説明

面光源装置及びそれが具備された液晶表示装置

【課題】特に液晶表示装置の面光源装置として使用した場合に、正面輝度が均一で低下することなく、十分なモアレ解消能及び耐擦傷性をもった光拡散フィルムが備えられた面光源装置を提供する。また、当該面光源装置が具備された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】光源1aと、複数の集光部4aを有する集光シートと、光拡散フィルム3aとがこの順に備えられた面光源装置であって、前記光拡散フィルム3aが海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光拡散フィルム3aの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置及びそれが具備された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下「LCD」ともいう。)は、一般に、バックライトユニット、液晶セル及び偏光板により構成されている。偏光板は、通常、偏光板用保護フィルムと偏光子(「偏光膜」ともいう。)とからなる。偏光子としては、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、延伸を行ったものがよく用いられており、その両面を偏光板用保護フィルムに覆われている。偏光板用保護フィルムとしては、優れた透湿性であり偏光子との接着性に優れたセルローストリアセテート(TAC)フィルムが多く用いられている。
【0003】
近年、LCDの分野では、薄型化及びコストダウンが進んできている。液晶表示装置は、自発光型の表示装置ではないため、液晶セルの背面側(バックライト型)、あるいは、導光板のエッジ部分(エッジライト型)に冷陰極管(CCFL)やLED等の光源が必ず配置されている。これらの光源は、一般的に線光源あるいは点光源であるため、均一に面光源化するために、光拡散シート又は光拡散フィルム(「拡散シート」又は「拡散フィルム」ともいう。)が用いられている。また、光拡散シートは、光に指向性を持たせるための部材としてよく用いられる集光シート(プリズムシート)と入射光との干渉、あるいは液晶セル中の画素と入射光が干渉して生じる、モアレ等の干渉縞を抑制することができる。
【0004】
しかし、近年、薄型化やコストダウンの流れで、液晶表示装置の部材数の削減が進み、光拡散シートを使用しない構成のLCDが出てきている。また、光拡散シートを使用する場合でも、LCDの薄型化のために光源と光拡散シートとの距離が近くなり、そのため、従来の光拡散シートだけではモアレ等の干渉縞を解消することが困難になってきている。そこで、光拡散シートの代替としてバックライト側偏光板の表面に拡散性を有するものが使用されてきている。
【0005】
例えば、特許文献1では、凹部を有する光透過性基材を、光源、集光シート、光透過性基材の順に、備える面光源装置を提案しているが、凹部を有する光透過性基材は水を含有した樹脂溶液を製膜して作製しているため、乾燥負荷が大きく、製造するのにコストが非常にかかるという問題がある。また、空孔が形成されての凹部のために、高湿熱による寸法変化で凹部サイズが変化して、面光源装置として使用中に配光特性が変化してしまう問題があった。
【0006】
特許文献2には、多孔質不定形粒子と球状粒子とを分散含有する、所定の特性の光拡散層を有する光拡散偏光板が提案され、これによって光拡散シートを省略できることが開示されている。この方法によると、確かにモアレ縞を解消することができるが、偏光板化する際に、微粒子が脱落して工程汚染を引き起こすという問題や、表示装置にしたときに正面輝度が低下してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献3及び4には、透光性微粒子や架橋性微粒子を含有する光拡散フィルムを偏光板用の保護フィルムとして使用することが提案されている。しかし、この方法によっても前述したような偏光板化の際の微粒子脱落の問題や、安価に製造できないという問題があった。
【0008】
このようなことから、微粒子脱落がなく、モアレ縞解消に十分な光拡散性と偏光板用保護フィルム適性を併せもつ新しいフィルムが求められていた。
【0009】
特許文献5及び6には、複数の樹脂からなるドープを支持体上に流延し、相分離させた海島構造をもつ光拡散フィルムや、複数の樹脂の混合溶液を支持フィルム上に塗布して作製した光拡散フィルムが開示されている。この方法によれば、光拡散性を備えるフィルムを作製でき、また、微粒子を用いないので微粒子脱落の問題も解決できる。しかし、光拡散性を維持したまま偏光板用保護フィルムとして用いようとすると、透過率が下がり、表示装置にしたときの輝度が低下する新たな問題があることが判明した。また、海部分と島部分の界面で剥離が起きることにより、フィルムが脆くなっている、あるいは、擦傷が生じやすいという問題があることも分かった。
【0010】
また、支持フィルム上に複数の樹脂の混合溶液を塗布して光拡散フィルムを作製する方法は、フィルム製膜後に塗布をしなくてはならないため、コストダウンの要求が進む昨今の市場には見合わないという根本的な問題がある。
【0011】
このように、従来の光拡散フィルムでよく問題になっていた表示装置化した際の正面輝度の低下を引き起こすことなく、十分にモアレ縞を解消することのできる光拡散フィルムを、微粒子を使用しない系で作製することは従来では困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−76954号公報
【特許文献2】特開2000−75134号公報
【特許文献3】特開2010−277080号公報
【特許文献4】特開2010−164931号公報
【特許文献5】特開2000−239535号公報
【特許文献6】特開2002−250806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、特に液晶表示装置の面光源装置として使用した場合に、正面輝度が均一で低下することなく、十分なモアレ解消能及び耐擦傷性をもった光拡散フィルムが備えられた面光源装置を提供することである。また、当該面光源装置が具備された液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、少なくとも二種の樹脂相からなる海島構造を有する特定のフィルムが、優れた光拡散性と光透過性を兼ね備えていることを見出し本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.光源と、複数の集光部を有する集光シートと、光透過性拡散フィルムとがこの順に備えられた面光源装置であって、前記光透過性拡散フィルムが海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光透過性拡散フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることを特徴とする面光源装置。
2.前記像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.9〜2.5%の範囲内であることを特徴とする前記第1項に記載の面光源装置。
3.前記海島構造の連続相(海)を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)と、前記分散相(島)を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)との差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の面光源装置。
4.前記光拡散フィルムが、ガラス転移温度が異なる二種のセルロースエステル樹脂を含有していることを特徴とする前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の面光源装置。
5.前記第1項から第4項までのいずれか一項に記載の面光源装置が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、特に液晶表示装置の面光源装置として使用した場合に、正面輝度が均一で低下することなく、十分なモアレ解消能及び耐擦傷性をもった光透過性拡散フィルムが備えられた面光源装置を提供することができる。また、当該面光源装置が具備された液晶表示装置を提供することができる。
【0017】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0018】
二種以上の樹脂を混合した均一な高分子溶液の溶媒を蒸発させて濃縮し、飽和状態にすると、細かな相分離(ミクロ相分離)が起こる。その後、製膜した樹脂フィルムを延伸操作することでガラス転移温度が高い樹脂成分が盛上り、凹凸構造(海島構造)が形成される。これにより、光透過性で、かつ拡散機能が付与されたフィルムが形成されると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図
【図2】従来の液晶表示装置の構成の例を模式的に示した図
【図3】本発明の面光源装置を用いた液晶表示装置の構成例を模式的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の面光源装置は、光源と、複数の集光部を有する集光シートと、光透過性拡散フィルムとがこの順に備えられた面光源装置であって、前記光透過性拡散フィルムが海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光透過性拡散フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0021】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.9〜2.5%の範囲内であることが好ましい。また、前記海島構造の連続相(海)を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)と、前記分散相(島)を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)との差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であることが、フィルムの内部散乱低減効果が得られることから、好ましい。
【0022】
さらに、本発明においては、前記光透過性拡散フィルムが、ガラス転移温度が異なる二種のセルロースエステル樹脂を含有していることが好ましい。これにより、延伸操作により凹凸構造の制御が容易となる効果が得られる。
【0023】
本発明の面光源装置は、液晶表示装置に好適に具備され得る。
【0024】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0025】
(面光源装置の概要)
本発明の面光源装置は、光源と、複数の集光部を有する集光シートと、光透過性拡散フィルムとがこの順に備えられた面光源装置であって、前記光透過性拡散フィルムが海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光透過性拡散フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることを特徴とする。
【0026】
なお、本願において、光透過性拡散フィルムの像鮮明度(「写像性」ともいう。)は、JIS K7374:2007に準拠した透過法により測定して得た値である。また、全光線透過率は、450〜650nmの光波長領域内の光線透過率の平均値を全光線透過率とした。
【0027】
図2に、従来の液晶表示装置において、液晶セルの背面側に備えられているバックライト型面光源装置の模式図を示す。図2に示すように、従来のバックライト型面光源装置は、複数の線光源2aを有する光源1aと、光拡散シート3aと、集光シート4aと、光拡散シート5aとをこの順に備えることにより構成されている。なお、この面光源装置に備えられる液晶パネル12aは、基本的構成として、液晶セル7aと2枚の偏光板とを有し、偏光板は偏光膜10aとその保護フィルム11aとからなる。
【0028】
当該面光源装置において、光源1aから光拡散シート3aを通して集光シート4aに入射した光は、集光シート4aで正面側に集光されることにより、正面方向の輝度が高められる。一方、集光シート4aの前面に配置される光拡散シート5aは、集光シート4aで正面側に集光されて縮小された視野角を所定の範囲内で拡散する。
【0029】
このように集光シート4aの両側に光拡散シート3a及び5aを配置することで、輝度ムラの低減と表示特性の面均一化が達成されるとともに、入射光が液晶セル中の画素と干渉するのを抑制したり、プリズム内で発生するサイドローブを散乱させたりすることにより、モアレ等の干渉縞を生じるのを抑制することができる。
【0030】
本発明においては、図3に示すように、上記光拡散シートの代わりに、光拡散性に優れており、しかも光線透過率等にも優れている本発明に係る光透過性拡散フィルムを用いることを特徴とする。
【0031】
なお、当該光透過性拡散フィルムは、面光源側の偏向板の保護フィルムとしても代替可能である。この場合、当該光透過性拡散フィルムは、本発明の面光源装置の構成要素の一部分として扱うこととする。
【0032】
(光透過性拡散フィルム)
本発明に係る光透過性拡散フィルムは、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光透過性拡散フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることを特徴とする。
【0033】
本発明においては、前記像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.9〜2.5%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
像鮮明度を所定の範囲内に制御する手段としては、延伸倍率、延伸温度等の延伸条件による調整が挙げられる。また、全光線透過率を所定の値以上に制御する手段としては、樹脂の屈折率差が0.08以下である樹脂の選択等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、前記海島構造の分散相(島)を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)と、前記連続相(海)を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)との差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であることが好ましい。
【0036】
さらに、当該光透過性拡散フィルムが、ガラス転移温度が異なる二種のセルロースエステル樹脂を含有していることが好ましい。
【0037】
当該光透過性拡散フィルムの製造方法の詳細については、後述する。
【0038】
(集光シート)
本発明に係る集光シートは、液晶表示装置などの画像表示装置において、従来集光シートとして用いられているシートの少なくとも一方の面に複数の集光部を有する集光シートであればいずれのものであってもよい。
【0039】
複数の集光部は、面光源装置に必要とされる光源の角度分布により、縞状、半円柱状、錘状、又は錘台形状などの形状を採ることができる。シートの法線方向の光強度を高めるためには、断面が三角形状の縞状、半円柱状、円錐状、楕円錐状、四角錘状が好ましい。
【0040】
また、複数の集光部は、集光シートの表面上に周期的に配列されていることが好ましい。
【0041】
また、集光シートの集光部(プリズム部)の間の距離(ピッチ)Paは、正面輝度、モアレの発生防止等の観点から、20〜400μmが好ましい。
【0042】
集光シートは、溶融押出成型方法、熱プレス法、硬化樹脂を用いた転写法等の手法を用いて製造することができる。
【0043】
集光シートの表面(特に集光部が形成されている面)に滑り剤を含有させ、集光シートの破損を低下することができる。滑り剤を含有させるためには、滑り剤を添加した硬化性化合物を用いて集光シートを形成することが好ましい。
【0044】
(導光板)
本発明の平面光源装置には、導光板を設けることも好ましい。
【0045】
導光板を構成する材料としては、従来導光板の材料として用いられている透明で屈折率の大きい材料であればいずれであってもよいが、特に好ましいのは、透明性及び屈折率の観点から、ポリカーボネート樹脂及びメタクリル樹脂である。
【0046】
また、導光板の形状も従来のものと同様のものでよく、導光板の背面(下面)には必要に応じ凹凸形状あるいは印刷による拡散パターンが設けられてもよい。例えば、導光板の下面にプリズムパターンを設けて、これにより導光板内を伝播してきた光を反射せしめて、面光源装置の出射面側に出射するようにしてもよい。さらに、プリズムパターンは導光板上面に形成してもよい。
【0047】
(光源)
本発明の面光源装置の光源としては、液晶表示装置などの画像表示装置において、従来光源として用いられている光源であればいずれのものであってもよい。例えば、冷陰極管(CCFL)や、GaP系、GaAlAs系、InGaAlP系など種々の材料からなる発光ダイオード(LED)を使用しうる。
【0048】
(光透過性拡散フィルムを構成する樹脂)
本発明に係る光透過性拡散フィルムは、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであることを特徴とする。
【0049】
なお、本願において、適宜、当該海を構成する主成分となる樹脂を「樹脂A」と、当該島を構成する主成分となる樹脂を「樹脂B」と呼称する。
【0050】
本発明において、海に相当する連続相を形成する樹脂又は島に相当する分散相を形成する樹脂として使用できる樹脂は、例えば、セルロースエステル樹脂(以下、「セルロースエステル」ともいう。)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレ−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などから適当に組み合わせて選択できる。なかでも、一種にセルロースエステル樹脂を用いることが好ましい。また、総アシル置換度や置換基の異なる異種のセルロースエステルを組み合わせてもよいし、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類などのセルロース誘導体をセルロースエステルと組み合わせて使用することも好ましい。
【0051】
セルロースエステルとしては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)などが挙げられる。
【0052】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体((メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など)との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体が使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0055】
ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体と共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体が挙げられる。ビニルエステル系樹脂の誘導体には、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂などが含まれる。
【0056】
ビニルエーテル系樹脂としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルt−ブチルエーテルなどのビニルC1−10アルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルC1−10アルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)が挙げられる。
【0057】
ハロゲン含有樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0058】
オレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体が挙げられる。脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」などとして入手できる。
【0059】
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
【0060】
ポリエステル系樹脂には、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートやポリC2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、C2−4アルキレンアリレート単位(C2−4アルキレンテレフタレート及び/又はC2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50質量%以上)として含むコポリエステルなど)が例示できる。コポリエステルとしては、ポリC2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C6−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(フルオレノン側鎖を有する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
【0061】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)とジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。ポリアミド系樹脂には、ε−カプロラクタムなどのラクタムの単独又は共重合体であってもよく、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。
【0062】
本発明においては、セルロースエステルとセルロース誘導体を組み合わせて混合してもよく、セルロース誘導体のうちセルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
【0063】
好ましい樹脂には、例えば、セルロース誘導体、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが含まれる。通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーを溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。
【0064】
特に、製膜性や透明性の高い樹脂、例えば、セルロース誘導体(例えばセルロースエステル樹脂)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、などが好ましい。さらに、これらの樹脂のなかで特に好ましいのは、セルロースエステル樹脂である。
【0065】
セルロースエステル樹脂としては、セルロースアセテート及びセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0066】
樹脂のガラス転移温度は、例えば、−100〜250℃、好ましくは−50〜230℃、さらに好ましくは0〜200℃程度(例えば、50〜180℃程度)の範囲から選択できる。なお、本発明において、島を構成し得る樹脂Bとしては、ガラス転移温度が150℃以上であるものを用いることが好ましい。
【0067】
島を構成する樹脂Bと海を構成する樹脂Aとの割合は、例えば、B/A=10/90〜50/50(質量比)、好ましくは15/85〜45/55(質量比)、更に好ましくは20/80〜40/60(質量比)程度の範囲から選択できる。
【0068】
本発明において、樹脂Aと樹脂Bの少なくともいずれか一方の重量平均分子量(Mw)が180000以上であることが好ましい。樹脂Aと樹脂Bの少なくともいずれか一方の重量平均分子量(Mw)がこの範囲であれば、フィルムの脆性を改良することができるので好ましい。
【0069】
(可塑剤)
本発明においては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0070】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0071】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0072】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0073】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0074】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
【0075】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0076】
可塑剤は本発明に係る光透過性拡散フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0077】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る光透過性拡散フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0078】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0079】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0080】
(その他添加剤)
さらに、本発明に係る光透過性拡散フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0081】
本発明の光透過性拡散フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0082】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0083】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0084】
(光透過性拡散フィルムの製造方法の概要)
本発明に係る光透過性拡散フィルムの製造方法は、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する光透過性拡散フィルムの製造方法であって、当該島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)と、当該海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であり、かつ下記工程(a)〜(d)を有する態様の製造方法であることが好ましい。
工程(a):前記樹脂Aと樹脂Bを含有するドープを形成する工程
工程(b):前記ドープを流延用支持体上に流延してウェブを形成する工程
工程(c):前記ウェブから前記有機溶媒を蒸発させる乾燥工程
工程(d):延伸温度TがTg(A)<T<Tg(B)となる温度で、1.03〜1.2
0倍の範囲内の倍率で前記ウェブを延伸する延伸工程
具体的には、島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)が、海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度より高く、両者の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であることが好ましい。また、樹脂Aと樹脂Bの屈折率差が0.08以下である光透過性拡散フィルムの製造方法であることが好ましい。さらに、前記工程(a)〜(d)を有する製造方法であることが好ましい。
【0085】
本発明に係る製造方法によれば、従来の樹脂ブレンドによる散乱フィルムで問題となっていた脆性の問題を克服した光拡散能の付与された光透過性拡散フィルムを提供でき、当該光透過性拡散フィルムを、液晶表示装置の特にバックライト側偏光板の保護フィルムとして用いた際、正面輝度を低下させずにモアレ縞の解消された、優れた画質の画像表示装置を提供できる。
【0086】
<樹脂A及びBのガラス転移温度と延伸工程における延伸温度>
本発明において、島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)と、海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であることが好ましい。さらに、延伸工程における温度Tが、Tg(A)<T<Tg(B)を満たすように延伸することが好ましい。
【0087】
これにより、島構造の粒状が楕円でなく真円形のまま海を構成する樹脂を延伸することで、島構造の突出状態をコントロールすることができ、透過率の低下を招くことなく、十分なモアレ解消能を付与することができる。
【0088】
海構造と島構造の界面で剥離等の故障防止、透過率や正面輝度の低下防止の観点から、より好ましい範囲は、樹脂B及び樹脂Aのガラス転移温度の差(Tg(B)−Tg(A))が15℃以上、すなわち、(Tg(B)−Tg(A))≧15(℃)である。
【0089】
なお、本願において、ガラス転移温度とは、樹脂が溶媒を含む場合の見かけのTgをも含む意味である。また樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)を用いることができる。
【0090】
また、本発明に係る製造方法で作られたフィルムは樹脂の相分離による海島構造を有しており、海島構造由来の凹凸形状を有することを特徴とする。島部の形状を観察するには、オリンパス(株)製3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000等を用いることができる。
【0091】
<樹脂A及びBの屈折率差>
本発明においては、海を構成する主成分となる樹脂Aの屈折率(A)と、島を構成する主成分となる樹脂Bの屈折率(B)との差は、0.08以下であること、すなわち、|屈折率(A)−屈折率(B)|≦0.08 であることが好ましい。
【0092】
より好ましくは、|屈折率(A)−屈折率(B)|≦0.03 である。両者の屈折率をこの範囲とすることで、光透過性拡散フィルムの内部ヘイズが増加することを抑制でき、表示装置にしたときに正面輝度が低下するのを抑制することができる。
【0093】
なお、本発明における屈折率は、平均屈折率を意味し、樹脂Aの屈折率及び樹脂Bの屈折率は、各々の樹脂からなるフィルムを作製し、アッベの屈折率計などを用いて測定することができる。
【0094】
<延伸工程における延伸倍率>
本発明においては、延伸工程における延伸倍率は、延伸温度TがTg(A)<T<Tg(B)となる温度で、1.03倍〜1.20倍であることが好ましい。
【0095】
延伸倍率が1.03倍以上であれば、本発明の効果が発現する。1.20倍以下であれば、ヘイズ値が上昇して表示装置にしたときに正面輝度が低下するのを抑制することができる。
【0096】
(光透過性拡散フィルムの製造方法)
本発明に係る光透過性拡散フィルムの製造方法は、海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する光透過性拡散フィルムの製造方法であって、当該島を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)と、当該海を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)の差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であり、かつ上記工程(a)〜(d)を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0097】
本発明においては、下記式(I)で求められる前記延伸工程における延伸速度が、20〜300%/分の範囲内にあることが好ましい。
式(I):延伸速度(%/分)={(延伸後幅手寸法/延伸前幅手寸法)−1}×100(%)/延伸にかかる時間(分)
上記方法で製造することにより、本発明に係る光透過性拡散フィルムを、微粒子脱落による工程汚染なく、容易なプロセスで作製することができる。
【0098】
以下、本発明に係る光透過性拡散フィルムの製膜方法について更に詳細な説明をするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
本発明に係る光透過性拡散フィルムの製膜方法としては、下記のような流延法による溶液製膜が好ましい。
【0100】
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
【0101】
1)溶解工程
使用する樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で海を構成する樹脂A、島を構成する樹脂B、及びその他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
【0102】
樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0103】
(有機溶媒)
本発明に係る光透過性拡散フィルムの製造方法において、溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、使用する複数の樹脂及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0104】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0105】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0106】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、海を構成する樹脂B及び島を構成する樹脂Aを、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0107】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0108】
樹脂及び添加剤を溶解させた後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0109】
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0110】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
【0111】
また、予め海を構成する樹脂Aと島を構成する樹脂Bを混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
【0112】
2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0113】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0114】
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜を「ウェブ」と呼ぶ。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0115】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。
【0116】
後の剥離工程での残留溶媒量を調整するためには、この溶媒蒸発工程での支持体裏面に接触させる液体温度、支持体との接触時間等を適宜調整すればよい。
【0117】
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0118】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
【0119】
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により、5〜120質量%の範囲で剥離することが好ましい。
【0120】
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0121】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0122】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0123】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。
【0124】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0125】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0126】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0127】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0128】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
【0129】
同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0130】
テンター延伸を行う場合の乾燥温度は、30〜200℃以内が好ましく、100〜200℃以内が更に好ましい。
【0131】
本発明に係る製造方法においては、このときの延伸温度Tが、Tg(A)<T<Tg(B)を満たすように延伸することが好ましい。この範囲の温度で延伸することにより、島構造の粒状が楕円でなく真円形のまま海を構成する樹脂を延伸することができ、島構造の突出状態をコントロールすることができるため、透過率の低下を招くことなく、十分なモアレ解消能を付与することができる。
【0132】
また、本発明に係る製造方法においては、延伸工程における延伸倍率は1.03倍〜1.2倍であることを特徴とする。延伸倍率が1.03倍以上であれば、本発明の効果が発現する。1.2倍以下であれば、ヘイズ値が上昇して表示装置にしたときに正面輝度が低下するのを抑制することができる。
【0133】
また、本発明においては、下記式(I)であらわされる延伸速度が、20〜300%/分以内であることが好ましい。
式(I):延伸速度(%/分)={(延伸後幅手寸法/延伸前幅手寸法)−1}×100(%)/延伸にかかる時間(分)
延伸速度が生産性や品質の観点から設定することができるが、20%/分以上であれば、生産性に支障がなく、300%/分以下であれば、延伸時にクラック等の故障が発生しにくくなるので好ましい。
【0134】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0135】
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0136】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0137】
本発明に係る方法で製造されたフィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0138】
また、本発明に係る方法で製造されたフィルムは、厚さが20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。厚さの上限は限定されるものではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合には、塗布性、発泡、溶媒乾燥等の観点から、上限は250μm程度である。好ましくは125μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0139】
本発明に係る方法で製造された光透過性拡散フィルムは、少なくとも一方の面におけるJIS B0601−2001に基づく算術表面粗さRaが、0.08〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。Raの値が、0.08μm以上であると十分な散乱効果を得ることができ、モアレ縞を解消できる。Raが2.0μm以下であれば、表示装置化したときに正面輝度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0140】
算術表面粗さRaは、JIS B0601−2001に準じた測定器、たとえば、オリンパス(株)製、3Dレーザー顕微鏡LEXT OLS4000や、小坂研究所(株)製、サーフコーダー MODEL SE−3500などを用いて測定することができる。
【0141】
本発明に係る方法で製造された光透過性拡散フィルムは、フィルム一枚の全ヘイズ値が20〜80%の範囲内にあり、かつ、(全ヘイズ値)−(表面ヘイズ値)で求められる内部ヘイズ値が0.15〜30%の範囲内にあることが好ましい。
【0142】
全ヘイズ値が20%以上であるとモアレ縞を解消することができ、80%以下であると正面輝度が低下するのを抑制できる点で好ましい。全ヘイズ値のより好ましい範囲は、35〜50%以内である。内部ヘイズ値は、モアレ縞の抑制、正面輝度の低下防止の観点から、0.15〜30%の範囲内にあることが好ましい。内部ヘイズ値のより好ましい範囲は、0.5〜20%である。
【0143】
これらのヘイズ値は、23℃55%RHの雰囲気下、日本電色株式会社製ヘイズメーターNDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定した値を用いることができる。
【0144】
なお、全ヘイズ値とは、本発明に係るフィルム一枚のヘイズ値であり、内部ヘイズ値とは、全ヘイズ値から外部ヘイズ値を差し引いた値である。内部ヘイズ値は、フィルムの両表面を屈折率1.47のグリセリンで覆い、二枚のガラス板でこれを挟持して全ヘイズと同じように測定した際の測定値を用いることができる。このようにすることで、表面の凹凸形状によるヘイズ値(すなわち外部ヘイズ値)の影響を無視し、フィルム内部のヘイズ値のみを測定することができる。
【0145】
(偏光板)
偏光板は、偏光子の表側及び裏側の両面を保護する二枚の光透過性拡散フィルムで主に構成される。本発明に係る方法で製造されたフィルムは、偏光子を両面から挟む二枚の光透過性拡散フィルムのうち少なくとも一枚に用いる。本発明に係る方法で製造されたフィルムはモアレ解消能だけでなく保護フィルム性も兼ね備えているので、偏光板の製造コストを低減できる。本発明に係る偏光板は、画像表示装置のバックライト側の偏光板としても、視認側の偏光板としても使用することができる。バックライトユニット側偏光板に用いる場合には、本発明に係る透過性拡散フィルムが最もバックライト側になるように配置する。
【0146】
(液晶表示装置)
従来の液晶表示装置の構成の例としては、バックライト型(直下型)では、図2(a)に示すように、光源側から、〔光源1a/拡散板3a/集光シート4a(プリズムシートなど)/上拡散シート5a/液晶パネル12a(偏光子10a/保護フィルム(位相差フィルムなど)9a/基板8a/液晶セル7a/保護フィルム11a)〕となっており、主にテレビ等大型LCDに用いられている構成である。
【0147】
一方、サイドライト型の構成は、図2(b)に示すように、光源1aが発光光源2a及び導光板13aで構成されており、主にモニタ、モバイル用途などの小型LCDに用いられている。
【0148】
下拡散シートは主にバックライトユニット(BLU)6aの面内輝度ムラを低減するための光拡散性の強い光学シートであり、集光シートは拡散光を液晶表示装置の正面方向(表示装置平面の法線方向)に集光させるための光学シートであり、上拡散シートは集光シートであるプリズムシートや液晶セル中の画素など周期的構造により発生するモアレを低減するための、及び下拡散シートで除去しきれない面内輝度ムラをさらに低減するために用いられる光学シートである。
【0149】
本発明に係る液晶表示装置においては、図2(a)及び(b)における面光源装置において、少なくとも上拡散シートの代わりに、本発明に係る光透過性拡散フィルムを用いることを特徴とする。なお、本発明の面光源装置を用いた場合、光源装置側の偏光板(下偏光板)の偏光板用保護フィルムを除去して、代わりに本発明に係る光透過性拡散フィルムを偏光板に貼りつけた構成にしてもよい。このような構成としても、正面輝度を低下させることなくモアレ縞を抑制することができる。さらに、このように上偏光板用保護フィルムを除去した構成とすることで、液晶表示装置全体のコストダウンを実現できる。
【0150】
液晶セルの表示方法としては、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0151】
光源に用いられる発光光源(発光体)としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp、冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、熱陰極管)、LED(Light Emitti ng Diode、発光ダイオード)、OLED(Organic light−emitting diode、有機発光ダイオード[有機EL])、無機ELなどを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0152】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
(光透過性拡散フィルムの作製)
〈実施例1:光透過性拡散フィルム1の作製〉
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物を攪拌しながら投入した。これを撹拌しながら完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0154】
(主ドープ液の組成)
樹脂A:セルロースアセテートプロピオネート(樹脂a;アセチル基置換度:1.58、プロピオニル基置換度:0.88、重量平均分子量:19万、ガラス転移温度:170℃、屈折率:1.489) 20.2質量部
樹脂B:セルロースジアセテート(樹脂b;アセチル基置換度:2.14、重量平均分子量:18万、ガラス転移温度:196℃、屈折率:1.488) 6.7質量部
糖エステル化合物A(平均置換度:5.5) 2.5質量部
メチレンクロライド 103質量部
エタノール 19.7質量部
【化1】

以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、ベルト上で溶媒を蒸発させた後、ウェブをステンレスベルトから剥離し、160℃で搬送方向と垂直方向にテンターで1.15倍延伸し、120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させて巻き取り、平均膜厚40μmの本発明の実施例1の光透過性拡散フィルム1を得た。
【0155】
〈実施例2:光透過性拡散フィルム2の作製〉
ドープの樹脂材料を変えた以外は実施例1と同様にして光透過性拡散フィルム2を作製した。
【0156】
(主ドープ液の組成)
樹脂A:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度:1.64、プロピオニル基置換度:1.12、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:150℃、屈折率:1.481) 20.2質量部
樹脂B:セルロースジアセテート(樹脂b;アセチル基置換度:2.14、重量平均分子量:18万、ガラス転移温度:196℃、屈折率:1.488) 6.7質量部
糖エステル化合物A(平均置換度:5.5) 2.5質量部
メチレンクロライド 103質量部
エタノール 19.7質量部
〈実施例3:光透過性拡散フィルム3の作製〉
ドープの樹脂材料を変えた以外は実施例1と同様にして光透過性拡散フィルム3を作製した。
【0157】
(主ドープ液の組成)
樹脂A:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度:1.64、プロピオニル基置換度:1.21、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:148℃、屈折率:1.482) 20.2質量部
樹脂B:セルロースジアセテート(アセチル基置換度:2.14、重量平均分子量:18万、ガラス転移温度:196℃、屈折率:1.488) 6.7質量部
糖エステル化合物A(平均置換度:5.5) 2.5質量部
メチレンクロライド 103質量部
エタノール 19.7質量部
〈実施例4:光透過性拡散フィルム4の作製〉
ドープの樹脂材料を変えた以外は実施例1と同様にして光透過性拡散フィルム4を作製した。
【0158】
(主ドープ液の組成)
樹脂A:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度:0.19、プロピオニル基置換度:2.56、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:140℃、屈折率:1.487) 20.2質量部
樹脂B:セルロースジアセテート(樹脂b;アセチル基置換度:2.14、重量平均分子量:18万、ガラス転移温度:196℃、屈折率:1.488) 6.7質量部
糖エステル化合物A(平均置換度:5.5) 2.5質量部
メチレンクロライド 103質量部
エタノール 19.7質量部
〈比較例1:比較フィルム1の作製〉
市販のセルロースエステルフィルム4UY(コニカミノルタオプト(株)製))に下記処方で塗布をすることにより比較フィルム1を作製した。
【0159】
下記配合割合の溶媒に粒子A(平均粒径0.55μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子)、7質量部を混ぜた後、エアーディスパーにて30分間攪拌し、粒子分散液を得た。この粒子分散液に他の素材を混合、攪拌し、防弦層塗布組成物1を調製した。
【0160】
(溶媒)
メチルエチルケトン 50質量部
酢酸エチル 20質量部
シクロヘキサノン 15質量部
トルエン 15質量部
(樹脂)
A−DPH(新中村化学工業社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペ
ンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物) 100質量部
(光重合開始剤)
1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184:BASFジャパン社製) 8質量部
(添加剤)
ポリエーテル変性シリコーン(KF−354L:信越化学工業株式会社製)1質量部
(粒子)
粒子A:平均粒径0.55μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子 7質量部
〈比較例2:比較フィルム2の作製〉
セルローストリアセテートA(アセチル基置換度2.94、重量平均分子量:30万、ガラス転移温度:189℃、屈折率:1.489) 27質量部
可塑剤:エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量10
00) 6.7質量部
溶媒:ジクロロメタン(誘電率9) 103質量部
メタノール(誘電率33) 16.7質量部
水(誘電率78) 3.0質量部
なお、ドープの固形分濃度は17質量%になるように調整した。
【0161】
セルローストリアセテート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報参照)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルムを得た。
【0162】
〈比較例3:比較フィルム3の作製〉
複数のドープを用いて、フィードブロック法に準じて共流延を行った。また、複数層を共流延する際の基層とは、ステンレス支持体側を表す。
【0163】
第1のドープ
セルローストリアセテートA:アセチル置換度2.94 27質量部
可塑剤:エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量10
00) 6.7質量部
溶媒:ジクロロメタン(誘電率9) 103質量部
メタノール(誘電率33) 19.7質量部
なお、ドープの固形分濃度は17質量%になるように調整した。
【0164】
第2のドープ
セルローストリアセテートA:アセチル置換度2.94 27質量部
可塑剤:エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量10
00) 6.7質量部
溶媒:ジクロロメタン(誘電率9) 103質量部
メタノール(誘電率33) 16.7質量部
水(誘電率78) 3質量部
なお、ドープの固形分濃度は17質量%になるように調整した。
【0165】
(光透過性拡散フィルム等の評価)
上記で作製した光透過性拡散フィルム等について下記の性能について測定を行った。
【0166】
(像鮮明度の測定)
フィルムの像鮮明度は、JIS K7374:2007に準拠した透過法により、スガ試験機(株)製の写像性試験機ICM−1Tを用いて、測定角度0°で、透過鮮明度を光学くしで0.125〜2.0mmの範囲で測定した。
【0167】
(全光線透過率の測定)
紫外外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製 V−670)を用いてヘイズ計算モードで1nm毎に測定し、450〜650nmの範囲内の透過率の平均値を全光線透過率として算出した。
【0168】
上記測定結果を表1に示す。
【0169】
【表1】

(面光源装置の作製)
Samsung社製ノート型パソコン(Samsung R430、14−Inch Laptop (Black))を部分的に分解し、当該パソコンの面光源装置(バックライトユニット)のうち液晶セルに貼られたバックライト側の偏光板のバックライト面の位置にある保護フィルムとして配置された光拡散シートを除去し、その代わりに上記で作製した各種光透過性拡散フィルム及び比較フィルムを順次貼り付けて、面光源装置を順次作り直した。なお、反射板、光源(エッジライト型LED)、導光板及び集光シートはそのまま使用した。
【0170】
(液晶表示装置を用いた評価)
上記のように面光源装置部分を順次作り直した液晶表示装置(上記ノート型パソコン)を用いて下記の測定・評価を行った。
【0171】
〈正面白輝度〉
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で256/256階調の白色表示とし、暗室下において液晶表示装置平面の法線(正面)方向から輝度計(CS−2000;コニカミノルタセンシング製)にて輝度を測定した。画面の中央の点から3cmの間隔で上下各1点、左右各1点の合計5点を測定し、平均値を算出した。
【0172】
バックライト側偏光板の表面に光拡散性を有さない基材(市販のセルロースエステルフィルム4UY(コニカミノルタオプト(株)製))を使用した場合を基準として、以下の3段階で評価した。
【0173】
○:ほとんど低下していない(基準値の98%以上100%以下)
△:やや低下している(基準値の95%以上98%未満)
×:低下している(基準値の95%未満)
【0174】
〈輝度不均一性〉
モアレ評価と同様の方法で液晶表示装置を全面ベタ表示で128/256階調の灰色表示とし、暗室下において液晶表示装置平面の法線(正面)方向から輝度計(CS−2000;コニカミノルタセンシング製)にて輝度を測定した。画面の中央の点から左右方向に0.5cm刻みで各8cmを測定し、[隣接する3cm内での輝度の極大値と極小値の差]÷[隣接する3cm内での輝度の平均値]×100を輝度不均一性(%)とした。
【0175】
この輝度不均一性は、3%以下であるとほとんどの人が不均一性を感じず、3%を超え6%以下では一部の人が不均一性を感じる程度であり、10%を超えるとほとんどの人が不均一であると感じる指標である。商品としては、10%以下のレベルが必要である。
【0176】
〈モアレ〉
作製した液晶表示装置にビデオ信号ジェネレーター(VG−848;アストロデザイン(株)製)より信号を入力し、全面ベタ表示で128/256階調の灰色表示とし、暗室下で様々な方向から画面を目視観察し、モアレ発生の有無を評価した。
【0177】
○:モアレが観察されない
△:モアレが観察され、やや気になる
×:モアレが明瞭に観察される
評価は5人で行い、それぞれの液晶表示装置に対して平均値で評価を判定した。
【0178】
モアレのレベルとしては、実用的には○以上が必要である。
【0179】
〈耐擦傷性〉
集光シートをプリズム面が上になるように平滑ガラス面上に固定した。上記で作製した光透過性拡散フィルム等の各種フィルムを20mm×20mmに切り取り、上記で作製した各種フィルムの凹凸面とプリズム面が接するように配置した。上面を、底面20mm×20mm×高さ10mmに切り取った消しゴム(MONO:商品名、(株)トンボ鉛筆製)を介して擦り試験機のヘッドに固定し、100g/cmの荷重で垂直に上方から押し付けた。
【0180】
25℃・60RH%の条件下において、ストローク長3.5cm、擦り速度1.8cm/sにて200往復させた。擦り方向は、プリズムの山頂が連なる方向に100往復したのち、それと直交する山谷方向に100往復した。擦り試験終了後に、光透過性拡散フィルム等の各種フィルムの破損の程度を目視で観察した。破損の程度は、傷の大きさ及び頻度から3段階にランク付けした。
【0181】
○:傷が見えない
△:弱い傷が見える
×:中程度の傷が見える
耐擦傷性試験後の光透過性拡散フィルム等の各種フィルムを液晶表示装置に組み入れた場合に、×の評価のフィルムを用いた場合には、白点状の故障として認識され、△の評価の部材を用いた場合には、若干の白点は認識できるものの実用に耐えうるレベルのものであった。
【0182】
上記評価結果を表2に示す。
【0183】
【表2】

表2に示した結果から明らかなように、正面白輝度、輝度不均一性、モアレ及び耐擦傷性の評価において、本発明の面光源装置を用いた実施例は、比較例に比べ、優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0184】
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター装置
35 ロール乾燥装置
41 粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器
1a 光源
2a 発光光源
3a 下拡散シート(又は拡散板)
4a 集光シート(プリズムシート、レンズシート)
5a 上拡散シート
6a 面光源装置(バックライトユニット)
7a 液晶セル
8a 透明基板(ガラス、プラスチック)
9a 保護フィルム(又は位相差フィルム)
10a 偏光子
11a 保護フィルム
12a 液晶パネル
13a 導光板
14a 光透過性拡散フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、複数の集光部を有する集光シートと、光拡散フィルムとがこの順に備えられた面光源装置であって、前記光拡散フィルムが海に相当する連続相と島に相当する分散相とからなる海島構造を有する樹脂フィルムであり、当該光拡散フィルムの像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.8〜5.0%の範囲内であり、かつ全光線透過率が91.0%以上であることを特徴とする面光源装置。
【請求項2】
前記像鮮明度が、0.25mm幅の光学くしを用いた測定において、0.9〜2.5%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の面光源装置。
【請求項3】
前記海島構造の連続相(海)を構成する主成分となる樹脂Aのガラス転移温度Tg(A)と、前記分散相(島)を構成する主成分となる樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)との差(Tg(B)−Tg(A))が10℃超であり、当該樹脂Aと当該樹脂Bの屈折率の差が0.08以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の面光源装置。
【請求項4】
前記光拡散フィルムが、ガラス転移温度が異なる二種のセルロースエステル樹脂を含有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の面光源装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の面光源装置が、具備されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−65421(P2013−65421A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202590(P2011−202590)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】