説明

非重合体カテキン類の非ガレート体の製造方法

【課題】高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的に製造する方法に関する。
【解決手段】本発明の非重合体カテキン類の非ガレート体の製造方法は、次の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする。
(1)非重合体カテキン類中のガレート体率が50質量%以上である茶抽出物をタンナーゼ処理する工程。
(2)タンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤に接触させ、次いで合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させる工程。
(3)工程(2)で得られた溶出液を晶析する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶抽出物の濃縮物等の茶抽出物を利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法が知られている。しかしながら、カテキン類を高濃度に配合すると、主にカテキン類のガレート体に起因して、苦味が強くなる傾向にある。この苦味を低減する手段として、例えば、非重合体カテキン類のガレート体をタンナーゼ処理により非ガレート体にする方法が提案されている(特許文献1〜2)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−321105号公報
【特許文献2】特開2005−130809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タンナーゼ処理により得られる緑茶抽出物は、非重合体カテキン類のガレート体及び非ガレート体と、没食子酸と、茶原料由来の夾雑物を含む混合物であり、非重合体カテキン類の非ガレート体の純度を高めるための技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的に製造すべく検討した結果、茶抽出物をタンナーゼ処理し、次いでタンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤で精製し、そして晶析することで、高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的に取得できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の工程(1)〜(3):
(1)非重合体カテキン類中のガレート体率が50質量%以上である茶抽出物をタンナーゼ処理する工程、
(2)タンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤に接触させ、次いで合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させる工程、
(3)工程(2)で得られた溶出液を晶析する工程
を含む、非重合体カテキン類の非ガレート体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的にかつ効率良く製造することができる。この非重合体カテキン類の非ガレート体は、非重合体カテキン類を高濃度に含み、苦味や渋味を低減させた飲食品の原料として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称である。非重合体カテキン類濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0009】
本明細書において「非重合体カテキン類のガレート体」とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等を併せての総称であり、また「非重合体カテキン類の非ガレート体」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン等を併せての総称である。非重合体カテキン類中のガレート体率又は非ガレート体率は、非重合体カテキン類の総量に対する上記したガレート体又は非ガレート体の質量比率である。なお、以下、「非重合体カテキン類のガレート体」及び「非重合体カテキン類の非ガレート体」をそれぞれ単に「ガレート体」及び「非ガレート体」とも称する。
【0010】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の非重合体カテキン類の非ガレート体の製造方法は、上記のとおり、工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
[工程(1)]
本発明に係る工程(1)は、茶抽出物をタンナーゼ処理する工程である。
本発明で用いる茶抽出物は、非重合体カテキン類中のガレート体率が50質量%以上であるが、非ガレート体を効率よく得る点から、60質量%以上、更に70質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。なお、非重合体カテキン類中のガレート体率は100質量%であってもよく、その上限は特に限定されるものではない。また、茶抽出物としては、固形分中の非重合体カテキン類の含有量が40質量%以上、60質量%以上、更に80質量%以上、特に93質量%以上であることが好ましい。なお、固形分中の非重合体カテキン類の含有量の上限は特に限定されないが、製造コストの観点から、98質量%であることが好ましい。
【0012】
このような性状の茶抽出物は、例えば、茶葉から得られた茶抽出物を必要により濃縮又は希釈するか、茶抽出物の濃縮物を希釈するか、又は茶抽出物と茶抽出物の濃縮物を併用して、非重合体カテキン類中のガレート体率、更には固形分中の非重合体カテキン類の含有量を調整することにより得ることができる。また、茶抽出物として市販品を使用してもよく、例えば、テアビゴ(DSM Nutritional Japan社製)、高純度ガロカテキンガレート製剤(Zhejiang Yixin Pharm社製)等が例示される。
【0013】
抽出に使用する茶葉としては、具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica、やぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が例示される。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類、烏龍茶に代表される半発酵茶、紅茶に代表される発酵茶がある。中でも、非重合体カテキン類の含有量の点から、緑茶が好ましく、茶抽出物として緑茶抽出物が好適に使用される。なお、茶の抽出方法としては、攪拌抽出、ドリップ抽出等の公知の方法を採用することができる。
【0014】
また、茶抽出物の濃縮物としては、茶葉から熱水又は有機溶媒水溶液により抽出された抽出物を濃縮したものが例示され、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。茶抽出物の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等が例示される。
【0015】
茶抽出物のタンナーゼ処理に使用する酵素としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが例示される。中でも、アスペルギルス オリーゼ由来のものが好ましい。市販のタンナーゼ活性を有する酵素は、酵素活性が通常400〜10000Unit/gであるが、3000Unit/g以上、更に3000〜10000Unit/g、特に4000〜10000Unit/gの酵素活性を有するタンナーゼを用いると、より一層高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を得ることができる。ここで、「1Unit」とは、30℃の水中においてタンニン酸に含まれるエステル結合を1マイクロモル加水分解する酵素量を示す。なお、具体的な処理方法としては、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法を採用することができる。
このようにしてタンナーゼ処理後の茶抽出物が得られるが、タンナーゼ処理後の茶抽出物は次工程にそのまま使用しても、必要により濾過、濃縮等を行ってもよい。
【0016】
[工程(2)]
本発明に係る工程(2)は、タンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤に接触させて茶抽出物中に含まれる非重合体カテキン類を合成吸着剤に吸着させ、次いで合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させる工程である。これにより、カフェイン及び没食子酸等の夾雑物が低減化され、より一層高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を得ることができる。
【0017】
本発明に使用する合成吸着剤としては、アンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、(供給元:米国ローム&ハース社)、ダイヤイオンHP20、HP21(三菱化学社製)、セパビーズSP850、SP825、SP700、SP70(三菱化学社製)、VPOC1062(Bayer社製)等のスチレン系;セパビーズSP205、SP206、SP207(三菱化学社製)等の芳香環に臭素原子を導入して吸着能を高めた置換スチレン系;ダイヤイオンHP1MG、HP2MG(三菱化学社製)等のメタクリル系;アンバーライトXAD761(ロームアンドハース社製)等のフェノール系;アンバーライトXAD7HP(ロームアンドハース社製)等のアクリル系;TOYOPEARL、HW-40C(東ソー社製)等のポリビニル系;SEPHADEX、LH−20(ファルマシア社製)等のデキストラン系が例示される。中でも、その母体が、スチレン系(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)、メタクリル系、アクリル系、ポリビニル系であるものが好ましく、特にスチレン系であるものが非重合体カテキン類と夾雑物との分離性の点から好ましい。
【0018】
合成吸着剤の使用量は、茶抽出物の全質量に対して3〜50容量%、特に10〜30倍容量であることが、夾雑物の除去効率及び非重合体カテキン類の回収率の向上の観点から好ましい。
【0019】
非重合体カテキン類を合成吸着剤に吸着させる方法としては、茶抽出物に合成吸着剤を添加し撹拌して非重合体カテキン類を吸着させた後、ろ過操作により合成吸着剤を回収するバッチ方法、又は合成吸着剤を充填したカラムに茶抽出物を通液して連続的に非重合体カテキン類の吸着処理を行なうカラム方法を採用することができるが、生産性の点からカラムによる連続処理方法が好ましい。
【0020】
かかる吸着処理前においては、合成吸着剤中の不純物の除去、非重合体カテキン類の吸着能の向上の観点から、合成吸着剤を洗浄することが好ましい。洗浄方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。先ず、空間速度(SV)=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数(BV)=2〜10[v/v]の条件で50質量%エタノール水溶液を合成吸着剤が充填されたカラムに通液して合成吸着剤中の不純物を除去する。次いで、SV=0.5〜10[h-1]、BV=1〜60[v/v]の条件で水をカラムに通液してカラム内のエタノールを水に置換する。
【0021】
合成吸着剤に非重合体カテキン類を吸着させる際の茶抽出物中の非重合体カテキン類の濃度は、0.1〜15質量%、更に0.2〜10質量%、特に0.5〜5質量%であることが、合成吸着剤への吸着効率の点から好ましい。
【0022】
茶抽出物を、合成吸着剤を充填したカラムに通液する際には、SV=0.5〜10[h-1]、BV=0.5〜10[v/v]、特にBV=0.5〜5[v/v]の条件で通液することが、非重合体カテキン類を合成吸着剤に効率的に吸着させる点から好ましい。
【0023】
茶抽出物を通液後、合成吸着剤を水又は有機溶媒水溶液で少なくとも1回洗浄することが好ましい。合成吸着剤の洗浄に使用する水としては、例えば、水道水、精製水、イオン交換水が例示され、有機溶媒と混合して使用することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン等のケトン、メタノール、エタノール等のアルコールが例示され、食品への使用の観点から、アルコール、特にエタノールが好ましい。有機溶媒水溶液中の有機溶媒の濃度は、5質量%未満、更に2質量%未満、特に1質量%未満であることが、非ガレート体の回収率の点から好ましい。
【0024】
この合成吸着剤の洗浄においては、SV=0.5〜10[h-1]、BV=0.5〜3[L/L]、特にBV=0.5〜2[L/L]の条件で通液することが好ましい。これにより、合成吸着剤に付着した夾雑物を効率よく除去しながら、非ガレート体の回収率を向上させることができる。
【0025】
次に、合成吸着剤から非重合体カテキン類を溶出させるが、有機溶媒水溶液を使用する場合は、上記と同様の有機溶媒を用いることが好ましく、中でも、アルコール、特にエタノールが好ましい。有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は、10〜95質量%、更に20〜80質量%、特に30〜70質量%、殊更に30〜60質量%であることが、非ガレート体の回収率の点から好ましい。
【0026】
有機溶媒水溶液の通液条件は、SV=0.5〜10[h-1]、特にSV=0.5〜5[h-1]であり、かつBV=0.5〜5[v/v]、特にBV=1.0〜2[v/v]であることが好ましい。これにより、高純度の非ガレート体をより一層効率よく得ることができる。
【0027】
他方、塩基性水溶液を使用する場合、塩基性水溶液として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の水溶液を使用することができる。中でも、ナトリウム、カリウム系のアルカリ性水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を好適に用いることができる。また、アルカリ性水溶液のpHは7〜14のアルカリ性領域であれば適宜調整することが可能であるが、非ガレート体の回収率の点から、9〜13.8、特に10〜13.5が好ましい。このようなpH領域のアルカリ性水溶液としては、4質量%以下の水酸化ナトリウム水溶液、1N−炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。
アルカリ性水溶液のアルカリ濃度は、溶出させる非重合体カテキン類濃度の制御が容易な点から、0.001〜4質量%、更に0.005〜1質量%、特に0.008〜0.2質量%、殊更0.01〜0.08質量%であることが好ましい。なお、塩基性水溶液は、有機溶媒と混合して用いてもよい。
【0028】
塩基性水溶液の通液条件は、SV=2〜10[h-1]、特にSV=3〜7[h-1]であり、かつBV=1〜30[v/v]、特にBV=5〜20[v/v]であることが、生産性及び非ガレート体の回収率の点から好ましい。
【0029】
このようにして非重合体カテキン類の非ガレート体を含む溶出液が得られるが、かかる溶出液は次工程にそのまま使用しても、必要により濾過、濃縮等を行ってもよい。
【0030】
[工程(3)]
本発明に係る工程(3)は、工程(2)で得られた溶出液を晶析する工程である。
本工程においては、高純度の非ガレート体を簡便に得るために、溶出液に有機溶媒が混入している場合には公知の方法にて脱溶剤することが好ましい。また、溶出液中の非重合体カテキン類の濃度は1〜25質量%、更に2〜15質量%、特に3〜10質量%であることが、晶析後の固液分離の点から好ましい。晶析時の温度としては、溶出液を20℃以下に冷却することが好ましく、非ガレート体を優先的に結晶化させる点から、冷却温度は−20〜10℃、更に−10〜9℃、特に0〜7℃であることが好ましい。また、冷却時間は2時間以上、更に2〜24時間、特に4〜12時間であることが好ましい。このような晶析条件を採用することで、非ガレート体の結晶を選択的にかつ効率的に析出させることができる。
【0031】
非ガレート体の結晶は、遠心分離、濾過、デカンテーション等の固液分離操作により容易に分取することができる。また、結晶の分離操作等は、0〜20℃、更に0〜10℃、特に0〜5℃で行うことが好ましい。
【0032】
このようにして得られる非重合体カテキン類は、非重合体カテキン類中の非ガレート体率を91〜100%、更に92〜100%、特に93〜100%とすることができる。
また、得られた非重合体カテキン類の非ガレート体は、固形分中に非重合体カテキン類の非ガレート体を、93〜100質量%、更に94〜100質量%、特に95〜99.9質量%含有することができる。
【0033】
本発明の製造方法により得られる非重合体カテキン類は、上記のとおり、非ガレート体の純度が高いので、苦味や渋味が顕著に低減されている。しがたって、本発明の非重合体カテキン類の非ガレート体は、高濃度の非重合体カテキン類を含み、かつ苦味や渋味が低減された食品又は飲料の原料として有用であるが、とりわけ緑茶飲料や非茶系飲料等の容器詰飲料とすることが好ましい。
【実施例】
【0034】
非重合体カテキン類及び没食子酸の測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0035】
実施例1
固形分中の非重合体カテキン類の含有量が95質量%であり、かつ非重合体カテキン類中のガレート体率が99.9質量%(エピガロカテキンガレート98質量%、エピカテキンガレート1.9質量%、エピカテキン0.1質量%)である茶抽出物(テアビゴ、DSM Nutritional Japan社製)100gをイオン交換水19Kgに溶解し、次いでタンナーゼ(タンナーゼKTFH、500Unit/g、キッコーマン社製)10gを添加し室温にて2.5時間加水分解反応を行った。次いで、50℃、2.5kpaの条件下で減圧濃縮し、タンナーゼ処理後の茶抽出物を得た。
次いで、合成吸着剤SP−70(三菱化学(株)製)1925mLを充填したステンレスカラム(内径72mm×高さ500mm)に、SV=1(h-1)、BV=2(v/v)の条件で50質量%エタノール水溶液を通液した後、SV=5(h-1)、BV=5(v/v)の条件で水を通液して洗浄した。次いで、タンナーゼ処理後の茶抽出物6777g(3.5倍容量対合成吸着剤)を、SV=1(h-1)、BV=3.5の条件でカラムに通液し透過液を廃棄した。次いで、通液速度がSV=1(h-1)、BV=1.5の条件で水を通液し洗浄した。水洗後、SV=1(h-1)、BV=1.5の条件で50質量%エタノール水溶液を通液して、溶出液2868gを回収した。
次いで、溶出液を50℃、1.5kPaの条件下で6倍に減圧濃縮した(溶出液中の非重合体カテキン類の濃度7質量%)。この濃縮物を「精製濃縮物1」とする。この濃縮物を5℃に冷却し12時間静置した。次いで、NO.2のろ紙を載せたブフナー漏斗により固液分離を行い非重合体カテキン類の非ガレート体の結晶を得た。結晶中の非重合体カテキン類のガレート体率は0質量%であり、固形分中の非ガレート体の含有量は95.7質量%(エピガロカテキンの含有量は94.1質量%)、没食子酸含有量は0.11質量%であった。
【0036】
実施例2
酵素活性5000Unit/gのタンナーゼを1g使用し、工程(2)における通液条件を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により非重合体カテキン類の非ガレート体の結晶を得た。結晶中の非重合体カテキン類のガレート体率は0質量%であり、固形分中の非ガレート体の含有量は99.9質量%(エピガロカテキン体の含有量は98質量%)、没食子酸含有量は0.04質量%であった。
【0037】
実施例3
固形分中の非重合体カテキン類の含有量が92質量%であり、かつ非重合体カテキン類中のガレート体率が100質量%(ガロカテキンガレート100質量%)である茶抽出物(Zhejiang Yixin Pharm社製)100gをイオン交換水20Kgに溶解し、次いでタンナーゼ(タンナーゼKTFH、5000Unit/g、キッコーマン社製)1gを添加し、室温にて3時間加水分解反応を行った。次いで、50℃、2.5kpaの条件下で減圧濃縮し、タンナーゼ処理後の茶抽出物を18000g得た。
次いで、実施例1と同様の洗浄方法により洗浄したステンレスカラムを用い、タンナーゼ処理後の茶抽出物18000g(9.4倍容量対合成吸着剤)を、SV=1(h-1)、BV=9.4の条件でカラムに通液し透過液を廃棄した。次いで、通液速度がSV=1(h-1)、BV=2の条件で水を通液し洗浄した。水洗後、SV=1(h-1)、BV=1.75の条件で50質量%エタノール水溶液を通液して、溶出液3025gを回収した。次いで、溶出液を50℃、1.5kPaの条件下で6倍に減圧濃縮した。この濃縮物を「精製濃縮物2」とする。
次いで、この濃縮物を5℃に冷却し12時間静置した。次いで、NO.2のろ紙を載せたブフナー漏斗により固液分離を行い非重合体カテキン類の非ガレート体の結晶を得た。結晶中の非重合体カテキン類のガレート体率は0質量%であり、固形分中の非ガレート体の含有量は94質量%、没食子酸含有量は0.14質量%であった。
【0038】
比較例1
実施例1における「精製濃縮物1」を用いた。
【0039】
比較例2
実施例3における「精製濃縮物2」を用いた。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から、茶抽出物をタンナーゼ処理し、次いでそのタンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤で精製し、そして晶析することで、没食子酸などの夾雑物の少ない高純度の非重合体カテキン類の非ガレート体を選択的にかつ効率よく得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)〜(3):
(1)非重合体カテキン類中のガレート体率が50質量%以上である茶抽出物をタンナーゼ処理する工程、
(2)タンナーゼ処理後の茶抽出物を合成吸着剤に接触させ、次いで合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液を接触させて非重合体カテキン類を溶出させる工程、
(3)工程(2)で得られた溶出液を晶析する工程
を含む、非重合体カテキン類の非ガレート体の製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、茶抽出物として、固形分中の非重合体カテキン類濃度が40質量%以上であるものを用いる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(1)において、酵素活性が3000Unit/g以上のタンナーゼを用いる、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程(3)において、20℃以下の温度で晶析する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
当該非重合体カテキン類の非ガレート体が固形分中に非重合体カテキン類の非ガレート体を93〜100質量%含有するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
茶抽出物として、緑茶抽出物を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−136703(P2010−136703A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318241(P2008−318241)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】