説明

靴下

【課題】足底の縦アーチ部分に、後頸骨筋と同様の作用を期待できる靴下により舟状骨を引き上げることを目的とし、更に、踵をサポートすることで踵骨が回内するのを防ぐことが出来るようにする。
【解決手段】脚部,踵部,胛部及び足底部よりなる足部、爪先部よりなり、脚部及び足部を筒状の編地とし、踵部を、台形の頂辺同士及び底辺同士が連続した編地よりなる袋状部とし、踵部の編成開始コースと編成終了コースとの側面視交差角度を鈍角とすると共に、編成終了コースは上部が踵側に傾斜するようにし、足部編地の内少なくとも足底部編地の、踵部編地に接する位置に、足部編地の他の部分より強伸縮性を有する強伸縮性編地を、帯状に配した。強伸縮性編地の爪先端縁は下部が爪先に近く上部が爪先から遠退くよう傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明靴下は、足底の土踏まずの部分を踵側に斜に引き上げることにより、長時間の歩行や立位などによって生ずる疲労を軽減させることを目的としている。
【背景技術】
【0002】
日常行っている歩行を含めスポーツ等の激しい運動では、足の動きにかかわる多くの足底の筋肉もすべて負担を受ける。足の骨格は、図4に示す如く中足骨,楔状骨,舟状骨,距骨,踵骨等よりなり、全体として縦方向に延びるアーチを構成し、それらの骨は靭帯と筋により支持されている。また、アーチは多くの関節から構成されているため弾性に富み、歩行時の際の前方推進に重要な働きをしている。アーチ形成に重要な働きをする筋が後頸骨筋で、停止部が舟状骨面である。そして、縦アーチの一番高いところにある舟状骨に係止している筋肉は、後頸骨筋のみである。
【0003】
直立位では、体重は下腿から距骨に伝えられる。距骨に加わる重量は、アーチによって足底に広く分配される。つまり、距骨が受ける重量の約1/2は後方にかかり、踵骨の踵骨隆起に伝えられ、残りの1/2は前方に伝えられて第1〜5中足骨の頭にかかる。中足骨の頭に加わる重量のうち、約1/3は母趾の中足骨頭に、残は他の足趾の中足骨頭にかかる。歩行の際には足が地面に着くときに生じる衝撃はアーチの弾力的な構造で緩和される。
【0004】
このように足底の筋肉はすべて激しい負担を受け、後頸骨筋の負担が最も激しく、その結果、後頸骨筋の疲労によって、舟状骨が下がりアーチが下がるのである。スポーツの現場ではこの後頸骨筋が疲労して舟状骨が下がるのを予防するために、舟状骨を上げるようなテーピングをする。更に、踵骨が回内することによってもアーチが下がる。スポーツ選手には踵骨の回内を予防するテーピングをする。
【0005】
更に、マッサージ効果を得ることを目的として、靴下の土踏まずの部分の環状編地を伸縮性を有するものとし、着用時土踏まず部分を緊締する靴下が知られている(特許文献1参照)。この靴下は、土踏まずの部分全体をその周囲から常時圧迫し歩行することによってその圧迫状態に変化を生じさせマッサージ効果を得るものであるため、足部の舟状骨の引き上げ効果を期待することは出来なかった。
【特許文献1】特開2002−266107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて、足底の縦アーチ部分に、後頸骨筋と同様の作用を期待できる靴下により舟状骨を引き上げることを目的とし、更に、踵をサポートすることで踵骨が回内するのを防ぐことが出来るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明にあっては、脚部,踵部,胛部及び足底部よりなる足部,爪先部よりなり、脚部及び足部を筒状の編地とし、踵部を、台形の頂辺同士及び底辺同士が連続した編地よりなる袋状部とし、踵部の編成開始コースと編成終了コースとの側面視交差角度を鈍角とすると共に、編成終了コースは上部が踵側に傾斜するようにし、足部編地の内少なくとも足底部編地の、踵部編地に接する位置に、足部編地の他の部分より強伸縮性を有する強伸縮性編地を、帯状に配した。
請求項2記載の発明にあっては、強伸縮性編地は帯状をなし、その爪先側端縁は下部が爪先に近く上部が爪先から遠退くように傾斜させている。
請求項3記載の発明にあっては、帯状の強伸縮性編地は平面視台形をなしている。
請求項4記載の発明にあっては、帯状の強伸縮性編地は平面視長三角形をなしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明靴下にあっては、靴下着用時後頸骨筋に疲労が生じたとき強伸縮性編地が、舟状骨を引き上げ、或いは、舟状骨が下がるのを防止することができる。
また、踵部の編成開始コースと編成終了コースとの側面視交差角度を鈍角とし編成終了コースの上部が踵側に傾斜するようにしたことにより、踵部の容量を大きく出来、かつ、踵部編地に接する位置の足底部編地に設けた強伸縮性編地が踵骨を直角にサポートして、少ない張力で踵をサポートすることができる。この踵をサポートすることで踵骨が回内するのを防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面と共に以下説明する。
図1に本発明靴下1の側面図を示す。
【0010】
本発明靴下1を丸編靴下機で編成した例につき説明する。本発明靴下1は、口編部2,脚部3,踵部4,胛部5a及び底部5bよりなる足部5,爪先部6の順に編成されている。口編部2は、適宜伸縮性を有する組織で編機全針を用いて適宜長さ編成した後、編地を折り返して2重の編地とした上で脚部3の編地を連続編成し、或いは、前記折り返し編地より長い一重の伸縮性編地とすることも任意である。脚部3は全針を用いて筒状に編地を連続し、その長さは長靴下或いは短靴下に応じて任意である。
【0011】
次に踵部4であるが、図示の例は袋状の踵部の容量を大きくするためYヒールとしているが、Yヒールに限定されるものではない。踵部4の編地構成について図2を用いて説明する。踵部4の編成は脚部3の編成で用いた全針の半数A´B(必ずしも半数でなくとも可)の針を不作用位置に置き、残りの半数ABで編成を開始する。この際コースの編成端部において、編成端部位置の針を休止することで編み幅を減少し、底辺AB頂辺CDの台形編地イを編成する。この際、各コース端で針を減少しても或いはコース間隔を置いて針を減少しても良いし、有るコースで針を増加するが他コースでは前記増加した針以上の数の針を減少するようにして結果的に段階的に針数を減少するようにしても差し支えない。針数を増加する際は上記と逆の手法で行なえば良い。
【0012】
次に、コース編成ごとに編地両端の編成針数を増加しE,Fまで編成することによって、台形編地イの頂辺CDと頂辺を同一にし底辺EFを持つ台形編地ロが作られる。EF間のウエール数は、AB間より少なく、台形編地ロの編成時斜辺CF及びDEはそれぞれ台形編地イの斜辺BC,ADの一部に編み綴じされることによりゴアラインCF,DEが作られる。次に、台形編地ロの底辺EFに続いて編地ハの編成に移る。編地ハはその編成が進むにつれて前記編地イと同様にコース両端の編成針数を減じ頂辺CD,底辺EFの編地ロと対称形の台形編地とする。編地ハの斜辺EG,FHは編成した針に保持された状態を持っている。
【0013】
編地ハの編成に続いて編地ニが頂辺を編地ハと同一にして編成される。コース編成が進むにつれコース両端で編幅を増大し台形編地イと同ウエールの長さを有する底辺IJまで編成する。この斜辺HI,GJの一部が、それぞれ台形編地ハの斜辺FH,EGと編綴じされゴアラインFH,EGが形成されると共に、台形編地イの斜辺AD,BCのゴアラインED,CFを作っていない針に保持された編地端縁と、台形編地ニの斜辺GJ,HIのゴアラインGE,HFを作っていない針に保持された編地端縁とが編綴じされてゴアラインA(J)E,B(I)Fを作る。
【0014】
次に、台形編地ニの底辺IJと同一にして台形編地ホが編成される。台形編地ホは頂辺KLまで編幅を減らしつつ編成し、頂辺KLを同一にする台形編地ヘを引き続き底辺MNまで台形編地ホと対称形に編成する。そして両台形編地ホ,ヘの斜辺JL,LMを編み綴じしゴアラインJLを、斜辺IK,KNを編み綴じしゴアラインIKを形成している。
【0015】
以上説明した踵部4は、Yヒールに台形編地ホヘを付加してなるものであり、Yヒール自体も比較的袋体内容積に余裕にある処、更に台形編地ホヘを加えているたために踵部の編成開始コースと編成終了コースの側面視交差角度θは大となりヒールポケットは一層のゆとりを生じており窮屈感,緊張感等を生ずることなく足になじませることが可能で、差し支えなければ台形編地ヘを設けず、台形編地ホの底辺LKの編成を終了したところで足部5の編成に移ることも出来る。
【0016】
上記の如くして踵部4が編成されるが、踵部4の編成が終了すると全針で環状に足部5を編成する。その際、足部編地5の少なくとも足底部5b編地の、踵部4編地に接する位置に他部とは編組織を変え足部編地の他の部分より強伸縮性を有する強伸縮性編地7を帯状に配する。強伸縮性編地7は、踵部4及び又は脚部3最終コースと接するコースを底辺とし頂辺がそれより短い平面視台形をなしている。或は、底辺が前記踵部4及び又は脚部3の最終コースと接するコースを底辺とする長二等辺三角形でも良い。
【0017】
強伸縮性編地7は、靴下着用時足部5の足底部5bをU字形に囲う状態となり、更に胛部5aの編地にまで延長しても差し支えない。帯状の強伸縮性編地7は足底部分の舟状骨,踵骨等を引き上げる効果を発揮する。
強伸縮性編地7とは、編地面と平行する方向に外力が加わった際に、その力に耐え伸張変形の少ない組織の編地を云う。強伸縮性編地7の組織は限定されることはないが例えばは図3に示すタック或はフロート組織にゴム糸をインレイ挿入した編地がある。
【0018】
上記の足部5における強伸縮性編地7は、靴下着用時足部5の胛部5aを囲うようには設けられておらず、あくまで足底部5bを引き上げる方向に力を及ぼしており、足部5全体をその周囲から締め付けるような作用はない。
強伸縮性編地7は図2に示す如く、その両端側を中央部位に比して細幅とすることにより帯状体としての力の引き上げ方向を上部程後方に寄るようにすることが可能である。 これにより足底部分の骨の集合である縦のアーチの屈曲部分に直交する方向への力を賦与することが出来、後頸骨筋等が疲労した際の助力の作用を効率よく行える。
【0019】
所定長さ環状に編成した足部5の先端には、爪先部6を設ける。爪先部6は足部5に連続する底辺OPを有する台形編地トと、台形編地トの頂辺QRを共通の頂辺とする台形編地チの斜辺OQとSQを編成時編み綴じし同時に斜辺PRとTRとを編み綴じすることにより爪先袋体を形成し、台形編地チの底辺STと胛部編地5aの最終コースPO´間に出来ている開口部分をリンキング或いは縫合することにより綴じてある。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は靴下のみならず、足部に着用し足部疲労の原因となる後頸骨筋等の弛緩等に対処して、舟状骨,踵骨等を引き上げる作用を期待できるサポータなどに利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Aは本発明靴下の側面図。Bは踵部の拡大部。
【図2】本発明靴下の編地の展開図。
【図3】強伸縮性編地の組織説明図。
【図4】足部のアーチを構成する複数の骨の側面図。
【符号の説明】
【0022】
1 本発明靴下
2 口編部
3 脚部
4 踵部
5 足部
5a 胛部
5b 足底部
6 爪先
7 強伸縮性編地
イ,ロ,ハ,ニ,ホ,ヘ,ト,チ 台形編地
AE,ED,EG,ML,BF,CF,FH,NK ゴアライン
θ 踵部の編成開始コースと編成終了コースとの側面視交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部,踵部,胛部及び足底部よりなる足部,爪先部よりなり、脚部及び足部を筒状の編地とし、踵部を、台形の頂辺同士及び底辺同士が連続した編地よりなる袋状部とし、踵部の編成開始コースと編成終了コースとの側面視交差角度を鈍角とすると共に、編成終了コースは上部が踵側に傾斜するようにし、足部編地の内少なくとも足底部編地の、踵部編地に接する位置に、足部編地の他の部分より強伸縮性を有する強伸縮性編地を、帯状に配したことを特徴とする靴下。
【請求項2】
強伸縮性編地は帯状をなし、その爪先側端縁は下部が爪先に近く上部が爪先から遠退くよう傾斜していることを特徴とする請求項1記載の靴下。
【請求項3】
帯状の強伸縮性編地は平面視台形をなしていることを特徴とする請求項1記載の靴下。
【請求項4】
帯状の強伸縮性編地は平面視長三角形をなしていることを特徴とする請求項1記載の靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−100240(P2007−100240A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290580(P2005−290580)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000003919)株式会社ナイガイ (6)
【Fターム(参考)】