説明

靴下

【課題】 靴下の風合いが良好で製造コストを抑えつつ、清涼感を有し、通気性・速乾
性に優れた靴下を提供する。
【解決手段】 清涼感を有する糖アルコールを付与した糸と、カバード糸とから編成された靴下により解決する。本発明に係る靴下は清涼感を有する糖アルコールを付与した糸を使用しているため、靴下装着時に足から出た汗が当該糖アルコールの吸熱反応により、外気とのガス交換があまりない状況下でも清涼感を得ることができる。また、本発明に係る靴下はカバード糸を使用しているため、柔軟な風合いを有している。このように清涼感を有する糖アルコールを付与した糸とカバード糸との組み合わせにより、清涼感を有し、通気性・速乾性に優れた靴下を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関し、特に清涼感を有し、通気性・速乾性に優れた靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、靴下は一度装着した後、その後長時間装着することが多い。その一方で、靴は通気性が悪いため、靴内の温度が上昇し、足が蒸れて不快に感じることが多い。また、靴内の温度が上昇することにより発生した汗で靴下がべたつき、靴下の装着感が低下する。また、このような状況下では細菌が発生しやすくなり、これを原因とする異臭が発生する等の問題がある。特に日本の温暖期は高温・多湿であるため、上記のような問題が起こりやすい。
【0003】
一方、衣料内の温度上昇を抑え、快適な着心地が得られる生地が種々検討されている。例えば、特開2001−295158号公報には、熱伝導性が高く、吸湿率が1〜10%のエチレンビニルアルコール繊維と、吸水性を有し、吸湿率が6〜20%の綿糸とを合撚した複合糸を使用することにより、清涼感のある生地や衣類が得られる旨が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−295158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、靴下の風合いや製造コストを考慮すれば、従来の靴下製造に使用されている糸を利用して通気性・速乾性・清涼感を向上させることが好ましい。また、靴の中の環境は衣類内の環境とは異なり、外気とのガス交換が容易ではない。そのため、熱や汗などの水分を吸収してもその熱や水分を外気に発散することが困難な状況にある。
【0005】
従って本発明は、靴下が本来持っている風合いを維持し、製造コストを抑えつつ、清涼感を有し、通気性・速乾性に優れた靴下を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために、清涼感を有する糖アルコールを付与した糸と、カバード糸とから編成された靴下を提供するものである。本発明に係る靴下は清涼感を有する糖アルコールを付与した糸を使用しているため、靴下装着時に足から出た汗が当該糖アルコールの吸熱反応により、外気とのガス交換が容易でない状況下でも清涼感を得ることができる。また、本発明に係る靴下はカバード糸を使用しているため、柔軟な風合いを得ることができる。このように清涼感を有する糖アルコールを付与した糸とカバード糸との組み合わせにより、清涼感を有し、通気性・速乾性に優れた靴下を提供することができる。
【0007】
本発明に係る靴下の好ましい態様は以下のとおりである。前記清涼感を有する糖アルコールは、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールからなる群から選択されることが好ましい。
【0008】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸は、綿糸または綿を含む混合糸であることが好ましい。綿糸は吸湿性に優れていることから、汗などの水分が吸収され易くすると共に、その吸収した汗が清涼感を有する糖アルコールと吸熱反応し易くなる。綿と混紡する素材は特に限定はなく、麻などの天然セルロース系繊維、レーヨン等の再生セルロース系繊維、ポリエステル、アクリル等の合成繊維などを選択することができる。また混紡率は、綿糸の吸湿性が損なわれない範囲で決定すればよい。
【0009】
前記カバード糸は伸縮性を有することが好ましい。具体的には、前記カバード糸は、伸縮性を有する芯糸と、当該芯糸を被覆するポリエステル糸とからなることが好ましい。これにより、靴下に柔軟な風合いとともに伸縮性を付与することができる。
【0010】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸は、肌との接触面を少なくし、シャリ感を付与するための凹凸部を有していることが好ましい。凹凸部を備えることにより、上記のように肌との接触面を少なくし、シャリ感が付与されるという効果のほかに、通気性が良くなるため、清涼感の向上効果や細菌の増殖抑制効果も得ることができる。
【0011】
前記靴下の編地は、メッシュ編み、天竺編み、リブ編み、カノコ編み、パイル編みのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、靴下が本来持っている風合いを維持し、製造コストを抑えつつ、清涼感を有し、通気性・速乾性に優れた靴下を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る靴下は、既述のとおり、清涼感を有する糖アルコールを付与した糸と、カバード糸とから編成されてなる。
【0014】
「清涼感を有する糖アルコール」は、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールからなる群から選択されることが好ましい。これらの糖アルコールは吸湿性と吸熱性を有するため、汗等の水分を吸収し、清涼感をもたらすことができる。これらの糖アルコールのうち、安定供給、コスト、知名度等の観点から、特にキシリトールが好ましい。なお、上記糖アルコールは、単独でも、1種以上を併用してもよい。
【0015】
「清涼感を有する糖アルコールを付与した」とは、ファンデルワールス力、水素結合、共有結合、イオン結合、またはこれらの複合的な作用により、糸の表面または繊維の間に上記糖アルコールのいずれかが存在している状態をいう。
【0016】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与する方法としては、公知の加工法を採用することができる。例えば、キシリトールを糸に付与する例を説明すると、浴槽内に市販のキシリトール加工剤(商品名TASTEX、ランクセス社製)を糸の重量を基準(100重量%)として0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.0%投入し、10〜30分間浸漬する。その後、吸水性のある柔軟剤(商品名ネオソフミン、ミヨシ油脂社製)を添加し、50℃で20分間反応させる。その後、必要に応じて約10分間加圧脱水を行い、100℃で約2時間反応させることにより、キシリトールを付与した糸が得られる。
【0017】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸は、凹凸のあるムラ糸を使用することが好ましく、さらに伸縮性を有する糸との組み合わせからなることが好ましい。これにより糸に伸縮性を付与することができると共に、肌との接触面が少なくなり、シャリ感を付与することができる。さらに、通気性が良くなることに付随して、清涼感の向上や細菌の増殖を抑制する効果も得ることができる。
【0018】
凹凸のあるムラ糸としては、特許3124740号に記載された精紡方法に従って製造した糸(商品名ウェイビーマジック、倉敷紡績社製)が例示できる。
【0019】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与するための糸としては、綿糸または綿を含む混合糸であることが好ましい。綿糸は吸湿性に優れていることから、汗などの水分が吸収され易くすると共に、その吸収した汗が清涼感を有する糖アルコールと吸熱反応し易くなる。綿と混紡する素材は特に限定はなく、麻などの天然セルロース系繊維、レーヨン等の再生セルロース系繊維、ポリエステル、アクリル等の合成繊維などを選択することができる。また、混紡率は、綿糸の吸湿性が損なわれない範囲で決定すればよい。
【0020】
なお、清涼感を有する糖アルコールを付与した糸は、市販の清涼加工糸を使用することもでき、COOL LAY(商品名、倉敷紡績社製)が例示できる。
【0021】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸の太さは、靴下の種類に応じて適宜変更されるが、一般に英式綿番手で5〜30番手、好ましくは7〜20番手、さらに好ましくは10〜16番手とすることが好ましい。
【0022】
前記カバード糸は、伸縮性を有する芯糸と、当該芯糸に他の糸を被覆した(巻きつけた)糸である。芯糸としては伸縮性を有する糸であれば特に制限はないが、伸縮性が良好なポリウレタン糸を使用することが好ましい。
【0023】
前記芯糸の太さは、靴下の種類に応じて適宜変更されるが、一般に20〜150dtex、好ましくは20〜70dtex、さらに好ましくは20〜40dtexとすることが好ましい。
【0024】
また、当該芯糸を被覆する糸としては、ポリエステル糸、ナイロン糸等を使用することができるが、速乾性の観点からポリエステル糸を使用することがより好ましい。
【0025】
前記芯糸を被覆する糸の太さは、靴下の種類に応じて適宜変更されるが、一般に15〜150dtex、好ましくは20〜100dtex、さらに好ましくは30〜75dtexとすることが好ましい。
【0026】
なお、前記カバード糸は一重巻き(シングルカバード糸)でも、二重巻き(ダブルカバード糸)でもよい。なお、前記カバード糸は、市販のものを使用することもできる。
【0027】
本発明の実施形態に係る靴下の編地は、メッシュ編み、天竺編み、リブ編み、カノコ編み、パイル編みまたはこれらの組み合わせ等、種々の編地で編成することができる。
【実施例】
【0028】
清涼感を有する糖アルコールを付与した糸として、凹凸のある糸(商品名ウェイビーマジック、倉敷紡績社製)にキシリトール加工がなされた英式綿番手10番手のCOOL LAY(商品名、倉敷紡績社製)を用いた。また、カバード糸として、33dtexポリウレタン糸の芯糸を、82.5dtexのポリエステル糸(商品名サンペイク、旭化成せんい社製)で被覆した糸を用いた。これらの糸を使用して、丸編み機にてメッシュ編地を編成し、所望の靴下を得た。
[比較例]
【0029】
綿/アクリル混紡糸(混率:70/30、32番手単糸)、ナイロン糸(77dtex)、ポリウレタン糸(33dtex)を用いて丸編機にてメッシュ編地を編成し、靴下を製造した。
【0030】
[試験例1]温度の評価
実施例で得られた靴下をサンプルとして、一定量の水分を与えた場合の温度を以下の方法により測定した。即ち、まず、乾燥機にて、サンプルを70℃で2時間乾燥させた。乾燥後、温度35.0℃±2℃、湿度27.3±3.0%RHに調節されたインキュベータ内に予めデシケータを設置した。サンプル生地の温度を安定させるため、デシケータ内にサンプルを4つ折りにして2時間静置して調温した。なお、このインキュベータ内にはデシケータの他、蒸留水、温度センサ(安立計器社製S40E)、温度センサを挟むクリップ、ピペット(0.5ml)も設置した。
【0031】
2時間経過後、前記デシケータからサンプルを取り出し、4つ折りにしたサンプルの中心位置に蒸留水0.5mlをピペットで滴下した。その直後、蒸留水を滴下した位置に当接するように温度センサを設置し、30分間にわたり、5分ごとにサンプルの温度を測定し、その平均温度を求めた。
【0032】
なお、サンプルは製造後洗濯していないもの(未洗)と、10回洗濯したもの(10洗
後)を使用した。
【0033】
対照として比較例で得られた靴下を用いて、上記と同様の試験を行った。結果を表1に示す。平均温度が低いほど、清涼感が高いことを示す。表1に示すように、本発明の実施例に係る靴下は、製造後洗濯していない場合、10回洗濯した場合ともに、平均温度が比較例の靴下よりも低いこと、即ち清涼感が高いことが判明した。
【0034】
【表1】

【0035】
[試験例2]通気性の評価
実施例で得られた靴下をサンプルとして、通気性をJIS−L−1096A法(フラジール形法)に準拠して測定した。即ち、中の空気圧が調節できる円筒形容器の一方の口をサンプルで覆い、外圧と容器内の空気圧の差を一定にした状態で単位面積当たりにサンプルを通過する空気の速度(cm3/cm2/秒)を測定した。
【0036】
なお、対照として比較例で得られた靴下を用いて、上記と同様の試験を行った。結果を表2に示す。数値が高いほど、通気性に優れていることを示す。表2に示すように、本発明の実施例に係る靴下は通気性に優れることが判明し、試験例1で述べた清涼感の向上効果を更に高めることができることが推測された。
【0037】
【表2】

【0038】
[試験例3]乾燥速度(蒸散率)の評価
実施例で得られた靴下の生地(11cm×11cm)をサンプルとして、以下の要領で乾燥速度(蒸散率)の測定を行った。ガラス板(12cm×12cm×1.8mm)の上端と下端に両面テープを貼り、サンプルの表側(外側)を表、裏側(肌側)を裏にして、上端の両面テープにサンプルの一辺を合わせて貼りつけた。なお、下端の両面テープにサンプルが貼りつかないようにサンプルを捲り上げておいた。次いで、サンプルをセットしたガラス板の重量を測定した。そして、ガラス板の略中心に水0.2mlを滴下し、滴下した水を覆うように、下端の両面テープにサンプルの他の一辺を合わせて貼りつけた。その後、経時的にガラス板の重量を測定し、下記式により水分の蒸散率を求めた。
【0039】
蒸散率(%)=100−{(X分後の重量−初期重量)/滴下量}×100
【0040】
なお、対照として、比較例で得られた靴下の生地を用いて、上記と同様の試験を行った。結果を表3に示す。数値が高いほど、蒸散率が優れていることを示す。表3に示すように、本発明に係る実施例の靴下は、試験開始から終了まで、比較例の靴下に比べ優れた蒸散率を示した。これにより、本発明に係る実施例の靴下は、汗等の水分を吸収しても速乾性に優れ、ムレにくいことが推測された。
【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
清涼感を有する糖アルコールを付与した糸と、カバード糸とから編成された靴下。
【請求項2】
前記清涼感を有する糖アルコールが、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールからなる群から選択される請求項1記載の靴下。
【請求項3】
前記カバード糸が伸縮性を有する請求項1又は2記載の靴下。
【請求項4】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸が、綿糸または綿を含む混合糸である請求項1〜3のいずれか1項記載の靴下。
【請求項5】
前記カバード糸が、伸縮性を有する芯糸と、当該芯糸を被覆するポリエステル糸とからなる請求項1〜4のいずれか1項記載の靴下。
【請求項6】
前記清涼感を有する糖アルコールを付与した糸は、肌との接触面を少なくし、シャリ感を付与するための凹凸部を有している請求項1〜5のいずれか1項記載の靴下。
【請求項7】
前記靴下の編地がメッシュ編み、天竺編み、リブ編み、カノコ編み、またはパイル編みである請求項1〜6のいずれか1項記載の靴下。


【公開番号】特開2006−316386(P2006−316386A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141236(P2005−141236)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(398056827)株式会社ファーストリテイリング (6)
【Fターム(参考)】