説明

面光源素子及びそれを備えた照明装置

【課題】耐擦傷性に優れ、かつ、充分な光取り出し効率が得られる面光源素子を提供すること。
【解決手段】発光層3と、発光層3に駆動電圧を印加するとともに、発光層3から出射された光を透過する透明電極2と、透明電極2の光出射面側に形成された透明基板1と、を備え、透明基板1の光出射面には、透明電極2側に凹んだ楕円球の一部からなる複数の凹部1bが形成されており、凹部1bの断面を構成する楕円における透明基板1の主面と垂直な軸の長さの1/2をH、主面と平行な軸の長さをD、隣接する2つの凹部1bの中心間距離をL、とした場合、1.0D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dが成立し、発光層3の屈折率をn1とした場合、透明基板1の屈折率はn1−0.1よりも大きい面光源素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源素子及びそれを備えた照明装置に関し、特に有機EL素子を用いた面光源素子及びそれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)素子は、例えば図8に示すように構成されている。図8において、有機EL素子は、透明基板101、透明基板101の下面に形成された透明電極102、透明電極102の下面に形成された発光部103、発光部の下面に形成された反射電極104、を備えている。このような構成の有機EL素子は、透明電極102と反射電極104との間に、図示しない駆動電源から所定の駆動電圧を印加することにより、発光部103が発光し、発光部103からの光が、透明電極102、透明基板101を介して、空気中に出射する。
【0003】
図8のような有機EL素子では、透明電極102がITO(Indium Tin Oxide)からなる場合、その屈折率は約2.0であり、発光部103の屈折率は約1.7である。また、透明基板101がガラスからなる場合、その屈折率は約1.5である。このため、発光部103から透明電極102を介して透明基板101に光が入射する場合、あるいは、透明基板101から空気中に光が出射する場合、屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が伝播することになる。従って、そこでは入射角によっては全反射が発生し、有機EL素子内に光の一部が閉じ込められることになる。ここで、透明電極102と透明基板101との界面で全反射して閉じ込められる光は薄膜導波光、透明基板101と空気との界面で全反射して閉じ込められる光は基板導波光と呼ばれる。これら導波光は空気中に出射されないため、素子を構成する基材で吸収され損失となる問題があった。
【0004】
このような問題に対し、薄膜導波光や基板導波光を空気中に取り出すことで有機EL素子の発光効率を向上させる方法が、例えば特許文献1〜3、非特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1には、透明基板の光出射面に半球形状の微小マイクロレンズの集合からなる全反射回避層が形成された有機EL素子が開示されている。また、透明基板と透明電極の界面に凸部構造を設けることによって、薄膜導波光を低減させている。
【0006】
特許文献2には、光出射面に光入射面に向かって凹んだ複数の凹部が形成された有機EL素子が開示されている。各凹部は、楕円球の一部と略同一の形状であり、かつ、凹部の光出射面における外郭の形状が略円であり、他の凹部との間隔を空けることが要求されている。
【0007】
特許文献3には、屈折率が1.8以上の透明基板の光出射面に多孔質の光散乱体が形成された有機EL素子が開示されている。具体的には、透明基板の屈折率を高くすることで透明電極から透明基板に入射する光を増加させている。ここで、増加した光は基板導波光となり、光取り出し構造を設けないと空気中に出射されない。そこで、光取り出し構造として光出射面に多孔質の光散乱体が設けられている。
【0008】
非特許文献1には、薄膜導波光を透明基板中に取り出すために、低屈折率の格子構造が発光部に導入された有機EL素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−127560号公報
【特許文献2】特開2004−296215号公報
【特許文献3】特開2009−238507号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yiru Sun & Stephen R. Forrest, "Enhanced light out-coupling of organic light-emitting devices using embedded low-index grids", Nature Photonics 2, 483-487 (1 August 2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された有機EL素子では、空気と接する表面に平坦な部分がないため、外部からの刺激によって傷がつきやすく耐擦傷性に劣るという課題があった。
【0012】
特許文献2では、隣接する凹部間の間隔を凹部の幅の0.3倍以上とする必要があるため、凹部を密に配置することができず、充分な光取り出し効率(透明基板中の光を空気中に取り出すことができる割合)が得られないという課題があった。
【0013】
特許文献3及び非特許文献1では、薄膜導波光を透明基板中に取り出すことはできても、充分な光取り出し効率が得られないという課題があった。具体例として、図8に示したような一般的な有機EL素子の場合、発光部で発光した光のエネルギーを1としたとき透明基板内部に入射する光の割合は0.50となる。一方、薄膜導波光を透明基板中に入射させるために発光部の屈折率よりも高い屈折率をもつ基板を導入した場合、透明基板内部に入射する光の割合は0.83へ向上する。両者において、従来型の光取り出し構造(凸部)を用いると、前者では、空気中への出射光の割合が0.32となり、光取り出し効率は64%(=0.32/0.50)となる。後者では、空気中への出射光の割合が0.47となり、光取り出し効率は57%(=0.47/0.83)とかえって低下する。よって、薄膜導波光を透明基板中に取り出すことはできても、充分な光取り出し効率が得られなかった。
【0014】
この理由を以下に説明する。図9は発光強度の基板内角度依存性を示したグラフである。基板内角度とは、光出射面の法線方向を基準(0°)とした場合の角度であり、取り得る範囲は0〜90°である。図9には、一般的なガラス基板(屈折率n=1.52)を用いた場合、特許文献3のように一般的なガラス基板よりも屈折率が高い基板(屈折率n=1.72)を用いた場合、非特許文献1のような低屈折率格子構造を設けた場合の3つの場合が示されている。
【0015】
図9から、一般的なガラス基板(屈折率n=1.52)を用いた場合に比べ、屈折率が高い基板(屈折率n=1.72)を用いた場合や低屈折率格子構造を設けた場合には、高い基板内角度における発光強度が増加している。しかしながら、特許文献3及び非特許文献1に開示された技術では、この基板内角度の高い光(高角度光)を効率よく取り出すことができず、充分な光取り出し効率が得られなかった。
【0016】
本発明は、以上を鑑みなされたものであって、耐擦傷性に優れ、かつ、充分な光取り出し効率が得られる面光源素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る一態様は、
発光層と、
前記発光層に駆動電圧を印加するとともに、前記発光層から出射された光を透過する透明電極と、
前記透明電極の光出射面側に形成された透明基板と、を備え、
前記透明基板の光出射面には、前記透明電極側に凹んだ楕円球の一部からなる複数の凹部が形成されており、
前記凹部の断面を構成する楕円の前記透明基板の主面と垂直な軸の長さの1/2をH、前記主面と平行な軸の長さをD、隣接する2つの前記凹部の中心間距離をL、とした場合、0.6D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dが成立し、
前記発光層の屈折率をn1とした場合、前記透明基板の屈折率はn1−0.1よりも大きい面光源素子である。
【0018】
前記透明基板の屈折率はn1よりも大きいことが好ましい。また、1.0D<L<1.1D及び0.5D<H<0.7Dが成立することが好ましい。
【0019】
前記透明基板が、前記透明電極側に形成された第1の透明基板と、前記第1の透明基板の出射面側に形成され、前記複数の凹部が形成された第2の透明基板と、を備え、前記第1の透明基板の屈折率をn2、前記第1の透明基板の屈折率をn3、とした場合、n2≦n3が成立する構成であってもよい。
前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板がいずれも樹脂からなることが好ましい。
【0020】
前記凹部の幅Dが5〜200μmであることが好ましい。
【0021】
前記発光層が、前記発光層の主面の法線方向から見て格子状に形成され、かつ、前記発光層よりも屈折率が低い低屈折率格子構造を備える構成であってもよい。
前記低屈折率格子構造の幅が1〜5μm、間隔が3〜30μmであることが好ましい。
【0022】
上記の面光源素子は有機エレクトロルミネッセンス素子に好適であり、照明装置に適用可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐擦傷性に優れ、かつ、充分な光取り出し効率が得られる面光源素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係る有機EL素子の断面図である。
【図2A】透明基板1における凹部1bの拡大図の一例である。
【図2B】透明基板1における凹部1bの拡大図の一例である。
【図3】光取り出し構造として従来型の凸部を設けた場合と、実施の形態1に係る光取り出し構造である凹部を設けた場合とについて、光出射割合の基板内角度依存性を比較して示したグラフである。
【図4】実施の形態2に係る有機EL素子の断面図である。
【図5】実施の形態3に係る有機EL素子の断面図である。
【図6A】実施の形態4に係る有機EL素子の断面図である。
【図6B】実施の形態4に係る有機EL素子の平面図である。
【図7】実施の形態5に係る有機EL素子の断面図である。
【図8】一般的な有機EL素子の断面図である。
【図9】発光強度の基板内角度依存性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0026】
(実施の形態1)
図1を参照して本発明の第1の実施の形態に係る有機EL素子について説明する。図1は、実施の形態1に係る有機EL素子の断面図である。図1に示すように、実施の形態1に係る有機EL素子は、光透過性を有する透明基板1、透明基板1の下面に形成された光透過性を有する透明電極2、透明電極2の下面に形成された発光部3、発光部3の下面に形成された光反射性を有する反射電極4、を備えている。さらに、透明基板1の透明電極2と接する反対側の面である光出射面に平坦部1a及び光取り出し構造(凹部)1bが設けられている。
【0027】
透明基板1を構成する材料としては、高屈折率ガラスや、光学用透明プラスチックなどを用いることができる。
透明電極2を構成する材料としては、酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(TiO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。
【0028】
発光部3を構成する材料としては、公知の有機EL素子に使用されている蛍光系材料、燐光系材料を利用することができる。発光部3は発光色が異なる発光層が複数積層されていてもよい。さらに、発光部3には、透明電極2の側に正孔注入層、正孔輸送層(不図示)が形成されていてもよい。また、発光部3には反射電極4の側に電子注入層、電子輸送層(不図示)が形成されていてもよい。
反射電極4を構成する材料としては、アルミニウムや銀等を用いることができる。
【0029】
ここで、凹部1bの形成方法について説明する。透明基板1がガラス製である場合、凹部1bはガラス表面のエッチングやサンドブラストにより作製することができる。一方、透明基板1が樹脂製である場合、例えば、金型を用いたプレス成形や光硬化性樹脂を用いることにより、凹部1bを透明基板1の片側の面に作製する。プレス成形を用いる場合、凹部1bは透明基板1に直接成形される。光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂を金型に塗布した後、透明基板を光硬化性樹脂に密着させてから紫外線などを照射し、光硬化性樹脂を硬化させ一体化する。これにより、凹部1bを有する透明基板1を作製できる。
【0030】
本実施の形態に係る有機EL素子では、発光部3の屈折率をn1、透明基板1の屈折率をn2とした場合、n2>n1−0.1を満たす透明基板1を用いる。具体的には、例えば発光部3の屈折率n1=1.7であるときは、透明基板1には屈折率n2=1.6〜2.0の高屈折率の材料を用いる。このような高屈折率の材料を透明基板1に用いることにより、発光部3からの光の多くを透明基板1に導くことができる。発光部3よりも屈折率の高い透明基板1を用いると(n2>n1)、透明基板1において基板内角度がより低い光が増加するため、光出射割合が高くなり、さらに好ましい。光出射割合とは、特定の基板内角度における光取り出し効率のことである。
【0031】
図2Aは、透明基板1における凹部1bの拡大図である。図2Aに示すように、前記凹部1bは略楕円球(円球を含む)の一部である。凹部1bの断面を構成する略楕円における透明基板1の主面と垂直な軸の長さの1/2をH、主面と平行な軸の長さをD、隣接する2つの凹部1bの中心間距離をL、とした場合、0.6D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dである。このような構成により、高い光取り出し効率を得ることができる。また、図2Bに示すようにD<Lとした場合には、光出射面に平坦部1aがあるため、凹部1bの形状は外部からの刺激によって変形し難い。さらに耐擦傷性を高めるために、両面が平坦な保護シートを貼り付けてもよい。
【0032】
光出射面に設けられた凹部1bにより、透明基板1中を伝播する高角度光を効率的に空気中へ取り出すことができる。図3は、光取り出し構造として従来型の凸部を設けた場合と、本実施の形態に係る光取り出し構造である凹部を設けた場合とについて、光出射割合の基板内角度依存性を比較して示したグラフである。上述の通り、光出射割合とは、特定の基板内角度における光取り出し効率のことである。
【0033】
図3に示すように、凸部を設けた場合、基板内角度が高い光(高角度光)の光出射割合が低いのに対し、本実施の形態に係る凹部を設けた場合、透明基板1中を伝播する高角度光を効率的に空気中へ取り出すことができる。さらに、本実施の形態に係る凹部を設けた場合、低い基板内角度の光についても、凸部を設けた場合と遜色ない高い光出射割合を得ることができる。その結果、高い光取り出し効率を得ることができる。なお、例えば、高角度光を基板内角度=70〜90°の光と定義してもよい。
ここで、本実施の形態に係る有機EL素子のように、透明基板1の屈折率が高く、薄膜導波光を透明基板中に多く取り出す構造を有する場合、図9のグラフに示すように高角度光が多くなるため、特に効果的である。
【0034】
凹部1bは略楕円球(円球を含む)の一部であるから、光出射面上の輪郭が略円形、出射面に垂直な平面上への投影形状(つまり断面形状)が略楕円形(円形を含む)である。ここで、図2Aに示す凹部1bの断面を構成する略楕円の出射面と垂直な軸の長さの1/2であるHと、隣接する凹部1b同士の中心間距離Lとを、凹部1bの断面を構成する略楕円の出射面と平行な軸の長さDに対して変化させる。表1に、凹部1bを有する屈折率が1.7の透明基板1を備えた有機EL素子において、隣接する2つの凹部1bの中心間距離Lと、凹部1bを構成する略楕円の透明基板1の主面と垂直な軸の長さの1/2であるHを変化させたときの光取り出し効率を求めた結果を示す。なお、表1では、便宜的にHのことを「高さ」、Dのことを「幅」、と呼んでいる。表1に示すように、光取り出し構造として凸部を用いた場合の最大の光取り出し効率0.47よりも高い光取り出し効率が得られる条件を求めた。表1においてハッチングされた条件では、光取り出し効率が低下する。
【0035】
表1に示すように、0.6D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dであることが好ましい。1.0D<L<1.1D及び0.5D≦H<0.7Dであることがさらに好ましい。これらの条件では、隣接する凹部同士が接続することがないため、損傷し易い尖頭部分がなく、また、H/L<1となることからアスペクト比が低いため、製造が比較的容易となる。ここで、透明基板1の厚みは、一般的に300μm〜700μmであることから、凹部の幅D=5μm〜200μmとすることで透明基板の強度を保持することができる。
【表1】

【0036】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図4は本実施形態に係る有機EL素子の断面図である。図4に示すように、実施の形態2に係る有機EL素子では、実施の形態1に係る透明基板1が、第1の透明基板11と、第1の透明基板11の光出射面に設けられた第2の透明基板12とから構成されている。第1の透明基板11の光出射面は平坦であって、そこに第2の透明基板12の平坦面が、例えば接着材よりなる粘着シート(不図示)を介して貼付されている。第2の透明基板12の平坦面の反対側に位置する光出射面には、実施の形態1に係る透明基板1と同様に、凹部1bが設けられている。ここで、第1の透明基板11の屈折率をn2とした場合、第2の透明基板12の屈折率n3は、n3≧n2を満たす。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0037】
本実施形態では、第2の透明基板12の屈折率n3及び粘着シートの屈折率を第1の透明基板11の屈折率n2以上とすることで第2の透明基板12と第1の透明基板11の界面で全反射する光やフレネル反射する光を少なくすことができる。第2の透明基板12の材料としては、光透過性に優れるポリマーやガラス材料など高屈折率のものが好ましい。ポリマーの例としては、エポキシ樹脂、高屈折率無機材料超微粒子を包埋した樹脂組成物などを用いることができる。
【0038】
ここで、凹部1bの形成方法について説明する。第2の透明基板12がガラス製である場合、凹部1bはガラス表面のエッチングやサンドブラストにより作製することができる。一方、第2の透明基板12が樹脂製である場合、例えば、金型を用いたプレス成形や光硬化性樹脂を用いることにより、凹部1bを第2の透明基板12の片側の面に作製する。プレス成形を用いる場合、凹部1bは第2の透明基板12に直接成形される。光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂を金型に塗布した後、透明基板を光硬化性樹脂に密着させてから紫外線などを照射し、光硬化性樹脂を硬化させ一体化する。これにより、凹部1bを有する透明基板1を作製できる。
【0039】
(実施の形態3)
次に、本発明の第3の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図5は本実施形態に係る有機EL素子の断面図である。図5に示すように、実施の形態3に係る有機EL素子は、第1の透明基板11、第1の透明基板11の下面に形成された反射電極4、反射電極4の下面に形成された発光部3、発光部3の下面に形成された透明電極2、を備えている。そして、透明電極2の下面(光出射面)に、第2の透明基板12の平坦面が、例えば粘着シート(不図示)を介して貼付されている。第2の透明基板12の平坦面の反対側に位置する光出射面には、実施の形態1に係る透明基板1及び実施の形態2に係る第2の透明基板12と同様に、凹部1bが設けられている。
【0040】
ここで、発光部3の屈折率をn1、第2の透明基板12の屈折率をn3とした場合、n3>n1−0.1を満たす。具体的には、例えば発光部3の屈折率n1=1.7であるときは、第2の透明基板12の屈折率n3=1.6〜2.0の高屈折率の材料を用いる。このような高屈折率の材料を第2の透明基板12に用いることにより、発光部3からの光の多くを第2の透明基板12に導くことができる。発光部3よりも屈折率の高い第2の透明基板12を用いると(n3>n1)、さらに好ましい。
【0041】
(実施の形態4)
次に、本発明の第4の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図6Aは本実施形態に係る有機EL素子の断面図である。図6Aに示すように、実施の形態4に係る有機EL素子は、実施の形態1に係る有機EL素子において、発光部3と略等しい厚みを有し、発光部3と略同一面に形成された低屈折率材料からなる格子構造(低屈折率格子構造)5を備えている。低屈折率格子構造5の屈折率は1.03〜1.45である。
【0042】
図6Aに示すように、低屈折率格子構造5が形成された部分では、発光部3及び反射電極4が下側に突出して形成されている。図6Aに示すように、低屈折率格子構造5は、薄膜導波光の光線角度を変換して透明基板1中に導くことができる。そのため、図9のグラフに示すように、主に高角度光を増加させることができる。
【0043】
図6Bは低屈折率格子構造5の平面図である。図6Bに示すように、低屈折率格子構造5は格子状に形成されている。透明基板1には、実施の形態1と同様に、凹部1bが設けられている。また、その他の構成も実施の形態1と同様である。
【0044】
発光部3の屈折率をn1、透明基板1の屈折率をn2とした場合、n2>n1−0.2が成立する。具体的には、発光部3の屈折率が1.7であるときは、透明基板1の屈折率n2=1.5〜2.0とする。n2>n1−0.1であると好ましく、発光部3よりも高い屈折率の透明基板1を用いると(n2>n1)、さらに好ましい。
【0045】
また、凹部1bは断面形状が楕円球の一部であって、凹部1bと隣接する凹部1bとの中心間距離Lとを構成する楕円球の出射面と垂直な軸の長さの1/2をH、出射面と平行な軸の長さをDとした場合、0.6D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dが成立する。
【0046】
低屈折率格子構造5は、幅が1〜5μm、格子間隔が3〜30μmであることが好ましい。低屈折率格子構造5を構成する低屈折率材料としては、エアロゲルやアクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などの透明材料を用いることができる。
【0047】
(実施の形態5)
次に、本発明の第5の実施形態に係る有機EL素子について説明する。図7は本実施形態に係る有機EL素子の断面図である。図7に示すように、実施の形態5に係る有機EL素子は、実施の形態2に係る有機EL素子において、発光部3と略等しい厚みを有し、発光部3と略同一面に形成された低屈折率材料からなる格子構造(低屈折率格子構造)5を備えている。低屈折率格子構造5の屈折率は1.03〜1.45である。
【0048】
図7に示すように、低屈折率格子構造5が形成された部分では、発光部3及び反射電極4が下側に突出して形成されている。実施の形態4と同様に、低屈折率格子構造5は、薄膜導波光の光線角度を変換して第1の透明基板11中に導くことができる。そのため、図9のグラフに示すように、主に高角度光を増加させることができる。
【0049】
図7に示すように、実施の形態5に係る有機EL素子は、実施の形態2と同様に、第1の透明基板11と、第1の透明基板11の光出射面に設けられた第2の透明基板12とを備えている。第1の透明基板11の光出射面は平坦であって、そこに第2の透明基板12の平坦面が、例えば粘着シート(不図示)を介して貼付されている。第2の透明基板12の平坦面の反対側に位置する光出射面には、凹部1bが設けられている。ここで、第1の透明基板11の屈折率をn2とした場合、第2の透明基板12の屈折率n3は、n3≧n2を満たす。その他の構成も実施の形態2と同様である。
【0050】
なお、上記実施の形態1〜3に係る透明電極または透明基板と接する回折格子を設けてもよい。この回折格子は光の回折現象を利用して特定のスペクトルを得るための素子で、周期的な溝が透明基板の1つの辺に略平行な方向とそれに垂直な方向に刻まれている。また、この回折格子は、可視光の波長と同程度の回折ピッチで透明基板に形成させていることが好ましい。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
実施の形態1において、発光部3の屈折率をn1=1.7、透明電極2の屈折率を2.0、透明基板1の屈折率n2=1.72として、半球形状(H=0.5D)の凹部を六方状に配列した。半球形状の凹部の直径D=20μm、隣接する2つの凹部1bの中心間距離L=22μm(L=1.1D)とした。実施例1に係る面光源素子では、発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.49となった。なお、実施の形態2において、第1の透明基板11の屈折率n2、第2の透明基板12の屈折率n3および粘着シートの屈折率をいずれも1.72として、同様に凹部を設けた場合も等しい結果となった。
【0052】
(比較例1)
実施例1の構成において、光取り出し構造として、凸部を光出射面に設けた。発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.47となった。このように、光取り出し構造として凹部を用いた実施例1の方が、凸部を用いた本比較例よりも、高い光取り出し効率を得ることができた。
【0053】
(比較例2)
実施例1に記載の構成において、半球形状の凹部の直径D=20μm、隣接する2つの凹部1bの中心間距離L=26μm(L=1.3D)とした。発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.46となった。隣接する2つの凹部1bの中心間距離Lを凹部の幅Dの1.1倍とした実施例1は、1.3倍とした本比較例よりも高い光取り出し効率を得ることができた。
【0054】
(実施例2)
実施の形態3において、発光部3の屈折率をn1=1.7、透明電極2の屈折率を2.0、第1の透明基板11の屈折率n2=1.72、第2の透明基板12の屈折率n3および粘着シートの屈折率をいずれも1.72として、半球形状(H=0.5D)の凹部を六方状に配列した。半球形状の凹部の直径D=20μm、隣接する2つの凹部1bの中心間距離L=22μm(L=1.1D)とした。実施例2に係る面光源素子では、発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.48となった。
【0055】
(比較例3)
実施例2の構成において、光取り出し構造として、凸部を光出射面に設けた。発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.46となった。光取り出し構造として凹部を用いた実施例2の方が、凸部を用いた本比較例よりも高い光取り出し効率を得ることができた。
【0056】
(実施例3)
実施の形態4、5において、低屈折率格子構造の屈折率を1.45、格子構造の幅を1μm、格子間隔を6μmとした。透明基板1または第1の透明基板11の屈折率n2=1.52、第2の透明基板12の屈折率n3および粘着シートの屈折率をいずれも1.52として、光出射面に半球形状(H=0.5D)の凹部を六方状に配列した。半球形状の凹部の直径D=20μm、隣接する2つの凹部1bの中心間距離L=22μm(L=1.1D)とした。発光部で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.41となった。
【0057】
(比較例4)
実施例3の構成において、光取り出し構造として、凸部を光出射面に設けた。発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.40となった。光取り出し構造として凹部を用いた実施例3の方が、凸部を用いた本比較例よりも高い光取り出し効率を得ることができた。
(実施例4)
実施の形態1において、発光部3の屈折率をn1=1.7、透明電極2の屈折率を2.0、透明基板1の屈折率n2=1.72として、楕円球の一部からなる凹部(H=1.3D)を六方状に配列した。凹部の断面を構成する楕円球における透明基板1の主面と平行な軸の長さであるD=20μm、隣接する2つの凹部1bの中心間距離L=18μm(L=0.9D)とした。実施例4に係る面光源素子では、発光部3で発光した光のエネルギーを1として、空気中に出射する光の割合は0.49となった。
【符号の説明】
【0058】
1 透明基板
1a 平坦部
1b 凹部
2 透明電極
3 発光部
4 反射電極
5 低屈折率格子構造
5 低屈折率格子構造
11 透明基板
12 透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と、
前記発光層に駆動電圧を印加するとともに、前記発光層から出射された光を透過する透明電極と、
前記透明電極の光出射面側に形成された透明基板と、を備え、
前記透明基板の光出射面には、前記透明電極側に凹んだ楕円球の一部からなる複数の凹部が形成されており、
前記凹部の断面を構成する楕円の前記透明基板の主面と垂直な軸の長さの1/2をH、前記主面と平行な軸の長さをD、隣接する2つの前記凹部の中心間距離をL、とした場合、0.6D<L<1.3D及び0.4D<H<1.4Dが成立し、
前記発光層の屈折率をn1とした場合、前記透明基板の屈折率はn1−0.1よりも大きい面光源素子。
【請求項2】
前記透明基板の屈折率はn1よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の面光源素子。
【請求項3】
1.0D<L<1.1D及び0.5D<H<0.7Dが成立することを特徴とする請求項1又は2に記載の面光源素子。
【請求項4】
前記透明基板が、
前記透明電極側に形成された第1の透明基板と、
前記第1の透明基板の出射面側に形成され、前記複数の凹部が形成された第2の透明基板と、を備え、
前記第1の透明基板の屈折率をn2、前記第1の透明基板の屈折率をn3、とした場合、n2≦n3が成立することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面光源素子。
【請求項5】
前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板がいずれも樹脂からなることを特徴とする請求項4に記載の面光源素子。
【請求項6】
前記Dが5〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の面光源素子。
【請求項7】
前記発光層が、
前記発光層の主面の法線方向から見て格子状に形成され、かつ、前記発光層よりも屈折率が低い低屈折率格子構造を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の面光源素子。
【請求項8】
前記低屈折率格子構造の幅が1〜5μm、間隔が3〜30μmであることを特徴とする請求項7に記載の面光源素子。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の面光源素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の面光源素子を備えた照明装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79663(P2012−79663A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226710(P2010−226710)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】