説明

面ファスナー組立品および面ファスナー組立品を有するクッション

【課題】面ファスナー組立品および面ファスナー組立品を有するクッションを提供する。
【解決手段】面ファスナー組立品は、第1テープ体と、第2テープ体とを含み、第1テープ体は、第1表面と、第2表面とを有し、第1表面上に複数のフック体が突出する。面ファスナー組立品は、磁性物質を有する第1保護層と、第2保護層とをさらに含む。第1保護層は、第1テープ体の長手方向に沿って、第1表面の両側部に設けられ、側壁構造を各自形成する。一部のフック体をその中に嵌め込み、第2保護層は、第1保護層と相互に貼り合わせ、第1表面上のフック体を覆う。また、第2テープ体を、第1テープ体の第2表面上に粘着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナー組立品、特に発泡物と共に金型で成型する面ファスナー組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
公知技術の面ファスナーは、スイスの技師、ジョルジュ・デ・メストラルが草の実の刺から発想を得て発明したものである。フック面上に設けた複数の細かいフック体(hook)と、複数のさらに細かい環状貼り合わせ構造が設けられたもう1つのループ面(loop)とを利用して、相互に貼り合わせる。前記フック面をループ面に押し付けると、フック面上のフック体がループ面上の環状貼り合わせ構造に引っかかり、両者を貼り合わせることができる。
【0003】
面ファスナーは、貼り合わせやすく、剥がしやすいという特性を有し、近年、他の物と組み合わせて使用されることもよくある。面ファスナーを背もたれまたは緩衝クッションなどの発泡物において使用するときに、面ファスナーのフック体を外向きにし、面ファスナーを背もたれと結合すると、対応するループ面を含む他の物に貼り合わせるのに便利である。面ファスナーを背もたれと結合する製造方法は、通常、面ファスナーを金型の中の所定の位置に置いてから、発泡材料を注入し、発泡材料の硬化が完了した後に、面ファスナーと発泡材料とを共同の金型で成型するというものである。しかし、発泡プロセスにおいて、発泡材料が面ファスナーのフック体を覆い、発泡後の完成品の面ファスナーのフック体が対応する貼り合わせ構造に相互に貼り合わせることができず、不良品となり、製造コストの無駄をもたらすことがよくある。こうした発泡材料によるフック体構造の破壊によってもたらされる面ファスナーの破損を解決するため、従来の方法では、他層の臨時保護膜を利用してフック体を一時的に覆い、面ファスナーと発泡材料を共同の金型で成型した後に剥がしている。
【0004】
また、発泡材料の膨張プロセスにおいて、膨張のために発泡材料に各方向への推力が生成する。面ファスナーを金型の中の所定の位置に安定して設置することができない場合、発泡プロセスにおいて生成する推力が、往々にして面ファスナーを本来の所定の位置から押し、金型で成型された発泡物の面ファスナーの位置がずれ、不良品となる。
【0005】
前記の欠点を改善するため、特許文献1では、鉄片を含む臨時保護膜が面ファスナー上に設けてある。発泡プロセスにおいて、その貼り合わせ面を保護可能なフック体が、発泡材料によって覆われず、面ファスナーは、発泡プロセスにおいて、金型上の磁石に吸着され、固定される。但し、こうした臨時保護膜は、金型で成型した後に、加熱または化学薬剤の使用により除去する必要があり、手順が煩雑で、使用上の不便が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,693,921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の欠点を克服するため、本発明は、複数のフック体が突出した第1表面および第2表面を有する第1テープ体と、第2テープ体とを含む面ファスナー組立品を提供する。面ファスナー組立品は、磁性物質を有する第1保護層および第2保護層をさらに含む。第1保護層は、第1テープ体の長手方向に沿って第1表面の両側部に設けられ、一部のフック体をその中に嵌め込む。第2保護層は、第1保護層と相互に貼り合わせ、第1表面上のフック体を覆う。また、第2テープ体は、第1テープ体の第2表面上に粘着する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な目的は、フック体を覆う保護層を有するため、発泡材料がフック体の構造を破壊し、影響を及ぼして破損することを防止する、発泡工程に使用可能な面ファスナー組立品を提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、保護層を有するため、発泡材料の膨張により生成する圧力に抵抗することにより、フック体を保護し、変形または圧損を発生させない、発泡工程に使用可能な面ファスナー組立品を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、磁性物質を有するため、磁力を利用して金型に簡単に固定することができ、発泡工程の完了後に、面ファスナー組立品を金型から取り外しやすい、発泡工程に使用可能な面ファスナー組立品を提供することである。
【0011】
また、本発明では、金型で一体成形された発泡材料座体および少なくとも1つの面ファスナー組立品を含む面ファスナー組立品を有するクッションを提供する。面ファスナー組立品は、第1表面および第2表面を有する第1テープ体と、第2表面に粘着した第2テープ体とを主に含む。第1表面上には、複数のフック体が突出している。面ファスナー組立品は、磁性物質を有する第1保護層および第2保護層をさらに含む。第1保護層は、第1テープ体の長手方向に沿って第1表面の両側部に設けられ、一部のフック体をその中に嵌め込む。第2保護層は、第1保護層と相互に貼り合わせ、第1表面上のフック体を覆う。また、発泡材料座体は、面ファスナー組立品の第2テープ体と相互に嵌め合わせる。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、保護層を有し、クッションの発泡製造プロセスにおいて、発泡材料が面ファスナー組立品のフック体構造を破壊して面ファスナー組立品の破損をもたらすことを防止することができる、面ファスナー組立品を有するクッションを提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、保護層を含み、クッションの発泡製造プロセスにおいて、発泡材料の膨張により生成する圧力に抵抗することにより、面ファスナー組立品のフック体を保護し、変形または圧損を発生させない、面ファスナー組立品を有するクッションを提供することである。
【0014】
本発明のさらにもう1つの目的は、磁性物質を有し、クッションの発泡製造プロセスにおいて、磁力を利用して金型に簡単に固定することができ、発泡工程の完了後に、面ファスナー組立品を金型から取り外しやすい、面ファスナー組立品を有するクッションを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の第1実施例の概要図である。
【図1B】本発明の第1実施例の断面概要図である。
【図1C】本発明の第1実施例のもう1つの断面概要図である。
【図1D】本発明の第1実施例のもう1つの概要図である。
【図1E】本発明の第1実施例の発泡金型における設置概要図である。
【図1F】本発明の第1実施例のさらにもう1つの概要図である。
【図2】(a)は本発明の第2実施例の概要図であり、(b)は局所拡大概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、面ファスナー組立品およびクッションを開示する。利用する物理原理および関連素子の基本的な接続関係は、関連技術分野の通常の知識を有する者はすでに理解することができるため、以下の文中での説明では、完全な描写を行なわない。また、以下の文中で対照する図面は、本発明の特徴に関する概要を表すためのものであり、実際の状況に基づき完全に作成する必要はない。
【実施例】
【0017】
先ず、図1Aおよび図1Bは、それぞれ本発明の第1実施例の面ファスナー組立品の概要図および図1Aの図中のAA線に沿った断面概要図である。面ファスナー組立品1は、第1テープ体14と、第2テープ体13と、第1保護層12と、第2保護層11とを含む。第1テープ体14の第1表面140上には、複数のフック体142が突出し、第2テープ体13は、第1テープ体14の第2表面141上に粘着する。第2テープ体13は、後続する発泡金型成型の発泡材料と相互に嵌め合わせるために用いられ、面ファスナー組立品1を支持し、全体的な強度を補強し、工程において、操作のためにテープ体が折れ曲がり、または変形することを防止することができる。第2テープ体13の好ましい材質は、不織布、繊維生地または表面に微細構造を有し、発泡材料と結合可能なその他のものとすることができる。
【0018】
第1テープ体14の長手方向に沿って、第1表面140の両側部143に、磁性物質15を有する第1保護層12が設けてあり、側壁構造を形成する。かつ、第1保護層12は、本来、第1表面140に突出した一部のフック体142を第1保護層12の中に嵌め込むことにより、第1保護層12と第1テープ体14との結合をさらに安定したものにする。第1保護層12の中には、磁性物質15を有し、これによって、発泡工程の金型中に設けた磁石が相互に吸着する。
【0019】
第2保護層11と第1保護層12とを相互に貼り合わせ、第1表面140のフック体142を覆う。第2保護層11は、粘着テープ、熱圧またはその他の物理的または化学的方式を利用して、第1保護層12の上部に貼り合わせる。これによって、第1保護層12と第2保護層11が共同で、第1表面140および第1表面140に突出したフック体142を完全に覆う。また、第2保護層11は、第1保護層12の中の成分と同じ磁性物質15をさらに含むことができる。磁性物質15は、鉄粉とすることが比較的好ましく、または鉄系合金でもよく、磁石に吸着可能であることが重点である。また、第1保護層12の好ましい材質は、ポリウレタン(polyurethane,PU)とすることができる。ポリウレタン材料は、印刷方式によって、第1テープ体14上に印刷してなすことができる。第2保護層11の材質は、紙などのいかなる可撓性材質とすることができる。
【0020】
図1Bに示すように、製造上、磁性物質15を第2保護層11の中に混入し、第2保護層11の中でほぼ均一に分布するようにすることができる。または、図1Cに示すように、塗布技術を利用して、磁性物質を第2保護層11の第1テープ体14に向かい合う表面にほぼ均一に塗布する。
【0021】
図1Dは、本発明の第1実施例のもう1つの概要図である。第2保護層11の第1テープ体14に向かい合う表面上に、複数の貼り合わせ構造111をさらに設け、貼り合わせ構造111とフック体142とを相互に貼り合わせる。これによって、第2保護層11が第1表面140上を覆い、第1保護層12と共同で、第1表面140および第1表面140に突出したフック体142を完全に覆う。
【0022】
図1Eは、本発明の第1実施例の面ファスナー組立品の発泡金型における設置概要図である。発泡材料を利用してワークを製造するときに、第1保護層12および第2保護層11の中に磁性物質15を有するため、金型3上の磁石32によって、磁力を利用して吸引することができ、面ファスナー組立品1全体を、金型3の上に固定することができる。金型での成型の後、発泡材料と第2テープ体13とを相互に嵌め合わせるため、面ファスナー組立品1は、金型で成型した発泡物に伴い、簡単に金型から取り外すことができる。また、第2保護層11および第1表面140の両側部143に側壁構造を形成した第1保護層12が共同で、第1表面140および第1表面140に突出したフック体142を完全に覆うため、こうした設計の面ファスナー組立品1は、従来の面ファスナーに比べ、発泡プロセスにおいてフック体142を保護することができ、過度に膨張した発泡材料を注入することにより面ファスナー組立品1が破損することがない。また、発泡プロセスにおいて、発泡材料は膨張時に各方向に押す圧力を生成し、発泡程度の制御が不適切であると、押す圧力が大きくなりすぎる。従来の面ファスナーは、往々にして、このために押され、フック体が変形する。このとき、本発明で設計する面ファスナー組立品1は側壁構造を形成した第2保護層11を有するため、面ファスナー組立品1が前記発泡材料の膨張によって生成する押す力に抵抗する。第1保護層12と第2保護層11とが共同で、密閉した空間を囲い出し、フック体142をその中に覆い、フック体142が前記押す力を受けて変形しないようにし、フック体142が押されて破損しないようにする。
【0023】
図1Fは、本発明の第1実施例のもう1つの概要図である。さらに優れた磁力吸着固定効果を達成するため、面ファスナー組立品1は、さらに第1テープ体14と第2テープ体13との間に磁性物質層16を設けることができる。磁性物質層16も磁性物質15を有することができるため、面ファスナー組立品1を金型3上に設置するときに、磁石32は、第1保護層12および第2保護層11に磁性吸着力を提供するだけでなく、磁性物質層16にも磁力を提供し、面ファスナー組立品1を金型3の上にさらに安定して置くことができる。かつ、発泡プロセスにおいて、発泡材料が膨張することによって生成される推力の影響をさらに受けにくくなるため、面ファスナー組立品1が本来の所定の位置から押される。
【0024】
本発明は、前記第1実施例の面ファスナー組立品を提供するだけでなく、次の第2実施例に記載する面ファスナー組立品を有するクッションも提供する。
【0025】
図2(a)は、本発明の第2実施例で提供するクッションの概要図である。クッション2は、発泡材料座体20と、少なくとも1つの面ファスナー組立品1とを含む。発泡材料座体20および面ファスナー組立品1の両者は、金型で製造され一体成形されている。図2(b)は、図2(a)の面ファスナー組立品1の拡大概要図である。面ファスナー組立品1は、第1実施例に記載したように、第1テープ体14と、第1表面140と、第2表面141と、フック体142と、第2テープ体13と、第1保護層12と、第2保護層11とを有する。かつ、前記各素子の組成の特徴および相互の接続関係は、第1実施例における記載とほぼ同じであるため、ここでは繰り返し述べない。また、発泡材料座体20を、面ファスナー組立品1の第2テープ体13に嵌め合わせる。これによって、クッション2を、面ファスナー組立品1と、対応する貼り合わせ構造を有する物(背もたれカバーまたは背もたれ本体など)とによって、相互に貼り合わせて固定することができる。
【0026】
また、発泡材料座体20は、さらに少なくとも1つの凹溝201を有し、面ファスナー組立品1をその中に収容し、クッション2と貼り合わせ構造に対応するその他の物との組み合わせを増進する。
【0027】
以上の内容は、本発明の好ましい実施例でしかなく、本発明の特許出願の権利を限定するものではない。また、以上の内容は、本技術分野の当業者が理解し実施できるものであるため、本発明で開示した主旨を逸脱せずに完成したその他の同等の変更または修正は、特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 面ファスナー組立品
2 クッション
20 発泡材料座体
201 凹溝
11 第2保護層
111 貼り合わせ構造
12 第1保護層
13 第2テープ体
14 第1テープ体
140 第1表面
141 第2表面
142 フック体
143 側部
15 磁性物質
16 磁性物質層
3 金型
32 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフック体が突出した第1表面と、第2表面とを有する第1テープ体を含む面ファスナー組立品において、
磁性物質を含み、該第1テープ体の長手方向に沿って該第1表面の両側部に設け、側壁構造を各自形成し、一部のフック体をその中に嵌め込む第1保護層と、
該磁性物質を含み、該第1保護層と相互に貼り合わせ、該第1表面の該フック体を覆う第2保護層と、
該第1テープ体の第2表面に粘着する第2テープ体と、
をさらに含むことを特徴とする面ファスナー組立品。
【請求項2】
金型で一体成形された、発泡材料座体と、少なくとも1つの面ファスナー組立品とを含む面ファスナー組立品を有するクッションにおいて、該面ファスナー組立品は、
複数のフック体が突出した第1表面と、第2表面とを有する第1テープ体と、
磁性物質を含み、該第1テープ体の長手方向に沿って該第1表面の両側部に設け、側壁構造を各自形成し、一部のフック体をその中に嵌め込む第1保護層と、
該磁性物質を含み、該第1保護層と相互に貼り合わせ、該第1表面の該フック体を覆う第2保護層と、
該第1テープ体の第2表面に粘着し、かつ該発泡材料座体と相互に嵌め合わせる第2テープ体と、
を含むことを特徴とする面ファスナー組立品を有するクッション。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−131353(P2010−131353A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−862(P2009−862)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(506328642)台灣百和工業股▲ふん▼有限公司 (4)
【Fターム(参考)】