説明

【課題】靴底と靴本体の安定した結合効果を有すると同時に、接着剤が剥落しにくく、効果的にその寿命の延長を図る防滑機能を有する靴を提供する。
【解決手段】防滑機能を有する靴は、靴底10の所定の部位に、規則的または不規則な形態のくり抜き溝11が設けられ、そのくり抜き溝11に対応する突起部分21が靴本体20の底部に成形される。靴底10と靴本体20とが結合し、靴本体20の底部の突起部分21が靴底10のくり抜き溝11を貫通し、靴底10からやや露出する。これにより、堅固なはめ込みによる固定効果が得られると同時に、靴底10が適当な曲がりによる変形により、接着剤が剥落するという問題を改善する。さらに、靴本体20の底部の突起部分21が靴底10からやや露出することにより、その防滑効果によりグリップ力が強化される上、靴底10が急速に摩耗することを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑機能を有する靴の靴底構造に関し、特に、従来の沢登り、磯釣りまたは漁労等の用途に運用される靴において、その靴底の接着剤の剥落、防滑効果の不良、摩耗しやすい等の欠点に対して提供される靴の改良構造であり、その構造の新しい設計により、靴底と靴本体の結合が安定するだけでなく、より好適な防滑機能を付与することにより、産業上の利用価値及び実用価値を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、沢登り、磯釣りまたは漁労等に従事する時、川底の石や岩または海岸の消波ブロックが長期にわたり水に漬かっていることで苔や海藻類が付着しているため、その上に足を下ろすと滑りやすく、転倒したり、転んだりして危険が生じやすい。このため、沢登り用のシューズやゴム長靴、雨靴、つなぎの作業着等、専用の靴や服装、装備が必要になる。靴底の滑り止め構造設計により、踏んだ時の摩擦力が増加して、滑ったり、転倒したりする危険性を低くする。
【0003】
この種の専用靴は、主に靴本体の靴底部分に一片の不織布等の摩擦力の比較的大きい材質で作られた靴底を結合させた設計になっている。この種の靴底と靴本体の結合において、一般的には、接着剤で貼り付ける方式が採用されている。前記不織布等の材質の平滑でない表面を利用して、比較的大きな摩擦力を提供して、足で踏み付けたり、歩いたりした時に、適当な防滑効果を有することにより、一定の防滑機能を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195463号公報
【0005】
しかしながら、この種類の専用靴は、構造上、以下の欠点を有する。
(1)靴底に不織布等の材質が用いられているため、その構造は密ではない。このため、靴底に運用された場合、一定の防滑効果は達成できるものの、摩耗しやすいという欠点があり、靴底の寿命が短くなる。
(2)その靴底はその構造が粗く、比較的大きな摩擦力が得られて、適当な防滑効果は付与されるものの、靴底が平面状であるため、その防滑機能は環境によって差が生じる。特に、体積の大きい岩や消波ブロック、防波堤の上に立つ場合、明らかにグリップ力が足りず、その防滑機能に大きく影響する。
(3)靴底と靴本体の結合は、接着剤で貼り付ける方式が採用されているため、その粘着部位は、靴底と靴本体が接触する平面部位のみである上、その靴底の材質は硬く、靴底に粘着された後は湾曲しにくいため、一定の期間使用すると、容易に接着剤が剥がれる現象が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の防滑靴底構造における複数の欠点を改善する防滑機能を有する靴底構造を備えた靴を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、靴底と靴本体の結合において、安定した結合効果を有すると同時に、接着剤が剥落しにくいことで、効果的にその寿命の延長を図る靴を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、靴底と靴本体の結合においてさらに安定した結合関係を達成すると同時に、その全体的なグリップ力が高まることにより、足を置いた時や歩行の際の安定性を高め、着用の実用性が高い靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の靴は、靴底の所定の部位に、規則的または不規則な形態のくり抜き溝が設けられ、靴本体底部にそのくり抜き溝に対応する突起部分が成形される。靴底と靴本体とが結合し、靴本体底部の突起部分が靴底のくり抜き溝を貫通し、靴底からやや露出する状態を呈する。これにより、より堅固なはめ込みによる固定効果が得られると同時に、靴底が適当な曲がりによる変形により、接着剤が剥落するという問題を改善する。さらに、靴本体底部の突起部分が靴底からやや露出することにより、その防滑効果によりグリップ力が強化される。さらに、靴底が過度に摩耗するのを回避するため、現有の同類の製品に存在する欠点、並びに、さらに派生するであろう問題を効果的に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による靴の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による靴の靴底側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による靴の分解図である。
【図4】本発明の第1実施形態による靴の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による靴の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による靴の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態による靴の靴底側から見た斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態による靴の分解図である。
【図9】本発明の第2実施形態による靴の側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による靴の断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態による靴の斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態による靴の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1、図2の斜視図、図3の分解図、及び、図4、図5の側面図および断面図を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。本発明の第1実施形態による靴は、不織布等の比較的摩擦力の大きな材質によって靴底(10)が形成される。靴底(10)は、靴本体(20)の底部の形態に応じて製造される。靴底(10)の所定の部位には、規則的または不規則な形態でくり抜き溝(11)が設置される。同時に、その靴本体(20)の底部に、くり抜き溝に対応する突起部分(21)が成形される。その突起部分(21)の高さは、靴底(10)の厚みよりやや大きいことで、靴底(10)と靴本体(20)の接着作業が行われる際、靴本体(20)の底部の突起部分(21)が、靴底(10)のくり抜き溝(11)を貫通して、はめ込み形式による固定効果が得られると同時に、突起部分(21)の端面が靴底からやや外に露出する状態を呈する。さらに、その接着作業において、その接着剤が靴底(10)と靴本体(20)底部の接触面以外に、さらに、突起部分(21)とくり抜き溝(11)の接触面にまで塗布される。または、靴底(10)が先に成形された後、さらに、その靴底が型の中に入れられて靴本体(20)の射出成形作業が行われて、接着方式(この製造方式は本発明の目的ではないため詳述しない)に取って代わることにより、その靴本体(20)成形材料が靴底(10)にあらかじめ設置された所定のくり抜き溝(11)に流れ込んで突起部分(21)を形成する。これにより、本発明の第1実施形態の靴を構成する。
【0012】
上述の構造により、靴底(10)のくり抜き溝(11)に靴本体(20)底部の突起部分(21)を組み合わせる設計によって、他方向性の結合及び固定効果を達成する。同時に、くり抜き溝(11)の設置により、その靴底(10)は適度に曲がって変形し、湾曲効果が付与されて、接着剤が剥落するという問題を効果的に回避することにより、その使用寿命を延長する。また、その靴本体(20)底部に成形された突起部分(21)が、靴底(10)の表面からやや突出することで、そのグリップ力及び防滑効果が増して、大幅にその防滑機能が高まる。そのため、各種の地形において足を下ろした時や歩行時における滑倒の危険を回避すると同時に、靴底(10)と各種地形との間で大きな面積の直接的な接触による摩擦を回避して、靴底(10)が過度に摩耗するのを回避して、大幅にその全体的な実用価値を高める。
【0013】
(第2実施形態)
次に、図6、図7の斜視図、図8の分解図、図9、図10の側面図および断面図を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態では、不織布等の材質により製造された靴底(10)に、所定の形態の規則的または不規則のくり抜き溝(11)が設置される。同時に、靴底(10)上面に所定の数の釘体(12)が設置されて、その釘体(12)の先端部が靴底(10)からやや突出する。靴本体(20)底部には、くり抜き溝に対応する形態の突起部分(21)が設置される。粘着させる方式で靴底(10)と靴本体(20)とを接着するか、靴底(10)を型に入れて靴本体(20)の射出成形を行い、靴本体(20)と靴底(10)を一体化して結合させることで、本発明の第2実施形態の靴を構成する。靴底(10)のくり抜き溝(11)に靴本体(20)の突起部分(21)を組み合わせることで、さらに堅固なはめ込み固定効果を達成すると同時に、靴底(10)が適度な曲がりによる変形を有することにより、従来の技術に存在した接着剤の剥落が改善される。同時に、靴本体(20)底部の突起部分(21)が靴底(10)表面からやや突出すること、靴底(10)に釘体(12)が設置されることで、全体的にグリップ力が増加し、靴底(10)が過度に摩耗するのを回避する。したがって、使用の際の実用価値が高まり、使用寿命も大幅に延長して、産業上の利用価値が高まる。
【0014】
(第3、第4実施形態)
本発明の第3実施形態を図11の斜視図を参照し、第4実施形態を図12の斜視図を参照して説明する。本実施形態の防滑機能を有する靴は、前述の雨靴型の防滑機能を有する靴以外に、一般のウェットスーツの材質で製造された沢登り用靴またはゴム長靴、アウトドア用靴、さらには、一般漁労作業用のつなぎ作業服の靴体の防滑機能にも適用が可能である。その靴底(10)のくり抜き溝と靴本体(20)底部の突起部分を組み合わせた設計により、効果的に結合の安定性を高めて、より優れた防滑効果を有するグリップ力を付与して、従来の同様の製品に存在する問題や欠点を改善する。
【0015】
したがって、本発明の複数の実施形態による防滑機能を有する靴底構造は、以下の長所を有する。
(1)靴底と靴本体の接着剤による接着において、靴底にあらかじめ設置されたくり抜き溝と、このくり抜き溝に対応して靴本体底部に設置された突起部分がはまり込んで固定する効果を有することで、より安定した結合効果が得られることで、効果的に接着剤の剥落を回避する。
【0016】
(2)靴底に規則的または不規則にくり抜き溝が設置されることで、靴本体との結合関係が堅固になると同時に、その靴底が好適な曲がりによる弾性力を有することで、湾曲に耐えて、優れた歩き心地、はき心地を提供する。
【0017】
(3)靴本体底部の突起部分の高さが、靴底の厚みよりやや大きいため、組合せて結合させた際、突起部分の先端が靴底表面からやや突出することで、足を下ろした時や歩行時において、靴底と地面の全面的な接触がなく、したがって、靴底が過度に摩耗するのを回避し、大幅にその耐摩耗性を高め、使用寿命を延長する。
【0018】
(4)靴本体底部に設置された突起部分が、靴底からやや突出し、靴本体底面に分離して分布することで、足を下ろした時や歩行時に、地面と全面的に接触することがなく、その上、その材質が耐摩耗性及びグリップ力を有することで、大幅にそのグリップ力及び防滑効果が高まり、滑倒の危険性を回避することにより、優れた使用時の安全性及び実用性を提供する。
【0019】
このように、本発明の防滑機能を有する靴底構造は、沢登り、磯釣り、漁労作業等の用途に使用される各種専用靴の靴底構造の設計に適用され、不織布等の材質により製造された靴底によって所定の防滑機能を達成する外、さらに、その靴底のくり抜き溝と靴本体の突起部分を組み合わせることで、より安定した結合関係を提供する。また、その靴底が好適な曲がりによる弾性力を有することで、従来の同種の製品において、一定期間使用すると容易に接着剤が剥落するといった問題を効果的に改善する。同時に、そのグリップ力及び耐摩耗性を高めて、大幅に延長使用寿命を延長し、安全性を高める。したがって、優れた産業上の利用価値及び実用価値を有する。
【符号の説明】
【0020】
10・・・靴底
11・・・くり抜き溝
12・・・釘体
20・・・靴本体
21・・・突起部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦力が大きい材質により製造された靴底と、靴本体とを備え、前記靴底と前記靴本体の底部とが安定して結合され、前記靴底と地面の間に好適な摩擦力を生じることで、防滑機能を有する靴であって、
前記靴底は、所定部位に複数のくり抜き溝を有し、
前記靴本体の底部は、複数の前記くり抜き溝に対応する位置に突起部分を有し、
前記靴底と前記靴本体とが結合することで、前記靴本体の底部の前記突起部分が前記靴底の前記くり抜き溝を貫通して前記靴底の外側に露出するとともに、前記靴底と前記靴本体とが堅固に固定されることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記靴本体の底部の前記突起部分の高さは、前記靴底の厚みよりも大きく形成され、
前記靴底と前記靴本体の底部とが結合されることで、前記突起部分は前記靴底の前記くり抜き溝を貫通し、前記靴底の下面から外側へ突出することを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記靴本体の底部に接合する前記靴底の上面から、前記靴底の下面の外側へ突出する所定の数の釘体を備えることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記靴底と前記靴本体とは、接着剤によって接合され、
前記接着剤は、前記靴底と前記靴本体底面との接触面、および、前記突起部分と前記くり抜き溝との接触面に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項5】
前記靴本体の射出成形時に、前記靴本体の底部と前記靴底とが結合され、
前記靴本体の成形材料が前記靴底の前記くり抜き溝に流れ込むことで前記突起部分が成形されることを特徴とする請求項1に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−43006(P2013−43006A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183745(P2011−183745)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(511207833)
【Fターム(参考)】