説明

靴のソールおよびこのようなソールの成形装置

本発明は、特にスポーツを行うための靴のソールに関し、靴底の少なくとも一部の面に対応する概略の形状の支持体(3)と、熱成形材料からなる少なくとも1つの第1の層とを備えるソールにおいて、熱成形材料からなる少なくとも1つの第2の層を備え、前記第2の層(6)は、前記第1の層(5)の位置で少なくとも1つの自由領域(7,8,9,10)を残すように部分的に前記第1の層を被覆し、前記第1の層(5)の構成材料の熱成形温度が、前記第2の層(6)の構成材料の熱成形温度よりも低いことを特徴とする。
本発明は、さらに前記ソールを形成する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にスポーツを実践するための靴のソールに関する。本発明は、さらに、このソールの成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
徒競走、ゴルフまたはスキー等のスポーツを行う場合、足の特定の領域を使うことになる。これらの特定の領域の働きは、このスポーツに応じて及ぼされる動きに関して足が耐えられる多少とも大きな圧力および応力により特徴づけられる。
【0003】
従来から、製造業者は、全体の形状が靴底の少なくとも一部の面に対応する支持体を含み、熱成形材料を含む、特にスポーツ実践用の靴のソールを生産している。
【0004】
熱成形材料は、高温時に可塑性を有する材料である。この材料は、所定の形状に成形され、冷却時にこの形状を保持することになる。
【0005】
各層は、生産時に溶融されて、標準的な加工ソールを構成する。
【0006】
このようなソールの構造および形状は、特定のスポーツの実践に関して足が及ぼす動きに応じて設計される。快適性を増し、また使用者の能力を向上させるために、ソールは、足の幾つかの特定部分を安定化させ、衝撃を緩和し、あるいは押し出す領域を有する。
【0007】
足は、骨、筋肉、および関節部の集合を含む複雑な構造である。特に、足は、一連のアーチで構成されている。この一連のアーチは、足の筋肉と靭帯とにより補強され、通常、土踏まずと呼ばれるドーム形を形成する。土踏まずは、個人差のある一定の体積、大きさ、または位置を有しうる。従って、一人ひとりの足の形態は異なる。
【0008】
このため、量産されるこうしたソールは、個人の足または様々な形態に適合することができないという重大な欠点を有する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、特定の領域で足を保持する品質と衝撃を緩和する品質を保ちながら足の形状に合わせるように正確な位置で変形可能な、工業的に製造される標準ソールを提案することによって、上記の欠点を解消するものである。
【0010】
このため、本発明は、全体の形状が靴底の少なくとも一部の面に対応する支持体と、熱成形材料からなる少なくとも1つの第1の層とを備えるソールに関し、このソールは、第1の層を第1の層の位置で少なくとも1つの自由領域を残すように部分的に被覆する、熱成形材料からなる少なくとも1つの第2の層を備え、第1の層の構成材料の熱成形温度が、第2の層の構成材料の熱成形温度よりも低く、第1の層は、ソールのうちの足の後部および中央部を支持するための領域に少なくとも広がり、ソールのほぼ側縁まで広がり、第2の層は、ソールの後部領域に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る構成により、第1の層の熱成形温度でソールを加熱し、これによって、使用者の足の正確な形状にソールを適合させることができる。この場合、この層は変形可能であるが、これよりも高い熱成形温度を有する最終層はその形状を保つ。
【0012】
さらに、第2の層がソールの後部領域にのみ配置されることによって、足の前部の敏感な部分を残しながら、最もカスタマイズが必要なソール部分を適合させることができる。
【0013】
好適には、ソールの後部領域で、少なくとも1つの側面領域を残すように第2の層が第1の層の内側に配置されている。
【0014】
この構成によれば、かかと領域では安定化特性および衝撃緩和特性によりソールの初期構造を保ちながら、足の中央、土踏まず、および側縁に対応する領域ではソールの成形を行うことができる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、第2の層は第1の層の上に配置される。
【0016】
有利には、第1の層を構成する材料の熱成形温度は60〜70℃である。
【0017】
好適には、第1の層はポリエステル複合樹脂から構成される。
【0018】
本発明の特徴によれば、第2の層は、ポリカプロラクトン、ポリアミド、およびポリエステルグリッドを含む複合樹脂から構成される。
【0019】
本発明は、また、このようなソールの成形装置に関し、この装置は、下部と上部を有するケーソンと、ケーソンの下部に配置されて第1の層の熱成形温度に対応する温度にソールを加熱するように構成された加熱手段と、加熱手段の上に配置された少なくとも1つのソールの支持手段とを備え、支持手段は、軟化させる第1の層の少なくとも自由領域に面して配置された少なくとも1つの開口部を備える。
【0020】
この装置は、足の特定の形態にソールを適合させるようにソールを加熱することができる。
【0021】
有利には、装置は、少なくとも1つのソールの支持手段に配置されたソールの存在を検知し、ソールの存在が検知されたときに加熱手段を作動可能にするように構成された検知手段を備える。
【0022】
好適には、装置の検知手段は、少なくとも1つの連結パレットから構成され、このパレットは、ソールが連結パレットに配置されたときにソール後部を支持し、接点を作動するように構成されている。
【0023】
有利には、検知手段は、各ソールに対して1つずつ、2個のパレットを含む。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、装置は、ケーソンに連結式に取り付けられて開放位置と閉鎖位置との間で移動するカバーを備える保護手段を備え、閉鎖位置で加熱手段が作動可能にされる。
【0025】
装置に2個のソールを設置すると、各パレットの接点を作動させることができる。2個の接点の作動と、閉鎖位置へのカバーの位置決めとによって、加熱手段が作動可能にされる。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、加熱手段は少なくとも1つのランプを備える。
【0027】
この特徴により、ランプの数と照明時間とに応じて使用者に対して容易に加熱力を変えることができる。
【0028】
有利には、加熱手段は、1個のランプが各ソールの下に配置されて、1個のランプが2個のソールの内縁に配置されるように平行に置かれた、細長い形状の3個のランプを含んでいる。
【0029】
これらの構成により、加熱手段の最適作動が可能になる。
【0030】
本発明の1つの特徴によれば、ソールの支持手段が、V字型をなす2個の翼を有するプレートを備える。
【0031】
いずれにしても、本発明は、限定的ではなく例として、このソールとこれの成形装置の実施形態を示す添付の概略図面を参照しながら、以下の説明を読めば、一層理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ソールの下面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線による横断面図である。
【図3】図3は、この装置を概略的に示す図である。
【図4】図4は、この装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、靴のソール1を示す。ソール1は、靴に挿入されるように構成されている。ソール1は、全体の形状が靴底の面に対応する支持体3を含む。
【0034】
図2に示すように、ソール1は、熱成形材料からなる第1の層5と第2の層6とを含む。第1の層5は、支持体3上に配置されている。
【0035】
第1の層5は、足の後部および中央部を支持するための支持体3の領域にほぼ広がっており、また、支持体3のほぼ側縁7まで広がっている。
【0036】
第2の層6は、支持体3の後部で第1の層5の上に配置されている。第2の層6は、第1の層5の内側に配置されて、第1の層5において、支持体3の側縁7、後縁8、中央領域9およびヒールの中央10を含む領域を残すようにされている。
【0037】
第1の層5および第2の層6は、複合樹脂からなる熱成形材料を用いて構成される。第1の層5の複合樹脂はポリエステルである。ポリエステル樹脂の熱成形温度は65℃である。第2の層6の複合樹脂は、ポリカプロラクトン、ポリアミド、およびポリエステルグリッドから構成される。第2の層6の熱成形温度は75〜80℃である。
【0038】
図3に示すように、装置15は、ソール1を成形するために使用される。
【0039】
装置15は、下部17および上部18を含む、ほぼ平行六面体のケーソン16の形状を呈する。ケーソン16の下部17は、3個のランプ20が底に平行配置された容積を画定する。この3個のランプは、長手方向に配置されており、1個は中央に、他の対称な2個は第1のランプの両側に置かれる。3個のランプは、1個当たりの出力が500ワットのハロゲンランプであり、全体で1500ワットの出力を供給可能である。
【0040】
下部17と上部18は、2個の翼21、22を含む支持プレート19により分離されており、2個の翼は横断面からみてV字型をなし、その先端は下向きでケーソンの長手方向中央面に配置されている。2個の翼21、22は、2個のソール用の支持面を形成する。支持プレートは、その中央部に開口部26を有し、この開口部に面して配置されるソールの領域の好適な加熱を可能にする。開口部26の前方でV字型の先端の位置には、上向きの長手方向中央リブ24が設けられている。開口部26の後方には円弧形の2個のリブ25が設けられ、この円弧形のリブは、長手方向の中央部分をそれぞれ含み、この中央部分が、外側に向いた横方向部分に接続されている。これらのリブは、支持プレートの2個の翼21、22に2個のソールを位置決めする役割をする。
【0041】
ケーソンの上部は、支持プレート19の上部で開口部26の後方に、装置に配置される2個のソールの後部領域を支持するための2個の連結パレット27、28を備える。各パレットは、ランプの供給回路に配置された電気接点(図示せず)に結合されており、この電気接点は、パレットの上に載せられるソールの重量によってパレットにより閉じられるように構成されている。実際には、2個のパレットに結合される接点は、直列接続されている。
【0042】
ケーソンの上面は、これの縁30の1つに沿って連結式に取り付けられるガラス保護カバー29により閉じられる。カバー29は、ランプの供給回路に取り付けられた電気接点に同様に結合され、カバーの閉鎖時だけ給電を可能にするようにしている。
【0043】
ランプの給電制御は、第1の層5の軟化温度と、軟化させる質量とに応じて、予め決められた時間加熱を行うことを可能にするタイミング装置を含むことができる。加熱時間は、たとえば10秒とすることができる。
【0044】
この装置は次のように使用される。
【0045】
工場で標準加工され、使用者の足の寸法に合わせた一組のソールについて、装置のカバー29を開けて、これらの2個のソールのそれぞれの支持体21、22とパレット27、28とに位置決めする。パレットに結合された接点が閉鎖位置で作動される。カバー29を再び閉め、カバーは、結合されている接点を閉鎖位置で作動する。スイッチを1回押すと、所定の時間だけ加熱サイクルが開始されて、熱成形材料からなる第1の層5を軟化するが、足の安定化および保持を行う後部領域に配置された第2の層6は軟化しない。なお、ランプの位置とプレート19の支持体21、22の傾斜とによって、形状を適合させる領域、特に土踏まずの領域で均質な加熱が行われる。
【0046】
第1の層5を軟化した後、ソールを装置から取り出して、使用者の靴か、または成形支持体に置いてから、使用者が、部分的に可塑性を有する状態にあるソールを足で押して、2つのソールを自分の足の形に加工する。冷却後、ソールは、与えられた形状を保持する。
【0047】
当然のことながら、本発明は、例として説明した上記のような靴のソールと、このソールの成形装置の実施形態だけに限定されるものではなく、その反対に、あらゆる変形実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にスポーツを実践するための靴のソール(1、2)であって、概略の形状が靴底の少なくとも一部の面に対応する支持体(3)と、熱成形材料からなる少なくとも1つの第1の層とを備えるソールにおいて、
熱成形材料からなる少なくとも1つの第2の層を備え、前記第2の層(6)は、前記第1の層(5)の高さで少なくとも1つの自由領域(7,8,9,10)を残すように部分的に前記第1の層を被覆し、
前記第1の層(5)の構成材料の熱成形温度が、前記第2の層(6)の構成材料の熱成形温度よりも低く、
前記第1の層(5)は、前記ソール(1、2)のうちの足の後部および中央部を支持するための領域に少なくとも広がり、前記ソール(1、2)のほぼ側縁(7)まで広がり、前記第2の層(6)は、前記ソール(1、2)の後部領域に配置されていることを特徴とするソール(1、2)。
【請求項2】
前記ソール(1、2)の後部領域において、前記第2の層(6)は、少なくとも1つの側面領域を残すように前記第1の層(5)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のソール(1、2)。
【請求項3】
前記第2の層(6)は、前記第1の層(5)の上に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のソール(1、2)。
【請求項4】
前記第1の層(5)の構成材料の熱成形温度は60〜70℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のソール(1、2)。
【請求項5】
前記第2の層(6)の構成材料の熱成形温度は75〜80℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のソール(1、2)。
【請求項6】
前記第1の層(5)はポリエステル複合樹脂から構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のソール(1、2)。
【請求項7】
前記第2の層(6)は、ポリカプロラクトン、ポリアミド、およびポリエステルグリッドを含む複合樹脂から構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のソール(1、2)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のソール(1、2)の成形装置(15)であって、
下部(17)と上部(18)を有するケーソン(16)と、
前記ケーソンの下部(17)に配置されて前記第1の層(5)の熱成形温度に対応する温度に前記ソール(1、2)を加熱するように構成された加熱手段(20)と、
前記加熱手段(20)の上に配置された少なくとも1つのソール(1、2)の支持手段(19、21、22)と
を備え、
前記支持手段は、軟化させる第1の層(5)の少なくとも自由領域(7、9)に面して配置された少なくとも1つの開口部(26)を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのソール(1、2)の支持手段(19、21、22)に配置されたソール(1、2)の存在を検知し、前記ソール(1、2)の存在が検知されたときに前記加熱手段(20)を作動可能にするように構成された検知手段(27、28)を備えることを特徴とする請求項8に記載の装置(15)。
【請求項10】
前記検知手段(27、28)は、少なくとも1つの連結パレット(27、28)から構成され、前記連結パレットは、ソール(1、2)が前記連結パレット(27、28)に配置されたときに前記ソール後部を支持し、接点を作動するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の装置(15)。
【請求項11】
2個のソール(1、2)を加熱するように構成され、前記検知手段(27、28)は、各ソール(1、2)に対して1つずつ、2個のパレット(27、28)を備えることを特徴とする請求項9または10に記載の装置(15)。
【請求項12】
前記ケーソン(16)に連結式に取り付けられて開放位置と閉鎖位置との間で移動するカバー(29)を備える保護手段を備え、前記閉鎖位置で前記加熱手段(20)が作動可能にされることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項13】
前記加熱手段(20)は、少なくとも1つのランプ(20)を含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項14】
2個のソール(1、2)を加熱するように構成され、前記加熱手段(20)は、1個のランプ(20)が前記各ソール(1、2)の下に配置されて、1個のランプ(20)が2個のソール(1、2)の内縁に配置されるように平行に設けられた、細長い形状の3個のランプ(20)を備えることを特徴とする請求項13に記載の装置(15)。
【請求項15】
2個のソール(1、2)を加熱するように構成され、前記支持手段(19、21、22)は、V字型をなす2個の翼(21、22)を有するプレート(19)を備えることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の装置(15)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538722(P2010−538722A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524547(P2010−524547)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051550
【国際公開番号】WO2009/044023
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510066662)ソシエテ・ダンポルタスィヨン・ドゥ・ディフューズィヨン・ウ・ディストリビュスィヨン・ダルティクル・ドゥ・スポール・エス.アイ.デー.エー.エス. (1)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’IMPORTATION DE DIFFUSION OU DISTRIBUTION D’ARTICLES DE SPORT S.I.D.A.S.
【住所又は居所原語表記】ZA Le Parvis, 38500 VOIRON, FRANCE
【Fターム(参考)】