説明

面発光装置及びそれを用いた照明表示装置

【課題】車のナンバーの様な物体のIDに相当する識別文字又は識別記号を、暗所でも識別文字や識別記号の識別を飛躍的に容易にし、更に設置場所の特別な加工を行うことなく安易に装着するのとを可能とする。
【解決手段】エレクトロルミネッセンス素子と該エレクトロルミネッセンス素子からの発光に指向性を付与する光学部材と、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号を印刷した透過シート、乃至は切り抜いた識別文字や識別記号を備えた面発光シートを組み込んで表示する照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子を用いた指向性面照明装置に関するものである。特に物体のIDに相当する識別文字又は識別記号の照明表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」とも称する。)素子は面発光光源であり、蛍光体粉末を電極の間に挟んで発光素子とした分散型EL素子が知られている。分散型EL素子の一般的な形状は、蛍光体粉末を高誘電率のバインダー中に分散したものを、少なくとも一方が透明な二枚の電極の間に挟み込んだ構造からなり、両電極間に交流電場を印加することにより発光する。蛍光体粉末を用いて作成された発光素子は数mm以下の厚さとすることが可能で、面発光体であり、発熱が少ない、耐光性耐熱性に優れるなど数多くの利点を有するため、道路標識、各種インテリアやエクステリア用の照明、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の光源、大面積の広告用の照明光源等としての用途がある。
【0003】
分散型EL素子は、高温プロセスを用いないため、プラスチックを基板としたフレキシブルな素子の形成が可能である、真空装置を使用することなく比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能である、また発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することで素子の発光色の調節が容易である等の特長を有し、LCDなどのバックライト、表示素子へ応用されている。更に、この様な特性を利用して、文字や記号を表示する発光体に応用することが強く望まれてきた。
【0004】
しかし分散型EL素子は、多方向に光を発することによって、表示物や文字等の輪郭がぼけるという欠点を有していたるため、これを解決する手段として、プリズム等のレンズからなるシートをEL素子シートと組み合わせることが特許文献1や特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平9−73983号公報
【特許文献2】特開2003−197364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、十分な高輝度長寿命を達成する手段は未だ得られておらず、高輝度の状態で文字や記号といった情報を滲むことなくくっきり表現することが不十分であった。分散型EL素子は、一般に輝度を電圧によって調整できるが、輝度を上げると寿命が極端に短くなるため、高輝度で寿命が長く、かつ高輝度下での文字や記号の滲みやボケを低減することが重要となってくるが、上記特許文献記載の技術では、かかる課題の解決は未だ不十分であった。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来実現し得なかった認識性が高く、かつ高輝度長寿命を有するEL素子シートを提供することにある。
本発明の更なる目的は、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号の表示に適した、指向性を有する分散型EL素子を提供することにある。また本発明の他の目的は、指向性を有する分散型EL素子を組み込んだ付加価値の高い照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成することができる。
(1)エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が発光輝度100cd/mにお
いて15ルーメン/W以上である無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と指向性光学部材を含有することからなる面発光装置。
(2)エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が発光輝度200cd/mにおいて15ルーメン/W以上である無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と指向性光学部材を含有することからなる面発光装置。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)記載の面発光装置の発光側に、文字、図形、記号又はこれらの結合である画像情報を設けることを特徴とする照明表示装置。
(4)画像情報が、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号であることを特徴とする上記(3)に記載の照明表示装置。
(5)画像情報が自動車のナンバーであることを特徴とする上記(4)に記載の照明表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従い、特定の発光効率を有する無機分散型EL素子を指向性光学部材と組み合わせて用いることにより、高輝度長寿命でかつ視認性のよい面発光装置が得られ、これを光源として用いることで、ナンバープレートの様な加工取り付けを行いにくい既存物に簡単に装着して、優れた照明表示装置として長期に使用することが可能となる。更に、他との差別化に対して高付加価値を付与できる装置であり、高価な材料であるELの弱点を補うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、指向性を有する照明装置に適した分散型EL素子(面発光装置)と、該分散型EL素子を組み込んだ照明表示装置である。
【0011】
本発明の分散型EL素子は、発光層を、少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極で挟持した構成をもつ。発光層と電極の間には誘電体層を隣接することが好ましい。そして、本発明のEL素子の発光効率は、発光輝度100cd/m2で15ルーメン/W以上であることを大きな特徴とする。かかる発光効率のEL素子を指向性部材と組み合わせて用いることにより、高輝度長寿命でかつ視認性のよい、実用性に優れた面発光装置を得ることができる。高輝度長寿命の観点から、EL素子の発光効率は、発光輝度200cd/m2で15ルーメン/W以上であることがより好ましい。本発明の発光輝度は、輝度計を用いて測定することができ、具体的には、トプコン社製BM9で測定面にフォーカスして測定することができる。
【0012】
本発明の発光効率の高いEL素子は、下記(1)〜(5)の技術を適宜用いることにより、好ましくは2つ以上組み合わせて用いることにより、達成することができる。
(1)発光効率の高いEL蛍光体粒子(例えば、粒子サイズが0.1μm〜15μmの範囲のもの、粒子サイズの変動係数が35%未満のもの、粒子の積層欠陥密度の高いもの等)を使用する。(2)低抵抗の透明電極を用いる。(3)発光層の厚みを0.5〜30μmとする。(4)発光層中の蛍光体含有量を40〜95質量%とする。(5)誘電体層の誘電体粒子含有量を40〜95質量%とする。
特に、上記(1)の技術に、上記(2)〜(5)の少なくとも1つの技術を組み合わせて用いることが好ましい。本発明の発光効率が高いEL素子は、高輝度で駆動した場合でも駆動中のEL素子の発熱等が抑制されると共に、指向性部材と組み合わせて用いることにより、視認性と寿命を両立することができる。
【0013】
本発明の分散型EL素子は、例えば図1に示す通り、発光層1を、対向する透明電極2と電極3で挟持した構成をもつ。更に、発光層1と電極3の間に誘電体層4を有し、透明電極2の上にフィルムベース5を有することが好ましく、更に防湿フィルム6a及び6bで封止することが好ましい。
【0014】
本発明の発光層に好ましく用いられる蛍光体粒子の母体材料としては、具体的には第II族元素と第VI族元素とから成る群から選ばれる元素の一つ又は複数と、第III族元素と第V族元素とから成る群から選ばれる一つ又は複数の元素とから成る半導体の微粒子であり、必要な発光波長領域により任意に選択される。例えば、CdS,CdSe,CdTe,ZnS,ZnSe,ZnTe,CaS,MgS,SrS,GaP,GaAs,及びそれらの混晶、CaGa24,SrGa24,BaAl24等が挙げられるが、ZnS,CaS,SrS等を好ましく用いることができる。また、付活剤は、MnやCu等の金属イオン及び希土類元素等を好ましく用いることができる。共付活剤としては、Cl,Br,I等のハロゲン元素の他にAl等を好ましく用いることができる。さらに、蛍光体粒子の寿命を延ばすために、Au、Sb、Bi等の元素を添加することも好ましい。
【0015】
本発明に利用可能な蛍光体微粒子は、蛍光体母体と付活剤と融剤とを混合して焼成する焼成法(固相法)を好ましく用いることができる。融剤としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いることが好ましく、融剤の添加量は蛍光体原料に対して20質量%以上が好ましく、40質量%以上が微粒子で単分散の蛍光体粒子を得るためには特に好ましい。さらに、粒子成長抑制剤を添加して焼成することも、微粒子の蛍光体粒子を得るためには好ましい。また、加熱加圧した溶媒中で合成する水熱合成法、溶融した尿素を反応溶媒として用いる尿素溶融法、微小液滴化した蛍光体前駆体用液を熱分解する噴霧熱分解法等で形成することも微粒子で単分散の蛍光体粒子を得ることができるためより好ましい。また、蛍光体粒子の形成において、形成過程に物理的衝撃を加える工程を設けることが、EL素子の高輝度化のために好ましい。また、蛍光体粒子は、水分による劣化を防止するため粒子の表面に0.01μm以上1.0μm以下の範囲の酸化物や窒化物等の非発光シェル層を有することが好ましい。
【0016】
本発明のEL蛍光体粒子の粒子サイズは0.1μm〜15μmの範囲が好ましい。EL蛍光体粒子は、EL蛍光体の粒子表面付近での発光の寄与が大きく、粒子サイズを小さくして比表面積を大きくすることが発光効率の向上につながるためである。また、粒子サイズの変動係数が広くなると、発光効率の低い粗大粒子や微小粒子が多く含有されてしまうため、変動係数は35%未満が好ましい。さらに、EL蛍光体粒子は、電界の印加によって結晶内に偏析した銅化合物から発生した電子により励起され発光しているが、この銅化合物はZnS蛍光体の場合には、積層欠陥に形成されるため、粒子の積層欠陥密度が高い方が好ましい。積層欠陥を5nm以下の面間隔で10枚以上含有する粒子を30%以上有することが好ましい。
【0017】
発光層は、蛍光体粒子を分散剤に分散したものを用いることができる。分散剤としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデン等の樹脂を用いることができる。これらの樹脂に、BaTiO3やSrTiO3などの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー,遊星型混練機,ロール混練機、超音波分散機等を用いることができる。
【0018】
EL素子の一対の電極のうち少なくとも一方に用いられる透明電極は、スパッタリング等で形成したITO、導電性微粒子を結合剤中に分散・塗布した薄膜及びそれらとメッシュ状の金属電極等を組み合わせたもの等を用いることが好ましい。透明電極の表面抵抗値が0.01Ω/□以上100Ω/□以下の範囲が好ましく、30Ω/□以下の範囲が特に好ましい。
【0019】
誘電体層は、誘電率と絶縁性が高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。これらは金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO2,BaTiO3,SrTiO3,PbTiO3,KNbO3,PbNbO3,Ta23,BaTa26,LiTaO3,Y23,Al23,ZrO2,AlON,ZnS等が用いられる。これらは均一な膜として設置されても良いし、また粒子構造を有する膜として用いても良い。均一な膜の場合は、誘電膜の調製法はスパッター、真空蒸着等の真空成膜法であっても良く、この場合膜の厚みは通常0.1μm〜10μmの範囲で用いられる。
【0020】
発光層と誘電体層は、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、あるいはスプレー塗布法等を用いて塗布することが好ましい。特に、ドクターブレード法、スライドコート法及びエクストルージョンコート法のような連続塗布が可能な方法を用いることが好ましい。
【0021】
本発明において発光層の厚み(塗膜の乾燥後の膜厚)は、EL素子に印加される電界強度を高めて高輝度を得るために0.5μm以上30μm以下の範囲が好ましく、電極対に挟持される発光層と誘電体層の総膜厚は、1μm以上50μm以下の範囲が好ましい。発光層中の蛍光体含有量は、粒子密度を高めて高輝度をえるために40質量%以上95質量%以下の範囲が好ましい。また、誘電体層の誘電体粒子含有量は、誘電体層の誘電率を高めて発光層に電界を集中するために40質量%以上95質量%以下の範囲が好ましい。
【0022】
本発明のEL素子は、水分による劣化を防止するために水蒸気透過率が0.05g/m2/day以下の防湿フィルムで封止することが好ましい。また、EL素子の駆動による振動や雑音を相殺または吸収するために、絶縁層を挟んで補償電極層を設置して、発光層に印加する電圧と逆位相の電圧を印加したり、緩衝材層をEL素子に付与することが好ましい。
【0023】
本発明の用途を考えると、発光色は白色が好ましい。発光色を白色とする方法としては、例えば、銅とのマンガンが付活され、焼成後に徐冷された硫化亜鉛蛍光体のように単独で白色発光する蛍光体粒子を用いる方法や、3原色または補色関係に発光する複数の蛍光体を混合する方法が好ましい。(青−緑−赤の組み合わせや、青緑−オレンジの組み合わせなど)また、特開平7−166161号公報、特開平9−245511号公報、特開2002−62530号公報に記載の青色のように短い波長で発光させて、蛍光顔料や蛍光染料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法も好ましい。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30〜0.43の範囲で、かつy値が0.27〜0.41の範囲が好ましい。
【0024】
本発明における指向性シートは、アクリル製樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂等の透明樹脂が好ましく、無色透明に限定されず、着色剤を添加した樹脂でも良い。指向性シートの厚さに限定はないが、30μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上である。
【0025】
指向性シートは、ELシートの発光面が、レンズシートの1例であるプリズムレンズシートに接合し、このプリズムレンズシートを通して発光するようになっている。プリズムレンズシートは、その表面にはレンズ体としての複数の三角柱状のプリズム又はレンズ状球面体が形成されていることが好ましい。プリズム体は、図3の面発光素子(a)で詳細に示されるように、同一断面形状に形成されているとともに(指向性シート12a)、シート平面に沿って同方向(紙面直角方向)に真っ直ぐに延出し、ELシート10の射出光を所定の一方向に指向するようになっている。レンズ状球面体も、図3の面発光素子(b)で詳細に示されるように同一断面形状に形成されているとともに(指向性シート12b)、シート平面に沿って同方向(紙面直角方向)に延出し、ELシート10の射出光を所定の一方向に指向するようになっている。より詳しくは、レンズ機能を有する立体模様が、実質的に三角柱からなるプリズム形状で頂稜の方向が互いにほぼ平行になるように配列した立体模様、又は断面が正弦曲線の波形の柱状体でその長さ方向が互いにほぼ平行になるように配列した立体模様、又は断面が半円形の柱状体でその長さ方向が互いにほぼ平行になるように配列した立体模様、又はピラミッド状もしくは半球状の凸状の単位を配備した立体模様である。
【0026】
プリズム形状の三角柱の形は断面が三角形であり、該三角形の形状は等辺、不等辺のどちらでもよいが、EL発光層面に対し垂直な方向に出射光を導く時には等辺三角形、特に二等辺三角形を出射方向に一体化するのが好ましい。三角形の頂角は幅広く選び得るが、60〜150°が好ましい。この範囲内で、出射方向が大きく分かれ過ぎることなく、且つ所望の出射方向に向かわせる効果が得られ、好ましい。そして、頂稜の方向がほぼ平行していると同時に三角柱の斜面が隣接の三角柱の斜面と交線を共通し合うように連なったレンズアレイが好ましい。更に、このプリズム形状は頂部及び/又は谷部が曲率を持ったレンズアレイでもよく、頂部と谷部がともに曲率を有する断面である正弦曲線様の波形の柱状体でその長さ方向が互いにほぼ平行になるように配列した立体模様でもよい。更に、断面が半円形又は円の一部の弧状の柱状体でその長さ方向が互いにほぼ平行になるように配列した立体模様も利用できる。また、ピラミッド状や半球状の凸状の単位を平面に連続して配備したレンズアレイも好ましい。
【0027】
次に本発明の面発光装置を用いた照明表示装置について説明する。
本発明では、上記面発光装置の発光側に、文字、図形、記号又はこれらの結合である画像情報を設けることを特徴とする。
【0028】
上記画像情報を上記面発光装置の発光側に設ける方法としては、該画像情報を透過シートの印刷又はプリントし、該透過シートを面発光装置の発光側に組み込む方法、該画像情報を実質的に光を透過しない切り抜き形態で、直接面発光装置の発光側に付着させる、または指向性シートの外側に付着させる方法、乃至は該画像情報を実質的に光を透過する切り抜き形態で、直接面発光装置の発光側、または指向性シートの外側に付着させる方法等が挙げられる。
【0029】
透過シートに画像情報を印刷又はプリントする方法としては、PET・TAC等の透過プラスチックシートにゼラチン等のインクを付着しやすいバインダー層を塗布したものにインクジェット等のインクでプリントしても良く、透過プラスチックシートに、直接オフセット印刷やスクリーン印刷等で油性インクを印刷しても良い。更に、小量多種生産を考慮し、生産性の高い銀塩方式の透過シートを用いてもよい。印刷する材料は、耐熱性や耐光性が優れたものが好ましい。また、透過シートは、ラミネーター等による圧着を防止するために、抗張力の高い材質であることが好ましく、具体的には8kgf/mm2以上の抗張力を有するものが好ましい。更に透明シートの厚味は50μm以上であることが好ましく、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは150μm以上であり、500μm以下である。
【0030】
画像情報の濃度は、特に限定はないが、背景と画像情報との濃度差が大きい方が好ましく、例えば、X−riteステータスA濃度で2.0以上の濃度差があることが好ましい。材質としては、実質的に不透明にできるものであれば特に制限はなく、熱や光による変褪色を伴わないものが好ましい。Al、Fe、Cu等の安価で薄層にすることが可能な金属成分が好ましい。
【0031】
画像情報を有する透過シートと、発光層及び指向性部材との重なり方は特に限定てきでなく、発光層の上に指向性部材、その上に画像情報を有する透明シートの順番が最も好ましいが、発光層の上に画像情報を有する透明シート、その上に指向性部材の順であってもよい。
【0032】
更に、発光層の上に指向性部材、その上に画像情報を有する透明シート又は切り抜き形態の画像情報を順番に並べた積層体をラミネーターでシールしても良く、その際には常温でシールするコールドラミネーターが好ましい。
【0033】
本発明の画像情報は、文字、図形、記号等の複数の任意に組み合わせからなっていてよく、商業目的として表示される広告、道路標識や各種案内用の標識、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号等が挙げられる。本発明では、画像情報の特定方向への視認性を明確にするという観点から、該画像情報は、道路標識、案内用標識、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号であることが好ましい。
【0034】
ここで、「物体のIDに相当する識別文字又は識別記号」とは、該画像情報が付属乃至は付帯する物体の、帰属、所属または所有に関する情報を表示し、他の物体と異なることを識別するための文字または記号を意味する。具体的には、車のナンバー、家の表札、更には、文字による住居表示、所謂ランドマークとして用いられる場所や存在を示す記号やマーク等が挙げられる。商業目的として文字や記号を用いて表示される広告は、屋外看板といったある媒体を介して広告主の名前を明らかにし、アイデア、製品、そしてサービスを人を介さずに示し、また勧めるものであるため、本発明にいう物体のIDに相当する識別文字又は識別記号に相当しない。
【0035】
本発明でいう「車のナンバー」とは、国土交通省運輸支局・検査登録事務所で交付される自動車固有の車両登録番号を示す。この場合、物体は車に相当し、IDに相当する識別文字又は記号は、車両登録番号に相当する。ナンバーを表す文字の切り抜き、又は文字を印刷した透明シートをELシートと一緒にラミネートすることにより、偽造や改変も防止できる上に軽量化も実現できる。
【0036】
また、「家の表札」とは、家の玄関または門に取り付ける家の世帯主を示す表示のことである。この場合、物体は家に相当し、IDに相当する文字は、表札に記されている姓名に相当する。表札は、はめ込み式等の既設の設備に簡易に添付・付着させる場合が好ましく、本願の表示シートが適した形体のひとつとなる。
【0037】
また、本発明の照明表示装置は、IDに相当する識別記号や識別文字以外も、道路標識や表示板といった有る特定方向に案内を促す表示板を構成する発光体としても好ましく使用される。
【0038】
本発明では、電源としてAC100V電源を用いてもよいが、太陽光ソーラー電池や乾電池を電源に用いても良いし、省電力の目的で赤外線センサーと組み合わせて、人が近づいたときのみ発光させても良い。
【実施例】
【0039】
以下に本発明のEL表示装置の具体的な実施例を記載するが、本発明はこの実施例に制限されるものではない。
【0040】
実施例1
<蛍光体粒子A>
結晶子サイズが25nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gに、硫酸銅をZnSに対して0.07モル%添加した乾燥粉末に、融剤として塩化ナトリウム1.0g、塩化バリウム二水和物2.1g及び塩化マグネシウム六水和物4.25gを混合して混合物を得た。次いで、この混合物をアルミナルツボに充填し、空気中で1200℃で4時間焼成して焼成物を得た。次いで、この焼成物を1Nの塩酸水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、融剤を除去して粉末を得た。次いで、得られた粉末を、粉末が粉砕されない程度にボールミル処理を施した後、再度アルミナルツボに充填し、空気中で700℃で6時間焼成し粉末を得た。次いで、得られた粉末を10%のKCN水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、粉末表面に析出した余分な銅化合物を除去して蛍光体粒子Aを得た。
このようにして得られた蛍光体粒子Aは、平均粒子サイズが25μm、変動係数が43%であった。また、蛍光体粒子を乳鉢で粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、加速電圧が200kVの透過型電子顕微鏡で観察したところ、砕片の40%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
【0041】
<蛍光体粒子B>
結晶子サイズが25nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gに、硫酸銅をZnSに対して0.09モル%添加した乾燥粉末に、融剤として塩化ナトリウム2.0g、塩化ストロンチウム六水和物27.0g及び塩化マグネシウム8.5gを混合して混合物を得た。次いで、この混合物をアルミナルツボに充填し、空気中で1200℃で4時間焼成して焼成物を得た。次いで、この焼成物を1Nの塩酸水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、融剤を除去して粉末を得た。次いで、得られた粉末を、粉末が粉砕されない程度にボールミル処理を施した後、再度アルミナルツボに充填し、空気中で700℃で6時間焼成し粉末を得た。次いで、得られた粉末を10%のKCN水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、粉末表面に析出した余分な銅化合物を除去して蛍光体粒子Bを得た。
このようにして得られた蛍光体粒子Bは、平均粒子サイズが14μm、変動係数が32%であった。また、蛍光体粒子を乳鉢で粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、加速電圧が200kVの透過型電子顕微鏡で観察したところ、砕片の80%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
【0042】
<蛍光体粒子C>
結晶子サイズが25nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gに、硫酸銅をZnSに対して0.09モル%添加した乾燥粉末に、融剤として塩化ナトリウム2.0g、塩化ストロンチウム六水和物27.0g及び塩化マグネシウム8.5g、さらに粒子成長抑制剤として酸化マグネシウム5gを混合して混合物を得た。次いで、この混合物をアルミナルツボに充填し、空気中で1200℃で4時間焼成して焼成物を得た。次いで、この焼成物を1Nの塩酸水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、融剤及び粒子成長抑制剤を除去して粉末を得た。次いで、得られた粉末を、粉末が粉砕されない程度にボールミル処理を施した後、再度アルミナルツボに充填し、空気中で700℃で6時間焼成し粉末を得た。次いで、得られた粉末を10%のKCN水溶液で洗浄した後、蒸留水で水洗を数回繰り返して、粉末表面に析出した余分な銅化合物を除去して蛍光体粒子Cを得た。
このようにして得られた蛍光体粒子Cは、平均粒子サイズが9μm、変動係数が28%であった。また、蛍光体粒子を乳鉢で粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、加速電圧が200kVの透過型電子顕微鏡で観察したところ、砕片の80%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
【0043】
<EL素子A>
上記で得られた蛍光体粒子Aを用いて、以下の方法で白色EL素子を作成した。
平均粒子サイズが0.2μmのBaTiO3誘電体微粒子(キャボットスペシャリティーズ社製;BT−02)を30wt%のシアノレジン(信越化学社製;CR−S)溶液に分散し、誘電体層の膜厚が25μmとなるように、膜厚75μmのアルミシート上にドクターブレード塗布し、120℃で1時間乾燥した。次いで、蛍光体粒子Aと蛍光顔料(シンロイヒ社製;FA−001)とをCIE色度座標でx=3.3±0.2、y=3.4±0.2の範囲となるような割合で30wt%のシアノレジン溶液に分散し、発光層の膜厚が50μmとなるように、前記誘電体層上にドクターブレード塗布し、120℃で1時間乾燥し、積層体を得た。
【0044】
次いで、上記積層体の発光層表面に、膜厚75μmの透明PETフィルム上に表面抵抗率が100Ω/□のITO透明電極が蒸着された導電性フィルムを、ITO面が接するように150℃でラミネートしてELセルを得た。次いで、このELセルのITOとアルミシートから電源供給用の端子を引き出した後、吸水層のナイロン6フィルムと防湿フィルムのPCTFEフィルムを貼り合わせてEL素子Aを得た。
【0045】
<EL素子B>
蛍光体粒子Bを用いて発光層の膜厚を25μmとしたこと以外は、EL素子Aと同様にしてEL素子Bを作成した。
【0046】
<EL素子C>
蛍光体粒子Cを用いて発光層の膜厚を25μmとしたこと以外は、EL素子Aと同様にしてEL素子Cを作成した。
【0047】
以上のように作成したEL素子Aの上面に、物体のIDに相当する識別文字を印刷した透過シートXを作成した後、図2に示すように両面からラミネートフィルムYで挟み込み両面ラミネートを行い接着した。物体のIDに相当する識別文字として、家の表札を作成した例を以下に示す。富士写真フィルム社(株)製、フジGカラーフイルム プロレーザーFTに、ダースト社製 Lanbda76型レーザー露光機を用い、表札に表示する姓名を表す文字を露光し、その後ノーリツ社製CSR型現像処理機を用いて識別文字をプリント印刷した透過シートXを作成した。ラミネートは、(株)ケイエヌトレーディング社製 屋外用ラミネートフィルムPOL150を使用し、ロール式ラミネーターLOV6507を用いて実施した。この様にして出来た発光素子シートを試料001とした。
【0048】
図2に示されるEL素子Aの上に、更に図3で示されるアクリル樹脂製の2種類の指向性シートと張り合わせて発光素子シートを作成し、試料002,003とした。指向性シート12(a)は、突起部断面が一辺100μmの正三角形になるような形状であり、指向性シート12(b)は、突起部断面が一辺50μm半径を有する半円となるような形状である。また、この様な断面を維持するような平行突起を持つ形態とした。また、発光素子シートの大きさは10cm×30cmとした。EL素子B及びCを用いて、上記と同様に、それぞれ発光素子シートを作成して、試料004、005、006、及び、007、008、009とした。
【0049】
上記で作成したEL素子Aを50、100、200cd/m2の輝度で、EL素子BとCを100、200cd/m2の輝度で駆動するように、交流電圧を120Vに固定してその周波数を調整した。このとき、輝度は輝度計(トプコン社製;BM9)で測定し、各輝度で駆動しているときの消費電力をパワーマルチメーター(NF回路社製;2721)で測定して発光効率を計算した。初期輝度300cd/m2で駆動した場合の輝度の半減時間τ300についても測定した。さらに、正面及び斜めからの指向性の指標として、試料が照射している方向において、垂線から30°120cm離れた位置、及び照射方向の正面120cmから、文字の滲み具合について5段階10人の官能評価を暗室内において行った。滲みについては、垂線から30°及び正面両方の平均値として、くっきり見える良い状態を5、ぼやけて見える悪い状態を1とした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より、BおよびCのEL素子と組み合わさることにより、指向性シート(a)、(b)の効果が顕著に表れ、大幅な滲み性能の良化を示していることが判る。
【0052】
実施例2
実施例1同様にEL発光シートを作成した後、EL素子Aの上面に、アルミ薄板で打ち抜いた物体のIDに相当する識別文字を作成し緑色に着色した不透明文字Zを作成し、図4に示すようにラミネートフィルムYで挟み込んで両面ラミネートを行って接着させた。物体のIDに相当する識別文字として、車のナンバーを作成した例を以下に示す。
【0053】
図4に示すシート状の発光体をナンバープレートの大きさに合わせる以外は全く同じになるようにして、実施例1の発光体と置き換えたところ、同様の効果が認められた。本発明の照明表示装置は、厚味が薄く車の設置専用部位の大幅な改造を行うことなく簡易に装着が可能となる。更にELシートが明るく鮮明に光ることで、遮られた文字部分を鮮明に認識することが可能となり、プレート周囲からの間接照明を不要とし、更に夜間走行時のナンバープレートの識別を安易にする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に用いることのできるEL素子(発光素子シート)の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1で用いた照明表示装置を示す概略図である。
【図3】本発明の面発光装置の構成例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例2で用いた照明表示装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 発光層
2 透明電極(ITO層)
3 電極
4 誘電体層
5 フィルムベース
6a、6b 防湿フィルム
10 EL発光シート
12(a)、12(b) 指向性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が発光輝度100cd/mおいて
15ルーメン/W以上である無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と指向性光学部材とを含有することからなる面発光装置。
【請求項2】
エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が発光輝度200cd/mにおいて
15ルーメン/W以上である無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と指向性光学部材とを含有することからなる面発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の面発光装置の発光側に、文字、図形、記号又はこれらの結合である画像情報を設けることを特徴とする照明表示装置。
【請求項4】
画像情報が、物体のIDに相当する識別文字又は識別記号であることを特徴とする請求項3記載の照明表示装置。
【請求項5】
画像情報が自動車のナンバーであることを特徴とする請求項4に記載の照明表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−66133(P2006−66133A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245422(P2004−245422)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】