説明

靴材

【課題】吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備した靴材を提供する。
【解決手段】3層構造を有する多層構造織編物を含む靴材において、前記3層のうち少なくともどちらか一方に、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aを配して靴材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備した靴材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴材としては、靴の用途によって、天然皮革、合成皮革、綿布などの天然繊維や、合成繊維、これらの複合素材などが主に使用されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、天然皮革は紳士・婦人用に、合成繊維はジョギングシューズ等のスポーツ用、大人や子供用のカジュアルシューズ等に多く使用されている。
【0003】
しかしながら、天然繊維を用いた靴材では、吸水性に優れるものの速乾性に劣るという問題があった。一方、合成繊維を用いた靴材では、速乾性に優れるものの、吸水性、摩擦力が著しく劣るため、発汗量が他の身体部位と比べ少ない足部でも、夏場のマラソン等、過酷な使用条件では、靴材自体は殆ど汗を吸収せず、足のムレによる不快感、運動時に靴内で足がすべる問題があった。
【0004】
なお近年、ナノファイバーと称せられる超極細繊維が提案されている。例えば、ポリエステルなどの合成繊維を超極細繊維化することにより、これまでの繊維では得ることのできなかった質感や機能を付与することが可能となり、さかんに開発が行われている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−340102号公報
【特許文献2】特開2000−207319号公報
【特許文献3】実用新案登録第2567438号公報
【特許文献4】特開2000−8252号公報
【特許文献5】特開2007−2364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備した靴材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、表層および中間層および裏層の3層構造を有する多層構造織編物を含む靴材において、表層および裏層のうち少なくともどちらか一方に単繊維径が1000nm以下の極細フィラメントを配することにより、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備した靴材が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「3層構造を有する多層構造織編物を含む靴材であって、前記3層の中で最外層に位置する2層のうち少なくともどちらか一方の層に、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aが含まれることを特徴とする靴材。」が提供される。
【0009】
その際、前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれる層がメッシュ組織であることが好ましい。また、前記多層構造織編物が編物組織を有する編物であることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。また、前記3層のうち中間層に、単糸繊度が10dtex以上の糸条Bが含まれることが好ましい。また、前記多層構造織編物を構成する繊維の80重量%以上がポリエステル繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備した靴材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の靴材は、表層および中間層および裏層の3層構造を有する多層構造織編物を含む靴材であって、3層の中の最外層に位置する2層のうち少なくともどちらか一方の層に、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aが含まれる。なお、本発明において、3層をそれぞれ表層、中間層、裏層と称するが、表層とは、最外層に位置する2層のうちどちらか一方の層であり、裏層とは他方の層である。使用の際に、表層および裏層のうちどちらを肌側に用いてもよい。
【0012】
ここで、前記ポリエステルフィラメント糸Aにおいて、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm)の範囲内であることが肝要である。かかる単繊維径を単繊維繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が10nmよりも小さい場合は繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、該単繊維径が1000nmよりも大きい場合は、十分な表面摩擦抵抗が得られず、本発明の主目的である、表面摩擦抵抗が得られ難くなるおそれがある。ここで、単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0013】
前記ポリエステルフィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、表面摩擦抵抗を得る上で500本以上(より好ましくは2000〜10000本)であることが好ましい。また、フィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
【0014】
前記ポリエステルフィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0015】
前記ポリエステルフィラメント糸Aを形成するポリエステルポリマーの種類としては特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0016】
前記多層構造織編物において、表層および裏層のうち少なくともどちらか一方(すなわち、最外層に位置する2層のうち少なくともどちらか一方の層)の織編組織がメッシュ組織であることが好ましい。表層および裏層がプレーン組織(メッシュ組織でない通常の組織)の場合は、軽量感が出ず、また通気性も低くなるおそれがある。
【0017】
前記多層構造織編物において、表層および裏層のうち少なくともどちらか一方に、前記のポリエステルフィラメント糸Aが含まれる限り、織編物を構成する繊維は限定されないが、中間層に、単糸繊度が10dtex以上(好ましくは20〜100dtex)の糸条Bが含まれと、靴材のクッション性が向上し好ましい。糸条Bの単糸繊度が10dtex以下であると、表層と裏層を支えることが出来ずで、クッション性が得られ難くなるおそれがある。
【0018】
前記糸条Bにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、モノフィラメントであるこことが好適である。また、かかる糸条Bの繊維形態は特に限定されず紡績糸でもよいが、長繊維であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0019】
前記糸条Bを形成する繊維の種類としては、特に限定されず、ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル繊維、ウレタン繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドからなるポリアミド繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン繊維、アクリル繊維、パラ型もしくはメタ型アラミドからなるアラミド繊維、およびそれらの変性合成繊維、さらには、天然繊維、再生繊維、半合成繊維など衣料に適した繊維であれば自由に選択できる。なかでもポリエステル系繊維が好ましく、かかるポリエステル系繊維を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、ポリエーテルエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】
なお、前記ポリエステルフィラメント糸Aおよび糸条Bにおいて、繊維は1種類であることが好ましいが、複数の組み合わせであってもよい。例えば、ポリウレタン繊維やポリエーテルエステル系繊維などからなる弾性繊維糸条と、ポリエステル系繊維糸条とをインターレース空気ノズルなどにより空気混繊させた複合糸や、弾性繊維糸条のまわりにポリエステル系糸条をカバリングした複合糸などや、紡績糸との複合糸でもよい。
【0021】
前記多層構造織編物において、織編組織は3層以上の多層構造であれば特に限定されず、織物であれば、緯糸のみが表層/裏層に二重になるように配列された緯二重織物、経糸のみが表層/裏層に二重になるように配列された経二重織物、経糸、緯糸とも表層/裏層に二重になるように配列された完全二重織物、編物であれば、ダブルラッセル、丸編みの両側結節組織などが好適に例示される。特に、ダブルラッセル編物が好ましい。なかでも、優れたクッション性と通気性を得る上で、編物が好ましい。また、前記表層および裏層のうち、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれる層がメッシュ組織であることが好ましい。
【0022】
本発明の靴材は例えば以下の製造方法により製造することができる。まず、海成分とその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維(島数100〜1500)が好ましく用いられる。
【0023】
すなわち、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0024】
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0025】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、島成分の形状が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0026】
かかる海島型複合繊維は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に未延伸糸として巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。かかる海島型複合繊維において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。また、かかる海島型複合繊維の沸水収縮率としては5〜30%の範囲内であることが好ましい。
【0027】
一方、必要に応じて、単繊維繊度が10dtex以上(好ましく20〜100dtex)である糸条Bを用意する。最終的に得られる織編物内の糸条Bの単繊維繊度を10dtex以上とする上で、単繊維繊度を前記の範囲内とすることが好ましい。
かかる糸条Bにおいて、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれフィラメント数1〜100本、総繊度10〜100dtexの範囲内であることが好ましい。
【0028】
次いで、表層および裏層のうち少なくともどちらか一方に前記海島型複合繊維を配して、表層および中間層および裏層の3層構造を有する、前記のような多層構造織編物を常法により製編織する。
【0029】
次いで、該織編物にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維を単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメントAとすることにより、前記多層構造織編物が得られる。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0030】
また、該アルカリ水溶液による溶解除去の前および/または後に編地に染色加工を施してもよい。さらに、常法のカレンダー加工、起毛加工、撥水加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0031】
本発明の靴材はかかる多層構造織編物を含むものである。ここで、前記の多層構造織編物だけで靴材を構成してもよいし、アクセサリーなどの付属品を適宜付加してもさしつかえない。また、前記ポリエステルフィラメント糸が露出する面を、肌側に用いることが好ましい。なお、靴材には、靴本体や内部靴底を構成する部材だけでなく、取替え可能な中敷も含まれる。
【0032】
かくして得られた靴材において、多層構造織編物の表層および裏層のうち少なくともどちらか一方に、前記の10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれるので、靴材は、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを有する。また、表層および裏層のうち少なくともどちらか一方の織編組織がメッシュ組織である場合には、靴材は軽量感に優れ、高い通気性を有する。さらには、前記多層構造織編物は3層構造を有するので、優れたクッション性を有する。特に、中間層に前記糸条Bが含まれる場合は、特に優れたクッション性を有する。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<溶融粘度>乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見る。
<溶解速度>海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0034】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ、艶消し剤の含有量:0重量%)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合繊維未延伸糸を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。
得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合繊維延伸糸(ポリエステルフィラメントA用繊維)は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は710nmであった。
【0035】
他方、糸条Bとして、通常のポリエチレンテレフタレートモノフィラメント(総繊度33dtex/1fil)を用意した。
次いで、22ゲージのダブルラッセル機を使用して、前記ポリエチレンテレフタレートモノフィラメント(総繊度33dtex/1fil、糸条B)が編地の中間層に、一方前記海島型複合繊維延伸糸(総繊度56dtex/10fil)が編地の表層側(メッシュ組織)に位置するよう給糸し、ポリエチレンテレフタレートフィラメント仮撚捲縮糸(総繊度84dtex/36fil)が裏層(プレーン組織)に位置するように給糸し、片面メッシュダブルラッセル編地(3層構造)を編成した。その際に用いた編組織図を図1に示す。なお、下記のように糸を配した。
L2:海島型複合繊維延伸糸56dtex/10fil 3本
L3:海島型複合繊維延伸糸56dtex/10fil 3本
L4:ポリエチレンテレフタレートモフィラメント33dtex/1fil
L5:ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮糸84dtex/36fil
【0036】
次いで、海島型複合繊維延伸糸の海成分を除去するために編地を3.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。その後、130℃かつ30分間の高圧染色を行い、最終セットとして170℃の乾熱セット行った。
得られた多層構造織編物の表層側には、単繊維径710nmのポリエステルフィラメント糸Aが露出していた。また、中間層に配されたポリエチレンテレフタレートモフィラメント33dtex/1filの単繊維径は96μmであった。また、裏層に配されたポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮糸84dtex/36filの単繊維径は14.6μmであった。
次いで、該多層構造織編物の表層側が肌側に位置するよう、靴本体の靴材として用いて靴を製造し使用したところ、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備したものであった。また、クッション性と軽量感においても優れていた。
【0037】
[実施例2]
実施例1で得られた多層構造織編物の表層側が肌側に位置するよう中敷を得て使用したところ、吸水性と速乾性と高い表面摩擦抵抗とを兼備したものであった。また、クッション性と軽量感においても優れていた。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、表層側にも、ポリエステルフィラメント仮撚糸(総繊度84dtex/36fil)を配した。また、アルカリ減量は施さなかった。これ以外は実施例1と同様にした。
得られた多層構造織編物の表層側と裏層側に配されたポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮糸84dtex/36filの単繊維径は14.6μmであった。また、中間層に配されたポリエチレンテレフタレートモフィラメント33dtex/1filの単繊維径は96μmであった。
得られた多層構造織編物を靴本体の靴材として用いて靴を製造し使用したところ、実施例1で得られたものと比較して、表面摩擦抵抗の小さいものであった。また、吸水性も十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、クッション性、軽量感に優れ、高い表面摩擦抵抗と通気性を有する多層構造織編物および該織編物を用いてなる繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で用いた編組織図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層構造を有する多層構造織編物を含む靴材であって、前記3層の中で最外層に位置する2層のうち少なくともどちらか一方の層に、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aが含まれることを特徴とする靴材。
【請求項2】
前記ポリエステルフィラメント糸Aが含まれる層がメッシュ組織である、請求項1に記載の靴材。
【請求項3】
前記多層構造織編物が編物組織を有する編物である、請求項1または請求項2に記載の靴材。
【請求項4】
前記ポリエステルフィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の靴材。
【請求項5】
前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である、請求項1〜4のいずれかに記載の靴材。
【請求項6】
3層のうち中間層に、単糸繊度が10dtex以上の糸条Bが含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載の靴材。
【請求項7】
前記多層構造織編物を構成する繊維の80重量%以上がポリエステル繊維である、請求項1〜6のいずれかに記載の靴材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−104575(P2010−104575A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279706(P2008−279706)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】