説明

鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置

【課題】バーハンドルに固定されるスロットルパイプがバーハンドルの端部に回動可能に支承され、スロットルパイプと相対回動不能であるスロットルグリップの回動操作に、抵抗力付加手段によって抵抗力が付加される鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置において、抵抗力付加手段を少ない部品点数で簡単に構成する。
【解決手段】抵抗力付加手段32が、バーハンドル11に軸方向の移動を可能として支承されたスロットルパイプ13に設けられて半径方向外方に張り出すとともにケース12内に配置される鍔部13bと、鍔部13bおよびケース12間に挟まれる摺動部材33と、該ワッシャ33をケース12に押しつけるように鍔部13bを付勢する弾発力を発揮する弾発部材34とで構成され、弾発部材34が、バーハンドル11もしくはケース12と、スロットルパイプ13との間に介装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドルに固定されるケース内に一部を突入させて前記バーハンドルの端部に回動可能に支承されるスロットルパイプと、該スロットルパイプを覆うようにしてスロットルパイプに相対回動不能に装着されるスロットルグリップと、スロットルグリップの回動操作量を前記スロットルパイプの回動に応じて検出するようにして前記ケース内の固定位置に配設されるスロットルセンサと、前記スロットルグリップの回動操作に抵抗力を付加する抵抗力付加手段とを備える鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の乗員がスロットルグリップを回動操作したときに、スロットルグリップに連なるケーブルの機械的な動きではなく、スロットルグリップの回動量を電気的に検出するセンサからの電気信号に基づいて電動式のスロットルバルブをダイレクトに作動せしめるようにしたものが、特許文献1で知られている。この場合、ケーブルの撓み、伸びおよびフリクションがないので、乗員によるスロットルグリップの回動負荷が減少し、極めて軽い操作力でスロットルグリップを回動操作することができるが、スロットルグリップの回動量を調整するための適度な負荷が好ましいことがある。
【0003】
そこで、スロットルグリップおよびスロットルセンサ間に設けられている歯車機構の一部を構成する歯車に、複数の弾発部材で摩擦板を押しつけることによって発生する摩擦力でスロットルグリップの回動負荷を生じさせるようにした抵抗力付加手段が、スロットルセンサとともにケースに収納されたものが、特許文献2によって知られている。
【特許文献1】特許第2902490号公報
【特許文献2】特許第4112876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献2で開示されたものによれば、スロットルグリップの回動量を調整するのが容易であるが、抵抗力付加手段が複数の弾発部材を有して複雑に構成されている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、抵抗力付加手段を少ない部品点数で容易に構成し得るようにした鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、バーハンドルに固定されるケース内に一部を突入させて前記バーハンドルの端部に回動可能に支承されるスロットルパイプと、該スロットルパイプを覆うようにしてスロットルパイプに相対回動不能に装着されるスロットルグリップと、スロットルグリップの回動操作量を前記スロットルパイプの回動に応じて検出するようにして前記ケース内の固定位置に配設されるスロットルセンサと、前記スロットルグリップの回動操作に抵抗力を付加する抵抗力付加手段とを備える鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置において、前記抵抗力付加手段が、前記バーハンドルに軸方向の移動を可能として支承された前記スロットルパイプに設けられて半径方向外方に張り出すとともに前記ケース内に配置される鍔部と、該鍔部および前記ケース間に挟まれる摺動部材と、該摺動部材を前記ケースに押しつけるように前記鍔部を付勢する弾発力を発揮する弾発部材とで構成され、前記弾発部材が、前記バーハンドルもしくは前記ケースと、前記スロットルパイプとの間に介装されることを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記スロットルセンサが、前記スロットルパイプとともに回動するようにして前記ケース内に配置されるロータの回動位置を該ロータとの非接触状態で検出するようにした非接触型の磁気センサーであることを特徴とする。
【0008】
さらに請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記弾発部材が、前記ケースの外方で前記スロットルパイプ内に配置されて前記バーハンドルの端部および前記スロットルパイプ間に設けられることを特徴とする。
【0009】
なお実施の形態のワッシャ33が本発明の摺動部材に対応し、コイルばね34が本発明の弾発部材に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、抵抗力付加手段が、バーハンドルに固定されるケース内に配置されてスロットルパイプに設けられる鍔部およびケース間に挟まれる摺動部材を、バーハンドルもしくはケースと、スロットルパイプとの間に介装される弾発部材によってケースに押しつけるように鍔部が付勢されて成るので、抵抗力付加手段を、部品点数を少なくした簡単な構造で構成することができる。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、スロットルセンサが非接触型の磁気センサーであるので、スロットルセンサによる検出に伴う摩耗が生じることを防止し、耐久性の向上に寄与することができる。
【0012】
さらに請求項3記載の発明によれば、弾発部材がケースの外方でスロットルパイプ内に配置されてバーハンドルの端部およびスロットルパイプ間に設けられるので、ケース内に弾発部材が配置されることがなく、ケースを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図5は本発明の実施の形態を示すものであり、図1はバーハンドルの右端部を後方側から見た図、図2は図1と同一方向から見たバーハンドルの右端部の縦断面図、図3は図2の3矢示部拡大図、図4はスロットルパイプのロータへの係合部付近を示す斜視図、図5は図2の5矢示部拡大図である。
【0015】
先ず図1および図2において、鞍乗り型車両である自動二輪車が備えるパイプ状のバーハンドル11の外端(右端)寄りの部分にはケース12が固定され、該ケース12内に内端側の一部を突入させてバーハンドル11を囲繞するスロットルパイプ13がバーハンドル11の外端部(右端部)に回動可能かつ軸方向の移動を可能として支承され、該スロットルパイプ13を覆うスロットルグリップ14がスロットルパイプ13に相対回動不能に装着される。また前記バーハンドル11には、前記スロットルグリップ14を握った右手で回動操作することを可能としてブレーキレバー15が回動可能に取付けられる。前記スロットルパイプ13の外端部には、前記バーハンドル11の外端よりも外方に同軸に位置する小径の支持筒部13aが同軸にかつ一体に設けられており、支持筒部13aおよびスロットルグリップ14の右端部に、キャップ16が装着される。
【0016】
またスロットルグリップ14に対応する部分でバーハンドル11内には、ダイナミックダンパ17が内蔵されるものであり、このダイナミックダンパ17は、バーハンドル11内に挿入される円柱状の重錘18の両端部外周に、バーハンドル11の内周に弾発的に接触するラバーリング19,19がそれぞれ装着されて成る。
【0017】
図3を併せて参照して、前記ケース12は、合成樹脂から成る上部ケース半体21および下部ケース半体22が、バーハンドル11を上下から挟むようにして相互に結合されて成り、バーハンドル11に固定的に取付けられる。
【0018】
このケース12の前記スロットルグリップ14に臨む壁部12aには、バーハンドル11およびスロットルパイプ13と同軸の第1挿通孔23が設けられており、スロットルパイプ13の内端側の部分が第1挿通孔23からケース12内に突入される。
【0019】
前記ケース12内の固定位置には、スロットルグリップ14の回動操作量を前記スロットルパイプ14の回動に応じて検出するスロットルセンサ25が配設されており、このスロットルセンサ25は、前記ケース12内に固定配置されるセンサハウジング26内に収容、固定される。このセンサハウジング26は、前記ケース12内で前記バーハンドル11同軸に囲繞するリング部26aと、前記バーハンドル11の下方で前記リング部26aに連なって前記ケース12の前記端壁12aと反対側に延びる筒部26bとを有し、スロットルセンサ25は前記筒部26b内に収容される。
【0020】
前記ケース12内で、前記スロットルパイプ13には、前記ケース12の端壁12aに近接した位置で半径方向外方に張り出す鍔部13bと、該鍔部13bの半径方向中間部に連なて前記端壁12aと反対側に延びるとともに前記鍔部13bの周方向に間隔をあけて配置される一対の突部13c,13dとが一体に設けられる。
【0021】
一方、前記スロットルパイプ13の回動に連動して回動するようにして前記バーハンドル11を同軸に囲繞するロータ27が前記ケース12内に収容されており、このロータ27と、前記バーハンドル11の軸方向で前記センサハウジング26におけるリング部26aの両端部との間には、一対の環状のシール部材28,29が介装される。
【0022】
前記ロータ27の外周の1個所には、その軸方向に間隔をあけて相互に対向する一対の被検出用突部27a,27aが周方向に延びるようにして突設される。一方、前記スロットルセンサ25は非接触型の磁気センサーであり、該スロットルセンサ25が有する検出部25aは、前記ロータ27の回動位置を該ロータ27との非接触状態で検出すべく、前記両被検出用突部27a,27a間に挿入される。
【0023】
図4において、前記ロータ27の前記鍔部13b側端部には半径方向内方に向けて突出する係止突部27bが一体に設けられ、該係止突部27bは、前記スロットルパイプ13の前記突部13cに、前記スロットルグリップ14およびスロットルパイプ13による閉じ側への回動方向30に沿ってその上手側から当接するようにして、前記スロットルパイプ13の前記両突部13c,13d間に配置される。
【0024】
またロータ27およびバーハンドル11間には、図2および図3で示すように、前記スロットルグリップ14および前記スロットルパイプ13による閉じ側への回動方向30に前記ロータ27を付勢するコイル状のねじりばね31が設けられる。したがってロータ27は、前記ねじりばね31によるばね力で、前記スロットルグリップ14および前記スロットルパイプ13の回動に追従して回動することになり、前記ねじりばね31のばね力は、前記スロットルグリップ14および前記スロットルパイプ13の回動に前記ロータ27を追従して回動するだけの弱いばね力を発揮するものであればよい。
【0025】
ここで何らかの原因によって前記ねじりばね31によるばね力が得られなくなった場合を想定すると、前記ロータ27は、その係止突部27bを前記スロットルパイプ13の突部13cに当接させる側に付勢されなくなるが、前記係止突部27bが前記スロットルパイプ13の両突部13c,13d間に配置されているので、スロットルグリップ14およびスロットルパイプ13の回動に応じた前記ロータ27の回動を確実に得ることができる。
【0026】
前記スロットルグリップ14の回動操作には抵抗力付加手段32によって抵抗力が付加されるものであり、この抵抗力付加手段32は、バーハンドル11に軸方向の移動を可能として支承された前記スロットルパイプ13に設けられて半径方向外方に張り出すとともにケース12内に配置される鍔部13bと、該鍔部13cおよび前記ケース12の端壁12a間に挟まれる摺動部材としてのワッシャ33と、該ワッシャ33を前記ケース12の端壁12aに押しつけるように前記鍔部13bを付勢する弾発力を発揮する弾発部材であるコイルばね34とで構成され、コイルばね34が、前記バーハンドル11と、前記スロットルパイプ13との間に介装される。
【0027】
図4を併せて参照して、前記コイルばね34は、前記ケース12の外方で前記スロットルパイプ13内に配置されて前記バーハンドル11の端部および前記スロットルパイプ13間に設けられるものであり、前記バーハンドル11の外端にワッシャ35を介して当接される第1ばね受け部材36と、前記バーハンドル11の外端よりも外方に配置される支持筒部13aの内端に連なって軸方向内方に臨むようにしてスロットルパイプ13の外端部に形成される環状段部13dに当接する第2ばね受け部材37との間に縮設される。而してスロットルパイプ13は、前記コイルばね34が発揮するばね力によって、軸方向外方側すなわち前記ワッシャ33をケース12の端壁12aおよび前記鍔部13b間に挟む側に付勢されることになる。
【0028】
しかも第1および第2ばね受け部材36,37には、前記コイルばね34の両端部をガイドすべくコイルばね34の両端部内に挿入される円筒状のガイド筒部36a,37aが一体に設けられる。
【0029】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、スロットルグリップ14の回動操作に抵抗力を付加する抵抗力付加手段32が、バーハンドル11に軸方向の移動を可能として支承されたスロットルパイプ13に設けられて半径方向外方に張り出すとともにケース12内に配置される鍔部13bと、該鍔部13bおよびケース12間に挟まれるワッシャ33と、該ワッシャ33をケース12に押しつけるように鍔部13bを付勢する弾発力を発揮するコイルばね34とで構成され、コイルばね34が、バーハンドル11およびスロットルパイプ13間に介装されるので、抵抗力付加手段32を、部品点数を少なくした簡単な構造で構成することができる。
【0030】
しかもコイルばね34がケース12の外方でスロットルパイプ13内に配置されてバーハンドル11の端部およびスロットルパイプ13間に設けられるので、ケース12内にコイルばね34が配置されることがなく、ケース12を小型化することができる。
【0031】
またケース12内に配置されるスロットルセンサ25が非接触型の磁気センサーであるので、スロットルセンサ25による検出に伴う摩耗が生じることを防止し、耐久性の向上に寄与することができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】バーハンドルの右端部を後方側から見た図である。
【図2】図1と同一方向から見たバーハンドルの右端部の縦断面図である。
【図3】図2の3矢示部拡大図である。
【図4】スロットルパイプのロータへの係合部付近を示す斜視図である。
【図5】図2の5矢示部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
11・・・バーハンドル
12・・・ケース
13・・・スロットルパイプ
13b・・・鍔部
14・・・スロットルグリップ
25・・・スロットルセンサ
27・・・ロータ
32・・・抵抗力付加手段
33・・・摺動部材であるワッシャ
34・・・弾発部材であるコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーハンドル(11)に固定されるケース(12)内に一部を突入させて前記バーハンドル(11)の端部に回動可能に支承されるスロットルパイプ(13)と、該スロットルパイプ(13)を覆うようにしてスロットルパイプ(13)に相対回動不能に装着されるスロットルグリップ(14)と、スロットルグリップ(14)の回動操作量を前記スロットルパイプ(13)の回動に応じて検出するようにして前記ケース(12)内の固定位置に配設されるスロットルセンサ(25)と、前記スロットルグリップ(14)の回動操作に抵抗力を付加する抵抗力付加手段(32)とを備える鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置において、前記抵抗力付加手段(32)が、前記バーハンドル(11)に軸方向の移動を可能として支承された前記スロットルパイプ(13)に設けられて半径方向外方に張り出すとともに前記ケース(12)内に配置される鍔部(13b)と、該鍔部(13b)および前記ケース(12)間に挟まれる摺動部材(33)と、該摺動部材(33)を前記ケース(12)に押しつけるように前記鍔部(13b)を付勢する弾発力を発揮する弾発部材(34)とで構成され、前記弾発部材(34)が、前記バーハンドル(11)もしくは前記ケース(12)と、前記スロットルパイプ(13)との間に介装されることを特徴とする鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置。
【請求項2】
前記スロットルセンサ(25)が、前記スロットルパイプ(13)とともに回動するようにして前記ケース(12)内に配置されるロータ(27)の回動位置を該ロータ(27)との非接触状態で検出するようにした非接触型の磁気センサーであることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置。
【請求項3】
前記弾発部材(34)が、前記ケース(12)の外方で前記スロットルパイプ(13)内に配置されて前記バーハンドル(11)の端部および前記スロットルパイプ(13)間に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両のスロットル開度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71234(P2010−71234A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241105(P2008−241105)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】