面光源装置
【課題】均一かつ高輝度な出射光を得ることができる面光源装置を提供する。
【解決手段】光を出射する光源と、光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、導光板の前面側に配置され、導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置を提供するものである。
【解決手段】光を出射する光源と、光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、導光板の前面側に配置され、導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置を提供するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶パネルなどを用いた表示装置のバックライトとして使用される面光源装置がある。このような面光源装置として、例えば特許文献1では、超高分子量プラスチック製多孔質フィルムからなる光拡散板を導光板の一面側に配置した面光源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−94810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の拡散板では、拡散素子である分子やビーズとバインダとの間の屈折率差が小さいため、これらの境界部分での光学的な損失が看過できない。したがって、均一かつ高輝度な光を出射する面光源装置を実現する上で、拡散板の拡散性の確保と輝度の向上とを両立することが必要と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様は、光を出射する光源と、光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、導光板の前面側に配置され、導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置である。
【0006】
また、本発明の一つの態様は、光を出射する光源と、光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一かつ高輝度な出射光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。
【図3】不織布における光の透過・拡散の様子を示す図である。
【図4】効果確認試験の概要を示す図である。
【図5】実施例及び比較例における光学特性を示す図である。
【図6】実施例及び比較例における全光線透過率と全光線反射率との関係を示す図である。
【図7】実施例及び比較例における波長と全光線透過率との関係を示す図である。
【図8】不織布に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【図9】不織布のシート数に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【図10】実施例及び比較例における液晶パネルの輝度を示す図である。
【図11】実施例及び比較例における液晶パネルの輝度の均一性を示す図である。
【図12】図10及び図11の結果をまとめた図である。
【図13】不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによる輝度向上効果を示す図である。
【図14】不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによる輝度向上効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る面光源装置の様々な実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[面光源装置の構成]
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。同図に示すように、面光源装置10は、光源11と、導光板12と、反射板13と、拡散板14と、プリズムシート15と、反射型偏光板16とを備えている。面光源装置10は、例えば液晶パネルPと組み合わされ、テレビやパーソナルコンピュータのモニタに用いられる液晶表示モジュール1を構成する。
【0011】
液晶パネルPは、例えばTFTやSTN、IPS、VAといった公知の液晶セルの表面に直線偏光板等を固定したものが用いられる。液晶セルは、例えば複数の基板、基板ごとに設けられた電極、基板間に封入された液晶層、配向膜、スペーサ、カラーフィルタなどを含んで構成される。光源11は、ここではLED(発光ダイオード)を例示している。光源11は、導光板12の側面に沿って所定の間隔で複数配列されている。なお、光源11としては、CCFL(冷陰極蛍光ランプ)などを用いることもできる。また、光源11は、導光板12の背面側や、導光板12の対向する2つの側面、導光板12の全側面に沿って配置される場合もある。
【0012】
導光板12は、例えばアクリル樹脂などの透光性を有する材料によって形成された厚さ数mm程度の板状部材である。導光板12の屈折率は、例えば1.5前後に設定されている。導光板12は、光源11から側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる。なお、導光板12には、必要に応じて光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光重合安定剤といった各種の添加剤を添加することもできる。
【0013】
反射板13には、表面に銀やアルミニウムといった金属薄膜を被着させてなる樹脂製の板状部材、超多層構造の誘電体による反射フィルム等が使用できる。反射板13は、導光板12の背面側に配置され、導光板12の背面側から漏れる光を導光板12側に反射することによって、面光源装置10から出射する光の輝度を確保する。反射板13は、表面を白色に着色した樹脂板や、アルミニウム等からなる金属板であってもよい。
【0014】
拡散板14は、例えば不織布によって形成された板状部材である。拡散板14は、導光板12の前面側に配置され、導光板12から背面側に入射した光を前面側に拡散させることによって、面光源装置10から出射する光の均一性を確保する。
【0015】
不織布を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートといった汎用プラスチックや、ポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンサルファイドといったエンジニアリングプラスチックを用いることができる。拡散板14では、不織布の坪量は例えば10g/m2以上40g/m2以下となっている。また、上記の樹脂に求められる基本物性としては、光学的な吸収が少なく、透過率が高いことが望ましい。50ミクロン厚の単一試料の場合では、全光線透過率が70%以上、さらに80%以上の材料を使用してもよい。この際、全光線透過率は、使用する樹脂にて50ミクロン厚の単一試料を作製し、JIS K 7361−1(1997)に準拠した方法で測定することができる。
【0016】
プリズムシート15は、例えば導光板12と同様の透光性を有する材料によって形成されたシート状部材である。プリズムシート15の前面又は背面には、拡散板14を通った光の出射の向きを揃えたり、変化させたりするためのプリズムが複数配列されている。具体的には、プリズムシート15は、例えばミクロ構造表面を有する第1高分子層と、ミクロ構造表面の反対側に配置される第2高分子層とを含んで構成され、ミクロ構造表面は、光を方向付けるためのプリズムの配列を含んでいる。プリズムシート15の屈折と全反射によって、一部の光は正面方向に向かい、それ以外の光は不織布側(光源11側)に戻される。これにより、戻された光は不織布に当たって再度損失の少ない散乱、拡散が行われ、各部材にて透過又は反射の後、再度不織布からプリズム方向に射出されるため、結果的に画面正面方向の輝度をより効果的に上げることができる。
【0017】
反射型偏光板16は、少なくとも2つのポリマー層を含んで構成される板状部材である。反射型偏光板16は、プリズムシート15の前面側に配置され、ポリマー層間の屈折率差に基づいて第1の偏光状態の光を反射し、第1の偏光状態に略直交する第2の偏光状態の光を透過させる。
【0018】
ポリマー層の少なくとも1層は、ナフタレート官能性を含むことができる。このナフタレート官能性は、ナフタレート官能性を含む1つ以上のモノマーを重合させることによってポリマー層に組み込まれる。モノマーの例としては、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、2,3−ナフタレン・ジカルボン酸のようなナフタレート及びそのエステルが挙げられる。また、ポリマー層の少なくとも1つは、例えば2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び/又は2,3−ナフタレン・ジカルボン酸及びエチレングリコールのコポリマーであるポリエチレンナフタレート(PEN) を含むことができる。
【0019】
また、図2は、本発明の別の実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。同図に示す液晶表示モジュール21を構成する面光源装置30は、光源11が背面入射型となっており、かつ導光板12を配置せずに光源11からの光を拡散板14に直接入射している点で図1に示した実施形態と異なっている。また、反射板13は、光源11の背面側に配置されている。その他の点については、図1に示した実施形態と同様である。
【0020】
以上のような構成を有する面光源装置10,30では、導光板12の前面側或いは光源11の前面側に配置された拡散板14が、10g/m2以上40g/m2以下の不織布によって形成することができる。従来の拡散板のように、例えばアクリルビーズ等の光拡散剤をバインダで保持してなる拡散板では、拡散素子であるビーズとバインダとの間の屈折率差が小さいため、十分な拡散性を得るためには光学界面を多くする必要があり、これらの境界部分での光学的な損失が生じることもあった。
【0021】
これに対し、上述した不織布を適用した拡散板14では、不織布を構成する樹脂とその周囲の空気との間の屈折率差が十分に確保されるため、光が不織布の界面で拡散する際の光学的な損失を抑えることが可能となる。ここで、不織布の坪量を小さくすると拡散板14の拡散性が減少して透過性が増加する傾向を示す。また、不織布の坪量を大きくすると拡散板14の拡散性が増加して透過性が減少する傾向を示す。ただし、不織布の坪量を一定以上に大きくした場合、拡散板14の拡散性が飽和する。
【0022】
このため、上記実施形態のように、不織布の坪量を10g/m2以上40g/m2以下とすることで、拡散板14の透過性と拡散性とをいずれも高いレベルで両立できる。この結果、面光源装置10,30からの出射光を均一かつ高輝度とすることができる。面光源装置10,30からの出射光を均一化することで、液晶パネルPの表示部において、光源11の配置部と非配置部とによる光のムラ(ホットスポット)の解消も実現できる。
【0023】
また、図3に示すように、不織布を用いた拡散板14では、拡散板14に対して略直角に入射した光L1は、一部は拡散するが、損失が抑えられた状態で拡散板14の前面側に透過する。よって、ある態様では、不織布に使用する樹脂は、光の吸収が少ないこと、透過率が高いことが望ましい。一方、拡散板14に対して角度をもって入射した光L2は、不織布によって概ね拡散をするが、その一部が光L1と同様に拡散板14の前面に透過する。したがって、拡散板14の前面側において、拡散板14から略直角方向に出射する光の強度を、拡散板14の背面側から略直角方向に入射する光の強度よりも高くすることが可能となる。
【0024】
この輝度向上効果は、図1及び図2に示したように、拡散板14と反射板13とを対向して配置させることにより一層高めることができる。すなわち、拡散板14と反射板13とを対向して配置することにより、不織布の界面で拡散板14の背面側に反射した光が反射板13で反射して再び拡散板14に入射するので、光L1と同方向に拡散板14の前面に透過する光を増加させることができる。
【0025】
この拡散板14と反射板13とを対向して配置させた構成において、拡散板14の前面側にさらに反射型偏光板を設けることができる。反射型偏光板とは、通常、1つの面内軸(透過軸)に平行な振動方向の光を選択的に透過し、それ以外の光を反射可能な偏光板である。すなわち、この反射型偏光板に入射した光のうち、上記透過軸と平行な振動方向の光成分のみを透過させることにより偏光作用を発揮する。この反射型偏光板を透過しなかった光は、実質的にこの反射型偏光板には吸収されず、反射される。したがって、この反射型偏光板において反射された光は、拡散板14に戻され、拡散板14で拡散・散乱を繰り返し、偏光が一部解消される。偏光が一部解消された光は、再度反射型偏光板に向けて戻され、上記と同様に一部の光のみが透過され、別の一部が反射される。これにより、反射板14と反射型偏光板の間で光がリサイクルされ、その際、拡散板14での上記光の振る舞いが繰り返されることにより、より一層略直角方向に出射する光の強度を高くすることができる。
[拡散板の効果確認試験]
【0026】
続いて、本発明に係る面光源装置10で用いた拡散板14の効果確認試験について説明する。この効果確認試験では、まず、不織布シートの光学特性を測定した。以下の測定は、JIS K 7100(1999)に規定する試験における環境・雰囲気を2級許容差とし、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%の標準雰囲気にて行った。
【0027】
測定にあたっては、旭化成せんい株式会社製の不織布PMA013を用い、当該不織布1層〜6層からなる拡散板をそれぞれ実施例1〜6とした。不織布PMA013は、1枚当たり13g/m2である。またPMA013を加熱して溶融させ50ミクロン厚の単一試料を作製し、JIS K 7631−1準拠にて全光線透過率を測定したところ、71.8%という結果が得られた。
【0028】
比較例には、スチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂系からなり、光拡散剤が分散された、厚みが2mmの拡散板を用いた。この拡散板の光学特性は、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH2000を使用しD65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定したところ、全光線透過率53.8%、ヘイズ99.5%であった。
【0029】
光学特性は、全光線透過率(TT)、平行光線透過率(PT)、入射角12度絶対反射率(R)、全光線反射率(TR)の4項目を評価した。
【0030】
全光線透過率(TT)は、図4(a)に示すように、サンプルSの前面側に積分球Iを当接配置し、サンプルSの背面側から前面側に透過した光の強度を積分球Iで計測した。また、平行光線透過率(PT)は、図4(b)に示すように、サンプルSの前面側から所定の距離をもって積分球Iを配置し、サンプルSの背面側から前面側に透過した光の強度を積分球Iで計測した。
【0031】
入射角12度絶対反射率(R)は、図4(c)に示すように、サンプルSの背面側に積分球Iを配置し、サンプルSの背面で約12度の角度で反射させた光の強度を積分球Iで計測した。全光線透過率(TT)、平行光線透過率(PT)、入射角12度絶対反射率(R)の測定には、島津製作所製UV−VIS−NIRスキャニングスペクトロフォトメータUV−3100PCを使用し、測定条件は、波長400nm〜700nm、スキャン速度:標準、スキャン間隔:0.5nm、スリット幅:1.0nmとした。
【0032】
一方、全光線反射率(TR)は、図4(d)に示すように、サンプルSの前面側に積分球Iを当接配置し、積分球IからサンプルSの前面に向けた光の反射を積分球Iで計測した。全光線反射率(TR)の測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製スペクトロフォトメータU−4000を使用し、測定条件は、波長400nm〜700nm、スキャン間隔:0.5nmとした。
【0033】
図5は、測定結果を示す図である。同図に示すように、例えば実施例4では、比較例とほぼ同等の全光線透過率(TT)を有しつつ、全光線反射率(TR)が約10%高くなっている。このことは、不織布を用いた拡散板の高い拡散性を示すものである。また、例えば実施例3では、比較例とほぼ同等の全光線反射率(TR)を有しつつ、全光線透過率(TT)が約10%高くなっている。このことは、不織布を用いた拡散板の損失が低いことを示すものである。
【0034】
図6は、横軸を全光線透過率(TT)、縦軸を全光線反射率(TR)として上記測定結果をグラフ化したものである。同図に示すように、全光線透過率(TT)と全光線反射率(TR)とは、不織布の坪量の変動に応じたトレード・オフの関係にあるが、実施例1〜6は、比較例に比べて10%程度高いレベルで全光線透過率(TT)及び全光線反射率(TR)のトレード・オフの関係が成立していることが確認できる。
【0035】
図7は、横軸を波長、縦軸を全光線透過率(TT)として上記測定結果をグラフ化したものである。同図に示すように、比較例では、波長400nm〜450nmの範囲で透過率が減少しているのに対し、実施例1〜6では、可視域である波長400nm〜700nmの全域にわたって透過スペクトルがほぼフラットとなっている。このことから、実施例1〜6は、比較例に比べて無彩色であることが確認できる。
【0036】
次に、いくつかの不織布に関して、ゲイン、ヘイズ(曇り度)および全光線透過率(TT)の測定をおこなった。測定サンプルは、全て旭化成せんい株式会社製の不織布サンプルである。
【0037】
ゲインの測定には、Photoresearch社製分光測色計PR−650、Melles Griot社製偏光部P/N 03FPG007(単体透過率32%、パラレルニコル透過率≧20%)、6.35mm厚テフロン(登録商標)拡散板直下型ライトボックス、Fostec社製光源装置DCRIIw(ランプEKE:21V、150W)を使用した。
【0038】
ゲインは、以下の式より求めた。ライトボックスの発光スペクトルをLLB(λ)、試料をライトボックスに置いたときの発光スペクトルをLsample(λ)とすると、透過率Tsample(λ)は以下の式(1)で求められる。
Tsample(λ)=Lsample(λ)/LLB(λ) …(1)
また、試料をライトボックスに置いたときのバックライトの発光スペクトルLBL−sample(λ)は、
LBL−sample(λ)=LLB(λ)×Tsample(λ) …(2)
により求められる。
【0039】
また、補正項をV(λ)とすると、試料をライトボックスに置いたときのバックライト輝度Bsampleは以下の式(3)で求められる。
Bsample=∫V(λ)・LBL−sample(λ) …(3)
また、バックライト輝度BBLは、
BBL=∫V(λ)・LLB(λ) …(4)
により求められる。以上の式(3)及び(4)より、ゲイン(有効透過率)を以下の式(5)から求める。
ゲイン=Bsample/BBL …(5)
【0040】
ヘイズは、日本電色工業株式会社製ヘイズメータNDH2000を使用し、D65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定した。測定結果は、図8に示すとおりである。
【0041】
全光線透過率は、いかに損失(吸収)が少なく、光を透過できるかを表している指標で、光の進む向きに関係なく、材料自体の全方向での光学的な効率を表している。これに対し、ゲインは、液晶ディスプレイ等、面光源装置において発光面垂直方向にどれだけ光が射出されるか、観察者からみてどれだけ明るく見えるかを表した指標であり、面光源装置として最も重要な指標のひとつである。拡散板としては、ある態様では、ヘイズが高く(例えば80%以上)ゲインが高い(例えば1.020以上)ものが望ましいこともある。
【0042】
不織布を拡散板として適用する場合のゲインとヘイズは、不織布のシート数(坪量)を変更することでも調整できる。図9は、不織布のシート数に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【0043】
図9に示すように、拡散板のゲインは、不織布のシート数が2枚を超えた辺りから徐々に減少する傾向にある。一方、拡散板のヘイズは、不織布のシート数の増加に応じて増加するが、シート数が2.5枚を超えた辺りから値が飽和している。
【0044】
不織布のシート数がおよそ1.2〜2.4の範囲は、ゲインの減少が小さく、かつヘイズが飽和していない範囲となっている。この不織布のシート数は、坪量で換算すれば10g/m2〜40g/m2に相当する。したがって、坪量が10g/m2〜40g/m2の不織布で拡散板を構成することが、拡散板の透過性と拡散性との両立を実現することが確認できる。
【0045】
次に、不織布シートによる光のムラ(LEDのホットスポット)の解消性能を評価した。この評価では、株式会社東芝製のTVセットREGZA RE1(37インチ)を用意した。このTVセットで用いられている面光源装置は、液晶パネル側より、反射型偏光板、第1プリズムシート、第2プリズムシート、導光板、反射板という構成であった。このうち、第1プリズムシート、第2プリズムシートを取り外し、その他の部材を評価に供した。
【0046】
また、他のTVセットであるソニー株式会社製40EX−700に使用されていた輝度上昇機能付き拡散板を比較例、拡散板を旭化成せんい株式会社製の不織布A5170に置き換えたものを実施例1、拡散板を旭化成せんい株式会社製の不織布PMA013(2シート)に置き換えたものを実施例2とし、カラーアナライザを用いて液晶パネルの輝度分布を測定した。40EX−700より取り出した輝度上昇機能付き拡散板は、厚みが205ミクロンであり、日本電色工業株式会社製ヘイズメータNDH2000を使用し、D65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定したところ、全光線透過率78.0%、ヘイズ94.5%であった。
【0047】
カラーアナライザとしては、コニカミノルタ社製2DカラーアナライザCA−1500Wを用いた。また、測定条件として、シャッタースピード・光強度・測定スピードの設定をいずれもオートとし、レンジを1.0m、測定距離を0.52m、入射角度を10°とした。また、光源の観察を容易化するため、TVセットに備わる元々56個のLEDを一つずつ交互に点灯・非点灯とし、点灯するLEDを28個にすると共に、外側のベゼルを外して測定を行った。測定は、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0048】
また、輝度分布の測定の後、輝度分布のpeak valley Derivative Ampを計算することにより輝度の均一性を求めた。この値が小さい程、輝度の均一性が高いことを示している。図10〜図12は、その評価結果を示す図である。同図に示すように、実施例1,2では、比較例に比べて平均輝度が10%程度の減少に抑えられつつ、輝度の均一性が40%程度向上していることが確認できる。
【0049】
輝度分布のpeak valley Derivative Ampの算出にあたっては、まず、測定した面輝度分布から輝度ムラ評価対象である断面の輝度値を測定データ列とする。次に、Matlab version 7.6(MathWorks社)を使用し、測定データ列から輝度分布バイアスを計算する。そして、測定データ列から輝度分布バイアスを減算して変動(輝度ムラ)の振幅を求め、振動の振幅のパーセンテージを輝度分布バイアスの平均値で除算することにより、peak valley Derivative Ampが求まる。輝度分布バイアスの算出では、まず、測定データ列をフーリエ変換する。その後、フィルタを用いて低周波数成分を除去し、逆フーリエ変換したものを輝度分布バイアスとする。
【0050】
さらに、不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによる輝度向上効果について評価した。この評価では、従来の拡散板を比較例1、従来の拡散板に反射型偏光板(住友スリーエム株式会社製DBEF−D3−460)を組み合わせたものを比較例2、不織布シート(PMA013の2シート)を実施例1、当該不織布シートに反射型偏光板(住友スリーエム株式会社製DBEF−D3−460)を組み合わせたものを実施例2とした。
【0051】
測定には、Eldim社製、Ezcontrast160Dを使用し、暗室内にてTVセットの中央部分の輝度角度分布を測定した。また、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0052】
図13は、その評価結果を示す図である。同図に示す結果から、比較例では、拡散板に反射型偏光板を組み合わせることにより、ピーク輝度が1.66倍、平均輝度が1.67倍に向上しているのに対し、実施例では、不織布シート単体でのピーク輝度及び平均輝度は比較例に対して若干減少するものの、不織布シートに反射型偏光板を組み合わせることにより、ピーク輝度が1.81倍、平均輝度が1.74倍に向上している。したがって、不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによって高い輝度向上効果が得られることが確認できる。
【0053】
同様に、不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによる輝度向上効果について評価した。この評価では、40EX700より取り出した従来の輝度上昇機能付き拡散板を比較例1、従来の拡散板にプリズムシート(住友スリーエム株式会社製BEFIII90/50T)を組み合わせたものを比較例2、不織布シート(PMA013)を実施例1、当該不織布シートにプリズムシート(住友スリーエム株式会社製BEFIII90/50T)を組み合わせたものを実施例2とした。
【0054】
測定には、Eldim社製、EZcontrast160Dを使用し、暗室内にてTVセットの中央部分の輝度角度分布を測定した。また、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0055】
図14は、その評価結果を示す図である。同図に示す結果から、比較例では、拡散板にプリズムシートを組み合わせることにより、ピーク輝度が1.62倍、平均輝度が1.00倍に向上しているのに対し、実施例では、不織布シート単体でのピーク輝度及び平均輝度は比較例に対して若干減少するものの、不織布シートにプリズムシートを組み合わせることにより、ピーク輝度が1.80倍、平均輝度が1.09倍に向上している。したがって、不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによって高い輝度向上効果が得られることが確認できる。
【符号の説明】
【0056】
10,30…面光源装置、11…光源、12…導光板、13…反射板、14…拡散板、15…プリズムシート、16…反射型偏光板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶パネルなどを用いた表示装置のバックライトとして使用される面光源装置がある。このような面光源装置として、例えば特許文献1では、超高分子量プラスチック製多孔質フィルムからなる光拡散板を導光板の一面側に配置した面光源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−94810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の拡散板では、拡散素子である分子やビーズとバインダとの間の屈折率差が小さいため、これらの境界部分での光学的な損失が看過できない。したがって、均一かつ高輝度な光を出射する面光源装置を実現する上で、拡散板の拡散性の確保と輝度の向上とを両立することが必要と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様は、光を出射する光源と、光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、導光板の前面側に配置され、導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置である。
【0006】
また、本発明の一つの態様は、光を出射する光源と、光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一かつ高輝度な出射光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。
【図3】不織布における光の透過・拡散の様子を示す図である。
【図4】効果確認試験の概要を示す図である。
【図5】実施例及び比較例における光学特性を示す図である。
【図6】実施例及び比較例における全光線透過率と全光線反射率との関係を示す図である。
【図7】実施例及び比較例における波長と全光線透過率との関係を示す図である。
【図8】不織布に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【図9】不織布のシート数に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【図10】実施例及び比較例における液晶パネルの輝度を示す図である。
【図11】実施例及び比較例における液晶パネルの輝度の均一性を示す図である。
【図12】図10及び図11の結果をまとめた図である。
【図13】不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによる輝度向上効果を示す図である。
【図14】不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによる輝度向上効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る面光源装置の様々な実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[面光源装置の構成]
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。同図に示すように、面光源装置10は、光源11と、導光板12と、反射板13と、拡散板14と、プリズムシート15と、反射型偏光板16とを備えている。面光源装置10は、例えば液晶パネルPと組み合わされ、テレビやパーソナルコンピュータのモニタに用いられる液晶表示モジュール1を構成する。
【0011】
液晶パネルPは、例えばTFTやSTN、IPS、VAといった公知の液晶セルの表面に直線偏光板等を固定したものが用いられる。液晶セルは、例えば複数の基板、基板ごとに設けられた電極、基板間に封入された液晶層、配向膜、スペーサ、カラーフィルタなどを含んで構成される。光源11は、ここではLED(発光ダイオード)を例示している。光源11は、導光板12の側面に沿って所定の間隔で複数配列されている。なお、光源11としては、CCFL(冷陰極蛍光ランプ)などを用いることもできる。また、光源11は、導光板12の背面側や、導光板12の対向する2つの側面、導光板12の全側面に沿って配置される場合もある。
【0012】
導光板12は、例えばアクリル樹脂などの透光性を有する材料によって形成された厚さ数mm程度の板状部材である。導光板12の屈折率は、例えば1.5前後に設定されている。導光板12は、光源11から側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる。なお、導光板12には、必要に応じて光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光重合安定剤といった各種の添加剤を添加することもできる。
【0013】
反射板13には、表面に銀やアルミニウムといった金属薄膜を被着させてなる樹脂製の板状部材、超多層構造の誘電体による反射フィルム等が使用できる。反射板13は、導光板12の背面側に配置され、導光板12の背面側から漏れる光を導光板12側に反射することによって、面光源装置10から出射する光の輝度を確保する。反射板13は、表面を白色に着色した樹脂板や、アルミニウム等からなる金属板であってもよい。
【0014】
拡散板14は、例えば不織布によって形成された板状部材である。拡散板14は、導光板12の前面側に配置され、導光板12から背面側に入射した光を前面側に拡散させることによって、面光源装置10から出射する光の均一性を確保する。
【0015】
不織布を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートといった汎用プラスチックや、ポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンサルファイドといったエンジニアリングプラスチックを用いることができる。拡散板14では、不織布の坪量は例えば10g/m2以上40g/m2以下となっている。また、上記の樹脂に求められる基本物性としては、光学的な吸収が少なく、透過率が高いことが望ましい。50ミクロン厚の単一試料の場合では、全光線透過率が70%以上、さらに80%以上の材料を使用してもよい。この際、全光線透過率は、使用する樹脂にて50ミクロン厚の単一試料を作製し、JIS K 7361−1(1997)に準拠した方法で測定することができる。
【0016】
プリズムシート15は、例えば導光板12と同様の透光性を有する材料によって形成されたシート状部材である。プリズムシート15の前面又は背面には、拡散板14を通った光の出射の向きを揃えたり、変化させたりするためのプリズムが複数配列されている。具体的には、プリズムシート15は、例えばミクロ構造表面を有する第1高分子層と、ミクロ構造表面の反対側に配置される第2高分子層とを含んで構成され、ミクロ構造表面は、光を方向付けるためのプリズムの配列を含んでいる。プリズムシート15の屈折と全反射によって、一部の光は正面方向に向かい、それ以外の光は不織布側(光源11側)に戻される。これにより、戻された光は不織布に当たって再度損失の少ない散乱、拡散が行われ、各部材にて透過又は反射の後、再度不織布からプリズム方向に射出されるため、結果的に画面正面方向の輝度をより効果的に上げることができる。
【0017】
反射型偏光板16は、少なくとも2つのポリマー層を含んで構成される板状部材である。反射型偏光板16は、プリズムシート15の前面側に配置され、ポリマー層間の屈折率差に基づいて第1の偏光状態の光を反射し、第1の偏光状態に略直交する第2の偏光状態の光を透過させる。
【0018】
ポリマー層の少なくとも1層は、ナフタレート官能性を含むことができる。このナフタレート官能性は、ナフタレート官能性を含む1つ以上のモノマーを重合させることによってポリマー層に組み込まれる。モノマーの例としては、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、2,3−ナフタレン・ジカルボン酸のようなナフタレート及びそのエステルが挙げられる。また、ポリマー層の少なくとも1つは、例えば2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び/又は2,3−ナフタレン・ジカルボン酸及びエチレングリコールのコポリマーであるポリエチレンナフタレート(PEN) を含むことができる。
【0019】
また、図2は、本発明の別の実施形態に係る面光源装置の構成を示す概要図である。同図に示す液晶表示モジュール21を構成する面光源装置30は、光源11が背面入射型となっており、かつ導光板12を配置せずに光源11からの光を拡散板14に直接入射している点で図1に示した実施形態と異なっている。また、反射板13は、光源11の背面側に配置されている。その他の点については、図1に示した実施形態と同様である。
【0020】
以上のような構成を有する面光源装置10,30では、導光板12の前面側或いは光源11の前面側に配置された拡散板14が、10g/m2以上40g/m2以下の不織布によって形成することができる。従来の拡散板のように、例えばアクリルビーズ等の光拡散剤をバインダで保持してなる拡散板では、拡散素子であるビーズとバインダとの間の屈折率差が小さいため、十分な拡散性を得るためには光学界面を多くする必要があり、これらの境界部分での光学的な損失が生じることもあった。
【0021】
これに対し、上述した不織布を適用した拡散板14では、不織布を構成する樹脂とその周囲の空気との間の屈折率差が十分に確保されるため、光が不織布の界面で拡散する際の光学的な損失を抑えることが可能となる。ここで、不織布の坪量を小さくすると拡散板14の拡散性が減少して透過性が増加する傾向を示す。また、不織布の坪量を大きくすると拡散板14の拡散性が増加して透過性が減少する傾向を示す。ただし、不織布の坪量を一定以上に大きくした場合、拡散板14の拡散性が飽和する。
【0022】
このため、上記実施形態のように、不織布の坪量を10g/m2以上40g/m2以下とすることで、拡散板14の透過性と拡散性とをいずれも高いレベルで両立できる。この結果、面光源装置10,30からの出射光を均一かつ高輝度とすることができる。面光源装置10,30からの出射光を均一化することで、液晶パネルPの表示部において、光源11の配置部と非配置部とによる光のムラ(ホットスポット)の解消も実現できる。
【0023】
また、図3に示すように、不織布を用いた拡散板14では、拡散板14に対して略直角に入射した光L1は、一部は拡散するが、損失が抑えられた状態で拡散板14の前面側に透過する。よって、ある態様では、不織布に使用する樹脂は、光の吸収が少ないこと、透過率が高いことが望ましい。一方、拡散板14に対して角度をもって入射した光L2は、不織布によって概ね拡散をするが、その一部が光L1と同様に拡散板14の前面に透過する。したがって、拡散板14の前面側において、拡散板14から略直角方向に出射する光の強度を、拡散板14の背面側から略直角方向に入射する光の強度よりも高くすることが可能となる。
【0024】
この輝度向上効果は、図1及び図2に示したように、拡散板14と反射板13とを対向して配置させることにより一層高めることができる。すなわち、拡散板14と反射板13とを対向して配置することにより、不織布の界面で拡散板14の背面側に反射した光が反射板13で反射して再び拡散板14に入射するので、光L1と同方向に拡散板14の前面に透過する光を増加させることができる。
【0025】
この拡散板14と反射板13とを対向して配置させた構成において、拡散板14の前面側にさらに反射型偏光板を設けることができる。反射型偏光板とは、通常、1つの面内軸(透過軸)に平行な振動方向の光を選択的に透過し、それ以外の光を反射可能な偏光板である。すなわち、この反射型偏光板に入射した光のうち、上記透過軸と平行な振動方向の光成分のみを透過させることにより偏光作用を発揮する。この反射型偏光板を透過しなかった光は、実質的にこの反射型偏光板には吸収されず、反射される。したがって、この反射型偏光板において反射された光は、拡散板14に戻され、拡散板14で拡散・散乱を繰り返し、偏光が一部解消される。偏光が一部解消された光は、再度反射型偏光板に向けて戻され、上記と同様に一部の光のみが透過され、別の一部が反射される。これにより、反射板14と反射型偏光板の間で光がリサイクルされ、その際、拡散板14での上記光の振る舞いが繰り返されることにより、より一層略直角方向に出射する光の強度を高くすることができる。
[拡散板の効果確認試験]
【0026】
続いて、本発明に係る面光源装置10で用いた拡散板14の効果確認試験について説明する。この効果確認試験では、まず、不織布シートの光学特性を測定した。以下の測定は、JIS K 7100(1999)に規定する試験における環境・雰囲気を2級許容差とし、温度23℃±2℃、相対湿度50%±10%の標準雰囲気にて行った。
【0027】
測定にあたっては、旭化成せんい株式会社製の不織布PMA013を用い、当該不織布1層〜6層からなる拡散板をそれぞれ実施例1〜6とした。不織布PMA013は、1枚当たり13g/m2である。またPMA013を加熱して溶融させ50ミクロン厚の単一試料を作製し、JIS K 7631−1準拠にて全光線透過率を測定したところ、71.8%という結果が得られた。
【0028】
比較例には、スチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂系からなり、光拡散剤が分散された、厚みが2mmの拡散板を用いた。この拡散板の光学特性は、日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH2000を使用しD65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定したところ、全光線透過率53.8%、ヘイズ99.5%であった。
【0029】
光学特性は、全光線透過率(TT)、平行光線透過率(PT)、入射角12度絶対反射率(R)、全光線反射率(TR)の4項目を評価した。
【0030】
全光線透過率(TT)は、図4(a)に示すように、サンプルSの前面側に積分球Iを当接配置し、サンプルSの背面側から前面側に透過した光の強度を積分球Iで計測した。また、平行光線透過率(PT)は、図4(b)に示すように、サンプルSの前面側から所定の距離をもって積分球Iを配置し、サンプルSの背面側から前面側に透過した光の強度を積分球Iで計測した。
【0031】
入射角12度絶対反射率(R)は、図4(c)に示すように、サンプルSの背面側に積分球Iを配置し、サンプルSの背面で約12度の角度で反射させた光の強度を積分球Iで計測した。全光線透過率(TT)、平行光線透過率(PT)、入射角12度絶対反射率(R)の測定には、島津製作所製UV−VIS−NIRスキャニングスペクトロフォトメータUV−3100PCを使用し、測定条件は、波長400nm〜700nm、スキャン速度:標準、スキャン間隔:0.5nm、スリット幅:1.0nmとした。
【0032】
一方、全光線反射率(TR)は、図4(d)に示すように、サンプルSの前面側に積分球Iを当接配置し、積分球IからサンプルSの前面に向けた光の反射を積分球Iで計測した。全光線反射率(TR)の測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製スペクトロフォトメータU−4000を使用し、測定条件は、波長400nm〜700nm、スキャン間隔:0.5nmとした。
【0033】
図5は、測定結果を示す図である。同図に示すように、例えば実施例4では、比較例とほぼ同等の全光線透過率(TT)を有しつつ、全光線反射率(TR)が約10%高くなっている。このことは、不織布を用いた拡散板の高い拡散性を示すものである。また、例えば実施例3では、比較例とほぼ同等の全光線反射率(TR)を有しつつ、全光線透過率(TT)が約10%高くなっている。このことは、不織布を用いた拡散板の損失が低いことを示すものである。
【0034】
図6は、横軸を全光線透過率(TT)、縦軸を全光線反射率(TR)として上記測定結果をグラフ化したものである。同図に示すように、全光線透過率(TT)と全光線反射率(TR)とは、不織布の坪量の変動に応じたトレード・オフの関係にあるが、実施例1〜6は、比較例に比べて10%程度高いレベルで全光線透過率(TT)及び全光線反射率(TR)のトレード・オフの関係が成立していることが確認できる。
【0035】
図7は、横軸を波長、縦軸を全光線透過率(TT)として上記測定結果をグラフ化したものである。同図に示すように、比較例では、波長400nm〜450nmの範囲で透過率が減少しているのに対し、実施例1〜6では、可視域である波長400nm〜700nmの全域にわたって透過スペクトルがほぼフラットとなっている。このことから、実施例1〜6は、比較例に比べて無彩色であることが確認できる。
【0036】
次に、いくつかの不織布に関して、ゲイン、ヘイズ(曇り度)および全光線透過率(TT)の測定をおこなった。測定サンプルは、全て旭化成せんい株式会社製の不織布サンプルである。
【0037】
ゲインの測定には、Photoresearch社製分光測色計PR−650、Melles Griot社製偏光部P/N 03FPG007(単体透過率32%、パラレルニコル透過率≧20%)、6.35mm厚テフロン(登録商標)拡散板直下型ライトボックス、Fostec社製光源装置DCRIIw(ランプEKE:21V、150W)を使用した。
【0038】
ゲインは、以下の式より求めた。ライトボックスの発光スペクトルをLLB(λ)、試料をライトボックスに置いたときの発光スペクトルをLsample(λ)とすると、透過率Tsample(λ)は以下の式(1)で求められる。
Tsample(λ)=Lsample(λ)/LLB(λ) …(1)
また、試料をライトボックスに置いたときのバックライトの発光スペクトルLBL−sample(λ)は、
LBL−sample(λ)=LLB(λ)×Tsample(λ) …(2)
により求められる。
【0039】
また、補正項をV(λ)とすると、試料をライトボックスに置いたときのバックライト輝度Bsampleは以下の式(3)で求められる。
Bsample=∫V(λ)・LBL−sample(λ) …(3)
また、バックライト輝度BBLは、
BBL=∫V(λ)・LLB(λ) …(4)
により求められる。以上の式(3)及び(4)より、ゲイン(有効透過率)を以下の式(5)から求める。
ゲイン=Bsample/BBL …(5)
【0040】
ヘイズは、日本電色工業株式会社製ヘイズメータNDH2000を使用し、D65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定した。測定結果は、図8に示すとおりである。
【0041】
全光線透過率は、いかに損失(吸収)が少なく、光を透過できるかを表している指標で、光の進む向きに関係なく、材料自体の全方向での光学的な効率を表している。これに対し、ゲインは、液晶ディスプレイ等、面光源装置において発光面垂直方向にどれだけ光が射出されるか、観察者からみてどれだけ明るく見えるかを表した指標であり、面光源装置として最も重要な指標のひとつである。拡散板としては、ある態様では、ヘイズが高く(例えば80%以上)ゲインが高い(例えば1.020以上)ものが望ましいこともある。
【0042】
不織布を拡散板として適用する場合のゲインとヘイズは、不織布のシート数(坪量)を変更することでも調整できる。図9は、不織布のシート数に対するゲインとヘイズの関係を示す図である。
【0043】
図9に示すように、拡散板のゲインは、不織布のシート数が2枚を超えた辺りから徐々に減少する傾向にある。一方、拡散板のヘイズは、不織布のシート数の増加に応じて増加するが、シート数が2.5枚を超えた辺りから値が飽和している。
【0044】
不織布のシート数がおよそ1.2〜2.4の範囲は、ゲインの減少が小さく、かつヘイズが飽和していない範囲となっている。この不織布のシート数は、坪量で換算すれば10g/m2〜40g/m2に相当する。したがって、坪量が10g/m2〜40g/m2の不織布で拡散板を構成することが、拡散板の透過性と拡散性との両立を実現することが確認できる。
【0045】
次に、不織布シートによる光のムラ(LEDのホットスポット)の解消性能を評価した。この評価では、株式会社東芝製のTVセットREGZA RE1(37インチ)を用意した。このTVセットで用いられている面光源装置は、液晶パネル側より、反射型偏光板、第1プリズムシート、第2プリズムシート、導光板、反射板という構成であった。このうち、第1プリズムシート、第2プリズムシートを取り外し、その他の部材を評価に供した。
【0046】
また、他のTVセットであるソニー株式会社製40EX−700に使用されていた輝度上昇機能付き拡散板を比較例、拡散板を旭化成せんい株式会社製の不織布A5170に置き換えたものを実施例1、拡散板を旭化成せんい株式会社製の不織布PMA013(2シート)に置き換えたものを実施例2とし、カラーアナライザを用いて液晶パネルの輝度分布を測定した。40EX−700より取り出した輝度上昇機能付き拡散板は、厚みが205ミクロンであり、日本電色工業株式会社製ヘイズメータNDH2000を使用し、D65光源、JIS K 7136(2000)に準拠する方法にて測定したところ、全光線透過率78.0%、ヘイズ94.5%であった。
【0047】
カラーアナライザとしては、コニカミノルタ社製2DカラーアナライザCA−1500Wを用いた。また、測定条件として、シャッタースピード・光強度・測定スピードの設定をいずれもオートとし、レンジを1.0m、測定距離を0.52m、入射角度を10°とした。また、光源の観察を容易化するため、TVセットに備わる元々56個のLEDを一つずつ交互に点灯・非点灯とし、点灯するLEDを28個にすると共に、外側のベゼルを外して測定を行った。測定は、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0048】
また、輝度分布の測定の後、輝度分布のpeak valley Derivative Ampを計算することにより輝度の均一性を求めた。この値が小さい程、輝度の均一性が高いことを示している。図10〜図12は、その評価結果を示す図である。同図に示すように、実施例1,2では、比較例に比べて平均輝度が10%程度の減少に抑えられつつ、輝度の均一性が40%程度向上していることが確認できる。
【0049】
輝度分布のpeak valley Derivative Ampの算出にあたっては、まず、測定した面輝度分布から輝度ムラ評価対象である断面の輝度値を測定データ列とする。次に、Matlab version 7.6(MathWorks社)を使用し、測定データ列から輝度分布バイアスを計算する。そして、測定データ列から輝度分布バイアスを減算して変動(輝度ムラ)の振幅を求め、振動の振幅のパーセンテージを輝度分布バイアスの平均値で除算することにより、peak valley Derivative Ampが求まる。輝度分布バイアスの算出では、まず、測定データ列をフーリエ変換する。その後、フィルタを用いて低周波数成分を除去し、逆フーリエ変換したものを輝度分布バイアスとする。
【0050】
さらに、不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによる輝度向上効果について評価した。この評価では、従来の拡散板を比較例1、従来の拡散板に反射型偏光板(住友スリーエム株式会社製DBEF−D3−460)を組み合わせたものを比較例2、不織布シート(PMA013の2シート)を実施例1、当該不織布シートに反射型偏光板(住友スリーエム株式会社製DBEF−D3−460)を組み合わせたものを実施例2とした。
【0051】
測定には、Eldim社製、Ezcontrast160Dを使用し、暗室内にてTVセットの中央部分の輝度角度分布を測定した。また、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0052】
図13は、その評価結果を示す図である。同図に示す結果から、比較例では、拡散板に反射型偏光板を組み合わせることにより、ピーク輝度が1.66倍、平均輝度が1.67倍に向上しているのに対し、実施例では、不織布シート単体でのピーク輝度及び平均輝度は比較例に対して若干減少するものの、不織布シートに反射型偏光板を組み合わせることにより、ピーク輝度が1.81倍、平均輝度が1.74倍に向上している。したがって、不織布シートと反射型偏光板との組み合わせによって高い輝度向上効果が得られることが確認できる。
【0053】
同様に、不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによる輝度向上効果について評価した。この評価では、40EX700より取り出した従来の輝度上昇機能付き拡散板を比較例1、従来の拡散板にプリズムシート(住友スリーエム株式会社製BEFIII90/50T)を組み合わせたものを比較例2、不織布シート(PMA013)を実施例1、当該不織布シートにプリズムシート(住友スリーエム株式会社製BEFIII90/50T)を組み合わせたものを実施例2とした。
【0054】
測定には、Eldim社製、EZcontrast160Dを使用し、暗室内にてTVセットの中央部分の輝度角度分布を測定した。また、各サンプルの入れ替え毎に、TVセットを点灯させてから15分以上が経過し、輝度が安定したことを確認の後、データを取得した。
【0055】
図14は、その評価結果を示す図である。同図に示す結果から、比較例では、拡散板にプリズムシートを組み合わせることにより、ピーク輝度が1.62倍、平均輝度が1.00倍に向上しているのに対し、実施例では、不織布シート単体でのピーク輝度及び平均輝度は比較例に対して若干減少するものの、不織布シートにプリズムシートを組み合わせることにより、ピーク輝度が1.80倍、平均輝度が1.09倍に向上している。したがって、不織布シートとプリズムシートとの組み合わせによって高い輝度向上効果が得られることが確認できる。
【符号の説明】
【0056】
10,30…面光源装置、11…光源、12…導光板、13…反射板、14…拡散板、15…プリズムシート、16…反射型偏光板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、
前記導光板の前面側に配置され、前記導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置。
【請求項2】
前記導光板の背面側に反射板が配置されている請求項1記載の面光源装置。
【請求項3】
前記拡散板の前面側に反射型偏光板が配置されている請求項1又は2記載の面光源装置。
【請求項4】
前記拡散板の前面側にプリズムシートが配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載の面光源装置。
【請求項5】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が10g/m2以上、坪量が40g/m2以下の不織布からなる面光源装置。
【請求項6】
前記拡散板の背面側に反射板が配置されている請求項5記載の面光源装置。
【請求項7】
前記拡散板の前面側に反射型偏光板が配置されている請求項5又は6記載の面光源装置。
【請求項8】
前記拡散板の前面側にプリズムシートが配置されている請求項5〜7の何れか1項に記載の面光源装置。
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側又は側面側に入射した光を導光して前面側から出射させる導光板と、
前記導光板の前面側に配置され、前記導光板から入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が10g/m2以上、40g/m2以下の不織布からなる面光源装置。
【請求項2】
前記導光板の背面側に反射板が配置されている請求項1記載の面光源装置。
【請求項3】
前記拡散板の前面側に反射型偏光板が配置されている請求項1又は2記載の面光源装置。
【請求項4】
前記拡散板の前面側にプリズムシートが配置されている請求項1〜3の何れか1項に記載の面光源装置。
【請求項5】
光を出射する光源と、
前記光源から背面側に入射した光を前面側に拡散させる拡散板と、を含む面光源装置であって、
前記拡散板は、坪量が10g/m2以上、坪量が40g/m2以下の不織布からなる面光源装置。
【請求項6】
前記拡散板の背面側に反射板が配置されている請求項5記載の面光源装置。
【請求項7】
前記拡散板の前面側に反射型偏光板が配置されている請求項5又は6記載の面光源装置。
【請求項8】
前記拡散板の前面側にプリズムシートが配置されている請求項5〜7の何れか1項に記載の面光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【公開番号】特開2013−25953(P2013−25953A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158257(P2011−158257)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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