説明

靴底クリーナー

【課題】靴底の汚れを靴底から取り去る粘着シートの交換をシートに手を触れることなく容易に行うことを可能にし、使用中塵埃の付着していない部分の靴底面が粘着シートに張り付くことにより靴底清浄化後粘着シート面から一歩を踏み出す際の足の挙上を容易にすること、及び、粘着シート面上に散乱する微細な塵埃が再度靴底に付着するのを防止する。
【解決手段】ロール巻きしてなる粘着テープの支持軸と、同テープの巻取軸及びその駆動手段とを有し、前記両軸間を拭清エリアとし、該エリアに粘着面を上にして前記粘着テープを延引し、該粘着テープの下位には、粘着テープをガイドするパンチングボードを有する吸引ボックスを設置し、又、拭清エリアに侵入した者の数を計測するカウンターを設け、所定カウント数に達した後に巻取軸駆動手段を所定回転させ、ロール巻きしてなる粘着テープの未使用粘着面を拭清エリアに位置してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の清浄空間に入室する際に靴底に付着した汚れ,塵埃などを除去する靴底クリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体,製薬及び食品工場等に代表されるクリーンルーム若しくはそれに準ずる作業エリアでは、靴底に付着した汚れや塵埃が該エリア内に持ち込まれることに起因する、工場内部で生産している製品への悪影響を避けるため、作業エリアに入る前に靴底の汚れや塵埃を除去することが行われている。
【0003】
即ち、一面に粘着剤を塗布したシート体を適宜枚数積層して粘着面を上に清浄空間入口に配し、入室者は、入室時に粘着面を踏むことによって靴底の塵埃を落とすことが行われた。然し、この手法では入室者数が粘着シートの有効対象者数以上になる前に最上面の粘着テープを取り除かねばならず、その為に通過人員をカウントするカウンターを設け、その表示に従って、塵埃の付着した粘着テープを取り除く操作をしなければならなかった(特許文献1,2)。
【0004】
また、上記の如く積層されている粘着シートを、使用不可となった最上位のものからめくり取る手間を省くために、ロール状に巻いた粘着シートをフレーム上に引き出して展開し、入室者に粘着シートを踏ませ、適宜使用後それを巻き取るようにしたものもある(特許文献3)。
【0005】
然し、これらの粘着シートは、いずれもシート表面の粘着剤の作用によって靴底の塵埃をシート面に付着させることによって靴底面を清浄に保っているが、シート面上に人が乗った際に、靴底の塵埃等の付着していない部分も当然粘着面と接することになる。そのために、シート面上の者が一歩踏み出そうと足を上げた際に、靴底と粘着シートとが接着し、足を上げ憎い、或は粘着シートが靴底に接着した状態で持ち上げられるという事態が生じる。
【0006】
更に、粘着マット周囲には、粘着マットに付着せずに靴底から落下した小塵埃その他が散乱しマット上で足踏みすることで再度靴底にそれらが付着する事態を生ずる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2939431号公報
【特許文献2】特開平11−56743号公報
【特許文献3】特開平6−169876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みて、靴底の汚れを靴底から取り去る粘着シートの交換をシートに手を触れることなく容易に行うことを可能にし、使用中塵埃の付着していない部分の靴底面が粘着シートに張り付くことにより、靴底清浄化後粘着シート面から一歩を踏み出す際の足の挙上を妨げることを無くすこと、及び、粘着シート面上に散乱する微細な塵埃等を取り除きそれらが再度靴底に付着するのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明にあっては、靴底クリーナーにおいて、ロール巻きしてなる粘着テープの支持軸と、同テープの巻取軸及びその駆動手段とを有し、前記両軸間を拭清エリアとし、該エリアに粘着面を上にして前記粘着テープを延引し、該粘着テープの下位には、粘着テープをガイドするパンチングボードを有する吸引ボックスを設置してなる。
請求項2記載の発明にあっては、請求項1記載の靴底クリーナーにおいて、拭清エリアには、拭清エリアに侵入した者の数を計測するカウンター及び該カウンターが所定カウント数に達したときに巻取軸を所定回転させる駆動手段を設け、毎カウント時若しくは所定カウント数に達した後に巻取軸駆動手段を所定回転させ、ロール巻きしてなる粘着テープの未使用粘着面を拭清エリアに引き出し位置させてなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明装置は、拭清エリアを覆って設けた粘着テープの下位に粘着テープをガイドするパンチングボードを有する吸引ボックスを設けたために、拭清エリアにおいて拭清動作時常に粘着テープは吸引ボックス側に吸引されている状態を保ち、靴底の拭清時に、靴底の塵埃が付着していない部分と粘着テープ面とが密着した状態となっても、拭清エリアから一歩踏み出そうと足を上げようとした場合に靴底と密着している粘着テープが靴底と共に吸引ボックスから浮くということはなく、粘着テープは吸引ボックスの吸引力に引かれて吸引ボックスのパンチングボード側に残り靴底面と粘着テープとは離れることになるので、容易に足を上げ拭清エリアから出ることが出来る。
【0011】
本発明装置は拭清エリアに入った人員をカウントするカウンターが設けられており、所定のカウント数となった際、即ち、粘着テープが使用限度となった際に巻取軸の駆動装置が働き、ロール状テープを巻き取るようにしてあるため、粘着テープの標準的使用限度まで使用することが出来ると共に、従来の積層された粘着シートを手で剥がすような取換手段を講ずることなく、粘着シートに手を触れることなく新しいシート面とすることが出来る。
また、カウンターのカウントごとに粘着テープを少量(例えば数ミリ)巻き取るようにする事で、テープの使用箇所を常にずらす動作方式とすることが出来、同じ位置で繰り返し使用される粘着力の急激な低下、人の乗り降りによる皺の破れの発生をなくし、粘着力とテープの状態を常に保持する事を可能としている。
更に、カウンターを使用せず、粘着テープを微速度で巻取り常に未使用の粘着テープを繰り出すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明靴底クリーナーの平面図。
【図2】図1のII−II線における切断面図。
【図3】本発明靴底クリーナーのカバーを取り外した平面図。
【図4】図1のIV−IV線における切断面図。
【図5】粘着テープ支持機構を示し、aは未使用粘着テープ支持機構の断面図、bは使用済粘着テープ支持機構の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明靴底クリーナー1の実施の形態につき以下図面と共に説明する。
靴底クリーナー1は、靴底の塵埃等を吸引除去するためのサクションボックス2を有する。サクションボックス2は上面に複数の吸引口群を有するパンチングボード3を設け、該パンチングボード3からサクションボックス2外部のエア,塵埃等を吸引するためのファン4を内装するダクト5を設けている。ファン4の排気側にヘパフィルタ6を取り付けている。サクションボックス2のパンチングボード3の上面を被って走行可能に粘着テープ7を設ける。
未使用の粘着テープ7は、図3,図4,図5aに示す如くロール状に芯材8に巻き付けられて未使用粘着テープロール7aを形成し、支持部材9aの支持軸10aの端部に設けたフランジ10bによって芯材8を両端から挟持することによってサクションボックス2の一側に軸支されている。前記ロール7aからパンチングボード3の上面に引き出した未使用の粘着テープ7は使用後、使用済粘着テープ14としてサクションボックス2の他側に設けられた支持部材9bに支持された巻取フランジ15に巻き取っている。その巻取の詳細につき次に説明する。
【0014】
上記未使用の粘着テープ7は、図4,図5aに示す如く芯材8にロール状に巻き付けられ、該芯材8は対に設けられているテープ支持部材9aのそれぞれに支持されたテープ支持軸10aの端部に設けられたフランジ10bに挟持されることによって適宜取り付け取り外し自在に支持されている。未使用の粘着テープ7は巻き付けられている芯材8から適宜引き出し、使用済となった粘着テープ14の端部は引き出し側と対向する巻取側の巻取フランジ15に巻取固定されるが、使用済粘着テープ14の巻取機構は図3及び図5bに示すように次の如く構成されている。
支持部材9bに設けた支持軸11の支軸頭部12aを筒状に巻いた使用済粘着テープロール14aの一端部に嵌合し、他端も同様に中間の支持部材9bに支持された支持軸11の支軸頭部12bに嵌合することにより、筒状の使用済粘着テープロール14aを両側から挟持している。図3に示す例では使用済粘着テープ14は2本対称形に設けられているが、構成としては同一なのでここではその一方について説明する。
【0015】
そして、スプリング13により支軸頭部12aは支持部材9bより常に突出する方向に付勢されているので、対の支持部材9bに支持された支持軸11先端に設けた支軸頭部12a,bに支持されている巻取フランジ15に巻かれた使用済テープをフランジ15から取り外す際には、スプリング13を圧縮し支軸頭部12aを一旦後退させ支軸頭部12a,12bの間隔を開けて取り外し、取り付け時はその逆にし、巻取フランジ15に前記支軸頭部12を嵌合し、対向する支持部材9bの使用済テープ支持軸11の支軸頭部12aと支軸頭部12bとのそれぞれの巻取フランジ15間に使用済粘着テープ14を挟持することにより支軸頭部12,12間に使用済粘着テープ14を巻取支持することを可能にしている。
【0016】
使用済粘着テープ14の巻取手段につき次に説明する。
筒状に巻かれた使用済粘着テープ14を支持する使用済テープ支持軸11に平行に設けた駆動軸18の歯車19aと、使用済テープ支持軸11に設けた歯車19bとを噛み合わせることで、駆動軸駆動用モータ20の回転を使用済テープ支持軸11に伝えている。使用済テープ支持軸11先端には支軸頭部12aを配し、使用済テープ支持軸11を囲って設けたスプリング13により、支軸頭部12を使用済粘着テープ14を筒状に支持している巻取フランジ15に進出嵌合させることによって、使用済テープ支持軸11に使用済粘着テープ14を支持している。使用済粘着テープ14を取り外す際には、スプリング13の弾発力に抗して支持軸11aをスライドし、芯材から引抜くことにより使用済粘着テープ14を取り外すことが可能である。
使用済粘着テープ14は未使用の粘着テープ7の支持機構のそれと同じく支持部材9bによって支持され筒状に巻かれた使用済粘着テープ14に平行した駆動軸18から歯車19a,19bを介して使用済テープ支持軸11に回転が伝えられ回転する。駆動軸18は巻取用モータ20により回転される。
【0017】
上記した粘着テープ7及びその支持機構、駆動機構、排気手段等を覆ってカバー21を設ける。カバー21にはパンチングボード3に相対する位置に靴乗せ用の2つの窓22を併設してある。また、窓22の上位に2つの窓を横断して障害物を感知するセンサー23を設置している。図1に示すセンサー23の例は、窓22を挟んでその一側縁に投光部23aを、他側縁に受光部23bを設けているが、図2に示すセンサー23は窓22の一側縁に投光部23aを設け、それと対向する他側縁に反射板24を設け投光部23aと併設した受光部23bで反射光を検知することで窓22に位置する足部を確認しても良く、センサーの種類は適宜採用出来る。また、検知を確実にするため図1に示す如き対のセンサーを複数対設置しても良い。センサー23が粘着テープ7上の靴等を感知するとファン4が作動するようにしている。25は、操作パネルである。
【0018】
本発明装置により靴底の汚れを除去するには次の如くして行う。
未使用粘着テープロール7aから引き出した粘着テープ7を巻取側の巻取フランジ15に巻き付け、粘着テープ7をパンチングボード3上の窓22に位置させ、その位置に靴底24を乗せる。このとき巻取用モーター20は停止しており、未使用の粘着テープ7は未使用粘着テープロール7aから引き出され端を巻取フランジ15に巻き付けられている。そして、上記の如く窓22に現われている粘着テープ7の上で足を動かし靴底26の塵埃等を粘着テープ7に付着させることで靴底26を拭清する。
【0019】
足踏みの動作1回をセンサーが検知する毎に約5mm程度粘着テープを巻き取り、徐々に新品に入れ替えを行う方式と、使用人数を設定し設定人数に達すると一足分の長さのテープを未使用のテープと入れ替える方式の2種類があり、操作パネル25上で選択が可能となっている。使用人数は人検知センサーでカウントしている。
粘着テープ7に付着した塵埃等はそのままとし、粘着テープ7上に散乱しているが如き塵は吸引ファン4の作動による吸引気流によりサクションボックス2内に吸引されヘパフィルタ6で分離され清浄空気のみ装置外に排出される。
【0020】
上記清拭中パンチングボード3上で足踏み等して靴底の付着物を粘着テープ7に移そうとする際に靴底の異物が付着していない部分は当然粘着テープと接することになり、足踏みしたとき足を上げると靴底に粘着テープ7が付着して持ち上がる方向に動こうとすることになるが、このとき吸引ファン4が作動しているためパンチングボード3の吸引口からサクショウボックス2外の空気が吸引されており、流れのために粘着テープ7は靴の上昇に付いて持ち上げられることはなく自然に靴底と粘着テープとは離れて足の動きの自由度を阻害されることはない。
【符号の説明】
【0021】
1 靴底クリーナー
2 サクションボックス
3 パンチングボード
4 吸引ファン
5 ダクト
6 ヘパフィルタ
7 粘着テープ
7a 未使用粘着テープロール
8 芯材
9a,9b 支持部材
10a 支持軸
10b フランジ
11 使用済テープ支持軸
12a,12b 支軸頭部
13 スプリング
14 使用済粘着テープ
15 巻取フランジ
18 駆動軸
19a,19b 歯車
20 巻取用モータ
21 カバー
22 窓
23 センサー
23a 投光部
23b 受光部
24 反射板
25 操作パネル
26 靴底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール巻きしてなる粘着テープの支持軸と、同テープの巻取軸及びその駆動手段とを有し、前記両軸間を拭清エリアとし、該エリアに粘着面を上にして前記粘着テープを延引し、該粘着テープの下位には、粘着テープをガイドするパンチングボードを有する吸引ボックスを設置したことを特徴とする靴底クリーナー。
【請求項2】
拭清エリアには、拭清エリアに侵入した者の数を計測するカウンター及び、該カウンターが所定カウント数に達したときに巻取軸を所定回転させる駆動手段を設け、毎カウント時、若しくは所定カウント数に達した後に巻取軸駆動手段を所定回転させ、ロール巻きしてなる粘着テープの未使用粘着面を拭清エリアに位置させ得ることを可能にしたことを特徴とする請求項1記載の靴底クリーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−34806(P2012−34806A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177072(P2010−177072)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)