説明

面状アート

【課題】 一般的な家庭においても、壁掛けのように設置可能な程度に、小型・薄型で、しかもステンドグラスのような視覚的な効果を具備した、面状の装飾品ないしは美術品を提供する。
【解決手段】 蓄光体を含むシートまたはエレクトロルミネッセンス素子からなる面状発光体2の発光面に、例えば図柄を印刷したPETフィルム1のような、画像や文字を描いた透明な板材を配置する。これによって、裏側から照明を施すことが可能な、絵画などの装飾品ないし美術品を提供できて、従来とは異なる視覚的な効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絵画などの面状の装飾品ないしは美術品に関し、特に新規な視覚的な効果を具備したものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に絵画に代表される平面的な芸術品は、壁に掛けた状態で、外部から照明を施すことにより鑑賞する。油彩の場合では、絵の具の塗り方や照明の角度調整と、鑑賞者の視認角度により、異なる視覚的な効果を発現するものがあるが、その効果には限界がある。
【0003】
また、ステンドグラスのように、鑑賞する側から見ると、反対側から照明を施すことにより、通常の絵画とは異なる視覚的な効果を発現するものもある。しかしながら、ステンドグラスは、建造物の壁に貫通窓を設けて設置し、外光、つまり太陽光を利用して鑑賞するもので、ステンドグラス自体が、色ガラスを組み合わせて製作することから、一般に高価であり、一般的な家屋内に設置して鑑賞するのは、種々の面で制限がある。
【0004】
一方で、ステンドグラスと同様の視覚的な効果を備えた美術を、通常の建物や家庭で鑑賞する方法として、小型の面状発光体と、光を透過する材料で構成された絵画を組み合わせることが考えられる。そして、このような美術を提供するための面状発光体としては、特許文献1や特許文献2に開示されている装置が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの装置は、多くの部品を要し、構造が複雑であることから、コストの観点から改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2007−240641号公報
【特許文献2】 特開2008−147043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、一般的な家庭においても、壁掛けのように設置可能な程度に、小型・薄型で、しかもステンドグラスのような視覚的な効果を具備した、面状の装飾品ないしは美術品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題の解決のため、薄型で安価な面状発光体として、蓄光材料を含む塗膜や、近年開発され実用化が近いとされているエレクトロルミネッセンス素子に着目するとともに、光を透過する絵画などのアートの作製方法を検討した結果、なされたものである。
【0009】
即ち、本発明は、面状発光体と、前記面状発光体の表面に配置され、画像または文字の少なくともいずれかが描かれてなる透明板を有することを特徴とする面状アートである。
【0010】
また、本発明は、前記面状発光体が、蓄光体を含むシートまたはエレクトロルミネッセンス素子の少なくともいずれかであることを特徴とする、前記の面状アートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による面状アートは、前記のような構成であるため、全体を軽量かつ薄型することが容易で、従来の絵画などのように、壁掛けにしたり、装飾を目的としたインテリアにしたりすることが可能で、かつ、透明板の裏側から照明を施すので、ステンドグラスのような視覚的な効果や、ステンドグラスとは別な新規な視覚的な効果を与える。
【0012】
面状発光体としては、エレクトロルミネッセンス素子も使用可能であるが、光源として蓄光体を用いれば、電源が不要なので、設置場所の制限を大幅に少なくすることができる。具体的には、銅(Cu)または塩素(Cl)により付活される硫化亜鉛(ZnS)や、ユウロピウム(Eu)またはディスプロシウム(Dy)により付活されるアルミン酸ストロンチウム(SrAl)からなる蓄光材料の粉末を、分散させた塗料を塗装した板や、前記蓄光材料の粉末を分散させた高分子材料の成形体を用いることができる。
【0013】
また、面状発光体の表面に配置する絵画などは、基本的に、板ガラスや透明なプラスチックフィルムなどの、透明で板状の材料に描いたものであれば、特に制限はない。しかし絵の具を厚く塗った絵画などでは、面状発光体の光が透過し難くなるので、望ましくない。また、近年は、透明なフィルム、たとえばポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)のフィルムに、図柄や文字を印刷することも可能なので、フィルム表面に絵画や写真を印刷することで、まとまった量の制作も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明の実施の形態に係る面状アートの一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る、面状アートの一例を示す斜視図で、PET表面に花の図柄を印刷したものを、面状発光体の表面に配置した例である。図1において、1は図柄を印刷したPETフィルム、2は表面に蓄光体粉末を含む塗料を塗装した面状発光体である。
【0016】
ここで用いたPETフィルムは、厚さが約180μmであり、印刷インクの定着を確実にするために、表面に酸化処理が施してある。同様の目的で、PET表面にポリアクリル酸系のアイオノマーの層を形成した、2層フィルムを用いることも可能である。
【0017】
また、ここで用いた面状発光体は、厚さが約1mmの、エポキシ系FRP板の表面に、エポキシ系のビヒクルに、(Eu)またはディスプロシウム(Dy)により付活された、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)の蓄光材料粉末を分散した塗料を、約300μmの厚さで塗装したものである。
【0018】
従って、ここに示した面状アートは、壁掛けとしての使用にまったく支障がない程度に軽量であり、裏側に適宜支持具を取り付けることで、テーブルや棚の上に置くことも可能である。しかも、この場合の面状発光体は、電源が不要であり、設置場所の制限が少ない。
【0019】
以上に説明したように、本発明によれば、薄型軽量で、従来にない視覚的な効果を備えた面状アートを提供することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
1 図柄を印刷したPETフィルム
2 面状発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状発光体と、前記面状発光体の表面に配置され、画像または文字の少なくともいずれかが描かれてなる透明板を有することを特徴とする面状アート。
【請求項2】
前記面状発光体は、蓄光体を含むシートまたはエレクトロルミネッセンス素子の少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の面状アート。

【図1】
image rotate