説明

面実装型回路保持素子及びその製造方法

【目的】 過電流によって溶断するヒューズを備えた面実装型回路保護素子において、その低コスト化と、小型・軽量化を図る。
【構成】 セラミック製チップ片15の内部に、細いトンネル16を、当該トンネルがチップ片における一端面15aと他端面15bとの両方に開口するように形成し、このトンネル内に低融点金属19を充填する一方、前記チップ片における一端面と他端面との両方に、前記トンネル内における低融点金属に電気的に導通する端子電極17,18を各々形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、過電流によって溶断するヒューズを備えた回路保持素子のうち、プリント基板等に対して面実装できるように構成した面実装型の回路保護素子と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の面実装型回路保護素子は、例えば、実開昭61−153262号公報及び実開平2−14750号公報等に記載され、且つ、図16及び図17に示すように、左右一対の金属板製リード端1,2の間に、過電流によって溶断するようにしたヒューズ線3をワイヤボンディングし、これらの全体を合成樹脂製のモールド部4にて、両リード端子1,2の一部が当該モールド部4の左右両端から突出するようにパッケージしたのち、前記両リード端子1,2を、前記モールド部4の底面に沿って折り曲げ、この両リード端子1,2を、プリント基板等における配線パターンに対して半田付けすると言う構成にしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この従来における面実装型回路保護素子は、左右一対の金属板製リード端子1,2を必要とすることに加えて、この両リード端子1,2間に対するヒューズ線3のワイヤボンディング、更には、前記ヒューズ3のパッケージ用モールド部4を成形する工程とを必要とするので、製造コストが大幅にアップするのであり、しかも、長さ寸法L′、高さ寸法H′及び幅寸法W′が可成り増大することにより、大幅な小型化及び軽量化を達成できないと言う問題があった。
【0004】本発明は、製造コストの大幅な低減と、大幅な小型・軽量化とを達成できるようにした面実装型の回路保護素子を提供すると共に、その製造方法を提供することを技術的課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この技術的課題を達成するため本発明における面実装型回路保護素子は、「セラミック製チップ片の内部に、細いトンネルを、当該トンネルがチップ片における一端面と他端面との両方に開口するように形成し、このトンネル内に低融点金属を充填する一方、前記チップ片における一端面と他端面との両方に、前記トンネル内における低融点金属に電気的に導通する端子電極を各々形成する。」と言う構成にした。
【0006】また、本発明における面実装型回路保護素子の製造方法は、「表面に熱飛散性のインクを帯状に塗布した第1セラミックグリーンシートと、第2のセラミックグリーンシートとを積層し、この積層シートをチップ片に、当該チップ片における一端面と他端面との両方に前記帯状インクが露出するように裁断したのち、このチップ片を高い温度で焼成することによって、その内部の帯状インクを熱飛散して、チップ片内にトンネルを形成し、次いで、前記チップ片における一端面と他端面との両方に多孔質の端子電極を形成したのち前記トンネル内に低融点金属を溶融状態で充填するか、或いは、前記トンネル内に低融点金属を溶融状態で充填したのちチップ片における一端面と他端面との両方に端子電極を形成する。」ことにした。
【0007】
【作 用】このように構成することにより、チップ片におけるトンネル内に充填した低融点金属が、過電流によって溶断すると言うヒューズに成る一方、前記チップ片の両端面に形成した端子電極によって、プリント基板等に対して半田付けによる面実装ができるのである。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図1〜図15の図面について説明する。先づ、第1のセラミックグリーンシート11と、第2のセラミックグリーンシート12とを用意し、第1のセラミックグリーンシート11の上面に、図1に示すように、熱飛散性のインク13(例えば、カーボンブラック30w%、アルミナ粉末又はPb粉末5〜40w%、エチルセルロース5〜10w%、残りがバインオイルの混合物)を、スクリーン印刷法によって、複数条の帯状に塗布する。
【0009】次いで、前記第1のセラミックグリーンシート11の上面に前記第2のセラミックグリーンシート12を重ね合わせたのち、押圧プレスすることによって、図2に示すような積層シート14にし、この積層シート14を、図3〜図6に示すように、長さ寸法がLで幅寸法がWの多数個のチップ片15に、当該各チップ15における一端面15aと他端面15bとの両方に前記帯状インク13が露出するように裁断する。
【0010】なお、前記の押圧プレスは、65〜85℃で、10〜50KgF/cm2 の圧力を、3〜60分間かけて行う。そして、この各チップ片15を、還元、中性又は酸化雰囲気の焼成炉内において、約1300〜1400℃の温度で焼成する。この焼成により、各チップ片15の内部におけるインク13の有機物質成分が熱飛散するから、各チップ片15の内部には、図7〜図9に示すように、細いトンネル16が、当該トンネル16がチップ片15における一端面15aと他端面15bとの両方に開口するように形成されることになる。
【0011】次いで、各チップ片15における一端面15aと他端面15bとの両方に、図10に示すように、多孔質の厚膜状端子電極17,18を導電ペーストの塗着によって形成するか、或いは、図11に示すように、多孔質の薄膜状端子電極17′,18′を適宜金属のスパッタリングにて形成する。このようにして、各チップ片15の両端面15a,15bの各々に端子電極17,18又は17′,18′を形成すると、この各チップ片15を、図12に示すように、鉛−錫合金等の低融点金属19を溶融状態で入れた密閉容器20内に挿入し、溶融金属19内に浸漬する前の状態で、先づ、密閉容器20内を真空にすることによって、各チップ片15におけるトンネル16内を真空状態にする。
【0012】次いで、前記各チップ片15を、二点鎖線で示すように、溶融金属19内に浸漬したのち、前記密閉容器20内に、窒素ガス又は窒素と水素との混合ガス(但し、水素は3%以下)を2×106 〜3×106 Paの圧力で注入することにより加圧する。これにより、溶融金属19を、各チップ片15の両端における多孔質の端子電極17,18又は17′,18′を透過してその内部のトンネル16内に充填することができるから、各チップ片15を、前記密閉容器20内から取り出して冷却することにより、図13〜図15に示すような回路保護素子21を得ることができるのである。
【0013】ここに得られた回路保護素子21は、セラミック製チップ片15の内部に、細いトンネル16を、当該トンネル16がチップ片15における一端面15aと他端面15bとの両方に開口するように形成され、このトンネル16内に低融点金属19が充填され、且つ、前記チップ片15における一端面15aと他端面15bとの両方に、前記トンネル16内における低融点金属19に電気的に導通する端子電極17,18又は17′,18′が形成された形態になっていることにより、チップ片15におけるトンネル16内に充填した低融点金属19が、過電流によって溶断すると言うヒューズに成る一方、前記チップ片15の両端面に形成した端子電極17,18又は17′,18′によって、プリント基板等に対して半田付けによる面実装ができるのである。
【0014】なお、前記低融点金属19は、その溶融温度つまり融点が回路保護素子21をプリント基板等に対して半田付けする場合における温度よりも高いものにすべきであることは言うまでもない。また、チップ片15の両端面における端子電極17,18又は17′,18′は、チップ片15におけるトンネル16内に、前記図12に示す方法にて低融点金属19を充填したのちに形成するようにしても良いのであり、このように、チップ片15におけるトンネル16内に低融点金属19を充填したのちに両端子電極を形成すると言う方法においては、両端子電極を、多孔質のものにすることに代えて非多孔質のものにすることができるのである。
【0015】
【発明の効果】以上の通り、本発明によると、面実装型回路保護素子を、ヒューズを内蔵したセラミック製のチップ片に構成することができることにより、前記した従来の面実装型回路保護素子における一対の金属板製リード端子、ヒューズ線のワイヤボンディング及びモールド部の成形を必要としないから、製造コストを大幅に低減できて安価に提供できると共に、大幅な小型・軽量化を達成できるのである。
【0016】特に、両端子電極を、多孔質の端子電極にした場合、この多孔質の端子電極が、チップ片内部の低融点金属が過電流によって溶融したときにおいて、この溶融金属の逃げ場となるから、低融点金属によるヒューズの溶断特性をより向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1及び第2セラミックグリーンシートの斜視図である。
【図2】前記第1及び第2セラミックグリーンシートによる積層シートの斜視図である。
【図3】前記積層シートを複数個のチップ片に裁断した状態の斜視図である。
【図4】チップ片の拡大斜視図である。
【図5】図4のV−V視断面図である。
【図6】図4のVI−VI視断面図である。
【図7】焼成したあとにおけるチップ片の斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII視断面図である。
【図9】図7のIX−IX視断面図である。
【図10】前記チップ片に端子電極を形成した状態の断面図である。
【図11】前記チップ片に別の端子電極を形成した状態の断面図である。
【図12】前記チップ片におけるトンネル内に低融点金属を充填する状態を示す断面図である。
【図13】本発明による回路保護素子を示す斜視図である。
【図14】図13のXIV −XIV 視断面図である。
【図15】図13のXV−XV視断面図である。
【図16】従来における回路保護素子を示す縦断正面図である。
【図17】図16の平面図である。
【符号の説明】
11 第1のセラミックグリーンシート
12 第2のセラミックグリーンシート
13 帯状インク
14 積層シート
15 チップ片
15a チップ片の一端面
15b チップ片の他端面
16 トンネル
17,18,17′,18′ 端子電極
19 低融点金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミック製チップ片の内部に、細いトンネルを、当該トンネルがチップ片における一端面と他端面との両方に開口するように形成し、このトンネル内に低融点金属を充填する一方、前記チップ片における一端面と他端面との両方に、前記トンネル内における低融点金属に電気的に導通する端子電極を各々形成したことを特徴とする面実装型回路保護素子。
【請求項2】前記両端子電極を、多孔質の端子電極にしたことを特徴とする「請求項2」に記載した面実装型回路保護素子。
【請求項3】表面に熱飛散性のインクを帯状に塗布した第1セラミックグリーンシートと、第2のセラミックグリーンシートとを積層し、この積層シートをチップ片に、当該チップ片における一端面と他端面との両方に前記帯状インクが露出するように裁断したのち、このチップ片を高い温度で焼成することによって、その内部の帯状インクを熱飛散して、チップ片内にトンネルを形成し、次いで、前記チップ片における一端面と他端面との両方に多孔質の端子電極を形成したのち前記トンネル内に低融点金属を溶融状態で充填するか、或いは、前記トンネル内に低融点金属を溶融状態で充填したのちチップ片における一端面と他端面との両方に端子電極を形成することを特徴とする面実装型回路保護素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開平7−94071
【公開日】平成7年(1995)4月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−234957
【出願日】平成5年(1993)9月21日
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)