面状光源及び指向性型照明装置、指向性可変型照明装置、擬似間接型照明装置
【課題】光損失が小さく、目的の角度や方向に指向性を持たせることができる面状光源を提供する。更に、前記指向性はその角度や方向可変である面状光源を提供する。
【解決手段】面状光源は、基板上に電極と発光材料層を有するシート状の電界発光型素子と指向性機能フィルムを含み構成され、前記面状光源はその法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする。
【解決手段】面状光源は、基板上に電極と発光材料層を有するシート状の電界発光型素子と指向性機能フィルムを含み構成され、前記面状光源はその法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性出射光を発する面状光源及びそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特定の場所を照明するために出射光に指向性を持たせた照明装置が用いられている。例えば、読書のためにある本の近傍のみを照明するライト、飛行機の座席毎にある部分のみを照明する機内灯、車両のある部分のみを照明する室内灯等の照明装置がある。
【0003】
これらの局所的な照明には、電球や蛍光灯灯の光源と凹面鏡を組み合わせた電球照明装置が用いられてきている。しかしながら、前記電球光源はその形状や大きさから、設置する壁面や天井をくりぬいて設置するか、壁面や天井から出っ張らせて設置せざるを得なかった。このため、設計やデザインに制限が生じた。
【0004】
上記に対し、近年一般的に知られるようになった面状光源は、形状が前記電球光源に対し薄くできること等形状や大きさから照明への利用が期待されている。しかしながら、エレクトロルミネッセンス(電界発光素子)に代表される面状光源は、その発光原理上、出射される光は拡散光で有り、面に垂直な方向を主とした出射光である。そのため、面状光源の法線に対して5°以上の指向性角度を有する出射光を持たせた照明装置が望まれてきている。更には、その角度や方向が可変である照明装置が望まれてきている。
【0005】
前記出射光の指向性化について、透明な導光板の側面に配された線状の光源から導光板内に導入した光束を、一方の面がマイクロレンズ面であり、もう一方の面には微小突起の配列が形成された光線指向性化シートを用いて、面状光源の法線方向にのみ指向性化する面状光源が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−39118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は光線指向性化シートを用い、出射光を指向性化するものであるが、面に垂直な方向を主とした指向性である。指向性に角度を持たせたり指向性の方向を変えること、また同一光源内で指向性を複数方向に変化させることは困難である。
【0007】
しかしながら、面状光源を局所的な照明として用いる場合は、面に垂直な方向以外にも指向性角度を持たせること、自在に照明位置を変更できるように指向性の方向が可変であることが求められる。また、装飾を兼ねた照明として用いる場合には、同一光源内で指向性を複数方向に変化させられることが好ましい。
【0008】
面状光源の面に垂直な方向以外にも指向性を持たせることについて、研究者らは研究を行い、透明プラスチックの光屈折板(例えば、車等のテールランプのカバーのような)等で試みたが、数mm単位の光屈折板を重ねただけでは光損失が大きく、実用的でないという結論に達した。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みなされたもので、光損失が小さく、目的の角度や方向に指向性を持たせることができる面状光源を提供することを目的とする。更に、前記指向性はその角度や方向が可変である面状光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基板上に電極と発光材料層を有する電界発光型素子を含み構成される面状光源において、該面状光源が、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする面状光源。
2.前記電界発光型素子の形状はシート状であるとともに、指向性機能フィルムを含み構成されることを特徴とする1に記載の面状光源。
3.前記指向性機能フィルムが、ボトム型プリズムシートであることを特徴とする2に記載の面状光源。
4.前記ボトム型プリズムシートのプリズムが斜角錐台形または斜円錐台形であることを特徴とする3に記載の面状光源。
5.前記ボトム型プリズムシートのプリズム部が柔軟な材質からなり、該プリズム部を変形させることによって指向性角度が可変できることを特徴とする3または4に記載の面状光源。
6.前記指向性機能フィルムが、2つ以上のプリズムシートの組合せからなることを特徴とする2乃至5の何れか1項に記載の面状光源。
7.前記シート状の電界発光型素子に対して、前記指向性機能フィルムを重ね合わせた状態で面方向に回転させることによって、指向性の方向が可変できることを特徴とする2乃至6の何れか1項に記載の面状光源。
8.前記電界発光型素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする1乃至7の何れか1項に記載の面状光源。
9.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、リン光発光型であることを特徴とする8に記載の面状光源。
10.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、白色発光性であることを特徴とする8または9に記載の面状光源。
11.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性型照明装置。
12.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性可変型照明装置。
13.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする擬似間接型照明装置。
【発明の効果】
【0011】
上記により、面状光源の出射光に指向性を持たせることができるため、目的の角度や方向に出射光を照射することができる。また、出射光の指向性の角度や方向が可変とすることができるため、設置場所の自由度が大きくなり、広い用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明の面状光源は、シート状の電界発光素子と指向性機能を有するフィルムシートである指向性機能フィルムを含み構成される。シート状の発光素子としては、透明樹脂を使用した導光板若しくは拡散板の端面から、冷陰極管や発光ダイオード等の光源からの光を入射し、導光板若しくは拡散板の表面から光を出射する方式、電界発光型素子であるエレクトロルミネッセンス(EL)から光を出射する方式等がある。本発明は、シート状の発光素子として前記電界発光型素子を用いたものである。
【0014】
エレクトロルミネッセンスは、発光素子の薄さの点、省電力等位から好適であり、その中でも、その基板がフレキシブルなプラスチックフィルムからなる有機EL素子が最も好ましい。
【0015】
図1は、本発明に係る面状光源の構成図である。面状光源1は電界発光型素子(以下、発光素子とも略す)10と指向性機能フィルム20を有し構成される。本実施の形態では、発光素子10として有機EL素子が用いられる。
【0016】
本発明において指向性とは、面状光源の法線に対して、0°から5°刻みで±60°までの輝度を測定し、その最大輝度の角度をもって、指向性角度と定義する。輝度の測定には、分光放射輝度計(例えば、CS−1000(コニカミノルタセンシング社製))等を用いることができる。
【0017】
本発明の面状光源は、その法線に対して5°以上の角度の指向性のある出射光を発するものであるが、その角度は好ましくは10°以上、特に好ましくは20°以上45°以下である。また輝度の分布は、法線を含む面において左右非対称であることが好ましい。
【0018】
指向性機能フィルム20としては、特開2004−127746号公報、特開2005−55481号公報に示されるような、表面に微細な凹凸構造を有する透明プリズムシートを、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発するように加工したものが好ましいが、液晶フィルムシートや、微細な光反射性物質を一定方向に配列させた透明フィルムシート、さらには個別に駆動可能なマイクロミラーを配列させた素子を用いることもできる。
【0019】
特に本発明において、かかる指向性角度を達成するための最も有効なものは、前記プリズムシートの中でも、特開2007−180001号公報の図1〜9に示されるような、プリズムシート(本発明では、ボトム型プリズムシートという)から構成されるものを、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発するように、凸部の中心を法線に対して傾斜させたものである。
【0020】
ボトム型プリズムシートは、基材表面に形成した凸部を、発光素子の光射出面側に配置したことを特徴とする。その凸部のピッチは、10〜500μm、好ましくは20〜200μmであり、凸部の高さは3〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
【0021】
図2及び図6はボトム型プリズムシートの例を示す図である。図2(a)及び図6は側面から見た図であり、図2(b)は、図2(a)に示すボトム型プリズムシート21を矢印A方向から見た図である。ボトム型プリズムシート21、51の凸部211、511を発光素子10の光射出面側に配置したもので、凸部211、511の側面部212、213、512、513をそれぞれの組合せが異なる角度になるように傾斜させて、光の指向角度を調整することが出来る。本実施の形態では凸部211、511は斜円錐台形状としているが、これに限定されるものではなく、斜角錐台形状でもよい。本発明においては、凸部が斜円錐台形状が最も好ましい。
【0022】
本発明の指向性を達成する他の有効な例としては、発光素子と2つ以上のプリズムシートの組合せからなる構成が挙げられる。このプリズムシートの組合せからなる構成を用いる場合は、最外部に設置されるプリズムシートは、その凸部方向を法線に対して角度を持たせた非対称構造とすることが好ましい。
【0023】
図3及び図4は、表面に微細な凹凸構造を有するプリズムシート31、41と、もう1種のプリズムシート32、42を組み合わせた例である。面状光源1の指向性としては、1方向への指向性に限定されるものではなく、その使用目的や用途により、2以上の方向への指向性を有することもできる。例えば、図3は1方向の指向性を有する例であり、図4は2方向の指向性を有する例である。図5(a)は図3の、図5(b)は図4の例の配光特性分布を示す図である。
【0024】
また、前記指向性を、出射光が集光してスポットライトのように機能するようにすることもできる。図6は、出射光を集光させる例である。この場合、プリズムシート51の凸部511の側面部512の傾斜を位置によって異ならせ、フレネルレンズのような機能を発揮させ、任意の指向性角度に設計することにより達成される。
【0025】
面状光源1は、指向性角度や方向を固定した状態で用いてもよいが、設置された面状光源1の指向性角度や方向が、ユーザーによって可変であることも好ましい形態である。指向性の可変は、指向性を有する面状光源1全体を、指向性が可変できるように可動可能に設置することで達成できる。また、発光素子10に対して、ボトム型プリズムシート21,51を可変可能に構成したり、プリズムシート31、41を可変可能に構成したりすることによっても達成できる。(以下、ボトム型プリズムシート21,51、プリズムシート31、41を総称してプリズムシートとともいう)。このような各プリズムシートの可変は、各プリズムシートを発光素子10に対して同一面で回転させることで可能である。また、各プリズムシートの少なくとも凸部を柔軟な材料で形成しておき、物理的な力や電気的な作用によって傾斜・変形させることによっても可能である。
【0026】
上記のような各プリズムシートを可変可能にする方法は、前記液晶フィルムシートや、微細な光反射性物質を一定方向に配列させた透明フィルムシート、さらには個別に駆動可能なマイクロミラーを配列させた素子に対しても適用可能である。
【0027】
本発明においては、電界発光型素子が有機EL素子であることが好ましい。
有機EL素子は、発光する化合物(発光材料)を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子である。本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
ここで、正孔輸送層には正孔注入層、電子阻止層の概念も含まれる。
【0029】
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0030】
本発明においては、有機EL素子が白色発光性であることが好ましい。本発明において白色とは、CIE1931表色系の色度でx=0.33±0.07、y=0.33±0.07の領域内にあることである。
【0031】
発光層は、少なくとも発光色の異なる2種以上の発光材料を含有していることが好ましい。発光層に含有される発光材料の最大発光ピーク波長が、430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm及び580〜640nmの4区分から選ばれる少なくとも2つであることが好ましい。発光層は単一層でも、複数の発光層からなる発光層ユニットを形成していてもよい。発光層が複数ある場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。発光層が単一層であって、複数の、好ましくは3種以上の発光材料を含有する態様は、好ましい白色を再現することができ、経時での白色色調安定性が高いので、特に好ましい。
【0032】
本発明における発光層の膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから10〜50nmである。なお、本発明でいうところの発光層の膜厚の総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、該中間層も含む膜厚である。
【0033】
個々の発光層の膜厚としては1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは1〜20nmの範囲に調整することである。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
【0034】
本発明は、米国特許第6661029、6841949、6312836、6287712、6210814、5773130号各公報に示されるように、発光素子がその発光色を調整できるものに、適用することもできる。
【0035】
発光層の作製には、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
【0036】
本発明においては、各発光層には複数の発光材料を混合してもよく、また燐光発光材料と蛍光発光材料を同一発光層中に混合して用いてもよい。本発明においては、発光層の構成として、ホスト化合物、発光材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0037】
本発明の有機EL素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更に好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0038】
本発明に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0039】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、なお且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0040】
本発明に係る発光材料としては、燐光発光材料(燐光性化合物、燐光発光性化合物等ともいう)を用いることが好ましい。
【0041】
本発明に係る燐光発光材料は励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
【0042】
上記燐光量子収率は第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係る燐光発光材料は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0043】
燐光発光材料は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に係る燐光発光材料としては、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0044】
燐光発光材料として用いられる化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0045】
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0046】
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0047】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0048】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0049】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0050】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0051】
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0052】
本発明の有機EL素子に係る支持基板(以下、基体、基盤、基材、支持体等ともいう)として特に好ましいのは、透明でフレキシブル性を有する樹脂フィルムである。
【0053】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド皮膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(40℃、90%RH)が0.01g/m2・day・atm以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更にはJIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度(20℃、100%RH)が10-3g/m2/day以下、水蒸気透過度が10-3g/m2/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、前記の水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/m2/day以下であることが更に好ましい。
【0054】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0055】
本発明に、燐光発光材料を含む白色発光型有機EL素子を適用することによって、低駆動電圧電流で、発光効率が高く、分光発光特性に優れ、長寿命の面状光源を提供することができる。また、指向性機能フィルムと組み合わせた時には、その分光発光特性が優れていることから、指向性に角度を付けても、白色色調に変化が少ない優れた面状光源を提供することができる。
<実施例>
1)自動車室内照明用
図7及び図8は、面状光源1を自動車の室内照明に用いた例である。図7は、自動車の側面、略中央に位置する支柱であるセンターピラーの内側に面状光源1を貼り付けた例である。図8は、ドア内部に面状光源1を貼り付けた例である。本発明に係る指向性射出光を発する面状光源1は、その薄さを利用して自動車室内照明灯に適用できる。光源設置用の空間がほとんど不要であるので、室内の場所を選ばずに貼り付け設置が可能である。また、照明が必要な任意の場所に、不定形で広い面積にわたって設置できる。指向性を有するので、夜間に、ドライバーへの影響を最小限にして、後部座席を有効に照明できる。
2)局所照明用
図9及び図10は、面状光源1を指向性を利用して局所照明に用いた例である。図9は、例えば読書、作業用の照明として、机、天井等に面状光源1を貼り付けた例である。図10は、車両、航空機、船舶などの個人用の読書等の照明として用いた例であり、図10(a)は角形の面状光源1を、図10(b)は円形の面状光源1を、用いた例である。指向性の方向が可変であることによって、その使い勝手が大幅に向上する。前述のプリズムシートを移動することにより、照明位置を変えることができる。前記プリズムシートの指向性は、手動で可変させてもよいが、例えば図10(a)の場合には図10(c)に示すカーソルレバー方式式或いは図10(d)に示すタッチパネル方式等を用い矢印X、Y方向に自動可変とすることもできる。また、図10(b)の場合には図10(e)に示すようにカーソルレバー方式等を用い、前記プリズムシートを自動回転させてもよい。
3)装飾壁面
図11のように、面状光源1は、その薄さと指向性を利用して装飾壁面に適用できる。指向性機能フィルムのパターンを任意にデザインすることによって、光の方向を設計できるので、観察者の位置によってパターンが変化するような興味深い装飾壁面を形成できる。指向性機能フィルム(20a、20b)のみを張り替えることによって、異なったパターンの装飾壁面に容易に変更できるので、店舗などの模様替えに最適である。
4)擬似間接照明
図12は間接照明の概念図である。間接照明とは、光源からの光を物体に一旦照射し、その反射光を利用するものであるが、従来は、図12(b)に示すように、電球光源自体を隠す必要があるために、多くの設置空間を必要としてしまう。
【0056】
しかしながら、面状光源1は、図12(a)に示すように、その薄さと指向性を利用して多くの設置空間を必要とせずに、擬似間接照明として用いることができる。指向性出射光を発する面状光源1において、その指向性が連続的に変化するように指向性機能フィルムのパターンを設計することによって、発光素子は均一発光であっても、観察者の位置によってグラデーションが形成されているように見えるので、あたかも間接照明によって照らされた壁面のように感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る面状光源の構成図である。
【図2】ボトム型プリズムシートの例を示す図である。
【図3】プリズムシートと集光シートを組み合わせた例を示す図である。
【図4】プリズムシートと集光シートを組み合わせた例を示す図である。
【図5】図3及び図4の例の配光特性分布を示す図である。
【図6】ボトム型プリズムシートの例を示す図である。
【図7】面状光源を自動車の室内照明に用いた例を示す図である。
【図8】面状光源を自動車の室内照明に用いた例を示す図である。
【図9】面状光源を局所照明に用いた例を示す図である。
【図10】面状光源を局所照明に用いた例を示す図である。
【図11】面状光源を装飾壁面に用いた例を示す図である。
【図12】面状光源を擬似間接照明に用いた例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 面状光源
10 発光素子
20 指向性機能フィルム
21、51 ボトム型プリズムシート
31、41 プリズムシート
32、42 集光シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性出射光を発する面状光源及びそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から特定の場所を照明するために出射光に指向性を持たせた照明装置が用いられている。例えば、読書のためにある本の近傍のみを照明するライト、飛行機の座席毎にある部分のみを照明する機内灯、車両のある部分のみを照明する室内灯等の照明装置がある。
【0003】
これらの局所的な照明には、電球や蛍光灯灯の光源と凹面鏡を組み合わせた電球照明装置が用いられてきている。しかしながら、前記電球光源はその形状や大きさから、設置する壁面や天井をくりぬいて設置するか、壁面や天井から出っ張らせて設置せざるを得なかった。このため、設計やデザインに制限が生じた。
【0004】
上記に対し、近年一般的に知られるようになった面状光源は、形状が前記電球光源に対し薄くできること等形状や大きさから照明への利用が期待されている。しかしながら、エレクトロルミネッセンス(電界発光素子)に代表される面状光源は、その発光原理上、出射される光は拡散光で有り、面に垂直な方向を主とした出射光である。そのため、面状光源の法線に対して5°以上の指向性角度を有する出射光を持たせた照明装置が望まれてきている。更には、その角度や方向が可変である照明装置が望まれてきている。
【0005】
前記出射光の指向性化について、透明な導光板の側面に配された線状の光源から導光板内に導入した光束を、一方の面がマイクロレンズ面であり、もう一方の面には微小突起の配列が形成された光線指向性化シートを用いて、面状光源の法線方向にのみ指向性化する面状光源が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−39118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は光線指向性化シートを用い、出射光を指向性化するものであるが、面に垂直な方向を主とした指向性である。指向性に角度を持たせたり指向性の方向を変えること、また同一光源内で指向性を複数方向に変化させることは困難である。
【0007】
しかしながら、面状光源を局所的な照明として用いる場合は、面に垂直な方向以外にも指向性角度を持たせること、自在に照明位置を変更できるように指向性の方向が可変であることが求められる。また、装飾を兼ねた照明として用いる場合には、同一光源内で指向性を複数方向に変化させられることが好ましい。
【0008】
面状光源の面に垂直な方向以外にも指向性を持たせることについて、研究者らは研究を行い、透明プラスチックの光屈折板(例えば、車等のテールランプのカバーのような)等で試みたが、数mm単位の光屈折板を重ねただけでは光損失が大きく、実用的でないという結論に達した。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みなされたもので、光損失が小さく、目的の角度や方向に指向性を持たせることができる面状光源を提供することを目的とする。更に、前記指向性はその角度や方向が可変である面状光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基板上に電極と発光材料層を有する電界発光型素子を含み構成される面状光源において、該面状光源が、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする面状光源。
2.前記電界発光型素子の形状はシート状であるとともに、指向性機能フィルムを含み構成されることを特徴とする1に記載の面状光源。
3.前記指向性機能フィルムが、ボトム型プリズムシートであることを特徴とする2に記載の面状光源。
4.前記ボトム型プリズムシートのプリズムが斜角錐台形または斜円錐台形であることを特徴とする3に記載の面状光源。
5.前記ボトム型プリズムシートのプリズム部が柔軟な材質からなり、該プリズム部を変形させることによって指向性角度が可変できることを特徴とする3または4に記載の面状光源。
6.前記指向性機能フィルムが、2つ以上のプリズムシートの組合せからなることを特徴とする2乃至5の何れか1項に記載の面状光源。
7.前記シート状の電界発光型素子に対して、前記指向性機能フィルムを重ね合わせた状態で面方向に回転させることによって、指向性の方向が可変できることを特徴とする2乃至6の何れか1項に記載の面状光源。
8.前記電界発光型素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする1乃至7の何れか1項に記載の面状光源。
9.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、リン光発光型であることを特徴とする8に記載の面状光源。
10.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、白色発光性であることを特徴とする8または9に記載の面状光源。
11.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性型照明装置。
12.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性可変型照明装置。
13.1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする擬似間接型照明装置。
【発明の効果】
【0011】
上記により、面状光源の出射光に指向性を持たせることができるため、目的の角度や方向に出射光を照射することができる。また、出射光の指向性の角度や方向が可変とすることができるため、設置場所の自由度が大きくなり、広い用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明の面状光源は、シート状の電界発光素子と指向性機能を有するフィルムシートである指向性機能フィルムを含み構成される。シート状の発光素子としては、透明樹脂を使用した導光板若しくは拡散板の端面から、冷陰極管や発光ダイオード等の光源からの光を入射し、導光板若しくは拡散板の表面から光を出射する方式、電界発光型素子であるエレクトロルミネッセンス(EL)から光を出射する方式等がある。本発明は、シート状の発光素子として前記電界発光型素子を用いたものである。
【0014】
エレクトロルミネッセンスは、発光素子の薄さの点、省電力等位から好適であり、その中でも、その基板がフレキシブルなプラスチックフィルムからなる有機EL素子が最も好ましい。
【0015】
図1は、本発明に係る面状光源の構成図である。面状光源1は電界発光型素子(以下、発光素子とも略す)10と指向性機能フィルム20を有し構成される。本実施の形態では、発光素子10として有機EL素子が用いられる。
【0016】
本発明において指向性とは、面状光源の法線に対して、0°から5°刻みで±60°までの輝度を測定し、その最大輝度の角度をもって、指向性角度と定義する。輝度の測定には、分光放射輝度計(例えば、CS−1000(コニカミノルタセンシング社製))等を用いることができる。
【0017】
本発明の面状光源は、その法線に対して5°以上の角度の指向性のある出射光を発するものであるが、その角度は好ましくは10°以上、特に好ましくは20°以上45°以下である。また輝度の分布は、法線を含む面において左右非対称であることが好ましい。
【0018】
指向性機能フィルム20としては、特開2004−127746号公報、特開2005−55481号公報に示されるような、表面に微細な凹凸構造を有する透明プリズムシートを、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発するように加工したものが好ましいが、液晶フィルムシートや、微細な光反射性物質を一定方向に配列させた透明フィルムシート、さらには個別に駆動可能なマイクロミラーを配列させた素子を用いることもできる。
【0019】
特に本発明において、かかる指向性角度を達成するための最も有効なものは、前記プリズムシートの中でも、特開2007−180001号公報の図1〜9に示されるような、プリズムシート(本発明では、ボトム型プリズムシートという)から構成されるものを、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発するように、凸部の中心を法線に対して傾斜させたものである。
【0020】
ボトム型プリズムシートは、基材表面に形成した凸部を、発光素子の光射出面側に配置したことを特徴とする。その凸部のピッチは、10〜500μm、好ましくは20〜200μmであり、凸部の高さは3〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
【0021】
図2及び図6はボトム型プリズムシートの例を示す図である。図2(a)及び図6は側面から見た図であり、図2(b)は、図2(a)に示すボトム型プリズムシート21を矢印A方向から見た図である。ボトム型プリズムシート21、51の凸部211、511を発光素子10の光射出面側に配置したもので、凸部211、511の側面部212、213、512、513をそれぞれの組合せが異なる角度になるように傾斜させて、光の指向角度を調整することが出来る。本実施の形態では凸部211、511は斜円錐台形状としているが、これに限定されるものではなく、斜角錐台形状でもよい。本発明においては、凸部が斜円錐台形状が最も好ましい。
【0022】
本発明の指向性を達成する他の有効な例としては、発光素子と2つ以上のプリズムシートの組合せからなる構成が挙げられる。このプリズムシートの組合せからなる構成を用いる場合は、最外部に設置されるプリズムシートは、その凸部方向を法線に対して角度を持たせた非対称構造とすることが好ましい。
【0023】
図3及び図4は、表面に微細な凹凸構造を有するプリズムシート31、41と、もう1種のプリズムシート32、42を組み合わせた例である。面状光源1の指向性としては、1方向への指向性に限定されるものではなく、その使用目的や用途により、2以上の方向への指向性を有することもできる。例えば、図3は1方向の指向性を有する例であり、図4は2方向の指向性を有する例である。図5(a)は図3の、図5(b)は図4の例の配光特性分布を示す図である。
【0024】
また、前記指向性を、出射光が集光してスポットライトのように機能するようにすることもできる。図6は、出射光を集光させる例である。この場合、プリズムシート51の凸部511の側面部512の傾斜を位置によって異ならせ、フレネルレンズのような機能を発揮させ、任意の指向性角度に設計することにより達成される。
【0025】
面状光源1は、指向性角度や方向を固定した状態で用いてもよいが、設置された面状光源1の指向性角度や方向が、ユーザーによって可変であることも好ましい形態である。指向性の可変は、指向性を有する面状光源1全体を、指向性が可変できるように可動可能に設置することで達成できる。また、発光素子10に対して、ボトム型プリズムシート21,51を可変可能に構成したり、プリズムシート31、41を可変可能に構成したりすることによっても達成できる。(以下、ボトム型プリズムシート21,51、プリズムシート31、41を総称してプリズムシートとともいう)。このような各プリズムシートの可変は、各プリズムシートを発光素子10に対して同一面で回転させることで可能である。また、各プリズムシートの少なくとも凸部を柔軟な材料で形成しておき、物理的な力や電気的な作用によって傾斜・変形させることによっても可能である。
【0026】
上記のような各プリズムシートを可変可能にする方法は、前記液晶フィルムシートや、微細な光反射性物質を一定方向に配列させた透明フィルムシート、さらには個別に駆動可能なマイクロミラーを配列させた素子に対しても適用可能である。
【0027】
本発明においては、電界発光型素子が有機EL素子であることが好ましい。
有機EL素子は、発光する化合物(発光材料)を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子である。本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
ここで、正孔輸送層には正孔注入層、電子阻止層の概念も含まれる。
【0029】
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0030】
本発明においては、有機EL素子が白色発光性であることが好ましい。本発明において白色とは、CIE1931表色系の色度でx=0.33±0.07、y=0.33±0.07の領域内にあることである。
【0031】
発光層は、少なくとも発光色の異なる2種以上の発光材料を含有していることが好ましい。発光層に含有される発光材料の最大発光ピーク波長が、430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm及び580〜640nmの4区分から選ばれる少なくとも2つであることが好ましい。発光層は単一層でも、複数の発光層からなる発光層ユニットを形成していてもよい。発光層が複数ある場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。発光層が単一層であって、複数の、好ましくは3種以上の発光材料を含有する態様は、好ましい白色を再現することができ、経時での白色色調安定性が高いので、特に好ましい。
【0032】
本発明における発光層の膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから10〜50nmである。なお、本発明でいうところの発光層の膜厚の総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、該中間層も含む膜厚である。
【0033】
個々の発光層の膜厚としては1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは1〜20nmの範囲に調整することである。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
【0034】
本発明は、米国特許第6661029、6841949、6312836、6287712、6210814、5773130号各公報に示されるように、発光素子がその発光色を調整できるものに、適用することもできる。
【0035】
発光層の作製には、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
【0036】
本発明においては、各発光層には複数の発光材料を混合してもよく、また燐光発光材料と蛍光発光材料を同一発光層中に混合して用いてもよい。本発明においては、発光層の構成として、ホスト化合物、発光材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0037】
本発明の有機EL素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。更に好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0038】
本発明に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0039】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、なお且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0040】
本発明に係る発光材料としては、燐光発光材料(燐光性化合物、燐光発光性化合物等ともいう)を用いることが好ましい。
【0041】
本発明に係る燐光発光材料は励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
【0042】
上記燐光量子収率は第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係る燐光発光材料は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0043】
燐光発光材料は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に係る燐光発光材料としては、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0044】
燐光発光材料として用いられる化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0045】
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0046】
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0047】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0048】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0049】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0050】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0051】
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0052】
本発明の有機EL素子に係る支持基板(以下、基体、基盤、基材、支持体等ともいう)として特に好ましいのは、透明でフレキシブル性を有する樹脂フィルムである。
【0053】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド皮膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(40℃、90%RH)が0.01g/m2・day・atm以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更にはJIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度(20℃、100%RH)が10-3g/m2/day以下、水蒸気透過度が10-3g/m2/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、前記の水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/m2/day以下であることが更に好ましい。
【0054】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0055】
本発明に、燐光発光材料を含む白色発光型有機EL素子を適用することによって、低駆動電圧電流で、発光効率が高く、分光発光特性に優れ、長寿命の面状光源を提供することができる。また、指向性機能フィルムと組み合わせた時には、その分光発光特性が優れていることから、指向性に角度を付けても、白色色調に変化が少ない優れた面状光源を提供することができる。
<実施例>
1)自動車室内照明用
図7及び図8は、面状光源1を自動車の室内照明に用いた例である。図7は、自動車の側面、略中央に位置する支柱であるセンターピラーの内側に面状光源1を貼り付けた例である。図8は、ドア内部に面状光源1を貼り付けた例である。本発明に係る指向性射出光を発する面状光源1は、その薄さを利用して自動車室内照明灯に適用できる。光源設置用の空間がほとんど不要であるので、室内の場所を選ばずに貼り付け設置が可能である。また、照明が必要な任意の場所に、不定形で広い面積にわたって設置できる。指向性を有するので、夜間に、ドライバーへの影響を最小限にして、後部座席を有効に照明できる。
2)局所照明用
図9及び図10は、面状光源1を指向性を利用して局所照明に用いた例である。図9は、例えば読書、作業用の照明として、机、天井等に面状光源1を貼り付けた例である。図10は、車両、航空機、船舶などの個人用の読書等の照明として用いた例であり、図10(a)は角形の面状光源1を、図10(b)は円形の面状光源1を、用いた例である。指向性の方向が可変であることによって、その使い勝手が大幅に向上する。前述のプリズムシートを移動することにより、照明位置を変えることができる。前記プリズムシートの指向性は、手動で可変させてもよいが、例えば図10(a)の場合には図10(c)に示すカーソルレバー方式式或いは図10(d)に示すタッチパネル方式等を用い矢印X、Y方向に自動可変とすることもできる。また、図10(b)の場合には図10(e)に示すようにカーソルレバー方式等を用い、前記プリズムシートを自動回転させてもよい。
3)装飾壁面
図11のように、面状光源1は、その薄さと指向性を利用して装飾壁面に適用できる。指向性機能フィルムのパターンを任意にデザインすることによって、光の方向を設計できるので、観察者の位置によってパターンが変化するような興味深い装飾壁面を形成できる。指向性機能フィルム(20a、20b)のみを張り替えることによって、異なったパターンの装飾壁面に容易に変更できるので、店舗などの模様替えに最適である。
4)擬似間接照明
図12は間接照明の概念図である。間接照明とは、光源からの光を物体に一旦照射し、その反射光を利用するものであるが、従来は、図12(b)に示すように、電球光源自体を隠す必要があるために、多くの設置空間を必要としてしまう。
【0056】
しかしながら、面状光源1は、図12(a)に示すように、その薄さと指向性を利用して多くの設置空間を必要とせずに、擬似間接照明として用いることができる。指向性出射光を発する面状光源1において、その指向性が連続的に変化するように指向性機能フィルムのパターンを設計することによって、発光素子は均一発光であっても、観察者の位置によってグラデーションが形成されているように見えるので、あたかも間接照明によって照らされた壁面のように感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る面状光源の構成図である。
【図2】ボトム型プリズムシートの例を示す図である。
【図3】プリズムシートと集光シートを組み合わせた例を示す図である。
【図4】プリズムシートと集光シートを組み合わせた例を示す図である。
【図5】図3及び図4の例の配光特性分布を示す図である。
【図6】ボトム型プリズムシートの例を示す図である。
【図7】面状光源を自動車の室内照明に用いた例を示す図である。
【図8】面状光源を自動車の室内照明に用いた例を示す図である。
【図9】面状光源を局所照明に用いた例を示す図である。
【図10】面状光源を局所照明に用いた例を示す図である。
【図11】面状光源を装飾壁面に用いた例を示す図である。
【図12】面状光源を擬似間接照明に用いた例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 面状光源
10 発光素子
20 指向性機能フィルム
21、51 ボトム型プリズムシート
31、41 プリズムシート
32、42 集光シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極と発光材料層を有する電界発光型素子を含み構成される面状光源において、該面状光源が、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする面状光源。
【請求項2】
前記電界発光型素子の形状はシート状であるとともに、指向性機能フィルムを含み構成されることを特徴とする請求項1に記載の面状光源。
【請求項3】
前記指向性機能フィルムが、ボトム型プリズムシートであることを特徴とする請求項2に記載の面状光源。
【請求項4】
前記ボトム型プリズムシートのプリズムが斜角錐台形または斜円錐台形であることを特徴とする請求項3に記載の面状光源。
【請求項5】
前記ボトム型プリズムシートのプリズム部が柔軟な材質からなり、該プリズム部を変形させることによって指向性角度が可変できることを特徴とする請求項3または4に記載の面状光源。
【請求項6】
前記指向性機能フィルムが、2つ以上のプリズムシートの組合せからなることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項7】
前記シート状の電界発光型素子に対して、前記指向性機能フィルムを重ね合わせた状態で面方向に回転させることによって、指向性の方向が可変できることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項8】
前記電界発光型素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、リン光発光型であることを特徴とする請求項8に記載の面状光源。
【請求項10】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、白色発光性であることを特徴とする請求項8または9に記載の面状光源。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性型照明装置。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性可変型照明装置。
【請求項13】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする擬似間接型照明装置。
【請求項1】
基板上に電極と発光材料層を有する電界発光型素子を含み構成される面状光源において、該面状光源が、その法線に対して5°以上の指向性角度のある出射光を発することを特徴とする面状光源。
【請求項2】
前記電界発光型素子の形状はシート状であるとともに、指向性機能フィルムを含み構成されることを特徴とする請求項1に記載の面状光源。
【請求項3】
前記指向性機能フィルムが、ボトム型プリズムシートであることを特徴とする請求項2に記載の面状光源。
【請求項4】
前記ボトム型プリズムシートのプリズムが斜角錐台形または斜円錐台形であることを特徴とする請求項3に記載の面状光源。
【請求項5】
前記ボトム型プリズムシートのプリズム部が柔軟な材質からなり、該プリズム部を変形させることによって指向性角度が可変できることを特徴とする請求項3または4に記載の面状光源。
【請求項6】
前記指向性機能フィルムが、2つ以上のプリズムシートの組合せからなることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項7】
前記シート状の電界発光型素子に対して、前記指向性機能フィルムを重ね合わせた状態で面方向に回転させることによって、指向性の方向が可変できることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項8】
前記電界発光型素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の面状光源。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、リン光発光型であることを特徴とする請求項8に記載の面状光源。
【請求項10】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、白色発光性であることを特徴とする請求項8または9に記載の面状光源。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性型照明装置。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする指向性可変型照明装置。
【請求項13】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の面状光源を用いたことを特徴とする擬似間接型照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−117195(P2009−117195A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289421(P2007−289421)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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