説明

面発光素子

【課題】 光の取出し効率を向上することのできる有機EL素子や無機EL素子等の面発光素子を提供する。
【解決手段】 ガラス基板2上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層5と、屈折率の異なる第1、第2媒質31、32を有して第1媒質31中に第2媒質32を2次元配列した2次元回折格子30とを備えた面発光素子1において、2次元回折格子30は、第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積の合計に対する第2媒質32の占める面積の割合を25%以上60%以下にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光層を有する有機EL素子や無機EL素子等の面発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来各種の面発光素子が提案されている。例えば、有機EL素子や無機EL素子等のエレクトロルミネッセンスを利用する面発光素子は、ガラス基板に形成されたITO等から成る透明電極上に電圧の印加により発光する発光層が形成される。発光層上にはアルミニウム等から成る背面電極が形成される。
【0003】
発光層は有機化合物等から成り、透明電極から注入された正孔と背面電極から注入された電子が再結合して発光する。発光層で発光した光は透明電極及びガラス基板を透過してガラス基板の出射面から出射される。また、一部の光は背面電極で反射して透明電極に到達し、出射面から出射される。
【0004】
この面発光素子は、発光層と透明電極との界面、透明電極とガラス基板との界面、及び出射面で入射角が臨界角以下の光が全反射して導波する。このため、出射面から出射される光が少なく、光の取出し効率が低い問題があった。特に有機EL素子は、寿命等の観点から光取出し効率の一層の向上が求められている。光取出し効率の向上は他の面発光素子(例えば、LEDも一種の面発光素子である)にも求められる共通の課題である。
【0005】
上記問題を解決するために、特許文献1には2次元回折格子を有した面発光素子が開示されている。この面発光素子は、透明電極とガラス基板との境界に2次元回折格子が設けられる。発光層で発光した光は2次元回折格子で回折し、ガラス基板の出射面に到達する光の入射角を臨界角よりも大きく可変する。これにより、透明電極とガラス基板との界面及び出射面で全反射する光を低減して光の取出し効率を向上することができる。
【特許文献1】特開平11−283751号公報(第5頁−第8頁、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、有機EL素子等の面発光素子の応用範囲が拡大し、上記特許文献1に開示される面発光素子に対して更に光の取出し効率の高い面発光素子が求められている。本発明は、光の取出し効率を更に向上することのできる面発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した2次元回折格子とを備えた面発光素子において、前記2次元回折格子は、第1媒質の占める面積と第2媒質の占める面積との合計に対する第2媒質の占める面積の割合が25%以上60%以下であることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、第1媒質中に円形、角形、三角形等の形状から成る第2媒質を周期的に2次元配列して2次元回折格子が構成される。第1媒質中には第2媒質が点在し、第1媒質と第2媒質の合計の面積に対して第2媒質の面積が25%以上60%以下になっている。従って、2次元回折格子が第1、第2媒質のみから成る場合は、2次元回折格子の全体の面積の25%以上60%以下が第2媒質から成る。尚、第2媒質が占める各領域の径が深さ方向に変化する場合は、径の平均値や径の中央値を示す断面において第1媒質及び第2媒質の面積が上記の関係であればよい。
【0009】
また本発明は、基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した2次元回折格子から成る回折層とを備えた面発光素子において、前記回折層は、第1媒質の占める体積と第2媒質の占める体積との合計に対する第2媒質の占める体積の割合が25%以上60%以下であることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、第1媒質中には円柱、角柱、円錐、角錐、円錐台、角錐台等の形状から成る第2媒質が点在し、第1媒質と第2媒質の合計の体積に対して第2媒質の体積が25%以上60%以下になっている。従って、2次元回折格子が第1、第2媒質のみから成る場合は、回折層の全体の体積の25%以上60%以下が第2媒質から成る。
【0011】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、前記2次元回折格子のピッチを0.1μm〜4μmにしたことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した散乱体とを備えた面発光素子において、前記散乱体は、第1媒質の占める面積と第2媒質の占める面積との合計に対する第2媒質の占める面積の割合が25%以上60%以下であることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、第1媒質中に第2媒質を非周期的に配列して散乱体が構成される。第1媒質中には第2媒質が点在し、第1媒質中には第2媒質が点在し、第1媒質と第2媒質の合計の面積に対して第2媒質の面積が25%以上60%以下になっている。従って、散乱体が第1、第2媒質のみから成る場合は、散乱体の全体の面積の25%以上60%以下が第2媒質から成る。尚、第2媒質が占める各領域の径が深さ方向に変化する場合は、径の平均値や径の中央値を示す断面において第1媒質及び第2媒質の面積が上記の関係であればよい。
【0014】
また本発明は、基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した散乱体から成る散乱層とを備えた面発光素子において、前記散乱層は、第1媒質の占める体積と第2媒質の占める体積との合計に対する第2媒質の占める体積の割合が25%以上60%以下であることを特徴としている。
【0015】
この構成によると、第1媒質中には円柱、角柱、円錐、角錐、円錐台、角錐台等の形状から成る第2媒質が点在し、第1媒質と第2媒質の合計の体積に対して第2媒質の体積が25%以上60%以下になっている。従って、散乱層が第1、第2媒質のみから成る場合は、散乱層の全体の体積の25%以上60%以下が第2媒質から成る。
【0016】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、隣接する第2媒質の間隔の平均値を0.1μm〜4μmにしたことを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、第1媒質が前記基板から成るとともに、前記基板に設けられた孔に第2媒質が充填されることを特徴としている。この構成によると、基板から成る第1媒質中に第2媒質が配列される。孔に充填される第2媒質が空気から成ってもよい。
【0018】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、第2媒質が前記基板から成るとともに、前記基板の一部を除去して設けられた柱状部の周囲に第1媒質が充填されることを特徴としている。この構成によると、第1媒質中に基板の柱状部から成る第2媒質が配列される。柱状部の周囲に充填される第1媒質が空気から成ってもよい。
【0019】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、第1、第2媒質の一方がガラスから成るとともに、他方が空気または透明電極から成ることを特徴としている。この構成によると、面発光素子は、ガラスから成る第1媒質中に空気またはITO等の透明電極から成る第2媒質を配列した2次元回折格子または散乱体を有する。また、面発光素子は、空気または透明電極から成る第1媒質中にガラスから成る第2媒質を配列した2次元回折格子または散乱体を有する。
【0020】
また本発明は、上記構成の面発光素子において、第1、第2媒質の一方が透明電極から成るとともに、他方が空気または前記発光層を構成する材料から成ることを特徴としている。この構成によると、面発光素子は、透明電極から成る第1媒質中に空気または有機化合物等の発光層を構成する材料から成る第2媒質を配列した2次元回折格子または散乱体を有する。また、面発光素子は、空気または発光層を構成する材料から成る第1媒質中に透明電極から成る第2媒質を配列した2次元回折格子または散乱体を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、第1媒質中に第2媒質を2次元配列した2次元回折格子の第1媒質及び第2媒質の占める面積に対する第2媒質の占める面積の割合を25%以上60%以下にしたので、基板から出射される光の取出し効率を著しく向上することができる。更に好ましくは、第1媒質及び第2媒質の占める面積に対する第2媒質の占める面積の割合を30%〜55%にすることで、更に光取出し効率を向上することができる。
【0022】
本発明によると、第1媒質中に第2媒質を2次元配列した2次元回折格子を有する回折層の第1媒質及び第2媒質の占める体積に対する第2媒質の占める体積の割合を25%以上60%以下にしたので、基板から出射される光の取出し効率を著しく向上することができる。更に好ましくは、第1媒質及び第2媒質の占める体積に対する第2媒質の占める体積の割合を30%〜55%にすることで、更に光取出し効率を向上することができる。
【0023】
また本発明によると、2次元回折格子のピッチを0.1μm〜4μmにしたので、所定方向に光を回折する2次元回折格子を容易に実現することができる。
【0024】
本発明によると、第1媒質中に第2媒質を配列した散乱体の第1媒質及び第2媒質の占める面積に対する第2媒質の占める面積の割合を25%以上60%以下にしたので、基板から出射される光の取出し効率を著しく向上することができる。
【0025】
本発明によると、第1媒質中に第2媒質を配列した散乱体を有する散乱層の第1媒質及び第2媒質の占める体積に対する第2媒質の占める体積の割合を25%以上60%以下にしたので、基板から出射される光の取出し効率を著しく向上することができる。
【0026】
また本発明によると、隣接する第2媒質の平均間隔を0.1μm〜4μmにしたので、所定方向に光を散乱する散乱体を容易に実現することができる。
【0027】
また本発明によると、第1媒質が前記基板から成るとともに、該基板に設けられた孔に第2媒質が充填されるので、2次元回折格子または散乱体を容易に形成することができる。
【0028】
また本発明によると、第2媒質が前記基板から成るとともに、該基板の一部を除去して設けられた柱状部の周囲に第1媒質が充填されるので、2次元回折格子または散乱体を容易に形成することができる。
【0029】
また本発明によると、第1、第2媒質の一方がガラスから成るとともに、他方が空気または透明電極から成るので、2次元回折格子または散乱体を容易に形成することができる。
【0030】
また本発明によると、第1、第2媒質の一方が透明電極から成るとともに、他方が空気または発光層を構成する材料から成るので、2次元回折格子または散乱体を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の面発光素子を示す側面図である。面発光素子1は透明基板であるガラス基板2上に回折層3、透明電極4、発光層5、背面電極6が順に設けられている。ここではガラス基板を用いているが、例えば透明樹脂等の他の材料から成る透明基板にしてもよい。透明電極4はITOやIZO等の透明導電性材料から成っている。
【0032】
発光層5は有機化合物の発光材料から成っている。これにより、面発光素子1は有機EL素子を構成する。以下、面発光素子1が有機EL素子の場合について説明するが、これに限らず各種の面発光型の発光素子であってもよい。例えば、面発光素子1が無機EL素子やLEDであってもよい。
【0033】
発光層5は機能分離された複数の有機物層を積層して構成されていてもよいし、発光層5と各電極との間に電荷注入層、電荷輸送層、バッファ層等の他の機能層を設けてもよい。また、同図では所謂ボトムエミッションタイプの有機EL素子を示しているが、トップエミッションタイプの有機EL素子であってもよい。
【0034】
背面電極6は光を反射するアルミニウム等の材料から成っている。透明電極4と背面電極6間に電圧を印加することにより、透明電極4から注入された正孔と背面電極6から注入された電子が再結合して発光層5が発光する。
【0035】
回折層3は屈折率の異なる媒質が周期的に2次元配列された2次元回折格子から成っている。図2、図3は回折層3の2次元回折格子30を示す平面図及び側面断面図である。2次元回折格子30はガラス基板2に所定周期で円柱状の孔2bをフォトリソ法によるマスクパターンの形成及びドライエッチング等の方法で形成して構成されている。これにより、屈折率が1.5のガラス基板2から成る第1媒質31中に屈折率が1の空孔から成る第2媒質32が配列された正方格子になっている。
【0036】
2次元周期構造のピッチTは0.1μm〜4μmで形成されている。また、第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積の合計に対する第2媒質32の占める面積の割合は25%以上60%以下になっている。即ち、2次元回折格子30が第1、第2媒質31、32のみから成る場合は、全面積の25%以上60%以下が第2媒質32から成っている。
【0037】
上記構成の面発光素子1において、透明電極4と背面電極6との間に電圧が印加されるか、もしくは電流が注入されると発光層5が発光する。発光した光は透明電極4を透過し、回折層3で出射面2a(図1参照)の方向に回折する。そして、ガラス基板2を透過して出射面2aから出射される。また、一部の光は背面電極6で反射して透明電極4に到達し、同様に回折層3で回折して出射面2aから出射される。
【0038】
図4は本実施形態の面発光素子1の光の伝播状態を示しており、発光層5の一点の光発生源Lが発光した場合の典型的なシミュレーション図である。Aは空気層を示している。また、図5は比較のため、回折層3を設けない場合を示している。尚、理解容易のため、素子の部分拡大図を併せて記載している。これらの図から明らかなように、本実施形態の面発光素子1は出射面2aから出射される光が増加し、光の取出し効率が向上する。
【0039】
本実施形態によると、第1媒質31中に第2媒質32を配列した2次元回折格子30の第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積の合計に対する第2媒質32の占める面積の割合を25%以上60%以下にしたので、ガラス基板2から出射される光の取出し効率を従来よりも向上させることができる。また、2次元回折格子30のピッチTを0.1μm〜4μmにしたので、所定方向に光を回折する2次元回折格子30を容易に実現することができる。
【0040】
回折層3は透明電極4とガラス基板2との間に設けると製造が比較的容易であり且つ発光層5に近い位置に配置されるため高い効果が得られやすいが、出射面2aに設けてもよい。また、2次元回折格子30を正方格子により構成しているが、斜交格子(図6(a)参照)、直交格子(図6(b)参照)、面心格子(図6(c)参照)、六方格子(図6(d)参照)でもよい。
【0041】
第2媒質32は第1媒質31と屈折率が異なっていればよく、孔2b(図2参照)にITO等の透明導電性材料を充填してもよい。これにより、屈折率が1.5のガラスを第1媒質31として例えば屈折率が1.9のITOを第2媒質32とする2次元回折格子30が得られる。
【0042】
また、第2媒質32を充填する孔2bは円柱状になっているが、角柱形状でもよい。また、円錐、角錐、円錐台、角錐台等の深さ方向に断面積が一定しない形状でもよい。このとき、回折層3の第1媒質31の占める体積と第2媒質32の占める体積の合計に対する第2媒質32の占める体積の割合が25%以上60%以下になっていればよい。
【0043】
また、図7に示すように、2次元回折格子30はガラス基板2の一部を除去して柱状部2cを形成し、柱状部2cの周囲にガラス基板2と屈折率の異なる空気やITO等を充填してもよい。この時、柱状部2cの周囲に充填される媒質が第1媒質31となり、柱状部2cが第2媒質32となる。
【0044】
尚、回折層3を透明電極4と発光層5との界面に設けることも可能であり、この場合も光取出し効率を向上することができる。この場合、第1媒質31が透明導電性材料から成り、第2媒質32が空気或いは有機化合物等の発光層5を構成する材料から成る。また、前述の図7と同様に、柱状部2cから成る第2媒質32を透明導電性材料により形成してもよい。
【0045】
次に、図8は第2実施形態の面発光素子10を示す側面図である。本実施形態の面発光素子10は、前述の図1〜図7に示す形態の回折層3に替えて散乱層7が設けられている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0046】
散乱層7は屈折率の異なる媒質が非周期的に配列された散乱体から成っている。図9は散乱層7の散乱体70の例を示す平面図である。散乱体70はガラス基板2に円柱状の孔2bをランダムに形成して構成されている。孔2bはランダムパターンの形成されたマスクを介してUV照射を行うフォトリソ法等によってマスク層を形成し、更にドライエッチングを行うなどの方法により形成される。これにより、屈折率が1.5のガラス基板2から成る第1媒質31中に屈折率が1の空孔から成る第2媒質32が配列され、光を散乱する散乱体70になっている。
【0047】
隣接する第2媒質32の間隔(各第2媒質32領域の中心間距離)Dは平均値が0.1μm〜4μmで形成されている。また、第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積の合計に対する第2媒質32の占める面積の割合は25%以上60%以下になっている。即ち、散乱体70が第1、第2媒質31、32のみから成る場合は散乱体70の全面積の25%以上60%以下が第2媒質32から成っている。
【0048】
上記構成の面発光素子1において、透明電極4と背面電極6との間に電圧が印加されると発光層5が発光する。発光した光は透明電極4を透過し、散乱層7で出射面2a(図1参照)の方向に散乱する。そして、ガラス基板2を透過して出射面2aから出射される。また、一部の光は背面電極6で反射して透明電極4に到達し、同様に散乱層7で散乱して出射面2aから出射される。
【0049】
本実施形態によると、第1媒質31中に第2媒質32を配列した散乱体70の第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積の合計に対する第2媒質32の占める面積の割合を25%以上60%以下にしたので、第1実施形態と同様に、ガラス基板2から出射される光の取出し効率を従来よりも向上させることができる。また、隣接する第2媒質32の間隔Dの平均値を0.1μm〜4μmにしたので、所定方向に光を散乱する散乱体70を容易に実現することができる。
【0050】
散乱層7は透明電極4とガラス基板2との間に設けているが、透明電極と発光層5との界面に設けてもよく、出射面2aに設けてもよい。第2媒質32は第1媒質31と屈折率が異なっていればよく、孔2b(図9参照)にITO等の透明導電性材料を充填してもよい。
【0051】
また、第2媒質32を充填する孔2bは円柱状になっているが、角柱形状でもよい。また、円錐、角錐、円錐台、角錐台等の深さ方向に断面積が一定しない形状でもよい。このとき、散乱層7の第1媒質31の占める体積と第2媒質32の占める体積の合計に対する第2媒質32の占める体積の割合が25%以上60%以下になっていればよい。また、前述の図7と同様に、ガラス基板2の一部を除去して柱状部2cを形成し、柱状部2cの周囲にガラス基板2と屈折率の異なる空気やITO等を充填してもよい。
【0052】
また、散乱層7を透明電極4と発光層5との界面に設けることも可能であり、この場合も光取出し効率を向上することができる。この場合、第1媒質31がITO等の透明導電性材料から成り、第2媒質32が空気或いは発光層5を構成する材料から成る。また、前述の図7と同様に、柱状部2cから成る第2媒質32を透明導電性材料により形成してもよい。
【実施例1】
【0053】
図10は前述の図2に示す正方格子から成る2次元回折格子30を用いた第1実施例の面発光素子1の光取出し効率をシミュレーションした結果を示す図である。第1媒質31はガラスから成り、第2媒質32は空気から成る。縦軸は回折層3を設けなかった場合を1とし、発光層5として波長が520nmにピークを持つ緑色発光材料を用いたときの波長が520nmの光の光取出し効率を示している。
【0054】
横軸は円柱状の孔2bの2次元回折格子30全体に対する占積率を示している(ここでは、占積率は第1媒質31の占める面積と第2媒質32の占める面積との合計に対する第2媒質32の占める面積の割合と等しい。また、回折層3の厚みが一定であるため、第1媒質31の占める体積と第2媒質32の占める体積との合計に対する第2媒質32の占める体積の割合とも等しい。)。また、正方格子のピッチTは300nm、孔2bの深さは200nmであり、孔2bの直径を可変している。
【0055】
同図によると、光取出し効率は第2媒質32の占積率の全域にわたって向上して約50%の時に最大となり、50%付近をピークとしてその前後で非常に高い値を示している。
【0056】
実際に、孔2bの直径を150nm、220nmにし、正方格子でピッチTが300nm、深さが200nmになるように面発光素子1を試作した。製造方法はフォトリソ法及びドライエッチングでガラス基板2に孔2bを形成し、孔2bに空気が充填されるような条件でITOを成膜し、更に有機発光層及びアルミニウムを順次成膜した。
【0057】
孔2bの直径が150nmの場合は、占積率が19.6%である(第1媒質31に対する第2媒質32の面積の割合で表わすと24.4%に相当する)。孔2bの直径が220nmの場合は、占積率が42.2%である(第1媒質31に対する第2媒質32の面積の割合で表わすと73.0%に相当する)。
【0058】
その結果、面発光素子1の光取出し効率は回折層3を設けなかった場合に比して、孔2bの直径が150nmの場合が1.2倍、直径が220nmの場合が1.8倍であった。従って、シミュレーションと同様の傾向を示す結果が得られた。
【実施例2】
【0059】
図11は前述の図2に示す正方格子から成る2次元回折格子30を用いた第2実施例の面発光素子1の光取出し効率の典型的なシミュレーション結果を示す図である。第1媒質31はガラスから成り、第2媒質32はITOから成る。その他は第1実施例と同一である。
【0060】
同図によると、光取出し効率は第2媒質32の占積率の全域にわたって向上して約50%の時に最大となり、50%付近をピークとしてその前後で非常に高い値を示している。
【0061】
実際に、孔2bの直径を150nm(占積率19.6%)、220nm(占積率42、2%)とし、正方格子でピッチTが300nm、深さが200nmの面発光素子1を試作した。製造方法はフォトリソ法及びドライエッチングでガラス基板2に孔2bを形成し、孔2bにITOが充填されるような条件でITOを成膜し、更に有機発光層及びアルミニウムを順次成膜した。
【0062】
その結果、面発光素子1の光取出し効率は回折層3を設けなかった場合に比して、孔2bの直径が150nmの場合が1.2倍、直径が220nmの場合が1.9倍であった。従って、シミュレーションと同様の傾向を示す結果が得られた。
【実施例3】
【0063】
図12は前述の図7に示す正方格子から成る2次元回折格子30を用いた第3実施例の面発光素子1の光取出し効率の典型的なシミュレーション結果を示す図である。縦軸は回折層3を設けなかった場合を1として、発光層5として波長が520nmにピークを持つ緑色発光材料を用いたときの波長が520nmの光の光取出し効率を示している。横軸は円柱状の柱状体2cの2次元回折格子30全体に対する占積率を示している。第1媒質31は空気から成り、第2媒質32はガラスから成る。正方格子のピッチTは300nm、柱状体2cの高さは200nmであり、柱状体2cの直径を可変している。
【0064】
同図によると、光取出し効率は第2媒質32の占積率の全域にわたって向上して約43%の時に最大となり、43%付近をピークとしてその前後で非常に高い値を示している。
【実施例4】
【0065】
図13は前述の図7に示す正方格子から成る2次元回折格子30を用いた第4実施例の面発光素子1の光取出し効率の典型的なシミュレーション結果を示す図である。第1媒質31はITOから成り、第2媒質32はガラスから成る。その他は第3実施例と同一である。
【0066】
同図によると、光取出し効率は第2媒質32の占積率の全域にわたって向上して約42%の時に最大となり、42%付近をピークとしてその前後で非常に高い値を示している。
【0067】
第1〜第4実施例から明らかなように、第1媒質の占める面積と第2媒質の占める面積との合計に対する第2媒質の占める面積の割合を25%〜60%の範囲にすると、第1媒質や第2媒質の組合わせや第2媒質の配列等に関わらず、最大の光取出し効率のほぼ85%以上に相当する極めて高い光取出し効率を得ることができる。更に、上記割合を30%〜55%の範囲にすると、より光取出し効率を向上することができ、最大の光取出し効率のほぼ90%以上に相当する極めて高い光取出し効率が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、有機EL素子や無機EL素子等の面発光素子に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の面発光素子を示す正面図
【図2】本発明の第1実施形態の面発光素子の2次元回折格子を示す平面図
【図3】本発明の第1実施形態の面発光素子の2次元回折格子を示す正面断面図
【図4】本発明の第1実施形態の面発光素子の光の伝播状態を示す図
【図5】従来の面発光素子の光の伝播状態を示す図
【図6】本発明の第1実施形態の面発光素子の他の2次元回折格子を示す平面図
【図7】本発明の第1実施形態の面発光素子の他の2次元回折格子を示す平面図
【図8】本発明の第2実施形態の面発光素子を示す正面図
【図9】本発明の第2実施形態の面発光素子の散乱体を示す平面図
【図10】本発明の第1実施例の面発光素子の光取出し効率を示す図
【図11】本発明の第2実施例の面発光素子の光取出し効率を示す図
【図12】本発明の第3実施例の面発光素子の光取出し効率を示す図
【図13】本発明の第4実施例の面発光素子の光取出し効率を示す図
【符号の説明】
【0070】
1、10 面発光素子
2 ガラス基板
2a 出射面
2b 孔
2c 柱状部
3 回折層
4 透明電極
5 発光層
6 背面電極
7 散乱層
30 2次元回折格子
31 第1媒質
32 第2媒質
70 散乱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した2次元回折格子とを備えた面発光素子において、前記2次元回折格子は、第1媒質の占める面積と第2媒質の占める面積との合計に対する第2媒質の占める面積の割合が25%以上60%以下であることを特徴とする面発光素子。
【請求項2】
基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した2次元回折格子から成る回折層とを備えた面発光素子において、前記回折層は、第1媒質の占める体積と第2媒質の占める体積との合計に対する第2媒質の占める体積の割合が25%以上60%以下であることを特徴とする面発光素子。
【請求項3】
前記2次元回折格子のピッチを0.1μm〜4μmにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面発光素子。
【請求項4】
基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した散乱体とを備えた面発光素子において、前記散乱体は、第1媒質の占める面積と第2媒質の占める面積との合計に対する第2媒質の占める面積の割合が25%以上60%以下であることを特徴とする面発光素子。
【請求項5】
基板上に形成されるとともに電圧の印加もしくは電流の注入により発光する発光層と、屈折率の異なる第1、第2媒質を有して第1媒質中に第2媒質を2次元的に配列した散乱体から成る散乱層とを備えた面発光素子において、前記散乱層は、第1媒質の占める体積と第2媒質の占める体積との合計に対する第2媒質の占める体積の割合が25%以上60%以下であることを特徴とする面発光素子。
【請求項6】
隣接する第2媒質の間隔の平均値を0.1μm〜4μmにしたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の面発光素子。
【請求項7】
第1媒質が前記基板から成るとともに、前記基板に設けられた孔に第2媒質が充填されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の面発光素子。
【請求項8】
第2媒質が前記基板から成るとともに、前記基板の一部を除去して設けられた柱状部の周囲に第1媒質が充填されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の面発光素子。
【請求項9】
第1、第2媒質の一方がガラスから成るとともに、他方が空気または透明電極から成ることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の面発光素子。
【請求項10】
第1、第2媒質の一方が透明電極から成るとともに、他方が空気または前記発光層を構成する材料から成ることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の面発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate