説明

面状体の曲回試験装置。

【課題】幅の広い面状体である被試験体を無張力で曲げ(曲回)の繰り返し試験ができる面状体の曲回試験装置を提供する。
【解決手段】コラム1の両側から同方向に揺動する揺動軸8を同芯にして内方に突出し、揺動軸8にアーム2を上方に向けて固定し、アーム2の先端に面状体からなる被試験体3の上部を固定する固定クランプ4を取り付けるとともに、アーム2の内側に自転可能な二つのローラ11を軸支するブラケット6をローラ11の軸芯の中点と駆動軸の軸芯とを同芯にして固定し、被試験体3を二つのローラ11の間を通して下延させ、下端をスプリング又は自重で下がるよう下方付勢される可動クランプ5に連結する他、ブラケット6の内側で被試験体の外側を被試験体3を無張力に維持する張力吸収紐12をローラ11の間を通して固定クランプ4と可動クランプ5に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の幅と丈(長さ)を有する薄い面状体の曲回試験装置に関するものである。このような面状体としては、液晶ディスプレー、有機EL及び太陽電池パネル等があり、その幅は1mを超えるものもある。これら面状体は、製造、運搬、保管、施工に際して曲げ(曲回)を受けるが、このような曲回を受けるときは、概ね、引張力も圧縮力も受けない無張力である。このため、無張力で曲回試験をして耐久性を調べる必要がある。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先にケーブル、ハーネス、コードといった線状体を無張力で曲回と捩じり(捩回)を同時に試験できる試験装置を下記特許文献1として提案している。ところが、面状体は上記したように相当広い幅を有しているから、これと同じやり方では曲回や捩回の試験ができないし、ましてや同時にはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2011−8649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は相当の幅と長さを有する面状体を無張力で曲回できる曲回試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、請求項1に記載した、コラムの両側から同方向に揺動する揺動軸を同芯にして内方に突出し、揺動軸にアームを上方に向けて固定し、アームの先端に面状体からなる被試験体の上部を固定する固定クランプを取り付けるとともに、アームの内側に自転可能な二つのローラを軸支するブラケットをローラの軸芯の中点と駆動軸の軸芯とを同芯にして固定し、被試験体を二つのローラの間を通して下延させ、下端をスプリング又は自重で下がるよう下方付勢される可動クランプに連結する他、ブラケットの内側で被試験体の外側を被試験体を無張力に維持する張力吸収紐をローラの間を通して固定クランプと可動クランプに連結したことを特徴とする面状体の曲回試験装置を提供したものである。
【0006】
また、本発明は、以上の曲回試験装置において、請求項2に記載した、張力吸収紐が被試験体の両側に二本設けられる手段、請求項3に記載した、張力吸収紐が剛性の高いものであり、その太さが面状体の厚みとほぼ同じである手段を提供する。
【発明の効果】
【0007】
被試験体をアームに連係する上方の固定クランプでクランプしてアームを揺動させて二つのローラで曲回させると、面状体はローラに巻き付くことになり、その分だけ真っ直ぐのときに比べて周長が長くなる。このとき、固定クランプとローラの中点(揺動軸)の間隔は一定であることから、ローラと可動クランプの長さは僅かではあるが短くなり、その分可動クランプが上昇しなければ被試験体を無張力には保てない。これを可能にするのが張力吸収紐であり、可動クランプを引っ張り上げて被試験体を無張力に保つ。一方、アームが真上に戻って被試験体が真っ直ぐになると、上記と逆で可動クランプを下方に下げないと被試験体には弛みが出る。
【0008】
そこで、このときは、可動クランプはスプリング(自重でもよいが)で下方に引っ張られるのであるが、可動クランプは張力吸収紐で所定の位置(被試験体を無張力に保つ位置)までしか下がらないので、結局、被試験体は揺動の角度や速度にかかわらず無張力に保てる。請求項2の手段によれば、幅のある被試験体でも全幅において無張力に保てるし、請求項3の手段によれば被試験体をローラで曲回させたとき周長に差がなく、より厳密に無張力に保てる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】試験装置の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】被試験体及びローラの関係を示す断面側面図である。
【図4】揺動軸の揺動回転を一例を示す説明図である。
【図5】クランプの状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一例を示す曲回試験装置の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は被試験体及びローラの関係を示す断面断面図であるが、この試験機は、枠体であるコラム1と、コラムの内側で上方に向けて延ばされる二つのアーム2と、アーム2の先端に設けられ、面状体である被試験体3の上端を固定する固定クランプ4と、コラム1の両側に上下動可能に設けられて被試験体3をクランプする可動クランプ5等からなる。
【0011】
これにおいて、アーム2はブラケット6に固定されており、一方のブラケット6は駆動装置7から駆動される揺動軸8で揺動されるようになっている。他方のブラケット6も一方のブラケット6に同調して揺動するようになっており、このため、コラム1内をマイタギア9等の伝動構造10で他方のブラケット6に伝えられている。ブラケット6には揺動軸8から振り分けの位置に一対のローラ11が所定間隔で自転可能に設けられており、このローラ11の間を被試験体3がある程度の余裕をもって挿通している。
【0012】
固定クランプ4、可動クランプ5ともに被試験体3をクランプするものであり、例えば、ネジ止めや挟み付けで固定されるようになっている。このうちの可動クランプ5はコラム1に対して上下できるようになっている。そして、固定クランプ4と可動クランプ5には張力吸収紐(以下、紐)12が被試験体3の両側にローラ11の間を通して二本張り掛けられている。アーム2を揺動させたときに固定クランプ4と可動クランプ5との間を不変にして被試験体3を無張力に維持するものであり、この点で、紐12の長さは被試験体3を無張力に保つ長さに対応するものに設定されている。
【0013】
一方で、可動クランプ5は上下動できることは上述したが、本発明では、紐12を可動クランプ5に連結するとともに、可動クランプ5を支持するブラケット18を常時スプリング(図示省略)で下方に付勢してコラム1に対して上下にスライドできるようにしている(自重によるものであってもよい)。加えて、可動クランプ4の上下動(特に、下動)は曲回を高速で行うときには素早い動きをしなければならないから、このスプリングはある程度強いものにしている。また、紐12は剛性の高いものが好ましく、二本とも同じものである必要がある。
【0014】
図4は揺動軸8を揺動させるための駆動装置7の説明図であるが、揺動軸8を揺動させるのはどのような構造であってもよいが、例えば、揺動軸8の上方(又は下方)に強制回転させられる円板13を設け、円板13にカムフォロアー14を取り付け、カムフォロアー14と揺動軸8とを連接体15で連結しておけば、円板13の一定方向回転で揺動軸8は揺動する。このとき、円板13の回転に応じてカムフォロアー14は連接体15に対する位置を変えなければならないが、連接体15にカムフォロアー14の回転をカバーする長孔16を形成しておけばよい。また、カムフォロアー14が挿通する溝を長孔17にしておけば、揺動角度を変更できる。
【0015】
図5は固定クランプ4と可動クランプ5による被試験体3のクランプの状態の一例を示す断面図であるが、それぞれ中央側が開口したU字体の筐体4a、5aを形成し、この筐体4a、5aの中に被試験体3を挿入し、筐体4a、5aの一面からボルト等のクランプ具19で締め付けてクランプするものが考えられる。この場合、被試験体3を傷付けないために両面に軟質樹脂やゴム等の緩衝材20をあてがうのが好ましい。この他、強力な洗濯挟みのように被試験体3を全面的に挟み付けるようなものも考えられる。
【0016】
次に、面状体である被試験体3の曲回試験について説明すると、固定クランプ4と可動クランプ5に被試験体3の上下をクランプし、円板13を回転させて揺動軸8を揺動回転させる。すると、被試験体3は左右に繰り返し曲回されてその耐久試験が図られるが、この間、紐12の存在によって被試験体3は無張力に保たれる。すなわち、曲回すると可動クランプ5が紐12で上方に引っ張り上げられ、真っ直ぐにすると、可動クランプ5はスプリングで引っ張られて下方に下がるが、紐12の長さ以上には下がらない。この点で、紐12は可動クランプ5が必要以上に下がるのを規制するストッパの役目をも果たすものである。もちろん、繰り返しの揺動はその回数をカウントされる。
【0017】
なお、ローラ11は自転可能としたが、その両端に径小のアーム軸11aを形成し、これをブラケット6で回転可能に軸支してもよいし、アーム軸11aをブラケット6に固定し、アーム軸11aをローラ11の中に通し、これにローラ11をベアリング等で支持してもよい。また、曲回の位置を変えたいときには、固定クランプ4の位置をアーム2に対して変更ができるようにし、この位置を変えることで可能になる。この他、可動クランク5を引っ張るスプリングに代えて錘にしてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 コラム
2 アーム
3 被試験体
4 固定クランプ
4a 〃 の筐体
5 可動クランプ
5a 〃 の筐体
6 ブラケット
7 駆動装置
8 揺動軸
9 マイタギア
10 伝動構造
11 ローラ
11a ローラ軸
12 張力吸収紐
13 円板
14 カムフォロアー
15 連接体
16 長孔
17 長孔
18 ブラケット
19 クランプ具
20 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラムの両側から同方向に揺動する揺動軸を同芯にして内方に突出し、揺動軸にアームを上方に向けて固定し、アームの先端に面状体からなる被試験体の上部を固定する固定クランプを取り付けるとともに、アームの内側に自転可能な二つのローラを軸支するブラケットをローラの軸芯の中点と駆動軸の軸芯とを同芯にして固定し、被試験体を二つのローラの間を通して下延させ、下端をスプリング又は自重で下がるよう下方付勢される可動クランプに連結する他、ブラケットの内側で被試験体の外側を被試験体を無張力に維持する張力吸収紐をローラの間を通して固定クランプと可動クランプに連結したことを特徴とする面状体の曲回試験装置。
【請求項2】
張力吸収紐が被試験体の両側に二本設けられる請求項1の面状体の曲回試験装置。
【請求項3】
張力吸収紐が剛性の高いものであり、その太さが面状体の厚みとほぼ同じである請求項1又は2の面状体の曲回試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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