによってワクチンの力価を高めると考えられている(オショップ(Oshop)ら、2003年)。細胞の透過性を良くし、羊水の粘度を下げ、また、DMSOと比較してより高いコンプライアンス率を示すようなその他の物質もしくは添加剤は、特に卵内送達によって投与する場合には、ワクチンまたは免疫原性組成物の調製に使用できる。インシュリン、レプチンおよびソマトトロピンなどの多様なタンパク質の吸収は、テトラデシルマルトシド(TDM)などの界面活性剤により、特に目立った副作用を起こすことなく、促進されることが示されている(アーノルド(Arnold)ら、2004年)。故に、本発明は、本明細書に記載されている方法および組成物においてTDMを使用することを包含する。
【0151】
0.125%のTDMを含む製剤は、細胞形態の緩和な変化を引き起こすが、より高濃度(すなわち、0.5%)のTDMは、一時的により大きな形態変化を誘導する。ほ乳類の粘性の鼻粘膜および鳥類の孵化鶏卵の羊水の影響により、TDMは、卵内でのベクター送達を促進すると考えられている。アーノルド(Arnold)らが記載したTDMの安全性プロファイルは、免疫された鳥類の健康増進および食物連鎖に取り込まれることに対するコンプライアンスにおいても特に有用である。
【0152】
投与すべきベクターの量は、対象および処置を受ける個体の状態によって異なり、1日当たり1もしくは数μg/kg〜数百もしくは数千μg/kgであり、好ましくはワクチンまたは免疫学的組成物の投与量は、1羽当たり101〜106プラーク形成ユニット(PFU)、好ましくは1羽当たり102〜105PFUとなるように選択する。注射用には、力価以上を含有するワクチンを薬剤学的もしくは獣医学的に許容される液体(例えば、生理食塩水など)で希釈し、翼膜投与の場合には、最終容量が約0.1もしくは0.01mlになるようにする。本発明に従うベクターおよび方法は、卵内ワクチン接種、1日齢のヒナのワクチン接種、ならびにより日齢数の高いヒナおよび成鳥へのワクチン接種にも利用できる。
【0153】
ベクターは、遺伝子生成物(例えば、エピトープ、抗原、治療性および/または抗体など)組成物に対して規定された量に達するような量を非侵襲的に鳥類対象に投与できる。もちろん、本発明は本明細書に例示されている以上および以下の投与量、ならびに鳥類対象に投与される任意の組成物(それらの構成成分を含む)および任意の特定の投与法も意図しており、従って、次のようなものを決定することが好ましい:毒性(適切な鳥類モデルにおいて致死量(LD)およびLD50値を求めるなど)、適切な応答を誘起するような組成物の投与量、その中の組成物濃度、および組成物投与のタイミング(ELISAおよび/もしくは血清中和分析などによって血清滴定および分析を行うなど)など。そのような決定に際しては、当業者の知識、本明細書の開示および本明細書中の引用文献に基づけば、不要な実験をする必要はない。
【0154】
組換えベクターは、本明細書および/もしくは本明細書の引用文献に記載されている投与量に対応するインビボ発現量を確保するために適切な量を投与できる。例えば、ウイルス懸濁液の適切な範囲は実験的に求められる。ひとつ以上の組換え体によってひとつ以上の遺伝子生成物が発現される場合には、各組換え体はこのような量で投与でき、あるいは、各組換え体は、組み合わせることによって、このような量を含む組換え体の総量になるように投与できる。
【0155】
本発明に使用するベクターまたはプラスミド組成物においては、投与量は、本明細書中の引用文献、または本明細書、または本明細書中の引用文献中で参照もしくは引用されている文献に記載されているような量である。好ましくは、投与量は、抗原が直接含まれている組成物と同様な応答を誘起できる、または、そのような組成物の投与量と同様な発現をする、または組換え組成物によってインビボで得られる発現と同様な発現をするために十分な量でなければならない。
【0156】
しかしながら、適切な免疫学的応答を誘起する組成物の投与量、それらに含まれる構成成分の濃度、および投与タイミングは、例えば、ELISAおよび/もしくは血清中和アッセイ分析などによって血清の抗体を滴定するなどの方法によって決定できる。そのような決定に際しては、当業者の知識、本明細書の開示および本明細書中の引用文献に基づけば、不要な実験をする必要はない。さらに、連続投与の時間は、本明細書の開示から確認できる方法および当業者の知識から、不要な実験をすることなく確認できる。
【0157】
本発明に包含される免疫原性もしくは免疫学的組成物は、アジュバントを含む場合がある。適切なアジュバントとしては、fMLP(N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン;米国特許第6,017,537号明細書)、ならびに/または、アクリル酸もしくはメタクリル酸ポリマー、ならびに/または、無水マレイン酸とそのアルケニル誘導体とのコポリマーなどが挙げられる。アクリル酸もしくはメタクリル酸ポリマーは、糖類もしくはポリアルコール類のポリアルケニルエーテルなどと架橋を形成できる。これらの化合物は、「カルボマー」という名称で知られている(Pharmeuropa、第8巻第2号、1996年6月)。当業者であれば、米国特許第2,909,462号明細書も参照でき(参照することにより援用する)、該特許中では、そのようなアクリルポリマーが、少なくとも3個の水酸基を含むポリヒドロキシル化合物と架橋形成することについて開示されており、ひとつの実施態様においは、ポリヒドロキシル化合物は水酸基の数が8個未満であり、別の実施態様においては、少なくとも3個の水酸基の水素原子は、少なくとも2個の炭素原子を含む不飽和脂肪族ラジカルと置換されており、また別の実施態様においては、ラジカルは2〜4個の炭素原子(例えば、ビニル類、アリル類およびその他のエチレン性不飽和基など)を有している。不飽和ラジカルは、それ自身がメチルなどの置換基を持つことができる。Carbopol(登録商標(ノヴェオン(Noveon)社、アメリカ合衆国オハイオ州)いう名称で販売されている製品は、アジュバントとしての用途に特に適している。それらは、アリルシュクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋形成し、「Carbopol」974P、934Pおよび971Pについて言及されている。
【0158】
無水マレイン酸およびアルケニル誘導体のコポリマーについては、EMA(登録商標)製品(モンサント(Monsanto)社)についての記載があり、それらは無水マレイン酸およびエチレンのコポリマーであり、直線結合または架橋形成をし、例えば、ジビニルエーテルなどと架橋形成する。参照することにより本明細書に援用する、米国特許第6,713,068号明細書およびレゲルソン(Regelson,W.)ら、1960年を参照のこと。
【0159】
四級アンモニウム塩を含む陽イオン性脂質については米国特許第6,713,068号明細書に記載されており(その内容を参照することにより本明細書に援用する)、本発明に従う方法および組成物に使用できる。これらの陽イオン性脂質のなかでは、DMRIE(N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(テトラデシルオキシ)−1−プロパンアンモニウム;国際特許出願公開第96/34109号パンフレット)が好ましく、中性脂質と優先的に反応し、特にDOPE(ジオレオイル−ホスファチジル−エタノールアミン;ベール(Behr,J.P.)、1994年)とよく反応してDMRIE-DOPEを形成する。
【0160】
組換えワクチンまたは免疫原性もしくは免疫学的組成物は、水中油エマルションの様式にも調製できる。水中油エマルションは、例えば、軽流動パラフィン油(ヨーローッパ薬局方型);イソプレノイド油(スクアラン、スクアレン、EICOSANE(商標)またはテトラテトラコンタンなど);アルケンのオリゴマー化によって得られた油(例えば、イソブテンもしくはデセンなど、直鎖アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル類(例えば、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジカプリレート/プロピレングリコールジカプレート、グリセリルトリカプリレート/グリセリルトリカプレート、またはプロピレングリコールジオレエートなど);分岐鎖脂肪酸もしくはアルコールのエステル類(例えば、イソステアリン酸エステルなど)を基にすることができる。油は、乳化剤と組み合わせて使用してエマルションを形成することが好ましい。乳化剤としては、非イオン性の界面活性剤を用いることができ、そのようなものとしては、例えば、ソルビタン、マンニッド(例えば、無水マンニトールオレエートなど)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、ならびにオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸もしくはヒドロキシステアリン酸のエステルなど(それらは場合によってはエトキシル化されている)、さらに、ポリオキシプロピレン−ポリオシキエチレンコポリマーブロック(例えば、L121などのPluronic(登録商標)製品など)などが挙げられる。アジュバントは、乳化剤、ミセル形成剤および油類(例えば、Provax(登録商標)(IDECファーマシューティカルズ(IDEC Pharmaceuticals)社、カリフォルニア州サンディエゴ)という名称で販売されているものなど)の混合物を用いることができる。
【0161】
ひとつもしくはそれ以上の目的の抗原または免疫原を発現する組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスベクター(例えば、本開示に従うベクターなど)は、安定化剤を添加し、約5℃で液体状態で、または凍結乾燥状態で、保存および/または保持および貯蔵できる。凍結乾燥は、既知の標準的な凍結乾燥法に従って実施できる。薬剤学的に許容される安定化剤としては、SPGA(シュクロースホスフェートグルタメートアルブミン;ボヴァーニック(Bovarnick)ら、1950年)、炭化水素類(例えば、ソルビトール、マンニトール、ラクトース、シュクロース、グルコース、デキストラン、トレハロースなど)、グルタミン酸ナトリウム(ツヴェコフ(Tsvetkov,T.)ら、1983年;イスラエリ(Israeli,E.)ら、1993年)、タンパク質(ペプトン、アルブミンまたはカゼインなど)、脱脂粉乳などのようなタンパク質含有剤(ミルズ(Mills),C.K.ら、1988年;ウォルフ(Wolff,E.)ら、1990年)、ならびに緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、アルカリ金属リン酸緩衝液など)などが挙げられる。アジュバントおよび/もしくはビヒクルまたは賦形剤を用いて凍結乾燥調製物を可溶化できる。
【0162】
本発明は、以下の非限定的実施例においてさらに詳細に記述する。以下の実施例は、本発明の多様な実施態様を例示するためのものであり、いかなる意味においても、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0163】
実施例1:A/パナマ/2007/99HAをコードしているAdベクターの構築
2003〜2004年のワクチン製造用に選択されたインフルエンザウイルス株A/パナマ/2007/99HA(H3N2)(配列番号1、2)は、疾病対策予防センター(Centers for Disease Control:CDC)から供与された。赤血球凝集素(HA)遺伝子は、インフルエンザRNAの逆転写によってクローニングし、続いて、以下の表1に示すプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによってHA遺伝子を増幅した。
【表1】

【0164】
これらのプライマーは、A/パナマ/2007/99HA遺伝子の5'および3'末端にアニールする配列、ならびにHA開始ATGコドンのすぐ上流に存在する真核細胞性リボソーム結合部位に対応する配列(コザック(Kozak)、1986年)、および続いてクローニングを行うためのKpnI部位を有する。HA遺伝子の全長を含むKpnIフラグメントは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下、正しい方向でpShuttle-CMV(ヒー(He)ら、1998年)(T.ヒー(He)より供与)のKpnI部位に挿入した。A/パナマ/2007/99HAをコードしているE1/E3欠損Ad5ベクター(AdPNM2007/99.H3)は、記載(ゼン(Zeng)ら、2001年)に従い、単純な組換え系を用いてヒト293細胞内で作出した。 AdPNM2007/99.H3ベクターは、HA挿入体およびベクター間の5'および3'結合部をシークエンスすることによって確認した。A/パナマ/2007/99に対するHI抗体は、マウスの鼻内にAdPNM2007/99.H3を投与した後に誘起された。
【0165】
実施例2:組換えAdベクターを卵内および筋肉内注射することによるニワトリの免疫化
ヒトAdベクターを用いたワクチンをニワトリに接種することによる免疫化についてはこれまで報告されていない。Ad5は、鳥類では天然には見出されないことから、該ベクターは、ニワトリ細胞内で効率的に感染および/もしくは複製できないと考えられていた。驚くべくことに、AdPNM2007/99.H3をニワトリに筋肉内接種してから2週間後には、接種した3羽全ての個体において血清HI力価が512に達した(図1)。
【0166】
9日齢および18日齢の孵化鶏卵にAdPNM2007/99.H3ベクターを注射したところ、孵化2週間後の血清HI力価は、前者では8および16に達し、後者では、<4、4および8に達した。この結果から、E1/E3欠損ヒトAd5ベクターは、鳥類細胞内への形質導入能を有し、細胞内で複製不能であることから、鳥類におけるワクチンキャリヤーとして使用できる。卵内ワクチン接種によって誘導されるHI力価が比較的低い点については、特に、投与量および胚の日齢によるものであると考えられる。Ad5ベクターは、ニワトリ細胞表面に存在するコクサッキーウイルスおよびアデノウイルスレセプター(CAR)にベクターのファイバーを結合させることを介してニワトリ胚の一部に形質導入を行う(タン(Tan)ら、2001年)。ニワトリにおける免疫応答は、ごく少数の細胞への形質導入に続いて誘起されるが、これは、Adがインターナリゼーション後にエンドソームを妨害することにより、ベクターDNAを保護できる強力なベクターだからである。(キュリエル(Curiel)、1994年)。さらに、Ad構成要素の少なくともひとつであるヘキソンは免疫原性が高く、外来性抗原に対してアジュバント活性を付与する(モリニエール−フレンケル(Molinier-Frenkel)ら、2002年)。
AdPNM2007/99.H3ベクターは、9日齢(群1)および18日齢(群2)の孵化鶏卵の羊膜内に、それぞれ、1個当たり5×1010pfuとなるように200μlを注射した。各群には6個の鶏卵を使用したが、群1では2羽、群3では3羽が孵化したのみであった。血清HI力価は記載に従い(ヴァン・カンペン(Van Kampen)ら、2005年)、孵化2週間後に測定した。群3では、3羽の4週齢のニワトリに、AdPNM2007/99.H3ベクターが1羽当たり2.5×1010pfuとなるように100μlを筋肉内注射した。HI力価は接種2週間後に測定した。
【0167】
群1(9日齢の胚に卵内接種したもの)では、HI力価は8および16に達した。群2(18日齢の胚に卵内接種したもの)では、HI力価は、<4(力価は2とみなす)、4および8に達した。群3(4週齢のニワトリに筋肉内接種したもの)では、HI力価は、3羽全てにおいて512に達した。図1はlog2で表したHI力価を示す。□は群1の個々の個体のHI力価に対応しており、△は群2の個々の個体のHI力価に対応している。○は群3の個々の個体のHI力価に対応している。
【0168】
実施例3:A/シチメンチョウ/ウィスコンシン/68H遺伝子(AdTW68.H5)をコードしているAdベクターの構築
AIウイルス株のHをコードしているA/シチメンチョウ/WI/68H(配列番号3、4)のDNA鋳型は、USDA南東家禽研究所(USDA Southeast Poultry Research Laboratory)(ジョージア州アテネ)から供与され、以下の表2に示すプライマーを用いてPCR増幅を行った。
【表2】

【0169】
これらのプライマーは、A/シチメンチョウ/WI/68H遺伝子の5'および3'末端にアニールする配列、Hの開始ATGコドンのすぐ上流に存在する真核細胞性リボソーム結合部位(コザック(Kozak)、1986年)、ならびに続いて行うクローニング用の特別な制限部位を含む。H遺伝子の全長を含むフラグメントは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターの転写制御下において、正しい方向でシャトルプラスミドpAdApt(クルーセル(Crucell)(オランダ国ライデン)から供与)のHindIII-BamHI部位に挿入した。A/シチメンチョウ/WI/68H遺伝子(AdTW68.H5)をコードしているRCA不含、E1/E3欠損Adベクターは、記載されているように(シー(Shi)ら、2001年)、pAdApt-TW68.H5をAd5骨格プラスミドであるpAdEasy1と同時トランスフェクトすることにより、ヒトPER.C6細胞(クルーセル(Crucell)から供与)内で産生された(ヒー(He)ら、1998年)。AdTW68.H5ベクターは、H挿入体およびベクター骨格との間の5'および3'結合部をシークエンスすることによって確認した。
【0170】
Adをベクターとする卵内接種用AIワクチンは、AI大流行の発生に対応して、迅速に製造でき、かつ、最上の安全プロファイルを以てニワトリ集団に集団接種できる。血清不含懸濁バイオリアクター(ルイス(Lewis)、2006年)内で行う、性質が明らかにされているPER.C6細胞内でのRCA不含Ad5ベクターの大量生産は、クロマトグラフィー精製(コンツ(Konz)、2005年)および長期保存用の冷凍庫を必要としない緩衝液(エヴァンス(Evans)、2004年)と組み合わせることにより、Ad5ベクターの生産コストが大幅に削減される。AIワクチン製造用の基質として、孵化鶏卵の代わりに培養細胞を使用することは、特に、培養鶏卵の供給が不足しているときにAIの大発生が生じた場合には、重要である。このAd5をベクターとするAIワクチンは、DIVA戦略に適しているが、これは、該ベクターがウイルス性HAのみをコードしているからである。従って、血清HI抗体分析と共に、固相酵素免疫検定法による抗AI核タンパク質の測定を行うことにより、AIワクチンまたはウイルスへの暴露を迅速に判断できる。
【0171】
ニューカッスル病ウイルスベクター(スワィン(Swayne)、2003年)または非病原性インフルエンザウイルス骨格を有するインフルエンザウイルス再集合体(リー(Lee)、2004年)からHAを発現させることにより、エアロゾルAIワクチンが開発されているが、RCA不含Ad5をベクターとする卵内接種用AIワクチンは、DIVA戦略に適した非複製性AIワクチンの一定量を自動送達することを介し、免疫された個体内でのHPAIウイルス感染を阻止できる特異的なプラットフォームを提供する。復帰突然変異体生成のリスクを有し、また、環境内の標的および非標的種において遺伝子改変微生物を拡散させる複製組換えベクターとは異なり、RCA不含Ad5ベクターは、野外では増殖しない。現在循環している野生型インフルエンザウイルスと所望しない再集合体をさらに形成する可能性がある再集合体AIウイルスワクチン(ヒルマン(Hilleman)、2002年)とは対照的に、Ad5のDNAゲノムは、インフルエンザウイルスの分断されたRNAゲノムと再集合を起こすことはない。
【0172】
実施例4:AdTW68.H5の卵内接種
卵内接種は記載(セネ(Senne)、1998年;シャーマ(Sharma)ら、1982年)に従って行った。接種前に全ての胚を明かりに透かして生存を確認し、接種部位に印を付け、3.5%のヨウ素含有70%エチルアルコール溶液で消毒した。先端が尖った回転式ドリルで殻に穴を空けた。接種は、1mlシリンジを用い、羊膜−尿膜経路で行った。接種後、溶融パラフィンで穴をふさいだ。
【0173】
実施例5:AdTW68.H5接種後の血清学
AI株A/シチメンチョウ/WI/68をSPF孵化鶏卵に接種し、力価が106 50%胚感染量/mlに達するようにした。羊膜尿膜液について赤血球凝集活性を調べた。個々の血清サンプルにおける抗体価は、記載(スワィン(Swayne)、1998年;サヤー(Thayer)ら、1998年)に従い、4赤血球凝集素量のAIウイルスを用いて赤血球凝集阻害によって測定した。
【0174】
実施例6:AIゲノムのサンプリングおよび定量
個々の個体から採取した口咽頭サンプルは、1.0mlの脳心臓輸液(ディフコ(Difco)社、ミシガン州デトロイト)中に懸濁し、−70℃で保存した。RNAは、RNeasy mini kit(キアゲン(Quiagen)社)を用いて抽出した。記載(スパックマン(Spackman)、2002年)に従い、A型インフルエンザウイルスマトリックスRNAに特異的なプライマーを用い、定量的即時RT-PCRを行った。ウイルスRNAは、既知量のA/Ck/ケレタロ/14588-19/95対照RNA(101.0〜106.0EID50/ml)を用いて作成した標準曲線を使用することにより、循環閾値から内挿した。
【0175】
実施例7:AdTW68.H5を卵内接種し、孵化後にブースター接種を行うことによるニワトリの免疫化
接種によるニワトリの免疫化は、胚化10もしくは18日目のSPF孵化鶏卵に、ウイルス粒子を1011個/ml(vp/ml)を含むAdTW68.H5を300μl投与することによって行った。各群の孵化後のヒナは同等に2群に分けた:半数には、孵化後15日目に同量のAdTW68.H5を経鼻再接種し、残りのヒナには孵化後のブースター接種は行わなかった。
【0176】
これらの個体群から孵化後28日目に採取した血清中で検出されたHI抗体価を図2に示す。胚化10日目に卵内にワクチン接種を行ったヒナは、2〜7log2(平均4.2)の間のHI力価を示し;胚化10日目に卵内にワクチン接種を行い、孵化後ブースター接種を行ったヒナは、2〜9log2(平均5.5)の間のHI力価を示し;胚化18日目に卵内にワクチン接種を行ったヒナは、2〜9log2(平均5.5)の間のHI力価を示し;胚化18日目に卵内にワクチン接種を行い、孵化後15日目にブースター接種を行ったヒナは、2〜8log2(平均5.7)の間のHI力価を示した。全体として、ヒトAdをベクターとするこのAIワクチンを卵内接種することにより、ヒナの体内で、AIに対して強力な免疫応答が誘導された。このベクターを用いたワクチンをニワトリの鼻内に投与する方法が最近実施されたが効果がなかった(ガオ(Gao)、2006年)。
【0177】
実施例8:AdTW68.H5を卵内接種することにより、高病原性鳥インフルエンザ株HPAI A/Ck/ケレタロ/19/95(H5N2)を用いた致死性チャレンジに対して防御を発揮
19個のSPFニワトリ胚は、実施例7の記載と同量のAdTW68.H5を胚化18日目に卵内接種することによって免疫した。孵化したヒナについては、翼バンドによって個別に識別した。1群12羽のヒナは、孵化後15日目に経鼻ブースター接種を行い、残りの7羽についてはブースター接種を行わなかった。血液サンプルは、翼にバンドを付けた各個体から23日目および29日目に採取し、鳥インフルエンザ株A/シチメンチョウ/ウィスコンシン/68に対する抗体について、HIによって調べた。全体として、これらの個体において検出されたHI抗体価(図3)は、従前の試験において得られた値(図2)と類似していた。ほとんどの個体において力価は≧5log2に達した。卵内にのみ接種を受けたヒナでは、孵化後23日目の抗体価は5〜9log2に達した(図3)。これらのヒナでは、孵化後29日目まで抗体価が維持されたか高まった。卵内ワクチン接種と鼻内ブースター投与とを組み合わせることにより、孵化後23日目の抗体価は3〜9log2に達した(図3)。従前の群と同様に、接種後29日目においては、大多数のヒナでは抗体価が1もしくは2log2高まった。
【0178】
チャレンジは、生物学的安全性レベル3+の設備内で、HPAI A/Ck/ケレタロ/19/95(H5N2)の105 50%胚感染量(EID50)を口咽頭接種することによって行った(ホリモト(Horimoto)、1995年;ガルシア(Garcia)、1998年)。このチャレンジ株のH遺伝子は、Adをベクターとするワクチンに使用したAI株A/Tk/WI/68のH遺伝子とのヌクレオチド一致性が90.1%、推定アミノ酸配列の類似性が94.4%である(ジェンバンク(Genbank)アクセッション番号U79448およびU79456)(配列番号5、6、7、8)。
【0179】
総数30羽のうち、7羽には卵内ワクチン接種を行い、12羽には卵内ワクチン接種を行った後に、孵化後15日目に鼻内ブースター接種を行い、11羽はワクチン未接種対照とし、これら全てに対し、孵化後34日目にチャレンジを行った。
【0180】
チャレンジを行った個体は、実験期間の14日間を通して、罹病率および致死率について毎日観察した。AIの臨床兆候であるとさかおよび肉垂の発汗、結膜炎、食欲不振および低体温は、11羽の対照個体の内の10羽において、チャレンジ後2日目から観察された。2日後、対照群中の大多数の生存個体は、とさかの壊死、肉垂の腫脹、下痢、脱水症状、嗜眠および脚の脛の皮下出血を呈していた。ワクチン接種した個体では、いずれも、疾病の兆候は現れなかった。AdTW68.H5をワクチン接種した(卵内のみ、および卵内+鼻内ブースター)全ての個体は、チャレンジに耐えた(19/19)(図4)。
【0181】
チャレンジ個体中のA/ニワトリ/ケレタロ/19/95ウイルスゲノムは、チャレンジ後2、4および7日目に採取した口咽頭スワブから即時逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行って定量的に測定した。チャレンジ7日後には、ワクチン接種個体と非接種個体との間で、AIウイルスゲノム濃度に顕著な差があった(P<0.05)(図5)。免疫を行った個体では、検出可能なウイルスRNAが存在しなかったことから、卵内ワクチン接種により、1週間以内のAIウイルス排出を制御できる程度の免疫応答が誘起されたという事実が得られた。
【0182】
これらの結果をまとめると、別異のインフルエンザウイルス(ヒトおよび鳥類由来)由来のH遺伝子をコードしているRCA不含ヒトAdベクターを卵内に接種したニワトリは、同種のAIウイルスに対してHI抗体を発現し、同じH型の高病原性AIウイルス株を用いた致死性チャレンジに対して防御された。
【0183】
実施例9:AdTW68.H5を卵内接種することにより、高病原性鳥インフルエンザ株 A/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005(H5N1)を用いた致死性チャレンジに対して防御を発揮
AdTW68.H5をベクターとするAIワクチンが、最新のH5N1 HPAIウイルス株に対する防御を付与するか否かを確認することを目的として、31羽のニワトリに対し、AdTW68.H5ベクターの2×108ifu量を卵内ワクチン接種した。対照群としては、無関係な抗原(破傷風毒素Cフラグメント)をコードしているAd5ベクター(AdCMV-tertC)をワクチン接種した10羽(シー(Shi)ら、2001年)およびAd5ベクターに接触させなかった10羽を用いた。
【0184】
31日目に、対照および免疫したニワトリに、H5N1 AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴル/244L/2005をチャレンジした(このチャレンジ株のHAの推定HAアミノ酸配列は、A/シチメンチョウ/ウィスコンシン/68株のHAとの類似性が89%である)。図6に示すように、卵内ワクチン接種により、25日目には1〜6log2の抗体が誘導された。ワクチン未接種個体(10/10)およびAdCMV-tertC接種個体(10/10)では、測定可能なHI抗体を産生した個体はひとつもなく、チャレンジ後9日目には全てAIによって死亡したが、AdTW68.H5を接種した個体では、68%(21/31)がチャレンジ10日後に臨床兆候を示すことなく生き残っていた(図7)。特記すべきことは、HI抗体価が≧3log2である免疫群中の7羽は(図6)、この高致死性H5N1 AIウイルスによって死亡した。このH5N1 AIウイルスに対する生存率は、抗原性が近いHAをコードしているAd5ベクターを用いて卵内ワクチン接種を行うことにより向上すると考えられる。
【0185】
これらの結果は、鳥類H5HAをコードしているRCA不含ヒトAd5ベクターを卵内接種したニワトリは、HPAIウイルスに対して防御免疫を誘起できることを示している。本発明の好ましい実施態様について詳細に記載してきたが、本発明は請求項によって規定され、上述の特定の実施態様によって制限されるものではないことは自明であり、それらの多数の適切な変形も本発明の範疇の範囲内で可能である。
【参考文献】
【0186】
















【図面の簡単な説明】
【0187】
発明の詳細な説明は、例示のためのものであって、本発明を記載されている特定の実施態様に限定するためのものではないことは、本明細書中に参照することにより取り入れる、添付の図面と併せて理解されよう。
【図1】鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターを卵内および筋肉内に注射することによるニワトリの免疫化を示すグラフ。群1は、9日齢の孵化鶏卵、群2は、18日齢の孵化鶏卵をそれぞれ表し、200μl(1個あたり5×1010pfu)を注射した。群3では、鳥インフルエンザHAを発現する組換えアデノウイルスベクターを3羽の4週齢のニワトリの筋肉内に100μl(1羽当たり2.5×1010pfu)注射した。
【図2】SPF鶏卵の培養の10日目および18日目にAdTW68.H5を接種し、孵化後28日目に測定した赤血球凝集素阻害抗体力価(ドット)を示すグラフ。鶏卵培養の10日目および18日目に卵内ワクチン接種を受けたニワトリに対し、孵化後15日目に鼻内ブースター接種を行った。横線は、log2[HI力価]の幾何平均である。ナイーブ対照個体では、HI力価は検出されなかった(データは示していない)。
【図3】AdTW68.H5を用い、SPF鶏卵培養の18日目のみに卵内に接種(7個体)したか、または、卵内接種および孵化後15日目に鼻内ブースター接種(12個体)したニワトリにおいて、孵化後23日目および29日目に測定した赤血球凝集素阻害抗体力価を示すグラフ。D23およびD29は、それぞれ、孵化後23日目および29日目のHI力価を表す;ドットは、各個体のlog2[HI力価]である;横線は、log2[HI力価]の幾何平均である。孵化後23日目および29日目において、11羽のナイーブ対照個体ではHI力価が検出されなかった(データは示していない)。
【図4】白色レグホン種の鶏卵培養18日目に卵内ワクチン接種を行ったグラフ。卵内ワクチン接種は、1011vpのAdTW68.H5を用いて行った。別の群では、卵内ワクチン接種を行った個体に対し、孵化後15日目に同投与量のAdTW68.H5を点鼻することによってブースター接種した(卵内+鼻内ブースター接種)。免疫していないナイーブ対照個体を負の対照とした(対照)。34日齢のニワトリに対し、致死量の高病原性A/Ck/ケレタロ/14588-19/95(H5N2)AIウイルス株を後鼻孔からチャレンジした。ログランク検定(Prism4.03,GraphPad Software)を用いることにより、試験の間、統計的に顕著な生存率の変化が認められた。AdTW68.H5を卵内ワクチン接種した個体は、鼻内ブースター投与の実施、不実施に関わらず、AIウイルスを用いた致死チャレンジに対して、ワクチン非接種対照と比較して、顕著に保護された(100%、P<0.001)。
【図5】高病原性A/Ck/ケレタロ/14588-19/95 AIウイルスを用いて鼻内チャレンジ後、ワクチン接種個体および対照個体から採取した口咽頭サンプルについて、定量即時RT-PCRを用いて定量して得られた該ウイルスのRNA量を示すグラフ。ニワトリは、図3の説明中の記載に従ってワクチン接種した。サンプルは、感染後2、4および7日目に採取した。ワクチン接種群とワクチン非接種対照との間において、7日目にウイルス負荷の差が顕著になった(P<0.05)。
【図6】鶏卵培養18日目に3×108ifuのAdTW68.H5ベクターを接種することによって行った卵内ワクチン接種を示すグラフ。Ad5ベクターは、Sartobind Q5膜(サルトリウス・ノース・アメリカ(Sartorius North America)社、ニューヨーク州エッジウッド)を用いて精製し、A195緩衝液(エヴァンス(Evans)、2004年)中に再懸濁した。D25のチャレンジ前の血清HI抗体を分析した。マイナス記号(−)はチャレンジで死亡した個体を、プラス記号(+)はチャレンジに耐えた個体を示す。生存個体では、死亡個体と比較して、チャレンジ前の血清HI活性が顕著に上昇していた(P<0.001)(非対t検定;Prism4.03)。全てのナイーブ対照個体および対照ベクターであるAdCMV-tetCを用いて免疫化した個体では、HI抗体力価は測定できなかった。
【図7】鶏卵培養18日目に3×108ifuのAdTW68.H5ベクターを接種することによって行った卵内ワクチン接種を示すグラフ。Ad5ベクターは、Sartobind Q5膜(サルトリウス・ノース・アメリカ(Sartorius North America)社、ニューヨーク州エッジウッド)を用いて精製し、A195緩衝液(エヴァンス(Evans)、2004年)中に再懸濁した。対照および免疫個体に対し、31日目に105 EID50のH5N1 AIウイルスA/ハクチョウ/モンゴルa/244L/2005を鼻内投与することによってチャレンジした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えヒトアデノウイルス発現ベクターであって、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を有し、かつ、発現することを特徴とする発現ベクター。
【請求項2】
前記アデノウイルス性DNA配列が、アデノウイルス血清型5型(Ad5)由来であることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記アデノウイルス性DNA配列が、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルス、および野生型アデノウイルスからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記プロモーター配列が、ウイルス性プロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β−アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、伸長因子1−α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターおよびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項5】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項6】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来であることを特徴とする請求項5記載の発現ベクター。
【請求項7】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項5記載の発現ベクター。
【請求項8】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載の発現ベクター。
【請求項9】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項7記載の発現ベクター。
【請求項10】
鳥類対象にインビボ送達するための免疫学的組成物またはワクチンであって、獣医学的に許容されるビヒクルもしくは賦形剤、ならびに、アデノウイルス性DNA配列、および、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含むことを特徴とする免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項11】
前記アデノウイルス性DNA配列がアデノウイルス血清型5型由来であることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項12】
前記アデノウイルス性DNA配列が、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルスおよび野生型アデノウイルスからなる群より選択されることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項13】
前記プロモーター配列が、ウイルス性プロモーター、鳥類プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、β−アクチンプロモーター、アルブミンプロモーター、伸長因子1−α(EF1-α)プロモーター、PγKプロモーター、MFGプロモーターおよびラウス肉腫ウイルスプロモーターからなる群より選択されることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項14】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項15】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来であることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項16】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項17】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項16記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項18】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、3型および5型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項17記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項19】
アジュバントを追有することを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項20】
更なるワクチンを追有することを特徴とする請求項10記載の免疫学的組成物またはワクチン。
【請求項21】
細胞内にひとつもしくはそれ以上の鳥類抗原または免疫原を導入し、発現させる方法であって、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を有し、かつ、発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターに細胞を接触させ;さらに、細胞内でひとつもしくはそれ以上の該鳥類抗原もしくは免疫原を発現するのに十分な条件下で該細胞を培養することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記細胞が293細胞であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記細胞がPER.C6細胞であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項24】
ひとつもしくはそれ以上の目的の前記鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項25】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
鳥類胚内にひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を導入し、発現させる方法であって、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を有し、かつ、発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターに鳥類胚を接触させ;それによって、鳥類胚内でひとつもしくはそれ以上の鳥インフルエンザ抗原または免疫原を発現させることを特徴とする方法。
【請求項30】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、ひとつもしくはそれ以上の鳥類ウイルス由来であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項32】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
更なるワクチン投与を追有することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項35】
前記接触が、卵内送達によって生じることを特徴とする請求項29記載方法。
【請求項36】
鳥類対象において免疫原性応答を誘起する方法であって、請求項10〜20のいずれか1項記載の組成物の免疫学的有効量を鳥類対象に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
鳥類対象において鳥インフルエンザに対する免疫原性応答を誘起する方法であって、請求項10〜20のいずれか1項記載の組成物の免疫学的有効量を鳥類対象に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
鳥類対象において免疫原性応答を誘起する方法であって、アデノウイルス性DNA配列、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている外来性配列に機能発揮できるように連結されているプロモーター配列を有し、かつ、発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含む免疫学的組成物の免疫学的有効量を用いて鳥類対象に感染させ、ここで、ひとつもしくはそれ以上の目的の該鳥類抗原または免疫原が、鳥類対象内のひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原に対して免疫原性応答を誘起するのに十分な量が発現されることを特徴とする方法。
【請求項39】
ひとつもしくはそれ以上の目的の前記鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
ひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原をコードしている前記外来性配列が、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
更なるワクチンを追有することを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項44】
翼膜、翼端、胸筋または腿筋組織への筋肉内注射によって鳥類対象を感染させることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項45】
前記鳥類対象を、卵内感染させることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項46】
鳥類対象への接種法であって、鳥類対象の病原の抗原をコードしている異種核酸分子を有し、かつ発現する組換えヒトアデノウイルスを卵内投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
前記ヒトアデノウイルスが、アデノウイルス血清型5型由来の配列を有することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記ヒトアデノウイルスが、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を有することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記鳥類対象の病原の抗原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項46載の方法。
【請求項50】
鳥類の前記病原抗原が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記鳥インフルエンザの病原抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記鳥インフルエンザの病原抗原が、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項53】
更なるワクチン投与を追有することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項54】
免疫原性組成物を鳥類の胚へ輸送するための卵内投与装置であって、該装置がひとつもしくはそれ以上の目的の鳥類抗原または免疫原を発現する組換えヒトアデノウイルス発現ベクターを含み、該装置が前記組換えヒトアデノウイルスを鳥類の胚へ輸送することを特徴とする装置。
【請求項55】
前記ヒトアデノウイルス発現ベクターが、アデノウイルス血清型5型由来の配列を有することを特徴とする請求項54記載の装置。
【請求項56】
前記ヒトアデノウイルス発現ベクターが、複製欠損アデノウイルス、非複製性アデノウイルス、複製コンピテントアデノウイルス、または野生型アデノウイルス由来の配列を有することを特徴とする請求項54記載の装置。
【請求項57】
ひとつもしくはそれ以上の目的の前記鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザウイルス、伝染性滑液嚢疾病ウイルス、マレック病ウイルス、トリヘルペスウイルス、伝染性咽頭気管炎ウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、トリレオウイルス、鳥痘、鶏痘、カナリアポックス、鳩痘、ウズラ痘、トリポリオーマウイルス、ニューカッスル病ウイルス、トリニューモウイルス、トリ鼻気管炎ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリレトロウイルス、トリ内在性ウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ肝炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、トリ腸炎ウイルス、パチェコ病ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリパルボウイルス、トリロタウイルス、トリ白血症ウイルス、トリ筋腱膜線維肉腫ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリ骨髄芽球症関連ウイルス、トリ骨髄球腫症ウイルス、トリ肉腫ウイルスまたはトリ脾臓壊死ウイルス由来であることを特徴とする請求項54記載の装置。
【請求項58】
ひとつもしくはそれ以上の目的の前記鳥類抗原または免疫原が、鳥インフルエンザ由来であることを特徴とする請求項57記載の装置。
【請求項59】
鳥インフルエンザ抗原または免疫原は、赤血球凝集素、核タンパク質、マトリックスおよびノイラミニダーゼからなる群より選択されることを特徴とする請求項58記載の装置。
【請求項60】
鳥インフルエンザ抗原または目的の免疫原は、3型、5型、7型および9型の赤血球凝集素亜型からなる群より選択されることを特徴とする請求項58記載の装置。
【請求項61】
更なるワクチン投与を追有することを特徴とする請求項58記載の装置。
【請求項62】
病原体由来のひとつもしくはそれ以上の抗原をコードしている非複製性発現ベクターの接種を含む、鳥類宿主に免疫性を与える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−512421(P2009−512421A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527050(P2008−527050)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/031778
【国際公開番号】WO2007/022151
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507388384)ヴァクシン インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VAXIN, INC.
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【出願人】(508311237)オーバーン ユニヴァーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】AUBURN UNIVERSITY
【Fターム(参考)】