説明

面状発光装置、照明装置、及び面状発光装置の製造方法

【課題】輝度の均一化が可能な面状発光装置を提供する。
【解決手段】第2の面状発光装置30とともに駆動される第1の面状発光装置20は、透明基板と、透明基板の一主面に形成され面状陽極及び面状陰極に有機層が挟まれた複数の有機EL素子(有機EL部)とを有する。有機EL部は、他の面状発光装置(第2面状発光装置30)に含まれる有機EL素子と直列に接続されている。そして、各有機EL素子の発光領域H1,H2は同一面積に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状発光装置、照明装置、及び面状発光装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いた面状発光装置は、照明等の用途に提案されている。この発光装置は、一対の電極間に有機発光層を含む有機EL層を挟み、一対の電極間に印加される電圧に応じて有機EL層に流れる電流により、有機EL層が発光する。このような面状発光装置を用いた照明装置として、面状発光装置を有するモジュール(文献では、パネル発光ユニット)を構成し複数のモジュールを相互に接続したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−536708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した発光装置の輝度は、有機EL素子(有機EL層)における電気的特性(端子間の抵抗値、端子間電圧等)に依存する。有機EL素子の電気的特性は、その素子形状に依存する。従って、例えば、形状の異なる有機EL素子を有する発光装置(モジュール)を含む照明装置では、各発光装置の明るさにばらつきが生じる。複数の発光装置の明るさを均一にする方法の一つは、各発光素子と直列に抵抗素子を接続し、その抵抗素子の値を各発光装置の電気的特性に応じて調整することである。しかし、この方法は、各発光装置の電気的特性の測定と、その測定結果に応じて抵抗値を調整する処理が必要となり、発光装置の製造に手間を要する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、輝度を均一化することができる面状発光装置、照明装置、及び面状発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の面状発光装置は、他の面状発光装置とともに駆動される面状発光装置であって、透明基板と、前記透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第1有機EL素子と、を備え、前記第1有機EL素子の発光領域は、前記他の面状発光装置に含まれ前記第1有機EL素子と直列に接続される第2有機EL素子の発光領域と同一面積にて形成される。
【0007】
この面状発光装置において、前記複数の第1有機EL素子のうちの少なくとも2つを直列に接続する接続基板を備えることが好ましい。
この面状発光装置において、前記透明基板は、平面視矩形状に形成され、平面視矩形状に形成された前記複数の第1有機EL素子が前記透明基板の一つの辺に沿った方向に配列され、前記複数の第1有機EL素子の発光領域は、互いに同一面積にて形成され、隣り合う2つの前記第1有機EL素子が有する一対の面状電極のうちの前記透明基板の一主面に形成された電極間の隙間の幅が50μm〜100μmの範囲内で形成されることが好ましい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、第1の透明基板と、前記第1の透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第1有機EL素子と、を備え、前記複数の第1有機EL素子は、それぞれの第1の発光領域の面積が互いに等しく設定された第1の面状発光装置と、第2の透明基板と、前記第2の透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第2有機EL素子と、を備え、前記複数の第2有機EL素子は、それぞれの第2の発光領域の面積が互いに等しく設定された第2の面状発光装置と、を備え、前記第1有機EL素子に設定された発光領域と、前記第2有機EL素子に設定された発光領域は、互いに同一面積にて形成され、前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子は、互いに直列に接続される。
【0009】
この照明装置において、前記第1及び第2の面状発光装置は、互いに形状の異なる前記第1及び第2の発光領域を備えることが好ましい。
上記課題を解決するために、本発明の面状発光装置の製造方法は、ガラス基板の一主面に透明導電膜を形成する工程と、前記透明導電膜を分割して互いに離間した複数の第1の面状電極を形成する工程と、前記複数の第1の面状電極を覆うように発光性の有機材料を含む有機材料膜を形成する工程と、前記有機材料膜を覆うように導電膜を形成する工程と、前記第1の面状電極、有機材料膜及び導電膜を封止部材により封止する工程と、前記有機材料膜を前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて分割して複数の有機層を形成する工程と、前記導電膜を前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて分割して複数の第2の面状電極を形成する工程と、を含む。
【0010】
この面状発光装置の製造方法において、前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて、前記有機材料膜及び前記導電膜を同時に分割して前記複数の有機層及び前記複数の第2の面状電極を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、輝度の均一化が可能な面状発光装置、照明装置、及び面状発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の照明装置の概要構成図である。
【図2】第1の面状発光装置の(a)背面図、(b)一部概略断面図である。
【図3】第2の面状発光装置の(a)背面図、(b)一部概略断面図である。
【図4】第1の面状発光装置の端部拡大図である。
【図5】第2の面状発光装置の端部拡大図である。
【図6】(a)(b)は第1及び第2の面状発光装置の電気的な接続構成を示す模式図である。
【図7】ガラス基板の概略構成図である。
【図8】(a)(b)は面状発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】(a)(b)は面状発光装置の製造方法を示す背面図である。
【図10】(a)(b)は面状発光装置の製造方法を示す背面図である。
【図11】(a)(b)は面状発光装置の製造方法を示す背面図である。
【図12】(a)〜(c)は照明装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態を図1〜図11に従って説明する。なお、添付図面は、構造の概略を説明するためのものであり、実際の大きさを表していない。
図1に示すように、照明装置は、支持ベース1に第1の有機ELモジュール2が取着されている。第1の有機ELモジュール2の左右両側には、第1の有機ELモジュール2と形状の異なる一対の第2の有機ELモジュール3が取着されている。
【0014】
支持ベース1は、基台1aに設けられた接続部(図示略)が接続ケーブル1bを介して外部電源(例えば、交流電源)に接続される。また、基台1aには、外部電源に基づいて第1及び第2の有機ELモジュール2,3の第1及び第2の面状発光装置20,30に電力を供給する駆動回路1c(整流回路)が設けられている。支持ベース1と第1の有機ELモジュール2とは互いの接続部が電気的に接続されており、外部電源からの電力が駆動回路1cにより変換され第1及び第2の面状発光装置20,30の有機EL素子に供給される。
【0015】
第1の有機ELモジュール2は、平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の第1の面状発光装置20を有し、この面状発光装置20の各辺に沿ってフレーム2aが取り付けられている。フレーム2aは、例えば樹脂により形成されている。
【0016】
第2の有機ELモジュール3は、平面視矩形状(図示例では、平面視長方形状)の第2の面状発光装置30を有し、この面状発光装置30の各辺に沿ってフレーム3aが取り付けられている。第1及び第2の有機ELモジュール2,3の各フレーム2a,3aには、電力の供給を行うための配線ダクトやプラグ等の接続部(図示略)が設けられており、互いに機械的及び電気的に接続可能に構成されている。第1及び第2の面状発光装置20,30に設けられた有機EL素子は、フレーム2a,3aの接続部を介して直列に接続されている。
【0017】
図2(a)に示すように、第1の面状発光装置20は、平面視矩形状の透明基板21を有している。透明基板21の一主面には、有機EL部22が形成されている。有機EL部22は、平面視矩形状(図示例では、長手方向が面状発光装置20の上下方向となる平面視長方形状)の有機EL素子22a〜22fを有する。有機EL素子22a〜22fは、透明基板21の左右方向に沿って有機EL素子22a〜22fの順に隣接して形成されている。有機EL部22の一主面には、平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)のカバーガラス23を有する。カバーガラス23は、透明基板21の一主面に形成された有機EL素子22a〜22fを封止する封止部材であり、透明基板21の一主面に例えば非導電性接着剤により固着されている。また、透明基板21の一主面には、上下方向両端部分に接続基板24が設けられている。接続基板24は、透明基板21の一辺に沿って延びるように形成されている。有機EL素子22a〜22fは、接続基板24により互いに電気的に接続されている。
【0018】
図2(b)に示すように、有機EL素子22a〜22fは、透明基板21の主面のうち、カバーガラス23が固着されていない面(非接着面)を光出射面(発光面)として用いるものである。カバーガラス23は、透明基板21の上下方向中央に固着されている。透明基板21の上下方向両端は、カバーガラス23から露出している。そして、接続基板24は、透明基板21の一主面においてカバーガラス23から露出した部分に設けられている。接続基板24は、導電性を有する接続部材(例えば、異方導電性フィルム(ACP:Anisotropic Conductive Film))25により透明基板21の一主面に圧着されている。接続基板24の一主面(非接着面)には、複数の接続端子(図示略)が形成され、この接続端子が有機EL素子22a〜22fの陽極及び陰極の何れかと接続される。
【0019】
また、図3(a)(b)に示すように、第2の面状発光装置30は、平面視矩形状の透明基板31を有している。透明基板21,31は例えばガラス基板である。なお、透明基板21,31にガラス基板以外、例えば透明な樹脂フィルム基板を用いてもよい。透明基板31の一主面には、有機EL部32が形成されている。有機EL部32は、平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の有機EL素子32a〜32cを有する。有機EL素子32a〜32cは、透明基板31の左右方向に沿って有機EL素子32a〜32cの順に隣接して形成されている。有機EL部32の一主面には、平面視矩形状(図示例では、平面視長方形状)のカバーガラス33が透明基板31に対して固着されている。各有機EL素子32a〜32cは、透明基板31の一主面に設けられた接続基板34により互いに電気的に接続されている。なお、接続基板34及び接続部材35は、接続基板24及び接続部材25と同じ構造であるため、説明を省略する。
【0020】
次に、有機EL素子22a〜22f及び有機EL素子32a〜32cの構成を説明する。
なお、図4に示す有機EL素子22b〜22fは有機EL素子22aと同じ構造であるため、有機EL素子22aについてその構造を説明し、有機EL素子22b〜22fに対して有機EL素子22aと同じ部材については同じ符号を付して示す。また、図5に示す有機EL素子32aの陽極給電部51、陰極給電部52、引出配線53及び給電部用補助電極54,55は、有機EL素子22aの陽極給電部41、陰極給電部42、引出配線43及び給電部用補助電極44,45と同じ部材で構成され大きさが異なる。従って、有機EL素子32aに対する説明を省略する。そして、有機EL素子32b,32cは有機EL素子32aと同じ構造であるため、有機EL素子32b,32cに対する説明を省略する。
【0021】
図2及び図4に示すように、有機EL素子22aの面状陽極26は、透明基板21の一主面側に、平面視矩形状(例えば平面視長方形状)に形成されている。面状陽極26は、例えば、ITO膜、IZO膜などの透明導電膜からなる。面状陽極26における透明基板21側と反対側の主面には、有機層27が形成されている。有機層27は、少なくとも発光層を含み、平面視矩形状(例えば、平面視長方形状)に形成されている。面状陰極28は、有機層27における面状陽極26側とは反対側の主面に、面状陽極26に対向し、平面視矩形状(例えば平面視長方形状)に形成されている。面状陰極28は、透明導電膜と比べて抵抗率が小さく仕事関数の小さな金属の膜、例えば、アルミニウム(Al)膜、マグネシウム(Mg)膜と銀(Ag)膜の積層膜である。有機EL素子22aは、有機層27における発光層が面状陽極26と面状陰極28との間に直流電圧を通電したときに発光するように構成されている。
【0022】
有機層27は、所望の発光色の光が得られる有機分子材料(有機材料)により形成された発光層と、発光層と面状陽極26との間に介在する正孔輸送層と、発光層と面状陰極28との間に介在する電子輸送層とを備えている。なお、有機層27の層構造は特に限定するものではなく、例えば、有機層27の所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにして正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造を採用するようにしてもよい。また、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、正孔輸送層と青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、透明基板21中に有機層27の発光層からの光によって励起されて発光層からの光に比べて長波長の光を放射する1ないし複数の蛍光体を含有させてもよく、発光層の発光色を青色、蛍光体の発光色を黄色とすれば、白色光を得ることが可能となる。また、有機層27は、正孔輸送層及び電子輸送層を設けずに発光層のみにより構成してもよい。
【0023】
図4に示すように、透明基板21の一主面において、透明基板21の上下方向の両端部には、その左右方向に延びる辺に沿って一対の陽極給電部41と、陽極給電部41の間に離間して設けられた陰極給電部42とが配設されている。陽極給電部41は、面状陽極26と電気的に接続されている。陰極給電部42は、面状陰極28から透明基板21の上下方向に沿って延設された引出配線43と電気的に接続されている。各給電部41,42は、面状陽極26と同一の材料により、平面視矩形状に形成されている。
【0024】
各給電部41,42の先端には、透明基板21の辺(図において上下にあって左右方向に延びる辺)に沿って延びる平面視矩形状の給電部用補助電極44,45がそれぞれ形成されている。これらの給電部用補助電極44,45は給電部41,42とそれぞれ電気的に接続されている。各給電部用補助電極44,45は、例えば、クロム(Cr)膜と金(Au)膜との積層膜により構成されている。なお、各給電部用補助電極44,45を、モリブデン(Mo)膜とAl膜とMo膜との積層膜により構成してもよい。
【0025】
上記した有機EL素子22a及び有機EL素子22b〜22fは、透明基板21の左右方向に並んで等間隔に形成されており、隣り合う2つの有機EL素子、例えば有機EL素子22a,22bにおいて、それぞれの面状陽極26間に隙間を形成する。この隙間は、透明基板21の上下方向に沿って形成される。隙間の幅は、例えば、50μmである。また、例えば隣り合う有機EL素子22a,22bにおいて、それぞれの有機層27及び面状陰極28は、上記した面状陽極26間の隙間の位置に応じて互いに離間している。同様に、有機EL素子32a〜32cは、透明基板31の左右方向に並んで等間隔に形成されており、各面状陽極36間に隙間(例えば、50μm)を形成して、有機層37及び面状陰極38がこの隙間の位置に応じて互いに離間している。
【0026】
また、有機EL素子22a〜22fにおいて、面状陽極26、有機層27及び面状陰極28が重なった部分を発光領域H1(図2(a)においてハッチングで示す領域)とする。そして、各有機EL素子22a〜22fの発光領域H1は互いに同一面積に設定されている。また、有機EL素子32a〜32cの発光領域H2(図3(a)にハッチングで示す領域)は、有機EL素子22a〜22fと同一面積となっている。従って、有機EL素子22a〜22f及び有機EL素子32a〜32cの発光領域H1,H2は同一面積に構成されている。
【0027】
次に、有機EL素子22a〜22f及び有機EL素子32a〜32cの電気的な接続構成について説明する。
有機EL素子22a〜22fは、各給電部41,42が給電部用補助電極44,45及び上記した接続部材25(図2(b)参照)を介して接続基板24の接続端子と電気的に接続されている。図6(a)に示すように、有機EL素子22a〜22fは、接続基板24により直列に接続されている。詳述すると、有機EL素子22aの面状陰極28は、接続基板24を介して有機EL素子22bの面状陽極26に接続されている。また、有機EL素子22bの面状陰極28は、接続基板24を介して有機EL素子22cの面状陽極26に接続されている。透明基板21の両端(図において左右両端)に形成された有機EL素子22a及び有機EL素子22fは、接続基板24により第1の有機ELモジュール2のフレーム2a(図1参照)に設けられた接続部に接続されている。
【0028】
また、有機EL素子32a〜32cは、各給電部51,52が給電部用補助電極54,55及び接続部材35(図3(b)参照)を介して接続基板34の接続端子と電気的に接続されている。図6(b)に示すように、有機EL素子32a〜32cは、接続基板34により直列に接続されている。有機EL素子32aの面状陰極38は、接続基板34を介して有機EL素子32bの面状陽極36に接続されている。有機EL素子32bの面状陰極38は、有機EL素子32cの面状陽極36に接続されている。透明基板31の両端に形成された有機EL素子32a及び有機EL素子32cは、第2の有機ELモジュール3のフレーム3aに設けられた接続部に接続されている。
【0029】
このように構成された有機EL素子22a〜22fは、支持ベース1(図1参照)の駆動回路1cから供給される電力により、個々の発光素子として発光する。また、有機EL素子32a〜32cは、有機EL素子22a〜22fと同様に、個々の発光素子として発光する。
【0030】
上記した第1及び第2の面状発光装置20,30は、例えば、図7に示すガラス基板61から作成される。例えば、ガラス基板61には、後述する有機EL素子66を有する透明基板21が複数個連設して形成されている。この透明基板21は、最終的に個々の透明基板21として切断位置Cで切り出される。
【0031】
次に、第1及び第2の面状発光装置20,30の製造方法について図8〜図11を用いて説明する。
なお、第1及び第2の面状発光装置20,30は同じ製造方法で形成可能であるため、第1の面状発光装置20についてその製造方法を説明し、第2の面状発光装置30に対する説明を省略する。また、図が煩雑になるのを避けるため、上記したガラス基板61上の面状発光装置20を1つ図示して説明する。
【0032】
まず、図9(a)に示すように、洗浄等の前処理(図8のステップ71)を施したガラス基板61の一主面に、例えば、スパッタリング法によりITO膜62を形成する(ステップ72)。次いで、ITO膜62に対して、例えばフォトリソグラフィ法により所望の電極を形成するためのレジストマスクを形成してエッチング加工を施す(ステップ73)。詳述すると、ITO膜62におけるガラス基板61側と反対側の主面に例えばフォトレストを塗布しレジスト膜63を形成する。
【0033】
次いで、レジスト膜63に対してフォトマスク(図示略)を用いて露光する。このフォトマスクは、面状陽極26、陽極給電部41及び陰極給電部42に対応する開口部を有する。現像したレジスト膜を用いてITO膜62に対してエッチング加工を施す。エッチング加工後にガラス基板61からレジスト膜63を剥離して、図9(b)に示すように、ガラス基板61の一主面には、左右方向に並んだ面状陽極26及び各給電部41,42が形成される。面状陽極26間には、隙間(例えば、50μm)が形成される。
【0034】
次いで、ガラス基板61に対して超音波洗浄等を施す(ステップ74)。そして、図10(a)に示すように、ガラス基板61上の面状陽極26を覆うように、有機材料膜64を例えば蒸着法や塗布法により形成する(ステップ75)。
【0035】
次いで、図10(b)に示すように、各給電部41,42の一主面に、給電部用補助電極44,45を例えばクロム(Cr)や金(Au)等を用いた蒸着法やスパッタ法などにより形成する(ステップ76)。そして、図11(a)に示すように、有機材料膜64を覆うように、上記した面状陰極28及び引出配線43を含む陰極用導電膜65を蒸着法やスパッタ法などを用いて形成する(ステップ77)。これにより、ガラス基板61の一主面に、面状陽極26、有機材料膜64及び陰極用導電膜65を含む有機EL素子66が形成される。
【0036】
次いで、図11(b)に示すように、ガラス基板61の一主面に、カバーガラス67を真空ラミネートして非導電性接着剤により固着し、有機EL素子66を封止する(ステップ78)。そして、有機EL素子66が複数形成されたガラス基板61を切断位置C(図7参照)にて切断して透明基板21が形成される(ステップ79)。
【0037】
次に、有機EL素子66を個々の有機EL素子22a〜22fに切断する手順(ステップ80)について説明する。
まず、上記した透明基板21上の有機EL素子66に対して電力を供給して点灯させる(ステップ80a)。この点灯状態において、面状陽極26間の隙間の位置に応じた有機材料膜64及び陰極用導電膜65の切断位置を検出する(ステップ80b)。そして、この切断位置に基づいて例えば電子ビーム、レーザなどを用いて有機材料膜64及び陰極用導電膜65を同時に切断し、個々の有機EL素子22a〜22fが形成された透明基板21が形成される(ステップ80c)。
【0038】
次いで、上記したステップ80cの処理により切断された各有機EL素子22a〜22fの切断検査(電気的検査等)を行う(ステップ80d)。そして、各有機EL素子22a〜22fを接続するように接続基板24を接続し(ステップ81)、所望の電気的及び光学的検査(ステップ82)を施して図4に示す第1の面状発光装置20が形成される。
【0039】
次に、照明装置の作用について説明する。
図12(a)に示すように、第1及び第2の有機ELモジュール2,3(面状発光装置20,30)は、支持ベース1の駆動回路1cの出力端子間に直列に接続されている。図12(b)に示すように、第1の有機ELモジュール2の有機EL素子22a〜22fは、接続端子間に直列に接続されている。また、図12(c)に示すように、第2の有機ELモジュール3の有機EL素子32a〜32cは、接続端子間に直列に接続されている。そして、各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの発光領域H1,H2は同一面積で形成されており、電気的抵抗がほぼ等しくなっている。従って、有機EL素子22a〜22f,32a〜32cにおける電流及び電圧を等しい値として各面状発光装置20,30における明るさを均一化することができる。
【0040】
また、図4及び図5に示すように、透明基板21,31の一主面に左右方向に並んで形成された有機EL素子22a〜22f,32a〜32cは、隣り合う2つの有機EL素子の面状陽極26,36間に隙間を形成する。この隙間は、面状発光装置20,30において、透明基板21,31の光出射面(発光面)側から見た場合の各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの境界部分となる。このような隙間の幅が広すぎる場合には、発光時に隙間に対応する部分が暗くなり境界部分が明確となってしまう。つまり、透明基板21,31の全面における明るさが不均一となる。一方で、隙間の幅が狭すぎる場合には、リーク電流の発生やエッチング不良といった不具合が生じる虞がある。本実施形態の面状発光装置20,30では、隙間の幅を例えば50μmとすることで、不具合の発生を低減して境界部分が暗くなるのを防ぐことができる。つまり、複数の有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを、1つの発光素子(有機EL部22,32)としてほぼ均一な明るさで発光させることができる。
【0041】
また、有機EL部22,32を、複数の有機EL素子22a〜22f,32a〜32cに分割して構成することにより、各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの発光領域H1,H2を小さくすることが可能となる。例えば、有機EL部22,32を一つの有機EL素子として構成した場合には、面状陽極26,36及び面状陰極28,38と有機層27,37とを含む発光領域H1,H2が広くなる。このような構成では、面状陽極26,36における電圧分布のばらつきを低減するために補助電極等が必要となってくる。一方で、本実施形態の有機EL部22,32では、発光領域H1,H2が小さい複数の有機EL素子22a〜22f,32a〜32cで構成することで、各面状陽極26,36における電圧分布のバラツキを低減し、上記したような補助電極等を不要とすることができる。
【0042】
また、各面状発光装置20,30の製造方法では、ガラス基板61の一主面に左右方向に並んだ面状陽極26,36を、この面状陽極26,36間に隙間を設けて形成する(ステップ73)。次いで、面状陽極26,36を含むガラス基板61の一主面に陰極用導電膜65及び有機材料膜64を形成する。そして、陰極用導電膜65及び有機材料膜64を面状陽極26,36の隙間の位置に応じて切断している。これにより、面状陽極26,36間の隙間を狭くした有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを容易に形成することができる。
【0043】
この実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)第2の面状発光装置30とともに駆動される第1の面状発光装置20は、透明基板21と、透明基板21の一主面に形成され面状陽極26及び面状陰極28に有機層27が挟まれた複数の有機EL素子22a〜22f(有機EL部22)とを有する。各有機EL素子22a〜22fの発光領域H1は、他の面状発光装置(第2の面状発光装置30)に含まれる有機EL素子32a〜32cの発光領域H2と同一面積に設定されている。そして、有機EL素子22a〜22fは、有機EL素子32a〜32cと直列に接続されている。これにより、有機EL素子22a〜22f,32a〜32cにおける電流及び電圧を等しい値として、第1の面状発光装置20と他の面状発光装置との明るさを均一化することができる。
【0044】
(2)第1及び第2の面状発光装置20,30は、有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを直列に接続する接続基板24,34を備えており、接続基板24,34を用いて各面状発光装置20,30における明るさを容易に均一化することができる。
【0045】
(3)平面視矩形状の透明基板21の一主面には、平面視矩形状の有機EL素子22a〜22fが透明基板21の左右方向に並んで形成されている。有機EL素子22a〜22fは、発光領域H1が互いに同一面積に形成され、隣り合う2つの有機EL素子の面状陽極26間の隙間が例えば50μmで形成されている。これにより、リーク電流等の不具合の発生を低減して境界部分が暗くなるのを防ぐことができる。つまり、複数の有機EL素子22a〜22fを、1つの発光素子(有機EL部22)としてほぼ均一な明るさで発光させることができる。
【0046】
(4)照明装置は、第1の面状発光装置20の有機EL素子22a〜22fに設定された発光領域H1と、第2の面状発光装置30の有機EL素子32a〜32cに設定された発光領域H2が互いに同一面積にて形成されている。そして、各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cが互いに直列に接続されている。これにより、各面状発光装置20,30における明るさを均一化することができる。また、発光領域H1,H2を同一面積として有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを直列に接続したことで、面状発光装置20,30を共通の電源を用いてほぼ均一な明るさで発光させることができる。
【0047】
(5)第1及び第2の面状発光装置20,30の発光領域H1,H2(面上陽極26,36、面状陰極28,38及び有機層27,37)が互いに異なる形状で構成されている。このような構成では、照明装置を、様々な形状の面状発光装置20,30を組み合わせて構成することができる。
【0048】
(6)面状発光装置20,30の製造方法は、ガラス基板61の一主面にITO膜62(透明導電膜)を形成し(ステップ72)、このITO膜62を分割(エッチング加工)して互いに離間した面状陽極26,36を形成する(ステップ73)。次いで、面状陽極26,36の一主面に有機材料膜64及び陰極用導電膜65を形成し(ステップ75,77)、カバーガラス67により有機EL素子66を封止する(ステップ78)。そして、陰極用導電膜65及び有機材料膜64を、面状陽極26,36の隙間の位置に応じて同時に切断する(ステップ80c)。これにより、面状陽極26,36間の隙間を狭くした有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを容易に形成することができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第1及び第2の有機ELモジュール2,3の数を適宜変更してもよい。
・各面状発光装置20,30及び各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの形状を適宜変更してもよい。
【0050】
・透明基板21の上下両端に設けた接続基板24の一方を省略してもよい。また、接続基板24,34を2以上の複数個設けてもよい。
・有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの接続は、接続基板24,34に限らず、例えば配線ケーブル等で互いに接続してもよい。
【0051】
・各有機EL素子22a〜22f,32a〜32cの極性(面上陽極26,36及び面状陰極28,38)を反対にして構成してもよい。
・外部電源として直流電源を用いてもよい。この場合、図11に示す駆動回路1cを、直流電源に対応するものとすることはいうまでもない。
【0052】
また、外部電源として、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子を駆動する電源装置を用いてもよい。このような電源装置は、所定の電流(例えば、300mA、350mA、600mA、700mA等)を出力するように設定されている。この出力電流に応じて発光領域H1,H2の面積を設定することにより、所望の光量で発光する有機EL素子(照明装置)を構成することができる。
【0053】
・上記実施形態において、面状陽極26,36間の隙間の幅は一例であり、適宜変更してもよい。この隙間の幅は、例えば50μm〜100μmが好ましい。このような範囲とすることで、切断面におけるリーク電流等の不具合を低減して、複数の有機EL素子22a〜22f,32a〜32cを、1つの発光素子(有機EL部22,32)としてほぼ均一な明るさで発光させることができる。
【0054】
・有機材料膜64及び陰極用導電膜65を、別工程でそれぞれ切断してもよい。
・第1及び第2の有機ELモジュール2,3を接続するフレーム2a,3a(接続部)の形状・構成等を適宜変更してもよい。
【0055】
・カバーガラス23,33に替えて樹脂により有機EL部22,32を封止するようにしてもよい。
・接続部材25(第2の面状発光装置30では、接続部材35)として、異方導電性フィルム以外を用いるようにしてもよい。例えば、半田により、給電用補助電極と接続用電極とを電気的に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
20…第1の面状発光装置、30…第2の面状発光装置、21,31…透明基板(第1の透明基板,第2の透明基板)、22,32…有機EL部、22a〜22f,32a〜32c,66…有機EL素子(第1有機EL素子,第2有機EL素子)、23,33…カバーガラス(封止部材)、24,34…接続基板、26,36…面状陽極(第1の面状電極)、27,37…有機層、28,38…面状陰極(第2の面状電極)、61…ガラス基板、62…ITO膜(透明導電膜)、64…有機材料膜、65…陰極用導電膜(導電膜)、H1,H2…発光領域(第1の発光領域,第2の発光領域)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の面状発光装置とともに駆動される面状発光装置であって、
透明基板と、前記透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第1有機EL素子と、を備え、
前記第1有機EL素子の発光領域は、前記他の面状発光装置に含まれ前記第1有機EL素子と直列に接続される第2有機EL素子の発光領域と同一面積にて形成された、
ことを特徴とする面状発光装置。
【請求項2】
前記複数の第1有機EL素子のうちの少なくとも2つを直列に接続する接続基板を備えたことを特徴とする請求項1に記載の面状発光装置。
【請求項3】
前記透明基板は、平面視矩形状に形成され、平面視矩形状に形成された前記複数の第1有機EL素子が前記透明基板の一つの辺に沿った方向に配列され、
前記複数の第1有機EL素子の発光領域は、互いに同一面積にて形成され、隣り合う2つの前記第1有機EL素子が有する一対の面状電極のうちの前記透明基板の一主面に形成された電極間の隙間の幅が50μm〜100μmの範囲内で形成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の面状発光装置。
【請求項4】
第1の透明基板と、前記第1の透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第1有機EL素子と、を備え、前記複数の第1有機EL素子は、それぞれの第1の発光領域の面積が互いに等しく設定された第1の面状発光装置と、
第2の透明基板と、前記第2の透明基板の一主面に形成され一対の電極間に挟まれた有機層を有する複数の第2有機EL素子と、を備え、前記複数の第2有機EL素子は、それぞれの第2の発光領域の面積が互いに等しく設定された第2の面状発光装置と、
を備え、
前記第1有機EL素子に設定された発光領域と、前記第2有機EL素子に設定された発光領域は、互いに同一面積にて形成され、
前記第1有機EL素子と前記第2有機EL素子は、互いに直列に接続される、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の面状発光装置は、互いに形状の異なる前記第1及び第2の発光領域を備えたことを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
ガラス基板の一主面に透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜を分割して互いに離間した複数の第1の面状電極を形成する工程と、
前記複数の第1の面状電極を覆うように発光性の有機材料を含む有機材料膜を形成する工程と、
前記有機材料膜を覆うように導電膜を形成する工程と、
前記第1の面状電極、有機材料膜及び導電膜を封止部材により封止する工程と、
前記有機材料膜を前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて分割して複数の有機層を形成する工程と、
前記導電膜を前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて分割して複数の第2の面状電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする面状発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記複数の第1の面状電極間の隙間の位置に応じて、前記有機材料膜及び前記導電膜を同時に分割して前記複数の有機層及び前記複数の第2の面状電極を形成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の面状発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−115213(P2013−115213A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259484(P2011−259484)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(511123876)パナソニック出光OLED照明株式会社 (3)
【Fターム(参考)】