非鉄金属の品位分析方法と、その製造方法
【課題】高純度銅などの非鉄金属について、分析精度に優れ、工程管理や品質管理に適用することができる品位判定方法を提供する。
【解決手段】非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法であり、例えば、XY座標において、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定し、または、不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する方法。
【解決手段】非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法であり、例えば、XY座標において、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定し、または、不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属の品位判定方法と、該判定方法を利用した製造方法に関する。本発明の品位判定方法によれば、高純度銅などの非鉄金属について、含有不溶解物の残渣量等に基づいて、分析精度に優れ、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することができる品位判定方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、高純度金属や合金に含まれる不純物は、SEM等の機器分析や、硝酸または塩酸などの鉱酸に試料を溶解し、測定対象元素や濃度に応じて、lCPやICP−MS、FL−AASなどによって測定を行う湿式分析が一般的である。しかし、含有不純物の炭素、アルミニウム、チタン、ジルコンの酸化物等の耐火性元素は不溶解残渣になるため、これらの従来法による分析では正確に濃度を評価することができない。また、6N品位の超高純度金属を素材として加工されたスバッタリングターゲットや箔などの製品は、上記不溶解残渣が極微粒子となって含有されるため、これが不良品発生の原因になる。このような不溶解残渣に対して、従来は、顕微鏡などの目視観察等によって残渣量を求めていたが、局部的な観察のために目視観察等によるものは分析精度が低く、またSEM等の機器分析で測定する以外に評価手段がなく、工程管理や品質管理に反映させることができない。
【0003】
具体的には、例えば、非鉄金属含有物の分析方法として次の方法が従来知られている。すなわち、非鉄含有金属をサンプリングし、得られた粒状試料を研磨した後に、反射光による光学的性質を基礎として含有鉱物の形態を分析すると共に該鉱物の面積を求めて体積量に換算し、これから該鉱物の構成元素濃度を算定する方法である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−28604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記分析方法は、試料の研磨に時間がかかるうえに、表面に現れる鉱物の面積を基準にして分析を行うために分析精度が低いと云う問題がある。本発明は、従来の分析方法における上記問題を解決したものであり、高純度銅などの非鉄金属について、分析精度に優れ、工程管理や品質管理に適用することができる品位判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成からなる非鉄金属の品位判定方法である。
(1)非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法。
(2)XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する上記(1)の品位判定方法。
(3)XY座標において、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する上記(1)の品位判定方法。
(4)非鉄金属がCu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Znの各金属またはこれらの合金であり、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量である上記(1)〜(3)の何れかに記載する品位判定方法。
(5)非鉄金属がターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属である上記(1)〜(4)の何れかに記載する品位判定方法。
(6)非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて該非鉄金属の品位を判定すると共に、上記残渣量xおよび上記炉材成分混入量yに基づいて溶融工程の条件を調整する非鉄金属の製造方法。
【0006】
本発明は、溶融工程を経た非鉄金属の品位判定方法であって、非鉄金属に含まれる不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法である。
【0007】
溶融工程を経た非鉄金属とは、製錬工程や精錬工程などにおいて、各種の溶融炉等による溶融工程を経た非鉄金属であり、例えば、高純度銅や高純度鉛など、あるいはこれらの合金などである。溶融工程において、溶融炉等の炉材成分が非鉄金属に僅かながら混入する場合がある。例えば、ターゲット材の素材となる高純度銅は、6N品位まで純度を高めるために、カーボン製の精製炉を用いて溶融精製されるが、この溶融工程で炉材のカーボンが微量ながら高純度銅に混入する。このカーボンは高純度銅中で微小な不溶解物(パーティクル)として存在する。
【0008】
また、溶融炉を覆う蓋材や炉周辺の設備の材料成分が混入する場合もある。例えば、炉を覆う蓋材に由来するアルミナや炉周辺の耐火材に由来するチタニア、ジルコニアなどが非鉄金属に固溶する場合がある。
【0009】
非鉄金属中にパーティクル等の不溶解物が含まれており、あるいは固溶体が存在すると、製品不良の原因になる。例えば、高純度銅に微小なカーボンパーティクルが含まれていると、これをターゲット材として用いたときに、製品不良の原因になるので、これらの不純物量を抑えるために、製造した非鉄金属製品について品位判定が行われている。
【0010】
通常、例えば、非鉄金属試料Agを硝酸等に溶解し、このときに生じる酸不溶解残渣量をBgとした場合、酸不溶解残渣量(Bg)の許容量を設定し、これに対して当該非鉄金属の品位が定められるが、単に残渣量を測定するだけでは不純物の成分およびその混入原因が不明であり、品位向上を図るための十分な情報が得られない。
【0011】
本発明は、非鉄金属試料について、不溶解残渣量だけではなく、その残渣成分を分析し、例えば、溶解炉の炉材成分であるカーボンの混入を明らかにし、上記不溶解物残渣量と、該不溶解物に含まれるカーボンなどの炉材成分の混入量とに基づいて品位を判定する方法である。なお、本発明において、不溶解残渣量とは非鉄金属を硝酸等に溶解したときに、カーボンや、アルミナ、ジルコニア等のような酸に不溶解な成分を主とする残渣の量であり、炉材成分混入量とは不溶解残渣に含まれる炉材成分の含有量である。
【0012】
本発明の判定方法は、非鉄金属に含まれる不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定する方法である。具体的には、例えば、高純度銅あるいは高純度鉛について、上記判定式のyは炉材成分のカーボン量、不溶解残量xはカーボンを含むその他の不溶解物の合計量である。判定式の係数[A]および定数bは非鉄金属の種類や用途などに応じて定められる。また、上記判定式は複数の分析データに基づいて例えば最小二乗法によって近似される直線である。
【0013】
品位の許容範囲は、例えば、定数bによって定められる。図1のXY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する。
【0014】
具体的には、例えば、図1のXY座標において、非鉄金属試料の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yについて、該非鉄金属の種類および用途などに基づいて定められた係数[A]、定数b1、b2をおのおの含む判定式y=[A]x+b1、y=[A]x+b2によって示される直線で区画される許容範囲Mを定め、個々の試料について得られた不溶解残渣量xと炉材成分混入量yの分析値をプロットし、この点が、不溶解残渣量xの目標値範囲内で、上記許容範囲Mに含まれるものを合格品位とする。図1の例において、各試料No.1〜No.4について得られる分析値S1〜S4のうち、試料No.1とNo.2の分析値S1とS2は許容範囲Mに含まれるので合格品位であり、試料No.3とNo.4の分析値S3とS4は許容範囲Mから外れるので不合格品である。
【0015】
本発明の判定方法は、品位の許容範囲を予め定める方法に限らず、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yのおのおの少なくとも2つ以上の分析値が、XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定することができる。
【0016】
具体的には、後述の実施例1に示すように、各試料について測定した不溶解残渣量xと炉材成分混入量yの分析値をXY座標にプロットした点が、y=[A]x+bの直線に近似され、各分析値の点が何れもこの直線の近傍に位置するので、不溶解残渣量の目標値範囲内で、これらの試料は何れも合格品位と判断することができる。
【0017】
本発明の方法によって品位を判定した非鉄金属を、例えば、ターゲット材や金属箔などに加工して使用すると、合格品位と判定されたものは殆ど不良品が発生せず、一方、不合格品と判定されたものは殆ど全てが不良品になり、本発明の判定方法は信頼性が高い。
【0018】
本発明の判定方法は、例えば、Cu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Zn等の各非鉄金属またはこれらの合金について、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量として幅広く適用することができ、具体的には、ターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属について好適に適用することができる。
【0019】
本発明の方法は、製造した非鉄金属の品位を判定することに限らず、品位判定のために測定した非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて非鉄金属の溶融工程条件を調整する指標として利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の判定方法によれば、非鉄金属の品位を、炉材成分混入量および不溶解残量に基づいて、精度良く判定することができるので、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することができる。具体的には、例えば、ターゲットや金属箔などの材料として用いられる高純度銅や高純度鉛などについて、不溶解残渣の成分分析に基づいて、ターゲット材についてはパーティクル発生量を低下させ、銅箔な鉛箔などの場合には異物混入による圧延不良を低減することができる。
【0021】
また、ICP−MS分析によって不溶解残渣の成分濃度を把握することによって、製品工程で異常が発生した場合にその要因元素の特定が容易になる。さらに、不溶解残渣量を規格化することによって一定品位に品質を管理することができる。なお、従来の非鉄金属における不溶解物分析では、その正確な成分濃度まで把握されておらず、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することは難しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の判定方法において、例えば、高純度銅について以下の手順に従って分析を行う。
(1)試料を硝酸にてエッチング処理を行い、表面近傍の付着不純物を除去する。
(2)エッチングした試料を100g秤量する。
(3)試料に硝酸を加えて加熱溶解する。
(4)室温まで冷却後、市販のフィルターにて濾過し、残渣を捕集する。
(5)炭素分析は上記(1)〜(4)を繰返して残渣を捕集したフィルターを試料とする。
(6)炭素を除く不純物元素について、上記(1)〜(4)を繰り返し、残渣を捕集したフィルターを試料とし、以下の手順に従って前処理を行う。
(7)残渣を捕集したフィルターを濃硫酸にて分解する。
(8)試料に硝酸と過酸化水素を加え、残渣およびフィルター中の有機物を分解する。
(9)残留硫酸分が乾固するまで白煙処理を行い、揮発させる。
(10)硝酸を加えた超純水にて、測定対象元素を抽出する。
(11)抽出濃縮後、2mlに定容し、ICP−MSにて成分測定を行う。
なお、試料は溶解が容易なように切り粉状に加工し用いる。また、フィルターはIPC−MS分析にはポリカーポネートフィルター(孔径0.4μm、47mmφ)を用いるのが良く、炭素分析にはガラスフィルター(孔径0.6μm、47mmφ)を用いると良い。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕
高純度銅(6N銅)の複数の試料について、上記分析手順に従って、炉材成分に由来するカーボン含有量yと不溶解残渣量xとを測定し、図2に示す結果を得た。最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b([A]=0.4437、b=8.4906)の付近の範囲に含まれるもの(直線上またはその近傍に位置するもの:◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。このように測定値をプロットし、直線近似した場合、正常品は、表記直線の一定範囲内に分布し、異常品は、その範囲を超えて分布する。よって、残渣量に比べ、カーボン量が著しく少ないあるいは、多いプロットは、試料中のカーボンの偏析に起因するものと考えられ、その結果を製品の品質管理にフィードバックすることが可能である。
【0024】
〔実施例2〕
高純度銅(6N銅)の複数の試料について、上記分析手順に従って、溶融炉の蓋材成分に由来するアルミニウム含有量yと、不溶解残渣量xとを測定し、図3に示す結果を得た。これらのうち、最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b1、直線y=[A]x+b2によって示される直線で区画された範囲に属するもの(◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。
【0025】
〔実施例3〕
高純度鉛(4N鉛)の複数の試料について、上記分析手順に従って、炉材成分に由来するカーボン含有量yと不溶解残渣量xとを測定し、図4に示す結果を得た。最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b([A]=0.837、b=2.7707)の付近の範囲に含まれるもの(直線上またはその近傍に位置するもの:◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。
【0026】
〔実施例4〕
精製亜鉛について、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図5に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0027】
〔実施例5〕
精製チタンについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図6に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0028】
〔実施例6〕
精製アルミニウムについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図7に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0029】
〔実施例7〕
精製テルルについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図8に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0030】
〔実施例8〕
精製ビスマスについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yとを測定し、図9に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0031】
〔実施例9〕
精製アンチモンについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図10に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0032】
〔実施例10〕
精製インジウムについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図11に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0033】
〔実施例11〕
精製スズについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図12に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0034】
〔実施例12〕
精製コバルトについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図13に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0035】
〔実施例13〕
精製ニッケルについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図14に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】非鉄金属について、不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとに基づく本発明の判定方法を示すグラフ。
【図2】実施例1の高純度銅について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図3】実施例2の高純度銅について、アルミニウム量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図4】実施例3の高純度鉛について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図5】実施例4の亜鉛について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図6】実施例5のチタンについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図7】実施例6のアルミニウムについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図8】実施例7のテルルについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図9】実施例8のビスマスについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図10】実施例9のアンチモンについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図11】実施例10のインジウムについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図12】実施例11のスズについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図13】実施例12のコバルトについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図14】実施例13のニッケルについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属の品位判定方法と、該判定方法を利用した製造方法に関する。本発明の品位判定方法によれば、高純度銅などの非鉄金属について、含有不溶解物の残渣量等に基づいて、分析精度に優れ、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することができる品位判定方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、高純度金属や合金に含まれる不純物は、SEM等の機器分析や、硝酸または塩酸などの鉱酸に試料を溶解し、測定対象元素や濃度に応じて、lCPやICP−MS、FL−AASなどによって測定を行う湿式分析が一般的である。しかし、含有不純物の炭素、アルミニウム、チタン、ジルコンの酸化物等の耐火性元素は不溶解残渣になるため、これらの従来法による分析では正確に濃度を評価することができない。また、6N品位の超高純度金属を素材として加工されたスバッタリングターゲットや箔などの製品は、上記不溶解残渣が極微粒子となって含有されるため、これが不良品発生の原因になる。このような不溶解残渣に対して、従来は、顕微鏡などの目視観察等によって残渣量を求めていたが、局部的な観察のために目視観察等によるものは分析精度が低く、またSEM等の機器分析で測定する以外に評価手段がなく、工程管理や品質管理に反映させることができない。
【0003】
具体的には、例えば、非鉄金属含有物の分析方法として次の方法が従来知られている。すなわち、非鉄含有金属をサンプリングし、得られた粒状試料を研磨した後に、反射光による光学的性質を基礎として含有鉱物の形態を分析すると共に該鉱物の面積を求めて体積量に換算し、これから該鉱物の構成元素濃度を算定する方法である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−28604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記分析方法は、試料の研磨に時間がかかるうえに、表面に現れる鉱物の面積を基準にして分析を行うために分析精度が低いと云う問題がある。本発明は、従来の分析方法における上記問題を解決したものであり、高純度銅などの非鉄金属について、分析精度に優れ、工程管理や品質管理に適用することができる品位判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成からなる非鉄金属の品位判定方法である。
(1)非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法。
(2)XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する上記(1)の品位判定方法。
(3)XY座標において、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する上記(1)の品位判定方法。
(4)非鉄金属がCu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Znの各金属またはこれらの合金であり、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量である上記(1)〜(3)の何れかに記載する品位判定方法。
(5)非鉄金属がターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属である上記(1)〜(4)の何れかに記載する品位判定方法。
(6)非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて該非鉄金属の品位を判定すると共に、上記残渣量xおよび上記炉材成分混入量yに基づいて溶融工程の条件を調整する非鉄金属の製造方法。
【0006】
本発明は、溶融工程を経た非鉄金属の品位判定方法であって、非鉄金属に含まれる不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法である。
【0007】
溶融工程を経た非鉄金属とは、製錬工程や精錬工程などにおいて、各種の溶融炉等による溶融工程を経た非鉄金属であり、例えば、高純度銅や高純度鉛など、あるいはこれらの合金などである。溶融工程において、溶融炉等の炉材成分が非鉄金属に僅かながら混入する場合がある。例えば、ターゲット材の素材となる高純度銅は、6N品位まで純度を高めるために、カーボン製の精製炉を用いて溶融精製されるが、この溶融工程で炉材のカーボンが微量ながら高純度銅に混入する。このカーボンは高純度銅中で微小な不溶解物(パーティクル)として存在する。
【0008】
また、溶融炉を覆う蓋材や炉周辺の設備の材料成分が混入する場合もある。例えば、炉を覆う蓋材に由来するアルミナや炉周辺の耐火材に由来するチタニア、ジルコニアなどが非鉄金属に固溶する場合がある。
【0009】
非鉄金属中にパーティクル等の不溶解物が含まれており、あるいは固溶体が存在すると、製品不良の原因になる。例えば、高純度銅に微小なカーボンパーティクルが含まれていると、これをターゲット材として用いたときに、製品不良の原因になるので、これらの不純物量を抑えるために、製造した非鉄金属製品について品位判定が行われている。
【0010】
通常、例えば、非鉄金属試料Agを硝酸等に溶解し、このときに生じる酸不溶解残渣量をBgとした場合、酸不溶解残渣量(Bg)の許容量を設定し、これに対して当該非鉄金属の品位が定められるが、単に残渣量を測定するだけでは不純物の成分およびその混入原因が不明であり、品位向上を図るための十分な情報が得られない。
【0011】
本発明は、非鉄金属試料について、不溶解残渣量だけではなく、その残渣成分を分析し、例えば、溶解炉の炉材成分であるカーボンの混入を明らかにし、上記不溶解物残渣量と、該不溶解物に含まれるカーボンなどの炉材成分の混入量とに基づいて品位を判定する方法である。なお、本発明において、不溶解残渣量とは非鉄金属を硝酸等に溶解したときに、カーボンや、アルミナ、ジルコニア等のような酸に不溶解な成分を主とする残渣の量であり、炉材成分混入量とは不溶解残渣に含まれる炉材成分の含有量である。
【0012】
本発明の判定方法は、非鉄金属に含まれる不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定する方法である。具体的には、例えば、高純度銅あるいは高純度鉛について、上記判定式のyは炉材成分のカーボン量、不溶解残量xはカーボンを含むその他の不溶解物の合計量である。判定式の係数[A]および定数bは非鉄金属の種類や用途などに応じて定められる。また、上記判定式は複数の分析データに基づいて例えば最小二乗法によって近似される直線である。
【0013】
品位の許容範囲は、例えば、定数bによって定められる。図1のXY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する。
【0014】
具体的には、例えば、図1のXY座標において、非鉄金属試料の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yについて、該非鉄金属の種類および用途などに基づいて定められた係数[A]、定数b1、b2をおのおの含む判定式y=[A]x+b1、y=[A]x+b2によって示される直線で区画される許容範囲Mを定め、個々の試料について得られた不溶解残渣量xと炉材成分混入量yの分析値をプロットし、この点が、不溶解残渣量xの目標値範囲内で、上記許容範囲Mに含まれるものを合格品位とする。図1の例において、各試料No.1〜No.4について得られる分析値S1〜S4のうち、試料No.1とNo.2の分析値S1とS2は許容範囲Mに含まれるので合格品位であり、試料No.3とNo.4の分析値S3とS4は許容範囲Mから外れるので不合格品である。
【0015】
本発明の判定方法は、品位の許容範囲を予め定める方法に限らず、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yのおのおの少なくとも2つ以上の分析値が、XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定することができる。
【0016】
具体的には、後述の実施例1に示すように、各試料について測定した不溶解残渣量xと炉材成分混入量yの分析値をXY座標にプロットした点が、y=[A]x+bの直線に近似され、各分析値の点が何れもこの直線の近傍に位置するので、不溶解残渣量の目標値範囲内で、これらの試料は何れも合格品位と判断することができる。
【0017】
本発明の方法によって品位を判定した非鉄金属を、例えば、ターゲット材や金属箔などに加工して使用すると、合格品位と判定されたものは殆ど不良品が発生せず、一方、不合格品と判定されたものは殆ど全てが不良品になり、本発明の判定方法は信頼性が高い。
【0018】
本発明の判定方法は、例えば、Cu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Zn等の各非鉄金属またはこれらの合金について、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量として幅広く適用することができ、具体的には、ターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属について好適に適用することができる。
【0019】
本発明の方法は、製造した非鉄金属の品位を判定することに限らず、品位判定のために測定した非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて非鉄金属の溶融工程条件を調整する指標として利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の判定方法によれば、非鉄金属の品位を、炉材成分混入量および不溶解残量に基づいて、精度良く判定することができるので、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することができる。具体的には、例えば、ターゲットや金属箔などの材料として用いられる高純度銅や高純度鉛などについて、不溶解残渣の成分分析に基づいて、ターゲット材についてはパーティクル発生量を低下させ、銅箔な鉛箔などの場合には異物混入による圧延不良を低減することができる。
【0021】
また、ICP−MS分析によって不溶解残渣の成分濃度を把握することによって、製品工程で異常が発生した場合にその要因元素の特定が容易になる。さらに、不溶解残渣量を規格化することによって一定品位に品質を管理することができる。なお、従来の非鉄金属における不溶解物分析では、その正確な成分濃度まで把握されておらず、非鉄金属製品の工程管理や品質管理に適用することは難しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の判定方法において、例えば、高純度銅について以下の手順に従って分析を行う。
(1)試料を硝酸にてエッチング処理を行い、表面近傍の付着不純物を除去する。
(2)エッチングした試料を100g秤量する。
(3)試料に硝酸を加えて加熱溶解する。
(4)室温まで冷却後、市販のフィルターにて濾過し、残渣を捕集する。
(5)炭素分析は上記(1)〜(4)を繰返して残渣を捕集したフィルターを試料とする。
(6)炭素を除く不純物元素について、上記(1)〜(4)を繰り返し、残渣を捕集したフィルターを試料とし、以下の手順に従って前処理を行う。
(7)残渣を捕集したフィルターを濃硫酸にて分解する。
(8)試料に硝酸と過酸化水素を加え、残渣およびフィルター中の有機物を分解する。
(9)残留硫酸分が乾固するまで白煙処理を行い、揮発させる。
(10)硝酸を加えた超純水にて、測定対象元素を抽出する。
(11)抽出濃縮後、2mlに定容し、ICP−MSにて成分測定を行う。
なお、試料は溶解が容易なように切り粉状に加工し用いる。また、フィルターはIPC−MS分析にはポリカーポネートフィルター(孔径0.4μm、47mmφ)を用いるのが良く、炭素分析にはガラスフィルター(孔径0.6μm、47mmφ)を用いると良い。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕
高純度銅(6N銅)の複数の試料について、上記分析手順に従って、炉材成分に由来するカーボン含有量yと不溶解残渣量xとを測定し、図2に示す結果を得た。最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b([A]=0.4437、b=8.4906)の付近の範囲に含まれるもの(直線上またはその近傍に位置するもの:◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。このように測定値をプロットし、直線近似した場合、正常品は、表記直線の一定範囲内に分布し、異常品は、その範囲を超えて分布する。よって、残渣量に比べ、カーボン量が著しく少ないあるいは、多いプロットは、試料中のカーボンの偏析に起因するものと考えられ、その結果を製品の品質管理にフィードバックすることが可能である。
【0024】
〔実施例2〕
高純度銅(6N銅)の複数の試料について、上記分析手順に従って、溶融炉の蓋材成分に由来するアルミニウム含有量yと、不溶解残渣量xとを測定し、図3に示す結果を得た。これらのうち、最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b1、直線y=[A]x+b2によって示される直線で区画された範囲に属するもの(◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。
【0025】
〔実施例3〕
高純度鉛(4N鉛)の複数の試料について、上記分析手順に従って、炉材成分に由来するカーボン含有量yと不溶解残渣量xとを測定し、図4に示す結果を得た。最小二乗法によって近似した直線y=[A]x+b([A]=0.837、b=2.7707)の付近の範囲に含まれるもの(直線上またはその近傍に位置するもの:◆印)は、ターゲット材に加工して使用したところ何れも正常品であった。一方、この範囲に属さないもの(□印、△印)を使用したところ、何れも不良品であった。
【0026】
〔実施例4〕
精製亜鉛について、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図5に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0027】
〔実施例5〕
精製チタンについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図6に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0028】
〔実施例6〕
精製アルミニウムについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図7に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0029】
〔実施例7〕
精製テルルについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図8に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0030】
〔実施例8〕
精製ビスマスについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yとを測定し、図9に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0031】
〔実施例9〕
精製アンチモンについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図10に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0032】
〔実施例10〕
精製インジウムについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図11に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0033】
〔実施例11〕
精製スズについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図12に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0034】
〔実施例12〕
精製コバルトについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図13に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【0035】
〔実施例13〕
精製ニッケルについて、上記分析手順に従って不溶解残渣量xと該残渣中のカーボン量yを測定し、図14に示す結果を得た。最小二乗法によって定めた判定式の直線を図中に示す。なお、図中の◆印の範囲は一般的な用途において合格品位である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】非鉄金属について、不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとに基づく本発明の判定方法を示すグラフ。
【図2】実施例1の高純度銅について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図3】実施例2の高純度銅について、アルミニウム量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図4】実施例3の高純度鉛について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図5】実施例4の亜鉛について、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図6】実施例5のチタンについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図7】実施例6のアルミニウムについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図8】実施例7のテルルについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図9】実施例8のビスマスについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図10】実施例9のアンチモンについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図11】実施例10のインジウムについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図12】実施例11のスズについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図13】実施例12のコバルトについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【図14】実施例13のニッケルについて、カーボン量と不溶解残渣量に基づく本発明の判定方法を示す分析値のグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法。
【請求項2】
XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する請求項1の品位判定方法。
【請求項3】
XY座標において、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する請求項1の品位判定方法。
【請求項4】
非鉄金属がCu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Znの各金属またはこれらの合金であり、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量である請求項1〜3の何れかに記載する品位判定方法。
【請求項5】
非鉄金属がターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属である請求項1〜4の何れかに記載する品位判定方法。
【請求項6】
非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて該非鉄金属の品位を判定すると共に、上記残渣量xおよび上記炉材成分混入量yに基づいて溶融工程の条件を調整する非鉄金属の製造方法。
【請求項1】
非鉄金属の不溶解残渣量の目標値範囲内で、不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分混入量yとによる判定式y=[A]x+b(式中、[A]、bは各々非鉄金属に応じて定められる係数および定数)に基づいて、該非鉄金属の品位を判定することを特徴とする品位判定方法。
【請求項2】
XY座標において、不溶解残渣量の目標値範囲内で、予め定めた判定式y=[A]x+b1によって示される境界からy=[A]x+b2によって示される境界に至る範囲内に、分析値が含まれことによって非鉄金属の品位を判定する請求項1の品位判定方法。
【請求項3】
XY座標において、非鉄金属の不溶解残渣量xと炉材成分混入量yとについて、少なくとも2つ以上の分析値が、不溶解残渣量の目標値範囲内で、判定式y=[A]x+bの直線に近似されることによって非鉄金属の品位を判定する請求項1の品位判定方法。
【請求項4】
非鉄金属がCu、Pb、Ni、Co、Sn、In、Sb、Bi、Te、Al、Ti、Znの各金属またはこれらの合金であり、炉材成分yがカーボン量、不溶解残量xが不溶解物合計量である請求項1〜3の何れかに記載する品位判定方法。
【請求項5】
非鉄金属がターゲット、箔、条、接点の材料として用いられる高純度金属である請求項1〜4の何れかに記載する品位判定方法。
【請求項6】
非鉄金属の不溶解残渣量xと、該残渣に含まれる炉材成分量yとに基づいて該非鉄金属の品位を判定すると共に、上記残渣量xおよび上記炉材成分混入量yに基づいて溶融工程の条件を調整する非鉄金属の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−201159(P2006−201159A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366434(P2005−366434)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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