説明

靴及び靴の製造方法。

【課題】軽量性と耐摩耗性との両立が可能であり且つ生産性が高い靴及びその製造方法の提供。
【解決手段】アッパー4とミッドソール10とアウトソール12とを有する靴2である。ミッドソール10は、発泡EVAからなる。このミッドソール10は、発泡EVA層11である。アウトソール12は、無発泡EVAからなる。このアウトソール12は、無発泡EVA層13である。好ましくは、上記無発泡EVAは、熱可塑性である。好ましくは、上記発泡EVAは、熱可塑性である。好ましくは、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、同一の金型内で同時に成形される。好ましくは、ペレット状の無発泡EVA層13と発泡EVA層11とが、同一の金型内で同時に成形される。好ましくは、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、融着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴及び靴の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡EVAは、軽量性に優れている。EVAとは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。発泡EVAは、EVA発泡体又はEVAフォームと称されることがある。一方、ソリッド架橋ゴム(無発泡架橋ゴム)は、耐摩耗性に優れている。このため、ソリッド架橋ゴムは、アウトソールに用いられる。特開2001−57901公報は、EVAよりなるミッドソールと、ゴム材よりなるアウトソールとを備えた靴底を開示する。
【特許文献1】特開2001−57901公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の靴底では、ミッドソールと、アウトソールとは、それぞれ別々の金型によって成形される。上記の靴底では、成形されたミッドソールと、成形されたアウトソールとの接合が必要である。この靴底は、金型費用、生産性及び生産コストが高いという問題を有する。EVAと一般的な架橋ゴムとは、特性が大きく異なる。EVAと一般的な架橋ゴムとは、接着しにくい。互いに特性の異なるEVAと一般的な架橋ゴムとの接着には、多くの手間を必要とする。この手間は、靴の生産性を低下させる。
【0004】
本発明の目的は、軽量性と耐摩耗性との両立が可能であり且つ生産性が高い靴及びその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る靴は、ソール部材を有する。このソール部材の少なくとも一部が、アッパー側に配置され発泡EVAよりなる発泡EVA層と、接地面側に配置され無発泡EVAからなる無発泡EVA層とを積層してなるEVA積層部により構成されている。
【0006】
好ましくは、上記無発泡EVAは熱可塑性である。好ましくは、上記発泡EVAは熱可塑性である。
【0007】
好ましくは、上記無発泡EVA層と上記発泡EVA層とが互いに融着されている。
【0008】
本発明に係る靴の製造方法は、ソール部材を有し、このソール部材の少なくとも一部が、アッパー側に配置され発泡EVAよりなる発泡EVA層と、接地面側に配置され無発泡EVAからなる無発泡EVA層とを積層してなるEVA積層部により構成されている靴の製造方法である。この製造方法は、金型内に、無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA層用組成物を、互いに接触した状態で配置する工程を含む。この製造方法は、上記金型内で、上記無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA用組成物を加圧しつつ加熱して、上記無発泡EVA層と上記発泡EVA層とが同時に成形され、この成形によりEVA積層部を有する成形物を得る工程を含む。この製造方法は、靴底にアッパーを取り付ける工程を含む。この靴底は、EVA積層部を有する上記成形物を含む。
【0009】
好ましくは、上記製造方法において、上記無発泡EVA層組成物が、ペレット状のEVAである。
【発明の効果】
【0010】
接地面の少なくとも一部が無発泡EVAよりなるため、耐摩耗性が高い。アッパー側に発泡EVA層を有するため、軽量である。無発泡EVA層と発泡EVA層とが共にEVAよりなるため、生産性が高められうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る靴2が示された一部切り欠き側面図である。この靴2は、ゴルフ靴である。この靴2は、アッパー4及びソール部材6を備えている。ソール部材6は、インソール8、ミッドソール10及びアウトソール12を備えている。インソール8は、ミッドソール10と積層されている。ミッドソール10は、アウトソール12と積層されている。アウトソール12は、その下面に、下方に向けて突出する多数の突起14を備えている。アッパー4の材質及び構造は、既知のアッパーのそれと同等である。インソール8の材質及び構造は、既知のインソールのそれと同等である。なお、本発明の靴は、ゴルフ靴に限定されず、あらゆる靴に応用されうる。
【0013】
図2は、本発明の一実施形態に係る靴2の接地面(靴底面)の平面図である。靴2は、右足用の靴である。靴2の接地面は、アウトソール12により構成されている。アウトソール12の外面が、靴2の接地面を構成している。
【0014】
靴2の接地面には、鋲16が設けられている。鋲16は、複数箇所に設けられている。
本実施形態では、鋲16は、土踏まず部18よりもつま先側の部分に4つ配置され、土踏まず部18よりも踵側の部分に2つ配置されている。鋲16は、樹脂製の鋲である。鋲16は、図示されない鋲座にねじ止めされている。この鋲座が、アウトソール12に埋設されている。鋲16として、樹脂製の鋲、セラミック製の鋲、金属製の鋲などが例示される。鋲16は、ゴルフスイングを安定させる。本発明の靴2は、鋲を有さない靴であってもよい。
【0015】
靴2の接地面には、接地面部材20が設けられている。第一の接地面部材20は、土踏まず部18よりもつま先側に配置された4つの鋲16を連結するように延在している。第二の接地面部材20は、土踏まず部18よりも踵側に配置された2つの鋲16のうちの一つに近接して設けられている。これら接地面部材20は、靴2の接地面の一部を構成する。この接地面部材20には、突起15が設けられている。突起15は、前述した突起14と共に、靴2の滑りを抑制する。接地面部材20は、アウトソール12の接地面側に固着されている。接地面部材20の特性を、アウトソール12のそれと異ならせることにより、靴2の設計自由度が高められうる。接地面部材20の色をアウトソール12の色と異ならせることにより、デザイン性が向上しうる。
【0016】
土踏まず部18、鋲16が設けられた部分及び接地面部材20が設けられた部分を除き、アウトソール12は、露出している。この露出した部分は、靴2の接地面を構成する。この露出した部分が、アウトソール12の接地面である。前述したように、アウトソール12の接地面には、多数の突起14が設けられている。これらの突起14は、露出している。これらの突起14は、靴2の滑りを抑制する。突起14は、鋲16とともに、ゴルフスイングを安定させる。
【0017】
ミッドソール10は、EVAよりなる。アウトソール12も、EVAよりなる。ミッドソール10と、アウトソール12とが、共にEVAよりなるため、ミッドソール10とアウトソール12との接合強度が向上しうる。共にEVAとすることにより、ミッドソール10とアウトソール12とを、同一の金型内で同時に成形することが可能となる。この成形の詳細については、後述される。
【0018】
ミッドソール10は、発泡EVAよりなる。発泡EVAは、EVAスポンジとも称される。一方、アウトソール12は、無発泡EVAよりなる。無発泡EVAは、未発泡EVA又はソリッドEVAとも称される。
【0019】
靴2は、発泡EVA層11を有する(図1参照)。発泡EVA層11は、無発泡EVA層13のアッパー側に接着されている層である。本実施形態では、ミッドソール10は、発泡EVA層11である。本実施形態では、ミッドソール10の全てが発泡EVA層である。ミッドソール10の少なくとも一部が発泡EVA層であってもよい。ミッドソール10の一部が発泡EVA層であり、ミッドソール10の他の一部が無発泡EVA層であってもよい。なお、発泡EVA層11は、ミッドソール10に限定されない。
【0020】
靴2は、無発泡EVA層13を有する。無発泡EVA層13は、発泡EVA層11の接地面側に接着されている層である。無発泡EVA層13の外面(底面)は、接地面である。本実施形態では、アウトソール12は、無発泡EVA層13である。本実施形態では、アウトソール12の全てが無発泡EVA層である。アウトソール12の少なくとも一部が無発泡EVA層であってもよい。無発泡EVA層13の一部が無発泡EVA層であり、無発泡EVA層13の他の一部が発泡EVA層であってもよい。
【0021】
靴2は、ソール部材6の少なくとも一部が、EVA積層部15により構成されている。EVA積層部15は、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とが積層された部分である。発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは隣接している。発泡EVA層11は、無発泡EVA層13のアッパー側に位置する。無発泡EVA層13は、発泡EVA層11の接地面側に位置する。無発泡EVA層13の外面(下面)が、接地面の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、無発泡EVA層13が、接地面の略全体を構成している。無発泡EVA層13が、接地面の一部を構成していてもよい。
【0022】
靴2では、EVA積層部15が、接地面の略全体を占めている。換言すれば、EVA積層部15の底面は、接地面の略全体を構成している。EVA積層部15は、接地面の一部にのみ設けられていても良い。換言すれば、EVA積層部15の底面が、接地面の一部のみを構成していてもよい。
【0023】
発泡EVA層11は、靴2の軽量化に寄与する。ミッドソール10に、発泡EVAが用いられることにより、靴2が軽量化される。ミッドソール10の少なくとも一部が、発泡EVA層11とされることにより、靴2が軽量化される。発泡EVA層11は、靴2の振動吸収性を高める。
【0024】
アウトソール12に無発泡EVAが用いられることにより、靴底面の耐摩耗性が向上する。アウトソール12の少なくとも一部が無発泡EVA層13とされることにより、靴底面の耐摩耗性が向上する。
【0025】
発泡EVA層11と、無発泡EVA層13との組み合わせにより、軽量化と耐摩耗性との両立が達成される。発泡EVA層11の発泡倍率は、限定されない。発泡EVA層11を構成する発泡EVAは、例えば、いわゆる高密度EVAスポンジでもよいし、低密度EVAスポンジでもよい。
【0026】
前述したように、EVAとは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。EVAは、EVAゴムとも称される。本願において、EVAとは、熱可塑性のEVAと、架橋されたEVAとを含む。熱可塑性のEVAは、熱可塑性エラストマーとして用いられうる。熱可塑性のEVAは、一般に、酢酸ビニルの含有量が30質量%以下である。一方、架橋されたEVAは、一般に、酢酸ビニルの含有量が40〜60質量%程度である。架橋されたEVAは、例えば、過酸化物により架橋されている。
【0027】
本実施形態では、ミッドソール10を構成するEVAは、熱可塑性である。発泡EVA層11を構成するEVAは、熱可塑性である。アウトソール12を構成するEVAは、熱可塑性である。無発泡EVA層13を構成するEVAは、熱可塑性である。熱可塑性のEVAは、架橋タイプのEVAと比較して、成形が容易である。
【0028】
靴2の製造方法について、以下に説明がなされる。靴2の製造方法においては、ミッドソール10と、アウトソール12とが、同一の金型により、同時に成形される。靴2の製造方法においては、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とが、同一の金型により、同時に成形される。後述されるように、発泡EVA層用組成物と無発泡EVA層用組成物とは、同一の金型空間内に投入され、一緒に成形される。一度の成形により、ミッドソール10とアウトソール12とが接合された成形物が得られる。一度の成形により、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とが接合された成形物が得られる。
【0029】
より詳細には、靴2の製造方法は、次の工程(1)〜(3)を含む。
(1)金型内に、無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA層用組成物を、互いに接触した状態で配置する工程
(2)上記金型内で、上記無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA層用組成物を加圧しつつ加熱して、上記無発泡EVA層と上記発泡EVA層とを同時に成形し且つこの成形によりEVA積層部を有する成形物を得る工程
(3)この成形物を含む靴底にアッパーを取り付ける工程
【0030】
工程(1)〜(3)のうち、工程(3)は、従来より周知の方法でなされうる。具体的には、例えば、工程(2)で得られた成形物に、インソール8及びアッパー4が接着される。更に、無発泡EVA層13を構成するアウトソール12の接地面に、前述した鋲16等が取り付けられ、靴2が完成する。
【0031】
次に、工程(1)〜(2)について説明がなされる。
【0032】
図3及び図4は、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とを同時に成形する金型22の断面図である。この金型22は、ミッドソール10とアウトソール12とを同時に成形する金型である。この金型22は、EVA積層部15を有する成形物を成形する。図3は、図2のIII−III線に沿った位置に対応する金型22の断面図である。図4は、図2のIV−IV線に沿った位置に対応する金型22の断面図である。金型22は、上型24と、下型26とを有する。更に、金型22は、サイド型28を有する。サイド型28は、ミッドソール10及びアウトソール12の周縁部を成形する。図6(a)は、サイド型28の平面図である。このサイド型28は、略板状である。このサイド型28には、ソール面6の外形と略同じ形状の貫通孔kが設けられている。上型24、下型26及びサイド型28により、金型22が構成される。成形工程においては、上型24と下型26との間にサイド型28が配置された状態で、金型22が閉じられる。
【0033】
なお、サイド型は、割型であってもよい。図7(a)が示すサイド型33は、割型タイプのサイド型の一例である。サイド型33は、2つに分割される。
【0034】
金型22は、複数個取りの金型であってもよい。例えば、金型22は、左右の靴底を同時に成形しうる金型(図示しない)であってもよい。この場合、サイド型は、例えば、図6(b)が示す一体側のサイド型29や、図7(b)が示す割型タイプのサイド型37とされうる。サイド型37は、右側分割体37a、中央分割体37b及び左側分割体37cよりなる。なお、言うまでもないが、サイド型は、無くても良い。
【0035】
金型22は、開放金型である。ただし、金型22は、密閉金型であってもよい。例えば金型22は、射出成形型であってもよい。金型22で成形される材料が熱可塑性である場合、射出成形が可能となる。開放金型は、発泡体を成形しやすい点で好ましい。
【0036】
図5は、開けられた金型22に、無発泡EVA層用組成物41及び発泡EVA層用組成物43が配置された様子を示す断面図である。靴2の製造方法では、開けられた金型22の靴底成形面30側に、アウトソール用組成物32が配置される。本実施形態では、このアウトソール用組成物32が、無発泡EVA層用組成物41である。靴底成形面30とは、アウトソール12の接地面を形成するための金型面である。靴底成形面30は、下型26に形成されている。靴底成形面30は、前述した突起14を成形するための凹部31を有している。本実施形態では、靴底成形面30の上に、アウトソール用組成物32が置かれる。次に、このアウトソール用組成物32の上に、ミッドソール用組成物34が置かれる。本実施形態では、このミッドソール用組成物34が、発泡EVA層用組成物43である。このように、無発泡EVA層用組成物41と発泡EVA層用組成物43とは、互いに接触した状態で、金型22の内部に配置される。次に、金型22が閉じられ、加圧及び加熱がなされる。この加圧及び加熱により、ミッドソール10とアウトソール12とが同時に成形される。この加圧及び加熱により、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とが同時に成形される。
【0037】
本実施形態では、無発泡EVA層用組成物41は、発泡しないEVAよりなる。このEVAは、加熱されても発泡しない。発泡しないEVAが熱成形されることにより、無発泡EVAとなる。また、無発泡EVA層用組成物41は、ペレット状である。ペレット状とは、換言すれば、粒状である。この粒の形状は限定されず、球状、円柱状、不定形などが例示される。
【0038】
無発泡EVA層用組成物41は、金型22によって成形されて無発泡EVA層13となる。本実施形態では、この無発泡EVA層13がアウトソール12である。無発泡EVA層用組成物41は、無発泡EVA層13に成形されるために金型22内に投入されるものである。図5が示すように、本実施形態では、無発泡EVA層用組成物41はペレット状とされている。ペレット状の無発泡EVA層用組成物41は、凹部31のそれぞれに充填される。凹部31が深い場合や、凹部31の幅が狭い場合には、凹部31への充填が不十分となりやすい。特に、無発泡EVA層用組成物41がシート状である場合、加熱成形される前の段階において、無発泡EVA層用組成物41は凹部31内にせず、加熱成形の過程で無発泡EVA層用組成物41が流動化して凹部31に流れ込む。これに対して、無発泡EVA層用組成物41がペレット状とされた場合、加熱成形される前の段階で、無発泡EVA層用組成物41が既に凹部31に充填されている。よって、成形時における凹部31への充填がより一層確実となる。無発泡EVA層用組成物41がペレット状とされることにより、ベアーが抑制される。更に、無発泡EVA層用組成物41がペレット状とされることにより、成形の際、凹部31内の空気が逃げやすくなる。この空気の逃げも、ベアーの抑制に寄与する。
【0039】
無発泡EVA層用組成物41がペレット状とされることによる上記効果を顕在化させる観点から、凹部31の最大深さは、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が特に好ましい。通常の靴では、凹部31の最大深さは15mm以下であり、多くの靴では、凹部31の最大深さが10mm以下である。なお、凹部31の最大深さとは、複数の凹部31のうち、最も深い凹部31の深さである。
【0040】
凹部31の最大深さは、前述された突起14の最大高さと等しい。無発泡EVA層用組成物41がペレット状とされることによる上記効果を顕在化させる観点から、突起14の最大高さは、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が特に好ましい。通常の靴では、突起14の最大高さは15mm以下であり、多くの靴では、突起14の最大高さが10mm以下である。なお、突起14の最大高さとは、複数の突起14のうち、最も高い突起14の高さである。無発泡EVA層用組成物41の一部の領域がペレット状物とされる場合、上記好ましい最大高さを有する突起14のある領域がペレット状物とされるのが好ましい。
【0041】
無発泡EVA層用組成物41は、金型22の内部(キャビティ)に配置されうる形状とされる。無発泡EVA層用組成物41の形態は、特に限定されない。無発泡EVA層用組成物41の形態として、前述されたペレット状の他、シート状が例示される。シート状の無発泡EVA層用組成物41は、好ましくは、アウトソール12の外形に近似した外形とされる。無発泡EVA層用組成物41が、アウトソール12に近似した形状に予備的に成形されたものでもよい。ただし、前述した理由で、無発泡EVA層用組成物41はペレット状であるのが好ましい。
【0042】
発泡EVA層用組成物43は、金型22によって成形されてミッドソール10となる。発泡EVA層用組成物43は、ミッドソール10に成形されるために金型22内に投入されるものである。本実施形態では、発泡EVA層用組成物43は、予備成形体35である。この発泡EVA層用組成物43は、ミッドソール10に近似した形状に予め成形されている。この予備成形体35は、例えば、シート状であり且つミッドソール10に近似した外形を有している。この予備成形体35は、発泡EVAである。この発泡EVAからなる予備成形体は、発泡EVAからなる素材を所定形状に成形したものでもよく、未発泡EVAを発泡させると同時に所定形状に成形してもよい。発泡EVAからなる素材を所定形状に成形する場合、発泡EVAからなるシート状部材を裁断して所定形状の予備成形体を作製してもよいし、発泡EVA部材を金型内で加熱及び加圧して所定形状の予備成形体を作製してもよい。未発泡EVAを発泡させると同時に所定形状に成形する場合、通常は、未発泡EVA部材を金型内で加熱及び加圧して、発泡させると同時に所定形状に成形された予備成形体を得る。図5が示すように、発泡EVA層用組成物43は、無発泡EVA層用組成物41の上に配置される。
【0043】
発泡EVA層用組成物43は、金型22の内部(キャビティ)に配置されうる形状とされる。発泡EVA層用組成物43の形態は、特に限定されない。発泡EVA層用組成物43の形態として、前述された予備成形体の他、シート状及びペレット状が例示される。発泡EVAを精度よく成形する観点から、発泡EVA層用組成物43は、発泡EVAであるのが好ましい。換言すれば、発泡EVA層用組成物43は、発泡済みであるのが好ましい。予備成形により発泡した発泡EVA層用組成物43を金型内に投入し、加熱によってその表面を溶融させて成形することにより、発泡EVAが精度よく成形されうる。金型への充填性を高める観点から、発泡EVAよりなる発泡EVA層用組成物43の体積は、発泡EVA層11の体積よりも大きいのが好ましい。予備成形により発泡した発泡EVA層用組成物43を用いる場合、発泡EVA層用組成物43を構成するEVAの発泡温度は、ミッドソール10及びアウトソール12を成形する際の金型22の金型温度よりも高くされるのが好ましい。この場合、発泡EVA層用組成物43は、金型22による成形の際には発泡しない。よって、ミッドソール10とアウトソール12とを同時に成形する際に、ミッドソール10の発泡を考慮する手間が省略されうる。
【0044】
発泡EVA層用組成物43がペレット状とされてもよい。ただし、ペレット状の発泡EVA層用組成物43を発泡させる場合、ペレット間の空気を抱き込んだ状態で成形される恐れがあり、ミッドソール10における各独立気泡の大きさが不均一となる等の不都合が生じうる。一方、ミッドソール10は、接地面を有さないので、突起14のような大きな突起を設ける必要性に乏しい。よって、凹部31への充填性を考慮して、発泡EVA層用組成物43をペレット状とする必要性は少ない。アウトソール12は、無発泡EVAよりなるので、ペレット状であっても、成形が容易である。
【0045】
成形時の加熱により、ミッドソール10とアウトソール12とは、融着している。換言すれば、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、融着している。従来のように、ミッドソールとアウトソールとがそれぞれ別々に成形される場合、ミッドソールとアウトソールとを接着する工程が必要であった。また、ミッドソールとアウトソールとがそれぞれ別々に成形される場合、ミッドソール用の金型と、アウトソール用の金型とがそれぞれ必要であった。
【0046】
本実施形態では、一つの金型により、ミッドソール10とアウトソール12とが同時に成形される。ミッドソール10とアウトソール12とを接着する作業は、不要である。本実施形態は、金型の種類を減らし、且つ、生産性を向上させる。ミッドソール10とアウトソール12とは、成形時の加熱により融着している。この融着による接合強度は、高い。ミッドソール10とアウトソール12とは、共にEVAよりなるので、強固に融着されうる。更に、ミッドソール10とアウトソール12とは、共にEVAよりなるので、互いの融点を近似させやすい。融点の近似により、融着が一層強固となりうる。融点の近似により、ミッドソール10の成形条件とアウトソール12の成形条件とが近似しうる。この成形条件の近似により、ミッドソール10とアウトソール12とを一緒に成形することが容易となる。好ましくは、ミッドソール10を構成するEVAの融点m1(℃)と、アウトソール12を構成するEVAの融点m2(℃)との差の絶対値(|m1−m2|)は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
【0047】
本発明では、一つの金型により、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とが同時に成形される。発泡EVA層11と無発泡EVA層13とを接着する作業は、不要である。本実施形態は、金型の種類を減らし、且つ、生産性を向上させる。発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、成形時の加熱により融着している。この融着による接合強度は、高い。発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、共にEVAよりなるので、強固に融着されうる。更に、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とは、共にEVAよりなるので、互いの融点を近似させやすい。融点の近似により、融着が一層強固となりうる。融点の近似により、発泡EVA層11の成形条件と無発泡EVA層13の成形条件とが近似しうる。この成形条件の近似により、発泡EVA層11と無発泡EVA層13とを一緒に成形することが容易となる。好ましくは、発泡EVA層11を構成するEVAの融点m1(℃)と、無発泡EVA層13を構成するEVAの融点m2(℃)との差の絶対値(|m1−m2|)は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
【0048】
ミッドソールに加え、アウトソールにも、発泡EVAが用いられた場合、ミッドソール10とアウトソール12とが一緒に成形されうる。しかしこの場合、靴2の接地面の耐摩耗性が悪くなる。本実施形態では、発泡EVAと、無発泡EVAとの組み合わせにより、ミッドソール10とアウトソール12とを一緒に成形することが可能となり、且つ、軽量化と耐摩耗性との両立が達成される。発泡EVA層11と無発泡EVA層13とを一緒に成形することにより、EVA積層部15の成形が容易となる。
【0049】
無発泡EVA層用組成物41は、熱可塑性のEVAよりなる。熱可塑性のEVAは、成形が容易である。発泡EVA層用組成物43も、熱可塑性のEVAよりなる。無発泡EVA層用組成物41と発泡EVA層用組成物43とは、共に熱可塑性の材料よりなるので、成形が容易であり且つ融着しやすい。
【0050】
ペレット状物を凹部31へと入り込みやすくする観点から、ペレット状物(ペレット状の無発泡EVA層用組成物等)の最長横断長さLは、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。この最長横断長さLの下限値は、発明思想の観点からは特に限定される必要が無い。しかし、最長横断長さLが短すぎると、ペレット状物の取扱いが難しくなる。取り扱い性を容易とする観点から、最長横断長さLは、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。無発泡EVA層用組成物41を構成する全てのペレット状物において、最長横断長さLが上記好ましい範囲を満たす場合、上記効果が最大となる一方、管理コストが増大する。この観点から、無発泡EVA層用組成物41を構成するペレット状物の全重量P1に対する、上記好ましい範囲を満たすペレット状物の重量P2の比(P2/P1)は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上が特に好ましい。なお、最長横断長さLは、一つのペレット状物において、このペレット状物を貫通する直線の貫通長のうち最大のものを意味する。例えば、ペレット状物が球体である場合、最長横断長さLは、この球体の直径に等しい。
【0051】
靴2の軽量性を高める観点から、発泡EVA層11の発泡倍率は、2.5倍以上が好ましく、3.5倍以上がより好ましい。発泡EVA層11の強度を高め、発泡EVA層11の剥がれを抑制するとともに、靴2の使用時における安定性を高める観点から、発泡EVA層11の発泡倍率は、6倍以下が好ましく、5.5倍以下がより好ましい。なお、発泡倍率とは、気泡が存在する場合の密度に対する気泡が存在しない場合の密度の比を意味する。
【0052】
靴2の軽量性を高める観点から、ミッドソール10の発泡倍率は、2.5倍以上が好ましく、3.5倍以上がより好ましい。ミッドソール10の強度を高め、ミッドソール10の剥がれを抑制するとともに、靴2の使用時における安定性を高める観点から、ミッドソール10の発泡倍率は、6倍以下が好ましく、5.5倍以下がより好ましい。なお、発泡倍率とは、気泡が存在する場合の密度に対する気泡が存在しない場合の密度の比を意味する。
【0053】
耐摩耗性を高め、靴2の使用時の安定性を高める観点から、無発泡EVA層13のJIS−A硬度は、40A以上が好ましく、50A以上がより好ましく、60A以上が特に好ましい。衝撃吸収性を高める観点から、無発泡EVA層13のJIS−A硬度は、90A以下が好ましく、85A以下がより好ましく、80A以下が特に好ましい。このJIS−A硬度は、JIS−K−6253の規定に従い測定される。
【0054】
耐摩耗性を高め、靴2の使用時の安定性を高める観点から、アウトソール12のJIS−A硬度は、40A以上が好ましく、50A以上がより好ましく、60A以上が特に好ましい。衝撃吸収性を高める観点から、アウトソール12のJIS−A硬度は、90A以下が好ましく、85A以下がより好ましく、80A以下が特に好ましい。このJIS−A硬度は、JIS−K−6253の規定に従い測定される。
【0055】
靴の使用時の安定性を高める観点から、発泡EVA層11のアスカーC硬度は、35C以上が好ましく、40C以上がより好ましく、45C以上が特に好ましい。衝撃吸収性を高める観点から、発泡EVA層11のアスカーC硬度は、75C以下が好ましく、70C以下がより好ましく、65C以下が特に好ましい。このアスカーC硬度は、JIS−K−7312の規定に従い測定される。
【0056】
靴の使用時の安定性を高める観点から、ミッドソール10のアスカーC硬度は、35C以上が好ましく、40C以上がより好ましく、45C以上が特に好ましい。衝撃吸収性を高める観点から、ミッドソール10のアスカーC硬度は、75C以下が好ましく、70C以下がより好ましく、65C以下が特に好ましい。このアスカーC硬度は、JIS−K−7312の規定に従い測定される。
【0057】
EVA積層部15は、例えばインソール8やアッパー4と接合される。本実施形態の靴2では、ミッドソール10とアウトソール12とからなる部材は、インソール8やアッパー4と接合される。この接合は、例えば接着剤によりなされる。必要に応じて、ミッドソール10とインソール8との間に、他の層が設けられても良い。また、インソール8は、無くても良い。換言すれば、ミッドソール10が、インソールを兼ねていても良い。
【0058】
アッパーは、通常、以下の構成又は材質からなる。
【0059】
アッパー4を構成するものとして、繊維又は皮革が例示される。アッパー4を構成する繊維の構成としては、編物又は織物が挙げられる。繊維の種類としては、6−6ナイロン、ポリエステル及び綿が例示される。編物又は織物よりなる生地が単独で用いられても良いし、これらの生地と、ポリウレタンフォーム、不織布又は織物の生地とが貼り合わされた積層物が用いられても良い。貼り合わせは、接着剤によりなされてもよいし、熱融着によりなされてもよい。
【0060】
アッパー4を構成する皮革としては、人工皮革、合成皮革及び天然皮革が例示される。
【0061】
人工皮革として、極細短繊維を交絡させた不織布に発泡ウレタンを含浸させ、さらに表面をバフして起毛したものが例示される。極細短繊維の繊維の種類として、66ナイロンやポリエステルが例示される。他の人工皮革として、表面にウレタン表層を積層させた積層物が例示される。
【0062】
合成皮革として、織物生地又は編物生地を基布とし、その表面に発泡あるいは未発泡のウレタン塩化ビニルよりなる層を積層させた積層物が例示される。この織物生地又は編物生地として、66ナイロン、ポリエステル、ビニロン及び綿が例示される。
【0063】
天然皮革として、クロム、タンニン、明ばんなどを用いてなめし加工された動物の原皮に、加脂及び表面仕上げが施された素材が例示される。動物の原皮として、牛、豚、羊及びカンガルーの原皮が例示される。
【0064】
なお、本発明は、ミッドソールとアウトソールとがそれぞれ別々の金型で成形された靴であってもよい。本発明は、ミッドソールとアウトソールとが接着剤で接着された靴であってもよい。ミッドソールとアウトソールとは、いずれもEVAよりなるため、接着剤による接着強度が高くなりやすい。好ましくは、ミッドソールとアウトソールとが融着しているのがよい。架橋されたゴムからなるアウトソールと、EVAからなるミッドソールとの接着は、性質の異なる材質間での接着となる。この接着は、接着強度の低下を招きやすい。この接着は、接着作業の手間を増大させる。ミッドソールとアウトソールとが共にEVAとされることにより、接着作業の手間が少なくなる。
【0065】
本発明において、発泡EVA層用組成物43は、無発泡EVAであってもよく、発泡EVAであってもよい。発泡EVA層用組成物43は、予備成形体であってもよい。発泡EVA層用組成物43は、シート状であってもよい。発泡EVA層用組成物43は、バルク状であってもよいし、ペレット状であってもよい。本発明において、無発泡EVA層用組成物41は、予備成形体であってもよい。無発泡EVA層用組成物41は、シート状であってもよい。無発泡EVA層用組成物41は、バルク状であってもよいし、ペレット状であってもよい。
【0066】
本発明において、アウトソール12は、発泡EVA層からなる領域と無発泡EVA層からなる領域とを有していても良い。本発明において、ミッドソール10は、発泡EVA層からなる領域と無発泡EVA層からなる領域とを有していても良い。本発明において、発泡EVA層用組成物43は、無発泡EVAからなる領域と発泡EVAからなる領域とを有していても良い。本発明において、無発泡EVA層用組成物41は、無発泡EVAと発泡EVAとが混在したものでも良い。
【0067】
本発明の発泡EVA層用組成物43は、ペレット状物と非ペレット状物とを混在させてなるものでもよい。たとえば発泡EVA層用組成物43のうちの一部がペレット状物であり、他の一部が非ペレット状物であってもよい。本発明の無発泡EVA層用組成物41は、ペレット状物と非ペレット状物とを混在させてなるものでもよい。たとえば無発泡EVA層用組成物41のうちの一部がペレット状物であり、他の一部が非ペレット状物であってもよい。非ペレット状物として、予備成形体、シート状部材、バルク状部材等が例示される。
【0068】
無発泡EVA層用組成物41や発泡EVA層用組成物43に用いられるペレット状物は、無発泡EVAであってもよいし、発泡EVAであってもよい。発泡EVA層用組成物43に用いられるペレット状物は、EVA積層部15の成形の際に発泡してもよく、発泡EVA層用組成物43の状態で既に発泡していてもよい。
【0069】
接地面の全体がEVA積層部15からなっていてもよい。接地面のうち耐摩耗性が要求される部位(領域)のみがEVA積層部15からなっていてもよい。接地面全体の面積をS1とし、接地面のうちEVA積層部15からなる領域の面積をS2としたとき、比(S2/S1)は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましく、0.9以上が特に好ましい。なお、この面積S1及びS2は、靴2を水平面上に静置した基準状態において、この水平面上に対して投影された面積とされうる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0071】
〔実施例1〕
前述した金型22と同様の構造の金型を用いた。金型を開け、下型の靴底成形面にペレット状のアウトソール用組成物(ペレット状物)を配置した。このアウトソール用組成物は、無発泡EVA層用組成物である。このペレット状物の大きさは、靴底成形面の凹部に入り込みうる大きさとされた。具体的には、このペレット状物の最長横断長さLは、1mmとされた。このアウトソール用組成物として、ザ・ポリオレフィン・カンパニー(THE POLYOLEFIN COMPANY)社製の「H2020」が用いられた。このアウトソール用組成物は、発泡しない熱可塑性EVAである。このアウトソール用組成物は、熱可塑性の無発泡EVAである。
【0072】
このアウトソール用組成物の上に、シート状のミッドソール用組成物を置いた。このミッドソール用組成物は、発泡EVAである。このミッドソール用組成物は、発泡EVA層用組成物である。このミッドソール用組成物として、ザ・ポリオレフィン・カンパニー(THE POLYOLEFIN COMPANY)社製の「H2181」が用いられた。このミッドソール用組成物は、熱可塑性の発泡EVAである。このミッドソール用組成物の外形は、靴底の外形と略等しくされている。このミッドソール用組成物の発泡倍率は、約5倍である。このミッドソール用組成物の厚さは、最終的に得られるミッドソールの厚みよりも大きい。具体的には、このミッドソール用組成物の厚さは、最終的に得られるミッドソールの厚みの1.5倍程度である。このミッドソール用組成物のアスカーC硬度は、50Cである。このミッドソール用組成物の比重は、約0.2である。次に、金型が閉じられ、加圧及び加熱がなされた。金型圧力は5tとされ、金型温度は130℃とされ、成形時間は7分とされた。次に、金型温度を15℃に下げ、金型を閉じたまま7分間冷却した。次に、金型が開けられ、成形物が取り出された。このようにして、ミッドソールとアウトソールとが融着した成形物1を得た。この成形物1は、EVA積層部である。この成形物1において、アウトソールの硬度は、JIS−K−6253に基づくJIS−A硬度で75Aであった。この成形物1におけるミッドソールの発泡倍率は、約5倍であった。
【0073】
〔実施例2〕
アウトソール用組成物として、厚さ1.5mmのシート状のEVAが用いられた点以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る成形物2を得た。この成形物2は、ミッドソールとアウトソールとが融着した成形物である。この成形物2は、EVA積層部である。なお、このシート状のEVAの樹脂品番は、前述した「H2020」である。
【0074】
〔比較例1〕
実施例1で用いた金型に変えて、2面の金型40、42が用いられた。第一の金型40は、アウトソールのみを成形するための金型である。第二の金型42は、ミッドソールのみを成形するための金型である。
【0075】
図8及び図9は、第一の金型40の断面図である。図8の断面線の位置は、図3のそれと同一である。図9の断面線の位置は、図4のそれと同一である。図10及び図11は、第二の金型42の断面図である。図10の断面線の位置は、図3のそれと同一である。図11の断面線の位置は、図4のそれと同一である。
【0076】
第一の金型40は、上型44と下型46とを備えている。下型46には、靴底成形面48が設けられている。この靴底成形面48の形状は、実施例1で用いられた金型における靴底成形面の形状と同一である。
【0077】
第二の金型42は、上型50、下型52及びサイド型54を備えている。サイド型54の構成は、実施例1で用いられた金型におけるサイド型と同様である。上型50のキャビティ面56の形状は、実施例1で用いられた上型のキャビティ面の形状と同一である。第二の金型42における下型52のキャビティ面53の形状は、第一の金型40における上型44のキャビティ面58の形状と同一である。これらのキャビティ面53及び58は、ミッドソールとアウトソールとが接着される接着面を成形する。
【0078】
本比較例1では、ミッドソールとアウトソールとは、それぞれ別々の金型で別々に成形された。第一の金型40にアウトソール用組成物を投入し、加圧及び加熱することにより、アウトソール(A)が成形された。このアウトソール用組成物は、シート状である。このアウトソール用組成物の樹脂品番は、前述した「H2020」である。この樹脂に発泡剤を配合することにより、発泡EVAが得られた。アウトソール(A)の発泡倍率は、約4倍であった。
【0079】
第二の金型42にミッドソール用組成物を投入し、加圧及び加熱することにより、ミッドソール(B)が成形された。このミッドソール用組成物は、シート状である。このミッドソール用組成物の樹脂品番は、前述した「H2181」である。この樹脂に発泡剤を配合することにより、発泡EVAが得られた。
【0080】
次に、接着工程がなされた。先ず、アウトソール(A)とミッドソール(B)との接着面に、バフ処理及びトルエン系の溶剤での溶剤拭き処理がなされた。次いで、上記アウトソール(A)と上記ミッドソール(B)とが接着剤で接着された。このようにして、アウトソール(A)とミッドソール(B)とが接着された比較用接合体1を得た。この比較用接合体1において、アウトソールの硬度は、JIS−K−7312で規定されたアスカーC硬度で、70Cであった。比較用接合体1の形状は、前述した成形体1及び成形体2の形状と同一とされた。
【0081】
実施例1に係る成形体(1)、実施例2に係る成形体(2)及び比較例1に係る比較用接合体(1)を用いて、試験を行った。試験は、耐摩耗試験と、底面の外観確認試験の2種類がなされた。
【0082】
〔耐摩耗試験〕
試験用平板をアウトソールから切り出し、JIS−K−6264に従ってテーバー摩耗試験を行った。試験条件は、以下のようにされた。
研磨砥石 : H22
荷重 : 4.9N
試験回数 : 1000回
N数 : 3
測定値 : 摩耗体積
3つの摩耗体積の平均して、平均摩耗体積を求めた。成形体(1)における平均摩耗体積を100として指数化された摩耗体積が、「摩耗体積指数」として下記で示される。この「摩耗体積指数」が大きいほど、摩耗量が大きい。
【0083】
〔耐摩耗試験結果(摩耗体積指数)〕
成形体1(実施例1) : 100
成形体2(実施例2) : 100
比較用接合体1(比較例1) : 180
【0084】
〔底面の外観確認試験〕
テスターが目視で、底面の外観を確認した。底面とは、アウトソールの外面であり、接地面である。この底面には、多数の突起が形成されている。この試験の結果が、下記で示される。
【0085】
〔底面の外観確認試験の結果〕
成形体1(実施例1) : ベアーが確認されず、良好である。
成形体2(実施例2) : 突起の角の部分にベアー有り。
比較用接合体1(比較例1) : 突起の角の部分にベアー有り。
【0086】
以上の結果より、実施例は、比較例に対して優位性があることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ゴルフ靴、テニス靴、トレッキング用靴等を含め、あらゆる靴に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る靴の全体図である。
【図2】図2は、図1の靴における靴底面(接地面)の平面図である。
【図3】図3は、発泡EVA層と無発泡EVA層とを一緒に成形しうる金型の断面図であり、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、発泡EVA層と無発泡EVA層とを一緒に成形しうる金型の断面図であり、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、金型に無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA層用組成物が配置された様子を示す断面図である。
【図6】図6は、サイド型の一例を示す図である。
【図7】図7は、サイド型の一例を示す図である。
【図8】図8は、比較例1に係るアウトソールを成形するための金型の断面図である。
【図9】図9は、比較例1に係るアウトソールを成形するための金型の断面図である。
【図10】図10は、比較例1に係るミッドソールを成形するための金型の断面図である。
【図11】図11は、比較例1に係るミッドソールを成形するための金型の断面図である。
【符号の説明】
【0089】
2・・・靴
4・・・アッパー
6・・・ソール部材
8・・・インソール
10・・・ミッドソール
12・・・アウトソール
14・・・突起
15・・・EVA積層部
16・・・鋲
18・・・土踏まず部
22・・・金型
30・・・靴底成形面
31・・・凹部
32・・・アウトソール用組成物
34・・・ミッドソール用組成物
41・・・無発泡EVA層用組成物
43・・・発泡EVA層用組成物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール部材を有し、
このソール部材の少なくとも一部が、アッパー側に配置され発泡EVAよりなる発泡EVA層と、接地面側に配置され無発泡EVAからなる無発泡EVA層とを積層してなるEVA積層部により構成されている靴。
【請求項2】
上記無発泡EVAは熱可塑性であり、上記発泡EVAは熱可塑性である請求項1に記載の靴。
【請求項3】
上記無発泡EVA層と上記発泡EVA層とが互いに融着されている請求項2に記載の靴。
【請求項4】
ソール部材を有し、このソール部材の少なくとも一部が、アッパー側に配置され発泡EVAよりなる発泡EVA層と、接地面側に配置され無発泡EVAからなる無発泡EVA層とを積層してなるEVA積層部により構成されている靴の製造方法であって、
金型内に、無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA用組成物を、互いに接触した状態で配置する工程と、
上記金型内で、上記無発泡EVA層用組成物及び発泡EVA層用組成物を加圧しつつ加熱することにより、上記無発泡EVA層と上記発泡EVA層とを同時に成形し且つこの成形によりEVA積層部を有する成形物を得る工程と、
この成形物を含む靴底にアッパーを取り付ける工程とを含む靴の製造方法。
【請求項5】
上記無発泡EVA層組成物が、ペレット状のEVAである請求項4に記載の靴の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−275275(P2007−275275A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104938(P2006−104938)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】