説明

鞍乗り型車両の変速制御装置

【課題】変速のために乗員の足によって回動操作される操作ペダルと、操作ペダルによる変速操作を検出する検出器とを備え、該検出器の検出結果に基づいて変速機を変速作動せしめるようにした鞍乗り型車両の変速制御装置において、配置レイアウトを容易とする。
【解決手段】車幅方向に延びる操作ペダル112の車幅方向内方に、操作ペダル112を上下移動可能に支持するペダル支持部113が固定配置され、検出器114がペダル支持部113に取付けられ、操作ペダル112の操作にクリック感を付与するクリック機構115と、操作ペダル112に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構116とが、記ペダル支持部113および操作ペダル112間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速のために乗員の足によって回動操作される操作ペダルと、該操作ペダルによる変速操作を検出する検出器とを備え、該検出器の検出結果に基づいて変速機を変速作動せしめるようにした鞍乗り型車両の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車を模したシミュレータ装置において、シフトアップ操作およびシフトダウン操作を足で行う変速制御装置が特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−88605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されたものでは、ペダル部が先端に設けられるアーム部の基端部がピボットを中心に回動するように操作ペダルが構成されており、この操作ペダルの動作がリンクを介して可動部に伝達され、その可動部を検出器で検出するようにしており、操作ペダル、リンクおよび可動部を相互干渉を回避するようにして配置しなければならず、変速制御装置の配置レイアウトが難しかった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、配置レイアウトを容易とした鞍乗り型車両の変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、変速のために乗員の足によって回動操作される操作ペダルと、該操作ペダルによる変速操作を検出する検出器とを備え、該検出器の検出結果に基づいて変速機を変速作動せしめるようにした鞍乗り型車両の変速制御装置において、車幅方向に延びる前記操作ペダルの車幅方向内方に、前記操作ペダルを上下移動可能に支持するペダル支持部が固定配置され、前記検出器が前記ペダル支持部に取付けられ、前記操作ペダルの操作にクリック感を付与するクリック機構と、前記操作ペダルに戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構とが、前記ペダル支持部および前記操作ペダル間に設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記検出器が、前記操作ペダルの上方への移動をシフトアップ操作として検出し、前記操作ペダルの下方への移動をシフトダウン操作として検出することを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記操作ペダルを、非操作位置と、その非操作位置の上下両側に配置されるシフトアップ位置およびシフトダウン位置との間でガイドするガイド部が前記ペダル支持部に設けられ、前記操作ペダルに一端部が固定される作動部材の他端部と、前記ペダル支持部との間に、前記ガイド部のガイドによる前記操作ペダルの移動に応じて前記作動部材が作動するのに基づいてクリック感が生じるようにして前記クリック機構が設けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記作動部材が棒状に形成され、前記非操作位置に在る前記操作ペダルまでの距離と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置に在る前記操作ペダルまでの距離とを異ならせた位置に回動軸線を有して前記ペダル支持部に回動可能に支承される回動部材に前記作動部材の他端部が摺動可能に嵌合され、前記クリック機構が前記回動部材および前記作動部材間に設けられ、前記検出器が前記回動部材の回動に基づいて前記操作ペダルの変速操作を検出するようにして前記回動部材に連結されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第4の特徴の構成に加えて、前記クリック機構が、前記回動部材の回動中心上に配置されて前記作動部材側に付勢されるボールと、前記操作ペダルが前記非操作位置にあるときに前記ボールを嵌合せしめるようにして前記作動部材に設けられる嵌合凹部とを備えることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第1〜第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ペダル支持部が平板状のガイド板を備え、該ガイド板に長孔である前記ガイド部が設けられ、前記操作ペダルのシフトアップ位置およびシフトダウン位置を定めるストッパとして機能する一対のボルトが、前記ガイド部の両端に一端を臨ませるとともに進退位置を調整可能として前記ガイド板に螺合されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記操作ペダルに設けられて車幅方向に延びる軸部を、非操作位置と、その非操作位置の上下両側に配置されるシフトアップ位置およびシフトダウン位置との間でガイドするガイド部が、前記操作ペダルの移動方向に沿って延びて前記軸部に一側方から対向する固定ガイド壁と、前記操作ペダルの移動方向に沿って延びて前記軸部に他側方から対向する可動ガイド壁とを備え、前記クリック機構が、前記非操作位置と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置との間で前記固定ガイド壁および前記可動ガイド壁のいずれかに設けられる隆起部と、前記可動ガイド壁を前記固定ガイド壁側に向けて付勢するばねとで構成されることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記ペダル支持部に、車体前後方向に指向する中心軸線を有するスライド部材が、その中心軸線に沿う方向での制限された範囲での往復スライド移動を可能とするととも前記中心軸線まわりの回動を不能として支持され、前記車体前後方向での移動を不能とした前記操作ペダルが前記スライド部材の中心軸線まわりに上下に回動することを可能として前記スライド部材に支承され、前記スライド部材の外周に設けられる螺旋溝に嵌合する突部が前記操作ペダルに突設され、前記スライド部材のスライド作動に応じて前記操作ペダルの変速操作を検出する検出器が前記ペダル支持部に取付けられることを第8の特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記ペダル支持部から車幅方向に延出されるリンク機構を介して前記操作ペダルが前記ペダル支持部に上下移動可能に支承され、前記リターン機構は、車両前後方向で前記リンク機構に重なる位置に配置されて前記ペダル支持部に固定される板ばねが、前記操作ペダルに係合されて成り、前記クリック機構は、前記板ばねに設けられた突部と、前記操作ペダルのシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じて前記突部を嵌合させるようにして前記操作ペダルに設けられる嵌合凹部とで構成されることを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、車幅方向に延びる操作ペダルを、その操作ペダルの車幅方向内方に固定配置されるペダル支持部で上下移動可能に支持し、検出器がペダル支持部に取付けられ、クリック機構およびリターン機構とがペダル支持部および操作ペダル間に設けられるので、操作ペダルおよび前記検出器間に設けられる部材を少なくして、操作ペダルのアーム部の揺動に要するスペースを確保することを不要とし、操作ペダルの遊びを減らしつつ変速制御装置の配置レイアウトを容易とすることができる。
【0016】
また本発明の第2の特徴によれば、検出器が、操作ペダルの上方への移動をシフトアップ操作として検出し、操作ペダルの下方への移動をシフトダウン操作として検出するので、従来の変速操作と同様とすることができる。
【0017】
本発明の第3の特徴によれば、非操作位置と、その非操作位置の両側に配置されるシフトアップ位置およびシフトダウン位置との間で操作ペダルをガイドするガイド部がペダル支持部に設けられ、操作ペダルに一端部が固定される作動部材の他端部およびペダル支持部間にクリック機構が設けられ、このクリック機構は、ガイド部に沿う操作ペダルの移動に応じて作動部材が作動するのに基づいてクリック感を発生するものであるので、操作ペダルの移動によってクリック感を生じさせるクリック機構をコンパクトに構成し、変速制御装置のコンパクト化に寄与することができる。
【0018】
本発明の第4の特徴によれば、非操作位置に在る前記操作ペダルまでの距離と、シフトアップ位置およびシフトダウン位置に在る操作ペダルまでの距離とを異ならせた位置で回動するする回動部材がペダル支持部に支承され、棒状である作動部材の他端部が回動回動部材に摺動可能に嵌合され、クリック機構が回動部材および作動部材間に設けられるので、操作ペダルの移動を回動部材で支承しつつクリック機構をコンパクトに構成することができる。
【0019】
本発明の第5の特徴によれば、クリック機構を、支持筒の回動中心上に配置されて作動部材側に付勢されるボールと、作動部材に設けられる嵌合凹部とで構成するようにして、操作ペダルの移動に伴う回動部材の回動によってクリック感が変化することを回避することができる。
【0020】
本発明の第6の特徴によれば、ペダル支持部が備える平板状のガイド板に長孔であるガイド部が設けられ、操作ペダルのシフトアップ位置およびシフトダウン位置を定めるストッパを、ガイド部の両端に一端を臨ませるとともに進退位置を調整可能としたボルトで構成するので、簡単な構成でストッパをペダル支持部に設けることができ、しかも操作ペダルのシフトアップ位置およびシフトダウン位置を容易に調整することができる。
【0021】
本発明の第7の特徴によれば、ガイド部が、操作ペダルの軸部に一側方から対向する固定ガイド壁と、その軸部に他側方から対向する可動ガイド壁とを備え、クリック機構が、固定ガイド壁および可動ガイド壁のいずれかに設けられる隆起部と、可動ガイド壁を固定ガイド壁側に向けて付勢するばねとで構成されるようにして、ガイド部およびクリック機構の一部を共用化することで、変速制御装置のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
本発明の第8の特徴によれば、車体前後方向に指向する中心軸線を有するスライド部材が制限された範囲での往復スライド移動を可能とするととも回動を不能としてペダル支持部に支持され、車体前後方向での移動を不能とした操作ペダルが上下に回動することを可能としてスライド部材に支承され、スライド部材の外周に設けられる螺旋溝に操作ペダルに突設された突部が嵌合するので、操作ペダルの上下方向移動に応じて前記スライド部材をスライドさせることができ、そのスライド部材のスライド作動を検出器で検出するので、乗員の足位置の前後への移動をなくし、操作性を良好とすることができる。
【0023】
さらに本発明の第9の特徴によれば、ペダル支持部から車幅方向にリンク機構が延出され、操作ペダルがリンク機構を介してペダル支持部に上下移動可能に支承され、リターン機構を構成する板ばねが、車両前後方向でリンク機構に重なる位置に配置されるのでリターン機構をリンク機構で保護することができ、しかも板ばねに設けられた突部と、操作ペダルのシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じて突部を嵌合させるようにして操作ペダルに設けられる嵌合凹部とでクリック機構を構成するようにして、クリック機構を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態の自動二輪車の側面図である。
【図2】エンジン付近の拡大側面図である。
【図3】歯車変速機構およびクラッチ装置の縦断面図である。
【図4】シフトドラムおよびシフトアクチュエータの縦断面図である。
【図5】図2の5矢示部拡大図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】第2の実施の形態の図5に対応した側面図である。
【図8】第3の実施の形態の変速制御装置の側面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】第4の実施の形態の変速制御装置の平面図である。
【図11】図10の11矢視図である。
【図12】図10の12−12線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。なお以下の説明で前後、左右および上下は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向を言うものとする。
【0026】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明すると、先ず図1において、自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク21を操向可能に支承するヘッドパイプ22と、該ヘッドパイプ22から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム23…と、両メインフレーム23…の後部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットフレーム24…と、該ピボットフレーム24…から後上がりに延びる左右一対のリヤフレーム25…とを有し、前記メインフレーム23…には、その中間部から下方に延びるエンジンハンガ26…が一体に連設される。またピボットフレーム24…に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム27の後部に後輪WRが軸支される。
【0027】
前記メインフレーム23…の下方には、水冷式のエンジンEのエンジン本体28が配置されており、該エンジン本体28は、前記エンジンハンガ26…、前記メインフレーム23…および前記ピボットフレーム24…の下部に懸架、搭載され、エンジンEから出力される回転動力は、前後に延びて前記スイングアーム27内を通るドライブシャフト29を介して前記後輪WRに伝達される。
【0028】
前記メインフレーム23…上には燃料タンク30が搭載されており、該燃料タンク30の後方で前記リヤフレーム25…上には、乗車用シート31が設けられる。
【0029】
而して前記車体フレームFの一部および前記エンジンEの一部は、車体カバー32で覆われており、この車体カバー32は、前記燃料タンク30の大部分を側方から覆うタンクカバー33を有する。
【0030】
図2を併せて参照して、前記エンジン本体28は、自動二輪車への搭載状態で前方に位置する前部バンクBFと、該前部バンクBFよりも後方に位置する後部バンクBRとを有してV型に構成されるものであり、両バンクBF,BRに共通なクランクケース35に、自動二輪車の左右方向に沿うクランクシャフト36が回転自在に支承される。
【0031】
前記エンジン本体28の前方にはラジエータ37が配置される。また前記クランクケース36の下部左側面には、前記クランクシャフト36で回転駆動されるウォータポンプ38が取付けられており、このウォータポンプ38の吐出口に連なる給水ホース39が前部および後部バンクBF,BR間の谷間に設けられたウォータジャケット給水部に接続され、このウォータジャケット給水部から両バンクBF、BRのウォータジャケットに冷却水が供給される。また前部および後部バンクBF,BR間の谷間にはサーモスタット40が配設されており、前記ウォータジャケットを通過した冷却水は、エンジンEの暖機状態ではサーモスタット40から戻しホース41を介して前記ラジエータ37に送られ、該ラジエータ37で冷却された冷却水はホース42を介してウォータポンプ38に戻される。またエンジンEが暖機されていない状態では、前記サーモスタット40からの冷却水の一部がバイパスホース43を介してウォータポンプ38に戻される。
【0032】
前記ラジエータ37の上部には給水管44が設けられており、その給水管44に連なって上方に延びる給水ホース45の上端にフィラーパイプ46が接続される。
【0033】
図3において、エンジン本体28の車体フレームFへの搭載状態でのクランクケース35の右側側面には、クランクケース35との間にクラッチ室47を形成するクラッチカバー48が結合される。前記クランクシャフト36および後輪WR間の動力伝達経路は、クランクシャフト36側から順に一次減速装置51、クラッチ装置52、歯車変速機構53およびドライブシャフト29(図1および図2参照)を備えており、前記クラッチ装置52および前記歯車変速機構53で変速機50が構成される。而して一次減速装置51およびクラッチ装置52は前記クラッチ室47に収容され、歯車変速機構53はクランクケース35内に収容される。
【0034】
前記歯車変速機構53は、選択的に確立可能な複数変速段の歯車列たとえば第1〜第6速用歯車列G1,G2,G3,G4,G5,G6を備えてクランクケース35内に収納されており、第1メインシャフト54およびカウンタシャフト56間に第2、第4および第6速用歯車列G2,G4,G6が設けられるとともに、第1メインシャフト54を同軸にかつ相対回転自在に貫通する第2メインシャフト55および前記カウンタシャフト56間に第1、第3および第5速用歯車列G1,G3,G5が設けられて成る。
【0035】
前記クランクケース35は、クランクシャフト36の軸線方向に間隔をあけて相互に対向する右側壁35aおよび左側壁35bを備えており、クランクシャフト36と平行な軸線を有して円筒状に形成される第1メインシャフト54の中間部は、前記右側壁35aを回転自在に貫通し、右側壁35aおよび第1メインシャフト54間にはボールベアリング57が介装される。またクランクシャフト36と平行な軸線を有する第2メインシャフト55は、第1メインシャフト54との軸方向相対位置を一定としつつ第1メインシャフト54を相対回転可能に貫通するものであり、第1メインシャフト54および第2メインシャフト55間には複数のニードルベアリング58…が介装される。また第2メインシャフト55の他端部はクランクケース35の左側壁35bにボールベアリング59を介して回転自在に支承される。
【0036】
クランクシャフト36と平行な軸線を有するカウンタシャフト56の一端部はボールベアリング60を介して前記右側壁35aに回転自在に支承され、カウンタシャフト56の他端部は、ボールベアリング61および環状のシール部材62を前記左側壁35bとの間に介在させて左側壁35bを回転自在に貫通し、左側壁35bからのカウンタシャフト56の突出端部には駆動傘歯車63が固定される。この駆動傘歯車63には自動二輪車の前後方向に延びる回転軸線を有する被動傘歯車64が噛合される。
【0037】
ところで駆動傘歯車63および被動傘歯車64は、前記クランクケース35の前記左側壁35bの一部を覆って前記側壁35bに着脱可能に結合される歯車カバー65と、前記左側壁35bとで形成される歯車室66内で相互に噛合するものであり、被動傘歯車64が同軸に備える軸部64aは歯車カバー65を回転自在に貫通し、前記軸部64aおよび歯車カバー65間には、ボールベアリング67と、該ボールベアリング67の外方に位置する環状のシール部材68とが介装される。また被動傘歯車64には支持軸69の一端部が嵌合されており、該支持軸69の他端部は、ローラベアリング70を介して歯車カバー65に回転自在に支承される。而して前記軸部64aは前記ドライブシャフト29に連結される。
【0038】
前記歯車変速機構53とともに変速機50を構成する前記クラッチ装置52は、前記歯車変速機構53およびクランクシャフト36間に設けられる第1および第2クラッチ71,72を有してツイン式に構成され、前記クラッチ室47に収容される。第1クラッチ71は、前記クランクシャフト36および第1メインシャフト54の一端部間に設けられ、第2クラッチ72は、前記クランクシャフト36および第2メインシャフト55の一端部間に設けられる。而して前記クランクシャフト36からの動力は、第1および第2クラッチ71,72に共通であるクラッチアウタ73に、一次減速装置51およびダンパスプリング74を介して入力される。
【0039】
一次減速装置51は、前記クランクシャフト36に設けられる駆動歯車75と、第1メインシャフト54に相対回転可能に支承されて駆動歯車75に噛合する被動歯車76とから成り、被動歯車76が、前記クラッチアウタ73にダンパスプリング74を介して連結される。
【0040】
第1クラッチ71は、前記クラッチアウタ73と、該クラッチアウタ73で同軸に囲繞されるとともに第1メインシャフト54に相対回転不能に結合される第1クラッチインナ77との間の動力断・接を第1油圧室78の油圧制御に応じて切換えるように構成され、第2メインシャフト55内には第1油圧室78に通じる第1油路79が形成される。
【0041】
また第2クラッチ72は、前記第1クラッチ71を前記一次減速装置10との間に挟むようにして、第2メインシャフト55の軸線方向で第1クラッチ71と並ぶように配置されるものであり、前記クラッチアウタ73と、該クラッチアウタ73で同軸に囲繞されるとともに第2メインシャフト55に相対回転不能に結合される第2クラッチインナ82との間の動力断・接を第2油圧室83の油圧制御に応じて切換えるように構成され、第2メインシャフト55内には、第2油圧室83に通じる第2油路84が第1油路79とは隔絶して形成される。
【0042】
歯車変速機構53は、第1〜第6速用歯車列G1,G2,G3,G4,G5,G6の確立および非確立を切換えるようにして両メインシャフト54,55およびカウンタシャフト56の軸線方向に作動し得る第1、第2、第3および第4シフタ85,86,87,88を有しており、それらのシフタ85〜88は、第1〜第4シフトフォーク89,90,91,92で抱持される。
【0043】
図4において、クランクケース35の右および左側壁35a,35bには、両メインシャフト54,55およびカウンタシャフト56と平行な軸線を有するシフトドラム93が軸線まわりの回動自在に支承されており、第1〜第4シフトフォーク89〜92は、前記シフトドラム93の外周に係合され、シフトドラム93の回動に応じて第1〜第4シフトフォーク89〜92すなわち第1〜第4シフタ85〜88が両メインシャフト54,55およびカウンタシャフト56の軸線方向に作動することになる。
【0044】
而してシフトドラム93が回動することにより、歯車変速機構53における第1〜第6速用歯車列G1〜G6の確立および非確立が切換えられるものであり、シフトドラム93の回動位置を変化させるシフトアクチュエータ94が、クランクケース35の左側壁35bの外面に取付けられる。
【0045】
前記シフトアクチュエータ94は、回転動力を発揮する電動モータ96と、該電動モータ96の出力回転数を減速するようにして該電動モータ96の回転動力を伝達する歯車減速機構97と、該歯車減速機構97から伝達される動力で回転するとともにその回転運動を前記シフトドラム93の回動運動に変換するようにして歯車減速機構97に連動、連結されるバレルカム98と、バレルカム98の回転に応じて前記シフトドラム93に伝達するようにして前記シフトドラム93に同軸に固着される円板状の伝動回転部材99とを備える。
【0046】
クランクケース35の前記左側壁35bには、前記歯車減速機構97、バレルカム98および伝動回転部材99を収容するケース部材100が締結されており、そのケース部材100の開口端を塞ぐようにして該ケース部材100に蓋部材101が取付けられ、前記電動モータ96は前記蓋部材101と反対側からケース部材188に取付けられる。
【0047】
而して前記クラッチ装置52および前記歯車変速機構53で構成される前記変速機50は、前記シフトアクチュエータ94の作動と、クラッチ装置52における第1および第2油圧室78,83の油圧を制御する油圧制御弁(図示せず)の作動との組合わせで変速作動することになる。
【0048】
図2に注目して、前記車体フレームFの一部を構成する左側のピボットフレーム24の下部には、乗員の左足を載せるステップ105が設けられるステップホルダ104が、たとえば一対のボルト106,106で取付けられる。前記左側の前記ピボットフレーム24の下部には、車体フレームFの一部を構成するサイドスタンドブラケット110が固着されており、このサイドスタンドブラケット110には、自動二輪車を左側に傾斜した状態で駐車させるためのサイドスタンド111が回動可能に取付けられる。
【0049】
前記ステップ105の前方には車幅方向に延びる操作ペダル112が配置されており、この操作ペダル112を上下移動可能に支持するペダル支持部113が、操作ペダル112の車幅方向内方に固定配置される。
【0050】
図5および図6において、前記ペダル支持部113には、前記操作ペダル112による変速操作を検出する検出器114が取付けられ、前記操作ペダル112の操作にクリック感を付与するクリック機構115と、前記操作ペダル112に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構116とが、前記ペダル支持部113および前記操作ペダル112間に設けられる。
【0051】
前記ペダル支持部113は、車幅方向に間隔をあけて平行に配置される一対の支持板117,118と、両支持板117,118のうち外方の支持板118に固着される平板状のガイド板119とを備え、前記両支持板117,118は、それらの支持板117,118間に円筒状のスペーサ120…を介在させた状態でそれらのスペーサ120…に挿通されるボルト121…と、各ボルト121…に螺合されるナット122…とで相互に締結され、車体フレームFもしくはエンジン本体28に固定的に支持される。
【0052】
前記ペダル支持部113の前記ガイド板119には、前記操作ペダル112を非操作位置と、その非操作位置の上側に配置されるシフトアップ位置ならびに前記非操作位置の下側に配置されるシフトダウン位置との間でガイドするガイド部123が設けられており、このガイド部は上下に長い長孔状に形成される。
【0053】
前記操作ペダル112には、前記ガイド部123の幅よりも大径に形成されて前記ガイド板119の外方に配置される鍔部112aと、該鍔部112aから車幅方向内方に延出されて前記ガイド部123に挿通される大径軸部112bと、大径軸部112bよりも小径に形成されて前記大径軸部112bの内端に同軸に連なる小径軸部112cと、小径軸部112cよりも小径に形成されて前記小径軸部112cの内端に同軸に連なるねじ軸部112dとが一体に設けられる。而して前記鍔部112aおよび前記ガイド板119間にワッシャ124を挟むとともに、前記小径軸部112cを囲繞する円筒状の筒部材126および前記ガイド板119間にワッシャ125を挟んだ状態で、前記筒部材126から突出したねじ軸部112dに螺合するナット127が前記筒部材126に当接、係合される。
【0054】
前記操作ペダル112には、棒状に形成される作動部材128の一端部が固定されるものであり、この実施の形態では、前記筒部材126にその半径方向に延びるようにして前記作動部材128の一端部が嵌合され、その作動部材128の一端部外周に食い込むねじ部材129を前記筒部材126に螺合して締めつけることにより、前記操作ペダル112とともに作動する前記筒部材126に前記作動部材128の一端部が固定される。
【0055】
ところで前記ガイド部123は、前記ペダル支持部113から自動二輪車の後方に離れた位置を中心CAとした円弧状に形成されるものであり、その中心CAおよび前記ガイド部123間の中間位置を回動中心CBとした回動部材130が、前記ペダル支持部113の両支持板117,118で回動自在に支承される。
【0056】
前記回動部材130は、前記回動中心CBを中心として前記支持板118に設けられる円形の支持凹部131と、前記支持板117に設けられる支持孔132とで両端部が回動可能に支承される円筒部130aと、その円筒部130aの前記支持板118寄りの部分に一体に設けられる円板部130bとから成るものであり、円板部130bに設けられる摺動孔133に前記作動部材128の他端部が摺動可能に嵌合される。
【0057】
而して前記回動部材130は、前記非操作位置に在る前記操作ペダル112までの距離と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置に在る前記操作ペダル112までの距離とを異ならせた位置に配置される回動中心CBを回動軸線として前記ペダル支持部113に回動可能に支承されることになり、前記操作ペダル112の上下移動に応じた前記回動部材30の回動を検出するようにして、前記検出器114が前記回動部材130の円筒部130aに連結されつつ前記支持板117に取付けられる。しかも前記検出器114は、前記操作ペダル112の上方への移動をシフトアップ操作として検出し、前記操作ペダル112の下方への移動をシフトダウン操作として検出する。
【0058】
前記クリック機構115は、前記ガイド部123のガイドによる前記操作ペダル112の移動に応じて前記作動部材128が作動するのに基づいてクリック感を発生させるようにして、前記作動部材128の他端部および前記ペダル支持部113間に設けられるものであり、この実施の形態で前記クリック機構115は、前記ペダル支持部113で回動可能に支持される前記回動部材130と、前記作動部材128の他端部との間に設けられており、前記回動部材130の回動中心CB上に配置されて前記作動部材128側に付勢されるボール134と、前記操作ペダル112が前記非操作位置にあるときに前記ボール134を嵌合せしめるようにして前記作動部材128に設けられる嵌合凹部135とを備える。
【0059】
前記回動部材130の円筒部130aには、前記摺動孔133に一端を開口する収容孔136が前記検出器114側の端部をプラグ137で閉じるようにして同軸に設けられており、前記ボール134を作動部材128側に付勢するばね力を発揮するばね138が、前記収容孔136内で前記ボール134および前記プラグ137間に縮設される。
【0060】
而して非操作位置に在る操作ペダル112までの距離と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置に在る前記操作ペダル112までの距離とを異ならせた位置に回動軸線を有して前記回動部材130がペダル支持部113に回動可能に支承され、この回動部材130に前記作動部材128の他端部が摺動可能に嵌合されるので、操作ペダル112が非操作位置にあるときに前記嵌合凹部135にボール134が嵌合した状態で、前記操作ペダル112を前記シフトアップ位置もしくは前記シフトダウン位置に操作すると、前記ボール134を前記嵌合凹部135から離脱させる際にばね138のばね力が作動部材128に作用することになり、それがクリック感として操作ペダル112を操作する乗員に伝わることになる。
【0061】
また前記ペダル支持部113のガイド板119には、前記操作ペダル112のシフトアップ位置およびシフトダウン位置を定めるストッパとして機能する一対のボルト140,141が、長孔状である前記ガイド部123の両端に一端を臨ませるとともに進退位置を調整可能として螺合される。
【0062】
前記リターン機構116は、前記回動部材130および前記操作ペダル112間に配置されるようにして支持板117に植設されるピン142および前記作動部材128を両側から挟む挟み片143a,143bを両端部に有するコイル状の戻しばね143を備えるものであり、この戻しばね143は、前記両支持板117,118間に配置されるスペーサ120…のうち前記回動部材130を前記操作ペダル112との間に挟む位置に配置されるスペーサ120を囲繞するようにして前記ペダル支持部113に装着される。
【0063】
而して前記回動部材130が操作ペダル112の上下操作に応じて中立位置からシフトアップ側またはシフトダウン側に回動したときに、前記戻しばね143の両挟み片143a,143bの一方から前記作動部材128に、該回動部材130を中立位置に戻す方向すなわち操作ペダル112を非操作位置に戻す方向のばね力が作用することになる。
【0064】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、車幅方向に延びる操作ペダル112の車幅方向内方に、操作ペダル112を上下移動可能に支持するペダル支持部113が固定配置され、検出器114が前記ペダル支持部113に取付けられ、操作ペダル112の操作にクリック感を付与するクリック機構115と、操作ペダル112に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構116とが、前記ペダル支持部113および前記操作ペダル112間に設けられるので、操作ペダル112および前記検出器114間に設けられる部材を少なくして、操作ペダルのアーム部の揺動に要するスペースを確保することを不要とし、操作ペダル112の遊びを減らしつつ変速制御装置の配置レイアウトを容易とすることができる。
【0065】
また前記検出器114が、前記操作ペダル112の上方への移動をシフトアップ操作として検出し、前記操作ペダル112の下方への移動をシフトダウン操作として検出するので、従来の変速操作と同様とすることができる。
【0066】
また前記操作ペダル112を、非操作位置と、その非操作位置の上下両側に配置されるシフトアップ位置およびシフトダウン位置との間でガイドするガイド部123が前記ペダル支持部113に設けられ、前記操作ペダル112に一端部が固定される作動部材128の他端部と、前記ペダル支持部113との間に、前記ガイド部123のガイドによる前記操作ペダル112の移動に応じて前記作動部材128が作動するのに基づいてクリック感が生じるようにしてクリック機構115が設けられるので、操作ペダル112の移動によってクリック感を生じさせるクリック機構115をコンパクトに構成し、変速制御装置のコンパクト化に寄与することができる。
【0067】
また作動部材128が棒状に形成されており、非操作位置に在る前記操作ペダル112までの距離と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置に在る前記操作ペダル112までの距離とを異ならせた位置に回動軸線を有して前記ペダル支持部113に回動可能に支承される回動部材130に前記作動部材128の他端部が摺動可能に嵌合され、前記クリック機構115が前記回動部材130および前記作動部材128間に設けられ、前記検出器114が前記回動部材130の回動に基づいて前記操作ペダル112の変速操作を検出するようにして前記回動部材130に連結されるので、この操作ペダル112の移動を回動部材130で支承しつつクリック機構115をコンパクトに構成することができる。
【0068】
またクリック機構115が、前記回動部材130の回動中心CB上に配置されて前記作動部材128側に付勢されるボール134と、前記操作ペダル112が前記非操作位置にあるときに前記ボール134を嵌合せしめるようにして前記作動部材128に設けられる嵌合凹部135とを備えるものであるので、操作ペダル112の移動に伴う回動部材130の回動によってクリック感が変化することを回避することができる。
【0069】
さらにペダル支持部113が平板状のガイド板119を備え、該ガイド板119に長孔である前記ガイド部123が設けられ、操作ペダル112のシフトアップ位置およびシフトダウン位置を定めるストッパとして機能する一対のボルト140,141が、前記ガイド部123の両端に一端を臨ませるとともに進退位置を調整可能として前記ガイド板119に螺合されるので、簡単な構成でストッパをペダル支持部113に設けることができ、しかも操作ペダル112のシフトアップ位置およびシフトダウン位置を容易に調整することができる。
【0070】
本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明するが、第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0071】
操作ペダル112を上下移動可能に支持するペダル支持部145は、第1の実施の形態と同様にして車幅方向に間隔をあけて平行に配置される一対の支持板117,118と、両支持板117,118のうち外方の支持板118に固着される平板状のガイド板146とを備え、前記ガイド板146には、前記操作ペダル112を非操作位置と、その非操作位置の上側に配置されるシフトアップ位置ならびに前記非操作位置の下側に配置されるシフトダウン位置との間でガイドするガイド部147が設けられる。
【0072】
前記ガイド部147は、前記操作ペダル112に設けられて車幅方向に延びる大径軸部112bをガイドするものであり、前記操作ペダル112の移動方向に沿って延びて前記大径軸部112bに一側方から対向する固定ガイド壁148と、前記操作ペダル112の移動方向に沿って延びて前記大径軸部112bに他側方から対向する可動ガイド壁149とを備える。
【0073】
前記固定ガイド壁148は、上下に長く延びる円弧状に形成されて前記ガイド板146に設けられる長孔150の内周側の壁として形成されるものであり、前記ペダル支持部145から自動二輪車の後方に離れた位置を中心CAとした円弧状に形成される。
【0074】
また前記可動ガイド壁149は、前後に延びて前記ガイド板146に設けられた一対のガイドロッド151,151で摺動可能に支持される可動部材152に形成されるものであり、固定ガイド壁148と同様に前記中心CAから一定の距離を有する円弧状に形成される。
【0075】
また前記長孔150の外周側の壁は、前記可動部材152の前後方向での移動にかかわらず、前記操作ペダル112の大径軸部112bを前記固定ガイド壁148および前記可動ガイド壁149間に常時挟むようにして、前記可動部材152で覆われるように形成される。
【0076】
また前記操作ペダル112および前記ペダル支持部145間に設けられるクリック機構153が、前記非操作位置と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置との間で前記固定ガイド壁148および前記可動ガイド壁149のいずれか、この実施の形態では固定ガイド壁148に設けられる隆起部154,155と、前記可動ガイド壁149を前記固定ガイド148壁側に向けて付勢するばね156,156とで構成されており、ばね156…は、前記ガイドロッド151…を囲繞するようにして該ガイドロッド151…の突出端に設けられる鍔部151a…および前記可動部材152間に縮設される。
【0077】
また前記操作ペダル112に一端が固定される作動部材128の他端部は、前記回動中心CBまわりに回動可能な回動部材130に摺動可能に嵌合されるだけであり、回動回動部材130および作動部材128間にクリック機構が設けられることはない。
【0078】
この第2の実施の形態によれば、ガイド部14が、操作ペダル112の大径軸部112bに一側方から対向する固定ガイド壁148と、その大径軸分112bに他側方から対向する可動ガイド壁149とを備え、クリック機構153が、固定ガイド壁148に設けられる隆起部154,155と、可動ガイド壁149を固定ガイド壁148側に向けて付勢するばね156…とで構成されるようにして、ガイド部147およびクリック機構153の一部を共用化することで、変速制御装置のコンパクト化を図ることができる。
【0079】
本発明の第3の実施の形態について図8および図9を参照しながら説明する。
【0080】
操作ペダル158を上下移動可能に支承するペダル支持部159は、車体前後方向に間隔をあけた配置される前後一対の支持部159a,159aと、両支持部159a…間を連結する連結部159bとを一体に有して略U字状に形成されており、車体フレームFもしくはエンジン本体28に固定される。
【0081】
このペダル支持部159の前記両支持部159a…には、車体前後方向に指向する中心軸線を有するスライド部材160が、その中心軸線に沿う方向での制限された範囲での往復スライド移動を可能とするとともに前記中心軸線まわりの回動を不能として支持される。
【0082】
前記スライド部材160は、円柱部160aと、その円柱部160aの両端に同軸に連なる一対の軸部160b,160bとを一体に有するように形成される。また前記ペダル支持部159の支持部159a…には、前記円柱部160aの軸方向両端部を嵌合せしめる大径嵌合孔161,161と、前記軸部160b…をスプライン嵌合せしめる小径嵌合孔162,162とが、それらの嵌合孔161,162…間に環状の段部163,163を形成するようにして設けられる。
【0083】
前記操作ペダル158は、前記ペダル支持部159の両支持部159a…によって軸方向移動が規制されるようにして前記スライド部材160の円柱部160aを囲繞する円筒部材164に、その半径方向に沿うようにして取付けられるものであり、操作ペダル158は、車体前後方向での移動を不能とするとともに前記スライド部材160の中心軸線まわりに上下に回動することを可能として前記スライド部材160に支承されることになる。
【0084】
しかも前記スライド部材160における円柱部160aの外周には螺旋溝165が設けられており、その螺旋溝165に嵌合する突部166が前記操作ペダル158の内端部に突設される。これによって、操作ペダル158をその上下方向に移動するように操作することで前記スライド部材160がその中心軸線に沿って前後いずれかにスライドすることになり、スライド部材160のスライド作動に応じて前記操作ペダル158の変速操作を検出する一対の検出器167,167が前記ペダル支持部159の両支持部159a…,159aに取付けられる。
【0085】
また前記操作ペダル158の操作にクリック感を付与するクリック機構169が、前記ペダル支持部159と、前記操作ペダル158に連動してスライドするスライド部材160との間に設けられており、該クリック機構169は、前記円柱部160aの両端部外周に設けられる嵌合凹部170,170と、前記大径嵌合孔161…の内周に一端を開口するようにして前記支持部159a…に設けられる収容孔171,171に収容される状態ならびに前記嵌合凹部170…に嵌合される状態を切換可能なボール172,172と、前記収容孔171…の他端を塞ぐプラグ173,173および前記ボール172…間に縮設されるばね174,174とを備えるものであり、前記ボール172…は、前記操作ペダル158を非操作位置とすることで前記スライド部材160が中立位置にあるときに前記嵌合凹部170…に嵌合する。
【0086】
また前記操作ペダル158に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構175が、前記ペダル支持部159a,159a159と、前記操作ペダル158に連動してスライドするスライド部材160との間に設けられており、該リターン機構175は、前記ペダル支持部159における前記支持部159a…段部163…と、前記円柱部160aの両端との間に戻しばね176,176がそれぞれ設けられて成る。
【0087】
この第3の実施の形態によれば、車体前後方向に指向する中心軸線を有するスライド部材160が制限された範囲での往復スライド移動を可能とするととも回動を不能としてペダル支持部159に支持され、車体前後方向での移動を不能とした操作ペダル158が上下に回動することを可能としてスライド部材160に支承され、スライド部材160の外周に設けられる螺旋溝165に操作ペダル158に突設された突部166が嵌合するので、操作ペダル158の上下方向移動に応じて前記スライド部材160をスライドさせることができ、そのスライド部材160のスライド作動を検出器167…で検出するので、乗員の足位置の前後への移動をなくし、操作性を良好とすることができる。
【0088】
本発明の第4の実施の形態について図10〜図12を参照しながら説明する。
【0089】
操作ペダル180を上下移動可能に支承するペダル支持部181は、車体フレームFもしくはエンジン本体28に固定される基板182と、車体前後方向に間隔をあけて前記基板182に固着される一対のブラケット183,183とを有しており、前記ペダル支持部181から車幅方向に延出される一対のリンク機構184,184を介して前記操作ペダル180が前記ペダル支持部181に上下移動可能に支承される。
【0090】
前記リンク機構184は、一端部が前記操作ペダル180に第1の連結軸185を介して連結されるととも他端部が第1の連結軸185と平行な第2の連結軸186を介して前記ブラケット183に連結される第1のリンク部材187と、一端部が前記操作ペダル180に第3の連結軸188を介して連結されるととも他端部が第3の連結軸188と平行な第4の連結軸189を介して前記ブラケット183に連結される第2のリンク部材190とで、平行リンクとして構成される。
【0091】
また前記操作ペダル180と、前記ペダル支持部181の基板182との間には、前記操作ペダル180に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構191が設けられるものであり、このリターン機構191は、一対の前記リンク機構184…に車両前後方向から重なる位置に配置されて前記ペダル支持部181に固定される板ばね192が前記操作ペダル180に係合されて成るものであり、前記板ばね192は、上下方向で略V字状に広がる係合腕部192a,192bを有し、それらの係合腕部192a,192b間の中央部が前記基板182にリベット193で固着される。
【0092】
一方、前記操作ペダル180には、前記板ばね192の係合腕部192a,192bを挿入せしめるようにして前記基板182側に広がる凹部194が設けられており、操作ペダル180をシフトアップ側すなわち上方に移動せしめると、前記板ばね192の両係合腕部192a,192bのうち下方の係合腕部192bが前記凹部194の下部側壁に当接して撓むことで操作ペダル180を下方に付勢するばね力が生じ、また操作ペダル180をシフトダウン側すなわち下方に移動せしめると、前記板ばね192の両係合腕部192a,192bのうち上方の係合腕部192aが前記凹部194の上部側壁に当接して撓むことで操作ペダル180を上方に付勢するばね力が生じることにある。
【0093】
また前記板ばね192が備える両係合腕部192a,192bの先端部には外側に向けて突出する突部195,196がそれぞれ突設されており、前記操作ペダル180の操作にクリック感を生じさせるクリック機構199は、前記板ばね192に設けられた前記突部195,196と、前記操作ペダル180のシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じて前記突部195,196を嵌合させるようにして前記操作ペダル180の凹部194の下部側壁および上部側壁に設けられる嵌合凹部197,198とで構成される。
【0094】
また前記操作ペダル180がシフトアップ側に操作されたことを一対の前記リンク機構184…の第1のリンク部材187の当接によって検出する検出器201と、前記操作ペダル180がシフトダウン側に操作されたことを一対の前記リンク機構184…の一方のうち第1のリンク部材187の当接によって検出する検出器202が前記ペダル支持部181に取付けられる。
【0095】
また前記操作ペダル180には、該操作ペダル180がシフトアップ側に操作されたときに前記リンク機構184…のうち第1のリンク部材187に当接するストッパ203と、前記操作ペダル180がシフトダウンプ側に操作されたときに前記リンク機構184…のうち第1のリンク部材187に当接するストッパ204とが設けられる。
【0096】
しかも前記ペダル支持部181、前記リンク機構184…、前記板ばね192、前記検出器201,202および前記操作ペダル180の一部を覆うゴムブーツ205が、前記基板182および前記操作ペダル180間に設けられる。
【0097】
この第4の実施の形態によれば、ペダル支持部181から車幅方向に一対のリンク機構184…が延出され、操作ペダル180が両リンク機構184…を介してペダル支持部181に上下移動可能に支承され、リターン機構191を構成する板ばね192が、車両前後方向で両リンク機構184…に重なる位置に配置されるので、リターン機構191をリンク機構184…で保護することができ、しかも板ばね192に設けられた突部195,196と、操作ペダル180のシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じて突部195,196を嵌合させるようにして操作ペダル180に設けられる嵌合凹部197,198とでクリック機構199を構成するようにして、クリック機構199を簡略化することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0099】
50・・・変速機
112,158,180・・・操作ペダル
112b・・・操作ペダルの軸部である大径軸部
113,145,159,181・・・ペダル支持部
114,167,201,202・・・検出器
115,153,169,199・・・クリック機構
116,175,191・・・リターン機構
119・・・ガイド板
123・・・ガイド部
128・・・作動部材
130・・・回動部材
134・・・ボール
135,197,198・・・嵌合凹部
140,141・・・ボルト
147・・・ガイド部
148・・・固定ガイド壁
149・・・可動ガイド壁
154,155・・・隆起部
156・・・ばね
160・・・スライド部材
165・・・螺旋溝
166,195,196・・・突部
184・・・リンク機構
192・・・板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速のために乗員の足によって回動操作される操作ペダル(112,158,180)と、該操作ペダル(112,158,180)による変速操作を検出する検出器(114,167,201,202)とを備え、該検出器(114,167,201,202)の検出結果に基づいて変速機(50)を変速作動せしめるようにした鞍乗り型車両の変速制御装置において、車幅方向に延びる前記操作ペダル(112,158,180)の車幅方向内方に、前記操作ペダル(112,158,180)を上下移動可能に支持するペダル支持部(113,145,159,181)が固定配置され、前記検出器(114,167,201,202)が前記ペダル支持部(113,145,159,181)に取付けられ、前記操作ペダル(112,158,180)の操作にクリック感を付与するクリック機構(115,153,169,199)と、前記操作ペダル(112,158,180)に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構(116,175,191)とが、前記ペダル支持部(113,145,159,181)および前記操作ペダル(112,158,180)間に設けられることを特徴とする鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項2】
前記検出器(114,167,201,202)が、前記操作ペダル(112,158,180)の上方への移動をシフトアップ操作として検出し、前記操作ペダル(112,158,180)の下方への移動をシフトダウン操作として検出することを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項3】
前記操作ペダル(112)を、非操作位置と、その非操作位置の両側に配置されるシフトアップ位置およびシフトダウン位置との間でガイドするガイド部(123)が前記ペダル支持部(116)に設けられ、前記操作ペダル(112)に一端部が固定される作動部材(128)の他端部と、前記ペダル支持部(116)との間に、前記ガイド部(123)のガイドによる前記操作ペダル(112)の移動に応じて前記作動部材(128)が作動するのに基づいてクリック感が生じるようにして前記クリック機構(115)が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項4】
前記作動部材(128)が棒状に形成され、前記非操作位置に在る前記操作ペダル(112)までの距離と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置に在る前記操作ペダル(112)までの距離とを異ならせた位置に回動軸線を有して前記ペダル支持部(116)に回動可能に支承される回動部材(130)に前記作動部材(128)の他端部が摺動可能に嵌合され、前記クリック機構(115)が前記回動部材(130)および前記作動部材(128)間に設けられ、前記検出器(114)が前記回動部材(130)の回動に基づいて前記操作ペダル(112)の変速操作を検出するようにして前記回動部材(130)に連結されることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項5】
前記クリック機構(115)が、前記回動部材(130)の回動中心上に配置されて前記作動部材(128)側に付勢されるボール(134)と、前記操作ペダル(112)が前記非操作位置にあるときに前記ボール(134)を嵌合せしめるようにして前記作動部材(128)に設けられる嵌合凹部(135)とを備えることを特徴とする請求項4記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項6】
前記ペダル支持部(116)が平板状のガイド板(119)を備え、該ガイド板(119)に長孔である前記ガイド部(123)が設けられ、前記操作ペダル(112)のシフトアップ位置およびシフトダウン位置を定めるストッパとして機能する一対のボルト(140,141)が、前記ガイド部(123)の両端に一端を臨ませるとともに進退位置を調整可能として前記ガイド板(119)に螺合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項7】
前記操作ペダル(112)に設けられて車幅方向に延びる軸部(112b)をガイドする前記ガイド部(147)が、前記操作ペダル(112)の移動方向に沿って延びて前記軸部に一側方から対向する固定ガイド壁(148)と、前記操作ペダル(112)の移動方向に沿って延びて前記軸部(112b)に他側方から対向する可動ガイド壁(149)とを備え、前記クリック機構(153)が、前記非操作位置と、前記シフトアップ位置および前記シフトダウン位置との間で前記固定ガイド壁(148)および前記可動ガイド壁(149)のいずれかに設けられる隆起部(154,155)と、前記可動ガイド壁(149)を前記固定ガイド壁(148)側に向けて付勢するばね(156)とで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項8】
前記ペダル支持部(159)に、車体前後方向に指向する中心軸線を有するスライド部材(160)が、その中心軸線に沿う方向での制限された範囲での往復スライド移動を可能とするととも前記中心軸線まわりの回動を不能として支持され、前記車体前後方向での移動を不能とした前記操作ペダル(158)が前記スライド部材(160)の中心軸線まわりに上下に回動することを可能として前記スライド部材(160)に支承され、前記スライド部材(160)の外周に設けられる螺旋溝(165)に嵌合する突部(166)が前記操作ペダル(158)に突設され、前記スライド部材(160)のスライド作動に応じて前記操作ペダル(158)の変速操作を検出する検出器(167)が前記ペダル支持部(159)に取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。
【請求項9】
前記ペダル支持部(181)から車幅方向に延出されるリンク機構(184)を介して前記操作ペダル(180)が前記ペダル支持部(181)に上下移動可能に支承され、前記リターン機構(191)は、車両前後方向で前記リンク機構(184)に重なる位置に配置されて前記ペダル支持部(181)に固定される板ばね(192)が、前記操作ペダル(180)に係合されて成り、前記クリック機構(199)は、前記板ばね(192)に設けられた突部(195,196)と、前記操作ペダル(180)のシフトアップ操作およびシフトダウン操作に応じて前記突部(195,196)を嵌合させるようにして前記操作ペダル(180)に設けられる嵌合凹部(197,198)とで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71653(P2013−71653A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213040(P2011−213040)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】