説明

鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置

【課題】クランクシャフトの軸線延長上にラジエータが配置され、クランクシャフトに同軸に連動、連結される冷却ファンがラジエータの内方に配置され、ラジエータおよびクランクケース間に、冷却ファンを覆ってラジエータに固定される筒状のシュラウドが介設され、ラジエータを外方から覆うラジエータカバーがシュラウドに締結される鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置において、ラジエータカバーの取付け作業性を高め、ラジエータおよびラジエータカバーの共振が生じるのを防止する。
【解決手段】ラジエータカバー40に、該ラジエータカバー40をシュラウド39に締結する前にラジエータ37に係合して該ラジエータ37に支持することを可能とした係合部66が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式の内燃機関のクランクケースに回転自在に支承されて車幅方向に延びるクランクシャフトの軸線延長上にラジエータが配置され、前記クランクシャフトに同軸に連動、連結される冷却ファンが前記ラジエータの内方に配置され、前記ラジエータおよび前記クランクケース間に、前記冷却ファンを覆って前記ラジエータに固定される筒状のシュラウドが介設され、前記ラジエータを外方から覆うラジエータカバーが前記シュラウドに締結される鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランクケースの車幅方向一側にラジエータが配置され、クランクシャフトに同軸に設けられてラジエータおよびクランクケース間に配置される冷却ファンを覆う筒状のシュラウドが前記ラジエータおよびクランクケース間に配置され、ラジエータを覆うラジエータカバーがシュラウドに締結されるようにしたものが、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1で開示されたものでは、ラジエータおよびシュラウドを予め小組みしておき、小組み状態でラジエータをクランクケースに固定した後にラジエータカバーをシュラウドに締結するようにしており、クランクケースへの組付け時には、ラジエータおよびシュラウドがクランクケースに固定された状態でラジエータカバーの取付け作業を行う必要があり、ラジエータカバーおよびシュラウドの締結孔の位置合わせ等々でラジエータカバーの取付け作業が煩雑となってしまう可能性がある。しかもラジエータカバーがシュラウドだけに固定される構造であるので、ラジエータの振動およびラジエータカバーの振動が共振してしまう可能性があり、その場合には、振動負荷が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ラジエータカバーの取付け作業性を高め、ラジエータおよびラジエータカバーの共振が生じるのを防止し得るようにした鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、水冷式の内燃機関のクランクケースに回転自在に支承されて車幅方向に延びるクランクシャフトの軸線延長上にラジエータが配置され、前記クランクシャフトに同軸に連動、連結される冷却ファンが前記ラジエータの内方に配置され、前記ラジエータおよび前記クランクケース間に、前記冷却ファンを覆って前記ラジエータに固定される筒状のシュラウドが介設され、前記ラジエータを外方から覆うラジエータカバーが前記シュラウドに締結される鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置において、前記ラジエータカバーには、該ラジエータカバーを前記シュラウドに締結する前に前記ラジエータに係合して該ラジエータに支持することを可能とした係合部が設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記シュラウドと、該シュラウドに固定した前記ラジエータとから成る小組ユニットが前記クランクケースに固定されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記ラジエータが前記クランクケースに直接締結されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記ラジエータカバーが、前記ラジエータを前記クランクケースに締結すべく該ラジエータに設けられるクランクケース取付け部を少なくとも覆うように形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記係合部を係脱可能に係合し得る係止部が、前記ラジエータのフィラーネックに設けられることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第5の特徴の構成に加えて、前記係合部の前記ラジエータへの係合操作方向が車幅方向に設定されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第5または第6の特徴の構成に加えて、前記係合部が、前記ラジエータカバーから可撓性を有して車幅方向内方に延出される脚部と、前記車両の前後方向に延びて前記フィラーネックの側面から突出される前記係止部に係合することを可能として前記脚部の先端に形成される爪部とから成ることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記ラジエータカバーが、前記脚部を外側から覆うように形成されることを第8の特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、第5〜第8の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ラジエータが、上方に延びるフィラーネックが設けられる上タンクと、該上タンクの下方に配置される下タンクと、前記上タンクおよび前記下タンク間に設けられるコア部と、前記上タンクを車幅方向外側から覆うタンクカバーとを備え、前記係止部が、前記タンクカバーよりも上方で前記フィラーネックに設けられることを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、ラジエータカバーをシュラウドに締結する前にラジエータカバーをラジエータに係合して支持することができるので、ラジエータおよびシュラウドがクランクケースに取付けられた状態でラジエータカバーをシュラウドに締結する場合に、ラジエータカバーをラジエータに係合して支持することができ、ラジエータカバーの取付け作業性を高めることができる。しかもラジエータカバーは、シュラウドに締結されるとともにラジエータに係合されるので、ラジエータおよびラジエータカバーが共振するのを防止することができる上に、ラジエータカバーの固定を強固なものとすることができる。
【0016】
また本発明の第2の特徴によれば、シュラウドをラジエータに固定して成る小組みユニットをクランクケースに固定するようにすることで組立性の向上を図ることができる。
【0017】
本発明の第3の特徴によれば、ラジエータをクランクケースに直接締結するようにして、ラジエータをクランクケースに強固に固定することができる。
【0018】
本発明の第4の特徴によれば、ラジエータカバーが、ラジエータに設けられるクランクケース取付け部を少なくとも覆うように形成されるので、外観性を高めることができる。また外観性を高めるためにラジエータカバーを大型化しても、ラジエータカバーの係合部によってラジエータへの係合が可能であるので、ラジエータカバーの形状の自由度を高めることができる。
【0019】
本発明の第5の特徴によれば、ラジエータカバーの係合部をラジエータのフィラーネックに設けられる係止部に係合するので、ラジエータのコアや他の締結部分を避けた位置に係止部を効果的に設けることができ、ラジエータカバーの上部をラジエータの上部に係合し、ラジエータカバーの下部をシュラウドに締結するようにして締結箇所を少なくしつつラジエータカバーをラジエータおよびシュラウドに強固に固定することができる。
【0020】
本発明の第6の特徴によれば、係合部のラジエータへの係合操作方向を車幅方向とすることでラジエータにその外側方からラジエータカバーを簡単に係合することができる。
【0021】
本発明の第7の特徴によれば、係合部が、可撓性を有する脚部と、脚部の先端に形成される爪部とから成り、フィラーネックの側面から突出される係止部に爪部を係合させるので、脚部を撓ませつつ爪部を係止部に容易に係合させることができる。
【0022】
本発明の第8の特徴によれば、ラジエータカバーが脚部を外側から覆うので、脚部を保護することができるとともに外観性を高めることができる。
【0023】
さらに本発明の第9の特徴によれば、ラジエータが、フィラーネックが設けられる上タンクと、下タンクと、上タンクおよび下タンク間に設けられるコア部と、上タンクを車幅方向外側から覆うタンクカバーとを備えており、タンクカバーよりも上方でフィラーネックに係止部が設けられるので、タンクカバーとの前記係合部の干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態のスクータ型自動二輪車の側面図である。
【図2】ラジエータカバーを省略した状態でのパワーユニットの要部拡大側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4ー4線断面図である。
【図5】図2の5−5線拡大断面図である。
【図6】図3の6−6線拡大断面図である。
【図7】第2の実施の形態のラジエータのクランクケースへの締結部付近を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお以下の説明で前後、上下および左右の各方向は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向を言うものとする。
【0026】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明すると、先ず図1において、このスクータ型の自動二輪車の車体フレームFは、その前端のヘッドパイプ11と、該ヘッドパイプ11に前端部が結合されるメインフレーム12と、車幅方向に延びて前記メインフレーム12の後部に設けられるクロスパイプ13と、該クロスパイプ13の両端部に前端部がそれぞれ連設される左右一対のリヤフレーム14…とを備える。
【0027】
前記ヘッドパイプ11には、前輪WFを支持するフロントフォーク15と、棒状の操向ハンドル16とが操向可能に支承される。前記メインフレーム12は、前記ヘッドパイプ11から後下がりに傾斜したダウンフレーム部12aと、該ダウンフレーム部12aの後端からほぼ水平にして後方に延びるロアフレーム部12bとを一体に有し、単一のパイプが屈曲成形されて成る。また前記リヤフレーム14は、前記クロスパイプ13から後上がりに傾斜して上方に延びる立ち上がりフレーム部14aと、該立ち上がりフレーム部14aの上端から該立ち上がりフレーム部14aよりも緩やかな傾斜角度で後ろ上がりに傾斜しつつ後方に延びるシートレール部14bとを一体に有し、単一のパイプが屈曲成形されて成る。
【0028】
前記車体フレームFにおける両リヤフレーム14…の前部すなわち立ち上がりフレーム部14aの下部に設けられるブラケット75に、ユニットスイング式のパワーユニットPの前側下部に設けられるハンガ部76に一端が軸77を介して連結されるリンク78の他端が軸79を介して連結され、前記パワーユニットPは、上下に揺動することを可能としつつ車体フレームFに揺動可能に支承され、後輪WRは該パワーユニットPの後部に軸支される。また左右一対のリヤフレーム14…のうち左側のリヤフレーム14のシートレール部14bの後部および前記パワーユニットPの後部間にはリヤクッションユニット17が設けられる。
【0029】
車体フレームFにおける両リヤフレーム14…の前部間には収納ボックス18が支持されており、該収納ボックス18を上方から覆うタンデム型の乗車用シート19が開閉可能として前記収納ボックス18の前側上部に支持される。さらに収納ボックス18の後方には、前記両リヤフレーム14で支持される燃料タンク20が前記乗車用シート19で覆われるようにして配置される。
【0030】
前記車体フレームF、前記パワーユニットPの一部、前記収納ボックス18および前記燃料タンク20は、車体カバー21で覆われており、前記乗車用シート19に座った乗員の脚部を前方から覆うレッグシールド22と、前記乗車用シート19に座った乗員が足を載せるようにして前記レッグシールド22の下部に連設されて前記パワーユニットPの前方に配置されるステップフロア23と、該ステップフロア23の両側から下方に垂下される左右一対のスカート部24…を有して前記メインフレーム12におけるロアフレーム部12bを側方および下方から覆うアンダーカウル25とで前記車体カバー21の一部が構成される。
【0031】
図2において、前記パワーユニットPは、水冷式の内燃機関Eと、該内燃機関Eの回転動力を前記後輪WRに伝達する動力伝達装置(図示せず)とで構成されるものであり、前記内燃機関Eの機関本体26は、車幅方向に沿う軸線を有するクランクシャフト27を回転自在に支承するクランクケース28と、わずかに前上がりに傾斜したシリンダ軸線を有して前記クランクケース28に結合されるシリンダブロック29と、該シリンダブロック29に結合されるシリンダヘッド30と、該シリンダヘッド30に結合されるヘッドカバー31とを備える。
【0032】
図3および図4を併せて参照して、前記クランクケース28は、左右に2分割された左ケース半体28Lおよび右ケース半体28Rが複数のボルト32…で締結されて成るものであり、前記右ケース半体28Rを回転自在に貫通するクランクシャフト27の右側端部にはアウターロータ33が固定され、該アウターロータ33とともに発電機35を構成するようにしてアウターロータ33で囲繞されるインナーステータ34が、右クランクケース半体28Rに締結される支持板36に固定される。
【0033】
前記クランクシャフト27の右側への軸線延長上にラジエータ37が配置され、前記クランクシャフト27には、前記ラジエータ37の内方に配置される冷却ファン38が同軸に連動、連結されるものであり、この実施の形態では、ラジエータ37および前記発電機35間に配置されるようにして前記冷却ファン38が複数のボルト41…で前記発電機35のアウターロータ33に固定される。
【0034】
前記ラジエータ37および前記クランクケース28の右ケース半体28R間には、前記冷却ファン38を覆って前記ラジエータ37に固定される筒状のシュラウド39が介設され、前記ラジエータ37を外方から覆うラジエータカバー40が前記シュラウド39に締結される。
【0035】
前記ラジエータ37は、上方に延びるフィラーネック42が設けられる上タンク43と、該上タンク43の下方に配置される下タンク44と、前記上タンク43および前記下タンク44間に設けられるコア部45と、前記上タンク43を車幅方向外側から覆うタンクカバー46とを備える。
【0036】
図2に注目して、前記機関本体26におけるシリンダヘッド30の右側面には、前記クランクシャフト27の回転に連動するウォータポンプ47が配設されており、このウォータポンプ47から吐出される冷却水はホース48を介してシリンダブロック29のウォータジャケット(図示せず)に導入される。またシリンダブロック29の前記ウォータジャケットに通じるようにしてシリンダヘッド30に形成されるウォータジャケット(図示せず)から排出される冷却水はホース49を介して前記ラジエータ37の上タンク43に導かれ、上タンク43からコア部45を流通することで冷却された冷却水は、下タンク44からホース50で導出される。一方、前記シリンダブロック29の右側方にはサーモスタット51が固定的に配設されており、前記下タンク44からの冷却水を導く前記ホース50はサーモスタット51に接続される。また前記シリンダヘッド30のウォータジャケットから導出される冷却水はバイパス用のホース52を介して前記サーモスタット51に導くことも可能であり、サーモスタット51は、前記ウォータポンプ47の吸入管47aに接続される。
【0037】
図5において、前記シュラウド39の車幅方向に沿う外端部の下部には下方に突出する1つのラジエータ取付け部39aが一体に設けられており、前記ラジエータ37における下タンク44に一体に設けられて前記ラジエータ取付け部39aに外方から当接する取付け板部44aがねじ部材55で前記ラジエータ取付け部39aに締結される。
【0038】
また前記シュラウド39の車幅方向に沿う外端部の上部には、前記フィラーネック46の前後に分かれる一対のラジエータ取付け部39b,39bが上方に突出するようにして一体に設けられており、前記ラジエータ37における上タンク43に一体に設けられて前記ラジエータ取付け部39b…に外方から当接する取付け板部43a,43aがねじ部材55…で前記ラジエータ取付け部39b…に締結される。すなわちシュラウド39は前記ラジエータ37に締結され、ラジエータ37をクランクケース28の右ケース半体28Rに固定する際には、前記シュラウド39と、該シュラウド39に固定した前記ラジエータ37とから成る小組ユニット56が前記クランクケース28の右ケース半体28Rに固定される。
【0039】
前記小組みユニット56の前記ラジエータ37は、前記クランクケース28の右ケース半体28Rに直接締結されるものであり、前記ラジエータ37における前記上タンク43には前記フィラーネック46を前後から挟むようにして一対のクランクケース取付け部43b,43bが側方に突出するようにして一体に設けられ、前記ラジエータ37における前記下タンク44の前後に間隔をあけた2箇所にはクランクケース取付け部44b,44bが下方に突出するようにして一体に設けられる。
【0040】
一方、前記クランクケース28の右ケース半体28Rには、図3で明示するように、前記右ケース半体28Rに螺合するねじ軸部57aと、前記右ケース半体28Rの右側面に当接するようにして前記ねじ軸部57aの外端から半径方向外方に張り出す第1鍔部57bと、前記ねじ軸部57aの外端に同軸に連なって外方に延びる軸部57cと、該軸部57cの外端から半径方向外方に張り出す第2鍔部57dとを一体に有するとともに前記軸部57cには有底のねじ孔58が設けられるボルト57…が、前記ラジエータ37における前記クランクケース取付け部43b…,44b…に対応した位置にねじ込んで固定される。しかも前記軸部57cの軸長は、右ケース半体28Rとの間に前記シュラウド39を介在させた状態にある前記ラジエータ37における前記クランクケース取付け部43b…,44b…に第2鍔部57d…を当接させるように設定されており、前記クランクケース取付け部43b…,44b…に嵌合された円筒状のカラー59…に挿通されるボルト60…を前記ねじ孔58…に螺合して締めつけることによって、前記ラジエータ37が前記クランクケース28の右ケース半体28Rに直接締結される。この状態では、前記シュラウド39の前記クランクケース28側端部がクランクケース28の右ケース半体28Rに当接するように該シュラウド39が配置される。
【0041】
前記ラジエータカバー40は、前記ラジエータ37のコア部45に対応して開口した冷却風導入口61を有するものであり、複数の上下に延びる羽根板62a…を有して前記冷却風導入口61に配置されるルーバ62がラジエータカバー40に設けられる。
【0042】
図4に注目して、前記ラジエータカバー40は、前記シュラウド39の車幅方向に沿う外端部に締結されるものであり、前記シュラウド39における前壁の車幅方向に沿う外端部の上部および下部、ならびに前記シュラウド39における後壁の車幅方向に沿う外端部の下部に、図2で明示するように、外側方に突出するカバー取付け部39c…が前記ラジエータカバー40を当接させるようにしてそれぞれ一体に設けられ、各カバー取付け部39c…にはナット63…が装着される。一方、前記ラジエータカバー40には、前記カバー取付け部39c…にそれぞれ対応した有底の凹部64…が設けられており、それらの凹部64…に拡径頭部65a…を挿入せしめるようにして前記ラジエータカバー40および前記カバー取付け部39c…に挿通されるボルト65…を前記ナット63…に螺合して締めつけることによってラジエータカバー40が前記シュラウド39に締結される。
【0043】
しかもラジエータカバー40は、ラジエータ37をクランクケース28の右ケース半体28Rに締結すべく該ラジエータ37に設けられるクランクケース取付け部43b…,44b…を少なくとも覆うように形成される。
【0044】
前記ラジエータカバー40には、該ラジエータカバー40をシュラウド39に締結する前にラジエータ37に係合して該ラジエータ37に支持することを可能とした係合部66が設けられる。また前記ラジエータ37のフィラーネック42には、前記係合部66を係脱可能に係合し得る係止部67…が設けられる。
【0045】
また前記タンクカバー46は、前記ラジエータ37が備える上タンク43に、前記フィラーネック42を前後から挟む2箇所に、ねじ部材53,54で締結される。
【0046】
図6において、前記係合部66は、前記ラジエータカバー40の上部から可撓性を有して車幅方向内方に延出される一対の脚部66a,66aと、それらの脚部66a…の先端にそれぞれ形成される爪部66b,66bとから成り、両脚部66a…は、前記フィラーネック42を前後から挟むようにして前記ラジエータカバー40の上部から車幅方向内方に延出される。
【0047】
一方、前記係止部67…は、前記フィラーネック42の前部および後部側面から前後方向に突出されるものであり、車幅方向に設定される係合操作方向68に前記ラジエータカバー40を操作することで、前記係合部66は、その脚部66a…を撓ませて爪部66b…を前記係止部67…に係合させるようにして、ラジエータ37に係合されることになる。
【0048】
しかも前記係止部67…は、前記タンクカバー46よりも上方でフィラーネック42に設けられており、ラジエータカバー40は、前記係合部66の脚部66a…を外側から覆うように形成されている。
【0049】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、ラジエータカバー40をシュラウド39に締結する前にラジエータ37に係合して該ラジエータ37に支持することを可能とした係合部66が前記ラジエータカバー40に設けられるので、ラジエータ37およびシュラウド39がクランクケース28に取付けられた状態でラジエータカバー40をシュラウド39に締結する場合に、ラジエータカバー40をラジエータ37に係合して支持することができ、ラジエータカバー40の取付け作業性を高めることができる。しかもラジエータカバー40は、シュラウド39に締結されるとともにラジエータ37に係合されるので、ラジエータ37およびラジエータカバー40が共振するのを防止することができる上に、ラジエータカバー40の固定を強固なものとすることができる。
【0050】
またシュラウド39と、該シュラウド39に固定した前記ラジエータ37とから成る小組ユニット56がクランクケース28に固定されるので、組立性の向上を図ることができ、ラジエータ37がクランクケース28に直接締結されるので、ラジエータ37をクランクケース28に強固に固定することができる。
【0051】
またラジエータカバー40は、ラジエータ37をクランクケース28に締結すべく該ラジエータ37に設けられるクランクケース取付け部43b…,44b…を少なくとも覆うように形成されるので、外観性を高めることができる。また外観性を高めるためにラジエータカバー40を大型化しても、ラジエータカバー40の係合部66によってラジエータ37への係合が可能であるのでラジエータカバー40の形状の自由度を高めることができる。
【0052】
また係合部66を係脱可能に係合し得る係止部67…が、ラジエータ37のフィラーネック42に設けられるので、ラジエータ37のコア部45や他の締結部分を避けた位置に係止部67…を効果的に設けることができ、ラジエータカバー40の上部をラジエータ37の上部に係合し、ラジエータカバー40の下部をシュラウド39に締結するようにして締結箇所を少なくしつつラジエータカバー40をラジエータ37およびシュラウド39に強固に固定することができる。
【0053】
また係合部66のラジエータ37への係合操作方向68が車幅方向に設定されるので、ラジエータ37に、その外側方からラジエータカバー40を簡単に係合することができる。
【0054】
また係合部66が、ラジエータカバー40から可撓性を有して車幅方向内方に延出される一対の脚部66a…と、車両の前後方向に延びてフィラーネック42の側面から突出される係止部67…に係合することを可能として脚部66a…の先端にそれぞれ形成される爪部66b…とから成るものであるので、脚部66a…を撓ませつつ爪部66b…を係止部67…に容易に係合させることができる。
【0055】
またラジエータカバー40が、脚部66a…を外側から覆うように形成されるので、脚部66a…を保護することができるとともに外観性を高めることができる。
【0056】
さらに係止部67…が、タンクカバー46よりも上方でフィラーネック42に設けられるので、タンクカバー46との前記係合部66の干渉を回避することができる。
【0057】
本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0058】
前記ラジエータ37における前記上タンク43に設けられるクランクケース取付け部43bおよびボルト57の第2鍔部57d間には第1マウントゴム71が介装され、前記クランクケース取付け部43bに挿通されてボルト57のねじ孔58に螺合されるボルト60の拡径頭部60aを当接、当接係合させるワッシャ72および前記クランクケース取付け部43b間に第2マウントゴム73が介装されており、前記ボルト60を締めつけることによってラジエータ37の上部が第1および第2マウントゴム71,73を介してクランクケース28の右ケース半体28Rに直接締結される。
【0059】
また前記ラジエータ37における前記下タンク44に設けられるクランクケース取付け部44b(第1の実施の形態参照)も、上述のクランクケース取付け部43bと同様にマウントゴムを介してクランクケース28の右ケース半体28Rに直接締結される。
【0060】
この第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
27・・・クランクシャフト
28・・・クランクケース
37・・・ラジエータ
38・・・冷却ファン
39・・・シュラウド
40・・・ラジエータカバー
42・・・フィラーネック
43・・・上タンク
43b,44b・・・クランクケース取付け部
44・・・下タンク
45・・・コア部
46・・・タンクカバー
56・・・小組ユニット
66・・・係合部
66a・・・脚部
66b・・・爪部
67・・・係止部
68・・・係合操作方向
E・・・内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷式の内燃機関(E)のクランクケース(28)に回転自在に支承されて車幅方向に延びるクランクシャフト(27)の軸線延長上にラジエータ(37)が配置され、前記クランクシャフト(27)に同軸に連動、連結される冷却ファン(38)が前記ラジエータ(37)の内方に配置され、前記ラジエータ(37)および前記クランクケース(28)間に、前記冷却ファン(38)を覆って前記ラジエータ(37)に固定される筒状のシュラウド(39)が介設され、前記ラジエータ(37)を外方から覆うラジエータカバー(40)が前記シュラウド(39)に締結される鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置において、前記ラジエータカバー(40)には、該ラジエータカバー(40)を前記シュラウド(39)に締結する前に前記ラジエータ(37)に係合して該ラジエータ(37)に支持することを可能とした係合部(66)が設けられることを特徴とする鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
前記シュラウド(39)と、該シュラウド(39)に固定した前記ラジエータ(37)とから成る小組ユニット(56)が前記クランクケース(28)に固定されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
前記ラジエータ(37)が前記クランクケース(28)に直接締結されることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項4】
前記ラジエータカバー(40)が、前記ラジエータ(37)を前記クランクケース(28)に締結すべく該ラジエータ(37)に設けられるクランクケース取付け部(43b,44b)を少なくとも覆うように形成されることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項5】
前記係合部(66)を係脱可能に係合し得る係止部(67)が、前記ラジエータ(37)のフィラーネック(42)に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項6】
前記係合部(66)の前記ラジエータ(37)への係合操作方向(68)が車幅方向に設定されることを特徴とする請求項5記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項7】
前記係合部(66)が、前記ラジエータカバー(40)から可撓性を有して車幅方向内方に延出される脚部(66a)と、前記車両の前後方向に延びて前記フィラーネック(42)の側面から突出される前記係止部(67)に係合することを可能として前記脚部(66a)の先端に形成される爪部(66b)とから成ることを特徴とする請求項5または6記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項8】
前記ラジエータカバー(40)が、前記脚部(66a)を外側から覆うように形成されることを特徴とする請求項7記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。
【請求項9】
前記ラジエータ(37)が、上方に延びるフィラーネック(42)が設けられる上タンク(43)と、該上タンク(43)の下方に配置される下タンク(44)と、前記上タンク(43)および前記下タンク(44)間に設けられるコア部(45)と、前記上タンク(43)を車幅方向外側から覆うタンクカバー(46)とを備え、前記係止部(67)が、前記タンクカバー(46)よりも上方で前記フィラーネック(42)に設けられることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の鞍乗り型車両用内燃機関の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71492(P2013−71492A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210224(P2011−210224)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】