説明

面光源を有する自動車用投光装置

本発明は、光線(7)を放射する第1の面光源(2)を有する自動車用投光装置(1)に関し、この投光装置は、第1の面光源から放射された光線の方向を変える光反射システム(4)を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が道路上を移動している時、他の車両から自車両が見えるようにするか、または自車両の運転者が、外を見ることができるようにする、光度測定機能を有する、照明および/または表示装置などの、自動車用投光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の投光装置の光源として、面光源を使用すること、特に、OLEDとも呼ばれている有機発光ダイオードを使用することは、例えば特許文献1(DE102007018985)により公知である。この特許文献1における自動車の投光装置は、自動車用指示装置でもある。有機発光ダイオード型の光源は、極めて均一の光を提供することができるが、次に述べるいくつかの欠点も有する。
−まず、現在の有機発光ダイオードは、低分子が最も効率的であり、例えば車用のリヤフェンダなどの限られた空間に、表示機能を発揮させるのに適しているため、低分子を使用している。しかし、この分子を、水および酸素の分子から保護する必要があり、ガラス板を使用して保護している。従って、表示機能を実現するために使用する有機発光ダイオードは、発光層に接触する保護ガラス板を備えている。このガラス板は、有機発光ダイオードの取りうる形状を非常に限定している。そのため、有機発光ダイオードは、平らな面、または最大限譲歩しても、線織面を有する必要があり、自動車用光装置の通常のガラス板などの、歪曲面を有するスクリーンで構成することはできない。従って、デザイン上の問題がある。
−次に、現在の技術による有機発光ダイオードがもたらす輝度は、ある種の表示機能(「車幅灯」「停止灯」および「後部中央停止灯」表示機能など)を提供するのに十分ではない。今日の技術による有機発光ダイオードは、通常1,000Cd/m2の輝度を有するのに対して、前述の機能を実行するためには、5,000〜10,000Cd/m2の輝度が必要である。しかし、現在の有機発光ダイオードは、ダイオードの発光指向性を、その発光面の直角方向に著しく高めることができる。従って、ダイオードの発光力を増大することなく、輝度を、例えば10倍などに大幅に高めることができ、約10,000Cd/m2に到達させることができる。この有機発光ダイオードは、非常に指向性が強い。そのため、前述の欠点に加えて、有機発光ダイオードを、車両の前後軸に、またはより一般的には、光を放射すべき方向に、向けなければならないという欠点を有する。そのため、デザイン上の問題、特にサイズおよび形状において問題を有する。
【0003】
従って、自動車の照明および/または表示装置において、有機発光ダイオードは、その面が線織面の場合だけ、使用することが可能である。そのため、可撓性の基板上に有機発光ダイオードを置くことによって、照明および/または表示装置を作成することができる。この技術は、有機発光ダイオードを平らなガラス基板上に置く技術に比べて、性能のレベルが非常に低い。
【0004】
特許文献2(DE102007018986)による、自動車のパッセンジャーコンパートメント用の照明装置も公知であり、この照明装置は、
−上面に第1の光コンポーネントが接合されている有機発光ダイオードの群と、
−第2の光コンポーネントとを備えている。
【0005】
特許文献3(DE20207799)および特許文献4(EP1485959)による、自動車の表示装置も公知であり、これらの表示装置は、光線が全反射により閉じ込められにくいこと、従って、透明基板から出て行き易いことを利用して、有機発光ダイオードの性能を改善するために、空間的に反復しているパターンを有する光コンポーネントによって覆われた有機発光ダイオードを備えている。この技術は、光コンポーネントが基板に接合されている場合だけ、言い換えると、光コンポーネントが平面に接合されている場合だけ、利用できる。しかしこの表示装置は、前述の問題を解決していない。
【0006】
特許文献5(FR2926677)により、指向性が高い光ビームを放射する有機発光ダイオード装置も公知である。この有機発光ダイオードは、2つの電極の間に、種々の層、特に、発光層、発光層までの電子の運搬を促進する層、および発光層までの正孔の運搬を促進する層を備えている。これらの層は、マイクロキャビティを形成し、その厚さは、光共鳴するように調節されている。この構造によると、指向性の高い光ビームを放射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007018985号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007018986号明細書
【特許文献3】独国実用新案第20207799号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1485959号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2926677号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、自動車の投光装置、特に、簡単で、かつ寸法およびデザイン上の制約が小さい投光装置を提供することである。
【0009】
より具体的には、本発明の目的は、自動車の投光装置、特に、光線を放射する第1の面光源を備えている、自動車用の照明および/または投光装置を提供することであり、本発明による自動車の投光装置は、第1の面光源から放射される光線を屈折させる光反射システムを備えている。これにより、第1の面光源に対する位置の制約をなくすことができる。一実施形態においては、この投光装置は、面光源および光反射システムを収容するケーシングを備えている。このケーシングは、光反射システムによって反射された光線が出て行くカバーレンズによって閉じられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
光反射システムは、光源が有機発光ダイオードであるとき、太陽光が光源に反射し、車両の運転者の目をくらます危険を克服するための手段、例えばそのような、パターンを有することが好ましい。具体的には、太陽光は、光反射システム、有機発光ダイオード、そして再び光反射システムで反射した後に、すべての方向に発散され、目をくらます危険がほとんどなくなる。
【0011】
特に、第1の面光源は、第1の方向に光線を放射することができ、光反射システムは、第1の方向に放射された光線を、第1の方向とは異なる第2の方向に屈折させることができる。従って、第1の面光源は、必ずしも投光装置が光を放射する必要がある方向を向かなくてもよい。
【0012】
光反射システムは、1つ以上の構成要素をもって構成することができる。このようにすると、サイズの小さい投光装置を作ることができる。
【0013】
この装置は、第2の面光源を備えることができる。これにより、装置の輝度を高めること、および/またはいくつかの色の光を必要とする複数の機能を提供すること、および/または光装置のサイズの制約を満足させることができる。
【0014】
光反射システムの少なくとも一部は、第2の面光源の一部を構成していることが好ましい。このようにすると、投光装置を構成するコンポーネント数を制限することができる。具体的には、光反射システムは、少なくとも一部が、有機発光ダイオードの電極であってもよい。有機発光ダイオードは、反射鏡の反射面に隣接して設けることができる。この場合、光反射システムは、第2の面光源の反射部と、反射鏡との両方を備えている。この反射鏡なしに、光反射システムを作ることもできる。この場合、光反射システムは、第2の面光源の一部を構成する。すなわち、この光反射システムは、第2の面光源の少なくとも一部によって作られる。
【0015】
光反射システムは、第1の面光源から放射された光ビームを拡散させる形状を有することができる。これにより、放射された光線から所望の光分布を得られるようになり、照明および/または表示装置の外観を、特定のものとすることができる。
【0016】
第1の面光源は、有機発光ダイオードであることが好ましい。これは、現在広く使用されており、その価格も下がっている。
【0017】
第1の面光源を、透明にすることができる。こうすることにより、第2の面光源から放射された光は、第1の面光源を通過した後、投光装置から出て行くことができる。従って、第1の面光源が、光反射システムの前に置かれている場合においては、第1の面光源とぶつかる反射光の一部は、それを通過する。これにより、発光力の損失は低減する。
【0018】
面光源の発光面積は、1cm2より大きくすることができる。機能の視認性を向上させるために、この表面積を10cm2より大きくすることができる。
【0019】
第1の面光源は、ランバート発光ダイオードと比べて、その発光面の直角方向に大きい発光指向性を有する。従って、光源の放射力を増大することなく、発光面に直角の方向の周りの所与の方向の輝度を、例えば5〜10倍などに著しく高めることができる。第1の面光源が、少なくとも5,000Cd/m2の輝度を有し、少なくとも10,000Cd/m2の輝度を有するのが好ましい。現在、このような方向性およびこの輝度を有する有機発光ダイオードが存在する。例えば、特許文献5(FR2926677)などに記載されている発光ダイオードを使用することができる。例えば、面光源の高い指向性は、この光源の強度が、放射角θの関数として、次のタイプである。
cos(θ)
ここで、nは、10〜20の間で変わる累乗である。
「cos(θ)nのタイプ」という表現は、cos(θ)nの関数と同じように変化する放射角θの関数を指すものである。
【0020】
一実施形態においては、この投光装置は、車両位置表示機能、方向変更表示機能、逆進表示機能、ブレーキ表示機能、霧の際の位置表示機能などの、表示機能を行う装置である。
【0021】
一実施形態においては、本発明による自動車の投光装置は、例えば、ハイビーム機能、ロービーム機能、およびフォグビーム機能などの道路照明機能を提供するために使用される。
【0022】
一実施形態においては、本発明による自動車の投光装置は、例えば、パッセンジャーコンパートメントの照明機能を提供するために使用される。
【0023】
本発明の一変形形態においては、本発明による自動車の投光装置は、車両のパッセンジャーコンパートメントの室内装飾光を作り出すようになっている。
【0024】
第1の面光源は、複数の面発光素子、特に複数の有機発光ダイオードを備えることができる。従って、投光装置のカバーレンズの曲線を、より密接に追随することができる。
【0025】
面光源は、有機発光ダイオード(OLED)を有するのが好ましい。一変形形態として、面光源は、例えば、光拡散器に関係しているランプ、またはLED(すなわち、寸法が小さい光電コンポーネントを備えている発光ダイオード)などの光源を有することができる。この光源は、このランプまたはこのLEDからの光を拡散させるようになっている光拡散器の背後に設けられる。
【0026】
本発明の別の主題は、上に定義した投光装置を備える自動車である。
【0027】
添付の図面は、本発明による投光装置の種々の実施形態を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による自動車の投光装置の第1の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明による自動車の投光装置の第2の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明による自動車の投光装置の第3の実施形態のブロック図である。
【図4】本発明による自動車の投光装置の第4の実施形態のブロック図である。
【図5】本発明による自動車の投光装置の第5の実施形態のブロック図である。
【図6】第1の拡散方法により得られる光ビームの拡散パターンを示す図である。
【図7】第2の拡散方法により得られる光ビームの拡散パターンを示す図である。
【図8】有機発光ダイオードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の原理は、自動車用投光装置において、例えば面に直角の方向に特に高い指向性と、高い輝度を有する有機発光ダイオードなどの面光源を使用し、その面光源から少し離れて設けられている光反射システムと、その面光源とを組み合わせることである。光反射システムは、有機発光ダイオードから放射された光線を全面的に屈折する機能を有し、それによって、投光装置にとって有用な光線の所望の方向とは必ずしも直角でない位置に、有機発光ダイオードを設置することを可能にする。また、光反射システムは、光線を拡散させる機能も有していることが好ましい。
【0030】
従って、面光源から放射される、この光源の面に直角方向の光線は、光反射システムによって屈折され、例えば自動車の縦軸に平行などの、投光装置の外の選択された方向に向けられる。
【0031】
次に、自動車用投光装置1の原理について、図1を参照して説明する。投光装置は、例えばハイビーム照明、ロービーム照明、フォグビーム照明、車両位置表示、方向変更表示、逆進表示、ブレーキ表示、霧の際の表示などの機能の1つを提供するために使用される。
【0032】
図1は、照明および/または表示装置を示している。前述のことから明らかなように、これは限定するものではない。本発明による自動車の投光装置は、例えばパッセンジャーコンパートメントの室内装置とすることもできる。照明および/または表示装置は、主として
−ケーシング3およびカバーレンズ9によって形成されている閉じた筐体と、
−第1の面光源2と、
−光反射システム4とを備えている。
【0033】
光反射システムは、少なくとも局所的に見ると、第1の面光源から少し離して設けられている。
【0034】
第1の面光源は、動作時に、例えば光源の面に直角などの主として第1の方向5に、光ビーム7を放射する。光ビームは、光反射システム4によって、屈折され、成形されている。このようにして得られた光線8は、カバーレンズ9を通って投光装置を出て、投光機能を発揮する。投光装置から出た光線は、全体として、投光機能に応じて選択された第2の方向6と平行であることが好ましい。提供される投光機能に応じて、光線8によって形成されているビームは、程度の差はあるが、顕著な拡散を示すことがある。すなわち、この光線8は、第2の方向6と平行な軸を有し、程度の差はあるが、顕著な先端角を有する円錐の中に含まれている。この先端角は、拡散に相当する。さらに、この円錐は、必ずしも回転によって得られる完全な円錐形ではない。実際に、相当数の光機能に関して、方向6と直交するこの円錐の断面の高さは、その幅より小さい方が好ましい。
【0035】
光反射システムは、面光源からの光の主放射方向に対して、第1の面光源に面する全面に及んでいることが好ましい。従って、第1の面光源から主放射方向に放射されるすべての光線または少なくともほとんどの光線は、光反射システムによって屈折され、前述の円錐と同じ円錐に含まれたまま、投光装置から出て行く。
【0036】
例えば、光反射システム4は、例えば平面反射鏡または形状の歪んだ反射鏡などの、簡単な反射鏡で構成することができる。反射鏡の形状は、全体として、第1の面光源から放射された光線を、照明および/または表示機能によって必要とされる第2の方向6に向けるのに適していることが好ましい。さらに、反射鏡の形状は、前述のように、光ビームを拡散させるのにも適していることが好ましい。
【0037】
光反射システムは、反射基本パターンを有することができる。この反射基本パターンは、平面であってもよい。従って、第1の面光源からこの基本パターンが受け取った基本光ビームは、拡散されることなく反射される。また、反射基本パターンは、凸面でもよい。従って、第1の面光源からこの基本パターンが受け取った基本光ビームは、反射されて拡散する。
【0038】
例えば、第1の方向および第2の方向は、少なくとも10°の角を成してもよい。
【0039】
特に、第1の面光源は、水平に設置してもよい。また、第1の面光源は、装置のカバーレンズの曲線に従う端面も有してもよい。
【0040】
一変形形態においては、第1の面光源は、その複数の面のそれぞれから光を放射するタイプであってもよい。第1の面光源は、2つの透明電極を有する有機発光ダイオードであってもよい。その場合、面光源の複数の面のそれぞれから放射される光線を反射するための光反射システムを有していてもよい。
【0041】
図2に示す光装置の第2の実施形態11は、光反射システム14が複数の素子141として実施され、これらの素子が第1の面光源12によって照らされている点において、図1の第1の実施形態とは異なる。このような構成により、寸法の大きい光反射システムでなくても、寸法の大きい面光源とすることができる。
【0042】
個々の素子141は、例えば、互いに平行に、および/または互いから同じ距離に設けることができる。
【0043】
個々の素子は、第1の面光源とカバーレンズとの間の、水平、またはほぼ水平の細片の形になっていることが好ましい。具体的には、このような構成は、面光源上で太陽光が反射するという望ましくない作用を、制限することを可能にする。さらに、このような構成は、美的効果を生み出す。
【0044】
個々の素子は、互いに影響を及ぼすことができる。すなわち、素子の中のある素子で反射された光線を、他の素子が反射することができる。
【0045】
図3に示す光装置の第3の実施形態21は、第1の面光源22が、透明タイプであり、かつ方向6に関して光反射システム24の前に位置している点において主として、図1の第1の実施形態とは異なる。従って、第1の面光源は、その複数の面のそれぞれから光を放射する。この構成では、第1の面光源のある面から放射された光線は、光反射システムによって屈折されることなく、光装置を出て行くのに対して、第1の面光源の他の面から放射された光線は、光反射システムで屈折されてから、光装置を出て行く。反射光線の中には、光反射システムで反射後、直接カバーレンズに達するものもあり、また第1の面光源を通過してから、カバーレンズに達するものもある。第1の面光源を通過する時、光線の一部が吸収されることに留意すべきである。
【0046】
図示の構成において、光反射システム24の面積は、第1の面光源22の面積より大きい。しかし、その逆の場合を想定することができる。
【0047】
図4に示す光装置の第4の実施形態31は、光反射システム34が第2の面光源の一部を形成している点において、図3の第3の実施形態とは異なっている。光反射システム34は、有機発光ダイオードの一部を形成することが好ましい。光反射システム34は、有機発光ダイオードの電極である。
【0048】
第2の面光源は、単一の有機発光ダイオード、または歪曲面を近似している複数の有機発光ダイオードの群、または歪曲面を有する1つの有機発光ダイオードから構成してもよい。
【0049】
この実施形態においては、光線の経路を前の実施形態で説明している第1の面光源32に加えて、第2の面光源が、光線を放射する。その光線の少なくとも一部は、第1の面光源32を通過してから、光装置のカバーレンズに達する。一変形形態として、第2の面光源は、第1の面光源から後方に放射された光線を反射するが、この第2の面光源から放射された光線は、第1の面光源を通過することなくレンズに達するように、この第2の面光源を構成することができる。
【0050】
例えば、第1の面光源および第2の面光源は、異なる波長、従って異なる色を放射することができる。
【0051】
第1および第2の面光源は、同時に、または互いに独立に動作させることができる。特に、第1の面光源を動作させると、第1の機能の提供を可能にすることができ、第2の面光源を動作させると、第2の機能の提供を可能にすることができ、両方の面光源を同時に動作させると、第3の機能の提供を可能にすることができる。
【0052】
第2の面光源は、ランバート発光ダイオードであってもよい。
【0053】
図5に示す投光装置の第5の実施形態41は、光反射システム44が複数の素子441からなり、これらの素子は、第2の面光源であり、かつ第1の面光源によって照らされている点において、図2に示す第2の実施形態とは異なっている。この構成により、光反射システムの寸法が大きくなくても、寸法の大きい面光源を得ることができる。
【0054】
個々の素子441は、有機発光ダイオードであることが好ましい。これらは、透明タイプ、すなわち、それぞれの面から光を放射するタイプであってもよいし、不透明タイプ、すなわち、単一面から光を放射するタイプであってもよい。
【0055】
個々の素子441は、互いに影響を及ぼすことができる。すなわち、素子の中のある素子から放射または反射された光線を、他の素子が反射することができる。
【0056】
第2の面光源は、ランバート発光ダイオードであってもよい。
【0057】
図1〜図5における断面は、水平の断面と同様に垂直の断面でもよい。さらには、傾いた断面でもよい。
【0058】
図示しない別の実施形態においては、投光装置は、2つ以上の面光源を備えている。これらの2つの光源は、並置されていてもよい。それらは、主として2つの異なる方向に光を放射することができる。光反射システムは、種々の光源から放射された光ビームの屈折および成形を行う。このようにして得られる光ビームを、全体として、同じ方向に向けることができる。あるいは、第1の面光源から来る光ビームを、全体として、第1の方向に屈折させることができ、第2の面光源から来る光ビームを、全体として、第2の方向に屈折させることができ、この第1の方向と第2の方向は異なる。
【0059】
第1の面光源に面する光反射システムの一部は、第2の面光源に面する光反射システムの一部とは異なる光特性を有してもよい。この場合、投光装置の外観が突然変化するのを避けるために、光特性を徐々に変化させることが好ましい。光源は、それらの発光面を異なる方向に向けた状態で、一緒に接合されてもよいし、またされなくてもよい。光反射システムは、各独立光源から来る光ビームを、所望の全体的方向へ向ける。このようにして、面光源の向きに対する制約を克服することができる。従って、面光源は、投光装置のデザインに応じて、例えばその曲線に従って、配置することができる。この場合、光反射システムは、光ビームの全体的方向、および所望の拡散を与えるのに適するようになっている。また、この実施形態では、オン時の外観と、オフ時の外観が異なる。例えば有機発光ダイオードなどの面光源の表面は、特に面光源が高い指向性をもって放射する時、面光源がオンかオフかによって同じようには見えない。この実施形態を、前述の他の実施形態と組み合わせることができることは言うまでもない。
【0060】
第1および第2の面光源は、異なる色の光を放射し、互いに独立に動作させることができるようにすると有利である。従って、この投光装置は、複数の機能、特に異なる色を必要とする複数の機能を提供することができる。しかし、この投光装置は、光源がオフの時、カバーレンズの外からは同じに見える。例えば、投光装置は、後部位置表示機能および方向変更表示機能の両方を提供することができる。
【0061】
前に説明したように、自動車の照明における利用においては、光線を拡散させることが好ましいことがある。特に、垂直軸より水平軸方向に光線の拡散が大きい方が、おおむね好都合である。この光反射システムは、光ビームの主方向の周りに、光を拡散できるように配置および設計することができる。従って、光ビームは、円錐に含まれる光線の一群に相当し、この円錐の軸は、発光の方向を示している。円錐の幅は、拡散に相当する。図6は、ビームの一例を示している。このビーム例は、矩形70で概略的に示されている。しかし光ビームは、他のどのような形状であってもよい。図6は、光装置からの光ビームが投影されているスクリーンに相当している。このスクリーンは、原則的に垂直であり、軸Vは、垂直方向の軸に相当し、軸Hは、水平方向の軸に相当する。図6は、光ビームを拡散させる処理をしていない場合の、光ビームの断面71も示している。その場合、光ビームは、はるかに集中している。光の主放射方向の両側の光線の一部を屈折させる光反射システムを設計する、光反射システムの種々の実施形態により、拡散ビーム70は、光装置から例えば10mまたは25mなどの決められた距離において得られる。これらの実施形態においては、基本的なことであるが、各光ビーム、特に光反射システムの基本パターン全体に影響を及ぼす各光ビームは、拡散されている。
【0062】
図7に示す光装置の他の実施形態においては、同じ拡散効果が、異なるやり方で得られる。具体的には、各基本ビームは拡散しない。拡散機能は、基本ビームを第2の方向6の周りの種々の方向に屈折することによって得られている。光線の拡散手段は、一群の屈折手段によって形成されている。図7は、広がりパターンまたは拡散パターンの一例を示している。パターンを矩形とした例を、矩形80で概略的に示す。しかしこのパターンは、他の任意の形状でもよい。この実施形態においては、基本光ビーム、特に光反射システムの基本パターン全体に影響を及ぼす光ビームは、拡散していない。従って、光反射システムのジオプトリの基本パターンの群に影響を及ぼす光ビームから、基本パターンから来て、種々の方向を向いている光ビームのセット(図7に示す断面81)が得られる。光ビームの拡散パターン80の全体にわたって分散している種々の光点の、不完全な重なりおよびオフセットにより、全体のビームが生成されている。
【0063】
あるいは、上述の2つの原理を補完的に使用することができる。具体的には、拡散機能を有する基本パターンと、光を全部は同じ方向に放射しないようになっている基本パターンとの合成効果により、拡散機能を提供することができる。
【0064】
1つ以上の面光源は、すべてのタイプであってもよい。しかし、有機発光ダイオード型の光源が好ましい。図8は、そのような有機発光ダイオード装置60を示している。この装置は、有機発光ダイオード62、および電圧発生器61を備えている。有機発光ダイオードは、カソード63、アノード65、および有機層64からなる複数の層を備えている。有機層は、電圧を印加されると、放射に対して透明であるアノード65を通って伝播する光放射66を発する。有機層は、必要に応じて、種々の有機材料で作られた種々の層641〜645を備えていてもよい。追加の層を備える有機発光ダイオードを使用することが好ましい。光発光層643に加えて、有機層は、発光層643までの電子の運搬を促進する層641、および正孔、すなわち電子の不在を発光層643まで運搬するのを促進する層645を備えている。有機層は、下位層643〜645からの正孔を阻止する層642、および上位層641〜643からの電子を阻止する層644も備えている。これらの層の全ては、マイクロキャビティを形成し、その厚さは、光共鳴するように調節されている。このようにして、共鳴キャビティを形成する選択的干渉反射器を作ることができる。例えば、前述の特許文献5(FR2926677)に記載のタイプの有機発光ダイオードを使用することができる。
【0065】
面光源の発光面積は、1cm2、さらには10cm2より大きい方が好ましい。
【0066】
前述の実施形態においては、光反射システムに設けられている基本パターンのサイズは、通常の0.5〜1mm、またはより大きい0.2〜5mm、またはさらに10mmのものまである。従って、基本パターンは、従来の製造手段を使用して得られる鋳型によって作ることができる。
【0067】
本発明による光装置により、面光源を、平らにすることができ、かつ必ずしも、装置の外で光線が伝播することになっている方向を向く必要がないことが分かる。従って、光装置の面光源の設置は、簡単になる。そのため、実行を阻止するような位置の制約を必ずしも受けることなく、高輝度の有機発光ダイオードを使用することができる。さらに、光反射システムの拡散効果により、光反射システムのない発光ダイオードが引き起こしていた反射の問題も解決される。
【符号の説明】
【0068】
1 第1の実施形態
2、12、22、32、42 第1の面光源
3 ケーシング
4、14、24、34、44 光反射システム
5 第1の方向
6 第2の方向
7、7a、7b 光ビーム、光線
8 光線
9 カバー
11 第2の実施形態
21 第3の実施形態
31 第4の実施形態
41 第5の実施形態
60 有機発光ダイオード装置
61 電圧発生器
62 有機発光ダイオード
63 カソード
64 有機層
65 アノード
66 光放射
70 拡散光ビームの断面
71 (拡散処理のない)光ビームの断面
80 光ビームのパターン
81 基本光ビームの断面
141、441 (光反射システム)素子
641 電子運搬層
642 正孔阻止層
643 発光層
644 電子阻止層
645 正孔運搬層
H 水平方向軸
V 垂直方向軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線(7)を放射する第1の面光源(2;12;22;32;42)を備えている、自動車用投光装置(1;11;21;31;41)、特に表示および/または照明装置であって、前記第1の面光源から放射された前記光線を屈折させる光反射システム(4;14;24;34;44)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の面光源は、第1の方向(5)に光線(7)を放射し、前記光反射システムは、前記第1の方向(5)に放射された前記光線を、前記第1の方向とは異なる第2の方向(6)に屈折させるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光反射システムは、1つ以上の構成要素(4;14;24;34;44)によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第2の面光源(34;441)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光反射システム(34;441)の少なくとも一部は、第2の面光源の構成要素となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記光反射システムは、有機発光ダイオードの電極であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記光反射システムは、前記第1の面光源が放射する光ビームを、拡散させる形状を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の面光源(2;12;22;32;42)は、有機発光ダイオード(62)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の面光源は、透明であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の面光源の発光面積は、1cm2より大きいことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の面光源の発光面積は、10cm2より大きいことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の面光源は、ランバート発光ダイオードと比べて、その発光面と直交する方向において、高い発光指向性を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の面光源は、少なくとも5,000Cd/m2の輝度を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
表示灯であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の面光源は、複数の面発光素子、特に複数の有機発光ダイオードを備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−519971(P2013−519971A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552356(P2012−552356)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051763
【国際公開番号】WO2011/098430
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】