説明

面状表示パネル

【課題】 屈曲可能とする面状表示パネルにおいて、曲げられた際に表示部が破壊したり劣化することを防止する。
【解決手段】 表示面内で、表示部11と非表示部12とが互いに位置的に分かれている面状表示パネル10において、表示部11を構成する他の材料よりも縦弾性定数が大きい曲げ防止層14を該表示部11に形成する等により、表示部11の曲げ剛性を非表示部12の曲げ剛性よりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面状表示パネル、特に詳細には、屈曲可能とされた面状表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1および2に示されているように、絶縁性の透明基板と、この基板上に互いに間隔を置いて配設された複数の透明陽極と、この透明陽極を上から覆う状態に形成された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、この有機化合物層を間に挟んで、透明陽極と交差対向するように配置された金属陰極とを備えてなる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子が知られている。
【0003】
この有機EL素子においては、透明陽極と金属陰極との間に電流が流されると、有機化合物層に含まれる発光層が発光し、発光光が透明陽極および透明基板を介して取り出される。つまり該有機EL素子では、透明陽極と金属陰極の交差部分を1つの発光部として、その発光部毎に発光、非発光を制御することができる。なおこのような有機EL素子は、波長安定性に優れる特性を有している。
【0004】
上述のような表示部を基板上に形成してなる面状表示パネルにおいては、基板として高分子材料からなる樹脂基板を用いる等により、屈曲可能に形成する試みもなされている。そうであれば、面状表示パネルをコンパクトに丸めて保管したり、運搬したりすることができる。しかし、このように樹脂基板が用いられている場合には、基板を透過した酸素や水分が表示部まで侵入し、それらによって表示部が劣化してしまうという問題が認められている。そこで従来、この問題に対処するため、例えば前記特許文献2や特許文献3に示されるように、基板の少なくとも一部と表示部との間にガスバリア層を設けることが提案されている。なおこのガスバリア層は、基本的に気体を遮断する機能を有する層のことであり、当然液体を遮断する機能も備えている。
【特許文献1】特許第2911552号公報
【特許文献2】特開2002−18994号公報
【特許文献3】特開2002−343580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようなガスバリア層は組織が緻密で硬い膜からなるものであるので、面状表示パネルを屈曲させた際に、このガスバリア層にクラックが生じる等の不具合が生じ、それによりガスバリア層が劣化することが認められている。
【0006】
また、上述のように面状表示パネルを屈曲させると、ガスバリア層に限らず、表示部自体が曲げ応力によって破壊してしまうことも認められている。このような問題は、特に低分子型有機EL素子から表示部を形成した面状表示パネルにおいて顕著に認められる。比較的柔軟性が高い高分子型有機EL素子から表示部を形成した面状表示パネルにおいては、有機EL層の破壊はさほど深刻には認められないが、有機EL層に電流供給する電極、特に透明電極として用いられるITO電極は酸化物であることから柔軟性に乏しく、曲げ応力によって破壊しやすくなっている。
【0007】
なお有機EL素子に限らず、その他の例えば無機EL素子、液晶表示素子、電気泳動素子等から表示部を形成した面状表示パネルにおいても、上述のようなITO電極が用いられたり、あるいはガスバリア層が適用されることがあり、その場合には当然同様の問題が発生し得る。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みて、曲げられた際に表示部が破壊したり劣化することを防止できる面状表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による面状表示パネルは、表示部と非表示部の剛性に差を持たせることにより、屈曲可能な機能は維持したまま表示部の破壊や劣化を防止可能としたものであり、具体的には、表示面内で、表示部と非表示部とが互いに位置的に分かれている面状表示パネルにおいて、表示部の曲げ剛性が非表示部の曲げ剛性よりも大となっていることを特徴とするものである。
【0010】
なお、表示部と非表示部の曲げ剛性を上記の関係とする上で、より具体的には、例えば表示部に、該表示部を形成する他の材料よりも縦弾性定数が大きい曲げ防止層を形成して、表示部全体の剛性を高めるようにすればよい。
【0011】
上述のような曲げ防止層は、例えば、
Si、Al、Zr、Ti、Sn、In、ZnおよびSbの中の少なくとも1つを主たる材料とした化合物、
Fe、Al、Ti、Au、Ag、Cu、Zn、Mg、Niの中の少なくとも1つの金属、またはそれらのうちの少なくとも2つからなる合金、
およびダイヤモンド薄膜、
の中の少なくとも1つから形成するのが好ましい。なお、このような曲げ防止層は、表示部の表面部に形成してもよいし、あるいは表面から中に入り込んだ部分に埋め込んだ形に形成してもよい。
【0012】
また、上述のような材料から曲げ防止層が形成される場合、非表示部は、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびポリプロピレンの中の少なくとも1つから形成することが望ましい。
【0013】
さらに、表示部と非表示部の曲げ剛性を上記の関係とするためには、表示部および非表示部が基板上に形成されている構造において、該基板の表示部における厚さを、非表示部における厚さよりも大きく設定するようにしてもよい。さらには表示部を、非表示部を形成する材料より縦弾性定数が大きい材料から形成するようにしてもよい。またこれらの構成は、上述した縦弾性定数が大きい層を形成する構成と併せて採用してもよい。
【0014】
また本発明は、特に表示部が有機EL素子、無機EL素子、液晶表示素子および電気泳動素子のうちの少なくとも1つから形成されている面状表示パネルに適用されることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の面状表示パネルにおいては、表示部の曲げ剛性が非表示部の曲げ剛性よりも大となっているので、該パネルが曲げられた際に電極やガスバリア層等の表示部を形成する要素が破壊したり劣化することが防止され、その一方、非表示部の曲げ剛性は表示部よりも低くなっているので、パネルはこの非表示部で容易に曲がって、屈曲可能である機能も確保される。
【0016】
特に本発明が、表示部が有機EL素子、無機EL素子、液晶表示素子および電気泳動素子のうちの少なくとも1つから形成された面状表示パネルに適用された場合は、それらの素子を形成する本来破壊しやすいITO電極等の電極の破壊を確実に防止できるので、特に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1の(a)および(b)はそれぞれ、本発明の第1実施形態による面状表示パネル10の概略平面形状、側面形状を示すものである。この面状表示パネル10は、例えばポリマーからなる屈曲可能な基板13の上に多数の表示部11が形成され、その上に基板13と同等の材料からなる保護層15が形成され、そして各表示部11に整合する位置において基板13上および保護層15上にそれぞれ高剛性の曲げ防止層14が配設されてなるものである。表示部11どうしの間に位置する基板13および保護層15は、非表示部12となっている。これらの表示部11と非表示部12は、保護層15の表面と平行な表示面内で、互いに位置的に分かれた状態となっている。
【0019】
表示部11は一例として有機EL素子からなるものであり、1つの表示部11が例えば画像表示のための1画素を構成し、それらはマトリクス状に配置されている。上記有機EL素子は基本的に、同図(b)の上下方向に互いに間隔を置いて配置された1対の透明陽極および金属陰極と、それらの電極の間に配された、発光層を含む有機化合物層とから構成されるものである。なおこの有機化合物層には、通常、発光層の他に正孔輸送層、正孔注入層、電子注入層、電子輸送層等の層が適宜設けられる。
【0020】
この面状表示パネル10を屈曲可能とするために、非表示部12は曲げ剛性が比較的小さいものとされ、その一方、面状表示パネル10を曲げた際に表示部11が破壊あるいは劣化することがないように、該表示部11は曲げ剛性が比較的大きいものとされている。そのために本実施形態では、表示部11に曲げ防止層14が形成されている。以下、その点について詳しく説明する。
【0021】
一般的に、外部から力を加えて部材を曲げようとする場合、外部から加えられたのと同等のモーメントが部材内部に発生する。これを曲げモーメントMとし、それは下式で表される。
【0022】
M=∫E(y)y2/rdA ・・・(1)
ここでyは、面状表示パネル10の中立面(曲げモーメントが作用したときに引張応力も圧縮応力も発生しない面)から法線方向への距離、E(y)は位置yにおける部材の縦弾性定数、rは中立面の曲率半径、dAは位置yにおける部材の微小面積である。なお図2に、以上のことを分かりやすく示す。上記(1)式において、E(y)がyに対して一定である場合、Eは積分の外に出せるので、
M=E∫y2dA/r=E・I2/r
となる。上式におけるI2=∫y2dAを断面2次モーメント(Eが一定のとき)と言い、E・I2(Eは一定)もしくは∫E(y)y2dAを曲げ剛性と言う。
【0023】
上式より、Mが一定であれば、曲げ剛性が大きいほど曲率半径が大きくなり、逆に曲げ剛性が小さいと曲率半径が小さくなることが分かる。すなわち、曲げ剛性が大きい部分は曲がり難く、曲げ剛性が小さい部分は曲がりやすいことが分かる。
【0024】
表示部11と非表示部12は1つの部材として繋がっているので、面状表示パネル10が外力によって曲げられた場合、表示部11、非表示部12ともに同じ曲げモーメントが加わる。そこで表示部11の曲げ剛性を比較的大きくし、非表示部12の曲げ剛性を比較的小さくしておけば、表示部11はあまり曲がらないのに対し、非表示部12は大きく曲がることになる。その結果、表示部11が大きく曲がって破壊あるいは劣化することが防止される一方、非表示部12が大きく曲がることから、面状表示パネル10は全体的に大きく屈曲可能となる。
【0025】
ここで、図1の紙面に垂直な方向(z方向)に縦弾性定数の分布が無いとすれば、このz方向を無視してdA→dyとなるので、上記(1)式は
M=∫E(y)y2/rdy
となる。以下、この式に基づいてより具体的な説明を行う。説明の容易化のために、先ず、図3に示すように曲げ防止層14が無く、面状表示パネル全体の縦弾性定数がE1であるものについて考えると、その場合の曲げモーメントM1は、パネル厚さをtとして下式の通りとなる。
【数1】

【0026】
となる。ここでr1は、曲げモーメントM1 が加わったときの中立面の曲率半径である。
【0027】
次に、表示部11に曲げ防止層14が形成されている本実施形態について考える。この構成において、曲げ防止層14の厚さをΔt、縦弾性定数をE2とすると、表示部11における曲げモーメントM2は、
【数2】

【0028】
となる。ここでr2は、曲げモーメントM2が加わったときの中立面の曲率半径である。
【0029】
上記(2)式におけるM1は、図1(a)に示した非表示部12のモーメントと同じであり、モーメントの釣り合いよりM1 =M2 となる。よって(2)および(3)式より、
13/(12r1)=(E13+3E22Δt)/(12r2
2={1+3(E2 /E1)(Δt/t)}r1
以上により、表示部11の曲率半径r2と非表示部12の曲率半径r1との関係が導かれた。ここで、一例としてE1=200MPa、E2=200GPa、t=200μm、Δt=2μmとすると、r2=31r1 となる。つまり、表示部11の曲率半径r2は非表示部12の曲率半径r1の31倍となるので、仮に非表示部12の曲率半径r1を5mmとした場合、表示部11の曲率半径r2は151mmとかなり大きくなり、該表示部11に作用する曲げ応力は相当緩和される。
【0030】
図4には、面状表示パネル10が曲げられたときの状態を模式的に示してある。なお同図において、Xは表示部11の長さ、Lは表示部11の配置ピッチである。このように面状表示パネル10が曲げられたときのパネル全体の曲率半径rは、
r=r12L/{r1 L+(r2−r1)X}・・・(4)
となる。ここで一例としてL=2Xとし、r2=31r1を上式に代入して計算すると、
r=1.94r1
となる。そこでr1=5mmとした場合は、r=5×1.94=9.7mmとなり、表示部11の曲率半径r2=151mmと比べて1/15以下の小さな曲率半径でパネル全体を屈曲させることができ、よって面状表示パネル10を保管、運搬等のためにコンパクトに巻き取ることが可能となる。
【0031】
なお本実施形態においては、表示部11の表裏両面に曲げ防止層14を設けたが、片面のみに設けるようにしても構わない。また、表示部11から光を取り出す側に配置する曲げ防止層14は、透明材料から形成することが望ましい。縦弾性定数E2が比較的大きくて透明な材料としては、例えばSiOxやSiOxy等が挙げられる。
【0032】
また縦弾性定数E2が比較的高くて、曲げ防止層14を形成するのに好適な材料としては、セラミック系材料、金属材料あるいは高弾性ポリマー等が挙げられる。さらに詳しくは、該曲げ防止層14は、
Si、Al、Zr、Ti、Sn、In、ZnおよびSbの中の少なくとも1つを主たる材料とした化合物、
Fe、Al、Ti、Au、Ag、Cu、Zn、Mg、Niの中の少なくとも1つの金属、またはそれらのうちの少なくとも2つからなる合金、
およびダイヤモンド薄膜、
のうちの少なくとも1つから形成されるのが望ましい。また、ポリマーの中でも縦弾性定数が比較的大きいものは、曲げ防止層14を形成する材料として利用可能である。具体的に低密度ポリエチレンの縦弾性定数は0.2GPa程度であり、そのような材料で非表示部12を形成した場合は、縦弾性定数が2GPa以上の材料から曲げ防止層14を形成するのが望ましい。ポリエチレンテレフタレートは、5GPa程度の縦弾性定数を有するので、この条件を満たすことができる。
【0033】
上述のような材料から曲げ防止層14が形成される場合、非表示部12は、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびポリプロピレンの中の少なくとも1つから形成されるのが望ましい。これらの樹脂材料は、縦弾性定数が小さくて伸縮性に富むので、面状表示パネル10を屈曲可能に形成する上で好ましいものである。また、これらの中で特にポリエチレンおよびポリプロピレン以外のものは、光透過性が高いので、光の取り出し側に使用する上で好適である。
【0034】
勿論、非表示部12を形成する材料として上記以外のものも適用可能であり、具体的には、例えば特開2003−094572号公報において、フィルム状の基材を形成する材料の例として挙げられているもの等が適用可能である。
【0035】
非表示部12を曲がりやすくする一方、表示部11は曲がり難くする上で、一般には、E2 /E1の値が10以上であることが望ましい。例えばE2=200GPaであるとすると、E1は20GPa以下であることが好ましい。ただし、膜厚比(Δt/t)や、表示部11の配置ピッチと幅の比(X/L)つまりは表示部11と非表示部12との幅の比等に応じて、E2 /E1の必要最小限の値は変わるものである。
【0036】
<第2実施形態>
次に、図5を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なおこの図5において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0037】
この第2実施形態の面状表示パネル20は、薄いベースフィルム21上に互いに縦、横方向に所定間隔を置いて複数の曲げ防止層24が形成され、その上に有機EL素子からなる表示部11が形成され、さらにそれらの表示部11を上から覆う状態に保護層22が形成されてなるものである。保護層22はベースフィルム21と同等あるいは同程度の縦弾性定数を有する材料から形成され、表示部11どうしの間に存在する部分は非表示部12を構成している。一方曲げ防止層24は、保護層22およびベースフィルム21より縦弾性定数が大きい材料を用いて比較的厚く形成され、それにより、該曲げ防止層24の上に存在する表示部11の曲げ剛性が高められている。
【0038】
以下、この面状表示パネル20の作用について説明する。ここでは、説明の容易化のために、曲げ防止層24は中立面に対して上下対称になっているものとし、その厚さをt2、縦弾性定数をE2とする。この場合の非表示部12および表示部11における曲げモーメントをそれぞれM1、M2とすると、
1=E13/(12r1
2={E223+E1(t−t23}/(12r2
となる。モーメントの釣り合いからM1 =M2 となるので、表示部11の曲率半径r2と非表示部12の曲率半径r1との関係は、
2={E23+E1(t−t23}r1/(E23
となる。ここで、一例としてE1=200MPa、E2=200GPa、t=200μm、t2=60μmとすると、r2=27.343r1 となる。
【0039】
次に、この面状表示パネル20が曲げられたときの該パネル全体の曲率半径rを求める。前述の(4)式をα=r2/r1、β=X/Lとして書き換えると、
r=αr1/{1+β(α−1)}・・・(5)
となる。α=27.343とし、また例えばβ=0.5とすると、上の(5)式から
r=1.93r1
となる。そこでr1=5mmとした場合は、r=5×1.93=9.65mm、r2=5×27.343=136.7mmとなる。つまりこの面状表示パネル20を曲げる場合、パネル全体を9.65mmという小さな曲率半径で曲げても、表示部11の曲率半径はパネル全体の曲率半径の14倍以上の136.7mmと十分に大きくなって、そこに作用する応力を小さく抑えることができる。面状表示パネル20の全体を上記のように小さな曲率半径で曲げることができれば、それを保管、運搬等のためにコンパクトに巻き取ることも可能となる。
【0040】
<第3実施形態>
次に、図6を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。この第3実施形態の面状表示パネル30は、ベースフィルム21が表示部11の部分では比較的厚く、一方非表示部12の部分では比較的薄く形成されてなるものである。それにより、有機EL素子からなる表示部11の曲げ剛性は高く確保される一方、非表示部12の部分は曲がりやすいものとされている。
【0041】
以下、その点について詳しく説明する。表示部11、非表示部12の厚さをそれぞれt、tNとし、またベースフィルム21の縦弾性定数をE1とする。説明の容易化のために、ベースフィルム21は中立面に対して上下対称になっているものとし、また表示部11を構成する材料が曲がりに及ぼす影響は無視する。非表示部12および表示部11における曲げモーメントをそれぞれM1、M2とすると、
1=E1N3/(12r1
2=E23/(12r2
となる。モーメントの釣り合いからM1 =M2 となるので、表示部11の曲率半径r2と非表示部12の曲率半径r1との関係は、
2=(t/tN3 1
となる。ここで一例としてt=3tNとすると、r2=27r1となり、α=r2/r1=27である。また、例えばβ=X/L=0.5として前記(5)に代入すると、この面状表示パネル30全体の曲率半径rは、
r=1.928r1
となる。そこでr1=5mmとした場合は、r=5×1.928=9.64mm、r2=5×27=135mmとなる。つまりこの面状表示パネル30を曲げる場合、パネル全体を9.64mmという小さな曲率半径で曲げても、表示部11の曲率半径はパネル全体の曲率半径の約14倍の135mmと十分に大きくなって、そこに作用する応力を小さく抑えることができる。面状表示パネル30の全体を上記のように小さな曲率半径で曲げることができれば、それを保管、運搬等のためにコンパクトに巻き取ることも可能となる。
【0042】
なお以上の説明では、計算の容易化のために、表示部11および非表示部12が中立面に関して上下対称であるとしたが、それらは非対称に形成されても構わない。また上記の計算では、表示部11を構成する材料が曲がりに及ぼす影響を無視しているが、第1実施形態や第2実施形態において採用したような表示部11の曲げ剛性を高める構成も併せて採用すれば、表示部11の応力負担をさらに軽減し、また面状表示パネル全体をよりコンパクトに丸めることが可能になる。
【0043】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図7の(a)、(b)はそれぞれ、本発明の第4の実施形態による面状表示パネル40の概略平面形状、一部破断側面形状を示すものである。この面状表示パネル40は、ベースフィルム21と、その上に下部ガスバリア層41を介して形成された有機EL素子からなる表示部11と、該表示部11の上を覆う上部ガスバリア層42とを有している。
【0044】
ベースフィルム21上には、z方向に延びる複数の帯状の透明電極43が配設されるとともに、該透明電極43と間隙をおいて対面する状態でx方向に延びる複数の帯状の金属電極44が配設され、これら両電極43、44の互いに対面する部分毎に、発光層を含む有機化合物層45が形成され、該有機化合物層45とそれを挟んで対面する両電極43、44の部分とによって1つの表示部11が構成されている。なお本例では、ITOからなる透明電極43が陽極、金属電極44が陰極とされ、両電極43、44の間に電流が流された際に有機化合物層45から発せられる光は、透明電極43側から取り出される。また1つの表示部11の大きさ、つまり両電極43、44の間に電流が流される領域は、絶縁マスク46の開口46aによって規定される。
【0045】
そして上部ガスバリア層42の上には、ベースフィルム21と同じ材料からなる保護層22が形成されている。この保護層22の、表示部11どうしの間に存在する部分は非表示部12となっている。
【0046】
一般にガスバリア層は、表示部、非表示部を問わず、パネル全面に亘って形成される。しかしこのようなガスバリア層は、通常、酸化物や窒化物等からなる緻密な膜であって、その縦弾性定数はプラスチックと比べると1000倍近くも大きいものである。そこで本実施形態においては、このようなガスバリア層を利用して表示部11の曲げ剛性を高めている。以下、その点について詳しく説明する。
【0047】
ここでは、面状表示パネル40がz軸周りにのみ曲げられ、x軸周りには曲げられないものとする。なお実用上は、面状表示パネル40を曲げてもよい方向を例えば取扱説明書等に明記しておく等により、そのようなことが可能となる。この場合、表示部11と非表示部12の曲げ剛性に差を持たせるのは、x方向についてのみでよく、z方向については不必要である。そこで本実施形態では下部ガスバリア層41および上部ガスバリア層42を、表示部11の1列に沿ってz方向に連続的に延びる一方、x方向には表示部11の1列毎に分断された形状としている。
【0048】
上述の構成とすることにより、面状表示パネル40をz軸周りに曲げた際には、下部ガスバリア層41および上部ガスバリア層42によって剛性が高められている表示部11の部分は曲がり難く、該表示部11に作用する曲げ応力を低減可能となる。その一方、非表示部12の部分は曲がりやすいことから、面状表示パネル40全体をコンパクトに丸めることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、ガスバリア層を表示面(ここではベースフィルム21と平行な面となる)内で一方向のみに延ばして形成することにより、表示部11と非表示部12の曲げ剛性に差を持たせているが、その他の縦弾性定数が比較的大きい部材、例えばITOからなる透明電極43を上述のような形状とすることにより、表示部11と非表示部12の曲げ剛性に差を持たせることも可能である。さらに、縦弾性定数が比較的小さい材料から非表示部12を形成する一方、縦弾性定数が比較的大きい材料から表示部11を形成して、それら両者の曲げ剛性に差を持たせることも可能である。
【0050】
また本実施形態においてx方向に関しては、非表示部12の部分に金属電極44が存在するので、この金属電極44を縦弾性定数がより小さい導電性ポリマーに置き換えることにより、表示部11と非表示部12の曲げ剛性の差をより大きくすることができる。
【0051】
以上の説明は、z方向には縦弾性定数の分布が無いものとして行ったが、現実にはそのような分布が存在する。その分布も考慮に入れる場合は、先に説明した(1)式
M=∫E(y)y2/rdA
をz方向も含めて
M=∫∫E(y,z)y2/rdydz
と直し、この式に基づいて同様の計算を行えば、z方向についても解析が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態による面状表示パネルを示す概略平面図(a)と側面図(b)
【図2】図1の面状表示パネルに加わる曲げモーメント等を説明する図
【図3】図1の面状表示パネルの作用を説明するための別の面状表示パネルを示す概略側面図
【図4】図1の面状表示パネルの作用を説明する図
【図5】本発明の第2実施形態による面状表示パネルを示す概略側面図
【図6】本発明の第3実施形態による面状表示パネルを示す概略側面図
【図7】本発明の第3実施形態による面状表示パネルを示す概略平面図(a)と側面図(b)
【符号の説明】
【0053】
10、20、30、40 面状表示パネル
11 表示部
12 非表示部
13 基板
14、24 曲げ防止層
21 ベースフィルム
22 保護層
41 下部ガスバリア層
42 上部ガスバリア層
43 透明電極
44 金属電極
45 有機化合物層
46 絶縁マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面内で、表示部と非表示部とが互いに位置的に分かれている面状表示パネルにおいて、前記表示部の曲げ剛性が非表示部の曲げ剛性よりも大となっていることを特徴とする面状表示パネル。
【請求項2】
前記表示部に、該表示部を構成する他の材料よりも縦弾性定数が大きい曲げ防止層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の面状表示パネル。
【請求項3】
前記曲げ防止層が、
Si、Al、Zr、Ti、Sn、In、ZnおよびSbの中の少なくとも1つを主たる材料とした化合物、
Fe、Al、Ti、Au、Ag、Cu、Zn、Mg、Niの中の少なくとも1つの金属、またはそれらのうちの少なくとも2つからなる合金、
およびダイヤモンド薄膜、
のうちの少なくとも1つからなり、
前記非表示部が、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびポリプロピレンの中の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項2記載の面状表示パネル。
【請求項4】
前記表示部および非表示部が基板上に形成され、該基板の表示部における厚さが、非表示部における厚さよりも大となっていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の面状表示パネル。
【請求項5】
前記表示部が、前記非表示部を構成する材料より縦弾性定数が大きい材料から形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の面状表示パネル。
【請求項6】
前記表示部が、有機EL素子、無機EL素子、液晶表示素子および電気泳動素子のうちの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の面状表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−58764(P2006−58764A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242410(P2004−242410)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】