説明

鞍乗り型車両

【課題】他部材の配置等への影響を抑えてコンパクトにABSモジュールを配置すると共に、ABSモジュールに対する外乱の影響等を抑えることができる鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】メインフレーム15を上方から跨いで覆うように設けられる燃料タンク41を備え、ABSモジュール61は、その上方及び左右側方を燃料タンク41で覆われるように燃料タンク41の下方に配置され、燃料タンク41の下面には、ABSモジュール61を収容する凹部78が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンチロックブレーキシステム(Anti-lock Brake System、以下、ABSという)を備えた自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来は、ABSを機能させるべくブレーキ液圧の減圧を行うABSモジュールが高価かつ大型であったため、部品スペースが比較的確保し易い大排気量の自動二輪車に適用されてきた。特許文献1記載の車両では、ヘッドパイプの直後であってヘッドパイプから後方へ左右に広がるように延びる左右一対のメインフレームの間にABSモジュールを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年ではABSモジュールが廉価かつ小型になりつつあることから、種々の車両に搭載できるようにすることが望まれているが、他部品との相対配置のみならず、ABSモジュールに対する外乱の影響や車両の外観性等を考慮することも必要であり、ABSモジュールの搭載方法の工夫が必要とされる。
【0005】
そこで本発明は、他部材の配置等への影響を抑えてコンパクトにABSモジュールを配置すると共に、ABSモジュールに対する外乱の影響等を抑えることができる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、ヘッドパイプ(6)及びヘッドパイプ(6)から後方へ延びるメインフレーム(15)を有する車体フレーム(5)と、前記メインフレーム(15)を上方から跨いで覆うように設けられる燃料タンク(41)と、車輪(2,9)に制動力を与える液圧式ブレーキ(56,57)と、前記車輪(2,9)のスリップを回避するべく前記液圧式ブレーキ(56,57)に作用する液圧を減圧可能なABSモジュール(61,161)とを備える鞍乗り型車両(1)であって、前記ABSモジュール(61,161)は、その上方及び左右側方を前記燃料タンク(41)で覆われるように燃料タンク(41)の下方に配置され、前記燃料タンク(41)の下面には、前記ABSモジュール(61,161)を収容する凹部(78,85)が形成されることを特徴とする。
なお、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記液圧式ブレーキ(56,57)は、前輪(2)に制動力を与えるべく前輪(2)の左右一側に隣接して配置されるフロントキャリパ(56b)と、操向用バーハンドル(7)の前記左右一側に支持されて前記フロントキャリパ(56b)に連通されるフロントマスターシリンダ(58)とを備え、前記ABSモジュール(61,161)は、前記フロントキャリパ(56b)から延びる前下流液圧配管(58b)及び前記フロントマスターシリンダ(58)から延びる前上流液圧配管(58a)をそれぞれ接続する前出力ポート(62b)及び前入力ポート(62a)を有し、これら前出力ポート(62b)及び前入力ポート(62a)が、車体左右中心線(CL)よりも前記左右一側に偏倚して配置されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記液圧式ブレーキ(56,57)は、後輪に制動力を与えるべく後輪の左右一側に隣接して配置されるリアキャリパ(57b)と、前記車体フレーム(5)の前記左右一側に支持されて前記リアキャリパ(57b)に連通されるリアマスターシリンダ(59)とを備え、前記ABSモジュール(61,161)は、前記リアキャリパ(57b)から延びる後下流液圧配管(59b)及び前記リアマスターシリンダ(59)から延びる後上流液圧配管(59a)をそれぞれ接続する後出力ポート(63b)及び後入力ポート(63a)を有し、これら後出力ポート(63b)及び後入力ポート(63a)が、車体左右中心線(CL)よりも前記左右一側に偏倚して配置されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記メインフレーム(15)の下方に配置されるエンジン(13)を備え、前記メインフレーム(15)は、車体左右中心線(CL)に沿って単一に設けられ、前記ABSモジュール(61,161)は、前記メインフレーム(15)の上側に取り付けられることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記メインフレーム(15)の下方に配置されるエンジン(13)を備え、前記車体フレーム(5)は、前記メインフレーム(15)から後方へ延びる左右一対のシートフレーム(24)を有し、前記ABSモジュール(61,161)は、前記左右シートフレーム(24)の間でこれらの上側に取り付けられることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、前記ABSモジュール(61,161)に取り付けられるモジュール側ステー(64,81)と、前記車体フレーム(5)に取り付けられるフレーム側ステー(65,82,83)とを備え、前記モジュール側ステー(64,81)と前記フレーム側ステー(65,82,83)とは、車幅方向を指向する締結部材(66a)及びこれを挿通する弾性部材(66)を介して弾性的に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、ABSモジュールをその上方及び左右側方を覆うように燃料タンク下面の凹部内に収容することで、他部材の配置等への影響を抑えてコンパクトにABSモジュールを配置できると共に、ABSモジュールに雨や熱等の影響並びに外力が至ることを抑え、かつABSモジュールを目立たなくして車両外観への影響を抑え、さらにABSモジュールを燃料タンク下の車体フレームにマウントし易い構造とすることができる。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、フロントキャリパ及びフロントマスターシリンダ並びにこれらの間に配置されるABSモジュールの各ポートを車体左右一側に集約して配置することとなり、これらを効率よく接続することができる。
請求項3に記載した発明によれば、リアキャリパ及びリアマスターシリンダ並びにこれらの間に配置されるABSモジュールの各ポートを車体左右一側に集約して配置することとなり、前記同様、これらを効率よく接続することができる。
請求項4に記載した発明によれば、エンジンからの熱がメインフレームに遮蔽され、ABSモジュールに対するエンジン熱の影響を抑制できる。
請求項5に記載した発明によれば、ABSモジュールをエンジンから離間させることとなり、ABSモジュールに対するエンジン熱の影響を抑制できる。
請求項6に記載した発明によれば、ABSモジュールの車体フレームに対する着脱を車体側方から可能として作業性を向上させると共に、フレーム側ステーにモジュール側ステーをラバーマウントすることで、ABSモジュールへの振動、衝撃の影響をより一層小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
【図2】上記自動二輪車の車体フレーム等の平面図(上面図)である。
【図3】上記自動二輪車の車体フレーム等の正面図(前面図)である。
【図4】上記自動二輪車のブレーキシステムの構成図である。
【図5】上記自動二輪車の燃料タンク周辺の右側面図である。
【図6】図5に示す部位の平面図である。
【図7】本発明の第一実施形態のABSモジュール周辺を示す、図5のS7−S7断面図である。
【図8】本発明の第一実施形態のABSモジュール周辺の斜視図である。
【図9】図8のS9−S9断面図である。
【図10】(a)は上記燃料タンクの左側面図、(b)は上記燃料タンクの下面図である。
【図11】本発明の第二実施形態のABSモジュール周辺を示す、図5のS11−S11断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態のABSモジュール周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0012】
<第一実施形態>
図1に示す自動二輪車1において、その前輪2は左右フロントフォーク3の下端部に軸支され、左右フロントフォーク3の上部はステアリングステム4及びトップブリッジ4aを介して車体フレーム5前端部のヘッドパイプ6に操向可能に枢支される。トップブリッジ4a上には操向用バーハンドル7が取り付けられる。左右フロントフォーク3間にはフロントフェンダ8が支持される。
【0013】
自動二輪車1の後輪9は、車体後部下側で前後に延びるスイングアーム11の後端部に軸支される。スイングアーム11の前端部は、車体フレーム5下部のピボットパイプ12に上下揺動可能に枢支される。後輪9は、自動二輪車1の原動機であるエンジン13に対し、車体後部左側に配置された例えばチェーン式の伝動機構14を介して連係される。
【0014】
車体フレーム5は、前記エンジン13を取り囲むクレードル形のもので、複数種の鋼材を溶接等により一体に結合してなる。
図2,3を併せて参照し、車体フレーム5は、前記ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6の後部から下後方へ側面視で比較的緩傾斜をなして延びる単一のメインフレーム15と、メインフレーム15の前端部両側から左右に分岐するように下後方へ側面視で比較的急傾斜をなして延びる左右ダウンフレーム16と、左右ダウンフレーム16の下端部から後方へ湾曲して延びる左右ロアフレーム17と、左右ダウンフレーム16の上部間を連結するフロントアッパクロスパイプ18と、左右ロアフレーム17の前部間を連結するフロントロアクロスパイプ19と、左右ロアフレーム17の後端部間を連結するリアロアクロスパイプ21とを有する。なお、図中符号CLは車体左右中心線を示す。
【0015】
また、車体フレーム5は、メインフレーム15の後端部両側から左右に分岐するように下後方へ側面視で比較的急傾斜をなして延びた後に下前方へ湾曲してリアロアクロスパイプ21に接合される左右ミドルフレーム22と、左右ミドルフレーム22の下部前側に接合されるマウントブラケット23と、マウントブラケット23の下部にこれを貫通した状態で接合される前記ピボットパイプ12と、左右ミドルフレーム22の上端部よりも後方でメインフレーム15の後端部両側から左右に分岐するように上後方へ側面視で比較的緩傾斜をなして延びる左右シートフレーム24と、左右ミドルフレーム22の下部湾曲部の後側から上後方へ側面視で比較的急傾斜をなして延びて左右シートフレーム24の前後中間部に接合される左右サポートフレーム25と、左右シートフレーム24の前部間、前後中間部間及び後部間をそれぞれ連結するフロントクロスブラケット26、センタークロスブラケット27及びリアクロスブラケット28とを有する。
【0016】
メインフレーム15は、例えば左右分割体を一体に接合してなり、左右幅に対して上下幅を広げた縦長の断面形状を有し、車体左右中心線CLに沿って前後に延びる。メインフレーム15は、その前後端に渡って左右幅が略一定なのに対し、後側ほど上下幅が狭まるように形成される。メインフレーム15の前端部下側には、側面視で左右ダウンフレーム16に沿うように下方へ突出するガセット部15aが形成される。ガセット部15aの下端部は、フロントアッパクロスパイプ18に上方から接合される。
【0017】
左右ダウンフレーム16は、下側ほど車幅方向(左右方向)外側方へ広がるように下方へ延び、その下端部が左右ロアフレーム17の前部湾曲部に接続される。左右ロアフレーム17は、その前半部が側面視で比較的緩傾斜をなして下後方へ延び、後半部が略水平に後方へ延びる。左右ダウンフレーム16及び左右ロアフレーム17は、それぞれ車体左右毎に丸鋼管に曲げ加工等を施して一体形成される。なお、各クロスパイプ、左右ミドルフレーム22、左右シートフレーム24及び左右サポートフレーム25も、それぞれ丸鋼管に曲げ加工等を施してなる。
【0018】
左右ダウンフレーム16の直前には、側面視でこれに沿うように傾斜したフロントガードバー29が配置される。フロントガードバー29は丸鋼管に曲げ加工等を施してなり、正面視で概ね矩形状に形成される。左右ダウンフレーム16の間でフロントアッパクロスパイプ18の下方にはフロントアッパプレート18aが設けられ、このフロントアッパプレート18aにフロントガードバー29の上部が締結固定される。左右ダウンフレーム16の下端部(左右ロアフレーム17の前部湾曲部)には左右フロントロアブラケット29aが設けられ、これら左右フロントロアブラケット29aにフロントガードバー29の下部が締結固定される。
【0019】
左右ロアフレーム17は、その前半部が後側ほど車幅方向内側方に位置するように平面視で傾斜し、後半部が左右位置を略一定にして前後に延びる。左右ロアフレーム17の前部湾曲部は、車体フレーム5の下部における左右幅が最も広い最幅広部Wを形成する。左右ロアフレーム17の後部の車幅方向外側には左右メインステップブラケット31が固設され、左ロアフレーム17の後端部の車幅方向外側にはサイドスタンド支持ブラケット32が固設される。左右ミドルフレーム22の下端部後側にはメインスタンド支持ブラケット33が固設される。
【0020】
左右ミドルフレーム22は、メインフレーム15の後端部両側から下後方へ左右位置を略一定にして延びる。左右ミドルフレーム22の下部湾曲部には、その内周方からマウントブラケット23が接合される。マウントブラケット23は、その上下にエンジン13のクランクケース48の上端部及び後端部をそれぞれ支持すると共に、上下中間部にピボットパイプ12を挿通保持する。
【0021】
左右シートフレーム24は、側面視では後上がりの直線状をなして後方へ延びる。また、左右シートフレーム24は、その前半部が平面視で後側ほど車幅方向内側方に位置するように傾斜し、後半部が左右位置を略一定にして前後に延びる。なお、図中符号36は左右シートフレーム24とスイングアーム11の左右アームとの間に介設される左右リアクッションを示す。
【0022】
左右ミドルフレーム22、左右シートフレーム24の前半部及び左右サポートフレーム25は、側面視逆三角形状の空間を形成する。前記空間の左側にはエンジン吸気部品であるエアクリーナボックス37が配置され、前記空間の右側には車載電源であるバッテリ38が配置される。前記空間の車幅方向外側方は、合成樹脂製の左右サイドカバー39によりそれぞれ覆われる。
【0023】
車体上部前側には、メインフレーム15及び左右シートフレーム24の前部に支持される燃料タンク41が配置される。車体上部後側であって燃料タンク41の後方には、左右シートフレーム24に支持される鞍乗りシート42が配置される。鞍乗りシート42は、運転者用の前シートと後部同乗者用の後シートとを一体に有する。車体上後端部には、後シートの後端部の外方を囲うように形成されたグラブレール43が配設されると共に、後シートの後方及び左右下方を外方から覆うように形成されたテールカウル44が配設される。
【0024】
グラブレール43は例えば丸鋼管に曲げ加工等を施してなり、その後方には各種鋼材からなるリアキャリア45が接合される。テールカウル44の内方には、後輪9の上方を間隔を空けて覆うリアフェンダ(不図示)が配置される。前記リアフェンダの後部からは、テールカウル44よりも下方で後輪9の上後方を間隔を空けて覆う後尾フェンダ47が延出する。テールカウル44、前記リアフェンダ及び後尾フェンダ47はそれぞれ合成樹脂製とされる。
【0025】
側面視でメインフレーム15、ミドルフレーム22、ダウンフレーム16及びロアフレーム17に囲まれる部位には、前記エンジン(内燃機関)13が搭載される。
エンジン13は、クランクシャフト(不図示)の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向(車幅方向)に沿わせた空冷単気筒エンジンであり、クランクケース48の前端部からシリンダ49を略水平に(詳細にはやや前上がりに傾斜させて)前方に突出させた構成を有する。なお、図中符号C2はシリンダ49の突出方向に沿うシリンダ軸線を示す。シリンダ49は、側面視でシリンダ軸線C2の延長線が前輪2と交差する範囲で傾斜する。
【0026】
シリンダ49は、前記突出方向でクランクケース48側から順にシリンダ本体49a、シリンダヘッド49b及びヘッドカバー49cを有する。シリンダ本体49a内にはピストン(不図示)が往復動可能に嵌装され、このピストンの往復動がクランクケース48前部内の前記クランクシャフトの回転動に変換される。クランクシャフトの回転動力は、クランクケース48後部内のクラッチ及びトランスミッション(何れも不図示)を介してクランクケース48の後部左側に出力され、前記チェーン式の伝動機構14を介して後輪9に伝達される。
【0027】
シリンダ49の上方には、キャブレター(吸気調整装置)51が吸気通路を略水平にして配置される。キャブレター51は、車体左右中央部(平面視でメインフレーム15と重なる位置)に配置され、その前端部が下方に向けて湾曲する接続管51aを介してシリンダヘッド49b上側の吸気ポートに接続される。キャブレター51の後端部には、前記エアクリーナボックス37から前方へ延びるコネクティングチューブ37aが接続される。なお、キャブレター51に代わりスロットルボディを用いた構成としてもよい。
【0028】
シリンダヘッド49b下側の排気ポートには、排気管52の基端部が接続される。前記排気ポートは、シリンダヘッド49b下側で右下方に向けて斜めに開口する。排気管52は、前記排気ポートからシリンダヘッド49bの右下方に向けて延びた後に後方へ湾曲し、右ロアフレーム17の車幅方向外側方を略水平に後方へ延びる。排気管52の後端部は、車体下部右側でやや後上がりに傾斜して延在する筒状のサイレンサ52aの前端部に接続される。
【0029】
なお、図中符号53はシリンダ49の上方かつメインフレーム15の下方に配置される物品収納ボックスを、符号31aは左右ロアフレーム17の後部に支持される運転者用の左右メインステップを、符号54aは左右メインステップ31aの後方に離間して配置される左右ピリオンステップを、符号54はピボットパイプ12の左右端部及び左右サポートフレーム25の中間部に支持されて後端部に左右ピリオンステップ54aを支持する左右ピリオンステップブラケットを、符号55は車体後部左側に配置されて左シートフレーム24及び左ピリオンステップブラケット54に支持されるドレスガードを、符号55aはドレスガード55の下端部と左ピリオンステップブラケット54の後端部との間に介在して車幅方向外側方に張り出す足置きをそれぞれ示す。
【0030】
図4に示すように、自動二輪車1は、油圧式(液圧式)の前後輪ブレーキ56,57を備える。
前輪ブレーキ56は、前輪2のハブ部右側に一体回転可能に設けられるフロントディスク56aと、右フロントフォーク3の下部に支持されてフロントディスク56aを挟圧可能なフロントキャリパ56bとを有する。フロントキャリパ56bは、油圧の供給によりフロントディスク56aを挟圧して前輪2の回転を制動する。フロントキャリパ56bに油圧を供給するフロントマスターシリンダ58は、操向用バーハンドル7の右グリップ近傍に取り付けられる。フロントマスターシリンダ58が発生する油圧は、前上流油圧配管58a、ABSモジュール61の油圧回路部、及び前下流油圧配管58bを介してフロントキャリパ56bに供給される。
【0031】
後輪ブレーキ57は、後輪9のハブ部右側に一体回転可能に設けられるリアディスク57aと、スイングアーム11の右アームの後部に支持されてリアディスク57aを挟圧可能なリアキャリパ57bとを有する。リアキャリパ57bは、油圧の供給によりリアディスク57aを挟圧して後輪9の回転を制動する。リアキャリパ57bに油圧を供給するリアマスターシリンダ59は、車体下部右側の右メインステップ31a近傍に取り付けられる。リアマスターシリンダ59が発生する油圧は、後上流油圧配管59a、ABSモジュール61の油圧回路部、及び後下流油圧配管59bを介してリアキャリパ57bに供給される。
【0032】
すなわち、自動二輪車1は、フロントマスターシリンダ58とフロントキャリパ56bとの間、並びにリアマスターシリンダ59とリアキャリパ57bとの間に、共通(単一)のABSモジュール61を備える。ABSモジュール61は、前後輪2,9の制動時のスリップ(ロック)を検出した際にこれを回避するべく対応するキャリパへの供給油圧を減圧し、当該キャリパへの油圧供給が間欠的となるように制御する。
【0033】
図5,6に示すように、ABSモジュール61は、メインフレーム15の前後中間部の上方で、側面視でメインフレーム15に沿うように傾斜して配置される。なお、図示都合上、図5,6には第二実施形態のABSモジュール161も示している。したがって、第一実施形態ではABSモジュール61のみが取り付けられ、第二実施形態ではABSモジュール161のみが取り付けられる。
ABSモジュール61は、例えば左側から順に直方体状の電子制御部61a、同じく直方体状の油圧回路部61b、及び円柱状の電動モータ61cを並べて一体のユニットとした構成を有する。電子制御部61aの後部右側には右方に向けてコネクタ61cが突設され、このコネクタ61cにメインハーネスから延びる電気配線(何れも不図示)が接続される。
【0034】
ABSモジュール61は、電動モータ61cの中心軸線C3が左右方向と平行になるように配置され、かつ側面視で油圧回路部61b及び電子制御部61aの下面がメインフレーム15の上面に沿うように傾斜して配置される。ABSモジュール61は、車体左右中心線CLを左右に跨ぎ、かつ車体左右中心線CLに対して右側方に偏倚するように(電子制御部61aが車体左右中心線CL上に位置するように)配置される。
【0035】
油圧回路部61bの右側面(電動モータ61c側の側面)の前部には前マスターポート62aが開口し、この前マスターポート62aに前記フロントマスターシリンダ58から延びる前上流油圧配管58aがニップルを介して接続される。油圧回路部61bの右側面の後部には後マスターポート63aが開口し、この後マスターポート63aに前記リアマスターシリンダ59から延びる後上流油圧配管59aがニップルを介して接続される。
【0036】
油圧回路部61bの上面の前部には前キャリパポート62bが開口し、この前キャリパポート62bに前記フロントキャリパ56bから延びる前下流油圧配管58bがニップルを介して接続される。油圧回路部61bの上面の後部には後キャリパポート63bが開口し、この後キャリパポート63bに前記リアキャリパ57bから延びる後下流油圧配管59bがニップルを介して接続される。各マスターポート62a,63a及び各キャリパポート62b,63bは、車体左右中心線CLに対して各マスターシリンダ58,59及び各キャリパ56b,57b(各ブレーキ56,57)と同じ側(右側)に偏倚して設けられる。
【0037】
図7,8を併せて参照し、ABSモジュール61は、油圧回路部61bに締結固定されるモジュール側ステー64と、メインフレーム15の右側面に溶接固定されるフレーム側ステー65とを介して、メインフレーム15に支持される。
【0038】
モジュール側ステー64は鋼板に曲げ加工等を施してなり、左右方向と略直交する平板状をなして油圧回路部61bの右側面の下方に配置される側板部64aと、側板部64aの上縁中間部から左方に屈曲して延びる下支持腕64bと、側板部64aの前縁から左方に屈曲して左上方に延びる前支持腕64cとを一体に有する。下支持腕64bは、油圧回路部61bの下面に、この下面と直交するように後上方を指向するボルト64d(図8参照)により締結される。前支持腕64cは、油圧回路部61bの前面に、この前面と直交するように後下方を指向するボルト64eにより締結される。
【0039】
フレーム側ステー65は鋼板に曲げ加工等を施してなり、左右方向と略直交する平板状をなして前記側板部64aの車幅方向内側方にこれと平行に配置される側板部65aと、側板部65aの前後縁から左方に屈曲して延びる前後支持腕65bとを一体に有する。前後支持腕65bの先端縁は、メインフレーム15の右側面に当接し溶接される。なお、フレーム側ステー65がメインフレーム15に締結固定される構成であってもよい。
【0040】
図9を併せて参照し、各側板部64a,65aの一方(本実施形態ではモジュール側ステー64の側板部64a)には、前後一対のラバーブッシュ66が取り付けられる。これら前後ラバーブッシュ66を介して、各側板部64a,65a同士が左方を指向する前後一対のボルト66aにより締結される。これにより、フレーム側ステー65(メインフレーム15)にモジュール側ステー64(ABSモジュール61)がラバーマウントされる。なお、図中符号66bはボルト66aが螺着されるナットを、符号66cはラバーブッシュ66におけるボルト66aが挿通されるカラーをそれぞれ示す。
【0041】
ここで、燃料タンク41は鋼板製のもので、図10に示すように、メインフレーム15を左右に跨ぐように形成される鞍形のタンク内板72と、タンク内板72の外方を所定の間隙を空けて覆うタンク外板73とを有し、これらタンク内板72とタンク外板73とで中空のタンク本体71を形成する。
【0042】
タンク内板72におけるメインフレーム15を間隔を空けて跨ぐ鞍形部74は、側面視でメインフレーム15と同様に前上がりに傾斜して前後に延在する。
図7を併せて参照し、鞍形部74は、メインフレーム15の上面に沿うように形成される上壁部74aと、上壁部74aの左右端縁からメインフレーム15の側面に沿うように下方へ延びる左右側壁部74bとを一体に有する。鞍形部74の前端は、タンク本体71の前面で前方へ開放する。鞍形部74の後部は、タンク本体71の後部で上下幅を減少させた後に後上がりに傾斜し、タンク本体71の後端面で後方へ開放する。
【0043】
左右側壁部74bは左右方向と略直交する平板状をなし、互いに略平行に配置される。左右側壁部74bの前半部は、後半部よりも互いに近接するように段差を介して変位する。左右側壁部74bの前端縁下側及び下端縁からは、車幅方向外側方に向けて左右底壁部74cが湾曲して延びる。燃料供給系にキャブレター51を用いた場合、左底壁部74cの前後中間部のやや前側には燃料コック取り付け部74dが設けられる。燃料供給系に燃料噴射弁を有するスロットルボディを用いた場合、上壁部74aの前後中間部のやや後側には燃料ポンプ取り付け部74eが設けられる。
【0044】
タンク内板72におけるタンク本体71の側面視形状に沿う外周縁には、前記側面視形状の外方に向かうように延びる接合フランジ75が連続的に設けられる。タンク内板72の接合フランジ75には、タンク外板73にも同様に設けられた接合フランジが重なり、これらが溶接等により一体に接合される。
【0045】
タンク本体71の外形状を形成するタンク外板73は、タンク内板72の上方を間隔を空けて覆う上壁部73aと、タンク内板72の後部上方を間隔を空けて覆う後部上壁部73bと、車幅方向外側方に凸の膨出形状をなしてタンク内板72の車幅方向外側方を間隔を空けて覆う左右外側壁部73cとを一体に有する。タンク外板73の前半部は、燃料タンク41における左右幅が最も広い最幅広部W2を形成する。タンク外板73の後半部は、後側ほど燃料タンク41の左右幅及び上下幅を徐々に狭めるように形成される。
【0046】
タンク外板73(燃料タンク41)の後半部は、鞍乗りシート42に着座した乗員(運転者)の両膝間に挟み込まれる。タンク外板73の後部上壁部73bには、その上後方から鞍乗りシート42の前端部が乗り上がる。タンク外板73の上壁部73aにおける略水平な前半部には、リッド73eにより開閉する凹部73dが形成される。凹部73d内には給油口(不図示)が配置される。
【0047】
タンク内板72の鞍形部74前側の左右側壁部74bの内側面には、側面視で前方に開放するU字形状をなす係合部材76が左右一対に設けられる。左右係合部材76は、図5に示すように、メインフレーム15の前部の外側面に保持された左右マウントラバー76aにそれぞれ係合する。これにより、燃料タンク41の前部がメインフレーム15の前部にラバーマウントされる。
【0048】
接合フランジ75における左右シートフレーム24を上方から跨ぐ門形の後縁部には、その上部を後方へ延長してなる後締結部77が一体形成される。後締結部77は、図5に示すように、フロントクロスブラケット26にラバーブッシュ77aを介して締結される。これにより、燃料タンク41の後部がフロントクロスブラケット26ひいては左右シートフレーム24にラバーマウントされる。
【0049】
タンク内板72の鞍形部74の前後中間部には、タンク本体71の内方(燃料貯蔵空間)に向けて凹む凹部78が形成される。凹部78は、タンク内板72の鞍形部74の内方(メインフレーム15側)に向けて開放し、メインフレーム15に支持されたABSモジュール61の上部を入り込ませる。すなわち、凹部78もABSモジュール61と同様に車体右側に偏倚して設けられる。
【0050】
これにより、燃料タンク41の下方にABSモジュール61を配置した上で、燃料タンク41とABSモジュール61との干渉が回避され、かつABSモジュール61が目立たなくなって車両外観への影響が抑えられると共に、ABSモジュール61への外乱も抑制され、さらにABSモジュール61がメインフレーム15にマウントし易い構造となる。
【0051】
以上説明したように、上記第一実施形態における自動二輪車1は、ヘッドパイプ6及びヘッドパイプ6から後方へ延びるメインフレーム15を有する車体フレーム5と、前記メインフレーム15を上方から跨いで覆うように設けられる燃料タンク41と、前後輪2,9に制動力を与える油圧式の前後輪ブレーキ56,57と、前記前後輪2,9のスリップを回避するべく前記前後輪ブレーキ56,57に作用する油圧を減圧可能なABSモジュール61とを備える鞍乗り型車両であって、前記ABSモジュール61は、その上方及び左右側方を前記燃料タンク41で覆われるように燃料タンク41の下方に配置され、前記燃料タンク41の下面には、前記ABSモジュール61を収容する凹部78が形成されることを特徴とする。
【0052】
この構成によれば、ABSモジュール61をその上方及び左右側方を覆うように燃料タンク41下面の凹部78内に収容することで、他部材の配置等への影響を抑えてコンパクトにABSモジュール61を配置できると共に、ABSモジュール61に雨や熱等の影響並びに外力が至ることを抑え、かつABSモジュール61を目立たなくして車両外観への影響を抑え、さらにABSモジュール61を燃料タンク41下の車体フレーム5にマウントし易い構造とすることができる。
【0053】
また、上記自動二輪車1は、前記前輪ブレーキ56が、前輪2に制動力を与えるべく前輪2の左右一側に隣接して配置されるフロントキャリパ56bと、操向用バーハンドル7の前記左右一側に支持されて前記フロントキャリパ56bに連通されるフロントマスターシリンダ58とを備え、前記ABSモジュール61が、前記フロントキャリパ56bから延びる前下流油圧配管58b及び前記フロントマスターシリンダ58から延びる前上流油圧配管58aをそれぞれ接続する前キャリパポート62b及び前マスターポート62aを有し、これら前キャリパポート62b及び前マスターポート62aが、車体左右中心線CLよりも前記左右一側に偏倚して配置されることで、フロントキャリパ56b及びフロントマスターシリンダ58並びにこれらの間に配置されるABSモジュール61の各ポート62a,62bを車体左右一側に集約して配置することとなり、これらを効率よく接続することができる。
【0054】
また、上記自動二輪車1は、前記後輪ブレーキ57が、後輪9に制動力を与えるべく後輪9の左右一側に隣接して配置されるリアキャリパ57bと、前記車体フレーム5の前記左右一側に支持されて前記リアキャリパ57bに連通されるリアマスターシリンダ59とを備え、前記ABSモジュール61が、前記リアキャリパ57bから延びる後下流油圧配管59b及び前記リアマスターシリンダ59から延びる後上流油圧配管59aをそれぞれ接続する後キャリパポート63b及び後マスターポート63aを有し、これら後キャリパポート63b及び後マスターポート63aが、車体左右中心線CLよりも前記左右一側に偏倚して配置されることで、リアキャリパ57b及びリアマスターシリンダ59並びにこれらの間に配置されるABSモジュール61の各ポート63a,63bを車体左右一側に集約して配置することとなり、前記同様、これらを効率よく接続することができる。
【0055】
また、上記自動二輪車1は、前記メインフレーム15の下方に配置されるエンジン13を備え、前記メインフレーム15が、車体左右中心線CLに沿って単一に設けられ、前記ABSモジュール61が、前記メインフレーム15の上側に取り付けられることで、エンジン13からの熱がメインフレーム15に遮蔽され、ABSモジュール61に対するエンジン熱の影響を抑制できる。
【0056】
また、上記自動二輪車1は、前記ABSモジュール61に取り付けられるモジュール側ステー64と、前記車体フレーム5に取り付けられるフレーム側ステー65とを備え、前記モジュール側ステー64と前記フレーム側ステー65とが、車幅方向を指向するボルト66a及びこれを挿通するラバーブッシュ66を介して弾性的に連結されることで、ABSモジュール61の車体フレーム5に対する着脱を車体側方から可能として作業性を向上させると共に、フレーム側ステー65にモジュール側ステー64をラバーマウントすることで、ABSモジュール61への振動、衝撃の影響をより一層小さくすることができる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図5,6,11,12を参照して説明する。
この実施形態は、前記第一実施形態に対して、左右シートフレーム24の前部間でこれらの上側にABSモジュール161が取り付けられる点で特に異なる。その他の、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0057】
ABSモジュール161は、電動モータ61cの中心軸線C3が左右方向と平行になるように配置され、かつ側面視で油圧回路部61b及び電子制御部61aの下面が左右シートフレーム24の上縁に沿うように傾斜して配置される。ABSモジュール161は、車体左右中心線CLを左右に跨ぎ、かつ車体左右中心線CLに対してやや右側方に偏倚するように(油圧回路部61bと電子制御部61aとの合わせ面が車体左右中心線CL上に位置するように)配置される。各マスターポート62a,63a及び各キャリパポート62b,63bは、車体左右中心線CLに対して各マスターシリンダ58,59及び各キャリパ56b,57b(各ブレーキ56,57)と同じ側(右側)に偏倚して設けられる。なお、ABSモジュール161自体の構成は第一実施形態のABSモジュール61の構成に準ずる。
【0058】
ABSモジュール161は、油圧回路部61bに締結固定されるモジュール側ステー81と、左右シートフレーム24の車幅方向外側にそれぞれ溶接固定される左右フレーム側ステー82,83とを介して、左右シートフレーム24の前部に支持される。
【0059】
モジュール側ステー81は鋼板に曲げ加工等を施してなり、左右方向と略直交する平板状をなしてABSモジュール161の下方で車幅方向外側方に離間して配置される左右側板部81aと、左右側板部81aの上縁間に渡る架設部81bと、架設部81bの前縁中間部から上方に屈曲して延びる前支持腕81cとを一体に有する。架設部81bは、油圧回路部61bの下面に、この下面と直交するように前上方を指向するボルト(不図示)により締結される。前支持腕81cは、油圧回路部61bの前面に、この前面と直交するように後上方を指向するボルト81eにより締結される。
【0060】
左右フレーム側ステー82,83は鋼板に曲げ加工等を施してなり、左右方向と略直交する平板状をなして左右シートフレーム24の前部の車幅方向外側方に配置される左右側板部82a,83aと、左右側板部82a,83aの前後縁から車幅方向内側方に屈曲して延びる前後支持腕82b,83bとをそれぞれ一体に有する。左フレーム側ステー82は右フレーム側ステー83よりも前後に長く設けられる。左右フレーム側ステー82,83の前後支持腕82b,83bの先端縁は、左右シートフレーム24の車幅方向外側面にそれぞれ当接し溶接される。なお、左右フレーム側ステー82,83の少なくとも一方が左右シートフレーム24に締結固定される構成であってもよい。
【0061】
モジュール側ステー81の左側板部81a及び左フレーム側ステー82の左側板部82aの一方(本実施形態ではモジュール側ステー81の左側板部81a)には、前後一対のラバーブッシュ66が取り付けられ、モジュール側ステー81の右側板部81a及び右フレーム側ステー83の右側板部83aの一方(本実施形態ではモジュール側ステー81の右側板部81a)には、単一のラバーブッシュ66が取り付けられる。
【0062】
これら複数のラバーブッシュ66を介して、モジュール側ステー81及び左フレーム側ステー82の左側板部81a,82a同士、並びにモジュール側ステー81及び右フレーム側ステー83の右側板部81a,83a同士が、それぞれ車幅方向内側方を指向するボルト66aにより締結される。これにより、左右フレーム側ステー82,83(左右シートフレーム24)にモジュール側ステー81(ABSモジュール161)がラバーマウントされる。
【0063】
タンク内板72の鞍形部74の後部には、タンク本体71の内方(燃料貯蔵空間)に向けて凹む凹部85が形成される。凹部85は、タンク内板72の鞍形部74の内方(左右シートフレーム24側)に向けて開放し、その内部に左右シートフレーム24に支持されたABSモジュール161の上部を入り込ませる。すなわち、凹部85もABSモジュール161と同様に車体右側にやや偏倚して設けられる。
【0064】
これにより、第一実施形態と同様、燃料タンク41の下方にABSモジュール161を配置した上で、燃料タンク41とABSモジュール161との干渉が回避され、かつABSモジュール161が目立たなくなって車両外観への影響が抑えられると共に、ABSモジュール161への外乱も抑制され、さらにABSモジュール161が左右シートフレーム24にマウントし易い構造となる。
【0065】
以上説明したように、上記第二実施形態では、第一実施形態の特徴構成及び作用効果に加え、前記メインフレーム15の下方に配置されるエンジン13と、前記メインフレーム15から後方へ延びる左右一対のシートフレーム24とを備え、前記ABSモジュール161は、前記左右シートフレーム24の間でこれらの上側に取り付けられることで、ABSモジュール161をエンジン13から離間させることとなり、ABSモジュール161に対するエンジン熱の影響を抑制できる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、前後輪ブレーキの一方のみ等、複数の液圧式ブレーキの一部のみに対応するABSモジュールを有する鞍乗り型車両や、液圧式のドラムブレーキを有する車両にも適用可能である。ここで、前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
2 前輪(車輪)
5 車体フレーム
6 ヘッドパイプ
7 操向用バーハンドル
9 後輪(車輪)
13 エンジン
15 メインフレーム
24 シートフレーム
41 燃料タンク
56 前輪ブレーキ(液圧式ブレーキ)
56b フロントキャリパ
57 後輪ブレーキ(液圧式ブレーキ)
58 フロントマスターシリンダ
58a 前上流油圧配管(前上流液圧配管)
58b 前下流油圧配管(前下流液圧配管)
59 リアマスターシリンダ
59a 後上流油圧配管(後上流液圧配管)
59b 後下流油圧配管(後下流液圧配管)
61,161 ABSモジュール
62a 前マスターポート(前入力ポート)
62b 前キャリパポート(前出力ポート)
63a 後マスターポート(後入力ポート)
63b 後キャリパポート(後出力ポート)
64,81 モジュール側ステー
65,82,83 フレーム側ステー
66 ラバーブッシュ(弾性部材)
66a ボルト(締結部材)
78,85 凹部
CL 車体左右中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(6)及びヘッドパイプ(6)から後方へ延びるメインフレーム(15)を有する車体フレーム(5)と、前記メインフレーム(15)を上方から跨いで覆うように設けられる燃料タンク(41)と、車輪(2,9)に制動力を与える液圧式ブレーキ(56,57)と、前記車輪(2,9)のスリップを回避するべく前記液圧式ブレーキ(56,57)に作用する液圧を減圧可能なABSモジュール(61,161)とを備える鞍乗り型車両(1)であって、
前記ABSモジュール(61,161)は、その上方及び左右側方を前記燃料タンク(41)で覆われるように燃料タンク(41)の下方に配置され、前記燃料タンク(41)の下面には、前記ABSモジュール(61,161)を収容する凹部(78,85)が形成されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記液圧式ブレーキ(56,57)は、前輪(2)に制動力を与えるべく前輪(2)の左右一側に隣接して配置されるフロントキャリパ(56b)と、操向用バーハンドル(7)の前記左右一側に支持されて前記フロントキャリパ(56b)に連通されるフロントマスターシリンダ(58)とを備え、
前記ABSモジュール(61,161)は、前記フロントキャリパ(56b)から延びる前下流液圧配管(58b)及び前記フロントマスターシリンダ(58)から延びる前上流液圧配管(58a)をそれぞれ接続する前出力ポート(62b)及び前入力ポート(62a)を有し、これら前出力ポート(62b)及び前入力ポート(62a)が、車体左右中心線(CL)よりも前記左右一側に偏倚して配置されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記液圧式ブレーキ(56,57)は、後輪に制動力を与えるべく後輪の左右一側に隣接して配置されるリアキャリパ(57b)と、前記車体フレーム(5)の前記左右一側に支持されて前記リアキャリパ(57b)に連通されるリアマスターシリンダ(59)とを備え、
前記ABSモジュール(61,161)は、前記リアキャリパ(57b)から延びる後下流液圧配管(59b)及び前記リアマスターシリンダ(59)から延びる後上流液圧配管(59a)をそれぞれ接続する後出力ポート(63b)及び後入力ポート(63a)を有し、これら後出力ポート(63b)及び後入力ポート(63a)が、車体左右中心線(CL)よりも前記左右一側に偏倚して配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記メインフレーム(15)の下方に配置されるエンジン(13)を備え、
前記メインフレーム(15)は、車体左右中心線(CL)に沿って単一に設けられ、前記ABSモジュール(61,161)は、前記メインフレーム(15)の上側に取り付けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記メインフレーム(15)の下方に配置されるエンジン(13)を備え、
前記車体フレーム(5)は、前記メインフレーム(15)から後方へ延びる左右一対のシートフレーム(24)を有し、前記ABSモジュール(61,161)は、前記左右シートフレーム(24)の間でこれらの上側に取り付けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記ABSモジュール(61,161)に取り付けられるモジュール側ステー(64,81)と、前記車体フレーム(5)に取り付けられるフレーム側ステー(65,82,83)とを備え、
前記モジュール側ステー(64,81)と前記フレーム側ステー(65,82,83)とは、車幅方向を指向する締結部材(66a)及びこれを挿通する弾性部材(66)を介して弾性的に連結されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の鞍乗り型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71589(P2013−71589A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211936(P2011−211936)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】