説明

靴用噴射アダプタ

【課題】消臭効果を十分に発揮することができる一方、ガス抜きを容易に行い、廃棄時の利便性を高めるとともに、誤ってボタン部材を押圧操作するおそれをなくす。
【解決手段】カバー部材40と、その容器取付部41を容器10に取り付けたとき、噴射ステム21に互いの軸線を一致して連結され、軸線を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるとともに、噴射ステムを押し込み可能に軸線方向に移動自在に設けられているボタン部材50と、それに取り付けられ、ガス抜き時容器取付部74およびステム押込み部73が設けられているフタ部材70とから構成され、ボタン部材には、それをロック位置としたとき、カバー部材に突き当てて軸線方向の動きを規制するロック用突き当て部と、ロック解除位置としたとき、カバー部材への突き当てを解除してボタン部材の軸線方向の動きを許容するロック解除部とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部に取り付けて、容器内に収容する消臭液などの内容物を、ブーツ、スニーカー、長靴などの靴内に向けて噴射する靴用噴射アダプタに関する。詳しくは、容器から突出する噴射ステムにボタン部材を連結して容器に取り付けられ、使用時に靴内に入れられて、ボタン部材を介して噴射ステムが押し込まれたとき、その噴射ステムから吐出する容器の消臭液等の内容物がボタン部材内を通してボタン部材の噴射部から靴内に向けて噴射される靴用噴射アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、噴射アダプタの中には、例えば特許文献1に記載されているように、ボタン部材の外周を取り囲むようにカバー部材が設けられ、容器に対してそのカバー部材を取り付けるときそのカバー部材内に組み込まれているボタン部材が、容器から突出する噴射ステムに対して着脱可能に取り付けられるものがある。そして、この噴射アダプタでは、カバー部材に第1嵌着部と第2嵌着部とが設けられ、容器に対して第1嵌着部でカバー部材を装着したときには、使用状態となり、第2嵌着部でカバー部材に装着したときにはガス抜き状態になるようにしていた。
【0003】
使用状態では、ボタン部材を噴射ステムに装着させて、ボタン部材の押圧操作により、噴射ステムから吐出された内容物をボタン部材の噴射部から噴射させる。他方、ガス抜き状態では、ボタン部材を噴射ステムに押し付けて、噴射ステムからボタン部材に向けて残留内容物を噴射させる状態で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3813833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されているような噴射アダプタを容器の口部に取り付け、例えばブーツ内消臭用噴射器として使用する場合には、容器を手で持ってボタン部材を押し下げることとなるから、該噴射器をブーツ内の奥深くまで入り込ませることができず、足を入れるブーツの開口付近から消臭液を噴射することとなり、このためつま先部分の空気を押し退けてつま先部分にまで消臭液が届きにくく、靴内に満遍なく消臭液を行き渡らせることができず、消臭効果を十分に発揮することができなかった。また、従来の靴用噴射アダプタにあっては、容器に対する噴射アダプタの取り付け状態によって、使用状態としたりガス抜き状態としたりするものはなかった。のみならず、使用取り付け状態にあって、誤ってボタン部材を押圧操作したとき、容器の内容物がボタン部材の噴射部から噴射されてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、靴用噴射アダプタにあって、消臭効果を十分に発揮することができる一方、ガス抜きを容易に行い、廃棄時の利便性を高めるとともに、誤ってボタン部材を押圧操作して容器内容物を噴射してしまい、排出した内容物で衣服や周囲を汚すおそれをなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、この発明に係る靴用噴射アダプタは、
カバー部材と、そのカバー部材に対して軸線を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるボタン部材と、フタ部材とから構成され、
ボタン部材には、それをロック位置としたとき、カバー部材に突き当ててそのボタン部材の軸線方向の動きを規制するロック用突き当て部と、ロック解除位置としたとき、カバー部材への突き当てを解除してボタン部材の軸線方向の動きを許容するロック解除部とが形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、カバー部材は、ボタン部材から噴出される内容物を通過する内容物通過開口が設けられており、また容器の口部に着脱可能に取り付けられる容器取付部を有する。
【0009】
ボタン部材は、カバー部材の容器取付部を容器の口部に取り付けたとき、容器から突出する噴射ステムに互いの軸線を一致して着脱自在に連結され、容器に固定されるカバー部材に対して、軸線を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるとともに、噴射ステムを押し込み可能に軸線方向に移動自在に設けられる。
【0010】
また、フタ部材は、ボタン部材に取り付けられる。そして、そのフタ部材には、ガス抜き時に容器の口部に着脱可能に取り付けられるガス抜き時容器取付部、およびそのガス抜き時容器取付部が容器に取り付けられたとき、噴射ステムを押し込んでその押し込み状態で保持するステム押込み部が設けられている。
【0011】
前記カバー部材は、円筒状で、周面に内容物通過開口があけられており、上縁内周に容器取付部が設けられるとともに、下縁外周に下向きのロック用突き当て部が形成され、またそのロック用突き当て部の周方向の一部を切り欠いてロック解除部が形成されており、かつ下縁内周に係合爪が形成されている一方、
前記ボタン部材には、ヘッド部と、キャップ部と、それらの間に設けられてヘッド部を被ってカバー部材が取り付けられるカバー部材取付部とからなり、ヘッド部には、互いの軸線を一致して噴射ステムに着脱自在にはめ付けるステム嵌合部と、容器内容物の噴射部と、それら間を連通して噴射ステムから吐出された容器内容物を通過して噴射部から噴出する液通過孔とが設けられ、前記カバー部材取付部には、ヘッド部の外周に形成されて、カバー部材の係合爪と係合してそのカバー部材を抜け止めする係合爪と、カバー部材の下縁が入り込む環状溝と、その環状溝の周囲外縁に設ける上向きのロック用突き当て部およびロック解除部とが形成されるように構成するとよい。
【0012】
容器内容物の噴射部は、例えば、ボタン部材のノズル部材嵌合穴にノズル部材が圧入されて形成され、ボタン部材の液通過孔を通過した容器内容物がノズル部材の噴口から噴出されて、カバー部材の内容物通過開口を通過して靴内に噴射される。
【0013】
前記ステム押込み部は、周囲に、容器の口部に弾性をもって着脱可能に取り付く複数の弾性片を設けてガス抜き時容器取付部が形成されているとよい。
【0014】
また、そのステム押込み部は、ガス抜き時にガス抜き時容器取付部を容器の口部に取り付けたとき、噴射ステムの先が入り込む筒部と、その筒部の内周面に軸方向に形成されるリブと、筒部の先に径方向に横切るように設けるブリッジ部とから形成されるようにするとよい。
【0015】
そして、この発明に係る靴用噴射アダプタは、カバー部材の容器取付部が容器の口部に取り付けられ、カバー部材を保持するボタン部材のステム嵌合部が、容器から突出する噴射ステムに互いの軸線を一致してはめ付けられて連結される。
【0016】
その後、この発明に係る靴用噴射アダプタが容器に取り付けられた噴射器は、容器を持って、ボタン部材が軸線を中心として回動されてロック位置からロック解除位置とされて、靴内に挿入され、ボタン部材が直接またはフタ部材を介して間接的に靴底に押し当てられる。
【0017】
しかる後、該噴射器は、容器を押し下げてボタン部材が靴底により相対的に押し上げられることにより、噴射ステムが容器内に押し込まれて、噴射ステムから吐出される容器の内容物が、ボタン部材内を通して噴出され、カバー部材の内容物通過開口を通過して靴内に噴射される。
【0018】
使用後は、この発明に係る靴用噴射アダプタが容器に取り付けられた噴射器は、容器から手を離すことにより、噴射ステムに働く付勢力で噴射ステムが戻されて容器が押し上げられ、噴射ステムからの内容物の吐出が停止される。
【0019】
再使用時には、該噴射器は、再度容器を押し下げて噴射ステムが容器内に押し込まれ、容器の内容物が噴射ステムからボタン部材内を通して噴出され、カバー部材の内容物通過開口を通過して再び靴内に噴射される。
【0020】
使用後、この発明に係る靴用噴射アダプタが容器に取り付けられた噴射器は、容器を持って、ボタン部材が軸線を中心として回動されてロック解除位置からロック位置へと戻され、カバー部材とボタン部材との間に形成される互いのロック用突き当て部が突き当たって噴射ステムの軸方向への移動が規制された噴射ロック状態とされる。
【0021】
他方、この発明に係る靴用噴射アダプタにおいては、ガス抜き時には、カバー部材の容器取付部が容器の口部から取り外されるとともに、ボタン部材と噴射ステムとの連結が解除され、今度は、フタ部材のガス抜き時容器取付部が容器の口部に取り付けられ、そのガス抜き時容器取付部を容器に取り付けたとき、フタ部材のステム押込み部で噴射ステムを押し込んでその押し込み状態で保持され、容器内に残留する内容物が噴射ステムから噴射される。
【発明の効果】
【0022】
したがって、この発明に係る靴用噴射アダプタによれば、使用時に容器の口部に取り付けられ、靴内の奥深くまで入れて靴底上に置かれる状態とし、そののち容器を押し下げてボタン部材が靴底により相対的に押し上げられることにより、噴射ステムが容器内に押し込まれて、噴射ステムから吐出される容器の内容物が、ボタン部材内を通して噴出され、カバー部材の内容物通過開口を通過して靴内に噴射されるものであり、靴内に満遍なく行き渡るように内容物を効率よく噴射させ、消臭効果を十分に発揮することができる。また、ガス抜き時に、カバー部材の容器取付部に代えてフタ部材のガス抜き時容器取付部を容器の口部に取り付けるだけでよいので、ガス抜きを容易に行い、廃棄時の利便性を高めることができるとともに、使用後には、容器を持ってボタン部材を回動してロック解除位置からロック位置とし、ボタン部材が、カバー部材とボタン部材との間に形成される互いのロック用突き当て部を突き当てて噴射ステムの軸方向への移動を規制する噴射ロック状態とされるので、誤ってボタン部材を押圧操作して容器内容物を噴射してしまい、排出した内容物で衣服や周囲を汚すおそれをなくすことができる。
【0023】
請求項2に記載の発明に係る靴用噴射アダプタによれば、カバー部材の下縁外周に下向きのロック用突き当て部が形成され、その周方向の一部を切り欠いてロック解除部が形成されるとともに、ボタン部材に上向きのロック用突き当て部が形成され、そのロック用突き当て部の周方向の一部を切り欠いてロック解除部が形成されるので、カバー部材に対してボタン部材を回動操作することにより、互いのロック用突き当て部を対向するロック位置と、互いのロック解除部を対向するロック解除位置とを的確に切り換えて、内容物の噴射ロックおよびそのロック解除を確実に行うことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明に係る靴用噴射アダプタによれば、フタ部材のステム押込み部の周囲に、容器の口部に着脱可能に取り付く複数の弾性片を設けてガス抜き時容器取付部が形成されているので、ガス抜き時における容器の口部に対するフタ部材の着脱を容易とすることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明に係る靴用噴射アダプタによれば、ステム押込み部が、ガス抜き時にガス抜き時容器取付部を容器の口部に取り付けたとき、噴射ステムの先が入り込む筒部と、その筒部の内周面に軸方向に形成されるリブと、筒部の先に径方向に設けるブリッジ部とから形成されているので、噴射ステムの高さのバラツキにも対応して、ガス抜き時に噴射ステムを押し込んで常にその押込み状態を確実に保持することができる一方、ブリッジ部でステム押込み部の強度を保持するとともに、噴射内容物をブリッジ部に当てて噴射内容物の勢いを弱め、また噴射方向を拡散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る靴用噴射アダプタが容器に取り付けられた噴射器において、噴射ロック状態にあるとき、この発明に係る靴用噴射アダプタを断面で示す該噴射器の容器一部省略側面図である。
【図2】図1に示す噴出器の靴用噴射アダプタで用いるカバー部材で、(A)は平面図、(B)はそのB−B線矢示方向断面図、(C)は底面図、(D)はそのD−D線矢示方向断面図である。
【図3】図1に示す噴出器の靴用噴射アダプタで用いるボタン部材で、(A)は平面図、(B)は短径方向に切って示すそのB−B線矢示方向断面図、(C)は長径方向に切って示すC−C線矢示方向断面図、(D)は(A)の正面図である。
【図4】図1に示す噴出器の靴用噴射アダプタで用いるノズル部材で、(A)は中央縦断面図、(B)は側面図である。
【図5】図1に示す噴出器の靴用噴射アダプタで用いるフタ部材で、(A)は平面図、(B)はその中央縦断面図である。
【図6】図1に示す噴出器において、噴射ロック解除状態にあるとき、この発明に係る靴用噴射アダプタを断面で示す該噴射器の容器一部省略側面図である。
【図7】同噴出器において、噴射作動状態にあるとき、この発明に係る靴用噴射アダプタを断面で示す該噴射器の容器一部省略側面図である。
【図8】同噴出器において、ガス抜き状態にあるとき、この発明に係る靴用噴射アダプタを断面で示す該噴射器の容器一部省略側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態につき説明する。
図1には、この発明に係る靴用噴射アダプタが容器に取り付けられている噴射器における噴射ロック状態を示す。
【0028】
図中符号10は、内部に消臭液等の内容物が収容されている容器である。容器10の口部11には、公知のエアゾール式やポンプ式の噴射装置20が取り付けられており、その噴射装置20の噴射ステム21が容器10から突出するように設けられている。図示例では、口部11にマウンテンキャップ12が形成されており、そのマウンテンキャップ12にはめ付けて容器10に、この発明に係る靴用噴射アダプタ30が取り付けられている。
【0029】
靴用噴射アダプタ30は、容器10の口部11に取り付けられるカバー部材40と、噴射ステム21に取り付けられて、カバー部材40に対して噴射ステム21の軸線L1を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるボタン部材50と、そのボタン部材50の底を塞ぐように取り付けられるフタ部材70とから構成されている。
【0030】
はじめに、カバー部材40は、図2の(A)〜(D)に示すように、円筒形状をなす。そして、上縁内周に内向きに突出してリブ状の容器取付部41が周方向に形成されている。また、周面には、円形の内容物通過開口42が1つ設けられ、使用時に後述するノズル部材60から噴出された内容物を通過し得るようになっている。
【0031】
さらに、カバー部材40は、下縁外周に下向き段部を設けてロック用突き当て部44が形成され、そのロック用突き当て部44の周方向の一部が、切り欠かれて、径方向の対向する位置に一対のロック解除部45が形成されている。ロック解除部45には、図2(B)、(C)に示すようにaの幅で下縁からの段差の大きな下向き段部を有し、各々内容物通過開口42から周方向両側に90度ずれた位置に形成されている。また、下縁内周にも内向きに突出し、係合爪46が周方向にリブ状に形成されている。
【0032】
次に、ボタン部材50は、図3の(A)〜(D)に示すように、大別すると、中央から上向きに突出するヘッド部51と、そのヘッド部51の外周に形成されている環状溝52を設けて形成されるカバー部材取付部54と、そのカバー部材取付部54を挟んで設けられる半たまご型のキャップ部53とで構成されている。
【0033】
そして、ヘッド部51には、中心に入口部がテーパー状になっているステム嵌合部51aが軸線L2に沿って軸穴状に設けられ、また周面から外向きに突出して外周に弧状の係合爪51bが周方向に形成されている。さらに、半たまご型のキャップ部53の短径方向に向けて周面に外向きに開口して公知のノズル部材嵌合穴51cが設けられ、図3(C)に示すように、そのノズル部材嵌合穴51cとステム嵌合部51aとを連通して内部に液通過孔51dが形成されている。
【0034】
カバー部材取付部54には、ヘッド部51の外周に、カバー部材40の係合爪46と係合してそのカバー部材40を抜け止めする上述の係合爪51bと、カバー部材40の下縁が入り込む環状溝52と、その環状溝52の周囲外縁に設ける上向き段部を設けて形成されるロック用突き当て部55と、そのロック用突き当て部55の周方向の一部を切り欠いて、径方向の対向する位置に一部が環状溝52内に入り込むようにして設けられている一対のロック解除部56とが形成されている。ロック解除部56は、図3(A)に示すようにbの幅でロック用突き当て部55より低い段差の上向き段部を有し、各々キャップ部53の短径方向に形成されている。このボタン部材50のロック解除部56の幅bは、上述したカバー部材40のロック解除部45の幅aより小さく形成され、ボタン部材50のロック解除部56がカバー部材40のロック解除部45内に入り込むことができるようになっている。
【0035】
また、キャップ部53には、下縁内周に、内向きに突出して係止突起57が周方向に形成されるとともに、段状に曲げられて下縁にフタ嵌合部58が設けられている。
【0036】
次に、図1には示されていないノズル部材60は、図4の(A)および(B)に示すように、円板状の頂部61と、その裏面側から突出する筒状のスカート部62とで構成される。頂部61には、中心に噴口63があけられ、スカート部62によって囲まれている内面には外周からその噴口63に向けて径方向にスクリュー溝64が設けられている。他方、スカート部62には、外面に、外向きに突出して係止爪65が形成され、内面には、軸方向に長い長方形状の平面部66が周方向にいくつか(図示例では4つ)間隔をあけて設けられている。
【0037】
次いで、フタ部材70は、図5の(A)および(B)に示すように、外形状がたまご型をなす台形状で、天板部71と周板部72とから構成されている。天板部71には、中央位置に上向きに突出してステム押込み部73が形成されるとともに、そのステム押込み部73を中心としてまわりにガス抜き時容器取付部74が設けられている。
【0038】
ステム押込み部73には、天板部71から突出する筒部75と、その筒部75の内周面に軸方向に設けられるいくつか(図示例では一対)のリブ76と、筒部75の先に径方向に横切って設けるブリッジ部77とから形成されている。他方、ガス抜き時容器取付部74には、ステム押込み部73を中心として弧状をなす3つの弾性片78が、それぞれ先端に係止爪79を内向きに設けて天板部71から垂下するように形成されている。
【0039】
周板部72には、外面から外向きに突出して係止突起80が周方向に形成されている。また、下縁周囲に、鍔部81が設けられている。
【0040】
そして、図示例の靴用噴射アダプタ30が組み立てられるときは、ボタン部材50のノズル部材嵌合穴51cに、頂部61を外向きにノズル部材60が圧入され、係止爪65で抜け止めてノズル部材60が取り付けられ、図6に示すようにボタン部材50に容器内容物の噴射部90が形成される。その後、いずれからでもよいが、ボタン部材50にフタ部材70およびカバー部材40が各々取り付けられる。はじめにフタ部材70が取り付けられるとすると、ボタン部材50のキャップ部53内にフタ部材70が、互いの短径方向と長径方向とをともに合わせて天板部71側から入れられ、係止突起57と係止突起80とを掛け止めて鍔部81がフタ嵌合部58にはめ付けられ、ボタン部材50内にフタ部材70が取り付けられる。
【0041】
続いて、カバー部材40が取り付けられるときは、カバー部材40内に下方からボタン部材50のヘッド部51が挿入され、カバー部材40の下縁をボタン部材50の環状溝52に入り込ませ、カバー部材40のロック用突き当て部44がボタン部材50のロック用突き当て部55に突き当てられ、カバー部材40の係合爪46とボタン部材50の係合爪51bとが互いに相手方を乗り越えて掛け止めされ、カバー部材40が抜け止め保持される。
【0042】
そして、この例の靴用噴射アダプタ30は、カバー部材40の上縁を変形することにより、カバー部材40の容器取付部41が、図1に示すように、マウンテンキャップ12の顎部にはめ付けられて、容器10の口部11に対して着脱可能に取り付けられる。このとき同時に、カバー部材40を保持するボタン部材50のステム嵌合部51aが、容器10から突出する噴射ステム21の先端をテーパー状の入口部で案内して噴射ステム21にはめ付けて互いの軸線L1、L2を一致して連結され、容器10に取り付けられる。このように、ステム嵌合部51aを噴射ステム21にはめ付けたとき、ボタン部材50は、カバー部材40に対して、軸線L1、L2を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるとともに、噴射ステム21を押し込み可能に軸線方向に移動自在に設けられる。
【0043】
しかし、噴出器の不使用時は、不用意に噴射ステム21を押し込むことがないように、カバー部材40のロック用突き当て部44がボタン部材50のロック用突き当て部55に突き当てられる図1に示す噴射ロック状態で保持され、フタ部材70を下に図示のように立てて保管されるようになっている。この噴射ロック状態では、ボタン部材50の噴射部90は、カバー部材40の内容物通過開口42の位置から、90度ずれた位置にある。
【0044】
次いで、図示噴射器を使用するときには、容器10を持って、ボタン部材50が軸線L1、L2を中心として回動されて、カバー部材40のロック解除部45にボタン部材50のロック解除部56が位置合わせされ、ロック解除位置とされる。すると、図6に示すように、ボタン部材50の噴射部90がカバー部材40の内容物通過開口42と同じ向きとなる。その後、靴用噴射アダプタ30が靴内に挿入され、ボタン部材50が直接靴底に押し当てられるようにしてもよいが、この例ではフタ部材70を介して間接的に靴底に押し当てられる。
【0045】
しかる後、図7に示すように、容器10を押し下げて靴底により相対的に靴用噴射アダプタ30が押し上げられ、ボタン部材50を介して噴射ステム21が容器10内に押し込まれて、噴射部90がカバー部材40の内容物通過開口42と完全に対向する位置となる。そして、噴射ステム21から吐出される容器10の内容物が、ステム嵌合部51aから液通過孔51dを通してノズル部材嵌合穴51cに導かれ、ボタン部材50内を通してノズル部材60の噴口63から噴出され、カバー部材40の内容物通過開口42を通過して靴内に噴射される。
【0046】
使用後は、容器10から手を離すことにより、噴射ステム21に働く付勢力で噴射ステム21が戻されて容器10が押し上げられ、噴射ステム21からの内容物の吐出が停止される。再使用時には、再度容器10を押し下げて図7に示すように噴射ステム21が容器10内に押し込まれ、容器10の内容物が噴射ステム21からボタン部材50内を通して噴射部90から噴出され、カバー部材40の内容物通過開口42を通過して靴内に噴射される。
【0047】
使用後は、容器10を持って、ボタン部材50が軸線L1、L2を中心として回動されて図1に示す噴射ロック位置に戻され、カバー部材40とボタン部材50との間に形成される互いのロック用突き当て部44、55が突き当たって噴射ステム21の軸方向への移動が規制される。
【0048】
さて、この発明に係る靴用噴射アダプタ30では、ガス抜き時には、カバー部材40の容器取付部41がマウンテンキャップ12の顎部から外されて容器10の口部11から取り外され、同時にボタン部材50が噴射ステム21から外されて、図8に示すように反転されて今度はフタ部材70のガス抜き時容器取付部74の係止爪79が弾性片78の弾性に抗してマウンテンキャップ12の顎部にはめ付けられて容器10の口部11に着脱自在に取り付けられる。そして、そのガス抜き時容器取付部74を容器10に取り付けたとき、噴射ステム21の先が筒部75内に入り込んで内部のリブ76に当たり、フタ部材70のステム押込み部73で噴射ステム21を押し込んで噴射ステム21が押し込み状態で保持され、容器10内に残留する内容物が噴射ステム21から噴射されてガス抜きされる。
【0049】
なお、図示例では、ステム押込み部73にリブ76を設けているので、容器10から突出する噴射ステム21の突出高さにバラツキがあっても、そのバラツキに応じて適宜リブ76が潰れて噴射ステム21を確実に押し込むことができる。また、ステム押込み部73にはブリッジ部77を設けるので、ステム押込み部73の強度を高めることができる一方、ブリッジ部77に噴射ガスを当ててその勢いを弱めることもできる。
【0050】
また、図示例では、ボタン部材50を90度回転させてロックを解除するとき、当然ボタン部材50とともにそれに取り付けられるフタ部材70も一緒に回動するが、カバー部材40は容器10に食い付いたまま回動しないようになっている。つまり、ロック状態では、ボタン部材50が容易に回動しないようにボタン部材50とカバー部材40との間には若干の摩擦抵抗αはあるが、容器10とカバー部材40との間にはその摩擦抵抗αより大きな摩擦抵抗βが働くように設計されている。
【符号の説明】
【0051】
10 容器
11 口部
12 マウンテンキャップ
20 噴射装置
21 噴射ステム
30 靴用噴射アダプタ
40 カバー部材
41 容器取付部
42 内容物通過開口
44 ロック用突き当て部
45 ロック解除部
46 係合爪
50 ボタン部材
51 ヘッド部
51a ステム嵌合部
51b 係合爪
51c ノズル部材嵌合穴
51d 液通過孔
52 環状溝
53 キャップ部
54 カバー部材取付部
55 ロック用突き当て部
56 ロック解除部
57 係止突起
58 フタ嵌合部
60 ノズル部材
61 頂部
62 スカート部
63 噴口
64 スクリュー溝
65 係止爪
66 平面部
70 フタ部材
71 天板部
72 周板部
73 ステム押込み部
74 ガス抜き時容器取付部
75 筒部
76 リブ
77 ブリッジ部
78 弾性片
79 係止爪
80 係止突起
81 鍔部
90 噴射部
L1 噴射ステムの軸線
L2 ステム嵌合部の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物通過開口が設けられ、容器の口部に着脱可能に取り付けられる容器取付部を有するカバー部材と、
そのカバー部材が取り付けられ、該カバー部材の容器取付部を容器の口部に取り付けたとき、容器から突出する噴射ステムに互いの軸線を一致して着脱自在に連結され、前記カバー部材に対して、軸線を中心としてロック位置とロック解除位置とに回動自在に設けられるとともに、噴射ステムを押し込み可能に前記軸線方向に移動自在に設けられているボタン部材と、
そのボタン部材に取り付けられ、容器の口部に着脱可能に取り付けられるガス抜き時容器取付部、およびそのガス抜き時容器取付部が容器に取り付けられたとき、前記噴射ステムを押し込んでその押し込み状態で保持するステム押込み部が設けられているフタ部材とから構成され、
前記ボタン部材には、それを前記ロック位置としたとき、前記カバー部材に突き当てて前記軸線方向の動きを規制するロック用突き当て部と、前記ロック解除位置としたとき、前記カバー部材への突き当てを解除して前記ボタン部材の軸線方向の動きを許容するロック解除部とが形成されていることを特徴とする靴用噴射アダプタ。
【請求項2】
前記カバー部材は、円筒状で、周面に前記内容物通過開口があけられており、上縁内周に前記容器取付部が設けられるとともに、下縁外周に下向きの前記ロック用突き当て部が形成され、そのロック用突き当て部の周方向の一部を切り欠いて前記ロック解除部が形成されており、かつ下縁内周に係合爪が形成されている一方、
前記ボタン部材には、ヘッド部と、キャップ部と、それらの間に設けられて前記ヘッド部を被って前記カバー部材が取り付けられるカバー部材取付部とからなり、前記ヘッド部には、互いの軸線を一致して噴射ステムに着脱自在にはめ付けるステム嵌合部と、容器内容物の噴射部と、それら間を連通して噴射ステムから吐出された容器内容物を通過して前記噴射部から噴出する液通過孔とが設けられ、前記カバー部材取付部には、前記ヘッド部の外周に形成されて、前記カバー部材の係合爪と係合してそのカバー部材を抜け止めする係合爪と、前記カバー部材の下縁が入り込む環状溝と、その環状溝の周囲外縁に設ける上向きの前記ロック用突き当て部および前記ロック解除部とが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の靴用噴射アダプタ。
【請求項3】
前記ステム押込み部の周囲に、容器の口部に着脱可能に取り付く複数の弾性片を設けて前記ガス抜き時容器取付部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の靴用噴射アダプタ。
【請求項4】
前記ステム押込み部が、ガス抜き時に前記ガス抜き時容器取付部を容器の口部に取り付けたとき、前記噴射ステムの先が入り込む筒部と、その筒部の内周面に軸方向に形成されるリブと、前記筒部の先に径方向に設けるブリッジ部とから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の靴用噴射アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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